(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158816
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】変位計測用の計測方法、演算装置、プログラムおよび計測システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068827
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】松原 智樹
(57)【要約】
【課題】ノンプリズム形式でのトータルステーションAを用いた変位計測においても、定点計測による変位量の算出を実現可能な方法等を提供すること。
【解決手段】ノンプリズム式の測量機能を有する測量部10と接続する演算装置Bを用い、測定対象物の計画計測点において、三軸座標(X軸,Y軸,Z軸)のうち一軸(Z軸)上の変位量を計測する方法等であって、変位発生後に、計画計測点を指す照射角での測量結果から実計測点の座標値(X
n,Y
n,Z
n)を求め、このうち、X軸上およびY軸上の座標が、計画計測点におけるX軸上およびY軸上の座標から基準値以内である否かを判定し、否の場合に仮想座標値(X
0,Y
0,Z
n)と、測量部10の座標値に基づいて、測量部10によるレーザー光A1の照射角を計算し、判定結果が正となるまで、実計測点の座標値取得、判定、照射角を繰り返す。判定結果が正の場合には、実計測点のZ軸の座標値(Z
n)と、計画計測点のZ軸の座標値(Z
0)との差分を、Z軸上の変位量とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンプリズム式の測量機能を有する測量部と接続する演算装置を用い、測定対象物の計画計測点において、三軸座標(X軸,Y軸,Z軸)のうち一軸(Z軸)上の変位量を計測する方法であって、
(a)前記計画計測点の座標値(X0,Y0,Z0)を指すように、前記測量部によるレーザー光の照射角を設定するステップと、
(b)前記(a)に係る前記照射角または後述する(d1)に係る調整後の照射角による測量結果から、実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)を求めるステップと、
(c)前記(Xn)と前記(X0)との差分、および/または、前記(Yn)と前記(Y0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの正否を判定するステップと、
(d1)前記判定結果が否の場合には、前記実計測点の座標値(Xn、Yn、Zn)のうちZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点の座標のうちX軸およびY軸の座標値(X0,Y0)とを組み合わせてなる、仮想座標値(X0,Y0,Zn)と、前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算し、前記(b)へ戻るステップと、
(d2)前記判定結果が正の場合には、前記実計測点のZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点のZ軸の座標値(Z0)との差分を、Z軸上の変位量とするステップと、
を実行することを特徴とする、計測方法。
【請求項2】
前記(a)および/または(d1)において、
前記測量部の座標値を再計測し、再計測後の前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算することを特徴とする、
請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
ノンプリズム式の測量機能を少なくとも有する測量部と接続し、測定対象物における三軸座標(X軸,Y軸,Z軸)のうち一軸(Z軸)上の変位量を計測するための演算装置であって、
判定部、照射角調整部および変位算出部と、を少なくとも具備し、
前記判定部は、前記測量部の座標値と前記計画計測点の座標値(X0,Y0,Z0)とから求めた前記レーザー光の照射角、または前記照射角調整部による調整後の前記レーザー光の照射角、の何れかを用いて行った前記測量部の測量結果から、実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)を求め、前記(Xn)と前記(X0)との差分、および前記(Yn)と前記(Y0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの正否を判定する機能を有し、
前記照射角調整部は、前記判定部における判定結果が否の場合に、前記実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)のうちZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点の座標のうちX軸およびY軸の座標値(X0,Y0)とを組み合わせてなる仮想座標値(X0,Y0,Zn)と、前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算する機能を有し、
