(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159108
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】導電性フィルム、センサー、タッチパネル、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20231024BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20231024BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20231024BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20231024BHJP
G06F 3/044 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
H01B5/14 A
B32B5/02 B
B32B7/025
G06F3/041 490
G06F3/041 495
G06F3/044 120
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123101
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2020504053の分割
【原出願日】2019-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018043073
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 英司
(72)【発明者】
【氏名】小久見 尚一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 行光
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 敬
(72)【発明者】
【氏名】磯嶋 征一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ミルキネスを抑制可能な導電性フィルム、このような導電性フィルムを備えるタッチパネルおよび画像表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも導電部12と光透過性基材11とを備える導電性フィルムであって、導電部12が、光透過性樹脂14と、光透過性樹脂14中に配置された複数の導電性繊維15とを含み、導電性フィルムの導電部12が存在する領域における拡散光反射率(SCE)が、0.5%以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電部を備える導電性フィルムであって、
前記導電部が、光透過性樹脂と、前記光透過性樹脂中に配置された複数の導電性繊維とを含み、前記導電性フィルムの前記導電部が存在する領域における拡散光反射率が、0.5%以下であり、
前記導電性フィルムの表面抵抗値が、200Ω/□以下であり、
前記導電性フィルムのヘイズ値が、0.65%以下である、導電性フィルム。
【請求項2】
前記導電部が、前記光透過性樹脂中に配置され、かつ前記導電性繊維とは異なる異種繊維をさらに含む、請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記異種繊維が、少なくとも一部の表面が前記導電性繊維よりも暗色を呈する表面暗色系繊維である、請求項2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記表面暗色系繊維が、前記導電性繊維よりも暗色を呈する繊維材である、請求項3に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
前記表面暗色系繊維が、繊維材と、前記繊維材の表面に形成され、かつ前記導電性繊維よりも暗色を呈する暗色系皮膜とを有する、請求項3に記載の導電性フィルム。
【請求項6】
前記導電部の一方の面側に設けられた光透過性基材をさらに備える、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項7】
前記光透過性基材が、ポリエステル系樹脂を含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、5μm以上45μm以下である、請求項6に記載の導電性フィルム。
【請求項8】
前記光透過性基材が、ポリイミド系樹脂およびポリアミド系樹脂の少なくともいずれかを含み、かつ前記光透過性基材の厚みが5μm以上75μm以下である、請求項6に記載の導電性フィルム。
【請求項9】
前記導電性フィルムの厚みが、5μm以上78μm以下である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項10】
前記導電性フィルムの対向する辺部の間隔が3mmとなるように前記導電性フィルムを180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項11】
前記導電性繊維の平均繊維径が、30nm以下である、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項12】
前記導電性繊維の平均繊維長が、10μm以上30μm以下である、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項13】
