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特開2023-158947位置検出回路、位置検出方法、及び位置検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158947
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】位置検出回路、位置検出方法、及び位置検出システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20231024BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20231024BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G06F3/041 534
G06F3/03 400A
G06F3/041 512
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069027
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 勝史
(72)【発明者】
【氏名】劉 叡明
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ユーザが意図しない操作結果となることを抑制する位置検出回路、方法及びシステムを提供する。
【解決手段】タッチパネルディスプレイを有する電気機器において、タッチIC20は、複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、タッチセンサ上に配置されたタッチ面に対する指のタッチ位置を検出する位置検出回路であって、タッチ面に対する指のタッチを検出する検出部30と、検出されたタッチの領域を示すタッチ領域の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値を算出する算出部34と、算出部34により算出された静電容量値の合計値に基づき、検出されたタッチのタッチ位置を出力する出力部36と、を備え、出力部36は、算出部34により算出された合計値が閾値以下である場合に、タッチ位置を出力し、当該合計値が閾値を超える場合に、タッチ位置を出力しない又はタッチ位置を無効化して出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面に対するパッシブポインタの指示位置を検出する位置検出回路であって、
前記タッチ面に対する前記パッシブポインタのタッチを検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記タッチの領域を示すタッチ領域の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記静電容量値の合計値に基づき、前記検出部により検出された前記タッチの前記指示位置を出力する出力部と、
を備え、
前記出力部は、前記合計値が閾値以下である場合に、前記指示位置を出力し、前記合計値が閾値を超える場合に、前記指示位置を出力しない又は前記指示位置を無効化して出力する、
位置検出回路。
【請求項2】
前記算出部は、前記タッチ領域の少なくとも一部を囲み、且つ、前記タッチ領域を除外した算出領域における静電容量値の合計値を算出する、
請求項1に記載の位置検出回路。
【請求項3】
前記算出部は、前記算出領域における静電容量値のうち正の値の静電容量値の合計値を算出する、
請求項2に記載の位置検出回路。
【請求項4】
前記算出部は、前記タッチ領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記算出領域における静電容量値の合計値を算出し、
前記出力部は、前記タッチ領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記合計値に基づき、前記指示位置を出力する、
請求項1又は2に記載の位置検出回路。
【請求項5】
複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサに接続された位置検出回路によって実行され、前記タッチセンサを用いて、前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面に対するパッシブポインタの指示位置を検出する位置検出方法であって、
前記タッチ面に対する前記パッシブポインタのタッチを検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて検出された前記タッチの領域を示すタッチ領域の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにおいて算出された前記静電容量値の合計値に基づき、前記検出ステップにおいて検出された前記タッチの前記指示位置を出力する出力ステップと、
を含み、
前記出力ステップにおいて、前記合計値が閾値以下である場合に、前記指示位置を出力し、前記合計値が閾値を超える場合に、前記指示位置を出力しない又は前記指示位置を無効化して出力する、
位置検出方法。
【請求項6】
前記算出ステップにおいて、前記タッチ領域の少なくとも一部を囲み、且つ、前記タッチ領域を除外した算出領域における静電容量値の合計値を算出する、
請求項5に記載の位置検出方法。
【請求項7】
前記算出ステップにおいて、前記算出領域における静電容量値のうち正の値の静電容量値の合計値を算出する、
請求項6に記載の位置検出方法。
【請求項8】
前記算出ステップにおいて、前記タッチ領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記算出領域における静電容量値の合計値を算出し、
前記出力ステップにおいて、前記タッチ領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記合計値に基づき、前記指示位置を出力する、
請求項5又は6に記載の位置検出方法。
【請求項9】
電子ペンと、複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面に対する前記電子ペン及びパッシブポインタの各指示位置を検出する位置検出回路と、を備える位置検出システムであって、
前記位置検出回路は、
