(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158938
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】パウチ用の積層フィルム、パウチ、および、積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20231024BHJP
B32B 3/18 20060101ALI20231024BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20231024BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20231024BHJP
【FI】
B65D65/40 A
B32B3/18
B32B7/12
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069009
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】本郷 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】松永 史絵
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真由美
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AA23
3E086AC11
3E086AC12
3E086AC13
3E086AD01
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB51
3E086DA08
4F100AR00A
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CB00C
4F100CB00E
4F100DC13B
4F100GB16
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4F100JL11C
4F100JL11E
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4F100JL14
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】バリア性能の低下を抑制しつつ、カット誘導線による易開封性を良好に得ることが可能なパウチ用の積層フィルム、パウチ、および、積層フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】中間層フィルム40を内層フィルム30および外層フィルム50の間に配置して成り、カット誘導線80が形成されたパウチ用の積層フィルム20であって、カット誘導線80は、中間層フィルム40の外側面から中間層フィルム40の内側面側に向けて形成されたスリット部81から構成され、中間層フィルム40に形成されたスリット部81のうち少なくとも一部分には、一対のスリット側端面41の両方に接触した状態で介在した接着剤から成る介在接着部90が設けられている積層フィルム20。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層フィルムを内層フィルムおよび外層フィルムの間に配置して成り、カット誘導線が形成されたパウチ用の積層フィルムであって、
前記カット誘導線は、前記中間層フィルムの外側面から前記中間層フィルムの内側面側に向けて形成されたスリット部から構成され、
前記中間層フィルムは、前記スリット部を挟んで対向する一対のスリット側端面を有し、
前記中間層フィルムに形成された前記スリット部のうち少なくとも一部分には、前記一対のスリット側端面の両方に接触した状態で介在した接着剤から成る介在接着部が設けられていることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記スリット部は、前記中間層フィルムの外側面から前記中間層フィルムの内側面側に向けて切り込まれた切り込み状のハーフカット部から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記内層フィルムと前記中間層フィルムとは、内側接着層によって接着され、
前記ハーフカット部は、前記中間層フィルムの外側面から前記内側接着層に達するように形成され、
前記介在接着部は、前記内側接着層を構成する接着剤と同じ接着剤から成り、前記内側接着層に連続して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記中間層フィルムと前記外層フィルムとは、外側接着層によって接着され、
前記外側接着層は、前記内側接着層を構成する接着剤と同じ接着剤から成り、
前記介在接着部は、前記内側接着層および前記外側接着層を構成する接着剤と同じ接着剤から成り、前記内側接着層および前記外側接着層に連続して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記接着剤は、2000~30000mPa・S/25℃の無溶剤型接着剤から成ることを特徴とする請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記介在接着部を構成する前記接着剤は、前記スリット部内の全体に亘って充満して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記中間層フィルムの外側面側における前記一対のスリット側端面間の間隔は、前記カット誘導線の長手方向の全域に亘って、20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記内層フィルムと前記中間層フィルムとは、内側接着層によって接着され、
前記内側接着層は、初期剪断強度0.1N/15mm以上の接着剤から成ることを特徴とする請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記内層フィルムと前記中間層フィルムとの間のラミネート強度は、1.0N/15mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記内層フィルムの引張り弾性率は、0.9GPa以下に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項11】
請求項1に記載の複数の積層フィルムを、前記内層フィルム同士を熱溶着することで袋状に形成して成ることを特徴とするパウチ。
