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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158717
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231024BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068658
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】秋田 佳稔
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006AA05
5H006BB05
5H006CA01
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC01
5H006CC02
5H006CC08
5H006DC02
5H006DC05
5H006FA02
5H770BA01
5H770DA33
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770KA01Z
5H770LA02Y
5H770LB05
(57)【要約】
【課題】電流検出器の異常と電流検出器以外に起因する交流電流異常を区別して検出する電力変換装置を提供する。
【解決手段】コンバータ21、インバータ31、交流変換器のいずれか備える電力変換装置であって、交流電源1と電力変換装置100との間、または、電力変換装置と負荷装置4との間に流れる複数相の交流電流を、相毎に検出する複数の電流検出器26,27,28,34,35,36と、複数の電流検出器の異常と電流検出器以外に起因する交流電流の異常とを判断する異常判断器71,72と、を備え、前記異常判断器は、複数の電流検出器が検出した複数相の電流検出値の異常を判断する交流電流検出器異常判断部と、交流電流検出器異常判断部の判断結果に基づき電流検出器の電流推定値を計算する交流電流推定部と、交流電流推定部の出力に基づき複数の前記電流検出器が検出した複数相の電流検出値の異常を判断する交流電流異常判断部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流を直流に変換するコンバータ、または直流を交流に変換するインバータ、または交流を交流に変換する交流変換器のいずれかを少なくとも一つ備える電力変換装置であって、
交流電源と前記電力変換装置との間、または、前記電力変換装置と負荷装置との間に流れる複数相の交流電流を、相毎に検出する複数の電流検出器と、
複数の電流検出器の異常と電流検出器以外に起因する交流電流の異常とを判断する異常判断器と、
を備え、
前記異常判断器は、
複数の前記電流検出器が検出した複数相の電流検出値の異常を判断する交流電流検出器異常判断部と、
前記交流電流検出器異常判断部の判断結果に基づき前記電流検出器の電流推定値を計算する交流電流推定部と、
前記交流電流推定部の出力に基づき複数の前記電流検出器が検出した複数相の電流検出値の異常を判断する交流電流異常判断部と、
を備える、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記異常判断器は、前記交流電源側に配置されたコンバータ側異常判断器と、前記負荷装置側に配置されたインバータ側異常判断器とで構成され、
前記交流電流検出器異常判断部は、前記コンバータ側異常判断器に設けられたコンバータ側交流電流検出器異常判断部と、前記インバータ側異常判断器に設けられたインバータ側交流電流検出器異常判断部とで構成され、
前記交流電流推定部は、前記コンバータ側異常判断器に設けられたコンバータ側交流電流推定部と、前記インバータ側異常判断器に設けられたインバータ側交流電流推定部とで構成され、
前記交流電流異常判断部は、前記コンバータ側異常判断器に設けられたコンバータ側交流電流異常判断部と、前記インバータ側異常判断器に設けられたインバータ側交流電流異常判断部とで構成される、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記異常判断器は、
前記交流電流検出器異常判断部が、前記電流検出器の異常有無を判断し、
前記交流電流検出器異常判断部が前記電流検出器の異常を検出した場合には、前記交流電流推定部の出力を所定の推定値に切替えて、所定の時間経過後に前記交流電流異常判断部が前記電流検出器以外に起因する交流電流異常の有無を判断し、
前記交流電流異常判断部の判断で異常を検出した場合には、前記交流電流異常判断部は交流電流検出器が異常かつ交流電流検出器以外に起因する交流電流が異常と診断し、
前記交流電流異常判断部が異常を検出しない場合には、交流電流検出器が異常かつ交流電流検出器以外に起因する交流電流が正常と診断し、
前記交流電流検出器異常判断部が前記電流検出器の異常を検出しない場合には、前記交流電流推定部の出力を切り替えずに、前記交流電流異常判断部が前記交流電流検出器以外に起因する交流電流が異常と判断し、
前記交流電流異常判断部が交流電流の異常を検出した場合には、交流電流検出器が正常かつ交流電流検出器以外に起因する交流電流が異常と診断し、
前記交流電流異常判断部が交流電流の異常を検出しない場合には、交流電流検出器が正常かつ交流電流検出器以外に起因する交流電流が正常と診断する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記交流電流検出器異常判断部は、
複数の前記電流検出器が検出する複数相の電流検出値の第1の総和を計算する第1の加算部と、
前記第1の総和と前記電流検出値との積である第1の積を、前記複数相の各々について計算する第1の乗算部と、
複数の前記第1の積に含まれる交流成分をそれぞれ低減または除去する第1のフィルタと、
相の異なる2つの前記電流検出値の積である第2の積をそれぞれ計算する第2の乗算部と、
複数の前記第2の積についての第2の総和を計算する第2の加算部と、
前記第2の総和に含まれる交流成分を減少または除去する第2のフィルタと、
前記電流検出値の自乗を相毎にそれぞれ計算する第3の乗算部と、
複数の前記電流検出値の自乗についての第3の総和を計算する第3の加算部と、
前記第3の総和に含まれる交流成分を低減または除去する第3のフィルタと、
前記第1のフィルタの出力、前記第2のフィルタの出力、および前記第3のフィルタの出力に基づいて複数の前記電流検出器の異常度合いをそれぞれ生成し、前記異常度合いに基づいて前記電流検出器の異常を判断する異常度計算部と、
を備える、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1のフィルタの出力、前記第2のフィルタの出力および前記第3のフィルタの出力に基づいて、複数の前記異常度合いであって、複数の相に関しての総和が常にゼロとなるように設定される相対的異常度を、それぞれ計算する第1の演算部をさらに備え、
前記交流電流検出器異常判断部は、
複数の前記相対的異常度の各々の絶対値の内の最大値が、予め設定した異常判定閾値よりも大きい場合に、複数の前記電流検出器の少なくとも一つが異常であると判断する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記交流電流検出器異常判断部は、
複数の前記相対的異常度を、類似度の高い2つの要素と、それら2つの要素とは類似度が低い1つの要素とに分類できるか否かを判定し、
分類できる場合には、複数の前記電流検出器の1つのみが異常であると判断し、
分類できない場合には、2つ以上の前記電流検出器が異常であると判断する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項4において、
複数の前記電流検出器が正常な場合における検出ゲインの平均値と電流振幅との第3の積が、前記交流電源または前記負荷装置の運転条件と関連付けて記憶される記憶部と、
前記第2のフィルタおよび前記第3のフィルタの出力に基づいて、複数の前記電流検出器の検出ゲインの平均値と電流振幅との積に相当する物理量を計算する第2の演算部と、
前記第3の積、前記運転条件と同一運転条件において前記第2の演算部により計算される前記物理量、前記第1のフィルタの出力、前記第2のフィルタの出力および前記第3のフィルタの出力に基づいて、複数の前記異常度合いの絶対量を表す絶対異常度をそれぞれ計算する第3の演算部と、
該第3の演算部を内包し、前記第3の演算部の演算結果を反映する異常判断部と、
を備え、
前記異常判断部は、複数の前記絶対異常度に基づいて複数の前記電流検出器の異常を判断する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記交流電流検出器異常判断部は、
複数の前記電流検出器が検出した複数相の電流検出値の第1の総和を計算する第1の加算部を備え、
前記第1の総和の位相と複数の前記電流検出器が検出した複数相の電流検出値の位相に基づいて前記電流検出器の異常を判断する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記交流電流推定部は、前記交流電流異常判断部が前記電流検出器の異常を判断した場合に、異常と判断されていない前記電流検出器の電流検出値に基づいて、異常と判断された前記電流検出器が正常であると仮定した場合の電流検出値を推定し、
異常と判断されていない前記電流検出器の電流検出値と、前記交流電流推定部で推定した電流検出値とに基づいて、運転動作を継続する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項4において、
前記交流電流推定部は、前記交流電流異常判断部が前記電流検出器の異常を判断した場合に、複数の前記電流検出器の相対的異常度または絶対異常度と、複数の前記電流検出器の電流検出値とに基づいて、前記電流検出器が正常であると仮定した場合の電流検出値をそれぞれ推定し、
前記電流検出器の電流検出値に代えて、前記交流電流推定部で推定した複数の電流検出値に基づいて、運転動作を継続する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記交流電流異常判断部は、
前記交流電流推定部の出力の実効値または振幅または位相差のうち少なくとも1つを計算し、
前記実効値または前記振幅または前記位相差のうち少なくとも1つを所定の値と比較し、
前記電流検出器以外に起因する交流電流の正常または異常を判断する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記交流電流異常判断部は、
複数の相の交流電流の規格化位相差を算出し、
複数の前記規格化位相差の最小値が予め定めた所定値よりも大きい場合には、各相の電流は正常と判断し、
複数の前記規格化位相差の最小値が予め定めた所定値よりも小さい場合には、複数の前記規格化位相差の最小値と、各相の規格化位相差とを順に比較し、
複数の前記規格化位相差の最小値と所定の相の規格化位相差が等しい場合には、当該の相の電流の振幅が最大と判断し、当該の相のレアショート発生リスク、または3相不平衡の発生リスクが高いと判断する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記交流電流異常判断部は、
複数の相の交流電流の振幅を検出し、該振幅から各相の振幅推定値を算出し、
複数の前記振幅推定値の最大値が予め定めた所定値よりも小さいか等しい場合には、各相の電流は正常と判断し、
複数の前記振幅推定値の最大値が予め定めた所定値よりも大きい場合には、複数の前記振幅推定値の最大値と、各相の振幅推定値とを順に比較し、複数の振幅推定値の最大値と所定の相の振幅推定値が等しい場合には、当該の相の電流の振幅が最大と判断し、当該の相のレアショート発生リスク、または3相不平衡の発生リスクが高いと判断する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項4において、
複数の前記電流検出器に流れる交流電流の周波数に応じて、前記第1のフィルタ、前記第2のフィルタおよび前記第3のフィルタの内の少なくとも1つのフィルタ設定を変更する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項4において、
複数の前記電流検出器の少なくとも一つに関して、前記電流検出値に含まれる直流成分を除去または減少させる第4のフィルタをさらに備え、
前記電流検出値に代えて前記第4のフィルタの出力を用いる、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項16】
請求項1において、
異常情報を提示する情報提示部を備え、
前記異常判断器は、
複数の異常度合いの履歴を生成し、
前記履歴に基づいて前記電流検出器の異常発生までの期間を予測し、
予測結果を前記異常情報として前記情報提示部に提示させる、
ことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源の電力を可変電圧可変周波数の電力に変換する電力変換装置が知られている。電力変換装置は、電源と電力変換装置との間に流れる電流を測定する電流検出器を備え、電流が所定の値となるように制御する。また、電力変換装置は、電力変換装置と負荷装置との間に流れる電流を測定する電流検出器を備え、電流が所定の値となるように制御する。
電力変換装置と電動機との間に流れる電流を検出する電流検出器や、電力変換装置と電源との間に流れる電流を検出する電流検出器は、電力変換装置の電流を制御するために必須なものである。そのため、電流検出器の異常はシステムの動作の不安定をもたらし、最悪の場合にはシステムの計画外停止をもたらすおそれがある。
【0003】
また,電力変換装置における電動機は、工場設備等の駆動のために必須なものである。電動機における固定子巻線の被膜の損傷が進むと、絶縁劣化により隣接巻線間の巻線短絡(レアショート、レイヤーショート、層間短絡)が発生する。レアショートが発生した相の巻線抵抗値は他の相の巻線抵抗値と比べて小さくなるため、レアショートが発生した相には過大な電流が継続して流れる。
レアショートが発生した相に過大な電流が継続して流れると、絶縁劣化の加速によりレアショートが発生した相において、さらなるレアショートが発生し、やがて焼損や地絡が発生し、電動機が停止するおそれがある。したがって、電動機のレアショートが発生した初期段階を検出することが重要である。
【0004】
電力変換装置と電動機との間に流れる電流を検出する電流検出器の健全性を確認するための技術として、次のような方法が知られている。
例えば、特許文献1においては、電力変換装置と電動機との間に流れる各相の電流を検出し、各相の電流実効値を他相の電流実効値と比較することにより異常が発生した相を判定する方法、技術が開示されている。
また、電動機の固定子巻線のレアショートを検出する技術として、例えば特許文献2や特許文献3がある。
特許文献2においては、電動機の各相電流を検出して各相間電流比率を算出し、各相間電流比率と基準値とを比較することで、レアショートを判定する方法、技術が開示されている。
特許文献3においては、電動機の各相電流から各相電圧に基づいてモータ運転状態値を演算し、モータ運転状態値に基づき層間短絡を判定する方法、技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3737370号
【特許文献2】特開2007-14151号公報
【特許文献3】特許第5462121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、平衡3相負荷が接続された場合に異常が発生した電流検出器の相を判定可能である。しかし、レアショートが発生した場合には、負荷が小さいレアショートが発生した相に多くの電流が流れて3相電流実効値が不一致となる。そのため、電流検出器が正常な場合において、電流検出器の異常を誤検出するおそれがあるという課題(問題)がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術においては、電流検出器が正常な場合においてレアショート発生を判定可能である。しかし、電流検出器に異常が発生した場合に、レアショートが発生していない場合においても各相間電流検出値が不一致となる。そのため,レアショートが発生していない場合において、レアショートを誤検出するおそれがあるという課題(問題)がある。
【0008】
また、特許文献3に記載の技術においては、電流検出器が正常な場合においてレアショート発生を判定可能である。しかし、電流検出器に異常が発生した場合に、異常な電流検出器の検出信号がモータ制御に利用されるため、レアショートが発生していない場合においても電流検出器異常に起因してモータ運転状態値が変化する。したがって、レアショートが発生していない場合において、レアショートを誤検出するおそれがあるという課題(問題)がある。
【0009】
以上のように、特許文献1~3の技術においては、交流電流検出器の異常と交流電流検出器以外に起因する交流電流異常を区別する技術が示されていない。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、電流検出器の異常と電流検出器以外に起因する交流電流異常を区別して検出する電力変換装置を提供することを課題(目的)とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明を以下のように構成した。
すなわち、本発明の電力変換装置は、交流を直流に変換するコンバータ、または直流を交流に変換するインバータ、または交流を交流に変換する交流変換器のいずれかを少なくとも一つ備える電力変換装置であって、交流電源と前記電力変換装置との間、または、前記電力変換装置と負荷装置との間に流れる複数相の交流電流を、相毎に検出する複数の電流検出器と、複数の電流検出器の異常と電流検出器以外に起因する交流電流の異常とを判断する異常判断器と、を備え、前記異常判断器は、複数の前記電流検出器が検出した複数相の電流検出値の異常を判断する交流電流検出器異常判断部と、前記交流電流検出器異常判断部の判断結果に基づき前記電流検出器の電流推定値を計算する交流電流推定部と、前記交流電流推定部の出力に基づき複数の前記電流検出器が検出した複数相の電流検出値の異常を判断する交流電流異常判断部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、その他の手段は、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電流検出器の異常と電流検出器以外に起因する交流電流異常を区別して検出可能な電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の回路構成例、および交流電源、電動機との接続構成例を示す図である。
図2A】本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るコンバータ電力変換部の具体的な構成例を示す図である。
図2B】本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るインバータ電力変換部の具体的な構成例を示す図である。
図3A】本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るコンバータ側異常判断器の詳細なブロック構成を示す図である。
図3B】本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るインバータ側異常判断器の詳細なブロック構成を示す図である。
図4図3Bのインバータ側異常判断器における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。
図5図3Aにおけるコンバータ側交流電流検出器異常判断部の一例の詳細を示すブロック図である。
図6図3Bにおけるインバータ側交流電流検出器異常判断部の一例の詳細を示すブロック図である。
図7】異常度計算部における各種処理を説明するブロック図である。
図8図6に示したインバータ側交流電流検出器異常判断部における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。
図9】本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るインバータ側異常判断器におけるインバータ側交流電流推定部の構成例を示す図である。
図10】本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るインバータ側異常判断器におけるインバータ側交流電流推定部の第2の構成例を示す図である。
図11】本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るインバータ側交流電流異常判断部の構成の一例を示す図である。
