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特開2023-158866眠気軽減用組成物又は慢性的ストレス軽減用組成物
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  • 特開-眠気軽減用組成物又は慢性的ストレス軽減用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158866
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】眠気軽減用組成物又は慢性的ストレス軽減用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20231024BHJP
【FI】
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068897
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(71)【出願人】
【識別番号】595132360
【氏名又は名称】株式会社常磐植物化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤木 航平
(72)【発明者】
【氏名】平島 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】高野 晃
(72)【発明者】
【氏名】神谷 智康
(72)【発明者】
【氏名】楊 金緯
(72)【発明者】
【氏名】秋田 佳小里
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018MD05
4B018MD10
4B018MD29
4B018MD30
4B018MD32
4B018MD35
4B018MD36
4B018MD42
4B018MD49
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
(57)【要約】
【課題】安全に喫食でき、眠気軽減の効果を有する組成物を提供すること。また、安全に喫食でき、慢性的なストレスを軽減する効果を有する組成物を提供すること。
【解決手段】本発明はラフマ葉抽出物を含有する組成物であり、眠気軽減又は慢性的なストレスの軽減に用いられる組成物である。本発明の組成物はヒペロシド100質量部に対し、イソクエルシトリンの比率が90質量部以上120質量部以下であることが好ましい。前記ラフマ葉抽出物はヒペロシド及びイソクエルシトリンを合計で3質量%以上10質量%以下含有することもまた好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラフマ葉抽出物を有効成分として含有する、眠気軽減用組成物。
【請求項2】
ラフマ葉抽出物を有効成分として含有する、慢性的ストレス軽減用組成物。
【請求項3】
ヒペロシド100質量部に対し、イソクエルシトリンの比率が90質量部以上120質量部以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記慢性的ストレスが日常生活における精神的ストレスである、請求項2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眠気軽減用組成物及び慢性的ストレス軽減用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
眠気による問題は、従来多々起きている。例えば、自動車を運転中、会議中等の仕事中、授業中、勉強中、劇場で劇や映画を鑑賞しているとき、会話中等で眠気が生じる現象を、効果的に低減したいと考える人は多い。
【0003】
また、現代人はPC作業、スマートフォンの使用、仕事環境、家事、家庭的事情、人間関係、勉強等など数々のストレスにさらされている。このストレス状態が慢性的に続いた慢性的なストレス状態に陥ると、不安、落ち込み、抑うつ気分、興味や喜びが感じられにくい、やる気がでない、体調不良等の各種の問題が生じる。
【0004】
上記のような眠気や、慢性的ストレスに対処することが可能なサプリメントが望まれている。
【0005】
