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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158757
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20231024BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20231024BHJP
   B60T 17/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
B60T17/00 C
B60T17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068722
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】西川 和久
【テーマコード(参考)】
3D049
3G093
【Fターム(参考)】
3D049CC03
3D049HH09
3D049HH42
3D049KK07
3D049KK17
3D049QQ04
3D049RR04
3D049RR11
3G093AA01
3G093BA19
3G093BA21
3G093BA22
3G093CA02
3G093DA01
3G093DA03
3G093DA05
3G093DA06
3G093DA12
3G093DA13
3G093DB05
3G093DB11
3G093DB15
3G093DB20
3G093DB27
3G093EA01
3G093EB04
3G093EB05
3G093EC02
(57)【要約】
【課題】アイドリングストップの継続性を向上させて燃費の向上を図る。
【解決手段】車両用制御装置は、所定のエンジン停止条件が成立するとエンジン3の自動停止制御を行い、アイドリングストップ制御中に所定のエンジン再始動条件が成立するとエンジン3の自動始動制御が行われる。ここで、アイドリングストップ制御中は、ブレーキブースタ14の負圧が通常駆動閾値よりも減少した場合は、車両1の消費電流に関するエンジン再始動条件が成立しない範囲でブレーキブースタ14のポンプ13aの駆動制御が行われる。これにより、ブレーキブースタ14の負圧がエンジン3の再始動条件にかかる閾値よりも減少するのを防止できるとともに、ポンプ13aが駆動することによって、車両1の消費電流がエンジン3の再始動条件にかかる閾値を超えるのを防止できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエンジン自動停止条件が成立すると、稼動中のエンジンを停止させ、所定のエンジン再始動条件が成立すると、停止中のエンジンを自動的に再始動させる車両用制御装置において、
エンジン負圧を利用してブレーキをアシストするブレーキ補助手段と、
ポンプの駆動制御を行うことで、前記ブレーキ補助手段に補助負圧を供給する負圧補助手段と、
を備え、
前記所定のエンジン再始動条件は、前記ポンプの駆動に必要な電流を含む車両の消費電流が所定の閾値を超えることを含み、
前記負圧補助手段は、エンジンが自動停止している状態で前記ブレーキ補助手段に補助負圧を供給する際、前記所定の閾値を超えない範囲で前記ポンプを駆動させる
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記ポンプは、モータで駆動する電動式負圧ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記負圧補助手段は、前記ポンプを駆動させても前記車両の消費電流が前記所定の閾値を超えないと判断した場合に、前記ポンプを駆動させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記負圧補助手段は、前記エンジンの自動停止中に前記ブレーキ補助手段に補助負圧を供給する場合は、前記ポンプを駆動させたときの前記車両の消費電流が、前記所定の閾値を超えないように前記ポンプに印加する電圧のオンとオフの周期を調整することを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定のエンジン自動停止条件が成立すると、稼動中のエンジンを停止させ、所定のエンジン再始動条件が成立すると、停止中のエンジンを自動的に再始動させる制御手段を備える車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定のアイドリングストップ始動条件が成立した場合に、エンジンのアイドリングを自動的にストップさせる車