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特開2023-158899電動機の制御方法、及び電動機の制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158899
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】電動機の制御方法、及び電動機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/14 20160101AFI20231024BHJP
【FI】
H02P21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068943
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 弘征
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸代
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 圭一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 彰
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB04
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ04
5H505JJ12
5H505JJ16
5H505JJ24
5H505JJ25
5H505JJ26
5H505LL07
5H505LL22
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】オープン巻線型の電動機における外乱推定精度を高めた電動機の制御方法、及び電動機の制御装置を提供する。
【解決手段】各巻線が互いに独立し且つ中性点を持たない状態で巻き付けられた固定子と、永久磁石を有する回転子とを備えるオープン巻線型の電動機の制御方法であって、固定子電流のd軸成分となるd軸電流値、固定子電流のq軸成分となるq軸電流値、固定子電流の総和となる零相電流値、及び回転子の第2回転状態に基づいてd軸外乱電圧、q軸外乱電圧、及び零相外乱電圧を推定し、第2のd軸電圧指令値をd軸外乱電圧で補正して最終d軸電圧指令値を算出し、第2のq軸電圧指令値をq軸外乱電圧で補正して最終q軸電圧指令値を算出し、第2の零相電圧指令値を零相外乱電圧で補正して最終零相電圧指令値を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各巻線が互いに独立し且つ中性点を持たない状態で巻き付けられた固定子と、永久磁石を有する回転子とを備えるオープン巻線型の電動機に向けて、前記固定子の回転に同期して回転するdq座標軸上の電圧の指令値となる最終d軸電圧指令値及び最終q軸電圧指令値と、固定子電圧の零相成分となる最終零相電圧指令値と、を出力することで固定子電流を制御する電動機の制御方法であって、
トルク指令値に基づいてd軸電流指令値、q軸電流指令値、及び零相電流指令値を算出し、
前記d軸電流指令値、前記q軸電流指令値、及び前記零相電流指令値、に基づいて第1のd軸電圧指令値、第1のq軸電圧指令値、及び第1の零相電圧指令値を算出し、
前記d軸電流指令値、前記q軸電流指令値、前記零相電流指令値、及び前記回転子の第1回転状態に基づいてd軸、q軸、零相間の干渉電圧を非干渉化するためのd軸非干渉電圧、q軸非干渉電圧、及び零相非干渉電圧を算出し、
前記第1のd軸電圧指令値を前記d軸非干渉電圧で補正して第2のd軸電圧指令値を算出し、
前記第1のq軸電圧指令値を前記q軸非干渉電圧で補正して第2のq軸電圧指令値を算出し、
前記第1の零相電圧指令値を前記零相非干渉電圧で補正して第2の零相電圧指令値を算出し、
検出した前記固定子電流と、検出した前記回転子の第2回転状態と、に基づいてd軸電流値、q軸電流値、及び零相電流値を算出し、
算出した前記d軸電流値、前記q軸電流値、及び前記零相電流値と、前記最終d軸電圧指令値、前記最終q軸電圧指令値、及び前記最終零相電圧指令値と、検出した前記回転子の前記第2回転状態に基づいてd軸外乱電圧、q軸外乱電圧、及び零相外乱電圧を推定し、
前記第2のd軸電圧指令値を前記d軸外乱電圧で補正して前記最終d軸電圧指令値を算出し、
前記第2のq軸電圧指令値を前記q軸外乱電圧で補正して前記最終q軸電圧指令値を算出し、
前記第2の零相電圧指令値を前記零相外乱電圧で補正して前記最終零相電圧指令値を算出する電動機の制御方法。
【請求項2】
前記d軸電流値、前記q軸電流値、前記零相電流値、及び前記回転子の前記第2回転状態に基づいて前記固定子に印加される電圧として推定される第1の電圧推定値と、前記最終d軸電圧指令値、前記最終q軸電圧指令値、及び前記最終零相電圧指令値に基づいて前記固定子に印加される電圧として推定される第2の電圧推定値と、の差分に基づいて、前記d軸外乱電圧、前記q軸外乱電圧、及び前記零相外乱電圧を算出する請求項1に記載の電動機の制御方法。
