(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158957
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】刃先検査装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20231024BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G01B11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069044
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 雄一
(72)【発明者】
【氏名】吉ノ元 哲也
(72)【発明者】
【氏名】向井 優一
(72)【発明者】
【氏名】中谷 勝己
(72)【発明者】
【氏名】千葉 美一
(72)【発明者】
【氏名】千田 椋介
(72)【発明者】
【氏名】神戸 延尚
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA52
2F065BB03
2F065CC10
2F065DD03
2F065FF04
2F065HH05
2F065HH12
2F065JJ09
2F065MM04
2F065PP25
(57)【要約】
【課題】略円形の刃物の外周に沿って延びる刃先の状態を、簡単な構成でかつ精度よく検査することが可能な刃先検査装置の提供。
【解決手段】本発明の刃先検査装置1は、刃物BLの支持台2と、刃先BL1の断面プロファイルを検知する検知ユニット3と、検知ユニット3に対して刃先BL1を相対的に回転させる回転機構4と、断面プロファイルから刃先BL1の状態を判定する制御部5とを備え、制御部5は、断面プロファイルから、刃先BL1の先端から所定の距離を隔てた第1領域の断面プロファイルと、第1領域よりも刃先BL1の先端に近い第2領域の断面プロファイルとを抽出し、第1領域の断面プロファイルを直線近似することにより近似直線を取得して、近似直線を延長することにより第2領域の理想断面プロファイルを推定し、第2領域の断面プロファイルと第2領域の理想断面プロファイルとの間の差異を示す特徴量を算出するように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円形の刃物の外周に沿って延びる刃先を検査する刃先検査装置であって、
前記刃先は、前記刃先の周方向と略直交する方向に沿った断面において、前記刃先の径方向の外周面に位置して略直線状に延びることが想定される第1の辺と、前記刃先の軸方向の端面に位置して前記第1の辺と交差し、略直線状に延びることが想定される第2の辺と、前記第1の辺と前記第2の辺との交点に位置する先端とを有し、
前記刃先検査装置は、
前記刃物を支持する支持台と、
前記刃先の周方向と略直交する方向に沿った断面における前記刃先の断面プロファイルを検知する検知ユニットと、
前記刃先の断面プロファイルの位置を前記刃先の周方向に沿って変化させるために、前記検知ユニットに対して前記刃先を相対的に回転させる回転機構と、
前記刃先の断面プロファイルから前記刃先の状態を判定する制御部と、を備え、
前記検知ユニットは、
前記刃先の周方向と略直交する方向に沿って延びるスリット状の光を、前記第1の辺の想定される直線と前記第2の辺の想定される直線とがなす角度の略中心を通る直線に沿って、前記刃先に照射する投光部と、
前記刃先からの反射光を受光する受光部とを備え、
前記制御部は、
前記検知ユニットによって検知された前記断面プロファイルから、前記刃先の先端から所定の距離を隔てた第1領域の断面プロファイルと、前記第1領域よりも前記刃先の先端に近い第2領域の断面プロファイルとを抽出し、
前記第1領域の断面プロファイルを直線近似することにより近似直線を取得して、前記近似直線を延長することにより前記第2領域の理想断面プロファイルを推定し、
前記第2領域の断面プロファイルと前記第2領域の理想断面プロファイルとの間の差異を示す特徴量を算出するように構成される、
刃先検査装置。
【請求項2】
前記特徴量は、前記第2領域の断面プロファイルのうち、前記第2領域の理想断面プロファイルよりも、前記刃先の軸方向および径方向の内側に位置する部分と、前記第2領域の理想断面プロファイルとで囲まれる領域の面積である、請求項1に記載の刃先検査装置。
【請求項3】
前記特徴量は、前記第2領域の断面プロファイルと前記第2領域の理想断面プロファイルとの間の間隔である、請求項1に記載の刃先検査装置。
【請求項4】
前記特徴量は、前記第2領域の断面プロファイルの所定の位置における傾きと前記第2領域の理想断面プロファイルの傾きとの間の関係を示す値である、請求項1に記載の刃先検査装置。
【請求項5】
前記特徴量は、前記第2領域の断面プロファイルのうち、前記第2領域の理想断面プロファイルよりも、前記刃先の軸方向または径方向の外側に位置する部分と、前記第2領域の理想断面プロファイルとで囲まれる領域の面積である、請求項1に記載の刃先検査装置。
【請求項6】
前記刃物は、前記刃物を軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記支持台は、
前記刃物の軸方向が略水平方向を向くように配置された前記刃物の前記貫通孔に面する上側内周面を支持する上側支持部と、
前記刃物の軸方向が略水平方向を向くように配置された前記刃物の前記貫通孔に面する下側内周面を支持する下側支持部とを有し、
前記上側支持部は、前記上側内周面の軸方向の長さよりも長い長さを有し、
前記下側支持部は、前記下側内周面の軸方向の長さと略同じ長さを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の刃先検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板等の切断対象物を切断する略円形の刃物の外周に沿って延びる刃先を検査する際には、作業員が刃物の刃先を刃物の全周にわたって触り、触感により刃先の摩耗の度合いや刃先における欠損部位の有無を検査する手法が採用されている。しかしながら、この手法において、摩耗の度合いや欠損部位の有無を精度よく検査するには、作業員に高い練度が要求される。また、作業員の練度の差異等によって、検査結果が異なる可能性がある。
【0003】
また、刃物の刃先を自動で検査する装置としては、たとえば特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1に記載の刃先検査装置では、直線状に延びる刃先に対して光を照射す光源を、刃先の長さ方向と直交する方向に移動させることにより、刃先の状態を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の刃先検査装置では、刃先の長さ方向と直交する方向に光源を移動させる必要があるため、刃先検査装置の構成が複雑となる。しかも、特許文献1に記載の刃先検査装置は、直線状に延びる刃先に対して適用されるものであり、円周に沿って延びる刃先に対しては適用されない。