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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015908
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】オイルフリースクリュ圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
F04C18/16 H
F04C18/16 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119985
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柴 優
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オイルフリースクリュ圧縮機の吐出側ロータ軸を可及的に短くする。
【解決手段】第2(メス)のスクリュロータ0の吐出側ロータ軸32を支承する軸受44の軸方向の長さを,第1(オス)のスクリュロータの吐出側ロータ軸22を支承する軸受42に比較して短く形成し,第1のスクリュロータ20の吐出側端面20aから第1の前記押さえプレート17のタイミングギヤ51側の側面までの距離Lcmに対し,第2のスクリュロータの吐出側端面30aから第2の押さえプレート18のタイミングギヤ52側の側面までの距離Lcfを短くすることにより,第2の押さえプレート18と第2のタイミングギヤ52間の間隔Wfを,第2の押さえプレート18を固定する固定用ボルト19bの頭部の厚みTfより広くする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オス又はメスいずれか一方のスクリュロータである第1のスクリュロータと,他方のスクリュロータである第2のスクリュロータを回転可能に収容するロータ室を備えると共に,前記第1のスクリュロータの吐出側ロータ軸が挿入される第1の軸孔と,前記第2のスクリュロータの吐出側ロータ軸が挿入される第2の軸孔を備えたシリンダと,
前記第1の軸孔に取り付けられて前記第1のスクリュロータの前記吐出側ロータ軸を支承する第1の軸受,及び,前記第2の軸孔に取り付けられて前記第2のスクリュロータの前記吐出側ロータ軸を支承する第2の軸受と,
前記第1及び第2の軸孔が開口する前記シリンダの吐出側端部に固定用ボルトを介してそれぞれ取り付けられて,前記第1の軸受を固定する第1の押さえプレート,及び,前記第2の軸受を固定する第2の押さえプレートと,
前記第1の押さえプレートを貫通した前記第1のスクリュロータの前記吐出側ロータ軸に取り付けた第1のタイミングギヤ,及び,前記第2の押さえプレートを貫通した前記第2のスクリュロータの前記吐出側ロータ軸に取り付けた第2のタイミングギヤを備え,
前記第2の軸受の軸方向の長さが,前記第1の軸受に比較して短く形成されていると共に,前記第2の押さえプレートを固定する前記固定用ボルトの少なくとも一部分が,前記第2のタイミングギヤの外径円の内側に配置されたオイルフリースクリュ圧縮機において,
前記第1のスクリュロータの吐出側端面から前記第1の押さえプレートの前記第1のタイミングギヤ側の側面までの距離に対し,前記第2のスクリュロータの吐出側端面から前記第2の押さえプレートの前記第2のタイミングギヤ側の側面までの距離を短くすることで,前記第2の押さえプレートと前記第2のタイミングギヤ間の間隔を,前記第2の押さえプレートを固定する前記固定用ボルトの頭部の厚みよりも広く形成したことを特徴とするオイルフリースクリュ圧縮機。
【請求項2】
前記第1の押さえプレートを固定する前記固定用ボルトが,前記第1のタイミングギヤの外径円の外側に配置されており,
前記第1の押さえプレートと前記第1のタイミングギヤ間の間隔を,前記第1の押さえプレートを固定する前記固定用ボルトの頭部の厚みよりも狭く形成したことを特徴とする請求項1記載のオイルフリースクリュ圧縮機。
【請求項3】
前記第1及び第2の軸受が,それぞれ,前記ロータ室側に配置される円筒コロ軸受と,該円筒コロ軸受に対し機外側に配置されるアンギュラ軸受を備え,
前記第1及び第2の各軸受に設けられた前記アンギュラ軸受の一部分が,前記第1及び第2の軸孔の開口端より突出するように前記第1及び第2の軸孔内に前記第1及び第2の軸受を収容することで,前記第1及び第2の押さえプレートと前記第1及び第2の軸孔の前記開口端間に隙間を生じさせたことを特徴とする請求項1または2記載のオイルフリースクリュ圧縮機。
【請求項4】
前記第1の押さえプレートと前記第1の軸孔の前記開口端間の前記隙間と,前記第2の押さえプレートと前記第2の軸孔の開口端間の前記隙間を,同一の幅としたことを特徴とする請求項3記載のオイルフリースクリュ圧縮機。
【請求項5】
前記第1の押さえプレートの固定に使用する前記固定用ボルトと,前記第2の押さえプレートの固定に使用する前記固定用ボルトを,同一寸法のボルトとしたことを特徴する請求項4記載のオイルフリースクリュ圧縮機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,オイルフリースクリュ圧縮機に関し,より詳細にはオイルフリースクリュ圧縮機の吐出側における軸受の取り付け構造に特徴を有するオイルフリースクリュ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように,オイルフリースクリュ圧縮機100は,シリンダ110内に形成されたロータ室111内でオス・メス一対のスクリュロータ120,130を非接触の状態で回転させることにより被圧縮気体を圧縮するもので,ロータ室111の内壁とスクリュロータ120,130とで画成される圧縮作用空間内に冷却,潤滑及び密封のための潤滑油を導入することなく被圧縮気体の圧縮を行うことができるように構成されている。
【0003】
そのため,オイルフリースクリュ圧縮機100では油分を含まない圧縮気体が得られることから,清浄な圧縮気体を必要とする医療分野や製紙,化学,食品製造等の分野において広く使用されている。