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここでは、所定のアイドリングストップ始動条件として、(i)車両が停止している、(ii)バッテリ容量が所定量以上である、(iii)エンジンの冷却水の温度が所定値以上である、(iv)エアコンの設定温度と車室内の温度との差が所定値以下であるなどの全ての条件を満たすことが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-84961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両では、ブレーキペダルの操作力を補助するためのブレーキブースタが搭載されているが、ブレーキブースタはエンジン負圧を利用するため、エンジンが停止していたり低回転時では、エンジン負圧が低下して所望の制動力が得られないおそれがある。そこで、エンジン負圧が低下した場合は、その低下分を補うために電動式ポンプでブレーキブースタに負圧を供給する電動負圧ポンプシステム(EVPシステム)がある。
【0005】
電動負圧ポンプシステムが搭載されたアイドリングストップ車では、エンジンのアイドリングがストップしている状態でブレーキブースタ内の負圧が閾値を下回った場合は、電動負圧ポンプを駆動させてブレーキブース内の負圧を上げる制御が行われる。また、アイドリングストップ車では、アイドリングストップ中に所定のエンジン再始動条件が成立するとエンジンが自動的に再始動するが、当該条件として車両の消費電流が閾値を上回ることが設定されている場合がある。この場合、アイドリングストップ中に電動負圧ポンプが駆動すると、消費電流が当該閾値を上回り、アイドリングストップが解除されてしまい燃費向上の効率が悪くなる。
【0006】
この発明は、上記した課題を鑑みてなされたものであり、アイドリングストップの継続性を向上させて燃費の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の車両用制御装置は、所定のエンジン自動停止条件が成立すると、稼動中のエンジンを停止させ、所定のエンジン再始動条件が成立すると、停止中のエンジンを自動的に再始動させる車両用制御装置において、エンジン負圧を利用してブレーキをアシストするブレーキ補助手段と、ポンプの駆動制御を行うことで、前記ブレーキ補助手段に補助負圧を供給する負圧補助手段とを備え、前記所定のエンジン再始動条件は、前記ポンプの駆動に必要な電流を含む車両の消費電流が所定の閾値を超えることを含み、前記負圧補助手段は、エンジンが自動停止している状態で前記ブレーキ補助手段に補助負圧を供給する際、前記所定の閾値を超えない範囲で前記ポンプを駆動させることを特徴としている(請求項1)。
【0008】
また、前記ポンプは、モータで駆動する電動式負圧ポンプであってもよい(請求項2)。
【0009】
また、前記負圧補助手段は、前記ポンプを駆動させても前記車両の消費電流が前記所定の閾値を超えないと判断した場合に、前記ポンプを駆動させるようにしてもよい(請求項3)。
【0010】
また、前記負圧補助手段は、前記エンジンの自動停止中に前記ブレーキ補助手段に補助負圧を供給する場合は、前記ポンプを駆動させたときの前記車両の消費電流が、前記所定の閾値を超えないように前記ポンプに印加する電圧のオンとオフの周期を調整する(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、負圧補助手段は、エンジンが自動停止している状態(アイドリングストップ状態)でブレーキ補助手段に補助負圧を供給する際、車両の消費電流がエンジンの再始動にかかる閾値を超えない範囲でポンプを駆動させるため、ブレーキ補助手段に補助負圧を供給する際に車両の消費電流が所定の閾値を超えてアイドリングストップ状態が解除されるのを防止でき、アイドリングストップの継続性が向上する。また、アイドリングストップの継続性が向上することで、車両の燃費が向上する。
【0012】
請求項2の発明によれば、前記ポンプを電動式負圧ポンプとすることで、ブレーキ補助手段に補助負圧を供給する際に車両の消費電流の調整が容易になる。
【0013】
請求項3の発明によれば、負圧補助手段は、駆動させると車両の消費電流が所定の閾値を超えてエンジンが再始動する場合は、ポンプが駆動させないため、ポンプの駆動に基づくエンジンの再始動を確実に防止できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、ブレーキ補助手段に補助負圧を供給しつつ、アイドリングストップの継続性を向上させることができ、車両の燃費が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の車両用制御装置の一実施形態のブロック図である。