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みて、略円形の刃物の外周に沿って延びる刃先の状態を、簡単な構成で、かつ精度よく検査することが可能な刃先検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の刃先検査装置は、略円形の刃物の外周に沿って延びる刃先を検査する刃先検査装置であって、前記刃先は、前記刃先の周方向と略直交する方向に沿った断面において、前記刃先の径方向の外周面に位置して略直線状に延びることが想定される第1の辺と、前記刃先の軸方向の端面に位置して前記第1の辺と交差し、略直線状に延びることが想定される第2の辺と、前記第1の辺と前記第2の辺との交点に位置する先端とを有し、前記刃先検査装置は、前記刃物を支持する支持台と、前記刃先の周方向と略直交する方向に沿った断面における前記刃先の断面プロファイルを検知する検知ユニットと、前記刃先の断面プロファイルの位置を前記刃先の周方向に沿って変化させるために、前記検知ユニットに対して前記刃先を相対的に回転させる回転機構と、前記刃先の断面プロファイルから前記刃先の状態を判定する制御部と、を備え、前記検知ユニットは、前記刃先の周方向と略直交する方向に沿って延びるスリット状の光を、前記第1の辺の想定される直線と前記第2の辺の想定される直線とがなす角度の略中心を通る直線に沿って、前記刃先に照射する投光部と、前記刃先からの反射光を受光する受光部とを備え、前記制御部は、前記検知ユニットによって検知された前記断面プロファイルから、前記刃先の先端から所定の距離を隔てた第1領域の断面プロファイルと、前記第1領域よりも前記刃先の先端に近い第2領域の断面プロファイルとを抽出し、前記第1領域の断面プロファイルを直線近似することにより近似直線を取得して、前記近似直線を延長することにより前記第2領域の理想断面プロファイルを推定し、前記第2領域の断面プロファイルと前記第2領域の理想断面プロファイルとの間の差異を示す特徴量を算出するように構成される、刃先検査装置である。
【0008】
前記特徴量は、前記第2領域の断面プロファイルのうち、前記第2領域の理想断面プロファイルよりも、前記刃先の軸方向および径方向の内側に位置する部分と、前記第2領域の理想断面プロファイルとで囲まれる領域の面積であることが好ましい。
【0009】
前記特徴量は、前記第2領域の断面プロファイルと前記第2領域の理想断面プロファイルとの間の間隔であることが好ましい。
【0010】
前記特徴量は、前記第2領域の断面プロファイルの所定の位置における傾きと前記第2領域の理想断面プロファイルの傾きとの間の関係を示す値であることが好ましい。
【0011】
前記特徴量は、前記第2領域の断面プロファイルのうち、前記第2領域の理想断面プロファイルよりも、前記刃先の軸方向または径方向の外側に位置する部分と、前記第2領域の理想断面プロファイルとで囲まれる領域の面積であることが好ましい。
【0012】
前記刃物は、前記刃物を軸方向に貫通する貫通孔を有し、前記支持台は、前記刃物の軸方向が略水平方向を向くように配置された前記刃物の前記貫通孔に面する上側内周面を支持する上側支持部と、前記刃物の軸方向が略水平方向を向くように配置された前記刃物の前記貫通孔に面する下側内周面を支持する下側支持部とを有し、前記上側支持部は、前記上側内周面の軸方向の長さよりも長い長さを有し、前記下側支持部は、前記下側内周面の軸方向の長さと略同じ長さを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、略円形の刃物の外周に沿って延びる刃先の状態を、簡単な構成で、かつ精度よく検査することが可能な刃先検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る刃先検査装置が用いられる切断システムの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2A】
図1に示される切断システムの刃先検査装置および刃替システムにおいて、刃替システムのハンドリングロボットによって刃替システムの仮組軸装置から刃物および中間部材を取り外した状態を模式的に示す図である。
【
図2B】
図2Aに示された状態から変化して、ハンドリングロボットによって刃物および中間部材を刃先検査装置に取り付けた状態を模式的に示す図である。
【
図2C】
図2Bに示された状態から変化して、ハンドリングロボットによって刃先検査装置から中間部材を取り外した状態を模式的に示す図である。
【
図2D】
図2Cに示された状態から変化して、ハンドリングロボットによって刃先検査装置から刃物を取り外した状態を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る刃先検査装置を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示される刃先検査装置を示す正面図である。
【
図5】
図3に示される刃先検査装置を示す側面図である。
【
図6A】
図1に示される切断システムの刃先検査装置および刃替システムにおいて、刃替システムのハンドリングロボットによって刃物および中間部材を把持した状態を模式的に示す側面図である。
【
図6B】
図6Aに示された状態から変化して、ハンドリングロボットによって刃物および中間部材を刃先検査装置の支持台に取り付けた状態を模式的に示す側面図である。
【
図6C】
図6Bに示された状態から変化して、支持台によって刃物が把持された状態を模式的に示す側面図である。
【
図6D】
図6Cに示された状態から変化して、ハンドリングロボットによって支持台から中間部材を取り外した状態を模式的に示す側面図である。
【
図7A】
図3に示される刃先検査装置の投光部から刃先に光を照射し、刃先からの反射光を刃先検査装置の受光部で受光する様子を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図3に示される刃先検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る刃先検査装置の制御部において行われる刃先検査の検査ロジックの一例として、刃先の断面プロファイルを示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る刃先検査装置の制御部において行われる刃先検査の検査ロジックの一例として、刃先の断面プロファイルを示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る刃先検査装置の制御部において行われる刃先検査の検査ロジックの一例として、刃先の断面プロファイルを示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る刃先検査装置の制御部において行われる刃先検査の検査ロジックの一例として、刃先の断面プロファイルを示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る刃先検査装置の制御部において行われる刃先検査の検査ロジックの一例として、刃先の断面プロファイルを示す図である。
【
図14】刃先検査装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の刃先検査装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の刃先検査装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態に係る刃先検査装置1は、
図3~
図5に示されるように、略円形の刃物BLの外周に沿って延びる刃先BL1を検査する装置である。刃先検査装置1は、たとえば、
図1に示されるように、金属板等の切断対象物Wを刃物BLによって切断する切断システムCSにおいて、刃物BLの刃先BL1を検査する装置として用いられる。ただし、刃先検査装置1は、切断システムCSに限定されることはなく、刃物の製造工場における出荷検査用としてなど、他の用途にも用いることができる。
【0017】
切断システムCSの切断対象物Wは、略円形の刃物BLによって切断可能なものであれば特に限定されないが、たとえば、鋼板等の金属板である。
図1に示される例では、切断システムCSは、切断対象物Wとしての帯状の金属板をスリット、すなわち、帯幅方向に分割するように切断(長さ方向に沿って切断)する。以下の説明では、切断対象物Wが帯状の金属板(以下、帯板Wとも称する)である場合について説明する。
【0018】
切断システムCSは、
図1に示される例では、帯板Wをスリットする切断装置CDと、刃物BLを交換する刃替システムESと、刃物BLの刃先を検査する刃先検査装置1とを備えている。
【0019】
切断装置CDは、
