(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159027
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】製氷装置
(51)【国際特許分類】
F25C 1/10 20060101AFI20231024BHJP
F25C 5/187 20180101ALI20231024BHJP
【FI】
F25C1/10 301C
F25C5/187 B
F25C1/10 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030230
(22)【出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2022068954
(32)【優先日】2022-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 勇太
(57)【要約】
【課題】製氷装置の設置スペースに対して、製氷皿のサイズを最大化することができる製氷装置を提供する。
【解決手段】製氷皿と、前記製氷皿を回動させる駆動ユニットと、を備え、前記駆動ユニットは、前記製氷皿を一方に回転させてひねり、その後他方へ回転させてひねることにより、該製氷皿から氷を落下させる製氷装置によりこれを解決する。製氷皿をひねって氷を排出する方式(ひねり式)を採用する従来の自動製氷装置は、一般に、製氷皿を一方へのみ回転させてこれをひねる仕様となっている。本発明では、製氷皿をまず一方へひねって氷を製氷皿から剥離させ、その後、製氷皿を他方へひねりきって氷を排出することにより、従来よりも大型の製氷皿を採用することが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製氷皿と、
前記製氷皿を回動させる駆動ユニットと、を備え、
前記駆動ユニットは、前記製氷皿を一方に回転させてひねり、その後他方へ回転させてひねることにより、該製氷皿から氷を落下させる、
製氷装置。
【請求項2】
前記製氷皿のその軸線方向における両端のうち、前記駆動ユニットに接続される側の端部を該製氷皿の後端、その反対側の端部を該製氷皿の前端といい、該前端とその付近を合わせて前端近傍部というときに、
前記製氷皿の前端近傍部の回転軌道上には、前記製氷皿が一方および他方に回転したときに該前端近傍部に接触してその回転を妨げる接触部が設けられる、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項3】
前記製氷皿が液体の水を保持する配置角度のことを該製氷皿の製氷位置というときに、
前記駆動ユニットは、前記製氷皿が製氷位置に配置されたことを検知する手段である第1検知手段を有する、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項4】
前記製氷皿が製氷位置とは異なる所定の配置角度になったことを検知する手段である第2検知手段をさらに備える、
請求項3に記載の製氷装置。
【請求項5】
前記駆動ユニットは、
前記製氷皿に接続され、これを回動させる出力部と、
回転端を中心として自由端を旋回させるアーム状部材である第1レバーと、
前記第1レバーをその旋回方向のいずれか一方へ付勢する付勢部材と、
前記出力部に設けられ、その周回軌道上で前記第1レバーに接触し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1レバーを回転させる、第1レバー操作部と、を有し、
前記第1検知手段は機械的なスイッチであり、前記第1レバーの旋回範囲内に配置される、
請求項3に記載の製氷装置。
【請求項6】
前記出力部は円形に広がったフランジ状部である円板部を有し、
前記円板部の一方の端面を表面、その反対側の端面を裏面というときに、
前記製氷皿は前記円板部の表面側に配置され、前記第1レバー操作部も該円板部の表面側に設けられる、
請求項5に記載の製氷装置。
【請求項7】
氷が貯えられる容器である貯氷部と、
回転端を中心として自由端を旋回させ、前記貯氷部内の氷の量を検査するアーム状部材である、検氷レバーと、をさらに備え、
前記出力部は、前記円板部の外周面に歯部が形成され、該円板部の裏面は平面カム機構の原動節を構成しており、
前記円板部の裏面側には、
駆動源である電気モータと、
前記電気モータの回転を減速して前記出力部に伝達する減速歯車列と、
前記平面カム機構の従動節を構成する軸体であり、前記検氷レバーが直接または他の動力伝達部材を介して接続される第1変換軸と、
前記平面カム機構の従動節を構成し、回転端および自由端を有するアーム状部材であり、前記出力部の回転に連動してその自由端を旋回させる、第2レバーと、
前記第2レバーの旋回範囲内に配置される機械的なスイッチであり、前記製氷皿が製氷位置とは異なる所定の配置角度になったことを検知する手段である第2検知手段と、
前記第1変換軸に設けられ、その周回軌道上で前記第2レバーに接触することで前記第2レバーの旋回を妨げる、第2レバー操作部と、が配置される、
請求項6に記載の製氷装置。
【請求項8】
氷が貯えられる容器である貯氷部と、
回転端を中心として自由端を旋回させ、前記貯氷部内の氷の量を検査するアーム状部材である、検氷レバーと、をさらに備え、
前記駆動ユニットは、
前記製氷皿に接続され、これを回動させる出力部と、
前記出力部の回転に連動して回転する軸体である第1変換軸と、
前記第1変換軸の回転に連動して回転し、前記検氷レバーが接続される軸体である、第2変換軸と、を有し、
前記第1変換軸の軸線(回転中心線)は前記出力部の軸線の方向に対して直角に延び、
前記第2変換軸の軸線は前記第1変換軸の軸線の方向に対して直角に延びており、これにより前記出力部の軸線と前記第2変換軸の軸線とが平行になる、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項9】
前記検氷レバーは、前記第2変換軸の軸線に対して垂直方向に延びる旋回部と、該旋回部の先端から垂直方向に水平に延びる昇降部と、を有する、
請求項8に記載の製氷装置。
【請求項10】
前記旋回部は、前記出力部の軸線の位置よりも下方に配置される、
請求項9に記載の製氷装置。
【請求項11】
