(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158787
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】積層フィルムの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20231024BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20231024BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20231024BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20231024BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D7/14 R
B05C5/00 101
B05C9/14
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068777
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】足利 光洋
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA76
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC80
4D075AC88
4D075AE19
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4D075CA47
4D075CA48
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4D075EA05
4F041AA11
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA34
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4F042AB00
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4F042BA12
4F042BA14
4F042BA25
4F042BA27
4F042DB26
4F042DF19
4F042DF28
4F042ED01
(57)【要約】
【課題】積層フィルムに塗布する塗工液の裏回りを防止する。
【解決手段】基材層101上に塗工層102が形成された積層フィルムの製造方法であって、基材層101の搬送方向と直交する直交方向に設けられたノズル列から基材層101に塗工液を吐出して塗工層102を形成する塗工工程と、塗工層102を乾燥させる乾燥工程とを含み、少なくともノズル列において、塗工層の直交方向の両端部に対向する位置に設けられたノズルはインクジェットノズルである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層上に塗工層が形成された積層フィルムの製造方法であって、
前記基材層の搬送方向と直交する直交方向に設けられた列状に配置された複数のノズルを有するノズル列から、前記基材層塗工液を吐出して前記塗工層を形成する塗工工程と、
前記塗工層を乾燥させる乾燥工程とを含み、
少なくとも前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置に設けられたノズルはインクジェットノズルであることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記基材層における前記直交方向の両端部に沿って前記塗工層を形成しない非塗工領域が設定され、
前記ノズル列の前記直交方向の幅が、前記塗工層の幅と略同一であり、
前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置に前記インクジェットノズルを備えることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記基材層における前記直交方向の両端部に沿って前記塗工層を形成しない非塗工領域が設定され、
前記ノズル列の前記直交方向の幅が、前記塗工層の幅より大きく、
前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置および前記非塗工領域に対向する位置に設けられたノズルがインクジェットノズルであり、
前記塗工工程が、
前記ノズル列において、前記非塗工領域に対向する位置に設けられた前記インクジェットノズルからの前記塗工液の吐出を抑止する工程を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ノズル列において、前記両端部にそれぞれ設けられた前記インクジェットノズルの間にもインクジェットノズルを備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ノズル列において、前記両端部にそれぞれ設けられた前記インクジェットノズルの間にスプレーノズルを備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記塗工工程が、
第1のノズル列から前記塗工液を吐出して前記基材層の表面に前記塗工層を形成する工程と、
第2のノズル列から前記塗工液を吐出して前記基材層の裏面に前記塗工層を形成する工程と
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
基材層上に塗工層が形成された積層フィルムを製造する製造装置であって、
前記基材層の搬送方向と直交する直交方向に設けられた列状に配置された複数のノズルを有するノズル列から、前記基材層に塗工液を吐出して前記塗工層を形成する塗工部と、
前記塗工層を乾燥させる乾燥部とを含み、
少なくとも前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置に設けられたノズルはインクジェットノズルであることを特徴とする積層フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムの表面に、特定の機能を実現する塗工液を塗工することで塗工層を設け、これを乾燥させることにより、表面に様々な機能を有する積層フィルムを形成することが知られている。
【0003】
また、塗工液を樹脂フィルムに塗布する手法としては、例えば、塗布ローラに液体を供給し、フィルムに当接させた当該塗布ローラをフィルムの搬送に合わせて回転させることで、液体を樹脂フィルムに塗布するロールコーターが知られている。
【0004】
ロールコーターとしては、例えばリバースグラビアコーターが知られている。リバースグラビアコーターは、彫刻されたロール(グラビアロール)に塗工液を付けて、主にブレードでグラビアロールの表面を掻き取り、彫刻のくぼみに溜まった塗工液をフィルムに転写して塗工層を形成するコーターである。
【0005】