【0004】
このオイルフリースクリュ圧縮機100のスクリュロータ120,130には,その吸入側と吐出側にそれぞれロータ軸121,122;131,132が突出形成されており、これらのロータ軸121,122;131,132をそれぞれ軸孔115,116;112,113に設けた軸受141,142;143,144によって支承することにより,スクリュロータ120,130を回転可能にロータ室110内に収容している。
【0005】
そして,オス・メス一対のスクリュロータ120,130を非接触の状態で回転させるために,スクリュロータ120,130の吐出側ロータ軸122,132にそれぞれタイミングギヤ151,152を取り付けて,2つのタイミングギヤ151,152を噛合させると共に,オスのスクリュロータ120の吸入側ロータ軸121を,シリンダ110の吸入側端部を塞ぐインレットケーシング114を貫通して設けた軸孔115を介して機外に突出させて駆動軸とし,この駆動軸に図示せざるエンジンやモータ等の駆動源からの回転駆動力を入力することによりスクリュロータ120,130の非接触での噛み合い回転を可能としている。
【0006】
このようなオイルフリー圧縮機100では,スラスト荷重はアンギュラ軸受142b,144bにより,ラジアル荷重は円筒コロ軸受141,142a,143,144aによりそれぞれ受けることができるように構成されており,スラスト荷重を受けるアンギュラ軸受142b,144bは吐出側ロータ軸122,132にのみ設けられ,ラジアル荷重を受ける円筒コロ軸受141,142a,143,144aは吐出側,吸入側の双方のロータ軸121,122;131,132に設けられている。
【0007】
また,吐出側の軸受142,144にはアンギュラ軸受142b,144bと円筒コロ軸受142a,144aの間にジェット給油用の給油孔を備えたスペーサリング142c,144cが設けられていると共に,軸受142,144とロータ室111間には,ロータ室111内の圧縮機体が軸受142,144側に漏出することを防止するためのエアシール161,162と,軸受142,144に給油された潤滑油がロータ室111側に浸入することを防止するためのオイルシール163,164が設けられている。
【0008】
そして,図6に示すように吐出側ロータ軸122,132が挿入される軸孔112,113をシリンダ110に設け,この軸孔112,113の内壁と,該軸孔112,113内に挿入された吐出側ロータ軸122,132の外周間に形成される間隔に,前述のエアシール161,162,オイルシール163,164,円筒コロ軸受142a,144a,スペーサリング142c,144c,及びアンギュラ軸受142b,144bを配置した状態で,軸孔112,113の開口端112a,113aの周縁部を塞ぐように押さえプレート117,118を固定用ボルト119a,119bによってシリンダ110の吐出側端部110aに取り付け,この押さえプレート117,118によってアンギュラ軸受142b,144bの外輪が軸孔112,113から抜け落ちないように固定することで,これらの部材が軸孔112,113内に取り付けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実願昭63-153628号(実開平2-74592号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した構成のオイルフリースクリュ圧縮機100において,駆動源からの回転駆動力が入力されるオスのスクリュロータ120側は,比較的高い強度が求められることから,オスのスクリュロータ120のロータ軸121,122は,メスのスクリュロータ130のロータ軸131,132に比較して太く形成され,また,軸受141,142;143,144についても,オスのスクリュロータ120側の軸受141,142は,メスのスクリュロータ130側の軸受143,144に比較して大型のものが採用される。
【0011】
このように,オスのスクリュロータ120側の軸受142に比較して,小型の軸受144が採用されているメスのスクリュロータ130側では,吐出側ロータ軸132の軸線方向における軸受144の全長が,オスのスクリュロータ120側に設けられている軸受142に比較して短くなる。
【0012】
そのため,メスのスクリュロータ130の吐出側端面130aから,メス側の軸受144に設けたアンギュラ軸受144bの機外側端面までの距離Lafは,オスのスクリュロータ120の吐出側端面120aから,オス側の軸受142に設けたアンギュラ軸受142bの機外側端面までの距離Lamに比較して短くなる〔Laf<Lam:図6(A)参照〕。
【0013】
しかし,オイルフリースクリュ圧縮機100では前述したようにオスのスクリュロータ120とメスのスクリュロータ130を非接触で回転させるためにオスのスクリュロータ120の吐出側ロータ軸122とメスのスクリュロータ130の吐出側ロータ軸132には,相互に噛み合い回転するタイミングギヤ151,152が取り付けられていることから,両スクリュロータ120,130の吐出側端面120a,130aから,タイミングギヤ151,152の厚さ方向の中心迄の距離Lbは,オス側とメス側で共通の長さとして,タイミングギヤ151,152の噛み合いを確保する必要がある。
【0014】
そのため,従来のオイルフリースクリュ圧縮機100では,吐出側の軸孔112,113に対する軸受142,144の取り付けを,図6(A)に示すように,オス側では軸孔112の開口端112aよりもアンギュラ軸受142bの外輪の機外側端面が機外側へ僅かに突出するように軸孔112内に軸受142を挿入すると共に,押さえプレート117でアンギュラ軸受142bの外輪を固定する一方,メス側では,アンギュラ軸受144bの機外側端面が,軸孔113の開口端113aよりもロータ室111側に陥入された状態となるように軸受144を取り付け,押さえプレート118に一体的に,又は別体として設けた円筒状のスペーサ118a〔図6(A)中,グレーに着色した部分〕によってアンギュラ軸受144bの外輪をロータ室111側に押し込んだ状態で固定することで,軸受144を軸孔113内に固定している。
