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特開2023-158730冷却性能評価方法、解析装置、冷却性能評価プログラム
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  • 特開-冷却性能評価方法、解析装置、冷却性能評価プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158730
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】冷却性能評価方法、解析装置、冷却性能評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
G21C17/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068678
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大和 正明
(72)【発明者】
【氏名】村上 望
(72)【発明者】
【氏名】白土 雄元
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA02
2G075BA12
2G075CA38
2G075DA20
2G075EA01
2G075FA20
2G075FB09
(57)【要約】
【課題】LOCA時の冷却性能を、精度を維持しつつ、少ない計算量で評価する。
【解決手段】燃料棒の出力履歴に基づいて燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、燃料棒のグループと、微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料棒の出力履歴に基づいて前記燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、
前記グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、
前記燃料棒の前記グループと、前記微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する前記微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、を含む冷却性能評価方法。
【請求項2】
解析対象の原子炉で冷却可能な前記燃料棒のバーストの本数を算出する本数算出ステップと、を有し、
前記評価ステップは、前記燃料棒の前記グループと、前記微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいてバーストする前記燃料棒の本数を算出し、前記本数算出ステップで算出した冷却可能な前記燃料棒のバーストの本数と比較して、冷却性能を評価する請求項1に記載の冷却性能評価方法。
【請求項3】
前記グループ作成ステップは、前記燃料棒の内圧評価に基づいて、前記グループを分類する請求項1に記載の冷却性能評価方法。
【請求項4】
前記解析ステップは、前記グループに含まれる前記燃料棒の中で、最も燃料棒内圧が高くなる出力履歴で解析を行う請求項3に記載の冷却性能評価方法。
【請求項5】
前記評価ステップで、冷却性能が条件を満たさないと判定した場合、前記グループ作成ステップに戻り、
前記グループ作成ステップは、作成する前記グループの数を増加させて、グループ化を実行する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷却性能評価方法。
【請求項6】
炉心の冷却材喪失事故時の冷却性能を評価する演算部を有する解析装置であって、
前記演算部は、
前記燃料棒の出力履歴に基づいて前記燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、
前記グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、
前記燃料棒の前記グループと、前記微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する前記微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、を実行する解析装置。
【請求項7】
燃料棒の出力履歴に基づいて前記燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、
前記グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、