前記導電性フィルムが、LED画像表示装置用導電性フィルムである、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の導電性フィルムを備える、センサー。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の導電性フィルムを備える、タッチパネル。
【請求項16】
表示パネルと、
前記表示パネルよりも観察者側に配置された請求項1ないし13のいずれか一項に記載の導電性フィルムまたは請求項15に記載のタッチパネルと、
を備える、画像表示装置。
【請求項17】
前記表示パネルが、有機発光ダイオードパネルである、請求項16に記載の画像表示装置。
【請求項18】
LED光源をさらに備える、請求項16に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願は、先行する日本国出願である特願2018-43073(出願日:2018年3月9日)の優先権の利益を享受するものであり、その開示内容全体は引用することにより本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、導電性フィルム、センサー、タッチパネル、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、スマートフォンやタブレット端末等の画像表示装置には、画像表示面を指などで触れることにより情報を直接入力することが可能なタッチパネルが配置されていることがある。
【0004】
タッチパネルは、通常、光透過性基材上に導電部を有する導電性フィルムを備えている。光透過性導電性フィルムにおける導電部の導電性材料としては、主に、酸化インジウムスズ(ITO)が用いられている。しかしながら、ITOには柔軟性がないため、光透過性基材として可撓性の基材を使用した場合には、導電部にひび割れが生じやすい。
【0005】
このため、現在、ITOの代わりに、導電部を構成する導電性材料として、繊維径がナノサイズの銀ナノワイヤ等の金属ナノワイヤを用いることが検討されている。
【0006】
しかしながら、金属ナノワイヤを用いた導電性フィルムにおいては、金属ナノワイヤに起因する光の散乱が生じ、導電部が白っぽく浮き上がって見える現象(ミルキネス)が生じやすい(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記ミルキネスの問題に対して、特許文献1においては、基材と導電部との間に黄色化合物を含む調整層を配置することによってミルキネスを抑制することが記載されているが、特許文献1に記載の技術においては、ミルキネスを有効に抑制できず、また全光線透過率や表面抵抗値も低下するおそれがあるため、現在、特許文献1に記載の技術とは異なる手段で、ミルキネスの問題を解決することが求められている。また、金属ナノワイヤはLEDからの光で特に反射しやすいので、光源として、LEDを用いると、ミルキネスの問題が顕著となってしまう傾向があり、更なるミルキネスの解決が求められている。
【0009】
また、上記ミルキネスの問題に対して、金属ナノワイヤの繊維径を30nm前後まで細くすることも検討されているが、金属ナノワイヤの繊維径を30nm前後まで細くした場合であっても、ヘイズ値は低下するものの、ミルキネスの問題は依然として残る。ヘイズ値とミルキネスは異なる事象であり、ヘイズ値を低下させたとしても、ミルキネスが解決される訳ではない。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、ミルキネスを抑制可能な導電性フィルム、ならびにこの導電性フィルムを備えるセンサー、タッチパネルおよび画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]少なくとも導電部を備える導電性フィルムであって、前記導電部が、光透過性樹脂と、前記光透過性樹脂中に配置された複数の導電性繊維とを含み、前記導電性フィルムの前記導電部が存在する領域における拡散光反射率が、0.5%以下である、導電性フィルム。
【0012】
[2]前記導電部が、前記光透過性樹脂中に配置され、かつ前記導電性繊維とは異なる異種繊維をさらに含む、上記[1]に記載の導電性フィルム。
【0013】
[3]前記異種繊維が、少なくとも一部の表面が前記導電性繊維よりも暗色を呈する表面暗色系繊維である、上記[2]に記載の導電性フィルム。
【0014】
[4]前記表面暗色系繊維が、前記導電性繊維よりも暗色を呈する繊維材である、上記[3]に記載の導電性フィルム。
【0015】
[5]前記表面暗色系繊維が、繊維材と、前記繊維材の表面に形成され、かつ前記導電性繊維よりも暗色を呈する暗色系皮膜とを有する、上記[3]に記載の導電性フィルム。
【0016】
[6]前記導電部の一方の面側に設けられた光透過性基材をさらに備える、上記[1]ないし[5]のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【0017】
[7]前記光透過性基材が、ポリエステル系樹脂を含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、5μm以上45μm以下である、上記[6]に記載の導電性フィルム。
【0018】
[8]前記光透過性基材が、ポリイミド系樹脂およびポリアミド系樹脂の少なくともいずれかを含み、かつ前記光透過性基材の厚みが5μm以上75μm以下である、上記[7]に記載の導電性フィルム。
【0019】
