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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158886
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】極薄シート搬送装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 33/00 20060101AFI20231024BHJP
   D05B 39/00 20060101ALI20231024BHJP
   A41H 43/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
D05B33/00
D05B39/00
A41H43/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068922
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】517073410
【氏名又は名称】iCOM技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 政憲
(74)【代理人】
【識別番号】100187399
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 敏文
(72)【発明者】
【氏名】山口 知彦
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CE01
3B150EB00
3B150EB13
(57)【要約】
【課題】本発明は、粘着テープによるパッド粘着面に一時的に極薄シートを接着して搬送し、正確に極薄シートを所定位置に配置する極薄シート搬送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明の極薄シート搬送装置は、工程間を極薄シートの搬送を行う極薄シート搬送装置において、可動アームと、前記可動アームのワークに作用する部位に取り付けられた極薄シート全体を吊り上げるフレームと、複数の粘着パッドと、前記粘着バッドが出退可能な筒部と、を備え、前記複数の粘着パッドが、下側に粘着面を向けて少なくとも極薄シートの外形に沿って前記フレームに配設されたこと、を特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程間を極薄シートの搬送を行う極薄シート搬送装置において、
可動アームと、
前記可動アームのワークに作用する部位に取り付けられた極薄シート全体を吊り上げるフレームと、
複数の粘着パッドと、
前記粘着バッドが出退可能な筒部と、
を備え、
前記複数の粘着パッドが、
下側に粘着面を向けて少なくとも極薄シートの外形に沿って前記フレームに配設されたこと、
を特徴とする極薄シート搬送装置。
【請求項2】
前記極薄シートが、
布生地片である場合であって、生地片供給位置において、加工箇所の外形に沿った所定位置に生地片の目を押し広げて生地片をセットする位置決め針を配設したこと、
を特徴とする請求項1に記載する極薄シート搬送装置。
【請求項3】
前記極薄シートにエアを吹き付けるエアノズルを設けたこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する極薄シート搬送装置。
【請求項4】
前記複数の粘着パッドが、
所定の組み合わせによってグループが構成されて、該グループごとに前記極薄シートを押圧して接着すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する極薄シート搬送装置。
【請求項5】
前記粘着パッドが、
交換可能であること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する極薄シート搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極薄シートを搬送する際において、極薄シートを確実に吊り上げて所定の位置に搬送し精度よく配置する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
極薄シートは、樹脂製や布製など様々な材質のシートが存在するが、極薄シートを搬送する際に、特に課題を有する代表的な例として、縫製が必要な布生地片の搬送が挙げられる。以下では、布生地片の搬送を例示して説明する。