前記タッチ面に対する前記パッシブポインタのタッチを検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記タッチの領域を示すタッチ領域の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記静電容量値の合計値に基づき、前記検出部により検出された前記タッチの前記指示位置を出力する出力部と、
を有し、
前記出力部は、前記合計値が閾値以下である場合に、前記指示位置を出力し、前記合計値が閾値を超える場合に、前記指示位置を出力しない又は前記指示位置を無効化して出力する、
位置検出システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出回路、位置検出方法、及び位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチセンサ上のタッチ面に対するユーザのタッチを検出する技術が知られている。例えば、下記特許文献1には、タッチパネルを備える情報処理装置において、タッチパネルに対して検出されたタッチの領域を示すタッチ領域が所定の面積以上である場合には、当該タッチの入力を無効とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-002891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばユーザの手がゆっくりとタッチパネルに接触する場合には、接触し始めはタッチ領域が小さく、接触が安定するにつれて徐々にタッチ領域が大きくなる。このような場合に、上記特許文献1に開示された技術では、タッチパネルへの接触し始めにおいて、タッチ領域が所定面積よりも小さい場合にはタッチの入力が無効とされない。その結果、ユーザが意図しないタッチの入力が有効とされ、ユーザが意図しない操作結果となってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ユーザが意図しない操作結果となることを抑制することができる位置検出回路、位置検出方法、及び位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る位置検出回路は、複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面に対するパッシブポインタの指示位置を検出する位置検出回路であって、前記タッチ面に対する前記パッシブポインタのタッチを検出する検出部と、前記検出部により検出された前記タッチの領域を示すタッチ領域の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記静電容量値の合計値に基づき、前記検出部により検出された前記タッチの前記指示位置を出力する出力部と、を備え、前記出力部は、前記合計値が閾値以下である場合に、前記指示位置を出力し、前記合計値が閾値を超える場合に、前記指示位置を出力しない又は前記指示位置を無効化して出力する。
【0007】
本発明の第二態様に係る位置検出回路では、前記算出部は、前記タッチ領域の少なくとも一部を囲み、且つ、前記タッチ領域を除外した算出領域における静電容量値の合計値を算出する。
【0008】
本発明の第三態様に係る位置検出回路では、前記算出部は、前記算出領域における静電容量値のうち正の値の静電容量値の合計値を算出する。
【0009】
本発明の第四態様に係る位置検出回路では、前記算出部は、前記タッチ領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記算出領域における静電容量値の合計値を算出し、前記出力部は、前記タッチ領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記合計値に基づき、前記指示位置を出力する。
【0010】
本発明の第五態様に係る位置検出方法は、複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサに接続された位置検出回路によって実行され、前記タッチセンサを用いて、前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面に対するパッシブポインタの指示位置を検出する位置検出方法であって、前記タッチ面に対する前記パッシブポインタのタッチを検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出された前記タッチの領域を示すタッチ領域の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値を算出する算出ステップと、前記算出ステップにおいて算出された前記静電容量値の合計値に基づき、前記検出ステップにおいて検出された前記タッチの前記指示位置を出力する出力ステップと、を含み、前記出力ステップにおいて、前記合計値が閾値以下である場合に、前記指示位置を出力し、前記合計値が閾値を超える場合に、前記指示位置を出力しない又は前記指示位置を無効化して出力する。
【0011】
本発明の第六態様に係る位置検出方法では、前記算出ステップにおいて、前記タッチ領域の少なくとも一部を囲み、且つ、前記タッチ領域を除外した算出領域における静電容量値の合計値を算出する。
【0012】
本発明の第七態様に係る位置検出方法では、前記算出ステップにおいて、前記算出領域における静電容量値のうち正の値の静電容量値の合計値を算出する。
【0013】
本発明の第八態様に係る位置検出方法では、前記算出ステップにおいて、前記タッチ領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記算出領域における静電容量値の合計値を算出し、前記出力ステップにおいて、前記タッチ領域の大きさが所定範囲内である場合に、前記合計値に基づき、前記指示位置を出力する。
【0014】
