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特開2023-15894電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015894
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20230125BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20230125BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119969
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 正光
(72)【発明者】
【氏名】佐東 将行
(72)【発明者】
【氏名】川路 聡
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB18
5J070AB21
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AE01
5J070AE07
5J070AE09
5J070AE10
5J070AF03
5J070AF05
5J070AF06
5J070AH12
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK22
(57)【要約】
【課題】物体を検出する精度の向上に資する電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子機器は、送信波を送信する送信アンテナと、送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて、送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を算出する信号処理部と、を備える。信号処理部は、受信信号を合成する回数として設定された合成数に応じて、距離及び相対速度を合成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を算出する信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、前記受信信号を合成する回数として設定された合成数に応じて、前記距離及び前記相対速度を合成する、電子機器。
【請求項2】
前記距離の分解能、前記相対速度の分解能、及び前記送信波のフレーム間隔又はサブフレーム間隔の少なくともいずれかに基づいて、前記合成数を設定する制御部を備える、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記送信波の送信態様が異なる第1動作モード及び第2動作モードで動作するように制御し、
前記第1動作モードは、前記相対速度の分解能が所定値以上で動作するモードであり、
前記第2動作モードは、前記相対速度の分解能が前記所定値以下で動作するモードである、請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1動作モード及び前記第2動作モードの双方において前記物体が検出され、当該物体と自機器との相対速度が所定以上である場合、前記第1動作モードで動作するように制御する、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記物体と自機器との相対速度が所定以下である場合、前記第2動作モードで動作するように制御する、請求項3又は4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1動作モード又は前記第2動作モードのいずれかにおいて前記物体が検出された場合、当該物体が検出された際のモードで動作するように制御する、請求項3から5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記信号処理部は、前記物体と自機器との相対速度及び前記送信波のフレーム間の時間に基づいて前記物体の移動距離を算出し、当該移動距離が速度フーリエ変換処理の結果の距離領域において隣接するセルに移動するか否かに応じて、前記前記距離及び前記相対速度を合成するか否かを決定する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記信号処理部は、
一定誤警報確率による閾値判定処理の前に、前記合成数に応じて前記距離及び前記相対速度を合成する、請求項1から7のいずれかに記載の電子機器。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1動作モード及び前記第2動作モードを、前記送信波の1フレーム内において切り替える、請求項3から8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
前記第1動作モード及び前記第2動作モードは、前記送信波のフレームに含まれるチャープ信号の数によって前記相対速度の分解能が異なるモードである、請求項3から9のいずれかに記載の電子機器。
【請求項11】
送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を算出するステップと、
前記受信信号を合成する回数として設定された合成数に応じて、前記距離及び前記相対速度を合成するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
【請求項12】
電子機器に、
送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を算出するステップと、
前記受信信号を合成する回数として設定された合成数に応じて、前記距離及び前記相対速度を合成するステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に関連する産業などの分野において、自車両と所定の物体との間の距離などを測定する技術が重要視されている。特に、近年、ミリ波のような電波を送信し、障害物などの物体に反射した反射波を受信することで、物体との間の距離などを測定するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))の技術が、種々研究されている。このような距離などを測定する技術の重要性は、運転者の運転をアシストする技術、及び、運転の一部又は全部を自動化する自動運転に関連する技術の発展に伴い、今後ますます高まると予想される。
【0003】
また、送信された電波が所定の物体に反射した反射波を受信することで、当該物体の存在を検出する精度を向上し得る技術について、いくつかの提案がされている。例えば、特許文献1は、所定個数のレーザ光に基づいて出力される所定個数の受光信号を積算することにより、反射物体からの反射波に対応する受光信号の成分を増幅し、反射物体からの反射波の検出感度を向上することを提案している。また、特許文献2は、反射物の相対速度が大きくなった場合でも、その変化に高速に応答し、反射物の距離を正確に測定し得るレーダ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-177350号公報
【特許文献2】特開2007-248146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、検出の精度を向上させることが望ましい。
【0006】
本開示の目的は、物体を検出する精度の向上に資する電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る電子機器は、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を算出する信号処理部と、
を備える。
前記信号処理部は、前記受信信号を合成する回数として設定された合成数に応じて、前記距離及び前記相対速度を合成する。
【0008】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を算出するステップと、
前記受信信号を合成する回数として設定された合成数に応じて、前記距離及び前記相対速度を合成するステップと、
を含む。
【0009】
一実施形態に係るプログラムは、
電子機器に、
送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を算出するステップと、
前記受信信号を合成する回数として設定された合成数に応じて、前記距離及び前記相対速度を合成するステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
一実施形態によれば、物体を検出する精度の向上に資する電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
