(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158810
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両用のバッテリーケース
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20231024BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20231024BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20231024BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20231024BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231024BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20231024BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231024BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20231024BHJP
【FI】
H01M10/6568
B60K1/04 Z
B60L50/64
B60L58/26
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/6556
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068820
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】大石 将人
(72)【発明者】
【氏名】永塚 寛奈
【テーマコード(参考)】
3D235
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC15
3D235DD23
3D235EE63
3D235HH02
3D235HH04
5H031AA09
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD06
5H125FF04
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】バッテリーケースを構成する骨格部材から調温流体に伝達される熱量および当該骨格部材に調温流体から伝達される熱量を少なくする。
【解決手段】車両用のバッテリーケース10は、前後方向に互いに所定の距離をおいて並べて配置されており左右方向に長い複数のクロス18と、板状の形状を有しており上側の面に載置領域BSに載置されるバッテリーの温度を調節するための流体が流通可能な経路である調温経路193が設けられ、隣り合うクロス18どうしの間に配置される複数のヒートシンク19と、ヒートシンク19とクロス18との間に介在しておりヒートシンク19およびクロス18よりも熱伝導率が低い材料により形成されるヒートシンク支持部材20aと、を備え、ヒートシンク19はヒートシンク支持部材20aを介してクロス18に支持される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向視における内周側にバッテリーを収容可能な開口部が設けられた枠体と、
前記枠体の前記開口部の内部に配置され、前記第一方向に直角な方向である第二方向に互いに所定の距離をおいて略平行に並んでおり、前記第一方向および前記第二方向に直角な方向である第三方向に延伸する複数の棒状の骨格部材と、
前記第二方向および前記第三方向に延伸する板状の形状を有し、前記第一方向の一方の側の面にはバッテリーを載置可能な領域であるバッテリー載置領域が設けられ、内部には前記バッテリー載置領域に載置される前記バッテリーの温度を調節するための流体が流通可能な経路である調温経路が設けられ、前記第二方向に隣り合う前記骨格部材どうしの間に配置される複数の温度調節部材と、
前記温度調節部材と前記骨格部材との間に介在しており、前記温度調節部材および前記骨格部材よりも熱伝導率が低い伝熱抵抗部材と、
を備え、
前記温度調節部材は、前記伝熱抵抗部材を介して前記骨格部材に支持されており、前記骨格部材から離間している、
車両用のバッテリーケース。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用のバッテリーケースであって、
複数の前記骨格部材は、それぞれ、互いに隣接する他の前記骨格部材の側に向かって突出する突起状の取付部を備え、
前記伝熱抵抗部材は前記取付部に取り付けられる、
車両用のバッテリーケース。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記伝熱抵抗部材は、前記第二方向および前記第三方向に延伸する板状の形状を有し、前記第二方向の両端部のそれぞれが、前記第二方向に隣り合う前記骨格部材のそれぞれに設けられる前記取付部の前記第一方向の一方の側の面に載置され、
前記温度調節部材は、前記伝熱抵抗部材の前記第二方向の中間部であって前記第一方向の前記一方の側の面上に配設される、
車両用のバッテリーケース。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記伝熱抵抗部材の前記第二方向の中間部であって前記第一方向の前記一方の側には凹部が設けられており、
前記温度調節部材は、前記伝熱抵抗部材の前記凹部に嵌め込まれる、
車両用のバッテリーケース。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記第二方向および前記第三方向に延伸する板状の形状を備え、複数の前記骨格部材の前記第一方向の前記一方の側とは反対側に配置され、前記伝熱抵抗部材から前記第一方向に離間している底板部材を備え、
前記温度調節部材および前記伝熱抵抗部材と前記底板部材との間には空気層が設けられる、
車両用のバッテリーケース。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記伝熱抵抗部材には、前記底板部材の側に向かって突出している突起状の突起部が設けられており、
前記突起部の先端が前記底板部材に接触している、
車両用のバッテリーケース。
【請求項7】
請求項1に記載の車両用のバッテリーケースであって、
前記第一方向視における前記骨格部材と前記バッテリー載置領域との間には、前記第二方向および前記第三方向に延伸し前記骨格部材よりも熱伝導率の低い壁部が設けられる、
車両用のバッテリーケース。
【請求項8】
請求項1に記載の車両用のバッテリーケースであって、
複数の前記骨格部材の両端部は、前記枠体に接合される、