【請求項3】
前記第1の電圧推定値を、前記d軸電流値、前記q軸電流値、前記零相電流値、及び前記回転子の前記第2回転状態を入力値とする伝達特性により算出し、
前記伝達特性は外乱に起因して発生する前記干渉電圧となる非対角成分を有し、
前記非対角成分は前記回転子の電気角の整数倍の振動成分を有する請求項2に記載の電動機の制御方法。
【請求項4】
前記非対角成分を、前記振動成分と、分母次数と分子次数との差分が前記振動成分の分次数と分子次数の差分以上となるフィルタとの積により構成し、
前記第2の電圧推定値を、前記最終d軸電圧指令値、前記最終q軸電圧指令値、及び前記最終零相電圧指令値に前記フィルタに入力することで算出する請求項3に記載の電動機の制御方法。
【請求項5】
前記電気角は、前記回転子の前記電気角を検知するセンサの検出値である請求項3に記載の電動機の制御方法。
【請求項6】
前記電気角の時間変化率となる電気角速度と、前記固定子電流を制御する際の無駄時間と、の乗算値を前記電気角に加算することで先読み補償後電気角を算出し、
前記回転子の前記第1回転状態を、前記先読み補償後電気角に設定し、
前記回転子の前記第2回転状態を、前記電気角に設定する請求項3に記載の電動機の制御方法。
【請求項7】
前記第2の電圧推定値を算出する際に、前記最終d軸電圧指令値、前記最終q軸電圧指令値、及び前記最終零相電圧指令値に、前記固定子電流を制御する際の無駄時間分だけ入力値に対する応答を遅延させる遅延要素を掛け合わせる請求項4に記載の電動機の制御方法。
【請求項8】
各巻線が互いに独立し且つ中性点を持たない状態で巻き付けられた固定子と、永久磁石を有する回転子とを備えるオープン巻線型の電動機に向けて、前記固定子の回転に同期して回転するdq座標軸上の電圧の指令値となる最終d軸電圧指令値及び最終q軸電圧指令値と、固定子電圧の零相成分となる最終零相電圧指令値と、を出力することで固定子電流を制御する電動機の制御装置であって、
トルク指令値に基づいてd軸電流指令値、q軸電流指令値、及び零相電流指令値を算出する電流指令値演算部と、
前記d軸電流指令値、前記q軸電流指令値、前記零相電流指令値、に基づいて第1のd軸電圧指令値、第1のq軸電圧指令値、及び第1の零相電圧指令値を算出する電流制御部と、
前記d軸電流指令値、前記q軸電流指令値、前記零相電流指令値、及び前記回転子の回転状態に基づいてd軸、q軸、零相間の干渉電圧を非干渉化するためのd軸非干渉電圧、q軸非干渉電圧、零相非干渉電圧を算出する非干渉制御部と、
前記第1のd軸電圧指令値を前記d軸非干渉電圧で補正して第2のd軸電圧指令値を算出し、前記第1のq軸電圧指令値を前記q軸非干渉電圧で補正して第2のq軸電圧指令値を算出し、前記第1の零相電圧指令値を前記零相非干渉電圧で補正して第2の零相電圧指令値を算出する第2の電圧指令値演算部と、
検出した前記固定子電流と、検出した前記回転子の前記回転状態に基づいてd軸電流値、q軸電流値、及び零相電流値を算出する交流座標変換部と、
算出した前記d軸電流値、前記q軸電流値、及び前記零相電流値と、前記最終d軸電圧指令値、前記最終q軸電圧指令値、及び前記最終零相電圧指令値と、検出した前記回転子の前記回転状態に基づいてd軸外乱電圧、q軸外乱電圧、及び零相外乱電圧を推定する外乱補償部と、
前記第2のd軸電圧指令値を前記d軸外乱電圧で補正して前記最終d軸電圧指令値を算出し、前記第2のq軸電圧指令値を前記q軸外乱電圧で補正して前記最終q軸電圧指令値を算出し、前記第2の零相電圧指令値を前記零相外乱電圧で補正して前記最終零相電圧指令値を算出する最終電圧指令値演算部と、を含む電動機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の制御方法、及び電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三相同期モータの一般的な電流ベクトル制御では、三相電流を回転子に同期して回転するdq座標系に変換しd軸電流及びq軸電流が所望の電流となるように制御している。制御構成としては、自軸の電流偏差に基づいて電圧指令値を算出し、電圧指令値に含まれる干渉電圧をフィードフォワード補償している。さらに、外乱に対する補償としては、各軸に外乱補償機能を持つフィードバックを配置する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-270589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の外乱補償は1入力1出力の形で実行しているため。外乱が入力された際、干渉により外乱推定精度が低下する。また、三相磁石型同期電動機と比較して、オープン巻線型の電動機は、回転子の回転に同期して回転するdq座標軸上のd軸電流及びq軸電流の他にY結線にはない零相成分である零相電流が流れることで零相とdq軸間の干渉が加わり、影響が顕著となる。さらに、零相とdq軸間の干渉は電動機の電気角に応じて変化するため、外乱補償における制御対象の伝達特性に誤差が生じ、外乱推定精度が低下する問題がある。