前記製氷皿が液体の水を保持する配置角度のことを該製氷皿の製氷位置というときに、
前記昇降部は、製氷位置にある前記製氷皿の上面よりも低い位置に配置される、
請求項9に記載の製氷装置。
【請求項12】
前記駆動ユニットに対して前記製氷皿が配置される位置を該駆動ユニットの表側というときに、
前記製氷皿は前記駆動ユニットの表側に配置され、前記検氷レバーも該駆動ユニットの表側に配置される、
請求項8に記載の製氷装置。
【請求項13】
前記第1変換軸と前記第2変換軸とは傘歯歯車により接続される、
請求項8に記載の製氷装置。
【請求項14】
前記駆動ユニットは、前記製氷皿に接続され、これを回動させる出力部を有し、
前記出力部の前記製氷皿側を該出力部の表側、その反対側を該出力部の裏側、というときに、前記出力部は、その裏側に、該出力部の回転中心からその径方向外側に広がった面である裏面を有し、
前記裏面は平面カム機構の原動節を構成しており、該裏面には、凹部である第1凹部と、該第1凹部からさらに深く窪んだ凹部である第2凹部と、が形成され、
前記第1凹部の周面および前記第2凹部の周面には、それぞれ、前記平面カム機構の従動節を構成する別々の部材が接触する、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項15】
氷が貯えられる容器である貯氷部と、
回転端を中心として自由端を旋回させ、前記貯氷部内の氷の量を検査するアーム状部材である、検氷レバーと、をさらに備え、
前記駆動ユニットはさらに、
前記従動節を構成する軸体であり、前記検氷レバーが直接または他の動力伝達部材を介して接続される第1変換軸と、
前記従動節を構成するアーム状部材であり、回転端および自由端を有し、前記出力部の回転に連動してその自由端を旋回させる第2レバーと、を有し、
前記第2レバーは、その一部が前記第1凹部の周面を摺動し、
前記第1変換軸は、その一部が前記第2凹部の周面を摺動する、
請求項14に記載の製氷装置。
【請求項16】
前記第1変換軸は、その周回軌道上で前記第2レバーに接触し、前記第2レバーの旋回を妨げる、第2レバー操作部を有する、
請求項15に記載の製氷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製氷装置に関し、より具体的には、冷蔵庫(冷凍庫)内で氷を自動的に製造する自動製氷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、貯氷容器内の氷量の検知と製氷皿の初期位置の検知とを一つのタクトスイッチで行う製氷装置が開示されている。下記特許文献2には、製氷皿と平行な軸線(回転中心線)を有する検氷レバーで貯氷容器内の氷量を検査する製氷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-155926号公報
【特許文献2】特開2014-142093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製氷皿の容積は製氷装置の製氷能力を左右する。製氷能力を最大化するためには製氷皿の容積も限界まで大きくすることが望ましい。しかし単純に製氷皿を大きくした場合、それにより製氷皿の剛性も高くなるため、製氷皿を一方へひねるだけでは十分に氷を排出できなくなるおそれがある。
【0005】
また、製氷装置を始動させる際には、製氷皿の配置角度を水平状態に初期化する必要がある。例えば停電後に電力が再投入された場合など、製氷皿に水が貯えられた状態で初期化処理が実行されることがある。製氷皿に液体の水が保持された状態でこれがひねられると、製氷皿の水が貯氷容器内にこぼれるおそれがある。製氷皿が不必要にひねられることは、製氷皿の部品寿命の点からも望ましくない。
【0006】
また、冷蔵庫(冷凍庫)はその本来的な用途である食品・食材の収容能力をできるだけ高めるため、製氷装置の設置スペースは最小限に抑えられている。よって現行の製氷装置の製氷皿を単純に大きくすることはそれ自体が容易でない。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、製氷装置の設置スペースに対して、製氷皿のサイズを最大化することができる製氷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の製氷装置は、製氷皿と、前記製氷皿を回動させる駆動ユニットと、を備え、前記駆動ユニットは、前記製氷皿を一方に回転させてひねり、その後他方へ回転させてひねることにより、該製氷皿から氷を落下させることをその要旨とする。
【0009】
製氷皿をひねって氷を排出する方式(ひねり式)を採用する従来の自動製氷装置は、一般に、製氷皿を一方へのみ回転させてこれをひねる仕様となっている。本発明では、製氷皿をまず一方へひねって氷を製氷皿から剥離させ、その後、製氷皿を他方へひねりきって氷を排出することにより、従来よりも大型の製氷皿を採用することが可能となる。
【0010】
また、前記製氷皿のその軸線方向における両端のうち、前記駆動ユニットに接続される側の端部を該製氷皿の後端、その反対側の端部を該製氷皿の前端といい、該前端とその付近を合わせて前端近傍部というときに、前記製氷皿の前端近傍部の回転軌道上には、前記製氷皿が一方および他方に回転したときに該前端近傍部に接触してその回転を妨げる接触部が設けられることが好ましい。製氷皿の支点(駆動ユニットとの接続部)から離れた部位の回転を妨げることにより製氷皿を小さな力で効率的にひねることができる。
【0011】
また、前記製氷皿が液体の水を保持する配置角度のことを該製氷皿の製氷位置というときに、前記駆動ユニットは、前記製氷皿が製氷位置に配置されたことを検知する手段である第1検知手段を有することが好ましい。製氷皿が水を保持可能な姿勢になったことを検知する手段を備えることで、製氷皿が不必要にひねられることが避けられる。
【0012】
また、本発明の製氷装置は、前記製氷皿が製氷位置とは異なる所定の配置角度になったことを検知する手段である第2検知手段をさらに備えることが好ましい。製氷皿が製氷位置に配置されたことを検知する手段(第1検知手段)と、これが他の配置角度になったことを検知する手段(第2検知手段)とを別々に備えることにより、つまり第1検知手段を製氷位置の検知に特化させることにより、製氷皿が製氷位置に配置されたことをより精度よく検知することが可能となる。