図12図11に示したインバータ側交流電流異常判断部における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。
図13】インバータ側交流電流異常判断部の構成の他の例を示す図である。
図14図13に示したインバータ側交流電流検出器異常判断部における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。
図15】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図16】交流電源の3相交流電力を、交流-交流電力変換器を介して3相負荷である電動機に供給する構成の一例を示す図である。
図17】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の交流電流検出器異常判断部の構成例を示す図である。
図18】本発明の第4実施形態に係る電力変換装置のインバータ電力変換部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下においては「実施形態」と表記する)を、適宜、図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、実施の形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0016】
≪第1実施形態:電力変換装置≫
本発明の第1実施形態に係る電力変換装置について、図1図9を参照して説明する。
なお、以下の説明は、電力変換装置の説明のみならず、電力変換装置の異常検出方法の説明を兼ねる。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置100の構成の回路構成例、および交流電源1、電動機4との接続構成例を示す図である。
図1において、電力変換装置100は、コンバータユニット2と、インバータユニット3と、コンバータ制御装置5と、インバータ制御装置6とを備えている。
電力変換装置100は、交流電源1から交流電力が入力され、コンバータユニット2およびインバータユニット3により変換された交流電力を電動機4に出力する。
また、電力変換装置100は、コンバータ側異常判断器71、インバータ側異常判断器72、表示器73を備えている。
【0018】
コンバータユニット(コンバータともいう)2は、交流電源1からの交流電力を入力して、直流電力に変換する。インバータユニット(インバータともいう)3は、コンバータユニット2が出力する直流電力を所望の電圧と周波数の交流電力に変換する。
なお、この変換された交流電力で電動機4は駆動される。電動機4は、速度検出器7を備えている。コンバータ制御装置5は、コンバータユニット2を制御する。インバータ制御装置6は、インバータユニット3を制御する。
【0019】
《コンバータユニット2》
図1において、コンバータユニット2は、コンバータ電力変換部21を備えている。
図1に示すように、コンバータユニット2は、3相(R相、S相、T相)に対応するコンバータ電力変換部21と、P配線40と、C配線41と、N配線42と、コンバータP側平滑コンデンサ22(平滑コンデンサ)と、コンバータN側平滑コンデンサ23(平滑コンデンサ)と、コンバータP側直流電圧検出器24と、コンバータN側直流電圧検出器25と、R相電流検出器26と、S相電流検出器27と、T相電流検出器28とを備えている。
U相電流検出器34、V相電流検出器35、W相電流検出器36は、交流電源1からコンバータ電力変換部21に入力する3相(R相、S相、T相)の、それぞれ、R相、S相、T相に流れる電流を検出する。
なお、3相(R相、S相、T相)に対応するコンバータ電力変換部21の具体的な構成は、図2Aを参照して後記する。
【0020】
コンバータユニット2は、いわゆる3レベルコンバータであり、コンバータ電力変換部21に入力した交流電力を、正の電位(第1電位)レベルと、中性点(零)電位(第2電位)レベルと、負の電位(第3電位)レベルとの直流電力に変換する。
正の電位レベルは、P配線40で接続され、中性点電位レベルはC配線41で接続され、負の電位レベルはN配線42で接続されている。
【0021】
コンバータP側平滑コンデンサ22は、P配線40とC配線41との間の直流電圧の変動を抑制する。
コンバータN側平滑コンデンサ23は、C配線41とN配線42との間の直流電圧の変動を抑制する。
コンバータP側直流電圧検出器24は、コンバータP側平滑コンデンサ22の端子間電圧を測定する。
コンバータN側直流電圧検出器25は、コンバータN側平滑コンデンサ23の端子間電圧を測定する。
【0022】
次に、コンバータ電力変換部21を構成する3つのコンバータ電力変換部21R,21S,21Tの具体的な構成について説明する。
図2Aは、本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るコンバータ電力変換部21の具体的な構成例を示す図である。
図2Aにおいて、それぞれ1相分に対応するR相、S相、T相のコンバータ電力変換部21R,21S,21Tは、それぞれ複数のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と複数のダイオードによって、交流を直流に変換するコンバータが構成されている。
コンバータ電力変換部21R,21S,21Tが3相の交流電力(電圧)をそれぞれ直流電力(電圧)に変換して、P配線(正の電位)40と、C配線(中性点電位)41と、N配線(負の電位)42とに供給する。
なお、図2Aにおいては、コンバータ電力変換部21R,21S,21Tにおいて、コンバータを構成する複数のIGBTを制御する制御回路については、記載を省略している。
【0023】
各コンバータ電力変換部21R,21S,21Tは、それぞれIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)からなる4個のトランジスタと、6個のダイオードで構成されている。4個のトランジスタ(第1~第4トランジスタ)は、P配線40とN配線42との間に直列に接続されている。
第1~第4トランジスタには、それぞれ逆並列のダイオード(第1~第4ダイオード)が接続されている。第1~第4トランジスタに内在する寄生ダイオードがある場合には、逆並列のダイオード(第1~第4ダイオード)は寄生ダイオードで兼用してもよい。
【0024】
第1トランジスタのコレクタは、P配線40に接続されている。第4トランジスタのエミッタは、N配線42に接続されている。第5ダイードと第6ダイオードは直列に接続され、第5ダイオードのカソードは、第1トランジスタと第2トランジスタの接続点に接続されている。第6ダイオードのアノードは、第3トランジスタと第4トランジスタの接続点に接続されている。第5ダイードのアノードと第6ダイオードのカソードの接続点は、C配線41に接続されている。
また、コンバータ電力変換部21R,21S,21Tの複数のトランジスタは、コンバータ制御装置5によって、統合的に制御されている。
【0025】
図2Aに示すように、R相の電力線は、コンバータ電力変換部21Rの第2トランジスタと第3トランジスタの接続点に接続されている。
S相の電力線は、コンバータ電力変換部21Sの第2トランジスタと第3トランジスタの接続点に接続されている。
T相の電力線は、コンバータ電力変換部21Tの第2トランジスタと第3トランジスタの接続点に接続されている。ただし、コンバータ電力変換部21R,21S,21Tの直流の電力線であるP配線40、C配線41、N配線42は、コンバータ電力変換部21R,21S,21Tで共用されている。
【0026】
前記のように、交流電源1である3相交流のR相、S相、T相は、対応する各コンバータ電力変換部21R,21S,21Tに別々に入力しているが、コンバータ電力変換部21R,21S,21Tで変換された直流電力側は共用化して用いられている。
すなわち、R相、S相、T相の3相交流電力(電圧)は、一つの直流電力(電圧)に変換される。3つのコンバータ電力変換部21R,21S,21Tは、コンバータ制御装置5(図1)によって統合的に制御されている。
【0027】
コンバータユニット2には、上述のようにR相電流検出器26、S相電流検出器27、T相電流検出器28が備えられ、それらが3相交流のR相、S相、T相に流れる電流を検出している。各電流検出器26,27,28で検出された電流検出値I,I,Iの信号は、コンバータ側異常判断器71を介してコンバータ制御装置5に入力される。直流電圧検出器24,25により検出された電圧検出値の信号は、コンバータ制御装置5に入力される。
なお、コンバータ制御装置5については、後記する。
【0028】
《インバータユニット3》
図1において、インバータユニット3は、インバータ電力変換部31を備えている。
図1に示すように、インバータユニット3は、3相(U相、V相、W相)に対応するインバータ電力変換部31と、P配線40と、C配線41と、N配線42と、インバータP側平滑コンデンサ32(平滑コンデンサ)と、インバータN側平滑コンデンサ33(平滑コンデンサ)と、U相電流検出器34と、V相電流検出器35と、W相電流検出器36とを備えている。
なお、3相(U相、V相、W相)に対応するインバータ電力変換部31の具体的な構成は、図2Bを参照して後記する。
【0029】
インバータユニット3は、いわゆる3レベルインバータであり、正の電位(第1電位)レベルと、中性点(零)電位(第2電位)レベルと、負の電位(第3電位)レベルとの直流電力を、電動機4用の交流電力に変換する。
インバータユニット3とコンバータユニット2との正の電位レベルはP配線40で接続され、中性点電位レベルはC配線41で接続され、負の電位レベルはN配線42で接続されている。
インバータP側平滑コンデンサ32は、P配線40とC配線41との間の直流電圧の変動を抑制する。
インバータN側平滑コンデンサ33は、C配線41とN配線42との間の直流電圧の変動を抑制する。
【0030】
また、U相電流検出器34、V相電流検出器35、W相電流検出器36は、インバータ電力変換部31が出力する3相(U相、V相、W相)の、それぞれ、U相、V相、W相に流れる電流を検出する。
【0031】
次に、インバータ電力変換部31を構成する3つのインバータ電力変換部31R,31S,31Tの具体的な構成について説明する。
図2Bは、本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るインバータ電力変換部31の具体的な構成例を示す図である。
図2Bにおいて、それぞれ1相分に対応するU相、V相、W相のインバータ電力変換部31U,31V,31Wは、それぞれ複数のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と複数のダイオードによって、交流を直流に変換するコンバータが構成されている。
【0032】
各インバータ電力変換部31U,31V,31Wは、IGBTからなる4個のトランジスタと、6個のダイオードで構成されている。インバータ電力変換部31U,31V,31WのIGBTからなる4個のトランジスタと6個のダイオードとを備えた構成は、図2Aで示したコンバータ電力変換部21R,21S,21Tの4個のトランジスタと6個のダイオードを備えた構成と、実質的に同一の構成である。そのため、ここでは重複する説明は省略する。
なお、複数のトランジスタは、インバータ制御装置6によって、統合的に制御されている。
【0033】
3つのコンバータ電力変換部21R,21S,21Tが3相交流電力(電圧)から直流電力(電圧)を生成するのに対して、3つのインバータ電力変換部31U,31V,31Wは、直流電力(電圧)から3相(U相、V相、W相)交流電力(電圧)を生成する。なお、R相、S相、T相の3相交流電力(電圧)と、U相、V相、W相の3相交流電力(電圧)とは、電圧や周波数が異なる。
【0034】
図1に示すように、コンバータ電力変換部21の3つのインバータ電力変換部31U,31V,31Wは、インバータ制御装置6によって統合的に制御されている。
インバータユニット3には、前述したように、U相電流検出器34、V相電流検出器35、W相電流検出器36が備えられ、それらが3相交流のU相、V相、W相に流れる電流を検出している。
電流検出器34,35,36で検出された電流検出値I,I,Iの信号は、インバータ側異常判断器72を介してインバータ制御装置6に入力される。なお、インバータ側異常判断器72、およびインバータ制御装置6については、後記する。
インバータ電力変換部31U,31V,31Wの出力は、電力変換装置100としての出力である。電力変換装置100の出力は、3相電動機である電動機4に直結される。
【0035】
《コンバータ制御装置5》
図1において、コンバータ制御装置5は、直流電圧指令発生器51と、直流電圧制御器52と、電流制御器53と、パルス生成器54とを備えて構成されている。
直流電圧指令発生器51は、コンバータユニット2から出力させる直流電圧の電圧値を示す直流電圧指令値を生成して、直流電圧制御器52に出力する。
直流電圧制御器52には、直流電圧指令発生器51からの直流電圧指令値と、直流電圧検出器24の検出したコンバータP側平滑コンデンサ22の端子間電圧と、直流電圧検出器25の検出したコンバータN側平滑コンデンサ23の端子間電圧とが入力される。
【0036】
直流電圧制御器52は、直流電圧指令発生器51からの直流電圧指令値と、直流電圧検出器24,25からの端子間電圧値とに基づいてコンバータ出力電流指令値を演算し、演算結果を電流制御器53に出力する。具体的には、直流電圧制御器52は、直流電圧検出器24,25のそれぞれから入力される直流電圧の検出値の合計値が直流電圧指令値と一致するように、コンバータ出力電流指令値を演算する。
【0037】
電流制御器53には、直流電圧制御器52からのコンバータ出力電流指令値と、電流検出器26,27,28で検出された電流検出値I,I,Iの推定値IRH,ISH,ITHとがコンバータ側異常判断器71より入力される。
電流制御器53は、電流検出器26,27,28から出力されるコンバータ出力電流に対応する電流検出値の推定値が、直流電圧制御器52から入力されるコンバータ出力電流指令値と一致するようにコンバータ電圧指令値を演算し、コンバータ電圧指令値をパルス生成器54に出力する。
【0038】
パルス生成器54は、入力されるコンバータ電圧指令値に基づいて、コンバータ電力変換部21R,21S,21Tの各スイッチング素子をオン・オフ制御するためのパルス信号を生成し、生成したパルス信号をコンバータ電力変換部21に出力する。
具体的には、パルス生成器54は、コンバータ電力変換部21R,21S,21Tによる出力電圧が、電流制御器53から入力されるコンバータ出力電圧指令値に一致するように、オン・オフ制御のパルス信号を生成する。
【0039】
上述のように、コンバータ制御装置5は、コンバータユニット2において、交流電力から変換される直流電力が所望の値となるように前記した各種演算処理を行い、コンバータ電力変換部21R,21S,21Tを制御する信号を出力する。
【0040】
《インバータ制御装置6》
図1において、インバータ制御装置6は、速度指令発生器61と、速度制御器62と、電流制御器63と、パルス生成器64とを備えて構成されている。
速度指令発生器61は、電動機4を動作させる速度を示す速度指令値を速度制御器62に出力する。
速度制御器62には、速度指令発生器61からの速度指令値と、速度検出器7が検出した電動機4の速度検出値とが入力される。
【0041】
速度制御器62は、電動機4に付随して備えられた速度検出器7から入力される速度検出値が、速度指令発生器61から入力される速度指令値と一致するようにインバータ出力電流指令値を演算し、インバータ出力電流指令値を電流制御器63に出力する。
電流制御器63には、インバータ側異常判断器72より入力される3相交流の出力電流を検出する電流検出器34,35,36からのインバータ出力電流検出値(電流検出値I,I,I)の推定値IRH,ISH,ITHと、速度制御器62からのインバータ出力電流指令値が入力される。
電流制御器63は、インバータ出力電流検出値I,I,Iの推定値IRH,ISH,ITHがインバータ出力電流指令値と一致するようにインバータ電圧指令値を演算する。そして、そのインバータ電圧指令値をパルス生成器64に出力する。
【0042】
パルス生成器64は、入力されるインバータ出力電圧指令値に基づいて、インバータ電力変換部31U,31V,31Wの各スイッチング素子をオン・オフ制御するためのパルス信号を生成する。
具体的には、パルス生成器64は、インバータ電力変換部31による出力電圧が、電流制御器63から入力されるインバータ出力電圧指令値に一致するように、オン・オフ制御のパルス信号を生成する。
【0043】
前記のように、インバータ制御装置6は、インバータユニット3において、電動機4の出力トルクや速度が所望の特性を満たすようにインバータ電力変換部31U,31V,31Wを制御する。
【0044】
<電力変換装置100における異常判断に関わる構成>
図1において、電力変換装置100は、異常判断に関わる構成として、コンバータ側異常判断器71と、インバータ側異常判断器72と、表示器73とを備える。
表示器73には、コンバータ側異常判断器71の出力信号およびインバータ側異常判断器72の出力信号が入力される。
表示器73は、例えば、液晶ディスプレイ等の情報を表示可能な表示装置で構成され、コンバータ側異常判断器71およびインバータ側異常判断器72の判断情報や、その他の各種情報を表示する。
【0045】
詳細な説明は後述するが、コンバータ側異常判断器71は、R相、S相、T相の3相交流の電流検出器26,27,28から入力される電流検出値I,I,Iに基づいて、電流検出器26,27,28および電流検出器26,27,28以外に起因する交流電流(例えば交流電源1)に異常があるか否かを判断する。
【0046】
また、インバータ側異常判断器72は、U相、V相、W相の3相交流の電流検出器34,35,36から入力される電流検出値I,I,Iに基づいて、電流検出器34,35,36および電流検出器34,35,36以外に起因する交流電流(例えば電動機4)に異常があるか否かを判断する。
なお、コンバータ側異常判断器71、およびインバータ側異常判断器72の処理は、例えば、図示しないプロセッサが、メモリに格納されたプログラムを実行することにより構成されている。
【0047】
《コンバータ側異常判断器71》
図3Aは、本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るコンバータ側異常判断器71の詳細なブロック構成を示す図である。
図3Aにおいて、コンバータ側異常判断器71は、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711、コンバータ側交流電流推定部712、コンバータ側交流電流異常判断部713を備えている。
R相電流検出器26、S相電流検出器27、T相電流検出器28で、それぞれ検出された電流検出値I,I,Iは、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711、コンバータ側交流電流推定部712のそれぞれに入力される。
【0048】
コンバータ側交流電流検出器異常判断部711は、R相電流検出器26、S相電流検出器27、T相電流検出器28の異常を診断する。そして、電流検出器の異常情報をコンバータ側交流電流推定部712、表示器73に出力する。
コンバータ側交流電流推定部712は、電流検出値I,I,Iとコンバータ側交流電流検出器異常判断部711から入力される電流検出器の異常情報とに基づき、コンバータ側交流電流を推定する。そして、推定した交流電流推定値IRH,ISH,ITHをコンバータ側交流電流異常判断部713およびコンバータ制御装置5に出力する。
コンバータ側交流電流異常判断部713は、交流電流推定値IRH,ISH,ITHに基づき、交流電流の異常を判断して、表示器73に出力する。
【0049】
図3Bは、本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るインバータ側異常判断器72の詳細なブロック構成を示す図である。
図3Bにおいて、インバータ側異常判断器72は、インバータ側交流電流検出器異常判断部721、インバータ側交流電流推定部722、インバータ側交流電流異常判断部723を備えている。
U相電流検出器34、V相電流検出器35、W相電流検出器36で、それぞれ検出された電流検出値I,I,Iは、インバータ側交流電流検出器異常判断部721、インバータ側交流電流推定部722のそれぞれに入力される。
【0050】
インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、U相電流検出器34、V相電流検出器35、W相電流検出器36の異常を診断する。そして、電流検出器の異常情報をインバータ側交流電流推定部722、表示器73に出力する。