【0003】
布製品の製造には、少なくとも、生地の裁断、生地の部品(以下、生地片という。)の縫製、検査、折り畳み及び梱包の工程を経る必要がある。各々の工程間では、生地片の搬送作業が必要となる。
【0004】
従来、布製品の製造の自動化において、ロボットハンドが、薄い生地片を把持する場合には、しわが発生したり、捩れたりするため不向きであった。そのために、布生地のように薄く柔軟な素材を縫製位置などの各作業位置に供給及び排出を行う際には、各々の生地片を位置決めしたうえで、ベルトコンベアで搬送されるか、生地片をベルトコンベア等で所定位置に搬送し、縫着される他方の生地片において縫製に影響が少ない部分を設けて、当該部分をロボットハンドなどにより把持し所定位置に押し付け接着や融着によって仮止めした後、ロボットハンドが離脱する場合が一般的であった。
【0005】
上記の方法では、特に縫製工程において、ベルトコンベアに生地片を置く際に人手を借りることが必要となったり、縫製位置に正確に配置することができず、ずれに起因する縫製不良により歩留りの低下が生じたりして、完全な自動化を実現し効率化を図ることが困難であった。
【0006】
このように、各工程における生地片の供給及び排出時の薄い生地片の搬送、又は縫製時における生地片の位置決めは、縫製の完全自動化を実現し製造効率の向上を図る際の普遍的な課題であって、以下に示す各種の発明がなされ、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2900514号公報
【特許文献2】特開2018-176289号公報
【特許文献3】特開昭63-270085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、縫製位置への布生地の供給及び排出する装置が開示されている。特許文献1は、送り板がテーブルと針との間において、テーブルの上面から離間した状態で、送り腕によって縫製位置から載置位置へ往動されるとともに、送り腕の下降に伴い、送り板によってポケット布片及び生地がテーブルに押圧された状態で、その送り板が載置位置から縫製位置へ復動され、かつその状態で針の上下動に同期して送り板とミシンがそれぞれX,Y方向に移動されることにより、針案内溝に沿って縫製が行われ、ポケット布片が生地に縫着されるものであり、生地の移動は、送り板によってテーブルに押圧された状態で行われるものである。
【0009】
しかしながら、テーブル上をスライドさせて生地の供給及び排出を行う場合においては、押圧の状態によっては、移動の際に生地片にしわが発生したり、捩れたりして正確な位置決めができない課題があった。また、積み上げられた生地片を1枚ごと載置位置に送出する際に、確実に1枚を送出することは、生地が薄くなるほど困難であった。
【0010】
特許文献2では、ロボットハンドで把持することが容易ではない柔軟物品を、テープホルダに両端を保持された粘着テープによって、吊り上げる技術が開示されている。当該発明におけるピッキング装置は、作業台からワークを持ち上げる際、ワークに粘着領域を押し付けて、テープの粘着領域にワークを粘着させる。テープがワークを粘着すると、ロボットアームが作動し、ピッキング装置をベルトコンベアの上方へ運搬する。離脱位置に到達すると、励振ロータが弾性シートを叩く。弾性シートは、叩かれて変形と復元を繰り返して振動し、テープの粘着領域に振動が伝わり、ワークがテープから振り落とされるように動作する。
【0011】
当該ピッキング装置を用いれば、ワークが薄い生地であっても、これを取り出す場合には、複数枚を同時に吊り上げることはなく、1枚の生地を確実に取り出すことができる。しかしながら、生地を粘着する位置と範囲が縫製箇所と一致していない場合は、縫製箇所を正確に縫製位置に配置することが容易ではない。また、生地の粘着箇所以外の部分が捩れたり、折り畳んだりした状態で縫製位置に配置されると、次工程に搬送することが困難となる課題がある。
【0012】
特許文献3では、吸着パッドを用いて、布片を真空吸着し位置決めを行うロボットが開示されている。自動運転が開始されると、第1配膳ロボットのハンド部が下降して、カセットの上蓋を吸着パッドにより吸着し、上蓋台の係合ピンに位置決め穴が挿入される。続いて、第1配膳ロボットが作動して、今度は吸着パッドに真空が働いて、布箱から内布を真空吸着して、カセットの下蓋の所定の位置に載せる。
【0013】
