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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158754
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】防護柵、緩衝装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
E01F7/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068719
(22)【出願日】2022-04-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】橋口 寛史
(72)【発明者】
【氏名】河野 和人
(72)【発明者】
【氏名】阿諏訪 樹生
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001PA05
2D001PA06
2D001PB04
2D001PD06
2D001PD10
2D001PD11
(57)【要約】
【課題】防護柵などに用いられる緩衝装置において、比較的容易に緩衝性能の変更を行うことが可能な、緩衝装置を備える防護柵、緩衝装置及びその製造方法の提供。
【解決手段】立設された複数の支柱11と、支柱11間に張られた索体13と、支柱11と索体13の接続箇所において設けられた緩衝装置15であって、1つ又は複数の管状部材151を有する緩衝装置15と、を備え、緩衝装置15が、索体13に働く張力が管状部材151に対してその軸線方向に加わるように構成されており、これによって管状部材151の軸線方向に加わる圧縮荷重若しくは引っ張り荷重の少なくとも一部を、曲げ荷重として加える荷重変換部を備えている、防護柵。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設された複数の支柱と、
前記支柱間に張られた索体と、
前記支柱と前記索体の接続箇所若しくは前記索体の中間において設けられた緩衝装置であって、1つ又は複数の管状部材を有する緩衝装置と、
を備え、
前記緩衝装置が、前記索体に働く張力が前記管状部材に対してその軸線方向に加わるように構成されており、これによって前記管状部材の軸線方向に加わる圧縮荷重若しくは引っ張り荷重の少なくとも一部を、曲げ荷重として加える荷重変換部を備えている、防護柵。
【請求項2】
前記荷重変換部が、前記管状部材に設けられた拡径部若しくは縮径部によって構成されている、請求項1に記載の防護柵。
【請求項3】
前記管状部材に複数の前記拡径部若しくは前記縮径部又はこれらの双方が形成されている、請求項2に記載の防護柵。
【請求項4】
複数の前記管状部材が直列状に配置されている、請求項1から3の何れかに記載の防護柵。
【請求項5】
前記管状部材において、前記荷重変換部における曲げ荷重に対する降伏点が、それ以外の箇所における圧縮荷重若しくは引っ張り荷重に対する降伏点よりも低い、請求項1から3の何れかに記載の防護柵。
【請求項6】
前記支柱と前記索体を、前記緩衝装置を介して接続する接続部材であって、
前記支柱に取り付けられる支柱取り付け部材と、
前記1つ又は複数の管状部材の内部を挿通させた前記索体若しくは前記索体に取り付けられた索端金具を、前記1つ又は複数の管状部材の一方側で留める第1係止部材と、
前記1つ又は複数の管状部材の他方側で、前記1つ又は複数の管状部材に直接又は他の部材を介して当接し、且つ、前記支柱取り付け部材と接続される第2係止部材と、
を有する接続部材を備える、請求項1から3の何れかに記載の防護柵。
【請求項7】
前記支柱取り付け部材が、その端末に抜け止め金具が端末加工されたワイヤロープであり、
前記第2係止部材が、前記ワイヤロープを挿通可能で且つ前記抜け止め金具は挿通不可な長穴であって、その一部において前記抜け止め金具を挿通可能とする拡径穴部が形成されている長穴を備える、請求項6に記載の防護柵。
【請求項8】
前記ワイヤロープの両端部において前記抜け止め金具の端末加工がされており、
前記拡径穴部が、前記長穴の中央部に形成されていることにより、前記拡径穴部の両サイドの前記長穴において前記抜け止め金具の挿通不可部分が形成されており、前記拡径穴部が、前記索体若しくは前記索体に取り付けられた索端金具が挿通される挿通穴としても機能する、請求項7に記載の防護柵。
【請求項9】
請求項8に記載の防護柵における前記接続部材の組み付け方法であって、
前記ワイヤロープを前記支柱に巻き回して、両端の前記抜け止め金具をそれぞれ前記拡径穴部に挿通させた後に、前記拡径穴部の両サイドの前記抜け止め金具挿通不可部分へそれぞれ移動させるステップと、
前記索体若しくは前記索体に取り付けられた前記索端金具を、前記拡径穴部に挿通した上で、前記1つ又は複数の管状部材の内部を挿通させ、前記第1係止部材で留めるステップと、
を備える、組み付け方法。
【請求項10】
索体に働く張力を緩衝させる緩衝装置であって、
前記索体に働く張力が軸線方向に加わる1つ又は複数の管状部材を備え、
前記管状部材の軸線方向に加わる圧縮荷重若しくは引っ張り荷重の少なくとも一部を、曲げ荷重として加える荷重変換部を備えている、緩衝装置。
【請求項11】
前記荷重変換部が、前記管状部材に設けられた拡径部若しくは縮径部によって構成されている、請求項10に記載の緩衝装置。
【請求項12】
前記管状部材に複数の前記拡径部若しくは前記縮径部又はこれらの双方が形成されている、請求項11に記載の緩衝装置。
【請求項13】
複数の前記管状部材が直列状に配置されている、請求項10から12の何れかに記載の緩衝装置。
【請求項14】
前記管状部材において、前記荷重変換部における曲げ荷重に対する降伏点が、それ以外の箇所における圧縮荷重若しくは引っ張り荷重に対する降伏点よりも低い、請求項10から12の何れかに記載の緩衝装置。
【請求項15】
請求項3に記載の防護柵の、製造方法であって、
前記拡径部若しくは前記縮径部の数の変更により、前記緩衝装置の緩衝性能を変更する、防護柵の製造方法。
【請求項16】
請求項4に記載の防護柵の、製造方法であって、
前記管状部材の数の変更により、前記緩衝装置の緩衝性能を変更する、防護柵の製造方法。
【請求項17】