前記変位算出部は、前記判定部における判定結果が正の場合に、前記実計測点のZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点のZ軸の座標値(Z0)との差分を、Z軸上の変位量とする機能を有する、
ことを特徴とする、演算装置。
【請求項4】
ノンプリズム式の測量機能を少なくとも有する測量部と接続する演算装置にインストールして、測定対象物における三軸座標(X軸,Y軸,Z軸)のうち一軸(Z軸)上の変位量を計測するプログラムであって、
少なくとも、判定部、照射角調整部および変位算出部として機能するプログラムであり、
前記判定部は、前記測量部の座標値と前記計画計測点の座標値(X0,Y0,Z0)とから求めた前記レーザー光の照射角、または前記照射角調整部による調整後の前記レーザー光の照射角、の何れかを用いて行った前記測量部の測量結果から、実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)を求め、前記(Xn)と前記(X0)との差分、および前記(Yn)と前記(Y0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの正否を判定する機能を有し、
前記照射角調整部は、前記判定部における判定結果が否の場合に、前記実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)のうちZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点の座標のうちX軸およびY軸の座標値(X0,Y0)とを組み合わせてなる仮想座標値(X0,Y0,Zn)と、前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算する機能を有し、
前記変位算出部は、前記判定部における判定結果が正の場合に、前記実計測点のZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点のZ軸の座標値(Z0)との差分を、Z軸上の変位量とする機能を有する、
ことを特徴とする、プログラム。
【請求項5】
測定対象の計画計測点において、三軸座標(X軸,Y軸,Z軸)のうち一軸(Z軸)上の変位量を計測するための、計測システムであって、
測量部、判定部、照射角調整部および変位算出部と、を少なくとも具備し、
前記測量部は、任意の照射角でレーザー光を照射可能な、ノンプリズム式の測量機能を少なくとも有し、
前記判定部は、前記測量部の座標値と前記計画計測点の座標値(X0,Y0,Z0)とから求めた前記レーザー光の照射角、または前記照射角調整部による調整後の前記レーザー光の照射角、の何れかを用いて行った前記測量部の測量結果から、実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)を求め、前記(Xn)と前記(X0)との差分、および前記(Yn)と前記(Y0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの正否を判定する機能を有し、
前記照射角調整部は、前記判定部における判定結果が否の場合に、前記実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)のうちZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点の座標のうちX軸およびY軸の座標値(X0,Y0)とを組み合わせてなる仮想座標値(X0,Y0,Zn)と、前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算する機能を有し、
前記変位算出部は、前記判定部における判定結果が正の場合に、前記実計測点のZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点のZ軸の座標値(Z0)との差分を、Z軸上の変位量とする機能を有する、
ことを特徴とする、計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の計画計測点において、三軸座標のうち一軸上の変位量を計測するための、計測方法、演算装置、プログラムおよび計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリズムなどのターゲットを使用しない、ノンプリズム式のトータルステーションを用いた計測手法が開発されている。
ノンプリズム式のトータルステーションによる測定は、測定対称面に設置した観測点ごとに記憶または演算で求めた所定角度方向にレーザー照射部を向けて、測定レーザー光を対称面の特定位置(以下「計画計測点」ともいう。)に直接照射して、水平角度、鉛直角度、斜距離を測定し、演算装置にて座標を計算し、記憶する。
計画計測点の変位量は、次回以降の座標値Sn(Xn,Yn,Zn)から初回座標P(Xp,Yp,Zp)を差し引いた差分量ΔX、ΔY、ΔZで表される。
例えば、X軸およびY軸を平面二軸方向、Z軸を平面高さ方向と想定したとき、路面や床面の変位量はΔZで表され、壁面の変位量はΔXまたはΔYで表されることになる。