図2】停車後のアイドリングストップ中にブレーキの踏み直しがあった場合の各パラメータのタイミングチャートを従来のタイミングチャートと比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明をより詳細に説明するため、本発明をアイドリングストップ車に適用した場合の一実施形態について、図1および図2を参照して詳述する。
【0017】
図1はアイドリングストップ車1(車両1という場合もある)に備えられた車両用制御装置のブロック構成を示し、アイドリングストップ車1は、軽量化、小型化等を図るため、電源として12Vの比較的小容量の1個の鉛バッテリ2を備える。このバッテリ2の負極端子はアイドリングストップ車1の車体に接続されて接地される。なお、バッテリ2には電流センサ(図示省略)が接続されており、車両1の消費電流を所定周期(例えば、10ms)で計測している。
【0018】
図1において、3はアイドリングストップ車1のエンジン、4はエンジン3のトランスミッション側のCVTであり、エンジン3との間にトルクコンバータ(ロックアップクラッチの機構を含む)5が介在する。
【0019】
6はエンジン3を始動するスタータであり、リレー7を介してバッテリ2から給電される。9はエンジン3の回転力がベルト10を介して伝達されるモータ機能付き発電機(以下、ISG(Integrated Starter Generator)という)であり、走行中等に発電出力でバッテリ2を充電し、所定条件でモータとして動作し、アイドリングストップ車1の走行駆動力を発生するようになっている。
【0020】
リレー7は、リレーコイル7aとリレースイッチ7bとを有し、リレーコイル7aに電流が流れるとリレースイッチ7bがON状態となり、スタータ6がバッテリ2から給電され、エンジン3が始動する。また、リレーコイル7aの通電がなくなると、リレースイッチ7bがOFF状態となり、スタータ6への給電が停止される。
【0021】
11は、アクセルセンサ(図示省略)により検出されたアクセル開度にもとづいて要求トルクを算出し、この要求トルクを出力するためにエンジン3の燃料噴射量、吸入空気量、点火時期などを制御するEFI制御部と、アイドリングストップ制御を司るアイドリングストップ制御部と、CVT制御を司るCVT制御部と、横滑りやスピンを防止するABS/VSC制御部と、EVPユニット13のポンプ13a(負圧ポンプ)の駆動制御を司るEVP制御部とが統合された統合制御ECUである。その他、それぞれ図示省略する、エンジン制御を司るエンジンECU、ISGの制御を司るISGECUなどがあり、各ECUはそれぞれマイクロコンピュータ等により形成され、CAN等の通信バス(図示省略)を介して情報をやり取りする。
【0022】
統合制御ECU11は、リレーコイル7aの一端に接続され、当該一端をバッテリ2に接続するか否かのスイッチとして機能する第1ドライバIC11aと、リレーコイル7aの他端に接続され、当該他端を接地させるか否かのスイッチとして機能する第2ドライバIC11bと、これらのIC11a,11bの制御やその他の制御を司るCPU11cとを備え、後述するアイドリングストップ後のエンジン3の再始動や、ブレーキブースタ14に補助的に負圧を供給するためのEVPユニット13のポンプ13aの駆動などの制御を行う。
【0023】
ブレーキブースタ14は、ブレーキペダル19の操作力をアシストするものであり、エンジン3の駆動により生じたエンジン負圧を蓄積する定圧室(図示省略)と、当該エンジン負圧よりも高圧な空気が蓄積される変圧室(図示省略)とで構成されている。ブレーキブースタ14には、ブレーキ装置のリザーバタンクに接続されたマスターシリンダ15が連結されている。リザーバタンクには、ブレーキ液(ブレーキ油)が貯留されている。また、ブレーキブースタ14の定圧室には負圧センサ20が設けられており、定圧室の圧力をブースタ負圧として検出する。負圧センサ20からの検出信号は、統合制御ECU11に出力される。ブレーキブースタ14の定圧室には、EVPユニット13のポンプ13aが接続されている。
【0024】
EVPユニット13は、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧の値が小さくなったときに、それを補うために負圧を供給するものであり、ポンプ13aを備える。ポンプ13aは、例えば、電動式負圧ポンプであり、駆動によりブレーキブースタ14の定圧室内の気体を吸引することで定圧室を大気圧よりも低い負圧にする(負圧を供給する)。この実施形態では、EVPユニット13と統合制御ECU11とが電気的に接続されており、統合制御ECU11のCPU11cによりポンプ13aの駆動制御が行われる。
