(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158817
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】鋼板加工装置および鋼板加工装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/364 20140101AFI20231024BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20231024BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20231024BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20231024BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B23K26/364
B23K26/70
B23K26/082
B23K26/08 F
B23K26/03
C21D8/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068828
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】濱村 秀行
【テーマコード(参考)】
4E168
4K033
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168CA13
4E168CB03
4E168CB04
4E168CB07
4E168EA15
4E168EA16
4E168JA02
4E168KA16
4K033AA02
4K033PA08
4K033RA04
4K033TA06
4K033UA04
(57)【要約】
【課題】磁区制御プロセスにおける加工処理能力の低下を抑制する鋼板加工装置を提供する。
【解決手段】鋼板加工装置1は、レーザビームを鋼板3に対して照射し、鋼板3の板幅方向と平行又は略平行な方向に沿って走査するレーザ照射部11と、鋼板3の蛇行に対応する鋼板3の板幅方向の変動量を検出する変動量センサ14と、変動量センサ14で検出した変動量の検出結果を取得するコントローラ15と、レーザビームの照射範囲を調整する照射範囲調整部16と、を備える。コンロトーラ15は、変動量センサ14で検出した変動量に基づいて照射範囲調整部16を制御し、レーザビームの鋼板3の板幅方向の照射範囲が鋼板3の板幅と一致するように、レーザビームの照射範囲を変化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されている鋼板の表面に、レーザビームを用いて溝部又は歪部を形成する鋼板加工装置であって、
前記レーザビームを前記鋼板に対して照射し、前記鋼板の板幅方向と平行又は略平行な方向に沿って走査するレーザ照射部と、
前記鋼板の蛇行に対応する前記鋼板の板幅方向の変動量を検出する変動量センサと、
前記変動量センサで検出した前記変動量の検出結果を取得するコントローラと、
前記レーザビームの照射範囲を調整する照射範囲調整部と、
を備え、
前記コントローラは、
前記変動量センサで検出した前記変動量に基づいて前記照射範囲調整部を制御し、前記レーザビームの前記鋼板の板幅方向の照射範囲が前記鋼板の板幅と一致するように、前記レーザビームの照射範囲を変化させる、鋼板加工装置。
【請求項2】
前記照射範囲調整部は、
前記鋼板の板幅方向において、前記レーザ照射部から前記鋼板の両端部よりも外側への前記レーザビームの照射を遮る遮光板と、
前記遮光板を前記鋼板の板幅方向に移動させるアクチュエータと、
を備え、
前記コントローラは、
前記変動量センサで検出した前記変動量に基づいて前記アクチュエータを制御し、前記レーザビームの前記鋼板の板幅方向の照射範囲が前記鋼板の板幅と一致するように、前記遮光板を移動させる、請求項1に記載の鋼板加工装置。
【請求項3】
前記照射範囲調整部は、
前記レーザ照射部を前記鋼板の板幅方向に移動させるアクチュエータを備え、
前記コントローラは、
前記変動量センサで検出した前記変動量に基づいて前記アクチュエータを制御し、前記レーザビームの前記鋼板の板幅方向の照射範囲が前記鋼板の板幅と一致するように、前記レーザ照射部を移動させる、請求項1に記載の鋼板加工装置。
【請求項4】
前記照射範囲調整部は、
前記レーザビームの照射方向を変化させて、前記レーザビームの照射範囲を板幅方向に調整し、
前記コントローラは、
