(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158857
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20231024BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068884
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】林 信太郎
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC20
3D131BC44
3D131EB05U
3D131EB11V
3D131EB12X
3D131EB14X
3D131EB20X
3D131EB28X
(57)【要約】
【課題】排水性を向上しつつ、騒音性能の悪化を抑制する。
【解決手段】主溝2の少なくとも1本は、蛇行主溝21であり、その第1溝壁2a及び第2溝壁2bは、それぞれ、上部溝壁部分と下部溝壁部分とを有し、上部溝壁部分は下部溝壁部分を介して溝底部2cに接続されている。第1溝壁2aは、最小溝壁角度部分と最大溝壁角度部分とが、タイヤ周方向に沿って所定の繰返し周期で交互に現れるように、下部溝壁上端縁2aleが、タイヤ周方向に沿って波状に延在しており、第2溝壁2bは、下部溝壁上端縁2bleが、タイヤ周方向に沿って波状に延在している。第1溝壁2aの、最小溝壁角度部分は幅広溝部と、最大溝壁角度部分は幅狭溝部と、それぞれタイヤ周方向位置が同じである。第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueは、振幅が第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleの振幅よりも小さい、直線状、波状又はジグザグ状に延在している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面に、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本の主溝を有する、タイヤであって、
前記主溝のうちの少なくとも1本は、トレッド踏面視において、溝表面の少なくとも一部がタイヤ周方向に沿って波状に延在する、蛇行主溝であり、
前記蛇行主溝における、タイヤ幅方向一方側の溝壁である第1溝壁及びタイヤ幅方向他方側の溝壁である第2溝壁は、それぞれ、タイヤ幅方向断面視において、直線状に又は溝側に曲率中心を有する一定の曲率で円弧状にトレッド踏面から延びる上部溝壁部分と、前記上部溝壁部分よりも大きな溝側に曲率中心を有する一定の曲率で円弧状に前記上部溝壁部分に連なって延びる下部溝壁部分と、を有するとともに、前記上部溝壁部分は、前記下部溝壁部分を介して溝底部に接続されており、
タイヤ幅方向断面視において、トレッド踏面に立てた法線に対するトレッド踏面における前記上部溝壁部分の溝壁角度を上部溝壁角度と呼び、タイヤ幅方向断面視における、前記上部溝壁部分の上端及び前記上部溝壁部分と前記下部溝壁部分との境界をタイヤ周方向に連ねた縁を、それぞれ、上部溝壁上端縁及び下部溝壁上端縁と呼び、さらに、前記蛇行主溝の両溝壁における前記下部溝壁上端縁間のタイヤ幅方向間隔を溝壁間隔と呼んだとき、
前記蛇行主溝の前記第1溝壁は、上部溝壁角度が最小となる最小溝壁角度部分と、上部溝壁角度が最大となる最大溝壁角度部分とが、タイヤ周方向に沿って所定の繰返し周期で交互に現れるように、下部溝壁上端縁が、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在しており、
前記蛇行主溝の前記第2溝壁は、下部溝壁上端縁が、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在しており、
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記最小溝壁角度部分は、前記蛇行主溝の溝壁間隔が最大となる幅広溝部とタイヤ周方向位置が同じであり、前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記最大溝壁角度部分は、前記蛇行主溝の溝壁間隔が最小となる幅狭溝部とタイヤ周方向位置が同じであり、
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の上部溝壁上端縁は、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、タイヤ幅方向における振幅が前記第1溝壁の前記下部溝壁上端縁のタイヤ幅方向における振幅よりも小さい、直線状、波状又はジグザグ状に延在している、タイヤ。
【請求項2】
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記上部溝壁上端縁は、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、直線状に延在している、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記最大溝壁角度部分の上部溝壁角度は、25°以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記蛇行主溝の前記第2溝壁の上部溝壁上端縁は、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、波状に延在している、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記下部溝壁上端縁のタイヤ幅方向における振幅は、前記蛇行主溝の前記第2溝壁の前記下部溝壁上端縁のタイヤ幅方向における振幅よりも小さい、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤは、複数本の前記主溝を有し、
前記蛇行主溝は、前記複数本の前記主溝のうちの、車両装着内側におけるタイヤ幅方向最外側の主溝である、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハイドロプレーニング現象を抑制し、タイヤの排水性を向上させる提案が多くなされている。例えば、特許文献1には、主溝の両溝壁を、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って蛇行させるようにしたタイヤが、提案されている。特許文献1に記載のタイヤによれば、タイヤの排水性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載されたようなタイヤでは、主溝の溝壁がタイヤ周方向に沿って直線状に延びるタイヤに比べて、主溝を形成する陸部の圧縮剛性がタイヤ周方向に沿って大きく変動するため、騒音性能が悪化し易いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、排水性を向上しつつ、騒音性能の悪化を抑制することができるタイヤを、提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段は、以下のとおりである。
【0007】
(1)本発明のタイヤは、
トレッド踏面に、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本の主溝を有する、タイヤであって、
前記主溝のうちの少なくとも1本は、トレッド踏面視において、溝表面の少なくとも一部がタイヤ周方向に沿って波状に延在する、蛇行主溝であり、
前記蛇行主溝における、タイヤ幅方向一方側の溝壁である第1溝壁及びタイヤ幅方向他方側の溝壁である第2溝壁は、それぞれ、タイヤ幅方向断面視において、直線状に又は溝側に曲率中心を有する一定の曲率で円弧状にトレッド踏面から延びる上部溝壁部分と、前記上部溝壁部分よりも大きな溝側に曲率中心を有する一定の曲率で円弧状に前記上部溝壁部分に連なって延びる下部溝壁部分と、を有するとともに、前記上部溝壁部分は、前記下部溝壁部分を介して溝底部に接続されており、
タイヤ幅方向断面視において、トレッド踏面に立てた法線に対するトレッド踏面における前記上部溝壁部分の溝壁角度を上部溝壁角度と呼び、タイヤ幅方向断面視における、前記上部溝壁部分の上端及び前記上部溝壁部分と前記下部溝壁部分との境界をタイヤ周方向に連ねた縁を、それぞれ、上部溝壁上端縁及び下部溝壁上端縁と呼び、さらに、前記蛇行主溝の両溝壁における前記下部溝壁上端縁間のタイヤ幅方向間隔を溝壁間隔と呼んだとき、
前記蛇行主溝の前記第1溝壁は、上部溝壁角度が最小となる最小溝壁角度部分と、上部溝壁角度が最大となる最大溝壁角度部分とが、タイヤ周方向に沿って所定の繰返し周期で交互に現れるように、下部溝壁上端縁が、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在しており、
前記蛇行主溝の前記第2溝壁は、下部溝壁上端縁が、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在しており、
