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特開2023-158853フィルムが剥離可能に被着された紙製収容体及びその製造方法
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  • 特開-フィルムが剥離可能に被着された紙製収容体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158853
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】フィルムが剥離可能に被着された紙製収容体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/06 20190101AFI20231024BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20231024BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20231024BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B7/12
B32B29/00
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068878
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】難波 睦雄
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB71
3E086CA01
4F100AK01C
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA32
4F100CB03B
4F100DC21B
4F100DG10A
4F100DG10C
4F100DG15C
4F100EC03
4F100EH46
4F100GB16
4F100JL12
4F100JL14
(57)【要約】
【課題】紙製基材からフィルムを容易に剥離することができる紙製収容体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の紙製収容体は、収容物を収容できる収容空間を形成するように、フィルムが貼り付けられた紙製の基材を部分的に重ね合わせ、その重合部を、ヒートシール剤を用いて熱溶着することによって形成される。フィルム3は、そのフィルム3上に所定のパターンで塗布されるヒートシール剤4を用いた熱溶着によって紙製の基材に対して剥離可能に貼り付けられる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の基材に対してフィルムが剥離可能に被着された紙製収容体の製造方法であって、
前記紙製の基材及びフィルムの少なくとも一方にヒートシール剤を所定のパターンで塗布し、
塗布された前記ヒートシール剤を用いて熱溶着により前記フィルムを紙製の基材に貼り付け、
収容物を収容できる収容空間を形成するように、前記フィルムが貼り付けられた前記紙製の基材を部分的に重ね合わせ、その重合部を、ヒートシール剤を用いて熱溶着することによって収容体を形成する、
ことを特徴とする紙製収容体の製造方法。
【請求項2】
前記紙製の基材及びフィルムの少なくとも一方に塗布される前記ヒートシール剤は、前記紙製の基材から前記フィルムを剥離することが可能な分散態様で、点状、線状、格子状の内、少なくとも1以上のパターンで塗布されることを特徴とする請求項1に記載の紙製収容体の製造方法。
【請求項3】
前記紙製の基材及びフィルムの少なくとも一方に塗布される前記ヒートシール剤は、前記紙製の基材から前記フィルムを剥離することが可能な濃度で塗布されることを特徴とする請求項1に記載の紙製収容体の製造方法。
【請求項4】
フィルムが剥離可能に被着されて成る紙製収容体であって、
収容物を収容できる収容空間を形成するように、フィルムが貼り付けられた紙製の基材を部分的に重ね合わせ、その重合部を、ヒートシール剤を用いて熱溶着することによって形成され、
前記フィルムは、前記紙製の基材及びフィルムの少なくとも一方に所定のパターンで塗布されたヒートシール剤を用いた熱溶着によって前記紙製の基材に対して貼り付けられていることを特徴とする紙製収容体。
【請求項5】
前記紙製の基材及びフィルムの少なくとも一方に塗布される前記ヒートシール剤は、前記紙製の基材から前記フィルムを剥離することができる分散態様で、点状、線状、格子状の内、少なくとも1以上のパターンで塗布されていることを特徴とする請求項4に記載の紙製収容体。
【請求項6】
前記紙製の基材及びフィルムの少なくとも一方に塗布される前記ヒートシール剤は、前記紙製の基材から前記フィルムを剥離することが可能な濃度で塗布されることを特徴とする請求項4に記載の紙製収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製の基材に対してフィルムが剥離可能に被着された紙製収容体及びその製造方法に関する。