真空吸着パッドを用いて薄い生地を吸着すると、生地にしわが発生したり、捩れたりして、縫製位置に正確に配置できない不具合が発生する場合がある。また、生地を吸着する際に、複数枚吸着するおそれがある課題があった。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、粘着テープによるパッド粘着面に一時的に極薄シートを接着して搬送し、正確に極薄シートを所定位置に配置する極薄シート搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の極薄シート搬送装置は、工程間を極薄シートの搬送を行う極薄シート搬送装置において、可動アームと、前記可動アームのワークに作用する部位に取り付けられた極薄シート全体を吊り上げるフレームと、複数の粘着パッドと、前記粘着バッドが出退可能な筒部と、を備え、前記複数の粘着パッドが、下側に粘着面を向けて少なくとも極薄シートの外形に沿って前記フレームに配設されたこと、を特徴とする。
【0016】
また、本発明の極薄シート搬送装置は、前記極薄シートが、布生地片である場合であって、生地片供給位置において、加工箇所の外形に沿った所定位置に生地片の目を押し広げて生地片をセットする位置決め針を配設したこと、を特徴とする。
【0017】
また、本発明の極薄シート搬送装置は、前記極薄シートにエアを吹き付けるエアノズルを設けたこと、を特徴とする。
【0018】
また、本発明の極薄シート搬送装置は、前記複数の粘着パッドが、所定の組み合わせによってグループが構成されて、該グループごとに前記極薄シートを押圧して接着すること、を特徴とする。
【0019】
また、本発明の極薄シート搬送装置は、前記粘着パッドが、交換可能であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
ロボットハンドなどで把持、又は吸着パッドによって真空吸着して生地片を搬送する場合には、生地片にしわや捩れが発生するが、本発明の極薄シート搬送装置によれば、粘着パッドを用いて生地片又は極薄シートを一時的に接着してフレーム全体で吊り上げることにより、しわや捩れを防止して搬送し、生地片の縫製箇所を正確に縫製位置に配置することができる効果を奏する。
【0021】
また、本発明の極薄シート搬送装置によれば、粘着パッドを用いて生地片を接着することにより、積み重ねられた下側の生地片又は極薄シートまで接着して吊り上げることがないため、生地片又は極薄シートを一枚ずつ確実に搬送することが可能である効果を奏する。
【0022】
また、本発明の極薄シート搬送装置によれば、粘着パッドの出退が可能な筒状のガードを設けることにより、一時的に接着した生地片又は極薄シートを確実に離脱させることができる効果を奏する。
【0023】
本発明の極薄シート搬送装置によれば、生地片の供給位置において生地片を吊り上げる際に、生地片に向かってエアノズルでエアを吹き付けることにより、生地片端部のほつれ糸や異物などが生地片又は極薄シートとともに粘着パッドに接着することを防止し、確実に生地片を吊り上げることができる効果を奏する。
【0024】
粘着パッドに生地片又は極薄シートを接着させる際に、同時に複数の粘着パッドを生地片に押圧する場合、押圧する粘着パッドの数が多くなるほど押圧力が分散することになる。したがって、本発明の極薄シート搬送装置では、複数の粘着パッド部をグループ化することにより、同時に生地片又は極薄シートを押圧する粘着パッドの数を限定して押圧力の分散を抑制し、確実に生地片又は極薄シートを接着する効果を奏する。
【0025】
グループ化する際に、予め条件を設けて粘着パッド部を選定しグループ化することにより、安定した接着を行うことができる効果を奏する。前記条件を例示すると、第一に可動アームのフレーム固定部からの距離が近似している粘着パッド部をグループ化することが挙げられる。第二に、同じ又は隣接したフレームの枠若しくはバーに固定された粘着パッド部をグループ化することが挙げられる。前記二条件に限られず、フレームを水平面に押圧した際に粘着パッドに掛かる力の大きさが近い粘着パッド部をグループ化することを原則とすることが好ましい。
【0026】
本発明の極薄シート搬送装置によれば、所定の回数接着した粘着パッドを交換することにより、一定の粘着力を維持し、安定して接着を行うことができる効果を奏する。
【0027】
前述までは、特に極薄シートの搬送に課題が多い布生地に利用した場合における効果について記述したが、材質に関わらず柔軟な極薄シートの搬送では同様の効果が得られることは明らかである。
【0028】
