(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158918
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】管理業務委託費用計算装置、管理業務委託費用計算方法、及び、管理業務委託費用計算プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20231024BHJP
【FI】
G06Q50/16 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068977
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角地 良平
(72)【発明者】
【氏名】谷川 剛史
(72)【発明者】
【氏名】久保出 良祐
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不動産賃貸物件のフリーレント期間の管理業務委託費用を算出可能とする管理業務委託費用計算装置、管理業務委託費用計算方法及び管理業務委託費用計算プログラムを提供する。
【解決手段】不動産管理装置1において、取得部21は、不動産賃貸物件の管理業務委託費用(PMフィー)の精算期間を示す精算期間情報を取得する。判別部22は、フリーレント期間を示すフリーレント期間情報、及び契約賃料共益費マスタ15を参照し、取得された精算期間情報で示される精算期間がフリーレント期間であるか否かを判別する。算出部23は、精算期間がフリーレント期間であることを示す判別結果が得られた場合に、管理契約精算設定マスタ17に記憶されている契約した正規賃料に、PMフィー算出用の所定の掛率を乗算処理することで、フリーレント期間におけるPMフィーを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動産賃貸物件の管理業務委託費用の精算期間を示す精算期間情報を取得する取得部と、
前記不動産賃貸物件における賃料が発生しない期間であるフリーレント期間を示すフリーレント期間情報及び正規賃料が発生する正規賃料期間を示す正規賃料期間情報が記憶された記憶部を参照し、取得された前記精算期間情報で示される前記精算期間が前記フリーレント期間であるか否かを、前記フリーレント期間情報及び前記正規賃料期間情報に基づいて判別する判別部と、
前記精算期間が前記フリーレント期間であることを示す判別結果が前記判別部から得られた際に、前記記憶部に記憶されている契約した前記正規賃料に、前記記憶部に記憶されている管理業務委託費用算出用の所定の掛率を乗算処理することで、前記フリーレント期間における管理業務委託費用を算出する算出部と、
を有する管理業務委託費用計算装置。
【請求項2】
前記記憶部には、前記フリーレント期間における管理業務委託費用を、契約した前記正規賃料に基づいて計算することを示す第1の計算パターン情報が前記フリーレント期間情報に関連付けされて記憶されており、また、前記正規賃料期間における管理業務委託費用を、入金済の前記正規賃料に基づいて計算することを示す第2の計算パターン情報が前記正規賃料期間情報に関連付けされて記憶されており、
前記算出部は、前記精算期間が前記フリーレント期間であることを示す判別結果が前記判別部から得られた際に、前記フリーレント期間情報に関連付けされて前記記憶部に記憶されている前記第1の計算パターン情報に従って、契約した前記正規賃料に前記掛率を乗算処理し、前記フリーレント期間における管理業務委託費用を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の管理業務委託費用計算装置。
【請求項3】
前記算出部は、契約した前記正規賃料を含む、管理業務委託費用計算用の計算元ワークを生成し、前記計算元ワークに含まれる契約した前記正規賃料に、前記掛率を乗算処理することで、フリーレント期間における管理業務委託費用を算出すること
を特徴とする請求項2に記載の管理業務委託費用計算装置。
【請求項4】
取得部が、不動産賃貸物件の管理業務委託費用の精算期間を示す精算期間情報を取得する取得ステップと、
判別部が、前記不動産賃貸物件における賃料が発生しない期間であるフリーレント期間を示すフリーレント期間情報及び正規賃料が発生する正規賃料期間を示す正規賃料期間情報が記憶された記憶部を参照し、取得された前記精算期間情報で示される前記精算期間が前記フリーレント期間であるか否かを、前記フリーレント期間情報及び前記正規賃料期間情報に基づいて判別する判別ステップと、
