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  • 特開-熱収縮性積層フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159037
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】熱収縮性積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231024BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231024BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B7/023
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063677
(22)【出願日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2022068826
(32)【優先日】2022-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】沖田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】植松 章人
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20
4F100AA20A
4F100AC04
4F100AC04A
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01E
4F100AK03
4F100AK03B
4F100AK03D
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK63
4F100AK63E
4F100AK69
4F100AK69C
4F100AL07
4F100AL07B
4F100AL07D
4F100AR00C
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100DE01
4F100DE01A
4F100GB15
4F100JA03
4F100JD01
4F100JD01C
4F100JK16
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JL11D
4F100JN01
4F100JN18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、透明性を高い水準で保ちつつ、滑り性が良好な熱収縮性積層フィルムを提供する。
【解決手段】外表面層を少なくとも一方の最表面に有する熱収縮性積層フィルムであって、外表面層が、樹脂又は樹脂組成物と、粒子とから構成され、外表面層の動摩擦係数が1.5以下であり、熱収縮性積層フィルムのヘーズが、3.0%以下であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。特に、外表面層の表面において、ANSIB46.1に規定される最大高さRzが0.8~1.5μmである熱収縮性積層フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面層を少なくとも一方の最表面に有する熱収縮性積層フィルムであって、
前記外表面層が、樹脂又は樹脂組成物と、粒子とから構成され、
前記外表面層の動摩擦係数が1.5以下であり、
前記熱収縮性積層フィルムのヘーズが、3.0%以下であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
【請求項2】
前記外表面層の表面において、ANSI B46.1に規定される最大高さRzが0.8~1.5μmであることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項3】
前記外表面層の表面において、ANSI B46.1に規定される最大断面高さRtが0.9~2.4μmであることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項4】
前記粒子が、平均粒径0.01~1.8μmであることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項5】
前記粒子が、立方体状であることを特徴とする請求項4記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項6】
