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特開2023-158740回転電気機械、圧縮機、送風機、冷凍装置、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158740
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】回転電気機械、圧縮機、送風機、冷凍装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20231024BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H02K3/34 B
H02K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068701
(22)【出願日】2022-04-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 倫博
(72)【発明者】
【氏名】浅野 能成
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DA16
5H604DB01
5H604DB11
5H604DB26
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】回転電気機械において、ティースにかかる巻線応力を緩和しながら占積率の低下を抑制する。
【解決手段】ステータコア(13)は、ヨーク(11)とティース(12)とを有する。ティース(12)間のスロット(18)に巻線(15)が収容される。ステータコア(13)の軸方向端面に絶縁性のエンドプレート(20)が配置される。エンドプレート(20)は、巻線(15)とステータコア(13)との間に配置されると共にスロット(18)の方に延在する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心まわりに回転自在に構成されるロータコア(16)と、
前記ロータコア(16)と径方向にギャップ(17)を介して対向するステータコア(13)と
を備え、
前記ステータコア(13)は、軸方向に積層された電磁鋼板からなり、円筒状のヨーク(11)及び前記ヨーク(11)から前記ロータコア(16)に向かって径方向に突出した複数のティース(12)を有し、
複数の前記ティース(12)は、周方向に配列されると共に、周方向で隣り合う前記ティース(12)同士の間にスロット(18)が形成され、
前記スロット(18)に巻線(15)が収容され、
前記ステータコア(13)の軸方向端面に絶縁性のエンドプレート(20)が配置され、
前記エンドプレート(20)は、前記巻線(15)と前記ステータコア(13)との間に配置されると共に、軸方向から見て前記スロット(18)の方に延在する
回転電気機械。
【請求項2】
請求項1の回転電気機械において、
前記エンドプレート(20)は、前記ステータコア(13)における前記スロット(18)を囲む面以外の他の面に接触し又は固定される
回転電気機械。
【請求項3】
請求項1又は2の回転電気機械において、
前記エンドプレート(20)における前記巻線(15)と接触する部分には、フィレット又は面取りが設けられる
回転電気機械。
【請求項4】
請求項1又は2の回転電気機械において、
前記スロット(18)に配置される前記巻線(15)と前記ステータコア(13)との間に絶縁フィルム(30)が配置され、
前記絶縁フィルム(30)と前記エンドプレート(20)とは、軸方向に所定長オーバーラップする
回転電気機械。
【請求項5】
請求項1又は2の回転電気機械において、
前記巻線(15)は、集中巻で複数の前記ティース(12)のそれぞれに巻き回される
回転電気機械。
【請求項6】
請求項1又は2の回転電気機械において、
前記巻線(15)は、インサータ巻による分布巻で前記スロット(18)に挿入され、
前記巻線(15)のコイルエンドが前記ヨーク(11)の軸方向端面まで延在するように前記巻線(15)が押圧加工される
回転電気機械。
【請求項7】
請求項6の回転電気機械において、
複数の前記ティース(12)は、第1ティース(12A)及び第2ティース(12B)を有し、
前記スロット(18)は、前記第1ティース(12A)に面する第1スロット及び前記第2ティース(12B)に面する第2スロットを有し、
前記巻線(15)は、前記第1スロット内に配置されて、前記第1ティース(12A)の軸方向端部で当該第1ティース(12A)に向かって曲げられ、
前記巻線(15)は、前記第2スロット内には配置されないか、又は、前記第2スロット内に配置されて、前記第2ティース(12B)の軸方向端部で当該第2ティース(12B)以外の向きに曲げられ、
前記エンドプレート(20)は、前記第2ティース(12B)において前記第2スロットの方に延在する長さと比べて、前記第1ティース(12A)において前記第1スロットの方に延在する長さが大きい
回転電気機械。
【請求項8】
請求項6の回転電気機械において、
前記巻線(15)は、軸方向から見てコイルエンドが重なるように配置された第1相巻線(15A)及び第2相巻線(15B)を有し、
前記第1相巻線(15A)のコイルエンドは、軸方向又は径方向から見て、前記第2相巻線(15B)のコイルエンドと前記ヨーク(11)との間に配置され、
複数の前記ティース(12)は、第3ティース(12C)及び第4ティース(12D)を有し、
前記スロット(18)は、前記第3ティース(12C)に面する第3スロット及び前記第4ティース(12D)に面する第4スロットを有し、
前記第1相巻線(15A)は、前記第3スロット内に配置されるように当該第3ティース(12C)の軸方向端部で当該第3ティース(12C)に向かって曲げられ、
前記第3ティース(12C)では、前記エンドプレート(20)における前記ヨーク(11)側の部分の方が、前記エンドプレート(20)における前記ギャップ(17)側の部分と比べて、前記第3スロットの方に延在する長さが大きく、
前記第2相巻線(15B)は、前記第4スロット内に配置されるように当該第4ティース(12D)の軸方向端部で当該第4ティース(12D)に向かって曲げられれ、
前記第4ティース(12D)では、前記エンドプレート(20)における前記ギャップ(17)側の部分の方が、前記エンドプレート(20)における前記ヨーク(11)側の部分と比べて、前記第4スロットの方に延在する長さが大きい
回転電気機械。
【請求項9】