ここでの収容体とは、フィルムが剥離可能に被着された紙製の基材にヒートシール剤が塗布されて成るヒートシール部分で熱溶着することにより形成されたものが該当する。この収容体は、インク等によって文字や模様等の印刷層が形成されていてもよく、例えば、食品や日用品などを収容する袋状のもの、或いは、箱型のように保形性を保つために使用されるもの(使い捨てされる各種の日用品等)が該当する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック性の基材にポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂材によるヒートシール層を押出成形等によって積層したシート材を用い、これを部分的に重ね合わせて熱溶着した収容袋や収容容器等(以下、収容体という)が知られている。このような収容体は、食品、日用品など、様々な収容物を収容するのに用いられるが、近年、環境上の問題から、プラスチック製の基材から紙製の基材にすることが行なわれている。
【0003】
このような紙製の基材で形成される収容体は、食品分野等で用いることが可能であるが、基材を紙製にすると、収容物が特に液体の場合に、その液体が紙製の基材に浸透して裏抜けするような事態も生じ得る。そのため、紙製の基材の表面にフィルムを被着して、そのような浸透を防止することが行われる。そのようなフィルムは、紙製基材への液体の浸透防止のみならず、防臭作用、調湿作用も有し、また、ガスバリアとしても機能し得る(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-155044号公報
【特許文献2】特開2018-176441号公報
【特許文献3】特開2004-051099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、廃棄上の分別等の観点から、フィルムを紙製の基材から剥がし取れるようにすることが求められている。しかしながら、フィルムは紙製の基材に強い密着力で被着されている場合が多く、したがって、フィルムを紙製基材から剥離し難い(分離し難い)という問題がある。そのため、当該技術分野においては、紙製基材に対するフィルムの容易な剥離に関して改善すべき余地が依然として残されている。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、紙製基材からフィルムを容易に剥離することができる紙製収容体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、紙製の基材に対してフィルムが剥離可能に被着された紙製収容体の製造方法であって、前記紙製の基材及びフィルムの少なくとも一方にヒートシール剤を所定のパターンで塗布し、塗布された前記ヒートシール剤を用いて熱溶着により前記フィルムを紙製の基材に貼り付け、収容物を収容できる収容空間を形成するように、前記フィルムが貼り付けられた前記紙製の基材を部分的に重ね合わせ、その重合部を、ヒートシール剤を用いて熱溶着することによって収容体を形成することを特徴とする。
【0008】
上記した構成では、フィルムを紙製基材に対して剥がし取ることができるようにヒートシール剤を紙製の基材及び/又はフィルム上に所定のパターンで塗布して紙製基材に対してフィルムを着脱自在に貼り付けるとともに、同様にヒートシール剤を用いて、フィルム付き紙製基材を、部分的に重ね合わせた重合部を熱溶着させて収容空間を有する収容体を形成するようにしている。すなわち、ヒートシール剤を、紙製の基材やフィルム上に所定のパターンで塗布することで、紙基材に対してフィルムを容易に剥がすことが可能となる。
【0009】
なお、上記した構成において、紙製の基材やフィルム上にヒートシール剤を塗布するパターンとしては様々な形態が考えられるが、紙製基材からフィルムを容易に取り外すことができるパターンであれば、どのようなパターンであってもよい。例えば、紙製の基材やフィルムに塗布されるヒートシール剤は、紙製基材からフィルムを取り外すことができる分散態様で、点状、線状、格子状等のパターンのいずれか、或いは、これらを組み合わせて塗布してもよく、特にフィルムが伸縮性を有する場合には、その伸縮に追従できるようなパターンで塗布されることが好ましい。或いは、紙製の基材やフィルムに塗布されるヒートシール剤は、紙製基材からフィルムを剥離することができる濃度で塗布されてもよい。いずれにしても、ヒートシール剤の分散態様又は濃度を調整する(ヒートシール剤のドット又は線の間隔を変える、或いは、濃度を薄くしたり濃くする)ことにより、紙製基材からフィルムの容易な引き剥がしを可能にしつつ、紙製収容体の用途及び形状に応じて、紙製基材に対するフィルムの密着強度を自在に設定することが可能となる。
【0010】
上記した構成において、ヒートシール剤は、ポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂材であってもよいが、環境を考慮して、水系のもの(水性化された樹脂)、具体的には、水溶性型の水系樹脂、水分散型の水系樹脂等を用いることが好ましい。
【0011】