また、上述したロールコーターにおいてはフィルムの両縁辺に沿って塗工液を塗工しない領域(ドライエッジ)を形成することで、塗工液が裏回りすることを防止することが知られている。
【0006】
リバースグラビアコーターでのドライエッジ形成は、グラビアロールの両端にフィルムを貼り、フィルムへの転写を防ぐことにより行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】大森克洋, “Roll to Roll ウェットコーティング装置”,[online],2006年3月26日,表面技術,[令和4年4月12日検索],インターネット <URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/60/7/60_7_435/_pdf/-char/ja>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
積層フィルムの製造において、基材層上に塗工層を設ける場合、基材層の幅(シート幅)に変更が生じると、ドライエッジの位置を変更する必要がある。しかしながら、上述した従来のロールコーターを用いた塗工液の塗工工程においては、シート幅の変更に応じてドライエッジの位置を変更するための作業が煩雑であり、生産時間のロスが生じている。
【0010】
本発明の目的の一つは、基材層上に塗工層を設けることにより積層フィルムを作製する際に、ドライエッジとの境界が明確な塗工層を形成ことである。また本発明の目的の他の一つは、基材幅に応じた塗工層を容易に形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、この積層フィルムの製造方法は、基材層上に塗工層が形成された積層フィルムの製造方法であって、前記基材層の搬送方向と直交する直交方向に設けられたノズル列から前記基材層に塗工液を吐出して前記塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層を乾燥させる乾燥工程とを含む。また、少なくとも前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置に設けられたノズルはインクジェットノズルである。
【発明の効果】
【0012】
一実施形態によれば、基材層上に塗工層を設けることにより積層フィルムを作製する際に、ドライエッジとの境界が明確な塗工層を形成することができる。また、基材層の幅に応じた塗工層を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの構成を例示する図である。
【
図2】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの縦延伸装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図3】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの横延伸装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置を説明するための図である。
【
図5】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置のインクジェットヘッドのノズル列を例示する図である。
【
図6】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置のインクジェットヘッドの配置例を示す図である。
【
図7】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置のインクジェットヘッドの配置例を示す図である。
【
図8】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置のインクジェットヘッドの配置例を示す図である。
【
図9】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置の変形例を示す図である。
【
図10】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置の変形例を示す図である。
【
図11】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置の変形例を示す図である。
【
図12】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの変形例におけるインクジェット吐出装置の配置例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本積層フィルムの製造方法および製造装置にかかる実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の機能等を含むことができる。
【0015】
(A)構成
図1は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の構成を例示する図である。なお
図1では逐次二軸延伸法にて基材層を作製する場合を例として示しているが、基材層の作製方法はこれに限らず、例えば一軸延伸法、無延伸法、或いはその他公知の方法であってもよい。
【0016】
本発明の積層フィルム製造システム1は積層フィルム100を生成する。積層フィルム100は、基層101の上に塗工層102が形成された積層構造を有する。基層101は、縦延伸工程が完了するまでは樹脂組成物を押出してなるキャストフィルム層(以下、単に「キャストフィルム層」と称することがある)に相当し、縦延伸工程後、横延伸工程が完了するまでは第1延伸層に相当し、横延伸工程完了後は基材層に相当する。
【0017】
基層101、すなわち基材層を形成する材料としては、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、例えばオレフィン系重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、およびこれらの混合樹脂等が挙げられる。なかでも、耐水性および耐溶剤性の観点ペからは、オレフィン系重合体が好ましい。
【0019】
オレフィン系重合体としては、ポリプロピレン等のプロピレン系重合体、ポリエチレン等のエチレン系重合体等を好ましく使用できる。
【0020】
前記樹脂組成物は、さらにフィラーを含有していてもよい。フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーのいずれであってもよい。
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナなどが挙げられる。有機フィラーとしては、前記熱可塑性樹脂とは非相溶であり、融点又はガラス転移温度が熱可塑性樹脂よりも高く、熱可塑性樹脂の溶融混練条件下で微分散する有機粒子が好ましく、例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6,ナイロン-6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で融点が120℃~300℃、ないしはガラス転移温度が120℃~280℃であるものを用いることが好ましい。