前記燃料棒の前記グループと、前記微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する前記微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、をコンピュータに実行させる冷却性能評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却性能評価方法、解析装置、冷却性能評価プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉の安全性の評価として、原子炉の冷却材喪失事故(Loss of Cooolant Accident:LOCA)が発生した場合の状態を評価する解析がある。例えば、特許文献1には、小規模の冷却水喪失事故時に1次冷却水が減少した場合を、1次系内における非凝縮性ガスの分布を計算する解析コードを用いて、評価する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3917957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子炉は、原子炉の冷却材喪失事故が発生した場合にあっても、原子炉の冷却性能が維持できる必要がある。近年、高燃焼度まで照射された燃料棒に対する、原子炉の冷却材喪失事故時を想定した試験において、燃料棒が損傷し、ペレットが燃料棒の外に放出される知見が得られている。このように、高燃焼度まで照射された燃料棒を含む原子炉で冷却材喪失事故が発生し、高燃焼度まで照射された燃料棒が損傷した場合も、原子炉の冷却性能が維持できることを確認する必要がある。ここで、一般に原子炉には数万本単位での燃料棒が装荷されており、損傷時の冷却性能を評価するために、全ての燃料棒についての解析を行うと計算量が膨大になる。また、全ての燃料棒を使用条件が最も厳しい条件の燃料棒として解析を行うと、安全率が高くなりすぎ、原子炉の冷却性能を精度よく見積もることができない。
【0005】
そこで、本開示は、LOCA時の冷却性能を、精度を維持しつつ、少ない計算量で評価する冷却性能評価方法、解析装置、冷却性能評価プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の冷却性能評価方法は、燃料棒の出力履歴に基づいて前記燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、前記グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、燃料棒のグループと、微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、を含む。
【0007】
本開示の解析装置は、炉心の冷却材喪失事故時の冷却性能を評価する演算部を有する解析装置であって、前記演算部は、前記燃料棒の出力履歴に基づいて前記燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、前記グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、燃料棒のグループと、微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、を実行する。
【0008】
本開示の冷却性能評価プログラムは、燃料棒の出力履歴に基づいて前記燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、前記グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、燃料棒のグループと、微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、LOCA時の冷却性能を、精度を維持しつつ、少ない計算量で評価する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る解析装置を模式的に表したブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る冷却性能評価方法の処理の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、燃料棒の出力の変動の一例を示すグラフである。
図4図4は、燃料棒のグループの分類結果の一例を示す模式図である。
図5図5は、燃料棒のバースト発生の条件の一例を示す模式図である。
図6図6は、燃料棒のバーストの発生確率の分布の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0012】
本実施形態に係る冷却性能評価方法は、原子炉の冷却材喪失事故(Loss of Cooolant Accident:LOCA)が発生した場合の炉心の冷却性能を評価する方法である。より具体的には、冷却性能評価方法は、LOCA時に、原子炉の燃料棒から放射性物質であるペレットが放出される量を解析し、放出されたペレットの量が冷却可能な量であるかに基づいて原子炉の冷却性能を評価する。冷却性能評価方法は、燃料棒の燃焼末期、つまり、長期間の運転期間の終了直前にLOCAが発生した場合として解析を行う。
【0013】
図1は、本実施形態に係る解析装置を模式的に表したブロック図である。図1を参照して、解析装置1について説明する。解析装置1は、燃料棒の出力履歴に基づいて、LOCA時における燃料棒の物理的破損を解析し、解析結果に基づいて冷却性能を評価する。解析装置1は、燃料棒の出力履歴に基づいて、LOCA時の燃料棒の状態を解析する。解析装置1は、燃料棒の出力履歴に基づいて、燃料棒のグループを作成する。解析装置1は、LOCA時における燃料棒のふるまい(挙動)を模擬する。具体的に、解析装置1は、炉心のLOCA解析を実行する。解析装置1は、LOCA解析の結果と、燃料棒のグループの情報に基づいて、ペレットが放出される燃料棒の本数、放出されるペレットの量を算出する。解析装置1は、ペレットが放出される燃料棒の本数、放出されるペレットの量に基づいて、原子炉の冷却性能を評価する。