近年、ラフマ葉の抽出物を睡眠の質やストレスの改善に利用できることが報告されている。ラフマ(Apocynum venetum L.)はキョウチクトウ科に属し、中国からヨーロッパ、アジアの温帯地域に自生する多年生草本である。ラフマ葉は中国でお茶として飲用され、日本では血圧を下げる効果が証明されている。
【0006】
特許文献1には、ラフマ葉の抽出物を含有する組成物がストレスの低減や睡眠維持改善に有効であることが記載されている。また、特許文献2には、ラフマ抽出物とγ-アミノ酪酸(GABA)とを含む組成物がストレスの低減に有効であることが記載されている。
【0007】
一方、非特許文献1には、GABA受容体の作動薬であるベンゾジアゼピン系化合物の抗不安作用について記載されている。同文献には、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は速効性があり不安神経症に有効である一方で、常用量依存・眠気・運転等への影響などから治療上の限界があることが記載されている。つまり同文献は、短期的なストレスの改善に有効である薬剤が、慢性的なストレスの改善に対して必ずしも有効ではないことを示唆する。また、同文献は、ストレス改善剤は眠気を導入することがあり、眠気の改善とは逆の作用を示すことがあることも示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-064969号公報
【特許文献2】特開2011-093842号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】井上猛、不安障害の薬物治療の最前線、日本薬理学雑誌、2005年、125.5、pp297-300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、特許文献1にはラフマ葉の抽出物を含有する組成物が入眠及び睡眠維持を改善することが記載されているものの、眠気軽減の効果については検討されていない。ここで、入眠及び睡眠維持の効果を奏するためには脳の活動を抑制する必要があるのに対し、眠気の軽減効果を奏するためには脳の活動を活発化する必要があるため、両効果はその作用機序が大きく異なる。
【0011】
また、特許文献1及び特許文献2には、ラフマ葉の抽出物を含有する組成物が、短期的なストレスである、作業負荷後のストレス上昇を有意に抑制することが記載されている。しかし同文献では、慢性的なストレスに対する有効性については検討されていない。
【0012】
したがって本発明の課題は、安全に喫食でき、有効な眠気軽減用組成物を提供することである。また安全に喫食でき、有効な慢性的ストレス軽減用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題についてラフマ葉抽出物に基づき研究を進めた結果、日常生活で感じる眠気及び日常的な慢性的ストレスを評価する臨床試験を設計し、ラフマ葉抽出物を含有する組成物の眠気及び慢性的ストレスに対する改善効果を実証することにより、本発明に至った。
【0014】
すなわち本発明は、ラフマ葉抽出物を有効成分として含有する、眠気軽減用組成物である。
【0015】
また本発明は、ラフマ葉抽出物を有効成分として含有する、慢性的ストレス軽減用組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安全に喫食でき、有効な眠気軽減用組成物を提供できる。また、本発明によれば、安全に喫食でき、有効な慢性的なストレス軽減用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、試験食品を4週間摂取後の精神的ストレスのスコアの推移を表すグラフである。
図2図2は、試験食品を4週間摂取後のESSのスコアの推移を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明におけるラフマ葉抽出物は、ラフマ(学名:Apocynum venetum L.)の葉を用いる。ラフマの産地としては、青海省、四川省等の中国及びヨーロッパ温帯地域が挙げられる。
【0020】
ラフマの葉の抽出物を含む組成物は、ヒペロシド及びイソクエルシトリンを含むことが好適である。
【0021】
ヒペロシド及びイソクエルシトリンはそれぞれ下記式(I)及び(II)に示す構造をもつ。ヒペロシドはガラクトースを、イソクエルシトリンはグルコースを、それぞれ構造中に有するフラボノイド配糖体である。
【0022】
【化1】
【0023】