請求項1又は2の回転電気機械(10)と、
前記回転電気機械(10)により駆動されて流体を圧縮する圧縮機構(2d)とを備える
圧縮機。
【請求項10】
請求項1又は2の回転電気機械(10)と、
前記回転電気機械(10)により駆動されて気体を送風する送風機構(51,61)とを備える
送風機。
【請求項11】
請求項1又は2の回転電気機械(10)を備える
冷凍装置。
【請求項12】
請求項1又は2の回転電気機械(10)を備える
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電気機械、圧縮機、送風機、冷凍装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、送風機、冷凍装置、車両などにおいて、回転電気機械であるモータが用いられる。モータは、ロータコアと、複数のティースが設けられたステータコアとを備える。複数のティースには巻線が巻き回される。巻線に通電することにより、電磁力が生じるので、モータとして機能する。
【0003】
巻線を巻き回すときにティースに圧縮応力がかかると、モータの磁気特性が悪化することが知られている。特にティースについては、磁束密度の主たる磁路となるため、応力による鉄損への影響が大きいので、ティースにかかる応力の緩和が求められる。
【0004】
特許文献1には、巻線が巻き回されるティース断面の角部を覆うように、円弧形状のスペーサを配置することにより、ティース角部に位置する巻線の軸方向外側への張り出しを小さくしてコイル端部の膨らみを最小限に抑えることが開示されている。これにより、コイル端部の軸方向寸法が小さくなり、モータを小型化できる。また、ティース角部にかかる巻線応力を緩和して、モータの信頼性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-328947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のモータでは、隣り合うティース同士の間のスロットの内部にも円弧形状のスペーサが配置されるため、スロット面積に占める巻線の割合である占積率が低下するので、モータの小型化、高効率化には不利である。
【0007】
本開示の目的は、回転電気機械においてティースにかかる巻線応力を緩和しながら占積率の低下を抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、回転軸心まわりに回転自在に構成されるロータコア(16)と、前記ロータコア(16)と径方向にギャップ(17)を介して対向するステータコア(13)と
を備える回転電気機械である。前記ステータコア(13)は、軸方向に積層された電磁鋼板からなり、円筒状のヨーク(11)及び前記ヨーク(11)から前記ロータコア(16)に向かって径方向に突出した複数のティース(12)を有する。複数の前記ティース(12)は、周方向に配列されると共に、周方向で隣り合う前記ティース(12)同士の間にスロット(18)が形成される。前記スロット(18)に巻線(15)が収容される。前記ステータコア(13)の軸方向端面に絶縁性のエンドプレート(20)が配置される。前記エンドプレート(20)は、前記巻線(15)と前記ステータコア(13)との間に配置されると共に、軸方向から見て前記スロット(18)の方に延在する。
【0009】
第1の態様では、ステータコア(13)と巻線(15)との間にエンドプレート(20)がスロット(18)の方に延在するように配置されるため、ティース(12)にかかる巻線(15)の応力を緩和できる。また、エンドプレート(20)におけるスロット(18)の方に延在する部分の長さを小さくすることにより、占積率の低下を抑制できる。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記エンドプレート(20)は、前記ステータコア(13)における前記スロット(18)を囲む面以外の他の面に接触し又は固定される。
【0011】
第2の態様では、ステータコア(13)におけるスロット(18)を囲む面にエンドプレート(20)が接触し又は固定される場合と比べて、占積率を確保しやすくなる。
【0012】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記エンドプレート(20)における前記巻線(15)と接触する部分には、フィレット又は面取りが設けられる。
【0013】
第3の態様では、エンドプレート(20)を挟んでティース(12)にかかる巻線(15)の応力のうち周方向成分や径方向成分を軸方向成分に転換することができる。これにより、本来であれば巻線(15)の応力によりティース(12)の磁気特性が劣化するものが、むしろ僅かであっても磁気特性を良くすることができる。
【0014】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記スロット(18)に配置される前記巻線(15)と前記ステータコア(13)との間に絶縁フィルム(30)が配置され、前記絶縁フィルム(30)と前記エンドプレート(20)とは、軸方向に所定長オーバーラップする。
【0015】
第4の態様では、巻線(15)の応力によって絶縁フィルム(30)が変形した場合にも、当該変形に起因してティース(12)にかかる応力を、エンドプレート(20)によって抑制することができる。
【0016】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、前記巻線(15)は、集中巻で複数の前記ティース(12)のそれぞれに巻き回される。
【0017】
第5の態様では、巻線(15)の構造が簡単になると共に、コイルエンドが少なくなり、銅損を小さくすることができる。
【0018】
本開示の第6の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、前記巻線(15)は、インサータ巻による分布巻で前記スロット(18)に挿入され、前記巻線(15)のコイルエンドが前記ヨーク(11)の軸方向端面まで延在するように前記巻線(15)が押圧加工される。
【0019】
第6の態様では、稼働時の騒音やコギングトルクを抑制することができる。
【0020】
