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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158743
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】床パネル受け部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
E04B5/02 C
E04B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068704
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】313015122
【氏名又は名称】日鉄物産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 俊也
(57)【要約】
【課題】重量床衝撃音を小さくすることができる床パネル受け部材を提供する。
【解決手段】梁Hの上フランジ部Haに取り付け固定される取付部2と、
厚みのある断面視直線状の連結部4と、
床パネルPが設置される受け部3と、を有し、
連結部4の左側面40aが取付部2の右側面21a及び右側面20cに連結され、連結部4の右側面41aが受け部3の左側面3bに連結されてなり、
取付部2と、連結部4と、受け部3とは、鋳造により一体形成されてなる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁フランジ部に取り付け固定される取付部と、
厚みのある断面視直線状の連結部と、
床パネルが設置される受け部と、を有し、
前記連結部の一側面が前記取付部の一側面に連結され、前記連結部の他側面が前記受け部の一側面に連結されてなり、
前記取付部と、前記連結部と、前記受け部とは、鋳造により一体形成されてなる床パネル受け部材。
【請求項2】
前記取付部には、前記梁フランジ部に取り付け固定される際に使用される取付孔が設けられると共に、この取付孔の位置から前記取付部の一側面に向かって二次曲線状に形成される補強リブが設けられてなる請求項1に記載の床パネル受け部材。
【請求項3】
前記連結部と前記受け部が一体的に設けられることによって生じる隅部には、フィレットが設けられてなる請求項1又は2に記載の床パネル受け部材。
【請求項4】
前記フィレットは、前記受け部の他側面側から、前記連結部の下側面側に向かって二次曲線状に形成されてなる請求項3に記載の床パネル受け部材。
【請求項5】
前記取付部と、前記連結部とが、断面視でT字状となり、且つ、前記受け部と、前記連結部とが、断面視でT字状となるように、前記取付部と、前記連結部と、前記受け部とが、鋳造により一体形成されてなる請求項3に記載の床パネル受け部材。
【請求項6】
前記受け部には、貫通孔又は薄肉部が設けられてなる請求項1に記載の床パネル受け部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床パネル受け部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鉄骨造の建築では、梁材としてH形鋼が使用されている(例えば、特許文献1参照)。住宅用の鉄骨造建築では標準化された床パネルが、梁材上に設置され、専用の固定金具やボルトナットで固定されるようになっている。また、工業化住宅の場合であれば、H形鋼の上下フランジ部に、予め、一定ピッチで貫通孔が設けられており、この上フランジ部に、床パネルが50mm程度乗せ掛けられてボルトや専用金具で固定されるようになっている。
【0003】
しかしながら、上フランジ部には、上階の柱などが設置される箇所があり、床パネルを設置するスペースがないことから、床パネル受け部材が必要となる。この床パネル受け部材について、図4図7を参照して具体的に説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6284287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す床パネル受け部材100は、H形鋼からなる梁Hの上フランジ部Haの右側面Ha1に溶け込み溶接にて接合される断面視平坦な板状からなるものである。この床パネル受け部材100の上部には、図4に示すように、床パネルPが設置される。