本発明の第九態様に係る位置検出システムは、電子ペンと、複数のセンサ電極が面状に配置されてなる静電容量方式のタッチセンサを用いて、前記タッチセンサ上に配置されたタッチ面に対する前記電子ペン及びパッシブポインタの各指示位置を検出する位置検出回路と、を備える位置検出システムであって、前記位置検出回路は、前記タッチ面に対する前記パッシブポインタのタッチを検出する検出部と、前記検出部により検出された前記タッチの領域を示すタッチ領域の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記静電容量値の合計値に基づき、前記検出部により検出された前記タッチの前記指示位置を出力する出力部と、を有し、前記出力部は、前記合計値が閾値以下である場合に、前記指示位置を出力し、前記合計値が閾値を超える場合に、前記指示位置を出力しない又は前記指示位置を無効化して出力する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ユーザが意図しない操作結果となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る位置検出システムの全体構成及び使用状態の一例を示す図である。
図2図1の電子機器の概略構成を示す図である。
図3図2のタッチICが有する機能構成を示す機能ブロック図である。
図4】タッチ領域の大きさの時間変化について説明するための図である
図5】検出部により検出される信号分布の一例を示す図である。
図6】タッチ領域の周辺領域における正の静電容量値を加算した合計値の分布の一例を示す図である。
図7】静電容量値の合計値の算出方法を説明するための図である。
図8】位置検出システムにおいて指のタッチを検出する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】算出部による静電容量値の合計値の具体的な算出例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」と称する。)に係る位置検出システムについて説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一要素又は同一機能を有する要素には可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る位置検出システム1の全体構成及び使用状態の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1は、電子ペン2と、電子機器3と、を備える。
【0019】
電子ペン2は、アクティブ静電方式によって動作する電子ペンであり、「スタイラス」ともいう。電子ペン2は、電子機器3と相互に信号を送受信可能に構成される。以下、電子機器3から電子ペン2に向けて送信される信号をアップリンク信号と称し、電子ペン2から電子機器3に向けて送信される信号(ペン信号)をダウンリンク信号と称する。
【0020】
電子ペン2の先端部分にはペン電極が設けられており、電子ペン2は、このペン電極と、電子機器3のタッチ面3aに重ねて設けられるタッチセンサ18(図2参照)との間に形成されたキャパシタンスを介して、アップリンク信号の受信及びダウンリンク信号の送信を行う。なお、アップリンク信号受信用のペン電極とダウンリンク信号送信用のペン電極とは、異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0021】
また、電子ペン2は、筆圧検出部、サイドスイッチ状態検出部、記憶部、電源部、制御部等の各機能部を有する。筆圧検出部は、例えば可変容量コンデンサを有する筆圧検出ユニットとして構成され、電子ペン2のペン先に印加された圧力を筆圧として検出する。サイドスイッチ状態検出部は、例えば電子ペン2の側面に設けられたスイッチ操作部及びサイドスイッチとして構成される。サイドスイッチ状態検出部は、スイッチ操作部に対するユーザの操作の有無に応じて、サイドスイッチのオンオフ状態を検出する。記憶部は、例えば半導体メモリ等を含む不揮発性のメモリとして構成される。記憶部は、電子ペン2における処理の実行に必要な各種のプログラムや、予め割り当てられた固有ID等を記憶する。電源部は、例えば蓄電池を備えた二次電池であるバッテリー等として構成され、電子ペン2の動作電源を供給する。制御部は、例えば制御回路として構成され、電子ペン2の各部を制御する。
【0022】
電子機器3は、例えばタッチパネルディスプレイにより構成されたタッチ面3aを有するタブレット端末である。電子機器3は、電子ペン2のタッチ面3aに対する指示位置と、パッシブポインタとしてのユーザの指4のタッチ面3aに対する指示位置と、を検出可能に構成される。以下、タッチ面3aに対する電子ペン2の指示位置を「ペン位置」と称し、タッチ面3aに対するユーザの指4の指示位置を「タッチ位置」と称する。なお、パッシブポインタは、信号を送受信可能な電子ペン2に対して、信号を送信しないポインタであって、指4に限らず、定規やパッシブペン等の補助デバイスであってもよい。また、電子機器3は、タブレット端末に限らず、例えば、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等として構成されていてもよい。
【0023】
ユーザは、電子ペン2を片手で把持し、電子機器3のタッチ面3aにペン先を押し当てながら移動させることで、電子機器3に絵や文字を書き込むことができる。また、ユーザは、自身の指4をタッチ面3aに接触させて移動させることで、電子機器3に絵や文字を書き込む入力操作やピンチアウト操作を含む所望の操作を行うことができる。
【0024】
図2は、図1の電子機器3の概略構成を示す図である。図2に示すように、電子機器3は、タッチセンサ18と、位置検出回路であるタッチIC(Integrated Circuit)20と、ホストプロセッサ22と、を含む。なお、図2では、タッチセンサ18上に配置されたタッチ面3aの図示を省略している。
【0025】
タッチセンサ18は、タッチ面3aの内側において面状に配置された複数のセンサ電極18x,18yを有する静電容量方式のタッチセンサである。センサ電極18xは、X軸上の位置を検出し、センサ電極18yは、Y軸上の位置を検出する。本図に示すx方向,y方向は、タッチ面3a上において定義される直交座標系のX軸,Y軸に相当する。
【0026】
帯状のセンサ電極18xは、y方向に延びて設けられるとともに、x方向に沿って等間隔に配置されている。帯状のセンサ電極18yは、x方向に延びて設けられるとともに、y方向に沿って等間隔に配置されている。なお、タッチセンサ18は、上記した相互容量方式のセンサに代えて、ブロック状の電極を二次元格子状に配置した自己容量方式のセンサであってもよい。
【0027】
タッチIC20は、タッチセンサ18を構成する複数のセンサ電極18x,18yのそれぞれに接続されている。タッチIC20は、内部にメモリ(ROM及びRAM)を有しており、このメモリに格納されたファームウェア24を実行可能に構成された集積回路である。図3を参照して後述するタッチIC20の機能構成は、ファームウェア24を実行し、タッチIC20の各部を動作させることで実現される。