インバータ側交流電流推定部722は、電流検出値I,I,Iとインバータ側交流電流検出器異常判断部721から入力される電流検出器の異常情報とに基づき、インバータ側交流電流を推定する。そして、推定した交流電流推定値IUH,IVH,IWHをインバータ側交流電流異常判断部723およびインバータ制御装置6に出力する。インバータ側交流電流異常判断部723は,交流電流推定値IUH,IVH,IWHに基づき、交流電流の異常を判断して、表示器73に出力する。
【0051】
なお、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711、コンバータ側交流電流推定部712、コンバータ側交流電流異常判断部713、インバータ側交流電流検出器異常判断部721、インバータ側交流電流推定部722、インバータ側交流電流異常判断部723の詳細については後述する。
【0052】
《表示器73》
図1に戻り、表示器(情報提示部)73は、例えば、液晶ディスプレイ等の情報を表示可能な表示装置であり、コンバータ側異常判断器71、およびインバータ側異常判断器72の情報、および、その他の各種情報を表示する。
【0053】
<インバータ側異常判断器72における異常判断処理>
図4は、図3Bのインバータ側異常判断器72における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。
以下において、図4のフローチャートにしたがって異常判断処理の手順を説明する。
【0054】
なお、図3Aに示したコンバータ側異常判断器71と、図3Bに示したインバータ側異常判断器72とは類似の構成を有しているので、以下では、コンバータ側異常判断器71、およびインバータ側異常判断器72における各処理の詳細説明に関して、インバータ側異常判断器72を代表として説明する。
また、詳しい説明は省略するが、コンバータ側異常判断器71に関連する異常判断についても、電流検出器34~36を電流検出器26~28に置き換え、インバータ側交流電流検出器異常判断部721、インバータ側交流電流推定部722、インバータ側交流電流異常判断部723を、それぞれコンバータ側交流電流検出器異常判断部711、コンバータ側交流電流推定部712、コンバータ側交流電流異常判断部713に置き替え、インバータ制御装置6をコンバータ制御装置5に置き換え、電動機4を交流電源1に置き換え、添え字U,V,WをR,S,Tに置き換えることで、同様に説明できる。
【0055】
《ステップS101》
図4において、インバータ側異常判断器72における異常判断処理が開始(スタート)されると、ステップS101に進む。
ステップS101では、インバータ側異常判断器72は、電流検出器34,35,36で検出される電流検出値I、I、Iのすべてがゼロであるか否かを判定する。
インバータ側異常判断器72が電流検出値I、I、Iのすべてがゼロである(Yes)と判定すると、ステップS102に進む。
一方、電流検出値I、I、Iの少なくとも一つがゼロでない場合(No)には、ステップS101からステップS103へ進む。
【0056】
《ステップS102》
ステップS101からステップS102へ進んだ場合には、ステップS102において、インバータ電力変換部31U,31V,31Wに異常があると判断する。
そして、インバータ側異常判断器72は、インバータ電力変換部31U,31V,31Wに異常があることを示す情報(例えば、「電力変換部異常」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力する。
ステップS102の処理が終了したならば、ステップS113に進む。なお、ステップS113の処理については、後述する。
【0057】
《ステップS103》
ステップS103では、インバータ側異常判断器72は、電流検出器34,35,36から出力される電流検出値I、I、Iのいずれかが継続的にゼロ(またはゼロに近い値)を出力しているか否かを判定する。
ステップS103で、電流検出値I、I、Iのいずれかが継続的にゼロである(Yes)と判定されると、ステップS104へ進む。
一方、ステップS103において、電流検出値I、I、Iのいずれも継続的にゼロでない(No)と判定されると、ステップS105へ進む。
【0058】
《ステップS104》
ステップS103でYesと判定された場合には、例えば、電流検出器34,35,36が利用している電流検出を行うための電流検出ループ(電流検出を行うための配線)に、断線や緩みなどによる異常が発生したと判断される。
ステップS103からステップS104へ進んだ場合には、ステップS104において、電流検出ループに異常があることを示す情報(例えば、「電流検出ループ」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力する。
ステップS104の処理が終了したならば、ステップS113に進む。なお、ステップS113の処理については、後述する。
【0059】
《ステップS105》
ステップS105では、インバータ側異常判断器72は、電流検出器に異常があるか否かを診断する。
ステップS105における電流検出器の異常検出方法の一例の詳細については図5図8を参照して後述する。
インバータ側異常判断器72は、電流検出器34,35,36のすべてが正常であると判断した場合(Yes)には、ステップS110へ進む。
一方、電流検出器34,35,36の少なくとも1つが異常であると判断した場合(No)はステップS105からステップS106へ進む。
【0060】
《ステップS106》
ステップS105からステップS106へ進んだ場合には、インバータ側異常判断器72は、電流検出器異常の影響を排除するように電流検出値を電流推定値に運転切替し、所定の時間経過させる。
そして、所定の時間経過後にステップS107へ進む。
なお、ステップS106の詳細については、図9図10を用いて後述する。
【0061】
《ステップS107》
ステップS107では、インバータ側異常判断器72は、電流検出器異常の影響を排除するように運転切替した電流推定値を用いて電流位相差が所定の範囲内であるか否かを診断する。
電流位相差の検出方法の一例の詳細については図11図12を用いて後述する。
インバータ側異常判断器72は、電流位相差が所定の範囲内であると判断した場合(Yes)には,ステップS108へ進む。
一方、電流位相差が所定の範囲外であると判断した場合(No)には、ステップS107からステップS109へ進む。
なお、図13図14を用いて後述するように、ステップS107では電流位相差の代わりに電流振幅を用いて、電流振幅が所定の範囲内であるか否かを診断しても良い。
【0062】
《ステップS108》
ステップS108では、インバータ側異常判断器72は、電流検出器は異常であり、交流電流は正常であると判断する。
そして、この判断を示す情報(例えば,「電流検出器異常かつ交流電流正常」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力する。
ステップS108の処理が終了したならば、ステップS113に進む。なお、ステップS113の処理については、後述する。
【0063】
《ステップS109》
ステップS109では、インバータ側異常判断器72は、電流検出器と交流電流の両方が異常であると判断する。
そして、この判断を示す情報(例えば,「電流検出器異常かつ交流電流異常」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力する。
ステップS109の処理が終了したならば、ステップS113に進む。なお、ステップS113の処理については、後述する。
【0064】
《ステップS110》
ステップS110では、インバータ側異常判断器72は、電流位相差が所定の範囲内であるか否かを診断する。
電流位相差の検出方法の一例の詳細については図11図12を用いて後述する。
インバータ側異常判断器72は、電流位相差が所定の範囲内であると判断した場合(Yes)には、ステップS111へ進む。
一方、電流位相差が所定の範囲外であると判断した場合(No)には、ステップS110からステップS111へ進む。
なお、図13図14を用いて後述するように、ステップS110では電流位相差の代わりに電流振幅を用いて,電流振幅が所定の範囲内であるか否かを診断しても良い。
【0065】
《ステップS111》
ステップS111では、インバータ側異常判断器72は、電流検出器は正常であり、交流電流は正常であると判断して、一連の異常判断処理のフロー処理を終了する(エンド)。
なお、この場合は、電流検出器および交流電流が正常であることを表示器73は、表示しない。
ただし、電流検出器および交流電流が正常であることを示す情報(例えば,「電流検出器正常かつ交流電流正常」という表示)を表示器73に表示させる場合には、表示指令を表示器73へ出力するようにしてもよい。
【0066】
《ステップS112》
ステップS112では、インバータ側異常判断器72は、電流検出器は正常でありと交流電流は異常であることを示す情報(例えば、「電流検出器正常かつ交流電流異常」という表示)を表示器73に表示させる指令を出力する。
ステップS112の処理が終了したならば、ステップS113に進む。
【0067】
《ステップS113》
ステップS113では、ステップS102、ステップS104、ステップS108、ステップS109、ステップS112の後を受けて、次の処理が実行される。
ステップS113において、インバータ側異常判断器72は、ユーザに点検を促す情報(例えば、「異常箇所を点検及び交換してください」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力する。
そして、一連の異常判断処理を終了(エンド)する。
【0068】
<フローチャートの判定処理による発明の効果に関する補足説明>
次に、図4のフローチャートにおける判定処理による発明の効果について、補足説明を付け加える。
電流検出器34,35,36のうち少なくとも1つが異常である場合、異常な電流検出器の信号を用いてインバータ制御装置6が制御されるため、パルス生成器64に出力するパルスには、異常な電流検出器の影響が含まれる。
したがって、電流検出器34,35,36の電流には、電流検出器異常の影響が含まれてしまい、電流検出器の異常と、電流検出器以外に起因する交流電流異常とを、区別できない。
【0069】
図4におけるステップS105で電流検出器が異常と診断した場合に、ステップS106で電流検出器異常の影響を排除するように運転切替する。この運転切替することで、異常な電流検出器の信号の影響を排除した状態でインバータ制御装置6が制御される。
また、運転切替によって、電流検出器34,35,36の電流には、電流検出器異常の影響が排除されるため、ステップS107で電流検出器以外に起因する交流電流異常有無を判断できる。
【0070】
<ステップS105のコンバータ側交流電流検出器異常判断部711およびインバータ側交流電流検出器異常判断部721の構成の一例>
コンバータ側交流電流検出器異常判断部711、およびインバータ側交流電流検出器異常判断部721は、キルヒホッフ電流則を活用した判断方法が望ましい。
すなわち、キルヒホッフ電流則により3相交流電流の真値の合計は0であるため、交流電流検出器の検出値合計が0であれば交流電流検出器は正常であり、0でなければ交流電流検出器が異常であると診断する方法が望ましい。
次に、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711およびインバータ側交流電流検出器異常判断部721の一例について説明する。
【0071】
《コンバータ側交流電流検出器異常判断部711》
図5は、図3Aにおけるコンバータ側交流電流検出器異常判断部711の一例の詳細を示すブロック図である。
図5において、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711は、加算器7111(第1の加算部)、乗算器7112R,7112S,7112T(第1の乗算部)、フィルタ7113R,7113S,7113T(第1のフィルタ)を備えている。
また、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711は、乗算器7114R,7114S,7114T(第3の乗算部)、加算器7115(第3の加算部)、フィルタ7116(第3のフィルタ)を備えている。
また、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711は、乗算器7114CR,7114CS,7114CT(第2の乗算部)、加算器7115C(第2の加算部)、フィルタ7116C(第2のフィルタ)、および異常度計算部7117を備えている。
【0072】
R相電流検出器26で検出された電流検出値Iは、加算器7111、乗算器7112R,7114R,7114CT,7114CSのそれぞれに入力される。
S相電流検出器27で検出された電流検出値Iは、加算器7111、乗算器7112S、7114S,7114CT,7114CRのそれぞれに入力される。
T相電流検出器28で検出された電流検出値Iは、加算器7111、乗算器7112T、7114T,7114CR,7114CSのそれぞれに入力される。
【0073】
加算器7111は、電流検出値I,I,Iの総和IC0(=I+I+I)を算出する。算出された総和IC0は、乗算器7112R,7112S,7112Tのそれぞれに入力される。
【0074】
乗算器7112Rは、電流検出値Iと総和IC0との積Dを算出する。
乗算器7112Sは、電流検出値Iと総和IC0との積Dを算出する。
乗算器7112Tは、電流検出値Iと総和IC0との積Dを算出する。
乗算器7112R,7112S,7112Tから出力された積D,D,Dは、各々対応する相のフィルタ7113R,7113S,7113Tに入力される。
【0075】
フィルタ7113Rは、積Dから交流成分を低減または除去して直流電流積Fを出力する。
なお、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711におけるフィルタ7113R,7113S,7113T,7116および7116Cは、入力信号に含まれる交流成分を低減または除去するものであるが、以下では単に「除去する」と記載する。
フィルタ7113Sは、積Dから交流成分を除去して直流電流積Fを出力する。
フィルタ7113Tは、積Dから交流成分を除去して直流電流積Fを出力する。
フィルタ7113R,7113S,7113Tから出力された直流電流積F,F,Fは、異常度計算部7117へ入力される。
【0076】
乗算器7114Rの第1入力端子および第2入力端子には、電流検出値Iがそれぞれ入力され、それらの入力の積すなわち電流検出値Iの自乗I が乗算器7114Rから出力される。
乗算器7114Sの第1入力端子および第2入力端子には、電流検出値Iがそれぞれ入力され、それらの入力の積すなわち電流検出値Iの自乗I が乗算器7114Sから出力される。
乗算器7114Tの第1入力端子および第2入力端子には電流検出値Iがそれぞれ入力され、それらの入力の積すなわち電流検出値Iの自乗I が乗算器7114Sから出力される。
【0077】
乗算器7114R,7114S,7114Tから出力された自乗I ,I ,I は、加算器7115に入力される。
加算器7115は、3つの自乗I ,I ,I の総和(I +I +I )を出力する。
加算器7115の出力(I +I +I )はフィルタ7116に入力される。
フィルタ7116は、総和(I +I +I )から交流成分を除去して、総和(I +I +I )の直流成分である自乗電流総和Hを異常度計算部7117へ出力する。
【0078】
電流検出値I,Iが入力される乗算器7114CTは、それらの積Iを出力する。
電流検出値I,Iが入力される乗算器7114CRは、それらの積Iを出力する。
電流検出値I,Iが入力される乗算器7114CSは、それらの積Iを出力する。
乗算器7114CR,7114CS,7114CTから出力された積I,I,Iは、それぞれ加算器7115Cに入力される。
【0079】
加算器7115Cは、3つの積I,I,Iの総和(I+I+I)を出力する。
加算器7115Cの出力(I+I+I)はフィルタ7116Cに入力される。
フィルタ7116Cは、総和(I+I+I)から交流成分を除去して、総和(I+I+I)の直流成分である交互電流積和Kを異常判断部7117へ出力する。
【0080】
異常度計算部7117は、入力された各種の電流積和(F,F,F,H,K)に基づいて、電流検出器26,27,28に異常があるか否かを判断する。なお、異常度計算部7117における異常の総合的な判断についての詳細は、後述するインバータ側交流電流検出器異常判断部721に備える異常度計算部7217の異常の総合的な判断と対応しているので、異常度計算部7217の異常の総合的な判断の説明で兼ねる。
【0081】
《インバータ側交流電流検出器異常判断部721》
図6は、図3Bにおけるインバータ側交流電流検出器異常判断部721の一例の詳細を示すブロック図である。
図6において、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、加算器7211(第1の加算部)、乗算器7212U,7212V,7212W(第1の乗算部)、フィルタ7213U,7213V,7213W(第1のフィルタ)を備えている。
また、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、乗算器7214U,7214V,7214W(第3の乗算部)、加算器7215(第3の加算部)、フィルタ7216(第3のフィルタ)を備えている。
また、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、乗算器7214CU,7214CV,7214CW(第2の乗算部)、加算器7215C(第2の加算部)、フィルタ7216C(第2のフィルタ)および異常度計算部7217を備えている。
【0082】
U相電流検出器34で検出された電流検出値Iは、加算器7211および乗算器7212U,7214U,7214CV,7214CWのそれぞれに入力される。
V相電流検出器35で検出された電流検出値Iは、加算器7211および乗算器7212V,7214V,7214CW,7214CUのそれぞれに入力される。
W相電流検出器36で検出された電流検出値Iは、加算器7211および乗算器7212W,7214W,7214CU,7214CVのそれぞれに入力される。
【0083】
加算器7211は、電流検出値I,I,Iの総和II0(=I+I+I)を算出する。算出された総和II0は、乗算器7212U,7212V,7212Wのそれぞれに入力される。
乗算器7212Uは、電流検出値Iと総和II0との積Dを算出する。
乗算器7212Vは、電流検出値Iと総和II0との積Dを算出する。
乗算器7212Wは、電流検出値Iと総和II0との積Dを算出する。
乗算器7212U,7212V,7212Wから出力された積D,D,Dは、各々対応する相のフィルタ7213U,7213V,7213Wに入力される。
【0084】
フィルタ7213Uは、積Dから交流成分を低減または除去して直流電流積Fを出力する。なお、インバータ側交流電流検出器異常判断部721におけるフィルタ7213U,7213V,7213W,7216および7216Cは、入力信号に含まれる交流成分を低減または除去するものであるが、以下では単に「除去する」と記載する。
フィルタ7213Vは、積Dから交流成分を除去して直流電流積Fを出力する。
フィルタ7213Wは、積Dから交流成分を除去して直流電流積Fを出力する。
フィルタ7213U,7213V,7213Wから出力された直流電流積F,F,Fは、異常度計算部7217へ入力される。
【0085】
乗算器7214Uの第1入力端子および第2入力端子には、それぞれ電流検出値Iが入力され、それらの入力の積すなわち電流検出値Iの自乗I が乗算器7214Uから出力される。
乗算器7214Vの第1入力端子および第2入力端子には、それぞれ電流検出値Iが入力され、それらの入力の積すなわち電流検出値Iの自乗I が乗算器7214Vから出力される。
乗算器7214Wの第1入力端子および第2入力端子には、それぞれ電流検出値Iが入力され、それらの入力の積すなわち電流検出値Iの自乗I が乗算器7214Wから出力される。
【0086】
乗算器7214U,7214V,7214Wから出力された自乗I ,I ,I は、それぞれ加算器7215に入力される。
加算器7215は、3つの自乗I ,I ,I の総和(I +I +I )を出力する。
加算器7215の出力(I +I +I )は、フィルタ7216に入力される。
フィルタ7216は、総和(I +I +I )から交流成分を除去して総和(I +I +I )の直流成分である自乗電流総和Hを異常度計算部7217へ出力する。
【0087】
電流検出値I,Iが入力される乗算器7214CWは、それらの入力の積Iを出力する。
電流検出値I,Iが入力される乗算器7214CUは、それらの入力の積Iを出力する。
電流検出値I,Iが入力される乗算器7214CVは、それらの入力の積Iを出力する。
乗算器7214CU,7214CV,7214CWから出力された積I,I,Iは、それぞれ加算器7215Cに入力される。