算出部が、前記精算期間が前記フリーレント期間であることを示す判別結果が前記判別ステップで得られた際に、前記記憶部に記憶されている契約した前記正規賃料に、前記記憶部に記憶されている管理業務委託費用算出用の所定の掛率を乗算処理することで、前記フリーレント期間における管理業務委託費用を算出する算出ステップと、
を有する管理業務委託費用計算方法。
【請求項5】
コンピュータを、
不動産賃貸物件の管理業務委託費用の精算期間を示す精算期間情報を取得する取得部と、
前記不動産賃貸物件における賃料が発生しない期間であるフリーレント期間を示すフリーレント期間情報及び正規賃料が発生する正規賃料期間を示す正規賃料期間情報が記憶された記憶部を参照し、取得された前記精算期間情報で示される前記精算期間が前記フリーレント期間であるか否かを、前記フリーレント期間情報及び前記正規賃料期間情報に基づいて判別する判別部と、
前記精算期間が前記フリーレント期間であることを示す判別結果が前記判別部から得られた際に、前記記憶部に記憶されている契約した前記正規賃料に、前記記憶部に記憶されている管理業務委託費用算出用の所定の掛率を乗算処理することで、前記フリーレント期間における管理業務委託費用を算出する算出部として機能させること、
を特徴とする管理業務委託費用計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理業務委託費用計算装置、管理業務委託費用計算方法、及び、管理業務委託費用計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、オーナーから管理委託された不動産賃貸物件の管理を行い、その管理業務委託費用(PMフィー:Property Management)をオーナー側に請求する不動産管理業務が知られている。
【0003】
このような不動産管理業務に関しては、特許文献1(特開平11-250124号公報)に、不動産業者支援用会計処理システムが開示されている。この不動産業者支援用会計処理システムは、入出力手段が、不動産所有者の所有する各物件に対応する管理データを入出力し、算出手段が、管理データに対する管理料を算出する。精算手段は、管理料を賃借人から徴収した賃貸料から差し引く場合、又は、一旦賃借人から徴収した賃貸料を不動産所有者に渡し、その後不動産所有者から徴収する場合、のそれぞれに対応する。そして、集計処理手段は、各物件を所有する不動産所有者毎に管理料を一括管理する。これにより、不動産所有者が所有する複数の物件に対する管理料の徴収を確実に行い、徴収漏れ及び2重に徴収する不都合を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、入居した一定期間の賃貸料を無料とする「フリーレント期間」を備えた不動産賃貸物件が知られている。
【0006】
しかし、PMフィーは、賃料に所定の掛率を乗算処理して算出されることが多いが、フリーレント期間中は貸借人から賃料の振込が行われないため、フリーレント期間中におけるPMフィーを算出することは困難であった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、フリーレント期間の管理業務委託費用を算出可能とした管理業務委託費用計算装置、管理業務委託費用計算方法、及び、管理業務委託費用計算プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る管理業務委託費用計算装置は、不動産賃貸物件の管理業務委託費用の精算期間を示す精算期間情報を取得する取得部と、不動産賃貸物件における賃料が発生しない期間であるフリーレント期間を示すフリーレント期間情報及び正規賃料が発生する正規賃料期間を示す正規賃料期間情報が記憶された記憶部を参照し、取得された精算期間情報で示される精算期間がフリーレント期間であるか否かを、フリーレント期間情報及び正規賃料期間情報に基づいて判別する判別部と、精算期間がフリーレント期間であることを示す判別結果が判別部から得られた際に、記憶部に記憶されている契約した正規賃料に、記憶部に記憶されている管理業務委託費用算出用の所定の掛率を乗算処理することで、フリーレント期間における管理業務委託費用を算出する算出部と、を有する。
【0009】
また、上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る管理業務委託費用計算方法は、取得部が、不動産賃貸物件の管理業務委託費用の精算期間を示す精算期間情報を取得する取得ステップと、判別部が、不動産賃貸物件における賃料が発生しない期間であるフリーレント期間を示すフリーレント期間情報及び正規賃料が発生する正規賃料期間を示す正規賃料期間情報が記憶された記憶部を参照し、取得された精算期間情報で示される精算期間がフリーレント期間であるか否かを、フリーレント期間情報及び正規賃料期間情報に基づいて判別する判別ステップと、算出部が、精算期間がフリーレント期間であることを示す判別結果が判別ステップで得られた際に、記憶部に記憶されている契約した正規賃料に、記憶部に記憶されている管理業務委託費用算出用の所定の掛率を乗算処理することで、フリーレント期間における管理業務委託費用を算出する算出ステップと、を有する。