【0013】
このとき、前記駆動ユニットは、前記製氷皿に接続され、これを回動させる出力部と、回転端を中心として自由端を旋回させるアーム状部材である第1レバーと、前記第1レバーをその旋回方向のいずれか一方へ付勢する付勢部材と、前記出力部に設けられ、その周回軌道上で前記第1レバーに接触し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1レバーを回転させる、第1レバー操作部と、を有し、前記第1検知手段は機械的なスイッチであり、前記第1レバーの旋回範囲内に配置される構成としてもよい。
【0014】
また、前記出力部は円形に広がったフランジ状部である円板部を有し、前記円板部の一方の端面を表面、その反対側の端面を裏面というときに、前記製氷皿は前記円板部の表面側に配置され、前記第1レバー操作部も該円板部の表面側に設けられることが好ましい。一般に自動製氷装置の駆動ユニットは、製氷皿に接続される出力部よりも内側(出力部の裏面側)にその駆動機構が置かれる。つまり出力部の表面側は製氷皿の駆動以外にはあまり用いられない。本発明は、出力部の表面側も積極的に活用することで、追加機能を実装する余裕を得ている。
【0015】
このとき、本発明の製氷装置は、氷が貯えられる容器である貯氷部と、回転端を中心として自由端を旋回させ、前記貯氷部内の氷の量を検査するアーム状部材である、検氷レバーと、をさらに備え、前記出力部は、前記円板部の外周面に歯部が形成され、該円板部の裏面は平面カム機構の原動節を構成しており、前記円板部の裏面側には、駆動源である電気モータと、前記電気モータの回転を減速して前記出力部に伝達する減速歯車列と、前記平面カム機構の従動節を構成する軸体であり、前記検氷レバーが直接または他の動力伝達部材を介して接続される第1変換軸と、前記平面カム機構の従動節を構成し、回転端および自由端を有するアーム状部材であり、前記出力部の回転に連動してその自由端を旋回させる、第2レバーと、前記第2レバーの旋回範囲内に配置される機械的なスイッチであり、前記製氷皿が製氷位置とは異なる所定の配置角度になったことを検知する手段である第2検知手段と、前記第1変換軸に設けられ、その周回軌道上で前記第2レバーに接触することで前記第2レバーの旋回を妨げる、第2レバー操作部と、が配置される構成としてもよい。
【0016】
また、本発明の製氷装置は、氷が貯えられる容器である貯氷部と、回転端を中心として自由端を旋回させ、前記貯氷部内の氷の量を検査するアーム状部材である、検氷レバーと、をさらに備え、前記駆動ユニットは、前記製氷皿に接続され、これを回動させる出力部と、前記出力部の回転に連動して回転する軸体である第1変換軸と、前記第1変換軸の回転に連動して回転し、前記検氷レバーが接続される軸体である、第2変換軸と、を有し、前記第1変換軸の軸線(回転中心線)は前記出力部の軸線の方向に対して直角に延び、前記第2変換軸の軸線は前記第1変換軸の軸線の方向に対して直角に延びており、これにより前記出力部の軸線と前記第2変換軸の軸線とが平行になることが好ましい。これにより検氷レバーの回転中心線を出力部の回転中心線に対して平行に保ったまま、これを任意の位置に配置することが可能となる。
【0017】
このとき、前記検氷レバーは、前記第2変換軸の軸線に対して垂直方向に延びる旋回部と、該旋回部の先端から垂直方向に水平に延びる昇降部と、を有する、ことが好ましい。検氷レバーの旋回部をできるだけ長く確保することにより、小さな回転動作でその先端(昇降部)を大きく昇降させることができる。また、貯氷部の氷量検査の精度を高めるためには、満氷かどうかを判断する境界面に対して、検氷レバーを点ではなく線または面で触れることが望ましい。本発明の昇降部は水平に延びているため、氷量を常に線または面で検査することができる。
【0018】
このとき、前記旋回部は、前記出力部の軸線の位置よりも下方に配置されることが好ましい。さらに、前記製氷皿が液体の水を保持する配置角度のことを該製氷皿の製氷位置というときに、前記昇降部は、製氷位置にある前記製氷皿の上面よりも低い位置に配置されることが好ましい。検氷レバーが製氷皿に隣接する(水平に並ぶ)位置を昇降する場合、製氷皿は、冷蔵庫内の限られた設置スペースにおいて、その検氷レバーが占有する空間を除いた空間に設置される。つまり製氷皿の水平方向の設置スペースが検氷レバーに浸食される。検氷レバーの昇降範囲を製氷皿の上面よりも低い範囲に収めることにより、製氷皿の水平方向のサイズを最大化することができる。
【0019】
また、前記駆動ユニットに対して前記製氷皿が配置される位置を該駆動ユニットの表側というときに、前記製氷皿は前記駆動ユニットの表側に配置され、前記検氷レバーも該駆動ユニットの表側に配置されてもよい。
【0020】
また、前記第1変換軸と前記第2変換軸とは傘歯歯車により接続されることが好ましい。
【0021】
また、本発明の製氷装置は、前記駆動ユニットが、前記製氷皿に接続されてこれを回動させる出力部を有し、前記出力部の前記製氷皿側を該出力部の表側、その反対側を該出力部の裏側、というときに、前記出力部は、その裏側に、該出力部の回転中心からその径方向外側に広がった面である裏面を有し、前記裏面は平面カム機構の原動節を構成しており、該裏面には、凹部である第1凹部と、該第1凹部からさらに深く窪んだ凹部である第2凹部と、が形成され、前記第1凹部の周面および前記第2凹部の周面には、それぞれ、前記平面カム機構の従動節を構成する別々の部材が接触することが好ましい。本発明の製氷装置は、製氷皿を一方向だけでなく双方向にひねることをその特徴としている。つまり本発明の製氷装置は、従来の製氷装置に比べて、出力部の回動範囲が広く、その動作も複雑である。そこで、出力部の裏面に設けられる原動節として、凹部と、その凹部の中に配置されたさらに深い凹部とを用いることにより、これらの周面、つまり各従動節の摺動面同士の干渉を抑えることができる。これにより出力部の回動範囲の自由度が高められる。
【0022】