しかしながら、この床パネル受け部材100は、現場で、H形鋼からなる梁Hの上フランジ部Haの右側面Ha1に溶け込み溶接で取り付けなければならないことから、高所での現場溶接が必要であるばかりか、作業に危険を伴い、さらには、作業時間が非常にかかり、コストが高いという問題があった。そしてさらに、溶接部分に接触しないように、床パネルPを、梁Hの上フランジ部Haの右側面Ha1から離した上で、床パネル受け部材100の上部に床パネルPを設置しなければならないことから、梁Hの上フランジ部Haの右側面Ha1から床パネルPの左側面Paまでの距離d10が長くなり、もって、床パネル受け部材100の変形量(たわみ量)が大きくなるという問題があった。すなわち、床パネル受け部材100の変形量(たわみ量)が大きくなると、重量床衝撃音(子供が飛び跳ねたり、物を落下させたりした場合に発生する衝撃音)が大きくなるという傾向があり、もって、床性能の評価値が低くなるという問題があった。
【0006】
一方、図6に示すような床パネル受け部材110も知られている。この床パネル受け部材110は、断面視L字状の取付部111と、断面視L字状の受け部112と、で構成されている。この取付部111は、図6に示すように、取付水平部111aと、取付垂直部111bとで構成され、取付水平部111aが、H形鋼からなる梁Hの上フランジ部Haに一定ピッチで設けられている貫通孔Ha2を利用して、ボルト等にて上フランジ部Haに取り付け固定されるようになっている。そして、取付垂直部111bの下側部111b1が、隅肉溶接にて、受け部112に接合されている。この受け部112は、図6に示すように、受け水平部112aと、受け垂直部112bとで構成され、受け水平部112aの上面112a1と、上フランジ部Haの上面Ha3とがレベルが同一となるように、取付水平部111aの上面111a1より下方に位置する右側面111a2に、受け水平部112aの左側面112a2の上面112a1が、隅肉溶接にて接合されている。これにより、取付部111と、受け部112とが一体的に連結されることとなり、もって、受け部112の上面112a1に床パネルPが設置できることとなる。
【0007】
しかしながら、このような床パネル受け部材110は、2つの部材を用いて溶接しなければならないことから、費用と工期が嵩む上に品質精度のバラツキも多い。そしてさらに、取付水平部111aと、取付垂直部111bとは、同一厚みで形成され、さらに、受け水平部112aと、受け垂直部112bも同一厚みで形成されていることから、取付垂直部111b及び受け垂直部112bだけ厚みを小さくすることができず、もって、無駄な厚みがあるばかりか、溶接部分に接触しないように、床パネルPを、受け部112の上面112a1に設置しなければならないことから、梁Hの上フランジ部Haの右側面Ha1から床パネルPの左側面Paまでの距離d11が長くなり、もって、床パネル受け部材110の変形量(たわみ量)が大きくなるという問題があった。それゆえ、この床パネル受け部材110も、重量床衝撃音が大きくなるという問題があった。また、図6に示すように、梁Hの上フランジ部Haと、下フランジ部Hbとの間に位置する梁ウェブHcの空間K内に設備用配管などを設置することがある。しかしながら、梁ウェブHcの空間K内に設備用配管などを設置しようとしても、床パネル受け部材110が邪魔となり、空間K内に制約が生じ、径の小さな設備用配管などしか設置できないという問題があった。そこで、取付垂直部111bの下側部111b1と受け垂直部112bの下側部112b1側の部分を切断することも考えられるが、切断してしまうと床パネル受け部材110が強度不足となり、もって、さらに大きなサイズ(肉厚の大きい)の取付部111と、受け部112とを使用する必要があるという問題があった。そうすると、さらに、距離d11が長くなり、もって、床パネル受け部材110の変形量(たわみ量)が大きくなるという問題があった。それゆえ、さらに、重量床衝撃音が大きくなるという問題があった。
【0008】
一方、図7に示すように、梁Hの上フランジ部Haの上面Ha3よりも、レベルを下げた位置に床パネルPを設置する場合がある。この際、図7に示すような床パネル受け部材120が使用されている。この床パネル受け部材120は、鋼板を曲げ加工することにより製造されたものであって、上フランジ部Haにボルト等にて取付固定される取付部120aと、床パネルPが設置される受け部120bと、取付部120aと受け部120bを一体的に連結する連結部120cと、で構成されている。
【0009】