[9]前記導電性フィルムの厚みが、5μm以上78μm以下である、上記[1]ないし[8]のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【0020】
[10]前記導電性フィルムの対向する辺部の間隔が3mmとなるように前記導電性フィルムを180°折り畳み試験を10万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、上記[1]ないし[9]のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【0021】
[11]前記導電性フィルムが、LED画像表示装置用導電性フィルムである、上記[1]ないし[10]のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【0022】
[12]上記[1]ないし[11]のいずれか一項に記載の導電性フィルムを備える、センサー。
【0023】
[13]上記[1]ないし[11]のいずれか一項に記載の導電性フィルムを備える、タッチパネル。
【0024】
[14]表示パネルと、前記表示パネルよりも観察者側に配置された上記[1]ないし[11]のいずれか一項に記載の導電性フィルムまたは上記[13]に記載のタッチパネルと、を備える、画像表示装置。
【0025】
[15]前記表示パネルが、有機発光ダイオードパネルである、上記[14]に記載の画像表示装置。
【0026】
[16]LED光源をさらに備える、上記[14]に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ミルキネスを抑制可能な導電性フィルム、ならびにこのような導電性フィルムを備えるセンサー、タッチパネルおよび画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態に係る導電性フィルムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される導電性フィルムの一部の拡大図である。
【
図3】
図3は、電気抵抗値を測定する際のサンプルの平面図である。
【
図4】
図4(A)~
図4(C)は、折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。
【
図5】
図5は、折り畳み試験後の導電性フィルムの平面図である。
【
図6】
図6は、面内位相差を測定する位置を特定するための導電性フィルムの平面図である。
【
図7】
図7(A)および
図7(B)は、表面暗色系繊維の模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る他の導電性フィルムの概略構成図である。
【
図9】
図9は、
図8に示される導電性フィルムの一部の拡大図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る他の導電性フィルムの概略構成図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る他の導電性フィルムの概略構成図である。
【
図13】
図13(A)および
図13(B)は、実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【
図14】
図14(A)および
図14(B)は、実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【
図15】
図15(A)および
図15(B)は、実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【
図16】
図16(A)および
図16(B)は、実施形態に係る導電性フィルムの他の製造工程を模式的に示した図である。
【
図17】
図17(A)~
図17(C)は、実施形態に係る導電性フィルムの他の製造工程を模式的に示した図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係るタッチパネルの模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係る導電性フィルム、センサー、タッチパネル、および画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。本明細書における「光透過性」とは、光を透過させる性質を意味する。また「光透過性」とは、必ずしも透明である必要はなく、半透明であってもよい。
図1は本実施形態に係る導電性フィルムの概略構成図であり、
図2は
図1に示される導電性フィルムの一部の拡大図であり、
図3は電気抵抗値を測定する際のサンプルの平面図であり、
図4は折り畳み試験の様子を模式的に示した図であり、
図5は、折り畳み試験後の導電性フィルムの平面図である。
図6は、面内位相差を測定する位置を特定するための導電性フィルムの平面図である。
図7は表面暗色系繊維の模式図であり、
図8、
図10および
図11は実施形態に係る他の導電性フィルムの概略構成図であり、
図9は
図8に示される導電性フィルムの一部の拡大図である。
図12は
図11に示される導電性フィルムの模式的な平面図であり、
図13~
図15は本実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
図16および
図17は本実施形態に係る導電性フィルムの他の製造工程を模式的に示した図である。
【0030】
<<<導電性フィルム>>>