外表面層、接着層、バリア層、接着層、内表面層がこの順に積層され、これらの層の少なくとも一層に、植物由来の樹脂が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層を積層した積層フィルムであって、加熱により収縮する熱収縮性フィルムに関し、とりわけ、食品(例えば、肉類、加工肉類、水産物類、水産加工品)の効率的な包装処理が可能な、滑り性に優れ、透明性を兼ね揃えた熱収縮性積層フィルム及びそれを用いた袋に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に食品、医療機器、機械部品等の包装には、熱収縮性積層フィルムが用いられる。熱収縮性積層フィルムは様々な性質を有する各層により、用途に応じた機能が付与される。
熱収縮性フィルムが包装用に用いられる場合、熱収縮性の他に、バリア性、透明性、ヒートシール性が要望され、製袋作業のようなフィルム二次加工の工程に使用する場合には、更に滑り性が求められる。
【0003】
特許文献1には、両立の困難であった滑り性と透明性等を兼ね揃えた熱収縮性積層フィルムとして、外表面層の厚みに対して1.2~10.0倍の平均粒子径を有する粒子を含む熱収縮性積層フィルムが提案されている。
しかしながら、例えば、肉類や水産物類など、購入者が鮮度を確認して購入するような食品を包装する場合、フィルムの透明度をできるだけ高くする必要があり、外表面層の厚みに対して1.2~10.0倍の平均粒子径を有する粒子を用いると、所望する透明性が得られないという問題があった。
一方、包装機を用いて包装する場合、包装機内のローラーとフィルムの外表面層との滑りが悪く、フィルムの送り出しがスムーズにできずに連続包装に支障をきたすことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018―176661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、透明性を高い水準で保ちつつ、滑り性が良好な熱収縮性積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
(1)外表面層を少なくとも一方の最表面に有する熱収縮性積層フィルムであって、前記外表面層が、樹脂又は樹脂組成物と、粒子とから構成され、前記外表面層の動摩擦係数が1.5以下であり、前記熱収縮性積層フィルムのヘーズが、3.0%以下であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム;
(2)前記外表面層の表面において、ANSI B46.1に規定される最大高さRzが0.8~1.5μmであることを特徴とする(1)の熱収縮性積層フィルム;
(3)前記外表面層の表面において、ANSI B46.1に規定される最大断面高さRtが0.9~2.4μmであることを特徴とする(1)又は(2)の熱収縮性積層フィルム;
(4)前記粒子が、平均粒径0.01~1.8μmであることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム;
(5)前記粒子が、立方体状であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム;
(6)外表面層、接着層、バリア層、接着層、内表面層がこの順に積層され、これらの層の少なくとも一層に、植物由来の樹脂が含有されていることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の熱収縮性フィルム;
が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る熱収縮性積層フィルムは、外表面層が樹脂又は樹脂組成物と粒子とから構成され、外表面層の動摩擦係数が1.5以下、熱収縮性積層フィルムのヘーズが3.0%以下であることで、透明性を高い水準で維持しつつ、該熱収縮性積層フィルムを用いて包装機にて包装する場合、包装機内のローラーとフィルムの外表面層との滑りが良好で、フィルムの送り出しがスムーズにでき、連続包装に適しているといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る熱収縮性積層フィルムの一実施形態の層構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、以下に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
図1は、本発明に係る熱収縮性積層フィルムの一実施形態の層構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態の熱収縮性積層フィルム1は、少なくとも一方の最表面に位置する外表面層2とその他の内層7を有する。内層は、一層でも良いし多層としても良い。
図1に示すように、本実施形態の熱収縮性積層フィルム1としては、外表面層2、外側接着層3、芯層4、内側接着層5、内表面層6の少なくとも5層が、この順に積層されたものであることが好ましい。