車両用のバッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のバッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のバッテリーケースには、収容されるバッテリーを適切な温度に維持できるように、バッテリーの温度を調節可能に構成されものがある。例えば、特許文献1には、略四辺形の板状の底板部(特許文献1においては「ロアパネル」と称される)と、この底板部の周囲を囲む周壁と、底板部上の周壁に囲まれる領域に配置される複数の棒状の骨格部材(特許文献1においては「クロスリインフォース」と称される)とを有し、側壁と複数の骨格部材とにより区画される領域にバッテリーを収容可能な車両用のバッテリーケースが開示されている。そして、特許文献1に記載の車両用のバッテリーケースの底板部は、上板と下板とそれらの間の断熱コア材とが積層している構成を有しており、上板の内部には冷媒経路が設けられる。この冷媒経路に冷媒(流体)を流通させることによって、バッテリーを冷却できるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
流体によるバッテリーの温度調節の能力を高めるため、または温度調節の能力の低下を抑制するためには、バッテリー以外の部材から流体に伝達される熱を少なくすること、および流体からバッテリー以外の部材に伝達される熱を少なくすることが好ましい。しかしながら、特許文献1には、周壁から流体に伝達される熱を少なくするための構成は開示されているが、周壁に囲まれた領域に配置される骨格部材から流体に伝達される熱を少なくするための構成は開示されていない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、周壁に囲まれた領域に配置される骨格部材から流体に伝達される熱量、および流体から骨格部材に伝達される熱を少なくできる車両用のバッテリーケースを提供することを目的とする。
【0006】
(課題を解決するための手段)
前記目的を達成するため、本発明に係る車両用のバッテリーケースは、
第一方向視における内周側にバッテリーを収容可能な開口部が設けられた枠体と、
前記枠体の前記開口部の内部に配置され、前記第一方向に直角な方向である第二方向に互いに所定の距離をおいて略平行に並んでおり、前記第一方向および前記第二方向に直角な方向である第三方向に延伸する複数の棒状の骨格部材と、
前記第二方向および前記第三方向に延伸する板状の形状を有し、前記第一方向の一方の側の面にはバッテリーを載置可能な領域であるバッテリー載置領域が設けられ、内部には前記バッテリー載置領域に載置される前記バッテリーの温度を調節するための流体が流通可能な経路である調温経路が設けられ、前記第二方向に隣り合う前記骨格部材どうしの間に配置される複数の温度調節部材と、
前記温度調節部材と前記骨格部材との間に介在しており、前記温度調節部材および前記骨格部材よりも熱伝導率が低い伝熱抵抗部材と、
を備え、
前記温度調節部材は、前記伝熱抵抗部材を介して前記骨格部材に支持されており、前記骨格部材から離間している。
【0007】
温度調節部材が伝熱抵抗部材に支持されることにより骨格部材から離間する構成によれば、温度調節部材と骨格部材とは伝熱抵抗部材を介して熱が交換されるため、直接接触している構成に比較して、温度調節部材と骨格部材との間で交換される熱量を少なくできる。したがって、温度調節部材とバッテリーとの間で交換される熱量を増やすことができるから、バッテリーの温度調節の能力を高めること、もしくは温度調節の能力が低下することを防止または抑制できる。
【0008】
複数の前記骨格部材は、それぞれ、互いに隣接する他の前記骨格部材の側に向かって突出する突起状の取付部を備え、
前記伝熱抵抗部材は前記取付部に取り付けられる、
という構成が適用できる。
【0009】
また、前記伝熱抵抗部材は、前記第二方向および前記第三方向に延伸する板状の形状を有し、前記第二方向の両端部のそれぞれが、前記第二方向に隣り合う前記骨格部材のそれぞれに設けられる前記取付部の前記第一方向の一方の側の面に載置され、
前記温度調節部材は、前記伝熱抵抗部材の前記第二方向の中間部であって前記第一方向の前記一方の側の面上に配設される、
という構成が適用できる。
【0010】
これらの構成によれば、骨格部材の取付部に伝熱抵抗部材を載置することにより、骨格部材によって伝熱抵抗部材を介して温度調節部材を支持することができる。したがって、温度調節部材および伝熱抵抗部材を支持するために別の部材を追加しなくてもよい。したがって、部品点数の増加を防止または抑制できる。
【0011】
前記伝熱抵抗部材の前記第二方向の中間部であって前記第一方向の前記一方の側には凹部が設けられており、
前記温度調節部材は、前記伝熱抵抗部材の前記凹部に嵌め込まれる、
という構成が適用できる。
【0012】
このような構成によれば、伝熱抵抗部材に凹部が設けられない構成に比較して、バッテリーケースの第三方向の寸法の増加を防止または抑制できる。
【0013】
前記第二方向および前記第三方向に延伸する板状の形状を備え、複数の前記骨格部材の前記第一方向の前記一方の側とは反対側に配置され、前記伝熱抵抗部材から前記第一方向に離間している底板部材を備え、
前記温度調節部材および前記伝熱抵抗部材と前記底板部材との間には空気層が設けられる、
という構成が適用できる。
【0014】
このような構成によれば、底板部材によって温度調節部材および伝熱抵抗部材を保護できる。そして、温度調節部材および伝熱抵抗部材と底板部材との間には空気層が設けられるから、温度調節部材および伝熱抵抗部材と底板部材とが直接接触している構成に比較して、温度調節部材および伝熱抵抗部材と底板部材との間で交換される熱量を少なくできる。したがって、バッテリーの温度調節の能力を高めること、もしくは温度調節の能力が低下することを防止または抑制できる。
【0015】
前記伝熱抵抗部材には、前記底板部材の側に向かって突出している突起状の突起部が設けられており、
前記突起部の先端が前記底板部材に接触している、
という構成が適用できる。
【0016】
このような構成によれば、伝熱抵抗部材と前記底板部材との間で交換される熱量を増加させることなく、伝熱抵抗部材の支持強度を高めることができる。
【0017】
前記第一方向視における前記骨格部材と前記バッテリー載置領域との間には、前記第二方向および前記第三方向に延伸し前記骨格部材よりも熱伝導率の低い壁部が設けられる、
という構成が適用できる。
【0018】
このような構成によれば、骨格部材からバッテリー載置領域に載置されるバッテリーに空気層を介して交換される熱量を少なくできる。
【0019】
複数の前記骨格部材の両端部は、前記枠体に接合される、
という構成が適用できる。
【0020】