請求項2又は3に記載の防護柵の、製造方法であって、
前記拡径部若しくは前記縮径部の幅若しくは高さの変更により、前記緩衝装置の緩衝性能を変更する、防護柵の製造方法。
【請求項18】
請求項12に記載の緩衝装置の、製造方法であって、
前記拡径部若しくは前記縮径部の数の変更により、緩衝性能を変更する、緩衝装置の製造方法。
【請求項19】
請求項13に記載の緩衝装置の、製造方法であって、
前記管状部材の数の変更により、緩衝性能を変更する、緩衝装置の製造方法。
【請求項20】
請求項11又は12に記載の緩衝装置の、製造方法であって、
前記拡径部若しくは前記縮径部の幅若しくは高さの変更により、緩衝性能を変更する、緩衝装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝装置を備える防護柵、緩衝装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜地等において道路や家屋等を落石等から保護するために、保護対象である道路や家屋等より斜面側に設置される防護柵(落石防護柵や雪崩予防柵など)が用いられている。一般的な防護柵は、支柱、ワイヤロープ、金網で構成される上部材を、コンクリート基礎等で支持する構造であり、これにより、斜面上方からの落石等を受け止めて、災害を防止するものである。
このような防護柵において、落石衝突時の衝撃を吸収させるための緩衝装置を備えたものがあり、特許文献1や2には、このような緩衝装置を有する防護柵についての記載がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-027077号公報
【特許文献2】特開2020-117930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の緩衝装置として多く用いられているものとして、鋼製プレートやクリップ等でワイヤロープを挟み込み動摩擦の作用で衝撃力を低減する方法や、例えば50cmの鋼製リングを20cmまで小さくする、鋼製板状の部材を曲げるものなどの部材を変形させてその変形時に生じる抵抗力によって衝撃力を低減させる方法がある。
従来の緩衝装置は、緩衝装置としての仕様(緩衝性能)を変更する場合、全体的な構造の見直しや部材(材料)の変更等が必要となりがちであり、簡便に緩衝性能の変更を行えるものではなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、防護柵などに用いられる緩衝装置において、比較的容易に緩衝性能の変更を行うことが可能な、緩衝装置を備える防護柵、緩衝装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
立設された複数の支柱と、前記支柱間に張られた索体と、前記支柱と前記索体の接続箇所若しくは前記索体の中間において設けられた緩衝装置であって、1つ又は複数の管状部材を有する緩衝装置と、を備え、前記緩衝装置が、前記索体に働く張力が前記管状部材に対してその軸線方向に加わるように構成されており、これによって前記管状部材の軸線方向に加わる圧縮荷重若しくは引っ張り荷重の少なくとも一部を、曲げ荷重として加える荷重変換部を備えている、防護柵。
【0007】
(構成2)
前記荷重変換部が、前記管状部材に設けられた拡径部若しくは縮径部によって構成されている、構成1に記載の防護柵。
【0008】
(構成3)
前記管状部材に複数の前記拡径部若しくは前記縮径部又はこれらの双方が形成されている、構成2に記載の防護柵。
【0009】
(構成4)
複数の前記管状部材が直列状に配置されている、構成1から3の何れかに記載の防護柵。
【0010】
(構成5)
前記管状部材において、前記荷重変換部における曲げ荷重に対する降伏点が、それ以外の箇所における圧縮荷重若しくは引っ張り荷重に対する降伏点よりも低い、構成1から4の何れかに記載の防護柵。
【0011】
(構成6)
前記支柱と前記索体を、前記緩衝装置を介して接続する接続部材であって、前記支柱に取り付けられる支柱取り付け部材と、前記1つ又は複数の管状部材の内部を挿通させた前記索体若しくは前記索体に取り付けられた索端金具を、前記1つ又は複数の管状部材の一方側で留める第1係止部材と、前記1つ又は複数の管状部材の他方側で、前記1つ又は複数の管状部材に直接又は他の部材を介して当接し、且つ、前記支柱取り付け部材と接続される第2係止部材と、を有する接続部材を備える、構成1から5の何れかに記載の防護柵。
【0012】
(構成7)
前記支柱取り付け部材が、その端末に抜け止め金具が端末加工されたワイヤロープであり、前記第2係止部材が、前記ワイヤロープを挿通可能で且つ前記抜け止め金具は挿通不可な長穴であって、その一部において前記抜け止め金具を挿通可能とする拡径穴部が形成されている長穴を備える、構成6に記載の防護柵。
【0013】
(構成8)
前記ワイヤロープの両端部において前記抜け止め金具の端末加工がされており、前記拡径穴部が、前記長穴の中央部に形成されていることにより、前記拡径穴部の両サイドの前記長穴において前記抜け止め金具の挿通不可部分が形成されており、前記拡径穴部が、前記索体若しくは前記索体に取り付けられた索端金具が挿通される挿通穴としても機能する、構成7に記載の防護柵。
【0014】
(構成9)
構成8に記載の防護柵における前記接続部材の組み付け方法であって、前記ワイヤロープを前記支柱に巻き回して、両端の前記抜け止め金具をそれぞれ前記拡径穴部に挿通させた後に、前記拡径穴部の両サイドの前記抜け止め金具挿通不可部分へそれぞれ移動させるステップと、前記索体若しくは前記索体に取り付けられた前記索端金具を、前記拡径穴部に挿通した上で、前記1つ又は複数の管状部材の内部を挿通させ、前記第1係止部材で留めるステップと、を備える、組み付け方法。
【0015】
(構成10)
索体に働く張力を緩衝させる緩衝装置であって、前記索体に働く張力が軸線方向に加わる1つ又は複数の管状部材を備え、前記管状部材の軸線方向に加わる圧縮荷重若しくは引っ張り荷重の少なくとも一部を、曲げ荷重として加える荷重変換部を備えている、緩衝装置。
【0016】
(構成11)
前記荷重変換部が、前記管状部材に設けられた拡径部若しくは縮径部によって構成されている、構成10に記載の緩衝装置。
【0017】
(構成12)