図1に示されるように、帯板Wの長手方向に沿って帯板Wを切断する切断部101と、帯板Wをロール状に巻回し、切断部101に向けて帯板Wを繰り出す繰出ロール102と、帯板Wが切断された後の、帯板Wより狭幅の切断後帯板W1を巻き取る巻取ロール103と、帯板Wおよび切断後帯板W1を搬送する搬送部104とを備えている。切断装置CDは、搬送部104によって帯板Wを繰出ロール102から繰り出して切断部101まで搬送し、切断部101によって切断された後の切断後帯板W1を搬送部104によって巻取ロール103まで搬送し、巻取ロール103によって切断後帯板W1を巻き取るように構成されている。
【0020】
切断部101は、
図1に示されるように、帯板Wに対して鉛直方向の上側に配置された刃物BLと、帯板Wに対して鉛直方向の下側に配置された刃物(図示せず)とで、帯板Wに対して上下方向に沿ってせん断力を与えることにより、帯板Wを切断するように構成されている。詳細には、切断部101は、上側の刃物BLを備え、帯板Wに対して鉛直方向の上側に配置された上側切断部材101aと、下側の刃物BLを備え、帯板Wに対して鉛直方向の下側に配置された下側切断部材(図示せず)とを備えている。
【0021】
上側切断部材101aは、
図1および
図2A~
図2Dに示されるように、帯板Wの搬送方向に対して直交する方向で、かつ略水平方向に沿って延びる回転軸101bと、回転軸101bを囲繞するように回転軸101bに取り外し可能に取り付けられる略円筒状のスリーブ101cと、スリーブ101cの外周に取り外し可能に装着される1つまたは複数の刃物BLとを備えている。上側切断部材101aはさらに、スリーブ101cの軸上の、刃物BLの位置を画定する中間部材MEを備えている。切断システムCSでは、切断装置CDに設けられる刃物BLを刃替システムESによって交換する際には、刃物BLおよび中間部材MEが装着された状態のスリーブ101cを回転軸101bから取り外して交換することによって行なわれる。なお、下側切断部材は、上側切断部材101aと同様の構成を有している。
【0022】
刃物BLは、
図3に示されるように、軸Xを中心とした略円形に形成されている。刃物BLは、刃物BLの外周に沿って延びる刃先BL1を有している。刃先BL1は、刃物BLが帯板Wを切断する際に、帯板Wと接触する部分である。刃先BL1は、帯板Wと接触することにより、帯板Wから摩擦力および押圧力を受ける。刃先BL1は、摩擦によって次第に摩耗し、押圧力によって塑性変形する可能性がある。刃先BL1が塑性変形する例としては、たとえば、刃先BL1が帯板Wまたは他の物体に衝突する場合があり得る。また、他の例としては、刃先BL1の一部が帯板Wを押圧することによって帯板Wの切断を行う際に、刃先BL1における当該一部とは反対側へ向かって刃先BL1の一部が移動する場合があり得る。本実施形態の刃先検査装置1は、以下で詳しく述べるように、このように摩耗や塑性変形によって変形した刃先BL1の摩耗度合いや変形度合いを検査することができる。
【0023】
刃物BLの刃先BL1は、
図7Aおよび
図7Bに示されるように、刃先BL1の周方向D3と略直交する方向に沿った断面において、刃先BL1の径方向D2の外周面BL2に位置して略直線状に延びることが想定される第1の辺BL3と、刃先BL1の軸方向D1(軸Xの延びる方向)の端面BL4に位置して第1の辺BL3と交差し、略直線状に延びることが想定される第2の辺BL5と、第1の辺BL3と第2の辺BL5との交点に位置する先端BL6とを有している。
【0024】
なお、本明細書において、「略直線状に延びることが想定される」とは、刃物BLの使用前の状態等、理想的な状態では略直線状に延びているが、摩耗および/または塑性変形等により、理想的な状態から逸脱する形状に変形している状態となっている可能性があることを意味する。すなわち、第1の辺BL3および第2の辺BL5は、理想的な状態において略直線状に延びているのであれば、使用後の状態においては、略直線状の状態から逸脱した状態、たとえば湾曲した状態であってもよい。
【0025】
刃物BLは、本実施形態では、
図7Aおよび
図7Bに示されるように、軸方向D1の両側の端部に2つの刃先BL1、BL1を備えている。具体的には、刃物BLの外周面BL2と、軸方向D1における一方側の端面BL4との間に形成されている刃先BL1と、刃物BLの外周面BL2と、軸方向D1における他方側の端面BL4との間に形成されている刃先BL1とを備えている。一方の刃先BL1と他方の刃先BL2とは、図示された例では、同じ形状の断面プロファイルを有する。刃物BLが、軸方向D1の両側に2つの刃先BL1、BL1を備えることで、いずれか一方が劣化しても、他方が使用できるので、刃物BL自体の寿命が延びる。本実施形態の刃先検査装置1は、以下で詳しく述べるように、軸方向D1の両側に設けられた2つの刃先BL1、BL1を検査するのに適した構成を有している。ただし、刃物BLの刃先BL1の数は、2つに限定されることはなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0026】
刃先BL1は、刃先BL1の軸方向D1に沿った断面において、第1の辺BL3と第2の辺BL5とが交差していればよく、第1の辺BL3と第2の辺BL5との間の角度θは特に限定されない。本実施形態では、刃先BL1は、
図7A、7Bに示されるように、第1の辺BL3と第2の辺BL5とが互いに略直交するように形成されている。なお、略直交とは、第1の辺BL3と第2の辺BL5との間の角度θが90°だけでなく、90°からわずかにずれた範囲、たとえば80°~100°の範囲にあることを意味する。
【0027】
刃物BLは、本実施形態では、
図3に示されるように、刃物BLを軸方向D1に貫通する貫通孔BL7を有している。より具体的には、刃物BLは、軸方向D1に沿って延びる略円筒状に形成されている。刃物BLは、
図2A~
図2Dに示されるように、貫通孔BL7にスリーブ101cが挿通されることにより、スリーブ101cに支持され得る。また、後述するように、貫通孔BL7に面する内周面BL8(
図4参照)が、刃先検査装置1の後述する支持台2によって把持され、刃替システムESの後述するハンドリングロボット202により把持され得る。ただし、刃物BLは、少なくとも外周に沿って延びる刃先BL1を有していればよく、貫通孔BL7を有していなくてもよい。
【0028】
刃物BLとともにスリーブ101cに装着される中間部材MEは、
図2A~
図2Dに示されるように、スリーブ101cの軸方向D1における刃物BLの位置を画定するための部材である。特に、中間部材MEは、複数の刃物BLがスリーブ101cに装着される際に、複数の刃物BLの間に配置されて、複数の刃物BLの軸方向D1の間の間隔を画定する。それにより、切断装置CDにおいて切断されて生成される切断後帯板W1の幅が画定される。中間部材MEの径方向の表面にはゴムなどの弾性部材が設けられ、中間部材MEによって帯板Wが押圧された際に、帯板Wの変形を抑制するように構成されている。
【0029】
中間部材MEは、本実施形態では、刃物BLと同様に、軸方向D1に貫通する貫通孔を有する円筒状に形成されている。中間部材MEは、
図2A~2Dに示されるように、貫通孔にスリーブ101cが挿通されることにより、スリーブ101cに支持され得る。また、後述するように、貫通孔に面する内周面が、刃先検査装置1の後述す支持台2によって把持され、刃替システムESの後述するハンドリングロボット202により把持され得る。
【0030】
刃替システムESは、
図1に示されるように、スリーブ101cが着脱可能に装着される仮組軸装置201と、刃物BLおよび中間部材MLを把持して、搬送するハンドリングロボット202と、刃物BLおよび中間部材MLを格納する格納棚203とを備えている。
【0031】
仮組軸装置201は、