【請求項12】
中間層フィルムを内層フィルムおよび外層フィルムの間に配置して成り、カット誘導線が形成されたパウチ用の積層フィルムの製造方法であって、
相互間に内側接着層を介在させた状態で積層された、前記内層フィルムおよび前記中間層フィルムを用意し、
前記中間層フィルムの外側面から前記中間層フィルムの内側面側に向けて前記内側接着層に達するようにカッター刃をフィルム厚み方向に入れることで、前記カット誘導線を構成する切り込み状のハーフカット部を形成し、
前記内側接着層を構成する接着剤を前記ハーフカット部に導入して、前記中間層フィルムに形成された前記ハーフカット部に前記接着剤が介在した状態とし、
その後、前記中間層フィルムの外側面側に前記外層フィルムを積層して固着することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記内側接着層を構成する前記接着剤を毛細管現象によって前記ハーフカット部に導入して、前記中間層フィルムに形成された前記ハーフカット部に前記接着剤が介在した状態とすることを特徴とする請求項12に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記内側接着層を構成する前記接着剤を前記ハーフカット部に導入するタイミングでの、前記接着剤の粘度を2000~30000mPa・Sとすることを特徴とする請求項12に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ねた積層フィルムを熱溶着することにより袋状に成形されるパウチ用の積層フィルム、パウチ、および、積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重ねた積層フィルムを熱溶着することにより袋状に成形されるパウチ用の積層フィルムとして、内層フィルムと中間層フィルムと外層フィルムとをこの順に積層して成るものが知られている。
【0003】
また、このようなパウチ用の積層フィルムにおいて、使用者がパウチを開封する時にカット(開封)を誘導する弱化部としてのカット誘導線を積層フィルムに形成することも知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の積層フィルムのように、外層フィルムにカット誘導線を形成すると、パウチの耐衝撃性等が損なわれることから、このような耐衝撃性等の低下を避けるために、本出願人は、外層フィルムではなく、中間層フィルムにカット誘導線を構成するスリット部を形成することを検討している。
【0006】
しかしながら、中間層フィルムに、空気中の酸素や水蒸気などのガスに対するバリア性等の各種バリア性を持たせる場合があり、この場合、中間層フィルムにカット誘導線を構成するスリット部を形成すると、中間層フィルムのバリア性能が低下してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、バリア性能の低下を抑制しつつ、カット誘導線による易開封性を良好に得ることが可能なパウチ用の積層フィルム、パウチ、および、積層フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層フィルムは、中間層フィルムを内層フィルムおよび外層フィルムの間に配置して成り、カット誘導線が形成されたパウチ用の積層フィルムであって、前記カット誘導線は、前記中間層フィルムの外側面から前記中間層フィルムの内側面側に向けて形成されたスリット部から構成され、前記中間層フィルムは、前記スリット部を挟んで対向する一対のスリット側端面を有し、前記中間層フィルムに形成された前記スリット部のうち少なくとも一部分には、前記一対のスリット側端面の両方に接触した状態で介在した接着剤から成る介在接着部が設けられていることにより、上記課題を解決するものである。
本発明のパウチは、前記積層フィルムを、前記内層フィルム同士を熱溶着することで袋状に形成して成ることにより、上記課題を解決するものである。
本発明の積層フィルムの製造方法は、中間層フィルムを内層フィルムおよび外層フィルムの間に配置して成り、カット誘導線が形成されたパウチ用の積層フィルムの製造方法であって、相互間に内側接着層を介在させた状態で積層された、前記内層フィルムおよび前記中間層フィルムを用意し、前記中間層フィルムの外側面から前記中間層フィルムの内側面側に向けて前記内側接着層に達するようにカッター刃をフィルム厚み方向に入れることで、前記カット誘導線を構成する切り込み状のハーフカット部を形成し、前記内側接着層を構成する接着剤を前記ハーフカット部に導入して、前記中間層フィルムに形成された前記ハーフカット部に前記接着剤が介在した状態とし、その後、前記中間層フィルムの外側面側に前記外層フィルムを積層して固着することにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1、11に係る発明によれば、一対のスリット側端面の両方に接触した状態で介在した接着剤から成る介在接着部が設けられていることにより、積層フィルムの屈曲等に起因して、一対のスリット側端面間の間隔、すなわち、スリット部の横幅が広がってしまうことを抑制することが可能であるため、中間層フィルムによるバリア性能の低下を抑制しつつ、カット誘導線による易開封性を良好に得ることができる。
また、介在接着部によって一対のスリット側端面間の間隔を安定させることが可能であるため、スリット側端面の形状、すなわち、カット誘導線に歪みが生じることを抑制することが可能であるため、カット誘導線による易開封性を向上させることができる。
【0010】
本請求項2に係る発明によれば、スリット部が、中間層フィルムの外側面から中間層フィルムの内側面側に向けて切り込まれた切り込み状のハーフカット部から構成されていることにより、スリット部をレーザー加工で形成した場合のように、レーザー熱によってスリット部周辺において中間層フィルムが溶融して盛り上がった溶融凸部が形成されることを回避することが可能であるため、一対のスリット側端面間の間隔等の中間層フィルムの各種状態を制御し易くなる。
本請求項3に係る発明によれば、介在接着部が、内側接着層を構成する接着剤と同じ接着剤から成り、内側接着層に連続して形成されていることにより、積層フィルムの製造時に、内側接着層を構成する接着剤をハーフカット部に導入することで、介在接着部を容易に形成することが可能であるため、製造負担の増大を抑えつつ、介在接着部を形成することができる。