【0005】
本発明は、オープン巻線型の電動機における外乱推定精度を高めた電動機の制御方法、及び電動機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動車両の制御方法は、各巻線が互いに独立し且つ中性点を持たない状態で巻き付けられた固定子と、永久磁石を有する回転子とを備えるオープン巻線型の電動機に向けて、固定子の回転に同期して回転するdq座標軸上の電圧の指令値となる最終d軸電圧指令値及び最終q軸電圧指令値と、固定子電圧の総和の電圧の指令値となる最終零相電圧指令値と、を出力することで固定子電流を制御する電動機の制御方法である。この制御方法は、トルク指令値に基づいてd軸電流指令値、q軸電流指令値、及び零相電流指令値を算出し、d軸電流指令値、q軸電流指令値、及び零相電流指令値、に基づいて第1のd軸電圧指令値、第1のq軸電圧指令値、及び第1の零相電圧指令値を算出し、d軸電流指令値、q軸電流指令値、零相電流指令値、及び回転子の第1回転状態に基づいてd軸、q軸、零相間の干渉電圧を非干渉化するためのd軸非干渉電圧、q軸非干渉電圧、及び零相非干渉電圧を算出し、第1のd軸電圧指令値をd軸非干渉電圧で補正して第2のd軸電圧指令値を算出し、第1のq軸電圧指令値をq軸非干渉電圧で補正して第2のq軸電圧指令値を算出し、第1の零相電圧指令値を零相非干渉電圧で補正して第2の零相電圧指令値を算出する。また、固定子電流のd軸成分となるd軸電流値、固定子電流のq軸成分となるq軸電流値、固定子電流の総和となる零相電流値、及び回転子の第2回転状態に基づいてd軸外乱電圧、q軸外乱電圧、及び零相外乱電圧を推定する。そして、第2のd軸電圧指令値をd軸外乱電圧で補正して最終d軸電圧指令値を算出し、第2のq軸電圧指令値をq軸外乱電圧で補正して最終q軸電圧指令値を算出し、第2の零相電圧指令値を零相外乱電圧で補正して最終零相電圧指令値を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外乱が印加されたときに、d軸、q軸、零相の外乱電圧として独立に推定可能となり、外乱推定精度を高め外乱抑止性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の電動機の制御装置のシステム構成図である。
図2図2は、外乱補償部のブロック図である。
図3図3は、本実施形態の電動機の制御装置の制御フローを示す図である。
図4図4は、外乱の収束を示すタイムチャートであって従来技術と本実施形態とを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[電動車両の制御装置のシステム構成]
図1は、本実施形態の電動機の制御装置のシステム構成図である。本実施形態の適用対象となるモータ101は、オープン巻線型のモータ101であり、U相、V相、W相の巻線がそれぞれ独立に固定子に巻き付けられ、且つ各巻線の両端部がインバータ103に接続された構成となっている。なお、モータ101が車両に適用される場合、車両の駆動源となる。モータ101及び本実施形態の電動機の制御装置は、例えば、電気自動車に適用される。なお、電気自動車以外に、例えば、ハイブリッド自動車や、自動車以外のシステムに適用することも可能である。
【0011】
PWM変換器102は、三相電圧指令値(v ,v ,v )に基づいて、三相フルブリッジ型のインバータ103のスイッチング素子(IGBTなど)のPWM_Duty駆動信号(Duru ,Dulu ,Durl ,Dull ,Dvru ,Dvlu ,Dvrl ,Dvll ,Dwru ,Dwlu ,Dwrl ,Dwll )を生成する。
【0012】
インバータ103は、PWM変換器102によって生成される駆動信号に基づいて、直流電源104の直流電圧Vdcを交流電圧(v(vru,vlu),v(vrv,vlv),vw(vrw,vlw))に変換し、モータ101に供給する。
【0013】
直流電源104は、例えば積層型リチウムイオンバッテリである。
【0014】
電流センサ105は、インバータ103からモータ101に供給される三相交流電流を検出する。検出された三相交流電流(i,i,i)は、A/D変換器106でデジタル信号に変換され、3相/d-q-0交流座標変換器107に入力される。
【0015】
3相/d-q-0交流座標変換器107(交流座標変換部)は、3相交流座標系(uvw軸)からモータ101の回転子に同期して回転する直交2軸直流座標系(d-q軸)に零相成分を含んだd-q-0座標系への変換を行なう。具体的には、u相電流ius、v相電流ivs、w相電流iws、と、電気角θreを入力し、次式(1)より、d軸電流値i、q軸電流値i、零相電流値iを算出する。零相電流値iは多相式不平衡交流回路において各巻線に同相で流れる電流のことであり、次式(1)のように三相交流電流の和を用いて表現される。一般的に、三相交流電流を基本波とした場合、オープン巻線型モータにおける零相電流は3次高調波成分が主成分となる。
【数1】
【0016】