このような構成によれば、前記骨格部材を介して温度調節部材と枠体との間で交換される熱量を少なくできる。したがって、バッテリーの温度調節の能力を高めること、もしくは温度調節の能力が低下することを防止または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、バッテリーケースの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、バッテリーケースの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、バッテリーケースの構成を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、ヒートシンク、ヒートシンク支持部材、およびクロスの構成を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、ヒートシンク、ヒートシンク支持部材、およびクロスの構成を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、ヒートシンク、ヒートシンク支持部材、およびクロスの組付け構造を示す断面図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るヒートシンク支持部材の構成を示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態に係るバッテリーケースの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、本発明の各実施形態に係る車両用のバッテリーケースを単に「バッテリーケース」と略して記す。以下の説明において、バッテリーケースの各方向は、車両に組付けられた状態での方向(すなわち、車両の方向)を基準とする。各図においては、バッテリーケースの前側を矢印Frで示し、後側を矢印Rrで示し、上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示し、右側を矢印Rで示し、左側を矢印Lで示す。また、上下方向が本発明の第一方向の例であり、前後方向が本発明の第二方向の例であり、左右方向が本発明の第三方向の例である。
【0023】
バッテリーケースは、電動車両(EV、PHV(プラグインハイブリッド車両)、HV(ハイブリッド車両)など)に搭載される複数のバッテリーモジュールの収容に用いられる。バッテリーモジュールは、互いに接続された複数のバッテリーセルを備える。本実施形態では、バッテリーモジュールは、所定の方向に直列的に並ぶように接合される複数のバッテリーセルを備え、バッテリーセルの配列方向に長い長尺形状を備える。バッテリーケースは、例えば車両の床部(シートの下側)に配置される。バッテリーケースは、温度調節のための水などの流体(以下、「調温流体」と記す)が流通可能な経路(以下、「調温経路」と記す)を有しており、この調温経路に調温流体を流すことによって複数のバッテリーモジュールの温度調節(冷却および加熱)可能に構成される。
【0024】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係るバッテリーケース10の構成を示す斜視図である。
図2は、バッテリーケース10の構成を示す分解斜視図であり、斜め上方から見た図である。
図3はバッテリーケース10の構成を示す分解斜視図であり、斜め下方から見た図である。
図1~
図3に示すように、バッテリーケース10は、ロアパネル11、シェアパネル12、ロアフレーム13、フロントフレーム14、リアフレーム15、左右のサイドフレーム16、複数のクロス18、複数のヒートシンク19、複数のヒートシンク支持部材20a、および複数の経路部材21(
図3においては一部省略)を備える。これら部材のうち、複数のヒートシンク支持部材20aを除く各部材は、例えばアルミニウム合金などの金属材料からなる。複数のヒートシンク支持部材20aは、複数のヒートシンク19および複数のクロス18よりも熱伝導率が低い樹脂材料により形成される。
【0025】
バッテリーケース10は、上下方向視において略四辺形を有しており、上側が開口する有底の箱状の構造を有している。具体的には、複数のヒートシンク19、複数のヒートシンク支持部材20a、ロアパネル11、およびシェアパネル12が「箱の底」に相当する部分を形成し、フロントフレーム14、リアフレーム15、および2つのサイドフレーム16が「箱の側壁(周壁)」に相当する部分を形成する。
【0026】
ロアパネル11およびシェアパネル12は、いずれも上下方向視において略四辺形で、前後方向と左右方向に延伸する平板状の部材である。ロアパネル11とシェアパネル12とは上下方向に互いに離間しており、ロアパネル11とシェアパネル12との間には空間(空洞)が設けられる。なお、ロアパネル11の下方にシェアパネル12が位置する。また、ロアパネル11とシェアパネル12とは互いに略平行である。
【0027】
ロアパネル11とシェアパネル12の間の空間には、複数のロアフレーム13が配置される。複数のロアフレーム13は、長尺棒状の部材であり、例えば押し出し材が適用される。複数のロアフレーム13の上面と下面とは、互いに平行な平面である。複数のロアフレーム13は、それらの長尺方向が左右方向に平行な向きで、前後方向に互いに所定の距離をおいて並べて配置される。そして、各ロアフレーム13の上面はロアパネル11の下面に溶接などによって接合され、各ロアフレーム13の下面はシェアパネル12の上面に溶接などによって接合される。ロアパネル11が本発明の底板部材の例である。なお、ロアパネル11とシェアパネル12と複数のロアフレーム13により形成される構造物が本発明の底板部材の例である、ということもできる。
【0028】
フロントフレーム14、リアフレーム15、および左右のサイドフレーム16は、いずれも中空で長尺棒状の部材である。フロントフレーム14、リアフレーム15、および左右のサイドフレーム16には、例えば押し出し材が適用される。フロントフレーム14、リアフレーム15、および左右のサイドフレーム16は、上下方向視においてロアパネル11およびシェアパネル12の外周部に沿うように配置され、これらの外周部から上側に立設するように設けられる。より具体的には、フロントフレーム14はロアパネル11およびシェアパネル12の前辺に沿うように配置され、リアフレーム15はロアパネル11およびシェアパネル12の後辺に沿うように配置され、左右のサイドフレーム16はそれぞれロアパネル11およびシェアパネル12の右辺と左辺のそれぞれに沿うように配置される。このため、フロントフレーム14とリアフレーム15とは前後方向に所定の距離をおいて離間しており、互いに略平行である。同様に、左右のサイドフレーム16は左右方向に所定の距離をおいて離間しており、互いに略平行である。
【0029】
フロントフレーム14およびリアフレーム15の下端部には、後述するヒートシンク支持部材20aを取り付け可能な取付部が設けられる。フロントフレーム14の取付部(図略)は、後側に突出し左右方向に延伸する(左右方向に長い)リブ状の部分である。リアフレーム15の取付部151は、前側に突出し、左右方向に延伸する(左右方向に長い)リブ状の部分である。本実施形態では、これらの取付部151の上面は、上下方向に直角で左右方向に長い平面である。
【0030】
左右のサイドフレーム16は、エネルギー吸収部161を備える。エネルギー吸収部161は、左右のサイドフレーム16の互いに対向する側とは反対側(すなわち、車幅方向外側)に向かって突出し、前後方向に延伸する部分である。なお、エネルギー吸収部161は、他の部分と一体に繋がっている。エネルギー吸収部161の内部には空間(空洞)が形成される。エネルギー吸収部161は、側突などが発生した際に変形することによって、バッテリーモジュール50に掛かる衝撃を緩和するように構成される。
【0031】