【0010】
また、上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る管理業務委託費用計算プログラムは、コンピュータを、不動産賃貸物件の管理業務委託費用の精算期間を示す精算期間情報を取得する取得部と、不動産賃貸物件における賃料が発生しない期間であるフリーレント期間を示すフリーレント期間情報及び正規賃料が発生する正規賃料期間を示す正規賃料期間情報が記憶された記憶部を参照し、取得された精算期間情報で示される精算期間がフリーレント期間であるか否かを、フリーレント期間情報及び正規賃料期間情報に基づいて判別する判別部と、精算期間がフリーレント期間であることを示す判別結果が判別部から得られた際に、記憶部に記憶されている契約した正規賃料に、記憶部に記憶されている管理業務委託費用算出用の所定の掛率を乗算処理することで、フリーレント期間における管理業務委託費用を算出する算出部として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、フリーレント期間の管理業務委託費用を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態の不動産管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、取引先マスタの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、管理項目マスタの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、賃貸契約マスタの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、契約賃料共益費マスタの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、管理契約マスタの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、管理契約精算設定マスタの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態の不動産権利装置の管理業務委託費用の算出動作の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態の不動産権利装置の管理業務委託費用の算出に用いられる各種マスタ及びワークを示す図である。
【
図11】
図11は、管理業務委託費用を算出する過程で参照されるマスタ及び生成される対象賃貸契約ワークを示す図である。
【
図12】
図12は、管理業務委託費用を算出する過程で参照される対象賃貸契約ワーク及び生成されるフィー計算元ワークを示す図である。
【
図13】
図13は、フィー計算元ワーク及び管理契約採算設定マスタに基づいて生成される請求データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した実施の形態となる不動産管理装置を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、このような実施の形態に本発明が限定されるものではない。
【0014】
(ハードウェア構成)
実施の形態の不動産管理装置は、例えばビルディングのテナント及び賃貸家屋等の不動産賃貸物件を管理し、各不動産賃貸物件の管理業務委託費用(PMフィー:Property Management)を算出してオーナー側に請求する不動産管理業者の端末装置となっている。
【0015】
図1は、実施の形態の不動産管理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図1に示す不動産管理装置1は、記憶部2、制御部3、通信インターフェース部4及び入出力インターフェース部5を備えている。入出力インターフェース部5には、入力装置6及び出力装置7が接続されている。出力装置7としては、モニタ装置(家庭用テレビを含む)等の表示部を用いることができる。入力装置6としては、キーボード装置、マウス装置及びマイクロホン装置等の他、マウス装置と協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタ装置等を用いることができる。