また、上記した構成において、ヒートシール剤が塗布されるフィルムとしては、伸縮フィルムや無延伸フィルム(例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP)やポリブチレンテレフタレート(PBT)など)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、蒸着フィルム等のフィルム、或いは、紙製フィルムや不織布などを挙げることができる。このようなフィルムは、表面を保護する保護フィルムとして機能するだけでなく、紙製基材への液体の浸透防止(耐水及び耐油)作用、防臭作用、調湿作用も有し、また、ガスバリアとしても機能し得る。
【0012】
上記したように、フィルムが貼り付けられた紙製基材の重合部を、ヒートシール剤を用いて熱溶着することにより形成される収容体としては、例えば、モールド紙製品、大型紙カップ、深絞り紙容器、板紙成形品などを挙げることができる。そのような収容体は、インク等によって文字や模様等の印刷層が形成されていてもよく、例えば、食品や日用品などを収容する袋状のもの、或いは、箱型のように保形性を保つために使用されるもの(例えば、使い捨てされる各種の日用品等)が該当する。
【0013】
また、上記した構成において、フィルム(或いは、紙製基材であってもよい)に対してヒートシール剤を塗布する(印刷する)塗工方法としては、例えば、グラビア印刷塗工法、水性フレキソ塗工法、ロールコーター、チャンバーコーター、その他のコーター等(例えば、エアーコーター、エアーナイフ、シェルクなど)を挙げることができる。
【0014】
また、本発明は、上記したような紙製基材にフィルムを被着した紙製収容体も提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の紙製収容体及びその製造方法によれば、フィルムを紙製基材に対して剥がし取ることができるようにヒートシール剤を、紙製の基材やフィルム上に所定のパターンで塗布して紙製基材に対してフィルムを貼り付けるようにしているため、紙製基材からフィルムを容易に剥離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】紙製の板材にフィルムを被着した概略的な側断面図。
図2】フィルムに対してヒートシール剤を塗布するコーターの一例を示した概略構成図。
図3】フィルム上に塗布されるヒートシール剤のパターンを示し、(a)はランダム又は規則的なドットパターン、(b)は横方向に延びる直線状パターン(横ストライプ)、(c)は縦方向に延びる直線状パターン(縦ストライプ)の一例をそれぞれ示す図。
図4】フィルム上に塗布されるヒートシール剤のパターンを示し、(a)は縦方向に延びる曲線状パターン、(b)は格子パターン、(c)は濃度を変えてヒートシール剤をフィルム全体に亘って塗布したベタ塗りパターンの一例をそれぞれ示す図。
図5】フィルムが着脱自在に被着された紙製収容体の例を示し、(a)は収容空間が浅い皿状の収容体、(b)は収容空間が深いカップ状の収容体をそれぞれ示す図。
図6】本発明に係る紙製収容体の製造方法を実施するための製造装置の工程例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、紙製の板材1の概略的な側断面図を示している。図示のように、この板材1は、紙製の基材(紙製基材とも称する)2上にフィルム3がヒートシール剤4を用いた熱溶着によって被着(貼り付け)されて構成される。本実施形態では、このような板材1を、例えば成形加工等によって成形しつつ、板材1が部分的に重ね合わされた重合部を、ヒートシール剤で熱溶着することによって、後述するように収容空間を有する収容体が形成される。なお、板材1に関しては、平板状に形成されたものであってもよいし、ロール状に巻回された構成であってもよい。
【0018】
紙製基材2は、厚い紙、具体的には、収容体に加工した際の保形性を考慮して、例えば180g/m2以上のものが用いられる。また、紙を構成する具体的な素材については、特に限定されることはなく、例えば、植物性天然繊維、動物性天然繊維、化学繊維等が用いられ得る。すなわち、厚さや材質は、用いられる収容体に応じて適宜、変形することが可能である。このため、用途によっては、180g/m2よりも小さい薄い紙を用いてもよい。
【0019】
前記フィルム3に用いられる素材は、伸縮フィルムや無延伸フィルム(例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP)やポリブチレンテレフタレート(PBT)など)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、蒸着フィルム等のフィルム、或いは、紙製フィルムや不織布などを挙げることができる。このようなフィルムは、表面を保護する保護フィルムとして機能するだけでなく、紙製基材への液体の浸透防止(耐水及び耐油)作用、防臭作用、調湿作用も有し、また、ガスバリアとしても機能し得る。
【0020】
また、紙製基材2に対してフィルム3を被着するヒートシール剤4は、ポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂材であってもよいが、環境を考慮して水系のもの(水性化された樹脂)が用いられることが好ましい。具体的には、水溶性型の水系樹脂、水分散型の水系樹脂等を用いることができる。水性化される樹脂材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂等を用いることができ、これらを水媒体に分散したもの(ディスパージョン型)や、乳化したもの(エマルジョン型)がヒートシール剤4としてフィルム3に塗布される。このような水系のヒートシール剤3については、各種、汎用化されたものを用いることができるが、フィルム3の素材、重量(目付)などに応じて、適切なものを選択して用いればよい。
