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特開2023-1588253次元形状計測システム、3次元形状計測方法、及び3次元形状計測プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158825
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】3次元形状計測システム、3次元形状計測方法、及び3次元形状計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/521 20170101AFI20231024BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20231024BHJP
   G06T 7/55 20170101ALI20231024BHJP
【FI】
G06T7/521
G01B11/25 H
G06T7/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068842
(22)【出願日】2022-04-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔掲載年月日〕 令和3年9月24日 〔掲載アドレス〕 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/83276
(71)【出願人】
【識別番号】502324066
【氏名又は名称】株式会社デンソーアイティーラボラトリ
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(72)【発明者】
【氏名】住吉 信一
(72)【発明者】
【氏名】日浦 慎作
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA09
2F065AA53
2F065BB15
2F065DD03
2F065DD11
2F065FF06
2F065HH06
2F065HH07
2F065HH12
2F065JJ03
2F065JJ08
2F065JJ26
2F065PP15
2F065PP25
2F065QQ31
2F065QQ42
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA03
5L096BA05
5L096CA04
5L096EA11
5L096EA33
5L096FA32
5L096FA34
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】 撮像画像の枚数が少なくても対象物の3次元画像を正確に得ることができ、また、光反射による影響を抑制することができる画像処理システムを提供する。
【解決手段】 既知の移動をする物体の3次元形状を計測する3次元形状計測システムは、既知の移動をしている物体に符号化パターンを有する1つの投影画像101を投影する投影部1と、1つの投影画像101が投影された物体を連続的に撮影して複数のカメラ画像201を生成する撮影部2と、カメラ画像の任意の点p0について、カメラ視線上に複数の仮説点m1~m4を設定するとともに、複数の仮説点m1~m4のうち、既知の動きに基づく動き制約を満たす仮説点を、当該任意の点の復元点として決定する復元部44とを備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の移動をする物体の3次元形状を計測する3次元形状計測システムであって、
前記既知の移動をしている前記物体に符号化パターンを有する1つの投影画像を投影する投影部と、
前記1つの投影画像が投影された前記既知の移動をしている前記物体を連続的に撮影して複数のカメラ画像を生成する撮影部と、
前記カメラ画像の任意の点について、カメラ視線上に複数の仮説点を設定するとともに、前記複数の仮説点のうち、前記既知の動きに基づく動き制約を満たす仮説点を、当該任意の点の復元点として決定する復元部と、
を備えた、3次元形状計測システム。
【請求項2】
前記符号化パターンは、複数のスリットがランダムに配置されたランダムスリットパターンである、請求項1に記載の3次元形状計測システム。
【請求項3】
前記スリットの伸長方向は、前記既知の動きに直交する方向である、請求項2に記載の3次元形状計測システム。
【請求項4】
前記ランダムパターンは、複数のドットが2次元状にランダムに配置されたランダムドットパターンである、請求項1に記載の3次元形状計測システム。
【請求項5】
前記復元部は、前記既知の移動を表す動きパラメタで前記複数の仮説点を移動させて、
移動させた前記複数の仮説点を前記カメラ画像及び前記投影画像にそれぞれ透視投影することで得られる輝度変化パターンの組の相関が最大となる前記仮説点を前記動き制約を満たすと判断して、当該仮説点を前記復元点として決定する、請求項1に記載の3次元形状計測システム。
【請求項6】
前記復元部で設定された初期の前記仮説点及び移動された前記仮説点がエピポーラ拘束及び/又は奥行き拘束を満たさない場合に、当該仮説点を前記復元点の候補から除外する幾何拘束処理部をさらに備えた、請求項1又は2に記載の3次元形状計測システム。
【請求項7】
前記物体の代わりに校正パターンを用いて、前記投影部、前記撮影部、及び前記復元部によって得られた前記校正パターン上の点の復元点の移動フローを求めることで、前記動きパラメタを求める動きパラメタ取得部をさらに備えた、請求項5に記載の3次元計測システム。
【請求項8】
既知の移動をする物体の3次元形状を計測する3次元形状計測方法であって、
前記既知の移動をしている前記物体に符号化パターンを有する1つの投影画像を投影する投影ステップと、
前記1つの投影画像が投影された前記既知の移動をしている前記物体を連続的に撮影して複数のカメラ画像を生成する撮影ステップと、
前記カメラ画像の任意の点について、カメラ視線上に複数の仮説点を設定するとともに、前記複数の仮説点のうち、前記既知の動きに基づく動き制約を満たす仮説点を、当該任意の点の復元点として決定する復元ステップと、
を含む、3次元形状計測方法。
【請求項9】
既知の移動をする物体の3次元形状を計測する3次元形状計測プログラムであって、プロジェクタ及びカメラに接続された情報処理装置にて実行されることで、
前記プロジェクタに、前記既知の移動をしている前記物体に符号化パターンを有する1つの投影画像を投影させ、
前記カメラに、前記1つの投影画像が投影された前記既知の移動をしている前記物体を連続的に撮影して複数のカメラ画像を生成させ、
前記カメラ画像の任意の点について、カメラ視線上に複数の仮説点を設定するとともに、前記複数の仮説点のうち、前記既知の動きに基づく動き制約を満たす仮説点を、当該任意の点の復元点として決定する、
3次元形状計測プログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に符号化パターン画像を投影して、符号化パターン画像が投影された物体を撮影することで当該物体の3次元形状を計測する3次元形状計測システム、3次元形状計測方法、3次元形状計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体にパターン画像を投影して物体の3次元形状を計測する手法は、多くの工夫がなされている。パターン画像の種類として、スポット光投影法やスリット光投影法等が使用されていた。スポット光投影法は、レーザービームを対象物に投影し、スリット光投影法は光切断法とも呼ばれ、スリット光を対象物に投影することで、対象物の3次元位置を求める手法である。スリット光投影法は、工業計測などで広く用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Brenner, C., Boehm, J. and Guehring, J.: Photogrammetric calibration and accuracy evaluation of a crosspattern stripe projector, Videometrics VI, Vol. 3641, International Society for Optics and Photonics, pp. 164-173 (1998).