また、本請求項3に係る発明によれば、スリット部が、中間層フィルムの外側面から内側接着層に達するように切り込まれた切り込み状のハーフカット部から構成されていることにより、レーザー加工等によってスリット部を形成した場合と比較して、切り込み方向の奥側である内側接着層側におけるスリット側端面間の間隔が狭くなり、内側接着層を構成する接着剤をスリット側端面間に導入させる毛細管現象を生じさせ易くなるため、製造負担を増大させることなく、中間層フィルムに形成されたスリット部に接着剤が介在した状態とすることができる。
本請求項4に係る発明によれば、介在接着部が、内側接着層および外側接着層を構成する接着剤と同じ接着剤から成り、内側接着層および外側接着層に連続して形成されていることにより、積層フィルムの製造時に、内側接着層を構成する接着剤に加えて、外側接着層を構成する接着剤についてもハーフカット部に導入することも可能であるため、製造負担の増大を抑えつつ、介在接着部を容易かつ確実に形成することができる。
本請求項5に係る発明によれば、介在接着部を構成する接着剤が、硬化前の状態での流動性が高い、2000~30000mPa・S/25℃の無溶剤型接着剤から成ることにより、接着剤が液だれを生じて周辺設備等に付着することを回避しつつ、積層フィルムの製造時に、内側接着層を構成する接着剤をハーフカット部に良好に誘導することができる。
本請求項6に係る発明によれば、介在接着部を構成する接着剤が、スリット部内の全体に亘って充満して形成されていることにより、上述した、介在接着部の形成によるバリア性能の低下の抑制およびカット誘導線の形状安定の効果を良好に得ることができる。
本請求項7に係る発明によれば、中間層フィルムの外側面側における一対のスリット側端面間の間隔が、カット誘導線の長手方向の全域に亘って、20μm以下であることにより、中間層フィルムによるバリア性能の低下を良好に抑制することができる。
また、本請求項8~10に係る発明によれば、内側接着層を介して内層フィルムに積層された中間層フィルムに対して、中間層フィルムの外側面からカッター刃を入れることでハーフカット部を形成した後に、カッター刃によって押されて弾性変形した内層フィルムの形状復元の動きに中間層フィルムを良好に追従させて、一対のスリット側端面間の間隔を狭く維持することができる。
本請求項12に係る発明によれば、相互間に内側接着層を介在させた状態で積層された、内層フィルムおよび中間層フィルムを用意し、中間層フィルムの外側面から中間層フィルムの内側面側に向けて内側接着層に達するようにカッター刃をフィルム厚み方向に入れることで、カット誘導線を構成する切り込み状のハーフカット部を形成し、内側接着層を構成する接着剤をハーフカット部に導入して、中間層フィルムに形成されたハーフカット部に接着剤が介在した状態とし、その後、中間層フィルムの外側面側に外層フィルムを積層して固着する。このように、内側接着層を構成する接着剤を導入して、中間層フィルムに形成されたハーフカット部に接着剤が介在した状態とすることで、製造負担の増加を抑えつつ、中間層フィルムに形成されたハーフカット部に接着剤を介在させた状態とすることができる。
また、本請求項12に係る発明によれば、内層フィルムおよび中間層フィルムを積層した状態で、ハーフカット部を形成する加工を施すことで、以下の成形性の問題を回避することができる。すなわち、単層の状態で中間層フィルムにハーフカット部となる切断箇所を形成した後に、内層フィルム等と積層しようとした場合、貼り合わせの際に中間層の切断周辺部分が上下に重なり合ってしまうと、巻き取り時に背骨状の起伏部ができて外観不良がみられ、このため原反毎に弛みの調整をしなくてはならない等の、成形性の問題が生じるが、本請求項12に係る発明では、内層フィルムおよび中間層フィルムを積層した状態で、ハーフカット部を形成する加工を施すことで、このような成形性の問題を回避することができる。
また、本請求項13に係る発明によれば、内側接着層を構成する接着剤を毛細管現象によってハーフカット部に導入することにより、製造負担を増大させることなく、中間層フィルムに形成されたハーフカット部に接着剤が介在した状態とすることができる。
また、本請求項13に係る発明によれば、中間層フィルムの外側面から中間層フィルムの内側面側に向けてカッター刃をフィルム厚み方向に入れることで、カット誘導線を構成する切り込み状のハーフカット部を形成することにより、レーザー加工等によってハーフカット部を形成した場合と比較して、カッター刃の切り込み方向の奥側である内側接着層側におけるスリット側端面間の間隔が狭くなるため、上述した毛細管現象を良好に発現させることができる。
本請求項14に係る発明によれば、内側接着層を構成する接着剤をハーフカット部に導入するタイミングでの、接着剤の粘度を2000~30000mPa・Sとすることにより、接着剤が液だれを生じて周辺設備等に付着することを回避しつつ、積層フィルムの製造時に、内側接着層を構成する接着剤をハーフカット部に良好に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパウチを示す平面図。
【
図2】
図1のII―II位置において矢印方向に見て示すパウチの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態であるパウチ10について、図面に基づいて説明する。
【0013】
パウチ10は、
図1や
図2に示すように、重ねた積層フィルム20の外縁において各積層フィルム20の内層フィルム30同士を熱溶着して成る外縁シール部(ヒートシール部)を形成することにより袋状に形成され、その内側の収容部に食品等の内容物を収容するものである。
【0014】
各積層フィルム20は、
図2に示すように、パウチ10の状態で最も内側に配置される内層フィルム30と、内層フィルム30の外側面側に形成される中間層フィルム40と、中間層フィルム40の外側面側に形成される外層フィルム50と、内層フィルム30および中間層フィルム40を接着する内側接着層60と、中間層フィルム40および外層フィルム50を接着する外側接着層70と、使用者がパウチ10を開封する時にカット(開封)を誘導するためのスリット部(ハーフカット部)81から構成されたカット誘導線80と、中間層フィルム40のスリット側端面41間に介在した接着剤から成る介在接着部90とを備えている。
【0015】
以下に、各構成要素について、図面に基づいて具体的に説明する。
<内層フィルム30>
【0016】
まず、内層フィルム30については、以下の通りである。
【0017】
内層フィルム30は、所謂シーラントフィルムとして形成され、