【0088】
加算器7215Cは、3つの積I,I,Iの総和(I+I+I)を出力する。
加算器7215Cの出力(I+I+I)は、フィルタ7216Cに入力される。
フィルタ7216Cは、総和(I+I+I)から交流成分を除去して、総和(I+I+I)の直流成分である交互電流積和Kを異常度計算部7217へ出力する。
【0089】
異常度計算部7217は、入力されたF,F,F,H,Kに基づいて、電流検出器34,35,36に異常があるか否かを判断する。なお、異常度計算部7217における異常判断の詳細については、後述する。
【0090】
<ステップS105におけるコンバータ側交流電流検出器異常判断部711、インバータ側交流電流検出器異常判断部721における各処理の詳細について>
図5,6に示したコンバータ側交流電流検出器異常判断部711およびインバータ側交流電流検出器異常判断部721における各構成の処理について、詳細に説明する。
【0091】
コンバータ側の電流検出器26,27,28の電流検出値I,I,Iと電流値の真値IRT,IST,ITTとの関係は、次式(1)~(3)で表せる。なお、G、G、Gは電流検出器26,27,28における検出ゲインを表す。
=IRT×G …(1)
=IST×G …(2)
=ITT×G …(3)
【0092】
同様に、インバータ側の電流検出器34,35,36の電流検出値I,I,Iと電流値の真値IUT,IVT,IWTとの関係は、次式(4)~(6)で表せる。なお、G,G,Gは電流検出器34,35,36における検出ゲインを表す。
=IUT×G …(4)
=IVT×G …(5)
=IWT×G …(6)
【0093】
また、実際に流れている電流の真値IRT,IST,ITTおよびIUT,IVT,IWTに関しては、キルヒホッフ電流則より次式(7)~(8)が成り立つ。
RT+IST+ITT=0 …(7)
UT+IVT+IWT=0 …(8)
【0094】
《電流検出器34,35,36に関する各種の量についての説明》
まず、インバータ側異常判断器72における異常判断の動作を説明する前に、電流検出器34,35,36の異常に関する各種の量について説明する。
図5に示したコンバータ側交流電流検出器異常判断部711と、図6に示したインバータ側交流電流検出器異常判断部721とは類似の構成を有している。そのため、以下では、交流電流検出器異常判断部711,721における各処理の詳細説明に関して、インバータ側交流電流検出器異常判断部721を代表として説明する。
なお、説明は省略するが、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711に関連する関係式についても、以下に記載のインバータ側交流電流検出器異常判断部721に関連する関係式において添え字U,V,WをR,S,Tに置き換えることで、同様に説明できる。
【0095】
U相,V相,W相の電流真値IUT,IVT,IWTは、例えば、電流真値の波形が正弦波であって、電流真値の振幅が3相ともにIIAで、各相の電流真値の正弦波波形の位相差が2π/3(ラジアン)である場合には、次式(9)~(11)で表される。
UT=IIA×cos(ωt) …(9)
VT=IIA×cos(ωt-2π/3) …(10)
WT=IIA×cos(ωt-4π/3) …(11)
ただし、IIAは前述したように電流振幅、tは時間、ω=2πfは角周波数(fは周波数)である。
【0096】
また、式(4)~(6)および式(9)~(11)より、U相、V相、W相の電流検出値I,I,Iは、式(12)~式(14)で表される。
=GIA×cos(ωt) …(12)
=GIA×cos(ωt-2π/3) …(13)
=GIA×cos(ωt-4π/3) …(14)
【0097】
電流検出器34,35,36のすべてが正常な場合には、検出ゲインG,G,Gの値は1となり、各電流検出器34,35,36の検出値I,I,Iと、真値IUT,IVT,IWTとは等しくなる。
一方、電流検出器34,35,36が異常な場合(例えば、検出ゲイン異常が発生した場合)には、検出値I,I,Iと真値IUT,IVT,IWTとが一致しない。そのため、検出ゲインG,G,Gの値は、1以外(例えば、0.9や1.1)となる。
電流検出器34,35,36が正常か異常かは、検出ゲインG,G,Gの値で判断することができる。
【0098】
<絶対異常度A,A,Aの導入>
ここで、電流検出器34,35,36の絶対的な異常度合いを示す情報として、絶対異常度A,A,Aを導入する。
[定義]
絶対異常度A,A,Aは、検出ゲインG,G,Gに対して次式(15)~(17)が成立するように定義される。
=1+A …(15)
=1+A …(16)
=1+A …(17)
【0099】
絶対異常度A,A,Aが0の場合は、対応する検出ゲインG,G,Gが1となり、電流検出器34,35,36が正常であることを表している。
一方、絶対異常度A,A,Aが0以外の値の場合は、対応する検出ゲインG,G,Gが1以外の値となり、電流検出器34,35,36が異常であることを表している。
したがって、絶対異常度A,A,Aは、それらの値が0から離れるほど異常の影響が大きいという、異常度合いを表す情報である。
【0100】
絶対異常度A,A,Aを用いると、上述した式(12)~(14)で示した電流検出値I,I,Iは、次式(18)~(20)で表される。
=(1+A)×IIA×cos(ωt) …(18)
=(1+A)×IIA×cos(ωt-2π/3) …(19)
=(1+A)×IIA×cos(ωt-4π/3) …(20)
ここで、U相電流検出器34とV相電流検出器35とW相電流検出器36の全てが正常である場合にはG=G=G=1であるので、次式(21)が成立する。
+G+G=3 …(21)
【0101】
一方、U相電流検出器34、V相電流検出器35およびW相電流検出器36のうち1つが異常である場合、「G≠1かつG=G=1」、「G≠1かつG=G=1」および「G≠1かつG=G=1」のいずれかであるので、式(21)が成立せずG+G+G≠3となる。
【0102】
また、U相電流検出器34とV相電流検出器35とW相電流検出器36のうち2つまたは3つが異常である場合、G+G+G=3またはG+G+G≠3のいずれかとなる。なお、G+G+G=3は、異常な電流検出器の検出ゲインの1からのズレが打ち消しあった場合に成り立つものである。ズレが打ち消しあわない場合には、G+G+G≠3となる。
【0103】
<相対検出ゲインGU0,GV0,GW0の導入>
ここで、ゲインの和が常に3になるような相対検出ゲインGU0,GV0,GW0および変数Bを新たに導入する。
[定義]
相対検出ゲインGU0,GV0,GW0および変数Bは、次式(22),(23)~(25)が成立するように設定される量であるとして、定義される。
U0+GV0+GW0=3 …(22)
=GU0×cos(ωt) …(23)
=GV0×cos(ωt-2π/3) …(24)
=GW0×cos(ωt-4π/3) …(25)
【0104】
式(23)~(25)および式(12)~(14)の比較より、検出ゲインG,G,Gと相対検出ゲインGU0,GV0,GW0との間には、次式(26)~(28)が成立する。
U0=GIA …(26)
V0=GIA …(27)
W0=GIA …(28)
【0105】
式(26)~(28)および式(22)より、変数Bは、検出ゲインG,G,G,および電流振幅IIAを用いて、次式(29)で表される。
=(G+G+G)×IIA/(GU0+GV0+GW0)
=(G+G+G)×IIA/3 …(29)
【0106】
<相対異常度AU0,AV0,AW0の導入>
ここで、電流検出器34,35,36の相対異常度AU0,AV0,AW0を導入する。
[定義]
相対異常度AU0,AV0,AW0は、次式(30)~(32)が成立するように設定される量である、と定義する。
U0=1+AU0 …(30)
V0=1+AV0 …(31)
W0=1+AW0 …(32)
【0107】
前記の相対異常度AU0,AV0,AW0を用いると、前述した式(23)~(25)は次式(33)~(35)で表される。
=(1+AU0)×B×cos(ωt) …(33)
=(1+AV0)×B×cos(ωt-2π/3) …(34)
=(1+AW0)×B×cos(ωt-4π/3) …(35)
また、式(22)および式(30)~(32)より、相対異常度AU0,AV0,AW0の和に関して次式(36)が成立する。
U0+AV0+AW0=0 …(36)
したがって,相対異常度AU0,AV0,AW0とは、異常度合いを表す絶対異常度A、A、Aを式(36)が成立するように規格化したものであるといえる。
【0108】
一方、絶対異常度A,A,Aに関しては、電流検出器34,35,36の全てが正常である場合(G=G=G=1)は、式(15)~(17)および式(21)よりA+A+A=0となるが、電流検出器34,35,36のうち1つ以上が異常である場合は、A+A+A=0またはA+A+A≠0のいずれかとなる。
【0109】
<インバータ側交流電流検出器異常判断部721の動作>
前述したように、図5に示したコンバータ側交流電流検出器異常判断部711と、図6に示したインバータ側交流電流検出器異常判断部721とは類似の構成になっている。そのため、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711およびインバータ側交流電流検出器異常判断部721の動作に関して、図6のインバータ側交流電流検出器異常判断部721を代表として説明する。
なお、以下ではインバータ側交流電流検出器異常判断部721の動作について説明するが、添え字U、V、WをR、S、Tに置き換えることで、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711の動作についても同様に説明できる。
【0110】
前記した式(9)~(11)に示す電流が流れている場合について、インバータ側交流電流検出器異常判断部721における各出力II0,D,D,D,F,F,F,I +I +I ,H,I+I+IおよびKについて説明する。
なお、以下の説明においては、前記の式(12)~式(14)における電流検出値に直流成分(オフセット成分)が含まれないことを仮定している。
電流検出値に直流成分(オフセット成分)が含まれている場合には,例えばI,I,Iに含まれる直流成分を除去または減少させる図示しないフィルタを用いて、電流検出値I,I,Iに代えてI,I,Iに含まれる直流成分を除去または減少させる図示しないフィルタ(第4のフィルタ)の出力を用いても良い。
【0111】
まず、図6の加算器7211から出力される総和II0(=I+I+I)は、次式(37)で表される。
I0=I+I+I
= B×(AU0×cos(ωt)+AV0×cos(ωt-2π/3)
+AW0×cos(ωt-4π/3)) …(37)
【0112】
乗算器7212U,7212V,7212Wの出力D,D,Dは、次式(38)~(40)で表される。なお、式(38)~(40)において、記号√(X)はX1/2を表している。記号√(X)の表記と意味は、他の式に於いても同様とする。
【0113】
=(I+I+I)×I
=1/2×B U0×(1+AU0)×(1+cos(2ωt))
-1/4×B V0×(1+AU0)×(1+cos(2ωt)-√(3)×sin(2ωt))
-1/4×B W0×(1+AU0)×(1+cos(2ωt)+√(3)×sin(2ωt))
…(38)
【0114】
=(I+I+I)×I
=-1/4×B U0×(1+AV0)×(1+cos(2ωt)-√(3)×sin(2ωt))
+1/2×B V0×(1+AV0)×(1+cos(2ωt-4π/3))
-1/4×B W0×(1+AV0)×(1-2×cos(2ωt))
…(39)
【0115】
=(I+I+I)×I
=-1/4×B U0×(1+AW0)×(1+cos(2ωt)+√(3)×sin(2ωt))
-1/4×B V0×(1+AW0)×(1-2×cos(2ωt))
+1/2×B W0×(1+AW0)×(1+cos(2ωt-8π/3))
…(40)
【0116】
フィルタ7213U,7213V,7213Wは、入力されるD、D、Dに対してそれらに含まれる交流成分を除去するフィルタ処理を行い、D、D、Dの直流成分であるF,F,Fを出力するものである。なお、式(38)~(40)より、脈動が含まれない理想的な場合においては、基本周波数ωの2倍の2ω成分を除去できれば、直流成分を出力できる。したがって、フィルタ7213U,7213V,7213Wに求められる最低限の性能は、2ω成分を除去することである。
式(38)~(40)で表されるD、D、Dに対して、交流成分を除去するフィルタ処理を行うと、すなわち、三角関数の周期変化分を除去すると、フィルタ7213U,7213V,7213Wの出力F,F,Fは、次式(41)~(43)で表される。
【0117】
=1/4×BI2×(2AU0-AV0-AW0)×(1+AU0) …(41)
=1/4×BI2×(2AV0-AW0-AU0)×(1+AV0) …(42)
=1/4×BI2×(2AW0-AU0-AV0)×(1+AW0) …(43)
さらに、式(41)~(43)に前述した式(36)を代入して整理すると、フィルタ7213U,7213V,7213Wの出力F,F,Fは次式(44)~式(46)で表される。
=3/4×B U0×(1+AU0) …(44)
=3/4×B V0×(1+AV0) …(45)
=3/4×B W0×(1+AW0) …(46)
【0118】
加算器7215の出力(I +I +I )は、次式(47)で表される。
+I +I =B ×(1+AU0)×(1+cos(2ωt))/2
+B ×(1+AV0)×(1+cos(2ωt-4π/3))/2
+B ×(1+AW0)×(1+cos(2ωt-8π/3))/2
…(47)
【0119】
フィルタ7216は、入力されるI +I +I に対して、それらに含まれる交流成分を除去するフィルタ処理を行い、I +I +I の直流成分であるHを出力する。
前記の式(47)で表されるI +I +I に対して、交流成分を除去するフィルタ処理を行うと、すなわち、三角関数の周期変化分を除去すると、第2系統のフィルタ726の出力Hは、次式(48)で表される。なお、計算過程において前述の式(36)を用いた。
=3/2×B +1/2×B ×(AU0 +AV0 +AW0 ) …(48)
【0120】
加算器7215Cの出力(I+I+I)は次式(49)で表される。
+I+I
=-1/4×B ×(1+AU0)×(1+AV0)×(1+cos(2ωt)-√(3)×sin(2ωt))
-1/4×B ×(1+AV0)×(1+AW0)×(1+2×cos(2ωt))
-1/4×B ×(1+AW0)×(1+AU0)×(1+cos(2ωt)+√(3)×sin(2ωt))
…(49)
【0121】
フィルタ7216Cは、入力されるI+I+Iに対して、それらに含まれる交流成分を除去するフィルタ処理を行い、I+I+Iの直流成分であるKを出力する。
前記の式(49)で表されるI+I+Iに対して、交流成分を除去するフィルタ処理を行う、すなわち、三角関数の周期変化分を除去すると、フィルタ7216Cの出力Kは、次式(50)で表される。なお、計算過程において前述の式(36)を用いた。
=-3/4×B -1/4×B ×(AU0V0+AV0W0+AW0U0)
…(50)
【0122】
<異常度計算部7217における処理>
図6に示すインバータ側交流電流検出器異常判断部721の異常度計算部7217における異常判断処理では、以下に説明する規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0が用いられる。
図7は、異常度計算部7217における各種処理を説明するブロック図である。
異常度計算部7217は、規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0AW0C0に関係する演算処理を行う演算部72171~72175を備えている。
異常度計算部7217は、フィルタ7213U,7213V,7213W,7216,7216Cから出力される直流成分F,F,F,H,Kに基づいて、規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0を算出する。
演算部72171~72175で表記された式(53)、(57)~(59)、および式(61)~(63)の各式について、次に説明する。
【0123】
《演算部72171》
前述のHに関する式(48)およびKに関する式(50)のそれぞれを前述した式(36)を用いて整理すると、次式(51),(52)が得られる。
2×H=3×B +2×B ×(AV0 +AW0 +AV0W0) …(51)
8×K=-6×B +2×B ×(AV0 +AW0 +AV0W0) …(52)
式(51),式(52)より,相対異常度AU0,AV0,AW0を消去すると次式(53)が成立する。
=(2H-8K)/9 …(53)
すなわち、演算部72171は、フィルタ7216,7216Cから入力された直流成分H,Kから、式(53)によりB を算出する。
【0124】
《演算部72172~72174》
前述の式(44)~(46)のそれぞれを整理すると、次式(54)~(56)に示すように相対異常度AU0,AV0,AW0に関する2次方程式がそれぞれ得られる。
3B U0 +3B U0-4F=0 …(54)
3B V0 +3B V0-4F=0 …(55)
3B W0 +3B W0-4F=0 …(56)
【0125】
式(54)~(56)のそれぞれに2次方程式の解の公式を適用して求めた解をAU0C,AV0C,AW0Cとすると、AU0C,AV0C,AW0Cは、次式(57)~(59)で与えられる。
U0C=(-3B +√(9B +48B ))/(6B ) …(57)
V0C=(-3B +√(9B +48B ))/(6B ) …(58)
W0C=(-3B +√(9B +48B ))/(6B ) …(59)
式(57)~(59)で計算されるAU0C,AV0C,AW0C(相対異常度AU0,AV0,AW0の計算値)を、ここでは異常度計算値と呼ぶことにする。
前述のように(例えば、式(33)~(35))、電流が正弦波電流であることを前提としているので、式(57)~(59)で計算される異常度計算値AU0C,AV0C,AW0Cは、電流脈動が無い理想状態におけるU相,V相,W相の異常度を表している。
【0126】
図7において、演算部72172は、フィルタ7213Uから入力される直流成分Fと演算部72171で算出されるB とに基づいて、式(57)によりU相の異常度合いを表す異常度計算値AU0Cを算出する。
演算部72173は、直流成分FとB とに基づいて、式(58)によりV相の異常度合いを表す異常度計算値AV0Cを算出する。
演算部72174は、直流成分FとB とに基づいて、式(59)によりW相の異常度合いを表す異常度計算値AW0Cを算出する。
【0127】
なお、2次方程式の解の公式において√の直前の符号はプラスまたはマイナスであるが、式(57)~(59)ではプラスとした。例えば、異常度ゼロの場合には、式(57)の右辺はゼロとならなければならない。異常度ゼロの場合、式(44)で計算されるFはゼロとなる。仮に、式(57)の√の直前の符号はマイナスとした場合、式(57)の右辺の分子にF=0を代入すると(-3B -√(9B ))となり、式(57)の右辺はゼロにならない。一方、式(57)の√の直前の符号はプラスとした場合、式(57)の右辺の分子にF=0を代入すると(-3B +√(9B ))となり、式(57)の右辺はゼロになる。
【0128】
<レアショートが発生し、3相電流が不平衡となる場合について>
インバータ側交流電流検出器異常判断部721における電流検出器34,35,36の異常や異常度合いの算出にあたっては、3相電流が平衡していることを前提として演算していた。
そのため、例えば、3相の負荷である電動機における固定子巻線の被膜に損傷が進み、レアショートが発生した場合には、負荷が小さいレアショートが発生した相に多くの電流が流れて3相電流が不平衡となる。
その結果、前記した式(9)~(11)における電流真値の振幅が各相で不一致となり、式(9)~(11)における各相の位相差についても2π/3(ラジアン)とは異なる値となる。
【0129】
しかし、交流電流検出器が正常かつ3相不平衡が発生した場合において、図6に示したインバータ側交流電流検出器異常判断部721の構成を用いると加算器7211の出力が0になる。
そのため、フィルタ7213U,7213V,7213Wの出力F,F,Fは0となって、式(57)~(59)で計算されるAU0C,AV0C,AW0Cも0となる。
すなわち、電流真値の振幅が各相で不一致となったとしても、電流検出器(交流電流検出器)の異常と誤診断をしない。
【0130】
また、交流電流検出器の異常、および3相不平衡の両方が同時に発生した場合においても、加算器7211,乗算器7212U,7212V,7212W,フィルタ7213U,7213V,7213Wを含む図6のインバータ側交流電流検出器異常判断部721の構成によって、式(57)~(59)で計算される電流検出器の異常度に含まれる3相不平衡に由来する誤差は小さくなる。
