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特開2023-158955対象物投入管理装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158955
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】対象物投入管理装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02D 15/10 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
E02D15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069040
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
【テーマコード(参考)】
2D045
【Fターム(参考)】
2D045CA36
(57)【要約】
【課題】石材等の対象物の投入位置をより精度よく特定する。
【解決手段】搬出量算出部111は、バケットで搬出された対象物の量を算出する。バケット位置特定部112は、対象物を搬出した状態で移動しているバケットの時系列位置を特定する。投入量特定部113は、特定されたバケットの各時系列位置において当該バケットから水中に投入された対象物の投入量を特定する。水底位置算出部114は、特定されたバケットの各時系列位置における対象物の投入量に基づいて、水底における対象物の位置である水底位置を算出する。表示部115は、算出された対象物の水底位置での分布及び堆積高を表示する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケットで搬出された対象物の量を算出する搬出量算出部と、
前記対象物を搬出した状態で移動しているバケットの時系列位置を特定するバケット位置特定部と、
特定された前記バケットの各時系列位置において当該バケットから水中に投入された前記対象物の投入量を特定する投入量特定部と、
特定された前記バケットの各時系列位置における前記対象物の投入量に基づいて、水底における前記対象物の位置である水底位置を算出する水底位置算出部と
を備える対象物投入管理装置。
【請求項2】
前記投入量特定部は、
前記バケットで搬出された対象物の量と、当該バケットの各時系列位置における当該バケットの開度とに基づいて、前記各時系列位置における前記対象物の投入量を特定する
請求項1記載の対象物投入管理装置。
【請求項3】
前記水底位置算出部は、
前記バケットの各時系列位置から算出される当該バケットの移動速度と、前記バケット及び水面間の距離と、前記水面における水底までの深度と、水中における水流の速度とを用いて、前記水底位置を算出する
請求項1記載の対象物投入管理装置。
【請求項4】
前記水底位置算出部は、前記バケットからの複数回の対象物の投入のたびに算出した前記対象物の水底位置での分布及び堆積高を算出する
請求項1記載の対象物投入管理装置。
【請求項5】
算出された前記対象物の水底位置での分布及び堆積高を表示する表示部を備える
請求項4に記載の対象物投入管理装置。
【請求項6】
前記表示部は、算出された前記対象物の水底位置での分布及び累積堆積高と、前記バケットの移動軌跡の履歴とを表示する
請求項5記載の対象物投入管理装置。
【請求項7】
前記表示部は、算出された前記対象物の水底位置の分布及び累積堆積高と、設計段階において指定された前記対象物の水底位置の範囲及び投入予定量との差分を表示する
請求項5に記載の対象物投入管理装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記対象物の水底位置の分布及び累積堆積高に基づいて、新たに前記対象物を投入するための前記バケットの移動速度、軌跡及び開度を表示する
請求項5に記載の対象物投入管理装置。
【請求項9】
バケットで搬出された対象物の量を算出するステップと、
前記対象物を搬出した状態で移動しているバケットの時系列位置を特定するステップと、
前記バケットの前記時系列位置における前記バケットの開度を特定するステップと、
特定された前記バケットの各時系列位置において当該バケットから水中に投入された前記対象物の投入量を特定するステップと、
特定された前記バケットの各時系列位置における前記対象物の投入量に基づいて、水底における前記対象物の位置である水底分布位置及び累積堆積高を算出するステップと
