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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158963
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】干渉型光磁界センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/032 20060101AFI20231024BHJP
   G01R 15/24 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G01R33/032
G01R15/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069054
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】宮本 光教
(72)【発明者】
【氏名】須江 聡
【テーマコード(参考)】
2G017
2G025
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AD12
2G017BA05
2G025AB10
(57)【要約】
【課題】検出する磁界を示す電気信号の波形のゆがみを抑制可能な干渉型光磁界センサ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】干渉型光磁界センサ装置1は、第1直線偏光及び第2直線偏光が入射され、印加される磁界に応じて第1直線偏光及び第2直線偏光を変化させて前記第3直線偏光及び第4直線偏光を出射する第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bと、第1直線偏光及び第4直線偏光を伝搬する第1光路、第2直線偏光及び第3直線偏光を伝搬する第2光路、並びに第1直線偏光及び第2直線偏光のそれぞれを分波して第1磁界センサ素子及び第2磁界センサ素子に出射すると共に、第1磁界センサ素子及び第2磁界センサ素子のそれぞれから入射する第3直線偏光及び第4直線偏光のそれぞれを合波して、合波した第3直線偏光を第2光路に出射すると共に、合波した第4直線偏光を第1光路に出射する分岐カプラとを有する光路部40とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直線偏波光を出射する発光部と、
入射された前記第1直線偏波光に応じて第1直線偏光と第2直線偏光を出射し、入射された第3直線偏光及び第4直線偏光に応じて第2直線偏波光を出射する第1光学素子と、
前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光が入射され、印加される磁界に応じて前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光を変化させて前記第3直線偏光及び前記第4直線偏光を出射する第1磁界センサ素子及び第2磁界センサ素子と、
前記第1直線偏光及び前記第4直線偏光を伝搬する第1光路、前記第2直線偏光及び前記第3直線偏光を伝搬する第2光路、並びに前記第1直線偏光及び前記第2直線偏光のそれぞれを分波して前記第1磁界センサ素子及び前記第2磁界センサ素子に出射すると共に、前記第1磁界センサ素子及び前記第2磁界センサ素子のそれぞれから入射する前記第3直線偏光及び前記第4直線偏光のそれぞれを合波して、合波した前記第3直線偏光を前記第2光路に出射すると共に、合波した前記第4直線偏光を前記第1光路に出射する分岐カプラとを有する光路部と、
前記第2直線偏波光の2成分を受光して電気信号に変換することで、前記磁界に応じた検出信号を出力する検出信号発生部と、
前記第1直線偏波光を前記第1光学素子へ透過させ、前記第2直線偏波光を前記検出信号発生部へ分岐する光分岐部と、を有する、
ことを特徴とする干渉型光磁界センサ装置。
【請求項2】
被測定導体の周りを囲むように配置され、前記第1磁界センサ素子及び前記第2磁界センサ素子を保持するヨークを更に有する、請求項1に記載の干渉型光磁界センサ装置。
【請求項3】
前記分岐カプラと前記第1磁界センサ素子とを光学的に接続する第1偏波保持ファイバと、
前記分岐カプラと前記第2磁界センサ素子とを光学的に接続する第2偏波保持ファイバと、を更に有し、
前記第1偏波保持ファイバ及び前記第2偏波保持ファイバの長さは、互いに等しい、請求項1又は2に記載の干渉型光磁界センサ装置。
【請求項4】
前記第2偏波保持ファイバは、前記第1直線偏光、前記第2直線偏光、前記第3直線偏光及び前記第4直線偏光のそれぞれの偏光面を90°回転させる、請求項3に記載の干渉型光磁界センサ装置。
【請求項5】
前記第2偏波保持ファイバは、遅相軸及び進相軸を90°回転させて融着された一対の偏波保持ファイバにより形成される、請求項4に記載の干渉型光磁界センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉型光磁界センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ先端にファラデー回転子を設けた磁界センサ素子を使用し、磁界センサ素子を透過した光を光電変換してファラデー回転子に印加される磁界に応じた検出信号を生成する干渉型光磁界センサ装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される干渉型光磁界センサ装置(以下、センサ装置とも称する)は、被測定導体を間に挟んで所定の磁界内に配置可能な一対の磁界センサ素子を使用して磁界を検出することで、検出される磁界の測定値への外部磁界の影響を抑制することできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-025794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるセンサ装置では、第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1は、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bの間を接続するPANDAファイバを介して順次入射する。