前記変動量センサにより検出された前記変動量に基づいて前記照射範囲調整部を制御し、前記レーザビームの前記鋼板の板幅方向の照射範囲が前記鋼板の板幅と一致するように、前記レーザビームの照射方向を板幅方向に変化させる、請求項1に記載の鋼板加工装置。
【請求項5】
前記レーザ照射部は、
複数の反射平面を有するポリゴンミラーを回転させることにより前記レーザビームが反射する方向を連続的に変化させて、前記レーザビームを前記鋼板の板幅方向と平行又は略平行な方向に沿って走査し、
前記照射範囲調整部は、
回転する前記ポリゴンミラーに対して前記レーザビームが入射する方向を変化させることにより、前記鋼板における前記レーザビームの照射範囲を前記鋼板の板幅方向に変化させる、請求項4に記載の鋼板加工装置。
【請求項6】
前記レーザ照射部は、
ガルバノミラーを所定の角度幅で往復回転させることにより前記レーザビームが反射する方向を連続的に変化させて、前記レーザビームを前記鋼板の板幅方向と平行又は略平行な方向に沿って走査し、
前記照射範囲調整部は、
前記ガルバノミラーの往復回転の中心角度を変化させることにより、前記鋼板における前記レーザビームの照射範囲を板幅方向に変化させる、請求項4に記載の鋼板加工装置。
【請求項7】
搬送されている鋼板の表面に、レーザビームを用いて溝部又は歪部を形成する鋼板加工装置の制御方法であって、
前記レーザビームを前記鋼板に対して照射するレーザ照射部と、
前記鋼板の蛇行に対応する前記鋼板の板幅方向の変動量を検出する変動量センサと、
前記変動量センサで検出した前記変動量検出結果を取得するコントローラと、
前記レーザビームの照射範囲を調整する照射範囲調整部と、
を備えた鋼板加工装置を用い、
前記コントローラによって、前記変動量センサで検出した前記変動量に基づいて前記照射範囲調整部を制御し、前記レーザビームの前記鋼板の板幅方向の照射範囲が前記鋼板と一致するように、前記レーザビームの照射範囲を変化させる変化ステップを有する、鋼板加工装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板加工装置および鋼板加工装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスの鉄芯に供されて、電力損失の改善に寄与する電磁鋼板が知られている。このような電磁鋼板の製造過程において、鋼板を高速で通板しながら、レーザビームを鋼板の表面に集光されるように照射し、鋼板の表面を走査することで、線状の歪みや溝を一定間隔で形成し(加工処理し)、鉄損を低減する、いわゆる磁区制御プロセスが知られている。詳細には、磁区制御プロセスにおいては、例えば、帯状の鋼板を長手方向に連続的に搬送している間に、板幅方向にレーザビームを照射し走査することで、鋼板に溝や歪が形成される。
【0003】
ここで、鋼板を連続的に搬送するために鋼板は支持ロールで支えられており、かつ、鋼板を平坦に維持するために、鋼板には長手方向に一定の張力が付与されている。しかし、鋼板を搬送している間に、板幅方向に変動する、いわゆる蛇行が生じることがある。蛇行が発生すると、磁区制御プロセスを経た後に、帯状の鋼板をコイル状に巻き取れなくなるおそれがある。また、板幅方向の変動量が大きくなると、鋼板が周辺機器に衝突してしまうおそれがある。そこで、鋼板の蛇行に対応する板幅方向の変動を検知して蛇行を抑制するステアリングロールによる蛇行制御が行われている。
【0004】
特許文献1に開示された技術によれば、蛇行を抑制するステアリングロールにより搬送中の鋼板の板幅方向の変動の抑制を図りつつ、さらに、変動量が所定値以上となる場合にはレーザビームの照射を停止して磁区制御を中止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の技術においては、搬送中の鋼板の板幅方向の変動量が一定以上に大きくなった場合にレーザビームの照射を停止してしまうため、磁区制御の加工処理能力が低下するおそれがあるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、鋼板が蛇行してもレーザビームの照射を停止せず、磁区制御プロセスにおける加工処理能力の低下を抑制する鋼板加工装置および鋼板加工装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の一態様の鋼板加工装置は、搬送されている鋼板の表面に、レーザビームを用いて溝部又は歪部を形成する鋼板加工装置であって、前記レーザビームを前記鋼板に対して照射し、前記鋼板の板幅方向と平行又は略平行な方向に沿って走査するレーザ照射部と、前記鋼板の蛇行に対応する前記鋼板の板幅方向の変動量を検出する変動量センサと、前記変動量センサで検出した前記変動量の検出結果を取得するコントローラと、前記レーザビームの照射範囲を調整する照射範囲調整部と、を備え、前記コントローラは、前記変動量センサで検出した前記変動量に基づいて前記照射範囲調整部を制御し、前記レーザビームの前記鋼板の板幅方向の照射範囲が前記鋼板の板幅と一致するように、前記レーザビームの照射範囲を変化させる。