図2に示すように、パウチ10に製袋された状態で、他方の積層フィルム20側に面するように最も内側に配置され、他方の積層フィルム20の内層フィルム30に熱溶着されるものである。
【0018】
内層フィルム30の材料としては、公知の種々の材料を用いることができ、例えば、ヒートシール性を有するポリオレフィンを使用することができる。
このようなポリオレフィンとしては、例えば低密度、中密度或いは高密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン1共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
これら材料を、単独でも或いは2種以上のブレンド物としても使用することができる。
特に耐熱性の観点からプロピレン系重合体が適当であり、ホモポリプロピレンや、プロピレンを主体とするランダム共重合体やブロック共重合体を使用することができる。
また、内層フィルム30を、1つの層から構成してもよく、異なる材料から成る2つ以上の層を積層して構成してもよい。
【0019】
ここで、
図4に示すスリット部(ハーフカット部)81の横幅W(すなわち、中間層フィルム40の外側面側における一対のスリット側端面41間の間隔W)を狭く維持する観点から、内層フィルム30を、その引張り弾性率が0.9GPa以下になるように形成するのが好ましい。すなわち、内層フィルム30の引張り弾性率を0.9GPa以下に設定した場合、
図3に示すように、中間層フィルム40の外側面からカッター刃Cを入れることでスリット部(ハーフカット部)81を形成した後に、カッター刃Cによって押されて弾性変形した内層フィルム30の形状を元の形状(平板形状)に良好に復元させることが可能であるため、内層フィルム30の形状復元の動きに中間層フィルム40を追従させて、一対のスリット側端面41間の間隔Wを狭くすることができる。
<中間層フィルム40>
【0020】
次に、中間層フィルム40については、以下の通りである。
【0021】
中間層フィルム40は、内層フィルム30および外層フィルム50の間に配置され、ガスバリア性や水分バリア性や香気成分バリア性(保香性)等のバリア性を有したフィルムとして形成され、本実施形態では、基材層とバリア層とを有している。
【0022】
中間層フィルム40の基材層の材料としては、公知の種々の材料を用いることができ、例えば、ポリアミド、ポリエステル等を挙げることができる。
ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6等を挙げることができるが、取り扱いやすさから、ナイロン6あるいはナイロン66が好ましい。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを構成成分とする単量体からの重合により得られる縮重合体が好ましい。
これらの中で、吸湿性の低いポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンテレフタレート(PET)、これらのブレンド物を使用することが特に好ましい。
なお、中間層フィルム40を、1つの層(基材層)から構成してもよく、2つ以上の層(基材層)を積層して構成してもよい。
【0023】
また、中間層フィルム40のバリア層は、積層フィルム20にガスバリア性や水分バリア性等の各種バリア性能を付与するための層であり、本実施形態では、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の無機物または無機酸化物を基材層の外側面側に蒸着した蒸着層として形成されている。なお、バリア層の具体的態様は、上記のような蒸着層に限定されず、各種バリア性を付与できるものであれば、如何なるものでもよく、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体等の樹脂フィルムをバリア層として基材層に接着してもよい。
また、本実施形態では、中間層フィルム40のバリア層を、基材層の外側面側に形成されているが、バリア層の形成位置は、これに限定されず、例えば、基材層の内側面側にバリア層を形成してもよい。
また、中間層フィルム40のバリア層として、1つのバリア層のみを形成してもよく、2つ以上のバリア層を任意の場所に形成してもよい。
【0024】
中間層フィルム40には、
図2に示すように、上述したバリア層を切断するように、中間層フィルム40をフィルム厚み方向に貫通して(中間層フィルム40の外側面側から内側面側に亘って)、スリット部(ハーフカット部)81が形成されている。
これに伴い、中間層フィルム40は、
図2に示すように、スリット部(ハーフカット部)81を挟んで対向するスリット部(ハーフカット部)81側に面した一対のスリット側端面41を有している。
一対のスリット側端面41間には、詳しくは後述するように、介在接着部90を構成する接着剤が介在して配置されている。
【0025】
なお、上記では、中間層フィルム40が、基材層およびバリア層を有した複層構造で形成されているものとして説明したが、中間層フィルム40の具体的態様は、バリア性を有するものであれば如何なるものでもよく、例えば香気成分バリア性(保香性)を有したポリエステル等の、バリア性を有した材料から成る単層構造のものとして、中間層フィルム40を形成してもよい。
<外層フィルム50>
【0026】
次に、外層フィルム50については、以下の通りである。
【0027】
まず、外層フィルム50の材料としては、公知の種々の材料を用いることができ、例えば、ポリアミド、ポリエステル等を挙げることができる。
ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6等を挙げることができるが、取り扱いやすさから、ナイロン6あるいはナイロン66が好ましい。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを構成成分とする単量体からの重合により得られる縮重合体が好ましい。
これらの中で、PBT、PETが特に好ましい。
また、外層フィルムにナイロンやPBTを用いる場合は、チューブラ法により成形された二軸延伸フィルムが好ましい。
二軸延伸フィルムが備える強度や耐熱性、透明性に加えて、等方性が高く、フィルムの取り位置による品質の違いが生じにくいためである。
また、外層フィルム50を、1つの層から構成してもよく、異なる材料から成る2つ以上の層を積層して構成してもよい。
また、外層フィルム50に、上述した中間層フィルム40のバリア層と同様のバリア層を形成してもよい。
<内側接着層60>
【0028】
次に、内側接着層60については、以下の通りである。