【非特許文献2】Sato, K. and Inokuchi, S.: Three-dimensional surface measurement by space encoding range imaging, Journal of Robotic Systems, Vol. 2, pp. 27-39 (1985).
【非特許文献3】Sagawa, R., Furukawa, R. and Kawasaki, H.: Dense 3D reconstruction from high frame-rate video using a static grid pattern, IEEE transactionson pattern analysis and machine intelligence, Vol. 36, No. 9, pp. 1733-1747 (2014).
【非特許文献4】T. Weise, B. Leibe, and L. V. Gool. : Fast 3D scanning withautomatic motion compensation, In Proc. IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, pages 1-8, 2007.
【非特許文献5】Shiba, Y., Ono, S., Furukawa, R., Hiura, S., & Kawasaki, H.: Temporal Shape Super-Resolution by Intra-frame Motion Encoding Using High-fpsStructured Light, In Proceedings - 2017 IEEE International Conference on Computer Vision, ICCV 2017 (pp. 115-123).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の投影法では、対象物の画像を復元するのに、撮像画像枚数が多く必要であり、また、対象物や周辺物の光反射により、画像の復元に影響が出ることが少なくない。
【0005】
そこで、本発明は、撮像画像の枚数が少なくても対象物の3次元画像を正確に得ることができ、また、光反射による影響を抑制することができる画像処理システム、画像処理装置、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様の3次元形状計測システムは、既知の移動をする物体の3次元形状を計測する3次元形状計測システムであって、前記既知の移動をしている前記物体に符号化パターンを有する1つの投影画像を投影する投影部と、前記1つの投影画像が投影された前記既知の移動をしている前記物体を連続的に撮影して複数のカメラ画像を生成する撮影部と、前記カメラ画像の任意の点について、カメラ視線上に複数の仮説点を設定するとともに、前記複数の仮説点のうち、前記既知の動きに基づく動き制約を満たす仮説点を、当該任意の点の復元点として決定する復元部とを備えた構成を有する。
【0007】
この構成により、スリット光投影法のような投影画像1枚で1次元的なラインのみを投影するタイプの計測システムの場合と比較して、上記のように符号化パターンを有する1つの投影画像を投影する場合には計測に必要な撮影画像の枚数が比較的少なくても密に物体の3次元形状を計測できる。また、ランダムパターンのもつ直交性の特性によって、相互反射などに頑健な3次元形状の計測が可能となる。すなわち、スリット光投影法のような1次元的なラインのみを投影するタイプの計測システムの場合は、相互反射、ハレーションなどの光学現象に頑健にできない一方で、上記のように符号化パターンの投影画像を用いることで相互反射、ハレーションなどの光学現象への頑健性を向上できる。
【0008】
上記の3次元形状計測システムにおいて、前記符号化パターンは、複数のスリットがランダムに配置されたランダムスリットパターンであってよい。
【0009】
ランダムスリットパターンは、ライン間の境界部が少なく隣のラインの影響を受けにくいため、この構成により、光学現象が強く起きていないシーンにおいて特によく物体の3次元形状を計測できる。
【0010】
上記の3次元形状計測システムにおいて、前記スリットの伸長方向は、前記既知の動きに直交する方向であってよい。
【0011】
この構成により、物体が既知の移動を行う間に撮影した複数の撮影画像において十分な輝度変化パターンが得られる。
【0012】
上記の3次元形状計測システムにおいて、前記ランダムパターンは、複数のドットが2次元状にランダムに配置されたランダムドットパターンであってよい。
【0013】
この構成により、特に、相互反射に対する頑健性は高かく、ノイズ点が復元されにくいという利点が得られる。
【0014】
上記の3次元形状計測システムにおいて、前記復元部は、前記既知の移動を表す動きパラメタで前記複数の仮説点を移動させてよく、移動させた前記複数の仮説点を前記カメラ画像及び前記投影画像にそれぞれ透視投影することで得られる輝度変化パターンの組の相関が最大となる前記仮説点を前記動き制約を満たすと判断して、当該仮説点を前記復元点として決定してよい。