【0025】
(アイドリングストップ制御)
ここで、アイドリングストップ車1の概略の制御及び動作を説明する。ドライバによるエンジン3の始動については、シフトレバー(図示省略)のポジションがPレンジかNレンジである状態でイグニッション(IG)キースイッチ17がオン操作(エンジンスタートの指令)されると、IGキースイッチ17の信号が統合制御ECU11のCPU11cに入力され、この入力に基づいてCPU11cがリレー7を瞬時に通電してオン状態とする。これにより、バッテリ2の電源をスタータ6に給電してスタータ6を始動させ、停止していたエンジン3を始動させる(初期始動)。
【0026】
エンジン3が始動してISGの発電電力でバッテリ2が一旦満充電状態に充電されると、その後は、IGキースイッチ17のオフ操作でエンジン3が停止するまで、統合制御ECU11のCPU11cがアイドリングストップ制御を実行する。
【0027】
統合制御ECU11のCPU11cには、車速センサ8からの車速情報、シフトレンジスイッチ16からのシフトポジション情報、負圧センサ20からの負圧情報等が入力される。また通信バスを介してエンジン3の回転数や冷却水温等のエンジン3の情報、バッテリ2の電流、温度等の情報、マスターシリンダ圧等の情報、ロックアップクラッチ情報、ストップランプスイッチ、カーテシスイッチ等の車内各所のスイッチの情報等も入力される。
【0028】
そして、これらの情報に基づき、アイドリングストップ制御中の統合制御ECU11のCPU11cは、所定のエンジン停止条件が成立した場合にエンジンECUにエンジン停止を指令し、エンジンECUが燃料スロットルを絞ったりしてエンジン3を自動停止する。ここで、所定のエンジン停止条件とは、例えば、交通信号の赤信号等にしたがってドライバがブレーキペダル19を踏込み、マスターシリンダ圧が所定の踏込圧以上(ブレーキペダルの踏み込み量が所定値以上)になっていること、かつ、例えば、ストップランプが点灯していて車両1が所定車速(例えば、9km/h)以下)まで減速していること、である。
【0029】
マスターシリンダ圧が所定の踏込圧以上であるか否かは、例えば、ブレーキペダルの位置を検出するブレーキペダル位置センサ(図示省略)の検出値に基づいて判定することができる。また、車両1が所定車速まで減速しているか否かは、例えば、車速センサ8からの出力値に基づいて判定することができる。
【0030】
次に、アイドリングストップ中に、所定のエンジン再始動条件が成立した場合、統合制御ECU11のCPU11cは、リレー7を瞬時通電してオンし、バッテリ2の電源をスタータ6に給電してスタータ6を始動し、停止しているエンジン3を自動的に再始動する。
所定のエンジン再始動条件は、例えば、
(i)ドライバがブレーキペダル19を離し、ブレーキペダル19の踏み込み量が所定の閾値以下になったとき
(ii)シフトレンジスイッチ16からのシフトポジション情報が、「Dレンジ」または「Nレンジ」から「Pレンジ(パーキングレンジ)」に変化したとき
(iii)シフトレンジスイッチ16からのシフトポジション情報が「Rレンジ(リバースレンジ)」に変化したとき
(iv)アクセルペダルの踏み込みがあったとき(アクセルペダルの踏み込み量が所定値以上のとき)
(v)消費電流が所定値以上であるとき
(vi)エアコン使用中で設定温度と車内の温度差が大きくなったとき
(vii)デフロスタースイッチがON操作されたとき
(viii)運転席がシートベルトを外したとき
(ix)ステアリングの操作が検出されたとき
(x)ブレーキブースタの定圧室の圧力が所定値以上であるとき
の(i)~(x)を含み、これらのいずれかが成立した場合、統合制御ECU11のCPU11cは、エンジン3の自動始動制御(エンジンの再始動制御)を行う。
【0031】
(電動負圧ポンプによる負圧補助)
統合制御ECU11のCPU11cは、アイドリングストップ制御が行われていない状態では、ブレーキブースタ14の定圧室の圧力が所定の閾値(通常駆動閾値:図2のEVP ON閾値)よりも高くなった場合に、EVPユニット13のポンプ13aの駆動制御を行う。
【0032】
ただし、統合制御ECU11のCPU11cは、アイドリングストップ制御が行われている状態では、ブレーキブースタ14の定圧室の圧力が所定の閾値(通常駆動閾値:図2のEVP ON閾値)よりも高くなった際に、EVPユニット13のポンプ13aの駆動制御を行うか否かを判定した上でポンプ13aの駆動制御を行う。ここで、通常駆動閾値よりも高くなるとは、当該閾値よりも大気圧に近づくことを意味する。通常駆動閾値は、ポンプ13aで定圧室の真空引きを行ったときに到達可能な圧力(限界負圧)とエンジンの再始動にかかる閾値との間の圧力範囲内において、実験に基づいて予め設定されている。
