(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158725
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20231024BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231024BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20231024BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20231024BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20231024BHJP
H01M 8/248 20160101ALI20231024BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231024BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20231024BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M10/0562
H01M10/04 Z
H01M50/291
H01M8/2465
H01M8/248
H01M8/04 Z
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068669
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲但▼野 光
(72)【発明者】
【氏名】岩坂 宇善
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H040
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H028AA08
5H028CC22
5H028EE01
5H029AJ14
5H029AM11
5H040AA03
5H040AY06
5H040CC23
5H040CC24
5H040CC34
5H040LL01
5H126AA22
5H126AA25
5H126FF08
5H127AC05
5H127EE11
(57)【要約】
【課題】セルの膨張収縮による品質低下を抑制することのできる電池を提供する。
【解決手段】複数のセル110と、隣り合うセル110の間にそれぞれ設けられる複数の弾性部材120と、複数のセル110と複数の弾性部材120が積層されることで構成されるセルスタックを挟み込む一対の挟持部材130と、一対の挟持部材130のうちの一方を付勢して、セルスタックを挟み込む方向に力を与えるバネ140と、を備え、複数の弾性部材120は、いずれも内部が中空の部材により構成されており、それぞれの弾性部材120における中空内部が配管150によって繋がり、各中空内部と配管150の内部よって密閉空間が形成され、かつ、前記密閉空間に流体が密封されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルと、
隣り合う前記セルの間にそれぞれ設けられる複数の弾性部材と、
前記複数のセルと前記複数の弾性部材が積層されることで構成されるセルスタックを挟み込む一対の挟持部材と、
前記一対の挟持部材のうちの少なくとも一方を付勢して、前記セルスタックを挟み込む方向に力を与える付勢部材と、
を備え、
前記複数の弾性部材は、いずれも内部が中空の部材により構成されており、それぞれの前記弾性部材における中空内部が配管によって繋がり、各中空内部と前記配管の内部よって密閉空間が形成され、かつ、前記密閉空間に流体が密封されていることを特徴とする電池。
【請求項2】
両面から受ける圧力に応じて変形する隔壁を介して第1の室と第2の室に隔てられた容器を有するアキュムレータを備えると共に、
第1の室に第1の流体が密封され、かつ、第2の室は前記密閉空間と繋がっており、第2の室及び前記密閉空間に第2の流体が密封されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
第1の室に密封される第1の流体の流体圧力を制御する制御機構を備えることを特徴とする請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記セルは二次電池であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の電池。
【請求項5】
前記セルは全固体電池であることを特徴とする請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記セルは燃料電池であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池や燃料電池においては、必要な電池容量及び電圧を得るために、複数のセルを積層したセルスタックとして構成されるのが一般的である。これらの電池においては、セルの膨張収縮により品質が低下することがある。二次電池の場合には、充放電の際にセルが膨張したり収縮したりすることがあり、品質の低下につながることがある。例えば、全固体電池の場合には、膨張収縮に伴う面圧のばらつきが、性能のばらつきとなり、寿命にも影響することが知られている。また、燃料電池の場合には、発電時のセルの膨張収縮により、燃料ガスや酸化剤ガスや冷却液の漏れを防止するために設けられたガスケットによる密封性能が不安定になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-154902号公報