【0003】
また、レーザー測距装置を用いた変位計測方法として、以下の特許文献に記載の技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3909294号公報
【特許文献2】特許第5308930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、プリズムターゲットを用いた計測の場合、トータルステーションがプリズムロックして計測を行うため、路面の変位があってもプリズムにロックし、定点観測を行うことができる。
一方、上記した各特許文献でも使用されるノンプリズム式のトータルステーションを用いた計測では、観測点を固定することができないため、
図6に示すように、路面自体が変位すると、計画計測点Pの初期座標(X
p,Y
p,Z
p)を指すように設定したトータルステーションaのレーザー光a1の照射角(H
0,V
0)によって測量を行うと、この照射線上にある箇所(実計測点S)の座標値(X
n,Y
n,Z
n)を計測することになり、当初の計画計測点Pと実計測点Sとが定点とならず、その結果、定点での変位計測を正確に行うことができない、という問題があった。
この問題は、路面自体の変位量が大きくなると、より顕著な問題として表れる結果となる。
【0006】
よって、本願発明は、ノンプリズム式のトータルステーションを用いた変位計測においても、定点計測による変位量の算出を実現可能な手段を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、ノンプリズム式の測量機能を有する測量部と接続する演算装置を用い、測定対象物の計画計測点において、三軸座標(X軸,Y軸,Z軸)のうち一軸(Z軸)上の変位量を計測する方法であって、(a)前記計画計測点の座標値(X0,Y0,Z0)を指すように、前記測量部によるレーザー光の照射角を設定するステップと、(b)前記(a)に係る前記照射角または後述する(d1)に係る調整後の照射角による測量結果から、実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)を求めるステップと、(c)前記(Xn)と前記(X0)との差分、および/または、前記(Yn)と前記(Y0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの正否を判定するステップと、(d1)前記判定結果が否の場合には、前記実計測点の座標値(Xn、Yn、Zn)のうちZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点の座標のうちX軸およびY軸の座標値(X0,Y0)とを組み合わせてなる、仮想座標値(X0,Y0,Zn)と、前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算し、前記(b)へ戻るステップと、(d2)前記判定結果が正の場合には、前記実計測点のZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点のZ軸の座標値(Z0)との差分を、Z軸上の変位量とするステップと、を実行することを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明における前記(a)および/または(d1)において、前記測量部の座標値を再計測し、再計測後の前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算することを特徴とする。
また、本願の第3発明は、ノンプリズム式の測量機能を少なくとも有する測量部と接続し、測定対象物における三軸座標(X軸,Y軸,Z軸)のうち一軸(Z軸)上の変位量を計測するための演算装置であって、判定部、照射角調整部および変位算出部と、を少なくとも具備し、前記判定部は、前記測量部の座標値と前記計画計測点の座標値(X0,Y0,Z0)とから求めた前記レーザー光の照射角、または前記照射角調整部による調整後の前記レーザー光の照射角、の何れかを用いて行った前記測量部の測量結果から、実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)を求め、前記(Xn)と前記(X0)との差分、および前記(Yn)と前記(Y0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの正否を判定する機能を有し、前記照射角調整部は、前記判定部における判定結果が否の場合に、前記実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)のうちZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点の座標のうちX軸およびY軸の座標値(X0,Y0)とを組み合わせてなる仮想座標値(X0,Y0,Zn)と、前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算する機能を有し、前記変位算出部は、前記判定部における判定結果が正の場合に、前記実計測点のZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点のZ軸の座標値(Z0)との差分を、Z軸上の変位量とする機能を有することを特徴とする。