【0033】
具体的には、統合制御ECU11のCPU11cは、アイドリングストップ制御中にブレーキブースタ14の定圧室の圧力が所定の閾値(通常駆動閾値:図2のEVP ON閾値)よりも高くなった場合、そのときに電流センサから出力された車両1の消費電流に基づいて、EVPユニット13のポンプ13aの駆動制御を行うか否かを判定する。
【0034】
ブレーキブースタ14の定圧室の負圧の大きさと、EVPユニット13のポンプ13aを駆動させたときに消費する電流値とは相関関係があり、ブレーキブースタ14の定圧室の圧力が所定の閾値(通常駆動閾値:図2のEVP ON閾値)になったときに、EVPユニット13のポンプ13aを駆動させた場合、どれくらいの消費電流を要するかは実験的に推定することが可能である(推定必要消費電流)。この実施形態では、当該推定必要消費電流の値が統合制御ECU11のメモリに記憶されている。
【0035】
統合制御ECU11のCPU11cは、ブレーキブースタ14の定圧室の圧力が所定の閾値(通常駆動閾値:図2のEVP ON閾値)よりも高くなった場合、そのときに電流センサから出力された車両1の消費電流の値と、推定必要消費電流の値との合計値が、エンジン3の再始動にかかる車両1の消費電流の閾値(アイドリングストップ解除閾値)を超えるか否かを判定する。なお、統合制御ECU11のCPU11cは、車両1の消費電流に関する情報を、所定周期(例えば、30ms)で取得している。
【0036】
車両1の消費電流と、推定必要消費電流との合計値が、エンジン3の再始動にかかる車両1の消費電流の閾値(アイドリングストップ解除閾値)を超えると判定した場合、統合制御ECU11のCPU11cは、ブレーキブースタ14の定圧室の圧力が通常駆動閾値よりも高くなっているにも関わらず、EVPユニット13のポンプ13aの駆動の禁止制御を行う。つまり、統合制御ECU11のCPU11cは、車両1の消費電流と、推定必要消費電流との合計値が、アイドリングストップ解除閾値を超えると判定した場合は、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧が通常駆動閾値よりも減少していても、ポンプ13aの駆動を禁止する。この場合、ポンプ13aが駆動しないため、車両1の消費電流が、アイドリングストップ解除閾値を超えることがない。
【0037】
車両1の消費電流と、推定必要消費電流との合計値が、エンジン3の再始動にかかる車両1の消費電流の閾値(アイドリングストップ解除閾値)を超えないと判定した場合、統合制御ECU11のCPU11cは、EVPユニット13のポンプ13aの駆動制御を行う。この場合、ブレーキブースタ14の負圧が閾値(通常駆動閾値)よりも減少し、EVPユニット13のポンプ13aが駆動しても、車両1の消費電流がアイドリングストップ解除閾値(車両1の消費電流に基づく解除閾値)を超えることがない。
【0038】
電流センサから出力された車両1の消費電流と、推定必要消費電流との合計値が、エンジン3の再始動にかかる車両1の消費電流の閾値(アイドリングストップ解除閾値)と同じ値になった場合、統合制御ECU11のCPU11cがポンプ13aの駆動制御を実行するか、禁止制御を行うかは任意に設定することができる。
【0039】
また、統合制御ECU11のCPU11cは、ポンプ13aの駆動制御を行った際、その後にブレーキブースタ14の定圧室の圧力が所定の閾値(駆動停止閾値)よりも低くなった場合は、EVPユニット13のポンプ13aの駆動を停止する。ここで、駆動停止閾値よりも低くなるとは、当該閾値よりも真空圧に近づくことを意味する。この実施形態において駆動停止閾値は、ポンプ13aで定圧室の真空引きを行ったときに到達可能な圧力(限界負圧)よりも若干高圧(大気圧側の圧力)の値に設定されている。なお、駆動停止閾値は、通常駆動閾値と限界負圧との間の範囲内で適宜変更可能である。
【0040】
次に、図2を参照して、本実施形態のアイドリングストップ制御について従来技術のアイドリングストップ制御と比較しつつ説明する。
【0041】
(停車後にエンジンが自動停止+エンジン停止中にブレーキの踏み直し有りの場合:従来)
図2(a)に示すように、従来技術では、エンジンが自動停止制御される過程では、まずドライバがアクセルペダルからブレーキペダルに踏み替える(ブレーキペダル操作がON)ことにより車両が減速する(時刻T1)。これにより、ブレーキブースタの定圧室の負圧は減少するが、EVPユニットのポンプの駆動にかかる閾値(この実施形態の通常駆動閾値に相当)までは減少していないとする。したがって、時刻T1ではポンプ13aの駆動制御が行われない。