したがって、前記の式(9)~(11)の仮定が正しくない場合においても、図6に示した構成により異常度を少ない誤差で検出できる。
【0131】
《演算部72175》
図7に示した演算部72175(第1の演算部)の入力信号である異常度計算値AU0C,AV0C,AW0Cは、電流脈動が無い理想状態におけるU相,V相,W相の異常度を表している。そのため、電流波形に脈動成分が含まれない場合には、異常度計算値AU0C,AV0C,AW0Cの和は、相対異常度AU0,AV0,AW0の場合と同様にゼロとなる。
すなわち、電流波形に脈動成分が含まれない場合は、AU0C+AV0C+AW0C=0となる。一方、電流波形に脈動成分が含まれる場合は、AU0C+AV0C+AW0C>0となる。
【0132】
<規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0の導入>
そこで、次式(60)が成立するような規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0を新たに導入する。
[定義]
規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0は、次式(60)~(63)が成立するように設定される量である、と定義する。
U0C0+AV0C0+AW0C0=0 …(60)
U0C0=AU0C-(AU0C+AV0C+AW0C)/3 …(61)
V0C0=AV0C-(AU0C+AV0C+AW0C)/3 …(62)
W0C0=AW0C-(AU0C+AV0C+AW0C)/3 …(63)
【0133】
各式(61)~(63)の右辺第2項は、式(60)を満たすようにするための異常度計算値AU0C,AV0C,AW0Cに対する補正項と考えることができる。
電流波形に脈動成分が含まれAU0C+AV0C+AW0C>0である場合でも、規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0であればAU0C0+AV0C0+AW0C0=0が成立している。
【0134】
図7の演算部72175(第1の演算部)は、演算部72172~72174で算出された異常度計算値AU0C,AV0C,AW0Cに基づいて、式(61)~(63)により規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0を算出する。
【0135】
なお、電動機4の運転周波数が可変などの理由により電流検出器に流れる電流が可変周波数である場合には、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、図6で用いられているフィルタの時定数(またはカットオフ周波数)を、電動機4の運転周波数が低速なときでもフィルタ入力に含まれる交流成分を大きく除去できるように、運転周波数に応じて可変とすることが望ましい。
【0136】
図1では記載を省略したが、インバータ側交流電流検出器異常判断部721には、運転周波数の情報(速度情報)として、速度指令発生器61から速度指令が入力される。また、速度指令に代えて、速度検出器7で検出した電動機4の速度検出値を用いても良い。
あるいは、低速運転時においてもフィルタ入力に含まれる交流成分を大きく減少させるようにフィルタの時定数を予め設定してもよい。
また、電動機4の運転周波数が極めて低速である場合、フィルタの時定数が極めて大きくなるため、電動機4の運転周波数が低速である場合には後述の異常判断を行わないようにしてもよい。
【0137】
<インバータ側交流電流検出器異常判断部721における異常判断処理>
図8は、図6に示したインバータ側交流電流検出器異常判断部721における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。以下では、図8のフローチャートにしたがって異常判断処理の手順を説明する。
【0138】
《ステップS1001》
インバータ側交流電流検出器異常判断部721における異常判断処理が開始(スタート)されると、ステップS1001に進む。
ステップS1001では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、前述した演算部72171~72175による演算処理を行い規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0を計算する。
【0139】
《ステップS1002》
ステップS1002は、すべての電流検出器34~36が正常か否かを判定するステップである。
ステップS1002において、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、算出した規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0に関して、|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|の内の最大値が予め定めた所定値α(例えば3%)より大きいか否かを判定する。
【0140】
すなわち,式(64)が成立するか否かを判定する。なお、MAX(a,b,c)は、値a,b,cの内で最大のものを表す。
MAX(|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|) > 所定値α …(64)
【0141】
ステップS1002において、式(64)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS1002からステップS1003へ進む。
一方、ステップS1002において式(64)が成立しない(No)と判定されると、すなわち、|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|の全てが所定値α以下の場合には、ステップS1002からステップS1011へ進む。
なお、ステップS1011の処理については、後述する。
【0142】
《ステップS1003》
ステップS1003では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、次式(65)が成立するか否かを判定する。
([MAX]-2×[MIN])/[MAX] > 所定値β …(65)
式(65)において、[MAX]は、MAX(|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|)を、[MIN]はMIN(|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|)を表す。
なお、MIN(a,b,c)は、値a,b,cの内で最小のものを表す。また、所定値βは、予め設定された値(例えば50%)である。
【0143】
ステップS1003において、式(65)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS1003からステップS1004へ進む。
一方、式(65)が成立しない(No)と判定されると、ステップS1003からステップS1005へ進む。
なお、詳細は後述するが、式(65)は、3つの電流検出器34~36の内の1個だけが異常であるか否かを判定する式であり、式(65)が成立しない場合(No)には1個だけが異常で、式(65)が成立する場合(Yes)には2または3個が異常であると判定される。
【0144】
なお、前記した所定値α,βは、一定または可変のいずれであっても良い。
例えば、原理上、電流=0の場合には電流検出器の異常度合いが見えなくなり、異常診断が困難になる。そのような電流値が小さい場合に誤判断しないように、検出電流値I,I,Iの大きさに応じて所定値α,βを可変にしてもよい。
【0145】
また、ステップS1003の式(65)は、3つの要素(AU0C0,AV0C0,AW0C0)を類似度の高い2つの要素と、それら2つの要素とは類似度が低い1つの要素とに分類できるか否かを判定する式である。
式(65)は、判定方法の一例であって、式(65)を用いる代わりに、例えば、任意のクラスタリング分析手法を用いて同様の判定を行うようにしても良い。
【0146】
《ステップS1004》
ステップS1004では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、電流検出器34,35,36の内の複数が異常であると判断する。
また、ステップS1004では、複数の電流検出器に異常があることを示す情報(例えば、「複数電流検出器異常」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
ステップS1004の処理が終了したならば、ステップS1012に進む。
【0147】
なお、複数の電流検出器34,35,36の異常度の平均値が0、すなわち、相対異常度AU0,AV0,AW0の計算値の平均値が0(すなわち、(AU0C+AV0C+AW0C)/3=0)、であると仮定した場合、式(61)~(63)からAU0C0=AU0C、AU0C0=AU0C、AU0C0=AU0Cが得られる。
そのため、電流検出器の異常度推定値AU1,AV1,AW1は規格化異常度計算値AU0C0,AV0C0,AW0C0を用いてAU1=AU0C0,AV1=AV0C0,AW1=AW0C0のように表すことができる。
【0148】
あるいは,相対異常度AU0,AV0,AW0の計算値の平均J(t)=(AU0C+AV0C+AW0C)/3を推定し,電流検出器の異常度推定値AU1,AV1,AW1は、以下の式のように表すことができる。
U1(t)=(AU0C0(t)+1)×J(t)-1
V1(t)=(AV0C0(t)+1)×J(t)-1
W1(t)=(AW0C0(t)+1)×J(t)-1
【0149】
ただし、前記のJ(t)の算出については、例えばステップS1005と同運転条件において、すべての電流検出器が正常な場合の複数の前記電流検出器の検出ゲインの平均値と電流振幅との積に相当する物理量B(t)を予め記憶しておき、ステップS1004におけるB(t)と比較することで、
J(t)=B(t)/B(t)
により算出できる。
【0150】
《ステップS1005》
ステップS1005では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、MAX(|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|)が、|AU0C0|と等しいか否かを判定する。
すなわち、次の式(66)が成立するか否かを判定する。
MAX(|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|)=|AU0C0| …(66)
ステップS1005において式(66)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS1005からステップS1006へ進む。
一方、式(66)が成立しない(No)と判定されると、ステップS1005からステップS1007へ進む。
【0151】
《ステップS1006》
ステップS1006では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、U相電流検出器34の異常と判断する。
また、ステップS1006では、U相電流検出器34に異常があることを示す情報(例えば、「U相電流検出器異常」という表示)を表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
ステップS1006の処理が終了したならば、ステップS1012へ進む。
【0152】
なお、V相電流検出器35およびW相電流検出器36の異常度の推定値AV1,AW1がAV1=AW1=0であると仮定した場合、U相電流検出器34の異常度の推定値AU1は、次式(67)で計算することができる。
U1=(3×AU0C0)/(2-AU0C0) …(67)
【0153】
式(67)は、例えば、以下のようにして推定することができる。前記した式(26)と式(29)から次の式(67a)が得られる。
=GU0×(G+G+G)/3 …(67a)
式(67a)は、絶対異常度A,A,Aおよび相対異常度AU0を用いて表すと次の式(67b)となる。
1+A=(1+AU0)×(A+A+A+3)/3 …(67b)
【0154】
また、A=A=0であると仮定した場合、次式(67c)が得られる。
1+A=(1+AU0)×(A+3)/3
=(3×AU0)/(2-AU0) …(67c)
式(67c)の右辺の相対異常度AU0の代わりに規格化異常度計算値AU0C0を用いたものを絶対異常度Aの推定値であるとすれば、前記した式(67)が得られる。
【0155】
《ステップS1007》
ステップS1007では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|の内で最大のものが|AV0C0|であるか否か、すなわち、次の式(68)が成立するか否かを判定する。
MAX(|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|)=|AV0C0| …(68)
ステップS1007において式(68)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS1007からステップS1008へ進む。一方、式(68)が成立しない(No)と判定されると、ステップS1007からステップS1009へ進む。
【0156】
《ステップS1008》
ステップS1008では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、V相電流検出器35の異常と判断する。
ステップS1008では、V相電流検出器35に異常があることを示す情報(例えば、「V相電流検出器異常」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
ステップS1008の処理が終了したならば、ステップS1012へ進む。
【0157】
なお、U相電流検出器34およびW相電流検出器36の異常度の推定値AU1,AW1がAU1=AW1=0であると仮定した場合、V相電流検出器35の異常度の推定値AV1は、次式(69)で計算することができる。式(69)は、上述した式(67)の場合と同様にして得られる。
V1=(3×AV0C0)/(2-AV0C0) …(69)
【0158】
《ステップS1009》
ステップS1009では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|の内で最大のものが|AW0C0|であるか否か、すなわち、次の式(70)が成立するか否かを判定する。
MAX(|AU0C0|,|AV0C0|,|AW0C0|)=|AW0C0| …(70)
ステップS1009において式(70)が成立すると判定(Yes)されると、ステップS1009からステップS1010へ進む。
【0159】
一方、式(70)が成立しないと判定(No)されると、ステップS1009からステップS1011へ進む。
ただし、式(66)と式(68)と式(70)より、式(66)と式(68)が成立しない場合は、式(70)が成立するため、ステップS1009はYesになる。
したがって、S1007がNoであった場合に、ステップS1009の処理を行わずにステップS1010へ進んでも良い。
【0160】
《ステップS1010》
ステップS1010では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、W相電流検出器36の異常と判断する。また、ステップS1010では、W相電流検出器36に異常があることを示す情報(例えば、「W相電流検出器異常」)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
ステップS1010の処理が終了したならば、ステップS1012へ進む。
なお、U相電流検出器34およびV相電流検出器35の異常度の推定値AU1,AV1がAU1=AV1=0であると仮定した場合、W相電流検出器36の異常度の推定値AW1は、次式(71)で表される。なお、式(71)の算出は、前記の式(67)の場合と同様にして得られる。
W1=(3×AW0C0)/(2-AW0C0) …(71)
【0161】
《ステップS1011》
ステップS1011では、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、U相電流検出器34、V相電流検出器35、W相電流検出器36のすべての電流検出器が正常であると判断する。
そして、ステップS1012に進む。
【0162】
《ステップS1012》
ステップS1012では、ステップS1004、ステップS1006、ステップS1008、ステップS1010、ステップS1011の後を受けて、次の処理が実行される。
ステップS1012では、異常判断部727は、電流検出器の異常度推定値(例えばAU1,AV1,AW1)および電流検出器の異常判断情報(U相電流検出器異常判断情報,V相電流検出器異常判断情報,W相電流検出器異常判断情報)をインバータ側交流電流推定部722に出力する。
そして、一連の異常判断処理を終了(エンド)する。
【0163】
なお、前記のフローチャートにおいては、インバータ側異常判断器72の構成を例に作用効果を説明したが、コンバータ側異常判断器71についても概ね同様の作用効果を生じる。
【0164】
<ステップS105におけるコンバータ側交流電流検出器異常判断部711、インバータ側交流電流検出器異常判断部721の別の方法>
前記したように、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711およびインバータ側交流電流検出器異常判断部721は、キルヒホッフ電流則を活用した判断方法が望ましい。
すなわち、キルヒホッフ電流則により3相交流電流の真値の合計は0であるため、交流電流検出器の検出値合計(加算器7211の出力)が0であれば、交流電流検出器は正常である。また、加算器7211の出力が0でなければ、交流電流検出器が異常であると診断する方法が望ましい。
【0165】
例えば、図6において,電流検出器34,35,36および加算器7211の出力に基づき電流検出器34,35,36の異常を判断しても良い。
まず、加算器7211の出力が所定の値を上回る場合において、電流検出器34の位相、電流検出器35の位相、電流検出器36の位相、加算器7211の出力の位相を例えばフーリエ変換により計算する。
【0166】
次に、加算器7211の位相と電流検出器34との位相差、加算器7211の位相と電流検出器35との位相差、加算器7211の位相と電流検出器36との位相差を計算し、これらの位相差の計算の中で、位相差が0(ラジアン)またはπ(ラジアン)に最も近いものを選択する。
【0167】
そして、加算器7211の位相と電流検出器34との位相差が最も0(ラジアン)またはπ(ラジアン)に最も近い場合、電流検出器34が異常であると診断する。
そして、加算器7211の位相と電流検出器35との位相差が最も0(ラジアン)またはπ(ラジアン)に最も近い場合、電流検出器35が異常であると診断する。
そして、加算器7211の位相と電流検出器36との位相差が最も0(ラジアン)またはπ(ラジアン)に最も近い場合、電流検出器36が異常であると診断できる。
【0168】
<ステップS106におけるインバータ側交流電流推定部722)の1番目の例>
ステップS106におけるインバータ側交流電流推定部722の1番目の例について、図9を参照して説明する。
図9は、本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るインバータ側異常判断器72におけるインバータ側交流電流推定部722の構成例を示す図である。なお、図9のインバータ側異常判断器72は、図3Bのインバータ側異常判断器72に概ね対応している。
【0169】
図9において、インバータ側交流電流推定部722は、3相交流のU相、V相、W相に対応する複数の電流検出器34,35,36からの電流検出値I,I,Iに基づいて、異常を示す電流検出器が正常な場合に検出されるべき本来の電流検出値を推定する。
インバータ側交流電流推定部722における本来の電流検出値を推定する方法としては、前述の式(8)で示した関係、すなわち、各電流検出器が正常な状態であれば、インバータ側の電流検出器34,35,36の電流検出値を加算した合成電流値はゼロとなるという関係を利用する。
この合成電流値はゼロとなるという関係によって、いずれか一つの電流検出器が異常である場合には、健全な側の2つの電流検出器の電流検出値を加算した値をゼロから減算することにより、異常な電流検出器の正確な電流検出値を推定することができる。
【0170】
<インバータ側交流電流推定部722の構成例>
次に、インバータ側交流電流推定部722の具体的な構成および動作の一例を説明する。
前記したように、図9は、インバータ側交流電流推定部722を含む一部の構成の一例を示すブロック図であって、インバータ側交流電流推定部722とインバータ側交流電流検出器異常判断部721とインバータ制御装置6との関係を示している。