本発明の極薄シート搬送装置によれば、縫製前の生地片の供給位置において、縫製箇所の外形近傍の所定位置に位置決め針を配設して生地片を貫通させてセットすることによって、生地片を粘着パッドで吊り上げる際に生地片が位置ずれを生じることがなく、正確に生地片を縫製位置に搬送し配置することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る極薄シート搬送装置1の全体を示す斜視図である。
図2】本発明に係る極薄シート搬送装置1のフレーム10を示す斜視図である。
図3】本発明に係る極薄シート搬送装置1のフレーム10を示す平面図である。
図4】本発明に係る極薄シート搬送装置1の粘着パッド部12を示す斜視図である。
図5】粘着パッド部12の工程ごとの動作を示す断面図である。
図6a】本発明に係る極薄シート搬送装置1の第一生地片供給位置42に配設された位置決め針422を示す図である。
図6b】本発明に係る極薄シート搬送装置1の第一生地片供給位置42に配置された第一生地片50を示す図である。
図7】本発明に係る極薄シート搬送装置1の粘着パッド部12近傍に配設されたエアノズル16を示す斜視図である。
図8】本発明に係る極薄シート搬送装置1の粘着パッド部12をグループ化した一例を示す図である。
図9】本発明に係る極薄シート搬送装置1が極薄シートを吊り上げる際のグループごとの粘着パッド部12の動作を示す図である。
図10】極薄シートを吊り上げた本発明に係る極薄シート搬送装置1が、縫製位置34に極薄シートを移動させる状況を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る極薄シート搬送装置1を実施するための形態について、図を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る極薄シート搬送装置1の全体を示す斜視図である。極薄シート搬送装置1は、極薄シートの加工や梱包などの工程間において、極薄シートの搬送を行う。極薄シート搬送装置1は、可動アームと、可動アームのハンド部分に取り付けられた極薄シート全体を吊り上げるフレーム10と、フレーム10下面に極薄シートの外形に沿って配設された複数の粘着パッド122と、粘着パッド122が出退可能な筒部とから、少なくとも構成される。
【0031】
極薄シートは、織物や編物の布地、紙、樹脂製シートが例示される。極薄シートにおける搬送の自動化は、特に生地片を縫製する際に課題が多い。例を挙げると、重ねられた生地片を一枚ずつ吊り上げようとしたとき、ロボットハンドが行う「掴む」ことによる把持では、複数枚取り上げてしまう課題がある。仮に、生地片を一枚ずつ取り上げられたとしても、生地片を掴む方法では、生地にしわや捩れが発生し易く、縫製箇所を正確に位置決めして自動ミシン30の縫製位置34(図10参照)に配置することが難しいことが分かっている。また、エアによる吸着で生地片を吊り上げる場合においても、同様の課題が生じる。そこで、本発明を実施する形態では、難易度が高い布地の生地片の縫製工程における搬送の自動化を例示して説明する。
【0032】
図は、二種類の生地片を自動ミシン30の縫製位置34に搬送し、縫製が完了した作業済生地片56を回収する工程を示している。上衣の袖付きの前身頃を第一生地片50(図6b参照)として、前身頃の胸部分に第二生地片52のネームを縫製する工程である。第一生地片50と第二生地片52との組み合わせは、前身頃とポケットや、ポケットとネーム、裏地と内ポケット、裏地とタグなどのあらゆる組み合わせが想定される。
【0033】
図に向かって右のロボットテーブル40には、アーム固定部22に固定された可動アームが設置されている。可動アームは、図に示す関節型ロボットであっても、スカラー型ロボット又は吊り上げ式の搬送装置であってもよい。以下では、可動アームは関節型ロボットを例示して、ロボットアーム20という。
【0034】
また、ロボットテーブル40には、縫製位置34に供給される生地片が積み重ねられて配置される生地片供給位置と、縫製工程が終わった後の作業済生地片56を積み重ねて回収する生地片回収位置46が設けられている。図では、供給する生地片と回収する生地片は、複数枚を積み重ねて置く形態を示しているが、供給用ベルトコンベアで供給位置に搬送された生地片を吊り上げて縫製位置34に搬送し、縫製工程が終わった後の生地片を排出用のベルトコンベアに置き、次の工程に送出するようにしてもよい。
【0035】
生地片供給位置は、第一生地片供給位置42と第二生地片供給位置44との二箇所が示されている。第一生地片供給位置42及び第二生地片供給位置44の縫製箇所に該当する位置近傍には、各々位置決め針422が配設され、粘着パッド122で吊り上げた際に、極薄シートの縫製箇所が正確に位置決めできるように構成されている。