【0015】
この構成により、移動する物体上の奥行き点を複数の仮説点の中から探索する際に、既知の動きパラメタで物体が移動することを制約として用いて、正しい奥行き値の仮説点で得た投影座標と撮影座標の輝度変化パターンの組が最大の相関を得ることを利用して形状復元をすることができる。
【0016】
上記の3次元形状計測システムは、前記復元部で設定された初期の前記仮説点及び移動された前記仮説点がエピポーラ拘束及び/又は奥行き拘束を満たさない場合に、当該仮説点を前記復元点の候補から除外する幾何拘束処理部をさらに備えていてよい。
【0017】
この構成により、カメラ視線上に複数の仮説点を設定すると仮説数が爆発してしまい、計算効率が非常に悪くなるほか、正しい復元点が得られる確率が減ってしまうところ、エピポーラ拘束及び/又は奥行き拘束によって仮説点の数を制限して復元点の探索を行うことができる。
【0018】
上記の3次元計測システムは、前記物体の代わりに校正パターンを用いて、前記投影部、前記撮影部、及び前記復元部によって得られた前記校正パターン上の点の復元点の移動フローを求めることで、前記動きパラメタを求める動きパラメタ取得部をさらに備えていてよい。
【0019】
この構成により、実際に動く物体について3次元形状計測を行うときと同じ既知の移動を用いて動きパラメタを推定することができる。
【0020】
本発明の一態様の3次元形状計測方法は、既知の移動をする物体の3次元形状を計測する3次元形状計測方法であって、前記既知の移動をしている前記物体に符号化パターンを有する投影画像を投影する投影ステップと、前記1つの投影画像が投影された前記既知の移動をしている前記物体を連続的に撮影して複数のカメラ画像を生成する撮影ステップと、前記カメラ画像の任意の点について、カメラ視線上に複数の仮説点を設定するとともに、前記複数の仮説点のうち、前記既知の動きに基づく動き制約を満たす仮説点を、当該任意の点の復元点として決定する復元ステップとを含む構成を有している。
【0021】
この構成によっても、撮影画像の枚数が比較的少なくても密に物体の3次元形状を計測でき、かつ、相互反射、ハレーションなどの光学現象に頑健な3次元形状の計測が可能となる。
【0022】
本発明の一態様の3次元形状計測プログラムは、既知の移動をする物体の3次元形状を計測する3次元形状計測プログラムであって、プロジェクタ及びカメラに接続された情報処理装置にて実行されることで、前記プロジェクタに、前記既知の移動をしている前記物体に符号化パターンを有する1つの投影画像を投影させ、前記カメラに、前記1つの投影画像が投影された前記既知の移動をしている前記物体を連続的に撮影して複数のカメラ画像を生成させ、前記カメラ画像の任意の点について、カメラ視線上に複数の仮説点を設定するとともに、前記複数の仮説点のうち、前記既知の動きに基づく動き制約を満たす仮説点を、当該任意の点の復元点として決定する構成を有している。
【0023】
この構成によっても、撮影画像の枚数が比較的少なくても密に物体の3次元形状を計測でき、かつ、相互反射、ハレーションなどの光学現象に頑健な3次元形状の計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施の形態の3次元形状計測システムの応用シーンを示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の3次元形状計測システムによる3次元形状計測の原理を説明する図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の動き制約を用いた復号化及び仮説点決定のアルゴリズムの処理工程を説明するための図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の3次元形状計測システムにおける機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の実施の形態の3次元形状計測方法のフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施の形態の動きパラメタ推定のフローチャートである。
図7図7は、本発明の実施の形態の動きパラメタを推定するための装置を示す図である。
図8A図8Aは、本発明の実施の形態の投影画像の例を示す図である。
図8B図8Bは、本発明の実施の形態の投影画像の例を示す図である。
図8C図8Cは、従来法で用いられるシングルスリットの投影画像を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態の符号化パターンの生成過程を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施の形態の復元のフローチャートである。
図11図11は、本発明の実施の形態の幾何拘束処理のフローチャートである。
図12図12は、実施例の3次元形状計測の結果を示す図である。
図13図13は、実施例の撮影枚数と復元率との関係を示すグラフである。