ヒペロシドとイソクエルシトリンの質量比は100:10~300であることが好ましく、100:50~200であることがより好ましく、眠気の軽減や慢性的ストレス軽減の観点から100:90~120であることが特に好ましい。
【0024】
ラフマ葉抽出物中、ヒペロシドの量が、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、眠気の軽減や慢性的ストレス軽減の観点からラフマ葉抽出物中、ヒペロシドは、1質量%以上10質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以上6質量%以下がとりわけ好ましい。
【0025】
ラフマ葉抽出物中、イソクエルシトリンの量が0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、眠気の軽減や慢性的ストレス軽減の観点からラフマ葉抽出物中、イソクエルシトリンは1質量%以上10質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以上6質量%以下がとりわけ好ましい。
【0026】
本発明の効果である眠気の軽減や慢性的ストレス軽減の効果を享受する点から、前記ラフマ葉抽出物はヒペロシド及びイソクエルシトリンを合計で0.5質量%以上20質量%以下含有することが好ましく、1質量%以上15質量%以下含有することがより好ましく、3質量%以上10質量%以下含有することが更に好ましい。
【0027】
組成物中のヒペロシド含有量は以下のように測定する。組成物100mgをメタノールに溶解し、この溶液の一部をHPLCで分離し、ヒペロシド由来のピークの積分値を算出する。また、ヒペロシド標準品をメタノールに溶解し、この溶液の一部をHPLCで分離し、ピークの積分値を算出する。ヒペロシドに由来するピークの積分値の比(前者/後者)を算出する。この積分値の比と、予め作成した検量線とを用いることで、ヒペロシドの含有量を算出する。HPLC条件は以下のとおりである。
カラム;
溶出溶媒:水、アセトニトリル及び2-プロパノールの混液(200:38:2)
溶出速度:1.0mL/min
保持時間(ヒペロシド):13.1min
検出波長:360nm
【0028】
組成物中のイソクエルシトリンの含有量は、イソクエルシトリンの保持時間が14.1minであること以外はヒペロシドの含有量と同様にして測定する。
【0029】
上記のように、ヒペロシド及びイソクエルシトリンを含有するラフマ葉抽出物は以下のように製造することができる。
【0030】
本発明におけるラフマ葉抽出物としては、ラフマ(学名:Apocynum venetum L.)の葉を水、エタノール、含水エタノール、及び有機溶剤の少なくともいずれかの溶媒で抽出、濃縮して得られる抽出物A、並びに、ここで得られる抽出物Aをアクリル系合成吸着樹脂、スチレン系合成吸着樹脂及びメタクリル合成吸着樹脂及び芳香族系合成吸着樹脂から選ばれる合成吸着樹脂に吸着させ、エタノール濃度10~95容量%までの含水エタノールで溶出されてくる画分を濃縮して得られる抽出物B、さらには、その抽出物を乾燥して得られる抽出物Cが挙げられる。抽出物Cとしては例えば以下の例の抽出物が挙げられる。なお、抽出物Cは必要に応じて賦形剤と混合しても良い。
抽出物例:乾燥ラフマ葉を粉砕し、その粉砕物にエタノール濃度60容量%の含水エタノールを加え、加熱環流して得られた抽出液について有機カルボン酸でpHを酸性に調整して不溶物を除去後、アクリル系合成吸着樹脂、スチレン系合成吸着樹脂、メタクリル合成吸着樹脂及び芳香族系合成吸着樹脂から選ばれる合成吸着樹脂に通液させた後、エタノール濃度70容量%の含水エタノールで脱離した画分を集め、減圧濃縮後、乾燥した抽出物。
【0031】
また、本組成物は食品、医薬、又は化粧品としての形態をとり、特に食品の場合、機能性表示食品、健康食品としての形態をとりうる。更に食品の場合、固形物だけではなく飲料としての形態もとりうる。
【0032】
本組成物が食品であるときの形態は、例えばドリンク、キャンデー、ゼリー、グミなどのデザート類とする形態を挙げることができ、健康食品、機能性表示食品であるときの形態は、例えば錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、顆粒、ドリンクなどの形態を挙げることができる。
【0033】