【0028】
ファームウェア24は、各々のセンサ電極18x,18yから順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行する。これにより、ファームウェア24は、指4のタッチ位置を検出するタッチ検出機能と、電子ペン2のペン位置を検出するペン検出機能と、を実現可能に構成される。換言すると、タッチIC20は、タッチ検出機能を果たすタッチ検出部26と、ペン検出機能を果たすペン検出部28と、を有する。タッチIC20は、タッチ検出部26又はペン検出部28によって取得されたデータを、ホストプロセッサ22に出力する。
【0029】
ホストプロセッサ22は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)からなるプロセッサである。ホストプロセッサ22は、図示しないメモリからプログラムを読み出し実行することで、例えば、タッチIC20からのデータを用いてストロークデータ生成し、レンダリングしてディスプレイに描画内容として表示させる処理等を行う。
【0030】
<タッチIC20の機能構成>
図3は、図2のタッチIC20が有する機能構成を示す機能ブロック図である。
【0031】
<タッチ検出部26>
図3に示すように、タッチIC20のタッチ検出部26は、検出部30と、判定部32と、算出部34と、出力部36と、を有する。
【0032】
検出部30は、指4の先端とタッチセンサ18内のセンサ電極18x,18yとの間に生ずる容量結合を検出することによって、タッチ面3aに対する指4のタッチを検出する。具体的には、検出部30は、各センサ電極18yに対してタッチ検出用信号を送信し、各センサ電極18xにおいてタッチ検出用信号を受信する。検出部30は、当該タッチ検出用信号の受信結果に基づいて、タッチセンサ18の2次元位置毎の検出レベルを示すヒートマップを作成する。
【0033】
タッチセンサ18の2次元位置は、各センサ電極18xと各センサ電極18yとの交点である。以下、当該交点を「クロスポイント」と称する。このクロスポイント毎の検出レベルは、クロスポイントにおける静電容量値(信号値)のタッチ不検出時を基準とした変化量、すなわちタッチ不検出時の静電容量値を引いた静電容量値(オフセット値)に相当する。以下、検出部30により検出される静電容量値は、オフセット値であるとして説明する。
【0034】
検出部30は、ヒートマップにおける検出レベルが閾値以上、すなわちクロスポイントにおける静電容量値が閾値以上である領域を検出した場合に、指4のタッチを検出する。以下、検出部30によってタッチ面3aに対する指4のタッチが検出された領域(静電容量値が閾値以上である領域)を、「タッチ領域」と称する。そして、検出部30は、タッチ領域に基づき、例えばタッチ領域の中心位置又は静電容量値が最大である位置をタッチ位置として検出し、その位置情報としてタッチ位置の座標を計算する。また、検出部30は、クロスポイントにおける静電容量値に基づきタッチ領域の重心位置を算出し、算出した重心位置をタッチ位置として検出してもよい。なお、検出部30は、ヒートマップにおける検出レベルが閾値以上である領域が互いに所定間隔離れて複数個存在する場合には、それぞれの領域をタッチ領域として検出し、各タッチ領域に基づきタッチ位置を複数検出してもよい。検出部30は、検出結果を示す情報(生成したヒートマップや計算したタッチ位置の座標等)を、判定部32に出力する。
【0035】
判定部32は、検出部30により作成されたヒートマップに基づき、タッチ領域の大きさについての判定処理を行う。
【0036】
図4は、タッチ領域100の大きさの時間変化について説明するための図である。図4では、例えば、例えば100[mm/sec]程度の速度でユーザの手がタッチ面3aにゆっくり近づいた場合に徐々にタッチ領域100の面積が大きくなっていくことを示す。タッチ領域50A,50Bは、ユーザの手がタッチ面3aに接近し始めた初期段階のタッチ領域100を示す。このタッチ領域50A,50Bの面積は小さく、検出されたタッチが指4によるタッチであることを判定するための基準範囲(所定範囲)内となっている。判定部32は、タッチ領域100の大きさが基準範囲内である場合に、検出されたタッチが指4によるタッチであると仮判定する。
【0037】
これに対し、タッチ領域50Cは、タッチ面3aに対するユーザの手の接触が安定した段階におけるタッチ領域100を示す。このタッチ領域50Cの面積は、基準範囲よりも大きくなっている。判定部32は、タッチ領域100の大きさが基準範囲内でない場合(基準範囲より大きい場合)に、検出されたタッチが、指4よりも大きい手の平又は拳等のパームによるタッチであると判定する。
【0038】
また、判定部32は、タッチ領域100の面積に加えて又は代えて、タッチ領域100をなすクロスポイントの個数を用いて、タッチ領域100の大きさの判定を行ってもよい。例えば、判定部32は、タッチ領域100をなすクロスポイントの個数が基準範囲内である場合には、検出されたタッチが指4によるタッチであると仮判定し、タッチ領域100をなすクロスポイントの個数が基準範囲よりも多い場合には、検出されたタッチがパームによるタッチであると判定する。判定部32は、タッチ領域100の大きさの判定結果を、検出部30から出力された検出結果を示す情報とともに、算出部34や出力部36に出力する。
【0039】
ところで、図4に示すようにユーザの手がゆっくりとタッチ面3aに接触する場合には、接触し始めはタッチ領域100が小さい。このため、タッチ領域100の大きさに基づく判定では、実際には指4によるタッチでない場合であっても指4によるタッチであると誤判定されてしまうという問題があった。本発明者等は、このような問題に対して鋭意研究した結果、パームによるタッチと指4によるタッチとで、検出部30により検出される静電容量値の信号分布の傾向が異なるという知見を得た。この知見について、図5を参照して説明する。
【0040】
図5は、検出部30により検出される信号分布の一例を示す図である。図5の横軸は、X軸上の検出位置(単位:mm)を示し、図5の縦軸は、検出部30により検出された静電容量値(単位:無し)を示す。図5の(a)は、パームによるタッチの場合の信号分布を示し、図5の(b)は、指4によるタッチの場合の信号分布を示す。図5の(a)及び(b)に示される信号分布のピーク部Pは、検出部30により検出された静電容量値が閾値A以上の領域すなわちタッチ領域100に対応する部分である。また、周辺部Gは、ピーク部Pの周辺であって静電容量値が正である部分を示す。