このとき、本発明の製氷装置は、氷が貯えられる容器である貯氷部と、回転端を中心として自由端を旋回させ、前記貯氷部内の氷の量を検査するアーム状部材である、検氷レバーと、をさらに備え、前記駆動ユニットはさらに、前記従動節を構成する軸体であり、前記検氷レバーが直接または他の動力伝達部材を介して接続される第1変換軸と、前記従動節を構成するアーム状部材であり、回転端および自由端を有し、前記出力部の回転に連動してその自由端を旋回させる第2レバーとを有し、前記第2レバーは、その一部が前記第1凹部の周面を摺動し、前記第1変換軸は、その一部が前記第2凹部の周面を摺動することが好ましい。出力部の回転に連動する第2レバー及び第1変換軸を、深さの異なる第1凹部および第2凹部で操作することにより、これらの動作が互いに干渉し合うことが避けられる。
【0023】
またこのとき、前記第1変換軸は、その周回軌道上で前記第2レバーに接触し、前記第2レバーの旋回を妨げる第2レバー操作部を有してもよい。第1変換軸と第2レバーが互いに接触する関係にあっても、つまりこれらが間近に配置されなければならない関係にあっても、深さの異なる第1凹部および第2凹部でこれらを操作することにより、これらの動作の干渉を抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、製氷装置の設置スペースに対して、製氷皿のサイズを最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る製氷装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】製氷装置が行う離氷動作の流れを示す模式図である。
【
図3】駆動ユニットの動力伝達経路を示す背面図である。
【
図4】第1変換軸、第2変換軸、及び検氷レバーの連結構造を示す斜視図である。
【
図6】第1変換軸の構造を示す斜視図(a)及び側面図(b)である。
【
図7】第2レバーの構造を示す平面図(a)及び斜視図(b)である。
【
図8】製氷皿が製氷位置にあるときの駆動機構の様子を示す背面図である。
【
図9】離氷準備動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。
【
図10】検氷動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。
【
図11】離氷動作の続行時/中断時の各部の動作を示すタイミングチャートである。
【
図12】排出動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。
【
図13】氷排出後の駆動機構の様子を示す背面図である。
【
図14】製氷装置のイニシャライズ動作を示す正面図である。
【
図15】イニシャライズ動作における第1スイッチの入出力の変化を示すタイミングチャートである。
【
図16】他の実施形態に係るカムギヤの背面図(a)及び背面斜視図(b)である。
【
図17】カムギヤと、第1変換軸及び第2レバーとの接続状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明にかかる製氷装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する製氷装置90は、図示しない冷蔵庫の冷凍室内に設置され、冷蔵庫から水の供給を受けて自動的に氷を製造する装置である。
【0027】
以下の説明における「上下」とは、
図1に描かれた座標軸のZ軸に平行な方向を意味しており、Z1側を「上」、Z2側を「下」とする。「前後」及び「表裏」とは、同座標軸のX軸に平行な方向であり、X1側を「前」「表」、X2側を「後ろ」「裏」とする。同様に、「左右」とは、同座標軸のY軸に平行な方向であり、Y1側を「右」、Y2側を「左」とする。また、「水平」とは、同座標軸に示されるXY平面方向を意味している。
【0028】
(全体構成)
図1は製氷装置90の外観を示す斜視図である。製氷装置90は製氷皿20をひねって氷を排出するいわゆるひねり式の自動製氷装置である。製氷装置90は、複数のセル(貯水室)を有する樹脂製の製氷皿20と、製氷皿20を回動させるモータユニットである駆動ユニット10と、を有している。駆動ユニット10及び製氷皿20は、冷凍庫内に据え付けられる枠体であるフレーム91に支持されている。また、駆動ユニット10は、後述する貯氷部92内の氷の量を検査するアーム状部材である検氷レバー31を備えている。
【0029】
(離氷動作概要)
図2は、製氷装置90が行う離氷動作(製氷皿20から氷を排出する動作)の流れを示す模式図である。
【0030】
図2(a)は、製氷皿20が液体の水を保持する配置角度である「製氷位置」にある状態を示す図である。冷蔵庫側に備えられた制御装置は、製氷皿20の温度をその下面に取り付けられたサーミスタ(不図示)で監視しており、製氷皿20の温度が規定値に至ったことを検知すると離氷動作を開始する。
図2(b)から
図2(d)は製氷装置90による離氷動作を示す図である。
【0031】
図2(b)は、製氷装置90による「離氷準備動作」を示す図である。「離氷準備動作」とは、製氷皿20から氷が剥がれやすくなるように、製氷皿20を予備的にひねる動作である。製氷皿20の温度が規定値に至ると、駆動ユニット10は、まず、製氷皿20を図示CCW方向へ回転させる。製氷皿20の前端には、フレーム91の軸穴に支持される軸部23がその中央に形成されており、軸部23の左右には、前方に突き出した凸部である第1凸部21及び第2凸部22が形成されている。フレーム91には、第1凸部21及び第2凸部22の回転軌道上に、これらがCCW方向およびCW方向に回転したときにこれらに接触し、その回転を妨げる、第1接触部911及び第2接触部912が設けられている。製氷皿20のCCW方向への回転は、その回転の開始とほぼ同時に第1接触部911及び第2接触部912により妨げられる。駆動ユニット10はその状態からさらに製氷皿20をCCW方向へ数十度回転させ、製氷皿20をひねる。これにより氷はある程度製氷皿20から剥がれる。
【0032】
図2(c)は、製氷装置90による「検氷動作」を示す図である。「検氷動作」とは、氷が貯えられる容器である貯氷部92内の氷の嵩高を測り、離氷動作を継続するか、それとも中断(キャンセル)するかを判断する動作である。離氷準備動作後、製氷皿20が図示CW方向への回転を開始すると、これに連動して検氷レバー31が貯氷部92内に降下する。ここで、検氷レバー31が予め定められた基準面よりも下まで降下すれば、氷の量が不足しているものと解釈され、離氷動作が続行される。一方、検氷レバー31が基準面に至る前に、堆積した氷によってその降下が妨げられると、貯氷部92はすでに氷で一杯と解釈され、離氷動作がキャンセルされる。