【0009】
本願発明の一態様の鋼板加工装置の制御方法は、搬送されている鋼板の表面に溝部又は歪部を形成するために、前記鋼板に向かってレーザビームを照射するレーザ照射部と、前記鋼板の蛇行に対応する前記鋼板の板幅方向の変動量を検出する変動量センサと、前記変動量センサで検出した前記変動量検出結果を取得するコントローラと、前記レーザビームの照射範囲を調整する照射範囲調整部と、を備えた鋼板加工装置を用い、前記コントローラによって、前記変動量センサで検出した前記変動量に基づいて前記照射範囲調整部を制御し、前記レーザビームの前記鋼板の板幅方向の照射範囲が前記鋼板と一致するように、前記レーザビームの照射範囲を変化させる変化ステップを有する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の一態様の鋼板加工装置によれば、鋼板の板幅方向において、変動量センサにより検出された鋼板の蛇行に対応する変動量に基づいて照射範囲調整部を制御し、レーザビームの板幅方向の照射範囲を鋼板の板幅と一致するようにレーザビームの照射範囲を変化させる。そのため、搬送中に蛇行等の板幅方向の変動が生じた場合であっても、レーザビームの板幅方向の照射範囲が鋼板の端部から側方に外れることで意図しない部材にレーザビームを照射してしまうおそれや、鋼板に未加工領域が残るおそれを低減するとともに、鋼板の蛇行が生じてもレーザビームの照射を継続するため磁区制御の加工処理能力の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態における鋼板加工装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態における鋼板加工装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態における鋼板加工装置の概略構成図である。
【
図4】
図4は、第4実施形態における鋼板加工装置の概略構成図である。
【
図5】
図5は、レーザ照射装置の詳細な構成図の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、レーザ照射装置の詳細な構成図の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における鋼板加工装置の構成を示す図である。この図においては、
図1(A)、(B)に鋼板の正常通板時の動作が示されており、
図1(C)に鋼板が板幅方向に変動して蛇行する場合の動作が示されている。
図1(A)、(C)は、鋼板の通板方向から見た図であって、図左右方向が鋼板の板幅方向に相当する。
図1(B)は、
図1(A)のX側(鋼板の板幅方向)から見た図であって、図左右方向が鋼板の通板方向に相当する。
【0014】
図1(A)、(B)に示されるように、鋼板加工装置1は、支持ロール2上に搬送されている鋼板3の表面に溝部又は歪部を形成する装置であり、支持ロール2と、レーザ照射装置11と、変動量センサ14と、コントローラ15と、照射範囲調整部16と、を備えている。本実施形態に係る鋼板加工装置1は、レーザ照射装置11が5台並設されており、これら複数のレーザ照射装置11から支持ロール2の上を通板される鋼板3に対してレーザビームを照射する。支持ロール2は、回転軸を備えており、回転軸に沿って回転することで支持ロール2の上部表面に支持される鋼板3を通板させる。ここで、支持ロール2の回転軸は鋼板3の板幅方向に平行となるように配置されるが、支持ロール2の回転軸と鋼板3の板幅方向とが完全に一致する場合の他、支持ロール2で鋼板3を安定して通板できる誤差程度にずれた場合も含み得る。
【0015】
レーザ照射装置11のそれぞれは、支持ロール2上の鋼板3に向かってレーザビームを鋼板3に対して照射し、板幅方向と平行又は略平行な方向(即ち、鋼板3の板幅方向と交差する方向)に沿って走査する。
図1(A)、(B)においては、レーザ照射装置11から照射されるレーザビームの走査する範囲が、鋼板3の通板方向から見て下方になるほど幅が広がる台形状に示されている。5台のレーザ照射装置11によって照射されるレーザビームの走査する範囲の全幅は、鋼板3の板幅よりも広い。そのため、鋼板3の板幅方向において未加工の領域の発生が抑制される。なお、レーザ照射装置11の台数は5台に限らず、レーザビームの板幅方向の照射領域の全幅が鋼板3の板幅よりも広くなるのであれば任意の台数であってもよい。また、レーザ照射装置11は、鋼板加工装置1の一部を構成するレーザ照射部の一例である。
