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特開2023-158913グラビア印刷インキ、及びそれを用いた印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158913
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】グラビア印刷インキ、及びそれを用いた印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20231024BHJP
   C09D 11/107 20140101ALI20231024BHJP
   C09D 11/108 20140101ALI20231024BHJP
   C09D 11/14 20060101ALI20231024BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20231024BHJP
【FI】
C09D11/10
C09D11/107
C09D11/108
C09D11/14
C09D11/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068970
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中西 靖
(72)【発明者】
【氏名】新保 雄基
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AD05
4J039AE04
4J039AE08
4J039BB01
4J039BC08
4J039BC16
4J039BC20
4J039BC36
4J039BC57
4J039BC59
4J039BC61
4J039BE12
4J039BE16
4J039CA07
4J039EA16
4J039EA36
4J039EA40
4J039EA43
4J039FA02
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、インキの保存安定性、耐摩擦性、耐熱性、耐油性及び印刷適性が良好であり、特に、基材に対する接着性、塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性、印刷して巻き取られた時の防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れたグラビア印刷インキを提供することを課題とする。
【解決手段】バインダー樹脂、ビスアミド、キレート剤及び有機溶剤を含有するグラビア印刷インキであって、バインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル系樹脂との組み合わせ、ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂との組合せ、又はポリウレタン樹脂とセルロース系樹脂との組合せ、からなる二種の樹脂を含み、キレート剤が、アセチルアセトン系チタンキレート及びアセト酢酸アルキル系チタンキレートを含む、グラビア印刷インキ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、ビスアミド、キレート剤及び有機溶剤を含有するグラビア印刷インキであって、
バインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル系樹脂との組み合わせ、ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂との組合せ、又はポリウレタン樹脂とセルロース系樹脂との組合せ、からなる二種の樹脂を含み、
キレート剤が、アセチルアセトン系チタンキレート及びアセト酢酸アルキル系チタンキレートを含む、
グラビア印刷インキ。
【請求項2】
ビスアミドの分子量が、600~2,000である、請求項1に記載のグラビア印刷インキ。
【請求項3】
ビスアミドの含有量が、印刷インキ総質量中0.1~5質量%である、請求項1又は2に記載のグラビア印刷インキ。
【請求項4】
ビスアミドが、不飽和炭化水素基を有する、請求項1又は2に記載のグラビア印刷インキ。
【請求項5】
キレート剤の含有量が、印刷インキ総質量中0.1~5質量%である、請求項1又は2に記載のグラビア印刷インキ。
【請求項6】
更に、炭化水素ワックス粒子を含有する、請求項1又は2に記載のグラビア印刷インキ。
【請求項7】
更に、消泡剤を含有する、請求項1又は2に記載のグラビア印刷インキ。
【請求項8】
基材上に、請求項1又は2に記載のグラビア印刷インキからなる印刷層を有する印刷物。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラビア印刷インキ及びそれを用いた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品パッケージその他の包装物には、装飾や表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、印刷物の意匠性、美粧性、高級感等の印刷品質は、そのでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上の価値は大きい。
【0003】
一方、食品メーカーや印刷加工会社等からは包装物の多様化、包装技術の高度化に伴い、表刷り用の印刷インキに対して高度の品質、性能が要求されるようになってきている。表刷り用印刷インキは例えばフレキソインキ、オフセットインキ、グラビア印刷インキその他が挙げられるが、中でも印刷速度が良好であるため、生産性の観点でグラビア印刷インキが多く使用されている。
【0004】
グラビア印刷インキの性能としては、印刷性能の品質はもちろんのこと、基材に対する接着性、印刷して巻き取られた時にインキが基材の裏面に裏移り・接着しないための耐ブロッキング性、印刷面が傷つかないための耐摩擦性、製袋時の耐熱性、油脂に対する耐油性、等といった各種耐性が要求されている。
【0005】
接着性及び各種耐性に優れたグラビア印刷インキとして、例えば、ポリウレタン樹脂とセルロース誘導体及び/又は塩化ビニル-酢酸ビニル共重合が規定の比率であるバインダー樹脂、キレート剤及び特定の質量平均分子量であるポリアミド樹脂を含有するグラビア印刷インキ(特許文献1)、トール油脂肪酸よび米ぬか脂肪酸のうちいずれか一方を反応原料としたポリアミド樹脂とセルロース誘導体の含有比率、インキ各組成物の含有量を規定したグラビア印刷インキ組成物(特許文献2)、バインダー樹脂及び炭化水素系ワックスを含有し、炭化水素系ワックスの硬度(針入度)及び含有量を規定したグラビア印刷インキ組成物(特許文献3)顔料、バインダー樹脂、炭化水素系ワックス及び塩素化ポリオレフィン樹脂を含有し、炭化水素系ワックス及び塩素化ポリオレフィン樹脂の物性及び含有量を規定したグラビア印刷インキ組成物(特許文献4)が提案されている。しかしながら、これらの技術では、界面活性剤が塗布あるいは練りこまれた防曇フィルムに印刷する場合や、印刷して巻き取った防曇フィルム印刷物の巻取り荷重、環境(温度及び湿度)条件により、基材に対する接着性及び耐ブロッキング性を満たすことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6599678号公報
【特許文献2】特許第6707680号公報
【特許文献3】特開2018‐053014号公報
【特許文献4】特開2019‐059923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インキの保存安定性、耐摩擦性、耐熱性、耐油性及び印刷適性が良好であり、特に基材に対する接着性、塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性、及び印刷して巻き取られた時の防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れたグラビア印刷インキを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載のグラビア印刷インキを用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち本発明は、バインダー樹脂、ビスアミド、キレート剤及び有機溶剤を含有するグラビア印刷インキであって、バインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル系樹脂との組み合わせ、ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂との組合せ、又はポリウレタン樹脂とセルロース系樹脂との組合せ、からなる二種の樹脂を含み、キレート剤が、アセチルアセトン系チタンキレート及びアセト酢酸アルキル系チタンキレートを含む、グラビア印刷インキに関する。