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記最小溝壁角度部分は、前記蛇行主溝の溝壁間隔が最大となる幅広溝部とタイヤ周方向位置が同じであり、前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記最大溝壁角度部分は、前記蛇行主溝の溝壁間隔が最小となる幅狭溝部とタイヤ周方向位置が同じであり、
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の上部溝壁上端縁は、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、タイヤ幅方向における振幅が前記下部溝壁上端縁のタイヤ幅方向における振幅よりも小さい、直線状、波状又はジグザグ状に延在している。
本発明のタイヤによれば、排水性を向上しつつ、騒音性能の悪化を抑制することができる。
【0008】
(2)上記(1)のタイヤにおいて、
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記上部溝壁上端縁は、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、直線状に延在していることが好ましい。
この場合、騒音性能の悪化をより効果的に抑制することができる。
【0009】
(3)上記(1)のタイヤにおいて、
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記最大溝壁角度部分の上部溝壁角度は、25°以下であることが好ましい。
この場合、排水性をより効果的に向上させることができる。
なお、上記(2)のタイヤにおいて、上記(3)の構成を有することも好ましい。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのタイヤにおいて、
前記蛇行主溝の前記第2溝壁の上部溝壁上端縁は、タイヤ周方向に沿って、波状に延在していることが好ましい。
この場合、排水性をより効果的に向上させることができる。
なお、上記(2)の構成を有する上記(3)のタイヤにおいて、上記(4)の構成を有することも好ましい。
【0011】
(5)上記(1)~(3)のいずれかのタイヤにおいて、
前記蛇行主溝の前記第1溝壁の前記下部溝壁上端縁のタイヤ幅方向における振幅は、前記蛇行主溝の前記第2溝壁の前記下部溝壁上端縁のタイヤ幅方向における振幅よりも小さいことが好ましい。
この場合、排水性をより効果的に向上させることができる。
なお、上記(2)の構成を有する上記(3)のタイヤ、上記(2)及び(3)の構成を有する上記(4)のタイヤにおいて、上記(5)の構成を有することも好ましい。
【0012】
(6)上記(1)のタイヤにおいて、
前記タイヤは、複数本の前記主溝を有し、
前記蛇行主溝は、前記複数本の前記主溝のうちの、車両装着内側におけるタイヤ幅方向最外側の主溝であることが好ましい。
この場合、排水性をより効果的に向上させることができる。
なお、上記(1)~(5)のうちの少なくとも1つの構成を有するタイヤにおいて、上記(6)の構成を有することも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排水性を向上しつつ、騒音性能の悪化を抑制することができるタイヤを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤの、正面図である。
【
図2】
図1のA部のトレッド踏面を平面に展開した、展開図である。
【
図4】(a)は、
図3のX1―X1線に沿う断面図であり、(b)は、
図3のX2-X2線に沿う断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るタイヤの、トレッド踏面の一部を拡大して示す、
図3と同様の拡大展開図である。
【
図7】(a)は、
図6のX3―X3線に沿う断面図であり、(b)は、
図6のX4-X4線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るタイヤは、任意の種類のタイヤに好適に利用でき、例えば、乗用車用空気入りタイヤ、トラック・バス用空気入りタイヤ等に好適に利用できる。
【0016】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。一部の図面では、タイヤ幅方向を符号「WD」で示し、タイヤ周方向を符号「CD」で示し、また、車両装着内側(タイヤを車両に装着したときに、タイヤ幅方向において車両の内部側となる側)を「IN」で示し、車両装着外側(タイヤを車両に装着したときに、タイヤ幅方向において車両の外部側となる側)を「OUT」で示している。
【0017】
なお、詳細な説明は省略するが、以下に説明する実施形態のタイヤとしては、例えば、一対のビード部からそれぞれタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨るトレッド部が連なっており、一方のビード部からトレッド部を通り他方のビード部にわたって延びる、例えば有機繊維コード或いはスチールコードからなるカーカスプライを有するカーカスと、このカーカスとトレッド部のトレッドゴムとの間に配置した、例えばスチールコードからなるベルト層を有するベルトと、を備えた、一般的なタイヤ構造を適用することができる。
【0018】
以下、特に断りのない限り、各要素の位置関係や寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で測定されるものとする。また、本明細書において、「トレッド踏面」とは、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態において、路面と接することとなるタイヤの全周にわたる外周面をいい、トレッド踏面のタイヤ幅方向の幅を、「トレッド幅(TW)」といい、トレッド踏面のタイヤ幅方向の端を「トレッド端(TE)」という。ここで、トレッド踏面における溝等の各要素の寸法については、トレッド踏面視において測定されるものとする。ここで、本明細書において、「トレッド踏面視」とは、トレッド踏面を平面上に展開した状態でトレッド表面を平面視することを指す。
【0019】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている又は将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に記載されるサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0020】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0021】
(第1実施形態)
図1~
図5は、本発明の第1実施形態に係るタイヤ10を説明するための図面である。
図1は、本発明の第1実施形態に係るタイヤの、正面図である。
図2は、
図1のA部のトレッド踏面を平面に展開した、展開図である。
図3は、
図2のB部の、拡大図である。
図4(a)は、
図3のX1―X1線に沿う断面図であり、
図4(b)は、
図3のX2-X2線に沿う断面図であり、
図5は、
図3のY1-Y1線に沿う断面図である。ここで、
図2及び
図3においては、理解容易のため、後述する蛇行主溝21のみ、溝開口部だけでなくその内部(溝開口部より溝深さ方向内側の部分)の詳しい様子も併せて描かれている。
図3においては、理解容易のため、後述する蛇行主溝21のトレッド踏面1への両開口端縁及び溝底部2cから隆起する隆起部5の輪郭のみやや太い線で描かれており、
図3(ひいては、
図2)における、それらの間にあるやや細い線は、タイヤ幅方向断面視において曲率(ひいては、曲率半径)の変化する点をタイヤ周方向に連ねた縁(線)である。
なお、本実施形態のタイヤ10は、任意の種類のタイヤとして、構成されてよい。
但し、本実施形態のタイヤ10は、タイヤへの刻印や取扱説明書等により車両への装着方向が指定されるタイヤとして、構成されている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のタイヤ10は、トレッド踏面1に、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本(図示の例では、4本)の主溝2(21、22、23及び24)を有している。
各主溝2は、タイヤ周方向の全体にわたって連続して延びている。また、各主溝2、より具体的に、各主溝2のトレッド踏面1への両開口端縁は、特に断りのない限り、それぞれ、
図2に示すように、タイヤ周方向に沿って、直線状に延びていてもよく、波状又はジグザグ状等に延びていてもよい。ここで、本明細書において、「波状に延びる(又は、延在する)」とは、丸みを帯びた折曲り部で繰返し折れ曲がりながら延びることを指し、「滑らかな波状に延びる(又は、延在する)」とは、丸みを帯びた折曲り部で繰返し折れ曲がりながらかつ直線の部分を有さずに延びることを指し、「ジグザグ状に延びる(又は、延在する)」とは、角張った折曲り部で繰返し折れ曲がりながら延びることを指す。また、本明細書において、「波状に延びる(又は、延在する)」ことを、「蛇行する」ともいい、「滑らかな波状に延びる(又は、延在する)」ことを、「滑らかに蛇行する」ともいう。