図1に示される導電性フィルム10は、光透過性基材11と、光透過性基材11の第1の面11A側に設けられた導電部12と、光透過性基材11の第1の面11Aとは反対側の第2の面11B側に設けられた光透過性機能層13とを備えている。ただし、導電性フィルム10は、導電部12を備えていればよく、光透過性基材11および光透過性機能層13を備えていなくともよい。光透過性機能層13は光透過性基材11の第2の面11B側に設けられているが、光透過性基材11と導電部12との間に設けられていてもよく、また第2の面11B側および光透過性基材11と導電部12との間の両方に設けられていてもよい。また、
図1に示される導電性フィルム10においては、片面側のみに導電部12が設けられているが、導電性フィルムの両面側に導電部が設けられていてもよい。
【0031】
図1に示される導電部12は、パターニングされる前の状態であり、層状となっている。本明細書における「導電部」とは、表面から導通可能な部分を意味し、層状の形態および層状以外の形態の両方を含む概念である。導電性フィルム10の表面10Aは、導電部12の表面12Aから構成されている。なお、本明細書においては、導電性フィルムの表面は導電性フィルムの片側の表面を意味するものとして用いるので、導電性フィルムの表面とは反対側の面は、導電性フィルムの表面と区別するために裏面と称するものとする。導電性フィルム10の裏面10Bは、光透過性機能層13の表面13Aとなっている。
【0032】
導電性フィルム10においては、導電部12が存在する領域における拡散光反射率(Specular Component Exclude:SCE)が、0.5%以下となっている。本明細書における「拡散光反射率」とは、正反射光を除く光の反射率である。また、特記しない限りは、「拡散光反射率」とは、後述する折り畳み試験前の導電性フィルムの拡散光反射率を意味するものとする。なお、正反射光を除くとしたのは、正反射光は空気界面との屈折率差の影響を大きく受けるため、正反射率とミルキネスとは相関関係がないからである。上記拡散光反射率は、0.4%以下、0.35%以下、または0.3%以下となっていることが好ましい。
【0033】
上記拡散光反射率の測定の際には、まず100mm×100mmの大きさに切り出した導電性フィルムをカールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で、導電性フィルム、粘着フィルム、および黒色板の順序で貼り合せて積層体を得る。なお、切り出した導電性フィルムの大きさが100mm×100mmより小さくても、測定口よりも大きいものであればよい。例えば、導電性フィルムの大きさは、20mm×20mmであってもよい。導電性フィルムの大きさが小さい場合は、測定口が外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。導電性フィルムは、黒色板よりも上側となり、かつ導電部が上側となるように配置される。そして、導電部側から分光測色計(例えば、製品名「CM-600d」、コニカミノルタ株式会社、測定口φ11mm)を用いて、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、以下の測定条件で拡散光反射率を測定する。なお、CM-600dを用いて拡散光反射率を測定する際には、導電性フィルムの中央部にCM-600dを載せた状態で測定ボタンを押して測定する。拡散光反射率は、積層体1枚に対し5回測定し、その中の最大値と最小値を差し引いた3回測定して得られた値の算術平均値とする。また、導電部12は層状になっているので、上記大きさに切り出した導電性フィルム10においては、導電性フィルム10の平面視したとき、全ての領域が導電部が存在する領域となるが、導電部がパターニングされている場合のように導電部が存在しない領域もある場合には、導電部が存在する測定口より大きい領域で拡散光反射率を測定するものとする。または、近年、ベゼルを最小にしたデザインが流通しており、導電部が存在している領域が測定口よりも小さい場合であっても、導電部が存在している領域を上記測定と同様に行うことで、拡散光反射率を測定することができる。その参考値も、上記した範囲であることが好ましく、その場合も、ミルキネスを抑制可能な導電性フィルムを得ることができる。
(測定条件)
・主光源:D65
・光源2:無し
・視野:2度
・表色系:Yxy
・色差式:ΔE*ab
【0034】
導電性フィルム10の導電部12が存在する領域における拡散光反射率を0.5%以下とする手段としては、特に限定されないが、例えば、導電部12に光透過性樹脂14および導電性繊維15の他に、後述する少なくとも一部の表面が導電性繊維15よりも暗色を呈する表面暗色系繊維16を含ませることが挙げられる。また、上記表面暗色系繊維16を含ませる以外に、上記導電性繊維15の上記導電部12に対する分散性を向上させたり、含ませる導電性材料の大きさを調整してもよい。例えば、導電性繊維15の繊維長や繊維径を調整することなどが挙げられる。従来の導電性繊維の繊維径と同程度の繊維径を有する導電性繊維15を用いる場合には、表面暗色系繊維16を用いることが好ましく、また従来の導電性繊維の繊維径よりもさらに細い繊維径を有する導電性繊維15を用いる場合には、暗色系繊維16を用いなくともよい。
【0035】