【0016】
鋼板加工装置1は、さらに遮光板12と、遮光板12と接続されるアクチュエータ13と、鋼板3の蛇行に対応する板幅方向の移動を検出し、その検出結果である変動量を測定する変動量センサ14と、鋼板加工装置1の全体を制御するコントローラ15とを備える。遮光板12とアクチュエータ13とは、一体となって照射範囲調整部16を構成し、鋼板3に照射されるレーザビームの照射範囲を調整する機能を実現する。
【0017】
遮光板12は、板厚方向においては鋼板3とレーザ照射装置11との間に設けられ、板幅方向においては対をなして鋼板3の側方外側から内側に向かって鋼板3の端部まで伸びるように構成され配置される部材である。遮光板12は、レーザビームを遮光可能な部材で構成され、鋼板3の板幅方向の両端部よりも外側へのレーザビームの照射を妨げる。その結果、レーザ照射装置11から照射されるレーザビームは鋼板3にのみ照射され、鋼板3以外へのレーザビームの照射を防ぐことができる。
【0018】
アクチュエータ13は、板幅方向に移動制御可能であって、遮光板12と物理的に接続されている。アクチュエータ13は、コントローラ15の制御に応じて遮光板12を鋼板3の板幅方向に移動させることができる。
【0019】
変動量センサ14は、搬送される鋼板3の蛇行に対応する板幅方向の位置の変動量を検知する。例えば、変動量センサ14は、鋼板3の端部を照明で照らし、鋼板3により遮られる照明量を光量センサで計測し、照明量の変化を計測することで鋼板3の板幅方向の変動量を検知するように構成されてもよい。他の態様として、変動量センサ14は、カメラ等により撮影された画像により鋼板3の板幅方向の変動量を検出してもよい。
図1(A)、(B)に示される正常通板時には板幅方向の変動量は略ゼロである。
図1(C)に示されるように鋼板3が蛇行して板幅方向に変動する場合には、板幅方向の変動量を変動量センサ14によって取得できる。
【0020】
コントローラ15は、変動量センサ14から、変動量センサ14で検出した鋼板3の板幅方向の変動量を受け付けると、鋼板3の変動量に対して換算処理を行い、遮光板12の板幅方向の移動量を求める。ここで求められる板幅方向の移動量は、遮光板12が板幅方向に移動された場合に、鋼板3の両端部よりも外側へのレーザビームの照射を遮光板12により遮ることが可能となる移動量である。この換算処理は、レーザ照射装置11から鋼板3までの距離と遮光板12から鋼板3までの距離の比、及び、レーザ照射装置11の走査角に基づいて行われてもよい。また、この換算処理は、コントローラ15に限らず、変動量センサ14を含む任意のデバイスで実施してもよい。
【0021】
コントローラ15は、換算処理により求められた遮光板12の移動量に基づいてアクチュエータ13を制御して、鋼板3の板幅方向に沿った変動方向と同じ方向に遮光板12を移動させる。このようにして、鋼板3の板幅とレーザ照射装置11によるレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射範囲とを一致させることができるので、鋼板3以外へのレーザビームの照射を防ぐことができる。
【0022】
その結果、
図1(C)に示されるように、鋼板3が板幅方向に蛇行して図左方に変動する場合には、アクチュエータ13を制御して、鋼板3の左方への変動量から求められた移動量だけ、鋼板3の両側方に設けられる一対の遮光板12を左方へ移動させる。なお、鋼板3が図右方に変動する場合には、コントローラ15は、鋼板3の変動量に応じた移動量だけ、遮光板12を右方へ移動させるようにアクチュエータ13を制御する。
【0023】
このようにすることで、鋼板3の位置が板幅方向に変動する場合に、照射範囲調整部16によってレーザ照射装置11から鋼板3へ照射されるレーザビームの板幅方向の照射範囲が調整されるので、鋼板3の板幅とレーザ照射装置11によるレーザビームの板幅方向の照射範囲とを一致させることができる。そのため、鋼板3の全幅においてレーザビームが照射され、鋼板3以外への照射が抑制されるので、周囲の装置の損傷を抑制するとともに鋼板3における未加工領域の発生を防止できる。さらに、この制御においては鋼板3の通板を停止させる必要がないため、磁区制御プロセスにおける加工処理能力の低下を抑制することができる。
【0024】
なお、本実施形態においては、鋼板加工装置1が、レーザ照射装置11、遮光板12、アクチュエータ13、変動量センサ14、及びコントローラ15を含む例について説明したが、鋼板加工装置1は、これらの構成以外を含んでもよい。例えば、鋼板加工装置1が支持ロール2を含み、コントローラ15によって支持ロール2の回転が制御されてもよい。