【0015】
このように構成することで,オス側,メス側の両押さえプレート117,118のタイミングギヤ151,152側の側面が同一平面上に配置されるように押さえプレート117,118をシリンダ110の吐出側端部110aに取り付けることで,スクリュロータ120,130の吐出側端面120a,130aから押さえプレート117,118のタイミングギヤ151,152側の側面までの距離Lcが,メス側とオス側のいずれにおいても同じ長さとなるように構成されている。
【0016】
また,図7に断面で示したように,駆動側であるオスのスクリュロータ120の歯数(図示の例では4個)に対し,従動側であるメスのスクリュロータ130の溝数(図示の例では6個)を多くして,オスのスクリュロータ120に対し,メスのスクリュロータ130の回転速度が遅くなるようにしている。
【0017】
そのため,メスのスクリュロータ130の吐出側ロータ軸132に取り付けられるタイミングギヤ152は,オスのスクリュロータ120の吐出側ロータ軸122に取り付けられるタイミングギヤ151よりも外径が大きなものとなる。
【0018】
一方,駆動側であるオスのスクリュロータ120の吐出側ロータ軸122は,メスのスクリュロータ130に比較して太く,かつ,大きな軸受142によって支承されていることから,これに対応して軸孔112も大きくなり,押さえプレート117を固定する固定用ボルト119aは,オスのスクリュロータ120に設けた吐出側ロータ軸122の軸芯から離れた位置でシリンダ110に螺着されることとなる。
【0019】
その結果,オスのスクリュロータ120側の押さえプレート117の固定用ボルト119aは,図6(B)に示すようにタイミングギヤ151の外径円の外側にその頭部が配置される。
【0020】
このようなオスのスクリュロータ120側におけるタイミングギヤ151と固定用ボルト119aの位置関係によれば,タイミングギヤ151と押さえプレート117間の間隔Wmを,固定用ボルト119a頭部の厚みTm以下とした場合であっても,タイミングギヤ151と固定用ボルト119aの頭部との干渉は回避できる。
【0021】
しかし,メスのスクリュロータ130側に設けられた吐出側ロータ軸132は細く,これを支承する軸受144も小型のものが採用されているため,メス側では,吐出側ロータ軸132の軸芯から比較的近い位置に固定用ボルト119bが配置されると共に,メスのスクリュロータ130に設けられるタイミングギヤ152は,オスのスクリュロータ120に設けられるタイミングギヤ151に比較して大径である。
【0022】
そのため,メスのスクリュロータ側では,図6(B)に示すようにタイミングギヤ152の外径円の内側に固定用のボルト119bの頭部の一部分が配置されることとなる。
【0023】
このようなタイミングギヤ152と固定用ボルト119bの位置関係より,メスのスクリュロータ130側では,タイミングギヤ152と固定用ボルト119bの頭部との干渉を避けるためにタイミングギヤ152と押さえプレート118間の間隔Wfを,固定用ボルト119bの頭部の厚みTfよりも広く取ることが必要となる。
【0024】
そのため,2つのタイミングギヤ151,152の噛合を確保するためには,オスのスクリュロータ120側におけるタイミングギヤ151と押さえプレート117間の間隔Wmについても,メス側で採用する間隔Wfに対応させて比較的広い間隔とすることが必要となる。
【0025】
このように,従来のオイルフリースクリュ圧縮機100において,スクリュロータ120,130の吐出側端面120a,130aから押さえプレート117,118のタイミングギヤ側の側面までの距離Lcは,オスのスクリュロータ120側の構成に対応させて長く形成し,また,押さえプレート117,118とタイミングギヤ151,152間の間隔Wm,Wfは,メスのスクリュロータ130側の構成に対応させて広く取っており,いずれも長い/広い方に適合するように調整がされていたことで,オス側,及びメス側のいずれの吐出側ロータ軸122,132共に,全長が長くなっていた。
【0026】
このように,吐出側ロータ軸122,132の全長を長くすれば,タイミングギヤ151,152による円筒コロ軸受142a,144aに対するモーメント荷重が大きくなり,円筒コロ軸受142a,144aの寿命が低下する等,オイルフリースクリュ圧縮機の信頼性を低下させる原因となる。
【0027】
また,前述したように,スクリュロータ120,130の吐出側端面120a,130aから押さえプレート117,118のタイミングギヤ151,152側の端面までの距離Lcが長くなると,シリンダ110には,その分,長い軸孔112,113の形成が必要となり,シリンダ110が大型化するだけでなく,シリンダ110に対する軸孔112,113の加工性が低下する。
【0028】
特に,オイルフリースクリュ圧縮機100では,潤滑,冷却及び密封のために圧縮作用空間に潤滑油を供給しないため,油冷式のスクリュ圧縮機に比較して圧縮作用空間の密封性が悪く,圧縮気体の漏出量も多くなるため,その分,スクリュロータ120,130を高速回転することで圧縮気体を生成することができるようにしている。
【0029】
そのため,オイルフリースクリュ圧縮機100では,軸受141~144の転動体にかかる遠心力が小さくなるよう可及的に小さいサイズの軸受141~144が採用される。
【0030】
このような小型の軸受142,144の採用により,シリンダ110に形成する軸孔112,113も小さくなることから,エアシール161,162やオイルシール163,164などの軸孔112,113の奥まった位置に取り付ける部品の取り付け作業や目視による点検等も困難となる。