磁極位置検出器108は、モータ101の回転子位置(角度)に応じたA相B相Z相のパルスを出力する。パルスカウンタ109は磁極位置検出器108から出力されたパルスに基づいて電気角θreを算出する。
【0017】
角速度演算器110は、電気角θreを入力して、その時間変化率より、電気角速度ωre、及び、電気角速度ωreをモータ極対数pにて除算した機械角速度ωrmを求める。
【0018】
電流指令値演算部111は、トルク指令値T、モータ回転数(機械角速度ωrm)、及び直流電圧Vdcを入力し、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i を算出する。d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i は、各々トルク指令値T、モータ回転数(機械角速度ωrm)、及び直流電圧Vdcと、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i との関係を定めたマップデータを予めメモリに記憶させておき、このマップデータを参照することで求めることができる。
【0019】
電流制御部112は、d軸電流制御部、q軸電流制御部、及び零相電流制御部で構成されており、例えば、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i と、計測された(実際の)d軸電流値i、q軸電流値i、及び零相電流値iの偏差を入力としたPI制御により、定常偏差なく所望の応答性で追従させつつ、第1のd軸電圧指令値vd1 、第1のq軸電圧指令値vq1 、及び第1の零相電圧指令値v01 を算出する。
【0020】
非干渉制御部113は、電気角速度ωre、先読み補償後電気角θre’、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i を入力して、d軸及びq軸及び零相間の干渉電圧を相殺するために必要な非干渉電圧(vd_dcpl,vq_dcpl,v0_dcpl)を算出する。
【0021】
第2の電圧指令値演算部114(加算器)は、電流制御部112の出力である第1のd軸電圧指令値vd1 、第1のq軸電圧指令値vq1 、及び第1の零相電圧指令値v01 を、非干渉制御部113の出力である非干渉電圧(vd_dcpl,vq_dcpl,v0_dcpl)を用いて補正(加算)した値を、第2のd軸電圧指令値vd2 、第2のq軸電圧指令値vq2 、及び第2の零相電圧指令値v02 として算出する。
【0022】
外乱補償部115は、電気角速度ωre、電気角θre、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、及び最終零相電圧指令値v と計測された(実際の)d軸電流値i、q軸電流値i、及び零相電流値iを入力し、モータ101に入力された外乱の推定を行う。外乱補償部115の詳細については、後述する。
【0023】
最終電圧指令値演算部116(加算器)は、第2のd軸電圧指令値vd2 、第2のq軸電圧指令値vq2 、及び第2の零相電圧指令値v02 を、外乱補償部115の出力であるd軸外乱推定値vd_dist_est、q軸外乱推定値vq_dist_est、及び零相外乱推定値v0_dist_estでそれぞれ補正(加算)し、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、及び最終零相電圧指令値v を算出する。
【0024】
d-q-0/3相交流座標変換器117は、電気角速度ωreで回転する直交2軸直流座標系(d-q軸)に零相成分を含んだd-q-0座標系から3相交流座標系(uvw軸)への変換を行う。具体的には、最終電圧指令値演算部116で算出した最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、最終零相電圧指令値v と、先読み補償後電気角θre’を入力し、次式(2)による座標変換処理を行うことによって、uvw各層の電圧指令値(v ,v ,v )を算出し、出力する。
【数2】
【0025】
先読み補償部118は、電気角θreと電気角速度ωreを入力して、電気角θreに対して、電気角速度ωreと制御系が持つ無断時間(遅れ時間)との乗算値を加算することにより、先読み補償後電気角θre’を算出する。
【0026】
[外乱補償部]
図2は、外乱補償部115のブロック図である。外乱補償部115は、伝達特性部201、遅延処理部202、フィルタ203、減算器204を有する。
【0027】
ここで、本実施形態の、電圧方程式について説明する。オープン巻線型モータの伝達特性は次式(3)となる。
【数3】
【0028】
ただし、
:d軸電流
:q軸電流
:零相電流
:d軸電圧
:q軸電圧
:零相電圧
:d軸インダクタンス
:q軸インダクタンス
:零相インダクタンス
:dq軸と零相の干渉インダクタンス
:巻線抵抗
Φ:磁石磁束の基本波成分
Φ3a:磁石磁束の3次高調波成分
ωre:モータ角速度(電気角)
θre:モータ角度(電気角)
δ:3次成分の磁束とモータ角度(電気角)の位相差
また、sはラプラス演算子である。
【0029】