また、本願の第4発明は、ノンプリズム式の測量機能を少なくとも有する測量部と接続する演算装置にインストールして、測定対象物における三軸座標(X軸,Y軸,Z軸)のうち一軸(Z軸)上の変位量を計測するプログラムであって、少なくとも、判定部、照射角調整部および変位算出部として機能するプログラムであり、前記判定部は、前記測量部の座標値と前記計画計測点の座標値(X0,Y0,Z0)とから求めた前記レーザー光の照射角、または前記照射角調整部による調整後の前記レーザー光の照射角、の何れかを用いて行った前記測量部の測量結果から、実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)を求め、前記(Xn)と前記(X0)との差分、および前記(Yn)と前記(Y0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの正否を判定する機能を有し、前記照射角調整部は、前記判定部における判定結果が否の場合に、前記実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)のうちZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点の座標のうちX軸およびY軸の座標値(X0,Y0)とを組み合わせてなる仮想座標値(X0,Y0,Zn)と、前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算する機能を有し、前記変位算出部は、前記判定部における判定結果が正の場合に、前記実計測点のZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点のZ軸の座標値(Z0)との差分を、Z軸上の変位量とする機能を有することを特徴とする。
また、本願の第5発明は、測定対象の計画計測点において、三軸座標(X軸,Y軸,Z軸)のうち一軸(Z軸)上の変位量を計測するための、計測システムであって、測量部、判定部、照射角調整部および変位算出部と、を少なくとも具備し、前記測量部は、任意の照射角でレーザー光を照射可能な、ノンプリズム式の測量機能を少なくとも有し、前記判定部は、前記測量部の座標値と前記計画計測点の座標値(X0,Y0,Z0)とから求めた前記レーザー光の照射角、または前記照射角調整部による調整後の前記レーザー光の照射角、の何れかを用いて行った前記測量部の測量結果から、実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)を求め、前記(Xn)と前記(X0)との差分、および前記(Yn)と前記(Y0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの正否を判定する機能を有し、前記照射角調整部は、前記判定部における判定結果が否の場合に、前記実計測点の座標値(Xn,Yn,Zn)のうちZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点の座標のうちX軸およびY軸の座標値(X0,Y0)とを組み合わせてなる仮想座標値(X0,Y0,Zn)と、前記測量部の座標値に基づいて、前記測量部によるレーザー光の照射角を計算する機能を有し、前記変位算出部は、前記判定部における判定結果が正の場合に、前記実計測点のZ軸の座標値(Zn)と、前記計画計測点のZ軸の座標値(Z0)との差分を、Z軸上の変位量とする機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)ノンプリズム形式でのトータルステーションを用いた変位計測においても、定点計測による変位量の算出を実現することができる。
(2)レーザー光の照射角について、再計測した測量部の座標値に基づいて新たな値を再計算することで、より精度の高い定点計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る計測システムの構成例を示すイメージ図。
【
図4】仮想座標値の設定と照射角の調整時のイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の詳細について説明する。
【実施例0011】
<1>全体構成(
図1)
図1に、本発明に係る計測システムの構成例を示す。
本発明に係る計測システムは、計画計測点を有する計測対象Dにおいて、三軸座標(X軸、Y軸、Z軸)のうち何れか一つの軸方向としてZ軸上の変位を検出するためのシステムである。
図1に示す構成例では、紙面左右方向をX軸、紙面前後方向をY軸、紙面上下方向をZ軸とし、計画計測点のZ軸状の変位を検出することを目的とする。
【0012】
本発明に係る計測システムは、測量部10、判定部20、照射角調整部30および変位算出部40と、を少なくとも具備して構成する。
各部は、ハードウェアおよびソフトウェアを任意に組み合わせて実現することができるほか、各部を個別の装置として構成、あるいは複数の各部を一つの装置に組み込んで一体化した構成とすることもできる。