【0031】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,比較的簡単な構成でありながら,タイミングギヤの噛合を確保と,固定用ボルトの頭部とタイミングギヤとの干渉の回避を行いつつ,オイルフリースクリュ圧縮機の吐出側ロータ軸の長さを可及的に短くすることができ,モーメント荷重を低減させて円筒コロ軸受の寿命を向上させて信頼性を高めることができると共に,シリンダに形成する軸孔の全長を短くすることで,シリンダの小型化,軽量化を可能と成すと共に,軸孔内の奥まった位置に取り付けられるエアシールやオイルシール等の部品の着脱作業や目視確認等についても容易に行うことができる,オイルフリースクリュ圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と,発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0033】
また,本明細書において「第1」,「第2」の用語は,部材や要素を区別するためにのみ使用するものであり,これらの用語は順位や序列等を規定する序数としての意味を持つものではない。
【0034】
上記目的を達成するために,本発明のオイルフリースクリュ圧縮機1は,
オス又はメスいずれか一方のスクリュロータ(図示の例ではオスのスクリュロータ)である第1のスクリュロータ20と,他方のスクリュロータ(図示の例ではメスのスクリュロータ)である第2のスクリュロータ30を回転可能に収容するロータ室11を備えると共に,前記第1のスクリュロータ20の吐出側ロータ軸22が挿入される第1の軸孔12と,前記第2のスクリュロータの吐出側ロータ軸32が挿入される第2の軸孔13を備えたシリンダ10と,
前記第1の軸孔12に取り付けられて前記第1のスクリュロータ20の前記吐出側ロータ軸22を支承する第1の軸受42,及び,前記第2の軸孔13に取り付けられて前記第2のスクリュロータ30の前記吐出側ロータ軸32を支承する第2の軸受44と,
前記第1及び第2の軸孔12,13が開口する前記シリンダ10の吐出側端部10aに固定用ボルト19a,19bを介してそれぞれ取り付けられて,前記第1の軸受42を固定する第1の押さえプレート17,及び,前記第2の軸受44を固定する第2の押さえプレート18と,
前記第1の押さえプレート17を貫通した前記第1のスクリュロータ20の前記吐出側ロータ軸22に取り付けた第1のタイミングギヤ51,及び,前記第2の押さえプレート18を貫通した前記第2のスクリュロータ30の前記吐出側ロータ軸32に取り付けた第2のタイミングギヤ52を備え,
前記第2の軸受44の軸方向の長さが,前記第1の軸受42に比較して短く形成されていると共に,前記第2の押さえプレート18を固定する前記固定用ボルト19bの少なくとも一部分が,前記第2のタイミングギヤ52の外径円の内側に配置されたオイルフリースクリュ圧縮機において,
前記第1のスクリュロータ20の吐出側端面20aから前記第1の押さえプレート17の前記第1のタイミングギヤ51側の側面までの距離Lcmに対し,前記第2のスクリュロータ30の吐出側端面30aから前記第2の押さえプレート18の前記第2のタイミングギヤ52側の側面までの距離Lcfを短くすることで,前記第2の押さえプレート18と前記第2のタイミングギヤ52間の間隔Wfを,前記第2の押さえプレート18を固定する前記固定用ボルト19bの頭部の厚みTfよりも広く形成したことを特徴とする(請求項1;図2~4参照)。
【0035】
上記構成のオイルフリースクリュ圧縮機1において,前記第1の押さえプレート17を固定する前記固定用ボルト19aが,前記第1のタイミングギヤ51の外径円の外側に配置されている場合,
前記第1の押さえプレート17と前記第1のタイミングギヤ51間の間隔Wmを,前記第1の押さえプレート17を固定する前記固定用ボルト19aの頭部の厚みTmよりも狭く形成することが好ましい(請求項2;図2~4参照)。
【0036】
また,上記構成のオイルフリースクリュ圧縮機1において,
前記第1及び第2の軸受42,44が,それぞれ,前記ロータ室11側に配置される円筒コロ軸受42a,44aと,該円筒コロ軸受42a,44aに対し機外側に配置されるアンギュラ軸受42b,44bを備え,
前記第1及び第2の各軸受42,44に設けられた前記アンギュラ軸受42b,44bの一部分が,前記第1及び第2の軸孔12,13の開口端12a,13aより突出するように前記第1及び第2の軸孔12,13内に前記第1及び第2の軸受42,44を収容することで,前記第1及び第2の押さえプレート17,18と前記第1及び第2の軸孔12,13の前記開口端12a,13a間に隙間δm,δfを生じさせるものとしても良い(請求項3;図2及び3参照)。
【0037】
このような隙間δm,δfを設ける場合,例えば前記第1(オス)のスクリュロータ20側において前記固定用ボルト19aの取り付け位置を含む前記第1の軸孔12の開口端12a周縁を前記第1のタイミングギヤ51側に向かって膨出させた膨出部10bを設ける等して,及び/又は,前記第2(メス)のスクリュロータ30側において前記固定用ボルト19bの取り付け位置を含む前記第2の軸孔13の開口端13a周縁を前記ロータ室11側に向かって陥没させた陥没部を設ける等して,前記第1の押さえプレート17と前記第1の軸孔12の前記開口端12a間の前記隙間δmと,前記第2の押さえプレート18と前記第2の軸孔13の開口端13a間の前記隙間δfを,同一の幅とするものとしても良い(請求項4;図3図4参照)。
【0038】
前述のように,第1,第2の押さえプレート17,18と第1,第2の軸孔12,13の開口端12a,13a間の隙間δm,δfを同一とした構成では,前記第1の押さえプレート17の固定に使用する前記固定用ボルト19aと,前記第2の押さえプレート18の固定に使用する前記固定用ボルト19bを,同一寸法のボルトとするものとしても良い(請求項5;図3及び図4参照)。
【発明の効果】
【0039】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のオイルフリースクリュ圧縮機1では,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0040】