【0029】
内側接着層60は、
図2に示すように、内層フィルム30の外側面および中間層フィルム40の内側面の間に形成され、内層フィルム30の外側面および中間層フィルム40の内側面間を接着するものである。
内側接着層60を構成する接着剤は、詳しくは後述する無溶剤型接着剤から成っている。
【0030】
図4に示すスリット部(ハーフカット部)81の横幅Wを狭く維持する観点から、内側接着層60を構成する接着剤は、初期剪断強度0.1N/15mm以上の接着剤から構成するのが好ましい。すなわち、内側接着層60を初期剪断強度0.1N/15mm以上の接着剤から構成した場合、
図3に示すように、中間層フィルム40の外側面からカッター刃Cを入れることでスリット部(ハーフカット部)81を形成した後に、カッター刃Cによって押されて弾性変形した内層フィルム30の形状復元の動きに中間層フィルム40を良好に追従させることが可能であるため、一対のスリット側端面41間の間隔Wを狭くすることができる。
なお、上記の初期剪断強度は、JIS K 6850の試験手順にて、接着面積15×15mm、引張速度5mm/minの条件で、接着面に平行な引張りせん断荷重により測定する方法で測定された、接着直後(塗布直後であってエージング処理前)のせん断強度である。
また、同様の観点から、内層フィルム30と中間層フィルム40との間のラミネート強度(内側接着層60を構成する接着剤の硬化反応を促進させるエージング処理を経た後のラミネート強度)を、1.0N/15mm以上に設定するのが好ましい。
<外側接着層70>
【0031】
次に、外側接着層70については、以下の通りである。
【0032】
外側接着層70は、
図2に示すように、中間層フィルム40の外側面および外層フィルム50の内側面の間に形成され、中間層フィルム40の外側面および外層フィルム50の内側面間を接着するものである。
外側接着層70を構成する接着剤は、詳しくは後述する無溶剤型接着剤から成っている。
【0033】
ここで、外側接着層70を構成する接着剤として、内側接着層60を構成する接着剤とは異なる接着剤(例えば溶剤型接着剤等の無溶剤型接着剤以外の接着剤を含む各種接着剤)を用いてもよいが、外側接着層70を構成する接着剤と内側接着層60を構成する接着剤とを同じにした場合、接着剤の硬化を促進させるエージング処理の処理条件等の各種設定が容易になることに加えて、中間層フィルム40の外側面側からもスリット部(ハーフカット部)81内に毛細管現象等によって同じ接着剤を導入する(入れる)ことも可能であるため、スリット部(ハーフカット部)81内を同じ接着剤で確実に充満させることができる。
<無溶剤型接着剤>
【0034】
次に、接着層60、70を構成する無溶剤型接着剤については、以下の通りである。
【0035】
まず、接着層60、70を構成する無溶剤型接着剤は、以下に記載する主剤および硬化剤からなる二液型の反応硬化型接着剤である。
【0036】
無溶剤型接着剤を構成する主剤としては、フィルム30、40、50との密着性が良好で、且つラミネート強度および耐衝撃性に優れたポリエステル系樹脂を用いることが好ましく、特にポリエステルポリオール樹脂が好ましい。
【0037】
ポリエステルポリオール樹脂は、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3-ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとのエステル化反応によって製造されるものであればよい。
【0038】
ポリエステルポリオール樹脂の具体例としては、(1)ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)等のアジペート系ポリエステルグリコール、(2)ポリ‐ε‐カプロラクトン等のポリカプロラクトン系ポリエステルグリコール、(3)ポリ(ヘキサメチレンセバケート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等のその他のポリエステルポリオール樹脂などが挙げられる。
【0039】
また、主剤としては、ポリエステル系樹脂の他に例えばポリウレタン系化合物が含有されていてもよい。このような主剤を用いることにより、(接着層60、70に接触してインキ層を設ける場合、)インキ層には通常ウレタン成分が含まれているため、インキ層に対する密着性を確保することができる。
【0040】
主剤を構成する樹脂の数平均分子量は、400~1500であることが好ましく、より好ましくは500~1000である。主剤を構成する樹脂の数平均分子量が400未満である場合には、無溶剤型接着剤の粘度が低下するため、積層フィルム20を製造する際に連続ラミネート適性が悪くなることがある。また、末端反応基数が増加するため、硬化剤の量を多くすることが必要であり、その結果、得られる接着層60、70においては、架橋量が多くて硬度が上昇し、接着層60、70の耐衝撃性が低下することがある、という問題がある。一方、主剤を構成する樹脂の数平均分子量が1500を超える場合には、得られる接着層60、70の耐衝撃性は向上するが、無溶剤型接着剤の粘度が上昇するため、無溶剤型接着剤の塗工時に濡れ不良が生じ、得られる積層フィルム20の外観不良やラミネート強度の低下が起こることがある。
【0041】
無溶剤型接着剤を構成する硬化剤としては、イソシアネート化合物、特に、脂肪族イソシアネートおよび芳香脂肪族ジイソシアネートの混合物を用いることが好ましい。
硬化剤を構成する脂肪族イソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましい。
硬化剤を構成する芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、1,3-キシリレンジイソシアネートまたは1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネートまたは1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどが挙げられる。
【0042】
硬化剤を構成する樹脂の数平均分子量は、400~1500であることが好ましく、より好ましくは500~1000である。硬化剤を構成する樹脂の数平均分子量が400未満である場合には、無溶剤型接着剤の粘度が低下するため、積層フィルムを製造する際に連続ラミネート適性が悪くなることがある。また、末端反応基数が増加するため、主剤の量を多くすることが必要であり、その結果、得られる接着層60、70においては、架橋量が多くて硬度が上昇し、接着層60、70の耐衝撃性が低下することがある、という問題がある。一方、硬化剤を構成する樹脂の数平均分子量が1500を超える場合には、得られる接着層60、70の耐衝撃性は向上するが、無溶剤型接着剤の粘度が上昇するため、無溶剤型接着剤の塗工時に濡れ不良が生じ、得られる積層フィルム20の外観不良やラミネート強度の低下が起こることがある。