特許文献1に記載されるセンサ装置では、第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1がPANDAファイバを通過する時間が磁界検出の時間差となり磁界を示す電気信号の波形がゆがむおそれがある。PANDAファイバを通過する時間による磁界検出の時間差に起因する磁界を示す電気信号の波形のゆがみは、数MHz以上の高周波数帯で動作するときに検出誤差の要因となる。特にセンサファイバ長が長いほど低い周波数帯から検出誤差を生じる。
【0005】
本発明は、検出する磁界を示す電気信号の波形のゆがみを抑制可能な干渉型光磁界センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る干渉型光磁界センサ装置は、第1直線偏波光を出射する発光部と、入射された第1直線偏波光に応じて第1直線偏光と第2直線偏光を出射し、入射された第3直線偏光及び第4直線偏光に応じて第2直線偏波光を出射する第1光学素子と、第1直線偏光及び第2直線偏光が入射され、印加される磁界に応じて第1直線偏光及び第2直線偏光を変化させて前記第3直線偏光及び第4直線偏光を出射する第1磁界センサ素子及び第2磁界センサ素子と、第1直線偏光及び第4直線偏光を伝搬する第1光路、第2直線偏光及び第3直線偏光を伝搬する第2光路、並びに第1直線偏光及び第2直線偏光のそれぞれを分波して第1磁界センサ素子及び第2磁界センサ素子に出射すると共に、第1磁界センサ素子及び第2磁界センサ素子のそれぞれから入射する第3直線偏光及び第4直線偏光のそれぞれを合波して、合波した第3直線偏光を第2光路に出射すると共に、合波した第4直線偏光を第1光路に出射する分岐カプラとを有する光路部と、第2直線偏波光の2成分を受光して電気信号に変換することで、磁界に応じた検出信号を出力する検出信号発生部と、第1直線偏波光を第1光学素子へ透過させ、第2直線偏波光を検出信号発生部へ分岐する光分岐部とを有する。
【0007】
また、本発明に係る干渉型光磁界センサ装置は、被測定導体の周りを囲むように配置され、第1磁界センサ素子及び第2磁界センサ素子を保持するヨークを更に有することが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る干渉型光磁界センサ装置は、分岐カプラと第1磁界センサ素子とを光学的に接続する第1偏波保持ファイバと、分岐カプラと第2磁界センサ素子とを光学的に接続する第2偏波保持ファイバと、を更に有し、第1偏波保持ファイバ及び第2偏波保持ファイバの長さは、互いに等しいことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る干渉型光磁界センサ装置では、第2偏波保持ファイバは、第1直線偏光、第2直線偏光、第3直線偏光及び第4直線偏光のそれぞれの偏光面を90°回転させることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る干渉型光磁界センサ装置では、第2偏波保持ファイバは、遅相軸及び進相軸を90°回転させて融着された一対の偏波保持ファイバにより形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る干渉型光磁界センサ装置は、検出する磁界を示す電気信号の波形のゆがみを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るセンサ装置のブロック図である。
図2図1に示す第1磁界センサ素子及び第2磁界センサ素子の模式図である。
図3図1において矢印Aで示される部分の部分拡大平面図である。
図4図1に示す第1受光素子、第2受光素子及び信号処理回路の回路図である。
図5図1に示すセンサ装置の動作を説明するための図(その1)である。
図6図1に示すセンサ装置の動作を説明するための図(その2)である。
図7】(a)は図1に示すセンサ装置の動作を説明するための図(その3)であり、(b)は図1に示すセンサ装置の動作を説明するための図(その4)である。
図8】(a)は比較例に係るセンサ装置のPBSと磁界センサとの接続関係を示す図であり、(b)は(a)に示す磁界センサ素子のそれぞれにおいて検出された磁界を示す電気信号が出力されるタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、干渉型光磁界センサ装置について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1は、センサ装置1のブロック図である。
【0015】