図1に示されるように、刃物BLおよび中間部材MEが装着されたスリーブ101cを、切断装置CDとハンドリングロボット202との間で搬送する。仮組軸装置201は、スリーブ101cが装着される仮組軸201aと、仮組軸201aを支持し、仮組軸201aを移動させる台車201bとを備えている。仮組軸装置201は、仮組軸201aと切断装置CDの回転軸101bとが同軸になるように切断装置CDに接近して(
図1中、2点鎖線の位置)、刃物BLおよび中間部材MEが装着されたスリーブ101cを切断装置CDとの間で受け渡しする。また、仮組軸装置201は、ハンドリングロボット202との間で刃物BLおよび中間部材MEを受け渡しするために、ハンドリングロボット202の駆動範囲内に移動する(
図1中、実線の位置)。
図2A~
図2Dには、刃物BLおよび中間部材MEが装着されたスリーブ101cが仮組軸201aに装着された状態が示されている。
【0032】
ハンドリングロボット202は、
図2A~
図2Dに示されるように、刃物BLおよび中間部材MEを把持して、たとえば、仮組軸装置201に装着されたスリーブ101cと刃先検査装置1との間などで、刃物BLおよび中間部材MEを搬送する。ハンドリングロボット202は、台座部202aと、複数の関節を有し、台座部202aに回転駆動可能に固定されるアーム部202bと、アーム部202bの先端部に設けられ、刃物BLおよび中間部材MEを把持する複数のフィンガー202cとを備えている。ハンドリングロボット202は、複数のフィンガー202cによって刃物BLおよび中間部材MEを把持し、アーム部202bの動作によって刃物BLおよび中間部材MEを搬送する。
【0033】
ハンドリングロボット202は、
図4に示されるように、3つのフィンガー202cを備えている。各フィンガー202cは、
図2A~
図2Dに示されるように、アーム部202bの先端部から略水平方向に沿って延びるように配置されている。各フィンガー202cは、
図4に示されるように、各フィンガー202cの先端側から見て、逆二等辺三角形の底辺を挟む2つの頂点に対応する位置と、当該底辺よりも下方で、かつ逆二等辺三角形の残りの頂点に対応する位置とに配置されている。3つのフィンガー202cは、刃先検査装置1に接近して、刃先検査装置1との間で刃物BLおよび中間部材MEの受け渡しを行う際に、
図3に示されるように、刃先検査装置1の後述する上側支持部21および下側支持部22と干渉しない位置に配置される。具体的には、たとえば、上側支持部21が上側の2つのフィンガー202cの水平方向の間に位置し、かつ上側支持部21が上側の2つのフィンガー202cから離間した状態となるように、上側の2つのフィンガー202cが配置される。また、下側の1つのフィンガー202cが2つの下側支持部22の水平方向の間に位置し、かつ下側の1つのフィンガー202cが2つの下側支持部22から離間した状態となるように、下側の1つのフィンガー202cが配置される。3つのフィンガー202cは、刃物BLの貫通孔BL7および中間部材MEの貫通孔内に配置され、上側の2つのフィンガー202cと下側の1つのフィンガー202cとが互いに離間する方向に移動して、刃物BLおよび中間部材MEの貫通孔に面する内周面を押圧することにより、刃物BLおよび中間部材MEを把持する。
【0034】
ハンドリングロボット202は、たとえば、仮組軸装置201の仮組軸201aに装着されたスリーブ101cから刃物BLおよび中間部材MEを取り出し(
図2A参照)、刃物BLおよび中間部材MEを刃先検査装置1に装着し(
図2B参照)、刃先検査装置1に装着された刃物BLおよび中間部材MEのうち中間部材MEを取り出し(
図2C参照)、中間部材MEを格納棚203(
図1参照)へ格納し、刃先検査装置1に装着された刃物BLを取り出し(
図2D参照)、刃物BLを格納棚203(
図1参照)へ格納する。
【0035】
刃先検査装置1は、
図3~
図5に示されるように、支持台2と、検知ユニット3と、回転機構4と、制御部5とを備えている。
【0036】
支持台2は、刃物BLを支持する。支持台2は、刃物BLを支持することができるのであれば、その構成は特に限定されないが、たとえば、以下の構成を採用することができる。具体的には、
図3~
図5に示されるように、支持台2は、刃物BLの軸方向D1が略水平方向を向くように配置された刃物BLの貫通孔BL7に面する上側内周面BL81を支持する上側支持部21と、刃物BLの軸方向D1が略水平方向を向くように配置された刃物BLの貫通孔BL7に面する下側内周面BL82を支持する下側支持部22とを有する構成である。この構成において、上側支持部21は、上側内周面BL81の軸方向D1の長さよりも長い長さL1を有する。下側支持部22は、下側内周面BL82の軸方向D1の長さと略同じ長さL2を有する。このような構成を採用することにより、上側支持部21だけで刃物BLおよび中間部材MEを支持することができるとともに、上側支持部21および下側支持部22によって刃物BLだけを固定して支持することができる。また、上側支持部21および下側支持部22によって刃物BLが支持された状態において、中間部材MEは上側支持部21にのみ支持された状態にあるので、後述するように、支持台2に刃物BLを支持させたまま、支持台2から中間部材MEのみを容易に取り出すことができる。
【0037】
本明細書において、「上側支持部21」の「上側」とは、刃先検査装置1とハンドリングロボット202との間で刃物BLおよび中間部材Mの受け渡しが行われる際に上側支持部21が下側支持部22に対して上側に位置することを意味するものであり、上側支持部21が下側支持部22に対して常に上側に位置することを意味するものではない。同様に、「下側支持部22」の「下側」とは、刃先検査装置1とハンドリングロボット202との間で刃物BLおよび中間部材Mの受け渡しが行われる際に下側支持部22が上側支持部21に対して下側に位置することを意味するものであり、下側支持部22が上側支持部21に対して常に下側に位置することを意味するものではない。したがって、上側支持部21および下側支持部22が回転機構4の回転駆動力を受けて回転する際には、上側支持部21および下側支持部22の位置関係が上下方向において逆転することもあり得る。
【0038】
支持台2は、本実施形態では、上側支持部21と下側支持部22との間の間隔を調節する間隔調節機構25(
図8参照)を備えている。上側支持部21および下側支持部22は、間隔調節機構25によって、刃物BLを把持する把持位置と、刃物BLの把持が解除される把持解除位置との間で移動可能に構成される。間隔調節機構25は、シリンダ装置またはモータ等の駆動源の動力を用いて、上側支持部21と下側支持部22との間の間隔を調節するように構成されている。具体的には、たとえば、間隔調節機構25は、上側支持部21と下側支持部22とを、上下方向に沿って相対的に接近および離間する方向へ移動させるように構成されている。上側支持部21と下側支持部22とが、相対的に接近する方向へ移動することにより、上側支持部21および下側支持部22が把持解除位置に位置付けられ、上側支持部21および下側支持部22のうち、上側支持部21のみによって刃物BLおよび中間部材MEが支持される状態とすることができる。また、上側支持部21と下側支持部22とが、相対的に離間する方向へ移動することにより、上側支持部21および下側支持部22が把持位置に位置付けられ、上側支持部21および下側支持部22の両方が刃物BLの内周面BL8を互いに反対の方向へ押圧する。これにより、上側支持部21および下側支持部22によって刃物BLのみを固定して支持することができる。
【0039】
支持台2は、
図3~
図5に示されるように、上側支持部21が固定される上側ベース部材23と、下側支持部22が固定される下側ベース部24とを備えていてもよい。上側支持部21は、上側支持部21の長さ方向の一方の端部で上側ベース部材23に固定され、上側ベース部材23から略水平方向に突出するように設けられている。また、下側支持部22は、下側支持部22の長さ方向の一方の端部で下側ベース部材24に固定され、下側ベース部材24から略水平方向に突出するように設けられている。上側支持部21および下側支持部22は、間隔調節機構25によって上側ベース部材23と下側ベース部材24との間の間隔が調節されることで、互いの間の間隔が調節される。