導電性フィルム10のヘイズ値(全ヘイズ値)は、5%以下となっていることが好ましい。導電性フィルム10のヘイズ値が5%以下であれば、充分な光学的性能を得ることができる。ヘイズ値は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(例えば、製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、測定することができる。ヘイズ値は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で導電部側が非光源側となるように設置し(両面に導電部が形成されている場合はこの限りではない)、導電性フィルム1枚に対して3回以上測定して得られた値の算術平均値とする。本明細書における「3回測定する」とは、同じ場所を3回以上測定するのではなく、異なる3箇所以上を測定することを意味するものとする。導電性フィルム10は、目視した表面10Aは平坦であり、かつ導電部12等の積層する層も平坦であり、また膜厚のばらつきもその厚みの平均値の±10%の範囲内に収まることが実質製品の品質には望まれる。したがって、切り出した導電性フィルムの異なる3箇所以上でヘイズ値を測定することで、おおよその導電性フィルムの面内全体のヘイズ値の平均値が得られると考えられる。測定回数としては、5回、つまり異なる5箇所を測定することが好ましく、その中の最大値と最小値を除いた3箇所分の測定値から平均値を得ることが好ましい。なお、導電性フィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに導電性フィルムを適宜切り出してもよい。導電性フィルムの大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。導電性フィルム10のヘイズ値は、3%以下、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、または1.1%以下であることがより好ましい。得られるヘイズ値のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、±10%以内であり、上記好ましい範囲になる場合には、低ヘイズおよび低抵抗値がより得られやすい。なお、導電性フィルム10の導電部は、パターニングされていないが、ヘイズは、パターニングされた導電部を備える導電性フィルムであっても5%以下であり、また3%以下、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、または1.1%以下であることがより好ましい。なお、導電性フィルムを搭載したタッチパネルセンサーなどの複数層が重なった積層体全体においても、上記と同じヘイズ値であることが好ましい。
【0036】
導電性フィルム10の全光線透過率は、80%以上であることが好ましい。導電性フィルム10の全光線透過率が80%以上であれば、充分な光学的性能を得ることができる。全光線透過率は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、JIS K7361-1:1997に準拠して、ヘイズメーター(例えば、製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、測定することができる。導電性フィルム10の全光線透過率は、85%以上、88%以上、または89%以上であることがより好ましい。なお、導電性フィルム10の導電部は、パターニングされていないが、全光線透過率は、パターニングされた導電部を備える導電性フィルムであっても80%以上、85%以上、88%以上、89%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、5箇所測定し、最大値と最小値を除いた3箇所の測定値の平均値とする。
【0037】
導電性フィルム10に対し導電性フィルム10の対向する辺部の間隔φが3mmとなるように180°折り畳む試験(折り畳み試験)を10万回繰り返し行った場合であっても、折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部12の表面12Aにおける後述する電気抵抗値比が3以下であることが好ましい。導電性フィルムに対し折り畳み試験を10万回繰り返し行った場合に、折り畳み試験前後の導電性フィルムの導電部の表面における電気抵抗値比が3を超えていると、導電性フィルムに割れ等が生じているおそれがあるので、導電性フィルムのフレキシブル性が不充分となる。ここで、折り畳み試験によって、導電性フィルムに割れ等が発生すると、導電性が低下してしまうので、折り畳み試験後の導電性フィルムの導電部の表面における電気抵抗値が折り畳み試験前の導電性フィルムの導電部の表面における電気抵抗値よりも上昇してしまう。このため、折り畳み試験前後の導電性フィルムの導電部の表面における電気抵抗値比を求めることにより、導電性フィルムに割れ等が生じているか否かが判断できる。折り畳み試験は、導電部12が内側となるように導電性フィルム10を折り畳むように行われてもよく、また導電部12が外側となるように導電性フィルム10を折り畳むように行われてもよいが、いずれの場合であっても、折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部12の表面12Aにおける電気抵抗値比が3以下であることが好ましい。
【0038】