センサ装置1は、干渉型光磁界センサ装置の一例であり、発光部10と、サーキュレータ20と、1/2波長板30と、光路部40とを有する。センサ装置1は、第1磁界センサ素子50Aと、第2磁界センサ素子50Bと、第1偏波保持ファイバ51と、第2偏波保持ファイバ52と、ヨーク53と、検出信号発生部60とを更に有する。発光部10、サーキュレータ20、1/2波長板30、光路部40及び検出信号発生部60の間の光路は、PANDA(Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)ファイバによって形成される。なお、1/2波長板30、光路部40、及び検出信号発生部60の間の光路は、ボウタイ(Bow-tie)ファイバ又は楕円ジャケット(Elliptical Jacket)ファイバ等の偏波保持ファイバによって形成してもよい。
【0016】
発光部10は、発光素子11と、アイソレータ12と、偏光子13とを有する。発光素子11は、例えば半導体レーザ又は発光ダイオードであり、具体的には、ファブリペローレーザ、スーパールミネッセンスダイオード等であることが好ましい。アイソレータ12は、発光素子11が発した光をサーキュレータ20側に透過すると共に、サーキュレータ20から発光部10に入射した光を発光素子11側に透過しないことで発光素子11を保護する。アイソレータ12は、例えば偏光依存型光アイソレータであり、偏光無依存型光アイソレータであってもよい。偏光子13は、発光素子11が発した光を直線偏波光にするための光学素子であり、その種類は特に限定されない。偏光子13で得られる第1直線偏波光は、サーキュレータ20に入射される。
【0017】
サーキュレータ20は、光分岐部の一例であり、発光部10から出射された第1直線偏波光を1/2波長板30に透過すると共に、1/2波長板30から出射された第2直線偏波光を検出信号発生部60に分岐する。サーキュレータ20は、例えばファラデー回転子、1/2波長板、偏光ビームスプリッタ又は反射ミラーによって形成される。
【0018】
1/2波長板30は、第1光学素子の一例であり、サーキュレータ20から入射される第1直線偏波光の偏光面に対して方位角が22.5°になるように配置され、その第1直線偏波光の偏光面を45°回転して光路部40に出射する。1/2波長板30から出射される第1直線偏波光は、P偏光である第1直線偏光CW1と、第1直線偏光CW1に直交するS偏光である第2直線偏光CCW1とを有する。また、1/2波長板30は、光路部40から入射される第2直線偏波光の偏光面を45°回転してサーキュレータ20に出射する。
【0019】
光路部40は、PBS(偏光ビームスプリッタ)41と、分岐カプラ42と、第1光路43と、第2光路44と、位相調整素子45とを有する。
【0020】
PBS41は、1/2波長板30から入射される第1直線偏波光をP偏光成分とS偏光成分とに分離して、第1直線偏光CW1を第1光路43に、第2直線偏光CCW1を第2光路44にそれぞれ出射する。また、PBS41は、第3直線偏光CW2が第2光路44から、第4直線偏光CCW2が第1光路43からそれぞれ入射され、それらを合成して1/2波長板30に出射する。第3直線偏光CW2及び第4直線偏光CCW2は、1/2波長板30に出射される第2直線偏波光の互いに直交する偏光成分である。PBS41は、例えばプリズム型ビームスプリッタであるが、平面型ビームスプリッタ又はウェッジ型ビームスプリッタであってもよい。
【0021】
分岐カプラ42は、偏光無依存特性を有する溶融型又はフィルタ型の光ファイバカプラであり、第1光路43、第2光路44、第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52に光学的に接続される。分岐カプラ42は、第1光路43から入射される第1直線偏光CW1及び第2光路44から入射される第2直線偏光CCW1のそれぞれを分波して、第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52のそれぞれに出射する。分岐カプラ42は、第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1のそれぞれを50:50の比率で分波する。分岐カプラ42によって分波された第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1の一方は、第1偏波保持ファイバ51を介して第1磁界センサ素子50Aに入射される。分岐カプラ42によって分波された第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1の他方は、第2偏波保持ファイバ52を介して第2磁界センサ素子50Bに入射される。
【0022】
分岐カプラ42は、第1磁界センサ素子50Aから第1偏波保持ファイバ51を介して入射される第3直線偏光CW2と、第2磁界センサ素子50Bから第2偏波保持ファイバ52を介して入射される第3直線偏光CW2とを合波する。分岐カプラ42は、合波した第3直線偏光CW2を第2光路44に出射する。分岐カプラ42は、第1磁界センサ素子50Aから第1偏波保持ファイバ51を介して入射される第4直線偏光CCW2と、第2磁界センサ素子50Bから第2偏波保持ファイバ52を介して入射される及び第4直線偏光CCW2とを合波する。分岐カプラ42は、合波した第4直線偏光CCW2を第1光路43に出射する。
【0023】
第1光路43は、一端がPBS41に、他端が分岐カプラ42に光学的に接続されたPANDAファイバである。第1光路43は、PBS41から導入された第1直線偏光CW1を分岐カプラ42に導出すると共に、分岐カプラ42から導入された第4直線偏光CCW2をPBS41に導出する。第2光路44は、一端がPBS41に、他端が分岐カプラ42に光学的に接続されたPANDAファイバである。第2光路44は、PBS41から導入された第2直線偏光CCW1を分岐カプラ42に導出すると共に、分岐カプラ42から導入された第3直線偏光CW2をPBS41に導出する。分岐カプラ42間の光路もPANDAファイバである。なお、第1光路43、第2光路44及び分岐カプラ42間の光路は、ボウタイファイバ又は楕円ジャケットファイバ等の偏波保持ファイバであってもよい。