【0010】
また本発明は、ビスアミドの分子量が、600~2,000である、上記のグラビア印刷インキに関する。
【0011】
また本発明は、ビスアミドの含有量が、印刷インキ総質量中0.1~5質量%である、上記のグラビア印刷インキに関する。
【0012】
また本発明は、ビスアミドが、不飽和炭化水素基を有する、上記のグラビア印刷インキに関する。
【0013】
また本発明は、キレート剤の含有量が、印刷インキ総質量中0.1~5質量%である、上記のグラビア印刷インキに関する。
【0014】
また本発明は、更に、炭化水素ワックス粒子を含有する、上記のグラビア印刷インキに関する。
【0015】
また本発明は、更に、消泡剤を含有する、上記のグラビア印刷インキに関する。
【0016】
また本発明は、基材上に、上記のグラビア印刷インキからなる印刷層を有する印刷物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、インキの保存安定性、耐摩擦性、耐熱性、耐油性及び印刷適性が良好であり、特に基材に対する接着性、塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性、及び印刷して巻き取られた時の防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れたグラビア印刷インキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0019】
なお、以下の説明において「グラビア印刷インキ」は「インキ組成物」、「インキ」と略記する場合がある。また「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0020】
本発明のグラビア印刷インキは、特に表刷り用グラビア印刷インキとして好適に用いられる。
本発明において「表刷り」とは、プラスチック基材又は紙基材へ印刷した場合に、印刷層側から見て印刷模様や絵柄を確認できる印刷方法をいう。なお、積層体あるいは包装袋とした場合に最外面が印刷層となる。グラビア印刷インキを印刷して得られる層は「印刷層」、「インキ層」又は「インキ被膜」と表記する場合があるが同義である。
【0021】
[バインダー樹脂]
バインダー樹脂とは、インキ中の結着樹脂をいう。本発明では、バインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル系樹脂との組み合わせ、ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂との組合せ、又はポリウレタン樹脂とセルロース系樹脂との組合せ、からなる二種の樹脂を含む。
【0022】
<ポリウレタン樹脂>
本発明のインキがポリウレタン樹脂を含む場合、ポリウレタン樹脂が印刷適性向上やラミネート強度を向上させる機能を担う。ポリウレタン樹脂とはウレタン結合を有する樹脂であり、例えばポリオールとポリイソシアネートとからなるポリウレタン樹脂、又はポリオールとイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンポリマーと、ポリアミンの様な鎖伸長剤とを反応させることにより得られるポリウレタンウレア樹脂が挙げられる。製造方法としては、例えば特開2013-256551号公報や特開2016-043600号公報に記載の方法が挙げられる。ポリウレタン樹脂の好ましい形態としては、脂肪族ジオールを含むポリオール成分と、ポリイソシアネートとの反応で得られるウレタン結合を有するポリウレタン樹脂である。
【0023】
(ポリオール)
ポリオールは一分子中に水酸基を平均で1.7~2.3個程度有することが好ましく、平均2個有することがより好ましい。ポリオールとしては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体又は共重合体等のポリエーテルポリオール類、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタジオール、メチルペンタジオール、ヘキサジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、メチルノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコールと、二塩基酸との脱水縮合物であるポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAの酸化エチレン又は酸化プロピレンを付加して得られるポリオール類、ダイマージオール類、ひまし油ポリオール類、水添ひまし油ポリオール類等の各種公知のポリオールを挙げることができ、単独で用いても、2種以上併用してもよい。またバイオマス由来の化合物ないし原料(バイオマス原料)をポリオールの構成要素として有していてもよい。
【0024】
ポリオールの数平均分子量は、ポリウレタン樹脂の溶解性と防曇基材への耐ブロッキング性を保つため300以上が好ましく、500~6000がより好ましく、1000~3000がさらに好ましい。
【0025】
本発明においては、基材となるポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムに対する接着性の観点から、ポリオールの中でもポリエステルポリオールが好ましい。また、2種以上のポリオールを併用する場合においては、基材に対する接着性と耐ブロッキング性の観点から、ポリエステルポリオールをポリオールの全質量に対して40質量%以上含むことがより好ましい。
【0026】
ポリエステルポリオールは、炭素数5~11の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有することが好ましく、前記脂肪族二塩基酸の炭素数は6~10であるとより好ましく、基材に対する接着性、防曇フィルムへの耐ブロッキング性が良好となる。さらに、脂肪族二塩基酸の炭素数が大きくなると、耐アルコール性が向上する。
【0027】
(脂肪族ジオール)
ポリウレタン樹脂を構成するポリオールは、脂肪族ジオールを含むことが好ましい。脂肪族ジオールは例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖状ジオール類、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、メチルノナンジオール等の分岐ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、等の脂環族ジオール類等が挙げられ、複数種併用してもよい。中でも、炭素数1から6のアルキル基を置換基として有する脂肪族ジオールは、基材への接着性に優れ、またポリウレタン樹脂の溶解性を高め、印刷適性が向上することから好ましい。より具体的には3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましく使用される。
【0028】
また、ポリオールは、分子量が180以下の脂肪族ジオールと、その他のポリオールを併用することも好ましい。当該その他のポリオールとしては、芳香族ジオールや分子量が180を超える脂肪族ジオール等が挙げられ、これらを併用してもよい。
分子量が180以下の脂肪族ジオール由来の構造単位は、ウレタン結合密度を高めて結晶性と凝集力を付与し、その他のポリオール由来の構造単位は柔軟性と接着性に寄与する。そのため耐ブロッキング性と基材接着性を両立することができ、また、耐油性が良好となる。ポリオール由来の構造単位の総量中、分子量が180以下の脂肪族ジオール由来の構造単位の含有量は、10~60質量%であると好ましく、20~40質量%であるとより好ましい。10質量%以上であるとイソシアネートと反応して得られるウレタン結合の凝集力が向上し、防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れる。60質量%以下であると、ポリウレタン樹脂の溶剤に対する溶解性を良好に維持可能である。