図9において、インバータ側交流電流推定部722およびインバータ側交流電流検出器異常判断部721には、電流検出器34,35,36の電流検出値I,I,Iが入力される。
【0171】
インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、図8のフローチャートに基づき、電流検出器34,35,36のいずれかに異常が生じているか否かを判定する。
インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、電流検出器34,35,36のいずれかが異常であると判定すると、異常な電流検出器を示す異常情報をインバータ側交流電流推定部722へ出力する。
例えば、U相電流検出器34が異常であると判定した場合、U相電流検出器34が異常であることを示すU相電流検出器異常判断情報が出力される。
【0172】
インバータ側交流電流推定部722は、U相電流検出器異常判断情報が入力されている場合には、V相電流検出器35の電流検出値IとW相電流検出器36の電流検出値Iとの和をゼロから減算して、U相電流検出器34が正常な場合に検出されると推定される推定値IUHを算出する。
そして、算出された推定値IUHを、インバータ側交流電流推定部722の選択部722aに入力する。
【0173】
U相電流検出器34の電流検出値Iおよび推定値-I-Iが入力される選択部722aは、U相電流検出器異常判断情報の入力がある場合には推定値-I-Iを選択して出力する。
また、選択部722aは、U相電流検出器異常判断情報の入力がない場合には電流検出値Iを選択して出力する。
そして、インバータ側交流電流推定部722は、U相電流検出器異常判断情報が入力されている場合には、電流検出値IVH=I,IWH=Iおよび推定値IUH=-I-Iをインバータ制御装置6へ出力する。
一方、U相電流検出器異常判断情報が入力されていない場合には、インバータ側交流電流推定部722は、電流検出値IUH=I,IVH=I,IWH=Iをインバータ制御装置6へ出力する。
【0174】
このような構成により、U相電流検出器34に異常があった場合においても、電流検出値Iに代えて、適切な推定値IUHを出力することができる。
その結果、出力される電流検出値I,Iおよび推定値IUHに基づいて、例えば、暫定的に運転動作を継続する「しのぎ運転」を行うことができる。
なお、V相電流検出器35またはW相電流検出器36に異常がある場合においても、同様の処理動作が行われ、電流検出値Iに代えて適切な推定値IVHが、または、電流検出値Iに代えて適切な推定値IWHが出力される。
なお、異常と判断されていない前記電流検出器の電流検出値と、前記交流電流推定部で推定した電流検出値とに基づいて、運転動作を継続する場合もあるし、また、電流検出器の電流検出値に代えて、前記交流電流推定部で推定した複数の電流検出値に基づいて、運転動作を継続する場合もある。
【0175】
<コンバータ側交流電流推定部712の構成例>
コンバータ側交流電流推定部712に関してもインバータ側交流電流推定部722の場合と同様の構成とされ、コンバータ側交流電流推定部712においてU相をR相に、V相をS相に、W相をT相に読み替えた構成とすればよい。
コンバータ側交流電流推定部712は、3相交流のR相、S相、T相に対応する複数の電流検出器26,27,28からの電流検出値I,I,Iに基づいて、異常を示す電流検出器が正常な場合に検出されるべき本来の電流検出値を推定する。
本来の電流検出値を推定する方法は、インバータ側交流電流推定部722における場合と同様である。
【0176】
<ステップS106におけるインバータ側交流電流推定部722の2番目の例>
ステップS106におけるインバータ側交流電流推定部722の2番目の例について、図10を参照して説明する。
図10は、本発明の第1実施形態の電力変換装置に係るインバータ側異常判断器72におけるインバータ側交流電流推定部722の第2の構成例を示す図である。
インバータ側交流電流推定部722の第2の構成例では、インバータ側交流電流推定部722の構成を、図10に示す構成に置き換える。
【0177】
そして、インバータ側交流電流検出器異常判断部721からインバータ側交流電流推定部722へ出力される異常度情報として、各電流検出器の異常度の推定値が入力される。
異常度の推定値としては、例えば、図8のステップS1005に記載の推定値AU1,AV1,AW1が用いられる。
インバータ側交流電流推定部722は、入力された電流検出値I,I,Iおよび絶対異常度の推定値AU1,AV1,AW1に基づいて、電流検出器34,35,36が正常と仮定した場合の電流検出値として、交流電流の推定値IUH,IVH,IWHを次式(72)~(74)のように計算する。
【0178】
UH=I×(1+AU1) …(72)
VH=I×(1+AV1) …(73)
WH=I×(1+AW1) …(74)
そして、インバータ側交流電流推定部722は、算出された交流電流の推定値IUH,IVH,IWHをインバータ制御装置6に出力する。
【0179】
なお、コンバータ側交流電流推定部712については、前記の説明のU相をR相に、V相をS相に、W相をT相に読み替えた構成とすればよい。
すなわち、コンバータ側交流電流推定部712は、入力された電流検出値I,I,Iおよび異常度の推定値AR1,AS1,AT1に基づいて、交流電流の推定値IRH,ISH,ITHを計算し、推定値IRH,ISH,ITHをコンバータ制御装置5に出力する。
【0180】
<ステップS107およびステップS110におけるインバータ側交流電流異常判断部723の1番目の例>
図4におけるステップS107およびステップS110において、インバータ側交流電流異常判断部723は交流電流の推定値IUH,IVH,IWHの位相差を検出する。
なお、ステップS110においては,インバータ側交流電流推定部722(図9)おける信号の切替を行っていないため、IUH=I,IVH=I,IWH=Iである。
なお、交流電流の推定値IUH,IVH,IWHを、振幅と位相差を用いて、次式(75)~(77)のように定義する。
【0181】
UH=IU0×cos(ωt) …(75)
VH=IV0×cos(ωt-θUV) …(76)
WH=IW0×cos(ωt-θUV-θVW) …(77)
【0182】
以上の式(75)~(77)において、IU0,IV0,IW0は、それぞれ交流電流の推定値IUH,IVH,IWHの電流振幅であり、θUVはIUHとIVHの位相差であり、θVWはIVHとIWHの位相差である。
WHとIUHの位相差をθWUとすると、θUV≒θVW≒θWU≒2π/3である場合、次式(78)が成立する。
θWU=2π-θUV-θVW …(78)
位相差θUV,θVW,θWUを求めるための簡易的な方法の一例を以下に記載する。
【0183】
図11は、インバータ側交流電流異常判断部723の構成の一例を示す図である。
図11に位相差を求めるための簡易的な方法の一例を示す。
図11において、インバータ側交流電流異常判断部723は、乗算器7231(7231U,7231V,7131W)、乗算器7232(7232CU,7232CV,7232CW)、フィルタ7233(7233U,7233V,7233W)、フィルタ7234(7234CU,7234CV,7234CW)、位相差計算部7235を備えて構成されている。
【0184】
交流電流の推定値IUH,IVH,IWHを前記の式(75)~(77)のように定義される場合に、乗算器7231U,7231V,7131Wの出力は、次式(79)~(81)で表される。
UH =1/2×IU0 (1+cos(2ωt)) …(79)
VH =1/2×IV0 (1+cos(2ωt-2θUV)) …(80)
WH =1/2×IW0 (1+cos(2ωt-2θUV-2θVW)) …(81)
【0185】
式(79)~(81)で表されるIUH 、IVH 、IWH に対して、高周波成分を除去するフィルタ処理を行うと、すなわち、三角関数の周期変化分を除去すると、フィルタ7233U,7233V,7233Wの出力FUU,FVV,FWWは、次式(82)~(84)で表される。
UU=1/2×IU0 …(82)
VV=1/2×IV0 …(83)
WW=1/2×IW0 …(84)
【0186】
また、交流電流の推定値IUH,IVH,IWHを前述の式(75)~(77)のように定義される場合には、乗算器7232CU,7232CV,7232CWの出力は、次式(85)~(87)で表される。
UHVH=1/2×IU0V0(cos(2ωt-θUV) +cos(θUV)) …(85)
VHWH=1/2×IV0W0(cos(2ωt-2θUV-θVW) +cos(θUV)) …(86)
WHUH=1/2×IW0U0(cos(2ωt-θUV-θVW) +cos(θUV+θVW))
…(87)
【0187】
式(85)~(87)で表されるIUHVH、IVHWH、IWHUHに対して、高周波成分を除去するフィルタ処理を行うと、すなわち、三角関数の周期変化分を除去すると、フィルタ7234CU,7234CV,7234CWの出力FUV,FVW,FWUは次式(88)~(90)で表される。
UV=1/2×IU0V0×cos(θUV) …(88)
VW=1/2×IV0W0×cos(θVW) …(89)
WU=1/2×IW0U0×cos(θWU) …(90)
【0188】
したがって、式(82)~(84)、式(88)~(90)より、cos(θUV),cos(θVW),cos(θWU)は、フィルタ7233と7234の出力で、次式(91)~(93)にように表される。
cos(θUV)= FUV/√(FUU×FVV) …(91)
cos(θVW)= FVW/√(FVV×FWW) …(92)
cos(θWU)= FWU/√(FWW×FUU) …(93)
【0189】
また、位相差は、次式(94)~(96)で表される。
θUV=acos(FUV/√(FUU×FVV)) …(94)
θVW=acos(FVW/√(FVV×FWW)) …(95)
θWU=acos(FWU/√(FWW×FUU)) …(96)
【0190】
前記のように(例えば、式(75)~(77))、交流電流の推定値IUH,IVH,IWHが正弦波電流であることを前提としているので、式(94)~(96)で計算される位相差θUV,θVW,θWUは、電流脈動が無い理想状態におけるU相、V相、W相の位相差を表している。
交流電流の推定値IUH,IVH,IWHに脈動成分が含まれる場合、式(94)~(96)から求まるθUV,θVW,θWUを用いて計算するθUV,θVW,θWUがθUV+θVW+θWU≠2πとなる。
【0191】
そこで、次式(97)~(100)が成立するような規格化位相差θUV1,θVW1,θWU1を新たに導入する。
θDIF=(θUV+θVW+θWU-2π)/3…(97)
θUV1=θUV-θDIF …(98)
θVW1=θVW-θDIF …(99)
θWU1=θWU-θDIF …(100)
【0192】
UH+IVH+IWH=0を満たす場合には、θUV1,θVW1,θWU1をのうちθVW1が最小であればIUHの振幅が最大であり、θWU1が最小であればIVHの振幅が最大であり、θUV1が最小であればIWHの振幅が最大である。
したがって,位相差θUV1,θVW1,θWU1を比較することにより、レアショートが発生した可能性のある相,すなわち電流振幅が最大となる相を検出可能である。
【0193】
<インバータ側交流電流異常判断部723における異常判断処理>
図12は、図11に示したインバータ側交流電流異常判断部723における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。以下では、図12のフローチャートにしたがって異常判断処理の手順を説明する。
【0194】
《ステップS2001》
インバータ側交流電流異常判断部723における異常判断処理が開始(スタート)されると、ステップS2001に進む。
ステップS2001では、インバータ側交流電流異常判断部723は、前述の式(98)~(100)により規格化位相差θUV1,θVW1,θWU1を計算する。
【0195】
《ステップS2002》
ステップS2002は、すべての電流が正常か否かを判定するステップであり、インバータ側交流電流異常判断部723は、算出した規格化位相差θUV1,θVW1,θWU1に関して、θUV1,θVW1,θWU1内の最小値が予め定めた所定値γ1(例えば、0.98×2π/3)より小さいか否かを判定する。
すなわち,式(101)が成立するか否かを判定する。なお、MIN(a,b,c)は値a,b,cの内で最小のものを表す。
MIN(θUV1,θVW1,θWU1) < 所定値γ1 …(101)
【0196】
ステップS2002において、式(101)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS2002からステップS2003へ進む。
一方、ステップS2002において、式(101)が成立しない(No)と判定されると、すなわち、規格化位相差θUV1,θVW1,θWU1の全てが所定値γ1以上の場合、ステップS2002からステップS2009へ進む。
なお、ステップS2009の処理については、後述する。
【0197】
《ステップS2003》
ステップS2003では、インバータ側交流電流異常判断部723は、規格化位相差θUV1,θVW1,θWU1において、MIN(θUV1,θVW1,θWU1)が、θVW1と等しいか否かを判定する。
すなわち、次の式(102)が成立するか否かを判定する。
MIN(θUV1,θVW1,θWU1)=θVW1 …(102)
ステップS2003において式(102)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS2003からステップS2004へ進む。
一方、式(102)が成立しない(No)と判定されると、ステップS2003からステップS2005へ進む。
【0198】
《ステップS2004》
ステップS2004では、インバータ側交流電流異常判断部723は、U相電流が最大と判断する。
ステップS2004では、U相電流が最大であることを示す情報(例えば、「U相電流最大」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
なお、ステップS2004ではU相電流が最大であることから、U相回路のレアショートが進行する可能性があると判断してもよい。
ステップS2004の処理が終了したならば、ステップS2010へ進む。
【0199】
《ステップS2005》
ステップS2005では、インバータ側交流電流異常判断部723は、MIN(θUV1,θVW1,θWU1)が、θWU1と等しいか否かを判定する。すなわち、次の式(103)が成立するか否かを判定する。
MIN(θUV1,θVW1,θWU1)=θWU1 …(103)
ステップS2005において式(103)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS2005からステップS2006へ進む。
一方、式(103)が成立しない(No)と判定されると、ステップS2005からステップS2007へ進む。
【0200】
《ステップS2006》
ステップS2006では、インバータ側交流電流異常判断部723は、V相電流が最大と判断する。
ステップS2006では、V相電流が最大であることを示す情報(例えば、「V相電流最大」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
なお、ステップS2006ではV相電流が最大であることから、V相回路のレアショートが進行する可能性があると判断してもよい。
ステップS2006の処理が終了したならば、ステップS2010へ進む。
【0201】
《ステップS2007》
ステップS2007では、インバータ側交流電流異常判断部723は、MIN(θUV1,θVW1,θWU1)が、θUV1と等しいか否かを判定する。すなわち、次の式(104)が成立するか否かを判定する。
MIN(θUV1,θVW1,θWU1)=θUV1 …(104)
【0202】
ステップS2007において、式(104)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS2007からステップS2008へ進む。
一方、式(104)が成立しない(No)と判定されると、ステップS2007からステップS2009へ進む。
ただし、式(102)と式(103)と式(104)より、式(102)と式(103)が成立しない場合は、式(104)が成立するため、ステップS2007は(Yes)になる。したがって,S2005が(No)であった場合に、ステップS2007の処理を行わずにステップS2008へ進んでも良い。
【0203】
《ステップS2008》
ステップS2008では、インバータ側交流電流異常判断部723は、W相電流が最大と判断する。
ステップS2008では、W相電流が最大であることを示す情報(例えば、「W相電流最大」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
なお、ステップS2008ではW相電流が最大であることから、W相回路のレアショートが進行する可能性があると判断してもよい。
ステップS2008の処理が終了したならば、ステップS2010へ進む。
【0204】
《ステップS2009》
ステップS2009では、インバータ側交流電流異常判断部723は、3相電流が平衡しており正常であると判断する。
【0205】
《ステップS2010》
ステップS2010では、ステップS2004、ステップS2006、ステップS2008、ステップS2010の後を受けて、次の処理が実行される。
ステップS2010では、インバータ側交流電流異常判断部723は、規格化位相差θUV1,θVW1,θWU1および電流の異常判断情報(U相電流最大,V相電流最大,W相電流最大,3相電流平衡)を表示器73に出力する。
そして、一連の異常判断処理を終了する。
【0206】
なお、以上において、インバータ側交流電流異常判断部723の構成を例に作用効果を説明したが、コンバータ側交流電流異常判断部713についても同様の作用効果を生じる。
【0207】
また、インバータ側交流電流異常判断部723とコンバータ側交流電流異常判断部713を共通の構成として、交流電流異常判断部(713,723)と表記し、図12で示したフローチャートで動作する交流電流異常判断部を有する電力変換装置の構成の概要は次のように記載できる。
すなわち、「電力変換装置における交流電流異常判断部は、複数の相の交流電流の規格化位相差を算出し、複数の前記規格化位相差の最小値が予め定めた所定値よりも大きい場合には、各相の電流は正常と判断し、複数の前記規格化位相差の最小値が予め定めた所定値よりも小さい場合には、複数の前記規格化位相差の最小値と、各相の規格化位相差とを順に比較し、複数の前記規格化位相差の最小値と所定の相の規格化位相差が等しい場合には、当該の相の電流の振幅が最大と判断し、当該の相のレアショート発生リスクが高いと判断する、ことを特徴とする。」
【0208】
<ステップS107およびステップS110におけるインバータ側交流電流異常判断部723の2番目の例>
図4におけるステップS107およびステップS110において、インバータ側交流電流異常判断部723は、交流電流の推定値IUH,IVH,IWHの位相差ではなく、振幅を検出してもよい。
すなわち、前述の式(75)~(77)の振幅IU0,IV0,IW0を検出しても良い。
【0209】
図13に振幅(IU0,IV0,IW0)を求めるための簡易的な方法の一例を示す。
図13は、インバータ側交流電流異常判断部723の構成の他の例を示す図である。
図13において、インバータ側交流電流異常判断部723は、乗算器7231(7231U,7231V,7131W)、フィルタ7233(7233U,7233V,7233W),および振幅計算部7236から構成される。
すなわち、図11における乗算器7232(7232CU,7232CV,7232CW)、フィルタ7234(7234CU,7234CV,7234CW)を削除して構成されている。
【0210】
交流電流の推定値IUH,IVH,IWHを前記の式(75)~(77)のように定義される場合、前述の式(82)~(84)より、振幅IU0,IV0,IW0の推定値IU1,IV1,IW1は、式(105)~(107)で表される。
U1=√(2FUU) …(105)
V1=√(2FVV) …(106)
W1=√(2FWW) …(107)
振幅の推定値(振幅推定値)IU1,IV1,IW1のうちIU1が最大であればIUHの振幅が最大であり、IV1が最大であればIVHの振幅が最大であり、IW1が最大であればIWHの振幅が最大である。
したがって,振幅の推定値IU1,IV1,IW1を比較することによって、レアショートが発生した可能性のある電流振幅が最大となる相を検出可能である。
【0211】
<インバータ側交流電流異常判断部723における異常判断処理>
図14は、図13に示したインバータ側交流電流検出器異常判断部723における異常判断処理の一例を示すフローチャートである。以下では、図14のフローチャートにしたがって異常判断処理の手順を説明する。