【0042】
ブレーキペダルの踏み込みの継続により車両が停止し(時刻T2)、その後にエンジンの停止条件が成立したとする(時刻T3)。時刻T3ではエンジンの停止条件の成立によりエンジンの自動停止制御が行われる。このとき、エンジン停止により車両の消費電流は減少する。また、ブレーキペダルの踏み込みが継続しているため、時刻T3のブレーキブースタの定圧室の負圧量は時刻T1から略変化しない。したがって、ブレーキブースタの定圧室の負圧は、EVPユニットのポンプの駆動にかかる閾値(この実施形態の通常駆動閾値に相当)までは減少しておらず、EVPユニットのポンプが駆動されない。
【0043】
時刻T4でエンジンの停止制御中(アイドリングストップ中)にブレーキペダルの踏み直し(1回目の踏み直し)が発生したとする。この場合、ブレーキブースタの定圧室の負圧はさらに減少する。これにより、時刻T5でブレーキブースタの定圧室の負圧がEVPユニットのポンプの駆動にかかる閾値(この実施形態の通常駆動閾値に相当)よりも減少した場合は、負圧を補助するためにEVPユニットのポンプの駆動制御が行わる。ポンプの駆動制御が行われると、ブレーキブースタの定圧室の負圧が増加するため、定圧室の負圧がアイドリングストップ解除閾値よりも下がらない。したがって、アイドリングストップ制御中にブレーキペダルの踏み直しがあっても、定圧室の負圧の減少に基づいてアイドリングストップ制御が解除されない。
【0044】
一方、ポンプの駆動制御が行われると車両の消費電流が増加するが、1回目の踏み直しでは定圧室の負圧の減少量が比較的少なく、ポンプの駆動制御に伴って増加した車両の消費電流が、アイドリングストップ解除閾値(消費電流による解除閾値)を超えていなかったとする。この場合は、アイドリングストップ制御が維持される。
【0045】
短時間でブレーキペダルの踏み直しが頻繁に行われた場合は、ブレーキブースタの定圧室の負圧の減少量が激しくなる。この場合、負圧の減少を補うポンプの駆動負荷が増大するため、消費電流が増大する。したがって、時刻T6で2回目の踏み直しが行われると、車両の消費電流がさらに増加する。その結果、時刻T7で車両の消費電流が、アイドリングストップ解除閾値を上回った場合は、時刻T7でアイドリングストップ制御が解除され、エンジンの再始動が行われる。エンジンが再始動されると、ECUの起動などに伴って車両の消費電流がさらに増加する。
【0046】
EVPユニットのポンプの駆動は、ブレーキブースタの定圧室の負圧が所定の閾値まで回復すると停止され(時刻T8)、これ伴って車両の消費電流が減少する。
【0047】
以上のように、従来技術では、停車後にアイドリングストップが行われてエンジンの停止制御が行われても、そのあとにブレーキの踏み直しがあった場合は、EVPユニットのポンプの駆動に伴う車両の消費電流の増加により、アイドリングストップ状態が解除される場合がある。これは、ブレーキペダルの踏み直しだけでなく、アイドリングストップ状態のときにブレーキペダルの踏み増しが行われた場合や、ドライバが意識していないブレーキペダルの踏み込み量の変化があった場合でも、定圧室の負圧の減少によりポンプが駆動しアイドリングストップ状態が解除される場合がある。
【0048】
(停車後にエンジンが自動停止+エンジン停止中にブレーキの踏み直し有りの場合:本発明)
図2(b)に示すように、この実施形態では、エンジン3が自動停止制御される過程では、まずドライバがアクセルペダルからブレーキペダル19に踏み替える(ブレーキペダル19の操作がON)ことにより車両1が減速する(時刻T11)。これにより、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧は減少するが、EVPユニット13のポンプ13aの通常駆動にかかる通常駆動閾値までは減少していないとする。したがって、時刻T11ではEVPユニット13のポンプ13aの駆動制御は行われない。
【0049】
ブレーキペダル19の踏み込みの継続により、時刻T12で車両1が停止し、時刻T13でエンジン3の停止条件が成立した場合はエンジン3の自動停止制御(アイドリングストップ制御)が行われる。これに伴って、車両1の消費電流が減少する。次に、時刻T14でエンジンの停止制御中(アイドリングストップ中)にブレーキペダル19の踏み直しが発生したとする。これに伴ってブレーキブースタ14の定圧室の負圧が減少していき、時刻T15で、EVPユニット13のポンプ13aの駆動制御が行われる通常駆動閾値まで減少したとする。
【0050】