本開示の第7の態様は、第6の態様において、複数の前記ティース(12)は、第1ティース(12A)及び第2ティース(12B)を有する。前記スロット(18)は、前記第1ティース(12A)に面する第1スロット及び前記第2ティース(12B)に面する第2スロットを有する。前記巻線(15)は、前記第1スロット内に配置されて、前記第1ティース(12A)の軸方向端部で当該第1ティース(12A)に向かって曲げられる。前記巻線(15)は、前記第2スロット内には配置されないか、又は、前記第2スロット内に配置されて、前記第2ティース(12B)の軸方向端部で当該第2ティース(12B)以外の向きに曲げられる。前記エンドプレート(20)は、前記第2ティース(12B)において前記第2スロットの方に延在する長さと比べて、前記第1ティース(12A)において前記第1スロットの方に延在する長さが大きい。
【0021】
第7の態様では、巻線(15)の応力が大きくなりやすい第1ティース(12A)で、エンドプレート(20)がスロット(18)の方に延在する長さを大きくしている。一方、巻線(15)の応力が小さい第2ティース(12B)で、エンドプレート(20)がスロット(18)の方に延在する長さが小さいか、又は、延在しない。このため、占積率の低下を抑制しつつ、第1ティース(12A)にかかる巻線(15)の応力を効率的に緩和できる。
【0022】
本開示の第8の態様は、第6又は第7の態様において、前記巻線(15)は、軸方向から見てコイルエンドが重なるように配置された第1相巻線(15A)及び第2相巻線(15B)を有する。前記第1相巻線(15A)のコイルエンドは、軸方向又は径方向から見て、前記第2相巻線(15B)のコイルエンドと前記ヨーク(11)との間に配置される。複数の前記ティース(12)は、第3ティース(12C)及び第4ティース(12D)を有する。前記スロット(18)は、前記第3ティース(12C)に面する第3スロット及び前記第4ティース(12D)に面する第4スロットを有する。前記第1相巻線(15A)は、前記第3スロット内に配置されるように当該第3ティース(12C)の軸方向端部で当該第3ティース(12C)に向かって曲げられる。前記第3ティース(12C)では、前記エンドプレート(20)における前記ヨーク(11)側の部分の方が、前記エンドプレート(20)における前記ギャップ(17)側の部分と比べて、前記第3スロットの方に延在する長さが大きい。前記第2相巻線(15B)は、前記第4スロット内に配置されるように当該第4ティース(12D)の軸方向端部で当該第4ティース(12D)に向かって曲げられれる。前記第4ティース(12D)では、前記エンドプレート(20)における前記ギャップ(17)側の部分の方が、前記エンドプレート(20)における前記ヨーク(11)側の部分と比べて、前記第4スロットの方に延在する長さが大きい。
【0023】
第8の態様では、巻線(15)の応力がヨーク(11)側で大きくなりやすい第3ティース(12C)では、エンドプレート(20)におけるヨーク(11)側の部分がスロット(18)の方に延在する長さを大きくする。また、巻線(15)の応力がギャップ(17)側で大きくなりやすい第4ティース(12D)では、エンドプレート(20)におけるギャップ(17)側の部分がスロット(18)の方に延在する長さを大きくする。このため、占積率の低下を抑制しつつ、ティース(12)にかかる巻線(15)の応力を効率的に緩和できる。
【0024】
本開示の第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つの回転電気機械(10)と、前記回転電気機械(10)により駆動されて流体を圧縮する圧縮機構(2d)とを備える圧縮機である。
【0025】
第9の態様では、回転電気機械(10)においてティース(12)にかかる巻線(15)の応力を緩和しながら占積率の低下を抑制できるので、圧縮機の小型化、高効率化を図ることができる。
【0026】
本開示の第10の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つの回転電気機械(10)と、前記回転電気機械(10)により駆動されて気体を送風する送風機構(51,61)とを備える送風機である。
【0027】
第10の態様では、回転電気機械(10)においてティース(12)にかかる巻線(15)の応力を緩和しながら占積率の低下を抑制できるので、送風機の小型化、高効率化を図ることができる。
【0028】
本開示の第11の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つの回転電気機械(10)を備える冷凍装置である。
【0029】
第11の態様では、回転電気機械(10)においてティース(12)にかかる巻線(15)の応力を緩和しながら占積率の低下を抑制できるので、冷凍装置の小型化、高効率化を図ることができる。
【0030】
本開示の第12の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つの回転電気機械(10)を備える車両である。
【0031】
第12の態様では、回転電気機械(10)においてティース(12)にかかる巻線(15)の応力を緩和しながら占積率の低下を抑制できるので、車両の小型化、高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態1に係るモータの断面構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施形態1に係るモータのステータコアの斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るモータのエンドプレートの斜視図である。
図4図4は、実施形態1に係るモータにおいてティースに巻線を巻き回す様子を示す模式図である。
図5図5は、実施形態1の変形例に係るモータにおいてインサータ巻による分布巻を巻線に用いた場合の平面構成の一例を示す模式図である。
図6図6は、実施形態1の変形例に係るモータにおける巻線の配線構成の一例を示す模式図である。
図7図7は、実施形態1の変形例に係るモータにおいてティースに巻線が巻き回された様子を示す模式図である。
図8図8は、実施形態1の変形例に係るモータにおけるティースとエンドプレートとの配置関係の一例を示す模式図である。
図9図9は、実施形態2に係る空気調和装置の概略構成図である。
図10図10は、実施形態3に係る電気自動車の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表す場合がある。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いは、その用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0034】