【0036】
図に向かって左には、ミシンテーブル32が配設され、ミシンテーブル32上には自動ミシン30が設置されている。縫製時にはミシン針が生地片の縫製箇所をトレースするように、ミシンテーブル32の生地片を載置した部分が水平面上を移動する。
【0037】
図2は、本発明に係る極薄シート搬送装置1のフレーム10を示す斜視図である。図3は、本発明に係る極薄シート搬送装置1のフレーム10を示す平面図である。フレーム10は、吊り上げる生地片の外形を模った形状に枠組みされる。枠102間を架け渡すバー104を複数配設することによってフレーム10の剛性を高める。フレーム10には、搬送時に一時的に接着して生地片を吊り上げるための粘着パッド部12が配設される。粘着パッド部12は、下側に粘着面を向けて少なくとも極薄シートの外形に沿ってフレーム10に配設される。
【0038】
図2及び図3の破線部は、第一生地片接着フレーム18である。本実施形態では、吊り上げる第一生地片50は袖付きの前身頃を想定しており、第一生地片接着フレーム18は前身頃部分に対応する枠102と袖部分に対応する枠102とが結合した形状に構成される。粘着パッド部12は、袖付き前身頃の外形を模った位置に配置してフレーム10の枠102やバー104に取り付けられる。前身頃の生地は大きく、外形部分を接着しただけでは、中央部分に弛みが生じ縫製箇所を正確に自動ミシン30の縫製位置34に配置することができず、縫製不良を生じる可能性がある。そこで、中央部分、特に縫製箇所の近傍のバー104にも粘着パッド部12を配設することが好ましい。
【0039】
図2及び図3では、第一生地片接着フレーム18において、枠102の外周が一部切断されている部分が、自動ミシン30の縫製位置34に挿入する部分である。当該切断部分に配置したフレーム10を補強するためのバー104に粘着パッド部12を増強して生地片を接着することによって、縫製箇所の位置ずれを防止し、位置決めの精度を高めている。粘着パッド部12の配置位置又は配置個数は図に示したもので限定されるものではなく、生地片の形状又は縫製箇所の位置若しくは形状によって柔軟に変更することが好ましい。
【0040】
図2及び図3の一点鎖線部は、第二生地片接着フレーム19である。本実施形態では、吊り上げる第二生地片52はネームを想定している。ネームは、比較的小型であるため、第一生地片接着フレーム18に第二生地片接着フレーム19を結合させて、第一生地片50及び第二生地片52を同時に搬送するフレーム形状としている。第二生地片接着フレーム19には、ネームを一時的に接着する粘着パッド部12が配設されている。図2では、粘着パッド部12を一個に設定しているが、ネームの大きさ又は形状によって、生地片の一部が垂下するすることがないように個数を決定することが好ましい。
【0041】
フレーム10には、生地片が吊り上げられたか否かを検出する生地片検出センサ17を設けておくことが好ましい。センサは、周知の接触式、光学式又はカメラによる画像認識によるものが想定される。
【0042】
粘着パッド部12の近傍には、生地片のほつれた糸や異物を粘着パッド122に付着することを防止するエアノズル16が配設される。エアノズル16は、後述する。
【0043】
図4は、本発明に係る極薄シート搬送装置1の粘着パッド部12を示す斜視図である。図4は、粘着パッド部12を下から斜め上方向に視た図である。粘着パッド部12は、少なくとも粘着パッド122、筒部(以下、ガード124という。)、エアシリンダ15及びベース156で構成される。粘着パッド122は、エアシリンダ15の可動軸151(図5参照)に固定する接続部123と、粘着面とで構成される。粘着面は、粘着素材を塗布してもよいが、両面テープは表裏の粘着性を変更することができ、かつ貼付が容易で好適である。粘着パッド122本体は、金属又は樹脂で形成されるため、両面テープの粘着パッド122本体側は、金属や樹脂になじみ強力な粘着力を有することが好ましい。一方、生地片側は、縫製時の仮止めなどに使用する程度の粘着力でよい。粘着面の直径は、おおよそ5mmから30mm程度までの大きさが好ましい。5mmより小さいと生地片を吊り上げた際の保持力が十分ではなく、予期せぬ剥離が生じる可能性がある。また、30mmを超えると、生地片の剥離を行う際に、粘着パッド122が生地片を強く引っ張り位置ずれを生じさせたり、生地片を痛めたりする可能性がある。
【0044】