【0021】
基層101には、更に必要により、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤、蛍光増白剤、着色剤等を配合してもよい。
【0022】
基層101は、単層構造であっても、2層以上の複層構造であってもよい。
【0023】
図1に例示する積層フィルム製造システム1は、原料サイロ10a,10b,造粒機11,ペレットサイロ12,押出機13,縦延伸装置14,横延伸装置16,ワインダー17,ドライヤー18およびインクジェット吐出装置30を備える。
【0024】
積層フィルム製造システム1を構成する、これらの原料サイロ10a,10b,造粒機11,ペレットサイロ12,押出機13,縦延伸装置14,横延伸装置16,ワインダー17,ドライヤー18およびインクジェット吐出装置20のそれぞれは、積層フィルム100を製造するための製造工程を実現する。
【0025】
原料サイロ10a,10bには、積層フィルム100の原料が格納される。積層フィルム100の原料は、例えば、熱可塑性樹脂やフィラー、および任意の添加剤などである。なお
図1における原料サイロの数は2だが、必要な数を設ければよい。
【0026】
積層フィルム100の原料には、積層フィルム100の成形時の断裁工程等で発生した端材を加工して生成されるリサイクル素材を含めてもよい。
【0027】
原料サイロ10a,10b内に格納された原料は、造粒機11に投入される。
【0028】
造粒機11は、原料の熱可塑性樹脂に、必要に応じてフィラーや各種添加剤等を加えて、樹脂組成物のペレットを生成する。
【0029】
ペレットサイロ12は、造粒機11によって生成されたペレットを格納する。ペレットサイロ12は自身に格納するペレットを押出機13に供給する。
【0030】
押出機13は、図示しない押出機ダイから、溶融された樹脂組成物をシートの形状で押し出し、キャストフィルム層である基層101を形成する。
【0031】
押出機13はキャストフィルム層である基層101を形成するものであり、図示しない押出機ダイから、溶融された樹脂組成物をシートの形状で押し出す。押出機13から押し出された基層101、すなわちキャストフィルム層は、図示しない搬送ローラ等により搬送され、後述する縦延伸装置14に供給される。
【0032】
縦延伸装置14は、押出機13から押し出された基層101、すなわちキャストフィルム層の流れ方向(搬送方向)における下流位置に配置されている。
【0033】
縦延伸装置14は、押出機13から押し出された基層101、すなわちキャストフィルム層を、当該基層101の流れ方向に延伸させる。以下、基層101の流れ方向(搬送方向)を縦方向といってよい。縦方向は第1の方向に相当する。
【0034】
縦延伸装置14は、基層101を縦方向(第1の方向)に延伸する第1延伸装置に相当する。また、縦延伸装置14は、基層101(キャストフィルム層)を縦方向(第1の方向)に延伸する第1延伸工程を実現する。
【0035】
縦延伸装置14においては、例えば、縦延伸方向と直交する方向に複数(
図1に示す例では3つ)の搬送ローラ141が互いに平行に配設されている。そして、これらの搬送ローラ141間において、例えば、搬送ローラ141の周速に差をつけることでキャストフィルム層に縦方向の張力をかけ、該層を縦方向に延伸させる。すなわち、縦延伸装置14は、ロール群の周速差を利用したロール間延伸を行なってもよい。
【0036】
延伸を実施するときの延伸温度は、使用する熱可塑性樹脂が非晶性樹脂の場合、当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、熱可塑性樹脂の融点よりも2℃~60℃低い温度が好ましい。具体的には、プロピレン単独重合体(融点155℃~167℃)の場合は100℃~164℃の延伸温度が好ましく、高密度ポリエチレン樹脂(融点121℃~134℃)の場合は70℃~133℃の延伸温度が好ましい。
【0037】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20m/分~350m/分の範囲内であることが好ましい。
【0038】
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができ、例えばプロピレン系樹脂を使用して2軸延伸する場合、延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常1.5倍以上、好ましくは4倍以上であり、上限が通常60倍以下、好ましくは50倍以下である。
【0039】
図2は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の縦延伸装置14の構成例を模式的に示す図である。
【0040】
この
図2に示す例においては、4つの搬送ローラ141a,141b,141c,141dが、互いの回転軸が平行になるように、各回転軸を縦方向と直交させた状態で配設されている。4つの搬送ローラ141a,141b,141c,141dは、基層101の流れ方向に沿って、搬送ローラ141a,搬送ローラ141b,搬送ローラ141c,搬送ローラ141dの順で配置されている。以下、搬送ローラ141a,141b,141c,141dを特に区別しない場合には、搬送ローラ141と表記する。
【0041】
これらの各搬送ローラ141は、図示しない駆動モータにより回転軸を中心に回転可能に構成されており、それぞれ基層101に当接した状態で、基層101の流れに沿う方向に回転する。
【0042】
また、各搬送ローラ141においては、基層101の流れ方向における下流に配置された搬送ローラ141ほど周速が速くなるよう駆動モータの回転速度の制御が行なわれる。これにより、隣り合う搬送ローラ141間において基層101の流れ方向に沿って基層101に張力が発生し、基層101が縦方向に延伸される。
【0043】
横延伸装置16は、縦延伸装置14の下流に配置されている。
【0044】
横延伸装置16は、縦延伸装置14が延伸させた基層101(第1延伸層)を、縦方向と直交する方向(横方向,幅方向)に延伸させる。横方向は第2の方向に相当する。
【0045】
横延伸装置16は、基層101(第1延伸層)を、縦方向(第1の方向)と直交する横方向(幅方向,第2の方向)に延伸する第2延伸装置に相当する。また、横延伸装置16は、基層101(第1延伸層)を、縦方向(第1の方向)と直交する横方向(幅方向,第2の方向)に延伸する第2延伸工程を実現する。
なお、第2延伸工程でも、第1延伸工程と同様に、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じた延伸温度に基層101を加熱し、延伸を行なう。
【0046】
図3は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の横延伸装置16の構成例を模式的に示す図である。
【0047】