上記折り畳み試験の折り畳み回数が20万回、30万回、50万回または100万回であっても、折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部12の電気抵抗値比が3以下であることがより好ましい。なお、上記折り畳み回数が多いほど、折り畳み試験前後の導電部の電気抵抗値比を3以下にすることは難しくなるので、上記折り畳み回数が20万回、30万回、50万回または100万回の折り畳み試験において折り畳み試験前後の導電部12の電気抵抗値比が3以下であることと、上記折り畳み回数が10万回の折り畳み試験において折り畳み試験前後の導電部12の電気抵抗値比が3以下であることとは、技術的に顕著な差がある。また、上記折り畳み試験の折り畳み回数を少なくとも10万回で評価しているのは、以下の理由からである。例えば、導電性フィルムを折り畳み可能なスマートフォンに組み込むことを想定すると、折り畳みを行う頻度(開閉する頻度)が非常に多くなる。このため、上記折り畳み試験の折り畳み回数を例えば1万回や5万回とする評価では、実用的なレベルでの評価を行うことができないおそれがある。具体的には、例えば、常にスマートフォンを使用する人を想定すると、朝、電車やバス等の通勤時だけでも5回~10回はスマートフォンを開閉することが想定されるので、1日だけでも少なくとも30回はスマートフォンを開閉することが想定される。したがって、スマートフォンを1日30回開閉することを想定すると、折り畳み回数が1万回の折り畳み試験は、30回×365日=10950回となるので、1年間の使用を想定した試験となる。すなわち、折り畳み回数が1万回の折り畳み試験の結果が良好であったとしても、1年経過後は、導電性フィルムに折り癖やクラックが生じるおそれがある。したがって、折り畳み試験における折り畳み回数が1万回の評価とは、製品として使用できないレベルしか確認できないものであり、使用できるが不十分なものも良好となってしまい、評価することができない。このため、実用的なレベルであるか否かを評価するためには、上記折り畳み試験の折り畳み回数は少なくとも10万回で評価する必要がある。
【0039】
上記折り畳み試験の折り畳み回数が10万回、20万回、30万回、50万回および100万回のいずれの場合であっても、折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部12の電気抵抗値比は、それぞれ1.5以下であることがより好ましい。
【0040】
上記折り畳み試験においては、導電性フィルム10の対向する辺部の間隔φが3mmの状態で行うが、画像表示装置の薄型化を図る観点から、導電性フィルム10の対向する辺部の間隔φは、更に狭い範囲、具体的には2mmまたは1mmとなるように10万回繰り返し180°折り畳む折り畳み試験を行った場合であっても、折り畳み試験前後の導電部12の電気抵抗値比が3以下であることがより好ましい。なお、上記折り畳み回数が同じであっても、上記間隔φが狭くなるほど、折り畳み試験前後の導電部の電気抵抗値比を3以下にすることは難しくなるので、上記間隔φが2mmまたは1mmにおける折り畳み試験における折り畳み試験前後の導電部12の電気抵抗値比が3以下であることと、上記間隔φが3mmにおける折り畳み試験における折り畳み試験前後の導電部12の電気抵抗値比が3以下であることとは、技術的に顕著な差がある。
【0041】
折り畳み試験を行う際には、まず、折り畳み試験前の導電性フィルム10の任意の箇所から、導電部12を含むように所定の大きさ(例えば、縦125mm×横50mmの長方形形状)のサンプルS1を切り出す(
図3参照)。なお、125mm×50mmの大きさにサンプルを切り出せない場合には、折り畳み試験後に行う後述する各評価ができる大きさであれば良く、例えば、80mm×25mmの大きさの長方形状にサンプルを切り出してもよい。折り畳み試験前の導電性フィルムからサンプルS1を切り出した後、折り畳み試験前のサンプルS1において、導電部12の表面12Aの電気抵抗値を測定する。具体的には、
図3に示されるようにサンプルS1の長手方向の両端部(例えば、各縦10mm×横50mmの部分)上に、電気抵抗値の測定距離が変動するのを防ぐために、銀ペースト(製品名「DW-520H-14」、東洋紡株式会社製)を塗布し、130℃で30分加熱して、サンプルS1上の両端部に硬化した銀ペースト21を設け、その状態で、各サンプルの電気抵抗値をテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)を用いて、測定する。なお、銀ペースト21間の距離(銀ペースト17が設けられていない部分の距離)が、サンプルS1における電気抵抗値の測定距離(例えば、100mm)となるが、この測定距離はサンプルS1間において一定とする。電気抵抗値の測定の際には、テスターのプローブ端子は、両端部に設けられた硬化した銀ペースト21のそれぞれに接触させる。導電部12の電気抵抗値の測定は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。折り畳み試験前のサンプルにおいて、導電部12の電気抵抗値を測定した後、サンプルS1に対し、折り畳み試験を行う。
【0042】
折り畳み試験は、以下のようにして行われる。
図4(A)に示すように折り畳み試験においては、まず、選択されたサンプルS1の辺部S1aと、辺部S1aと対向する辺部S1bとを、平行に配置された折り畳み耐久試験機(例えば、製品名「U字伸縮試験機DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器株式会社製、IEC62715-6-1準拠)の固定部25でそれぞれ固定する。固定部25による固定は、サンプルS1の長手方向に片側約10mmのサンプルS1の部分を保持することによって行われる。ただし、サンプルS1が上記大きさよりも更に小さい場合、サンプルS1におけるこの固定に要する部分が約20mmまでであれば、固定部25にテープで貼り付けることで測定が可能である。(つまり、最小サンプルは、60mm×25mm)また、