【0033】
図2(d)は、製氷装置90による氷の排出動作を示す図である。貯氷部92の氷の量が不足している場合、製氷装置90は離氷動作を続行する。製氷皿20が図示CW方向へ回転を継続すると、製氷皿20の第1凸部21及び第2凸部22は、フレーム91の第1接触部911及び第2接触部912に再び接触する。駆動ユニット10はその状態からさらに製氷皿20をCCW方向へ数十度回転させ、製氷皿20をひねる。これにより製氷皿20の氷が貯氷部92内に排出される。
【0034】
このように、製氷装置90の駆動ユニット10は、製氷皿20を一方(図示CCW方向)に回転させてひねり、その後他方(図示CW方向)へ回転させてひねることで、製氷皿20から氷を排出する。ひねり式を採用する従来の自動製氷装置は、一般に、製氷皿を一方にのみ回転させてこれをひねる仕様となっている。本形態の製氷装置90は、製氷皿20をまず一方へひねって氷を製氷皿から剥離させ、その後、製氷皿20を他方へひねりきって氷を排出することにより、従来よりも大型で剛性の高い製氷皿を採用することができる。また、本形態の製氷装置90では、製氷皿20の第1凸部21及び第2凸部22と、フレーム91の第1接触部911及び第2接触部912とが、製氷皿20の支点(駆動ユニット10との接続部)から離れた位置に設けられており、これにより製氷皿20を小さな力で効率的にひねることができる。
【0035】
(駆動機構概要)
図3は、駆動ユニット10の動力伝達経路を示す背面図である。
図3は、駆動ユニット10の主に背面側の機構について説明するものである。製氷装置90は、これが設置された冷蔵庫から電力の供給を受け、また、冷蔵庫に搭載された制御装置からの信号に従って種々の規定動作を行う。
【0036】
駆動ユニット10は、駆動源であるステッピングモータ81(電気モータ)と、製氷皿20を回動させる出力部であるカムギヤ40と、カムギヤ40の動作に連動して検氷レバー31を旋回させる第1変換軸50及び第2変換軸32と、を有している。
【0037】
カムギヤ40は、円形に広がったフランジ状の円板部であるギヤ部41を有している。ギヤ部41はその外周面に歯部が形成されており、平歯車として機能する。ステッピングモータ81の回転は減速歯車列によって減速され、カムギヤ40のギヤ部41に伝達される。本形態の減速歯車列は、ステッピングモータ81の出力軸に装着されたウォームギヤ811、第1歯車82、第2歯車83、及び第3歯車84により構成されている。第1~3歯車は、それぞれ、大径歯車と小径歯車とが軸線方向に重ねられ、一体化された複合歯車である。第1歯車82の大径歯車はウォームギヤ811と対になるウォームホイールとなっている。
【0038】
ギヤ部41の裏面41bは平面カム機構の原動節を構成している。第1変換軸50はギヤ部41の従動節を構成する軸体である。第2変換軸32は、第1変換軸50の回転に連動して回転し、検氷レバー31を旋回させる軸体である。第1変換軸50の軸線(回転中心線)とカムギヤ40の軸線はねじれの位置関係にあり、これらを平面視したときに、第1変換軸50の軸線はカムギヤ40の軸線の方向に対して直角に延びている。第1変換軸50の軸線と第2変換軸32の軸線は同一平面上にあり、これらは垂直に交わっている。
【0039】
また、ギヤ部41の裏面41bには、他の従動節である第2レバー72も接している。第2レバー72は、カムギヤ40の配置角度と第1変換軸50の配置角度(つまり検氷レバー31の降下角度)とに応じて、機械的なスイッチである第2スイッチ71(第2検知手段)のON/OFFを切り替える。冷蔵庫は第2スイッチ71の出力を監視し、冷凍庫内の氷量が十分(満氷)であるときは駆動ユニット10による離氷動作をキャンセルし、氷量が不足しているときは離氷動作を続行する。
【0040】
(検氷レバーの構成)
図4は、第1変換軸50、第2変換軸32、及び検氷レバー31の連結構造を示す斜視図である。本形態の検氷レバー31は第2変換軸32に接続されている。以下、
図1から
図4を参照して、製氷皿20のサイズを最大化するための検氷レバー31の構成について説明する。
【0041】
図4に示されるように、第1変換軸50と第2変換軸32は、これらの軸線方向における一端に設けられた傘歯歯車59,321により直角に接続されている。第2変換軸32の他端(前端)には検氷レバー31の接続部322が設けられており、検氷レバー31の接続部311がこれに結合されている。つまり第2変換軸32の回転中心は検氷レバー31の回転中心でもある。上でも述べたように、第1変換軸50の軸線はカムギヤ40の軸線に対して平面視直角に交わっており、そして第1変換軸50の軸線と第2変換軸32の軸線も平面視直角に交わっている。これによりカムギヤ40の軸線と第2変換軸32(及び検氷レバー31)の軸線とが平行に配置されている。本形態の製氷装置90は、カムギヤ40の回転方向(軸線の向き)を第1変換軸50と第2変換軸32を用いて90°ずつ変換し、結果的に検氷レバー31の軸線をカムギヤ40の軸線と平行に配置している。これにより検氷レバー31の軸線を、カムギヤ40の軸線と平行に保ったまま、任意の位置に配置することを可能にしている。
【0042】
検氷レバー31は、第2変換軸32の軸線に対して垂直方向に延びる旋回部312と、旋回部312の先端から水平に延びる昇降部313と、を有している。
図1に示されるように、製氷皿20と検氷レバー31は、どちらも駆動ユニット10の前方(表側)に配置されている。そして
図2に示されるように、検氷レバー31の旋回部312は、製氷皿20の軸部23の位置、つまりカムギヤ40の軸線の位置よりも下に配置され、カムギヤ40の前面を横切るように延びている。このように、本形態の製氷装置90では、第1変換軸50及び第2変換軸32を用いて検氷レバー31の回転端の位置を調節し、検氷レバー31の旋回部312を長く確保している。これにより本形態の検氷レバー31は、小さな回転角度でその先端(昇降部313)を大きく昇降させることができる。
【0043】
そして、