(実施形態1)
実施形態1に係る回転電気機械であるモータ(10)について、図1図4を参照しながら説明する。尚、本開示において、「回転電気機械」とは、「モータ(電動機)」及び「発電機」の両方を含む概念である。
【0035】
モータ(10)は、本実施形態では、インナーロータ型であり、主として、ステータコア(13)と、ロータコア(16)とを備える。ロータコア(16)は、ステータコア(13)の内径側にステータコア(13)と同軸で回転自在に設けられる。以下、ロータコア(16)の回転軸心の延びる方向を「軸方向」、回転軸心から外側に向かう方向、言い換えれば、回転軸心と直交する方向を「径方向」、ロータコア(16)の回転方向を「周方向」と称する。
【0036】
ステータコア(13)は、ロータコア(16)と径方向にギャップ(17)を介して対向する。ステータコア(13)及びロータコア(16)はそれぞれ、軸方向に積層された電磁鋼板から構成される。ステータコア(13)は、円筒状のヨーク(11)と、ヨーク(11)からロータコア(16)に向かって径方向に突出した複数(例えば6個)のティース(12)を有する。複数のティース(12)は、周方向に回転対称に配列される。周方向で隣り合うティース(12)同士の間にスロット(18)が形成される。各ティース(12)には巻線(15)が巻き回され、スロット(18)内に巻線(15)が収容される。巻線(15)は、本実施形態では、集中巻で複数のティース(12)のそれぞれに巻き回される。
【0037】
モータ(10)は、例えば周方向に連続する3個のティース(12)がそれぞれU相、V相及びW相を形成する三相型である。モータ(10)が起動されると、巻線(15)に交流電力が供給され、ギャップ(17)内に回転磁界が発生する。ロータコア(16)は、当該回転磁界に引き寄せられることにより、回転する。
【0038】
巻線(15)とステータコア(13)とは、例えばPEN、PETなどのポリエステル樹脂からなる絶縁フィルム(30)によって絶縁されてもよい。絶縁フィルム(30)は、図2に示すように、ステータコア(13)におけるスロット(18)を囲む面を覆うように設けられる。尚、図2において、スロット(18)の1つについて絶縁フィルム(30)の図示を省略している。
【0039】
ステータコア(13)の軸方向端面(図2参照)には、図3に示す絶縁性のエンドプレート(20)が配置される。エンドプレート(20)は、巻線(15)とステータコア(13)との間に配置される。エンドプレート(20)は、例えばPPS、PBT、LCP等のエンジニアリングプラスチックから構成され、ガラス繊維を含むことが望ましい。
【0040】
エンドプレート(20)は、本実施形態では、ステータコア(13)におけるスロット(18)を囲む面以外の他の面に接触し又は固定される。より詳しくは、エンドプレート(20)は、スロット(18)の内部のコア積層面(スロット壁面)以外の他のコア積層面と周方向又は径方向に接触し又は固定される。また、スロット(18)の周辺では、エンドプレート(20)は、ステータコア(13)の軸方向端面のみと接触する。言い換えると、スロット(18)の内部のコア積層面(スロット壁面)にエンドプレート(20)は接触しない。また、エンドプレート(20)は、スロット(18)の内部には入り込まないように設けられてもよい。この場合、エンドプレート(20)は、径方向から見てスロット壁面と対向しない。或いは、エンドプレート(20)は、径方向から見てスロット壁面と空隙を空けて対向するように設けられてもよい。
【0041】
エンドプレート(20)は、図3に示すように、主として、外周壁部(21)とティース保護部(23)と内周壁部(25)とを有する。外周壁部(21)は、ヨーク(11)上に配置される。外周壁部(21)は、エンドプレート(20)の外周部の所定の位置に、突起部(22)を有する。突起部(22)は、ステータコア(13)側に突出し、ステータコア(13)に固定される。突起部(22)は、ステータコア(13)の外周壁に設けられた溝部(19)に嵌め込まれ、これにより、エンドプレート(20)がステータコア(13)に固定される。エンドプレート(20)は、接着剤によりステータコア(13)に固定されてもよい。ティース保護部(23)は、外周壁部(21)に接続され、各ティース(12)の軸方向端面と接触する。内周壁部(25)は、ティース保護部(23)における外周壁部(21)の反対側に接続され、巻線(15)のコイルエンドがロータコア(16)の方に倒れることを防止する。エンドプレート(20)には、スロット(18)を露出させるように開口(24)が設けられる。開口(24)は、外周壁部(21)とティース保護部(23)と内周壁部(25)とに囲まれる。エンドプレート(20)は、ステータコア(13)の軸方向端面毎に一体成型されてもよいし、或いは、複数の部材を組み合わせて構成されてもよい。
【0042】
エンドプレート(20)は、軸方向から見てスロット(18)の方に延在するように設けられる。言い換えると、エンドプレート(20)は、軸方向から見てスロット(18)とオーバーラップする部分を有する。エンドプレート(20)は、ティース(12)からスロット(18)の方に延在するのみならず、ヨーク(11)からスロット(18)の方に延在してもよい。エンドプレート(20)は、ティース(12)上ではティース(12)の幅よりも若干大きい幅を有し、ヨーク(11)上ではヨーク(11)の幅よりも若干大きい幅を有してもよい。エンドプレート(20)は、ティース(12)及びヨーク(11)のそれぞれからスロット(18)の方に「軒」を突き出すように設けられてもよい。
【0043】
図4は、エンドプレート(20)が設けられたティース(12)を径方向から見た場合の断面構成を示す。図4の(a)は、スロット(18)の内部に絶縁フィルム(30)が配置されない場合を示し、(b)は、スロット(18)の内部に絶縁フィルム(30)が配置される場合を示す。
【0044】
図4に示すように、ティース(12)の軸方向の両端面にそれぞれ、絶縁部材であるエンドプレート(20)(ティース保護部(23))が設けられる。ティース保護部(23)の周方向幅は、ティース(12)の周方向幅よりも若干大きく設定され、ティース保護部(23)は、ティース(12)の両側のスロット(18)の方に少し突き出し、当該突き出し部分にも巻線(15)が巻き回される。この突き出し部分の周方向長さは、0.1mm以上1mm以下、好ましくは、0.2mm以上0.5mm以下であってもよい。これにより、巻線(15)による応力が、ティース(12)におけるスロット(18)に面する側面にかからないようにすることができるので、磁気特性の劣化を防止できる。また、適切な張力をもって巻線(15)をティース(12)にエンドプレート(20)を挟んで巻き回すことによって、占積率の低下をまねくことなく、コイルエンドを縮小できる