本実施形態では、タイヤ10は、トレッド踏面1に主溝2を4本有しているが、主溝2は、トレッド踏面1に少なくとも1本形成されていればよく、例えば、1~3本又は5本以上であってもよい。しかし、主溝2の本数は、十分な排水性を確保する観点からは、複数本(2本以上)であることが好ましく、排水性と操縦安定性とをバランスよく両立させる観点からは、3~5本程度であることがさらに好ましい。
【0023】
ここで、本実施形態において、上述の主溝2のうちの少なくとも1本(図示の例では、1本)は、トレッド踏面視において、溝表面の少なくとも一部がタイヤ周方向に沿って波状に延在する、蛇行主溝である。本実施形態において、より具体的に、
図1及び
図2に示すように、複数本(図示の例では、4本)の主溝2のうちの、車両装着内側におけるタイヤ幅方向最外側の主溝(車両装着最内側から数えて1番目の主溝。 以下、「第1主溝」ともいう。)21が、蛇行主溝である。なお、以下、蛇行主溝である第1主溝21を、単に蛇行主溝21ともいう。
蛇行主溝21については、追って詳述する。
【0024】
本実施形態において、より具体的に、
図1及び
図2に示すように、主溝2のうち、車両装着内側におけるタイヤ幅方向最外側の主溝(第1主溝)21は、上述のとおりの蛇行主溝であり、車両装着内側におけるタイヤ幅方向外側から2番目の主溝(車両装着最内側から数えて2番目の主溝。以下、「第2主溝」ともいう。)22、車両装着外側におけるタイヤ幅方向外側から2番目の主溝(車両装着最内側から数えて3番目の主溝。以下、「第3主溝」ともいう。)23及び車両装着外側におけるタイヤ幅方向最外側の主溝(車両装着最内側から数えて4番目の主溝。以下、「第4主溝」ともいう。)24は、蛇行主溝ではない非蛇行主溝、即ち、トレッド踏面視において、溝表面の少なくとも一部がタイヤ周方向に沿って波状に延在してはいない、主溝である。但し、本実施形態において、主溝2のうちの少なくとも1本が蛇行主溝であればよく、例えば、第1主溝21に替えて又は第1主溝21に加えて、第2主溝22、第3主溝23及び第4主溝24のうちの少なくとも1本が、蛇行主溝であってもよい。しかし、排水性の向上等の観点からは、少なくとも第1主溝21が、蛇行主溝であることが好ましく、排水性の向上及び騒音性能の悪化抑制の両立等の観点からは、本実施形態のように、第1主溝21のみが、蛇行主溝であることがより好ましい。
なお、本実施形態において、
図1及び
図2に示すように、非蛇行主溝である第2主溝22、第3主溝23及び第4主溝24は、いずれも、非蛇行主溝であるとともに、トレッド踏面1への両開口端縁がタイヤ周方向に沿って直線状に延びる、直線状の主溝である。
【0025】
なお、各主溝2のトレッド踏面1への開口部の、タイヤ幅方向幅(以下、「溝開口幅」ともいう。)Wo(溝開口幅Woがタイヤ周方向で変動する場合は、その最大値)は、特に限定されないが、例えば、4~15mmとすることができる。
同様に、各主溝2の、トレッド踏面1に垂直な方向に測った溝の深さ(以下、「溝深さ」ともいう。)D(溝深さDが変動する場合は、その最大値)は、特に限定されないが、例えば6~20mmとすることができる。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のタイヤ10は、トレッド踏面1に、少なくとも2つ(図示の例では、5つ)の陸部3(31、32、33、34及び35)を有しており、上述の各主溝2は、それぞれ、タイヤ幅方向に隣接する陸部3の間に形成されている。
本実施形態において、陸部3のうち、車両装着内側におけるタイヤ幅方向最外側の陸部(車両装着最内側から数えて1番目の陸部。以下、「第1陸部」ともいう。)31、車両装着内側におけるタイヤ幅方向外側から2番目の陸部(車両装着最内側から数えて2番目の陸部。以下、「第2陸部」ともいう。)32及び車両装着外側におけるタイヤ幅方向最外側の陸部(車両装着最内側から数えて5番目の陸部。以下、「第5陸部」ともいう。)35は、タイヤ周方向に陸部が連続する、リブ状陸部であり、タイヤ赤道面CLを含む陸部(車両装着最内側から数えて3番目の陸部。以下、「第3陸部」ともいう。)33及び車両装着外側におけるタイヤ幅方向外側から2番目の陸部(車両装着最内側から数えて4番目の陸部。以下、「第4陸部」ともいう。)34は、後述する横溝4(より具体的に、横溝43又は横溝44)によりタイヤ周方向に陸部が分断される、ブロック状陸部である。但し、各陸部3は、それぞれ、リブ状陸部であってもブロック状陸部であってもよい。
【0027】
図1及び
図2の例に示されるように、各陸部3は、タイヤ周方向と交わる向きに延びる複数の横溝4を有していてもよい。
より具体的に、本実施形態において、
図1及び
図2に示すように、第1陸部31は、第1陸部31のタイヤ幅方向一方側の端(車両装着内側の端)から延びて第1陸部31内に終端する、複数の横溝41を有している。第2陸部32は、第2陸部32のタイヤ幅方向他方側の端(車両装着外側の端)から延びて第2陸部32内に終端する、複数の横溝42を有している。第3陸部33は、第3陸部33のタイヤ幅方向一方側の端から第3陸部33を横切って第3陸部33のタイヤ幅方向他方側の端まで延びる、複数の横溝43を有している。第4陸部34は、第4陸部34のタイヤ幅方向一方側の端から第4陸部34を横切って第4陸部34のタイヤ幅方向他方側の端まで延びる、複数の横溝44と、第4陸部34のタイヤ幅方向他方側の端(車両装着外側の端)から延びて第4陸部34内に終端する、複数の横溝45とを、タイヤ周方向に交互に有している。第5陸部35は、第5陸部35のタイヤ幅方向一方側の端(車両装着内側の端)から延びて第5陸部35内に終端する、複数の横溝46と、第5陸部35のタイヤ幅方向他方側の端(車両装着外側の端)から延びて第5陸部35内に終端する、複数の横溝47と、を、タイヤ周方向に交互に有している。これらの横溝4(41~47)の構成により、トレッド踏面全体として、タイヤ周方向の剛性分布を均一化することができ、ひいては、騒音性能の向上等に寄与することができる。
【0028】
特に、本実施形態において、
図1及び
図2に示すように、第2陸部32内の横溝42、即ち、蛇行主溝21に(より具体的に、図示の例では、蛇行主溝21のタイヤ幅方向内側に)隣接する主溝22に連通する横溝42が、第2陸部32内を(より具体的に、図示の例では、第2陸部32内をタイヤ幅方向外側に)蛇行主溝21の後述する幅狭溝部Pwn近傍に向かって延びている。特にこれにより、タイヤ周方向の剛性分布を均一化することができ、ひいては、騒音性能の向上等に寄与することができる。
さらに、本実施形態において、
図1及び
図2に示すように、第2陸部32内の横溝42は、上述のとおり、当該第2陸部32内で終端している。これにより、よりタイヤ周方向の剛性分布を均一化することができ、ひいては、より騒音性能の向上等に寄与することができる。
但し、横溝4の構成は任意であり、また、複数の陸部3のうちの少なくとも一部又は全部は、横溝4を有していなくてもよい。
【0029】
次に、
図3~
図5も参照しつつ、本実施形態において蛇行主溝とされている第1主溝21(蛇行主溝21)について、詳述する。
蛇行主溝21は、トレッド踏面視において、溝表面の少なくとも一部がタイヤ周方向に沿って波状に延在している。より具体的に、本実施形態において、
図3に示すように、蛇行主溝21の溝表面のうち、後述する、第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueを除く、第1溝壁2a、第2溝壁2b及び溝底部2cのうちの少なくとも一部(図示の例では、例えば、後述する、第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2ale、第1溝壁2aと溝底部2cとの境界縁、第2溝壁2bと溝底部2cとの境界縁、第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2ble、及び、第2溝壁2bの上部溝壁上端縁2bue、等)が、タイヤ周方向に沿って、波状に延在、即ち、蛇行している。
本実施形態において、
図3及び
図4(a)、(b)に示すように、蛇行主溝21は、第1溝壁2a側と第2溝壁2b側とが互いに非対称に形成されている。即ち、蛇行主溝21は、タイヤ周方向に延びる対象軸を有していない。
【0030】
本実施形態において、
図3及び
図4(a)、(b)に示すように、蛇行主溝21における、タイヤ幅方向一方側(図示の例では、タイヤ幅方向外側)の溝壁である第1溝壁2a及びタイヤ幅方向他方側(図示の例では、タイヤ幅方向内側)の溝壁である第2溝壁2bは、それぞれ、タイヤ幅方向断面視において、直線状に又は溝側(より具体的に、陸部3(31又は32)側ではなく、主溝2(21)側)に曲率中心を有する一定の曲率(曲率半径の逆数)で円弧状にトレッド踏面1から延びる上部溝壁部分2au、2buと、上部溝壁部分2au、2buよりも大きな溝側(より具体的に、陸部3(31又は32)側ではなく、主溝2(21)側)に曲率中心を有する一定の曲率で円弧状に上部溝壁部分2au、2buに連なって延びる下部溝壁部分2al、2blと、を有するとともに、上部溝壁部分2au、2buは、下部溝壁部分2al、2blを介して溝底部2cに接続されている。