【0014】
解析装置1は、演算部11と、記憶部12と、表示部13と、入力部14とを有している。
【0015】
演算部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路を含んでいる。演算部11は、入力情報に基づくLOCA解析に関する解析処理等を実行している。記憶部12は、半導体記憶デバイス及び磁気記憶デバイス等の任意の記憶デバイスである。この記憶部12には、各種処理を実行するための各種プログラム、例えば冷却性能評価プログラム、及び処理に用いられる各種データが記憶されている。各種データとしては、例えば、原子炉の燃料棒の配置レイアウト情報、燃料棒の仕様の情報、燃料棒の出力履歴の情報、LOCA解析に入力される入力情報(入力パラメータ)D1、解析結果として出力される出力情報D2等である。表示部13は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。入力部14は、例えば、キーボード及びマウス等の入力デバイスである。なお、表示部13及び入力部14は、タッチパネル等の入力操作が可能な入力表示デバイスとして一体化されたものであってもよい。
【0016】
次に、図2から図6を参照して、解析装置1により実行される冷却性能評価方法について説明する。図2は、本実施形態に係る冷却性能評価方法の処理の一例を示すフローチャートである。図3は、燃料棒の出力の変動の一例を示すグラフである。図4は、燃料棒のグループの分類結果の一例を示す模式図である。図5は、燃料棒のバースト発生の条件の一例を示す模式図である。図6は、燃料棒のバーストの発生確率の分布の一例を示す模式図である。
【0017】
解析装置1は、記憶部12に記憶される冷却性能評価プログラムを演算部11で処理することで、図2に示す冷却性能評価方法を実行する。演算部11は、評価対象のプラントを選定する(ステップS12)。演算部11は、入力情報D1に基づいて、解析対象のプラント、つまり原子炉の情報を取得する。
【0018】
演算部11は、冷却能力の許容値を算出する(ステップS14)。演算部11は、解析対象のプラントの情報に基づいて、LOCA時の冷却性能を算出する。本実施形態の演算部11は、LOCA時に冷却可能な燃料棒から放出されるペレットの量に基づいて、LOCA時に冷却可能な燃料棒のバースト本数を算出する。つまり、LOCA時の冷却性能で冷却できる放出されるペレットの量を算出する。さらに演算部11は、ペレットの量に基づいて、冷却できる燃料棒のバースト本数を算出する。LOCA時に冷却できているかを判定する基準は、原子炉に対して設定される条件に基づいて設定される。
【0019】
演算部11は、評価対象の燃料棒の出力履歴の情報を取得する(ステップS16)。演算部11は、入力情報D1に基づいて、解析対象のプラントで使用された燃料棒の出力履歴の情報を取得する。ここで、燃料棒を含む燃料集合体は、原子炉での使用に伴い核分裂性のウランが減少していくため、に、運転サイクル毎に、核分裂性ウランが減少した燃料集合体を取り外し、新しい燃料集合体を装荷するとともに原子炉内での装荷位置を変更し、新しい運転サイクルの期間中、所定の熱出力を取り出せるように設計する。装荷位置毎の出力は、原子炉に配置された計装管の情報や、数値解析で算出できる、演算部11は、運転サイクル時の出力負荷の情報や、装填位置の情報に基づいて、算出された燃料棒の出力履歴の情報を取得する。演算部11は、全ての燃料棒の出力履歴の情報を取得する必要はなく、燃焼末期での燃焼度が、閾値以上の燃料棒の情報、つまり使用時の負荷が高くLOCA時に損傷が生じる可能性が高い燃料棒の情報を取得する。例えば、局所燃焼度が閾値以上となる燃料棒の出力履歴を抽出する。また、演算部11は、条件を満たす燃料棒を抽出する処理としてもよいが、LOCA時に損傷が生じる可能性がないと判定する燃料棒を解析対象から外す処理としてもよい。
【0020】
出力履歴の情報は、図3に示すように、横軸を運転期間とし、縦軸を出力とした場合、各サイクルCY1、CY2、CY3、CY4で、出力が変動する。図3の出力履歴40、42、44は、一例であり、出力分布は、各燃料棒で異なる。また、出力履歴40、42、44は、各サイクルCY1、CY2、CY3、CY4を比較した場合、同じ傾向となる出力履歴である。評価対象の燃料棒は、種々の出力履歴となる。例えば、サイクルCY1が最も出力が大きくなる燃料棒、サイクルCY3が最も出力が大きくなる燃料棒もある。また、図3は、出力を模式的に示しており実際の出力履歴は、各サイクルCY1、CY2、CY3、CY4内で、変動する。
【0021】
演算部11は、燃料棒の内圧が高くなる出力履歴を抽出する(ステップS18)。演算部11は、出力履歴の情報を取得した燃料棒について、LOCA時の内圧を算出する。燃料棒の内圧は、従来用いられる種々の解析コードを用いた解析で算出できる。演算部11は、解析結果に基づいて、燃料棒の内圧が高くなる出力履歴を抽出する。
【0022】