図2】一実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図3】一実施形態に係る電子機器の制御部の機能を概略的に示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る電子機器の信号処理部の機能を概略的に示すブロック図である。
図5】一実施形態に係る送信信号の構成を説明する図である。
図6】一実施形態に係る電子機器による速度フーリエ変換の結果の例を示す図である。
図7】一実施形態に係る電子機器の第2動作モードにおける検出結果の合成前の例を示す図である。
図8】一実施形態に係る電子機器の第2動作モードにおける検出結果の合成後の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本開示において、「電子機器」とは、例えば電力系統又はバッテリなどから給電される電力により駆動する機器としてよい。本開示において、「ユーザ」とは、一実施形態に係る電子機器を使用する者又は使用し得る者(典型的には人間)、及び、一実施形態に係る電子機器を含むシステムを使用する者又は使用し得る者としてよい。
【0014】
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体をターゲットとして検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0015】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、自動運転自動車、バス、トラック、タクシー、オートバイ、自転車、船舶、航空機、ヘリコプター、トラクターなどの農作業装置、除雪車、清掃車、パトカー、救急車、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、本開示に含まれる自動車は、全長、全幅、全高、排気量、定員、又は積載量などによって限定されるない。例えば、本開示の自働車には、排気量が660ccより大きい自動車、及び排気量が660cc以下の自動車、いわゆる軽自動車なども含まれる。また、本開示に含まれる自動車は、エネルギーの一部若しくは全部に電気を利用し、モータを利用する自動車も含まれる。
【0016】
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
【0018】
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(図2参照)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
【0019】
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。センサ5は、移動体100の内部に設置されているとしてもよい。移動体100の内部とは、例えばバンパー内の空間、ボディ内の空間、ヘッドライト内の空間、又は運転スペースの空間などでよい。
【0020】
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば図1に示す物体200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体をターゲット(物標)として検出することができる。
【0021】
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
【0022】
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200をターゲットとして検出することができる。例えば、図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Aを測定(推定)することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定(推定)することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定(推定)することができる。
【0023】
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者などの人間、動物、昆虫その他の生命体、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、又は障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。本開示において、センサ5が検出する物体は、無生物の他に、人又は動物などの生物も含む。本開示のセンサ5が検出する物体は、レーダ技術により検知される、人、物、及び動物などを含む物標を含む。
【0024】
図1において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、図1において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。
【0025】
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
【0026】
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
【0027】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、例として、このような実施形態について説明する。
【0028】
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5とECU(Electronic Control Unit)50とから構成されてよい。ECU50は、移動体100の様々な動作を制御する。ECU50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。一実施形態に係る電子機器1は、制御部10を備えてよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部20、及び受信部30A~30Dなどの少なくともいずれかのような、他の機能部を適宜含んでもよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、信号処理部40を備えてもよい。図2に示すように、電子機器1は、受信部30A~30Dのように、複数の受信部を備えてよい。以下、受信部30Aと、受信部30Bと、受信部30Cと、受信部30Dとを区別しない場合、単に「受信部30」と記す。
【0029】
図3は、図2に示した制御部10の機能を概略的に示すブロック図である。図3に示すように、制御部10は、モード選択部11、及び、パラメータ設定部12を含んでよい。制御部10に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
【0030】
また、図4は、図2に示した信号処理部40の機能を概略的に示すブロック図である。図4に示すように、信号処理部40は、距離FFT処理部41、速度FFT処理部42、合成部43、合成数記憶部44、閾値判定部45、到来角推定部46、物体検出部47、出力判定部48を含んでよい。信号処理部40に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
【0031】
図2に示すように、送信部20は、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23A及び23B、増幅器24A及び24B、並びに、送信アンテナ25A及び25Bを備えてよい。以下、位相制御部23Aと、位相制御部23Bとを区別しない場合、単に「位相制御部23」と記す。また、以下、増幅器24Aと、増幅器24Bとを区別しない場合、単に「増幅器24」と記す。また、以下、送信アンテナ25Aと、送信アンテナ25Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ25」と記す。
【0032】
受信部30は、図2に示すように、それぞれ対応する受信アンテナ31A~31Dを備えてよい。以下、受信アンテナ31Aと、受信アンテナ31Bと、受信アンテナ31Cと、受信アンテナ31Dとを区別しない場合、単に「受信アンテナ31」と記す。また、複数の受信部30は、それぞれ、図2に示すように、LNA32、ミキサ33、IF部34、及びAD変換部35を備えてよい。受信部30A~30Dは、それぞれ同様の構成としてよい。図2においては、代表例として、受信部30Aのみの構成を概略的に示してある。
【0033】
上述のセンサ5は、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10及び信号処理部40などの他の機能部の少なくともいずれかを適宜含んでもよい。
【0034】
