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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158911
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】高周波伝送構造
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/08 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
H01P5/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068964
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 匡史
(72)【発明者】
【氏名】羽生田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】片倉 拓人
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非同軸構造の汎用的なコネクタを利用して高周波信号が伝送可能な高周波伝送構造を提供する。
【解決手段】高周波伝送装置1は、コネクタ2が第1層に取り付けられた多層基板3と、第1層に設けられ一端が入力用コネクタ取付ランドに接続されたマイクロストリップ線路41と、一端がマイクロストリップ線路41に接続され、他端が出力端とされたコプレナー線路42と、コプレナー線路42のマイクロストリップ線路41側に近い位置に接続されたインピーダンスマッチング素子5と、多層基板3の第1層よりも下の層に設けられたベタグランドパターンと、多層基板3の第1層とベタグランドパターンが設けられている層との間に設けられ、銅箔が設けられていないくり抜き部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非同軸構造のコネクタに入力された高周波信号を伝送する高周波伝送構造であって、
前記コネクタが第1層に取り付けられた多層基板と、
前記多層基板の前記第1層に設けられ、一端が前記コネクタ取付ランドに接続されたマイクロストリップ線路と、
前記第1層に設けられ、一端が前記マイクロストリップ線路に接続され、他端が出力端とされたコプレナー線路と、
前記コプレナー線路の一端側と他端側との間に接続され、前記他端側よりも前記マイクロストリップ線路側に近い位置に配置されたインピーダンスマッチング回路と、
前記多層基板の前記第1層よりも下の層に設けられ、前記マイクロストリップ線路を構成するベタグランドパターンと、
前記多層基板の前記第1層と、前記ベタグランドパターンが設けられている層との間の層に設けられ、銅箔が除去されたくり抜き部と、
を備えることを特徴とする高周波伝送構造。
【請求項2】
前記マイクロストリップ線路は、複数の前記コネクタ取付ランドの間を通るように配線されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波伝送構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーターボードとバックプレーンとの間などで高周波信号を伝送するための高周波伝送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
機能の拡張、変更が可能な電子装置では、筐体に挿抜するドーターボードと、筐体の背面に配置されてドーターボードと接続するバックプレーンとを備えている。ドーターボードとバックプレーンは、コネクタを介して接続される。このような電子装置のうち、無線通信装置では、ドーターボートとバックプレーンの間で高周波信号を伝送する。一般的に、基板間での高周波信号の伝送には、同軸構造のコネクタが用いられる(例えば、特許文献1参照)。特に、無線通信装置のドーターボートとバックプレーンの間では、複数の同軸コンタクトが装着可能な高密度マルチタイプの同軸コネクタ(例えば、日本航空電子工業株式会社:CJ2シリーズ同軸コネクタなど)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3-79511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高密度マルチタイプの同軸コネクタは、近年では需要低下により生産が縮小傾向にあり、安定的な供給が難しい。また、代替品となる同軸コネクタも存在するが、無線通信装置に使用するにはスペックが過剰で、高価である。
【0005】
そこで本発明は、非同軸構造の汎用的なコネクタを利用して高周波信号が伝送可能な高周波伝送構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、非同軸構造のコネクタに入力された高周波信号を伝送する高周波伝送構造であって、前記コネクタが第1層に取り付けられた多層基板と、前記多層基板の前記第1層に設けられ、一端が前記コネクタ取付ランドに接続されたマイクロストリップ線路と、前記第1層に設けられ、一端が前記マイクロストリップ線路に接続され、他端が出力端とされたコプレナー線路と、前記コプレナー線路の一端側と他端側との間に接続され、前記他端側よりも前記マイクロストリップ線路側に近い位置に配置されたインピーダンスマッチング回路と、前記多層基板の前記第1層よりも下の層に設けられ、前記マイクロストリップ線路を構成するベタグランドパターンと、前記多層基板の前記第1層と、前記ベタグランドパターンが設けられている層との間の層に設けられ、銅箔が除去されたくり抜き部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の高周波伝送構造において、前記マイクロストリップ線路は、複数の前記コネクタ取付ランドの間を通るように配線されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、非同軸構造のコネクタに入力された高周波信号をマイクロストリップ線路およびコプレナー線路により伝送するとともに、多層基板内のくり抜き部と、インピーダンスマッチング回路とによってインピーダンスの整合を行う。