横延伸装置16は、第1延伸層である基層101の縁辺を把持する複数(
図3に示す例では6つ)のクリップ161を備える。これらのクリップ161は、基層101の二つの縁辺のそれぞれにおける基層101を介して対向する位置において、対をなすように配置されている。
図3に示す例においては、基層101の流れ方向に沿って3対のクリップ161が備えられている。
【0048】
これらの複数のクリップ161において、基層101を挟んで対向する位置に備えられたクリップ161の対は、それぞれ基層101の縁辺部を把持した状態で、互いに遠ざかる方向に移動することで、基層101を横方向(幅方向)に引っ張り延伸させる。
【0049】
基層101を把持するクリップ161は、基層101の搬送に追従して流れ方向に移動しながら基層101を幅方向に延伸させ、所定の位置において基層101を解放する。その後、各クリップ161は、基層101の搬送方向における上流位置に戻り、再度基層101を把持する。このように、横延伸装置16においては、複数のクリップ161を用いて、基層101の把持、延伸、解放を繰り返し行なうことで、基層101を横方向に延伸させる。すなわち、横延伸装置16は、テンターオーブンを利用したクリップ延伸を行なう。
【0050】
横延伸装置16の下流位置には、インクジェット吐出装置30が備えられている。
【0051】
インクジェット吐出装置30は、横延伸装置16が延伸させ、縦方向(流れ方向)に搬送される基層101の表面に塗工液を吐出することで、基層101の表面に均一な塗工層102を形成する。
【0052】
インクジェット吐出装置30は、基層101の第1の面(表面)に塗工液の粒子を吐出する。なお、インクジェット吐出装置30は、基層101の第2の面(裏面)に塗工液の粒子を吐出してもよい。
【0053】
インクジェット吐出装置30は、基層101(基材層)の搬送方向(縦方向)と直交する直交方向(横方向)に設けられたノズル列から基層101に塗工液を吐出して塗工層102を形成する塗工工程を実現する。ノズル列は、複数のノズルを列状に配置することで形成される。
【0054】
図4は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1のインクジェット吐出装置30を説明するための図である。
【0055】
インクジェット吐出装置30は、基層101の表面に対向する位置において、幅方向に沿って配置される。インクジェット吐出装置30における基層101と対向する位置には、複数のインクジェットヘッド310(
図6参照)が配置されている。
【0056】
各インクジェットヘッド310には、塗工液を粒子状に吐出する複数のインクジェットノズル(吐出口)が形成されている。インクジェットヘッド310において、複数のインクジェットノズルが列を成すように形成されてもよい。
【0057】
インクジェットノズルを単にノズルといってもよい。また、インクジェットヘッド310に形成された複数のノズルの列をノズル列といってもよい。インクジェットヘッド310には1つ以上のノズル列が形成されてもよい。
【0058】
図5は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1のインクジェット吐出装置30のインクジェットヘッド310のノズル列を例示する図である。
【0059】
インクジェットヘッド310における基層101と対向する位置には複数のノズル(インクジェットノズル)が形成されている。
【0060】
図5中において、インクジェットヘッド310に形成されたノズル(インクジェットノズル)を黒丸で表す。
図5において、符号Aはインクジェットヘッド310に一列のノズル列が形成された例を示し、符号Bはインクジェットヘッド310に2列のノズル列が形成された例を示す。
【0061】
インクジェットヘッド310における各ノズルの塗工液の吐出は、塗工制御部400(
図4参照)により制御される。塗工制御部400は、各インクジェットヘッド310のそれぞれにおけるノズルからの塗工液の吐出を制御する。例えば、塗工制御部400は、インクジェットノズルに対する吐出のオン/オフを切り替える制御を行なうことで、塗工液の吐出量を精密に制御することができる。
【0062】
塗工制御部400としての機能は、図示しないコンピュータのプロセッサがドライバソフトウェアを実行することで実現される。
【0063】
塗工制御部400は、各インクジェットヘッド310に形成された複数のノズルのうち任意のノズルに対して吐出のオン/オフを制御することで、インクジェットヘッド310における特定のノズルからの塗工液の吐出制御や、ノズルからの吐出の抑止を実現することができる。インクジェットヘッド310の吐出制御を行なうドライバソフトウェアは既知であり、その詳細な説明は省略する。
【0064】
インクジェットヘッド310において、塗工液を吐出するノズルを吐出ノズルといってもよく、吐出ノズルを含む領域を吐出ノズル領域といってもよい。
【0065】
また、インクジェットヘッド310において、塗工液の吐出が抑止されるノズルを吐出抑止ノズルといってもよく、吐出抑止ノズルを含む領域を吐出抑止ノズル領域といってもよい。
【0066】
複数のインクジェットヘッド310は、それぞれノズル列が基層101の表面に対向する位置において、基層101の幅方向に並べて配置される。
【0067】
インクジェット吐出装置30は、基層(基材層)101の搬送方向(縦方向)と直交する直交方向に設けられた列状に配置された複数のノズルを有するノズル列から基層101に塗工液を吐出して塗工層102を形成する塗工部に相当する。
【0068】
また、インクジェット吐出装置30は、基層(基材層)101の搬送方向(縦方向)と直交する直交方向に設けられた列状に配置された複数のノズルを有するノズル列から基層101に塗工液を吐出して塗工層102を形成する塗工工程を実現する。
【0069】
図6~
図8は、それぞれ実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1のインクジェット吐出装置30のインクジェットヘッド310の配置例を示す図である。
【0070】
図6に示す第1の例においては、インクジェット吐出装置30において、基層101の幅方向(図中の左右方向)の全体に亘って複数(
図6に示す例では5個)のインクジェットヘッド310-1~310-5が一列に並べて配置されている。
【0071】
インクジェットヘッド310-1~310-5を特に区別しない場合には、インクジェットヘッド310と表記する。
【0072】
一列に並べられた複数のインクジェットヘッド310をインクジェットヘッド列といってもよい。
図6~
図8等に示す例においては、インクジェットヘッド列に符号300を付して表す。
【0073】
図6に示す例においては、5個のインクジェットヘッド310-1~310-5を直列に並べた長さが、基層101の幅方向長さとほぼ等しい。
【0074】
また、
図6に例示するインクジェットヘッド列300のうち、両端部に配置されたインクジェットヘッド310-1,310-5においては、基層101の縁辺から所定の範囲に対向する部分が吐出抑止ノズル領域となっている。