を備える対象物投入管理方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の対象物投入管理装置を稼働するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石材等の対象物を水中に投入するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾工事においてクレーン船から水中に石材を投入する場合に、クレーンブームの先端に設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)装置などの測位を利用して、ブームから吊り下げられたバケットから石材が投入された位置を把握する仕組みが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6386982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クレーンブームが停止した状態で石材を投入するときであれば、GNSS装置を用いて投入した位置における水底での石材の堆積量の推定は可能であるが、ブームが旋回運動しているときに石材投入を行うにあたっては、バケットが常にGNSS装置の直下の位置にあるとは限らず、バケットとGNSS装置の位置がずれる場合がある。また、バケットが開いた瞬間にそのバケットによって把持されていた石材が全て投入されるわけではなく、バケットが開いてから或る期間にわたって徐々に石材が落下していくため、いつどのくらいの量の石材がどこに投入されたかを正確に特定することは難しい。
【0005】
このような事情から従来の技術では、旋回中のバケットから石材が投入された位置と投入量を精度よく特定することは困難であった。そこで、本発明は、石材等の対象物の投入位置をより精度よく特定すると共に投入された石材等の水底における堆積量を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る対象物投入管理装置は、バケットで搬出された対象物の量を算出する搬出量算出部と、前記対象物を搬出した状態で移動しているバケットの時系列位置を特定するバケット位置特定部と、特定された前記バケットの各時系列位置において当該バケットから水中に投入された前記対象物の投入量を特定する投入量特定部と、特定された前記バケットの各時系列位置における前記対象物の投入量に基づいて、水底における前記対象物の位置である水底位置を算出する水底位置算出部とを備える。
【0007】
前記投入量特定部は、前記バケットで搬出された対象物の量と、当該バケットの各時系列位置における当該バケットの開度とに基づいて、前記各時系列位置における前記対象物の投入量を特定するようにしてもよい。
【0008】
前記水底位置算出部は、前記バケットの各時系列位置から算出される当該バケットの移動速度と、前記バケット及び水面間の距離と、前記水面における水底までの深度と、水中における水流の速度とを用いて、前記水底位置を算出するようにしてもよい。
【0009】
前記水底位置算出部は、前記バケットからの複数回の対象物の投入のたびに算出した前記対象物の水底位置での分布及び堆積高を算出するようにしてもよい。
【0010】
算出された前記対象物の水底位置での分布及び累積堆積高を表示する表示部を備えるようにしてもよい。
【0011】
前記表示部は、算出された前記対象物の水底位置での分布及び累積堆積高と、前記バケットの移動軌跡の履歴とを表示するようにしてもよい。
【0012】
前記表示部は、算出された前記対象物の水底位置の分布及び累積堆積高と、設計段階において指定された前記対象物の水底位置の範囲及び投入予定量との差分を表示するようにしてもよい。
【0013】
前記表示部は、前記対象物の水底位置の分布及び累積堆積高に基づいて、新たに前記対象物を投入するための前記バケットの移動速度、軌跡及び開度を表示するようにしてもよい。
【0014】
本発明に係る対象物投入管理方法は、バケットで搬出された対象物の量を算出するステップと、前記対象物を搬出した状態で移動しているバケットの時系列位置を特定するステップと、前記バケットの前記時系列位置における前記バケットの開度を特定するステップと、特定された前記バケットの各時系列位置において当該バケットから水中に投入された前記対象物の投入量を特定するステップと、特定された前記バケットの各時系列位置における前記対象物の投入量に基づいて、水底における前記対象物の水底分布位置及び累積堆積高を算出するステップとを備える。
【0015】
また、本発明は、上記対象物投入管理装置を稼働するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クレーン台船上からクレーンブームを旋回させながら石材等を水中に投入したときの投入対象範囲の水底における石材等の分布状態と累積堆積量が把握できるので、石材等の投入量が不足している範囲に対して設計数量に見合う石材投入を行うことが可能となり、効率的な石材投入作業及び石材投入量の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るクレーン船1の主要部を例示する平面図。
図2】本発明の一実施形態に係るクレーン船1の主要部を例示する側面図。
図3】石材投入管理システム10のハードウェア構成を示すブロック図。
図4】コンピュータ11のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
図5】コンピュータ11の機能構成の一例を示すブロック図。
図6】ブーム3の旋回時におけるブーム3及びバケット5の位置関係と、カメラ9の撮影画像とを例示する図。
図7】ブーム3及びバケット5の距離に応じたカメラ9の撮影画像を例示する図。
図8】バケットを開くときの早さ毎に、バケットの開度とバケットからの石材の投入量との関係を例示したグラフ。
図9】コンピュータ11によって表示される画像を例示する図。