【0043】
無溶剤型接着剤においては、主剤100質量部に対して、硬化剤30~200質量部、特に30~70質量部の範囲で含有されていることが好ましい。硬化剤の割合が過少である場合には、得られる接着層60、70は架橋不足となるため、得られる積層フィルム20のラミネート強度が低下するおそれがある。一方、硬化剤の割合が過多である場合には、主剤と硬化剤とが十分に混合されず、得られる接着層60、70には架橋不足部分や架橋過多部分が混在するため、得られる積層フィルム20のラミネート強度や耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0044】
本発明において、内側接着層60および外側接着層70を構成する無溶剤型接着剤として、(エージング処理前の状態で)2000~30000mPa・S/25℃の接着剤を用いるのが好ましい。無溶剤型接着剤が2000mPa・S/25℃未満である場合には、無溶剤型接着剤の液だれが生じることや、無溶剤型接着剤の塗工時にロール間の転写不良が生じて「転写ムラ」が発生することがある。また、無溶剤型接着剤が30000mPa・S/25℃よりも大きい場合、無溶剤型接着剤の流動性を確保できず、特に、後述する毛細管現象を良好に生じさせることができなくなる。
【0045】
無溶剤型接着剤には、上記の主剤および硬化剤以外にも、ポリウレタン系化合物が含有されていてもよい。
また、無溶剤型接着剤には、種々の添加剤、例えば充填剤、軟化剤、酸化防止剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂、繊維類、顔料等の着色剤、可使時間延長剤等が含有されていてもよい。
【0046】
更に、無溶剤型接着剤には、接着促進剤が含有されていてもよい。接着促進剤としてはシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0047】
シランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
チタネート系カップリング剤の具体例としては、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート、チタンラクテート、テトラステアロキシチタン等が挙げられる。
【0049】
アルミニウム系カップリング剤の具体例としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0050】
エポキシ樹脂の具体例としては、一般的に市販されているエピービス型、ノボラック型、βーメチルエピクロ型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、ポリグリコールエーテル型、グリコールエーテル型、エポキシ化脂肪酸エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、レゾルシン型等の各種エポキシ樹脂が挙げられる。
<カット誘導線80>
【0051】
次に、カット誘導線80については、以下の通りである。
【0052】
パウチ10には、
図1や
図2に示すように、使用者がパウチ10を開封する時にカット(開封)を誘導するための、周辺部位よりも強度が弱い弱化部としてのカット誘導線80が形成されている。
図1に示す例では、カット誘導線80が、パウチ10の両側部に形成されたノッチ10a間を結ぶように、積層フィルム20を平面視した場合に一直線状に連続して延びる線状のものとして形成されている。
ノッチ10aは、
図1に示すように、パウチ10の開封を容易にするために、パウチ10の製袋用の外縁シール部(ヒートシール部)の外縁に、切り欠き状または切り込み状に形成されたものである。
【0053】
カット誘導線80は、
図2に示すように、表裏の積層フィルム20の少なくとも一方(本実施形態では両方)において、中間層フィルム40の外側面から中間層フィルム40の内側面側に向けて形成されたスリット部81から構成され、本実施形態では、中間層フィルム40の外側面から中間層フィルム40の内側面側に向けて切り込まれた(材料除去を伴わない、または、材料除去をほぼ伴わない)切り込み状のハーフカット部81から構成されている。
更に具体的には、ハーフカット部81は、
図3に示すように、中間層フィルム40の外側面から中間層フィルム40の内側面側に向けてカッター(
図4に示す例では、回転軸C1を中心として回転する回転カッター)のカッター刃Cをフィルム厚み方向に入れることで、中間層フィルム40の外側面から中間層フィルム40の内側面側に向けて形成されたものであり、中間層フィルム40の外側面側における横幅Wが中間層フィルム40の内側面側における横幅よりも広くなる、断面V字状(またはほぼV字状)の切り込みとして形成されている。
スリット部(ハーフカット部)81は、
図2に示すように、外層フィルム50(および外側接着層70)には形成されておらず、また、スリット部(ハーフカット部)81の先端(中間層フィルム40の外側面から遠ざかる側の先端部、
図3や
図4における下端)は、内側接着層60に達している。
なお、
図3や
図4に示す例では、スリット部(ハーフカット部)81の先端が内層フィルム30に僅かに届くように形成されているが、ハーフカット部81の先端が内層フィルム30に届かないように形成してもよい。また、スリット部(ハーフカット部)81の先端が内層フィルム30に届くように形成する場合であっても、スリット部(ハーフカット部)81が内層フィルム30の内側面側までは届くことはないように形成される。
【0054】
ここで、
図4(b)に示すスリット部(ハーフカット部)81の横幅Wは、中間層フィルム40によるバリア性能の低下を抑制する観点から、(外層フィルム50が積層された)積層フィルム20を平坦な状態にした状態(具体的には、積層フィルム20を平坦な面に置いた状態)で、カット誘導線80の長手方向の全域に亘って、20μm以下に設定するのが好ましく、更には10μm以下に設定するのが好ましい。
なお、スリット部(ハーフカット部)81の横幅Wを20μm以下に設定するのは、パウチ10の意匠性の観点からも望ましく、すなわち、横幅Wが20μm以下である場合、スリット部(ハーフカット部)81の加工の有無を目視では判別することが困難であるため、加工によってパウチ10の外観が損なわれることを回避できる。