図14A図14Aは、白飛びが生じる状況での実験及びその結果を示す図である。
図14B図14Bは、相互反射が生じる状況での実験及びその結果を示す図である。
図14C図14Cは、鏡面反射物体を含む複数の材質の物体についての実験及びその結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態の3次元形状計測システムの応用シーンを示す図である。3次元形状計測システム100は、プロジェクタ10と、カメラ20と、3次元形状計測装置30とを含んで構成される。プロジェクタ10は、符号化パターンを有する投影画像(以下、「符号化パターン画像」ともいう。)を投影する。カメラ20は、3次元形状計測の対象物であるワークWを撮影するように設置される。カメラ20は、プロジェクタ10によって投影されて移動するワークWで反射した符号化パターン画像を所定のフレームレートで撮影して、カメラ画像を生成する。
【0027】
プロジェクタ10とカメラ20との幾何的関係、即ち位置及び姿勢の関係は、運用時には固定されており、この幾何的関係は3次元形状計測装置30において既知である。また、プロジェクタ10及びカメラ20は、いずれも3次元形状計測装置30に有線又は無線で通信可能に接続されている。なお、図1では、プロジェクタ10とカメラ20とが一体的に構成される例を示しているが、プロジェクタ10とカメラ20とが別体で構成されてもよい。
【0028】
3次元形状計測装置30は、プロジェクタ10が投影した符号化パターン画像と、カメラ20が撮影したカメラ画像とに基づいて、ワークWの位置情報を含む3次元形状を計測する。3次元形状計測装置30は、例えば、汎用のコンピュータが本実施の形態の3次元形状計測プログラムを実行することで実現されてよい。
【0029】
図1の例では、ベルトコンベアC上に複数のワークWが載せられて、ベルトコンベアCの回転によってワークWが一定の方向に一定の速度で移動している。3次元形状計測装置30は、アームロボット40に接続されている。アームロボット40は、複数の関節を有するアームを備え、移動しているワークWに対して、ワークWを把持するという仕事をする。3次元形状計測装置30にて得られたワークWの3次元形状計測の結果は、アームロボット40に与えられる。アームロボット40は、ワークWの位置情報及び3次元形状情報に基づいて動作する。これにより、アームロボット40は、目的とするワークWに対して適切に仕事をすることができ、例えばワークWを適切にピッキングすることが可能となる。このようなシステムをロボットピッキングシステムという。
【0030】
以下では、まず本実施の形態の3次元形状計測システム100による3次元形状計測の原理を説明し、その後に、そのような3次元形状計測を行うための構成を説明する。
【0031】
図2は、本発明の実施の形態の3次元形状計測システムによる3次元形状計測の原理を説明する図である。本実施の形態の3次元形状計測システム100は、物体がベルトコンベアCによって運ばれることによる既知の移動を動き制約という幾何制約として利用して物体の3次元形状を計測する。ベルトコンベアCは、一方向に等速で動くものとし、その上に載っている物体及び物体上の点Pも同じ動きをするものとする。この点Pの動きベクトルをオブジェクトフローという。プロジェクタ10によって投影画像101を投影しながら物体がベルトコンベアC上を動いていくシーンをカメラ20で撮影してカメラ画像210を得る。
【0032】
本実施の形態のように物体の移動ないしオブジェクトフローを厳密に設定できるという環境では、カメラ20によって撮影されたカメラ画像201及びプロジェクタ10が投影する投影画像101において、物体上の点Pは、エピポーラ線外で動くことになる。すなわち、エピポーラ拘束以外の新しい制約軸が与えられる。3次元形状計測システム100は、この制約を幾何制約として用いる。この幾何制約を動き制約という。
【0033】
図3は、本発明の実施の形態の動き制約を用いた復号化及び仮説点決定のアルゴリズムの処理工程を説明するための図である。動き制約を用いた計測アルゴリズムの概要は以下のとおりである。まず、カメラ画像201中の任意の点p0について、カメラ視線L上で奥行方向に幾何拘束条件を満たす複数の仮説点m1~m4を設定する。ここで、カメラ視線Lは、カメラ20の焦点とカメラの撮像面における当該任意の点P0とを結ぶ線である。
【0034】
そして、複数の仮説点m1~m4をカメラ画像201と投影画像101に透視投影をする。この透視投影を、各仮説点m1~m4をオブジェクトフロー方向Fに動かしながら行う。このとき、投影するプロジェクト画像の符号化パターンは動きに同期して変化させる。また、この段階で、幾何拘束条件を満たさない仮説点は排除する。そして、複数の仮説点m1~m4の、カメラ画像に透視投影された輝度変化パターン(以下、「復号化信号」ともいう。)202とプロジェクタ画像に透視投影された輝度変化パターン(以下、「符号化信号」ともいう。)102との組(ペア)が得られ、これらの全ての組の符号化信号と復号化信号との相関値を計算し、相関値が最大となる仮説点を復元点とする。図3の例では、仮説点m2の相関が最も大きいので、仮説点m2が復元点とされる。