【0021】
また、本実施形態では、ヒートシール剤4がフィルム3上に所定のパターンで塗布され、ヒートシール剤4が塗布されたフィルム3を紙製基材2に貼り付ける。この場合、紙製基材2にヒートシール剤4を所定のパターンで塗布した後、フィルム3を貼り付ける積層手順であってもよい。すなわち、ヒートシール剤を紙製基材に塗布しておいてもよいし、両方に塗布しておいてもよい。
【0022】
具体的に、本実施形態において、ヒートシール剤4は、フィルム3を紙製基材2から容易に剥がし取ることができるように、フィルム3上に所定のパターンで塗布される。フィルム3上にヒートシール剤4を塗布するパターンとしては様々な形態が考えられるが、紙製基材2からフィルム3を容易に剥がすことができるパターンであれば、どのようなパターンであってもよい。
【0023】
例えば、ヒートシール剤4は、紙製基材2からフィルム3を容易に剥離可能な分散態様でフィルム3上に塗布されてもよい。そのような分散態様としては、例えば、図3に示されるような態様が考えられる。すなわち、図3の(a)は、ランダム又は規則的なドットパターンでフィルム3上にヒートシール剤4が塗布されている。図3の(a)は、上側から下側へ向かってヒートシール剤4のドットの間隔が狭くなっているが、ドットの間隔が狭ければ狭いほど紙製基材2に対するフィルム3の密着強度は強くなる。
【0024】
また、図3の(b)は、横方向に延びる直線状パターン(横ストライプ)でフィルム3上にヒートシール剤4が塗布されている。図3の(b)は、上側から下側へ向かってヒートシール剤4の線の間隔が狭くなっているが、線の間隔が狭ければ狭いほど紙製基材2に対するフィルム3の密着強度は強くなる。
【0025】
また、図3の(c)は、縦方向に延びる直線状パターン(縦ストライプ)でフィルム3上にヒートシール剤4が塗布されている。図3の(c)は、上側から下側へ向かってヒートシール剤4の線の間隔が狭くなっているが、線の間隔が狭ければ狭いほど紙製基材2に対するフィルム3の密着強度は強くなる。
【0026】
また、例えば、図4の(a)に示されるように、縦方向に延びる曲線状パターンでフィルム3上にヒートシール剤4が塗布されてもよい。この場合も同様に、上側から下側へ向かってヒートシール剤4の線の間隔が狭くなっているが、線の間隔が狭ければ狭いほど紙製基材2に対するフィルム3の密着強度は強くなる。
【0027】
また、図4の(b)に示されるように、格子状パターンでフィルム3上にヒートシール剤4が塗布されてもよい。格子目が細かくなればなるほど、紙製基材2に対するフィルム3の密着強度は強くなる。
【0028】
いずれのパターンにおいても、フィルム3が伸縮性を有する素材で形成される場合には、その伸縮に追従できるようなパターンでヒートシール剤4がフィルム3上に塗布されることが好ましい。
【0029】
また、フィルム3上に塗布されるヒートシール剤4は、図4の(c)に示されるように、紙製基材2からフィルム3を容易に剥離することができるような濃度で塗布されてもよい。図4の(c)は、上側から下側へ向かってヒートシール剤4の濃度が濃くなっているが、濃度が濃ければ濃いほど紙製基材2に対するフィルム3の密着強度は強くなる。
【0030】
以上のようなヒートシール剤4の塗布形態は、単なる一例であるが、このように、ヒートシール剤4の分散態様又は濃度を調整する(ヒートシール剤4のドット又は線の間隔を変える、或いは、濃度を薄くする又は濃くする)ことにより、紙製基材2からのフィルム3の容易な引き剥がしが可能になる。すなわち、紙製収容体の用途及び形状に応じて、紙製基材2に対するフィルム3の密着強度を、ヒートシール剤の印刷パターンを変えることで自在に設定することが可能となる。
【0031】
図2には、フィルム3に対してヒートシール剤4を塗布するためのコーター60の一例が概略的に示されている。このコーター60は、前述したヒートシール剤4の塗布パターンである模様等をゴムローラ(版胴)64上に写し取り、ゴムローラ64を回転させて、搬送されるフィルム3をゴムローラ64と圧胴65との間のニップ部に送り込んで塗布するようになっている。
【0032】
コーター60には、ロールコーター式とチャンバーコーター式とが存在しており、どちらの方式を用いてもよいが、本実施形態では、塗布量の調整が容易なチャンバーコーター式を採用しており、コーター60は、図示しないチャンバー内に設置されている。
【0033】
搬送されるフィルム3に対してヒートシール剤4を送り込むコーター60は、ヒートシール剤4を供給する供給部61と、供給されたヒートシール剤4を貯留する貯留部62と、貯留部62に貯留されたヒートシール剤4を回転しながら付着させるアニロックスロール63と、アニロックスロール63に当接して回転するゴムローラ64と、ゴムローラ64に圧接する圧胴65とを備えている。そして、フィルム3は、図示しないフィルム供給ブラケットからゴムローラ64とこれに圧接する圧胴65との間のニップ部を通過させながら搬送される。