図4(a)、(b)に示す例では、タイヤ幅方向断面視において、上部溝壁部分2au、2buは、直線状に(即ち、曲率0、曲率半径∞で)トレッド踏面1から延びている。但し、タイヤ幅方向断面視において、上部溝壁部分2au、2buは、溝側(図示の例では、蛇行主溝21側)に曲率中心を有する(即ち、陸部側(図示の例では、第1陸部31又は第2陸部32側)に凸の)一定の曲率で円弧状にトレッド踏面1から延びていてもよい。また、
図4(a)、(b)に示す例において、上述のとおり、タイヤ幅方向断面視において、第1溝壁2aの下部溝壁部分2alは、上部溝壁部分2auに連なって延びており、溝側に曲率中心を有する(即ち、陸部側(図示の例では、第1陸部31側)に凸の)一定の曲率を有する円弧状であり、当該一定の曲率は上部溝壁部分2auの曲率(図示の例では、0)よりも大きい。同様に、
図4(a)、(b)に示す例において、タイヤ幅方向断面視において、第2溝壁2bの下部溝壁部分2blは、上部溝壁部分2buに連なって延びており、溝側に曲率中心を有する(即ち、陸部側(図示の例では、第2陸部32側)に凸の)一定の曲率を有する円弧状であり、当該一定の曲率は上部溝壁部分2buの曲率(図示の例では、0)よりも大きい。
なお、本実施形態において、タイヤ幅方向断面視において、第1溝壁2aの上部溝壁部分2auと下部溝壁部分2alとは、互いに曲率(ひいては、曲率半径)は異なるが、両者の境界縁(後述の、下部溝壁上端縁2ale)において滑らかに(即ち、両者の境界縁において共通接線を有して(図示の例では、直線状の上部溝壁部分2auが下部溝壁上端縁2aleにおける下部溝壁部分2alの接線となって))接続されている。これにより、上部溝壁部分2auと下部溝壁部分2alとが、いわば滑らかに接続されている。第2溝壁2bの上部溝壁部分2buと下部溝壁部分2blと、についても、同様である。
【0031】
本実施形態において、上述のとおり、
図4(a)、(b)に示すように、第1溝壁2a及び第2溝壁2bの上部溝壁部分2au、2buは、それぞれ、下部溝壁部分2al、2blを介して、溝底部2cに接続されている。即ち、上部溝壁部分2au、2buは、それぞれ、溝側に曲率中心を有する一定の曲率で円弧状に上部溝壁部分2au、2buに連なって延びる下部溝壁部分2al、2blを介することにより、いわば滑らかに溝底部2cに接続されている。本実施形態においては、図示のように、タイヤ幅方向断面視において、溝底部2cは、下部溝壁部分2al、2blに連なって延びている。但し、上部溝壁部分2au、2buは、それぞれ、例えば、下部溝壁部分2al、2blの溝深さ方向下側にさらに連なって延びる、下部溝壁部分2al、2blよりも大きな曲率の、下部溝壁部分2al、2blと同様の構成の溝壁部分をさらに介して、溝底部2cに接続されていてもよい。しかし、蛇行主溝2の構成をより簡易にする等の観点からは、図示の例のように、上部溝壁部分2au、2buは、それぞれ、下部溝壁部分2al、2blのみを介して、溝底部2cに接続されるのが好ましい。
なお、本実施形態において、タイヤ幅方向断面視において、第1溝壁2aの上部溝壁部分2auと溝底部2cとは、両者の境界縁において滑らかに(即ち、両者の境界縁において共通接線を有して(図示の例では、直線状の溝底部2cが上記境界縁における下部溝壁部分2alの接線となって))接続されている。これにより、下部溝壁部分2alと溝底部2cとが、いわば滑らかに接続されている。第2溝壁2bの下部溝壁部分2blと溝底部2cと、についても、同様である。
ここで、本明細書において、「溝底部(2c)」とは、溝表面のうちの溝深さが最大となる部分をいう。溝底部2cは、タイヤ周方向の各位置において、タイヤ幅方向幅(≠0)を有していてもよいし、タイヤ幅方向幅を有していなくても(即ち、タイヤ幅方向幅が0であっても)よい。即ち、溝底部2cは、タイヤ幅方向幅を有しておらず、例えば、下部溝壁部分2al、2blの溝深さ方向の最深部が溝底部2cとなっていてもよい。本実施形態においては、
図3及び
図4(a)、(b)に示すように、溝底部2cは、タイヤ周方向の各位置において、タイヤ幅方向幅(≠0)を有している。溝底部2cがタイヤ幅方向幅(≠0)を有している場合、タイヤ幅方向断面視において、溝底部2cは直線状(即ち、曲率0、曲率半径∞)となる。
【0032】
本実施形態において、上述のとおり、タイヤ幅方向断面視において、第1溝壁2aの上部溝壁部分2auと下部溝壁部分2alと、は、両者の境界縁(後述の、下部溝壁上端縁2ale)において滑らかに接続されている。従って、第1溝壁2aの後述する最小溝壁角度部分Paminにおける下部溝壁上端縁2ale(
図4(b)参照)の、溝底部2cからの高さは、第1溝壁2aの後述する最大溝壁角度部分Pamaxにおける下部溝壁上端縁2ale(
図4(a)参照)の、溝底部2cからの高さよりも、高い。
一方、本実施形態において、第2溝壁2bの後述の下部溝壁上端縁2ble(
図4(a)、(b)参照)の、溝底部2cからの高さは、タイヤ周方向に沿って一定である。本実施形態において、当該第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2bleの、溝底部2cからの高さは、上述の第1溝壁2aの最小溝壁角度部分Paminにおける下部溝壁上端縁2aleの、溝底部2cからの高さよりも、低く、上述の第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxにおける下部溝壁上端縁2aleの、溝底部2cからの高さよりも、高くされている。
【0033】
次に、
図3及び
図4(a)、(b)を参照して、本発明において、タイヤ幅方向断面視において、トレッド踏面1に立てた法線に対するトレッド踏面1における(換言すれば、後述の上部溝壁上端縁2aue、2bueにおける)上部溝壁部分(2au、2bu)の溝壁角度を「上部溝壁角度(θ2a、θ2b)」と呼び、タイヤ幅方向断面視における、上部溝壁部分(2au、2bu)の上端(即ち、トレッド踏面への両溝開口端)及び上部溝壁部分(2au、2bu)と下部溝壁部分(2al、2bl)との境界をタイヤ周方向に連ねた縁(線)を、それぞれ、「上部溝壁上端縁(2aue、2bue)」(即ち、トレッド踏面への両溝開口縁)及び「下部溝壁上端縁(2ale、2ble)」と呼び、さらに、蛇行主溝21の両溝壁(2a、2b)における下部溝壁上端縁(2ale、2ble)間のタイヤ幅方向間隔を「溝壁間隔(Ww)」と呼ぶこととする。ここで、上部溝壁角度θ2a及びθ2bは、それぞれ、上部溝壁部分2au又は2buが、上部溝壁上端縁2aue又は2bueから溝底部2cに向かうにつれて、
図4(a)、(b)に示す例のように溝側(図示の例では、蛇行主溝21側)に近づくように傾斜する場合を正とし、陸部側(図示の例では、第1陸部31又は第2陸部32側)に近づくように傾斜する場合を負とし、タイヤ周方向の各位置における上部溝壁部分2au又は2buの大小関係が判断される場合は、当該正負を考慮して当該大小関係が判断されるものとする。
【0034】
本実施形態において、
図3及び
図4(a)、(b)に示すように、蛇行主溝21の第1溝壁2aは、上部溝壁角度θ2aが最小となる最小溝壁角度部分Paminと、上部溝壁角度θ2aが最大となる最大溝壁角度部分Pamaxとが、タイヤ周方向に沿って所定の繰返し周期(タイヤ周方向の長さ)で交互に現れるように、下部溝壁上端縁2aleが、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に(即ち、丸みを帯びた折曲り部で繰返し折れ曲がりながら)延在しており、即ち、タイヤ周方向に沿って蛇行している。ここで、本明細書において、「最小溝壁角度部分(Pamin、Pbmin)」とは、上部溝壁角度(θ2a、θ2b)が最小となる、蛇行主溝におけるタイヤ周方向の位置を指し、「最大溝壁角度部分(Pamax、Pbmax)」とは、上部溝壁角度(θ2a、θ2b)が最大となる、蛇行主溝におけるタイヤ周方向の位置を指す。
図4(a)及び(b)は、それぞれ、第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamax及び最小溝壁角度部分Paminにおける、蛇行主溝21のタイヤ幅方向断面を示している。
なお、本実施形態において、上記上部溝壁角度θ2aは、最小溝壁角度部分Paminと最大溝壁角度部分Pamaxとの間で、タイヤ周方向に沿って滑らかに変化している。
【0035】
本実施形態では、上記「所定の繰返し周期」は、タイヤ周方向において一定とされている。但し、上記「所定の繰返し周期」は、タイヤ周方向において変化してもよい。しかし、タイヤ周方向における剛性バランス等の観点からは、上記「所定の繰返し周期」は、タイヤ周方向において一定であることが好ましい。また、本実施形態では、