【0035】
図4は、本発明の実施の形態の3次元形状計測システムにおける機能構成を示すブロック図である。3次元形状計測システム100は、投影部1と、撮影部2と、情報処理部4と、3次元情報出力部5とを備えている。
【0036】
投影部1は、プロジェクタ10で構成される。撮影部2は、カメラ20で構成される。情報処理部4、及び3次元情報出力部5は、3次元形状計測装置30に備えられてもよく、あるいは、その一部のみが3次元形状計測装置30に備えられ、他の一部はプロジェクタ10若しくはカメラ20、又は3次元形状計測装置30に接続された他の装置に備えられてもよい。
【0037】
投影部1は、符号化パターンに基づいて符号化パターン画像を投影する。投影部1は、ベルトコンベアCによって移動する物体に対して符号化パターン画像を投影する。なお、投影部1としては、プロジェクタ10のように任意の投影画像を投影できる装置を用いてもよいし、OHPのように、用意された版に対応した投影画像を投影する装置であってもよい。
【0038】
撮影部2は、撮影を行ってカメラ画像を得る。撮影部2は、連続する複数のカメラ画像からなるカメラ画像列を得る。本実施の形態では、撮影部2は、入射する光の輝度値のみを検出して、カメラ画像としてモノクロ画像を生成する。また、本実施の形態では、撮影部2は、1024×768ピクセルの解像度の撮像素子を用いてカメラ画像を得る。
【0039】
情報処理部4は、幾何キャリブレーションパラメタ取得部41、動きパラメタ取得部42、復元部44、及び幾何拘束処理部45を備えている。幾何キャリブレーションパラメタ取得部41は、投影部1及び撮影部2とオブジェクトフローとの幾何的なキャリブレーションを実施する。投影部1と撮影部2とオブジェクトフローとの関係が固定されている場合には、幾何キャリブレーションパラメタは一定である。動きパラメタ取得部42は、所定の移動をする物体のオブジェクトフローを推定によって取得する。復元部44は、カメラ画像列、幾何キャリブレーションパラメタ、及び動きパラメタを用いて、複数の奥行き仮説点の中から動き制約を満たす点を復号化することで奥行き(復元点)の推定を行う。幾何拘束処理部45は、復元部44が奥行きの推定を行う際に、幾何学的制約を満たさない仮説点を候補から除外する。
【0040】
3次元情報出力部5は、復元部44で得られた復元点の集合を物体の3次元形状の計測結果として出力する。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態の3次元形状計測方法のフローチャートである。まず、幾何キャリブレーションパラメタ取得部41は、あらかじめ得ていた幾何的なキャリブレーションパラメタを取得する(ステップS41)。また、動きパラメタ取得部42は、投影部1及び撮影部2と移動する対象物との相対的な動きパラメタ、即ちオブジェクトフローを取得する(ステップS42)。
【0042】
投影部1は、動きパラメタ取得部42で取得した動きパラメタに従って移動する物体に投影画像を投影する(ステップS43)。撮影部2は、投影画像が投影された物体をN枚撮影し、それらのカメラ画像列を入力データとして情報処理部4に入力する(ステップS44)。
【0043】
復元部44は、撮影部2からの入力データを用いて、幾何拘束処理部45で定義される幾何拘束条件を満たす奥行き仮説点をM個生成し、符号化信号102と復号化信号202との組のスコアが最大となる奥行き仮説点を復元点として採用する(ステップS45)。最後に、3D情報出力部5は、最終的に得られた3次元復元結果を出力する(ステップS46)。
【0044】
図6は、本発明の実施の形態の動きパラメタ推定のフローチャートである。図7は、本発明の実施の形態の動きパラメタを推定するための装置を示す図である。まず、計測対象の物体の動きと同じ動きをする装置に、チェスパターンを有する校正ボード61を設置する(ステップS61)。撮影フレームnでの計測対象の物体と同じ位置で校正ボードを撮影し、次の位置へ移動して撮影するという処理を繰り返す(ステップS62)。
【0045】
動きパラメタ取得部42は、校正ボード61のカメラ画像列を用いてフレームn-1からフレームnへの動きパラメタ(R,T)nを推定する(ステップS63)。このとき、動きパラメタ取得部42は、校正ボード61のチェスパターンのコーナーの3次元的な平均動きフローから、動きパラメタを推定する。
【0046】
具体的には、例えば、特定の傾きをした校正ボードを10mmずつ動かしながら7回撮影した場合、あるコーナーに注目するとnフレームのコーナーの3次元点とn-1フレームのコーナーの3次元点との差から6個のベクトルが得られ、これらの平均を求めることで、そのコーナーの平均動きフローを求めることができる。この処理を全コーナーに対して行い、それぞれの平均動きフローを求め、さらにそれらを平均化することで、全体の平均動きフローを求めることができる。動きパラメタ取得部42は、この全体の平均動きフローをオブジェクトフロー、即ち動きパラメタとする。
【0047】