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び/又は処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU(ハードウェア)及び当該CPUで実行されるプログラム(ソフトウェア)として構成してよい。制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0035】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。この場合、制御部10は、任意の記憶部(メモリ)に記憶された各種情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部21に信号の生成を指示したり、信号生成部21が信号を生成するように制御したりしてもよい。
【0036】
図3に示す制御部10において、モード選択部11は、電子機器1の動作モードを選択する。一実施形態において、モード選択部11は、電子機器1の動作モードとしてレーダモードを選択してよい。モード選択部11によって選択されるレーダモードについては、さらに後述する。モード選択部11によって選択される電子機器1の動作モードは、パラメータ設定部12及び信号処理部40に伝達されてよい。一実施形態において、モード選択部11によって選択される電子機器1の動作モードは、信号処理部40の合成数記憶部44(図3参照)に伝達されてよい。後述のように、モード選択部11は、選択された電子機器1の動作モードに対応する合成数に関する情報(例えば合成回数を示すテーブルなど)を、合成数記憶部44に記憶してよい。
【0037】
図3に示す制御部10において、パラメータ設定部12は、モード選択部11によって選択された電子機器1の動作モードに対応する各種パラメータを設定する。一実施形態において、パラメータ設定部12は、電子機器1の動作に対応するパラメータとして、レーダモードに対応する各種のレーダパラメータを設定してよい。パラメータ設定部12によって設定されるパラメータは、予め任意の記憶部に記憶しておいてもよいし、例えば通信などにより取得してもよい。パラメータ設定部12によって設定されるパラメータについては、さらに後述する。パラメータ設定部12によって設定されるパラメータは、送信部20に伝達されてよい。一実施形態において、パラメータ設定部12によって設定されるパラメータは、送信部20の信号生成部21(図3参照)に伝達されてよい。送信部20の信号生成部21は、パラメータ設定部12から伝達されるパラメータに基づいて、電子機器1から送信する送信信号(送信波)を生成する。
【0038】
信号生成部21は、制御部10の制御により、送信アンテナ25から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。前述のように、信号生成部21は、パラメータ設定部12から伝達される各種のパラメータに基づいて送信信号を生成してよい。具体的には、信号生成部21は、送信信号を生成する際に、例えばパラメータ設定部12によって設定されたパラメータに基づいて、送信信号の周波数を割り当ててよい。また、信号生成部21は、例えばパラメータ設定部12によって設定されたパラメータにしたがって、送信信号の周波数を割り当ててよい。例えば、信号生成部21は、制御部10又は任意の記憶部(メモリ)から周波数情報を受け取ることにより、例えば77~81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部21は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
【0039】
信号生成部21は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
【0040】
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部21が生成する信号は、例えば制御部10(パラメータ設定部12)において予め設定されていてもよい。また、信号生成部21が生成する信号は、例えば任意の記憶部(メモリ)などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部21によって生成された信号は、シンセサイザ22に供給される。
【0041】
図5は、信号生成部21が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
【0042】
図5において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。図5に示す例において、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。図5においては、各チャープ信号を、c1,c2,…,c8のように示してある。図5に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
【0043】
図5に示す例において、c1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、図5に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含んで構成されている。また、図5に示す例において、サブフレーム1~サブフレーム16のように16のサブフレームを含めて、1つのフレームとしている。すなわち、図5に示すフレーム1及びフレーム2などは、それぞれ16のサブフレームを含んで構成されている。また、図5に示すように、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。図5に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。
【0044】
図5において、フレーム2以降も同様の構成としてよい。また、図5において、フレーム3以降も同様の構成としてよい。一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、図5においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号生成部21が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えばパラメータ設定部12によって設定されてもよいし、任意の記憶部(メモリ)などに記憶されていてもよい。
【0045】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
【0046】
以下、電子機器1は、図5に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、図5に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は8つに限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、図5に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは16に限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。信号生成部21は、異なる周波数の信号を生成してよい。信号生成部21は、周波数fがそれぞれ異なる帯域幅の複数の離散的な信号を生成してもよい。
【0047】
図2に戻り、シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ22は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部21が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10(パラメータ設定部12)によって設定されてもよい。また、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば任意の記憶部(メモリ)に記憶されていてもよい。シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、位相制御部23及びミキサ33に供給される。位相制御部23が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の位相制御部23のそれぞれに供給されてよい。また、受信部30が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の受信部30におけるそれぞれのミキサ33に供給されてよい。
【0048】
位相制御部23は、シンセサイザ22から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部23は、例えば制御部10による制御に基づいて、シンセサイザ22から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してもよい。位相制御部23がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ25がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば任意の記憶部(メモリ)に記憶しておいてよい。位相制御部23によって位相制御された送信信号は、増幅器24に供給される。