フロントフレーム14およびリアフレーム15の左右方向(長尺方向)の端部のそれぞれと、左右のサイドフレーム16の前後方向(長尺方向)の端部のそれぞれとは、溶接などによって互いに接合される。そして、フロントフレーム14、リアフレーム15、および左右のサイドフレーム16により、上下方向視において、略四辺形で、内周側に複数のバッテリーモジュール50を収容可能な開口部が設けられた枠体17が形成される。この枠体17が、本発明の枠体の例である。
【0032】
ロアパネル11およびシェアパネル12の外周部は、フロントフレーム14、リアフレーム15、および左右のサイドフレーム16のそれぞれの下端部に、溶接などによって接合される。具体的には、フロントフレーム14、リアフレーム15、および左右のサイドフレーム16の下方部には、それぞれ、ロアパネル11が接合される第一接合面142,152,162と、シェアパネル12が接合される第二接合面143,153,163とが形成される。フロントフレーム14およびリアフレーム15の第一接合面142,152および第二接合面143,153は、いずれも左右方向に長い平面であり、左右のサイドフレーム16の第一接合面162および第二接合面163は前後方向に長い平面であり、いずれも上下方向に対して直角で下側を向く平面である。また、第一接合面142,152,162と第二接合面143,153,163とは、上下方向に所定の距離をおいて離間しており、第一接合面142,152,162の方が第二接合面143,153,163よりも上側に位置している。このため、フロントフレーム14、リアフレーム15、および左右のサイドフレーム16の下端部には、ロアパネル11とシェアパネル12とを上下方向に互いに離間した状態で接合できる。
【0033】
そして、ロアパネル11の上面の外周部がフロントフレーム14、リアフレーム15、および左右のサイドフレーム16の第一接合面142,152,162に接合され、シェアパネル12の上面の外周部がフロントフレーム14、リアフレーム15、および左右のサイドフレーム16の第二接合面143,153,163に接合される。
【0034】
図4および
図5は、ヒートシンク、ヒートシンク支持部材、およびクロスの構成を示す分解斜視図である。なお、
図4は上方から見た図であり、
図5は下方から見た図である。複数のクロス18は、本発明の骨格部材の例である。複数のクロス18は、側突などが発生した際に左右方向の荷重を受けることによって、サイドフレーム16が変形した場合にサイドフレーム16がバッテリーモジュール50に接触することを防止または抑制するための部材である。複数のクロス18は中空で長尺棒状の部材であり、例えば押し出し材が適用される。複数のクロス18は、上面視において、フロントフレーム14、リアフレーム15、および2つのサイドフレーム16に囲まれる領域(本発明の枠体の内周側の領域)に配置される。より具体的には、ロアパネル11の上側(本発明の底板部材の上側)であって、かつ左右のサイドフレーム16の間に配置される。また、複数のクロス18は、それらの長尺方向が左右方向に平行な向きで、前後方向に互いに離間し、かつ互いに平行に並ぶように配置される。そして、複数のクロス18の左右方向(長尺方向)の端部は、図略の固定金具などを介して左右のサイドフレーム16のそれぞれに接合される。なお、複数のクロス18の下面はロアパネル11の上面に接触している。そして、複数のクロス18とロアパネル11とは、溶接などによって接合される。
【0035】
2本のサイドフレーム16どうしの間の領域であって、隣り合うクロス18どうしの間の領域、フロントフレーム14と最も前側のクロス18との間の領域、リアフレーム15と最も後側のクロス18との間の領域のそれぞれは、所定の数(本実施形態では2つ)のバッテリーモジュール50を、それらの長尺方向が左右方向に平行な向きで前後方向に並べて収容可能に構成される。
【0036】
各クロス18の下端部には、後述するヒートシンク支持部材20aを取り付け可能な取付部181が設けられる。各クロス18の取付部181は、前側と後側のそれぞれに突出し、左右方向に延伸する(左右方向に長い)リブ状の部分である。各クロス18にこのような取付部181が設けられるため、各クロス18を左右方向に直角な面で切断した断面は「略逆T字状」の形状を有する。なお、各図においては、取付部181が各クロス18の全長にわたって設けられる構成を示すが、取付部181は部分的に設けられる構成であってもよい。また、複数の取付部181が左右方向に直列に並ぶように設けられてもよい。
【0037】
複数のヒートシンク19のそれぞれは、上下方向視において略四辺形(本実施形態では左右方向に長い長方形)の板状の部材である。ヒートシンク19は、後述するヒートシンク支持部材20aに接合された状態で、枠体17の内周側であって、隣り合うクロス18どうしの間の領域、フロントフレーム14と最も前側に位置するクロス18との間の領域、リアフレーム15と最も後側に位置するクロス18との間の領域、のそれぞれに配置される。ヒートシンク19は、隣り合うクロス18どうしの間の領域、フロントフレーム14と最も前側に位置するクロス18との間の領域、リアフレーム15と最も後側に位置するクロス18との間の領域のそれぞれに、フロントフレーム14、リアフレーム15、およびクロス18のいずれにも接触しない状態で(換言すると離間した位置に)配置できる寸法を有する。
【0038】
具体的には、隣り合うクロス18どうしの間の領域に配置されるヒートシンク19の前後方向寸法は、当該隣り合うクロス18の互いに対向する面どうしの間の距離よりも小さく、より具体的には、当該隣り合うクロス18の互いに対向する面に設けられる取付部181の先端どうしの間の距離と略同じである。フロントフレーム14と最も前側に位置するヒートシンク19との間に配置されるヒートシンク19の前後方向寸法は、フロントフレーム14と最も前側に位置するクロス18の互いに対向する面どうしの間の距離よりも小さく、より具体的には、フロントフレーム14と当該クロス18の互いに対向する面に設けられる取付部181の先端どうしの間の距離と略同じである。リアフレーム15と最も後側に位置するヒートシンク19との間に配置されるヒートシンク19の前後方向寸法は、リアフレーム15と最も後側に位置するクロス18の互いに対向する面どうしの間の距離よりも小さく、より具体的には、リアフレーム15と当該クロス18の互いに対向する面に設けられる取付部181の先端どうしの間の距離と略同じである。
【0039】
各ヒートシンク19の左右方向寸法は、左右のサイドフレーム16の間に、左右のサイドフレーム16に接触しない状態で(左右のサイドフレーム16からり患した位置に)配置可能な寸法に設定される。具体的には、各ヒートシンク19の左右方向寸法は、左右のサイドフレーム16の互いに対向する面どうしの間の距離よりも小さい。
【0040】