図10】コンピュータ11によって表示される画像を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態の一例について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン船1の主要部を例示する平面図であり、図2は、クレーン船1の主要部を例示する側面図である。図1,2に示すように、クレーン船1は、甲板の所定の位置において矢印a方向に旋回可能に支持された旋回装置2と、旋回装置2において上下に回動可能に支持されたブーム3と、ブーム3の先端より繰り出されるワイヤ4と、ワイヤ4に吊り下げられたバケット5と、水中に投入される対象物(本実施形態では石材とする)が積載される船倉部6とを備えている。
【0019】
クレーン船1において、ブーム3の先端部より繰り出されたワイヤ4に吊り下げられたバケット5で船倉部6内の石材を掴み、そのバケット5をクレーン操作により船縁外側に移動させ、水面上の所望の範囲でバケット5を開放することにより石材を水中に投入する。このような投入作業を複数回にわたって繰り返すことにより、水底に所望の形状のマウンドが造成される。なお、図1,2において、Y軸を、クレーン船1の全長方向に平行な軸としてその正方向を船尾から船首に向かう方向とし、X軸を、船舶の全幅方向に平行な軸としてその正方向を右舷から左舷に向かう方向とし、Z軸を、X軸及びY軸に直交する軸としてその正方向を下方から上方に向かう方向とする(以下において同じ)。
【0020】
クレーン船1において、例えば操舵室の上部等の、船倉部6の全域を見渡せる位置には、LiDAR(Light Detection And Ranging)装置7が設けられている。LiDAR装置7は、船倉部6内に対し、矢印bで示す範囲のレーザ光を照射してその反射光を測定することで、船倉部6内に堆積している石材全体の形状を測定する。
【0021】
ブーム3の先端の上部には、GNSS装置8が設けられている。GNSS装置8は人工衛星から発せられるGNSS信号を用いて測位を行う。
【0022】
ブーム3の先端の下部には、カメラ9が設けられている。カメラ9は、矢印cに示す範囲、つまりブーム3の先端から吊り下げられたバケット5を含む空間を撮影する。
【0023】
図3は、クレーン船1に実装された石材投入管理システム10のハードウェア構成を示す図である。石材投入管理システム10は、本発明に係る対象物投入管理装置として機能するコンピュータ11と、LiDAR装置7と、GNSS装置8と、カメラ9とが、例えばイーサネットや光ファイバ等の通信回線によってネットワーク化されたシステムである。
【0024】
図4は、対象物投入管理装置として機能するコンピュータ11のハードウェア構成を示す図である。コンピュータ11は例えば操舵室に設置されている。コンピュータ11は、物理的には、プロセッサ1101、メモリ1102、ストレージ1103、通信装置1104、入力装置1105、出力装置1106及びこれらを接続するバスなどを含む。これらの各装置は図示せぬ電源から供給される電力によって動作する。コンピュータ11のハードウェア構成は、図4に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。また、コンピュータ11の外部に外付けするようにしてもよい。
【0025】
コンピュータ11における各機能は、プロセッサ1101、メモリ1102などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1101が演算を行い、通信装置1104による通信を制御したり、他の装置から送信されてきたデータを取得したり、メモリ1102及びストレージ1103におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0026】
プロセッサ1101は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1101は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。
【0027】
プロセッサ1101は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ1103及び通信装置1104の少なくとも一方からメモリ1102に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。
【0028】
メモリ1102は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1102は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1102は、本実施形態に係る方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0029】
ストレージ1103は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスクなどの光ディスク、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フレキシブルディスク、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ1103は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0030】