図1に示す構成例では、架台Cの上部に設けたトータルステーションAを測量部10とし、このトータルステーションAとの間で情報の送受信を可能とする情報処理端末(PC,タブレット、スマートフォンなど)にインストールしたプログラムによって、この情報処理端末を、判定部20、照射角調整部30および変位算出部40として機能可能な演算装置Bとして構成している。
以下、各部の詳細ならびに演算手順の詳細について説明する。
【0013】
<2>測量部(
図1)
測量部10は、測定対象物に対する測量機能を有する。
測量部10は、計測点の座標を求める為に必要な情報を取得可能な任意の測量装置を用いることができる。
本実施例では、測量部10としてノンプリズム式の測量機能を有するトータルステーションAを使用している。
ノンプリズム式のトータルステーションAでは、計測点にプリズムなどのターゲットを設けずに、計測点に照射し、反射されたレーザー光A1を受光することで、当該測量部10から計測点までの離隔長を求めることができる。
測量実行時に設定されるレーザー光A1の照射角(水平角度:H,鉛直角度:V)は、ユーザによって任意の値を与えてもよいし、測量部10による機能によって求めても良い。
測量部10による測量結果は、判定部20に送られて、計測点の座標値の算出に使用される。
【0014】
<3>判定部(
図1,
図3)
判定部20は、変位発生後の計測対象Dに対し測量部10によって得た実計測点の座標値と、計画計測点の座標値と、を対比して、変位量の算出に進むか否かを判定する機能を有する。
より詳細には、判定部20は以下の動作を行う。
【0015】
<3.1>実計測点の座標値の算出(
図3)
まず、測量部10で設定されたレーザー光A1の照射角に基づく測量結果によって、実計測点の座標値(X
n,Y
n,Z
n)(n=1,2,・・・)を求める。
測量部10で設定されるレーザー光A1の照射角は、変位発生後の初回は、測量部10の座標値(X
ts,Y
ts,Z
ts)または再計測した測量部10の座標値(X
ts’,Y
ts’,Z
ts’)と、計画計測点の座標値(X
0,Y
0,Z
0)とから求めた照射角を用いる。
また、二回目以降は、後述する照射角調整部30によって調整された照射角を用いる。
【0016】
<3.2>実計測点と、計画計測点との座標値の対比(
図3)
実計測点の座標値(X
n,Y
n,Z
n)と、計画計測点の座標値(X
0,Y
0,Z
0)とを対比し、(X
n)と(X
0)との差分、および(Y
n)と(Y
0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの正否を判定する。
この判定部20による判定結果に応じて、後述する変位量算出部の処理に進むか、或いは照射角調整部30の処理に進むか、の何れかが選択されることになる。
【0017】
<4>照射角調整部(
図1,
図4)
照射角調整部30は、判定部20による判定結果に応じて、測量部10による次回の測量で使用する照射角の計算を行うための機能を有する。
より詳細には、照射角調整部30は、判定部20における判定結果が否の場合に、以下の動作を行う。
【0018】
<4.1>仮想座標値の設定(
図4)
実計測点の座標値(X
n,Y
n,Z
n)のうちZ軸の座標値(Z
n)と、計画計測点の座標のうちX軸およびY軸の座標値(X
0,Y
0)とを組み合わせてなる仮想座標値(X
0,Y
0,Z
n)を設定する。
【0019】
<4.2>次回測量時の照射角の調整
前記<4.1>で設定した仮想座標値(X0,Y0,Zn)と、前回の測量時に用いた測量部10の座標値(Xts,Yts,Zts)または再計測した測量部10の座標値(Xts’,Yts’,Zts’)と、に基づいて、測量部10による次回の測量に用いるレーザー光A1の照射角(H,V)を調整する。
さらに具体的には、次回の測量時のレーザー光A1の照射位置が、前記仮想座標値(X0,Y0,Zn)を指すように、レーザー光A1の照射角(H,V)を計算する。(H0,V0→H1,V1)
【0020】
なお、前記(4.2)における、照射角の計算に際し、予め求めてある測量部10の座標値(Xts,Yts,Zts)を用いるか、または、新たに再計測した測量部10の座標値(Xts’,Yts’,Zts’)を用いるかは、適宜選択することができる。計測精度の向上の観点からは、新たに再計測した測量部10の座標値(Xts’,Yts’,Zts’)を用いることが好ましい。
ただし、本発明において、新旧の測量部10の座標値の差分が僅かな場合には、変位発生後に再計測した測量部10の座標値(Xts’,Yts’,Zts’)をあえて使用せずに、引き続き変位発生前の測量部10の座標値(Xts,Yts,Zts)を使用してもよい。
【0021】
<5>変位算出部(
図1,
図5)
変位算出部40は、変位発生後の計画計測点におけるZ軸上の変位量を算出する機能を有する装置または手段である。
より詳細には、変位算出部40は、判定部20における判定結果が正の場合に、実計測点のZ軸の座標値(Z
n)と、計画計測点のZ軸の座標値(Z
0)との差分を、Z軸上の変位量とするよう動作する。
【0022】
<6>計測手順
次に、
図2~
図5を参照しながら、Z軸上の変位量の算出手順について説明する。