また本組成物が医薬品である場合、医薬品としての形態は、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤、乳剤を挙げることができる。投与方法は特に限定されるものではないが、経口投与可能な形態であることが望ましい。また製剤的に許容できる範囲で様々の担体を加えることができる。担体としては例えば賦形剤、着色剤、甘味剤、懸濁化剤等を挙げることができる。
【0034】
本発明の組成物の効果を首尾よく得る点から、副素材の選定やその量比を検討した。本発明の組成物が錠剤の場合、例えばマルチトール、マルトース及びセルロースの総量は、ラフマ抽出物100質量部に対し50質量部以上500質量部以下含有することが好ましく、100質量部以上400質量部以下含有することがより好ましい。
また、セルロースを使用する場合は、セルロースの量がラフマ抽出物100質量部に対し10質量部以上200質量部以下が好ましく、30質量部以上100質量部以下含有することがより好ましい。
例えば二酸化ケイ素等の流動化剤について、ラフマ抽出物100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下含有することがより好ましい。
例えばステアリン酸カルシウムやショ糖脂肪酸エステル等の滑沢剤について、ラフマ抽出物100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下含有することが好ましく、1質量部以上50質量部以下含有することがより好ましい。
【0035】
また本組成物におけるラフマ葉抽出物の含有量は、想定される摂取量に合わせて適宜調整可能であるが、例えば固形分であるラフマ葉抽出物として、0.007質量%以上70質量%以下とすることができる。また組成物の固形分中、ラフマ葉抽出物を0.07質量%以上70質量%以下含有することが好ましく、0.14質量%以上70質量%以下含有することがより好ましい。なお、本明細書において、固形分とは組成物の水分を除去したものであり、固形分量は、例えば加熱乾燥法により測定される。
【0036】
また本組成物によるストレス低減及び日中の眠気軽減効果を得るためには、ラフマ葉抽出物の1日当たりの摂取量は、好ましくは1mg以上100mg以下、より好ましくは20mg以上90mg以下、特に好ましくは40mg以上80mg以下である。
【0037】
また、本組成物におけるラフマ葉抽出物はフラボノイド化合物であるヒペロシド及びイソクエルシトリンが有効成分として含まれていることが好ましい。これらの成分が含まれている場合、これらの成分が組成物中、合計で0.0002質量%以上10質量%以下含有されていることが好ましい。また組成物の固形分中、ヒペロシド及びイソクエルシトリンを合計で0.0002質量%以上10質量%以下含有することが好ましく、0.002質量%以上5質量%以下含有することがより好ましい。ヒペロシド及びイソクエルシトリンが上述の範囲で含有されることにより、本組成物の効果を好ましく発揮する。
【0038】
本発明によれば、自動車等の車両の運転中、会議中等の仕事中、劇場などの映画や劇などの鑑賞中、読書中、授業中、勉強中、テレビを見ている時、乗客として乗り物に乗っている時、会話中、読書中等に感じる日常的な眠気を効果的に軽減できる。
【0039】
また、本発明の組成物は、慢性的なストレスを軽減できる。慢性的なストレスの例としては、PC作業、スマートフォンの使用、仕事、家事、人間関係(夫婦関係を含む)、又は勉強等により、1カ月以上感じ続けているストレスが挙げられる。慢性的なストレスの症状としては、不安、落ち込み、抑うつ気分、興味や喜びが感じられにくい、やる気がでない、体調不良等が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物は、継続的に摂取することが好ましく、例えば2週間以上継続して摂取されることが好適であり、4週間以上継続的に摂取されることがより好適である。ここでいう継続的に摂取とは1週間中4日以上の日に摂取されることを意味することが好ましく、毎日摂取されることを意味することがより好ましい。
【0041】
本発明において、眠気の軽減剤は、「日中の眠気の軽減」、「日常生活で感じる眠気の軽減」、「日常生活における眠気の軽減」「眠気の改善」、「覚醒」、「眠気を覚ます」、「眠気を飛ばす」、「眠気に打ち勝つ」等の文言が包装体や広告物等に付されているものを含む。