【0029】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしてはジイソシアネートを使用することが好ましい。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ブタンー1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4、4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートが挙げられる。中でもイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0030】
本発明に使用するポリウレタン樹脂を得るためには、ポリイソシアネート由来のNCOとポリオール由来のOHとの反応モル比(NCOモル当量/OHモル当量)が好ましくは0.5以上3以下、より好ましくは1.05以上2以下となるように反応させることができ、次いで、必要に応じて後述するポリアミンで鎖延長を行うこともできる。また、過剰反応を防止するため、更に反応停止剤を使用することもできる。
【0031】
上記ウレタン化反応は、有機溶剤中で行ってもよいし、無溶剤で行ってもよい。有機溶剤を使用する場合は、反応時の温度及び粘度、副反応の制御の面から適宜選択して用いるとよい。また無溶剤でウレタン化反応を行う場合は、均一なポリウレタン樹脂を得るために、攪拌が十分可能な粘度となるように温度を上げて行うことが望ましい。ウレタン化反応は10分~5時間行うのが望ましく、反応の終点は粘度測定、IR測定によるNCO由来ピーク、滴定によるNCO%測定等により判断される。
【0032】
鎖延長に用いるポリアミンとしては、エチレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、イソホロンジアミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ジアミン類であることが好ましい。また鎖延長剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類も使用することができる。
また反応停止剤としては、メタノール、エタノール等のモノアルコール類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0033】
ポリウレタン樹脂は、重量平均分子量が8,000~80,000のものが好ましく、10,000~60,000であることがなお好ましい。ガラス転移温度は0℃以下であることが好ましく、-40℃~-5℃であることがなお好ましく、-35~-10℃であることが更に好ましい。塩化ビニル系樹脂又はセルロース系樹脂との親和性が良好となるためである。
また、ポリウレタン樹脂はアミノ基及び/又は水酸基を有するものが好ましく、アミノ基を有する場合のアミン価は0.5~20mgKOH/gであると好ましく、1~15mgKOH/gであるとより好ましい。また、水酸基を有する場合の水酸基価は0.5~30mgKOH/gであると好ましく、1~20mgKOH/gであるとより好ましい。アミン価及び/又は水酸基価が上記範囲であると、基材に対する接着性が向上する。
【0034】
<ポリアミド樹脂>
本発明において使用するポリアミド樹脂は以下に限定されるものではないが、好ましくは多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得ることができる有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドである。特に、重合脂肪酸及び/又はダイマー酸を含有する酸成分と、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンとの反応物を含むポリアミド樹脂であるとより好ましく、一級及び二級モノアミンを一部含有するものであると更に好ましい。
【0035】
ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、以下に限定されるものではないが、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、重合脂肪酸等が挙げられ、その中でもダイマー酸あるいは重合脂肪酸に由来する構造を含有するポリアミド樹脂が好ましく、当該構造をポリアミド樹脂中に50質量%以上含有することがより好ましい。ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸等を含むものである。なお、重合脂肪酸あるいはダイマー酸を構成する脂肪酸は、大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来等天然油に由来するものを好適に挙げることができ、オレイン酸又はリノール酸から得られるものが好ましい。
多塩基酸に加え、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0036】
ポリアミド樹脂の原料で使用される多価アミンとしては、ポリアミン等を挙げることができる。
ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン、キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ポリアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン等を挙げることができる。
さらに、一級又は二級モノアミンを含有させることもでき、一級又は二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等を挙げることができる。
【0037】
ポリアミド樹脂は、テトラヒドロフラン可溶部をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量分率における分子量分布において、分子量分布曲線の全ピーク面積のうち、分子量3,000以下の面積比率(面積百分率)が10~50%であると好ましく、20~40%であるとより好ましい。
分子量が3,000以下の低分子領域は、低温でポリアミド樹脂が溶融して、基材に濡れ広がりやすくなり、基材に対する密着性が良好となる。
一実施形態において、インキが分子量3,000以下の面積百分率が10~50%のポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、脂肪酸アミド及びキレート剤を含有することで、基材に対する密着性及び耐ブロッキング性が両立する。
面積比率は、縦軸に分子量Mの面積百分率(%)、横軸に分子量Mの常用対数LogMとした分子量分布図において、Log(3,000)以下の範囲にある面積百分率である。
【0038】
上記GPCの測定条件としては、ポリスチレン換算の測定法を採用でき、検出としてはRI反射、流出速度としては0.1~0.5ml/分、カラム温度としては30~50℃、測定器としては昭和電工社製Shodex GPC-104を採用することができる。
【0039】
ポリアミド樹脂は、インキ組成物中の固形分全体に対して10~50質量%含有することが好ましく、より好ましくは25~45質量%である。10質量%以上の場合は印刷インキの乾燥性が向上し、50質量%以下の場合は印刷インキの流動性及びレベリング性が向上して、保存安定性及び印刷適性が良好となる。
【0040】
更に、ポリアミド樹脂は軟化点が80~140℃であることが好ましく、より好ましくは90~130℃である。上記実施形態においてインキ被膜が強くなる。軟化点が80℃以上の場合は、印刷物のインキ被膜の表面タック切れが良好となり、ブロッキングを防ぐ。軟化点が140℃以下の場合はインキ被膜が柔軟となり基材に対する接着性が向上する。なお、軟化点はJISK2207(環球法)で測定された値を表す。
好ましいポリアミド樹脂としては、レオマイドシリーズ(花王社製)、ポリマイドシリーズ(三洋化成工業社製)等が挙げられる。
【0041】
<塩化ビニル系樹脂>
本発明において使用する塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル由来の構造単位とその他モノマー由来の構造単位を含有するものであれば特に限定されない。中でも塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂が好ましい。
【0042】