通信装置1104は、有線又は無線の少なくとも一方を介してコンピュータと他の装置間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0031】
入力装置1105は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタンなど)である。出力装置1106は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。
【0032】
図5は、コンピュータ11の機能構成の一例を示す図である。図5において、搬出量算出部111は、1回のバケット5の把持により船倉部6から搬出された石材の量を算出する。具体的には、搬出量算出部111は、LiDAR装置7によって測定した船倉部6内の石材全体の形状を、バケット5によって石材が把持される前と石材が把持された後でそれぞれ計測し、その計測結果の差分を用いて、石材全体の形状が変化した分の体積を算出する。これにより算出された体積は、1回のバケット5の把持により船倉部6から搬出された石材の量に相当する。このように搬出量算出部111は、バケット5の把持により船倉部6から石材が搬出されるたびに、搬出された石材の量を都度算出する。
【0033】
バケット位置特定部112は、石材を把持した状態で移動しているバケット5の時系列位置を特定する。石材投入時においてブーム3が旋回動作しながらバケット5が開放されることがあるため、バケット5は常にブーム3の先端の直下の位置、つまりGNSS装置8の直下の位置にあるとは限らず、バケット5とブーム3の先端の位置がずれている場合がある。そこで、バケット位置特定部112は、GNSS装置8によって測位されたブーム3先端の位置に対し、ブーム3の先端から直下に延びる直線からバケット5がずれている量を考慮して、バケット5の位置を特定する。
【0034】
バケット位置特定部112は、ブーム3の先端から直下に延びる直線に対するバケット5の位置のずれ量を次のようにして算出する。図6は、ブーム3の旋回時におけるブーム3及びバケット5の位置関係と、カメラ9の撮影画像とを例示する図である。図6(A)の左図において、ブーム3は、破線で示した静止位置から実線で示した位置へと旋回している状態である。この状態では、バケット5は、慣性の法則により、ブーム3の旋回運動に対して少し遅れて動き出すから、ブーム3の先端の直下の位置からずれている。なお、符号gは、ブーム3の先端から直下に延びた位置を示す。このとき、図6(A)の右図に示すように、カメラ9の撮影画像において、ブーム3の先端の直下の位置gとバケット5の中心位置とが一致していない。バケット位置特定部112は、ブーム3の先端の直下の位置gとバケット5の中心位置との距離を画像中のピクセル数に基づいてカウントする。
【0035】
さらに、バケット位置特定部112は、ワイヤ4の繰り出し量からブーム3の先端とバケット5の距離を算出して、カウントした上記ピクセル数に相当する絶対距離を算出する。ここで図7は、ブーム3とバケット5間の距離に応じたカメラ9の撮影画像を例示する図である。図7(A)及び(B)を比較すると分かるように、ワイヤ4の繰り出し量が少ない場合には撮影画像中のバケット5が大きく、ワイヤ4の繰り出し量が多い場合には撮影画像中のバケット5が小さい。バケット位置特定部112は、ブーム3とバケット5間の距離と、撮影画像中におけるバケット5の表示サイズ(ピクセル数)との関係を予め記憶しておき、ブーム3の先端の直下の位置gとバケット5の中心位置との間のピクセル数がどの程度の絶対距離に相当するかを算出する。そして、バケット位置特定部112は、GNSS装置8によって測位されたブーム3先端の位置(3次元位置)から、ブーム3の旋回運動の接線方向に対し上記の絶対距離(撮影画像中の上記ピクセル数に応じた距離)だけ離れ、且つ、鉛直下方に対しブーム3の先端及びバケット5の距離(ワイヤ4の繰り出し量に応じた距離)だけ離れた位置(3次元位置)を算出してオフセットすることで、GNSS装置8の絶対座標位置からバケット5の位置(絶対位置)を特定する。なお、GNSS装置8の取り付け位置とブーム3におけるワイヤ繰り出しドラムの位置間の距離もオフセットされている。
【0036】
図6(A)の状態から遷移した図6(B)では、ブーム3の旋回速度が低下することで、バケット5は慣性の法則によりブームの旋回運動に追いつき、バケット5の位置とブーム3の先端の直下の位置gが一致する。このとき、ブーム3の先端の直下の位置gとバケット5の中心位置との距離が0であるから、バケット位置特定部112は、GNSS装置8によって測位されたブーム3先端の位置から鉛直下方に対しブーム3の先端とバケット5間の距離だけ離れた位置を、バケット5の位置(絶対位置)として特定する。
【0037】
さらに、図6(B)の状態から遷移した図6(C)で、ブーム3の旋回運動が停止しても、バケット5はまだ移動し続けているので、ブーム3の先端の直下の位置gとバケット5の中心位置とが再びずれることになる。バケット位置特定部112は、上記と同様に、ブーム3の先端の直下の位置gとバケット5の中心位置との距離を画像中のピクセル数に基づいてカウントし、さらに、カウントしたピクセル数に相当する絶対距離を算出する。そして、バケット位置特定部112は、GNSS装置8によって測位されたブーム3先端の位置から、ブーム3の旋回運動の接線方向に対し上記の絶対距離だけ離れ、且つ、鉛直下方に対しブーム3の先端とバケット5間の距離を算出して、オフセット処理することでバケット5の位置(絶対位置)を特定する。