【0040】
上側支持部21の数および下側支持部22の数は、刃物BLを確実に支持することができるのであれば、特に限定されるものではないが、たとえば、
図3~
図5に示される例では、上側支持部21の数が1つであり、下側支持部22の数が2つである。また、上側支持部21の位置および下側支持部22の位置は、刃物BLを確実に支持することができるのであれば、特に限定されるものではないが、たとえば、
図3および
図4に示される例では、上側支持部21の長さ方向(軸方向D1)に沿った方向から見て、2つの下側支持部22のうちの一方が、1つの上側支持部21に対して斜め下方に位置しており、2つの下側支持部22のうちの他方が、上側支持部21に対して、一方の下側支持部22とは反対側の斜め下方に位置している。そして、2つの下側支持部22は、二等辺三角形の底辺を挟む2つの頂点に対応する位置に配置され、1つの上側支持部21は、上記二等辺三角形の残りの頂点に対応する位置に配置されている。
【0041】
上側支持部21の長さL1は、刃物BLの上側内周面BL81の軸方向D1の長さよりも長ければよく、特に限定されることはないが、上側内周面BL81の軸方向D1の長さに、中間部材MEの貫通孔に面する内周面の軸方向D1の長さを加えた長さまたはそれ以上の長さであることが好ましい。この場合、上側支持部21の長さL1は、上側内周面BL81の軸方向D1の長さに、1つの中間部材MEの内周面の長さを加えた長さまたはそれ以上の長さであってもよいし、上側内周面BL81の軸方向D1の長さに、複数の中間部材MEの内周面の長さを加えた長さまたはそれ以上の長さであってもよい。
【0042】
上側支持部21は、刃物BLの上側内周面BL81を支持するように構成されていればよく、その形状は特に限定されない。上側支持部21は、本実施形態では、
図3および
図4に示されるように、上側支持部21の長さ方向と直交する方向に沿った断面が、刃物BLの上側内周面BL81に沿うように形成されている。
図3に示される例では、上側支持部21は、上側支持部21の長さ方向と直交する方向に沿った断面が円弧状となるように形成されている。上側支持部21は、刃物BLの上側内周面BL81に沿うように形成されることで、上側内周面BL81との接触面積が大きくなり、互いの間に生じる摩擦力が大きくなって、刃物BLをより確実に支持することができる。
【0043】
上側支持部21は、上側支持部21の長さ方向における一方側の端部から他方側の端部に向かって、水平方向に対して斜め上向きとなるように傾斜していることが好ましい。具体的には、たとえば、刃物BLの上側内周面BL81と接触する上側支持部21の上面が、上側支持部21の長さ方向における一方側の端部から他方側の端部に向かって、水平方向に対して斜め上向きとなるように傾斜していることが好ましい。このような構成とすることにより、以下の効果を奏することができる。後述するように、ハンドリングロボット202によって刃物BLおよび中間部材MEが支持台2に受け渡された際に、上側支持部21に支持された刃物BLおよび中間部材MEが上側支持部21の長さ方向に沿って、上側支持部21の他方側の端部側から一端側の端部側まで滑り落ちる。これにより、刃物BLは、刃物BLの下側内周面BL82が下側支持部22と対向する位置へ移動する。したがって、上側支持部21および下側支持部22が対向する位置に刃物BLをより確実に位置付けることができるので、上側支持部21および下側支持部22によって刃物BLをより確実に支持することができる。
【0044】
図6A~
図6Dを参照して、ハンドリングロボット202と刃先検査装置1との間で行われる、刃物BLおよび中間部材MEの受け渡し動作について説明する。
図6A~
図6Dは、
図1に示される刃先検査装置1およびハンドリングロボット202の動作を模式的に示す側面図である。ただし、以下の動作は一例であり、ハンドリングロボット202と刃先検査装置1との間の受け渡し動作は、以下の例に限定されない。
【0045】
図6Aに示される例では、ハンドリングロボット202の3つのフィンガー202cが、フィンガー202cの先端側(
図6A中、右側)から順に、刃物BLおよび中間部材ME(図示された例では2つの中間部材ME)を支持している状態となっている。また、
図6Aに示される例では、刃先検査装置1において、上側支持部21および下側支持部22が把持解除位置に位置付けられ、上側支持部21と下側支持部22との間の間隔が、上側支持部21および下側支持部22によって刃物BLを支持することが可能な場合の間隔(以下、支持間隔DSとも称する、
図6Cおよび
図6D参照)よりも小さい状態となっている。このような状態において、ハンドリングロボット202のアーム部202bが操作されて、3つのフィンガー202cが、軸方向D1に沿って刃先検査装置1の支持台2に接近する(
図6A参照)。
【0046】
次に、
図6Bに示されるように、上側のフィンガー202cの先端が上側ベース部材23に当接する。また、下側のフィンガー202cの先端が下側ベース部材24に当接する。これにより、刃物BLが上側ベース部材23および下側ベース部材24に当接する。このとき、上側支持部材21と下側支持部材22との間の間隔が、上述の支持間隔DSよりも小さい状態となっているため、刃物BLが下側支持部材22と干渉することが抑制される。なお、
図6Bでは、上側のフィンガー202cの先端が上側ベース部材23に当接するととともに、下側のフィンガー202cの先端が下側ベース部材24に当接しているが、この例に限定されない。たとえば、上側のフィンガー202cの先端と上側ベース部材23との間に所定のクリアランスがある状態にまで、上側のフィンガー202cの先端が上側ベース部材23に接近するととともに、下側のフィンガー202cの先端が下側ベース部材24との間に所定のクリアランス(下側支持部22の軸方向D1の長さL2より小さいクリアランス)がある状態にまで、下側のフィンガー202cの先端が下側ベース部材24に接近してもよい。
【0047】
次に、
図6Cに示されるように、下側のフィンガー202cが上昇する。この上昇により、下側のフィンガー202cは刃物BLの下側内周面BL82および中間部材MEの内周面から離間した状態となる。すなわち、下側のフィンガー202cは、刃物BLの下側内周面BL82および中間部材MEの内周面を支持しない状態となる。この状態では、上側のフィンガー202cおよび上側支持部21が、刃物BLの上側内周面BL81および中間部材MEの内周面を支持している。つぎに、刃先検査装置1の下側支持部22が降下する。この降下により、下側支持部22は刃物BLの下側内周面BL82に当接する。すなわち、下側支持部22は、刃物BLの下側内周面BL82を支持する状態となる。この状態では、下側支持部22は、刃物BLの下側内周面BL82のみを支持しており、中間部材MEの内周面は支持していない。なお、上述のように、上側および下側のフィンガー202cの先端が上側ベース部材23および下側ベース部材24との間に所定のクリアランス(下側支持部22の軸方向D1の長さL2より小さいクリアランス)がある状態にまで、上側および下側のフィンガー202cの先端が上側ベース部材23および下側ベース部材24に接近して刃物BLを受け渡す場合には、刃物BLは、上側ベース部材23および下側ベース部材24から軸方向D1で離間した状態となる。しかし、上述のように上側支持部21が傾斜していることで、刃物BLが上側支持部21上を上側ベース部材23側へスライドするので、刃物BLが上側ベース部材23および下側ベース部材24に当接する。したがって、刃物BLが上側ベース部材23および下側ベース部材24に当接した状態で、下側支持部22が刃物BLの下側内周面BL82を支持する状態となる。
【0048】