【0016】
通信インターフェース部4は、例えばインターネット等の広域網又はLAN(Local Area Network)等のプライベート網であるネットワーク8を介して、各不動産賃貸物件のオーナーの端末装置にPMフィーの請求データを送信し、また、PMフィーの請求データを、会計システムを備えた端末装置に仕訳計上する。
【0017】
記憶部2としては、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置を用いることができる。記憶部2には、それぞれ記憶領域である物件マスタ11、取引先マスタ12、管理項目マスタ13、賃貸契約マスタ14、契約賃料共益費マスタ15、管理契約マスタ16及び管理契約精算設定マスタ17が設けられている。また、この記憶部2には、フリーレント期間におけるPMフィーの算出等を可能とする管理業務委託費用算出プログラムが記憶されている。また、この記憶部2には、PMフィーの算出過程で生成される対象賃貸契約ワーク18及びフィー計算元ワーク19が記憶され、また、管理業務委託費用算出プログラムに基づいて算出された、フリーレント期間及び正規賃料期間におけるPMフィーの請求データが記憶される。
【0018】
物件マスタ11には、
図2に示すように例えば「001」等の物件番号、及び、「サンプルビル」等の物件名が記憶される。取引先マスタ12には、
図3に示すように「T002」又は「O003」等の取引先番号、及び、「賃貸人A」又は「オーナーB」等の取引先名が記憶される。
【0019】
管理項目マスタ13には、
図4に示すように「101010」、「S101010」又は「S201010」等の管理項目番号、及び、「賃料」、「PMフィー(契約)」又は「PMフィー(入金)」等の管理項目名が記憶される。この
図4の例は、「101010」の管理項目番号が、正規賃料の管理項目番号を示している。また、この
図4の例は、「S101010」の管理項目番号が、正規賃料の入金前において、契約による正規賃料に基づいて算出されたPMフィーの管理項目番号を示している。また、この
図4の例は、「S201010」の管理項目番号が、入金された正規賃料に基づいて算出されたPMフィーの管理項目番号を示している。
【0020】
賃貸契約マスタ14には、
図5に示すように「T001」等の賃貸契約番号、「001」等の物件番号、及び、「T002」等の取引先(貸借人)が記憶される。また、賃貸契約マスタ14には、「2022年4月1日」等の不動産賃貸物件の賃貸契約の開始日(契約開始日)、及び、「2023年3月31日」等の不動産賃貸物件の賃貸契約の終了日(契約終了日)が記憶される。この
図5の例は、物件番号が「001」の不動産賃貸物件を、「T002」の貸借人が、2022年4月1日~2023年3月31日までの間、貸借する契約であることを示している。
【0021】
契約賃料共益費マスタ15には、各不動産賃貸物件の貸借人との契約情報が記憶される。具体的には、契約賃料共益費マスタ15には、
図6に示すように、賃貸契約番号、管理項目番号、適用開始日、適用終了日、金額、及び、特約区分情報が記憶される。
【0022】
この
図6の例は、賃貸契約番号が「T001」の不動産賃貸物件における「101010」の管理項目番号の「賃料(
図4参照)」は、2022年4月1日~2022年5月31日までの期間は、不動産賃貸物件の賃料を無料とする「フリーレント期間(特約区分参照)」となり、賃料は「0円」であることを示している。
【0023】
また、この
図6の例は、賃貸契約番号が「T001」の不動産賃貸物件における「101010」の管理項目番号の「賃料」は、2022年6月1日~2023年3月31日までの期間は、正規賃料となる「正規賃料期間(特約区分参照)」となり、賃料は「30万円」であることを示している。
【0024】
管理契約マスタ16には、各不動産賃貸物件のオーナーとの間の契約情報が記憶される。具体的には、管理契約マスタ16には、
図7に示すように、管理契約番号、物件番号、取引先番号(オーナー番号)、契約開始日及び契約終了日が記憶される。この
図7の例は、「O003」のオーナー番号のオーナーとの間には、2022年4月1日~2023年3月31日までの間、「001」の物件番号の不動産賃貸物件を管理する契約が結ばれていることを示している。
【0025】
管理契約精算設定マスタ17には、PMフィーを算出する際に用いる掛率が記憶されている。具体的には、管理契約精算設定マスタ17には、
図8に示すように管理契約番号、取引先番号(オーナー番号)、計算パターン、精算管理項目番号、精算対象管理項目番号、掛率、適用開始日及び適用終了日が記憶される。
【0026】