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーとを共重合して得られる。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000であることが好ましく、20,000~70,000であることが更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~99質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材に対する接着性、インキ層の物性等が良好となる。
【0043】
また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は、水酸基を有することが好ましく、水酸基を有する塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は、共重合において更にビニルアルコールを用いる、又は酢酸ビニルの一部をケン化することで得られる。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂が水酸基を有する場合、その水酸基価は、50~180mgKOH/gが好ましく、70~160mgKOH/gがより好ましい。
【0044】
塩化ビニル、酢酸ビニル及びビニルアルコールのモノマー比率は、樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動に影響を与え、例えば、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコールは極性溶剤への良好な溶解性を付与する。また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂のガラス転移温度は、50℃~90℃であることが好ましい。
【0045】
一実施形態において、上記ポリウレタン樹脂と上記塩化ビニル系樹脂との組み合わせにより、バインダー樹脂として効果的に機能する。他の樹脂をさらに併用する場合、バインダー樹脂の総量中、ポリウレタン樹脂及び塩化ビニル系樹脂を合計で60質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。基材に対する接着性が良好となるためである。
更に、バインダー樹脂が上記ポリウレタン樹脂と上記塩化ビニル系樹脂を含む場合、それらの固形分質量比(ポリウレタン樹脂/塩化ビニル系樹脂)は、95/5~50/50であることが好ましい。この配合比により、基材に対する接着性と耐ブロッキング性、更には印刷適性が良好となる。
【0046】
<セルロース系樹脂>
セルロース系樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びニトロセルロースが好ましい。特に好ましくはニトロセルロースである。
セルロース系樹脂の重量平均分子量は、5,000~200,000であることが好ましく、10,000~50,000であることが更に好ましい。また、セルロース系樹脂のガラス転移温度は120℃~180℃であることが好ましい。一実施形態において、セルロース系樹脂をポリアミド樹脂又はポリウレタン樹脂との併用することにより、耐ブロッキング性、耐擦傷性、耐熱性等のインキ被膜物性が更に向上する。
【0047】
(ニトロセルロース)
上記ニトロセルロースは、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましく、平均重合度20~200、更には30~150の範囲のものが好ましい。ニトロセルロースの平均重合度が20以上の場合、インキ層の強度が向上し、耐摩擦性が向上する。また、ニトロセルロースの平均重合度が200以下の場合、溶剤への溶解性、インキの低温安定性、併用樹脂との相溶性が向上する。ニトロセルロースの分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ニトロセルロースのガラス転移温度は120℃~180℃であるものが好ましく、窒素分は10.5~12.5質量%であることが好ましい。
好ましいニトロセルロース樹脂としては、TRシリーズ(TNC INDUSTRIAL社製)、DLXシリーズ(Nobel Enterprises社製)等が挙げられる。
【0048】
一実施形態において、上記ポリアミド樹脂と上記セルロース系樹脂との組合せ、又は上記ポリウレタン樹脂と上記セルロース系樹脂との組み合わせにより、バインダー樹脂として効果的に機能する。バインダー樹脂が上記ポリアミド樹脂と上記セルロース系樹脂との組合せ、又は上記ポリウレタン樹脂と上記セルロース系樹脂との組合せを含む場合、それらの固形分質量比(ポリアミド樹脂又はポリウレタン樹脂)/(セルロース樹脂)は、95/5~40/60であることが好ましい。この組み合わせ及び配合比のとき、基材に対する密着性や、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性等、印刷インキ層の各種耐性が良好となるためである。
【0049】
<ビスアミド>
本発明のグラビア印刷インキは、ビスアミドを含有する。ビスアミドの含有量は、インキ組成物中に0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~3質量%であることがより好ましい。ビスアミドの含有量が0.1質量%以上の場合は耐ブロッキング性が向上し、5質量%の以下の場合は印刷適性及び耐油性が向上する。
【0050】
また、ビスアミドの分子量は、600以上2,000以下であることが好ましく、650以上1,500以下であることがより好ましく、1,000以下であることがより好ましい。なお、複数のビスアミドの混合物を用いる場合、上記分子量は重量平均分子量を指す。
ビスアミドの分子量が600以上の場合は耐ブロッキング性が向上し、分子量が2,000以下の場合は印刷後にインキ皮膜の表面に配向しやすくなり、滑り性を発現させて耐ブロッキング性及び耐摩擦性が良好となる。前記バインダー樹脂と上記の分子量範囲であるビスアミドを併用することにより、耐ブロッキング性が更に向上する。
ビスアミドは1分子中のアミド基がモノアミドよりも多く、1分子中のアミド基がより多いポリアミドよりも分子量が比較的低い。よって、インキ皮膜の表面に配向しているアミド基が多く、インキ皮膜と接触する基材との相互作用により、耐ブロッキング性がより向上すると考えられる。
【0051】
ビスアミドは、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるものが好ましい。
一般式(1)
-CONH-R-HNCO-R
一般式(2)
-NHCO-R-CONH-R
(式中、R、R、R、及びRは、炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を表し、同一でも異なっていてもよく、R及びRは、アルキレン基又はアリーレン基を表す。)
【0052】
ビスアミドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドが挙げられる。
【0053】
ビスアミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。該当するものとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド(融点142℃)、エチレンビスステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド(融点140℃)、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点135℃)、エチレンビスオレイン酸アミド(融点119℃)、エチレンビスエルカ酸アミド(融点120℃)、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(融点110℃)、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド(融点141℃)、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド(融点136℃)、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド(融点118℃)、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド(融点113℃)が挙げられる。
【0054】
ビスアミドを構成する脂肪酸としては、炭素数10~22の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数12~18の飽和脂肪酸及び/又は炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。
飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸からなるビスアミドが特に好ましい。
また、不飽和脂肪酸を含有することが、有機溶剤への溶解性及び印刷適性の点から好ましい。
【0055】
なお、本発明の作用・効果を損なわない範囲で上記一般式(1)又は一般式(2)で表されるもの以外のビスアミドを含んでもよく、公知のビスアミドを使用することができる。
【0056】
<キレート剤>
本発明のグラビア印刷インキは、キレート剤を含有する。キレート剤を含有することで、インキ被膜における凝集力が向上し、基材に対する密着性が向上する他、インキ被膜の耐摩擦性や耐油性も向上する。キレート剤としては、1分子中に、Ti-O-C型結合をもつ有機チタン化合物が好ましい。
【0057】
有機チタン化合物として具体的には、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のチタンアルコキシド、トリエタノールアミンチタネート、チタンアセチルアセトナート、チタンラクテート、オクチレングリコールチタネート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)、プロパンジオキスチタンビス(エチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のチタンキレートを挙げることができる。
中でも、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)等のアセチルアセトン系チタンキレート、チタンエチルアセトアセテート、プロパンジオキスチタンビス(エチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のアセト酢酸アルキル系チタンキレートが好ましい。
【0058】
本発明においては、上記アセチルアセトン系チタンキレート及びアセト酢酸アルキル系チタンキレートを併用することで、インキの保存安定性、インキの溶解性及び印刷適性が向上する。
アセチルアセトン系チタンキレートと、アセト酢酸アルキル系チタンキレートとの質量比(アセチルアセトン系チタンキレート/アセト酢酸アルキル系チタンキレート)は、特に限定されないが、99:1~1:99であることが好ましく、90:10~10:90であることがより好ましく、80:20~20:80であることが更に好ましく、30:70~70:30であることが特に好ましい。
【0059】
また、前記ビスアミドと、上記のアセチルアセトン系チタンキレート及びアセト酢酸アルキル系チタンキレートとを併用することにより、耐ブロッキング性が更に向上する。基材に対する密着性及び耐ブロッキング性を両立するためには、ビスアミドと、アセチルアセトン系チタンキレート及びアセト酢酸アルキル系チタンキレートとの質量比(ビスアミド/アセチルアセトン系チタンキレート及びアセト酢酸アルキル系チタンキレートの合計量)が10:90~90:10であることが好ましく、15:85~85:15であることがより好ましい。
【0060】
キレート剤の含有量は、グラビア印刷インキの総質量中0.1~5質量%であることが好ましい。キレート剤の含有量が0.1質量%以上の場合、基材に対する接着性及び耐ブロッキング性が向上し、5.0質量%以下の場合、インキの保存安定性及び印刷適性が向上する。
【0061】
<炭化水素ワックス粒子>
本発明のグラビア印刷インキには、炭化水素ワックス粒子を用いることが好ましい。炭化水素ワックスとしてはポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等が挙げられ、炭化水素ワックス粒子の含有量は、グラビア印刷インキの総質量中0.1~3質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.3~2.5質量%である。炭化水素ワックス粒子を本発明のバインダー樹脂と併用することで、インキ被膜の耐摩擦性がさらに向上する。
【0062】
<消泡剤>
本発明のグラビア印刷インキは、消泡剤を含有することが好ましい。消泡剤により、印刷時に発生した泡が印刷物に移り、印刷不良(レベリング性不良)となることを防ぐことができる。消泡剤としては、オイル系消泡剤、ポリマー系消泡剤、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。本発明においては、ポリマー系消泡剤及び/又はシリコーン系消泡剤を用いることが好ましく、相溶性の観点から、ポリマー系消泡剤がより好ましい。
【0063】
<着色剤、顔料>
本発明のグラビア印刷インキには、着色剤を含んでもよい。着色剤としては顔料が好ましい。本発明で利用可能な顔料は特に限定されず、一般に印刷インキや塗料で使用できる各種の無機顔料や有機顔料を好適に使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、及び、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。また有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等が好適である。なおこれらに限らず、前記顔料はカラーインデックスのジェネリックネームで記載のものが適宜使用可能である。これらの顔料の含有量としては、インキ総量中に0.5~50質量%が好ましい。
【0064】
<添加剤>
本発明のグラビア印刷インキには、必要に応じて各種添加剤を使用することができる。添加剤としては例えば、顔料分散剤、体質顔料、無機系微粒子、レベリング剤、接着補助剤を挙げることができる。具体的には、顔料の分散性を向上させるための顔料分散剤、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるための体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子、レベリング性を向上させるためのレベリング剤、基材に対する密着性を向上させるための接着補助剤等の各種添加剤を挙げることができる。
【0065】
<有機溶剤>
本発明のインキ組成物で利用する溶剤としては、主に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系有機溶剤、アセトン,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、及び、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素系有機溶剤を挙げることができ、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性等を考慮して、混合して利用することが好ましい。これらの有機溶剤の使用量としては、インキ総量中に20質量%以上含有することが好ましい。なお、印刷時の臭気や環境対応のため、有機溶剤はエステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤を主成分とすることが好ましく、その質量比(エステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤)が、50:50~90:10であることが好ましい。
【0066】
<グラビア印刷インキの製造>
本発明のグラビア印刷インキを製造する方法として、まず、顔料、バインダー樹脂、脂肪酸アミド、キレート剤、有機溶剤、及び必要に応じて顔料分散剤、消泡剤等を含む組成物を、羽根つき攪拌装置を用いて均一に撹拌混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を利用して分散し、さらに、他の樹脂や添加等を混合する方法がある。中でもビーズミルを用いて顔料を含む組成物を混錬・分散する工程を含むことが好ましい。
【0067】
<基材>
本発明の印刷インキは、基材上に印刷されて印刷物とすることができる。当該基材は特に限定されないが、フィルム基材であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸等のポリエステル基材、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系基材、ナイロン基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデン基材、セロハン基材等のフィルム基材、及びこれらの複合材料からなるフィルム基材が挙げられる。プラスチック基材は、シリカ、アルミナ、アルミニウム等の金属あるいは金属酸化物が蒸着されていてもよく、更に蒸着面をポリビニルアルコール等の塗料でコーティング処理を施されていてもよい。一般的に、印刷される基材表面はコロナ処理等の表面処理が施されている場合が多い。さらに基材は、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込み等プラスチックフィルムを加工して得られるフィルムも使用する事が可能である。