そして、本実施形態の熱収縮性積層フィルムは、加熱により収縮する特性(熱収縮性)を有しており、これにより、内容物に密着した包装を可能とする。
熱収縮率に限定はないが、流れ方向と横方法の熱収縮率(100℃のオイルバスに10秒間浸漬)が、共に10%以上50%以下であることが好ましい。
ここで、フィルムの流れ方向及び横方向とは、各々、フィルムを押出成形(延伸前のフィルム)した際の長尺方向及び幅方向(流れ方向と直交する方向)をいう。
また、本実施形態において熱収縮性積層フィルムの厚みの限定はないが、バリア性、袋の強度、生産性の点で、5~150μmであることが好ましく、特に5~80μm、更には10~30μm、10~20μmが好ましい。
【0011】
本発明においては、外表面層2を少なくとも一方の最表面に有する熱収縮性積層フィルム1であって、外表面層2が、樹脂又は樹脂組成物と、粒子とから構成され、外表面層2の動摩擦係数が1.5以下であり、熱収縮性積層フィルム1のヘーズが、3.0%以下であることを特徴とするものである。
外表面層2に粒子が添加されているにもかかわらず、熱収縮性積層フィルム1のヘーズが3.0%以下と透明性が高い水準であると共に、外表面層2の動摩擦係数が1.5以下と良好な滑り性を備える熱収縮積層フィルムとすることができる。
【0012】
熱収縮性積層フィルム1のヘーズが3.0%を超えると、このフィルムを用いて包装した場合に、被包装物が若干曇った状態で見えてしまうことから好ましくない。熱収縮性積層フィルム1のヘーズは、2.5%以下であることが好ましく、更には2.0%以下、特に1.8%以下であることが好ましい。
また、外表面層2の動摩擦係数が1.5を超えると、包装機を用いて包装する場合、包装機内のローラーとフィルムの外表面層との滑りが悪く、フィルムの送り出しがスムーズにできずに連続包装に支障をきたす場合がある。外表面層2の動摩擦係数は、1.3以下であることが好ましく、更には1.1以下、特に1.0以下であることが好ましい。尚、外表面層2の動摩擦係数は0.1以上であることが好ましい。0.1以上であると滑りすぎて包装機内のローラーに巻き付く等といった恐れもなく、良好な包装適正が得られる。
【0013】
更に、外表面層の静摩擦係数は2.5以下であることが好ましい。これにより、包装時のフィルムの動き出しをスムーズにすることができる。外表面層の静摩擦係数は2.2以下が好ましく、更には2.0以下、特に1.9以下であることが好ましい。
また、外表面層2の静摩擦係数は1.0以上であることが好ましい。本熱収縮性積層フィルムを包装機で使用する時、使用済みの熱収縮性積層フィルムロールから新しい熱収縮性積層フィルムロールに替える際に、使用済みロールの末端の熱収縮性積層フィルムと、新しいロール先端の熱収縮性フィルムとを重ね合わせると、フィルムの外表面層の静摩擦係数が1.0以上であることによって、フィルムの自己粘着性によるフィルム同士の貼り合わせが維持され、別途粘着テープ等を使用しなくてもロール交換作業を行うことができる。
【0014】
外表面層の表面において、ANSI B46.1に規定される最大高さRzが0.8~1.5μmであることが、滑り性と透明性の点で特に好ましい。特に、Rzが0.8~1.3μmであることが好ましい。また、外表面層の表面において、ANSI B46.1に規定される最大断面高さRtが0.9~2.4μmであることが、滑り性と透明性の点で特に好ましい。特に、Rtが0.9~2.1μmであることが好ましい。
【0015】
以下に、熱収縮性積層フィルムの各層について詳細に説明する。
〔外表面層〕
外表面層は、樹脂又は樹脂組成物と、粒子とから構成されている。
外表面層に使用する樹脂に限定はないが、内表面層に使用される樹脂よりも融点が高い樹脂であることが、ヒートシール時の耐熱性(ヒートシール時の熱により溶融しない)の点で好ましい。外表面層に使用する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等が好ましく使用でき、特にポリプロピレンが好ましい。
ポリプロピレンの具体例としては、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体などが挙げられ、中でも、プロピレン単独重合体またはプロピレン以外のオレフィンとプロピレンとの共重合体が好ましく、プロピレン以外のオレフィンとプロピレンとの共重合体としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましい。これらの重合体としては、ランダムタイプ、ブロックタイプ等の種々の構造のものが使用可能であり、2種以上を混合して使用しても良い。また、ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられ、ポリアミドの具体例としては、ナイロン-6、ナイロン-12等の脂肪族アミド樹脂;ナイロン-6,66、ナイロン-6,12等の脂肪族アミド共重合体;ナイロン-6,66,12等の脂肪族三元共重合体が挙げられる。また、これらの樹脂を適宜ブレンドした樹脂組成物として使用することであっても良い。