【0038】
バケット位置特定部112は、以上のような処理を或る短い時間単位で繰り返すことにより、バケット5の時系列位置を算出する。
【0039】
図5の説明に戻り、投入量特定部113は、バケット位置特定部112により特定されたバケット5の各時系列位置においてそのバケット5から水中に投入された石材の投入量を特定する。具体的には、投入量特定部113は、バケット5で搬出された石材の量と、そのバケット5の各時系列位置におけるそのバケットの開度とに基づいて、各時系列位置における石材の投入量を特定する。このとき、投入量特定部113は、カメラ9の撮影画像に対して画像認識を行うことでバケット5の開度を特定する。バケット5が閉じている場合と開いている場合とでは、そのバケット5を上方から見たときのバケットの平面状の大きさ乃至形状が異なる。例えばオレンジバケットの場合、そのオレンジバケットを上方から見たとき、閉じている場合よりも開いている場合のほうが、バケット全体が平面状で大きく見える。また、クラムシェルの場合、そのクラムシェルを上方から見たとき、閉じている場合よりも開いている場合のほうが、バケット全体が平面状で大きく見えるとともに、バケット全体の形状も変化する。投入量特定部113は、バケット5の各開度と、バケット5を上方から見たときのバケットの平面状の大きさ乃至形状とを対応付けて記憶しておき、撮影画像中のバケット5の平面状の大きさ乃至形状の時系列変化からバケット5の開度を特定する。
【0040】
さらに、投入量特定部113は、バケット5を開くときの早さ毎に、バケット5の開度とバケット5からの石材の投入量との関係を記憶しており、この記憶内容に基づいて、バケット5の各時系列位置においてそのバケット5の開度及び開度速度に応じたバケット5から水中に投入された石材の投入量を特定する。図8は、バケット5を開くときの早さ毎に、バケット5の開度とバケット5からの石材の投入量との関係を例示したグラフである。例えばバケット5を早く開いた場合、グラフg11に示すように、バケット5の開度は短時間で上限に達し、且つ、グラフg12に示すように、石材の投入量はそのピーク値が高く短時間で終了するようなカーブを描くことになる。一方、バケット5を遅く開いた場合、グラフg31に示すように、バケット5の開度は時間をかけて上限に達し、且つ、グラフg32に示すように、石材の投入量はそのピーク値が低く、時間をかけて石材投入を終了するようなカーブを描くことになる。バケット5を中程度の早さで開いた場合には、グラフg21及びグラフg22に示すように、グラフg11及びグラフg12と、グラフg31及びグラフg32との中間的なカーブを描くことになる。投入量特定部113は、上記のようなバケット5の開度とバケット5からの石材の投入量との関係に対して、バケット位置特定部112により特定されたバケット5の各時系列位置におけるバケット5の開度及び開度速度、並びに、搬出量算出部111により特定された石材の搬出量を当て嵌めて、バケット5の各時系列位置における石材の投入量を特定する。
【0041】
水底位置算出部114は、投入量特定部113により特定されたバケット5の各時系列位置と各時系列位置における石材の投入量に基づいて、水底における投入された石材の位置である水底位置を算出する。前述したように、ブーム3が旋回運動しながらバケット5から石材が投入されるため、そのバケット5から空中に放出された石材は、慣性の法則により、バケット5の移動方向成分を有する方向に自由落下する。このため、水底位置算出部114は、バケット5の各時系列位置データから算出されるそのバケット5の移動速度と、バケット5と水面間の距離とに基づいて、バケット5の各時系列位置から上記移動速度で空中に放出された石材の水面上の落下位置を算出する。バケット5の移動速度及びバケット5及び水面間の距離はいずれも、バケット位置特定部112によって特定されたバケット5の時系列位置(3次元位置)から特定可能である。そして、石材が着水した後は、水による抵抗により石材の水平方向の移動速度がほぼ0と仮定し、石材の水面上の落下位置の直下に相当する水底上の位置を、その石材の水底位置とする。水底位置算出部114は、複数回の石材の投入のたびに以上のような処理を繰り返すことにより、これら石材の水底位置分布及び堆積高を算出する。
【0042】
表示部115は、水底位置算出部114により算出された石材の水底位置での分布及び堆積高又は累積堆積高を表示する。図9、10は、表示部115によって表示される画像を例示する図である。図9では、上方から見たときのクレーン船1を模した画像C1とともに、水底における石材の分布及び累積堆積高を等高線Maで表現した例を示している。図10では、水面Sに浮かぶクレーン船1を側方から見たときの様子を模した画像C2とともに、水底Bにおける石材の分布及び累積堆積高に相当する線分Mbで表現した例を示している。図10では、石材の投入のたびにその石材の分布及び累積堆積高がどのように変化したかが分かるように、線分Mbを石材の投入ごとに表示色や線形等で区分して表示している。作業者はこのような画像を参考にして水底Bにおける石材の分布及び累積堆積高を把握しながら、クレーン船1を操作して石材の投入作業を行うことができる。