第2(メス)のスクリュロータ30の吐出側端面30aから第2の押さえプレート18の第2のタイミングギヤ52側の側面のまでの距離Lcfを,第1(オス)のスクリュロータ20吐出側端面20aから第1の押さえプレート17の第1のタイミングギヤ51側の側面のまでの距離Lcmに比較して短く形成したことで,第2の押さえプレート18と第2のタイミングギヤ52間の間隔Wfとして,固定用ボルト19bの頭部の厚みTf以上の幅を確保することが可能となり,第1,第2双方の吐出側ロータ軸22,32の長さを短くすることができた。
【0041】
特に,前記第1の押さえプレート17を固定する前記固定用ボルト19aが,前記第1のタイミングギヤ51の外径円の外側に配置されている場合,第1の押さえプレート17と第1のタイミングギヤ51間の間隔Wmを,固定用ボルト19aの頭部の厚みTmよりも狭く形成した構成では,第1及び第2のスクリュロータ20,30の吐出側ロータ軸22,32の長さを更に短くすることができた。
【0042】
その結果,円筒コロ軸受42a,44aに加わるモーメント荷重を小さくして円筒コロ軸受42a,44aの寿命を増大させることができ,軸受42,44,ひいてはオイルフリースクリュ圧縮機1の信頼性を向上させることができた。
【0043】
前記第1及び第2の軸受42,44の双方において,アンギュラ軸受42b,44bの一部分を,前記第1及び第2の軸孔12,13の開口端12a,13aより突出させて配置し,前記第1及び第2の押さえプレート17,18と前記第1及び第2の軸孔12,13の開口端12a,13a間にそれぞれ隙間δm,δfを設けた構成では,シリンダ10に形成する第1,第2の軸孔12,13の全長を短くすることができ,軸孔12,13の加工性が向上すると共に,第1,第2の軸孔12,13の開口端12a,13aからオイルシール63,64やエアシール61,62迄の距離が短くなることで,オイルシール63,64やエアシール61,62の取り付け作業や目視確認等を容易とすることができた。
【0044】
更に,第1及び第2の軸孔12,13の全長が短くなることで,シリンダ10の軸線方向の全長を短くすることが可能となり,シリンダ10の小型化,軽量化が可能となった。
【0045】
なお,第1の押さえプレート17と第1の軸孔12の開口端12a間の隙間δmと,第2の押さえプレート18と第2の軸孔13の開口端13a間の隙間δfとが異なる幅で形成される場合〔図2(A)参照〕,隙間δm,δfのうち幅が広い側の固定には,幅が狭い側の固定に比較して長さの長い固定用ボルトを使用しなければ,シリンダ10に設けたネジ孔に対する固定用ボルト19a,19bの螺合長さに違いが生じ,第1の押さえプレート17と第2の押さえプレート18で取り付け強度に差異が生じる。
【0046】
しかし,前記第1の押さえプレート17と前記第1の軸孔12の開口端12a間の隙間δmと,前記第2の押さえプレート18と前記第2の軸孔13の開口端13a間の隙間δfが,同一の幅となるようにした構成〔図3(A)及び図4(A)参照〕では,第1,第2のいずれの押さえプレート17,18の固定用ボルト19a,19bとして同一寸法のものを使用した場合であっても,固定用ボルト19a,19bの螺合長さを同じくすることができる。
【0047】
その結果,第1と第2の押さえプレート17,18の固定に,共通設計の固定用ボルトを使用することができ,組み立て作業が容易となり生産性が向上すると共に,部品の共用化によるコストの低減を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明のオイルフリースクリュ圧縮機の断面平面図。
図2】(A)は図1の部分拡大図,(B)は(A)を矢視B方向より見た図。
図3】(A)は図2(A)に対する変形例を示す図1の部分拡大図,(B)は(A)を矢視B方向より見た図。
図4】(A)は図2(A)に対する更に別の変形例を示す図1の部分拡大図,(B)は(A)を矢視B方向より見た図。
図5】従来のオイルフリースクリュ圧縮機の断面平面図。
図6】(A)は図5の部分の拡大図,(B)は(A)を矢視B方向より見た図。
図7】オスロータとメスロータの断面形状の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に,添付図面を参照しながら本発明のオイルフリースクリュ圧縮機の構成につき説明する。
【0050】
なお,以下の本実施形態では,オスのスクリュロータを第1のスクリュロータ20,メスのスクリュロータを第2のスクリュロータ30とした構成について説明するが,本実施形態とは逆に,メスのスクリュロータを第1のスクリュロータとし,また,オスのスクリュロータを第2のスクリュロータとして本発明を実施するものとしても良い。
【0051】
図1において,符号1は,本発明のオイルフリースクリュ圧縮機であり,このオイルフリースクリュ圧縮機1のシリンダ10には,オス,メス一対のスクリュロータを回転可能に収容するロータ室11が形成されており,このロータ室11内でオスのスクリュロータ(第1のスクリュロータ)20と,メスのスクリュロータ(第2のスクリュロータ)30が非接触の状態で噛み合い回転することにより被圧縮気体を圧縮することができるように構成されている。
【0052】
この第1(オス)及び第2(メス)のスクリュロータ20,30の両端には,それぞれ回転軸であるロータ軸21,22,31,32が突出形成されていると共に,前述のロータ室10の吸入側端面に取り付けられたインレットケーシング14には,このうちの吸入側のロータ軸21,31が挿入される軸孔15,16と,該軸孔15,16に挿入された吸入側ロータ軸21,31を支承する軸受(円筒コロ軸受)41,43が設けられている。
【0053】
一方,シリンダ10のうち,前記ロータ室11に対し吐出側に位置する部分には,第1のスクリュロータ20の吐出側ロータ軸22が挿入される第1の軸孔12,及び,第2のスクリュロータ30の吐出側ロータ軸32が挿入される第2の軸孔13がそれぞれ形成されていると共に,前記第1及び第2の軸孔12,13に挿入された吐出側ロータ軸22,32を支承する,円筒コロ軸受42a,44aと,アンギュラ軸受42b,44bを備えた第1及び第2の軸受42,44がそれぞれ設けられている。