【0016】
外表面層に添加する粒子は、平均粒径(1次粒子径)が0.01~1.8μmであることが好ましい。平均粒径が1.8μm以下の粒子を使用することで、3.0%以下のヘーズとなるフィルムが得られ易く、外表面層に滑り性を付与することができ、尚且つ、フィルムからの脱落が少ない点で好ましい。尚、平均粒径が0.01μm未満の粒子を使用した場合には、フィルムの滑り性を向上させることが困難となる。
使用する粒子の平均粒径は、0.5~1.6μmが好ましく、更に0.7~1.5μm、特に0.8~1.4μmが好ましい。
【0017】
粒子の種類は限定されず、種々の粒子を用いることで良い。有機粒子であってもよいし、無機粒子であってもよいし、有機無機複合粒子であってもよい。溶融押出時の熱でも形状(粒径)が変化しにくいという点では無機粒子が好ましい。
有機粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルやスチレン-アクリル酸メチル共重合体等のアクリル系樹脂粒子;スチレン樹脂粒子;ポリエステル粒子;ナイロン粒子;フッ素樹脂粒子;シリコーン粒子等が挙げられる。また、無機粒子としては、例えば、シリカ、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子や炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子等が挙げられるが、透明性の観点からゼオライト粒子が好ましい。
粒子の形状についても特に限定はなく、針状粒子や平板状粒子、球状粒子、立方体状粒子などが挙げられる。このうち特に立方体状(キュービック状)の粒子が好ましい。後述する実施例で示すように、平均粒径(1次粒子径)が1.5μm以下の粒子の場合、球状の粒子であると凝集により粒径が大きくなることからフィルムのヘーズが高くなってしまう傾向にあるが、立方体状の場合には1.5μm以下の粒径の状態で外表面層に分散されることから粒子を添加してもヘーズが上昇しにくいと推察される。
【0018】
本実施形態においては、上述の樹脂と粒子を外表面層の構成材料としてもよいし、上記樹脂と粒子に加えて各種添加剤を混合して外表面層の構成材料として用いてもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤;帯電防止剤;石油樹脂、ミネラルオイル、脂肪酸アミド系の滑剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、流動パラフィン等の防曇剤等が挙げられ、フィルムの透明性を損なわない程度に添加することができる。
特に、外表面層に防曇剤を添加しておくことが好ましい。熱収縮性積層フィルムをロール状にして保管した場合、内表面層に防曇剤が添加されたフィルム内面とフィルム外面とが密着・接触していることで、内表面層の防曇剤がフィルム外表面層に移行してしまい、フィルム使用時に防曇性能が低下してしまうという問題がないように、内表面層の防曇剤が外表面層に移行しないようにするために、外表面層に一定量の防曇剤を添加しておくことが好ましい。
また、外表面層に防曇剤が添加されていることにより、粒子による滑り性が向上し、粒子の添加量を減らしても所望する滑り性を付与することができる。外表面層に添加する防曇剤の配合量は1000~50000ppmが好ましく、特に10000~40000ppmが好ましい。
【0019】
外表面層2のフィルム全体における厚み比率は、5~40%であることが好ましく、10~35%がより好ましい。また、外表面層2の厚みは0.3~30μm、好ましくは0.5~10μm、特に1.0~5.0μmであることが好ましい。
【0020】
〔外側接着層〕
外側接着層3は、外表面層2と芯層4とを接着する層であり、このような層を設けることで層間の接着力が向上する。外側接着層3の材料には、例えば、ポリオレフィン系樹脂や、変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。変性ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、或いは、プロピレン-α-オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフト重合させて極性基を導入させた共重合体等が用いられる。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基、カルボン酸アミド基等を有する不飽和化合物で、具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。外側接着層3の上下に、層を接着させることを目的として、さらに他の接着層が存在していても良い。