このうち、「契約ベース」の計算パターン(第1の計算パターン情報の一例)は、賃料の入金前となるフリーレント期間のPMフィーの計算は、契約による正規賃料に基づいて行うことを示している。また、契約開始日及び契約終了日は、この契約ベースの計算パターンでPMフィーを算出する期間を示している。また、掛率は、この「契約ベース」の計算パターンの演算で用いられる掛率を示しており、例えば「3%(=契約による正規賃料の3%)」であることを示している。
【0027】
また、「入金ベース」の計算パターン(第2の計算パターン情報の一例)は、賃料の入金後となる正規賃料期間のPMフィーの計算を、入金済の正規賃料に基づいて行うことを示している。また、契約開始日及び契約終了日は、この入金ベースの計算パターンでPMフィーを算出する期間を示している。また、掛率は、この「入金ベース」の計算パターンの演算で用いられる掛率を示しており、例えば「3%(入金された正規賃料の3%)」であることを示している。
【0028】
また、精算管理項目番号は、オーナーに対する精算(請求又は支払)を管理するための項目番号である。
図8の例では、「契約ベース」の計算パターンの精算管理項目番号は「S101010」であり、「入金ベース」の計算パターンの精算管理項目番号は「S201010」となっている。
【0029】
また、精算対象管理項目番号は、精算管理項目の構成要素の項目番号である。
図8の例は、「賃料」を示す「101010」の管理項目番号が、精算対象であることを示している。
【0030】
(不動産管理装置の機能構成)
次に、制御部3は、記憶部2に記憶されている管理業務委託費用算出プログラムを実行することで、取得部21、判別部22、算出部23、記憶制御部24及び表示制御部25として機能する。
【0031】
取得部21は、業務オペレータが入力装置6を操作することで入力された不動産賃貸物件のPMフィーの精算期間を示す精算期間情報を取得する。判別部22は、フリーレント期間を示すフリーレント期間情報(
図6の特約区分が「1:フリーレント」の行の適用開始日~適用終了日の期間の情報)、及び、正規賃料が発生する正規賃料期間を示す正規賃料期間情報(
図6の特約区分が「0:正規賃料」の行の適用開始日~適用終了日の期間の情報)が記憶された契約賃料共益費マスタ15(記憶部の一例)を参照し、取得された精算期間情報で示される精算期間がフリーレント期間であるか否かを判別する。
【0032】
算出部23は、判別部22により、精算期間がフリーレント期間であることを示す判別結果が得られた場合に、管理契約精算設定マスタ17(記憶部の一例)に記憶されている契約した正規賃料に、管理契約精算設定マスタ17に記憶されているPMフィー算出用の所定の掛率を乗算処理することで、フリーレント期間におけるPMフィーを算出する。
【0033】
記憶制御部24は、PMフィーの算出過程で生成される対象賃貸契約ワーク18及びフィー計算元ワーク19を記憶部2に記憶する。また、記憶制御部24は、算出されたPMフィーのオーナーに対する請求データを記憶部2に記憶する。
【0034】
表示制御部25は、管理業務委託費用計算プログラムに基づいて、業務オペレータにより操作されるPMフィーの算出処理画面(図示せず)を出力装置7に表示する。この算出処理画面は、PMフィーの所望の精算期間、物件番号(
図2参照)、取引先番号(賃貸人番号及びオーナー番号:
図3参照)、及び、管理項目番号(
図4参照)の各入力欄を備えている。
【0035】
業務オペレータは、この算出処理画面の各入力欄に、PMフィーの算出対象となる精算期間、物件番号、取引先番号及び管理項目番号を入力し、精算開始ボタンを操作する。精算開始ボタンの操作を検出すると、制御部3は、入力された各種情報に基づいて、各マスタ11~17を参照し、指定された精算期間及びオーナーに対するPMフィーを算出する。
【0036】
(PMフィーの算出動作)
図9のフローチャートは、実施の形態の不動産管理装置1におけるPMフィーの算出動作の流れを示すフローチャートである。制御部3の表示制御部25は、業務オペレータによりPMフィーの算出指定操作が行われると、管理業務委託費用計算プログラムに基づいて上述のPMフィーの算出処理画面を出力装置7に表示する。業務オペレータは、この算出処理画面の各入力欄に、精算期間及び物件番号等を入力して精算開始ボタンを操作する。この精算開始ボタンの操作を検出すると、制御部3は、管理業務委託費用計算プログラムに基づいて
図9のフローチャートの処理を開始する。
【0037】
まず、ステップS1では、取得部21が、PMフィーの算出処理画面の各入力欄に入力された精算期間、物件番号、取引先番号及び管理項目番号等を取得する。ステップS2では、判別部22が、精算年月等に基づいて各種マスタを参照し、計算パターンが契約ベースであるか入金ベースであるかを判別し、契約ベースである場合に、対象となる物件及び貸借人の賃貸契約情報を抽出して対象賃貸契約ワーク18を生成する。