【0025】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態における鋼板加工装置の構成を示す図である。
図2(A)に鋼板3の正常通板時の動作が示されており、
図2(B)に鋼板3が板幅方向に変動して蛇行する場合の動作が示されている。
図2(A)、
図2(B)はともに鋼板3の通板方向から見た図である。
【0026】
第2実施形態においては、第1実施形態と比較して、遮光板12が削除されている。さらに、5つの並設されたレーザ照射装置11に一体的に鋼板3の板幅方向に移動可能なアクチュエータ21が取り付けられている。アクチュエータ21は、レーザ照射装置11に直接取り付けられてもよいし、フレーム等を介して取り付けられてもよい。本実施形態においては、アクチュエータ21が照射範囲調整部に相当し、鋼板3に照射されるレーザビームの板幅方向の照射範囲を調整する機能を実現する。
【0027】
コントローラ15は、変動量センサ14から鋼板3の板幅方向の変動量を取得すると、アクチュエータ21を制御して、レーザ照射装置11を移動させる。レーザ照射装置11の移動方向及び移動量は、鋼板3の変動方向及び変動量と同じである。その結果、板幅方向に変動する鋼板3の板幅とレーザ照射装置11によるレーザビームの板幅方向の照射範囲とが一致する状態が維持される。
【0028】
図2(B)に示されるように、鋼板3が板幅方向に蛇行して図左方に移動する場合には、コントローラ15がアクチュエータ21を制御することで、鋼板3の左方への変動量に基づいてレーザ照射装置11を左方へ移動させる。鋼板3が図右方に移動する場合には、鋼板3の右方への変動量に基づいてレーザ照射装置11を右方へ移動させる。
【0029】
このように構成しても、鋼板3の位置が板幅方向に変動する場合に、鋼板3の板幅とレーザ照射装置11によるレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射範囲とを一致させることができる。その結果、レーザビームの照射による周囲の装置の損傷を抑制でき、かつ、鋼板3における未加工領域の発生を防止できる。さらに、鋼板3の通板を停止させる必要がないため、磁区制御プロセスにおける加工処理能力の低下を抑制することができる。また、第1実施形態と比較すると、遮光板12を省略できるので、鋼板加工装置1の構成を簡略化できる。
【0030】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態における鋼板加工装置の構成を示す図である。
図3(A)に鋼板3の正常通板時の動作が示されており、
図3(B)に鋼板3が板幅方向に変動して蛇行する場合の動作が示されている。
図3(A)、
図3(B)はともに鋼板3の通板方向から見た図である。
【0031】
第3実施形態においては、第1実施形態と同様に、遮光板12が設けられ、鋼板3の板幅方向の両端部を超えた領域にレーザビームが照射されるのが妨げられる。板幅方向において、レーザ照射装置11からのレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射領域は、鋼板3の板幅より広く設定されている。遮光板12によって、鋼板3の両端部よりも外側へのレーザビームの照射が妨げられるので、板幅方向におけるレーザビームの照射領域と鋼板3の板幅とが一致する。
【0032】
また、第2実施形態と同様に、レーザ照射装置11はアクチュエータ21に取り付けられている。さらに、本実施形態においては、遮光板12が支柱31を介してアクチュエータ21に取り付けられている。そのため、鋼板3からレーザ照射装置11までの距離よりも、鋼板3から遮光板12までの方が短い。このような構成において、アクチュエータ21の制御に応じて、レーザ照射装置11及び遮光板12が一体となって板幅方向に移動される。遮光板12と支柱31とアクチュエータ13は、一体となって照射範囲調整部32を構成し、鋼板3に照射されるレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射範囲を調整する機能を実現する。
【0033】
コントローラ15は、変動量センサ14から鋼板3の板幅方向の変動量を取得すると、アクチュエータ21を制御して、レーザ照射装置11と遮光板12とを一体的に移動させる。レーザ照射装置11及び遮光板12の移動方向及び移動量は、アクチュエータ21の制御方向及び制御量、及び、鋼板3の変動方向及び変動量と同じである。その結果、板幅方向において、鋼板3の板幅とレーザ照射装置11によるレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射範囲とが一致する状態が維持される。