しかしながら、このような床パネル受け部材120を使用して、床パネルPを設置すると、材質の変化が生じるため曲げ曲率の制約が設けられている(例えば、図7に示すように、連結部120cの厚みをtとした場合、曲げ曲率は、4t以上という制約がある)ことから、曲げ曲率を小さくすることができず、図7に示すように、梁Hの上フランジ部Haの右側面Ha1から床パネルPの左側面Paまでの距離d12が長くなり、もって、床パネル受け部材120の変形量(たわみ量)が大きくなるという問題があった。それゆえ、この床パネル受け部材120も、重量床衝撃音が大きくなるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、重量床衝撃音を小さくすることができる床パネル受け部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、あくまで、後述する実施形態の参照符号を付したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
請求項1の発明によれば、梁(H)フランジ部(上フランジ部Ha)に取り付け固定される取付部(2)と、
厚みのある断面視直線状の連結部(4)と、
床パネル(P)が設置される受け部(3)と、を有し、
前記連結部(4)の一側面(左側面40a)が前記取付部(2)の一側面(右側面21a及び右側面20c)に連結され、前記連結部(4)の他側面(右側面41a)が前記受け部(3)の一側面(左側面3b)に連結されてなり、
前記取付部(2)と、前記連結部(4)と、前記受け部(3)とは、鋳造により一体形成されてなることを特徴としている。
【0013】
請求項2の発明によれば、上記請求項1に記載の床パネル受け部材において、前記取付部(2)には、前記梁(H)フランジ部(上フランジ部Ha)に取り付け固定される際に使用される取付孔(20a)が設けられると共に、この取付孔(20a)の位置から前記取付部(2)の一側面(右側面21a)に向かって二次曲線状に形成される補強リブ(21)が設けられてなることを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明によれば、上記請求項1又は2に記載の床パネル受け部材において、 前記連結部(4)と前記受け部(3)が一体的に設けられることによって生じる隅部には、フィレット(5,6)が設けられてなることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、上記請求項3に記載の床パネル受け部材において、前記フィレット(5,6)は、前記受け部(3)の他側面(右側面3d)側から、前記連結部(4)の下側面(41b)側に向かって二次曲線状に形成されてなることを特徴としている。
【0016】
請求項5の発明によれば、上記請求項3に記載の床パネル受け部材において、前記取付部(2)と、前記連結部(4)とが、断面視でT字状となり、且つ、前記受け部(3)と、前記連結部(4)とが、断面視でT字状となるように、前記取付部(2)と、前記連結部(4)と、前記受け部(3)とが、鋳造により一体形成されてなることを特徴としている。
【0017】
請求項6の発明によれば、上記請求項1に記載の床パネル受け部材において、前記受け部(3)には、貫通孔又は薄肉部が設けられてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、あくまで、後述する実施形態の参照符号を付したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
請求項1に係る発明によれば、厚みのある断面視直線状の連結部(4)の一側面(左側面40a)が取付部(2)の一側面(右側面21a及び右側面20c)に連結され、連結部(4)の他側面(右側面41a)が受け部(3)の一側面(左側面3b)に連結され、取付部(2)と、連結部(4)と、受け部(3)とが、鋳造により一体形成されているから、連結部(4)の厚みを小さくすることで、梁(H)のフランジ部(上フランジ部Ha)の一側面(右側面Ha1)から床パネル(P)の一側面(左側面Pa)までの距離(d1)を短くすることができる。これにより、従来に比べ、床荷重により生じる曲げモーメントが小さくなることから、床パネル受け部材(1)の変形量(たわみ量)が従来に比べ小さくなり、もって、重量床衝撃音を小さくすることができる。
【0020】