また、基材は、単層でもよいし、2つ以上の基材が積層された積層体(基材層)であってもよい。基材層を構成する基材は、同じでも異なっていてもよい。
中でもポリオレフィン基材であることが好ましい。当該ポリオレフィン基材は表面処理されていてもよいし、されていなくてもよい。
【0068】
上記防曇剤は界面活性剤が好ましく、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステルやエチレンオキサイド付加物等のイオン系界面活性剤を1種あるいは複数用いられる。
【0069】
<印刷物>
印刷物は、基材上に本発明のグラビア印刷インキを印刷し、印刷層を形成することで得ることができる。印刷物は例えば、基材上に、本発明のグラビア印刷インキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって印刷層を形成し、得ることができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式が好ましく、本発明のグラビア印刷インキは例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、印刷される。その後、オーブンによる乾燥によってインキ層を定着することで、印刷物を得ることができる。
また、顔料等の着色剤を含有しないインキはオーバープリントワニス(OPワニス)とも呼ばれており、OP層を形成させるために使用することができる。具体的には、着色剤を含有する上記インキ層を形成した後に、インキ層を被覆するように印刷を行い、オーブンによる乾燥によってOP層を形成させることができる。
【実施例0070】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。
【0071】
<重量平均分子量及び数平均分子量>
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めた。昭和電工社製「Shodex GPC-104」を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量を求めた。以下に測定条件を示す。
カラム:下記の複数のカラムを直列に連結して使用。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)、
カラム温度:40℃、
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0072】
<ポリウレタン樹脂溶液(PU1)の調整>
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに数平均分子量2000の3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸の縮合物であるポリエステルポリオール103.2部、ネオペンチルグリコール35.2部、イソホロンジイソシアネート121.4部、2-エチルヘキシル酸第一錫0.03部及び酢酸エチル65.1部を仕込み、窒素気流下に90℃で2時間反応させ、酢酸エチル165.3部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液490.2部を得た。次いでイソホロンジアミン33.6部、ジ-n-ブチルアミン1.2部、酢酸エチル237.5部、イソプロピルアルコール200.6部の混合物に、得られた末端イソシアネートプレポリマー490.2部を室温で徐々に添加、次に50℃で1時間反応させた。その後、イソホロンジイソシアネート5.3部を加えて粘度調整した後、酢酸エチル/イソプロピルアルコールを質量比で2/1の割合で混合した溶剤で固形分を30%に調整し、重量平均分子量40,000のポリウレタン樹脂溶液(PU1)を得た。
【0073】
<ポリウレタン樹脂溶液(PU2)の調整>
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに数平均分子量2000の3-メチル-1,5-ペンタンジオールとセバシン酸の縮合物であるバイオマス原料由来のポリエステルポリオール103.2部、ネオペンチルグリコール35.2部、イソホロンジイソシアネート121.4部、2-エチルヘキシル酸第一錫0.03部及び酢酸エチル65.1部を仕込み、窒素気流下に90℃で2時間反応させ、酢酸エチル165.3部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液490.2部を得た。次いでイソホロンジアミン33.6部、ジ-n-ブチルアミン1.2部、酢酸エチル237.5部、イソプロピルアルコール200.6部の混合物に、得られた末端イソシアネートプレポリマー490.2部を室温で徐々に添加、次に50℃で1時間反応させた。その後、イソホロンジイソシアネート5.3部を加えて粘度調整した後、酢酸エチル/イソプロピルアルコールを質量比で2/1の割合で混合した溶剤で固形分を30%に調整し、重量平均分子量40,000のポリウレタン樹脂溶液(PU2)を得た。
【0074】
<ポリアミド樹脂溶液の調製>
特許第6255123号公報の実施例を参考にして、以下のスペックのポリアミド樹脂を合成した。
ポリアミド樹脂(1):(Mw)7,172、(Mn)1,928
ポリアミド樹脂(2):(Mw)13,604、(Mn)2,269
各ポリアミド樹脂30部を、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比)からなる混合溶剤70部に混合溶解させて、固形分30%のポリアミド樹脂溶液(PA1)及び(PA2)を得た。
ポリアミド樹脂(1)及び(2)はいずれもダイマー酸に由来する構成単位をポリアミド樹脂中に有し、軟化点が100~130℃のポリアミド樹脂である。ポリアミド樹脂(1)の分子量分布曲線の全ピーク面積のうち、分子量3,000以下の面積百分率は35.0%であった。ポリアミド樹脂(2)の分子量分布曲線の全ピーク面積のうち、分子量3,000以下の面積百分率は27.9%であった。
【0075】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液の調製>
塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂(日信化学社製、製品名ソルバインTA5R)20部を、酢酸エチル80部に混合溶解させて、固形分20%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液を得た。
【0076】
<ニトロセルロース溶液の調製>
ニトロセルロース イソプロピルアルコール湿潤品(TNC INDUSTRIAL社製、製品名NC TR2)30部を、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比)からなる混合溶剤70部に混合溶解させて、固形分20%のニトロセルロース溶液を得た。
【0077】
<脂肪酸アミド>
ビスアミド(1):ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(分子量)650
ビスアミド(2):ヘキサメチレンジアミンにC6~C18の分布を持った脂肪酸をアミド結合させたビスアミド、アゼライン酸をアミド結合させたトリアミドの混合物(Mw)1,500
ビスアミド(3):エチレンビスステアリン酸アミド(分子量)590
ビスアミド(4):エチレンビスラウリン酸アミド(分子量)425
モノアミド:パルミチン酸アミド(分子量)250
ポリアミド:(Mw)3,800(三洋化成工業社製、製品名ポリマイドS-2460)
【0078】
<キレート剤>
チタンキレート(1):ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)
チタンキレート(2):ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)
【0079】
<炭化水素ワックス>