外側接着層3のフィルム全体における厚み比率は、5~30%であることが好ましく、10~20%がより好ましい。また、外側接着層3の厚みは0.3~25μm、好ましくは0.5~15μm、特に1.0~5.0μmであることが好ましい。
【0021】
〔芯層〕
芯層4は、ガスバリア性、特に酸素バリア性を有するバリア層とすることが好ましい。袋としたときに内容物の酸化劣化を防止する機能を果たす層となる。芯層4の材料に特に限定はないが、酸素バリア性能の観点から、エチレン-ビニルアルコール共重合体や塩化ビニリデン共重合体等を好ましく用いることができる。これらのバリア性樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。内容物の品質維持のため、熱収縮性積層フィルムの酸素透過率は100cc/m2・day・atm(23℃×50%RHの環境下で養生したフィルムを、23℃×0%RH差圧法で測定)以下であることが好ましい。
芯層4のフィルム全体における厚み比率は、1~20%であることが好ましく、5~15%がより好ましい。また、芯層4の厚みは0.1~15μm、好ましくは0.3~12μm、特に0.5~5.0μm、0.6~1.5μmであることが好ましい。
【0022】
〔内側接着層〕
内側接着層5は、芯層4と内表面層6とを接着する層であり、このような層を設けることで層間の接着力が向上する。内側接着層5の材料には、例えば、ポリオレフィン系樹脂や、変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。変性ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、或いは、プロピレン-α-オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフト重合させて極性基を導入させた共重合体等が用いられる。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基、カルボン酸アミド基等を有する不飽和化合物で、具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。内側接着層5の上下に、層を接着させることを目的として、さらに他の接着層が存在していても良い。
内側接着層5のフィルム全体における厚み比率は、5~30%であることが好ましく、10~20%がより好ましい。また、内側接着層5の厚みは0.3~25μm、好ましくは0.5~15μm、特に1.0~5.0μmであることが好ましい。
【0023】
〔内表面層〕
内表面層6は、袋に加工した場合に最も内側となり、袋を密封するためのヒートシール層となる層である。この層に使用する樹脂は、重ねシール性の点において、外表面層2に使用する樹脂よりも融点が低い樹脂であることが好ましく、具体的には、外表面層2に使用する樹脂よりも融点が5~60℃、好ましくは10~30℃低い樹脂であることが好ましい。例えば、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエチレン共重合体、ポリプロピレン等、或いはそれらの混合物等から選んで使用できる。この中でも特にポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。このうち、直鎖状低密度ポリエチレンが、延伸性、ヒートシール性に優れているので好ましい。
【0024】
内表面層6には、上記樹脂に加えて各種添加剤を混合して内表面層の構成材料として用いてもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤;帯電防止剤;石油樹脂、ミネラルオイル、脂肪酸アミド系の滑剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、流動パラフィン等の防曇剤等が挙げられ、フィルムの透明性を損なわない程度に添加することができる。
特に、内表面層には、水分の多い食品等を包装したときに内面が結露する現象を防ぐために防曇剤を添加しておくことが好ましい。防曇剤としては、特に限定されるものではなく、従来から用いられている防曇剤をそのまま使用することができる。例えば、ジグリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンセスキラウレート、ジグリセリンセスキオレート、モノグリセリンモノラウレート、モノグリセリンモノオレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル系防曇剤、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル系の防曇剤、ポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル系の防曇剤、更には、ステアリルアルコール、オレインアルコール等のアルキルアルコール系の防曇剤、また、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート等のソルビタン系の防曇剤等が好適に用いられる。そして、これらの防曇剤は、単独でも、2種類以上混合しても使用することができる。内表面層に添加する防曇剤の配合量は1000~50000ppmが好ましく、特に10000~40000ppmが好ましい。