粘着パッド122は、接続部123によってエアシリンダ15の可動軸151と接続される。エアシリンダ15は、少なくとも3ポジションで停止することが可能なシリンダを使用し、粘着パッド122が、退避位置、突出位置又はガード面位置などの中間位置に停止するよう設定する。3ポジションで停止することが可能なシリンダは、3個のエア給排部に対する吸排気の組み合わせを変更することで中間位置にも粘着パッド122を静止させることができる3ポジションシリンダや、2個のエア給排部152に対する吸排気の組み合わせによって2箇所において静止及びフリー状態での停止が可能な3ポジションバルブを備えたエアシリンダ15などがある。粘着パッド122の出退経路の一部の周囲は筒状のガード124によって囲まれ、粘着パッド122の退避位置はガード124内部、突出位置はガード124外部である。中間位置は粘着パッド122の粘着面がガード124の下端面と同一になるガード面位置が好適であるが、ガード面位置と突出位置との間の任意の位置であってもよい。
【0045】
粘着パッド122の粘着面は、接着の回数を重ねると粘着力が低下するため、交換が必要となる。粘着面の両面テープのみを手動で交換してもよいが、エアシリンダ15の可動軸151との接続部123を周知のチャック式、螺着式又はワンタッチ着脱式の締結構造を採用することによって、交換を自動化することができる。図には示していないが、粘着パッド122の離脱位置及び予備の粘着パッド122の収納位置を別途設けて、所定回数の接着を行った粘着パッド122を粘着パッド離脱位置に移動し自動で離脱させて、その後、予備粘着パッド収納位置に移動し自動で装着させることによって、粘着パッド122の交換の自動化が実現できる。
【0046】
ベース156は、エアシリンダ15及びガード124を保持した状態でフレーム10に固定される。エアシリンダ15は、ブラケット154を介してベース156に固定される。ガード124は、別途形成してベース156に締結部材などを用いて固定する方法と、一体化して形成する方法がある。図4では、ガード124とベース156とを一体として形成した場合を示した。
【0047】
図5は、粘着パッド部12の工程ごとの動作を示す断面図である。図5(a)は、粘着パッド122が退避位置にある待機状態を示している。退避位置は、粘着パッド122がガード124下側先端面から上方向の筒内部に退いた位置である。すなわち、生地片を接着する前の状態である。
【0048】
図5(b)は、粘着パッド122が筒外部の突出位置にあり生地片に接着可能な状態を示している。ロボットアーム20によってフレーム10を第一生地片供給位置42又は第二生地片供給位置44上側に移動させ、粘着パッド122が突出位置に移動するようにエアシリンダ15を動作させた後、フレーム10を鉛直下方向に移動するようロボットアーム20を動作させる。
【0049】
粘着パッド122を生地片に押圧すると、生地片は粘着面に接着する。生地片を接着した後、図5(c)に示すように、3ポジションバルブを備えたエアシリンダ15を使用している場合には内圧を開放して、粘着パッド122を固定するための力が付加されていない状態で動作を停止させる。したがって、保持力はなく、外力によって移動する場合がある。一方、突出位置とガード面位置との間の任意の位置を設定して停止させる場合には、3ポジションシリンダを用いて、設定された位置へ移動させてもよい。当該動作を繰り返しすべての粘着パッド122を生地片に接着させた後、ロボットアーム20によって、自動ミシン30の構造物を避けて縫製位置34上方に生地片を移動させる。
【0050】
次に、フレーム10を鉛直下方向に移動させて、縫製位置34上方からガード124をミシンテーブル32に押圧すると、図5(d)に示すように、ガード124とミシンテーブル32とによって生地片が挟持され、粘着パッド122が離脱する際の生地片の位置ずれを防止する。
【0051】
ガード124で生地片を押圧した状態で、粘着パッド122を退避位置に移動するようにエアシリンダ15を動作させると、図5(e)に示すように、ガード124が生地片を押圧した状態で粘着パッド122を生地片から剥離することができる。その後、フレーム10を上昇させると、生地片は縫製位置34に配置される。その際の粘着パッド122の状態は、図5(a)の待機状態に戻る。縫製が終了した後の生地片を縫製位置34から回収し回収位置に配置する際にも、図5(a)から図5(e)までの工程を同様に実行する。
【0052】