次に、3つのフィンガー202cは、軸方向D1に沿って支持台2から所定距離(下側支持部22の長さL2よりもわずかに長い距離)だけ離間した後、下側のフィンガー202cが降下する。この降下により、下側のフィンガー202cは中間部材MEの内周面を押圧した状態となる。すなわち、下側のフィンガー202cは、中間部材MEの内周面を支持する状態となる。このような状態で、3つのフィンガー202cは、
図6Dに示されるように、刃先検査装置1から離れる方向へ移動する。その後、3つのフィンガー202cは、中間部材MEを支持した状態で、格納棚203へ移動し、格納棚203に中間部材MEを戻す。支持台2に残された刃物BLは、後述するように、刃先検査装置1によって刃先BL1の状態が検査される。
【0049】
検知ユニット3は、
図7Aおよび
図7Bに示されるように、刃先BL1の周方向D3と略直交する方向に沿った断面における刃先BL1の断面プロファイル(
図9~
図13参照)を検知する。検知ユニット3は、スリット状の光SH1を刃先BL1に照射する投光部31と、刃先BL1からの反射光SH2を受光する受光部32とを備えている。検知ユニット3は、投光部31により照射されたスリット状の光SH1が刃先BL1で反射して、その反射光SH2を受光部32で受光することにより、刃先BL1の断面プロファイルを取得することができる。検知ユニット3は、
図8のブロック図に示されるように、制御部5に通信可能に接続され、取得した断面プロファイルを制御部5に送信する。検知ユニット3は、取得した断面プロファイルを、図示しない記憶部に送信してもよい。
【0050】
投光部31は、
図7Aおよび
図7Bに示されるように、刃先BL1の周方向D3と略直交する方向に沿って延びるスリット状の光SH1を、刃先BL1の第1の辺BL3の想定される直線と第2の辺BL5の想定される直線とがなす角度θの略中心を通る直線SL1に沿って、刃先BL1に照射する。これにより、スリット状の光SH1は、刃先BL1の周方向D3と略直交する方向において、刃先BL1の先端BL6を中心として対称に刃先BL1に照射されるので、刃先BL1の先端BL6を中心として対称の領域の刃先BL1の断面プロファイルを得ることができる。したがって、刃先BL1の状態を漏れなく、精度よく検査することができる。
【0051】
なお、本明細書において、「想定される直線」とは、上述の「略直線状に延びることが想定される」の概念に基づく直線である。すなわち、刃物BLの使用前の状態等、理想的な状態では略直線状に延びているが、摩耗および/または塑性変形等により、理想的な状態から逸脱する形状に変形している可能性がある場合における、当該理想的な状態の直線を意味する。すなわち、第1の辺BL3および第2の辺BL5は、理想的な状態において略直線状に延びていることが想定される場合には、使用後の状態においては、略直線状の状態から逸脱した状態、たとえば湾曲した状態であってもよい。使用後の状態において、略直線状の状態から逸脱している場合には、たとえば、検知された形状に対する直線近似等、何等かの手法を用いて、理想的な直線が求められ得る。
【0052】
また、本明細書において、「角度θの略中心」の角度とは、θ/2だけではなく、θ/2の±10%以内の範囲内の角度を意味する。本実施形態では、第1の辺BL3と第2の辺BL5とは互いに略直交しているが、その場合、「角度θの略中心」の角度は、略45°を意味し、たとえば40°~50°の範囲内の角度を意味する。
【0053】
投光部31が放射する光SH1は、
図7Aに示されるように、光SH1の略中心が直線SL1上に位置するように、刃先BL1に照射されることが好ましい。これにより、スリット状の光SH1は、刃先BL1の周方向D3と略直交する方向において、より正確に、刃先BL1の先端BL6を中心として対称に刃先BL1を照射することができる。刃先BL1に照射される光SH1の断面の長辺の長さは、特に限定されることはなく、刃先BL1において摩耗や欠損が生じていることが想定される部分の大きさに応じて適宜設定することができる。光SH1は、スリット状の光、たとえば一方向の長さが、一方向に直交する方向の長さよりも長い、細長い断面形状を有する光であれば、特に限定されることはなく、たとえば、一般的に光切断法で用いられる公知のレーザー光を用いることができる。
【0054】
受光部32は、刃先BL1によって反射される反射光SH2を受光する。受光部32は、反射光SH2を受光して結像し、刃先BL1の断面の形状をプロファイルデータとして取得する。受光部32は、反射光SH2を受光することができれば、その配置は特に限定されない。受光部32は、投光部31が放射する光SH1の進行方向に対して、刃先BL1の周方向D3に傾斜した方向(たとえば略45°の方向)であって、第1の辺BL3と第2の辺BL5との間の角度θの略中心を通る方向から反射光SH2を受光するように配置されることが好ましい。これにより、受光部32は、刃先BL1の周方向D3と略直交する方向において、刃先BL1の先端BL6を中心として対称に刃先BL1から反射光SH2を受光することができ、より正確に刃先BL1の断面プロファイルを得ることができる。受光部32は、刃先BL1から反射される反射光SH2を受光することができればよく、たとえば、一般的な光切断法で用いられる公知の撮像素子CMOSにより構成することができる。
【0055】
回転機構4は、刃先BL1の断面プロファイルの位置を刃先BL1の周方向に沿って変化させるために、検知ユニット3に対して刃先BL1を、軸Xを中心に相対的に回転させる。回転機構4によって検知ユニット3に対して刃先BL1を相対回転させながら、刃先BL1の周方向D3に沿って刃先BL1の断面プロファイルを連続して取得することで、周方向D3に沿って刃先BL1の状態を検査することができる。検知ユニット3に対して刃先BL1を相対回転させる回転角度は、特に限定されるものではないが、たとえば、検知ユニット3による検知開始時から検知終了時までの回転角度が360°またはそれ以上の角度に設定することができる。このような回転角度とすることにより、刃先BL1の全周にわたって検査を行うことができる。刃先BL1の周方向D3において断面プロファイルを取得する間隔は、特に限定されることはなく、刃先BL1において摩耗や欠損が生じていることが想定される部分の大きさに応じて適宜設定することができる。
【0056】
回転機構4は、本実施形態では、軸Xを中心に刃物BLを回転させることで、検知ユニット3に対して刃先BL1を相対回転させるように構成されている。具体的には、回転機構4は、
図4および
図5に示されるように、刃物BLを支持する支持台2に設けられた回転体41と、回転体41を回転駆動するモータなどの駆動部(図示せず)とを備えている。回転体41には、支持台2の上側ベース部材23および下側ベース部材24を介して上側支持部21および下側支持部22が取り付けられている。回転機構4は、駆動部によって回転体41を回転させることにより上側支持部21および下側支持部22を回転させ、上側支持部21および下側支持部22に支持された刃物BLの刃先BL1を回転させる。なお、回転機構は、検知ユニット3に対して刃先BL1を相対回転させることができればよく、たとえば、ハンドリングロボット202(
図2A~
図2Dを参照)に設けられて、ハンドリングロボット202によって刃物BLを回転させるように構成されてもよいし、検知ユニット3を刃先BL1の周りに回転させるように構成されていてもよい。
【0057】
制御部5は、検知ユニット3により検知された刃先BL1の断面プロファイルから刃先BL1の状態を判定する。制御部5は、本実施形態では、
図8のブロック図に示されるように、検知ユニット3と通信可能に接続され、検知ユニット3の検知動作を制御するとともに、検知ユニット3から直接、刃先BL1の断面プロファイルを取得するように構成されている。ただし、制御部5は、刃先BL1の状態を判定するために、検知ユニット3から刃先BL1の断面プロファイルを取得することができればよく、たとえば、刃先BL1の断面プロファイルが記憶された記憶部を介して間接的に刃先BL1の断面プロファイルを取得するように構成されていてもよいし、検知ユニット3の検知動作を制御する他の制御装置から取得するように構成されていてもよい。制御部5は、たとえば、一般的にコンピュータに搭載される公知の中央演算処理装置(CPU)などを用いて構成することができる。