図6においては、インクジェットヘッド310における吐出抑止ノズル領域に符号310bを付して表し、吐出ノズル領域に符号310aを付して表す。
【0075】
塗工制御部400は、インクジェットヘッド310-1~310-5に対して、吐出ノズル領域310aから基層101に対して塗工液の吐出を行なわせる。これにより、各インクジェットヘッド310の吐出ノズル領域310aの各ノズルから塗工液が粒子状に吐出され、基層101の表面に塗工液がムラなく塗布される。
【0076】
基層101の幅方向における吐出ノズル領域310aと対向する位置には、基層101の表面に均一な塗工層102が形成される。
図6においては、基層101における塗工層102が形成された領域(塗工層領域)に符号100bを付して表す。
インクジェットヘッド列300において、複数のインクジェットヘッド310-1~310-5を並べることで形成されるノズル列の、横方向(直交方向)の幅が、塗工層102(塗工層領域100b)の幅より大きい。
【0077】
また、塗工制御部400は、インクジェットヘッド列300において、両端部に設けられたインクジェットヘッド310-1,310-5に対して、吐出抑止ノズル領域310bからの塗工液の吐出を抑止する。
【0078】
これにより、基層101の幅方向における両端(両縁辺)において、吐出抑止ノズル領域310bと対向する位置には、塗工液を塗布しない領域であるドライエッジがそれぞれ形成される。
図6においては、ドライエッジに符号100aを付して表す。
【0079】
また、
図7に示す第2の例においては、
図6に示す例に比べて基層101の幅が広い例を示す。
【0080】
この
図7に示す例においては、5個のインクジェットヘッド310-1~310-5を直列に並べた長さ(インクジェットヘッド列300の長さ)が、基層101の塗工層領域100bの幅方向長さと略同一である。すなわち、インクジェットヘッド列300において、複数のインクジェットヘッド310-1~310-5を並べることで形成されるノズル列の、横方向(直交方向)の幅が、塗工層102(塗工層領域100b)の幅と略同一である。
【0081】
塗工制御部400は、インクジェットヘッド列300において、両端部に配置されたインクジェットヘッド310-1,310-5において、吐出抑止ノズル領域310bを設けることなく、インクジェットヘッド列300を構成する全てのインクジェットヘッド310を吐出ノズル領域310aとして用い、基層101に対して塗工液の吐出を行なわせる。
【0082】
これにより、基層101の表面に均一な塗工層102が形成され、塗工層領域100bが形成される。
【0083】
また、基層101の幅方向における両端(両縁辺)のインクジェットヘッド310が不在の位置には塗工液の塗布が行なわれず、これによりドライエッジ100aがそれぞれ形成される。
【0084】
図8に示す第3の例においては、
図6に示す例に比べて基層101の幅が狭い例を示す。
【0085】
この
図8に示す例においては、5個のインクジェットヘッド310-1~310-5のうち、3個のインクジェットヘッド310-2~310-4を直列に並べた長さが、基層101の塗工層領域100bの幅方向長さより大きい。
【0086】
また、インクジェットヘッド列300のうち、両端部に配置されたインクジェットヘッド310-1,310-5が吐出抑止ノズル領域310bとなっている。さらに、インクジェットヘッド310-2,310-4においては、基層101の縁辺から所定の範囲に対向する部分が吐出抑止ノズル領域310bとなっている。
【0087】
塗工制御部400は、インクジェットヘッド列300において、インクジェットヘッド310-2~310-4に対して、吐出ノズル領域310aから基層101に対して塗工液の吐出を行なわせる。
【0088】
これにより、基層101の幅方向における吐出ノズル領域310aと対向する位置には、表層に均一な塗工層が形成され、塗工層領域100bが形成される。
【0089】
また、塗工制御部400は、インクジェットヘッド列300において、インクジェットヘッド310-1,310-2,310-4,310-5に対して、吐出抑止ノズル領域310bからの塗工液の吐出を抑止する。
【0090】
これにより、基層101の幅方向における両端(両縁辺)において、吐出抑止ノズル領域310bと対向する位置には、それぞれ塗工液を塗布しない領域であるドライエッジ100aが形成される。
【0091】
上述の如く、本積層フィルム製造システム1においては、インクジェットヘッド列300において、少なくとも、塗工層領域100bの幅方向の縁辺部、すなわち塗工層102の幅方向の縁辺部に対向する位置にインクジェットヘッド310が配置されている。塗工層領域100bの両端部をインクジェットノズルによって塗工し形成することにより、端部を精密に直線的に形成することができ、ドライエッジ100aを高精度に形成することができる。
【0092】
例えば、
図6に示した第1の例におけるインクジェットヘッド310-1,310-5と、
図7に示した第2の例におけるインクジェットヘッド310-1,310-5と、
図8に示した第3の例におけるインクジェットヘッド310-2,310-4とが、塗工層領域100b(塗工層102)の幅方向の縁辺部に対向する位置に配置されたインクジェットヘッド310に相当する。
【0093】
ドライヤー18は、インクジェット吐出装置30が基層101の表面に形成した塗工層102を乾燥させる。ドライヤー18は、例えば、縦方向に搬送される基層101の表面に温風を送風することで塗工層102を乾燥させてもよい。ドライヤー18は、塗工層102を乾燥させる乾燥工程を実現する。
【0094】
ドライヤー18の下流において、積層フィルム100に対して、図示しない裁断装置等を用いて積層フィルム100の両縁辺の裁断等の加工を行なってもよい。また、図示しない測定装置等を用いて積層フィルム100の厚みの計測等の処理を行なってもよい。
【0095】
ワインダー17は、ドライヤー18によって塗工層102が乾燥された積層フィルム100を巻き取る。
【0096】
(B)動作
上述の如く構成された積層フィルム製造システム1において、原料サイロ10a,10bに格納された原料は、造粒機11に投入される。
【0097】
造粒機11は、原料の熱可塑性樹脂に、必要に応じてフィラーや各種添加剤等を加えて、樹脂組成物のペレットを生成する。生成されたペレットはペレットサイロ12に格納される。
【0098】
ペレットサイロ12は自身に格納するペレットを押出機13に供給する。
【0099】
押出機13は、基層101(キャストフィルム層)を生成する。押出機13によって生成された基層101は、縦延伸装置14に投入される。
【0100】
縦延伸装置14は、押出機13から押し出された基層101を縦方向に延伸させる。縦延伸装置14により縦方向に延伸された基層101(第1延伸層)は、次に、横延伸装置16に投入される。
【0101】
横延伸装置16は、縦延伸装置14によって縦方向に延伸された基層101を、横方向(幅方向)に延伸させる。
【0102】
その後、インクジェット吐出装置30が、縦方向に搬送される基層101の表面に塗工液の粒子を吐出し、その表面に均一な塗工層102を形成する。