演算部11は、燃料棒をグループに分類する(ステップS20)。演算部11は、ステップS16、ステップS18の結果を用いて、燃料棒を複数のグループに分類する。例えば、図3に示すように、サイクルを比較した出力の大小関係が同じ燃料棒を同じグループとする。また、最終装荷のサイクルの出力や、燃焼度で、グループを分類してもよい。分類するグループの数、分類する条件の優先順位は、予め設定することができる。演算部11は、燃料棒の出力履歴、燃焼度(積分出力)、最終装荷のサイクルの出力等で分類を行うことで、図4に示すように、評価対象の燃料棒を、グループ52の燃料棒、グループ54の燃料棒、グループ56の燃料棒に分類する。なお、図4に示すグループの数は、3つであるがこれに限定されない。一例としては、最終装荷のサイクルの出力で3つに分類し、積算出力で5つに分類して、15個のグループを作成することができる。
【0023】
演算部11は、燃料棒のLOCA解析を実行する(ステップS22)。演算部11は、燃料棒及び原子炉の条件を用いて、事故前の出力と、燃料棒内圧と、を変化させた感度解析を行い、事故前の出力ごとの燃料棒内圧のバースト発生条件を算出する。感度解析は、原子力の解析で用いる種々の解析コードを用いることができる。また、事故前の出力と、燃料棒内圧とは、ランダムサンプリング等の種々のパラメータの設定方法で特定して繰り返し解析を実行する、演算部11は、解析を行うことで、図5に示すように、事故前の出力と燃料棒内圧との関係で、バーストが発生する条件と、バーストを回避する条件の境界条件60を算出する。なお、ステップS22のLOCA解析は、予め別の演算部で計算し、結果を取得してもよい。
【0024】
演算部11は、グループの燃料棒の内圧評価を行う(ステップS24)。演算部11は、グループの燃料棒から代表燃料棒を選定する。ここで、代表燃料棒は、例えば、グループの中で、燃料棒内圧が最も高くなる燃料棒である。つまり、グループの中で最も損傷しやすいと判定される燃料棒である。例えば、図3では、出力履歴40が代表燃料棒の出力履歴となる。演算部11は、代表燃料棒の出力履歴に基づいて、事故前の燃料棒内圧を算出する。代表燃料棒の燃料棒内圧の算出結果と、不確かさに基づいて、グループ内の燃料棒の内圧の分布を算出する。本実施形態では、燃料棒の内圧評価の不確かさが最確値の25%に包絡され、不確かさ25%が95%信頼区間、つまり2σとなる正規分布とする。これにより、図6に示すように、燃料棒内圧の確率分布を算出できる。図6に示す分布70は、代表燃料棒の燃料棒内圧が確率分布の最大値となり、代表燃料棒の燃料棒内圧よりも25%大きい値74の位置が正規分布の2σとなる分布となる。なお、本実施形態の燃料棒の分布を正規分布とし、不確かさ25%を2σの位置とするのは一例であり、分布の設定はこれに限定されない。燃料棒の分布を予め算出した実測値(運転期間が本実施形態よりも短い燃料棒の計測値でもよい)に基づいて評価しても、正規分布以外の分布としてもよい。また、不確かさ25%の位置を2σの位置ではなくσの位置や、3σの位置としてもよい。
【0025】
演算部11は、グループの燃料棒のバースト本数を算出する(ステップS26)。演算部11は、図5に示すバーストの境界条件60に基づいて、図6の分布70のうち、バーストが発生する条件72を決定し、条件72よりも高い領域部分をバーストする燃料棒とする。条件72は、グループの代表燃料棒の事故前の出力が低いほど、バースト発生条件の燃料棒内圧が高くなる。演算部11は、条件72よりも高い領域部分の割合と、グループの燃料棒の本数とを積算することで、グループ内でバーストする燃料棒の算出を算出する。
【0026】
演算部11は、全グループの解析が完了したかを判定する(ステップS28)。演算部11は、全グループの解析が終了していない(ステップS28でNo)と判定した場合、ステップS22に戻り、解析していないグループの解析を行う。
【0027】
演算部11は、全グループの解析が終了した(ステップS28でYes)と判定した場合、合計のバースト本数を算出する(ステップS30)。演算部11は、ステップS22からステップS26の処理で算出した各グループの燃料棒のバースト本数の合計本数を算出する。
【0028】
演算部11は、算出結果に基づいて冷却可能かを判定する(ステップS32)。演算部11は、ステップS30で算出した合計のバースト本数が、ステップS14で算出した冷却性能の許容値を超えるか否かを判定する。演算部11は、ステップS30で算出した合計のバースト本数が、ステップS14で算出した冷却性能の許容値のバースト本数よりも、少ない場合、冷却可能と判定する。演算部11は、ステップS30で算出した合計のバースト本数が、ステップS14で算出した冷却性能の許容値のバースト本数以上である場合、冷却できないと判定する。
【0029】
演算部11は、冷却可能ではない(ステップS32でNo)、つまり冷却性能の許容値を超える本数の燃料棒がバーストとすると判定した場合、ステップS20に戻り、燃料棒のグループ化を再度実行する。演算部11は、冷却可能ではないと判定した処理のグループの数よりも、分類するグループの数を増加させる。つまり、演算部11は、燃料棒をより細分化したグループで解析する。演算部11は、冷却可能である(ステップS32でYes)と判定した場合、本処理を終了する。
【0030】
解析装置1は、燃料棒の出力履歴に基づいて複数のグループに分けて、グループごとに燃料棒のバーストを評価することで、原子炉のLOCA時に炉内に放出されたペレットに対する冷却性能を高い精度で評価することができる。また、解析装置1は、グループごとに燃料棒のバーストを評価することで、計算負荷の増加を抑制することができる。また、解析装置1は、グループごとに燃料棒のバーストを評価することで、最も厳しい燃料棒に基づいて評価した場合、冷却性能を満たさないと判定される出力履歴でも、安全に運転できると評価できる。