伝達特性部201は、計測された(実際の)d軸電流値i、q軸電流値i、零相電流値i、及び電気角θreを入力値として次式(4)(5)に基づいた演算を実行し、電流検出値に基づいて固定子に印加された電圧として推定される第1の電圧推定値(vd_est1,vq_est1,v0_est1)を算出する。ここで、電気角θreは、磁極位置検出器108で検出したパルスに基づき生成されたセンサ値であり、時変パラメータである。
【数4】
【数5】
【0030】
遅延処理部202は、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、及び最終零相電圧指令値v を入力値とし、これらの指令値を制御系がもつ無駄時間(例えば最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、最終零相電圧指令値v がd軸電流値i、q軸電流値i、零相電流値iに反映されるまでの時間)分だけ遅延させる。
【0031】
これにより、最終d軸電圧指令値v と当該最終d軸電圧指令値v が反映されて伝達特性部201に入力されるd軸電流値i、最終q軸電圧指令値v と当該最終q軸電圧指令値v が反映されて伝達特性部201に入力されるq軸電流値i、最終零相電圧指令値v と当該最終零相電圧指令値v が反映されて伝達特性201部に入力される零相電流値iをそれぞれ時間的に対応させる。
【0032】
フィルタ203は、遅延処理部202からの入力値に対して式(5)のフィルタH(s)によるフィルタ処理を実行することで、次式(6)に示すように電圧指令値に基づいて固定子に印加された電圧として推定される第2の電圧推定値(vd_est2,vq_est2,v0_est2)を算出する。
【数6】
【0033】
減算器204は、第2の電圧推定値(vd_est2,vq_est2,v0_est2)から第1の電圧推定値(vd_est1,vq_est1,v0_est1)を差し引いた値をd軸外乱電圧推定値vd_dist_est、q軸外乱電圧推定値vq_dist_est、及び零相外乱電圧推定値v0_dist_estとして算出する。
【0034】
以上より、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、及び最終零相電圧指令値v と、計測された(実際の)d軸電流値i、q軸電流値i、及び零相電流値iを入力し、電気角3次成分を考慮した電動機の干渉特性を含む伝達特性を使用することで外乱を推定できる。ここで推定した外乱を外乱補償値として第2の電圧指令値に補正(加算)することで、外乱を打ち消すことができ、外乱抑止性が向上する。
【0035】
なお、H(s)のフィルタ時定数は、小さくするほど外乱抑止性が向上するが、制御安定性が小さくなり、制御発散しやすくなる。H(s)のフィルタ時定数は、外乱抑止性と安定性のバランスを考慮して決定する。H(s)の分母次数と分子次数との差分は、式(4)の(s・i,s・i,s・i)がかかる行列((i,i,i)がかかる行列)の分母次数と分子次数との差分よりも大きくなるように設定する。
【0036】
[制御フロー]
図3は、本実施形態の電動機の制御装置の制御フローを示す図である。
【0037】
ステップS301において、電流センサ105(A/D変換器106)が、固定子に流れる3相電流(ius,ivs,ivw)を検出し、磁極位置検出器108(パルスカウンタ109)が回転子の電気角θreを検出する。
【0038】
ステップS302において、角速度演算器110が、電気角速度ωre、及び機械角速度ωを算出する。
【0039】
ステップS303において、先読み補償部118が、電気角θreと電気角速度ωreに基づいて先読み補償後電気角θre’を算出する。
【0040】
ステップS304において、3相/d-q-0交流座標変換器107は、3相電流(ius,ivs,ivw)、及び電気角θreに基づいてd軸電流値i、q軸電流値i、及び零相電流値iを算出する。
【0041】
ステップS305において、電流指令値演算部111は、トルク指令値T及び直流電圧Vdcに基づいて、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i を算出する。
【0042】
ステップS306において、電流制御部112は、d軸電流指令値i とd軸電流値iとの差分に基づいて第1のd軸電圧指令値vd1 を算出し、q軸電流指令値i とq軸電流値iとの差分に基づいて第1のq軸電圧指令値vq1 を算出し、零相電流指令値i と零相電流値iとの差分に基づいて第1の零相電圧指令値v01 を算出する。
【0043】
ステップS307において、非干渉制御部113は、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、零相電流指令値i 、及び先読み補償後電気角θre’に基づいて、d軸非干渉電圧vd_dcpl、q軸非干渉電圧vq_dcpl、及び零相非干渉電圧v0_dcplを算出する。
【0044】