【0041】
図5の(a)及び(b)に示すように、パームによるタッチの場合と指4によるタッチの場合とで、信号分布の形状が異なる特徴を有しており、ピーク部P及び周辺部GとX軸との間の領域(斜線で示す領域)の面積の大きさが異なっている。具体的には、図5の(a)に示すパームによるタッチの場合には、図5の(b)に示す指4によるタッチの場合に比して、ピーク部P及び周辺部GとX軸との間の領域(斜線で示す領域)の面積が大きくなっている。この面積は、ピーク部P及び周辺部Gにおける静電容量値を加算した合計値に相当する。
【0042】
これに基づき、本発明者等は、検出部30により検出される静電容量値を所定方法で加算した合計値が、パームと指4とで異なるという知見を得た。所定方法としては、例えば、タッチ領域100の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値を加算することである。「囲む」とは、タッチ領域100の境界線の一部又は全部を囲むことを示す。当該算出領域は、タッチ領域100を除外したタッチ領域100の周辺領域(囲み領域)であってもよく、当該周辺領域に加えてタッチ領域100の少なくとも一部を含んだ領域であってもよい。また、本発明者等は、上記合計値の分布の傾向の違いは、算出領域をタッチ領域100の周辺領域とした場合により明確なものとなり、更に当該周辺領域において負の値を除外した正の値の静電容量値を加算した場合により一層明確なものとなるという知見を得た。この知見について、図6を参照して説明する。
【0043】
図6は、タッチ領域100の周辺領域における正の静電容量値を加算した合計値の分布の一例を示す図である。図6の横軸は、経過したスキャン時間(単位:sec)を示し、図6の縦軸は、タッチ領域100の周辺領域における正の静電容量値を加算した合計値(単位:なし)を示す。以下、当該合計値を、単に「静電容量値の合計値」ともいう。
【0044】
グラフ60a~60eは、パームによるタッチの場合の分布を示す。グラフ60a~60eは、それぞれ、2[mm/s]、4[mm/s]、6[mm/s]、8[mm/s]、10[mm/s]の速度でタッチ面3aにパームを接近させた場合の分布を示す。また、グラフ70a,70bは、指4によるタッチの場合の分布を示す。グラフ70aは、実際の指4でタッチ面3aにタッチした場合の分布を示し、グラフ70bは、指4を模した指治具でタッチ面3aにタッチした場合の分布を示す。
【0045】
図6に示すように、グラフ60a~60eは、所定の閾値THよりも上側に位置する。すなわち、パームによるタッチの場合には、静電容量値の合計値が、閾値THよりも大きくなっている。これに対し、グラフ70a,70bは、閾値THよりも下側に位置する。すなわち、指4によるタッチの場合には、静電容量値の合計値が、閾値THよりも小さくなっている。このように、パームによるタッチであるか指4によるタッチであるかによって、静電容量値の合計値の分布の傾向が異なることが示されている。
【0046】
上記の知見に基づき、判定部32は、タッチ領域100の大きさが基準範囲内である場合に、タッチ領域100の大きさではなく電気的指標である静電容量値に基づき、パームによるタッチであるか指4によるタッチであるかを判定する。具体的には、判定部32は、静電容量値の合計値として算出部34により算出された結果に基づき当該判定を行う。判定部32は、算出部34により算出された静電容量値の合計値が閾値TH以下である場合には、指4によるタッチであると判定する。これに対し、判定部32は、当該合計値が閾値THを超える場合には、パームによるタッチであると判定する。閾値THは、例えば電子機器3の性能等に基づき適宜設定される。判定部32は、この静電容量値の合計値に基づくタッチの判定結果を、出力部36に出力する。
【0047】
算出部34は、タッチ領域100の少なくとも一部を囲み、且つ、タッチ領域100を除外した算出領域(すなわち、タッチ領域100の周辺領域)における静電容量値の合計値を算出する。算出部34は、例えば、タッチ領域100の大きさが基準範囲内であると判定部32により判定された場合に、当該合計値を算出する。
【0048】
図7は、静電容量値の合計値の算出方法を説明するための図である。図7では、タッチ領域100を囲む所定領域におけるクロスポイントを、縦9×横9の81個のマス(四角)で示している。また、クロスポイントにおける静電容量値を、マス内に格納された「f」、「p」、又は「n」で示している。「f」は、クロスポイントにおける静電容量値が、検出部30により指4のタッチを検出するための閾値A以上であることを示している。すなわち、「f」が格納された縦3×横3の9個のマスで示される領域によってタッチ領域100が示されている。「p」は、クロスポイントにおける静電容量値が、検出部30により指4のタッチを検出するための閾値A未満であり且つ正の値であることを示している。「n」は、クロスポイントにおける静電容量値が、負の値であることを示している。
【0049】
まず、算出部34は、例えば図7に示すように、タッチ領域100の境界線の全部を囲む拡張領域102を設定する。拡張領域102は、タッチ領域100を所定のクロスポイント分拡張した領域であって、図7に示す例では、タッチ領域100から四方向に3ポイントずつ拡張した領域とされている。なお、拡張領域102をタッチ領域100に対してどの程度拡張した領域として設定するかは、例えば電子機器3の性能等に基づき適宜設定される。
【0050】
次に、算出部34は、拡張領域102のうちタッチ領域100を除外した輪状の周辺領域104を算出領域として設定する。周辺領域104は、拡張領域102の境界線とタッチ領域100の境界線とで区画される領域である。周辺領域104の外側境界線が拡張領域102の境界線に相当し、周辺領域104の内側境界線がタッチ領域100の境界線に相当する。算出部34は、周辺領域104における正の静電容量値の合計値を算出する。すなわち、算出部34は、周辺領域104のうち、負の静電容量値を除外した正の静電容量値の領域(図7におけるハッチングが付された領域)における静電容量値の合計値を算出する。算出部34は、算出した結果を、判定部32に出力する。
【0051】