【0058】
制御部5は、たとえば、
図9に例示されるように、検知ユニット3によって検知された断面プロファイルから、刃先BL1の先端BL6から所定の距離を隔てた第1領域AR1の断面プロファイルPR1と、第1領域AR1よりも刃先BL1の先端BL6に近い第2領域AR2の断面プロファイルPR2とを抽出する。さらに、制御部5は、第1領域AR1の断面プロファイルPR1を直線近似することにより近似直線SL2を取得して、近似直線SL2を延長することにより第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRを推定する。さらに、制御部5は、第2領域AR2の断面プロファイルPR2と第2領域AR2の理想断面プロファイルIPR2の間の差異を示す特徴量FAを算出するように構成される。制御部5は、算出された特徴量FAを所定の閾値と比較して、算出された特徴量FAが所定の閾値を超えている場合に、その断面プロファイルが検知された刃先BL1に、摩耗、欠損、変形などの欠陥が生じていると判定することができる。したがって、刃先検査装置1は、簡単な構成で、かつ精度よく、刃先BL1の状態を検査することができる。
【0059】
なお、刃先BL1の先端BLから所定の距離を隔てて設定される第1領域AR1は、刃物BLの使用中に刃先BL1において摩耗や塑性変形などが生じる可能性の低い領域として設定することができる。たとえば、刃先BL1の先端BL6から第1領域AR1までの所定の距離は、摩耗や塑性変形などが生じることが想定される範囲として予め設定することもできるし、第1領域AR1において直線近似して得られた近似直線SL2と第1領域AR1の断面プロファイルPR1との差異が所定範囲内になるよう、刃先BL1の先端BL6に対して第1領域AR1が位置付けられるように設定することもできる。また、直線近似は、最小二乗法や、他の公知の数学的手法により行なうことができる。
【0060】
制御部5は、第2領域AR2の断面プロファイルPR2が、第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRよりも、刃先BL1の軸方向D1および径方向D2の内側に位置するか否かを判定するように構成されていてもよい。制御部5が、たとえば、断面プロファイルPR2が理想断面プロファイルIPRよりも内側にある(
図9など参照)と判定した場合には、刃先BL1に摩耗や欠損が生じていると判定することができる。また、制御部5が、たとえば、断面プロファイルPR2が理想断面プロファイルIPRよりも外側にある(
図11参照)と判定した場合には、刃先BL1が塑性変形したと判定することができる。
【0061】
ここで、特徴量FAは、上述したように、第2領域AR2の断面プロファイルPR2と第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRの間の差異を示す量である。特徴量FAは、
図9~
図13に示されるように、さまざまな検査ロジックによって算出することができる。なお、以下では、たとえば、
図9に例示されるように、近似直線SL2を延長することにより得られる直線を「母線GL」とも称する。また、第1の辺BL3側の母線GLと第2の辺BL5側の母線GLとの交点を「交点VE」とも称する。
図9に示された例では、交点VEおよび先端BL6は、上述の直線SL1上に位置している。ただし、先端BL6は、直線SL1から若干ずれた位置にあってもよい。
【0062】
図9に示される検査ロジックでは、特徴量FAは、第2領域AR2の断面プロファイルPR2のうち、第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRよりも、刃先BL1の軸方向D1および径方向D2の内側に位置する部分と、第2領域AR2の理想断面プロファイルIPR2とで囲まれる領域(ハッチングを付した領域)の面積S1である。第2領域AR2の断面プロファイルPR2と第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRとの比較は、ともに同一座標系で表示した状態で行なわれる。面積S1は、断面プロファイルPR2および理想断面プロファイルIPRを同一座標系で表示したときに、刃先BL1の軸方向D1および径方向D2の内側に位置する断面プロファイルPR2の部分の各点の座標と、理想断面プロファイルIPRの各点の座標とに基づいて、断面プロファイルPR2と理想断面プロファイルIPRとで囲まれた領域内で積分処理を行うことにより求めることができる。このような面積を特徴量FAとして算出することで、刃先BL1の摩耗、欠損、変形などの欠陥の程度を高い精度で把握することができる。
【0063】
図10に示される検査ロジックでは、特徴量FAは、第2領域AR2の断面プロファイルPR2と第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRとの間の間隔CLである。具体的には、間隔CLは、たとえば、直線SL1と断面プロファイルPR2との交点と、交点VEとの間の間隔である。間隔CLを特徴量とFAとして算出することで、刃先BL1の摩耗、欠損、変形などの欠陥の程度を高い精度で把握することができる。特に、
図11に示されるように、第2領域AR2の断面プロファイルPR2のうち、第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRよりも、刃先BL1の軸方向D1または径方向D2の外側に位置する部分がある場合には、刃先BL1の一部が理想断面プロファイルIPRの外側に移動することによって間隔CLが大きくなりやすいため、そのような刃先BL1の異常を容易に把握することができる。
【0064】
図12に示される検査ロジックでは、特徴量FAは、第2領域AR2の断面プロファイルPR2の所定の位置における傾きα1、α2と第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRの傾きβとの間の関係を示す値である。本実施形態では、「所定の位置」とは、直線SL1からの距離がゼロより大きく、かつ第2領域AR2内で、所定の幅を有する第3領域AR3内の位置である。所定の位置および所定の幅は、上記条件を満たす限り任意に設定可能である。「理想断面プロファイルIPRの傾きβとの間の関係を示す値」は、第3領域AR3内において断面プロファイルPR2に引いた接線TL1、TL2の傾きが傾きα1、α2であるとすると、特に限定されるものではないが、たとえば、α1/β、α2/βである。断面プロファイルPR2の傾きα1、α2と理想断面プロファイルIPRの傾きβとの関係を示すことにより、たとえば、刃先BL1の丸みを評価することができる。
【0065】
図13に示される検査ロジックでは、特徴量FAは、第2領域AR2の断面プロファイルPR2のうち、第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRよりも、刃先BL1の軸方向D1または径方向D2の外側に位置する部分と、第2領域AR2の理想断面プロファイルIPRとで囲まれる領域(ハッチングを付した領域)の面積S2である。この構成によれば、断面プロファイルPR2が理想断面プロファイルIPRの外側へ変形している程度を把握することができる。したがって、刃先BL1の塑性変形の程度を容易に把握することができる。
【0066】
制御部5は、本実施形態では、
図8のブロック図に示されるように、回転機構4に通信可能に接続され、回転機構4の回転動作を制御するように構成されている。制御部5は、回転機構4および検知ユニット3を制御して、検知ユニット3に対して刃物BLの刃先BL1を相対回転させながら、刃先BL1の周方向D3(