ステップS308において、第2の電圧指令値演算部114は、第1のd軸電圧指令値vd1 にd軸非干渉電圧vd_dcplを加算して第2のd軸電圧指令値vd2 を算出し、第1のq軸電圧指令値vq1 にq軸非干渉電圧vq_dcplを加算して第2のq軸電圧指令値vq2 を算出し、第1の零相電圧指令値v01 に零相非干渉電圧v0_dcplを加算して第2の零相電圧指令値v02 を算出する。
【0045】
ステップS309において、外乱補償部115は、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、最終零相電圧指令値v 、d軸電流値i、q軸電流値i、零相電流値i、及び電気角θreに基づいて、d軸外乱電圧推定値vd_dist_est、q軸外乱電圧推定値vq_dist_est、及び零相外乱電圧推定値v0_dist_estを算出する。
【0046】
ステップS310に基づいて、最終電圧指令値演算部116は、第2のd軸電圧指令値vd2 にd軸外乱電圧推定値vd_dist_estを加算して最終d軸電圧指令値v を算出し、第2のq軸電圧指令値vq2 にq軸外乱電圧推定値vq_dist_estを加算して最終q軸電圧指令値v を算出し、第2の零相電圧指令値v02 に零相外乱電圧推定値v0_dist_estを加算して最終零相電圧指令値v を算出する。
【0047】
ステップS311において、d-q-0/3相交流変換器117は、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、最終零相電圧指令値v に基づいて3相電圧指令値(v ,v ,v )を算出する。
【0048】
[タイムチャート]
図4は、外乱の収束を示すタイムチャートであって従来技術と本実施形態とを比較した図である。図4では、時刻t1においてd軸に外乱電圧を印加した場合のd軸外乱電圧(vd_est1)、q軸外乱電圧(vq_est1)、零相外乱電圧(v0_est1)、d軸電流(i)、q軸電流(i)、零相電流(i)の応答を示しているが、外乱電圧をq軸、零相に印加した場合も同様の応答を示す。
【0049】
従来技術では、上記の式(4)の行列の非対角成分であって3θreを含む項が存在せず、第1の電圧推定値(vd_est1,vq_est1,v0_est1)においてsin3θre,cos3θreの振動成分を有さず、1入力1出力の関係となる。
【0050】
従来技術では、時刻t1においてd軸に外乱電圧を印加すると、d軸外乱電圧(vd_est1)(破線)は、H(s)[L(s・i)+R・i-ωre・L・i]に従って変化(振動)するものとして算出されるが、3θreを含む項を有しない分、収束するまでに時間がかかる。よってd軸外乱電圧(vd_est1)に基づいてフィードバック制御されるd軸電流(i)(破線)は、d軸外乱電圧(vd_est1)の振動に基づいて振動し、収束するまでに時間がかかる。
【0051】
q軸外乱電圧(vq_est1)(破線)は、H(s)[Lq(s・iq)+ωre・L・i+R・i+ωreφa](iが振動している)に従って変化(振動)するものとして算出されるが、d軸外乱電圧(vq_est)と同様、3θreを含む項を有しない分、収束するまでに時間がかかる。よってq軸外乱電圧(vq_est1)に基づいてフィードバック制御されるq軸電流(i)(破線)も、q軸外乱電圧(vq_est1)の振動に基づいて振動し、収束するまでに時間がかかる。
【0052】
零相電圧(v0_est1)(破線)は、H(s)[L(s・i)+Ra・i-ωreφ3a・sin3(θre-δ)]となり、sin3(θre-δ)に従って振動するが、当該振動成分を直接相殺する項がなく収束に時間がかかる。よって零相外乱電圧(v0_est1)に基づいてフィードバック制御される零相電流(i)(破線)も、零相外乱電圧(v0_est1)の振動に基づいて振動し、収束するまでに時間がかかる。
【0053】
一方、本実施形態では、時刻t1においてd軸に外乱電圧を印加すると、d軸外乱電圧(vd_est1)(実線)は、H(s)[L(s・i)+L・cos3θre(s・i)+Ra・i-ωre・L・i-2ωre・L・sin3θre・i]に従って変化(振動)するものとして算出されるが、3θreを含む項を有するので、短時間で高精度に収束する。よってd軸外乱電圧(vd_est1)に基づいてフィードバック制御されるd軸電流(i)(実線)も、短時間で高精度に収束する。
【0054】
q軸外乱電圧(vq_est1)(実線)は、H(s)[Lq(s・iq)-L・sin3θre(s・iq)+ωre・L・i+R・i-2ωre・L・cos3θre・i+ωreφa](iは短時間で収束する)に従って変化(振動)するものとして算出されるが、3θreを含む項を有するので、短時間で高精度に収束する。よってq軸外乱電圧(vq_est1)に基づいてフィードバック制御されるq軸電流(i)(実線)も短時間で高精度に収束する。
【0055】
零相電圧(v0_est1)(実線)は、H(s)[L・cos3θre(s・id)-L・sin3θre(s・iq)+L(s・i)-3ωre・L・sin3θre・i-3ωre・L・cos3θre・i+Ra・i-ωreφ3a・sin3(θre-δ)]となり、sin3(θre-δ)の振動を直接相殺する成分が現れるので短時間で高精度に収束する。よって零相外乱電圧(v0_est1)に基づいてフィードバック制御される零相電流(i)(実線)も短時間で高精度に収束する。