【0034】
アニロックスロール63の表面には、多数の微細なセル63aが形成されており、アニロックスロール63が回転することで貯留部62に貯留されたヒートシール剤4は、セル63aに保持され、そのまま、前述したヒートシール剤4の塗布パターンが写し取られたゴムローラ64の表面に転移される。また、ゴムローラ64の表面に転移されたヒートシール剤4は、圧胴65によってフィルム3の表面に押し付けられ、これにより、フィルム3の表面には、前述した塗布パターンでヒートシール層が形成される。
【0035】
貯留部62には、アニロックスロール63の回転時にセル63aに保持されるヒートシール剤4を掻き落として、保持量を均一化させるブレード66a,66bが配設されている。このようなブレード66a,66bによって、前述したチャンバーからヒートシール剤4が漏れることを防止し、ヒートシール層の厚さを均一にすることが可能となる。なお、ブレード66a,66bによって掻き落とされたヒートシール剤4は、受け皿67で受けられるようになっている。
【0036】
上記したような構成では、セル63aの構成(深さ、密度等)によってヒートシール層の厚さを適宜、調整することが可能である。また、各ロールの回転量、ヒートシール剤の粘度等を調整することでも膜厚を調整することが可能である。この場合、十分なヒートシール性が確保されるように、少なくともフィルム3の表面には、1~5g/m2 の範囲でヒートシール剤4を塗布することが好ましい。
【0037】
また、上記したコーター60の下流側には、乾燥機(ドライヤー)70を設置しておき、ヒートシール剤4が塗布されたフィルム3を乾燥させることが好ましい。フィルム3の表面に印刷されるヒートシール剤4は、水系であれば、印刷した後、直ちに乾燥させることで、安定したシール強度を発現することが可能となる。
【0038】
図6には、ヒートシール剤4を介して紙製基材2にフィルム3が被着された上記の板材1を用いて紙製収容体を製造するための製造装置80の概略的構成が示されている。
このような製造装置80を用いた製造では、最初に、給紙部50から紙製基材2が供給される。紙製基材2は、本実施形態では、例えば、最終的に使用される製品(収容体)に応じた大きさに裁断されており、給紙部50は、この裁断された基材2を所定の枚数積層した積層体から1枚ずつ繰り出すようになっている。この場合、一般的な塗工機のようにロール状の原反から基材2が繰り出されてもよい。
【0039】
次に、給紙部50から繰り出される紙製基材2は、印刷部(例えばグラビア印刷機)52で所定の印刷が施された後、フィルム重合部54において、その上にフィルム3が着脱自在に重ね合わられる。このフィルム重合部54には、前述したようにコーター60等を用いて、既に所定のパターンでヒートシール剤4が塗布されたフィルム3が用意されており、例えば負圧によりフィルム3を紙製基材2上へ引き寄せるようにして重ね合わせる。その後、このようにしてフィルム3が積層された紙製基材2は、熱溶着部56に送り込まれて加熱されることによってヒートシール剤4が溶かされ、フィルム3と紙製基材2が容易に剥離できるように熱溶着される。
【0040】
そして、このようにしてフィルム3と紙製基材2とが熱溶着された板材1は、最終的に成形部58へと送り込まれ、この成形部58において、成形加工等によって部分的に重ね合わされた重合部がヒートシール剤を用いて熱溶着され、各種の収容体が形成される。
【0041】
例えば、図5に一例として示されるような収容空間Sを有する収容体90A,90Bを形成することが可能となる。図5の(a)は、収容空間Sが浅い皿状の収容体90Aを示し、図5の(b)は、収容空間Sが深いカップ状の収容体90Bを示している。
【0042】
以上、本実施形態によれば、フィルム3を紙製基材2に対して容易に剥がし取ることができるように、ヒートシール剤4をフィルム3上に所定のパターンで塗布して紙製基材2に対してフィルム3を貼り付けており、更に、フィルム付き紙製基材(板材1)を部分的に重ね合わせた重合部にヒートシール剤を用いて熱溶着させ、収容空間Sを有する収容体を形成するようにしている。
【0043】
すなわち、ヒートシール剤を、基材重合部の熱溶着のために使用するだけでなく、フィルム3に所定のパターンで塗布して、紙製基材2に対するフィルム3の貼り付けに使用しているため、付加的な構成要素や製造機械を必要とせず、既存の構成要素及び製造機械を用いて、紙製基材2からフィルム3が容易に剥離しやすい積層構造を実現することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
例えば、ヒートシール剤の塗布パターンは、上記したパターンに限定されることはなく、直線と曲線を含ませたり、ドット模様を含ませる等、様々な印刷パターンにすることが可能である。また、フィルム、紙製基材、ヒートシール剤の素材も任意に設定することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 板材
2 紙製基材
3 フィルム
4 ヒートシール剤
90A,90B 収容体
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6