【0054】
そして,前記第1及び第2のスクリュロータ20,30を非接触の状態で噛み合い回転させるために,第1のスクリュロータ20の吐出側ロータ軸22には第1のタイミングギヤ51が,第2のスクリュロータ30の吐出側ロータ軸32には第2のタイミングギヤ52がそれぞれ取り付けられており,2つのタイミングギヤ51,52を噛合させると共に,一方のスクリュロータ20の吸入側ロータ軸21を,インレットケーシング14を貫通して機外に突出させて駆動軸とし,この駆動軸に図示せざるエンジンやモータ等の駆動源からの回転駆動力を入力することによりスクリュロータ20,30の回転を可能としている。
【0055】
なお,吐出側に設けた第1,第2の軸受42,44には,図6を参照して説明したオイルフリースクリュ圧縮機100と同様,アンギュラ軸受42b,44bと円筒コロ軸受42a,44aの間にジェット給油用の給油孔を備えたスペーサリング42c,44cが設けられていると共に,第1,第2の軸受42,44とロータ室11間には,それぞれ,ロータ室11内の圧縮気体が軸受42,44側に漏出することを防止するためのエアシール61,62と,軸受42,44に給油された潤滑油がロータ室11側に浸入することを防止するためのオイルシール63,64が設けられている。
【0056】
従って,本発明のオイルフリースクリュ圧縮機1においても,図6を参照して説明した従来のオイルフリースクリュ圧縮機100と同様,シリンダ10に設けた第1,第2の軸孔12,13の内壁と吐出側ロータ軸22,32の外面間に,前述のエアシール61,62,オイルシール63,64,円筒コロ軸受42a,44a,スペーサリング42c,44c,及びアンギュラ軸受42b,44bを配置した状態で,軸孔12,13の端部が開口しているシリンダ10の吐出側端部に取り付けた第1及び第2の押さえプレート17,18によって,第1及び第2の各軸受42,44外輪の機外側端面,具体的には,アンギュラ軸受42b,44b外輪の機外側端面をロータ室11側に押圧するように固定して軸受42,44の取り付けが行われている。
【0057】
ここで,図示せざる駆動源からの回転駆動力の入力が行われる第1(オス)のスクリュロータ20に設けられたロータ軸21,22は,駆動側としての必要な強度が得られるように比較的太く形成されている一方,第2(メス)のスクリュロータ30に設けられているロータ軸31,32は,第1のスクリュロータ20のロータ軸21,22に比較して細く形成されている。
【0058】
また,細径である第2のスクリュロータ30の吐出側ロータ軸32を支承する第2の軸受44は,大径である第1のスクリュロータ20の吐出側ロータ軸22を支承する第1の軸受42に比較して小型のものが採用されている。
【0059】
このように,第2のスクリュロータ30の吐出側ロータ軸32は,第1のスクリュロータ20の吐出側ロータ軸22に比較して細く形成されていると共に,小型の軸受44によって支承されていること,また,第1(オス)のスクリュロータ20の吐出側ロータ軸22に取り付けられている第1のタイミングギヤに比較して,第2(メス)のスクリュロータ30の吐出側ロータ軸32に取り付けられる第2のタイミングギヤ52は大径であることから,第2の押さえプレート18を固定する固定用ボルト19bの頭部は,図2(B)に示すように少なくともその一部が第2のタイミングギヤ52の外径円の内側に配置される。
【0060】
これに対し,第2の吐出側ロータ軸32に比較して太く形成されていると共に大型の第1の軸受42に支承されていること,また,第2(メス)のスクリュロータ30の吐出側ロータ軸32に取り付けられている第2のタイミングギヤに比較して,第1(オス)のスクリュロータ20の吐出側ロータ軸22に取り付けられる第1のタイミングギヤ51は小径であることから,第1の押さえプレート17を固定する固定用ボルト19aの頭部は,図2(B)に示すように第1のタイミングギヤ51の外径円の外側に配置される。
【0061】
更に,前述したように第1(オス)のスクリュロータ20側に設けられる第1の軸受42に比較して,第2(メス)のスクリュロータ30側に設けられる第2の軸受44は小型であるため,第2の軸受44の軸線方向の長さは,第1の軸受42に比較して,短くなっている。
【0062】
ここで,図6(A)を参照して説明した従来のオイルフリースクリュ圧縮機100では,メスのスクリュロータ130に設けた吐出側ロータ軸132を支承する軸受144の固定に使用する押さえプレート118に,円筒状のスペーサ118aを設け,このスペーサ118aを介して軸受142のアンギュラ軸受142bの外輪を固定することで,オスのスクリュロータ120側に設けた押さえプレート117のタイミングギヤ151側の側面と,メスのスクリュロータ130側に設けた押さえプレート118のタイミングギヤ152側の側面が同一平面上に配置されるように構成していた。
【0063】
これに対し,本発明のオイルフリースクリュ圧縮機1では,このような円筒状のスペーサ118aを設けることなく,第1及び第2の押さえプレート17,18の側面によって,第1及び第2の軸受42,44のアンギュラ軸受42b,44b外輪の機外側端面を直接固定する構成を採用したことで,第2のスクリュロータ30の吐出側端面30aから前記第2の押さえプレート18のタイミングギヤ52側の側面までの距離Lcfを,第1のスクリュロータ20の吐出側端面20aから第1の押さえプレート17のタイミングギヤ51側の側面までの距離Lcmよりも短くしている。
【0064】
これにより,第1(オス)のスクリュロータ20側に設けた第1の押さえプレート17と第1のタイミングギヤ51間の間隔Wmを,第1の押さえプレート17を固定する固定用ボルト19aの頭部の厚みTmよりも狭く形成した場合であっても,第2(メス)のスクリュロータ30側に設けた第2の押さえプレート18と第2のタイミングギヤ52間の間隔Wfを,第2の押さえプレート18を固定する固定用ボルト19bの頭部の厚みTfよりも広く形成して両者の干渉を回避することが可能となり,第1及び第2のスクリュロータ20,30の吐出側ロータ軸22,32の長さを可及的に短くすることができた。