【0056】
本実施形態の電動機の制御方法によれば、各巻線が互いに独立し且つ中性点を持たない状態で巻き付けられた固定子と、永久磁石を有する回転子とを備えるオープン巻線型の電動機(モータ101)に向けて、固定子の回転に同期して回転するdq座標軸上の電圧の指令値となる最終d軸電圧指令値v 及び最終q軸電圧指令値v と、固定子電圧の零相成分となる最終零相電圧指令値v と、を出力することで固定子電流を制御する電動機の制御方法であって、トルク指令値Tに基づいてd軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i を算出し、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i 、に基づいて第1のd軸電圧指令値vd1 、第1のq軸電圧指令値vq1 、及び第1の零相電圧指令値v01 を算出し、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、零相電流指令値i 、及び回転子の第1回転状態(先読み補償後電気角θre’)に基づいてd軸、q軸、零相間の干渉電圧を非干渉化するためのd軸非干渉電圧vd_dcpl、q軸非干渉電圧vq_dcpl、及び零相非干渉電圧v0_dcplを算出し、第1のd軸電圧指令値vd1 をd軸非干渉電圧vd_dcplで補正して第2のd軸電圧指令値vd2 を算出し、第1のq軸電圧指令値vq1 をq軸非干渉電圧vq_dcplで補正して第2のq軸電圧指令値vq2 を算出し、第1の零相電圧指令値v01 を零相非干渉電圧v0_dcplで補正して第2の零相電圧指令値v02 を算出し、検出した固定子電流と、検出した回転子の第2回転状態(電気角θre)と、に基づいてd軸電流値i、q軸電流値i、及び零相電流値iを算出し、算出したd軸電流値i、q軸電流値i、及び零相電流値iと、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、及び最終零相電圧指令値v と、検出した回転子の第2回転状態(電気角θre)に基づいてd軸外乱電圧(d軸外乱電圧推定値vd_dist_est)、q軸外乱電圧(q軸外乱電圧推定値vq_dist_est)、及び零相外乱電圧(零相外乱電圧推定値v0_dist_est)を推定し、第2のd軸電圧指令値vd2 をd軸外乱電圧(d軸外乱電圧推定値vd_dist_est)で補正して最終d軸電圧指令値v を算出し、第2のq軸電圧指令値vq2 をq軸外乱電圧(q軸外乱電圧推定値vq_dist_est)で補正して最終q軸電圧指令値v を算出し、第2の零相電圧指令値v02 を零相外乱電圧(零相外乱電圧推定値v0_dist_est)で補正して最終零相電圧指令値v を算出する。
【0057】
上記方法により、外乱が印加された際に、d軸、q軸、零相の外乱電圧として独立に推定可能となり、外乱推定精度を高め外乱抑止性が向上する。
【0058】
本実施形態において、d軸電流値i、q軸電流値i、零相電流値i、及び回転子の第2回転状態(電気角θre)に基づいて固定子に印加される電圧として推定される第1の電圧推定値(vd_est1,vq_est1,v0_est1)と、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、及び最終零相電圧指令値v に基づいて固定子に印加される電圧として推定される第2の電圧推定値(vd_est2,vq_est2,v0_est2)と、の差分に基づいて、d軸外乱電圧(d軸外乱電圧推定値vd_dist_est)、q軸外乱電圧(q軸外乱電圧推定値vq_dist_est)、及び零相外乱電圧(零相外乱電圧推定値v0_dist_est)を算出する。
【0059】
上記方法により、簡易な方法で外乱電圧を高精度に検知することができる。
【0060】
本実施形態において、第1の電圧推定値(vd_est1,vq_est1,v0_est1)を、d軸電流値i、q軸電流値i、零相電流値i、及び回転子の第2回転状態(電気角θre)を入力値とする伝達特性(式(4))により算出し、伝達特性(式(4))は外乱に起因して発生する干渉電圧となる非対角成分を有し、非対角成分は回転子の電気角θreの整数倍の振動成分(3θre)を有する。
【0061】
上記方法により、電気角θreの倍数成分を考慮した干渉特性を含めた電動機の特性を使用することで、電動機の状態(電圧)を正確に推定できるため外乱電圧の推定精度が向上し、外乱抑止性が向上する。
【0062】
本実施形態において、非対角成分を、振動成分(式(4)の(s・i,s・i,s・i)がかかる行列((i,i,i)がかかる行列))と、分母次数と分子次数との差分が振動成分の分次数と分子次数の差分以上となるフィルタH(s)との積により構成し、第2の電圧推定値(vd_est2,vq_est2,v0_est2)を、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、及び最終零相電圧指令値v にフィルタH(s)に入力することで算出する。