図3に示すように、下部溝壁上端縁2aleは、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って滑らかな波状に(即ち、丸みを帯びた折曲り部で繰返し折れ曲がりながらかつ直線の部分を有さずに)延在しており、即ち、タイヤ周方向に沿って滑らかに蛇行している。但し、下部溝壁上端縁2aleは、波状に延在していればよく、滑らかな波状に延在していなくてもよい。しかし、より効果的な整流により排水性をより向上させる等の観点からは、下部溝壁上端縁2aleは、滑らかな波状に延在していることが好ましい。
なお、本実施形態において、
図3に示すように、第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2ale及び下部溝壁部分2alと溝底部2cとの境界縁は、最小溝壁角度部分Paminにおいて最も第2溝壁2b側から遠ざかり、最大溝壁角度部分Pamaxにおいて最も第2溝壁2b側に近づくように、タイヤ周方向に沿って波状に延在(蛇行)している。換言すれば、本実施形態において、第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleと、下部溝壁部分2alと溝底部2cとの境界縁とは、タイヤ周方向に沿って、互いに同一の繰返し周期で延在している。
【0036】
本実施形態において、蛇行主溝21の第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxにおける上部溝壁角度θ2a(
図4(a)参照)は、25°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。また、当該上部溝壁角度θ2aは、10°以上であることが好ましく、15°以上であることがより好ましい。最大溝壁角度部分Pamaxにおける上部溝壁角度θ2aが25°以下であることにより、溝断面積が必要以上に小さくなることがなく、ひいては、十分な排水性を確保することができ、10°以上であることにより、隣接する陸部の剛性を確保することができる。
図4(a)に示す例では、当該上部溝壁角度θ2aは、約17°とされている。
また、本実施形態において、蛇行主溝21の第1溝壁2aの最小溝壁角度部分Paminにおける上部溝壁角度θ2a(
図4(b)参照)は、15°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましい。また、当該上部溝壁角度θ2aは、0°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましい。最小溝壁角度部分Paminにおける上部溝壁角度θ2aが15°以下であることにより、溝断面積が必要以上に小さくなることがなく、ひいては、十分な排水性を確保することができ、0°以上であることにより、隣接する陸部の剛性を確保することができる。
図4(b)に示す例では、当該上部溝壁角度θ2aは、約7°とされている。
【0037】
本実施形態において、
図3及び
図4(a)、(b)に示すように、蛇行主溝21の第2溝壁2bも、上述の第1溝壁2aと同様に、下部溝壁上端縁2bleが、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に(即ち、丸みを帯びた折曲り部で繰返し折れ曲がりながら)延在している。しかし、本実施形態においては、第2溝壁2bは、上述の第1溝壁2aとは異なり、上部溝壁角度θ2bは、タイヤ周方向において変化せず、一定である。但し、
図6~
図7を参照して後述する第2実施形態のように、第2溝壁2bは、上部溝壁角度θ2bが、タイヤ周方向において変化していてもよい。
なお、本実施形態において、
図3に示すように、第1溝壁2aと同様に、第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2ble及び下部溝壁部分2blと溝底部2cとの境界縁は、第1溝壁2aの最小溝壁角度部分Paminにおいて最も第1溝壁2a側から遠ざかり、第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxにおいて最も第1溝壁2a側に近づくように、タイヤ周方向に沿って波状に延在(蛇行)している。換言すれば、本実施形態において、第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2bleと、下部溝壁部分2blと溝底部2cとの境界縁とは、タイヤ周方向に沿って、互いに同一の繰返し周期で延在している。
本実施形態において、第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2bleが、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在する、その他の当該延在の仕方等は、後述するタイヤ幅方向における振幅を除き、第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleについて上述したところと同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
なお、本実施形態において、蛇行主溝21の第2溝壁2bの上部溝壁角度θ2b(一定)は、例えば10°~20°、より具体的には、例えば13°~17°、等とすることができる。
【0039】
ここで、本実施形態において、第1溝壁2aは、第1溝壁2aの上部溝壁上端縁(即ち、蛇行主溝21のトレッド踏面1への一方側の開口縁)2aueを除き、溝底部2cからのいかなる高さの第1溝壁2a上の点をタイヤ幅方向に連ねた線も、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に(上部溝壁上端縁2aueが波状又はジグザグ状に延在している場合は、上部溝壁上端縁2aueのタイヤ幅方向振幅よりも大きな振幅で、波状に)延在(蛇行)している。例えば、溝底部2cからの高さが溝深さ(最大深さ)Dの10%である第1溝壁2a上の点をタイヤ幅方向に連ねた線は、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在(蛇行)している。換言すれば、第1溝壁2aは、上部溝壁上端縁2aueを除き、いわばその全体が、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に(上部溝壁上端縁2aueが波状又はジグザグ状に延在している場合は、上部溝壁上端縁2aueのタイヤ幅方向振幅よりも大きな振幅で、波状に)延在(蛇行)している。
また、本実施形態において、第2溝壁2bは、溝底部2cからのいかなる高さの第2溝壁2b上の点をタイヤ幅方向に連ねた線も、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在(蛇行)している。例えば、溝底部2cからの高さが溝深さ(最大深さ)Dの10%である第2溝壁2b上の点をタイヤ周方向に連ねた線は、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在(蛇行)している。換言すれば、第2溝壁2bは、いわばその全体が、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在(蛇行)している。
本実施形態では、上記の構成により、排水性をより確実に向上させることができる。
【0040】
本実施形態において、蛇行主溝21の第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleのタイヤ幅方向における振幅は、蛇行主溝21の第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2bleのタイヤ幅方向における振幅よりも小さい。ここで、本明細書において、上部溝壁上端縁又は下部溝壁上端縁等の「タイヤ幅方向における振幅」とは、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に延在する当該縁等が最も陸部側にあるときのタイヤ幅方向位置と最も溝側にあるときのタイヤ幅方向位置との間の、タイヤ幅方向の距離を指す(一例として、
図3の符号「Wa」参照)。
【0041】
本実施形態において、
図3に示すように、蛇行主溝21の第1溝壁2aの最小溝壁角度部分Paminは、蛇行主溝21の溝壁間隔Ww(第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleと、第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2bleと、の間の、タイヤ幅方向間隔)が最大となる幅広溝部Pwbとタイヤ周方向位置が同じであり、蛇行主溝21の第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxは、蛇行主溝21の溝壁間隔Wwが最小となる幅狭溝部Pwnとタイヤ周方向位置が同じである。ここで、「幅広溝部Pwb」とは、換言すれば、溝壁間隔Wwが最大値Wwmaxをとる、蛇行主溝21におけるタイヤ周方向の位置を指し、「幅狭溝部Pwn」とは、換言すれば、溝壁間隔Wwが最小値Wwminをとる、蛇行主溝21におけるタイヤ周方向の位置を指す。