図7B参照)に沿って刃先BL1の断面プロファイルを取得することができる。制御部5は、刃先BL1の周方向D3に沿って刃先BL1の断面プロファイルを取得することで、刃先BL1の周方向D3に沿った特徴量FAの変化を算出することができる。これにより、制御部5は、刃先BL1の周方向D3に沿ったどの位置に、どの程度で、摩耗、欠損、変形などの欠陥が生じているかを判定することができる。その判定は、特に限定されることはなく、たとえば、刃先BL1の周方向D3の各位置で、特徴量FAが所定の閾値を超えているか否かを判定することによって行われてもよいし、刃先BL1の周方向D3に沿った所定の長さ範囲に亘って、特徴量FAが所定の閾値を超えているか否かを判定することによって行われてもよい。
【0067】
制御部5は、
図8のブロック図に示されるように、操作入力部7および出力部8と通信可能に接続されていてもよい。操作入力部7は、ユーザによる操作入力を受け付け、ユーザによる操作入力の内容を制御部5へ送信する。刃先検査装置1は、操作入力部7を備えることで、ユーザの入力に応答して、制御部5の上記動作を実行し、また制御部5の上記動作を修正することができる。操作入力部7は、キーボードやマウスなどの公知の入力手段により具現化できる。出力部8は、検知ユニット3による検知結果や、制御部5による算出結果および判定結果などを出力するように構成されている。刃先検査装置1は、出力部8を通じて、ユーザに上記結果を通知することができる。出力部8は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカーなどの公知のデータ出力手段により具現化できる。
【0068】
刃先検査装置1は、刃物BLの刃先BL1を検査することができればよく、設けられる位置は特に限定されない。本実施形態では、刃先検査装置1は、
図1、
図2A~
図2Dに示されるように、刃替システムES内に設けられ、より詳しくは、刃替システムESのエリア内に設けられている。これにより、刃先検査を刃替の工程の中で実施することができるため、刃替の工程とは別に刃先検査の工程を設ける必要がない。特に、本実施形態では、刃先検査装置1は、刃替システムESのハンドリングロボット202に隣接して設けられ、より具体的には、ハンドリングロボット202の台座部202aに設けられている。これにより、ハンドリングロボット202による刃物BLの運搬途中(たとえば格納棚203への運搬途中)に刃先検査を実施することができ、刃物BLを格納棚203へ一旦格納した後に格納棚203から再度取り出して刃先検査を行う場合と比べて、刃物BLの運搬にかかる時間を省略できる。ただし、刃先検査は、刃物BLの運搬途中に行なってもよいし、格納棚203に一度格納された刃物BLを再度取り出して行なってもよい。
【0069】
以上において、本実施形態の刃先検査装置1が、刃物BLの軸方向D1の一方側に位置する刃先BL1を検査することができることを示した。本実施形態の刃先検査装置1はさらに、刃物BLの軸方向D1の他方側に位置する刃先BL1を検査することもできる。刃先検査装置1は、
図3~
図5に示されるように、刃物BLの軸方向D1の一方側に位置する刃先BL1を検査するための第1検査位置(
図5中、実線の位置)と、刃物BLの軸方向D1の他方側に位置する刃先BL1を検査するための第2検査位置(
図5中、2点鎖線の位置)との間で、刃物BLの刃先BL1に対して検知ユニット3を相対移動させる移動機構6を備えている。移動機構6は、刃物BLの軸方向D1における一方側の刃先BL1と他方側の刃先BL1とを、検知ユニット3によって選択的に検査できるように、検知ユニット3を相対移動させる。第1検査位置および第2検査位置のいずれにおいても、検知ユニット3は、刃物BLの刃先BL1に対して、上述したのと実質的に同じ配置を実現でき、それによって、上述したのと実質的に同じ検査を実現できる。
【0070】
移動機構6は、第1検査位置と第2検査位置との間で、刃物BLの刃先BL1に対して検知ユニット3を相対移動させることができればよく、その移動方向は特に限定されない。本実施形態では、移動機構6は、刃物BLの刃先BL1に対して、刃物BLの径方向D2に平行な回転軸X1を中心として、検知ユニット3を相対回転可能に構成されている。具体的には、移動機構6は、
図3~
図5に示されるように、支持台2に固定された基部61と、検知ユニット3が固定され、回転軸X1を中心として回転可能に基部61に取り付けられたアーム部62と、基部61に固定され、アーム部62を回転駆動する回転駆動部63とを備えている。検知ユニット3は、回転軸X1から、回転軸X1に垂直な方向にずれて、回転軸X1を中心に回転するアーム部62に固定されることで、回転軸X1の周りを旋回するように構成されている。また、回転軸X1が、刃物BLの径方向D2に沿った刃物BLの中心線と略一直線上に並ぶように配置されることで、検知ユニット3は、回転軸X1の周りを略180°旋回する前後で、刃物BLの軸方向D1において刃物BLを挟んで互いに対向する位置に配置される。これにより、第1検査位置および第2検査位置のいずれにおいても、検知ユニット3は、刃物BLの刃先BL1に対して、上述したのと実質的に同じ配置を実現でき、それによって、上述したのと実質的に同じ検査を実現できる。ただし、移動機構6は、検知ユニット3に対して、刃物BLの刃先BL1を移動させるように構成されていてもよい。
【0071】
移動機構6は、
図8のブロック図に示されるように、制御部5に通信可能に接続され、制御部5によって動作制御される。制御部5は、たとえば、刃物BLの軸方向D1の一方側に位置する刃先BL1の検査が終了した後に、移動機構6を制御して、検知ユニット3を第1検査位置(
図5中、実線の位置)から第2検査位置(
図5中、二点鎖線の位置)へと相対移動させることで、刃物BLの軸方向D1の他方側に位置する刃先BL1の検査を継続して行なうことができる。したがって、刃先検査装置1は、2つの刃先BL1、BL1を有する刃物BLの検査を迅速に行うことができる。
【0072】
なお、上記実施形態では、刃物BLの軸方向D1が略水平方向に沿うように、刃物BLが刃先検査装置1に装着されているが、これに限定されるものではない。たとえば、
図14および
図15に示されるように、刃物BLの軸方向D1が略鉛直方向に沿うように、刃物BLが刃先検査装置1に装着される構成であってもよい。この場合、支持台2は、刃物BLの軸方向D1が略鉛直方向に沿うように、刃物BLを支持するように構成される。
【符号の説明】
【0073】
1 刃先検査装置
2 支持台
21 上側支持部
22 下側支持部
23 上側ベース部材
24 下側ベース部材
25 間隔調節機構
3 検知ユニット
31 投光部
32 受光部
4 回転機構
41 回転体
5 制御部
6 移動機構
61 基部
62 アーム部
63 回転駆動部
7 操作入力部
8 出力部
101 切断部
101a 上側切断部材
101b 回転軸
101c スリーブ
102 繰出ロール
103 巻取ロール
104 搬送部
201 仮組軸装置
201a 仮組軸
201b 台車
202 ハンドリングロボット
202a 台座部
202b アーム部
202c フィンガー
203 格納棚
AR1 第1領域
AR2 第2領域
BL 刃物
BL1 刃先
BL2 外周面
BL3 第1の辺
BL4 端面
BL5 第2の辺
BL6 先端
BL7 貫通孔
BL8 内周面
BL81 上側内周面
BL82 下側内周面
CD 切断装置
CL 間隔
CS 切断システム
D1 軸方向
D2 径方向
D3 周方向
DS 支持間隔
ES 刃替システム
GL 母線
IPR 第2領域の理想断面プロファイル
L1 上側支持部の長さ
L2 下側支持部の長さ
PR1 第1領域の断面プロファイル
PR2 第2領域の断面プロファイル
S1、S2 面積
SH1 スリット状の光
SH2 反射光
SL1 角度θの略中心を通る直線
SL2 近似直線
TL1、TL2 接線
VE 交点
W 切断対象物(帯板)
W1 切断後帯板
X 軸
X1 回転軸
α1、α2 第2領域の断面プロファイルの傾き
β 第2領域の理想断面プロファイルの傾き
θ 角度