出力部36は、判定部32によるタッチ領域100の大きさの判定結果に基づき、検出部30による検出されたタッチのタッチ位置を、ホストプロセッサ22へ出力する。タッチ位置を出力するとは、タッチ位置の情報を出力することであって、例えば検出部30により計算されたタッチ位置の座標を出力することを示す。なお、タッチ位置の情報としては、座標等の位置情報に限らず、例えばタッチ位置に加わる圧力等の情報を含んでもよい。
【0052】
出力部36は、タッチ領域100の大きさが基準範囲内ではなくパームによるタッチであると判定された場合には、タッチ位置をホストプロセッサ22に出力しない、又は、当該タッチ位置を無効化して出力する。無効化して出力するとは、タッチ位置に基づきホストプロセッサ22において描画等されないよう無効化してホストプロセッサ22へ出力することを示す。無効化して出力する方法の具体例としては、タッチ位置とともに、無効を示すフラグをホストプロセッサ22へ出力すること等が挙げられる。このように、タッチ領域100の大きさに基づきパームによるタッチであると判定された場合には、タッチ位置の出力がされない又は無効化されることにより、タッチ位置に基づく描画等の処理がホストプロセッサ22で実行されないようになっている。
【0053】
また、出力部36は、タッチ領域100の大きさが基準範囲内である場合には、算出部34により算出された静電容量値の合計値に基づき、検出部30により検出されたタッチ位置をホストプロセッサ22へ出力する。
【0054】
具体的には、出力部36は、当該合計値が閾値TH以下である場合、すなわち判定部32によって当該合計値が閾値TH以下であるため指4によるタッチと判定された場合には、タッチ位置をホストプロセッサ22へ出力する。これに対し、出力部36は、当該合計値が閾値THを超える場合、すなわち判定部32によって当該合計値が閾値THを超えるためパームによるタッチと判定された場合には、タッチ位置を出力しない、又は、タッチ位置を無効化して出力する。このように、タッチ領域100の大きさに基づき指4によるタッチと仮判定された場合であっても、静電容量値の合計値に基づきパームによるタッチであると判定された場合には、タッチ位置の出力がされない又は無効化されることにより、タッチ位置に基づく描画等の処理がホストプロセッサ22で実行されないようになっている。
【0055】
<ペン検出部28>
図3に戻り、タッチIC20のペン検出部28は、検出部38と、判定部40と、出力部42と、を有する。
【0056】
検出部38は、電子ペン2に対してアップリンク信号を送信し、そのアップリンク信号を受信した電子ペン2が送信したダウンリンク信号を受信することによって、電子ペン2を検出する。アップリンク信号は、電子ペン2を電子機器3に同期させるとともに、電子ペン2に対して送信すべきデータの内容を指示するコマンドを送信するための信号である。ダウンリンク信号は、無変調のバースト信号と、電子ペン2内で取得される各種データにより変調されたデータ信号とをこの順で含む。電子ペン2内で取得される各種データは、上記した電子ペン2の各機能部によって取得されるデータである。この各種データには、例えば、筆圧検出部によって検出された筆圧を示すデータ(筆圧値)、サイドスイッチ状態検出部によって取得されたサイドスイッチのオンオフ状態を示すデータ(スイッチデータ)、記憶部内に記憶される固有のペンID等が含まれ得る。
【0057】
具体的には、検出部38は、アップリンク信号を生成して各センサ電極18x,18yに対して入力することにより、電子ペン2に対してアップリンク信号を送信する処理を行う。次に、検出部38は、電子ペン2がアップリンク信号を受信したことに応じて送信したダウンリンク信号を、電子ペン2から受信する。検出部38は、グローバルスキャン又はセクタスキャンの結果として、ダウンリンク信号を検出する。グローバルスキャンとは、タッチセンサ18を構成する全センサ電極18x,18yをスキャンすることを示す。セクタスキャンとは、タッチセンサ18を構成する複数のセンサ電極18x,18yのうち直前のペン位置の近傍に位置する所定数のセンサ電極18x,18yのみをスキャンすることを示す。
【0058】
検出部38は、ダウンリンク信号が検出されない場合には、ペン不検出を示すペンデータを出力部42に出力する。検出部38は、ダウンリンク信号が検出された場合には、ダウンリンク信号に基づき、ペン位置の座標を計算する。そして、検出部38は、計算したペン座標を示す情報を、出力部42に出力する。また、検出部38は、ダウンリンク信号に基づき、電子ペン2のペン状態を検出する。例えば、検出部38は、ダウンリンク信号に含まれるデータ信号を復調することによって、電子ペン2の筆圧を検出する。なお、検出部38は、ペン状態として、電子ペン2の速度、加速度、ペン傾き等を検出してもよい。検出部38は、検出したペン状態を示す情報を、判定部40や出力部42に出力する。
【0059】
判定部40は、電子ペン2から送信された各種データに基づき、電子ペン2の操作状態を判定する。操作状態としては、例えば、ペンダウン、ペンムーブ、ペンアップ、ホバーが挙げられる。ペンダウンは、電子ペン2のペン先をタッチ面3aに置いたこと、すなわち電子ペン2がタッチ面3aに接触したことを示す。ペンムーブは、タッチ面3aに接触した電子ペン2が引き続きタッチ面3aに接触していることを示す。ペンアップは、タッチ面3aに接触している電子ペン2がタッチ面3aから離れたことを示す。ホバーは、電子ペン2がタッチ面3aから電子ペン2が離れていることを示す。判定部40は、電子ペン2の筆圧値が閾値以上であるか否かに基づき、電子ペン2の操作状態を判定する。当該操作状態は、ホストプロセッサ22において、ストロークの始まりと終わりとを認識するために使用される。
【0060】
判定部40は、筆圧値が例えば0より大きい値から0に変化した場合には、ペンアップと判定する。また、判定部40は、筆圧値が0に変化した場合だけでなく、例えば0に近い閾値以下の値に変化した場合に、ペンアップと判定してもよい。このように筆圧値が0に近い閾値以下の値に変化した場合には、電子ペン2がタッチ面3aから離れそうな状態であり、電子ペン2がタッチ面3aから完全に離れていない場合であっても、電子ペン2がタッチ面3aから離れた場合とみなしてもよい。また、判定部40は、筆圧値が0から0より大きい値に変化した場合には、ペンダウンと判定する。また、判定部40は、筆圧値が0より大きい値を維持し続けている場合には、ペンムーブと判定する。また、判定部40は、筆圧値が0を検出し続けている場合には、ホバーと判定する。判定部40は、電子ペン2の操作状態の判定結果を、出力部42に出力する。