このとき、統合制御ECU11のCPU11cは、そのときの車両1の消費電流と、予めメモリに記憶されている推定必要消費電流との合計値が、エンジン3の再始動にかかる車両1の消費電流の閾値(アイドリングストップ解除閾値)を超えているか否かを判定する。ここで、統合制御ECU11のCPU11cが、当該合計値が、アイドリングストップ解除閾値(消費電流に基づく解除閾値)を超えていないと判定した場合は、EVPユニット13のポンプ13aの駆動制御を行う(図2(b)の車両消費電流(i)参照)。
【0051】
これにより、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧が増加するため、該負圧がアイドリングストップ解除閾値(負圧に基づく解除閾値)を下回ることがなくなり、定圧室の負圧が低下することによるアイドリングストップ制御の解除が回避される。
【0052】
また、ポンプ13aの駆動により車両1の消費電流は増加するものの、アイドリングストップ解除閾値(消費電流に基づく解除閾値)を超えないため、車両1の消費電流が増加することによるアイドリングストップ制御の解除も回避される。
【0053】
EVPユニット13のポンプ13aの駆動制御は、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧が所定の閾値まで回復すると停止され(時刻T16)、これ伴って車両の消費電流が減少する。
【0054】
したがって、本実施形態によれば、エンジン3が自動停止している状態(アイドリングストップ状態)でブレーキブースタ14の定圧室の負圧が通常駆動閾値まで減少した場合、統合制御ECU11のCPU11cは、EVPユニット13のポンプ13aを駆動させても車両1の消費電流がアイドリングストップ解除閾値(消費電流に基づく解除閾値)を超えないと判定した場合にポンプ13aの駆動制御を行う。このようにすると、アイドリングストップ制御中に、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧の補助用のポンプ13aの駆動時に、車両1の消費電流がアイドリングストップ解除閾値を超えることがないため、車両1の消費電流の増加に基づいてアイドリングストップ制御が解除されるのを防止できる。これによりアイドリングストップ制御の継続性が向上することで、車両1の燃費が向上する。
【0055】
また、EVPユニット13のポンプ13aを駆動させても車両1の消費電流がアイドリングストップ解除閾値(消費電流に基づく解除閾値)を超えない場合は、ポンプ13aの駆動制御が行われるため、この場合は、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧が、アイドリングストップ解除閾値(負圧の低下に基づく解除閾値)よりも下回ることによりアイドリングストップ制御が解除されるのを防止できる。これによりアイドリングストップ制御の継続性が向上することで、車両1の燃費が向上する。
【0056】
(変形例)
次に、上記した実施形態の変形例について、主に図2(b)(特に、図2(b)の車両消費電流(ii))を参照して説明する。なお、本例が上記した実施形態と異なるところは、車両1の消費電流がアイドリングストップ解除閾値を超えないようにする手法が異なることである。以下、異なるところを中心に説明する。
【0057】
統合制御ECU11のCPU11cは、アイドリングストップ制御中において、ブレーキブースタ14の定圧室の圧力が所定の閾値(通常駆動閾値:図2のEVP ON閾値)よりも高くなった場合(定圧室の負圧が通常駆動閾値まで減少した場合)、車両1の消費電流がアイドリングストップ解除閾値を超えない範囲でポンプ13aの駆動制御を行う。
【0058】
例えば、統合制御ECU11のCPU11cは、ブレーキブースタ14の定圧室の圧力が所定の閾値(通常駆動閾値:図2のEVP ON閾値)よりも高くなったときの車両1の消費電流の値を取得し、当該値と、アイドリングストップ解除閾値(消費電流に基づく解除閾値)との差分を算出する。そして、統合制御ECU11のCPU11cは、ポンプ13aを駆動させたときの消費電流が、算出した差分の範囲に収まるようにポンプ13aの駆動制御を行う。具体的には、ポンプ13aの駆動をモータで行う場合は、モータに印加する電圧のON/OFFの切り換えを所定の周波数で行うことで、ポンプ13aの駆動時の消費電流を調整する。
【0059】
例えば、電圧のON/OFFパルスのデューティー比が100%のときに消費電流が1Aとなるモータを使用していたとして、定圧室の負圧が通常駆動閾値になった時の車両1の消費電流の値と、アイドリングストップ解除閾値(消費電流に基づく解除閾値)との差分が、0.5Aだったとする。この場合、統合制御ECU11のCPU11cは、ポンプ13aのモータに印加する電圧がデューティー比=50%よりも小さくなるようにポンプ13aの駆動制御を行う。