【0049】
増幅器24は、位相制御部23から供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいて増幅させる。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の増幅器24は、複数の位相制御部23のうちそれぞれ対応するものから供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいてそれぞれ増幅させてよい。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。増幅器24は、送信アンテナ25に接続される。
【0050】
送信アンテナ25は、増幅器24によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の送信アンテナ25は、複数の増幅器24のうちそれぞれ対応するものによって増幅された送信信号を、それぞれ送信波Tとして出力(送信)してよい。送信アンテナ25は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0051】
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ25を備え、送信アンテナ25から送信波Tとして送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体に収められてもよい。また、この場合、当該1つの筐体は、容易に開けることができない構造としてもよい。例えば送信アンテナ25、受信アンテナ31、増幅器24が1つの筐体に収められ、かつ、この筐体が容易に開けられない構造となっているとよい。さらに、ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ25は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ25を覆うことにより、送信アンテナ25が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0052】
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ25を2つ備える例を示している。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25を備えてもよい。一方、一実施形態において、電子機器1は、送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成するようにする場合、複数の送信アンテナ25を備えてよい。一実施形態において、電子機器1は、任意の複数の送信アンテナ25を備えてもよい。この場合、電子機器1は、複数の送信アンテナ25に対応させて、位相制御部23及び増幅器24もそれぞれ複数備えてよい。そして、複数の位相制御部23は、シンセサイザ22から供給されて複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信波の位相を、それぞれ制御してよい。また、複数の増幅器24は、複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信信号のパワーを、それぞれ増幅してよい。また、この場合、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。このように、図2に示す電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備える場合、当該複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ複数含んで構成してよい。
【0053】
受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の物体200に反射したものとしてよい。受信アンテナ31は、例えば受信アンテナ31A~受信アンテナ31Dのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ31は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ31は、LNA32に接続される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA32に供給される。
【0054】
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ31から、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)として送信された送信波Tが所定の物体200によって反射された反射波Rを受信することができる。このように、送信波Tとして送信チャープ信号を送信する場合、受信した反射波Rに基づく受信信号は、受信チャープ信号と記す。すなわち、電子機器1は、受信アンテナ31から反射波Rとして受信信号(例えば受信チャープ信号)を受信する。ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ31は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ31を覆うことにより、受信アンテナ31が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0055】
また、例えばアンテナ31が送信アンテナ25の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ25及び少なくとも1つの受信アンテナ31を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのようなカバー部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
【0056】
LNA32は、受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA32は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
【0057】
ミキサ33は、LNA32から供給されるRF周波数の受信信号を、シンセサイザ22から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって混合されたビート信号は、IF部34に供給される。
【0058】
IF部34は、ミキサ33から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(Intermediate Frequency:IF)まで低下させる。IF部34によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部35に供給される。
【0059】
AD変換部35は、IF部34から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部35は、任意のアナログ-デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号処理部40に供給されてよい。より詳細には、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号処理部40の距離FFT処理部41(図4参照)に供給されてよい。受信部30が複数の場合、複数のAD変換部35によってデジタル化されたそれぞれのビート信号は、信号処理部40の距離FFT処理部41に供給されてよい。
【0060】
一実施形態に係る電子機器1が備える信号処理部40は、受信部30から出力される信号(受信信号)に種々の信号処理を行ってよい。信号処理部40は、信号処理をはじめとする種々の機能を実行するための制御及び/又は処理能力を提供するために、例えばCPU又はDSPのような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。信号処理部40は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。一実施形態において、信号処理部40は、例えばCPU(ハードウェア)及び当該CPUで実行されるプログラム(ソフトウェア)として構成してよい。信号処理部40は、信号処理部40の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0061】