【0034】
図3(B)に示されるように、鋼板3が板幅方向に蛇行して図左方に移動する場合には、コントローラ15がアクチュエータ21を制御することで、左方への鋼板3の変動量に応じて、レーザ照射装置11及び遮光板12を左方へ移動させる。
【0035】
このように構成しても、鋼板3の位置が板幅方向に変動する場合に、板幅方向において、鋼板3の板幅とレーザ照射装置11によるレーザビームの板幅方向の照射範囲とを一致させることができる。その結果、レーザビームの照射による周囲の装置の損傷を抑制でき、かつ、鋼板3における未加工領域の発生を防止できる。さらに、鋼板3の通板を停止させる必要がないため、磁区制御プロセスにおける加工処理能力の低下を抑制することができる。
【0036】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態における鋼板加工装置の構成を示す図である。この図においては、
図4(A)に鋼板3の正常通板時の動作が示されており、
図4(B)に鋼板3が板幅方向に変動して蛇行する場合の動作が示されている。
図4(A)、
図4(B)はともに鋼板3の通板方向から見た図である。
【0037】
第4実施形態においては、アクチュエータ等は設けられておらず、レーザ照射装置11は固定されている。レーザ照射装置11は、さらに板幅方向においてレーザビームの照射方向が可変に構成されており、レーザビームの板幅方向の照射領域を移動させる機能を備える。コントローラ15は、変動量センサ14により取得される鋼板3の板幅方向の変動量に基づいて、鋼板3の板幅とレーザ照射装置11によるレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射範囲とを一致させるように、レーザ照射装置11のレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射方向を変化させて鋼板3の板幅方向の照射領域を移動させる。そのため、本実施形態においては、鋼板3に照射されるレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射範囲を調整する照射範囲調整部は、レーザ照射装置11内に設けられている。
【0038】
図5は、本実施形態のレーザ照射装置11の詳細な構成の一例を示す図である。レーザ照射装置11は、照射範囲調整部115を有したレーザ出射素子111と、ポリゴンミラーであるレーザ走査素子112aと、レーザ集光素子113とを備える。レーザ発生源(不図示)から伝送されたレーザビームは、レーザ出射素子111、レーザ走査素子112a、及び、レーザ集光素子113を介して、鋼板3に対して照射され、鋼板3の板幅方向と平行又は略平行な方向に沿って鋼板3を走査する。
【0039】
レーザ出射素子111は、レーザ照射装置11の外部に設けられるレーザ発生源からケーブルを介して伝送されたレーザビームを出力する。レーザ出射素子111は、コントローラ15からの制御信号に基づいて照射範囲調整部115によりレーザビームの出射角度や出射位置を変化可能に構成されている。
【0040】
レーザ走査素子112aは、レーザ出射素子111から出力されるレーザビームを反射して、且つ、その反射する方向を連続的に変化させることでレーザビームを走査する。この図の例においては、レーザ走査素子112aは、複数の反射平面を周辺に備えた正多角形の回転ミラーであるポリゴンミラーである。レーザ走査素子112aであるポリゴンミラーを回転させることにより、レーザビームが反射する方向を連続的に変化させることによって、鋼板3に対してレーザビームは板幅方向と平行又は略平行な方向に沿って直線状に走査する。
【0041】
レーザ集光素子113は、レーザ走査素子112aにより走査されたレーザビームを鋼板3の表面上で直線状に集光する。例えば、レーザ集光素子113は、線形放物面ミラー、fθレンズ、または、フラットフィールドレンズであってもよい。
【0042】
このように、レーザ出射素子111から出力されたレーザビームはレーザ走査素子112aに入射すると、レーザ走査素子112aのポリゴンミラー表面の平面ミラーで反射され、ポリゴンミラーの回転により反射する方向を連続的に変化させながら、鋼板3を直線状に走査する。走査されたレーザビームは、レーザ集光素子113によって鋼板3の表面上で集光するように走査される。
【0043】
ここで、レーザ集光素子113により照射されるレーザビームの鋼板3における最大走査幅をWmとして示す。また、磁区加工を行う際に1つのレーザ照射装置11から鋼板3に対して照射されるレーザビームの照射走査幅をWsとして示す。最大走査幅Wmはレーザ集光素子113の焦点距離や素子の大きさに応じて設計可能であり、最大走査幅Wmが照射走査幅Wsを含むように、レーザ照射装置11が設計される。