また、図4に示すように、エンドプレート(20)におけるステータコア(13)と接する面を除く部分、つまり、エンドプレート(20)における巻線(15)と接触する部分には、比較的大きいフィレット又は面取りが設けられる。言い換えると、エンドプレート(20)における巻線(15)と接触する部分が鋭角や直角とならないようにする。エンドプレート(20)に設けるフィレット又は面取りの寸法は、巻線(15)の線径(直径)の2倍以上、好ましくは4倍以上であってもよい。このようにすると、フィレット又は面取りが無い場合にはティース(12)の幅方向に大きく作用する巻線(15)の応力の一部が、フィレット又は面取りによって軸方向に作用する応力に変換される。また、エンドプレート(20)におけるティース(12)の幅方向両端にそれぞれフィレットや面取りを設ければ、各端部で幅方向に作用する応力同士が相殺されるので、エンドプレート(20)を介してティース(12)にかかる応力は、実質的に軸方向に作用する応力のみとなり、これは、ティース(12)の磁気特性の向上をもたらす。
【0045】
図4では、ティース(12)に巻線(15)を反時計回りに巻き回す場合にエンドプレート(20)に特に強く作用する応力を矢印で示している。巻線(15)が最初にエンドプレート(20)に触れる箇所では、巻線(15)の張力が特に強く作用してエンドプレート(20)が変形しやすいので、このような箇所ではエンドプレート(20)の突き出し長さを大きくしてもよい。
【0046】
巻線(15)とステータコア(13)との間に絶縁フィルム(30)が配置される場合(図4の(b)参照)は、絶縁フィルム(30)が、エンドプレート(20)と軸方向に所定長オーバーラップしてもよい。エンドプレート(20)を配置した後に絶縁フィルム(30)を配置すると、巻線(15)、絶縁フィルム(30)、エンドプレート(20)、絶縁フィルム(30)、巻線(15)の順に周方向に並ぶようにオーバラップが生じる。また、ティース(12)と巻線(15)との間には絶縁フィルム(30)が介在するので、巻線(15)がティース(12)に接触することはない。
【0047】
尚、エンドプレート(20)のヤング率は、絶縁フィルム(30)のヤング率よりも大きいこと、つまり、エンドプレート(20)は絶縁フィルム(30)よりも硬いことが好ましい。また、絶縁フィルム(30)の厚さは、例えば0.25mm~0.3mm程度であり、エンドプレート(20)の突き出し長さも同程度であるが、エンドプレート(20)の突き出し長さを小さくするほど、占積率の向上には有利である。
【0048】
<変形例>
本変形例が、前記実施形態1と異なる点は、巻線(15)が、インサータ巻による分布巻でスロット(18)に挿入されることである。
【0049】
図5に示すように、本変形例では、巻線(15)は、第1相巻線(15A)、第2相巻線(15B)、及び第3相巻線(15C)を有し、第1相巻線(15A)、第3相巻線(15C)、第2相巻線(15B)の順にスロット(18)に挿入される。
【0050】
本変形例では、インサータ巻による分布巻で各相の巻線(15)がスロット(18)に挿入された後、各相の巻線(15)のコイルエンドがヨーク(11)の軸方向端面まで延在するように押圧加工が行われる。尚、図5は、巻線仕様を示す模式図であって、各スロット(18)にはスロット面積いっぱいに巻線(15)が入り、押圧加工が行われた後、コイルエンドは、当該コイルエンドがまたぐスロット(18)の巻線(15)を外径側に避けて通るように設けられる。そのため、コイルエンドは実際には、第1相巻線(15A)が最もステータコア(13)に近接し、次に第3相巻線(15C)、第2相巻線(15B)の順に軸方向に重ねられていくことになる。この押圧加工により、本変形例ではステータコア(13)に軸方向の応力がかかりやすい。具体的には、第1相巻線(15A)のコイルエンドは、軸方向又は径方向から見て、第2相巻線(15B)のコイルエンドとヨーク(11)との間に配置され、第3相巻線(15C)のコイルエンドは、軸方向又は径方向から見て、第2相巻線(15B)のコイルエンドと第1相巻線(15A)のコイルエンドとの間に配置される。
【0051】
図6は、第1相巻線(15A)、第2相巻線(15B)、及び第3相巻線(15C)の配線構成の一例を示す。本例では、ティース(12)の配置数つまりスロット(18)の配置数は48である。図6に示すように、複数のティース(12)は、複数の第1ティース(12A)と複数の第2ティース(12B)とを有する。図6では、各相の巻線(15)毎に、同じティース(12)を三段に分けて示すと共に、第1ティース(12A)を一点鎖線で囲んでいる。各相の巻線(15)は、第1ティース(12A)に面するスロット(18)(第1スロット)内に配置されるように当該第1ティース(12A)の軸方向端部で当該第1ティース(12A)に向かって曲げられる。一方、各相の巻線(15)は、第2ティース(12B)に面するスロット(18)(第2スロット)内には配置されないか、又は、当該第2スロット内に配置されるように第2ティース(12B)の軸方向端部で当該第2ティース(12B)以外の向きに曲げられる。尚、例えば、第1ティース(12A)と第2ティース(12B)とが隣接するような場合、第1スロットと第2スロットとは同一のスロット(18)であってもよい。この場合には、当該スロット(18)を第1スロットとする。
【0052】
本変形例でも、エンドプレート(20)は、図3に示す前記実施形態1と同様の構成を有する。また、エンドプレート(20)は、軸方向から見てスロット(18)の方に延在するように設けられる。言い換えると、エンドプレート(20)は、軸方向から見てスロット(18)とオーバーラップする部分を有する。エンドプレート(20)は、ティース(12)からスロット(18)の方に延在するのみならず、ヨーク(11)からスロット(18)の方に延在してもよい。エンドプレート(20)は、ティース(12)上ではティース(12)の幅よりも若干大きい幅を有し、ヨーク(11)上ではヨーク(11)の幅よりも若干大きい幅を有してもよい。エンドプレート(20)は、ティース(12)及びヨーク(11)のそれぞれからスロット(18)の方に「軒」を突き出すように設けられてもよい。
【0053】