【0103】
基層101に表面に形成された塗工層102はドライヤー18によって乾燥される。これにより、積層フィルム100が作製される。その後、積層フィルム100に対して両縁辺の裁断等の加工や厚みの計測等の処理が行なわれる。積層フィルム100は、ワインダー17により巻き取られ、後続する仕上げ工程に送られる。
【0104】
(C)効果
このように、実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1によれば、横延伸装置16によって横方向に延伸された基層101に対して、インクジェット吐出装置30が塗工液を吐出することで、基層101の表裏面に均一な厚さの塗工層102を形成することができる。
【0105】
塗工制御部400が、インクジェット吐出装置30のインクジェットヘッド列300において、基層101の塗工層領域100bに対向して設けられた吐出ノズル領域310aに含まれるノズルからのみ塗工液の吐出を行なわせる。塗工制御部400は、基層101のドライエッジ100aに対向して設けられた吐出抑止ノズル領域310bに含まれるノズルからの塗工液の吐出を抑止する。
【0106】
これにより、基層101の幅方向における両端(両縁辺)にドライエッジ100aを容易に形成することができ、基層101において塗工液が裏回りすることを防止することができる。インクジェットヘッド310のノズルから吐出される塗工液は液滴が小さく、塗工制御部400は塗工量を精密制御することができるので、塗工層領域100bの端部を精密に直線的に形成することができ、ドライエッジ100aを高精度に形成することができる。結果として、基層101の端部において塗工液が裏回りすることを抑止できる。
【0107】
例えば、
図6に示した第1の例において、塗工制御部400が、インクジェット吐出装置30のインクジェットヘッド列300において、基層101の幅方向の縁辺部に対応して配置されたインクジェットヘッド310-1,310-5に対して、吐出抑止ノズル領域310bからの塗工液の吐出を抑止する。
【0108】
これにより、基層101の幅方向における両端(両縁辺)において、吐出抑止ノズル領域310bと対向する位置にドライエッジを容易かつ高精度に形成することができ、基層101の両端部において塗工液が裏回りすることを防止することができる。
【0109】
また、
図7に示した第2の例において、インクジェットヘッド列300の長さを、基層101の塗工層領域100bの幅方向長さと略同一とする。そして、塗工制御部400が、インクジェットヘッド列300を構成する全てのインクジェットヘッド310を吐出ノズル領域310aとして用い、基層101に対して塗工液の吐出を行なわせる。
【0110】
これによっても、塗工層領域100bの幅方向における両端(両縁辺)において、インクジェットノズルから塗工液を微小な粒子として吐出することで、塗工層領域100bの端部を精密に直線的に形成することができ、ドライエッジを容易かつ高精度に形成することができ、基層101の両端部において塗工液が裏回りすることを防止することができる。
【0111】
また、
図8に示した第3の例において、塗工制御部400が、基層101の塗工層領域100bに対向して設けられたインクジェットヘッド310-2~310―4に対して、吐出ノズル領域310aに含まれるノズルからのみ塗工液の吐出を行なわせる。塗工制御部400は、基層101のドライエッジ100aに対向して設けられたインクジェットヘッド310-2,310-4の吐出抑止ノズル領域310bに含まれるノズルからの塗工液の吐出を抑止する。また、塗工制御部400は、対向する基層101が存在しないインクジェットヘッド310-1,310-5に対して塗工液の吐出を抑止する。
【0112】
これによっても、基層101の幅方向における両端(両縁辺)において、吐出抑止ノズル領域310bと対向する位置にドライエッジを容易かつ高精度に形成することができ、基層101の両端部において塗工液が裏回りすることを防止することができる。
【0113】
インクジェットヘッド列300においては、少なくとも、塗工層領域100b(塗工層102)の幅方向の縁辺部に対向する各位置にインクジェットヘッド310が配置されている。例えば、
図6に示した第1の例におけるインクジェットヘッド310-1,310-5と、
図7に示した第2の例におけるインクジェットヘッド310-1,310-5と、
図8に示した第3の例におけるインクジェットヘッド310-2,310-4とが、塗工層領域100b(塗工層102)の幅方向の縁辺部に対向する位置に配置されたインクジェットヘッド310に相当する。
【0114】
塗工層領域100b(塗工層102)の幅方向の縁辺部に対向する各位置にインクジェットヘッド310が配置され、これらのインクジェットヘッド310の吐出ノズル領域310aの各ノズルから塗工液を粒子状に吐出することで、基層101の表面に塗工液を薄くムラなく塗布することができ、また塗工層領域100bの端部を精密に直線的に形成することができ、ドライエッジ100aを高精度に形成することができる。結果、基層101の両端部において塗工液が裏回りすることを抑止することができる。
【0115】
(D)その他
開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0116】
例えば、上述した実施形態においては、
図6~
図8に例示したように、インクジェット吐出装置30において、インクジェットヘッド列300が複数のインクジェットヘッド310で構成されているが、これに限定されるものではない。
【0117】
インクジェットヘッド列300において、塗工層102の幅方向の縁辺部に対向する各位置にインクジェットヘッド310を配置するとともに、これら以外の位置にはインクジェットヘッド310に代えてスプレー装置を備えてもよい。
【0118】
すなわち、インクジェットヘッド列300において、両端部にそれぞれ設けられたインクジェットノズルの間にスプレーノズルを備えてもよい。
【0119】
図9~
図11は、それぞれ実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1のインクジェット吐出装置30の変形例を示す図である。
【0120】
図9に示す第4の例においては、
図6に示した第1の例のインクジェット吐出装置30のインクジェットヘッド310-2~310-4に代えて、複数のスプレー装置320を備える。なお、図中、既述の符号と同一の符号は同様の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0121】
スプレー装置320は、塗工液を噴射する装置であり、図示しないスプレーノズルから、高圧の空気などのガスや機械的な運動(ピエゾ素子など)用いて塗工液を霧などの状態で噴射(吐出)する。
【0122】
スプレー装置320による塗工液の噴射は、塗工制御部400の制御に従って行なわれる。
【0123】
塗工制御部400が各スプレー装置320に基層101に対して塗工液を噴射させるとともに、インクジェットヘッド310-1,310-5に対して、吐出ノズル領域310aから基層101に対して塗工液の吐出を行なわせる。