これにより、安価で入手性のよい汎用型の非同軸構造のコネクタを利用して、反射損失および挿入損失が小さくなるように、高周波信号を伝送することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明によれば、マイクロストリップ線路を複数のコネクタ取付ランドの間を通るように配線するので、多層基板にマイクロストリップ線路を形成するためだけに必要なスペースを設ける必要がない。したがって、高周波伝送構造の小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態に係る高周波伝送装置の平面図および側面図である。
図2図1(B)に示す多層基板の矩形枠内の層構造を示す断面図である。
図3図2に示す多層基板の第1層、第2層および第3層のパターンを示す平面図である。
図4】高周波伝送装置の通過特性である入力側の反射損失および挿入損失を示すグラフである。
図5】高周波伝送装置の通過特性である出力側の挿入損失および反射損失とを示すグラフである。
図6】高周波伝送装置の通過特性である入力側の反射損失および出力側の反射損失のVSWR値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0012】
図1図6は、この発明の実施の形態に係る高周波伝送構造を示し、図1(A)、(B)は、本発明に係る高周波伝送構造を用いた高周波伝送装置1の平面図および側面図を示している。高周波伝送装置1は、例えば、無線通信装置のドーターボードとバックプレーンとの間に接続され、UHF帯の高周波信号を伝送するための装置である。
【0013】
高周波伝送装置1は、高周波信号が入力される非同軸構造のコネクタ2と、コネクタ2が取り付けられた多層基板3と、多層基板3に設けられた伝送線路4と、多層基板3に取り付けられたインピーダンスマッチング素子(インピーダンスマッチング回路)5と、高周波信号を出力する同軸コネクタ6とを備えている。
【0014】
コネクタ2は、例えば、業界基準の「IEC61076-4-101」に準拠した、端子ピッチが2mmのハードメトリックコネクタである。コネクタ2は、例えば、ドーターボードに設けられたコネクタに接続され、ドーターボードから高周波信号が入力される。このような非同軸構造のコネクタ2は、高周波信号の伝送には不適であり、従来は、無線通信装置のドーターボードとバックプレーンとの間の接続には用いられていなかった。
【0015】
多層基板3は、複数の絶縁基板と銅箔とが積層され、内層の銅箔に回路パターンが作成可能とされたプリント基板である。コネクタ2、インピーダンスマッチング素子5および同軸コネクタ6は、多層基板3の最上層である第1層に取り付けられている。
【0016】
伝送線路4は、多層基板3の第1層に設けられており、コネクタ2を介してドーターボードから入力された高周波信号を同軸コネクタ6を介してバックプレーンへ伝送する。伝送線路4は、コネクタ2の取付部分に設けられたマイクロストリップ線路41と、このマイクロストリップ線路41と同軸コネクタ6との間を接続するコプレナー線路42とを備えている。
【0017】
インピーダンスマッチング素子5は、伝送線路4によって伝送される高周波信号のインピーダンスの整合を行う回路を備えた素子である。インピーダンスマッチング素子5は、コプレナー線路42の一端側(マイクロストリップ線路41側)と他端側(出力端である同軸コネクタ6側)との間に接続されている。また、インピーダンスマッチング素子5は、コネクタ2に入力された高周波信号のインピーダンス整合を早期に行うために、他端側よりもマイクロストリップ線路41側に近い位置に配置されている。
【0018】
図2は、図1(A)の側面図において、破線の矩形枠Cで示した部位の多層基板3の層構造を示している。多層基板3は、銅箔層として、上記の伝送線路4が形成された第1層31と、絶縁基板3aを挟んで第1層31の下に形成された第2層32と、絶縁基板3bを挟んで第2層32の下に形成された第3層33とを備えている。
【0019】
第1層31には、伝送線路4が形成されている。第2層32には、銅箔が除去されたくり抜き部8が設けられている。なお、実際のくり抜き部8には、プリプレグや充填材などが充填されている。第3層33には、マイクロストリップ線路41を構成するベタグランドパターン9が設けられている。くり抜き部8は、伝送線路4とベタグランドパターン9との距離を調整して、伝送線路4のインピーダンスを所定のレベル(例えば、50Ω程度)に整合するために設けられている。
【0020】
図3(A)、(B)および(C)は、多層基板3の第1層31、第2層32および第3層33にそれぞれ設けられたパターンの平面図を示している。第1層31は、略全域にベタグランドパターン31aが設けられている。また、第1層31のコネクタ2が取り付けられる位置には、コネクタ2の多数の端子がそれぞれ挿入・接続されるコネクタ取付ランド31bが設けられている。これらのコネクタ取付ランド31bのうち、ドーターボードから高周波信号が入力されるのは、多数のコネクタ取付ランド31bの略中央付近に設けられた入力用コネクタ取付ランド31cのみである。そのため、入力用コネクタ取付ランド31c以外のコネクタ取付ランド31bは、ベタグランドパターン31aに接続されている。