本変形例では、図7に示すように、エンドプレート(20)は、第2ティース(12B)においてスロット(18)(第2スロット)の方に延在する長さがと比べて、第1ティース(12A)においてスロット(18)(第1スロット)の方に延在する長さが大きい。図7は、エンドプレート(20)が設けられたティース(12)を径方向から見た場合の断面構成を示し、図7の(a)は、第1ティース(12A)及びその周辺の断面構成を示し、図7の(b)は、第2ティース(12B)及びその周辺の断面構成を示す。
【0054】
図7の(a)に示すように、エンドプレート(20)のティース保護部(23)の周方向幅は、第1ティース(12A)の周方向幅よりも若干大きく設定され、ティース保護部(23)は、第1ティース(12A)の両側のスロット(18)の方に少し突き出し、当該突き出し部分にも巻線(15)が巻き回される。この突き出し部分の周方向長さは、0.1mm以上1mm以下、好ましくは、0.2mm以上0.5mm以下であってもよい。これにより、巻線(15)による応力が、第1ティース(12A)におけるスロット(18)に面する側面にかからないようにすることができるので、磁気特性の劣化を防止できる。また、巻線(15)をスロット(18)に挿入した後にコイルエンドを成形することによって、占積率の低下をまねくことなく、コイルエンドを縮小できる。
【0055】
一方、巻線(15)による応力がほぼ生じない第2ティース(12B)では、図7の(b)に示すように、エンドプレート(20)のティース保護部(23)の周方向幅を、第2ティース(12B)の周方向幅と同程度に設定し、ティース保護部(23)の側面を第2ティース(12B)と略面一にしてもよい。これにより、占積率の向上を図ることができる。
【0056】
また、図7に示すように、エンドプレート(20)におけるステータコア(13)と接する面を除く部分、つまり、エンドプレート(20)における巻線(15)と接触する部分には、比較的大きいフィレット又は面取りが設けられる。言い換えると、エンドプレート(20)における巻線(15)と接触する部分が鋭角や直角とならないようにする。エンドプレート(20)に設けるフィレット又は面取りの寸法は、巻線(15)の線径(直径)の2倍以上、好ましくは4倍以上であってもよい。このようにすると、フィレット又は面取りが無い場合にはティース(12)の幅方向に大きく作用する巻線(15)の応力の一部が、フィレット又は面取りによって軸方向に作用する応力に変換される。これは、ティース(12)の磁気特性の向上をもたらす。
【0057】
巻線(15)とステータコア(13)との間に絶縁フィルム(30)が配置される場合、絶縁フィルム(30)が、エンドプレート(20)と軸方向に所定長オーバーラップしてもよい。この場合、ティース(12)と巻線(15)との間に絶縁フィルム(30)が介在するので、巻線(15)がティース(12)に接触することはない。エンドプレート(20)のヤング率は、絶縁フィルム(30)のヤング率よりも大きいこと、つまり、エンドプレート(20)は絶縁フィルム(30)よりも硬いことが好ましい。また、絶縁フィルム(30)の厚さは、例えば0.25mm~0.3mm程度であり、エンドプレート(20)の突き出し長さも同程度であるが、エンドプレート(20)の突き出し長さを小さくするほど、占積率の向上には有利である。
【0058】
図8に示すように、本変形例では、複数のティース(12)は、第3ティース(12C)と第4ティース(12D)とを有する。第1相巻線(15A)は、第3ティース(12C)に面するスロット(18)(第3スロット)内に配置されるように当該第3ティース(12C)の軸方向端部で当該第3ティース(12C)に向かって曲げられる。第2相巻線(15B)は、第4ティース(12D)に面するスロット(18)(第4スロット)内に配置されるように当該第4ティース(12D)の軸方向端部で当該第4ティース(12D)に向かって曲げられれる。尚、図8に示すように、同じティース(12)が、第3ティース(12C)であり且つ第4ティース(12D)であってもよい。
【0059】
図8に示すように、第3ティース(12C)では、エンドプレート(20)のティース保護部(23)におけるヨーク(11)側の部分の方が、当該ティース保護部(23)におけるギャップ(17)側の部分と比べて、第1相巻線(15A)が配置されるスロット(18)(第3スロット)の方に延在する長さが大きい。また、第4ティース(12D)では、エンドプレート(20)のティース保護部(23)におけるギャップ(17)側の部分の方が、当該ティース保護部(23)におけるヨーク(11)側の部分と比べて、第2相巻線(15B)が配置されるスロット(18)(第4スロット)の方に延在する長さが大きい。
【0060】
<実施形態1及びその変形例の特徴>
以上に説明したように、実施形態1又はその変形例に係るモータ(10)では、ステータコア(13)と巻線(15)との間にエンドプレート(20)がスロット(18)の方に延在するように配置されるため、ティース(12)にかかる巻線(15)の応力を緩和できる。また、エンドプレート(20)におけるスロット(18)の方に延在する部分の長さを小さくすることにより、占積率の低下を抑制できる。
【0061】
実施形態1又はその変形例に係るモータ(10)において、エンドプレート(20)が、ステータコア(13)におけるスロット(18)を囲む面以外の他の面に接触し又は固定されると、ステータコア(13)におけるスロット(18)を囲む面にエンドプレート(20)が接触し又は固定される場合と比べて、占積率を確保しやすくなる。
【0062】
実施形態1又はその変形例に係るモータ(10)において、エンドプレート(20)における巻線(15)と接触する部分にフィレット又は面取りが設けられると、エンドプレート(20)を挟んでティース(12)にかかる巻線(15)の応力のうち周方向成分や径方向成分を軸方向成分に転換することができる。これにより、本来であれば巻線(15)の応力によりティース(12)の磁気特性が劣化するものが、むしろ僅かであっても磁気特性を良くすることができる。
【0063】
実施形態1又はその変形例に係るモータ(10)において、スロット(18)に配置される巻線(15)とステータコア(13)との間に絶縁フィルム(30)が配置され、絶縁フィルム(30)とエンドプレート(20)とは、軸方向に所定長オーバーラップしてもよい。このようにすると、巻線(15)の応力によって絶縁フィルム(30)が変形した場合にも、当該変形に起因してティース(12)にかかる応力を、エンドプレート(20)によって抑制することができる。
【0064】