【0124】
基層101の幅方向における各スプレー装置320と対向する位置には、基層101の表面に塗工層102が形成される。
【0125】
図9に示す例において、各スプレー装置320は、塗工層領域100bの縁辺部以外の領域に塗工液を噴射するので、各スプレー装置320から基層101に噴射された塗工液が、基層101の両端部において裏回りすることがない。
【0126】
また、塗工制御部400が、インクジェットヘッド310-1,310-5に対して、吐出ノズル領域310aから基層101に対して塗工液の吐出を行なわせることで、各インクジェットヘッド310-1,310-5の吐出ノズル領域310aの各ノズルから塗工液が粒子状に吐出され、基層101の表面に塗工液がムラなく塗布される。また塗工層領域100bの端部を精密に直線的に形成することができ、ドライエッジ100aを高精度に形成することができる。
【0127】
また、塗工制御部400は、インクジェットヘッド列300において、インクジェットヘッド310-1,310-5に対して、吐出抑止ノズル領域310bからの塗工液の吐出を抑止する。
【0128】
これにより、基層101の幅方向における両端(両縁辺)において、吐出抑止ノズル領域310bと対向する位置には、塗工液を塗布しない領域であるドライエッジ100aがそれぞれ形成される。
【0129】
また、
図10に示す第5の例においては、
図7に示した第2の例のインクジェット吐出装置30のインクジェットヘッド310-2~310-4に代えて、複数のスプレー装置320を備える。
【0130】
塗工制御部400が各スプレー装置320に基層101に対して塗工液を噴射させるとともに、インクジェットヘッド310-1,310-5に対して、吐出ノズル領域310aから基層101に対して塗工液の吐出を行なわせる。
【0131】
基層101の幅方向における各スプレー装置320と対向する位置には、基層101の表面に塗工層102が形成される。
【0132】
図10に示す例において、各スプレー装置320は、基層101の縁辺部以外の領域に塗工液を噴射するので、各スプレー装置320から基層101に噴射された塗工液が、基層101の両端部において裏回りすることがない。
【0133】
また、塗工制御部400が、インクジェットヘッド310-1,310-5に対して、吐出ノズル領域310aから基層101に対して塗工液の吐出を行なわせることで、各インクジェットヘッド310-1,310-5の吐出ノズル領域310aの各ノズルから塗工液が粒子状に吐出され、基層101の表面に塗工液がムラなく塗布される。また塗工層領域100bの端部を精密に直線的に形成することができ、ドライエッジ100aを高精度に形成することができる。
【0134】
また、基層101の幅方向における両端(両縁辺)のインクジェットヘッド310が不在の位置には、塗工液を塗布しないドライエッジ100aがそれぞれ形成される。
【0135】
図11に示す第6の例においては、
図8に示した第3の例のインクジェット吐出装置30のインクジェットヘッド310-3に代えて、複数のスプレー装置320を備える。
【0136】
塗工制御部400が各スプレー装置320に基層101に対して塗工液を噴射させるとともに、インクジェットヘッド310-2,310-4に対して、吐出ノズル領域310aから基層101に対して塗工液の吐出を行なわせる。
【0137】
基層101の幅方向における各スプレー装置320と対向する位置には、基層101の表面に塗工層102が形成される。
【0138】
図11に示す例において、各スプレー装置320は、基層101の縁辺部以外の領域に塗工液を噴射するので、各スプレー装置320から基層101に噴射された塗工液が、基層101の両端部において裏回りすることがない。
【0139】
また、塗工制御部400が、インクジェットヘッド310-2,310-4に対して、吐出ノズル領域310aから基層101に対して塗工液の吐出を行なわせることで、各インクジェットヘッド310-2,310-4の吐出ノズル領域310aの各ノズルから塗工液が粒子状に吐出され、基層101の表面に塗工液がムラなく塗布される。また塗工層領域100bの端部を精密に直線的に形成することができ、ドライエッジ100aを高精度に形成することができる。
【0140】
また、塗工制御部400は、インクジェットヘッド列300において、インクジェットヘッド310-1,310-2,310-4,310-5に対して、吐出抑止ノズル領域310bからの塗工液の吐出を抑止する。
【0141】
これにより、基層101の幅方向における両端(両縁辺)において、吐出抑止ノズル領域310bと対向する位置には、塗工液を塗布しない領域であるドライエッジ100aがそれぞれ形成される。
【0142】
スプレー装置320はインクジェットヘッド310に比べて安価であるので、上述の如くインクジェットヘッド310に代えてスプレー装置320を備えることで装置の製造コストを低減することができる。
【0143】
また、上述した実施形態および各変形例においては、基層101の一方の面(表面)に塗工層102を形成する例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、基層101の裏面にも塗工層を形成してもよい。
【0144】
図12は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の変形例におけるインクジェット吐出装置30a,30bの配置例を模式的に示す図である。
【0145】
基層101の両面に塗工層102を形成する場合には、この
図12に例示するように、基層101の表面に塗工層102を形成するインクジェット吐出装置30aと、基層101の裏面に塗工層102を形成するインクジェット吐出装置30bとを備える。
【0146】
これらのインクジェット吐出装置30a,30bは、上述したいずれかのインクジェット吐出装置30と同様の構成を有する。
【0147】
図12に示す例においては、インクジェット吐出装置30bとインクジェット吐出装置30aとを縦方向に並べて配置している。そして、横延伸装置16によって延伸された基層101の搬送経路を、複数の搬送ローラ201を用いて屈曲させて折り返すことで、インクジェット吐出装置30bによって裏面(第2の面)に塗工層102が形成された基層101の表面(第1の面)に、インクジェット吐出装置30aより塗工層102を形成している。
【0148】
インクジェット吐出装置30aは、第1のノズル列から塗工液を吐出して基層101の表面に塗工層102を形成する第1塗工部に相当する。また、インクジェット吐出装置30aは、第1のノズル列から塗工液を吐出して基層101の表面に塗工層102を形成する工程を実現する。
【0149】
インクジェット吐出装置30bは、第2のノズル列から塗工液を吐出して基層101の裏面に塗工層102を形成する第1塗工部に相当する。また、インクジェット吐出装置30bは、第2のノズル列から塗工液を吐出して基層101の裏面に塗工層102を形成する工程を実現する。
【0150】