【0061】
出力部42は、検出部38によりペン信号が検出されなかった場合、ペン不検出を示すペンデータをホストプロセッサ22に対して送信する。また、出力部42は、検出部38によりペン信号が検出された場合、検出部38により導出されたペン座標を示す情報をホストプロセッサ22に対して送信する。また、出力部42は、電子ペン2のペン状態を示す情報や、電子ペン2の操作状態を示す情報等を、ホストプロセッサ22に対して送信する。
【0062】
<位置検出システム1の動作>
次に、図8を参照して、位置検出システム1において指4のタッチを検出する処理の流れを説明する。図8は、位置検出システム1において指4のタッチを検出する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0063】
(ステップS20)
まず、タッチIC20のファームウェア24は、スキャン処理を実行する。この際、例えば、ファームウェア24は、タッチ検出部26の検出部30による指4のタッチの検出と、ペン検出部28の検出部38による電子ペン2の検出とが、時分割で交互に実行されるように動作を制御する。なお、指4のタッチの検出の実行頻度と電子ペン2の検出の実行頻度とは、所定の比率となるように予め設定されている。続いて、処理は、ステップS22の処理に移行する。
【0064】
(ステップS22)
検出部30は、指4のタッチを検出したか否か、すなわちクロスポイントにおける静電容量値が閾値A以上であるタッチ領域100を検出したか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合には、処理はステップS24の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には、処理はステップS20の処理に戻る。
【0065】
(ステップS24)
判定部32は、ステップS22の処理で検出されたタッチ領域100が、基準範囲内か否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合には、処理はステップS26の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には、処理はステップS32の処理に移行する。
【0066】
(ステップS26)
算出部34は、ステップS24の処理で肯定判定されたタッチ領域100の周辺領域104における正の静電容量値の合計値を算出する。
【0067】
図9は、算出部34による静電容量値の合計値の具体的な算出例について説明するための図である。図9では、タッチ領域100周辺の静電容量値の具体的な数値例が示されている。算出部34は、周辺領域104における正の静電容量値、すなわち、図9の(a)及び(b)に示すハッチングが付された領域の静電容量値を加算する。その結果、図9の(a)に示す場合には、静電容量値の合計値が2734と算出される。これに対し、図9の(b)に示す場合には、静電容量値の合計値が276と算出される。続いて、処理は、ステップS28の処理に移行する。
【0068】
(ステップS28)
判定部32は、ステップS26の処理で算出された合計値に基づき、当該合計値が閾値TH以下であるか否かを判定する。閾値THは、例えば1000に設定されている。図9の(a)に示す場合には、静電容量値の合計値が2734であって閾値THの1000を超えていることから、当該判定が否定判定され、パームによるタッチと判定される。そして、処理は、ステップS32の処理に移行する。これに対し、図9の(b)に示す場合には、静電容量値の合計値が276であって閾値THの1000以下であることから、当該判定が肯定判定され、指4によるタッチと判定される。そして、処理は、ステップS30の処理に移行する。図9の(a)及び(b)に示すように、基準範囲内のタッチ領域100が同じ大きさである場合、従来の面積に基づく判定では何れも指4と判定されてしまう。これに対して、ステップS28の処理においては、静電容量値の合計値に基づく判定によって、パームによるタッチか指4によるタッチかを適切に判定することができる。
【0069】
(ステップS30)
出力部36は、ステップS22の処理で検出されたタッチの指示位置を示すタッチ位置を、ホストプロセッサ22へ出力する。
【0070】
(ステップS32)
出力部36は、ステップS22の処理で検出されたタッチの指示位置を示すタッチ位置を、ホストプロセッサ22へ出力しない、又は、当該タッチ位置をホストプロセッサ22へ無効化出力する。
【0071】
以上によって、図8に示す一連の処理が終了する。
【0072】
<作用効果>
以上、本実施形態に係る位置検出システム1が備えるタッチIC20は、タッチセンサ18を用いて、タッチセンサ18上に配置されたタッチ面3aに対する指4の指示位置であるタッチ位置を検出するタッチIC20であって、タッチ面3aに対する指4のタッチを検出する検出部30と、タッチ領域100の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値を算出する算出部34と、算出部34により算出された静電容量値の合計値に基づき、タッチ位置を出力する出力部36と、を有し、出力部36は、算出部34により算出された合計値が閾値TH以下である場合に、タッチ位置を出力し、当該合計値が閾値THを超える場合に、タッチ位置を出力しない又はタッチ位置を無効化して出力する。
【0073】
また、本実施形態に係る位置検出方法は、タッチIC20によって実行され、タッチ面3aに対する指4のタッチを検出する検出ステップ(ステップS22)と、タッチ領域100の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値を算出する算出ステップ(ステップS26)と、算出ステップにおいて算出された静電容量値の合計値に基づき、タッチ位置を出力する出力ステップ(ステップS30,S32)と、を含み、出力ステップでは、算出ステップにおいて算出された合計値が閾値TH以下である場合に、タッチ位置を出力し(ステップS30)、当該合計値が閾値THを超える場合に、タッチ位置を出力しない又はタッチ位置を無効化して出力する(ステップS32)。
【0074】