【0038】
具体的には、
図10は、
図9のフローチャートの各ステップで参照される各種マスタ及びワークを示す図である。この
図10に示すように、ステップS2では、判別部22が、賃貸契約マスタ14、契約賃料共益費マスタ15及び管理契約マスタ16を参照して対象賃貸契約ワーク18を生成する。
【0039】
さらに具体的には、判別部22は、入力された物件番号及び精算期間に基づいて、
図11(a)に示す管理契約マスタ16を参照することで、入力された精算期間が契約開始日及び契約終了日の期間に含まれる、入力された「001」の物件番号に対応する「K001」等の管理契約番号を取得する。
【0040】
また、判別部22は、入力された物件番号及び精算期間に基づいて、
図5に示す賃貸契約マスタ14を参照することで、入力された精算期間が契約開始日及び契約終了日の期間に含まれる、入力された「001」の物件番号に対応する「T001」等の賃貸契約番号及び「T002」等の取引先(貸借人)を取得する。
【0041】
また、判別部22は、賃貸契約マスタ14から取得された「T001」の賃貸契約番号に基づいて、
図6に示す契約賃料共益費マスタ15を参照することで、管理項目、特約区分、各特約区分の賃料となる金額、各特約区分の適用開始日及び適用終了日を取得する。
【0042】
そして、判別部22は、各マスタ14~16を参照することで得られた賃貸契約番号、物件番号、取得先(貸借人)、適用開始日、適用終了日、管理項目、金額、特約区分、及び、管理契約番号に基づいて、
図11(c)に示す対象賃貸契約ワーク18を生成する。
【0043】
この
図11(c)に示す対象賃貸契約ワーク18は、貸借契約番号が「T001」、物件番号が「001」、管理契約番号が「K001」の「T002」の取引先(貸借人)に対しては、2022年4月1日~2022年5月31日までの期間は、「フリーレント期間」となっており、この期間の賃料は「0円」であることを示している。また、
図11(c)に示す対象賃貸契約ワーク18は、「T002」の取引先(貸借人)に対しては、2022年6月1日~2023年3月31日までの期間は、「正規賃料期間」となっており、この期間の賃料は「30万円」であることを示している。
【0044】
なお、判別部22は、このステップS2において、管理契約マスタ16から取得された「K001」の管理契約番号に基づいて、
図11(b)及び
図8に示す管理契約精算設定マスタ17を参照することで、2022年4月1日~2022年5月31日までのフリーレント期間におけるPMフィーの計算パターン、及び、2022年6月1日~2023年3月31日までの正規賃料期間におけるPMフィーの計算パターンを取得しておく。
【0045】
図11(b)及び
図8の例は、フリーレント期間におけるPMフィーの計算パターンは、入金前における契約時の正規賃料に基づいて算出する、「契約ベース」の計算パターンであることを示している。また、
図11(b)及び
図8の例は、正規賃料期間におけるPMフィーの計算パターンは、入金された正規賃料に基づいて算出する、「入金ベース」の計算パターンであることを示している。
【0046】
次に、
図9のステップS3において、判別部22は、対象賃貸契約ワーク18の特約区分及び正規賃料等を参照し、
図10に示すようにPMフィー計算元ワーク19を生成する。具体的には、判別部22は、
図12(a)に示すように対象賃貸契約ワーク18を参照し、業務オペレータにより入力された精算期間を含む適用開始日及び適用終了日の期間に対応する特約区分の明細を取得する。すなわち、業務オペレータにより入力された精算期間がフリーレント期間に含まれる場合、判別部22は、
図12(a)に示す対象賃貸契約ワーク18の1行目の明細を取得する(
図12(b))。
【0047】
また、判別部22は、取得した明細の特約区分が「正規賃料」ではない場合、特約区分が「正規賃料」の明細を対象賃貸契約ワーク18から取得する。すなわち、この例の場合、
図12(b)に示したように、取得した明細の特約区分が「フリーレント」であるため、判別部22は、
図12(a)に示す対象賃貸契約ワーク18の2行目の明細である、特約区分が「正規賃料」の明細を取得する(
図12(c))。
【0048】
そして、判別部22は、取得した特約区分が「正規賃料」の明細に基づいて、
図12(d)に示す、管理項目、物件番号、取引先(貸借人)、正規賃料期間における正規賃料の金額、及び、管理契約番号を含むフィー計算元ワーク19を生成する。
【0049】