ポリエチレンワックス(三井化学社製 製品名ハイワックス320MP)
パラフィンワックス(Micro Powders社製 製品名MP-22XF)
【0080】
<消泡剤>
ポリマー系消泡剤(BYK社製 製品名BYK-1752)
シリコーン系消泡剤(BASF社製 製品名EFKA SI2741)
【0081】
<実施例1>
フタロシアニン系青色顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG-7400G(C.I.ピグメントブルー15:4)10部、ポリウレタン樹脂(PU1)34部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液6部、ビスアミド(1)1部、チタンキレート(1)0.5部、チタンキレート(2)1部、ポリエチレンワックス0.7部、ポリマー系消泡剤0.1部、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=35:30:20:15(質量比)からなる混合溶剤46.7部をサンドミル(アイガーミル)で混練し、グラビア印刷インキ(インキS1)を調製した。
【0082】
<実施例2>
フタロシアニン系青色顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG-7400G(C.I.ピグメントブルー15:4)10部、ポリウレタン樹脂(PU2)34部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液6部、ビスアミド(1)1部、チタンキレート(1)0.5部、チタンキレート(2)1部、ポリエチレンワックス0.7部、ポリマー系消泡剤0.1部、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=35:30:20:15(質量比)からなる混合溶剤46.7部をサンドミル(アイガーミル)で混練し、グラビア印刷インキ(インキS2)を調製した。
【0083】
<実施例3~17>
表1に記載した原料及び配合比に変更した以外は実施例1と同様の方法でグラビア印刷インキ組成物(インキS3~S17)を得た。
【0084】
【表1】
【0085】
<実施例18>
フタロシアニン系青色顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG-7400G(C.I.ピグメントブルー15:4)10部、ポリアミド樹脂溶液(PA1)32部、ニトロセルロース溶液31部、ビスアミド(1)2部、チタンキレート(1)0.3部、チタンキレート(2)0.7部、パラフィンワックス0.5部、ポリマー系消泡剤0.2部、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比)からなる混合溶剤23.3部をサンドミル(アイガーミル)で混練し、グラビア印刷インキ(インキS18)を得た。
【0086】
<実施例19>
フタロシアニン系青色顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG-7400G(C.I.ピグメントブルー15:4)10部、ポリアミド樹脂溶液(PA2)32部、ニトロセルロース溶液31部、ビスアミド(1)2部、チタンキレート(1)0.3部、チタンキレート(2)0.7部、パラフィンワックス0.5部、ポリマー系消泡剤0.2部、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比)からなる混合溶剤23.3部をサンドミル(アイガーミル)で混練し、グラビア印刷インキ(インキS19)を得た。
【0087】
<実施例20~34>
表2に記載した原料及び配合比に変更した以外は実施例18と同様の方法でグラビア印刷インキ組成物(インキS20~S34)を得た。
【0088】
【表2】
【0089】
<実施例35>
フタロシアニン系青色顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG-7400G(C.I.ピグメントブルー15:4)10部、ポリウレタン樹脂(PU2)34部、ニトロセルロース溶液15部、ビスアミド(1)1部、チタンキレート(1)0.5部、チタンキレート(2)1部、ポリエチレンワックス1部、ポリマー系消泡剤0.1部、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=35:30:20:15(質量比)からなる混合溶剤37.4部をサンドミル(アイガーミル)で混練し、グラビア印刷インキ(インキS35)を調製した。
【0090】
<実施例36>
フタロシアニン系青色顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG-7400G(C.I.ピグメントブルー15:4)10部、ポリウレタン樹脂(PU1)34部、ニトロセルロース溶液15部、ビスアミド(1)1部、チタンキレート(1)0.5部、チタンキレート(2)1部、ポリエチレンワックス1部、ポリマー系消泡剤0.1部、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=35:30:20:15(質量比)からなる混合溶剤37.4部をサンドミル(アイガーミル)で混練し、グラビア印刷インキ(インキS36)を調製した。
【0091】
<実施例37~51>
表3に記載した原料及び配合比に変更した以外は実施例35と同様の方法でグラビア印刷インキ組成物(インキS37~S51)を得た。
【0092】
【表3】
【0093】
<比較例1~7>
表4に記載した原料及び配合比に変更した以外は実施例1と同様の方法でグラビア印刷インキ組成物(インキT1~T7)を得た。
【0094】
<比較例8~14>
表4に記載した原料及び配合比に変更した以外は実施例18と同様の方法でグラビア印刷インキ組成物(インキT8~T14)を得た。
【0095】
<比較例15~21>
表4に記載した原料及び配合比に変更した以外は実施例35と同様の方法でグラビア印刷インキ組成物(インキT15~T21)を得た。
【0096】
【表4】
【0097】
<表刷り用グラビア印刷物の製造(印刷)>
実施例1で得られたグラビア印刷インキを希釈溶剤(酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メシルシクロヘキサン=35:30:20:15(質量比))で希釈し、ザーンカップNo.3で15秒に調整し、印刷用の希釈インキとした。
次にコロナ放電処理したポリプロピレンフィルム(D-SHNY01、28μm、DIC(株)社製)又は防曇フィルム(AF-CV2C 30μm、(フタムラ化学社製)にグラビア校正印刷機を利用して版深30ミクロンの腐蝕版で印刷(乾燥温度50℃、印刷速度50m/分)を行い、印刷物を得た。
【0098】
実施例2~17、実施例35~51、比較例1~7、及び比較例15~21で得られたグラビア印刷インキを使用した以外は、上記と同様の方法でポリプロピレンフィルム印刷物及び防曇フィルム印刷物をそれぞれ得た。
【0099】
実施例18で得られたグラビア印刷インキを希釈溶剤(酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メシルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比))で希釈し、ザーンカップNo.3で15秒に調整し、印刷用の希釈インキとした。
次にコロナ放電処理したポリプロピレンフィルム(D-SHNY01、28μm、DIC(株)社製)又は防曇フィルム(AF-CV2C 30μm、(フタムラ化学社製)にグラビア校正印刷機を利用して版深30ミクロンの腐蝕版で印刷(乾燥温度50℃、印刷速度50m/分)を行い、印刷物を得た。
【0100】
実施例19~34、及び比較例8~14で得られたグラビア印刷インキを使用した以外は、上記と同様の方法でポリプロピレンフィルム印刷物及び防曇フィルム印刷物をそれぞれ得た。
【0101】
実施例1~51、及び比較例1~21で得られたグラビア印刷インキ及びその印刷物を用いて以下に記載の評価を行った。結果を表1~表4に示す。
【0102】
<接着性>
実施例1~51、比較例1~21のポリプロピレンフィルムに印刷した印刷物のインキ被膜面に粘着テープ(製品名セロハンテープ)を貼り付け、これを急速に剥がしたときのインキ被膜がフィルムから剥離する度合いから、接着性を評価した。なお、評価は印刷後に25℃で24時間静置後に行った。
A.インキ層がフィルムから取られない