【0024】
位相調整素子45は、1/4波長板46,47と、45度ファラデー回転子48とを有する。位相調整素子45は、第2光学素子の一例であり、第2光路44に配置され、第3直線偏光CW2と第4直線偏光CCW2との位相差が90°になるように第2直線偏光CCW1及び第3直線偏光CW2の位相を調整する。1/4波長板46は、第2光路44を形成するPANDAファイバの遅相軸及び進相軸に対して光学軸が45°傾斜して配置され、直線偏光を円偏光に変換すると共に、円偏光を直線偏光に変換する。1/4波長板47は、第2光路44を形成するPANDAファイバの遅相軸及び進相軸に対して光学軸が-45°傾斜して配置され、円偏光を直線偏光に変換すると共に、直線偏光を円偏光に変換する。
【0025】
45度ファラデー回転子48は、1/4波長板46,47の間に配置され、これらから入射される円偏光の位相を変化させる。45度ファラデー回転子48は、1/4波長板47から出射される第2直線偏光CCW1の位相が1/4波長板46に入射される第2直線偏光CCW1の位相から45°シフトするように、入射光の位相を変化させる。また、45度ファラデー回転子48は、1/4波長板46から出射される第3直線偏光CW2の位相が1/4波長板47に入射される第3直線偏光CW2の位相から-45°シフトするように、入射光の位相を変化させる。
【0026】
図2は、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bの模式図である。
【0027】
第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bは、同一の構成を有する1対の素子であり、何れも1/4波長板54と、ファラデー回転子55と、ミラー素子56とを有する。
【0028】
第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bは、被測定導体100を間に挟んで所定の磁界内に配置可能であり、互いに一定の間隔を空けて一体的に形成されている。第1磁界センサ素子50Aの第2磁界センサ素子50Bに対する相対位置は固定されており、測定時にセンサ装置1が移動した場合でも第1磁界センサ素子50Aと第2磁界センサ素子50B間との距離は不変である。第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bは光透過性を有し、ファラデー回転子55に印加される磁界に応じて透過光の位相を変化させる。第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bの双方は、第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1が入射され、第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1が入射されることに応じて、第3直線偏光CW2及び第4直線偏光CCW2を出射する。
【0029】
1/4波長板54は、分岐カプラ42又は分岐カプラ42との間を光学的に接続する第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52の遅相軸及び進相軸に対して光学軸が45°傾斜して配置される。1/4波長板54は、分岐カプラ42から入射される直線偏光を円偏光に変換すると共に、ファラデー回転子55から入射される戻り光である円偏光を直線偏光に変換する。
【0030】
ファラデー回転子55は、誘電体550と、誘電体550から安定的に相分離した状態で誘電体550中に分散しているナノオーダの磁性体粒子551とを有するグラニュラー膜であり、1/4波長板54の端面に配置される。磁性体粒子551は、例えば最表層等のごく一部では酸化物になっていてもよいが、ファラデー回転子55の全体では、バインダとなる誘電体と化合物を作らずに、単独で薄膜中に分散している。ファラデー回転子55内における磁性体粒子551の分布は、完全に一様でなくてもよく、多少偏っていてもよい。誘電体550として透明性が高いものを用いれば、誘電体550中に磁性体粒子551が光の波長よりも小さいサイズで存在することにより、ファラデー回転子55は光透過性を有する。
【0031】
ファラデー回転子55は、単層のものに限らず、グラニュラー膜と誘電体膜とが交互に積層した多層膜であってもよい。グラニュラー膜を多層膜にすることで、グラニュラー膜内での多重反射によって、より大きなファラデー回転角が得られる。
【0032】
誘電体550は、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化イットリウム(YF3)等のフッ化物(金属フッ化物)が好ましい。また、誘電体550は、酸化タンタル(Ta25)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、五酸化二ニオビウム(Nb25)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化ハフニウム(HfO2)及び三酸化二アルミニウム(Al23)等の酸化物であってもよい。誘電体550と磁性体粒子551との良好な相分離のためには、酸化物よりもフッ化物の方が好ましく、透過率が高いフッ化マグネシウムが特に好ましい。
【0033】