しかして、本発明によれば、重量床衝撃音を小さくすることができる。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、取付孔(20a)の位置から取付部(2)の一側面(右側面21a)に向かって二次曲線状に形成される補強リブ(21)が設けられているから、この補強リブ(21)の二次曲線を、床パネル(P)の荷重で生じる最大曲げ応力に対して一定の曲げ応力度以下となるように設計すれば、床パネル受け部材(1)の強度を向上させることができる。さらに、この補強リブ(21)の二次曲線を、取付部(2)を鋳造により形成する際、溶鋼の湯流れがスムーズとなるように形成するようにすれば、湯流れを良くすることができ、もって、鋳造時の内部欠陥の発生を防止することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、連結部(4)と受け部(3)が一体的に設けられることによって生じる隅部には、フィレット(5,6)が設けられているから、床パネル(P)の設置場所に制約を生じさせてしまうことなく、フィレット(5,6)の厚みを適切な厚みにすることができ、もって、受け部(3)の強度を向上させることができると共に、鋳造時の湯流れも良くし、鋳造時の内部欠陥の発生を防止することができる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、フィレット(5,6)は、受け部(3)の他側面(右側面3d)側から、連結部(4)の下側面(41b)側に向かって二次曲線状に形成されている。そして、この二次曲線は、応力がほぼ一定となるような曲線に設計し、さらに、溶鋼の湯流れがスムーズとなるように設計することができる。これにより、溶鋼の湯流れがスムーズとなるから、鋳造時の内部欠陥の発生を防止することができることとなり、床パネル受け部材(1)を全体的に薄肉化・軽量化することが可能となり、ひいては、価格を低減することができる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、取付部(2)と、連結部(4)とが、断面視でT字状となり、且つ、受け部(3)と、連結部(4)とが、断面視でT字状となるように、取付部(2)と、連結部(4)と、受け部(3)とが、鋳造により一体形成されているから、床パネル受け部材(1)全体で強度を確保することができることとなる。これにより、連結部(4)の高さを低くしても、他の部材で強度を確保することができ、もって、梁(H)の上フランジ部(Ha)と、下フランジ部(Hb)との間の空間(K)内に設備用配管などを、自由に設置することが可能となる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、受け部(3)には、貫通孔又は薄肉部が設けられているから、受け部(3)を軽量化することができると共に、価格の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る床パネル受け部材の一部平面図である。
図2図1に示すX-X線断面図を示し、この床パネル受け部材を梁に固定し、この床パネル受け部材に床パネルを設置している状態を示している図である。
図3図1に示すY-Y線断面図を示す図である。
図4】同実施形態に係る床パネル受け部材の側面図である。
図5】従来の床パネル受け部材の断面図であり、この床パネル受け部材を梁に固定し、この床パネル受け部材に床パネルを設置している状態を示している図である。
図6】従来の他の床パネル受け部材の断面図であり、この床パネル受け部材を梁に固定し、この床パネル受け部材に床パネルを設置している状態を示している図である。
図7】従来の他の床パネル受け部材の断面図であり、この床パネル受け部材を梁に固定し、この床パネル受け部材に床パネルを設置している状態を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る床パネル受け部材の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0028】
<床パネル受け部材の説明>
図2に示すように、床パネル受け部材1は、断面視略十字状に形成されると共に、鋳造により一体形成されてなるものである。より詳しく説明すると、床パネル受け部材1は、図2に示すように、取付部2と、床パネルPが設置される受け部3と、連結部4と、で主に構成されている。以下、各構成について、詳しく説明することする。
【0029】
<取付部の説明>