上述のとおり、本実施形態において、蛇行主溝21の第1溝壁2aの最小溝壁角度部分Paminは、幅広溝部Pwbとタイヤ周方向位置が同じであるとともに、蛇行主溝21の第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxは、幅狭溝部Pwnとタイヤ周方向位置が同じである。換言すれば、本実施形態において、
図3に示すように、第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleと第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2bleとは、タイヤ周方向に沿って、互いに同一の繰返し周期で位相は180°ずれるように、それぞれ波状に延在(蛇行)している。
なお、上記の「タイヤ周方向位置が同じ」とは、実質的に同じであればよく、例えば、前述の上部溝壁角度θ2aの繰返し周期(タイヤ周方向長さ)の5%以下程度のタイヤ周方向のずれは、許容するものとする。
【0042】
本実施形態において、
図3に示すように、蛇行主溝21の第1溝壁2aの上部溝壁上端縁(即ち、蛇行主溝21のトレッド踏面1への両開口縁のうちの一方側(図示の例では、タイヤ幅方向外側)の開口縁)2aueは、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、タイヤ幅方向における振幅が第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleのタイヤ幅方向における振幅Waよりも小さい、直線状、波状又はジグザグ状に延在している。
より具体的に、本実施形態において、
図3に示すように、蛇行主溝21の第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueは、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、直線状に(即ち、タイヤ幅方向における振幅0で)延在している。但し、タイヤ幅方向における振幅が下部溝壁上端縁2aleのタイヤ幅方向における振幅Waよりも小さい限り、第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueは、タイヤ周方向に沿って、波状又はジグザグ状に延在していてもよい。しかし、騒音性能の悪化をより効果的に抑制する等の観点からは、第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueは、タイヤ周方向に沿って、直線状に延在していることが好ましい。
【0043】
また、本実施形態において、
図3に示すように、蛇行主溝21の第2溝壁2bの上部溝壁上端縁(即ち、蛇行主溝21のトレッド踏面1への両開口縁のうちの他方側(図示の例では、タイヤ幅方向内側)の開口縁)2bueは、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、波状に(より具体的には、滑らかな波状に)延在している。但し、
図6~
図7を参照して後述する第2実施形態のように、 第2溝壁2bの上部溝壁上端縁2bueは、タイヤ周方向に沿って、例えば直線状に延在していてもよい。しかし、排水性をより効果的に向上させる等の観点からは、第2溝壁2bの上部溝壁上端縁2bueは、タイヤ周方向に沿って、波状に延在していることが好ましい。
【0044】
ここで、本実施形態においては、上述のとおり、
図3に示すように、トレッド踏面視において、蛇行主溝21の第1溝壁2aの上部溝壁上端縁(即ち、蛇行主溝21のトレッド踏面1へのタイヤ幅方向外側の開口縁)2aueは、タイヤ周方向に沿って、直線状に延在しており、蛇行主溝21の第2溝壁2bの上部溝壁上端縁(即ち、蛇行主溝21のトレッド踏面1へのタイヤ幅方向内側の開口縁)2bueは、タイヤ周方向に沿って、波状に延在している。換言すれば、本実施形態において、蛇行主溝21のトレッド踏面1への開口縁(2aue、2bue)が直線状となるのは、タイヤ幅方向外側の開口縁(2aue)のみで、タイヤ幅方向内側の開口縁(2bue)は波状である。この場合、陸部のタイヤ周方向剛性が変動する場合に、タイヤ幅方向内側に比べてより偏摩耗の発生し易いタイヤ幅方向外側(即ち、タイヤのショルダー側)の陸部に隣接する開口縁のみを、隣接する陸部のタイヤ周方向剛性が変動しにくい直線状とすることにより、騒音性能のみならず耐偏摩耗性能の悪化をも効果的に抑制しつつ、排水性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態において、
図3に示すように、蛇行主溝21の第2溝壁2bの上部溝壁上端縁(即ち、蛇行主溝21のトレッド踏面1への両開口縁のうちの他方側(図示の例では、タイヤ幅方向内側)の開口縁)2bueは、第1溝壁2aの最小溝壁角度部分Paminにおいて最も第1溝壁2a側から遠ざかり、第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxにおいて最も第1溝壁2a側に近づくように、タイヤ周方向に沿って波状に延在(蛇行)している。換言すれば、本実施形態において、第2溝壁2bの上部溝壁上端縁2bueは、第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2ale、第1溝壁2aの下部溝壁部分2alと溝底部2cとの境界縁、第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2ble、及び、第2溝壁2bの下部溝壁部分2blと溝底部2cとの境界縁と、タイヤ周方向に沿って、互いに同一の繰返し周期で延在している。
【0046】
さらに、本実施形態において、
図3に示すように、蛇行主溝21の溝開口幅Woが最大となるタイヤ周方向位置は、幅広溝部Pwb(ひいては、最小溝壁角度部分Pamin)であり、蛇行主溝21の溝開口幅Woが最小となるタイヤ周方向位置は、幅狭溝部Pwn(ひいては、最大溝壁角度部分Pamax)である。また、蛇行主溝21の溝底幅Wbが最大となるタイヤ周方向位置は、幅広溝部Pwb(ひいては、最小溝壁角度部分Pamin)であり、蛇行主溝21の溝底幅Wbが最小となるタイヤ周方向位置は、幅狭溝部Pwn(ひいては、最大溝壁角度部分Pamax)である。
ここで、本実施形態において、蛇行主溝21の溝開口幅Woの最大値Womaxと最小値Wominとの比Womax/Wominは、排水性の向上と陸部剛性の確保とをより効果的に両立させる観点から、1.25~1.50であることが好ましく、1.30~1.45であることがさらに好ましい。
図3~
図4に示す例では、Womax/Wominは、約1.38とされている。
【0047】
また、本実施形態において、
図3に示すように、蛇行主溝21は、タイヤ周方向のすべての位置において、溝開口幅Woが溝壁間隔Wwよりも大きい。同様に、蛇行主溝21は、タイヤ周方向のすべての位置において、溝開口幅Woが溝底幅Wbよりも大きい。これらそれぞれの構成により、蛇行主溝21に隣接する陸部3の剛性を十分確保することができる。
【0048】
本実施形態において、
図3、
図4(a)、(b)及び
図5に示すように、蛇行主溝21は、溝底部2cに、タイヤ径方向外側に向かって隆起する隆起部5が形成されている。本実施形態において、隆起部5は、タイヤ周方向における幅広溝部Pwbを含む領域に形成されている。
このように、本実施形態においては、隆起部5が、蛇行主溝21の幅広溝部Pwbを含む領域の溝底部2cに、タイヤ径方向外側に向かって隆起するように形成されているため、蛇行主溝21内の幅広溝部Pwb付近を流れる水は、隆起部5により、第1溝壁2a及び第2溝壁2bに沿って流れやすくなり、ひいては、排水性を効果的に向上させることができる。
但し、蛇行主溝21は、隆起部5を有していなくてもよい。しかし、排水性を効果的に向上させる観点からは、蛇行主溝21は、本実施形態のように、隆起部5を有していることが好ましい。
【0049】
本実施形態において、
図3に示すように、トレッド踏面視において、隆起部5の第1溝壁2a側の側縁は、第1溝壁2a(より具体的には、第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2ale及び第1溝壁2aの下部溝壁部分2alと溝底部2cとの境界縁、等)とほぼ沿うように、曲線状に延在しており、また、隆起部5の第2溝壁2b側の側縁も、第2溝壁2b(より具体的には、第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2ble及び第2溝壁2bの下部溝壁部分2blと溝底部2cとの境界縁、等)とほぼ沿うように、曲線状に延在している。
隆起部5の上記構成により、蛇行主溝21内の幅広溝部Pwb付近を流れる水は、第1溝壁2a及び第2溝壁2bに沿ってより流れやすくなり、ひいては、排水性をより向上させることができる。
【0050】