【0043】
以上説明した実施形態によれば、石材の投入量及び投入位置について精度よく特定することが可能となる。
【0044】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態を以下のように変形してもよい。
【0045】
[変形例1]
水中に投入される対象物は、実施形態で例示した石材に限定されず、どのようなものであってもよい。
【0046】
[変形例2]
上記実施形態において、バケット5から投入された石材が着水した後は、水による抵抗により石材の水平方向の移動速度がほぼ0と仮定していたが、さらに、水中の水流乃至潮流と、水面における水底までの深度とを考慮してもよい。石材の投入対象海域内に潮流計等のセンサを設置しておいて、石材が水面に落下後の水中内での沈下位置の補正を行うようにしてもよい。つまり、水底位置算出部114は、バケット5の各時系列位置から算出されるそのバケット5の移動速度と、バケット5及び水面間の距離と、水面における水底までの深度と、水中における潮流(水流)の速度を用いて、投入された石材の水底位置を算出するようにしてもよい。このとき、水底位置算出部114は、着水した石材が水底に到達するまでにどの程度水流乃至潮流の影響を受けて移動するかということは所定のシミュレーションを経たアルゴリズムを用いて算出すればよい。
【0047】
[変形例3]
表示部115は、水底位置算出部114により算出された石材の水底位置での分布及び累積堆積高に加えて、バケット位置特定部112により特定されたバケット5の時系列の位置の履歴(つまりバケット5の移動軌跡の履歴)を表示するようにしてもよい。例えば、表示部115は、図9,10に例示した画像において、バケット位置特定部112により特定されたバケット5の時系列の位置の履歴に相当する線分画像を重ねて表示するようにしてもよい。
【0048】
[変形例4]
表示部115は、水底位置算出部114により算出された石材の水底位置の分布及び累積堆積高に加えて、設計段階において指定された石材の水底位置の範囲及び投入予定量との差分を表示するようにしてもよい。この場合、コンピュータ11には、石材投入によって形成される水底の設計形状データと、その設計形状を実現するための石材の投入予定量データとが予め記憶されている。表示部115は、この設計形状データに基づいて、設計段階において指定された石材の水底位置の範囲を表示するとともに、投入予定量データに基づいて、今後必要となる石材の投入予定量を表示する。
【0049】
[変形例5]
表示部115は、石材の水底位置の分布及び累積堆積高に基づいて、新たに石材を投入するためのバケット5(つまりブーム3)の移動速度、軌跡及び開度を表示するようにしてもよい。つまり、表示部115は、現時点の石材の水底位置の分布及び累積堆積高と、上記設計形状データが示す石材の水底位置と堆積高の差分に基づいて、次の石材投入により実現すべき石材の水底位置の分布及び堆積高を推定し、推定した分布及び堆積高を達成するためのバケット5(つまりブーム3)の移動速度、軌跡及び開度を計算して表示する。推定した石材の分布及び堆積高に基づくバケット5(つまりブーム3)の移動速度、軌跡及び開度の計算は、実施形態で説明した各種算出処理の逆の考え方に従った計算により実現可能である。
【0050】
[変形例6]
LiDAR装置7の設置位置は操舵室上部に限らず、例えばブーム3の所定位置など、船倉部6の全域を見渡せる位置であればよい。また、船倉部6内の石材全体の形状を測定し得るものであれば、必ずしもLiDAR装置7に限らない。GNSS装置8やカメラ9の設置位置も実施形態の例示に限定されない。
【0051】
本発明を、バケットで搬出された対象物の量を算出するステップと、前記対象物を搬出した状態で移動しているバケットの時系列位置を特定するステップと、前記バケットの前記時系列位置における前記バケットの開度を特定するステップと、特定された前記バケットの各時系列位置において当該バケットから水中に投入された前記対象物の投入量を特定するステップと、特定された前記バケットの各時系列位置における前記対象物の投入量に基づいて、水底における前記対象物の位置である水底位置及び累積堆積高を算出するステップとを備える対象物投入管理方法として実施することも可能である。また、本発明は、実施形態で説明した対象物投入管理装置(コンピュータ11)を稼働するためのプログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1:クレーン船、2:旋回装置、3:ブーム、4:ワイヤ、5:バケット、6:船倉部、7:LiDAR装置、8:GNSS装置、9:カメラ、10:対象物投入管理システム、11:コンピュータ、1101:プロセッサ、1102:メモリ、1103:ストレージ、1104:通信装置、1105:入力装置、1106:出力装置、111:搬出量算出部、112:バケット位置特定部、113:投入量特定部、114:水底位置算出部、115:表示部 g:ブームの先端の直下の位置
図1
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図8
図9
図10