図4に示す信号処理部40において、距離FFT処理部41は、AD変換部35から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との間の距離を推定する。距離FFT処理部41は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、距離FFT処理部41は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。
【0062】
距離FFT処理部41は、受信部30のAD変換部35によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う(以下、適宜「距離FFT処理」と記す)。距離FFT処理は、1D FFT処理とも記す。例えば、距離FFT処理部41は、AD変換部35から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号強度(電力)の時間変化として表すことができる。距離FFT処理部41は、このようなビート信号にFFT処理を行うことにより、各周波数に対応する信号強度(電力)として表すことができる。距離FFT処理部41は、距離FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の物体200があると判断してもよい。例えば、一定誤警報確率(CFAR(Constant False Alarm Rate))による検出処理のように、外乱信号の平均電力又は振幅から閾値以上のピーク値が検出された場合、送信波を反射する物体(反射物体)が存在するものと判断する方法が知られている。このような閾値に基づいて物体が存在するか否かの判定は、例えば後述の閾値判定部45において実行されてよい。
【0063】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される送信信号、及び、反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体200をターゲットとして検出することができる。
【0064】
距離FFT処理部41は、1つのチャープ信号(例えば図5に示すc1)に基づいて、所定の物体との間の距離を推定することができる。すなわち、電子機器1は、距離FFT処理を行うことにより、図1に示した距離Aを測定(推定)することができる。ビート信号にFFT処理を行うことにより、所定の物体との間の距離を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。距離FFT処理部41によって距離FFT処理が行われた結果(例えば距離の情報)は、速度FFT処理部42に供給されてよい。また、距離FFT処理部41によって距離FFT処理が行われた結果は、例えば閾値判定部45など、他の機能部に供給されてもよい。
【0065】
速度FFT処理部42は、距離FFT処理部41によって距離FFT処理が行われたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との相対速度を推定する。速度FFT処理部42は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、速度FFT処理部42は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。
【0066】
速度FFT処理部42は、距離FFT処理部41によって距離FFT処理が行われたビート信号に対してさらにFFT処理を行う(以下、適宜「速度FFT処理」と記す)。速度FFT処理は、2D FFT(ドップラーFFT)処理とも記す。例えば、速度FFT処理部42は、距離FFT処理部41から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。速度FFT処理部42は、チャープ信号のサブフレーム(例えば図5に示すサブフレーム1)に基づいて、所定の物体との相対速度を推定することができる。上述のようにビート信号に距離FFT処理を行うと、複数のベクトルを生成することができる。これら複数のベクトルに対して速度FFT処理を行った結果におけるピークの位相を求めることにより、所定の物体との相対速度を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理を行うことにより、図1に示した移動体100と所定の物体200との相対速度を測定(推定)することができる。距離FFT処理を行った結果に対して速度FFT処理を行うことにより、所定の物体との相対速度を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果(例えば速度の情報)は、合成部43に供給されてよい。また、速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果(例えば速度の情報)は、例えば閾値判定部45に供給されてよい。また、速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果は、例えば到来角推定部46など、他の機能部に供給されてもよい。
【0067】
合成部43は、速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果に基づく情報を、所定の回数だけ合成する。速度FFT処理の結果に基づく情報が合成部43によって合成される所定の回数は、合成数記憶部44から読み出してよい。合成部43による合成処理は、さらに後述する。
【0068】
合成数記憶部44は、合成部43が合成処理を行う回数(合成数)を記憶するメモリとしてよい。合成数記憶部44は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、合成数記憶部44は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、合成数記憶部44は、上述のように、制御部10及び/又は信号処理部40として用いられるCPUなどの内部メモリであってもよい。
【0069】
一実施形態において、合成数記憶部44に記憶される合成数は、制御部10から通知されてよい。より詳細には、合成数記憶部44に記憶される合成数は、例えば制御部10のモード選択部11から通知されてよい。すなわち、制御部10のモード選択部11は、選択されたモードに応じた合成数を、信号処理部40の合成数記憶部44に通知してよい。これにより、合成数記憶部44は、通知された合成数を記憶することができる。
【0070】
閾値判定部45は、距離FFT処理部41によって距離FFT処理が行われた結果、及び/又は、速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、距離及び/又は相対速度についての判定処理を行う。一実施形態において、閾値判定部45は、速度FFT処理の結果が合成部43によって合成されたものに基づいて、距離及び/又は相対速度についての判定処理を行ってもよい。一実施形態において、閾値判定部45は、所定の閾値に基づく判定を行ってよい。例えば、閾値判定部45は、距離FFT処理部41によって距離FFT処理が行われた結果、及び/又は、速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果が、所定の閾値を超えるか否かを判定してよい。また、閾値判定部45は、例えば速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果が合成部43によって合成されたものが、所定の閾値を超えるか否かを判定してよい。閾値判定部45は、所定の閾値を超える距離及び/又は相対速度において、物体を検出したと判定してもよい。
【0071】
閾値判定部45は、距離FFT処理部41によって距離FFT処理が行われた結果、及び/又は、速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果のうち、所定の閾値を超えるもののみを出力してもよい。一実施形態において、閾値判定部45は、速度FFT処理の結果が合成部43によって合成されたものうち、所定の閾値を超えるもののみを出力してもよい。閾値判定部45が行う動作は、例えば、一定誤警報確率(CFAR(Constant False Alarm Rate))による検出処理と同様のものとしてよい。一実施形態において、閾値判定部45が行う動作は、Order Statistic CFAR(OS-CFAR)に基づく処理を行ってもよい。OS-CFERは、順序統計(ordered statistics)に基づいて閾値を設定し、その閾値を超える場合にターゲットが存在すると判定する手法である。閾値判定部45によって閾値判定の処理が行われた結果は、到来角推定部46に供給されてよい。また、閾値判定部45によって処理が行われた結果は、例えば物体検出部47及び/又は出力判定部48など、他の機能部に供給されてもよい。
【0072】
電子機器1が複数の動作モード(レーダモード)で動作する場合、閾値判定部45は、各レーダモードごとに記憶されたCFAR(例えばOS-CFER)の閾値に基づいて、物体の有無の判定を行ってよい。
【0073】