ヒートシンク19の上面には、バッテリーモジュール50をその底面が接触した状態で載置可能な領域BSが設けられる。この領域を「載置領域BS」と記す。載置領域BSが、本発明のバッテリー載置領域の例である。載置領域BSは、上下方向視において、バッテリーモジュール50の上下方向視の寸法および形状と略同じ寸法および形状を備える領域である。本実施形態では、載置領域BSは左右方向に長い略長方形の平面状の領域である。なお、本実施形態では、1つのヒートシンク19に、2つの載置領域BSが前後方向に並ぶように設けられる。ただし、載置領域BSの寸法および形状は、載置されるバッテリーモジュール50の寸法および形状に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。また、1つのヒートシンク19に設けられる載置領域BSの数も限定されない。
【0041】
ヒートシンク19の内部には、調温流体が流通可能な空洞状の調温経路193が設けられる。調温経路193には、左右両端部近傍に設けられ、前後方向に延伸する2本の外側経路部194と、2本の外側経路部194どうしの間に設けられ、左右方向に延伸する複数の中間経路部195とが含まれる。複数の中間経路部195は、上下方向視において載置領域BSに重畳する範囲に設けられる。そして、1つの同じ載置領域BSに重畳する範囲に設けられる複数の中間経路部195は、左右方向の両端部においてそれぞれ互いに繋がっているとともに、オリフィス部196を介して2本の外側経路部194のそれぞれに繋がっている。
【0042】
複数のヒートシンク19は、例えば、上下方向に重ねて貼り合された2枚の板状の部材により形成される。以下、上側に位置する板状の部材を「上板部材191」と記し、上板部材191の下側に位置する板状の部材を「下板部材192」と記す。上板部材191と下板部材192は、いずれも金属板からなり、プレス加工により形成される。上板部材191は略平板状の部材であり、その上面はバッテリーモジュール50を載置可能な平面である。下板部材192には、経路壁部197が設けられる。経路壁部197は、上側(上板部材191に接合される側)が開口し下側に膨出する溝状の部分であり、この経路壁部197の上側開口が上板部材191によって塞がれる(蓋をされる)ことによって上板部材191と下板部材192の間(すなわちヒートシンク19の内部)に、調温流体が流通可能な調温経路193が形成される。
【0043】
複数のヒートシンク支持部材20aは、本発明の伝熱抵抗部材の例である。ヒートシンク支持部材20aは、ヒートシンク19を支持するとともに、ヒートシンク19とクロス18との間で交換される熱量を低減するための部材である。ヒートシンク支持部材20aは、少なくともヒートシンク19およびクロス18よりも熱伝導率が低い材料により形成される。例えば、ヒートシンク19およびクロス18がアルミニウム合金により形成される構成であれば、ヒートシンク支持部材20aはアルミニウム合金よりも熱伝導率の低い樹脂材料により形成される。
【0044】
ヒートシンク支持部材20aは、上下方向視において略四辺形の板状の部材である。そして、ヒートシンク支持部材20aは、隣り合うクロス18どうしの間の領域、フロントフレーム14と最も前側に位置するクロス18との間の領域、リアフレーム15と最も後側に位置するクロス18との間の領域のそれぞれに配置可能で、かつ、取付部151,181に取付可能に構成される。
【0045】
例えば、隣り合うクロス18どうしの間の領域に配置されるヒートシンク支持部材20aの前後方向寸法は、当該隣り合うクロス18の互いに対向する面どうしの間の距離と略同じかそれよりも小さく、当該隣り合うクロス18の互いに対向する面に設けられる取付部181の先端どうしの間の距離よりも大きい。フロントフレーム14と最も前側に位置するクロス18との間に配置されるヒートシンク支持部材20aの前後方向寸法は、フロントフレーム14と最も前側に位置するクロス18の互いに対向する面どうしの間の距離と略同じかそれよりも小さく、フロントフレーム14と当該クロス18の互いに対向する面に設けられる取付部181の先端どうしの間の距離よりも大きい。リアフレーム15と最も後側に位置するクロス18との間に配置されるヒートシンク支持部材20aの前後方向寸法は、リアフレーム15と最も後側に位置するクロス18の互いに対向する面どうしの間の距離よりも小さく、リアフレーム15と当該クロス18の互いに対向する面に設けられる取付部151,181の先端どうしの間の距離よりも大きい。
【0046】
ヒートシンク支持部材20aの左右方向寸法は、左右のサイドフレーム16の互いに対向する面どうしの間の距離と略同じか、それよりも小さい。なお、ヒートシンク支持部材20aの左右方向寸法は、ヒートシンク19の左右方向寸法よりも小さくてもよい。すなわち、ヒートシンク支持部材20aにヒートシンク19が載置された状態で、ヒートシンク19の左右両端部がヒートシンク支持部材20aの左右両端から突出してもよい。
【0047】
ヒートシンク支持部材20aは、左右方向に直角な面で切断した断面が略「逆ハット型」の板状の部材である。具体的には、各ヒートシンク支持部材20aの上面には、各ヒートシンク19を上から嵌め込むことができるヒートシンク収容部201が設けられる。ヒートシンク収容部201は、上側が開口し下側に窪む凹部(または左右方向に延伸する溝部)である。ヒートシンク収容部201の前後方向寸法は、ヒートシンク19の前後方向寸法と略同じまたはそれよりもわずかに大きい。また、ヒートシンク収容部201の深さは特に限定されないが、例えばヒートシンク19の上下方向寸法と略同じ深さが適用できる。
【0048】
各ヒートシンク支持部材20aの前端部(前辺近傍)および後端部(後辺近傍)には、後述するクロス18の取付部181の上面に載置可能な被取付部202が設けられる。被取付部202の下面は、ヒートシンク収容部201の下面よりも上側に位置する段差面状の部分である。
【0049】
ヒートシンク支持部材20aには、下方に向かって突出する突起部203が設けられる。本実施形態では、突起部203は、ヒートシンク支持部材20aの前後端辺近傍に左右方向に延在するように設けられており、ヒートシンク支持部材20aと一体に成形される。なお、突起部203の形状は特に限定されないが、例えば左右方向に長いリブ状の形状が適用できる。突起部203の高さは、ヒートシンク支持部材20aとロアパネル11との距離に応じて設定される。
【0050】
そして、ヒートシンク支持部材20aのヒートシンク収容部201にヒートシンク19が嵌め込まれた状態で、ヒートシンク19とヒートシンク支持部材20aとが接合される。なお、ヒートシンク19とヒートシンク支持部材20aとの接合構造(接合方法)は特に限定されるものではない。例えば、ヒートシンク19とヒートシンク支持部材20aとが接着剤により接合される構成、ネジやリベットなどにより接合される構成など、公知の各種の接合構造が適用できる。また、ヒートシンク支持部材20aを射出成形により成形する際に、ヒートシンク19に対してアウトサート成形することにより、ヒートシンク19とヒートシンク支持部材20aとを一体に接合してもよい。
【0051】
ヒートシンク19が接合されたヒートシンク支持部材20aは、隣り合うクロス18どうしの間の領域、フロントフレーム14と最も前側に位置するクロス18との間の領域、リアフレーム15と最も後側に位置するクロス18との間の領域、のそれぞれに配置される。
【0052】
ここで、ヒートシンク支持部材20aの組付け構造について説明する。