【0212】
《ステップS3001》
インバータ側交流電流異常判断部723における異常判断処理が開始(スタート)されると、ステップS3001に進む。
ステップS3001では、インバータ側交流電流異常判断部723は、前述の式(105)~(107)により振幅推定値IU1,IV1,IW1を計算する。
【0213】
《ステップS3002》
ステップS3002は、すべての電流が正常か否かを判定するステップであって、インバータ側交流電流異常判断部723は、算出した振幅推定値IU1,IV1,IW1に関して、IU1,IV1,IW1内の最大値が予め定めた所定値γ(例えば、1.05×(IU1+IV1+IW1)/3)より大きいか否かを判定する。
すなわち、次の式(108)が成立するか否かを判定する。なお、MAX(a,b,c)は値a,b,cの内で最大のものを表す。
MAX(IU1,IV1,IW1) > 所定値γ …(108)
【0214】
ステップS3002において式(108)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS3002からステップS3003へ進む。
一方、ステップS3002において、式(108)が成立しない(No)と判定されると、すなわち、振幅推定値IU1,IV1,IW1の全てが所定値γ以下の場合、ステップS3002からステップS3009へ進む。
なお、ステップS3009の処理については、後述する。
【0215】
《ステップS3003》
ステップS3003では、インバータ側交流電流異常判断部723は、次の式(109)のMAX(IU1,IV1,IW1)が、IU1と等しいか否かを判定する。すなわち、式(102)が成立するか否かを判定する。
MAX(IU1,IV1,IW1)=IU1 …(109)
ステップS3003において式(109)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS3003からステップS3004へ進む。
一方、式(109)が成立しない(No)と判定されると、ステップS3003からステップS3005へ進む。
【0216】
《ステップS3004》
ステップS3004では、インバータ側交流電流異常判断部723は、U相電流が最大と判断する。
ステップS3004では、U相電流が最大であることを示す情報(例えば、「U相電流最大」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
なお、ステップS3004ではU相電流が最大であることから、U相回路のレアショートが進行する可能性があると判断してもよい。
ステップS3004の処理が終了したならば、ステップS3010へ進む。
【0217】
《ステップS3005》
ステップS3005では、インバータ側交流電流異常判断部723は、次の式(110)のMAX(IU1,IV1,IW1)が、IV1と等しいか否かを判定する。すなわち、式(103)が成立するか否かを判定する。
MAX(IU1,IV1,IW1)=IV1 …(110)
ステップS3005において式(110)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS3005からステップS3006へ進む。
一方、式(110)が成立しない(No)と判定されると、ステップS3005からステップS3007へ進む。
【0218】
《ステップS3006》
ステップS3006では、インバータ側交流電流異常判断部723は、V相電流が最大と判断する。
ステップS3006では、V相電流が最大であることを示す情報(例えば、「V相電流最大」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
なお、ステップS3006ではV相電流が最大であることから、V相回路のレアショートが進行する可能性があると判断してもよい。
ステップS3006の処理が終了したならば、ステップS3010へ進む。
【0219】
《ステップS3007》
ステップS3007では、インバータ側交流電流異常判断部723は、次の式(111)のMAX(IU1,IV1,IW1)が、IW1と等しいか否かを判定する。すなわち、式(111)が成立するか否かを判定する。
MAX(IU1,IV1,IW1)=IW1 …(111)
【0220】
ステップS3007において式(104)が成立する(Yes)と判定されると、ステップS3007からステップS3008へ進む。
一方、式(111)が成立しない(No)と判定されると、ステップS3007からステップS3009へ進む。ただし,式(109)と式(110)と式(111)より,式(109)と式(110)が成立しない場合は式(111)が成立するため、ステップS3007は(Yes)になる。したがって,S3005が(No)であった場合にステップS3007の処理を行わずにステップS3008へ進んでも良い。
【0221】
《ステップS3008》
ステップS3008では、インバータ側交流電流異常判断部723は、W相電流が最大と判断する。
ステップS3008では、W相電流が最大であることを示す情報(例えば、「W相電流最大」という表示)を表示器73に表示させる指令を、表示器73へ出力してもよい。
なお、ステップS3008ではW相電流が最大であることから、W相回路のレアショートが進行する可能性があると判断してもよい。
ステップS3008の処理が終了したならば、ステップS3010へ進む。
【0222】
《ステップS3009》
ステップS3009では、インバータ側交流電流異常判断部723は、3相電流が平衡しており正常であると判断する。
【0223】
《ステップS3010》
ステップS3010では、ステップS3004、ステップS3006、ステップS3008、ステップS3010の後を受けて、次の処理が実行される。
ステップS3010では、インバータ側交流電流異常判断部723は、振幅推定値IU1,IV1,IW1および電流の異常判断情報(U相電流最大,V相電流最大,W相電流最大,3相電流平衡)を表示器73に出力する。
そして、一連の異常判断処理を終了(エンド)する。
【0224】
なお、上記では、インバータ側交流電流異常判断部723の構成を例に作用効果を説明したが、コンバータ側交流電流異常判断部713についても同様の作用効果を生じる。
【0225】
なお、以上のステップS3001~S3010の工程は、「図4のステップS107およびステップS110におけるインバータ側交流電流異常判断部723の2番目の例」として、図4におけるステップS107およびステップS110において、交流電流異常判断部723は、交流電流の推定値IUH,IVH,IWHの位相差ではなく、振幅を検出して実行する場合のフローチャートである。
【0226】
また、インバータ側交流電流異常判断部723とコンバータ側交流電流異常判断部713を共通の構成として、交流電流異常判断部(713,723)と表記し、図14で示したフローチャートで動作する交流電流異常判断部を有する電力変換装置の構成の概要は次のように記載できる。
すなわち、「電力変換装置における交流電流異常判断部は、複数の相の交流電流の振幅を検出し、該振幅から各相の振幅推定値を算出し、複数の前記振幅推定値の最大値が予め定めた所定値よりも小さいか等しい場合には、各相の電流は正常と判断し、複数の前記振幅推定値の最大値が予め定めた所定値よりも大きい場合には、複数の前記振幅推定値の最大値と、各相の振幅推定値とを順に比較し、複数の振幅推定値の最大値と所定の相の振幅推定値が等しい場合には、当該の相の電流の振幅が最大と判断し、当該の相のレアショートが進行する可能性があると判断する、ことを特徴とする。」
【0227】
<ステップS107およびステップS110におけるインバータ側交流電流異常判断部723に関する他の実施方法>
図11において規格化位相差θUV1,θVW1,θWU1を計算する代わりに,IUH,IVH,IWHを周波数ωに関してフーリエ変換し、フーリエ変換した各相の電流位相成分に基づき位相差推定値θUV,θVW,θWUを計算してもよい。
また、図13において振幅推定値IU1,IV1,IW1を計算する代わりに、交流電流の推定値IUH,IVH,IWHの電流実効値を計算し、電流実効値を用いて異常判断してもよい。
また,図13において振幅推定値IU1,IV1,IW1を計算する代わりに,交流電流の推定値IUH,IVH,IWHをフーリエ変換して周波数ωに関する各相の振幅の大きさを計算し、各相の振幅の大きさを用いて異常判断しても良い。
【0228】
<第1実施形態の効果>
本発明によれば、電流検出器の異常と電流検出器以外に起因する交流電流異常を区別して検出可能な電力変換装置を提供できる。
また、3相の負荷である電動機にレアショートが発生した場合においても、電流検出器の異常と誤診断をしない。
また、交流電流検出器の異常、および3相不平衡の両方が同時に発生した場合においても、異常度を少ない誤差で検出できる。
【0229】
≪第2実施形態:電力変換装置≫
本発明の第2実施形態に係る電力変換装置について、図15を参照して説明する。
図15は、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置102の構成の一例を示す図である。
なお、図15において、図1に示す第1の実施の形態に係る電力変換装置100と同様な構成については同一の符号を付す。電力変換装置101では、図1に示した電力変換装置100における3レベルのコンバータユニット2およびインバータユニット3を、図15に示す2レベルのコンバータユニット2Bおよびインバータユニット3Bに置き換えている。
【0230】
《2レベルのコンバータユニット2B》
図15の電力変換装置101においては、2レベルのコンバータユニット2Bとインバータユニット3Bとしているため、各コンバータユニット2Bとインバータユニット3Bの回路が簡略化されている。
例えば、トランジスタ数が削減されるとともに、図1における中性点(零)電位のC配線(41)が不要となり、正の電位のP配線40と負の電位のN配線42のみとなっている。図1におけるC配線41は無いので、直流電圧を検出する直流電圧検出器は、コンバータ側の平滑コンデンサ22,23の電極間の電位を検出する1台の直流電圧検出器29によって構成されている。
【0231】
図15において、コンバータユニット2Bにおけるコンバータ電力変換部21BR,21BS,21BTは、IGBTからなる2個のトランジスタと2個のダイオードで構成されている。
2個のトランジスタは直列に接続されており、第1トランジスタのコレクタがP配線40に接続され、第2トランジスタのエミッタがN配線42に接続されている。
2個のトランジスタのそれぞれには、逆並列にダイオードが接続されている。
【0232】
なお、図15では、コンバータ電力変換部21Bとして、3つのコンバータ電力変換部(21BR,21BS,21BT)を代表して表記しているが、第1実施形態の電力変換装置100におけるコンバータ電力変換部21(図1)やインバータ電力変換部31(図1)が、実際には、図2A図2Bで示すように、3相交流のR相、S相、T相に対応して、3つのコンバータ電力変換部(21R,21S,21T)や、3相交流のU相、V相、W相に対応して、3つのインバータ電力変換部(31U,31V,31W)で構成されているように、図15におけるコンバータ電力変換部21Bやインバータ電力変換部31Bは、3台分を簡略化して表記している。
【0233】
また、3つのコンバータ電力変換部(21BR,21BS,21BT)の直流の電力線であるP配線40、N配線42は、コンバータ電力変換部(21BR,21BS,21BT)において共用されている。すなわち、R相、S相、T相の3相交流電力(電圧)は、共通の一つの直流電力(電圧)に変換される。
また、3つのコンバータ電力変換部(21BR,21BS,21BT)は、コンバータ制御装置5によって統合的に制御されている。
【0234】
コンバータユニット2Bには、R相電流検出器26,S相電流検出器27、T相電流検出器28が備えられおり、それぞれ3相交流のR相、S相、T相に流れる電流を検出している。
また、図15に示すコンバータユニット2Bにおける平滑コンデンサ22,23は、図1に示したコンバータユニット2における平滑コンデンサ22と平滑コンデンサ23をそのまま継承して表記したものである。ただし、C配線41(中性点電位)が無いので、平滑コンデンサ22と平滑コンデンサ23を1個のコンデンサにまとめてもよい。
なお、図15に示すように、平滑コンデンサ22と平滑コンデンサ23を直列接続した場合には、一体化したコンデンサとしての静電容量は低下するが、一体化したコンデンサの両端の電圧の耐圧は上昇する。
【0235】
《2レベルのインバータユニット3B》
図15において、インバータユニット3Bは、図1における3レベルのインバータユニット3を2レベルのインバータユニットに置き換えたものである。2レベルのインバータユニット3Bの構成は、図15における2レベルのコンバータユニット2Bと共通する変更であり、また、構成であるので、重複する説明は省略する。
【0236】
《電力変換装置101》
図15に示した電力変換装置101において、コンバータユニット2Bおよびインバータユニット3B以外の他の構成は、図1に示す第1の実施の形態の電力変換装置100と概ね同一であるので、重複する説明は、適宜、省略する。
【0237】
電力変換装置101は、前記したように、2レベルのコンバータユニット2Bとインバータユニット3Bとを備えている。
3レベルと2レベルの変換方式(パルス波形)の違いにより電流脈動が異なるが、電力変換装置101においても、コンバータ側異常判断器71が、電流検出器26,27,28の電流検出値に基づいて第1実施形態の場合と同様の処理を行う。
そして、電流検出器26,27,28および電流検出器26,27,28以外に起因する交流電流(例えば交流電源1)に異常があるか否かを適切に判断することができる。
【0238】
また、インバータ側異常判断器72が、電流検出器34,35,36の電流検出値に基づいて第1実施形態の場合と同様な処理を行うことにより、電流検出器34,35,36および電流検出器34,35,36以外に起因する交流電流(例えば電動機4)に異常があるか否かを適切に判断することができる。
また、前記したように、第2実施形態では、電力変換装置101が2レベルのコンバータユニット2Bとインバータユニット3Bを備え場合においても、電流検出器34,35,36および電流検出器34,35,36以外に起因する交流電流の異常を適切に判断することができる。
また、2レベルのコンバータユニット2Bとインバータユニット3Bとすることで、コンバータユニット2Bおよびインバータユニット3Bの回路構成の簡素化を図ることができる。
【0239】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態の電力変換装置101が、2レベルのコンバータユニット2Bとインバータユニット3Bを備える構成としたことによって、回路構成が簡単になり、低コスト、小型化となる効果がある。
【0240】
<第1実施形態および第2実施形態の補足>
前記した第1~2の実施の形態では、交流電源1と負荷としての電動機4との間に介在する電力変換装置における電流検出器の、異常判断について説明した。しかしながら、そのような構成に限らず、例えば、交流を交流に電圧変換する交流変換器(例えば変圧器)を、交流電源1とコンバータユニット2の間に設けてもよい。
または、交流を交流に電圧変換する交流変換器(例えば変圧器)を、インバータユニット3と電動機4の間に設けてもよい。
本発明は、以上の構成における、電力変換器(コンバータユニット2)と電源との間、または電力変換器(インバータユニット3)と負荷(電動機4)との間におけるすべての相(例えば、3相)に配置された電流検出器および電流検出器以外に起因する交流電流の異常判断にも適用できる。
【0241】
<直流/交流の電力変換装置を備えない構成における異常判断について>
また、前記した第1~2の実施の形態では、電力変換装置の3相交流配線の各相の電流を検出する電流検出器26~28および34~36の異常判断について説明した。
しかし、第1~第2の実施の形態での説明における異常判断の方法については、直流を交流に変換する電力変換装置が備える電流検出器に限らず適用可能である。
この直流/交流の電力変換装置を備えない構成における異常判断についての一例を、図16を参照して説明する。
【0242】
図16は、交流電源1の3相交流電力を、交流-交流電力変換器9を介して3相負荷である電動機4に供給する構成の一例を示す図である。
図16において、電動機4に入力する3相交流配線に、U相電流検出器34、V相電流検出器35、W相電流検出器36が設けられている。
交流-交流電力変換器9は、交流-交流電力変換器制御装置8により制御される。
電流検出器34,35,36で検出された電流検出値I、I、Iは、異常判断器72に入力される。
異常判断器72は、電流検出器34,35,36の異常を判断する装置であり、前記した第1の実施形態に記載されたインバータ側異常判断器72と、同様の構成および機能を備えている。
【0243】
なお、電動機4は、スター結線やデルタ結線でもよい。
また、図16では、負荷として3相負荷の電動機4を例示したが、負荷としては電動機に限定されない。
また、図1図15図16では、3相交流の場合を例示しているが必ずしも3相に限定されず、3相以外の多相であってもよい。
【0244】
≪第3実施形態≫
前記した第1実施形態の電力変換装置の異常度計算部(7117(図5)、7217(図6)に基づいて、交流電流検出器の異常を判断していた。第3実施形態においては、さらに交流電源または負荷装置(電動機)の運転条件を関連づけて異常を判断する構成と方法について説明する。
【0245】
図17は、本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の交流電流検出器異常判断部731の構成例を示す図である。
図17では、図5図6で説明した異常度計算部(7117、7217)の上位階層である、交流電流検出器異常判断部(コンバータ側交流電流検出器異常判断部711、インバータ側交流電流検出器異常判断部721)構成に対して、さらに交流電源1または電動機(負荷装置)4の運転状況を加味して、電流検出器の異常を判断する。
【0246】
図17において、交流電流検出器異常判断部731は、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711(図17図3A図5)と、インバータ側交流電流検出器異常判断部721(図17図3B図6)と、第2の演算部7311と、運転条件判断部7313(記憶部7312を含む)と、異常判断部7315(第3の演算部7314を含む)とを備えている。なお、前記したように、運転条件判断部7313は内部に記憶部7312を備えている。また、異常判断部7315は内部に第3の演算部7314を備えている。
【0247】
交流電流検出器異常判断部731には、コンバータユニット2側の電流検出器で検出されたR相、S相、T相の電流検出値I,I,Iが入力している。また、インバータユニット3側の電流検出器で検出されたU相、V相、W相の電流検出値I,I,Iが入力している。
また、交流電源1の運転条件S1と、負荷装置(電動機)4の運転条件S2が交流電流検出器異常判断部731に入力している。なお、図17では、表記の都合上、運転条件S1,S2を1本の信号線で併せて表記している。
【0248】
以上の交流電流検出器異常判断部731の構成と動作と機能の説明にあたって、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711と、インバータ側交流電流検出器異常判断部721とについて、一部重複するが、以下に構成を整理して再記する。
【0249】
《コンバータ側交流電流検出器異常判断部711》
コンバータ側交流電流検出器異常判断部711においては、第1実施形態の電力変換装置100において説明したが、説明が多岐に渡るので、一部重複するが、構成と機能という観点から、次に整理して示す。コンバータ側交流電流検出器異常判断部711は、次のように<1A>~<10A>で構成されている。
【0250】
<1A> 複数の電流検出器(26,27,28)が検出した複数相の電流検出値(I,I,I)の第1の総和IC0を計算する第1の加算部7111。
<2A> 第1の総和IC0と電流検出値(I,I,I)との積である第1の積(D,D,D)を、複数相の各々について計算する第1の乗算部(7112R,7112S,7112T)。
<3A> 複数の第1の積(D,D,D)に含まれる交流成分をそれぞれ低減または除去する第1のフィルタ(7113R,7113S,7113T)。
<4A> 相の異なる2つの電流検出値の積である第2の積(I,I,I)をそれぞれ計算する第2の乗算部(7114CT,7114CR,7114CS)。
【0251】
<5A> 複数の第2の積(I,I,I)についての第2の総和を計算する第2の加算部7115C。
<6A> 第2の総和に含まれる交流成分を減少または除去する第2のフィルタ7116C。