【特許文献2】特開2007-242593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、セルの膨張収縮による品質低下を抑制することのできる電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0006】
すなわち、本発明の電池は、複数のセルと、隣り合う前記セルの間にそれぞれ設けられる複数の弾性部材と、前記複数のセルと前記複数の弾性部材が積層されることで構成されるセルスタックを挟み込む一対の挟持部材と、前記一対の挟持部材のうちの少なくとも一方を付勢して、前記セルスタックを挟み込む方向に力を与える付勢部材と、を備え、前記複数の弾性部材は、いずれも内部が中空の部材により構成されており、それぞれの前記弾性部材における中空内部が配管によって繋がり、各中空内部と前記配管の内部よって密閉空間が形成され、かつ、前記密閉空間に流体が密封されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、複数の弾性部材における中空内部に密封された流体の圧力が均一の圧力となるため、複数の弾性部材の弾性反発力を均一にすることができる。これにより、複数のセルについて、セルに接した弾性部材からそれぞれ受ける面圧を均一にすることができる。
【0008】
両面から受ける圧力に応じて変形する隔壁を介して第1の室と第2の室に隔てられた容器を有するアキュムレータを備えると共に、第1の室に第1の流体が密封され、かつ、第2の室は前記密閉空間と繋がっており、第2の室及び前記密閉空間に第2の流体が密封されるとよい。
【0009】
これにより、複数の弾性部材における中空内部に密封された流体(第2の流体)の圧力の変動を抑制することができる。
【0010】
第1の室に密封される第1の流体の流体圧力を制御する制御機構を備えるとよい。
【0011】
これにより、複数の弾性部材における中空内部に密封された流体の圧力も制御することが可能となる。
【0012】
前記セルは二次電池であるとよい。
【0013】
前記セルは全固体電池であるとよい。
【0014】
前記セルは燃料電池であるとよい。
【0015】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、セルの膨張収縮による品質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明の実施例1に係る電池の概略構成図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例1に係る電池の概略構成図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例2に係る電池の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
(実施例1)
図1及び
図2を参照して、本発明の実施例1に係る電池について説明する。
図1及び
図2は本発明の実施例1に係る電池の概略構成図であり、
図1はセルが収縮した状態を示し、
図2はセルが膨張した状態を示している。なお、各図においては、電池のケースの設置面に平行な面で、電池等を切断した断面を簡略的に示している。
【0020】
<電池の構成>
本実施例に係る電池100は、ケース200内に配される。電池100は、複数のセル110と、隣り合うセル110の間にそれぞれ設けられる複数の弾性部材120とを備えている。また、電池100は、複数のセル110と複数の弾性部材120が積層されることで構成されるセルスタックを挟み込む一対の挟持部材130を備えている。挟持部材130は、電池100の電極(端子)として兼用することもできる。なお、図示の例では、セル110と弾性部材120が交互に配される構成を採用しているが、複数積層させたセル110を1組として、1組の複数のセル110と1組の複数のセル110との間に、それぞれ弾性部材120を配する構成を採用することもできる。
【0021】
また、電池100は、一対の挟持部材130のうちの一方を付勢して、セルスタックを挟み込む方向に力を与える付勢部材としてのバネ140が設けられている。このバネ140は、一端がケース200の内壁面に固定され、他端が一方の挟持部材130に固定されることで、一方の挟持部材130を他方の挟持部材130に向けて付勢するように構成されている。これにより、セルスタックは、一対の挟持部材130によって所定の力により挟み込まれる。なお、バネ140の数は限定されることはなく、各部材の寸法や必要な挟持力により必要な数だけ設ければよい。また、図示の例では、一対の挟持部材130のう
ちの一方を付勢するバネ140を設ける構成を示したが、一対の挟持部材130のうちの他方の部材に対してもバネ140により付勢する構成を採用することもできる。すなわち、一端がケース200の内壁面に固定され、他端が他方の挟持部材130に固定されるバネ140を、更に設ける構成を採用することもできる。このバネ140により、他方の挟持部材130を一方の挟持部材130に向けて付勢することができる。また、付勢部材はバネに限らず、挟持部材130を付勢可能な各種公知技術を採用することもできる。
【0022】
セル110の具体的としては、二次電池及び燃料電池を挙げることができる。また、二次電池の具体例としては、全固体電池、リチウムイオン電池、及びニッケル水素電池を挙げることができる。なお、これらの二次電池、及び燃料電池自体の構成については、公知技術であるので、その説明は省略する。