本実施形態において、隆起部5は、
図3に示すように、トレッド踏面視において、タイヤ周方向の長さ(最大長さ)Lr(
図5参照)がタイヤ幅方向の幅(最大幅)Wr(
図4(b)参照)よりも長い、タイヤ周方向に沿って縦長となる形状に形成されている。より具体的に、隆起部5は、トレッド踏面視において、隆起部5のタイヤ周方向の両端に向かうにつれてタイヤ幅方向の幅が徐々に狭くなる、縦長の形状に形成されている。また、本実施形態において、隆起部5は、
図4(b)に示すように、タイヤ幅方向断面視において、隆起部5のタイヤ幅方向の両端に向かうにつれて溝底部2cからの高さが低くなる、略三角形状に形成されている。さらに、本実施形態において、隆起部5は、
図5に示すように、タイヤ周方向断面視において、隆起部5のタイヤ周方向の両端に向かうにつれて溝底部2cからの高さが徐々に低くなる、略三角形状に形成されている。
隆起部5の上記それぞれの構成により、蛇行主溝21内の幅広溝部Pwb付近を流れる水は、隆起部5により急激に流れを変更されることことがなく、第1溝壁2a及び第2溝壁2bに沿ってさらに流れやすくなり、ひいては、排水性をさらに向上させることができる。
【0051】
隆起部5の溝底部2cからの高さ(最大高さ)Hr(
図4(b)参照)は、特に限定されないが、蛇行主溝21の溝深さ(最大深さ)D(
図4(b)参照)の1/5未満であることが好ましい。この場合、蛇行主溝21の断面積が隆起部5の存在により必要以上に小さくなることがなく、ひいては、十分な排水性を確保することができる。
また、隆起部5のタイヤ幅方向の幅(最大幅)Wr(
図4(b)参照)は、特に限定されないが、蛇行主溝21の溝開口幅(最大幅)Woの1/2未満であることが好ましい。この場合、蛇行主溝21の断面積が隆起部5の存在により必要以上に小さくなることがなく、ひいては、十分な排水性を確保することができる。
【0052】
次に、上述した本発明の第1実施形態による主な効果を、必要に応じて再度、以下にまとめて説明する。
まず、本実施形態においては、主溝2のうちの少なくとも1本は、トレッド踏面視において、溝表面の少なくとも一部がタイヤ周方向に沿って波状に延在する、蛇行主溝である。このため、当該主溝内を流れる水の乱流を抑制でき、整流し易くなるので、ハイドロプレーニング現象を抑制し排水性を向上させ易くなる。
また、本実施形態において、蛇行主溝21における第1溝壁2a及び第2溝壁2bは、それぞれ、タイヤ幅方向断面視において、直線状に又は溝側に曲率中心を有する一定の曲率で円弧状にトレッド踏面から延びる上部溝壁部分2auと、上部溝壁部分2auよりも大きな溝側に曲率中心を有する一定の曲率で円弧状に上部溝壁部分2auに連なって延びる下部溝壁部分2alと、を有するとともに、上部溝壁部分2auは、下部溝壁部分2alを介して溝底部2cに接続されている。従って、上部溝壁部分2auが、下部溝壁部分2alを介することにより、滑らかに溝底部2cに接続されるので、蛇行主溝21内を流れる水をより整流し易くなるとともに、溝底部2cの特にタイヤ幅方向両端近傍に発生し易い溝底クラックを効果的に抑制することができる。
さらに、本実施形態において、蛇行主溝21の第1溝壁2aは、最小溝壁角度部分Paminと、最大溝壁角度部分Pamaxとが、タイヤ周方向に沿って所定の繰返し周期で交互に現れるように、下部溝壁上端縁2aleが、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在しており、蛇行主溝21の第2溝壁2bは、下部溝壁上端縁2bleが、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って波状に延在しており、また、蛇行主溝21の第1溝壁2aの最小溝壁角度部分Paminは、蛇行主溝の幅広溝部Pwbとタイヤ周方向位置が同じであり、蛇行主溝21の第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxは、蛇行主溝21の幅狭溝部Pwnとタイヤ周方向位置が同じである。これらの構成により、蛇行主溝21内を流れる水をより効果的に整流し易くなる。
また、本実施形態において、蛇行主溝21の第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueは、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、タイヤ幅方向における振幅が第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleのタイヤ幅方向における振幅よりも小さい、直線状、波状又はジグザグ状に延在している。これにより、蛇行主溝21の第1溝壁2aを形成する第1陸部31(ひいては、トレッド踏面1を構成する陸部全体)のタイヤ周方向における圧縮剛性の変動を抑制することができ、ひいては、主溝2のうちの少なくとも1本を蛇行主溝としたことによるタイヤ10の騒音性能の悪化を抑制することができる。
以上により、本実施形態によれば、排水性を向上しつつ、騒音性能の悪化を抑制することができる。
【0053】
本実施形態において、蛇行主溝21の第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueは、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、直線状に延在している。
この場合、蛇行主溝21の第1溝壁2aを形成する第1陸部31(ひいては、トレッド踏面1を構成する陸部全体)のタイヤ周方向における圧縮剛性の変動をより抑制することができ、ひいては、騒音性能の悪化をより効果的に抑制することができる。また、この場合、タイヤ製造(特に、加硫成形)の際のゴム流れが均一になり、ベアの抑制やユニフォミティ性の向上につながる。
【0054】
本実施形態において、前述のとおり、蛇行主溝21の第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxにおける上部溝壁角度θ2a(
図4(a)参照)は、25°以下であってよい。
この場合、蛇行主溝21の溝断面積が必要以上に小さくなることがなく、ひいては、十分な排水性を確保することができ、排水性をより効果的に向上させることができる。
【0055】
本実施形態において、蛇行主溝21の第2溝壁2bの上部溝壁上端縁2bueは、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、波状に延在している。
この場合、蛇行主溝21内を流れる水をさらに整流し易くなり、ひいては、排水性をより効果的に向上させることができる。
【0056】
本実施形態において、蛇行主溝21の第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleのタイヤ幅方向における振幅は、蛇行主溝21の第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2bleのタイヤ幅方向における振幅よりも小さい。
この場合、蛇行主溝21の溝断面積が必要以上に小さくなることがなく、ひいては、十分な排水性を確保することができ、排水性をより効果的に向上させることができる。
【0057】
本実施形態において、タイヤ10は、複数本の主溝2を有し、蛇行主溝は、当該複数本の主溝2のうちの、車両装着内側におけるタイヤ幅方向最外側の主溝21である。
タイヤは通常ネガティブキャンバーとして車両に装着されるため、車両装着内側の陸部部分が車両装着外側の陸部部分対比接地圧が高い場合が多い。従って、上述のように、蛇行主溝を、車両装着内側におけるタイヤ幅方向最外側に設けることにより、より効果的にハイドロプレーニング現象を抑制でき、ひいては、排水性をより効果的に向上させることができる。
【0058】
本実施形態によるその他の効果は、前述のとおりである。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るタイヤ20について、
図6~
図7を参照しつつ説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係るタイヤの、トレッド踏面の一部を拡大して示す、
図3と同様の拡大展開図である。
図7(a)は、
図6のX3―X3線に沿う断面図であり、
図7(b)は、
図6のX4-X4線に沿う断面図である。ここで、
図6においては、理解容易のため、蛇行主溝である主溝2(以下、単に「蛇行主溝2」ともいう。)のトレッド踏面1への両開口端縁及び隆起部5の輪郭がやや太い線で描かれており、
図6における、それらの間にあるやや細い線は、タイヤ幅方向断面視において曲率(ひいては、曲率半径)の変化する点をタイヤ周方向に連ねた縁(線)である。なお、
図6においては、横溝4もやや太い線で描かれている。
図6~
図7について、
図1~
図5と同様の部材、部分等については、
図1~
図5と同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の第2実施形態に係るタイヤ20は、蛇行主溝2の構成が、
図2~