また、慢性的なストレス軽減剤としては、「日常生活におけるストレスの軽減」、「日常生活で感じる精神的ストレスの軽減」、「日々の精神的ストレスの軽減」、「日常生活における精神的ストレスの緩和」、「日常生活で感じる精神的ストレスの緩和」、「日々の精神的ストレスの緩和」等の文言が包装体や広告物等に付されているものを含む。
【実施例0042】
本発明について、実施例を基に更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0043】
(1)ラフマ葉抽出物の製造
乾燥ラフマ葉をラボミキサーにより粉砕し、その粉砕物1kgにエタノール濃度60容量%の含水エタノールを加え、2時間加熱環流後、ろ過し抽出液を得た。抽出残渣を再度エタノール濃度60容量%の含水エタノールにて2時間加熱環流した後、ろ過し抽出液を得た。1回目の抽出液と2回目の抽出液をあわせ、減圧濃縮し、水を加え懸濁させた後、クエン酸によりpHを酸性に調整し、一晩攪拌した。珪藻土を加えボディーフィードし、珪藻土を敷きつめたろ紙の上に液を注ぎ、ろ過し不溶物を除去した。得られたろ過液を、合成吸着樹脂に通液させ、有効成分を吸着させた後、水洗した。その後、エタノール濃度70容量%の含水エタノールで脱離し有効成分を含む画分を集め、減圧濃縮後に濃縮液に乳化剤を添加し、十分に攪拌した。得られた溶液をスプレー乾燥してラフマ葉抽出物を得た。得られたラフマ葉抽出物と賦形剤を混合し、ヒペロシド及びイソクエルシトリンの量が合計で3質量%以上となる賦形剤入りラフマ葉抽出物(475g)を得た。
【0044】
(2)臨床試験
臨床試験は健常な日本人成人男女40名(年齢:35-50歳)を被験者として実施した。被験者の選択方法としては、健常な成人にアンケートを行い、PC作業、スマートフォンの使用、仕事、家事、人間関係(夫婦関係を含む)、又は勉強によって、従来から慢性的に精神的ストレスや身体的疲労を感じていると回答した人を対象とした。
なお、上記のアンケートは具体的に以下のようにした。
日常生活で感じている精神的ストレスや身体的疲労の原因について、複数選択可能なアンケートを実施した。選択肢として、PC作業、スマホの使用、仕事、家事、人間関係(夫婦関係を含む)、勉強を設定した。なお、医師により慢性疲労症候群と診断された者、うつ病スケールであるGDS-Jで 6点以上の者を被験者に含めないよう確認した。
【0045】
被験食品としては、上記の方法で得られた、ヒペロシド及びイソクエルシトリンを合計で3質量%以上含有する固形状であるラフマ葉抽出物に、還元麦芽糖、セルロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウムを混合し,打錠したもの(一食220mg)を用いた。また、プラセボ群に提供する試験食品である対照食品には、被験食品と同じ外観になるよう、ラフマ葉抽出物の代わりにカラメルを使用した。被験食品に含まれるラフマ由来ヒペロシド、ラフマ由来イソクエルシトリンは、HPLCによって分析し、1食あたりそれぞれ1mgと算出された。
【0046】
被験者40名を対象に、プラセボ対照ランダム化二重盲検クロスオーバー比較試験を実施した。試験期間は10週間であり、第1週~第4週の第1期間と、第7週~第10週の第2期間と、第5週から第6週のウォッシュアウト期間と、から構成される。第1期間には、16名の被験者が被験食品を、13名の被験者が対照食品をそれぞれ毎日1食摂取した。ウォッシュアウト期間は、どの被験者も試験食品を摂取しなかった。第2期間は、各被験者が第1期間で選ばれなかった方の食品を毎日1食摂取した。
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1において「〇」で示す日に、日常生活で日ごろ慢性的に感じている精神的ストレス及び日中の眠気に関するアンケートを各被験者に対して実施した。
日常生活における精神的ストレスのアンケートはVAS法により実施し、日常感じているストレスを全く感じない最良の感覚のスコアを「0」、日常感じているストレスを非常に感じる最悪の感覚のスコアを「100」とする設問を用いた。
【0049】
また、眠気のアンケートは表2に示すエプワース眠気尺度(ESS)を用いて行った。
【0050】
【表2】
【0051】
ESSでは、8つの質問項目それぞれに4つの回答選択肢が用意されている。4つの回答選択肢は、ほとんど眠らない(スコア:0)、たまに眠る(スコア:1)、しばしば眠る(スコア:2)、ほとんど眠る(スコア:3)であり、8つの質問項目のスコアの合計をその被験者のスコアとした。