【0044】
レーザ照射装置11から鋼板3に対して照射されるレーザビームは、最大走査幅Wmの範囲内で照射可能である。そこで、
図5(B)に示されるように、照射範囲調整部115は、レーザ出射素子111からのレーザビームについて、ポリゴンミラーの各面をなすミラーに対してレーザビームが入射する方向ではなく、ポリゴンミラーであるレーザ走査素子112aに対してレーザビームが入射する方向を変化させることで、照射走査幅Wsの大きさを変えることなく、最大走査幅Wmの範囲内で照射走査幅Wsの位置を板幅方向に移動させることができる。
【0045】
このような構成を備えるレーザ照射装置11に対して、コントローラ15は、変動量センサ14により取得される鋼板3の板幅方向の変動量に基づいて照射範囲調整部115を制御し、照射範囲調整部115によってレーザ出射素子111からレーザ走査素子112aへのレーザビームの入射角を変化させることにより、鋼板3におけるレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射領域を移動させる。その結果、板幅方向において、鋼板3の板幅とレーザビームの鋼板3の板幅方向の照射範囲とを一致させることができる。
【0046】
図6は、レーザ照射装置11の構成の他の例を示す図である。
図6の例においては
図5の例と比較すると、ポリゴンミラーに替えて、照射範囲調整部115及びレーザ走査素子112bとして機能するガルバノミラーが設けられている点で相違している。なお、レーザ出射素子111は、レーザ出射角度や出射位置が変化可能に構成されなくてもよい。レーザ集光素子113は、
図5の例と同等の構成であればよい。
【0047】
レーザ走査素子112bであるガルバノミラーは、反射平面を備えた板状のミラー部117aと、ミラー部117aの回転軸に設けられたガルバノメータモータ117bとを備えており、当該ガルバノメータモータ117bがミラー部117aを一定角度で往復回転させることにより、ミラー部117aの方向を連続的に変更させてレーザビームが反射する方向を連続的に変化させて、鋼板3を走査する。往復回転における往復角度の幅や往復中心の角度はガルバノメータモータ117bの制御により変更可能である。これに加えて、ガルバノミラー(レーザ走査素子112b)は、照射範囲調整部115としても機能し、往復回転の角度幅を変化させずに往復回転の中心角度を変化させることにより、鋼板3に照射されるレーザビームの照射走査幅Wsを最大走査幅Wmの範囲内で鋼板3の板幅方向に移動させることができる。
【0048】
なお、ガルバノミラーの往復回転によるレーザビームの走査では、レーザビームが連続的にガルバノミラーに入射すると、鋼板上をジグザクに走査することになる。レーザ磁区制御では鋼板幅方向の一方向に溝や歪を加工するため、その目的にはガルバノミラーの往復回転に同期して、例えば往路回転時ではレーザを出力させ、復路回転時ではレーザを停止する等の処理を行ってもよい。
【0049】
このような構成を備えるレーザ照射装置11に対して、コントローラ15は、変動量センサ14により取得される鋼板3の板幅方向の変動量に基づいてガルバノミラー(レーザ走査素子112b)を制御し、ミラー部117aの往復回転の中心角度を変化させることで、鋼板3の板幅とレーザ照射装置11によるレーザビームの照射範囲(すなわち、照射走査幅Ws)とを一致させることができる。その結果、レーザビームの照射による周囲の装置の損傷を抑制でき、かつ、鋼板3における未加工領域の発生を防止できる。さらに、鋼板3の通板を停止させる必要がないため、磁区制御プロセスにおける加工処理能力の低下を抑制することができる。
【0050】
上述のように、第4実施形態では、レーザビームの照射方向を変化させて、レーザビームの照射範囲を板幅方向に調整する照射範囲調整部がレーザ照射装置11内に設けられている。詳細には、
図5の例では、ポリゴンミラーであるレーザ走査素子112aに対して可変な入射角でレーザを出射させる照射範囲調整部115がレーザ出射素子111に設けられている。
図6の例では、レーザ走査素子112bとして機能するガルバノミラーが照射範囲調整部としても機能する。
【0051】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0052】
1 鋼板加工装置
2 支持ロール
3 鋼板
11 レーザ照射装置
12 遮光板
13、21 アクチュエータ
14 変動量センサ
15 コントローラ
16、32、115 照射範囲調整部
31 支柱
111 レーザ出射素子
112b ガルバノミラー(照射範囲調整部)
113 レーザ集光素子