図5に示される本発明の第1実施形態のタイヤ10の蛇行主溝21の構成と異なっている点で、第1実施形態のタイヤ10と主に異なっており、その他の点では、第1実施形態のタイヤ10と実質的に同じである。
以下では、第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0060】
第2実施形態のタイヤ20におけるタイヤ周方向に延びる主溝2の本数は、第1実施形態と同様であり、タイヤ20は、少なくとも1本の主溝を有していればよい。
また、図示は省略するが、本実施形態において、トレッド踏面における
図6に示される蛇行主溝2の配置される位置は、任意であってよい。即ち、例えば、第1実施形態(
図2等参照)と同様に、複数本(例えば、4本)の主溝のうちの車両装着内側におけるタイヤ幅方向最外側の主溝が
図6に示される蛇行主溝2であってもよいし、これに替えて又はこれに加えて、残りの主溝のうちの少なくとも1本が
図6に示される蛇行主溝2であってもよい。
さらに、本実施形態において、第1実施形態と同様に、横溝4の構成及び有無は任意であり、
図6に示す例では、蛇行主溝2を形成する両側の陸部3のそれぞれが、蛇行主溝2に連通する横溝4を有している。
【0061】
本実施形態において、
図6及び
図7(a)、(b)に示すように、蛇行主溝2は、第1溝壁2a側と第2溝壁2b側とが互いに非対称に形成された第1実施形態の蛇行主溝21と異なり、溝中心線に対して対称に形成されている。
より具体的に、本実施形態において、第1実施形態(
図3及び
図4(a)、(b)参照)と同様に、蛇行主溝2の第1溝壁2aは、上部溝壁角度θ2aが最小となる最小溝壁角度部分Paminと、上部溝壁角度θ2aが最大となる最大溝壁角度部分Pamaxとが、タイヤ周方向に沿って所定の繰返し周期で交互に現れるように、構成されている一方、第1実施形態とは異なり、蛇行主溝2の第2溝壁2bも、上部溝壁角度θ2bが最小となる最小溝壁角度部分Pbminと、上部溝壁角度θ2bが最大となる最大溝壁角度部分Pbmaxとが、タイヤ周方向に沿って所定の繰返し周期で交互に現れるように、構成されている。
本実施形態において、
図6に示すように、第1溝壁2aの上部溝壁角度θ2a及び第2溝壁2bの上部溝壁角度θ2bが変化する上記繰返し周期は、互いに同一であり、ひいては、蛇行主溝2における、第1溝壁2aの最小溝壁角度部分Paminと、第2溝壁2bの最小溝壁角度部分Pbminと、幅広溝部Pwbとは、互いにタイヤ周方向位置が同じであり、蛇行主溝2における、第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxと、第2溝壁2bの最大溝壁角度部分Pbmaxと、幅狭溝部Pwnとは、互いにタイヤ周方向位置が同じである。さらに、本実施形態において、タイヤ周方向の各位置において、第1溝壁2aの上部溝壁角度θ2aと第2溝壁2bの上部溝壁角度θ2bとは、互いに同一である。
図7(a)は、第1溝壁2aの最大溝壁角度部分Pamaxひいては第2溝壁2bの最大溝壁角度部分Pbmaxにおける、蛇行主溝2のタイヤ幅方向断面を示しており、
図7(b)は、第1溝壁2aの最小溝壁角度部分Paminひいては第2溝壁2bの最小溝壁角度部分Pbminにおける、蛇行主溝2のタイヤ幅方向断面を示している。
【0062】
本実施形態において、
図6に示すように、第1実施形態(
図3参照)とは異なり、第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2aleのタイヤ幅方向における振幅は、第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2bleのタイヤ幅方向における振幅と、同じである。
【0063】
また、本実施形態において、
図6に示すように、第1実施形態(
図3参照)と同様に、蛇行主溝2の第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueは、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、直線状に延在している一方、第1実施形態とは異なり、蛇行主溝2の第2溝壁2bの上部溝壁上端縁2bueも、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、直線状に延在している。なお、本実施形態において、蛇行主溝2の第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aue及び第2溝壁2bの上部溝壁上端縁2bueは、それぞれ、第1実施形態における蛇行主溝21の第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueと同様に、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に沿って、タイヤ幅方向における振幅が第1溝壁2aの下部溝壁上端縁2ale又は第2溝壁2bの下部溝壁上端縁2bleのタイヤ幅方向における振幅よりも小さい、波状又はジグザグ状に延在していてもよい。
【0064】
本実施形態において、
図6及び
図7(a)、(b)に示すように、蛇行主溝2は、第1実施形態と同様に、溝底部2cに、タイヤ径方向外側に向かって隆起する隆起部5が形成されている。隆起部5は、第1実施形態と同様に、タイヤ周方向における幅広溝部Pwbを含む領域に形成されている。隆起部5は、第1実施形態と同様に、トレッド踏面視において、タイヤ周方向に細長い縦長形状に形成されている。但し、本実施形態において、
図7(a)、(b)に示すように、隆起部5のタイヤ幅方向断面形状は、第1実施形態とは異なり、四角形(長方形)状に形成されている。なお、本実施形態において、隆起部5の寸法等は、第1実施形態の隆起部5と同様であってよい。
【0065】
以上のように構成された、本発明の第2実施形態に係るタイヤ20によっても、前述の第1実施形態のタイヤ10と同様に、排水性を向上しつつ、騒音性能の悪化を抑制することができる。第1実施形態のタイヤ10と第2実施形態のタイヤ20とを比較すると、上述の図示例の第1実施形態のタイヤ10は、第2溝壁2bの上部溝壁上端縁2bueを含む第2溝壁2bの全体が、トレッド踏面視においてタイヤ周方向に沿って波状に延在しているので、蛇行主溝21内に侵入した水がより整流され易くなり、ひいては、排水性により優れる。また、上述の図示例の第2実施形態のタイヤ20は、第2溝壁2bの上部溝壁上端縁2bueも、第1溝壁2aの上部溝壁上端縁2aueと同様に、トレッド踏面視においてタイヤ周方向に沿って直線状に延在しているので、タイヤ周方向の圧縮剛性の変動がより少なく、ひいては、騒音性能の悪化をより抑制し易い。
なお、第2実施形態のタイヤ20に形成された上記隆起部5によっても、隆起部5により、蛇行主溝2内に侵入した水が第1溝壁2a及び第2溝壁2bに沿って流れやすくなり、ひいては、排水性を効果的に向上させることができる。
本実施形態のタイヤ20についての、その他の構成及び効果は、上述した第1実施形態のタイヤ10と同様である。
【0066】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
例えば、上述の第1実施形態のタイヤ10は、タイヤへの刻印や取扱説明書等により車両装着方向が指定されるタイヤであるが、本発明のタイヤは、車両装着方向が指定されないタイヤであってもよい。
また、例えば、上述の第1実施形態のタイヤ10では、上部溝壁角度が変化する第1溝壁2aが、第2溝壁2bに対して、車両装着内側かつタイヤ幅方向外側に配置されているが、第1溝壁2aと第2溝壁2bとのタイヤ幅方向位置を逆転し、第1溝壁2aを、第2溝壁2bに対して、車両装着外側かつタイヤ幅方向内側に配置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係るタイヤは、任意の種類の空気入りタイヤに好適に利用でき、例えば、乗用車用空気入りタイヤ、トラック・バス用空気入りタイヤ等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0068】
10、20:タイヤ、
1:トレッド踏面、
2、21、22、23、24:主溝、 2a:第1溝壁、 2b:第2溝壁、
2c:溝底部、
2au、2bu:上部溝壁部分、 2aue、2bue:上部溝壁上端縁、
2al、2bl:下部溝壁部分、 2ale、2ble:下部溝壁上端縁、
3、31、32、33、34、35:陸部、
4、41、42、43、44、45、46、47:横溝、
5:隆起部、
CD:タイヤ周方向、 CL:タイヤ赤道面、 D:溝深さ、 IN:車両装着内側、
Lr:隆起部の長さ、 Hr:隆起部の高さ、 OUT:車両装着外側、
Pamin、Pbmin:最小溝壁角度部分、
Pamax、Pbmax:最大溝壁角度部分、
Pwb:幅広溝部、 Pwn:幅狭溝部、 TE:トレッド端、 WD:タイヤ幅方向、
Wa:振幅、 Wb:溝底幅、 Wr:隆起部の幅、 Wo:溝開口幅、
Ww:溝壁間隔、 Wwmin:最小溝壁間隔、 Wwmax:最大溝壁間隔、
θ2a、θ2b:上部溝壁角度