このようにインクジェット吐出装置30bとインクジェット吐出装置30aとを縦方向に並べて配置することで、本積層フィルム製造システム1の省スペース化を実現することができる。
【0151】
また、これらのインクジェット吐出装置30bおよびインクジェット吐出装置30aにおいても、インクジェットヘッド列300において、両端部にそれぞれ設けられたインクジェットノズルの間にスプレーノズルを備えてもよい。
【0152】
インクジェットヘッド310やスプレー装置320は、いずれも塗布ローラに比べて小型であり、設置の自由度が高いので、本積層フィルム製造システム1の省スペース化を実現することができる。
【0153】
塗工層102を形成した基層101に対して、さらに、表面層や裏面層を形成してもよい。
【0154】
また、上述した開示により本実施形態を当業者によって実施・製造することが可能である。
【0155】
(E)付記
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0156】
(付記1)
基材層上に塗工層が形成された積層フィルムの製造方法であって、
前記基材層の搬送方向と直交する直交方向に設けられた列状に配置された複数のノズルを有するノズル列から、前記基材層に塗工液を吐出して前記塗工層を形成する塗工工程と、
前記塗工層を乾燥させる乾燥工程とを含み、
少なくとも前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置に設けられたノズルはインクジェットノズルであることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【0157】
(付記2)
前記基材層における前記直交方向の両端部に沿って前記塗工層を形成しない非塗工領域が設定され、
前記ノズル列の前記直交方向の幅が、前記塗工層の幅と略同一であり、
前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置に前記インクジェットノズルを備えることを特徴とする、付記1に記載の積層フィルムの製造方法。
【0158】
(付記3)
前記基材層における前記直交方向の両端部に沿って前記塗工層を形成しない非塗工領域が設定され、
前記ノズル列の前記直交方向の幅が、前記塗工層の幅より大きく、
前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置および前記非塗工領域に対向する位置に設けられたノズルがインクジェットノズルであり、
前記塗工工程が、
前記ノズル列において、前記非塗工領域に対向する位置に設けられた前記インクジェットノズルからの前記塗工液の吐出を抑止する工程を含む
ことを特徴とする、付記1に記載の積層フィルムの製造方法。
【0159】
(付記4)
前記ノズル列において、前記両端部にそれぞれ設けられた前記インクジェットノズルの間にもインクジェットノズルを備えることを特徴とする、付記1~3のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
【0160】
(付記5)
前記ノズル列において、前記両端部にそれぞれ設けられた前記インクジェットノズルの間にスプレーノズルを備えることを特徴とする、付記1~3のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
【0161】
(付記6)
前記塗工工程が、
第1のノズル列から前記塗工液を吐出して前記基材層の表面に前記塗工層を形成する工程と、
第2のノズル列から前記塗工液を吐出して前記基材層の裏面に前記塗工層を形成する工程と
を備えることを特徴とする、付記1~5のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法。
【0162】
(付記7)
基材層上に塗工層が形成された積層フィルムを製造する製造装置であって、
前記基材層の搬送方向と直交する直交方向に設けられた列状に配置された複数のノズルを有するノズル列から前記基材層に塗工液を吐出して前記塗工層を形成する塗工部と、
前記塗工層を乾燥させる乾燥部とを含み、
少なくとも前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置に設けられたノズルはインクジェットノズルであることを特徴とする積層フィルムの製造装置。
【0163】
(付記8)
前記基材層における前記直交方向の両端部に沿って前記塗工層を形成しない非塗工領域が設定され、
前記ノズル列の前記直交方向の幅が、前記塗工層の幅と略同一であり、
前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置に前記インクジェットノズルを備えることを特徴とする、付記7に記載の積層フィルムの製造装置。
【0164】
(付記9)
前記基材層における前記直交方向の端部に沿って前記塗工層を形成しない非塗工領域が設定され、
前記ノズル列の前記直交方向の幅が、前記塗工層の幅より大きく、
前記ノズル列において、前記塗工層の前記直交方向の両端部に対向する位置および前記非塗工領域に対向する位置に設けられたノズルがインクジェットノズルであり、
前記ノズル列において、前記非塗工領域に対向する位置に設けられた前記インクジェットノズルからの前記塗工液の吐出を抑止する制御部を備える
ことを特徴とする、付記7に記載の積層フィルムの製造装置。
【0165】
(付記10)
前記ノズル列において、前記両端部にそれぞれ設けられた前記インクジェットノズルの間にもインクジェットノズルを備えることを特徴とする、付記7~9のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造装置。
【0166】
(付記11)
前記ノズル列において、前記両端部にそれぞれ設けられた前記インクジェットノズルの間にスプレーノズルを備えることを特徴とする、付記7~9のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造装置。
【0167】
(付記12)
前記塗工部が、
第1のノズル列から前記塗工液を吐出して前記基材層の表面に前記塗工層を形成する第1塗工部、
第2のノズル列から前記塗工液を吐出して前記基材層の裏面に前記塗工層を形成する第2塗工部と
を備えることを特徴とする、付記7~11のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造装置。
【符号の説明】
【0168】
1 積層フィルム製造システム
10a,10b 原料サイロ
11 造粒機
12 ペレットサイロ
13 押出機
14 縦延伸装置
141a,141b,141c,141d,141 搬送ローラ
16 横延伸装置
17 ワインダー
18 ドライヤー
30 インクジェット吐出装置
100 積層フィルム
100a ドライエッジ
100b 塗工層領域
101 基層
102 塗工層
161 クリップ
300 インクジェットヘッド列
310-1~310-5,310 インクジェットヘッド
310a 吐出ノズル領域
310b 吐出抑止ノズル領域
320 スプレー装置
400 塗工制御部