【0060】
なお、ポンプ13aの駆動に使用されるモータは、ブラシレスモータとブラシ付きモータの両方を用いることができるが、印加する電圧のデューティー比の調整が容易なブラシレスモータを使用するのが好ましい。
【0061】
次に、図2(b)(特に図2(b)の車両消費電流(ii))を参照して、本実施形態のアイドリングストップ制御について説明する。
【0062】
(停車後にエンジンが自動停止+エンジン停止中にブレーキの踏み直し有りの場合:本例)
図2(b)に示すように、この実施形態では、エンジン3が自動停止制御される過程では、まずドライバがアクセルペダルからブレーキペダル19に踏み替える(ブレーキペダル19の操作がON)ことにより車両1が減速する(時刻T11)。これにより、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧は減少するが、EVPユニット13のポンプ13aの通常駆動にかかる通常駆動閾値までは減少していないとする。したがって、時刻T11ではEVPユニット13のポンプ13aの駆動制御は行われない。
【0063】
ブレーキペダル19の踏み込みの継続により、時刻T12で車両1が停止し、時刻T13でエンジン3の停止条件が成立した場合はエンジン3の自動停止制御(アイドリングストップ制御)が行われる。これに伴って、車両1の消費電流が減少する。次に、時刻T14でエンジンの停止制御中(アイドリングストップ中)にブレーキペダル19の踏み直しが発生したとする。これに伴ってブレーキブースタ14の定圧室の負圧が減少していき、時刻T15で、EVPユニット13のポンプ13aの駆動制御が行われる通常駆動閾値まで減少したとする。
【0064】
このとき、統合制御ECU11のCPU11cは、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧が通常駆動閾値まで減少したときの車両1の消費電流に基づいて、当該消費電流値からアイドリングストップ解除閾値(車両1の消費電流に基づく解除閾値)に到達するまでの差分電流値を算出する。そして、統合制御ECU11のCPU11cは、ポンプ13aの駆動に要する消費電流が、算出した差分電流値の範囲に収まるように、モータに印加する電圧のON/OFFのデューティー比を調整しつつ、ポンプ13aの駆動制御を行う。
【0065】
このようにすると、ポンプ13aの駆動により、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧が増加するため、該負圧がアイドリングストップ解除閾値(負圧に基づく解除閾値)を下回ることがなくなり、定圧室の負圧が低下することによるアイドリングストップ制御の解除が回避される。
【0066】
また、ポンプ13aの駆動により車両1の消費電流は増加するものの、アイドリングストップ解除閾値(消費電流に基づく解除閾値)を超えないため、車両1の消費電流が増加することによるアイドリングストップ制御の解除も回避される。
【0067】
EVPユニット13のポンプ13aの駆動制御は、ブレーキブースタ14の定圧室の負圧が所定の閾値まで回復すると停止され(時刻T16)、これ伴って車両の消費電流が減少する。
【0068】
以上のように、本例のような手法で車両1の消費電流を制御することでも、上記した実施形態と同様に効果が得られる。
【0069】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、上記した実施形態では、各種の処理を1つのECU(統合制御ECU11)で行うようにしたが、例えば、EFI制御部、アイドリングストップ制御部、CVT制御部、ABS/VSC制御部、EVP制御部を個別のECUで構成してもよい。この場合、例えば、各ECUをCAN等の通信バスを介して、相互に必要な情報のやり取りを行うとよい。
【0070】
また、上記した実施形態は、ガソリン車に限らず、電気自動車、ハイブリッド車、自動運転車にも適用することができる。
【0071】
そして、本発明は、所定のエンジン自動停止条件が成立すると、稼動中のエンジンを停止させ、所定のエンジン再始動条件が成立すると、停止中のエンジンを自動的に再始動させる制御手段を備える車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 アイドリングストップ車
11 統合制御ECU(負圧補助手段)
14 ブレーキブースタ(ブレーキ補助手段)
13 EVPユニット(負圧補助手段)
13a ポンプ
図1
図2