【0021】
第1層31の入力用コネクタ取付ランド31cには、マイクロストリップ線路41が接続されている。このマイクロストリップ線路41は、多数のコネクタ取付ランド31bの間を通るように配線されている。そのため、多層基板3にマイクロストリップ線路41を形成するためだけに必要なスペースを設ける必要がないので、高周波伝送装置1を小型化することが可能である。
【0022】
マイクロストリップ線路41の端部には、ベタグランドパターン31aとの間に2本のスロットが設けられたコプレナー線路42が形成されている。コプレナー線路42は、インピーダンスマッチング素子5と接続するために、マイクロストリップ線路41に近い位置で分断され、マイクロストリップ線路41側の第1コプレナー線路42aと、同軸コネクタ6(出力端)側の第2コプレナー線路42bを構成している。第2コプレナー線路42bは、同軸コネクタ6の取付ランド31dに接続されている。
【0023】
第2層32は、略全域にベタグランドパターン32aが設けられている。また、第2層32のコネクタ2が取り付けられる位置には、第1層31のコネクタ取付ランド31bおよび入力用コネクタ取付ランド31cに対応する位置に、コネクタ取付ランド32bおよび入力用コネクタ取付ランド32cが設けられている。また、第2層32には、第1層31のマイクロストリップ線路41に対応する位置がくり抜き部8aとされている。また、第2層32には、第1層31の第1コプレナー線路42aおよび第2コプレナー線路42bに対応する位置がくり抜き部8b、8cfとされている。
【0024】
第3層33は、略全域にベタグランドパターン33aが設けられている。また、第3層33のコネクタ2が取り付けられる位置には、第1層31のコネクタ取付ランド31bおよび入力用コネクタ取付ランド31cに対応する位置に、コネクタ取付ランド33bおよび入力用コネクタ取付ランド33cが設けられている。また、第3層33は、第1層31のマイクロストリップ線路41に対応する位置と、第1コプレナー線路42aおよび第2コプレナー線路42bに対応する位置とが、ベタグランドパターン33a(図2のベタグランドパターン9に相当)とされている。
【0025】
図4図5は、上記の高周波伝送装置1の通過特性として、Sパラメータ(Scattering parameters)の入力側の反射損失S11および挿入損失S12と、出力側の挿入損失S21および反射損失S22とを示すグラフである。また、図6は、入力側の反射損失S11および出力側の反射損失S22のVSWR値(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)を示すグラフである。なお、これらのグラフでは、本実施形態の高周波伝送装置1の通過特性S1とともに、伝送線路4とベタグランドパターン9との間のくり抜き部を3層にした場合、5層にした場合、くり抜き部を1層、3層および5層にして出力端である同軸コネクタ6を多層基板3の裏面(コネクタ2と反対側の面)に設けた場合の計6種類の高周波伝送装置の通過特性を示している。
【0026】
図4~6のグラフに示すように、本実施形態の高周波伝送装置1によれば、従来用いられていた同軸コネクタと同程度まで反射損失および挿入損失を小さくして高周波信号を伝送することが可能である。また、くり抜き部の数を3層あるいは5層にした場合、出力用の同軸コネクタ6を多層基板3の裏面に配置した場合でも通過特性が著しく劣化するようなことはないので、利用する多層基板の層構成に応じて伝送線路4とベタグランドパターン9との間隔を調整することも可能である。
【0027】
以上で説明したように、本実施形態の高周波伝送装置1によれば、非同軸構造のコネクタ2に入力された高周波信号をマイクロストリップ線路41およびコプレナー線路42により伝送するとともに、多層基板3内のくり抜き部8と、インピーダンスマッチング素子5とによってインピーダンスの整合を行う。これにより、安価で入手性のよい汎用型の非同軸構造のコネクタ2を利用して、反射損失および挿入損失が小さくなるように、高周波信号を伝送することができる。
【0028】
また、本実施形態の高周波伝送装置1によれば、マイクロストリップ線路41を複数のコネクタ取付ランド31bの間を通るように配線するので、多層基板3にマイクロストリップ線路41を形成するためだけに必要なスペースを設ける必要がない。したがって、高周波伝送装置1の小型化が可能である。
【0029】
なお、上記実施形態では、本発明の高周波伝送構造を1枚の多層基板上に設けた高周波伝送装置として説明したが、バックプレーンなどに高周波伝送構造を組み込むようにしてもよい。
【0030】
また、コネクタ2の端子が挿入される多数のコネクタ取付ランド31bをベタグランドパターン31aに接続して使用しないように構成したが、一部のコネクタ取付ランド31bを高周波信号の伝送に影響を与えない信号の伝送、例えば、電源信号の伝送などに使用するようにしてもよい。これによれば、コネクタ2を高周波信号の入力だけでなく、電源供給用のコネクタとして兼用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 高周波伝送装置
2 コネクタ
3 多層基板
31 第1層
32 第2層
33 第3層
4 伝送線路
41 マイクロストリップ線路
42 コプレナー線路
5 インピーダンスマッチング素子(インピーダンスマッチング回路)
6 同軸コネクタ
8 くり抜き部
9 ベタグランドパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6