特開 2023-158747 締結具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023158747

(43)【公開日】2023-10-31

(54)【発明の名称】締結具

(51)【国際特許分類】

   F16B 37/00 20060101AFI20231024BHJP

   F16B 35/00 20060101ALI20231024BHJP

   F16B 39/02 20060101ALI20231024BHJP

   F16D 41/06 20060101ALI20231024BHJP

   F16D 41/067 20060101ALI20231024BHJP

【ＦＩ】

F16B37/00 B

F16B35/00 X

F16B39/02 Z

F16D41/06 F

F16D41/067

【審査請求】未請求

【請求項の数】2

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022068710

(22)【出願日】2022-04-19

(71)【出願人】

【識別番号】522032280

【氏名又は名称】藤原 良

(74)【代理人】

【識別番号】240000268

【弁護士】

【氏名又は名称】弁護士法人英明法律事務所

(74)【代理人】

【識別番号】100155804

【弁理士】

【氏名又は名称】平木 健氏

(72)【発明者】

【氏名】藤原 良

(57)【要約】      （修正有）

【課題】ネジ山を潰してしまう恐れがなく、容易に且つ適度に締結状態を生じせしめ、緩み防止機能に優れた締結具の提供。
【解決手段】締結具は、ボルト１０、補助部材２０、ナット体３０を備え、該ボルトは、ボルト軸の雄ネジ部上に、軸方向に沿って凹設された溝状凹部１０４を形成し、前記補助部材は、前記ボルト軸が挿通する挿通孔ｈ１を備えた略円筒状をなし、該挿通孔の開口部一端にフランジ２０１を有し、内壁面には前記溝状凹部に嵌合する凸条２０４部を形成し、前記ナット体は、底部に前記ボルト軸の雄ネジに螺合する雌ネジを形成したハウジング３０１内の収容部には一方向回転機構を嵌合固定し、前記補助部材の側壁は前記一方向回転機構に接してなる。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

被締結部材を締結する締結具であって、
該締結具は、ボルト、補助部材、ナット体を備え、
該ボルトは、ボルト軸の雄ネジ部上に、軸方向に沿って凹設された溝状凹部を形成し、
前記補助部材は、前記ボルト軸が挿通する挿通孔を備えた略円筒状をなし、該挿通孔の開口部一端にフランジを有し、内壁面には前記溝状凹部に嵌合する凸条部を形成し、
前記ナット体は、底部に前記ボルト軸の雄ネジに螺合する雌ネジを形成したハウジング内の収容部には一方向回転機構を嵌合固定し、
前記補助部材の側壁は前記一方向回転機構に接してなる
締結具。

【請求項2】

前記溝状凹部に前記凸条部が嵌合する前記補助部材は、前記ボルト軸の回転に伴い回転し、該螺進方向の回転トルクは、前記一方向回転機構に伝達されずに前記補助部材は空転し、螺退方向の回転トルクは、前記補助部材を介して前記一方向回転機構へ伝達され、該回転が阻止される
請求項１に記載の締結具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、緩み防止機能に優れた締結具に関する。

【背景技術】

【0002】

一般に、ボルトとナットを用いて被締結部材を締め付けて固定すると、ボルトの軸部に発生した軸力（引張力）と、被締結部材に発生した圧縮力（締付力）によって一体化され、両者が釣り合うことでその締結状態が維持される。

【0003】

しかし、ボルトとナットを単純に螺合し、締め付けただけでは、ネジ締結体の接触部のあらさ等による初期緩み、軸力の静的又は動的変動に起因するナットの戻り回転により、締結状態に緩みが生じる。

【0004】

そこで、過去様々な取り組みが行われている。例えば、溝付き六角ナットやナイロンナット、くさび止め効果を利用したナット、フリクションリングを組み込んだゆるみ止めナットなどが公知である。

【0005】

具体的には、ボルトを螺合した時に該ボルトのねじ部に接する断面形状がほぼ楕円形の柱状体をなすクラッチ片を上記ボルトのねじ部に接する位置に配置したことを特徴とする技術が開示されている（特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【特許文献1】特開昭５８－１５６７１２号公報

【特許文献2】特開平１１－１１７９５４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

しかし、特許文献１に記載の発明は、クラッチ片の先端がボルトの雄ネジ部分に圧着され噛み込む構造により該クラッチ片とネジとの接触面積が十分でなく緩み回転の阻止効果は限定的である。さらにはネジ山を潰してしまう恐れもある。
よって、ネジ山を潰すことなく、適度な締結状態を生じせしめ、緩み防止機能に優れた更なる改良が望まれてきた。