<7A> 電流検出値の自乗(I ,I ,I )を相毎にそれぞれ計算する第3の乗算部(7114R,7114S,7114T)。
<8A> 複数の前記自乗(I ,I ,I )についての第3の総和を計算する第3の加算部7115。
<9A> 第3の総和に含まれる交流成分を低減または除去する第3のフィルタ7116。
【0252】
<10A> 第1のフィルタ(7113R,7113S,7113T)の出力(F,F,F)、第2のフィルタ7116Cの出力(H)および第3のフィルタ7116の出力(K)に基づいて複数の電流検出器の異常度合いをそれぞれ生成し、第1のフィルタの出力(F,F,F)と、第2のフィルタ7116Cの出力(H)と、に基づいて、異常度を計算して、異常度合いに基づいて電流検出器の異常を判断する異常度計算部7117。
【0253】
《インバータ側交流電流検出器異常判断部721》
インバータ側交流電流検出器異常判断部721においても、第1実施形態の電力変換装置100において説明したが、説明が多岐に渡るので、一部重複するが、構成と機能という観点から、次に整理して示す。インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、次のように<1B>~<10B>で構成されている。
【0254】
<1B> 複数の電流検出器(34,35,36)が検出した複数相の電流検出値(I,I,I)の第1の総和II0を計算する第1の加算部7211。
<2B> 第1の総和II0と電流検出値(I,I,I)との積である第1の積(D,D,D)を、複数相の各々について計算する第1の乗算部(7212U,7212V,7212W)。
<3B> 複数の第1の積(D,D,D)に含まれる交流成分をそれぞれ低減または除去する第1のフィルタ(7213U,7213V,7213W)。
<4B> 相の異なる2つの電流検出値の積である第2の積(I,I,I)をそれぞれ計算する第2の乗算部(7214CW,7214CU,7214CV)。
【0255】
<5B> 複数の第2の積(I,I,I)についての第2の総和を計算する第2の加算部7215C。
<6B> 第2の総和に含まれる交流成分を減少または除去する第2のフィルタ7216C。
<7B> 電流検出値の自乗(I ,I ,I )を相毎にそれぞれ計算する第3の乗算部(7214U,7214V,7214W)。
<8B> 複数の前記自乗(I ,I ,I )についての第3の総和を計算する第3の加算部7215。
<9B> 第3の総和に含まれる交流成分を低減または除去する第3のフィルタ7216。
【0256】
<10B> 第1のフィルタ(7213U,7213V,7213W)の出力(F,F,F)、第2のフィルタ7216Cの出力(H)および第3のフィルタ7216の出力(K)に基づいて複数の電流検出器の異常度合いをそれぞれ生成し、第1のフィルタの出力(F,F,F)と、第2のフィルタ7216Cの出力(H)と、に基づいて、異常度を計算して、異常度合いに基づいて電流検出器の異常を判断する異常度計算部7217。
【0257】
<コンバータ側交流電流検出器異常判断部711とインバータ側交流電流検出器異常判断部721に関する補足>
以上のように、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711の構成<1A>~<10A>とインバータ側交流電流検出器異常判断部721の構成<1B>~<10B>について、説明したが、図5図6を参照すれば解るように、各部への入力信号と出力信号の相違があるが、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711とインバータ側交流電流検出器異常判断部721のそれぞれの構成は、同一の構成をしている。
そのため、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711とインバータ側交流電流検出器異常判断部721については、適宜、「交流電流検出器異常判断部」とも表記することがある。
【0258】
《交流電流検出器異常判断部731》
再び、図17を参照して、交流電流検出器異常判断部731の全体について説明する。
図17において、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711やインバータ側交流電流検出器異常判断部721の出力信号については、それぞれ1本の信号線で表記しているが、実際には演算過程の複数の信号を出力することができる。
【0259】
たとえば、インバータ側交流電流検出器異常判断部721において、式(15)、式(16)、式(17)に、電流検出器(34,35,36)の検出ゲイン(G,G,G)が示されているように、信号として取り出せる。同様に、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711の電流検出器(26,27,28)の検出ゲイン(G,G,G)も信号として取り出せる。
また、インバータ側交流電流検出器異常判断部721において、検出ゲイン(G,G,G)の平均値と、電流振幅(I,I,I)との積(第3の積)の信号も取り出せる。同様にコンバータ側交流電流検出器異常判断部711において、検出ゲイン(G,G,G)の平均値と、電流振幅(I,I,I)との積(第3の積)の信号も取り出せる。
【0260】
また、インバータ側交流電流検出器異常判断部721において、第2のフィルタ7216Cからの出力として、交流成分を減少または除去された第2の積(I,I,I)についての第2の総和を計算する第2の加算器7215Cの出力信号も取り出せる。そして、第3のフィルタ7216からの出力として、交流成分を減少または除去された第3の総和(I ,I ,I )を計算する第3の加算部7215の出力信号も取り出せる。
同様にコンバータ側交流電流検出器異常判断部711において、第2のフィルタ7116Cからの出力として、交流成分を減少または除去された第2の積(I,I,I)についての第2の総和を計算する第2の加算器7115Cの出力信号も取り出せる。そして、第3のフィルタ7116からの出力として、交流成分を減少または除去された第3の総和(I ,I ,I )を計算する第3の加算部7115の出力信号も取り出せる。
【0261】
また、インバータ側交流電流検出器異常判断部721において、第1のフィルタ(7213U,7213V,7213W)からの出力として、交流成分をそれぞれ低減または除去された第1の総和II0と電流検出値(I,I,I)との積である第1の積(D,D,D)を、複数相の各々について計算する第1の乗算部(7212U,7212V,7212W)の出力信号も取り出せる。
同様にコンバータ側交流電流検出器異常判断部711において、第1のフィルタ(7113R,7113S,7113T)からの出力として、交流成分をそれぞれ低減または除去された第1の総和IC0と電流検出値(I,I,I)との積である第1の積(D,D,D)を、複数相の各々について計算する第1の乗算部(7112R,7112S,7112T)の出力信号も取り出せる。
【0262】
図17において、第2の演算部7311には、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711の第2のフィルタ7116Cからの出力(K)と第3のフィルタ7116からの出力(H)、(第3の総和(I ,I ,I ))が入力する。そして、第2の演算部7311において、コンバータ側の第2のフィルタ7116Cの出力および第3のフィルタの出力に基づいて、複数の電流検出器の検出ゲインの平均値と電流振幅との積に相当する物理量を計算する。
【0263】
また、図17における第2の演算部7311には、インバータ側交流電流検出器異常判断部721の第2のフィルタ7216Cからの出力(K)と第3のフィルタ7216からの出力(H)、(第3の総和(I ,I ,I ))が入力する。そして、第2の演算部7311において、インバータ側の第2のフィルタ7216Cの出力および第3のフィルタの出力に基づいて、複数の電流検出器の検出ゲインの平均値と電流振幅との積に相当する物理量を計算する。
なお、第2の演算部7311において、コンバータ側とインバータ側の演算は、別々に独立して実施される。
【0264】
図17において、第2の演算部7311の出力信号は、記憶部7312に入力する。なお、第2の演算部7311の出力信号は、コンバータ側の演算結果と、インバータ側の演算結果との場合があり、それぞれ別々に扱われる。
また、記憶部7312の他の入力信号として、信号S1と信号S2とがある。
信号S1は、交流電源1(図1)側の運転条件であり、信号S2は、電動機4(図1)側の運転条件である。
原則的には、記憶部7312にコンバータ側の演算結果が入力する場合には、信号S1が有効となり、インバータ側の演算結果が入力する場合には、信号S2が有効となる。
記憶部7312には、検出ゲインの平均値と、電流振幅との第3の積は、交流電源1または電動機(負荷装置)4の運転条件と関連付けて記憶される。
記憶部7312を備える運転条件判断部7313は、記憶部7312の記憶情報に基づいて、交流電源1または電動機(負荷装置)4の運転条件を判定し、運転条件の出力信号を出力して、第3の演算部7314に入力する。
【0265】
第3の演算部7314には、前記した運転条件判断部7313(記憶部7312)の信号が入力している。
また、コンバータ側交流電流検出器異常判断部711、およびインバータ側交流電流検出器異常判断部721からの複数の電流検出器が正常な場合における検出ゲインの平均値と電流振幅との第3の積(コンバータ側、インバータ側)が入力している。
さらには、必要に応じて、第1のフィルタ(7113R,7113S,7113T)、(7213U,7213V,7213W)からの出力、第2のフィルタ7116C(K),7216C(K)からの出力、第3のフィルタ7116(H),7216(H)からの出力のそれぞれの信号を第3の演算部7314に入力する。
第3の演算部7314は、前記の第3の積、前記運転条件と同一条件において前記第2の演算部により計算される物理量、第1のフィルタの出力、第2のフィルタ出力、第3のフィルタ出力に基づいて、複数の異常度合いの絶対量を表す絶対異常度をそれぞれ計算する。
【0266】
第3の演算部7314を備える異常判断部7315は、第3の演算部7314の演算結果に基づき、複数の電流検出器の異常を判断する。
【0267】
<第3実施形態の効果>
第3実施形態の電力変換装置においては、記憶部7312を備える運転条件判断部7313を設けているので、交流電源1または電動機(負荷装置)4の運転条件を異常判定に取り入れているので、電流検出器の異常を実態に即して、正確に判定できる。
【0268】
≪第4実施形態≫
第1実施形態の電力変換装置においては、図1に示すように、交流電源1または電動機(負荷装置)4の電流検出において、3相配線上に電流検出器(26,27,28,34,35,36)を用いる例を示した。
第4実施形態の電力変換装置103においては、電流検出において、インバータ電力変換部にシャント抵抗を用いる方法について説明する。
【0269】
図18は、本発明の第4実施形態に係る電力変換装置103のインバータ電力変換部31Bの構成例を示す図である。
図18において、電力変換装置103のインバータユニット(3)におけるインバータ電力変換部31Bにおいては、インバータを構成する複数のIGBTと、コンデンサの構成は、図1と同じである。
異なるのは、交流電流測定用のシャント抵抗34B,35B,36Bが、各インバータ電力変換部(31U,31V,31W)のN配線42側にそれぞれ設けられて、電流検出器とする3シャント方式の回路構成としていることである。
【0270】
インバータ電力変換部(31U,31V,31W)が動作してシャント抵抗34B,35B,36Bのそれぞれに交流電流が流れると、各シャント抵抗34B,35B,36Bが3相交流のU相、V相、W相の交流電流をそれぞれ検出して測定する。
このように、電流検出器の配置は、インバータユニットと電動機4との間に限定されないのでインバータユニットの構成上、配置上の自由度が増加する。また、場合によっては、製造コストの軽減が期待できる。
また、シャント抵抗34B,35B,36BをP配線40側に設けて交流電流を検出するようにしても良い。
なお、シャント抵抗34B,35B,36B以外は、図2B、および図1と同様であるので、その他の重複する説明は省略する。
【0271】
また、図18においては、シャント抵抗をインバータ電力変換部31Bに設ける構成例を示したが、図1におけるコンバータユニット2の3台のコンバータ電力変換部(21R,21S,21T:図2A)においても、電流検出器26,27,28に代えてシャント抵抗の電流検出器を備えるようにしても良い。
【0272】
<第4実施形態の効果>
シャント抵抗(34B,35B,36B)を用いたことによって、電流測定器(電流検出器)の設置場所の選択肢が広がる効果がある。また、場合によっては、製造コストの軽減が期待できる。
【0273】
≪その他の実施形態≫
なお、本発明は、以上に説明した実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施の形態は、本発明を分かりやすく説明するために、例示したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を追加、削除、置換をすることも可能である。
【0274】
《表示器73の表示による異常発生の予防と対応》
図1に示した表示器(情報提示部)73は、前記したように、コンバータ側異常判断器71とインバータ側異常判断器72の出力信号によって、異常に関する判断情報を主として、表示するものであると第1実施形態では説明した。
ただし、異常か否かの検出時点の判断情報に限定されない。
例えば、電流検出器の異常度の情報や位相差の情報を表示器73に表示させてもよい。
その結果、異常発生の予兆を前もって把握することができて、異常発生の予防や、異常発生時の対応の準備を予め行うことができる。
【0275】
また、以下のように異常の発生を予測するようにしても良い。
異常度合いの時系列データ履歴を記憶し、記憶した履歴に基づいて、現時点から異常度合いが予め設定した異常判断の閾値(例えばや所定値α)を超えるまでの期間、すなわち、異常発生までの期間を予測する。そして、その予測結果を表示器73に表示させるようにしても良い。
その結果、異常発生の予兆を前もって把握することができ、異常発生の予防や、異常発生時の対応の準備を予め行うことができる。
【0276】
《電流検出器と異常判断器の配置箇所について》
第1実施形態では、コンバータ側異常判断器71で電流検出器26,27,28の異常判断を行い、かつ、インバータ側異常判断器72で電流検出器34,35,36の異常判断を行う構成として説明した。
しかしながら、前記のようにコンバータ側、およびインバータ側の両方に設けることは必須ではない。状況に応じてコンバータ側およびインバータ側のいずれか一方に設ける構成としても良い。その場合においても、上述した実施の形態で説明した異常判断方法を適用することができる。
【0277】
《トランジスタ》
前記した電力変換装置100~103において、コンバータ電力変換部やインバータ電力変換部を構成するトランジスタをIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を例として説明した。
しかし、トランジスタはIGBTに限定されず、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)やスーパージャンクションMOSFETでもよい。
【0278】
《電力変換装置のレベル数》
図1に示す第1実施形態や図15に示す第2実施形態では、3レベル変換器または2レベル変換器を例として示した。
しかし、レベル変換器のレベル数は、3レベルと2レベルに限定されない。本発明における電流検出器の異常判断処理は、任意の多レベル変換器(例えば5レベル、7レベル)における電力変換器と電源の間、または、電力変換器と負荷の間、における全ての相に配置された電流検出器の異常判断にも適用できる。
【0279】
《ソフトウェアとハードウェアの処理》
前記したコンバータ側異常判断器71、インバータ側異常判断器72、コンバータ側交流電流推定部712、インバータ側交流電流推定部722が行っていた処理については、図示しないプロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行するソフトウェアによる処理が望ましい。
しかし、これらの構成はソフトウェアによる処理に限定されず、それらの処理の一部または全部を、ハードウェア回路で行うようにしてもよい。
【0280】
《電力変換装置の変換対象》
図1に示す第1実施形態においては、交流を直流に変換する電力変換器(コンバータユニット2)、または直流を交流に変換する電力変換器(インバータユニット3)を例として示したが、これらに限定されない。
例えば、交流を交流に変換する交流変換器(例えば変圧器、交流-交流電力変換器)を、電源と負荷の間に備えてもよい。
または、交流を交流に電圧変換する交流変換器(例えば変圧器)を、電源と電力変換器(コンバータユニット2)の間に設けてもよい。
または、交流を交流に電圧変換する交流変換器(例えば変圧器)を、電力変換器(インバータユニット3)と負荷(電動機4)の間に設けてもよい。
以上の構成における電力変換器と電源の間、または電力変換器と負荷の間におけるすべての相(例えば3相)に配置された電流検出器の異常判断にも適用できる。
【0281】
《フィルタ設定の変更》
図5または図6においては、第1のフィルタ、第2のフィルタ、第3のフィルタが交流電流検出器異常判断部(711,721)に備えられているが、これらのフィルタの内の少なくとも1つのフィルタ設定を変更することができるようにすることも有力である。所望の特性や環境に対応しやすい効果がある。
例えば、前記したように、電動機4の運転周波数が可変などの理由により電流検出器に流れる電流が可変周波数である場合には、インバータ側交流電流検出器異常判断部721は、図6で用いられているフィルタの時定数(またはカットオフ周波数)を、電動機4の運転周波数が低速なときでもフィルタ入力に含まれる交流成分を大きく除去できるように、運転周波数に応じて可変とすることが望ましい。
【0282】
《第4のフィルタ》
図5または図6においては、第1のフィルタ、第2のフィルタ、第3のフィルタが交流電流検出器異常判断部(711,721)に備えられているが、複数の電流検出器の少なくとも一つに関して、電流検出値に含まれる直流成分を除去または減少させる第4のフィルタをさらに備える方法もある。
所望の特性や環境に対応しやすい効果がある。
【符号の説明】
【0283】
1 交流電源
100,101,102,103 電力変換装置
2 コンバータユニット(コンバータ)
21,21R,21S,21T コンバータ電力変換部
22,23,32,33 平滑コンデンサ(コンデンサ)
26,27,28,34,35,36 電流検出器
3 インバータユニット(インバータ)
31,31B,31U,31V,31W インバータ電力変換部
34B,35B,36B シャント抵抗(電流検出器)
4 電動機(負荷装置)
40 P配線(配線)
41 C配線(配線)
42 N配線(配線)
5 コンバータ制御装置
51 直流電圧指令発生器
52 直流電圧制御器
53 電流制御器
54 パルス生成器
6 インバータ制御装置
61 速度指令発生器
62 速度制御器
63 電流制御器
64 パルス生成器
71 コンバータ側異常判断器(異常判断器)
72 インバータ側異常判断器(異常判断器)
73 表示器(情報提示部)
711 コンバータ側交流電流検出器異常判断部(交流電流検出器異常判断部)
712 コンバータ側交流電流推定部(交流電流推定部)
713 コンバータ側交流電流異常判断部(交流電流異常判断部)
721 インバータ側交流電流検出器異常判断部(交流電流検出器異常判断部)
722 インバータ側交流電流推定部(交流電流推定部)
723 インバータ側交流電流異常判断部(交流電流異常判断部)
731 交流電流検出器異常判断部
7111,7211 加算器、第1の加算部
7115C,7215C 加算器、第2の加算部
7115,7215 加算器、第3の加算部
7112R,7112S,7112T,7212U,7212V,7212W 乗算器、第1の乗算部
7114CR,7114CS,7114CT,7214CU,7214CV,7214CW 乗算器、第2の乗算部
7114R,7114S,7114T,7214U,7214V,7214W 乗算器、第3の乗算部
7113R,7113S,7113T,7213U,7213V,7213W フィルタ、第1のフィルタ
7116C,7216C フィルタ、第2のフィルタ
7116,7216 フィルタ、第3のフィルタ
7117,7217 異常度計算部
72175 第1の演算部
7311 第2の演算部
7312 記憶部
7313 運転条件判断部
7314 第3の演算部
7315 異常判断部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18