なお、業務オペレータにより入力された精算期間が正規賃料に対応する期間である場合、判別部22により、対象賃貸契約ワーク18の2行目の明細である、特約区分が「正規賃料」の明細が取得され(
図12(c))、
図12(d)に示したフィー計算元ワーク19が生成される。
【0050】
次に、
図9のフローチャートのステップS4では、算出部23が、
図10に示すようにフィー計算元ワーク19で示される賃料の金額に、業務オペレータにより入力された精算期間の計算パターンに対応する掛率を管理契約精算設定マスタ17から検出して乗算処理することで、業務オペレータにより入力された精算期間のPMフィーの請求データを生成する。
【0051】
具体的には、算出部23は、
図8に示す管理契約精算設定マスタ17を参照することで、業務オペレータにより入力された精算期間に対応する掛率及び精算管理項目を検出する。例えば、業務オペレータにより入力された精算期間が2022年4月1日~2022年5月31日のフリーレント期間に含まれる場合、算出部23は、管理契約精算設定マスタ17を参照することで、
図13(b)に示す、計算パターンが契約ベースの明細で示される「3%」の掛率を検出する。
【0052】
算出部23は、この「3%」の掛率を、
図13(a)に示す上述のフィー計算元ワーク19で示される契約時の正規賃料である「30万円」に乗算処理することで、
図13(c)に示すように「9千円」のPMフィーの請求データを生成する。一例として、この請求データは、「O003」等の取引先(請求先)番号、「S101010」等の管理項目番号、業務オペレータにより精算期間として入力された「2022年6月」等の該当月、及び、「9千円」等の算出されたPMフィーの金額を含んで構成される。
【0053】
なお、業務オペレータにより入力された精算期間が2022年6月1日~2023年3月31日の正規賃料期間に含まれる場合、算出部23は、管理契約精算設定マスタ17を参照することで、
図8に示す計算パターンが入金ベースの明細で示される「3%」の掛率を検出する。そして、算出部23は、この「3%」の掛率を、
図6に示す契約賃料共益費マスタ15に記憶されている「30万円」の「正規賃料」に基づいて生成されたフィー計算元ワーク19に乗算処理することで、正規賃料期間のPMフィーの精算データを生成する。
【0054】
このように生成されたPMフィーの請求データは、オーナー側の端末装置に送信され、又は、請求書として郵送された後、会計システムに仕訳計上される。
【0055】
(実施の形態の効果)
今日において、例えば古くなったビルディング等の不動産賃貸物件のオーナーからの依頼により、不動産業者が不動産賃貸物件を再生し、その後、再生した不動産賃貸物件の管理業務を受託することがある。再生することで不動産賃貸物件に対して新たな価値を付与でき、また、収益性を高めることができる。また、再生した不動産賃貸物件に対しては、入居した一定期間の賃貸料は無料とするフリーレント期間を設けることで契約を促進できる。このような、いわばビジネスモデルは、不動産賃貸物件のオーナーにとって魅力的であり、人気のビジネスモデルとなっている。
【0056】
しかし、フリーレント期間を設けた場合、フリーレント期間中は貸借人からの賃貸料の払い込みが無いため、賃貸料に基づいて行うフリーレント期間のPMフィーの算出が困難となり、フリーレント期間のPMフィーをオーナー側に請求することが困難となっていた。このため、上述のビジネスモデルは、PMフィーのみで事業を行っている不動産業者では、採用しにくいビジネスモデルとなっていた。
【0057】
しかし、実施の形態の不動産管理装置1は、フリーレント期間中におけるPMフィーを簡単に算出してオーナー側に請求できるため、フリーレント期間中のPMフィーの収益化を図ることができる。このため、PMフィーのみで事業を行っている不動産業者でも、上述のビジネスモデルを容易に採用可能とすることができる。
【0058】
また、フリーレント期間中のPMフィーを収益化できるため、正規賃料の発生期間前に、早くに収益を得ることができ、例えば新興企業のような資本的に余裕が少ない企業であっても、不動産管理業に参入し易くすることができる。
【0059】
また、PMフィーは物件毎に計算を行う必要があり、煩雑な業務である。そして、このようなPMフィーの算出業務は、管理する不動産賃貸物件が増えることで、より煩雑となる。しかし、実施の形態の不動産管理装置1の場合、マスタ設定に基づいて簡単にPMフィーを算出できるため、管理する不動産賃貸物件が増えた場合でも、業務が煩雑化する不都合を防止できる。
【0060】
また、フリーレント期間中のPMフィーをシステム外で算出する場合、作業時間が長くなり、また、作業負荷が大きくなり、コスト高となるうえ、ミスも多くなり、算出し直し等の不都合を生ずるおそれがある。しかし、実施の形態の不動産管理装置1の場合、上述の計算アルゴリズムに基づいて、システム内でPMフィーを算出できるため、安価かつ正確にPMフィーを算出できる。