実施形態1に係るモータ(10)では、巻線(15)が集中巻で複数のティース(12)のそれぞれに巻き回されるので、巻線(15)の構造が簡単になると共に、コイルエンドが少なくなり、銅損を小さくすることができる。
【0065】
変形例に係るモータ(10)では、巻線(15)は、インサータ巻による分布巻でスロット(18)に挿入されるので、稼働時の騒音やコギングトルクを抑制することができる。
【0066】
変形例に係るモータ(10)では、複数のティース(12)は、第1ティース(12A)及び第2ティース(12B)を有する。スロット(18)は、第1ティース(12A)に面する第1スロット及び第2ティース(12B)に面する第2スロットを有する。巻線(15)は、第1スロット内に配置されて、第1ティース(12A)の軸方向端部で当該第1ティース(12A)に向かって曲げられる。巻線(15)は、第2スロット内には配置されないか、又は、第2スロット内に配置されて、第2ティース(12B)の軸方向端部で当該第2ティース(12B)以外の向きに曲げられる。このような構成において、エンドプレート(20)では、第2ティース(12B)において第2スロットの方に延在する長さと比べて、第1ティース(12A)において第1スロットの方に延在する長さを大きくする。すなわち、巻線(15)の応力が大きくなりやすい第1ティース(12A)で、エンドプレート(20)がスロット(18)の方に延在する長さを大きくしている。一方、巻線(15)の応力が小さい第2ティース(12B)で、エンドプレート(20)がスロット(18)の方に延在する長さが小さいか、又は、延在しない。このため、占積率の低下を抑制しつつ、第1ティース(12A)にかかる巻線(15)の応力を効率的に緩和できる。
【0067】
変形例に係るモータ(10)では、巻線(15)は、軸方向から見てコイルエンドが重なるように配置された第1相巻線(15A)及び第2相巻線(15B)を有する。第1相巻線(15A)のコイルエンドは、軸方向又は径方向から見て、第2相巻線(15B)のコイルエンドとヨーク(11)との間に配置される。複数のティース(12)は、第3ティース(12C)及び第4ティース(12D)を有する。スロット(18)は、第3ティース(12C)に面する第3スロット及び第4ティース(12D)に面する第4スロットを有する。第1相巻線(15A)は、第3スロット内に配置されるように当該第3ティース(12C)の軸方向端部で当該第3ティース(12C)に向かって曲げられる。第2相巻線(15B)は、第4スロット内に配置されるように当該第4ティース(12D)の軸方向端部で当該第4ティース(12D)に向かって曲げられれる。このような構成において、巻線(15)の応力がヨーク(11)側で大きくなりやすい第3ティース(12C)では、エンドプレート(20)におけるヨーク(11)側の部分の方がギャップ(17)側の部分と比べて、第1相巻線(15A)が配置されるスロット(18)(第3スロット)の方に延在する長さが大きくてもよい。また、巻線(15)の応力がギャップ(17)側で大きくなりやすい第4ティース(12D)では、エンドプレート(20)におけるギャップ(17)側の部分の方がヨーク(11)側の部分と比べて、第2相巻線(15B)が配置されるスロット(18)(第4スロット)の方に延在する長さが大きくてもよい。このようにすると、占積率の低下を抑制しつつ、ティース(12)にかかる巻線(15)の応力を効率的に緩和できる。
【0068】
特に、同じティース(12)における径方向の異なる部分に反対方向の応力がかかる場合(つまり同じティース(12)が第3ティース(12C)であり且つ第4ティース(12D)である場合)にはティース(12)の変形の恐れがある。しかし、以上に説明した変形例に係るモータ(10)のように、エンドプレート(20)の変形を考慮して、応力の集中しやすい部分でエンドプレート(20)を多めに突き出させれば、ティース(12)の変形の抑制に有効である。
【0069】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係る空気調和装置(1)の概略構成図である。空気調和装置(1)は、実施形態1又はその変形例に係るモータ(10)により駆動される圧縮機(2)又は送風機(50,60)を備える冷凍装置の一例である。
【0070】
空気調和装置(1)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、対象空間の空調を行う装置である。空気調和装置(1)は、冷房運転を実行可能であり、主として、圧縮機(2)と、熱源側熱交換器(3)と、膨張機構(4)と、利用側熱交換器(5)とを備える。
【0071】
圧縮機(2)は、吸入管(6)を流れる低圧の冷媒を吸入口(2a)から吸入し、吸入した冷媒を圧縮して高圧の冷媒とした後に、吐出口(2b)から吐出管(7)へと吐出する。吸入管(6)は、利用側熱交換器(5)から出た冷媒を圧縮機(2)へと導く冷媒管であり、吐出管(7)は、圧縮機(2)から吐出された冷媒を熱源側熱交換器(3)の入口へと導く冷媒管である。
【0072】
圧縮機(2)は、主として、圧縮機構(2d)とモータ(2e)とを備える。圧縮機構(2d)は、クランク軸となる回転軸(2c)を通じてモータ(2e)により駆動され、吸入管(6)から流入する冷媒を圧縮する。モータ(2e)は、例えば、実施形態1又はその変形例のモータ(10)である。
【0073】
熱源側熱交換器(3)は、冷却源としての水又は空気と熱交換させることにより、圧縮機(2)から吐出された冷媒の放熱を行う冷媒の放熱器として機能する。熱源側熱交換器(3)の一端は、吐出管(7)を介して圧縮機(2)に接続される。熱源側熱交換器(3)の他端は、膨張機構(4)に接続される。
【0074】
熱源側熱交換器(3)の冷却源として空気を用いる場合、図9に示すように、熱源側熱交換器(3)の近傍には熱源側送風機(50)が配置される。熱源側送風機(50)は、主として、送風ファン(51)とモータ(52)とを備える。送風ファン(51)は、モータ(52)の駆動により回転し気体を送風する。送風ファン(51)により搬送される空気は、熱源側熱交換器(3)を通過し、冷媒との間で熱交換が行われる。モータ(52)は、例えば、実施形態1のモータ(10)又はその変形例である。
【0075】
膨張機構(4)は、熱源側熱交換器(3)で放熱された冷媒の減圧を行う機構であり、例えば、電動膨張弁から構成される。膨張機構(4)の一端は、熱源側熱交換器(3)に接続される。膨張機構(4)の他端は、利用側熱交換器(5)に接続される。
【0076】