磁性体粒子551の材質は、ファラデー効果を生じるものであればよく、特に限定されないが、材質としては、強磁性金属である鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)並びにこれらの合金が挙げられる。Fe、Co及びNiの合金としては、例えば、FeNi合金、FeCo合金、FeNiCo合金、NiCo合金が挙げられる。Fe、Co及びNiの単位長さ当たりのファラデー回転角は、従来のファラデー回転子に適用されている磁性ガーネットに比べて2~3桁近く大きい。なお、磁性体粒子551の材質は、磁性ガーネットやフェライトなどの従来からある透明磁性体を使用してもよい。
【0034】
ミラー素子56は、ファラデー回転子55の1/4波長板54とは反対側の面に形成されており、ファラデー回転子55を透過した光をファラデー回転子55に向けて反射する。ミラー素子56としては、例えば、銀(Ag)膜、金(Au)膜、アルミニウム(Al)膜又は誘電体多層膜ミラー等を用いることができる。特に、反射率の高いAg膜及び耐食性が高いAu膜が成膜上簡便で好ましい。ミラー素子56の厚さは、98%以上の十分な反射率を確保できる大きさであればよく、例えばAg膜の場合には、50nm以上かつ200nm以下であることが好ましい。ミラー素子56を用いてファラデー回転子55内で光を往復させることにより、ファラデー回転角を大きくすることができる。
【0035】
第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52のそれぞれは、互いに同一の長さを有するPANDAファイバである。第1偏波保持ファイバ51は分岐カプラ42と第1磁界センサ素子50Aとの間を光学的に接続し、第2偏波保持ファイバ52は分岐カプラ42と第2磁界センサ素子50Bとの間を光学的に接続する。第1偏波保持ファイバ51は、単一のPANDAファイバで形成され、P偏光の直線偏光が導入されたとき、P偏光の直線偏光を導出し、S偏光の直線偏光が導入されたとき、S偏光の直線偏光を導出する。第2偏波保持ファイバ52は、融着点Pfにおいて遅相軸及び進相軸を90°回転させて融着された一対のPANDAファイバにより形成され、P偏光の直線偏光が導入されたとき、S偏光の直線偏光を導出し、S偏光の直線偏光が導入されたとき、P偏光の直線偏光を導出する。第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52のそれぞれは、ボウタイファイバ又は楕円ジャケットファイバ等の偏波保持ファイバによって形成してもよい。
【0036】
第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52は、分岐カプラ42によって分波された第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1が導入される。第1偏波保持ファイバ51は、分岐カプラ42から導入された第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1を第1磁界センサ素子50Aに導出する。第2偏波保持ファイバ52は分岐カプラ42から導入された第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1の偏光面を、90°回転させて第2磁界センサ素子50Bに導出する。
【0037】
第1偏波保持ファイバ51は、第1磁界センサ素子50Aから導入された第3直線偏光CW2及び第4直線偏光CCW2を分岐カプラ42に導出する。第2偏波保持ファイバ52は、第2磁界センサ素子50Bから導入された第3直線偏光CW2及び第4直線偏光CCW2の偏光面を、90°回転させて分岐カプラ42に導出する。
【0038】
図3は、図1において矢印Aで示される部分の部分拡大平面図である。
【0039】
ヨーク53は、第1ヨーク53A及び第2ヨーク53Bを有する。第1ヨーク53A及び第2ヨーク53Bは、比透磁率が1よりも大きな磁性体から成り、軟磁性粒子が樹脂などの絶縁体に分散したコンポジット材料を用いれば、渦電流の抑制効果によって高周波特性が良好となり好ましい。被測定導体100に電流が流れることにより生じる磁界により形成される磁気回路を第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bと共に形成する。
【0040】
第1ヨーク53Aは、第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52が埋入され、第2ヨーク53Bと共に第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bを挟持することで、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bを保持する。第2ヨーク53Bは、不図示の固定部材を介して第1ヨーク53Aに固定される。
【0041】
検出信号発生部60は、PBS61と、第1受光素子62と、第2受光素子63と、信号処理回路70とを有する。検出信号発生部60は、サーキュレータ20で分岐された第2直線偏波光をS偏光成分64及びP偏光成分65に分離する。また、検出信号発生部60は、分離したS偏光成分64及びP偏光成分65を受光して電気信号に変換して差動増幅することで、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bに印加される磁界に応じた検出信号Edを出力する。PBS61は、プリズム型、平面型、ウェッジ基板型又は光導波路型等の偏光ビームスプリッタであり、サーキュレータ20で分岐された第2直線偏波光をS偏光成分64とP偏光成分65とに分離する。
【0042】
図4は、第1受光素子62、第2受光素子63及び信号処理回路70の回路図である。
【0043】