図6は、ヒートシンク19、ヒートシンク支持部材20a、およびクロス18の組付け構造を示す断面図である。
図6に示すように、ヒートシンク支持部材20aの被取付部202の下面は、クロス18に設けられる取付部181の上面に載置され、かつ接合される。換言すると、各ヒートシンク19は、各ヒートシンク支持部材20aを介して、間接的に、クロス18に支持される。そして、隣り合うクロス18どうしの間の領域に配置されるヒートシンク19は、当該隣り合うクロス18のいずれにも直接に接触しない(当該隣り合うクロス18のいずれからも離間している)。ヒートシンク19の前後方向寸法は前記のとおりであるから、ヒートシンク19をクロス18から離間した位置に配置できる。
【0053】
図示は省略するが、フロントフレーム14と最も前側のクロス18との間の領域に配置されるヒートシンク支持部材20aの前寄りに位置する被取付部202の下面は、フロントフレーム14の取付部の上面に載置され、かつ接合される。このヒートシンク支持部材20aの後寄りに位置する被取付部202の下面は、最も前側に位置するクロス18の前寄りに位置する取付部181の上面に載置され、かつ接合される。このように、最も前側に位置するヒートシンク19は、最も前側に位置するヒートシンク支持部材20aを介して、フロントフレーム14および最も前側に位置するクロス18に間接的に支持される。そして、最も前側に位置するヒートシンク19は、フロントフレーム14および最も前側に位置するクロス18のいずれにも直接に接触しない(フロントフレーム14および最も前側に位置するクロス18から離間している)。
【0054】
同様に、リアフレーム15と最も後側のクロス18との間の領域に配置されるヒートシンク支持部材20aの後寄りに位置する被取付部202の下面は、リアフレーム15の取付部151の上面に載置され、かつ接合される。このヒートシンク支持部材20aの前寄りに位置する被取付部202の下面は、最も後側に位置するクロス18の後寄りに位置する取付部181の上面に載置され、かつ接合される。このように、最も後側に位置するヒートシンク19は、最も後側に位置するヒートシンク支持部材20aを介して、リアフレーム15および最も後側に位置するクロス18に間接的に支持される。そして、最も後側に位置するヒートシンク19は、リアフレーム15および最も後側に位置するクロス18のいずれにも直接に接触しない(リアフレーム15および最も後側に位置するクロス18から離間している)。
【0055】
また、ヒートシンク支持部材20aがクロス18に接合された状態(または、フロントフレーム14とクロス18、もしくはリアフレーム15とクロス18に接合された状態)では、ヒートシンク19の左右の両端部は左右のサイドフレーム16のいずれにも接触していない。ヒートシンク19の左右方向寸法が前記のとおりであるから、ヒートシンク19の左右両端部が左右のサイドフレーム16のいずれからも離間した位置にヒートシンク19を配置できる。
【0056】
ヒートシンク支持部材20aがクロス18に接合された状態(または、フロントフレーム14とクロス18、もしくはリアフレーム15とクロス18に接合された状態)では、ヒートシンク支持部材20aの突起部203を除く下面は、ロアパネル11の上面から上方に離間している。このため、ヒートシンク19およびヒートシンク支持部材20aとロアパネル11との間に、空気層(空間、空洞)が形成される。なお、ヒートシンク支持部材20aに設けられる突起部203の先端(下端)は、ロアパネル11の上面に接触している。そして、この突起部203により、ヒートシンク19およびヒートシンク支持部材20aが補助的に支持される。
【0057】
なお、複数のヒートシンク19どうしは直接接触していないため、ヒートシンク19に設けられる調温経路193どうしも直接には互いに繋がっていない。このため、すべてのヒートシンク19の調温経路193に調温流体を供給できる(流通させることができる)ように、隣接するヒートシンク19の調温経路193どうしが経路部材21により繋げられる。
【0058】
具体的には、最も後側に位置するヒートシンク19を除き、各ヒートシンク19の左右の外側経路部194のそれぞれの後端部と、当該各ヒートシンク19の後ろ隣のヒートシンク19の左右の外側経路部194のそれぞれの前端部とが、経路部材21により繋げられる。より具体的には、各ヒートシンク19の上板部材191には、左右の外側経路部194の前端部および後端部の位置に、ヒートシンク19の外部(上側)と外側経路部194の内部とを連通する貫通孔198(上下方向に貫通する貫通する貫通)が設けられる。なお、最も後側に位置するヒートシンク19の上板部材191には、左右の外側経路部194の前端部の位置にのみ貫通孔198が設けられる。
【0059】
そして、隣り合う2つのヒートシンク19のうちの前側に位置するヒートシンク19の後寄りの貫通孔198(外側経路部194の後端部の貫通孔198)と、当該隣り合う2つのヒートシンク19のうちの後ろ側に位置するヒートシンク19の前寄りの貫通孔198(外側経路部194の前端部の貫通孔198)とは、当該隣り合う2つのヒートシンク19に接続される経路部材21によって互いに連通する。なお、経路部材21は、略逆U字形状を有するパイプ状の部材であり、当該隣り合う2つのヒートシンク19どうしの間に配置されるクロス18の上側を迂回するように配置される。また、最も前側に位置するヒートシンク19の左右の外側経路部194のそれぞれの前端部は、図略の他の経路部材によって、それぞれバッテリーケース10の外部に連通する。
【0060】
このような構成であれば、左右一方の前記他の経路部材を介して最も前側のヒートシンク19の左右の外側経路部194の一方に調温流体を供給できる(流入させることができる)。最も前側のヒートシンク19の左右の外側経路部194の一方に流入した調温流体は、後側に向かって流れ、経路部材21を介して、後側に隣接するヒートシンク19の左右の外側経路部194の一方の前端部に流入する。以降、順次後側に隣接するヒートシンク19の左右の外側経路部194の一方に流入していく。そして、各ヒートシンク19の外側経路部194の一方に流入した調温流体は、オリフィス部196から中間経路部195に流入し、中間経路部195を通過して、左右の外側経路部194の他方に流入する。そして、各ヒートシンク19の左右の外側経路部194の他方に流入した調温流体は、前側に向かって流れ、最も前側のヒートシンク19の左右の外側経路部194の他方の前端部に接続された他の経路部材を介して調温経路193の外部に流出する。したがって、このような構成によれば、各ヒートシンク19の各中間経路部195に調温流体を供給でき(流通させることができ)、それによって載置領域BSに載置される各バッテリーモジュール50の温度を調節できる。
【0061】