前記管状部材に複数の前記拡径部若しくは前記縮径部又はこれらの双方が形成されている、構成11に記載の緩衝装置。
【0018】
(構成13)
複数の前記管状部材が直列状に配置されている、構成10から12の何れかに記載の緩衝装置。
【0019】
(構成14)
前記管状部材において、前記荷重変換部における曲げ荷重に対する降伏点が、それ以外の箇所における圧縮荷重若しくは引っ張り荷重に対する降伏点よりも低い、構成10から13の何れかに記載の緩衝装置。
【0020】
(構成15)
構成3に記載の防護柵の製造方法であって、前記拡径部若しくは前記縮径部の数の変更により、前記緩衝装置の緩衝性能を変更する、防護柵の製造方法。
【0021】
(構成16)
構成4に記載の防護柵の製造方法であって、前記管状部材の数の変更により、前記緩衝装置の緩衝性能を変更する、防護柵の製造方法。
【0022】
(構成17)
構成2又は3に記載の防護柵の製造方法であって、前記拡径部若しくは前記縮径部の幅若しくは高さの変更により、前記緩衝装置の緩衝性能を変更する、防護柵の製造方法。
【0023】
(構成18)
構成12に記載の緩衝装置の製造方法であって、前記拡径部若しくは前記縮径部の数の変更により、緩衝性能を変更する、緩衝装置の製造方法。
【0024】
(構成19)
構成13に記載の緩衝装置の製造方法であって、前記管状部材の数の変更により、緩衝性能を変更する、緩衝装置の製造方法。
【0025】
(構成20)
構成11又は12に記載の緩衝装置の製造方法であって、前記拡径部若しくは前記縮径部の幅若しくは高さの変更により、緩衝性能を変更する、緩衝装置の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の緩衝装置を備える防護柵、緩衝装置及びその製造方法によれば、防護柵などに用いられる緩衝装置において、比較的容易に緩衝性能の変更を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る実施形態の防護柵(落石防護及び雪崩予防共用柵)を示す図
図2】実施形態の防護柵の緩衝装置の接続部分を示す図
図3】緩衝装置の管状部材を示す図
図4】接続部材の第2係止部材(ブラケット材)を示す斜視図
図5】緩衝装置の衝撃試験(及び静的荷重試験)に使用した管状部材の仕様を示す図
図6】緩衝装置の衝撃試験の試験設備を示す図
図7】緩衝装置の衝撃試験の試験結果を示す図
図8】緩衝装置の衝撃試験の試験結果を示す図
図9】緩衝装置の衝撃試験の試験結果を示す図
図10】管状部材の静的荷重試験に使用した管状部材の仕様を示す図
図11】管状部材の静的荷重試験の試験設備を示す図
図12】管状部材の静的荷重試験の試験結果を示す図
図13】管状部材の静的荷重試験の試験結果を示す図
図14】管状部材の静的荷重試験の試験結果を示す図
図15】管状部材の静的荷重試験の試験結果を示す図
図16】防護柵の衝撃試験に使用した防護柵の仕様を示す図
図17】防護柵としての衝撃試験の試験設備を示す図
図18】防護柵としての衝撃試験の試験結果を示す図
図19】防護柵としての衝撃試験の試験結果を示す図
図20】防護柵としての衝撃試験の試験結果を示す図
図21】防護柵としての衝撃試験の試験結果を示す図
図22】接続部材の別の例を示す図
図23】中間支柱と索体の接続に緩衝装置を使用した例を示す図
図24】管状部材の別の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0029】
図1は、本発明に係る実施形態の防護柵を示すであり、図1(a):正面図(斜面上方側からみた図)、図1(b):側面図、図1(c):上面図、図1(d):索体13の1本分の取り付け構造を示す上面図である。
本実施形態の防護柵1は、傾斜地等(斜面若しくはその近傍)において、道路や家屋等を落石等から保護するために、保護対象である道路や家屋等より斜面側に設けられる落石防護柵として機能し、同時に、雪崩の発生を抑止する雪崩予防柵としても機能する落石防護及び雪崩予防共用柵である。
本実施形態の防護柵1は、
両端部において立設される端末支柱11と、
端末支柱11の間に配される中間支柱12と、
端末支柱11の間において張られた、ワイヤロープ等によって構成される索体13と、
各支柱の間(端末支柱11の間、若しくは、端末支柱11と中間支柱12の間、中間支柱12の間)において設けられる、金網等によって構成される網体14と(図1では、図面の見易さの観点から、網体14の一部のみの表示としている)、
端末支柱11と索体13の接続箇所において設けられた緩衝装置15と、
各支柱間の上部に設けられ、各支柱の間隔を保持するサポート材17と、
各索体13の間隔を保持するための間隔保持材18と、
を備えている。
【0030】
端末支柱11と中間支柱12は、何れも鋼管によって形成され、施工時には、内部に充填剤(モルタル)が充填される。なお、端末支柱及び中間支柱自体は必要な強度を有する任意のものを使用することができ、それを支持する構成(基礎)も必要な支持力を発生する任意のもの(例えば、コンクリート基礎、地中に埋設した鋼管を鞘としてこれに支柱を建て込む鞘管方式(本実施形態ではこれを採用)、杭やアンカーボルトで支柱を支持するもの等)を使用することができる。
各支柱の間隔を保持するサポート材17は、落石を受け止めた際の衝撃が支柱に伝搬された際に、支柱が内側に倒れるように働く力に対して抗するための支持部材である。支柱自体(及び基礎)によって得られる強度が十分なものである場合には、サポート材17は必ずしも必要ない。
端末支柱11や中間支柱12、金網等によって構成される網体14、間隔保持材18、サポート材17、及びこれらの取り付け構造等については、本発明に直接的に関係するものではなく、例えば特許第6991697号公報で開示されるもの等の、任意のものを採用することができるため、ここでのこれ以上の説明を省略する。
【0031】
図2は、緩衝装置15が接続された状態を示す図であり、図2(a)は上面図、図2(b)は正面図、図2(c)は、端末支柱11に取り付けられたU字フック111部分を示す図である。
緩衝装置15は、索体13に働く張力を緩衝させるものであり、索体13に働く張力が軸線方向に加わるように直列状に配置された複数の管状部材151と、これら複数の管状部材151の間及び端部に配される複数の座金152によって構成されている。