内表面層6のフィルム全体における厚み比率は、25~45%であることが好ましく、30~40%がより好ましい。また、内表面層6の厚みは0.3~30μm、好ましくは0.5~15μm、特に1.0~8.0μmであることが好ましい。
【0025】
また、本実施形態における熱収縮性積層フィルムは、上述した、外表面層、接着層、バリア層、接着層及び内表面層の少なくとも一層において、植物由来の樹脂を含有することが好ましい。
植物由来の樹脂とは、植物由来の原料を精製し、脱水反応を行うなど、公知の方法で製造することができる。植物由来の原料としては、廃棄物系、未利用系、資源作物系等を用いることができ、例えば、セルロース系作物(パルプ、ケナフ、麦わら、稲わら、古紙、製紙残渣など)、木材、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、サトウキビ、おから、油脂(菜種油、綿実油、大豆油、ココナッツ油、ヒマシ油など)、炭水化物系作物(トウモロコシ、イモ類、小麦、米、籾殻、米ぬか、古米、キャッサバ、サゴヤシなど)、バガス、そば、大豆、精油(松根油、オレンジ油、ユーカリ油など)、パルプ黒液、植物油カスなどを用いることができる。
植物由来の樹脂としては、例えば、外表面層に植物由来のポリプロピレン樹脂、芯層に植物由来のエチレン-ビニルアルコール共重合体、外側又は内側接着層に植物由来の変性ポリオレフィン系樹脂、内表面層に植物由来のポリエチレン系樹脂などを使用することができる。
特に、内表面層に植物由来のポリエチレン樹脂を使用することが好ましい。内表面層を構成するポリエチレン系樹脂の一部を、植物由来のポリエチレン系樹脂とすることで、地球環境に配慮した熱収縮性積層フィルムとすることができる。
【0026】
〔熱収縮性積層フィルムの製造方法〕
本実施形態の熱収縮性積層フィルムの製造方法に限定はなく、例えば、外表面層の構成材料として予め粒子を混合した樹脂組成物を用意し、これを用いて従来公知の方法で多層フィルムを製造すればよい。積層フィルムは、具体的には、シングルバブルインフレーション法、ダブルバブルインフレーション法、トリプルバブルインフレーション法、テンター法等の方法によって製造することができる。
【0027】
更に具体的に説明すると、各層の構成材料である樹脂(樹脂組成物)のペレットを、樹脂の融解温度以上で溶融し、層数に対応した台数の押出機を用いて各層を同時に押出す。ポリマーパイプ、ダイスを介してインフレーション法によりチューブ状に連続押出成形して積層フィルムとする。これを空冷や水冷等により冷却固化する。次に延伸工程へと導く。フィルムの延伸倍率は、熱収縮性、熱収縮後の良好な透明性、生産安定性の面から、流れ方向(MD)及び幅方向(TD)共に2.0~6.0倍の延伸を行うのが好ましい。
【0028】
〔熱収縮性積層フィルムを用いた包装体〕
本発明における熱収縮性積層フィルムを使用した包装体の一例について説明する。
熱収縮性積層フィルムの両端を合掌して底シールを施し筒状とする。被包装物(PSPトレーに収められた精肉や鮮魚等)を筒の中に入れ、前側シールをした後に内部に不活性ガスを充填して後側シールを施しながらフィルムをカットして、一つ一つの包装とする。その後、予め80℃~140℃に温度調節されている熱風シュリンクトンネル内でフィルムを熱収縮させることで、包装体上部の皺を除去し、フィルムに張りを与え、タイトな包装体とすることが出来る。包装後に加熱収縮処理を行う場合には、熱風、蒸気、熱水等を使用できるが熱風を用いることが好ましい。
近年の高速連続包装機における包装スピードは、1分間に約60~120個包装するものである。そのため熱収縮性積層フィルムには、その包装スピードに対応できる、滑り性や、底シール性、熱収縮特性が強く求められる。
【実施例0029】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0030】
<実施例1~6、比較例1~4>
インフレーション成形によって、表1に示すフィルムの層構成及び樹脂組成である、外表面層/外側接着層/芯層(バリア層)/内側接着層/内表面層の未延伸フィルムを製膜した後、延伸して表1に示す熱収縮性積層フィルムを作製した。
尚、表1で示す粒子の詳細を以下に記す。