本実施形態に係る位置検出システム1、タッチIC20、及び位置検出方法によれば、タッチ領域100の少なくとも一部を囲む算出領域における静電容量値の合計値に基づき、タッチ位置を出力する。上記したように、当該算出領域における静電容量値の合計値は、パームによるタッチであるか指4によるタッチであるかによって、異なる傾向を示す。よって、タッチ領域100の大きさに基づく判定ではパームか指4かを適切に判定できないような場合であっても、当該合計値が閾値TH以下である場合には指4であるとしてタッチ位置を出力し、当該合計値が閾値THを超える場合にはパームであるとしてタッチ位置を出力しない又は無効化して出力することができる。その結果、タッチ位置に基づく描画等の処理をホストプロセッサ22で適切に実行することができ、ユーザが意図しない操作結果となることを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態において、算出部34は、タッチ領域100の少なくとも一部を囲み、且つ、タッチ領域100を除外した算出領域である周辺領域104における静電容量値の合計値を算出する。
【0076】
上記したように、パームと指4とでの静電容量値の合計値の傾向の違いは、周辺領域104においてより明確になる。よって、本実施形態によれば、このような周辺領域104における静電容量値の合計値に基づきタッチ位置を出力するため、ユーザが意図しない操作結果となることをより精度よく抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態において、算出部34は、周辺領域104における静電容量値のうち正の値の静電容量値の合計値を算出する。
【0078】
上記したように、パームと指4とでの静電容量値の合計値の傾向の違いは、周辺領域104における静電容量値のうち負の値を除外した正の値の合計値のほうが、より一層明確になる。よって、本実施形態によれば、このような正の静電容量値の合計値に基づきタッチ位置を出力するため、ユーザが意図しない操作結果となることをより一層精度よく抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態では、算出部34は、タッチ領域100の大きさが基準範囲(所定範囲)内である場合に、算出領域における静電容量値の合計値を算出し、出力部36は、タッチ領域100の大きさが基準範囲内である場合に、当該合計値に基づき、タッチ位置を出力する。
【0080】
例えばタッチ面3aに対してゆっくりと手が近づくような場合には、接触し始めはタッチ領域100が小さく、接触が安定するにつれて徐々にタッチ領域100が大きくなる。このような場合には、従来技術のようにタッチ領域100の大きさに基づく判定では、接触し始めは指4によるタッチであると誤判定されてしまい、パームによるタッチか指4によるタッチかを早期に判定することが難しい。これに対して、本実施形態によれば、静電容量値の合計値に基づくタッチ位置の出力によって、出力するかしないか(又は無効化出力するか)を早期に決定することができる。
【0081】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0082】
例えば、タッチ領域100の大きさが基準範囲内である場合に限らず、タッチ領域100の大きさが基準範囲内でない場合においても、算出部34が静電容量値の合計値を算出し、出力部36が当該合計値に基づきタッチ位置を出力してもよい。また、算出部34による静電容量値の合計値の算出方法は、上記した例に限らない。例えば、周辺領域104における正及び負の両方の静電容量値の合計値を算出してもよい。また、周辺領域104に加えてタッチ領域100の一部又は全部を含む算出領域における合計値を算出してもよく、この場合に正のみの静電容量値の合計値を算出してもよく、正及び負の両方の静電容量値の合計値を算出してもよい。これらの何れの算出方法により算出する場合であっても、出力部36が、上記同様にして、算出された静電容量値の合計値に基づきタッチ位置を出力することによって、上記同様の効果を奏する。
【0083】
また、判定部32は、タッチ領域100の大きさを判定するための基準範囲として、一つの基準範囲に限らず、複数の基準範囲を用いてもよい。例えば、指4によるタッチであることを判定するための下限値及び上限値で示される第1範囲と、パームによるタッチであることを判定するための下限値及び上限値で示される第2範囲と、を用いてもよい。また、タッチ領域100の大きさは、上記に挙げた面積やクロスポイントの数に限らず、例えばX方向やY方向での長さ等のその他の条件によって判定してもよい。
【0084】
また、図5の(a)及び(b)に示すように、パームによるタッチの場合と指4によるタッチの場合とで、信号分布におけるピーク部Pの周辺における傾斜度合いが異なっている。具体的には、図5の(a)に示すように、パームによるタッチの場合には、周辺部Gにおいて、信号分布の勾配が緩やかになっている。これに対し、図5の(b)に示すように、指4によるタッチの場合には、周辺部Gにおいて、信号分布の勾配が急になっている。これに基づき、出力部36は、算出部34により算出された静電容量値の合計値に加えて又は代えて、検出部30により検出される静電容量値の信号分布の周辺部Gの勾配に基づき、タッチ位置を出力してもよい。この場合、具体的には、周辺部Gの勾配が所定基準よりも急である場合には指4によるタッチであるとしてタッチ位置を出力し、周辺部Gの勾配が所定基準よりも緩やかである場合にはパームによるタッチであるとしてタッチ位置を出力しない又は無効化して出力する。なお、周辺部Gの勾配に基づきタッチ位置を出力する場合に比して、上記実施形態のように静電容量値の合計値を算出する場合には、より簡易な計算でありながら周辺部Gの勾配に相関する物理量を求めることができるという効果も奏する。
【0085】
また、上記実施形態では、静電容量値を検出部30により検出される信号値(単位:無し)として説明したが、静電容量値は、当該信号値に基づき実測される静電容量(単位:μF)の実測値としてもよい。すなわち、算出部34は、信号値に加えて又は代えて、当該静電容量の実測値の合計値を算出してもよく、出力部36は、信号値の合計値に加えて又は代えて、当該静電容量の実測値の合計値に基づき、タッチ位置を出力してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1:位置検出システム、2:電子ペン、3a:タッチ面、4:指(パッシブポインタ)、18x,18y:センサ電極、18:タッチセンサ、20:タッチIC(位置検出回路)、30:検出部、34:算出部、36:出力部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9