【0031】
また、解析装置1は、グループの中で最も厳しい燃料棒を代表燃料棒として評価を行うことで、つまり、グループの中で最もバーストしやすい燃料棒を代表燃料棒とすることで、厳しい条件で冷却性能を評価することができ、安全性の評価として信頼性を高くすることができる。
【0032】
また、冷却性能を満たさないと判定した場合、グループを増加させて解析を行うことで、計算量が増加するが、より実際の状態に近い状態で解析を行うことができる。
【0033】
上記実施形態では、バーストした本数に基づいて、冷却性能を評価したが、バースト本数に代えて、燃料棒から放出されたペレット(燃料)の量に基づいて冷却性能を評価してもよい。解析装置1は、LOCA時の燃料棒から放出した燃料が冷却可能かを評価することで、原子炉の運転条件が条件を満たしているかを判定することができる。
【0034】
以上のように、本開示は、例えば、以下のように把握される。
(1)燃料棒の出力履歴に基づいて前記燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、前記グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、前記燃料棒の前記グループと、前記微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する前記微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、を含む冷却性能評価方法。これにより、原子炉のLOCA時に炉内に放出されたペレットに対する冷却性能を高い精度で評価することができる。また、グループごとに燃料棒のバーストを評価することで、計算負荷の増加を抑制することができる。
【0035】
(2)解析対象の原子炉で冷却可能な前記燃料棒のバーストの本数を算出する本数算出ステップと、を有し、前記評価ステップは、前記燃料棒の前記グループと、前記微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいてバーストする前記燃料棒の本数を算出し、前記本数算出ステップで算出した冷却可能な前記燃料棒のバーストの本数と比較して、冷却性能を評価する(1)に記載の冷却性能評価方法。これにより、原子炉のLOCA時に炉内に放出されたペレットに対する冷却性能を高い精度で評価することができる。
【0036】
(3)前記グループ作成ステップは、前記燃料棒の内圧評価に基づいて、前記グループを分類する(1)または(2)に記載の冷却性能評価方法。これにより、燃料棒の状態に基づいてグループを分類することができる。
【0037】
(4)前記解析ステップは、前記グループに含まれる燃料棒の中で、最も燃料棒内圧が高くなる出力履歴で解析を行う(3)に記載の冷却性能評価方法。これにより、厳しい条件で冷却性能を評価することができ、安全性の評価として信頼性を高くすることができる。
【0038】
(5)前記評価ステップで、冷却性能が条件を満たさないと判定した場合、前記グループ作成ステップに戻り、前記グループ作成ステップは、作成する前記グループの数を増加させて、グループ化を実行する(1)から(4)のいずれか1つに記載の冷却性能評価方法。これにより、原子炉のLOCA時に炉内に放出されたペレットに対する冷却性能を高い精度で評価することができる。また、作業者の作業負担を小さくできる。
【0039】
(6)炉心の冷却材喪失事故時の冷却性能を評価する演算部を有する解析装置であって、前記演算部は、前記燃料棒の出力履歴に基づいて前記燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、前記グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、前記燃料棒の前記グループと、前記微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する前記微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、を実行する解析装置。これにより、原子炉のLOCA時に炉内に放出されたペレットに対する冷却性能を高い精度で評価することができる。また、グループごとに燃料棒のバーストを評価することで、計算負荷の増加を抑制することができる。
【0040】
(7)燃料棒の出力履歴に基づいて前記燃料棒をグループ化するグループ作成ステップと、前記グループごとに、冷却材喪失事故時に微細ペレットの放出が発生するかを解析する解析ステップと、前記燃料棒の前記グループと、前記微細ペレットの放出が発生するかの解析結果と、に基づいて放出する前記微細ペレットの量を算出し、冷却性能を評価する評価ステップと、をコンピュータに実行させる冷却性能評価プログラム。これにより、原子炉のLOCA時に炉内に放出されたペレットに対する冷却性能を高い精度で評価することができる。また、グループごとに燃料棒のバーストを評価することで、計算負荷の増加を抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 解析装置
11 演算部
12 記憶部
13 表示部
14 入力部
D1 入力情報
D2 出力情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6