到来角推定部46は、速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果、及び/又は、閾値判定部45からの出力に基づいて、所定の物体200から反射波Rが到来する方向を推定する。到来角推定部46は、速度FFT処理部42によって速度FFT処理が行われた結果のうち、閾値判定部45から出力された結果に基づいて、所定の物体200から反射波Rが到来する方向を推定してもよい。電子機器1は、複数の受信アンテナ31から反射波Rを受信することで、反射波Rが到来する方向を推定することができる。例えば、複数の受信アンテナ31は、所定の間隔で配置されているものとする。この場合、送信アンテナ25から送信された送信波Tが所定の物体200に反射されて反射波Rとなり、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナ31はそれぞれ反射波Rを受信する。そして、到来角推定部46は、複数の受信アンテナ31がそれぞれ受信した反射波Rの位相、及びそれぞれの反射波Rの経路差に基づいて、反射波Rが受信アンテナ31に到来する方向を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理が行われた結果に基づいて、図1に示した到来角θを測定(推定)することができる。
【0074】
一実施形態に係る電子機器1において、到来角推定部46は、物体が存在すると判定された速度において、複数の受信アンテナ31が受信する複素信号に基づいて、反射波の到来方向を推定してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、物体の存在する方向の角度を推定することができる。
【0075】
速度FFT処理が行われた結果に基づいて、反射波Rが到来する方向を推定する技術は各種提案されている。例えば、既知の到来方向推定のアルゴリズムとしては、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Technique)などが知られている。したがって、公知の技術についてのより詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。到来角推定部46によって推定された到来角θの情報(角度情報)は、物体検出部47に供給されてよい。
【0076】
一実施形態に係る電子機器1において、物体検出部47は、反射波の到来方向(角度)の情報、ターゲットとの相対速度の情報、及び/又は、ターゲットまでの距離の情報に基づいて、物体をターゲットとして検出(例えばクラスタリング)したか否かの判定を行う。ここで、反射波の到来方向(角度)の情報は、到来角推定部46から取得してよい。また、ターゲットとの相対速度及び距離の情報は、閾値判定部45から取得してよい。また、ターゲットとの相対速度の情報は、速度FFT処理部42から取得してもよい。また、ターゲットまでの距離の情報は、距離FFT処理部41から取得してもよい。物体検出部47は、ターゲットとして検出する物体を構成するポイントの平均電力を計算してもよい。
【0077】
物体検出部47は、距離FFT処理部41、速度FFT処理部42、閾値判定部45、及び到来角推定部46の少なくともいずれかから供給される情報に基づいて、送信波Tが送信された範囲に存在する物体を検出する。物体検出部47は、供給された距離の情報、速度の情報、及び角度情報に基づいて例えばクラスタリング処理を行うことにより、物体検出を行ってよい。データをクラスタリングする際に用いるアルゴリズムとして、例えばDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)などが知られている。クラスタリング処理においては、例えば検出される物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。物体検出部47において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、出力判定部48に供給されてよい。また、物体検出部47からの出力は、例えばECU50など、他の機能部に供給されてもよい。この場合、移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて通信を行ってもよい。
【0078】
出力判定部48は、例えばクラスタリング処理された物体の次フレームの物標位置を予測する処理を行ってよい。出力判定部48は、例えばカルマンフィルタを使用することにより、クラスタリング処理された物体の次のフレームにおける位置を予測してもよい。出力判定部48は、物体の次のフレームにおける予測された位置を、例えば任意の記憶部などに記憶してよい。
【0079】
一実施形態において、出力判定部48は、検出された物体に関連する点群に基づいて、当該物体がいずれの動作モードにおいて検出されたかを、任意の記憶部などに記憶してよい。例えば、出力判定部48は、検出された物体が、第1レーダモードにおいて検出されたか、あるいは第2レーダモードにおいて検出されたかを、メモリなどに記憶してよい。この場合、出力判定部48は、前のフレームにおいて推定された相対速度が一定か否かに応じて、第1レーダモードと第2レーダモードの優先順位を決定してよい。以下、例として、第1レーダモードの速度分解能は、第2レーダモードの速度分解能よりも高い(細かい)ものとして説明する。例えば、第1レーダモード及び第2レーダモードの両方において物体が検出された場合、第1レーダモード1の方が速度分解能が細かいため、出力判定部48は、第1レーダモードを優先してよい。一方、第1レーダモード及び第2レーダモードのどちらかのみにおいて物体が検出された場合、出力判定部48は、当該物体が検出されたレーダモードを選択してよい。
【0080】
出力判定部48は、検出された物体に関連する点群として、例えば物体追跡の原理に基づいて、フレーム間を関連付けたデータを使用してもよい。物体追跡においては、メモリに記憶された前のフレームで予測された物体の情報(例えば距離、角度、速度、電力、点群の分散量、識別情報など)と、今回のフレームで観測された物体の情報との相関に基づいて、フレーム間を関連付けてもよい。
出力判定部48は、
【0081】
出力判定部48は、上述のように関連付けた今回のフレームで観測された物体の情報から、例えばカルマンフィルタを用いて次のフレームの予測を行ってもよい。
この場合、出力判定部48は、予測により得られた物体の情報を任意のメモリなどに保管してよい。そして、出力判定部48は、メモリに保管されている情報のうち、前のフレームで計算された、今回のフレームで予測される物体の情報を出力してもよい。
【0082】
一実施形態に係る電子機器1が備えるECU50(図2参照)は、例えば移動体100を構成する各機能部の制御をはじめとして、移動体100全体の動作の制御を行うことができる。ECU50は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。ECU50は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、ECU50は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。ECU50は、ECU50の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。また、制御部10の機能の少なくとも一部がECU50の機能とされてもよいし、ECU50の機能の少なくとも一部が制御部10の機能とされてもよい。
【0083】
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えている。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25及び任意の数の受信アンテナ31を備えてもよい。例えば、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えることにより、電子機器1は、仮想的に8本のアンテナにより構成される仮想アンテナアレイを備えるものと考えることができる。このように、電子機器1は、例えば仮想8本のアンテナを用いることにより、図5に示す16のサブフレームの反射波Rを受信してもよい。
【0084】
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作について説明する。
【0085】
上述のように、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナから送信波を送信し、送信波が物体によって反射された反射波を、受信アンテナから受信する。そして、一実施形態に係る電子機器1は、送信信号及び/又は受信信号に基づいて、送信波を反射する物体を検出し得る。一実施形態に係る電子機器1は、このようにして検出された物体が所定の物標であるか否かを識別する。以下、一実施形態に係る電子機器1による処理のアルゴリズムについて、さらに説明する。