なお、より複雑な動きをするロボットアームのような装置でも、同様の方法で各コーナーの[Rt]を求めることができる。コーナーをより密にとるために複数の校正器を用いてもよく、コーナーがない領域は周囲のコーナーの動きフローを線形補間などで補間してもよい。
【0048】
図8A及び図8Bは、本発明の実施の形態の投影画像の例を示す図である。図8Aは、投影画像が、複数のドットが2次元状にランダムに配置されたランダムドットパターンを有する例を示しており、図8Bは、投影画像が、縦方向に伸長する複数のスリットがランダムに配置されたランダムスリットパターンを有する例を示している。図8Aの例では、投影画像は1280×800画素の画素数を有し、ドットサイズは10×10画素である。図8Bの例では、投影画像は1280×800画素の画素数を有し、スリット幅は10画素である。
【0049】
図8Cは、従来法で用いられるシングルスリットの投影画像を示す図である。符号化パターンであるランダムドットパターン(図8A)及びランダムスリットパターン(図8B)は、各ドット又はスリットに独立な符号化情報が埋め込まれているため、光学現象に頑健な計測が期待できる。一方、シングルスリットパターン(図8C)の場合は、投影した光が相互反射などにより複数反射すると、直接反射を同定することが困難と予想され、正しい3次元点の計測が困難である。
【0050】
ランダムドットパターン及びランダムスリットパターンは、シングルスリットと比較すると、符号化情報を含むものであり、よって、ランダムドットパターン及びランダムスリットパターンは、シングルスリットとの対比において、符号化パターンということができる。ランダムドットパターンは、縦方向及び横方向の2次元状に符号化情報を有するパターンであり、ランダムスリットパターンは、縦方向又は横方向のいずれか一方にのみ(図8Bの場合は横方向にのみ)符号化情報を有するパターンである。
【0051】
図9は、図8A図8Bに示した符号化パターンの生成過程を示すフローチャートである。まず、符号化パターンの各ドット(ランダムドットの場合)又はスリット(ランダムスリットの場合)について、適当なシードを基にして、0~255のランダム数が生成される(ステップS81)。本実施の形態では、メルセンヌツイスタ又はM系列を用いてランダム数が生成される。そして、各ドット/スリットについて、生成されたランダム数が閾値128以上であれば、当該ドット/スリットの画素値を255とし、生成されたランダム数が128未満であれば、当該ドット/スリットの画素値を0とする(ステップS82)。
【0052】
図10は、本発明の実施の形態の復元のフローチャートである。復元部44は、まず、符号化パターン画像が投影された移動する物体を撮影してカメラ画像を取得する(ステップS101)。次に、復元部44は、カメラ画像の画素pで幾何拘束条件であるエピポーラ拘束と奥行き拘束の2つの満たす奥行き仮説点をM_p個設定する(ステップS102)。
【0053】
復元部44は、仮説点mを各フレームの動きパラメタ(R,T)_nで3次元座標変換する(ステップS103)。移動された仮説点m_pをカメラ画像と投影画像に透視投影する処理をNフレーム分繰り返し、符号化信号102と復号化信号202との組(ペア)を得る(ステップS104)(図3参照)。復元部44は、次に、仮説点m_pについての符号化信号102と復号化信号202の相関をゼロ平均正規化相互相関で求め、得られた相関値を保存する(ステップS105)。
【0054】
復元部44は、M_p個の仮説点で相関を得る処理が終了したか否かを判断し(ステップS106)、終了していない場合は(ステップS106でNO)、ステップS103に戻って処理を繰り返す。M_p個の仮説点について相関値が得られた場合には(ステップS106でYES)、M_p個の相関値のなかで最大を得た仮説点m_pを当該画素pについての復元点として採用する(ステップS107)。復元部44は、上記の処理をカメラ画像の全画素について行う(ステップS108)。
【0055】
図11は、本発明の実施の形態の幾何拘束処理のフローチャートである。幾何拘束処理部45は、初期位置から移動したフレームn時点の奥行き仮説点m_pを取得する(ステップS111)。幾何拘束処理部45は、仮説点m_pの奥行き値が復元範囲内であるか否か(奥行き拘束)を判断する(ステップS112)。ここで、計測対象物とカメラ20及びプロジェクタ10との位置関係から事前に復元範囲をヒューリスティックに設定することが一般的に行われているが、奥行き拘束は、その奥行き方向に着目した拘束である。
【0056】
仮説点m_pの奥行き値が復元範囲内である場合は(ステップS112でYES)、幾何拘束処理部45は、仮説点m_pをカメラ画像と投影画像に透視投影し(ステップS113)、透視投影された点がエピポーラ線上にあるか否か(エピポーラ拘束)を判断する(ステップS114)。エピポーラ拘束は、事前に幾何キャリブレーションで得られたパラメタ(F行列)から求められる。幾何拘束処理部45は、カメラ画像及び投影画像の双方のエピポーラ線上に仮説点の透視投影点が乗るか否かを判断する。
【0057】