【0023】
<6.1>変位発生前の初期計測(
図2)
始めに、変位範囲発生前の初期計測作業について説明する。
まず、測量部10の座標値K(X
ts,Y
ts,Z
ts)と、計画計測点Pの座標値P
0(X
0,Y
0,Z
0)を特定する。
測量部10の座標値K(X
ts,Y
ts,Z
ts)は、測量部10の後方に配置した基準点2点(図示せず)に基づく後方交会によって求めることができる。
計画計測点Pの座標値P
0(X
0,Y
0,Z
0)は、異なる測量装置を用いて予め求めた値や、測量部10の座標値K(X
ts,Y
ts,Z
ts)と当該測量部10による測量結果(レーザー光A1の照射角(水平角度:H
0、鉛直角度:V
0)、離隔長)に基づいて求めた値から適宜選択することができる。
【0024】
<6.2>変位発生後の計測作業(
図3)
次に、変位発生後の計測作業について説明する。
変位発生後の計測作業において設定するレーザー光A1の照射角(H
1,V
1)は、以下の方法から適宜選択することができる。
(方法1)変位発生前の照射角(H
0,V
0)を、そのまま用いる方法。
(方法2)新たに再計測した測量部10の座標値(X
ts’,Y
ts’,Z
ts’)と、次回計測予定の座標値(X
0,Y
0,Z
0)に基づいて、再計算した照射角(H
0’,V
0’)を用いる方法
(方法3)再計測前後の測量部10の座標値(X
ts,Y
ts,Z
ts)(X
ts’,Y
ts’,Z
ts’)の差分の度合いに応じて、方法1,2を切り換える方法。’
なお、
図3では、計測対象の変位発生前後において、測量部10の座標値が変化していない場合を想定し、方法1を採用している。
【0025】
計画計測点Pの座標値P0(X0,Y0,Z0)を指すように設定された照射角(水平角度:H1,鉛直角度:V1)で、レーザー光A1を照射すると、変位発生後の計測対象では、計画計測点Pと異なる箇所(実計測点S)を測量することとなる。
演算装置Bは、測量部10の座標値K(Xts,Yts,Zts)または再計測した測量部10の座標値K’(Xts’,Yts’,Zts’)と、測量結果から、実計測点Sの座標値S1(X1,Y1,Z1)を求めることができる。
【0026】
<6.3>実計測点と計画計測点との対比(
図3)
演算装置Bでは、実計測点Sの座標値S
1(X
1,Y
1,Z
1)と、計画計測点Pの座標値P
0(X
0,Y
0,Z
0)とを対比し、前記(X
1)と前記(X
0)との差分、および、前記(Y
1)と前記(Y
0)との差分が、それぞれ基準値以内であるか否かの成否を判定する。
判定結果が否の場合には、実計測点Sの座標値S
1(X
1,Y
1,Z
1)のうちZ軸の座標値(Z
1)と、計画計測点Pの座標値P
0のうち、X軸およびY軸の座標値(X
0,Y
0)とを組み合わせてなる、仮想点Rの座標値(仮想座標値)R
1(X
0,Y
0,Z
1)を設定する。
演算装置Bは、この仮想座標値R
1(X
0,Y
0,Z
1)と、測量部10の座標値K(X
ts,Y
ts,Z
ts)とから、当該測量部10から仮想座標値R
1に向けた照射角(水平角度:H
2、鉛直角度:V
2)を求める。
測量部10の座標値K(X
ts,Y
ts,Z
ts)は、前記<6.2>に係る測量部10の座標値をそのまま用いても良いし、新たに後方交会等によって再計測した座標値K’(X
ts’,Y
ts’,Z
ts’)を用いても良い。
【0027】
<6.4>仮想座標値への照射(
図4)
仮想座標値R
1(X
0,Y
0,Z
1)を指すように設定した照射角(水平角度:H
2、鉛直角度:V
2)からなる照射角で測量作業を行うと、再度、実計測点Sを測量することとなる。
演算装置Bは、測量部10の座標値(X
ts,Y
ts,Z
ts)または(X
ts’,Y
ts’,Z
ts’)と、測量結果から、実計測点Sの座標値S
2(X
2,Y
2,Z
2)を求めることができる。
そして、演算装置Bは、実計測点Sの座標値S
2(X
2,Y
2,Z
2)と、計画計測点Pの座標値P
0(X
0,Y
0,Z
n)との対比判定を行い、判定結果が否の場合には、新たに仮想座標値R
2(X
0,Y
0,Z
2)を設定し、仮想座標値R
2(X
0,Y
0,Z
2)と、測量部10の座標値K(X
ts,Y
ts,Z
ts)または再計測した座標値K’(X
ts’,Y
ts’,Z
ts’)から、当該測量部10から、前記仮想座標値R
2(X
0,Y
0,Z
2)である仮想点Rを指すように設定した照射角(水平角度:H
3、鉛直角度:V
3)を求め、再測量を行う。
【0028】
<6.5>変位量の算出(
図5)
このように、(1)設定した照射角による実計測点の測量、(2)実計測点と計画計測点との座標値の対比判定、(3)仮想座標値の設定、および(4)照射角の再設定、を演算装置Bによる判定結果が正となるまで順に繰り返すと、いずれ、仮想点Rの座標値(仮想座標値)R
n(X
n,Y
n)は、計画計測点Pの座標値P
0(X
0,Y
0)に収束していくこととなる。
図5に示すように、仮想座標値R
3(X
3,Y
3,Z
3)と計画計測点(X
0,Y
0,Z
0)との対比で、判定結果が正の場合には、演算装置Bは、(Z
3)と(Z
0)との差分を、Z軸上の変位量として算出する。