B.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
C.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
D.インキ層のフィルムから剥離した面積が15%以上50%未満であるもの
E.インキ層のフィルムから剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、B及びCは実用上問題がない範囲である。
【0103】
<耐塩ビブロッキング性>
実施例1~51、比較例1~21のポリプロピレンフィルムに印刷した印刷物を4cm角に切り、同じ大きさに切った軟質塩化ビニルシートと印刷物のインキ被膜面とを重ね合わせて、0.5kg/cmの荷重をかけ、50℃/80%RHの雰囲気で24時間放置後、印刷面と塩化ビニルシートを引き剥がし、インキ被膜の剥離の程度から耐塩ビブロッキング性を評価した。
A.インキ層がフィルムから取られない
B.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
C.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
D.インキ層のフィルムから剥離した面積が15%以上50%未満であるもの
E.インキ層のフィルムから剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、B及びCは実用上問題がない範囲である。
【0104】
<耐防曇フィルムブロッキング性>
実施例1~51、比較例1~21の防曇フィルムに印刷した各表刷りグラビア印刷物を40kg/cmの荷重で巻取り、巻き取った印刷物を50℃の雰囲気で24時間放置後、巻き取った印刷物の印刷面と非印刷面を引き剥がし、インキの剥離の程度から耐ブロッキング性を評価した。
A.インキ層がフィルムから取られない
B.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
C.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
D.インキ層のフィルムから剥離した面積が15%以上50%未満であるもの
E.インキ層のフィルムから剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、B及びCは実用上問題がない範囲である。
【0105】
<耐摩擦性>
実施例1~51、比較例1~21のポリプロピレンフィルムに印刷した各表刷りグラビア印刷物のインキ層面に上質紙を当て、学振型摩擦堅牢試験機を用いて評価した。評価条件は荷重500g×往復100回の摩擦で、摩擦後にインキ層がフィルムから剥離する度合いから、耐摩擦性を評価した。
A.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
B.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
C.インキ層のフィルムから剥離した面積が15%以上25%未満であるもの
D.インキ層のフィルムから剥離した面積が25%以上50%未満であるもの
E.インキ層のフィルムから剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、B及びCは実用上問題がない範囲である。
【0106】
<耐熱性>
実施例1~51、比較例1~21のポリプロピレンフィルムに印刷した各表刷りグラビア印刷物のインキ層面にアルミ箔艶面を当て、ヒートシール試験機を用いて評価した。評価条件は温度170℃、荷重2kg、1秒の圧着で、圧着後にインキ層がアルミ箔に付着する度合いから、耐熱性を評価した。
A.インキ層のアルミ箔に付着した面積が5%未満であるもの
B.インキ層のアルミ箔に付着した面積が5%以上15%未満であるもの
C.インキ層のアルミ箔に付着した面積が15%以上25%未満であるもの
D.インキ層のアルミ箔に付着した面積が25%以上50%未満であるもの
E.インキ層のアルミ箔に付着した面積が50%以上であるもの
なお、A、B及びCは実用上問題がない範囲である。
【0107】
<耐油性>
実施例1~51、比較例1~21のポリプロピレンフィルムに印刷した各表刷りグラビア印刷物を2cm×20cmの大きさに切り、インキ層面に溶融した市販バター(雪印メグミルク社製 商品名雪印北海道バター)を全面に塗布し、25℃環境下で12時間静置した後に布(カナキン3号)を当て、学振型摩擦堅牢試験機を用いて評価した。評価条件は荷重200g×往復100回の摩擦で、摩擦後にインキ層がフィルムから剥離する度合いから、耐油性を評価した。
A.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
B.インキ層のフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
C.インキ層のフィルムから剥離した面積が15%以上25%未満であるもの
D.インキ層のフィルムから剥離した面積が25%以上50%未満であるもの
E.インキ層のフィルムから剥離した面積が50%以上であるもの
なお、A、B及びCは実用上問題がない範囲である。
【0108】
<印刷適性>
実施例1~51、比較例1~21で得られたグラビア印刷インキについて、希釈溶剤(実施例1~17、実施例35~51、比較例1~7及び比較例15~21は酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=35:30:20:15(質量比)、実施例18~34及び比較例8~14は酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=20:20:20:40(質量比))にて、粘度をザーンカップNo.3で15秒(25℃)に調整し、印刷機における版の空転90分後の、版かぶり部分の面積を目視判定し、評価を行った。
A.版かぶり面積が目視で確認できない
B.版かぶり面積が0%以上5%未満であるもの
C.版かぶり面積が5%以上10%未満であるもの
D.版かぶり面積が10%以上20%未満であるもの
E.版かぶり面積が20%以上であるもの
なお、A、B及びCは実用上問題がない範囲である。
【0109】
<レベリング性>
実施例1~51、比較例1~21のポリプロピレンフィルムに印刷した各表刷りグラビア印刷物を用いて、レベリング性の評価を行った。評価は100%(ベタ)部に対して目視で行い、評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
A.不規則な濃淡、ピンホール状の欠損が全くみとめられず、均一な膜を形成している
B.やや不規則な濃淡がみとめられるが、ピンホール状の欠損はみとめられない
C.不規則な濃淡がみとめられ、わずかにピンホール状の欠損がみとめられる
D.ピンホール状の欠損がみとめられる
E.ピンホール状の欠損があらゆるところにみとめられる
なお、A、B及びCは実用上問題がない範囲である。
【0110】
実施例1~51及び比較例1~21で得られたグラビア印刷インキの防曇フィルム印刷物を用いて接着性、耐塩ビブロッキング性、耐摩擦性、耐熱性及び耐油性の評価を行ってもポリプロピレンフィルム印刷物の場合と同様の評価結果が得られた。
【0111】
特に、本発明のグラビア印刷インキは、印刷物の耐防曇フィルムブロッキング性が、40kg/cmの荷重で巻取り、巻き取った印刷物を50℃の雰囲気で24時間放置する厳しい条件でも良好であるという特有な効果を奏した。
【0112】
本発明は、インキの保存安定性、耐摩擦性、耐熱性、耐油性及び印刷適性が良好であり、特に基材に対する接着性、塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性、印刷して巻き取られた時に防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れたグラビア印刷インキを提供することができた。
ポリウレタン樹脂と塩化ビニル系樹脂の組合せで、いずれかの樹脂を含有しない比較例1及び2、ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂の組合せで、いずれかの樹脂を含有しない比較例8及び9、ポリウレタン樹脂とセルロース系樹脂の組合せで、いずれかの樹脂を含有しない比較例15及び16、ビスアミドを含有しない比較例3~5、比較例10~12及び比較例17~19、並びに、チタンキレートを併用しない比較例6、7、13、14、20及び21は、基準を満たさない評価結果であった。