【0065】
なお,図2に示す実施形態では,第1の押さえプレート17と第1のタイミングギヤ51間の間隔Wmを,第1の押さえプレート17を固定する固定用ボルト19aの頭部の厚みTmよりも狭く形成している。
【0066】
しかし,第2のスクリュロータ30の吐出側端面30aから前記第2の押さえプレート18のタイミングギヤ52側の側面までの距離Lcfを,第1のスクリュロータ20の吐出側端面20aから第1の押さえプレート17のタイミングギヤ51側の側面までの距離Lcmよりも短くし,かつ,第2の押さえプレート18と第2のタイミングギヤ52間の間隔Wfを,第2の押さえプレート18を固定する固定用ボルト19bの頭部の厚みTfよりも広く取ることができれば,第1の押さえプレート17と第1のタイミングギヤ51間の間隔Wmを,第1の押さえプレート17を固定する固定用ボルト19aの頭部の厚みTmよりも広く形成した場合であっても,第2のタイミングギヤ52と第2の押さえプレート18を固定する固定用ボルト19bの頭部間の干渉を回避しつつ,図6に示す従来の構造に比較して,第1及び第2のスクリュロータ20,30の吐出側ロータ軸22,32の長さを短くすることができる。
【0067】
従って,本発明は,第1の押さえプレート17と第1のタイミングギヤ51間の間隔Wmは,図2(A)に示すように第1の押さえプレート17を固定する固定用ボルト19aの頭部の厚みTmよりも狭く形成する構成に限定されるものではない。
【0068】
このように第1及び第2のスクリュロータ20,30の吐出側ロータ軸22,32の長さを可及的に短くすることができたことで,円筒コロ軸受42a,44aにかかるモーメント荷重を低減することができ,円筒状コロ軸受42a,44aの寿命を向上させることができた。
【0069】
また,吐出側ロータ軸22,32の全長が短くなることで,シリンダ10の全長を短くでき,装置全体の小型化,軽量化が可能となると共に,第1,第2の軸孔12,13の全長も短くなることで,加工性も向上させることができた。
【0070】
図1及び図2(A)に示した実施形態では,第1の軸孔12と第2の軸孔13のいずれ共に,開口端12a,13aの位置がシリンダ10の吐出側端部10aにおける同一平面上に配置されていると共に,第1,第2の軸受42,44のうち,アンギュラ軸受42b,44bの一部分が,第1,第2の軸孔12,13の開口端12a,13aより外方に突出するように取り付けている。
【0071】
このように,第1及び第2の軸受42,44のうち,アンギュラ軸受42b,44bの一部分が第1,第2の軸孔12,13より突出するように取り付けたことにより,シリンダ10に形成する第1,第2の軸孔12,13の全長を更に短くすることができ,第1,第2の軸孔12,13の加工性が向上すると共に,シリンダ10の小型化が可能であり,オイルフリースクリュ圧縮機1の小型,軽量化を実現することができた。
【0072】
しかも,第1,第2の軸孔12,13の全長が短くなることで,第1,第2の軸孔12,13それぞれの奥まった位置に取り付けられるオイルシール63,64やエアシール61,62の着脱性,目視確認性を向上させることができる。
【0073】
一方,アンギュラ軸受42b,44bは,スラスト方向の荷重のみを受け,ラジアル方向の荷重がかからないように,図示の実施形態では第1,第2の軸孔12,13には逃げ12b,13bを設けてアンギュラ軸受42b,44bを取り付けており,アンギュラ軸受42b,44bの外輪は,第1,第2の軸孔12,13内に挿入されている部分においても軸孔12,13の内壁による固定が行われていない。
【0074】
従って,図2(A)に示したように,アンギュラ軸受42b,44bの一部分が軸孔12,13より露出していたとしても機能上,何ら問題は生じない。
【0075】
なお,図2(A)を参照して説明したように,第1の軸孔12の開口端12aと,第2の軸孔13の開口端13aをいずれもシリンダ10の吐出側端部10aにおける同一平面上に配置して,両軸孔12,13の全長を同一長さとした構成では,軸線方向の長さが長い第1の軸受42の方が,軸受42(アンギュラ軸受42b)の突出長さが長くなり,第1の軸孔12の開口端12aと第1の押さえプレート17間に形成される隙間δmは,第2の軸孔13の開口端13aと第2の押さえプレート18間に形成される隙間δfよりも広くなる。
【0076】
その結果,第1の押さえプレート17の固定に使用する固定用ボルト19aと,第2の押さえプレート18の固定に使用する固定用ボルト19bを,同一の長さとすると,第1の押さえプレート17を固定する固定用ボルト19aのシリンダ10に対する螺合深さが浅くなり,第1の押さえプレート17の取り付け強度が低くなる。
【0077】
そのため,図2(A)に示した実施形態では,第2の押さえプレート18の固定に使用する固定用ボルト19bに比較して,第1の押さえプレート17の固定に使用する固定用ボルト19aの長さを長くして,シリンダ10に対する固定用ボルト19a,19bの螺合が,いずれも同じ深さで行われるようにしている。
【0078】
しかし,このように第1の押さえプレート17の固定用ボルト19aと,第2の押さえプレート18の固定用ボルト19bとして異なる規格のものを使用すると,部品点数の増加により組み立て時の作業性が低下すると共に,製造コストの上昇を招く。
【0079】
そこで,図3に示した実施形態では,第1の押さえプレート17の固定用ボルト19aの取り付け位置を含む第1の軸孔12の開口端12aの周縁において,シリンダ10の吐出側端部10aを第1のタイミングギヤ51側に向かって膨出させた膨出部10bを設けることで,第1の押さえプレート17と第1の軸孔12の開口端12a間の隙間δmと,第2の押さえプレート18と第2の軸孔13の開口端13a間の隙間δfが同一幅となるようにしている。
【0080】