また、中間層フィルム40の外側面側におけるスリット部81の横幅Wに限らず、スリット部81全体の横幅を20μm以下(10μm以下)に設定するのが好ましく、すなわち、中間層フィルム40の内側面側の横幅や中間層フィルム40の外側面と内側面との間の中間箇所における横幅についても、20μm以下(10μm以下)に設定するのが好ましい。
<介在接着部90>
【0055】
次に、介在接着部90については、以下の通りである。
【0056】
介在接着部90は、
図2に示すように、中間層フィルム40に形成されたスリット部(ハーフカット部)81のうち少なくとも一部分(本実施形態では全体)に介在した接着剤から成る部位である。
本実施形態では、介在接着部90を構成する接着剤は、
図2に示すように、スリット部(ハーフカット部)81内の全体に亘って充満して形成されている。
【0057】
介在接着部90を構成する接着剤は、スリット部(ハーフカット部)81を挟んで対向する一対のスリット側端面41間を繋ぐように、一対のスリット側端面41の両方に接触した状態でスリット部(ハーフカット部)81に介在しており、これにより、積層フィルム20の屈曲等に起因して、一対のスリット側端面41間の間隔Wが広がってしまうことを抑制できる。
【0058】
本実施形態では、介在接着部90は、内側接着層60を構成する接着剤と同じ接着剤から成り、内側接着層60に連続して形成されている。
更に具体的には、外側接着層70は、内側接着層60を構成する接着剤と同じ接着剤から成り、介在接着部90は、内側接着層60および外側接着層70を構成する接着剤と同じ接着剤から成り、内側接着層60および外側接着層70に連続して形成されるのが好ましい。
【0059】
なお、パウチ10の開封時には、積層フィルム20に加えた力によって、一対のスリット側端面41の少なくとも一方と介在接着部90との間を剥離させることが可能であるため、介在接着部90によってカット誘導線80を利用した積層フィルム20のカットが阻害されることはない。
<積層フィルム20の製造方法>
【0060】
次に、積層フィルム20の製造方法については、以下の通りである。
【0061】
まず、
図3(a)に示すように、相互間に内側接着層60を介在させた状態で積層された、内層フィルム30および中間層フィルム40を用意する。
【0062】
ここで、本実施形態では、内層フィルム30および中間層フィルム40は、上述した無溶剤型接着剤を用いた無溶剤型ラミネート(ノンソルベントラミネート)手法を用いて貼り合わされ、具体的には、内層フィルム30の外側面または中間層フィルム40の内側面のいずれか(本実施形態では、中間層フィルム40の内側面)に内側接着層60を構成する無溶剤型接着剤(上述した主剤に硬化剤を混ぜた状態の無溶剤型接着剤)を塗布してコーティングした後に、内層フィルム30と中間層フィルム40とを積層させて貼り合わせる。
【0063】
次に、
図3(b)に示すように、中間層フィルム40の外側面から中間層フィルム40の内側面側に向けて内側接着層60に達するようにカッター刃Cをフィルム厚み方向に入れることで、スリット部(ハーフカット部)81を形成する。なお、この際、内層フィルム30および中間層フィルム40は、平坦な支持面(図示しない)によって内層フィルム30の内側面側から支持されている。
【0064】
ここで、スリット部(ハーフカット部)81を形成する時には、内側接着層60を構成する接着剤の硬化反応は進んでおらず(硬化反応を進めるためのエージング処理は施されておらず)、流動性を有した状態となっており、
図3や
図4に示すように、内側接着層60を構成する接着剤が毛細管現象によってスリット部81内に導入され(入り込み)、スリット部81内に接着剤が介在した状態になる。
【0065】
また、上述した毛細管現象によって内側接着層60を構成する接着剤をスリット部(ハーフカット部)81内に導入する(入り込ませる)ためには、内側接着層60を構成する接着剤をスリット部81内に導入させるタイミングでの、内側接着層60を構成する接着剤の粘度が30000mPa・S以下となるようにすることで前記接着剤の流動性を確保するのが好ましく、更に具体的には、内側接着層60を構成する接着剤(無溶剤型接着剤)として、(エージング処理前の状態で)30000mPa・S/25℃以下となる接着剤を用いるのが好ましい。
ここで、本実施形態においては、内側接着層60を構成する接着剤をスリット部81内に導入させるタイミングでの、内側接着層60を構成する接着剤の温度は25℃前後であり、更に具体的には、内層フィルム30の外側面または中間層フィルム40の内側面のいずれかに内側接着層60を構成する無溶剤型接着剤を塗布する時から、少なくとも、後述する外層フィルム50を中間層フィルム40の外側面側に積層する時までは、内側接着層60を構成する接着剤の温度は25℃前後である。なお、各タイミングでの内側接着層60を構成する接着剤の温度設定については、実施形態に応じて任意に設定すればよい。
また、内側接着層60を構成する接着剤が液だれを生じて周辺設備等に付着することを抑制する観点からは、(内層フィルム30の外側面または中間層フィルム40の内側面のいずれかに内側接着層60を構成する無溶剤型接着剤を塗布する時から、少なくとも、後述する外層フィルム50を中間層フィルム40の外側面側に積層する時までのタイミングにおいて、)内側接着層60を構成する接着剤の粘度が2000mPa・S以上となるようにするのが好ましく、更に具体的には、内側接着層60を構成する接着剤(無溶剤型接着剤)として、(エージング処理前の状態で)2000mPa・S/25℃以上となる接着剤を用いるのが好ましい。
また、上記以外の条件についても、上述した毛細管現象を生じるように設定すればよく、例えば、スリット部(ハーフカット部)81の横幅(断面積)を上述した毛細管現象(内側接着層60を構成する接着剤をハーフカット部81内に導入するための毛細管現象)を生じる程度に狭く設定すればよく、また、上述した毛細管現象を生じる程度にスリット側端面41の撥水性が高くなるように中間層フィルム40の材料を決定すればよい。
【0066】
また、上述したように、内側接着層60を構成する接着剤の硬化反応は進んでいない状態でカッター刃Cによる加工を行うために、内層フィルム30と中間層フィルム40とを積層させて貼り合わせるための設備(図示しない)の下流側に、相互間にフィルム搬送設備以外の他の処理設備を設置することなく、カッター刃Cを用いてスリット部(ハーフカット部)81を形成するための設備を配置するのが好ましい。