利用側熱交換器(5)は、加熱源としての水又は空気と熱交換させることにより、膨張機構(4)で減圧された冷媒の加熱を行う冷媒の加熱器として機能する。利用側熱交換器(5)の一端は、膨張機構(4)に接続される。利用側熱交換器(5)の他端は、吸入管(6)を介して圧縮機(2)に接続される。
【0077】
利用側熱交換器(5)の加熱源として空気を用いる場合、図9に示すように、利用側熱交換器(5)の近傍には利用側送風機(60)が配置される。利用側送風機(60)は、主として、送風ファン(61)とモータ(62)とを備える。送風ファン(61)は、モータ(62)の駆動により回転し気体を送風する。送風ファン(61)により搬送される空気は、利用側熱交換器(5)を通過し、冷媒との間で熱交換が行われる。モータ(62)は、例えば、実施形態1又はその変形例のモータ(10)である。
【0078】
空気調和装置(1)において、圧縮機(2)、熱源側熱交換器(3)、膨張機構(4)及び利用側熱交換器(5)は、吸入管(6)及び吐出管(7)を含む冷媒配管によって順次接続されることにより、冷媒が循環する経路(8)を構成する。
【0079】
本実施形態の冷凍装置(空気調和装置(1))において、圧縮機(2)又は送風機(50)若しくは送風機(60)に実施形態1又はその変形例のモータ(10)を用いると、モータ(10)のティース(12)にかかる巻線(15)の応力を緩和しながら占積率の低下を抑制できる。従って、圧縮機(2)又は送風機(50)若しくは送風機(60)の小型化、高効率化、ひいては、冷凍装置の小型化、高効率化を図ることができる。
【0080】
(実施形態3)
図10は、実施形態3に係る電気自動車(100)の概略構成図である。電気自動車(100)は、実施形態1又はその変形例に係るモータ(10)により車輪(105)を駆動させて走行する車両の一例である。車両は、バッテリを電源とし且つエンジン等の他の原動機を備えない狭義の電気自動車であってもよいし、又は燃料電池車若しくはハイブリッド車等であってもよい。
【0081】
電気自動車(100)は、主として、駆動系(101)と、バッテリ(102)と、制御装置(110)とを備える。駆動系(101)は、主として、インバータ(103)と、モータ(104)と、車輪(105)とから構成される。尚、本実施形態では、図10に示すように、モータ(104)が車輪(105)ごとに1つずつ設けられている場合について説明するが、モータ(104)が前輪のみ若しくは後輪のみに設けられてもよいし、前輪用及び後輪用にそれぞれ1つずつ設けられていてもよいし、又は、各車輪ごとに設けられてもよい。
【0082】
電源であるバッテリ(102)は、制御装置(110)の制御に従って、電力線(106)を介して所定の電力値の直流電力をインバータ(103)に供給する。図示は省略しているが、電力線(106)には、ヒューズや電磁開閉器等の必要な部品等が適宜取り付けられる。
【0083】
インバータ(103)は、バッテリ(102)から供給された直流電力を制御装置(110)の制御に従って交流電力に変換する。インバータ(103)とモータ(104)とは、三相線等の配線(107)で接続されており、インバータ(103)は配線(107)を介して交流電力をモータ(104)に供給する。インバータ(103)とモータ(104)とが配線(107)で接続されて1つの駆動系(101)が構成される。
【0084】
モータ(104)は、例えば、実施形態1又はその変形例のモータ(10)である。
【0085】
制御装置(110)は、例えば電子制御ユニット(ECU)で構成される。制御装置(110)は、前述のように、バッテリ(102)を制御してインバータ(103)に供給する直流電力の電力値を制御する。制御装置(110)は、インバータ(103)に例えばパルス幅変調信号を送信してインバータ(103)を制御し、モータ(104)に供給する交流電流の周波数を変化させてモータ(104)の回転数つまり車輪(105)の回転数を変化させる。このように、制御装置(110)は、バッテリ(102)やインバータ(103)を含む駆動系(101)を制御する。
【0086】
本実施形態では、図10に示すように、バッテリ(102)が、駆動系(101)ごとに1つずつ設けられ、駆動系(101)ごとにバッテリ(102)とインバータ(103)とが電力線(106)で接続される場合を例示した。しかし、これに代えて、バッテリ(102)から複数のインバータ(103)に電力を供給するように構成してもよい。また、バッテリ(102)とインバータ(103)とが2本の電力線(106)で接続され、インバータ(103)とモータ(104)とが3本の配線(107)で接続される場合を例示したが、電力線(106)や配線(107)の本数はこれらに限られない。
【0087】
本実施形態の車両(電気自動車(100))において、車輪(105)を駆動させるために実施形態1又はその変形例のモータ(10)を用いると、モータ(10)のティース(12)にかかる巻線(15)の応力を緩和しながら占積率の低下を抑制できる。従って、車両の小型化、高効率化を図ることができる。
【0088】
(その他の実施形態)
前記各実施形態(変形例を含む。以下同じ。)では、回転電気機械としてモータ(10)について説明したが、モータ(10)と同様の構成を発電機に適用してもよい。
【0089】
また、前記各実施形態では、外周側にステータコア(13)が配置され且つ内周側にロータコア(16)が配置されたインナーロータ型のモータ(10)について説明したが、これに代えて、外周側にロータが配置され且つ内周側にステータが配置されたアウターロータ型のモータを構成してもよい。
【0090】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態は、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、以上に述べた「第1」、「第2」、・・・という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本開示は、回転電気機械、圧縮機、送風機、冷凍装置、及び車両について有用である。
【符号の説明】
【0092】
1 空気調和装置(冷凍装置)
2 圧縮機
10 モータ(回転電気機械)
11 ヨーク
12 ティース
13 ステータコア
15 巻線
16 ロータコア
17 ギャップ
18 スロット
20 エンドプレート
30 絶縁フィルム
50 送風機
60 送風機
100 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10