なお、座金152は、各管状部材151相互の多少のずれを許容させる(各管状部材151の軸が少しずれたような場合においても、荷重が各部材に適切に伝搬されるようにする)ための部材である。例えば、後に説明する管状部材151の内部に挿通される索端金具162等によって、管状部材151の軸ずれが防止され、各部材への荷重の伝搬に問題が無いような場合には、座金152は必ずしも必要ない。
【0032】
図3は、管状部材151を示す図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は荷重変換部1511の機能を説明するための概念図である。
管状部材151は、本実施形態では鋼管をベースに形成されており、軸線方向に加わる圧縮荷重若しくは引っ張り荷重の少なくとも一部を曲げ荷重として加える(圧縮若しくは引っ張り荷重を曲げ荷重に変換する)荷重変換部1511を備えている。
荷重変換部1511は、鋼管の一部を拡径した拡径部によって構成されている。鋼管に対する拡径部の形成は、バルジ成形等によって形成することができる。バルジ成形以外の方法でも拡径部を形成し得るが、バルジ成形によれば、肉厚を均一にしたまま拡径部を形成することが可能であるため、好適である。
荷重変換部1511である拡径部が形成されていることにより、管状部材151の軸線方向(図3における上下方向)に圧縮荷重若しくは引っ張り荷重が加わると、拡径部においてモーメントが生じるため、この部分において、圧縮荷重若しくは引っ張り荷重が曲げ荷重に変換されることになる。
図3(b)には、荷重変換部1511の機能を説明するための概念図を示した。同図に示されるように、例えば、管状部材151の軸線方向に圧縮荷重が加わると、荷重変換部1511には曲げモーメントが働き、荷重変換部1511に曲げが生じる。荷重変換部1511における曲げ変形は、所定荷重までは弾性変形であり、荷重が除去されればもとの形状に戻ることになる。一方、所定の荷重を超えた場合には塑性変形となる。
弾性領域の耐荷重や、塑性変形によって消費されるエネルギー(即ち緩衝性能)は、拡径部(若しくは縮径部)の幅W若しくは高さHの変更によって行うことが可能である。その他、管状部材を形成する材料の選択、管状部材の径や厚さ等によっても緩衝性能の変更が可能である。また、形成する拡径部(若しくは縮径部)の数の増減によっても緩衝性能の変更が可能である。
【0033】
図1に示されるように、ワイヤロープ等によって構成される索体13は、その両端部において、緩衝装置15を介して、端末支柱11に接続されている。なお、索体13は、U字フック等によって、中間支柱12に対して幅方向(図1における左右方向)に摺動可能に取り付けられている。また、各索体13は、間隔保持材18に対してワイヤグリップによって固定されている。
これらの構成により、落石などの衝撃が加わった際には、これによる荷重が各索体13を伝搬して、緩衝装置15を介して(緩衝されて)、端末支柱11に伝わることになる。
【0034】
図2に示されるように、端末支柱11と索体13は、接続部材16によって、緩衝装置15を介して接続されている。
接続部材16は、
端末支柱11に取り付けられた支柱取り付け部材161と、
索体13に取り付けられた索端金具162と、
管状部材151の内部を挿通させた、索端金具162を、管状部材151の一方側で留める第1係止部材163と、
管状部材151の他方側で、管状部材151に(座金152を介して)当接し、支柱取り付け部材161と接続される第2係止部材164と、
を有する。
なお、ここでは、索体13に取り付けられた索端金具162を、管状部材151の内部に挿通させるものを例としているが、索体13自体を管状部材151の内部に挿通させて、管状部材151の一方側で留めるようにしてもよい。
【0035】
支柱取り付け部材161は、本実施形態ではその両端に抜け止め金具1611が端末加工されたワイヤロープによって構成されている。
索端金具162は、索体13の端末に取り付けられるネジエンドであり、第2係止部材164及び管状部材151の内部を挿通し、その端部で第1係止部材163であるナットが(座金152を介して)締結される。ナット163は抜け止めのためのものであり、座金152(若しくは管状部材151)の穴より大きい径のものが使用される。
第2係止部材164は、ブラケット材であり、支柱取り付け部材161や索端金具162を挿通させる穴が形成されている。図4は、第2係止部材164を示す斜視図である。第2係止部材は、ワイヤロープ161を挿通可能で且つ抜け止め金具1611は挿通不可な長穴であって、その一部において抜け止め金具1611を挿通可能とする拡径穴部16411が形成されている長穴1641を備えている。
拡径穴部16411は、長穴1641の中央部に形成されていることにより、拡径穴部16411の両サイドの長穴1641において抜け止め金具挿通不可部分が形成されている。
拡径穴部16411は索端金具162を挿通する挿通穴としても機能し、拡径穴部16411は、管状部材151(若しくは座金152)は挿通不可な大きさである(即ち、緩衝装置15は第2係止部材164に対して突き当たる構成である)。
【0036】
接続部材16による、緩衝装置15を介した端末支柱11と索体13の取り付けは、
ワイヤロープ161を端末支柱11に巻き回して、両端の抜け止め金具1611をそれぞれ拡径穴部16411に挿通させた後に、拡径穴部16411の両サイドの抜け止め金具挿通不可部分へそれぞれ移動させるステップと、
索端金具162を、拡径穴部16411に挿通した上で、各管状部材151(及び座金152)の内部を挿通させ、ナット(第1係止部材)163で留めることで、索端金具162が抜けないようにするステップと、
によって行われる。なお、上記ステップを前後させるものであってもよい。
ワイヤロープ161を端末支柱11に巻く際には、U字フック111の中を通して配置される。本実施形態のU字フック111は、抜け止め金具1611を挿通可能な大きさで形成され、端末支柱に対して予め固定(溶接)されている。なお、ワイヤロープ161を端末支柱11に巻いた後に、U字フック111を端末支柱11に取り付けるものであってもよい(この場合、U字フックが抜け止め金具を挿通可能である必要は無い)。
【0037】