以上説明したように、各ヒートシンク19は、各クロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15と直接に接触していない。換言すると、ヒートシンク19とクロス18との間、ヒートシンク19とフロントフレーム14との間、およびヒートシンク19とリアフレーム15との間には、ヒートシンク支持部材20aが介在する。そして、ヒートシンク支持部材20aは、ヒートシンク19、クロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15よりも熱伝導率の低い材料により形成される。このような構成によれば、ヒートシンク19がクロス18と直接に接触している構成、ヒートシンク19がクロス18およびフロントフレーム14と直接に接触している構成、ヒートシンク19がクロス18およびリアフレーム15と直接に接触している構成、に比較して、ヒートシンク19とクロス18との間、ヒートシンク19とフロントフレーム14との間、およびヒートシンク19とリアフレーム15との間で交換される熱量を少なくできる。しがって、調温流体によるバッテリーモジュール50の温度調節の能力を高めること、または低下を防止もしくは抑制できる。
【0062】
すなわち、調温流体によるバッテリーモジュール50の温度調節の能力を高めるためには、もしくは能力の低下を防止または抑制するためには、バッテリーモジュール50以外の部材から調温経路193を流れる調温流体に伝達される熱量、および、調温流体からバッテリーモジュール50以外の部材に伝達される熱量を少なくすることが好ましい。同様に、バッテリーモジュール50から各クロス18に伝達される熱量、およびクロス18からバッテリーモジュール50に伝達される熱量をできるだけ少なくすることが好ましい。
【0063】
ヒートシンク19がクロス18に直接に接触していると(接合されると)、クロス18の熱がヒートシンク19を介して調温経路193を流通する調温流体に伝達され、また、調温経路193を流通する調温流体の熱がヒートシンク19を介してクロス18に伝達される。このため、調温流体とクロス18との間で交換された熱量の分だけ、調温流体とバッテリーモジュール50との間で交換される熱量が少なくなる。また、バッテリーモジュール50を冷却する際に、クロス18の熱がヒートシンク19を介してバッテリーモジュール50に伝達されると、バッテリーモジュール50の温度が上昇するため、調温流体による冷却の効果が低くなる。同様に、バッテリーモジュール50を加熱する際にバッテリーモジュール50の熱がヒートシンク19を介してクロス18に伝達されると、バッテリーモジュール50の温度が下降するため、調温流体による加熱の効果が低くなる。
【0064】
本実施形態では、ヒートシンク19と、クロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15との間に、ヒートシンク19、フロントフレーム14、およびリアフレーム15よりも熱伝導率が低いヒートシンク支持部材20aが介在しており、ヒートシンク19とクロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15とは直接に接触していない(接合されていない)。このため、ヒートシンク19がクロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15に直接に接触している構成に比較して、クロス18とヒートシンク19との間での伝導される熱量を少なくできる。このため、クロス18とバッテリーモジュール50との間で交換される熱量、およびクロス18と調温流体との間で交換される熱量を少なくできる。したがって、調温経路193を流通する調温流体とバッテリーモジュール50との間で交換される熱量を増やすことができるから、バッテリーモジュール50の温度調節の能力を高めること、もしくは温度調節の能力が低下することを防止または抑制できる。
【0065】
さらに、本実施形態では、ヒートシンク支持部材20aとその下側に配置されるロアパネル11とが上下方向に離間しており、ヒートシンク支持部材20aは、突起部203を除いてはロアパネル11に直接的に接触していない。このため、ヒートシンク19およびヒートシンク支持部材20aとロアパネル11との間で交換される熱量を少なくできる。したがって、前記同様に、調温流体によるバッテリーモジュール50の温度調節の能力を高めること、もしくは温度調節の能力が低下することを防止または抑制できる。
【0066】
また、ヒートシンク支持部材20aが、前記のように凹部であるヒートシンク収容部201を備える構成であると、バッテリーケース10の上下方向寸法の増加を抑制できる。すなわち、ヒートシンク支持部材20aが単純な平板状の形状であると、ヒートシンク19の上面(載置領域BS)の上下方向位置が、ヒートシンク支持部材20aの上面から、ヒートシンク19の厚さ寸法(上下方向寸法)だけ上方に位置する。このため、バッテリーモジュール50の位置が高くなり、その結果、バッテリーケース10の上下方向寸法が増加する。これに対して本実施形態では、ヒートシンク支持部材20aの上側に凹部であるヒートシンク収容部201が設けられ、このヒートシンク収容部201にヒートシンク19が嵌め込まれる(落とし込まれる)。このため、ヒートシンク収容部201の深さ寸法だけ、ヒートシンク19の上面の上下方向位置を低くできる。したがって、バッテリーケース10の上下方向寸法の増加を防止または抑制できる。
【0067】
さらに、本実施形態では、ヒートシンク19は左右のサイドフレーム16とも直接に接触していない。このため、ヒートシンク19と左右のサイドフレーム16との間で交換される熱量を少なくできる。したがって、左右のサイドフレーム16に対しても、前記同様の効果を奏することができる。
【0068】
また、本実施形態では、クロス18の取付部181はクロス18に一体に形成される。このような構成によれば、ヒートシンク19およびヒートシンク支持部材20aを支持するために別途独立した部材を追加しなくてもよい。したがって、バッテリーケース10の部品点数の増加を防止または抑制できる。
【0069】
また、本実施形態では、ヒートシンク支持部材20aとロアパネル11よびシェアパネル12との間には空間が形成される。このため、シェアパネル12の下面に物体が接触するなどしてシェアパネル12およびロアパネル11が変形した場合でにおいて、この空間がクラッシャブルゾーンとして機能することにより、ヒートシンク19およびヒートシンク支持部材20aが損傷することを防止または抑制できる。すなわち、ヒートシンク19およびヒートシンク支持部材20aを保護できる。
【0070】
なお、ヒートシンク支持部材20aの材料(材質)は特に限定されるものではなく、ヒートシンク19およびクロス18よりも熱伝導率が低い材料であればよい。なお、ヒートシンク19とクロス18との間の熱伝達を少なくするためには、ヒートシンク支持部材20aを形成する材料の熱伝導率は低いほど好ましい。
【0071】
(ヒートシンク支持部材の変形例)
ここで、変形例に係るヒートシンク支持部材20bについて説明する。
図7は、変形例に係るヒートシンク支持部材20bの構成を示す図である。