図2(a)に示すように、検氷レバー31の昇降部313は、製氷位置にある製氷皿20の上面よりも低い位置に配置されている。つまり昇降部313は、その最も高く引き上げられた位置が製氷皿20の上面よりも低い。仮に検氷レバー31の昇降部313が製氷皿20の上面を超えて昇降する場合、製氷皿20は、冷蔵庫内の限られた設置スペースにおいて、検氷レバー31が占有する空間を除いた空間に配置されなければならない。つまり製氷皿20の水平方向の設置スペースが検氷レバー31に浸食されることになる。検氷レバー31の昇降範囲を製氷皿20の上面よりも低い位置に収めることにより、製氷皿20の水平方向のサイズを最大化することが可能となる。また、本形態の製氷装置90は、一般的な離氷動作に加え、離氷準備動作を行うことができるため、大型の製氷皿20の取り扱いに好適である。
【0044】
また、貯氷部92の氷量検査の精度を高めるためには、満氷かどうかを判断する基準面に対して、検氷レバー31を点ではなく線または面で触れることが望ましい。本形態の検氷レバー31はその昇降部313が水平に延びているため、氷量を常に線または面で検査することができる。
【0045】
(駆動機構詳細)
以下、
図5から
図7を参照して、駆動ユニット10の駆動機構を構成する各部品の細部について説明する。
【0046】
図5はカムギヤ40の構造を示す斜視図である。
図5(a)はカムギヤ40の表面側を示す正面斜視図、
図5(b)はカムギヤ40の裏面側を示す背面斜視図である。
図5(a)に示されるように、カムギヤ40はその表面側に、製氷皿20の後端部に接続される矩形状の軸部である製氷皿嵌合軸42と、フレーム91に設けられた図示しない軸受に支持される円形の軸部であるフレーム嵌合軸43と、を有している。ギヤ部41の表面41aには、後述する第1レバー62を操作する凸部である第1レバー操作部63が形成されている。
【0047】
図5(b)に示されるように、カムギヤ40の裏面側には、その中央に円筒形状の筒部44が設けられている。筒部44の外面には、後述する降下止めスリーブ49が装着される。ギヤ部41の裏面41bには、平面カム機構の原動節を構成するリブである第1カム45及び第2カム46が形成されている。第1カム45は略円環形状のリブである。第1変換軸50は、第1カム45の内周面の形状に沿って回動する。第1カム45には、その周方向における一部の範囲に、径方向外側に張り出したスロープである凹スロープ451が設けられている。第2カム46は、ギヤ部裏面41bの周縁に沿って形成されたリブである。第2レバー72は、第2カム46の内周面の形状に沿って回動する。第2カム46は、第2レバー72が乗上げるスロープである前半凸スロープ461及び後半凸スロープ462、これら凸スロープの間に設けられた下りスロープである中間凹スロープ463、そして後半凸スロープ462から図示時計回り方向に続く下りスロープである終端凹スロープ464を有している。
【0048】
図6は、第1変換軸50の構造を示す斜視図(a)及び側面図(b)である。第1変換軸50は、駆動ユニット10のケース11(
図1参照)に支持される軸部である先端軸51及び中間軸58を有している。第1変換軸50はその円柱形状の胴部に複数の突起が設けられている。これら突起は、Y1側からY2側に向かって、順に、第1カム45に接触するカムフォロアーである摺動部52、後述する降下止めスリーブ49に当接することで第1変換軸50の
図5(b)視CW方向への回転を阻止する回転止め部53、コイルばね541(
図3参照)により常に上方へ(つまり第1変換軸50を同CW方向へ回転させるように)付勢されるばね受け部54、フレーム91の図示しない凹部に嵌入され、第1変換軸50の回動範囲を制限する第1位置決め片55、第2レバー72に接触して第2レバー72の旋回角度を操作する第2レバー操作部56、フレーム91の図示しない仕切り壁に接触して第1変換軸50のY2方向への移動を阻止する第2位置決め片57により構成されている。また、第1変換軸50のY2側端部には、第2変換軸32が接続される傘歯歯車59が設けられている。
【0049】
図7は、第2レバー72の構造を示す平面図(a)及び斜視図(b)である。第2レバー72は、その回転中心である軸部729と、軸部729を回転端とする複数の自由端とを有するアーム状部材である。第2レバー72はその自由端として、第2カム46に接触するカムフォロアーである摺動部721、コイルばね79によって常に第2スイッチ71側に付勢されるスイッチ操作部722、及び、ケース11の凹部111に嵌入され、第2レバー72の回動範囲を制限する回動制限部723を有している。
【0050】
(離氷動作詳細)
以下
図8から
図13を参照して製氷装置90の離氷動作についてより詳細に説明する。
【0051】
図8は、製氷皿20が製氷位置にあるときの駆動機構の様子を示す背面図である。このとき、第1変換軸50の摺動部52は第1カム45の凹スロープ451の外にあり、これにより検氷レバー31は引き上げられている。第2レバー72の摺動部721はまだ前半凸スロープ461に乗り上げておらず、第2スイッチ71はONの状態にある。
【0052】
図9は、離氷準備動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。製氷皿20の温度が規定値に至ると、又は前回の離氷動作の開始から一定時間が経過すると、駆動ユニット10は、まず、製氷皿20を図示CW方向へ一定量回転させて製氷皿20をひねる。本形態においては、第2レバー72の摺動部721が第1カム45の凹スロープ451のリブに突き当たる程度まで製氷皿20を回転させる。このとき、第1変換軸50の摺動部52は、依然として凹スロープ451の外にあり、検氷レバー31は引き上げられたままである。第2レバー72の摺動部721も、依然として前半凸スロープ461には乗り上げておらず、第2スイッチ71はONの状態のままである。
【0053】
図10は、検氷動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。
図11は、離氷動作の続行時/キャンセル時の各部の動作を示すタイミングチャートである。離氷準備動作が完了すると、駆動ユニット10は、カムギヤ40を図示CCW方向へ回転させる。これにより第1変換軸50の摺動部52は凹スロープ451に入り込み、検氷レバー31が降下する。検氷レバー31が降下を始めると同時に、第2レバー72の摺動部721が前半凸スロープ461に乗り上げ、第2スイッチ71がOFFに切り替わる。