信号処理回路70は、例えばオペアンプである増幅素子71と、抵抗素子72とを有する。第1受光素子62及び第2受光素子63のそれぞれは、例えばPINフォトダイオードであり、光電変換をして受光量に応じた電気信号を出力する。第1受光素子62のアノード及び第2受光素子63のカソードは、増幅素子71のマイナス入力端子に接続され、第1受光素子62のカソードは正電源+Vに接続され、第2受光素子63のアノードは負電源-Vに接続される。第1受光素子62は、第3直線偏光CW2と第4直線偏光CCW2との合波のS偏光成分64を受光し、その強度に比例する電流である第1電気信号E1を出力する。第2受光素子63は、第3直線偏光CW2と第4直線偏光CCW2との合波のP偏光成分65を受光し、その強度に比例する電流である第2電気信号E2を出力する。
【0044】
検出信号発生部60に入射する第3直線偏光CW2のS偏光成分とP偏光成分は次式のECWで表され、第4直線偏光CCW2のS偏光成分とP偏光成分は次式のECCWで表される。θFはファラデー回転子55に印加される磁界に応じたファラデー回転角であり、jは虚数単位である。
【0045】
【数1】
【0046】
第3直線偏光CW2と第4直線偏光CCW2との合波のS偏光成分P0及びP偏光成分P90は、上記のECWとECCWの式から次式のように表される。ECW,0,ECCW,0,ECW,90,ECCW,90は、それぞれ、第3直線偏光CW2のS偏光成分、第4直線偏光CCW2のS偏光成分、第3直線偏光CW2のP偏光成分、第4直線偏光CCW2のP偏光成分である。
【0047】
【数2】
【0048】
信号処理回路70は、反転増幅回路であり、第1電気信号E1と第2電気信号E2との差動信号(E1-E2)を反転増幅することで、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bに印加される磁界に応じた検出信号Edを出力する。増幅素子71のプラス入力端子は接地され、増幅素子71のマイナス入力端子には差動信号(E1-E2)が入力される。差動信号(E1-E2)は、S偏光成分P0とP偏光成分P90との差分に比例し、ファラデー回転角θFに応じた電気信号である。検出信号Edは、基準光強度に相当する直流成分が除去された電気信号である。
【0049】
図5図7は、センサ装置1の動作を説明するための図である。図5及び図7(a)は第1直線偏光CW1及び第3直線偏光CW2の伝搬状態を示し、図6及び図7(b)は第2直線偏光CCW1及び第4直線偏光CCW2の伝搬状態を示す。図5図7において、細い矢印は光の伝搬方向を示し、図5及び図7(a)の太い矢印101~116及び図6及び図7(b)の太い矢印201~216はそれぞれの箇所における偏光状態を示す。符号Iは被測定導体100に流れる電流を示し、符号Hは被測定磁界を示す。
【0050】
まず、P偏光である第1直線偏波光が発光部10の偏光子13から出射され(矢印101,201)、サーキュレータ20を透過して1/2波長板30に入射する(矢印102,202)。第1直線偏波光は、1/2波長板30を透過することで偏光面が45°回転して、P偏光である第1直線偏光CW1とS偏光である第2直線偏光CCW1とを有する光になる(矢印103,203)。第1直線偏光CW1は、PBS41を介して第1光路43に入射され(矢印104)、分岐カプラ42で分波され、第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52のそれぞれに導入される(矢印105,106)。
【0051】
第1偏波保持ファイバ51に導入された第1直線偏光CW1は、第1偏波保持ファイバ51から第1磁界センサ素子50Aに入射される。第1磁界センサ素子50Aに入射した第1直線偏光CW1は、1/4波長板54を透過することで左回転の円偏光になり、ファラデー回転子55を透過することで被測定磁界Hに応じて位相を-θF変化させる。第1直線偏光CW1は、ミラー素子56で反射することで右回転の円偏光になり、再びファラデー回転子55を透過することで被測定磁界Hに応じて位相を更に-θF変化させる。第1直線偏光CW1は、再び1/4波長板54を透過することでS偏光に変換されて、第1偏波保持ファイバ51を介して分岐カプラ42に第3直線偏光CW3として出射される(矢印107)。第1磁界センサ素子50Aでの合計の位相変化量は-2θFになる。
【0052】
第2偏波保持ファイバ52に導入されたP偏光である第1直線偏光CW1は、第2偏波保持ファイバ52の融着点Pfにおいて偏光面が90°回転されてS偏光として第2磁界センサ素子50Bに入射される(矢印108)。第2磁界センサ素子50Bに入射した第1直線偏光CW1は、1/4波長板54を透過することで左回転の円偏光になり、ファラデー回転子55を透過することで被測定磁界Hに応じて位相を-θF変化させる。第1直線偏光CW1は、ミラー素子56で反射することで右回転の円偏光になり、再びファラデー回転子55を透過することで被測定磁界Hに応じて位相を更に-θF変化させる。第1直線偏光CW1は、再び1/4波長板54を透過することでP偏光に変換されて、第2偏波保持ファイバ52に第3直線偏光CW3として導入される(矢印109)。第3直線偏光CW3は、第2偏波保持ファイバ52の融着点Pfにおいて偏光面が90°回転されてS偏光である第3直線偏光CW2として分岐カプラ42に出射される(矢印110)。第2磁界センサ素子50Bでの合計の位相変化量は-2θFになる。
【0053】