位置決め針422は、生地片における縫製箇所近傍に配置される。図6aは、本発明に係る極薄シート搬送装置1の第一生地片供給位置42に配設された位置決め針422を示す図である。図6aは、前身頃を第一生地片50として第二生地片52のネームを縫製する場合の第一生地片供給位置42における位置決め針422の配置を示している。位置決め針422は、ネームの外周近傍に配置される。縫製箇所の形状に応じて、位置決め針422の配置又は個数を適宜変更する。第二生地片52であるネームは、ネーム外周を隔壁によって囲みセットしてもよいが、ネームの外周付近に位置決め針422を配設してネームをセットする方が好ましい。
【0053】
図6bは、本発明に係る極薄シート搬送装置1の第一生地片供給位置42に配置された第一生地片50を示す図である。破線が、ネームが縫製されることが予定されている縫製箇所である。極薄シートである生地片は、供給位置に置いただけでは、ロボットアーム20が移動する際の風圧などによっても位置ずれを生じる可能性がある。一方で、位置決め針422を用いれば、縫製箇所の位置はずれることがない。万が一、縫製箇所以外の部分の位置が多少変わったとしても、縫製不良は防止することができるので問題はない。
【0054】
また、位置決め針422は、極細径の針を使用することにより、織物、編物又は不織布の生地片の目又は間隙を押し広げて糸を傷つけることがなく供給位置にセットすることができ、位置決め針422を抜き取った際には、針によって広げた目又は間隙は、自然と針を貫通する前の状態に戻る。
【0055】
図7は、本発明に係る極薄シート搬送装置1の粘着パッド部12近傍に配設されたエアノズル16を示す斜視図である。エアノズル16は、粘着パッド122の粘着面の直近下にエアを吹き付けることができる状態で粘着ノズル近傍に配設される。生地片の端部には、通常糸のほつれを生じていることが多い。ほつれた糸が生地片上の粘着パッド122を接着する位置にある場合、エアノズル16でエアを吹き付けることによって接着位置からほつれ糸を排除して、ほつれ糸が生地片と一緒に接着することを防止し、接着の安定性を向上させる。接着位置に異物などが存在する場合にも、排除することができる。
【0056】
また、縫製位置34において、第一生地片50の縫製箇所の上に第二生地片52を配置する際にも、エアを吹き付けることによって、縫製箇所からほつれ糸を排除することができ、縫製不良を防止することができる。縫製位置34のエアの吹き付け方法については、後述する。
【0057】
粘着パッド122に生地片を接着させる際において、複数の粘着パッド122を同時に生地片に対して押圧すると、押圧する粘着パッド122の数だけ押圧力が分散することになる。特に、接着対象の生地片が、図1に示した前身頃のように大きい生地の場合は、粘着パッド122の数も多くなるため、押圧力の分散が大きくなる。押圧力の分散は、生地片への粘着力を弱めることになり、接着の安定性を損ねることになる。したがって、本発明の極薄シート搬送装置1では、同時に生地片を押圧する粘着パッド122をグループ化して分けて限定することによって、一の粘着パッド122における押圧力を可能な限り高める。
【0058】
図8は、本発明に係る極薄シート搬送装置1の粘着パッド部12をグループ化した一例を示した図である。グループ化は、ロボットアーム20のフレーム固定部24からの距離が近似している粘着パッド122や、同じ又は隣接したフレーム10の枠102に固定された粘着パッド122について選定しグループ化することにより、安定した接着を行うことができる。図では、フレーム10の同じ枠102又はバー104に配設された粘着パッド122を同じグループとすることを原則としたうえで、フレーム固定部24に近い枠102又はバー104については、押圧力が大きくなるため、複数の枠102又はバー104を同じグループとしても問題はない。
【0059】
第一生地片50を吊り上げる粘着パッド部12を第1グループ1221から第4グループ1224までにグループ化して、第二生地片52を吊り上げる粘着パッド部12を第5グループ1225とした。
【0060】
図9は、本発明に係る極薄シート搬送装置1が極薄シートを吊り上げる際のグループごとの粘着パッド部12の動作を示す図である。図9(a)は、第1グループ1221の粘着パッド122のみを突出位置に移動させて、生地片を押圧し、接着を行っている状態を示している。
【0061】