上記構成の接続部材16により、端末支柱11と索体13が緩衝装置15を介して接続され、索体13に働く張力が緩衝装置15の管状部材151に対してその軸線方向に加わるように構成される。
なお、接続部材は、緩衝装置15を介して端末支柱11と索体13を接続することができるもの(索体に働く張力が緩衝装置の管状部材に対してその軸線方向に加わるように構成されるもの)であれば、任意の構造を採用してよい。
図22には接続部材の別の例を示した。
図22(a)で示した例は、ワイヤロープで形成される支柱取り付け部材161´において、アイ加工(トヨロック(登録商標))を施したものの例である。また、第2係止部材164と同様の構成のブラケット材を、ナット163と緩衝装置15の間となる位置にも設けている。その他の構成については実施形態の接続部材16と同様である。トヨロック(登録商標)で形成したアイ部分を、支柱に取り付けたフックや、張力調整用に設けられるターンバックルなどに取り付けて使用することができる。
図22(b)で示した例は、支柱取り付け部材161´´として、Uボルトを用い、ブラケット材164´を用いたものの例である。ブラケット材164´には、索端金具162を通す穴とUボルト161´´を通す穴がそれぞれ形成されている。Uボルト161´´によって形成されるループ形状部分を、支柱に取り付けたフックや、張力調整用に設けられるターンバックルなどに取り付けて使用することができる。
なお、実施形態や図22に示した接続部材によれば、ネジエンドである索端金具162に対してナット163を締めこむことで、ターンバックルと同様の張力調整機能も併せ持つことができる(ターンバックル等の別途の張力調整部材を不要とすることも可能であり、好適である)。
【0038】
本実施形態の防護柵1よれば、荷重変換部1511を備えた管状部材151を有する緩衝装置15を備えていることにより、荷重変換部1511における弾性変形領域の耐荷重および塑性変形領域のエネルギー吸収の双方を有効に活用することができる。例えば、積雪による静荷重に対しては弾性変形領域の耐荷重によって対応させ(弾性領域であるため積雪による荷重が無くなれば元に戻り、機能を繰り返し発揮可能)、落石時の衝撃に対しては塑性変形領域におけるエネルギー吸収によって、高い緩衝効果を得ることが可能となる。即ち、落石防護及び雪崩予防共用柵として高い有用性を得ることができる。
また、緩衝装置15によれば、緩衝機能発揮時における緩衝装置に起因する索体の軸線方向の変位量を、従来の緩衝装置に比べて小さくすることができるため、防護柵の張出量(落石時等に生じる阻止面の膨らみ)の増大も低減できるという優れた作用効果を得られる。
さらに、荷重変換部1511である拡径部(若しくは縮径部)の幅W若しくは高さHの変更や、形成する拡径部(若しくは縮径部)の数の増減によって、緩衝性能の変更(仕様の異なる製品の製造)を比較的容易に行うことができる。管状部材を形成する材料の選択、管状部材の径や厚さ等の変更によっても緩衝性能の変更は可能であるが、材料や肉厚の変更による調整は容易ではない(鋼管そのものを新たに設計、製造する必要があるため)。一方で、拡径部(若しくは縮径部)の幅W若しくは高さHの変更や、形成する拡径部(若しくは縮径部)の数の増減は、比較的容易に行うことができる(規格品の鋼管に対する加工で実現可能である)ため、好適である。また、直列状に配置する管状部材151の数の増減によっても、緩衝性能の変更(仕様の異なる製品の製造)を容易に行うことができる。
加えて、緩衝装置15によれば、以下で説明する衝撃試験の結果によって示されるように、落石の衝撃によって生じる荷重のピークを抑制し、且つ、荷重のかかる時間長を長くする(分散する)ことが可能であり、良好な緩衝効果を得ることができる。
【0039】
(緩衝装置の衝撃試験)
実施形態で説明した緩衝装置15に対して行った衝撃試験とその結果について説明する。
図5は、本試験で使用した管状部材の仕様を示したものである。
【0040】
試験方法
試験の全体状況を図6に示した(吊り治具・緩衝装置の取付け部分を写真で示している)。門型やぐらにテンションバー、ワイヤロープ(7×7 25φ)を用いて、緩衝装置を取り付けた吊り治具を介して重錘(1.5ton)を取付けた。エアー式離脱装置にて重錘を所定の高さまで持ち上げたのち落下させ、衝撃を与えた際の荷重と緩衝装置の変形状況を確認した。緩衝装置を試験装置に対して接続する部材(治具)は、実施形態の接続部材16そのものではないが、緩衝装置に対して荷重がかかる構造は、接続部材16と同様である。
【0041】
試験結果
試験結果一覧を以下の表1と表2に示す。表1は緩衝装置を設けなかった場合の試験結果であり、表2は緩衝装置を設けた場合の試験結果である。なお、表2中における「緩衝装置数(個)」とは、直列に配置した管状部材の数を示したものである。
また、Case2(3回実施)の第1ピークの荷重-時間関係を示すグラフ(緩衝装置を設けなかったCase1との比較)と、各管状部材の変形状態を図7に示した。図7の各管状部材の写真は、左側が図6において上部に設置されたものであり、これから順番に右に行くに従い図6において下部(重錘側)に設置されたものである(上(左)から順に、1-4の番号を振っている)。
同様に、Case3(3回実施)の第1ピークの荷重-時間関係を示すグラフ(緩衝装置を設けなかったCase1との比較)と、各管状部材の変形状態を図8に、Case9(3回実施)の第1ピークの荷重-時間関係を示すグラフ(緩衝装置を設けなかったCase1との比較)と、各管状部材の変形状態を図9にそれぞれ示した(管状部材には、上(左)から順に、1-5の番号を振っている)。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
Case2結果考察
3回の試験において、同様の荷重波形が見られた。波形の凹凸もよく近似している。
3回の試験において、理想とする波形(最大値の均一化)が得られた。
装置無し平均値と比べ約85kN程度の荷重低減が見られた。
3回の試験において、管状部材の変形度合いは1<2<3<4(重錘側)の傾向が見られた。
Case3結果考察
3回の試験において、同様の荷重波形が見られた。波形の凹凸もよく近似している。
3回の試験において、理想とする波形(最大値の均一化)が得られた。
装置無し平均値と比べ約80~100kN程度の荷重低減が見られた。