図7に示すように、変形例に係るヒートシンク支持部材20bは、前後方向に長い棒状の構成を備える。ただし、左右方向視における形状(左右方向に直角な面で切断した断面形状)は、前記第一実施形態に示すヒートシンク支持部材20aと同じ形状が適用される。すなわち、前後方向の中間部には、上側が開口し下側に窪む凹部であるヒートシンク収容部201が設けられ、前後方向の両端部には、ヒートシンク収容部201よりも上側に位置する段差状の被取付部202が設けられる。そして、1つのヒートシンク19が複数のヒートシンク支持部材20bにより支持される。換言すると、1つのヒートシンク19に複数のヒートシンク支持部材20bが接合される。このような構成であっても、前記同様の効果を奏することができる。このように、ヒートシンク支持部材20a,20bは、ヒートシンク19がクロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15に直接接触しない状態でヒートシンク19を支持できる構成であればよい。なお、1つのヒートシンク19を支持するヒートシンク支持部材20bの数は特に限定されない。
【0072】
(第二実施形態)
次いで、第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態と共通の構成については、第一実施形態と同じ符号を付して示し、説明を省略することがある。
【0073】
第二実施形態に係るヒートシンク支持部材20cも、第一実施形態に係るヒートシンク支持部材20aと同様に、クロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15よりも熱伝導率が低い材料により形成される。
図8は、第二実施形態に係るヒートシンク支持部材20cを備えるバッテリーケース10の断面図であり、
図6に対応する図である。
図8に示すように、第二実施形態に係るヒートシンク支持部材20cは、載置領域BSに載置されたバッテリーモジュール50とクロス18との間に位置し、クロス18よりも熱伝導率が低い壁部204を備える。壁部204は、クロス18の前面、上面、および後面に沿うように配置される部分であり、左右方向に直角な面で切断した断面形状が略逆U字状の形状を有する部分である。なお、壁部204は、他の部分(具体的には、ヒートシンク収容部201、被取付部202、および突起部203)と一体に形成される。
【0074】
そして、壁部204が各クロス18の上側から被せるように装着される。これにより、少なくとも各クロス18の前面と後面とが壁部204に覆われる。すなわち、壁部204は、載置領域BSに載置されたバッテリーモジュール50とクロス18との間に位置する。なお、図示は省略するが、フロントフレーム14の後面およびリアフレーム15の前面も、壁部204により覆われてもよい。
【0075】
このような構成によれば、バッテリーモジュール50と、クロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15との間で、空気層を介して交換される熱量を少なくできる。すなわち、このような壁部204が設けられない構成であると、外気温の上昇などによってクロス18の温度が上昇した場合、クロス18の熱が空気層を介してバッテリーモジュール50に伝達され、その結果バッテリーモジュール50の温度が上昇するおそれがある。
【0076】
これに対して、第二実施形態によれば、クロス18の前面および後面が、クロス18よりも熱伝導率が低い材料により形成される壁部204により覆われる。このため、クロス18の温度が上昇した場合であっても、壁部204の外表面(バッテリーモジュール50に対向する側の面)の温度上昇が抑制される。したがって、クロス18との間で空気層を介して交換される熱量を少なくできるから、調温流体によるバッテリーモジュール50の温度調節の効果が低下することを防止または抑制できる。
【0077】
また、フロントフレーム14とその直後に位置する載置領域BSに載置されたバッテリーモジュール50との間に壁部204が設けられる構成であると、フロントフレーム14から当該バッテリーモジュール50に伝達される熱量を少なくできる。同様に、リアフレーム15とその直前に位置する載置領域BSに載置されたバッテリーモジュール50との間に壁部204が設けられる構成であると、リアフレーム15から当該バッテリーモジュール50に伝達される熱量を少なくできる。
【0078】
また、ヒートシンク19は、ヒートシンク支持部材20cにより、クロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15に直接接触しない状態で支持される。このため、第二実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果も奏することができる。
【0079】
なお、ヒートシンク支持部材20cの壁部204は、クロス18の上面を覆う部分を備えなくてもよい。たとえば、ヒートシンク支持部材20cが、左右方向に直角な面で切断した断面が略U字状の形状を有していてもよい。この場合、U字の底部に対応する部分にヒートシンク収容部201が設けられ、U字の2本の縦線に相当する部分が壁部204を形成する。そして、バッテリーケース10は複数のヒートシンク支持部材20cを備え、各ヒートシンク支持部材20cが、隣り合うクロス18どうしの間、フロントフレーム14と最も前側に位置するクロス18との間、リアフレーム15と最も後側に位置するクロス18との間、のそれぞれに配置される。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。
【0081】
例えば、前記各実施形態では、各ヒートシンク19は、クロス18、フロントフレーム14、およびリアフレーム15に接触していない構成を示したが、完全に離間していなくてもよく、一部が接触していてもよい。また、各ヒートシンク19は、左右のサイドフレーム16の間に配置された状態で、左右のサイドフレーム16に接触してもよい。ただし、ヒートシンク19と左右のサイドフレーム16との間で交換される熱量を少なくするため、各ヒートシンク19は左右のサイドフレーム16から離間することが好ましい。
【0082】
また、調温経路193の構成は前記実施形態に記載の構成に限定されない。要は、調温経路193は、各載置領域BSに上下方向に重畳する位置(上下方向視において各載置領域BSの内側の位置)に設けられる部分を有しており、調温流体が当該部分を流通することで、載置領域BSに載置されるバッテリーモジュール50と調温流体との間で熱交換できるように構成されていればよい。
【0083】
また、フロントフレーム14、リアフレーム15、サイドフレーム16の寸法および形状は、前記実施形態に限定されるものではない。また、載置領域BS、クロス18、ロアフレーム13の数も限定されるものではない。また、ロアパネル11、ヒートシンク19、フロントフレーム14、リアフレーム15、サイドフレーム16、クロス18、ロアフレーム13およびシェアパネル12の材質も、アルミニウム合金に限定されるものではない。これらの各部材には、各種金属材料が適用できる。
【0084】
また、バッテリーケース10が、フロントフレーム14、リアフレーム15および左右のサイドフレーム16からなる枠体17の開口部の上側を覆う蓋部材を有していてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…車両用のバッテリーケース、11…ロアパネル、12…シェアパネル、17…枠体、18…クロス、19…ヒートシンク、20a…ヒートシンク支持部材、181…クロスの取付部