【0054】
検氷レバー31の降下が氷に妨げられず、その旋回部312が30°以上回転し、昇降部313が貯氷部92内の基準面を超えて降下すると、つまり第1変換軸50の摺動部52が凹スロープ451の深部に至ると、第1変換軸50の第2レバー操作部56が第2レバー72のスイッチ操作部722に接触し、これを第2スイッチ71から遠ざける方向へ押動する。第1変換軸50の摺動部52が凹スロープ451の深部にさしかかる位置までカムギヤ40が回転すると、第2レバー72の摺動部721は第2カム46の中間凹スロープ463の位置に至る。ここで、検氷レバー31が十分に降下しており、第2レバー72のスイッチ操作部722の復帰(第2スイッチ71側への復帰)が第1変換軸50のスイッチ操作部722により制限されている場合、第2スイッチ71はOFFのまま維持され、カムギヤ40はCCW方向への回転を継続する。
【0055】
ここで、堆積した氷によって検氷レバー31の降下が妨げられ、第1変換軸50が十分に回転しなかった場合、第1変換軸50のスイッチ操作部722は第2レバー72のスイッチ操作部722に届かず、その結果、第2レバー72の摺動部721が中間凹スロープ463を下り、第2スイッチ71がONに切り替えられる。冷蔵庫の制御装置は、第2スイッチ71が所定の時間内にONに切り替わったことを検知すると、離氷動作をキャンセルし、氷を排出しないまま製氷皿20を製氷位置に復帰させる。
【0056】
図12は、氷の排出動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。第2スイッチ71がOFFのまま中間凹スロープ463を通り過ぎると、第1変換軸50の摺動部52は凹スロープ451の対岸側に上り、これにより検氷レバー31が引き上げられる。このとき、第2レバー72の摺動部721は後半凸スロープ462に乗り上げているため、第1変換軸50の第2レバー操作部56が第2レバー72のスイッチ操作部722を押さえなくても、第2スイッチ71はOFFのまま維持される。製氷皿20が図示CCW方向にひねりきられ、氷が排出されると、第2レバー72の摺動部721は終端凹スロープ464を下り、第2スイッチ71がONに切り替えられる。冷蔵庫はこの第2スイッチ71の切り替わりによって氷の排出完了を検知する。
【0057】
図13は、氷排出後の駆動機構の様子を示す背面図である。氷の排出が終わると、製氷装置90は製氷皿20を製氷位置に復帰させる。ここで、カムギヤ40の筒部44には、円筒形状の降下止めスリーブ49が装着されている。降下止めスリーブ49は、スリット492が形成された胴部と、胴部から外側に突き出した凸部493とを有している。降下止めスリーブ49は筒部44に固定されておらず、摩擦抵抗により筒部44に連れ回って回転する。凸部493の旋回範囲はケース11によって制限されており、凸部493はカムギヤ40の回転方向に沿ってその可動範囲を往復する。氷の排出後にカムギヤ40が図示CW方向に回転すると、第1変換軸50の摺動部52が再び凹スロープ451にさしかかるが、このとき、第1変換軸50は、その回転止め部53が降下止めスリーブ49の凸部493に当接し、回転が阻止される。そのため復帰動作中に検氷レバー31が降下することはない。
【0058】
(イニシャライズ動作)
図14は、製氷装置90のイニシャライズ動作を示す正面図である。
図15は、イニシャライズ動作における第1スイッチ61の入出力の変化を示すタイミングチャートである。ここで「イニシャライズ(初期化)」とは、例えば冷蔵庫の設置後に初めて電力を投入する際や、停電後に電力が再投入されたときなどに、製氷皿20を製氷位置に配置し直すことをいう。また、離氷後の復帰動作においても、製氷皿20を製氷位置に配置する際にイニシャライズ動作を行ってもよい。以下、
図14及び
図15を参照して製氷装置90のイニシャライズ動作について説明する。
【0059】
駆動ユニット10は、製氷皿20が製氷位置に配置されたことを検知するための機械的なスイッチである第1スイッチ61(第1検知手段)と、そのON/OFFを切り替える第1レバー62とを有している。第1レバー62は、回転端を中心として自由端を旋回させるアーム状部材であり、第1スイッチ61は第1レバー62の旋回範囲に配置されている。第1レバー62は、付勢部材であるトーションばね69によって第1スイッチ61をONにする方向へ常時付勢されている。
【0060】
そして、カムギヤ40のギヤ部表面41aには、その周回軌道上で第1レバー62に接触し、第1レバー62をトーションばね69の付勢力に抗して旋回させる凸部である第1レバー操作部63が形成されている。第1レバー操作部63は製氷皿20が製氷位置に配置されたときに第1レバー62に接触し、製氷位置を通り過ぎたときに第1スイッチ61をOFFに切り替える。
【0061】
上でも述べたように、本形態の駆動ユニット10は、検氷レバー31の昇降範囲を製氷皿20の上面よりも低い範囲に収めることにより、製氷皿20の水平方向のサイズを最大化している。そのため本形態の製氷皿20は、一般的な製氷皿よりも剛性が高くなっており、製氷皿20を一方にひねるだけでは氷を排出しきれないおそれがある。そこで製氷皿20を一方だけではなく他方にもひねることで氷が製氷皿20に残ることを防いでいる。製氷皿20を両方にひねることが可能な仕様にしたことにより、イニシャライズ動作時に製氷皿20が不必要にひねられるおそれがある。特に、製氷皿20に液体の水が保持された状態でこれがひねられると、製氷皿20の水が貯氷部92内にこぼれるおそれがある。また、製氷皿20が不必要にひねられることは、製氷皿20の部品寿命の点からも望ましくない。本形態の製氷装置90は、製氷皿20が製氷位置に配置されたことを検知する手段を別途備えることにより、製氷皿20が不必要にひねられることが防止される。また、本形態の製氷装置90は、製氷皿20が製氷位置に配置されたことを検知する手段(第1スイッチ61)と、これが他の配置角度になったことを検知する手段(第2スイッチ71)とを別々に備えることにより、つまり第1スイッチ61を製氷位置の検知に特化させることにより、製氷皿20が製氷位置に配置されたことを高い精度で検知することができる。