3回の試験において、管状部材の変形度合いは1<2<3<4<5(重錘側)の傾向が見られた。
Case6結果考察
3回の試験において、同様の荷重波形が見られた。波形の凹凸もよく近似している。
3回の試験において、理想とする波形(最大値の均一化)が得られた。
装置無し平均値と比べ約80~100kN程度の荷重低減が見られた。
3回の試験において、管状部材の変形度合いは1<2<3<4<5(重錘側)の傾向が見られた。
【0045】
図7~9のグラフに示されているように、緩衝装置を設けなかった場合(Case1やCase4)と比較して、荷重のピークが抑制され、且つ、荷重のかかる時間長が長くなっており(分散されており)、グラフが台形状になっていることがわかる。
同グラフで示される、実施形態の緩衝装置15を用いた場合の特徴的な点として、荷重のピーク(従来より抑制されたピーク)が複数回あらわれ、これによって、荷重がかかるタイミングが分散されている点がある。
これは直列に配置された複数の管状部材(換言すると、直列に配置された複数の荷重変換部)が、順番に潰れていくことによって生じているものであり得る。即ち、直列に配置する荷重変換部の数の増減により、索体にかかる張力のタイミング(張力のかかる時間長)をコントロールし得ることが示されていると言える。
なお、試験結果に示されているように、管状部材は、荷重変換部において先に潰れている(塑性変形している)。即ち、“荷重変換部における曲げ荷重に対する降伏点が、それ以外の箇所における圧縮荷重若しくは引っ張り荷重に対する降伏点よりも低い”ものである。
【0046】
(管状部材の静的荷重試験)
次に、実施形態で説明した管状部材151(1つ)に対して行った静的荷重試験(管状部材に対する圧縮試験)とその結果について説明する。
本試験では、図5で示した仕様の管状部材に加えて、図10で示した仕様の管状部材を用いた。
【0047】
試験方法
試験の実施状況を図11に示した。同試験は引張試験機を利用して行ったものであり、Φ25のロッドRを管状部材151(及び座金152)に挿通させ、ナットNで留めたものを、係止ダイDに当接させて、ロッドRを引っ張ることで行った。ロッドR自体は係止ダイD内に遊嵌されており(係止ダイDに固定されておらず)、ロッドRを図11の右側へ引っ張ることで、管状部材151の軸線方向に圧縮荷重がかかる構成である(管状部材に対して荷重がかかる構造は、実施形態と同様である)。
繰り返し荷重試験と、最大荷重試験の2通りの試験を行い、
繰り返し荷重試験では、最大荷重を30kN及び40kNとした繰り返し引張試験を行った。例えば0kN→40kN→0kN→40kN・・・を計5回の実施を1セットとした内容で実施した。
最大荷重試験では、最大荷重の引張試験を行った。
何れの試験でも、荷重計と変位計をデータロガーに接続し、荷重と変位量を記録した。
【0048】
繰り返し荷重試験結果
図10で示した仕様の管状部材に対する繰り返し荷重の試験(Case11-1~11-3の3回実施)の結果を、以下の表3と図12に示す。
表3は、試験の前後における管状部材の変形状態(図10で示した寸法の変化)を示したものである。
図12は、荷重と変位量の変化を示すグラフと、試験後の管状部材の外観を示す写真である。グラフ及び写真ともに、上から順に、Case11-1~11-3の結果を示す。
同様に、図5で示した仕様の管状部材に対する繰り返し荷重の試験(Case12-1~12-3の3回実施)の結果を、以下の表4と図13に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
Case11結果考察
Case11-1おいて、最大変位に若干のバラつきはあるものの、2回目以降の変位はほとんどなく同じ挙動を示した。グラフと試験後の残留変形量の差異の原因は試験機に取り付ける際の微小な隙間が影響していると判断した。
試験後の現物計測の結果、いずれにおいても30kNの多サイクル荷重では変位0.1mm以内に戻ることが分かった。
Case12結果考察
全ケースおいて、若干の波形の乱れはあるものの、最大変位はかなり近似している。グラフと試験後の残留変形量の差異の原因は試験機に取り付ける際の微小な隙間が影響していると判断した。
試験後の現物計測の結果、いずれにおいても40kNの多サイクル荷重では変位0.2mm以内に戻ることが分かった。
【0052】
最大荷重試験結果
図10で示した仕様の管状部材に対する最大荷重の試験(Case13-1~13-3の3回実施)の結果を、以下の表5と図14に示す。
表5は、試験の前後における管状部材の変形状態(図10で示した寸法の変化)を示したものである。
図14は、荷重と変位量の変化を示すグラフと、試験後の管状部材の外観を示す写真である。左から順に、Case13-1~13-3の結果を示す。
同様に、図5で示した仕様の管状部材に対する繰り返し荷重の試験(Case14-1~14-3の3回実施)の結果を、以下の表6と図15に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
Case13結果考察
全ケースにおいて、荷重50kNを超えたあたりで荷重が上がらず変位量が増加し、変位9~10mm付近から再び上昇し、80kNまで上昇傾向を示した。80kNを超えた後、除荷した。
全ケースにおいて、緩衝装置の変形(拡径部の膨らみ、高さ減少)が見られた。
Case14結果考察
全ケースにおいて、荷重85kNを超えたあたりで荷重が上がらず変位量が増加し、変位14mm付近から再び上昇し、100kNまで上昇傾向を示した。100kNを超えた後、除荷した。
全ケースにおいて、緩衝装置の変形(拡径部の膨らみ、高さ減少)が見られた。
【0056】
(防護柵としての衝撃試験)
実施形態で説明した防護柵1に対して行った衝撃試験とその結果について説明する。
図16(及び表7)は、本試験で使用した防護柵の仕様を示したものである。
【0057】
試験方法
鋼製部材により架台を作製し、阻止面が水平から10°傾いた状態になるよう供試体(防護柵)を取付けた。
クレーンにて阻止面の落下目標位置に重錘芯を合わせ、所定の高さまで巻上げる。高さは阻止面から高さ33mまでをトータルステーションを用いて計測後、エアー式離脱装置により重錘(1.69ton)を落下させ供試体に衝突させた。速度は重錘のターゲットマークを高速カメラで読み取り計測した。ロープ張力はひずみゲージ付ロッドで測定、供試体の衝突変位については高速カメラおよびビデオカメラで撮影した。