【0008】

そこで、本願発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意研究の結果、新規な着想を得て本発明を完成するに至った。

【課題を解決するための手段】

【0009】

上記課題を解決するため、請求項１に記載の発明は、被締結部材を締結する締結具であって、該締結具は、ボルト、補助部材、ナット体を備え、ボルトは、ボルト軸の雄ネジ部上に、軸方向に沿って凹設された溝状凹部を形成し、前記補助部材は、前記ボルト軸が挿通する挿通孔を備えた略円筒状をなし、該挿通孔の開口部一端にフランジを有し、内壁面には前記溝状凹部に嵌合する凸条部を形成し、前記ナット体は、底部に前記ボルト軸の雄ネジに螺合する雌ネジを形成したハウジング内の収容部には一方向回転機構を嵌合固定し、前記補助部材の側壁は前記一方向回転機構に接してなることを特徴とする。

【0010】

また、請求項２に記載の発明は、請求項１に記載の構成において、前記溝状凹部に前記凸条部が嵌合する前記補助部材は、前記ボルト軸の回転に伴い回転し、該螺進方向の回転トルクは、前記一方向回転機構に伝達されずに前記補助部材は空転し、螺退方向の回転トルクは、前記補助部材を介して前記一方向回転機構へ伝達され、該回転が阻止されることを特徴とする。

【発明の効果】

【0011】

本発明は如上のごとく、ボルト軸の雄ネジ部上の溝状凹部に補助部材の凸条部が嵌合してボルトの螺進に伴い雄ネジ部上を摺動する構成であることから、雄ネジのネジ山を潰すことなく、一方向回転機構の作用を受けることができるため、作業者の熟練度合いに関わらず適度な締結状態を生じせしめ、且つ高い緩み止め効果を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】本発明の一実施例に係るボルト、補助部材、ナット体を示す構成図である。

【図2】（a)本発明の一実施例に係る補助部材の構造を示すＡ－Ａ線断面図である。（b)本発明の一実施例に係る補助部材の構造を示すＢ－Ｂ線断面図である。

【図3】本発明の一実施例に係るナット体の分解斜視図である。

【図4】本発明の一実施例に係るナット体の構造を示す斜視部分断面図である。

【図5】本発明の一実施例に係る締結具の使用状態を示す一部断面図である。

【図6】一方向回転機構の仕組みを示すＣ－Ｃ線断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明を構成する各部の大きさや形状、位置関係は本発明の理解を促すことを目的として概略的に記した。また、各構成要素の材料や材質、図示した形状や構造は好適な組み合わせの一例として開示するものあって、本発明の主旨を逸脱することなく、この効果を達成可能な変更を妨げるものでない。

【0014】

本発明は、被締結部材を対象物へ締結するために用いられる締結具であって、ボルト、補助部材、ナット体を備え、ボルト頭と補助部材を収容したナット体との間で被締結部材及び対象物を挟持して締結固定するものである。以下詳述する。

【0015】

ボルト１０は、ボルト軸１０２の雄ネジ部１０３上に、軸方向に沿って一定の幅と深さで所定長にわたり凹設された溝状凹部１０４を形成してなる。（図１、図６）

【0016】

補助部材２０は、前記ボルト軸１０２が挿通する挿通孔ｈ１を備えた略円筒状をなし、該挿通孔ｈ１の開口部一端にフランジ２０１を形成し、内壁面２０３には前記溝状凹部１０４に嵌合する凸条部２０４を一定の幅と高さで所定長にわたり形成してなる。（図１、図２、図６）

【0017】

ナット体３０は、底部３０３に前記ボルト軸１０２の雄ネジ部１０３に螺合する雌ネジ３０４を形成し、ハウジング３０１内の収容部３０２には一方向回転機構Ｐを嵌合固定してなる。（図３、図４）

【0018】

一方向回転機構Ｐは、その代表的な構造と原理は、例えば、前掲の特許文献２に開示されているように、互いに同心に組み合わされた２個の部材のうち、一方の部材が両方向回転運動をした場合に、このうちの一方向の回転運動のみを他方の部材に伝達する場合に利用される機構である。この機構は「ワンウェイクラッチ」とも称され、具体的には、例えば、日本精工株式会社から発売されている「シェル型ローラクラッチ」を利用することができる。