【0062】
また、一般に自動製氷装置の駆動ユニットは、製氷皿に接続される出力部よりも内側(出力部の裏面側)にその駆動機構が置かれる。つまり出力部の表面側は製氷皿の駆動以外にはあまり用いられない。本形態の製氷装置90は、カムギヤ40(出力部)の表面側を積極的に活用することで、自動製氷装置の占有空間を大きくすることなく追加機能を実装する余地を得ている。
【0063】
(他の実施形態)
図16及び
図17は、ギヤ部裏面41bの平面カム機構の他の実施形態を示す図である。
図16は、本形態に係る出力部であるカムギヤ40aの背面図(a)及び背面斜視図(b)である。
図17は、カムギヤ40aと、第1変換軸50及び第2レバー72との接続状態を示す斜視図である。以下、先の実施形態の構成と同一・同様の構成については、先の実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
図16及び
図17に表されていない部材については先の実施形態と同じものを採用してよい。また、以下の説明においても、「表裏」とは、
図16(b)及び
図17に描かれた座標軸のX軸に平行な方向であり、X1側を「表」、X2側を「裏」とする。
【0064】
先の実施形態に係る駆動ユニット10では、第1カム45を形成するリブが、第2カム46を形成するリブと同一の平面上に設けられている。そのため、先の実施形態の離氷準備動作において、製氷皿20を逆方向(
図9視CW方向)に回転させることができる範囲は、第2レバー72の摺動部721が第1カム45の凹スロープ451のリブに突き当たるまでの角度に制限される。以下に説明する実施形態では、第1カム45をリブではなくギヤ部裏面41bの凹部として実装することにより、これらカム同士の干渉を解消し、製氷皿20を逆後方により大きくひねることを実現している。
【0065】
図16に示されるように、カムギヤ40aの裏側には、その中央に円筒形状の筒部44が設けられている。筒部44の外面には、先の実施形態と同じくスリーブ49(
図9参照)が装着される。そして、ギヤ部41の裏面41bには、平面カム機構の原動節を構成する凹部(第1凹部)である第2カム46と、第2カム46からさらに深く窪んだ凹部(第2凹部)である第1カム45aが形成されている。本形態の第1カム45a及び第2カム46は、筒部44を中心として同心円状に配置されている。
【0066】
第1カム45aは、その周方向における一部の範囲に、径方向外側に張り出したスロープである凹スロープ451aを有している。第2カム46は、ギヤ部裏面41bの周縁に沿って形成されている。第2カム46は、そのカムフォロアーが乗り上げるスロープである前半凸スロープ461及び後半凸スロープ462、これら凸スロープの間に設けられた下りスロープである中間凹スロープ463、そして後半凸スロープ462から図示時計回り方向に続く下りスロープである終端凹スロープ464を有している。尚、本形態では第2カム46を凹部と表現しているが、これは先の実施形態の第2カム46と同じく、ギヤ部裏面41bの周縁に沿って形成されたリブであるともいえ、またその形状も先の実施形態の第2カム46と同じである。一方、第1カム45aは先の実施形態の第1カム45とは異なり、リブではなく、凹部として形成されている。第1カム45aの周面形状は第1カム45の形状とほぼ同じであり、その従動節である第1変換軸50の制御方法も同じである。
【0067】
図17に示すように、平面カム機構の従動節である第1変換軸50は、その摺動部52aが第1カム45aの周面に接している。同じく従動節である第2レバー72は、その摺動部721が第2カム46の周面に接している。本形態の第1変換軸50は、その摺動部52aが、第1カム45aの周面に届くよう、先の実施形態の摺動部52よりも長く形成されている。本形態の第1変換軸50のその他の構成や機能は先の実施形態の第1変換軸50と同じである。また本形態の第2レバー72も先の実施形態の第2レバー72と同じ部材である。
【0068】
製氷装置90は、製氷皿20を一方向だけでなく双方向にひねることをその特徴としている。そのため製氷装置90は、従来の製氷装置に比べ、出力部の回動範囲が広く、その動作も複雑である。本形態の製氷装置90では、平面カム機構の原動節として、凹部である第2カム46と、その凹部の中に設けられたさらに深い凹部である第1カム45aとを用いることにより、これらの周面、つまり第1変換軸50及び第2レバー72の摺動面の位置をずらし、カム同士の干渉を抑えている。
【0069】
特に、駆動ユニット10は、第1変換軸50の第2レバー操作部56で第2レバー72の旋回を制御する都合上、これらは間近に配置されている必要がある。そのため、第1変換軸50及び第2レバー72の配置を調節して、つまりこれらを遠ざけることでこれらの干渉を防ぐためには、大規模な設計変更が必要となる。本形態のように深さの異なる凹部の周面を原動節として用いることにより、必要最小限の変更でこれらカム同士の干渉を解消することができ、製氷皿20を逆後方により大きくひねることが可能となる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10:駆動ユニット,20:製氷皿,21:第1凸部(前端近傍部),22:第2凸部(前端近傍部),31:検氷レバー,312:旋回部,313:昇降部,32:第2変換軸,321:傘歯歯車,40・40a:カムギヤ(出力部),41:ギヤ部(円板部),41a:表面,41b:裏面,44:第1レバー操作部,42:製氷皿嵌合軸,45a:第1カム(第2凹部),451a:凹スロープ,46a:第2カム(第1凹部),50:第1変換軸,52・52a:摺動部,54:ばね受け部,541:コイルばね,56:第2レバー操作部,59:傘歯歯車,61:第1スイッチ(第1検知手段),62:第1レバー,63:第1レバー操作部,69:トーションばね(付勢部材),71:第2スイッチ(第2検知手段),72:第2レバー,721:摺動部,722:スイッチ操作部,729:軸部,81:ステッピングモータ(電気モータ),811:ウォームギヤ(減速歯車列),82:第1歯車(減速歯車列),83:第2歯車(減速歯車列),84:第3歯車(減速歯車列),90:製氷装置,91:フレーム,911:第1接触部(接触部),912:第2接触部(接触部),92:貯氷部