エピポーラ線からある程度の距離を許す閾値を用いて、キャリブレーション誤差の影響を低減させてよい。例えば、カメラ20の画素数が1024×768画素であり、プロジェクタ10の画素数が1280×800画素である場合は、カメラ20側では閾値th_Cを10~20画素程度としてよく、プロジェクタ10側ではそれに画素サイズの比を賭けた誤差(閾値th_P=th_C×(1280/1024))を許容してよい。
【0058】
幾何拘束処理部45は、透視投影された点がエピポーラ線上にある場合(ステップS114でYES)、すなわち、奥行き拘束もエピポーラ拘束も満たす場合には、その奥行き仮説点m_pは幾何制約を満たす仮説点であると判断する(ステップS115)。奥行き拘束又はエピポーラ拘束のいずれかを満たさない場合は(ステップS112でNO、又はステップS114でNO)、幾何拘束処理部45は、その奥行き仮説点m_pは幾何制約を満たさない仮説点であると判断する(ステップS116)。
【0059】
(実施例)
3次元形状計測の実施例について以下に説明する。図2に示した3次元計測システム100を用いて、計測対象の物体としてスタンフォードバニーのランバートな模型(10×10×10cm程度のサイズ)を移動させながらN枚撮影して3次元毛状を計測する実験を行った。カメラ画像と投影画像とを用いて、動き制約を用いた計測アルゴリズム(図10参照)にて、上述の既知の動き(オブジェクトフロー)で移動するバニーの3次元形状計測(形状復元)をした。
【0060】
図12は、実施例の3次元形状計測の結果を示す図である。図12において、上段はランダムドットパターンを用いた場合の結果を示しており、中段はランダムスリットを用いた場合の結果を示しており、下段はシングルスリットパターンを用いた場合の結果を示している。また、図12において、各段の左側は撮影枚数をN=9(6mm移動するごとに撮影)とした場合の結果を示しており、各段の右側は撮影枚数をN=54(1mm移動するごとに撮影)とした場合の結果を示している。
【0061】
図12に示すように、ランバートな物体では、十分な撮影枚数を取得すれば(格段の右側)、シングルスリットの場合にも正しい形状が得られることがわかる。ただし、シングルスリットの場合には、ランダムドットパターンやランダムスリットパターンと比較してノイズが多い。
【0062】
図13は、実施例の撮影枚数と復元率との関係を示すグラフである。図13は、ランダムドットパターン、ランダムスリットパターン、及びシングルスリットのそれぞれについて、撮影枚数N=27、18、9の各場合の復元率を示している。なお、撮影枚数Nが大きいことは、物体の移動速度が小さいこと、及び/又はカメラ20の撮影のフレームレートが小さいことを意味し、撮影枚数Nが小さいことはその逆を意味する。したがって、撮影枚数Nを小さくしても復元率を高く維持できるということは、物体の移動速度を大きくでき、及び/又は低フレームレートのカメラ20で足りることを意味する。
【0063】
図13に示すように、ランダムドットパターン及びランダムスリットパターンの場合には、いずれもシングルスリットと比較して高い復元率(高密度)を達成できており、かつ、撮影枚数Nを小さくしても、シングルスリットの場合と比較して復元率(密度)の低下が小さく抑えられている。このことは、図12の左列と右列とを比較しても明らかである。
【0064】
さらに、多様な反射特性を持つ物体を配備し光学現象に対する頑健(ロバスト)性について調べる実験を行った。図14Aは、白飛びが生じる状況での実験及びその結果を示しており、図14Bは、相互反射が生じる状況での実験及びその結果を示しており、図14Cは、鏡面反射物体を含む複数の材質の物体についての実験及びその結果を示している。
【0065】
図14Aに示すように、カメラ画像にハレーション(白飛び)が生じている状況では、ランダムドットパターン及びランダムスリットパターンの場合には、白飛びによる欠測の影響を抑制できることが確認できた。また、図14Bに示すように、相互反射が生じている状況では、ランダムスリットパターンの場合には矢印部分で誤った形状が得られてしまっている。また、シングルスリットも同様に矢印部分にて誤った形状が得られてしまっている。一方、相互反射に頑健である考えられるランダムドットパターンについては全体に良好に形状復元ができた。
【0066】
図14Cにおいて、上段は正面から見た復元結果であり、下段は上から見た復元結果である。図14の例では、ステンレス、発泡スチロール、木製のボールをこの順で並べて置いて3次元形状計測を行った。図14Cに示すように、ランダムスリットパターンを用いた場合には矢印部分にて相互反射により誤った形状が計測されており、また、シングルスリットにおいてもステンレスと発泡スチロールとの間で相互反射の影響により形状計測が正しくできなかった。ランダムドットパターンについては全体に相互反射の影響を抑制して形状復元ができた。
【0067】
以上の実験から、以下の知見が得られた。すなわち、ランダムスリットパターンは、ライン間の境界部が少なく隣のラインの影響を受けづらく、光学現象が強く起きていないシーンにおいて特に良い形状復元の傾向が見られた。ただし、相互反射によるエピポーラ線外の影響を受けやすく相互反射が発生するシーンでは誤計測してやや大きなノイズ塊が生まれやすい傾向が見られた。