取付部2は、図2に示すように、断面視略L字状に形成され、図1に示すように、平面視略円形状の取付台20と、この取付台20の左右両側面から連結部4に向かって平面視末広がり状に形成される補強リブ21と、で構成されている。この取付台20は、図1に示すように、中心位置に、円形状に貫通している取付孔20aが設けられている。それゆえ、この取付台20を、図2に示すように、H形鋼からなる梁Hの上フランジ部Haの上面Ha3に載置し、取付孔20a並びに上フランジ部Haに一定ピッチで設けられている貫通孔Ha2にボルト等を挿入するようにすれば、取付台20を、上フランジ部Haに取り付け固定できることとなる。また、図1に示すように、取付台20の先端面20b(図2では、左側面)は、平坦状に形成されている。しかして、このようにすれば、上フランジ部Haの幅の1/2以下に抑えることができ、もって、図2に示す上フランジ部Haの反対側にも、床パネル受け部材1を取り付けて使用することができる。
【0030】
一方、補強リブ21は、図1に示すように、取付孔20aの中心点Oを通る中心線O1が位置する取付台20の左右両側面から連結部4に向かって平面視末広がり状に形成されている。より詳しく説明すると、図2に示すように、補強リブ21の右側面21aに向かって、断面視上り二次曲線状に形成されている。これにより、補強リブ21は、取付台20よりも肉厚に形成されることとなる。
【0031】
ところで、この二次曲線は、床パネルPの荷重で生じる最大曲げ応力に対して一定の曲げ応力度以下となるように設計されている。これにより、床パネル受け部材1の強度を向上させることができる。さらに、この二次曲線は、取付部2を鋳造により形成する際、溶鋼の湯流れがスムーズとなるように形成されている。これにより、取付台20への湯流れを良くすることができ、もって、鋳造時の内部欠陥の発生を防止することができる。
【0032】
<受け部の説明>
受け部3は、図2に示すように、断面視矩形状に形成されており、図1及び図4に示すように、左右方向に向かって延びて設けられ、横長矩形状に形成されている。しかして、図2に示すように、このような受け部3の上面3aに、床パネルPが設置されることとなる。なお、図示はしていないが、受け部3を軽量化するため、受け部3の長手方向(図1及び図4に示す左右方向)に向かって、一定ピッチ、又は、適当間隔置きに、貫通孔、又は、薄肉部(貫通していない凹部)を設けるようにしても良い。このようすれば、軽量化することができると共に、価格の低減化を図ることができる。
【0033】
<連結部の説明>
連結部4は、図2に示すように、厚みのある断面視直線状に形成され(図示では、細長矩形状に形成されている)ており、鉛直上向きに起立状に形成されている立設部40と、鉛直下向きに垂下状に形成されている垂下部41と、で構成されている。立設部40は、図4に示すように、側面視、左右方向に向かって延びて設けられ、横長矩形状に形成されている。そして、垂下部41は、図4に示すように、立設部40の左側面40aから右側面40bに向かって、下側面40c側に、側面視2つのT字状が連続して形成されるようになっている。しかして、立設部40及び垂下部41は、図4に示すように、側面視において、略T字状に形成されている。なお、垂下部41は、図2に示す部分(図1に示す中心線O2上に位置する部分)が、梁Hの上フランジ部Haにかかる荷重が最もかかるため、長さを長くし強度を確保しているものの、それ以外の部分は、梁Hの上フランジ部Haにかかる荷重がさほどかからないため、図3に示すように、高さを短くしている。そのため、側面視で見ると、2つのT字状が連続して形成されるようになっている。すなわち、図示はしていないが、図1に示す中心線O2上に位置する部分がもう一つ存在しているということである。
【0034】
かくして、このように構成される連結部4は、梁Hの上フランジ部Haにかかる荷重による上フランジ部Haの変形を防止する役割をする強度を有しているものの、床パネルPによる大きな荷重がかからないため、断面を小さくすることができる。すなわち、図2に示すように、連結部4の厚みのある断面視直線状の厚みを薄く(幅狭に)することができる。また、鋳造により一体形成されているから、従来のような溶接が不要となるため、溶接部分を避けて床パネルPを設置する必要がない。そのため、図1に示すように、立設部40の左側面40aと、取付台20の右側面20c及び補強リブ21の右側面21aとを連結し、垂下部41の右側面41aと、受け部3の左側面3bとを連結し、取付部2と、受け部3と、連結部4とを鋳造により一体形成するようにすれば、梁Hの上フランジ部Haの右側面Ha1から床パネルPの左側面Paまでの距離d1を短くすることができる。これにより、従来に比べ、床荷重により生じる曲げモーメントが小さくなることから、床パネル受け部材1の変形量(たわみ量)が従来に比べ小さくなり、もって、重量床衝撃音を小さくすることができる。
【0035】
<フィレットの説明>