【0023】
上記の複数の弾性部材120は、いずれも内部が中空の部材により構成されている。そして、それぞれの弾性部材120における中空内部は配管150によって繋がるように構成されている。これにより、各中空内部と配管150の内部よって密閉空間が形成され、かつ、密閉空間には流体(気体や液体)が密封されている。
【0024】
<本実施例に係る電池の優れた点>
本実施例に係る電池100によれば、複数の弾性部材120における中空内部に密封された流体の圧力が均一の圧力となるため、複数の弾性部材120の弾性反発力を均一にすることができる。これにより、複数のセル110について、セル110に接した弾性部材120からそれぞれ受ける面圧を均一にすることができる。本実施例においては、全てのセル110の両側に弾性部材120が設けられているので、全てのセル110について、その両面に対して弾性部材120から受ける面圧が均一となる。これにより、セル110の膨張収縮に拘わらず、かつ、セル110の配置位置に拘わらず、それぞれのセル110に作用する面圧を均一にすることができる。従って、セル110の膨張収縮に伴う電池100の品質の低下を抑制することができる。例えば、全固体電池の場合には、性能のばらつきを抑制することができ、寿命の低下も抑制することができる。また、燃料電池の場合には、ガスケットの密封性の低下を抑制することができる。
【0025】
なお、セル110が燃料電池の場合には、セパレータとセパレータとの間に上記の弾性部材120を設けることができる。この場合、上記の通り、1組の複数のセル110と1組の複数のセル110との間に、それぞれ弾性部材120を配する構成を採用することもできる。また、燃料電池においては、燃料ガスや酸化剤ガスや冷却液の漏れを防止するためにガスケットが設けられる。セパレータとセパレータとの間に設けられるガスケットを、上記の弾性部材120として兼用することもできる。この場合には、弾性部材は、燃料ガスなどの流路を取り囲むように環状かつ内部中空にする必要がある。更に、燃料電池の場合には、セパレータとMEAとの間に設けられるガスケットについても、上記のように構成される弾性部材を適用することもできる。
【0026】
(実施例2)
図3には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、上記実施例1の構成において、配管がアキュムレータに接続される場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0027】
図3は本発明の実施例2に係る電池の概略構成図である。本実施例に係る電池100Aにおいては、上記実施例1で示した電池100の構成に加えて、アキュムレータ160が設けられている。アキュムレータ160は、密閉可能な容器161と、容器161の内部の空間を第1の室R1と第2の室R2とに隔てる隔壁162とを備えている。隔壁162
は弾性材料により構成されており、両面から受ける圧力に応じて変形するように構成されている。第1の室R1には第1の流体(窒素ガスなど、好ましくは不活性ガスなど)が密封される。
【0028】
第2の室R2は、配管150に接続されている。これにより、それぞれの弾性部材120における各中空内部と配管150の内部よって形成された密閉空間と第2の室R2が繋がるように構成されている。そして、第2の室R2及び上記の密閉空間に第2の流体(気体や液体)が密封されている。これにより、第2の流体の流体圧力が変動すると、第1の室R1における流体圧力と第2の室R2における流体圧力の関係に応じて、隔壁162が変形する(図中、点線参照)。これにより、第2の室R2に繋がる上記密閉空間における流体圧力の変動を抑制することができる。
【0029】
以上のように構成される本実施例に係る電池100Aによれば、上記実施例1と同様の効果が得られることに加えて、複数の弾性部材120における中空内部に密封された流体(第2の流体)の圧力の変動を抑制することができる。従って、セル110の膨張収縮に伴う電池100の品質の低下をより一層抑制することができる。
【0030】
また、図示のように、第1の室R1に密封される第1の流体の流体圧力を制御する制御機構170を備える構成を採用することも好適である。なお、流体圧力を制御する制御機構については、適宜、公知技術を採用すればよいので、詳細な説明は省略する。一般的に、流体圧力を制御する制御機構は、ポンプ、弁、及びこれらを制御する制御装置などにより構成される。
【0031】
制御機構170を設ける構成を採用した場合には、第1の室R1に密封される第1の流体の流体圧力を制御することで、複数の弾性部材120における中空内部に密封された流体(第2の流体)の圧力も制御することが可能となる。これにより、セル110に作用する面圧を制御することで、セル110の膨張収縮に伴う電池100の品質の低下をより一層抑制することができる。すなわち、セル110の膨張収縮に拘わらず、セル110に作用する面圧の変動を第2の流体の流体圧力の制御によっても抑制することで、電池100の品質の低下をより一層抑制することができる。また、経時劣化等によりバネ140の弾性力が低下しても、第1の室R1に密封される第1の流体の流体圧力を高めることで、第2の流体の流体圧力を高めてセル110に作用する面圧を維持することもできる。
【符号の説明】
【0032】
100,100A 電池
110 セル
120 弾性部材
130 挟持部材
140 バネ
150 配管
160 アキュムレータ
161 容器
162 隔壁
170 制御機構
200 ケース
R1 第1の室
R2 第2の室