【0068】
また、ランダムドットパターンは、座標復号化時に隣接ドットの影響を受けやすく点が復元されづらい傾向はあるものの、相互反射に対する頑健性は高かったため、ノイズ点が復元されにくい利点があることが分かった。ランダムスリットパターン及びランダムドットパターンのいずれの符号化パターンにおいても、その光学現象に対する頑健性の高さは、ランダム符号をスリットかドットで配置しているためにエピポーラ線の内外の影響を抑制できたために得られたものであると考えられる。
【0069】
以上のように、本実施の形態では、既知のオブジェクトフローに沿って移動する物体に対して、プロジェクタ10からランダムパターンを有する投影画像を照射してカメラ20で撮影し、カメラ画像における任意の点にカメラ視線上に複数の奥行き仮説点を設定して、仮説点をオブジェクトフローに沿って移動しながらカメラ画像及び投影画像に透視投影することで、カメラ画像における当該仮説点の輝度変化と投影画像の時系列変化とを比較し、それらの相関が最も高い仮説点を復元点として決定する。これにより、プロジェクタ10及びカメラ20として高速(高フレームレート)のものを用いなくても、移動する物体の移動を止めることなく、当該物体の3次元形状を計測できる。
【0070】
なお、上記の実施の形態では、計測対象の物体がランバートに近い反射特性を持つことを想定しているが、物体がランバート反射物でない場合に本実施の形態を適用してもよい。相対的に静止した状態での計測では、鏡面反射光の影響で復元が欠損する領域が発生してしまうが、本実施の形態によって動きながら対象物の情報を得ることで、欠損を低減できる。
【0071】
また、上記の実施の形態では、複数のカメラ画像を得るために投影画像における符号化パターンを変化させることなく、一定としたが、これに代えて、複数のカメラ画像について、異なる符号化パターンを有する投影画像を投影してもよい。この場合には、3次元形状計測システム100は、投影部1による投影画像の符号化パターンの変化レートと、撮影部2による撮影のフレームレートとを同期させる同期制御部を備えてもよい。また、この場合には、3次元形状計測システム100が、変化する符号化パターンを生成するための符号化パターン生成部を備えていてもよい。
【0072】
また、上記の符号化パターン生成部43において生成するモノクロの符号化パターンのドットは、大きい方が幾何キャリブレーション及び動き推定の誤差を吸収できるので望ましい。また、復元部44で仮説点を設定してオブジェクトフローに沿って仮説点を移動させていくときに、仮説点が符号化パターンにおけるドットとドットの境界(境界画素)に相当する場合がある。
【0073】
この場合には、そのような仮説点は白と黒の中間の値の画素値を持つことになる。よって、境界画素となることが多い仮説点については、復元点の候補から除外するようにしてもよい。例えば、仮説点を50フレームに亘って移動させる場合に、そのうちの20枚(40%)以上が境界画素となる場合にはそのような仮説点を復元点の候補から除外してよい。
【0074】
また、上記の実施の形態では、1つのプロジェクタ10と1つのカメラ20を用いたが、これらを複数台用いてもよい。例えば、プロジェクタ1台とカメラ2台、あるいはプロジェクタ3台とカメラ3台などを組み合わせでも、プロジェクタそれぞれで独自の符号化パターン画像列を生成し、かつ、各々が発生させる符号化信号のZNCCが相対的に低い場合は、符号化情報の分離が可能である。
【0075】
また、上記の実施の形態では、ベルトコンベア、即ち水平移動するスライドステージを用いて既知の移動を実現していたが、これに加えて、又はこれに代えて、既知の動作をするデバイス、例えばロボットアームやAGVなどを用いて既知の移動を実現してもよい。ロボットアームやAGVは人によってパラメタ制御されているため、それらの制御信号を回転、並進情報に変換することで、スライドステージによる仮説点の並進移動と同等の計算が可能である。複雑な動きをするロボットアームのような装置でも校正時の各コーナーの[Rt]を求めることができる。コーナーをより密にとるために複数の校正器を用いたり、コーナーがない領域は周囲のコーナーのフローの線形補間などで補間したりする工夫をしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 投影部
2 撮影部
4 情報処理部
41 幾何キャリブレーションパラメタ取得部
42 動きパラメタ取得部
44 復元部
45 幾何拘束処理部
5 3次元情報出力部
10 プロジェクタ
20 カメラ
30 3次元形状計測装置
40 アームロボット
100 3次元形状計測システム
101 投影画像
102 投影画像に透視投影された仮説点の輝度変化パターン(符号化信号)
201 カメラ画像
202 カメラ画像に透視投影された仮説点の輝度変化パターン(復号化信号)
W ワーク

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C