第1グループ1221の粘着パッド122で生地片を所定時間押圧した後、第1グループ1221のエアシリンダ15からエアを開放し、粘着パッド122の動作を停止させる。また、エアシリンダ15のエアを制御して、粘着パッド122をガード面位置に退避させてもよい。その後、第2グループ1222の粘着パッド122のみにエアを供給して突出位置に移動させて、生地片を押圧し、接着を行う(図9(b))。図では、粘着パッド122をガード面位置に退避させた状態を示しているが、エアシリンダ15からエアを開放し、粘着パッド122の動作を停止させた場合には、ガード面位置と突出位置との間の任意の位置に粘着パッド122はある。粘着パッド122には、負荷が掛かっていないので、生地片に接触していた場合であっても影響はない。
【0062】
第2グループ1222の粘着パッド122で生地片を所定時間押圧した後、第2グループ1222の粘着パッド122をエアが開放された状態で停止する、又はガード面位置に退避させる。図9(c)では、粘着パッド122をガード面位置に退避させた状態を示した。その後、第3グループ1223の粘着パッド122のみを突出位置に移動させて、生地片を押圧し、接着を行う(図9(c))。
【0063】
第3グループ1223の粘着パッド122で生地片を所定時間押圧した後、第3グループ1223の粘着パッド122をエアが開放された状態で動作を停止させる、又はガード面位置に退避させる。図9(d)では、粘着パッド122をガード面位置に退避させた状態を示した。その後、第4グループ1224の粘着パッド122のみを突出位置に移動させて、生地片を押圧し、接着を行う(図9(d))。上記に示すように、グループ化した粘着パッド122を順次生地片に押圧することにより、所定の押圧力を確保して、安定した接着を行う。
【0064】
なお、ネームのような一の粘着パッド122、又は一の枠102やバー104に配設された粘着パッド122で吊り上げることができる大きさの生地片では、一回の押圧によって生地片を吊り上げる。
【0065】
図10は、極薄シートを吊り上げた本発明に係る極薄シート搬送装置1が、縫製位置34に極薄シートを移動させる状況を示した。本実施の形態で例示した前身頃とネームの搬送では、二の生地片を同時に搬送することができる。生地片供給位置において、まず、第一生地片50である前身頃を吊り上げ、続いて、第二生地片52のネームを吊り上げて、自動ミシン30の縫製位置34に搬送する。縫製は主に二枚の生地片について行われるため、二枚の生地片が同時に搬送可能なようにフレーム10が構成されることが好ましい。
【0066】
図10(a)は、搬送途上の作業中生地片54を示した図である。図10(b)は、縫製の際に下側となる第一生地片50の前身頃を縫製位置34に配置している状態を示している。この後、第二生地片52のネームを縫製位置34に配置する動作をロボットアーム20に行わせる。
【0067】
縫製の際に下側となる第一生地片50を縫製位置34に配置し、粘着パッド122を剥離後、ガード124を生地片から離脱させる前に、エアノズル16を使用してエアを生地片に吹き付けることによって、生地片のほつれ糸を縫製箇所から排除し、縫製不良を防止することができる。
【0068】
生地片からガード124を離脱させる際に、押圧したガード124に、生地片が瞬間的に接着し移動する場合があるため、ガード124の生地片と接触する面には、スポンジなどの硬度及び粘性が低く空気層が含まれる素材を配設して予定外の瞬間的な接着を防止することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る極薄シート搬送装置は、布などの生地に限らず、樹脂製のフィルムや紙など様々な素材の搬送にも利用することが可能である。また、加熱による融着や接着剤による接着などの加工工程にも利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 極薄シート搬送装置
10 フレーム
102 枠
104 バー
12 粘着パッド部
122 粘着パッド
1221 第1グループ
1222 第2グループ
1223 第3グループ
1224 第4グループ
1225 第5グループ
123 接続部
124 ガード
15 エアシリンダ
151 可動軸
152 エア給排部
154 ブラケット
156 ベース
16 エアノズル
17 生地片検出センサ
18 第一生地片接着フレーム
19 第二生地片接着フレーム
20 ロボットアーム
22 アーム固定部
24 フレーム固定部
30 自動ミシン
32 ミシンテーブル
34 縫製位置
40 ロボットテーブル
42 第一生地片供給位置
422 位置決め針
44 第二生地片供給位置
46 生地片回収位置
50 第一生地片
52 第二生地片
54 作業中生地片
56 作業済生地片
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10