AB剤(アンチブロッキング剤)-1:立方体状多孔質のゼオライト粒子、屈折率 1.50、平均粒径 1.3μm。尚、平均粒子径は、レーザー回析・散乱法により測定した値である。
AB剤―2:不定形の合成シリカ粒子、平均粒径 3.8μm。尚、平均粒子径は、レーザー回析・散乱法により測定した値である。
【0031】
得られた熱収縮性積層フィルムについて、以下の測定を行った。結果を表1に示す。
ヘーズ:実施例1~6及び比較例1~4の熱収縮性積層フィルム
静摩擦係数・動摩擦係数:実施例1~6及び比較例1
最大高さRz、最大断面高さRt:実施例1,3,5,6、比較例1~3
尚、上記測定は、以下の方法で実施した。
〔ヘーズ〕
JIS K 7136:2000に準じ、熱収縮性積層フィルムのヘーズを測定した。測定には日本電色工業(株)製ヘーズメータNDH4000型を用い、8点測定した平均値を算出した。
〔静摩擦係数・動摩擦係数〕
摩擦係数測定機(テスター産業製)を用い、作製した熱収縮性積層フィルムの外表面層同士の静摩擦係数と動摩擦係数を測定した。なお、測定は、測定用板としてプラスチック板、スレッドメタルとして100gソリを用い、試験速度700mm/minで測定を行なった。
〔最大高さRz、最大断面高さRt〕
ANSI B46.1に準拠して、Bruker AXS社の非接触3次元表面形状粗さシステム(Wyko)を用いて作製した熱収縮性積層フィルムの外表面層のRz(最大高さ)及びRt(最大断面高さ)を測定した。尚、測定は、VSIモード(垂直走査白色干渉法。Z軸測定範囲 150nm~1mm、分解能1nm)対物レンズx10、内部レンズx1 にて596.0μm×453.5μmの範囲で測定を行い、3点以上測定画像から平均的な1点選び、測定を行った。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示すように、外表面層に粒子径が1.5μm以下の粒子を添加した実施例1~6の熱収縮性積層フィルムは、ヘーズが3.0%以下と透明性が高い水準のフィルムであるにもかかわらず、動摩擦係数が1.5以下と、適度な滑り性を有するものであった。
一方、外表面層に粒子を添加していない比較例1の熱収縮性積層フィルムは、ヘーズは0.9%と高い水準の透明性は有するものの、静摩擦係数と動摩擦係数の測定では、評価ができず滑り性に問題があった。また、粒子径が3.0μmを超える粒子を添加した比較例2~4の熱収縮性積層フィルムは、ヘーズが3.0%を超えており、トレーのオーバーラップ包装に本フィルムを使用した場合に、トレーの中身が若干曇った状態で見えるものであった。尚、比較例2~3については、ヘーズの測定結果より、所望する透明性が得られなかった為、静摩擦係数と動摩擦係数の評価は行っていないが、実施例1~6と同等の値と予想される。
【0034】
また、外表面層の表面における粗さにおいて、最大高さRzが0.8~1.5μmであり、且つ最大断面高さRtが0.9~2.4μmとなる実施例1,3,5,6の熱収縮性積層フィルムは、透明性に優れ且つ滑り性が良好なものであった。一方、最大高さRzが0.8μm未満且つ最大断面高さRtが0.9μm未満である比較例1は透明性には優れるものの滑り性が悪かった。更に、最大高さRzが1.5μm超且つ最大断面高さRtが2.4μm超である比較例2,3は、透明性が悪い結果であった。
【0035】
<実施例7~14、比較例5>
インフレーション成形によって、表2に示すフィルムの層構成及び樹脂組成である、外表面層/外側接着層/芯層(バリア層)/内側接着層/内表面層の未延伸フィルムを製膜し、次いで、テーブル延伸によって同時二軸延伸を行い、表2に示す厚みの熱収縮性積層フィルムを作成した。
尚、表2で示す粒子の詳細を以下に記す。
AB剤-1:立方体状多孔質のゼオライト粒子、屈折率 1.50、平均粒径1.3μm。尚、平均粒子径は、レーザー回析・散乱法により測定した値である。
AB剤―3:球状の合成非晶質シリカ粒子、平均粒径(一次粒子径) 0.03μm、凝集後の平均粒径(二次粒子径) 2μm。尚、平均粒径は、レーザー回析・散乱法により測定した値である。
【0036】
得られた熱収縮性積層フィルムを、上記方法によってヘーズ、動摩擦係数を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例9と実施例13を比較すると、実施例9の方が実施例13よりもヘーズ及び動摩擦係数共に良好な値であった。これは、球状の粒子(実施例11~14で使用のAB剤―3)よりも、立方体状の粒子(実施例7~10で使用のAB剤-1)の方が、粒子の製造工程やフィルムの製膜工程で凝集しにくく、形状を保った状態でフィルム中に分散することから、透明性が高く、尚且つ滑り性が良好であったものと推察される。
【符号の説明】
【0039】
1 熱収縮性積層フィルム
2 外表面層
3 外側接着層
4 芯層
5 内側接着層
6 内表面層
7 内層

図1