【0063】
上記方法により、H(s)の応答時定数を任意に設定することで第1の電圧指令値及び第2の電圧指令値の推定速度と安定性を調整することができる。
【0064】
本実施形態において、電気角θreは、回転子の電気角θreを検知するセンサ(磁極位置検出器108)の検出値である。
【0065】
上記方法により、電気角θre(動作点)に依存することなく、外乱抑止性が向上する。
【0066】
本実施形態において電気角θreの時間変化率となる電気角速度ωreと、固定子電流を制御する際の無駄時間と、の乗算値を電気角θreに加算することで先読み補償後電気角θre’を算出し、回転子の第1回転状態(先読み補償後電気角θre’)を、先読み補償後電気角θre’に設定し、回転子の第2回転状態(電気角θre)を、電気角θreに設定する。
【0067】
上記方法により、制御系が持つ無駄時間分の時間が経過する間に進む回転子位置を予測して非干渉制御に用いることで、電気角θreの倍数成分の振動を抑制できる。
【0068】
本実施形態において、第2の電圧推定値(vd_est2,vq_est2,v0_est2)を算出する際に、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、及び最終零相電圧指令値v に、固定子電流を制御する際の無駄時間分だけ入力値に対する応答を遅延させる遅延要素(遅延処理部202)を掛け合わせる。
【0069】
上記方法により、無駄時間がある場合でも外乱電圧を高精度に推定できる。
【0070】
本実施形態の電動機の制御装置によれば、各巻線が互いに独立し且つ中性点を持たない状態で巻き付けられた固定子と、永久磁石を有する回転子とを備えるオープン巻線型の電動機(モータ101)に向けて、固定子の回転に同期して回転するdq座標軸上の電圧の指令値となる最終d軸電圧指令値v 及び最終q軸電圧指令値v と、固定子電圧の零相成分となる最終零相電圧指令値v と、を出力することで固定子電流を制御する電動機の制御装置であって、トルク指令値Tに基づいてd軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i を算出する電流指令値演算部111と、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、及び零相電流指令値i 、に基づいて第1のd軸電圧指令値vd1 、第1のq軸電圧指令値vq1 、及び第1の零相電圧指令値v01 を算出する電流制御部112と、d軸電流指令値i 、q軸電流指令値i 、零相電流指令値i 、及び回転子の第1回転状態(先読み補償後電気角θre’)に基づいてd軸、q軸、零相間の干渉電圧を非干渉化するためのd軸非干渉電圧vd_dcpl、q軸非干渉電圧vq_dcpl、及び零相非干渉電圧v0_dcplを算出する非干渉制御部113と、第1のd軸電圧指令値vd1 をd軸非干渉電圧vd_dcplで補正して第2のd軸電圧指令値vd2 を算出し、第1のq軸電圧指令値vq1 をq軸非干渉電圧vq_dcplで補正して第2のq軸電圧指令値vq2 を算出し、第1の零相電圧指令値v01 を零相非干渉電圧v0_dcplで補正して第2の零相電圧指令値v02 を算出する第2の電圧指令値演算部114と、検出した固定子電流と、検出した回転子の回転状態(電気角θre)と、に基づいてd軸電流値i、q軸電流値i、及び零相電流値iを算出する交流座標変換部(3相/d-q-0交流座標変換器107)と、算出したd軸電流値i、q軸電流値i、及び零相電流値iと、最終d軸電圧指令値v 、最終q軸電圧指令値v 、及び最終零相電圧指令値v と、検出した回転子の回転状態(電気角θre)に基づいてd軸外乱電圧(d軸外乱電圧推定値vd_dist_est)、q軸外乱電圧(q軸外乱電圧推定値vq_dist_est)、及び零相外乱電圧(零相外乱電圧推定値v0_dist_est)を推定する外乱補償部115と、第2のd軸電圧指令値vd2 をd軸外乱電圧(d軸外乱電圧推定値vd_dist_est)で補正して最終d軸電圧指令値v を算出し、第2のq軸電圧指令値vq2 をq軸外乱電圧(q軸外乱電圧推定値vq_dist_est)で補正して最終q軸電圧指令値v を算出し、第2の零相電圧指令値v02 を零相外乱電圧(零相外乱電圧推定値v0_dist_est)で補正して最終零相電圧指令値v を算出する最終電圧指令値演算部116と、を含む。
【0071】
上記構成により、外乱が印加された際に、d軸、q軸、零相の外乱電圧として独立に推定可能となり、外乱推定精度を高め外乱抑止性が向上する。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0073】
4B 第2インバータ,7A 第1モータ,7B 第2モータ,8B 減速機,9B 駆動軸,10B 駆動輪,102 PWM変換器,116 第2モータトルク要否判定部,117 第2モータ補正トルク演算部
図1
図2
図3
図4