試験の状況を図17に示している(図17(a)は上空から防護柵を撮影したものである)。
【0058】
【表7】
【0059】
試験結果
試験結果一覧を以下の表8に示す。
また、Case1における各索体13(12本のワイヤロープ)に生じた張力の時間変化を示すグラフ(一部欠測あり)と、重錘衝突後の防護柵の変形状態を図18に示し、図19には緩衝装置の変形状態を示した(図19では、変形が観測された緩衝装置(重錘の衝突箇所に近いワイヤロープの両端に接続された緩衝装置)を主に示している)。
同様に、Case2における各索体13(12本のワイヤロープ)に生じた張力の時間変化を示すグラフ(一部欠測あり)と、重錘衝突後の防護柵の変形状態を図20に示し、図21には緩衝装置の変形状態を示した。
【0060】
【表8】
【0061】
Case1結果考察
重錘エネルギー558kJを捕捉した。
阻止面の最大張出量は2100mm、柵の残存高さは2300mmを示した。
支柱の変形角度は衝突スパンである端末支柱で最大17.4°を示した。
重錘衝突近傍のワイヤロープ7,8,9は緩衝装置の変形も著しい。
欠測のワイヤロープ8を除き、衝突近傍のワイヤロープ5,6,7,9において、図18に示されるように台形に近い荷重波形を示した。緩衝装置の効果によるものと推測される。
緩衝装置の直列配置における変形状態を比較すると、支柱側よりもブラケット側の方が著しい傾向がある。支柱1と支柱4について大差は見られない。
Case2結果考察
重錘エネルギー558kJを捕捉した。
阻止面の最大張出量は2000mm、柵の残存高さは2600mmを示した。
支柱の変形角度は衝突スパンである中間支柱で最大12.5°を示した。
重錘衝突近傍の7,8,9は緩衝装置の変形も著しい。
欠測のワイヤロープ8を除き、衝突近傍のワイヤロープ5,6,7,9において、図20に示されるように台形に近い荷重波形を示した。緩衝装置の効果によるものと推測される。
緩衝装置の直列配置における変形状態を比較すると、支柱側よりもブラケット側の方が著しい傾向がある。支柱1と支柱4について大差は見られない。
【0062】
なお、実施形態では、緩衝装置が管状部材を複数備えているものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、管状部材が1つだけのものであってもよい。
また、実施形態では、緩衝装置の管状部材が1本の直列状に設けられるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、並列的に配されるものであってもよい。図22(c)にはこのようなものの一例を示した。この例では、図22(a)で示した支柱取り付け部材161´の両端部において緩衝装置15が取り付けられる構成となっている。ワイヤロープ161´の両端部にそれぞれブラケット材164´(図22(b)と同様のもの)と緩衝装置15を挿通した後に、抜け止め金具1611を端末加工し、また、ブラケット材164´に対して索端金具162を通して、ナット163(及び座金)で抜け止めしたものである。
図22(c)では、2列並列に接続するものを示したが、3列以上並列に接続するものであってもよい。また、図22(c)では複数の管状部材が直列状に設けられたものが、並列的に接続されたものとしているが、1つの管状部材を並列的に複数接続するようなものであってもよい。
【0063】
実施形態では、同一の管状部材を直列状に設けるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、異なる構成の管状部材を組み合わせて緩衝装置を構成するようにしてもよい。
例えば、上記各試験結果で示されるように、直列状に設けられた管状部材は、索体側に設けられたものから順番に潰れていく(支柱側ほど潰れにくい)傾向がある。これに基づいて、“先に潰れる側に耐荷重の大きいものを設ける”、“拡径部若しくは縮径部の幅(図3(b)におけるW)の大きいものを荷重作用側(索体側)からもっとも遠い側に設ける”、“拡径部若しくは縮径部の高さ(図3(b)におけるH)の大きいものを荷重作用側(索体側)からもっとも遠い側に設ける”といったような配置をするようなものであってもよい。
【0064】
実施形態では、緩衝装置の管状部材に対して、その軸方向に圧縮荷重がかかる構成であるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、その軸方向に引っ張り荷重がかかるようにするものであってもよい。
また、実施形態では、1つの管状部材に荷重変換部が一箇所だけ設けられるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、1つの管状部材に複数の荷重変換部が形成されているものであってもよい。
【0065】
実施形態では、端末支柱と索体の接続箇所に緩衝装置が設けられているものを例としているが、本発明をこれに限るものではない。
例えば、中間支柱と索体の接続箇所に緩衝装置を設けるようにしてもよい。図23に、このようなものの例を示した。実施形態で説明した接続部材16をそのまま用いて、中間支柱においてその両側で索体13を緩衝装置15を介して接続することができる。
また、索体の途中で緩衝装置を設ける(2本の索体を、緩衝装置を介して接続する)ようにしてもよい。例えば、図23において中間支柱12を介さずに接続部材16同士を相互に接続することで、2本の索体を緩衝装置を介して接続させることができる。また、図22で示したような接続部材を用いることで2本の索体を緩衝装置を介して接続させることができる。
【0066】
実施形態では、荷重変換部が拡径部として形成されるものを例としているが、本発明をこれに限るものではない。荷重変換部を縮径部によって形成してもよい。また、拡径部や縮径部は、円弧状の形状に限られるものではなく、任意の形状とすることができる。加えて、荷重変換部を形成する位置や範囲も任意とし得る。
図24にはこのようなものの例を示した。
図24(a)の管状部材151´は、荷重変換部を縮径部1511´によって形成したものの例である。
図24(b)の管状部材151´´は、荷重変換部を、管状部材の軸線方向の両端部において形成したテーパー部(拡径部)1511´´によって構成したものの例である。