ところで、受け部3は、床パネルPが設置されるところであるため、強度が必要となる。そのため、本実施形態においては、図2に示すようにフィレット5及び図3に示すようなフィレット6を設けるようにしている。この点、詳しく説明すると、受け部3の強度を向上させる際、受け部3の厚みを厚くすることが考えられる。しかしながら、厚みを厚くしてしまうと、床パネルPの設置場所に制約が生じてしまうこととなる。そこで、本実施形態においては、図2及び図3に示すように、床パネルPが設置されない受け部3の下面3cと、垂下部41の右側面41aとによって生じる隅部(図4も参照)にフィレット5及びフィレット6を設けるようにしている。フィレット5は、図1に示す中心線O2上に位置しており、床パネルPが設置されることにより、床パネルPの荷重並びに取付部2の荷重がかかり、受け部3で最も荷重がかかる部分であるから、強度を強くする必要がある。他方で、フィレット6は、床パネルPの荷重がかかるだけであるから、フィレット5よりも強度を低くすることができる。そのため、図2及び図3に示すように、フィレット5の方が、フィレット6よりも肉厚となっている。しかして、このようにすれば、床パネルPの設置場所に制約を生じさせてしまうことなく、フィレット5及びフィレット6の厚みを適切な厚みにすることができ、もって、受け部3の強度を向上させることができる。
【0036】
ところで、このフィレット5は、図2に示すように、受け部3の右側面3dから、垂下部41の下側面41bに向かって、二次曲線状に形成されている。また、フィレット6は、受け部3の右側面3d側(図示では、受け部3の中央やや左側面3bより)から、垂下部41の下側面41b側(図示では、垂下部41の中央部分)に向かって、二次曲線状に形成されている。さらに、フィレット5は、フィレット6より肉厚に形成されている。
【0037】
ところで、この二次曲線は、応力がほぼ一定となるような曲線に設計されており、さらに、溶鋼の湯流れがスムーズとなるように設計されている。しかして、このようにすれば溶鋼の湯流れがスムーズとなり、もって、鋳造時の内部欠陥の発生を防止することができることとなるから、床パネル受け部材1を全体的に薄肉化・軽量化することが可能となり、ひいては、価格を低減することができる。
【0038】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、重量床衝撃音を小さくすることができる。
【0039】
なお、本実施形態において示した床パネル受け部材はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、梁Hの上フランジ部Haの上面Ha3と、受け部3の上面3aのレベルを同一にした場合の例を示したが、それに限らず、図6に示すように、梁Hの上フランジ部Haの上面Ha3よりも、レベルを下げた位置に床パネルPを設置することもできる。この際、受け部3の位置を垂下部41の下側面41b側に下げるだけで良いため、本実施形態によれば、梁Hの上フランジ部Haの上面Ha3と、受け部3の上面3aのレベルに合わせて、受け部3の位置を自由に設計することが可能となる。さらには、図1に示すように、床パネル受け部材1が断面視で十字状、すなわち、取付部2と、受け部3と、連結部4とが鋳造により一体形成される際、取付部2と、連結部4とが、断面視でT字状となり、且つ、受け部3と、連結部4とが、断面視でT字状となるように、一体形成されている。これにより、床パネル受け部材1全体で強度を確保することができるから、垂下部41の高さを低くしても、床パネル受け部材1の他の箇所で強度を確保することができ、もって、梁Hの上フランジ部Haと、下フランジ部Hbとの間に位置する梁ウェブHcの空間K内に、従来のように、径が制限されることなく、任意の径の設備用配管などを、自由に設置することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態においては、梁HとしてH形鋼を例に説明したが、それに限らず、どのような梁にも適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 パネル受け部材
2 取付部
20 取付台
20a 取付孔
20c 右側面(一側面)
21 補強リブ
21a 右側面(一側面)
3 受け部
3b 左側面(一側面)
3d 右側面(他側面)
4 連結部
40 立設部
40a 左側面(一側面)
41 垂下部
41a 右側面(他側面)
5,6 フィレット
H 梁
Ha 上フランジ部(フランジ部)
Hb 下フランジ部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7