【0061】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び目標9に貢献することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、目標13及び目標15に貢献することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0064】
[他の実施の形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0065】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0066】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0067】
また、不動産管理装置1に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも図示の如く物理的に構成されていることを要しない。
【0068】
例えば、不動産管理装置1が備える処理機能、特に制御部3及び制御部3にて行われる各処理機能については、その全部又は任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。なお、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて不動産管理装置1に機械的に読み取られる。すなわち、ROM又はHDD等の記憶部等には、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部3を構成する。
【0069】
また、この不動産管理装置1の管理業務委託費用計算プログラムは、不動産管理装置1に対して任意のネットワークを介して接続された他のサーバ装置に記憶されていてもよく、必要に応じてその全部又は一部をダウンロードすることも可能である。
【0070】
また、本実施形態で説明した処理を実行するための管理業務委託費用計算プログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及び、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0071】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコード又はバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した不動産管理装置1において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0072】
記憶部2は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、及び、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0073】
また、不動産管理装置1は、既知のパーソナルコンピュータ装置又はワークステーション等の情報処理装置で構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された情報処理装置で構成してもよい。また、情報処理装置は、本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラム又はデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0074】
さらに、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部又は一部を、各種の付加等に応じて又は機能付加に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、不動産管理業に適用して好適であり、特にフリーレント期間における管理業務委託費用の算出業務に適用して好適である。
【符号の説明】
【0076】
1 不動産管理装置
2 記憶部
3 制御部
4 通信インターフェース部
5 入出力インターフェース部
6 入力装置
7 出力装置
11 物件マスタ
12 取引先マスタ
13 管理項目マスタ
14 賃貸契約マスタ
15 契約賃料共益費マスタ
16 管理契約マスタ
17 管理契約精算設定マスタ
18 対象賃貸契約ワーク
19 フィー計算元ワーク
21 取得部
22 判別部
23 算出部
24 記憶制御部
25 表示制御部