【0052】
表1に示すように、アンケートは4週間にわたる各試験期間の前後に実施しており、各期間の終了時のスコアから開始時のスコアを差し引くことによって、スコア変化量を算出した。ただし、日常生活において慢性的に感じている精神的ストレスのアンケートにおいては、第1期間及び第2期間の開始時及び終了時のそれぞれにおける連続する3日間のスコアの平均値をその時点におけるスコアとして用いた。各被験者のスコア変化量から算出された各種統計量を表3に示す。また、スコアの変化量の平均値をグラフ化したものを図1及び図2に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3並びに図1及び2に示すとおり、日常生活における慢性的な精神的ストレスのアンケートにおいて、被験食品を摂取した群の平均スコアの減少量が、対照食品を摂取した群の平均スコアの減少量よりも大きかった。また、P値が0.032であったことから、両群間には有意水準5%で有意差が認められた。つまり、被験食品には日常生活における慢性的な精神的ストレスを軽減する効果が認められた。
同様に、眠気のアンケートにおいても、被験食品を摂取した群の方が対照食品を摂取した群と比べて平均スコアの減少量が大きく、またP値が0.027であったことから、両群間には有意水準5%で有意差が認められた。つまり、被験食品には眠気軽減の効果が認められた。より具体的には、すわって読書中、テレビを見ている時、会議、劇場などで積極的に発言をせずに座っている時、乗客として1時間続けて自動車に乗っている時、午後に横になった時、すわって人と話をしている時、アルコールを飲まずに昼食を取った後、静かにすわっている時、及び自動車を運転中に信号や交通状態などにより数分間止まった時の眠気を軽減する効果が認められた。
【0055】
[製造例1:顆粒剤の製造]
表4に記載の原料を混合後、造粒機を用いて流動層造粒を行い、顆粒剤を製造した。ラフマ葉抽出物に含まれるヒペロシド、イソクエルシトリンの合計量は3質量%、ヒペロシドとイソクエルシトリンの質量比は100:100であった。製造例1に記載の顆粒剤は、1日あたり3gを摂取すればよく、100mlの水などの溶媒に溶かして摂取してもよく、溶かさずにそのまま摂取してもよい。製造例1の顆粒剤は、眠気軽減、慢性的ストレス軽減に有用である。
【0056】
【表4】
【0057】
[製造例2:錠剤の製造]
表5に記載の原料を混合後、ロータリー打錠機を用いて1粒あたり150mgの錠剤を製造した。ラフマ葉抽出物に含まれるヒペロシド、イソクエルシトリンの合計量は3質量%、ヒペロシドとイソクエルシトリンの質量比は100:110であった。製造例3に記載の錠剤は、1日あたり1粒摂取すればよい。製造例2の錠剤は、眠気軽減、慢性的ストレス軽減に有用である。
【0058】
【表5】
【0059】
[製造例3:錠剤の製造]
表6に記載の原料を混合後、ロータリー打錠機を用いて1粒あたり200mgの錠剤を製造した。ラフマ葉抽出物に含まれるヒペロシド、イソクエルシトリンの合計量は3.5質量%、ヒペロシドとイソクエルシトリンの質量比は100:90であった。製造例3に記載の錠剤は、1日あたり1粒摂取すればよい。製造例3の錠剤は、眠気軽減、慢性的ストレス軽減に有用である。
【0060】
【表6】
【0061】
[製造例4:カプセル剤の製造]
表7に記載の原料を混合後、ゼラチン又はヒドロキシプロピルセルロースを含む被膜で被包することで、1粒250mgのハードカプセルを製造した。ラフマ葉抽出物に含まれるヒペロシド、イソクエルシトリンの合計量は3質量%、ヒペロシドとイソクエルシトリンの質量比は100:120であった。製造例4に記載のハードカプセルは、1日あたり1粒摂取すればよい。製造例4の錠剤は、眠気軽減、慢性的ストレス軽減に有用である。
【0062】
【表7】
【0063】
[製造例5:飲料の製造]
表8に記載の原料を混合後、混合した液剤PET容器に詰め、PET飲料を製造した。T飲料は1本500mlで製造した。ラフマ葉抽出物に含まれるヒペロシド、イソクエルシトリンの合計量は3質量%、ヒペロシドとイソクエルシトリンの質量比は100:100であった。製造例5に記載の飲料は、1日あたり1本摂取すればよい。製造例5の飲料は、眠気軽減、慢性的ストレス軽減に有用である。
【0064】
【表8】
図1
図2