第3直線偏光CW2は、分岐カプラ42を介して第2光路44の位相調整素子45に入射される(矢印111)。位相調整素子45において、第3直線偏光CW2は、1/4波長板47、45度ファラデー回転子48及び1/4波長板46を順に透過することで、左回転の円偏光になり、位相を-45°変化させ、P偏光になる。位相調整素子45を透過した第3直線偏光CW2は、PBS41を介してS偏光に変換され(矢印112)、1/2波長板30に出射される。
【0054】
一方、第2直線偏光CCW1は、PBS41を介してP偏光に変換されて第2光路44に入射され(矢印204)、位相調整素子45に入射される。位相調整素子45において、第2直線偏光CCW1は、1/4波長板46、45度ファラデー回転子48及び1/4波長板47を順に透過することで、左回転の円偏光になり、位相を45°変化させ、P偏光になる(矢印205)。位相調整素子45を透過した第2直線偏光CCW1は、分岐カプラ42で分波され、第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52のそれぞれに導入される(矢印206,207)。
【0055】
第1偏波保持ファイバ51に導入された第2直線偏光CCW1は、第1偏波保持ファイバ51から第1磁界センサ素子50Aに入射される。第1磁界センサ素子50Aに入射した第2直線偏光CCW1は、1/4波長板54を透過することで左回転の円偏光になり、ファラデー回転子55を透過することで被測定磁界Hに応じて位相を-θF変化させる。第2直線偏光CCW1は、ミラー素子56で反射することで右回転の円偏光になり、再びファラデー回転子55を透過することで被測定磁界Hに応じて位相を更に-θF変化させ、再び1/4波長板54を透過することでS偏光に変換される。第2直線偏光CCW1は、第1偏波保持ファイバ51を介して分岐カプラ42に第4直線偏光CCW2として出射される(矢印208)。第1磁界センサ素子50Aでの合計の位相変化量は-2θFになる。
【0056】
第2偏波保持ファイバ52に導入されたS偏光で第2直線偏光CCW1は、第2偏波保持ファイバ52の融着点Pfにおいて偏光面が90°回転されてP偏光として第2磁界センサ素子50Bに入射される(矢印209)。第2磁界センサ素子50Bに入射した第2直線偏光CCW1は、1/4波長板54を透過することで左回転の円偏光になり、ファラデー回転子55を透過することで被測定磁界Hに応じて位相を-θF変化させる。第2直線偏光CCW1は、ミラー素子56で反射することで右回転の円偏光になり、再びファラデー回転子55を透過することで被測定磁界Hに応じて位相を更に-θF変化させる。第2直線偏光CCW1は、再び1/4波長板54を透過することでS偏光に変換され、第2偏波保持ファイバ52に第4直線偏光CCW2として導入される(矢印210)。第4直線偏光CCW2は、第2偏波保持ファイバ52の融着点Pfにおいて偏光面が90°回転されてP偏光である第4直線偏光CCW2として分岐カプラ42に出射される(矢印211)。第2磁界センサ素子50Bでの合計の位相変化量は-2θFになる。
【0057】
第4直線偏光CCW2は、分岐カプラ42を介して第1光路43に導入される(矢印212)。第1光路43に導出された第4直線偏光CCW2は、PBS41を介してP偏光に変換され(矢印113)、1/2波長板30に出射される。
【0058】
第3直線偏光CW2及び第4直線偏光CCW2はPBS41で合波され、1/2波長板30を透過することで偏光面が45°回転する。第3直線偏光CW2及び第4直線偏光CCW2のそれぞれは、P偏光成分とS偏光成分とを有する光になり(矢印113,213)、サーキュレータ20で分岐してPBS61に入射する(矢印114,214)。第3直線偏光CW2及び第4直線偏光CCW2の合波のS偏光成分は第1受光素子62に(矢印115,215)、P偏光成分は第2受光素子63に(矢印116,216)、それぞれPBS61を介して入射する。このように、センサ装置1では、時計回りの偏光Ecwと反時計回りの偏光EccwがPBS41で2経路に分離され、それぞれ2個の磁界センサ素子を通過し、最後に1/2波長板30を通過するときに互いに干渉する。
【0059】
センサ装置1では、被測定導体100の表裏に配置される第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bに直線偏光を同時に入射することで、被測定導体100の表裏の磁界Hを同時に計測することができる。
【0060】
図8(a)は、特許文献1に記載される比較例に係るセンサ装置のPBS42A及び42Bと第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bとの接続関係を示す図である。図8(b)は、図8(a)に示す第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bのそれぞれにおいて検出された磁界を示す電気信号が出力されるタイミングを示す図である。
【0061】
特許文献1に記載されるセンサ装置では、第1直線偏光CW1は、PBS42Aから第1磁界センサ素子50Aに入射される。第1直線偏光CW1は、第1磁界センサ素子50Aから出射され、PBS42A及び42Bを介して、第1磁界センサ素子50Aから光学的距離Lだけ離隔した第2磁界センサ素子50Bに入射される。第1直線偏光CW1は、第2磁界センサ素子50Bから第3直線偏光CW2とて出射される。
【0062】
第2磁界センサ素子50Bは、第1直線偏光CW1が第1磁界センサ素子50Aに入射してから、第1磁界センサ素子50Aと第2磁界センサ素子50Bの間の光学的距離Lに応じた時間tL後に第1直線偏光CW1が入射する。時間差tLが生じることより、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bが検出した磁界を示す電気信号の波形W101及びW102が出力されるタイミングが相違する。第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bが磁界を検出するタイミングが相違することで、検出された磁界を示す電気信号の波形W103は、立上り波形及び立下り波形に傾きが生じて波形にゆがみが生じる。