このように,第1の押さえプレート17と第1の軸孔12の開口端12a間の隙間δmと,第2の押さえプレート18と第2の軸孔13の開口端13a間の隙間δfが同一幅となるように構成することで,第1の押さえプレート17の固定用ボルト19aと,第2の押さえプレート18の固定用ボルト19bを同一長さとすることができ,その結果,第1の押さえプレート17と第2の押さえプレート18の固定に,異なるサイズの固定用ボルトを使用する場合に比較して,部品の共用によるコスト減,組み立て作業の簡略化等を図ることができる。
【0081】
なお,図3に示した実施形態では,第1の押さえプレート17と第1の軸孔12の開口端12a間の隙間δmと,第2の押さえプレート18と第2の軸孔13の開口端13a間の隙間δfを同一の幅とするために,第1の軸孔12の開口部12aの周縁を第1のタイミングギヤ51側に膨出させた膨出部10bを設ける構成を採用したが,この構成に代えて,図4(A)に示すように,第2の軸孔13の開口端13a周縁をロータ室11側に陥没させた陥没部10cを形成する構成を採用しても良い。
【0082】
図4に示す実施形態では,第1の押さえプレート17と第1の軸孔12の開口端12a間の隙間δmを小さくするために、第1の軸孔12の開口端12aを第1の軸受42の外輪の機外側端面の近傍位置まで延長すると共に,第2の軸孔13の開口端13a周縁をロータ室11側に陥没させた陥没部10cを形成し,この陥没部10c内に第2の軸孔13の開口端13aを設けると共に,第2の押さえプレート18をこの陥没部10c内嵌合させ、第2の押さえプレート18と第2の軸孔13の開口端13a間の隙間δfを,第1の押さえプレート17と第1の軸孔12の開口端12a間の隙間δmと同一となるようにしている。
【0083】
この構成では,隙間δm,δfをいずれも必要最小限の幅としたことで,第1,第2の押さえ板17,18の固定用ボルト19a,19bを同一長さとすることができるだけでなく,図3を参照して説明した実施形態と同一長さの固定用ボルト19a,19bを使用する場合,シリンダ10に対する固定用ボルト19a,19bの螺合深さをより深くすることができ,また,図3の実施形態に比較して短い固定用ボルト19a,19bを使用した場合であっても,必要な螺合深さを確保することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 オイルフリースクリュ圧縮機
10 シリンダ
10a 吐出側端部(シリンダの)
10b 膨出部
10c 陥没部
11 ロータ室
12 第1の軸孔(吐出側)
12a 開口端(第1の軸孔の)
12b 逃げ(第1の軸孔の)
13 第2の軸孔(吐出側)
13a 開口端(第2の軸孔の)
13b 逃げ(第2の軸孔の)
14 インレットケーシング
15,16 軸孔(吸入側)
17 第1の押さえプレート
18 第2の押さえプレート
19a 固定用ボルト(第1の押さえプレート用)
19b 固定用ボルト(第2の押さえプレート用)
20 第1(オス)のスクリュロータ
20a 吐出側端面〔第1(オス)のスクリュロータの〕
21 吸入側ロータ軸
22 吐出側ロータ軸
30 第2(メス)のスクリュロータ
30a 吐出側端面〔第2(メス)のスクリュロータの〕
31 吸入側ロータ軸
32 吐出側ロータ軸
41 軸受(吸入側)
42 第1の軸受(吐出側)
42a 円筒コロ軸受
42b アンギュラ軸受
42c スペーサリング
43 軸受(吸入側)
44 第2の軸受(吐出側)
44a 円筒コロ軸受
44b アンギュラ軸受
44c スペーサリング
51 第1のタイミングギヤ
52 第2のタイミングギヤ
61,62 エアシール
63,64 オイルシール
100 オイルフリースクリュ圧縮機
110 シリンダ
110a 吐出側端部(シリンダの)
111 ロータ室
112,113 軸孔(吐出側)
112a,113a 開口端(軸孔の)
114 インレットケーシング
115,116 軸孔(吸入側)
117,118 押さえプレート
118a 円筒状スペーサ
119a,119b 固定用ボルト
120 オスのスクリュロータ
120a 吐出側端面(オスのスクリュロータの)
121 ロータ軸(吸入側)
122 ロータ軸(吐出側)
130 メスのスクリュロータ
130a 吐出側端面(メスのスクリュロータの)
131 ロータ軸(吸入側)
132 ロータ軸(吐出側)
141,143 軸受(吸入側)
142,144 軸受(吐出側)
142a,144a 円筒コロ軸受
142b,144b アンギュラ軸受
142c,144c スペーサリング
151,152 タイミングギヤ
161,162 エアシール
163,164 オイルシール
Lam:オスのスクリュロータ120の吐出側端面120aとアンギュラ軸受142bの機外側端面間の距離(図6
Laf:メスのスクリュロータ130の吐出側端面130aとアンギュラ軸受144bの機外側端面間の距離(図6
Lb:スクリュロータ120,130の吐出側端面120a,130aとタイミングギヤ151,152の厚さ方向の中心間距離(図6
Lc:スクリュロータ120,130の吐出側端面120a,130aと押さえプレート117,118のタイミングギヤ151,152側の側面間の距離(図6
Lcm:第1(オス)のスクリュロータ20の吐出側端面20aと第1の押さえプレート17のタイミングギヤ51側の側面間の距離〔図2(A),図3(A),図4(A)〕
Lcf:第2(メス)のスクリュロータ30の吐出側端面30aと第2の押さえプレート18のタイミングギヤ52側の側面間の距離〔図2(A),図3(A),図4(A)〕
Wm:タイミングギヤ51,151と押さえプレート17,117間の間隔
Wf:タイミングギヤ52,152と押さえプレート18,118間の間隔
Tm:固定用ボルト19a,119aの頭部の厚み
Tf:固定用ボルト19b,119bの頭部の厚み
δm:隙間(第1の押さえプレート17と第1の軸孔12の開口端12a間の)
δf:隙間(第2の押さえプレート18と第2の軸孔13の開口端13a間の)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7