【0019】

被固定物Ａを、対象物Ｂ（ここでいう対象物とは、機械や建造物など、被固定物Ａを固定する対象を指す。）へ取り付ける際の手順について説明する。なお、予め被固定物Ａ及び対象物Ｂには、ボルト軸１０２の外径大の孔が設けられているものとする。

【0020】

被固定物Ａ及び対象物Ｂの両孔へボルト軸１０２を挿通し、突き出た該ボルト軸１０２へ補助部材２０を、フランジ２０１を対象物Ｂ側へ向けて挿入する。続けてナット体３０の挿入孔ｈ２へ該補助部材２０を挿入し、雄ネジ部１０３の先端をナット体３０の雌ネジ部３０４へ螺入する。かかる状態において、該補助部材２０の側壁２０２と、ローラーＰ１とは一方向回転機構が作用する程度に接した状態となっている。（図５）

【0021】

ボルト１０を締め付ける方向に回転すると、前記溝状凹部１０４に前記凸条部２０３が嵌合するため前記補助部材２０は、前記ボルト軸１０２の回転に伴い同方向へ回転し、ボルト軸１０２は螺入が進む。

【0022】

補助部材２０の側壁２０２は、一方向回転機構ＰのローラーＰ１に接するも、ボルト軸の螺入回転方向は、当該機構が作用する回転方向とは逆回転であることから、該ボルト軸と共に回転する補助部材２０は空転し（即ち、同機構が作用せず）、該ボルト軸の螺入は進む。
ボルト軸の螺入が完了すると、ボルト頭１０１と補助部材２０のフランジ２０１との間で被固定物Ａ及び対象物Ｂは挟持され、締結状態が完了する。（図５）

【0023】

一方向回転機構ＰのローラーＰ１は、補助部材２０の側壁２０２と接しており、一方向の回転時（図６（Ａ））にはローラーＰ1へは該回転トルクは伝わらないが、他方向の回転時（図６（Ｂ））には該回転トルクが伝わる。
つまり、ボルト１０を螺入、即ち締め付ける方向（右回転）へと回転させたときには、該回転トルクは該ローラーＰ１へは伝わらず補助部材２０は空転し、雄ネジ部１０３と雌ネジ部３０４との螺合が進むが、ボルト１０を螺出、即ち緩める方向（左回転）へと回転させようとすると、該回転トルクは該ローラーＰ１へ伝わり、クラッチ機構が働くことから補助部材２０及びこれと篏合状態にあるボルト１０は左回転しない構造である。（図６）

【0024】

ボルト１０による締結が完了し、ボルト頭、被固定物Ａ、対象物Ｂそしてナット体３０とで一体的な締結状態が形成された後、これを緩めるためには前記一方向回転機構Ｐを破壊するほどの力が加わらない限り、ボルト１０が左回転することはない。
即ち、通常の使用状態において、本発明の締結具１が緩むことはない。

【0025】

本実施の形態によれば、締め付け作業が容易であるうえ、適度に締結状態を生じせしめるとともに、高い緩み止め効果を得ることができる。

【産業上の利用可能性】

【0026】

本発明は、従来のボルト・ナットのように強い締め付け力を頼りに締結状態を維持せんとするものでなく、一定の締結状態を得た後は、一方向回転機構による緩み止め効果を得る構造であるため、例えば、被固定物Ａ又は対象物Ｂがガラスやレンガ、また陶器や磁器、樹脂その他物理的な力に対して脆い素材である場合に特に有効である。
また、一旦締め付け施工が完了した後に定期点検が困難な場所に幅広く利用が期待されるものである。

【符号の説明】

【0027】

１ 締結具
１０ ボルト
１０１ ボルト頭
１０２ ボルト軸
１０３ 雄ネジ部
１０４ 溝状凹部
２０ 補助部材
２０１ フランジ
２０２ 側壁
２０３ 内壁面
２０４ 凸条部
３０ ナット体
３０１ ハウジング
３０２ 収容部
３０３ 底部
３０４ 雌ネジ部
Ａ 被締結部材
Ｂ 対象物
ｈ１ 挿通孔
ｈ２ 挿入孔
Ｐ 一方向回転機構
Ｐ１ ローラー

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】