【0086】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10のモード選択部11は、電子機器1の動作モードを選択して、選択された動作モードを、パラメータ設定部12及び信号処理部40に通知する。パラメータ設定部12は、モード選択部11によって選択された動作モードのパラメータを設定し、設定されたパラメータを送信部20に通知する。ここで、パラメータ設定部12における任意のメモリなどは、複数のレーダパラメータを記憶してよい。制御部10は、パラメータ設定部12によるレーダパラメータの設定により、例えば送信波の1フレーム内において複数のレーダモードを切り替えることができる。
【0087】
以下、一例として、上述したように、電子機器1は、レーダの速度分解能が比較的高い(細かい)第1動作モードと、レーダの速度分解能が比較的低い(粗い)第2動作モードとで切り替えて動作可能なものとして説明する。制御部10のモード選択部11は、電子機器1の動作モードが第1動作モードか第2動作モードかを決定して、その結果をパラメータ設定部12及び信号処理部40に通知してよい。これにより、信号処理部40は、受信信号を処理する際の動作モードを把握することができる。また、パラメータ設定部12は、送信信号を送信する際の各種パラメータを設定して、送信部20に通知することができる。ここで、パラメータ設定部12は、第1動作モード及び第2動作モードにそれぞれ対応するレーダパラメータを設定してよい。このようなレーダパラメータは、予め任意の記憶部に記憶していてもよいし、取得してもよい。
【0088】
一実施形態において、パラメータ設定部12は、第1動作モード及び第2動作モードにおいて、例えば次のようなレーダパラメータを設定してよい。
【表1】
【0089】
上記の表1において、距離の分解能は、距離フーリエ変換(1D FFT)の時に得られる分解能としてよい。また、相対速度の分解能は、速度フーリエ変換(2D FFT)の時に得られる分解能としてよい。また、チャープ信号数は、1つのサブフレームにおいて送信するチャープ信号の数としてよい。チャープ間隔は、1つのチャープ信号において送信波を送信する時間の間隔としてよい。サブフレーム間隔は、チャープ数とチャープ間隔との積を示すものとしてよい。サブフレーム最大合成数は、1フレーム内のサブフレーム数に基づいて決定してもよい。
【0090】
図6は、電子機器1において受信信号について速度フーリエ変換(2D FFT)を行った結果の領域を示す図である。図6に示すように、信号処理部40の速度FFT処理部42によって受信信号を処理した結果は、距離領域及び速度領域を示す。一例として、図6に示す結果は、水平方向が距離領域を示している。図6において、右方向は、電子機器1から離れる方向を示している。図6において、左方向は、電子機器1に近づく方向を示している。また、図6において、上方向は、電子機器1との相対速度が大きくなる方向(正方向)を示している。図6において、下方向は、電子機器1との相対速度が大きくなる方向(負方向)を示している。さらに、図6において、上下方向の中央部分は、電子機器1との相対速度が小さくなる部分であることを示している。
【0091】
例えば、図6に示す矢印(1)及び(2)のように、検出された物体の相対速度が大きいと、速度FFT処理部42による処理の結果において、図6に示すように、隣接するセル(bin)に物体が移動してしまうことが想定される。このような場合、受信信号は2つのセルにおいて検出されることになり、受信信号を合成することにより平均化すると、信号対雑音比(Signal to Noise Ratio:SNR)の平均化の効果は改善されない。この場合、受信信号を合成すると、平均化の効果は弱まる結果となる。一方、図6に示す矢印(3)のように、検出された物体の相対速度が小さいと、速度FFT処理部42による処理の結果において、図6に示すように、隣接するセルに物体が移動ないことが想定される。このような場合、受信信号を合成することにより平均化すると、SNRの平均化の効果によりノイズが抑制さ、SNRの向上が期待できる。すなわち、このような場合、信号の合成によって、物体検出の精度を向上させることが期待できる。
【0092】
次に、信号処理部40の合成部43は、図6に示したような2次元のデータに対して、受信信号を合成する回数として設定された合成数にしたがって、電子機器1と検出された物体との距離及び相対速度を合成してよい。この場合、合成部43は、例えば予めテーブル化された数値にしたがって、上述の合成数を算出してもよい。例えば、第1動作モードの場合、速度FFT処理部42は、256個のチャープ信号について2D FFTを行ってよい。したがって、この場合の2D FFTの速度分解能は、例えば1km/hの精度になる。
【0093】
ここで、合成部43の合成数の設定についてさらに説明する。本開示において、合成部43は、合成数Nを、例えば、以下の式(1)に示すような合成数式によって合成数を設定してもよい。
[送信波のフレーム間隔又はサブフレーム間隔]×[m×距離分解能]/([速度分解能]×[該当速度bin]) (1)
上記式(1)において、mは、0.5以下の数であるとしてよい。mは、送信波のフレーム間隔又はサブフレーム間隔の半分以下であれば、他のbinへの移動を制限することができる。また、合成部43は、合成数を算出する際に、上記式(1)以外にも、他の数式を用いてもよい。
【0094】
本開示における合成数は、整数であるとしてよい。また、合成部43は、上記演算の結果が整数とならない場合、小数点以下を切り捨ててもよいし、切り上げてもよい。また、速度分解能×該当速度binは、定義速度と記載してもよい。上記式(1)においては、分母を、[速度分解能]× [該当速度bin]とした。ここで、該当速度binは、正の整数1,…,Mであり、Mは(最大測定速度/速度分解能)である。
【0095】
また、上記式(1)において、分母を、[速度分解能]×[速度インデックス(1,…,M)]としてもよい。すなわち、本開示において、合成部43は、合成数Nを、例えば、以下の式(2)に示すような合成数式によって合成数を設定してもよい。
[送信波のフレーム間隔又はサブフレーム間隔]×[m×[距離分解能]/([速度分解能]×[速度インデックス]) (2)
上記式(2)において、速度インデックスは正の整数であり、Mは(最大測定速度/速度分解能)となる。
【0096】
速度FFT処理部42において行われる速度FFT処理は、例えば以下の式(3)のような数式にしたがって行われるものとしてよい。
【数1】
【0097】
速度領域におけるFFT処理の場合、上記式(3)におけるexpの中において、Nはチャープ信号の数となる。上記式(3)において、x=0~N-1で360°一周することになる。このため、検知する物体の速度が一定の時に最も大きな利得が得られる。例えば、第2動作モードにおける動作の場合、64個のチャープ信号を4回送信してもよい。これにより、受信信号を合成することができる。例えば、合成部43は、受信信号を3回合成すると(つまり4サブフレーム分を合成すると)、雑音を抑圧することによりSNRを向上させることができる。
【0098】
図7は、合成部43による受信信号の合成処理を行う前の、すなわち平均化の効果が現れる前の2D FFTによる検出結果を示す図である。また、図8は、合成部43による受信信号の合成処理を行った後の、すなわち平均化の効果が現れた後の2D FFTによる検出結果を示す図である。図8に示すように、図7の結果と比べて、雑音(ノイズ)のフロアの成分が低減させていることを確認することができる。すなわち、図8に示すように、一実施形態に係る電子機器1によれば、SNRを向上させることができる。
【0099】
上述した実施形態においては、第1動作モード及び第2動作モードにおいて、距離の分解能が同じであるものとして説明した。しかしながら、第1動作モード及び第2動作モードにおいて、それぞれ距離の分解能が異なるものとしてもよい。また、上述した実施形態においては、電子機器1は、第1動作モード及び第2動作モードの2つの動作モードを切り替えて動作するものとした。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、例えば3つ以上の動作モードで動作するものとしてもよい。
【0100】
一実施形態に係る電子機器1は、例えば距離の分解能が同じ又はほぼ同じであって、相対速度の分解能が異なる複数のレーダモードで動作してよい。一実施形態に係る電子機器1は、そのレーダモードを送信波の1フレーム内において切り替えてよい。また、複数のレーダモードは、例えば、相対速度の分解能が高い第1動作モードと、相対速度の分解能及び/又は距離の分解能に応じて受信信号を合成する第2動作モードとしてよい。また、第2動作モードにおいては、検出された物体が速度FFT処理における結果の距離域をまたがないように平均した動作モードを使用してよい。このように、一実施形態に係る電子機器1によれば、SNRを向上させた信号を用いて、CFAR及び/又は到来方向の推定を行うことができる。
【0101】