図24(c)の管状部材151´´´は、荷重変換部を、管状部材に形成した段差部(拡径部)1511´´´によって構成したものの例である。
図24(d)の管状部材151´´´´は、直管状の部分を設けずに、荷重変換部1511´´´´のみで構成したものの例である。
なお、1つの管状部材に拡径部と縮径部の両方を形成するようなものであってもよい。
拡径部と縮径部はどちらを基準に見るかの違いということもでき(例えば、図24(c)において、中央部を縮径部と見るか、両端部を拡径部と見るかの違い)、その意味においては両者に概念的な違いはない。
【0067】
実施形態では、拡径部が全周的に設けられるものを例としているが、本発明をこれに限るものではない。例えば、拡径部(若しくは縮径部)の一部を切削することにより、断続的な拡径部(若しくは縮径部)としてもよい。
例えば、拡径部(若しくは縮径部)に一つ又は複数の穴や切欠きを形成することで、弾性領域の耐荷重や、緩衝性能を変更すること(仕様の異なる製品の製造)も可能である。
【0068】
実施形態では、管状部材として断面円形の鋼管を例としているが、本発明をこれに限るものではない。例えば多角形等の任意の断面形状の管状の部材を用いることが可能である(“管状部材”には、任意の断面形状の管状の部材が含まれる)。
【0069】
実施形態では、防護柵として、落石防護及び雪崩予防共用柵を例としているが、本発明をこれに限るものではない。例えば落石防護柵や崩壊土砂に対する防護柵として使用される(非降雪地域で使用される)もの等であっても勿論よい。
【符号の説明】
【0070】
1...防護柵(落石防護及び雪崩予防共用柵)
11...端末支柱
12...中間支柱
13...索体
15...緩衝装置
151...管状部材
1511...荷重変換部(拡径部)
16...接続部材
161...支柱取り付け部材
1611...抜け止め金具
162...索端金具
163...第1係止部材
164...第2係止部材
1641...長穴
16411...拡径穴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【手続補正書】
【提出日】2022-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設された複数の支柱と、
前記支柱間に張られた索体と、
前記支柱と前記索体の接続箇所若しくは前記索体の中間において設けられた緩衝装置であって、1つ又は複数の管状部材を有する緩衝装置と、
を備え、
前記緩衝装置が、前記索体に働く張力が前記管状部材に対してその軸線方向に加わるように構成されており、これによって前記管状部材の軸線方向に加わる圧縮荷重若しくは引っ張り荷重の少なくとも一部を、曲げ荷重として加える荷重変換部を備えており
前記支柱と前記索体を、前記緩衝装置を介して接続する接続部材であって、
前記支柱に取り付けられる支柱取り付け部材と、
前記1つ又は複数の管状部材の内部を挿通させた前記索体若しくは前記索体に取り付けられた索端金具を、前記1つ又は複数の管状部材の一方側で留める第1係止部材と、
前記1つ又は複数の管状部材の他方側で、前記1つ又は複数の管状部材に直接又は他の部材を介して当接し、且つ、前記支柱取り付け部材と接続される第2係止部材と、
を有する接続部材を備え、
前記支柱取り付け部材が、その端末に抜け止め金具が端末加工されたワイヤロープであり、
前記第2係止部材が、前記ワイヤロープを挿通可能で且つ前記抜け止め金具は挿通不可な長穴であって、その一部において前記抜け止め金具を挿通可能とする拡径穴部が形成されている長穴を備える、防護柵。
【請求項2】
複数の前記管状部材が直列状に配置されている、請求項1に記載の防護柵。
【請求項3】
前記ワイヤロープの両端部において前記抜け止め金具の端末加工がされており、
前記拡径穴部が、前記長穴の中央部に形成されていることにより、前記拡径穴部の両サイドの前記長穴において前記抜け止め金具の挿通不可部分が形成されており、前記拡径穴部が、前記索体若しくは前記索体に取り付けられた索端金具が挿通される挿通穴としても機能する、請求項1又は2に記載の防護柵。
【請求項4】
請求項に記載の防護柵における前記接続部材の組み付け方法であって、
前記ワイヤロープを前記支柱に巻き回して、両端の前記抜け止め金具をそれぞれ前記拡径穴部に挿通させた後に、前記拡径穴部の両サイドの前記抜け止め金具挿通不可部分へそれぞれ移動させるステップと、
前記索体若しくは前記索体に取り付けられた前記索端金具を、前記拡径穴部に挿通した上で、前記1つ又は複数の管状部材の内部を挿通させ、前記第1係止部材で留めるステップと、
を備える、組み付け方法。
【請求項5】
支柱の間に張られる索体に働く張力を緩衝させる緩衝装置であって、
前記索体に働く張力が軸線方向に加わる1つ又は複数の管状部材を備え、
前記管状部材の軸線方向に加わる圧縮荷重若しくは引っ張り荷重の少なくとも一部を、曲げ荷重として加える荷重変換部を備えており
前記支柱と前記索体を、前記緩衝装置を介して接続する接続部材であって、
前記支柱に取り付けられる支柱取り付け部材と、
前記1つ又は複数の管状部材の内部を挿通させた前記索体若しくは前記索体に取り付けられた索端金具を、前記1つ又は複数の管状部材の一方側で留める第1係止部材と、
前記1つ又は複数の管状部材の他方側で、前記1つ又は複数の管状部材に直接又は他の部材を介して当接し、且つ、前記支柱取り付け部材と接続される第2係止部材と、
を有する接続部材をさらに備え、
前記支柱取り付け部材が、その端末に抜け止め金具が端末加工されたワイヤロープであり、
前記第2係止部材が、前記ワイヤロープを挿通可能で且つ前記抜け止め金具は挿通不可な長穴であって、その一部において前記抜け止め金具を挿通可能とする拡径穴部が形成されている長穴を備える、緩衝装置。
【請求項6】
複数の前記管状部材が直列状に配置されている、請求項に記載の緩衝装置。
【請求項7】
請求項に記載の防護柵の、製造方法であって、
前記管状部材の数の変更により、前記緩衝装置の緩衝性能を変更する、防護柵の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の緩衝装置の、製造方法であって、
前記管状部材の数の変更により、緩衝性能を変更する、緩衝装置の製造方法。