【0067】
次に、
図4(a)に示すように、その内側面側に外側接着層70を構成する接着剤(本実施形態の場合、上述した主剤に硬化剤を混ぜた状態の無溶剤型接着剤)が塗布された外層フィルム50を、中間層フィルム40の外側面側に積層する。
【0068】
この
図4(a)や
図4(b)に示す状態では、外側接着層70を構成する接着剤(および内側接着層60を構成する接着剤)の硬化反応は進められておらず、流動性を有した状態となっている。
また、外側接着層70を構成する接着剤を外層フィルム50の内側面側に塗布するのではなく、外側接着層70を構成する接着剤を中間層フィルム40の外側面側に塗布した後に、中間層フィルム40と外層フィルム50とを貼り合わせてもよい。
また、外側接着層70を構成する接着剤の流動性を確保する観点から、上記の外層フィルム50を中間層フィルム40の外側面側に積層するタイミングでの、外側接着層70を構成する接着剤の粘度が30000mPa・S以下となるようにすることで前記接着剤の流動性を確保するのが好ましく、更に具体的には、外側接着層70を構成する接着剤(無溶剤型接着剤)として、(エージング処理前の状態で)30000mPa・S/25℃以下となる接着剤を用いるのが好ましい。
また、外側接着層70を構成する接着剤が液ダレを生じて周辺設備に付着することを抑制する観点からは、上記の外層フィルム50を中間層フィルム40の外側面側に積層するタイミングでの、外側接着層70を構成する接着剤の粘度が2000mPa・S以上となるようにするのが好ましく、更に具体的には、外側接着層70を構成する接着剤(無溶剤型接着剤)として、(エージング処理前の状態で)2000mPa・S/25℃以上となる接着剤を用いるのが好ましい。
【0069】
次に、接着層60、70を構成する無溶剤型接着剤の硬化反応を進める(硬化促進を行う)エージング処理(キュア処理)を施すことで、これら接着剤を硬化させ、これにより、内層フィルム30と中間層フィルム40と外層フィルム50とをこの順に積層して固着した積層フィルム20を製造することができる。
なお、エージング(キュア)処理の具体的な温度設定や処理時間については任意に決定すればよいが、エージング(キュア)処理の温度を30~70℃に設定し、エージング(キュア)処理の処理時間を12~120時間に設定するのが好ましい。
【0070】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記または下記の実施形態や変形例の各構成を任意に組み合わせてパウチ10を構成する等、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0071】
例えば、本発明のパウチ10は、
図1に示すような四方シールタイプのものに限定されず、スタンディングパウチ、平パウチ、三方シールタイプ、ピロータイプ、ガセットタイプ等の種々のタイプのパウチに適用することができる。
【0072】
また、上述した実施形態では、カット誘導線80が、直線状に延びる部位であるものとして説明したが、カット誘導線80の具体的態様は、直線状のものに限定されず、例えば、積層フィルム20を平面視した場合に曲線状に伸びるようにカット誘導線80を形成してもよく、また、間欠的に形成された点線状にカット誘導線80を形成してもよい。
また、上述した実施形態では、カット誘導線80が、1本形成されているものとして説明したが、例えば平行に並べた状態で複数本のカット誘導線80を積層フィルム20に設けてもよい。
また、上述した実施形態では、カット誘導線80を構成するスリット部81が、カッター刃Cを用いて形成された切り込み状のハーフカット部81から構成されているものとして説明したが、スリット部81の具体的態様は、上記に限定されず、例えば、レーザー加工によって中間層フィルム40の外側面から中間層フィルム40の内側面側に向けて形成したものであってもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、介在接着部90を構成する接着剤が、スリット部81内の全体に亘って充満して形成されているものとして説明したが、
図5に示すように、介在接着部90を構成する接着剤が、スリット部81の一部分のみに配置されるように、介在接着部90を形成してもよい。この
図5に示す例では、介在接着部90が内側接着層60に連続して形成されている。
また、上述した実施形態では、介在接着部90を構成する接着剤が、スリット部81の全体に亘って充満して形成され、すなわち、カット誘導線80の長手方向の全域に亘ってスリット部81の全体に亘って充満して形成されているものとして説明したが、カット誘導線80の長手方向の一部区間のみに介在接着部90を形成してもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では、毛細管現象によって内側接着層60(や外側接着層70)を構成する接着剤をスリット部81内に導入するものとして説明したが、例えば重力を利用して接着剤をスリット部81内に導入する等、毛細管現象以外の手法で接着剤をスリット部81内に導入してもよい。
また、内側接着層60(や外側接着層70)を構成する接着剤とは別に、内側接着層60(や外側接着層70)を構成する接着剤とは異なる接着剤をスリット部81内に導入(注入)してもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、内側接着層60や外側接着層70が、無溶剤型接着剤から構成されるものとして説明したが、例えば溶剤型接着剤等の無溶剤型接着剤以外の接着剤から、内側接着層60や外側接着層70を構成してもよい。
【0076】
また、上述した構成以外にも、ポリエステル系ポリウレタン樹脂やポリエーテル系ポリウレタン樹脂等から成るアンカーコート層、ウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂等から成るオーバーコート層(トップコート層)、印刷インキから成る印刷層、等を、任意に積層フィルム20に設けてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 ・・・ パウチ
10a ・・・ ノッチ
20 ・・・ 積層フィルム
30 ・・・ 内層フィルム
40 ・・・ 中間層フィルム
41 ・・・ スリット側端面
50 ・・・ 外層フィルム
60 ・・・ 内側接着層
70 ・・・ 外側接着層
80 ・・・ カット誘導線
81 ・・・ スリット部(ハーフカット部)
90 ・・・ 介在接着部
C ・・・ カッター刃
C1 ・・・ カッター刃の回転軸