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部40は、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて、送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を算出してよい。また、信号処理部40は、受信信号を合成する回数として設定された合成数に応じて、送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を合成してよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1によれば、速度FFT処理部42による処理の結果において隣接するセルに物体が移動してしまう前に、雑音を抑制することができる。
【0102】
また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、所定の条件に基づいて、送信波を反射する物体と自機器との距離及び相対速度を合成する数を設定してよい。ここで、前記所定の条件とは、例えば、送信波を反射する物体と自機器との距離の分解能、送信波を反射する物体と自機器との相対速度の分解能、及び送信波のフレーム間隔又はサブフレーム間隔の少なくともいずれかとしてよい。
【0103】
また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信波の送信態様が異なる第1動作モード及び第2動作モードで動作するように制御してよい。ここで、第1動作モードは、送信波を反射する物体と自機器との相対速度の分解能が所定値以上で動作するモードとしてもよい。また、第2動作モードは、送信波を反射する物体と自機器との相対速度の分解能が前記所定値以下で動作するモードとしてもよい。
【0104】
また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、第1動作モード及び第2動作モードの双方において物体が検出され、その物体と自機器との相対速度が所定以上である場合、第1動作モードで動作するように制御してもよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、第1動作モード及び第2動作モードにおける受信信号の合成数が同じ場合、第1動作モードで動作するように制御してもよい。
【0105】
また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、検出された物体と自機器との相対速度が所定以下である場合、第2動作モードで動作するように制御してもよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、第2動作モードにおける受信信号の合成数の方が多い場合、第2動作モードで動作するように制御してもよい。
【0106】
また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、第1動作モード又は第2動作モードのいずれかにおいて物体が検出された場合、その物体が検出された際のモードで動作するように制御してもよい。
【0107】
また、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部40は、検出された物体と自機器との相対速度及び送信波のフレーム間の時間に基づいて前記物体の移動距離を算出してもよい。また、信号処理部40は、前記物体の移動距離が速度フーリエ変換処理の結果の距離領域において隣接するセルに移動するか否かに応じて、検出された物体と自機器との距離及び相対速度を合成するか否かを決定してもよい。
【0108】
また、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部40は、一定誤警報確率による閾値判定処理の前に、設定された合成数に応じて、検出された物体と自機器との距離及び相対速度を合成してもよい。
【0109】
また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、第1動作モード及び第2動作モードを、送信波の1フレーム内において切り替えてもよい。第1動作モード及び第2動作モードは、送信波のフレームに含まれるチャープ信号の数によって相対速度の分解能が異なるモードとしてもよい。
【0110】
レーダ技術による物体検出においては、例えば自機器と物体との相対速度が小さい場合、フレーム合成処理を行って物体の位置を正確に測定し、相対速度が大きければ角度合成処理を行って物体との距離を正確に測定するような処理も想定される。しかしながら、自機器と物体との相対速度が低い又は高いという判定基準は、物体を検知した後に初めてわかることである。したがって、受信信号の合成ができない状態においてはSNRが低いため、未検知となるリスク、又は、合成の判定に失敗し正確に測定できないというリスクも想定される。
【0111】
また、例えば、送信波を反射する物体の相対速度が大きくなった場合、その変化に応答することにより、反射物の距離を測定するような処理も想定される。しかしながら、自機器と物体との相対速度が低い場合、フレーム合成によるSNRは高いため、物体を検出可能である。一方、相対速度が変化することにより、先の判定が変化する場合、SNRの変化により、未検知が発生することも想定される。
【0112】
一実施形態に係る電子機器1によれば、物体を検出する際に、自機器との相対速度が一定の物体については、相対速度の分解能を増やしてよい。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、物体を検出する際に、自機器との相対速度が所定の大きさ以下の物体については、相対速度の分解能を増やしてよい。これにより、信号レベルを向上させることができるため、SNRは向上し、物体の検出率を向上させることができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、自機器との相対速度が大きい、つまり所定の大きさより大きい検出物体については、相対速度の分解能を低く(荒く)してよい。このようにすることで、一実施形態に係る電子機器1は、距離の分解能及び相対速度の分解能の領域を超えない範囲で受信信号を合成することができる。このため、一実施形態に係る電子機器1によれば、雑音レベルを抑圧することができ、物体の検出率を向上させることができる。さらに、一実施形態に係る電子機器1によれば、上述のような複数の動作モードを1フレームにおいて切り替えながら運用することで、検出処理のロバスト性を高めることができる。
【0113】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0114】
例えば、上述した実施形態においては、1つのセンサ5によって、動的に物体検出範囲を切り替える態様について説明した。しかしながら、一実施形態において、複数のセンサ5によって、決定された物体検出範囲において物体検出を行ってもよい。また、一実施形態において、複数のセンサ5によって、決定された物体検出範囲に向けてビームフォーミングを行ってもよい。
【0115】
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器又はコンピュータなどに実行させるプログラムとして実施してもよい。
【0116】
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えばセンサ5又は制御部10の一方のみの少なくとも一部を備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、図2に示すような、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23、増幅器24、及び送信アンテナ25の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ31、LNA32、ミキサ33、IF部34、AD変換部35の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、任意の記憶部(メモリ)を含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様を採ることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 電子機器
5 センサ
10 制御部
11 モード選択部
12 パラメータ設定部
20 送信部
21 信号生成部
22 シンセサイザ
23 位相制御部
24 増幅器
25 送信アンテナ
30 受信部
31 受信アンテナ
32 LNA
33 ミキサ
34 IF部
35 AD変換部
40 信号処理部
41 距離FFT処理部
42 速度FFT処理部
43 合成部
44 合成数記憶部
45 閾値判定部
46 到来角推定部
47 物体検出部
48 出力判定部
50 ECU
100 移動体
200 物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8