【0063】
一方、センサ装置1では、第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1は、分岐カプラ42によって分波されて第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bの双方に同時に入射される。センサ装置1では、第1直線偏光CW1及び第2直線偏光CCW1は、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bの双方に同時に入射されるので、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bが磁界を検出するタイミングが一致する。センサ装置1では、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bが磁界を検出するタイミングが一致するので、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bが検出によって検出された磁界を示す電気信号は、波形にゆがみが生じない。センサ装置1では、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bが検出によって検出された磁界を示す電気信号は、波形にゆがみが生じないので、高周波数で動作するときに検出誤差を抑制できる。
【0064】
また、センサ装置1は、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bを保持するヨーク53を有する。センサ装置1は、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bをヨーク53によって保持することで、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bに磁界を集中させて、高精度に磁界を検出できる。
【0065】
また、センサ装置1では、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bは、同一の長さを有する第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52によって分岐カプラ42に光学的に接続されるので、分岐カプラ42との間の光学的距離が等しい。センサ装置1では、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bは、分岐カプラ42との間の光学的距離が等しいので、磁界を検出するタイミングが相違するおそれが低く、高周波数で動作するときに検出誤差を抑制できる。
【0066】
また、センサ装置1では、第2偏波保持ファイバ52は、導入される直線偏光の偏光面を90°回転させることで、第2磁界センサ素子50Bにおけるファラデー回転の回転方向を第1磁界センサ素子50Aにおけるファラデー回転の回転方向と反転できる。センサ装置1では、第2磁界センサ素子50Bにおけるファラデー回転の回転方向を第1磁界センサ素子50Aにおけるファラデー回転の回転方向と反転させることで、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bのファラデー回転を合成できる。
【0067】
また、センサ装置1では、第2偏波保持ファイバ52は、遅相軸及び進相軸を90°回転させて融着された一対の偏波保持ファイバにより形成されるので、導入される直線偏光の偏光面を90°回転させる構造を簡易且つ高精度で製造することができる。
【0068】
センサ装置1では、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bは、ヨークによって固定的に保持されるが、実施形態に係るセンサ装置では、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bは、ヨーク以外の部材によって保持されてもよい。また、実施形態に係るセンサ装置では、第1磁界センサ素子50A及び第2磁界センサ素子50Bは、ヨーク又はヨーク以外の部材によって移動可能に保持されてもよい。
【0069】
また、センサ装置1では、第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52の長さは同一であるが、実施形態に係るセンサ装置では、第1偏波保持ファイバ51及び第2偏波保持ファイバ52の長さは、検出精度に影響を与えない範囲で相違してもよい。
【0070】
また、センサ装置1では、第2偏波保持ファイバ52は、遅相軸及び進相軸を90°回転させて融着された一対の偏波保持ファイバにより形成される。しかしながら、実施形態に係るセンサ装置では、1/2波長板を挟持するように配置された一対の偏波保持ファイバにより形成されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 センサ装置
10 発光部
20 サーキュレータ(光分岐部)
30 1/2波長板(第1光学素子)
40 光路部
42 分岐カプラ
43 第1光路
44 第2光路
50A 第1磁界センサ素子
50B 第2磁界センサ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8