図4(A)に示すように、固定部25は水平方向にスライド移動可能になっている。なお、上記装置であると、従来のロッドにサンプルを巻きつける方法などと異なり、サンプルに張力や摩擦を発生させることなく、曲げの負荷に対しての耐久評価することが可能で好ましい。
【0043】
次に、
図4(B)に示すように、固定部25を互いに近接するように移動させることで、サンプルS1の中央部S1cを折り畳むように変形させ、更に、
図4(C)に示すように、サンプルS1の固定部25で固定された対向する2つの辺部S1a、S1bの間隔φが3mmとなる位置まで固定部25を移動させた後、固定部25を逆方向に移動させてサンプルS1の変形を解消させる。
【0044】
図4(A)~(C)に示すように固定部25を移動させることで、サンプルS1を中央部S1cで180°折り畳むことができる。また、サンプルS1の屈曲部S1dが固定部25の下端からはみ出さないようにし、かつ以下の条件で折り畳み試験を行い、かつ固定部25が最も接近したときの間隔を3mmに制御することで、サンプルS1の対向する2つの辺部S1a、S1bの間隔φを3mmにできる。この場合、屈曲部S1dの外径を3mmとみなす。なお、サンプルS1の厚みは、固定部25の間隔(3mm)と比較して充分に小さな値であるため、サンプルSの折り畳み試験の結果は、サンプルS1の厚みの違いによる影響は受けないとみなすことができる。
(折り畳み条件)
・往復速度:80rpm(回毎分)
・試験ストローク:60mm
・屈曲角度:180°
【0045】
折り畳み試験を行った後、折り畳み試験後のサンプルS1において、折り畳み試験前のサンプルS1と同様にして、導電部の表面の電気抵抗値を測定する。そして、選択された折り畳み試験前のサンプルSの電気抵抗値に対する折り畳み試験後のサンプルSの電気抵抗値の比(選択された折り畳み試験後のサンプルの電気抵抗値/折り畳み試験前のサンプルの電気抵抗値)を求める。なお、電気抵抗値比は、3回測定して得られた値の算術平均値とする。
【0046】
導電性フィルムに対し上記折り畳み試験を行うと、折り畳み試験前後の導電性フィルムの導電部の電気抵抗値比が3以下であったとしても、屈曲部に折り癖が生じ、またマイクロクラックが生じてしまい、外観不良、具体的には白濁現象やマイクロクラックを起点とした層間剥離(密着不良)が生じるおそれがある。白濁現象の原因の1つには、導電性フィルムのいずれかの層の材質である有機化合物の結晶状態が変化することと考えられる。密着不良が局所で生じた場合、温度・湿度の変化によって、層間剥離部に水分が溜まったり、この剥離部に空気が入ることがあるため、白濁が増すおそれがある。なお、マイクロクラックは、光透過性基材だけ、もしくは光透過性基材上に何らかの機能層を設けた積層体だけの場合は、ほとんど生じない。すなわち、その発生起点は不明であるが、導電性繊維を含む層が何らかの要因となることが推測される。なお、白濁現象やマイクロクラックが生じると、ミルキネスにも影響を与える。近年、ディスプレイは単なる平面ではなく、折り畳んだり、曲面にしたり、多様な3次元デザインが増えている。このため、屈曲部の折り癖やマイクロクラックの抑制は、画像表示装置として用いる上で、極めて重要である。このようなことから、導電性フィルム10は、フレキシブル性を有していることが好ましい。本明細書における「フレキシブル性」とは、上記折り畳み試験前後において、導電部の電気抵抗値比が3以下であることのみならず、折り癖およびマイクロクラックが確認されないことを意味する。したがって、本明細書における「フレキシブル性」とは、上記折り畳み試験前後において、導電部の電気抵抗値比が3以下であることのみを要件とするフレキシブル性とは異なるものである。
【0047】
上記折り癖の観察は、目視で行うものとするが、折り癖の観察の際には、白色照明の明室(800ルクス~2000ルクス)で、屈曲部を透過光および反射光によって満遍なく観察するともに、折り畳んだときに屈曲部における内側となる部分および外側となる部分を両方観察するものとする。上記折り癖の観察は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0048】
上記マイクロクラックの観察は、デジタルマイクロスコープ(デジタル顕微鏡)で行うものとする。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス株式会社製のVHX-5000が挙げられる。マイクロクラックは、デジタルマイクロスコープの照明としてリング照明を選択するとともに、暗視野および反射光で観察するものとする。具体的には、まず、折り畳み試験後のサンプルをゆっくり広げ、マイクロスコープのステージにテープでサンプルを固定する。このとき、折り癖が強い場合には、観察する領域がなるべく平らになるようにする。ただし、サンプルの中央付近の観察予定領域(屈曲部)は手で触れず、力が加わらない程度とする。そして、折り畳んだときに内側となる部分および外側となる部分を両方観察するものとする。上記マイクロクラックの観察は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0049】
上記折り癖および上記マイクロクラックの観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、折り畳み試験前のサンプルを耐久試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、
図5に示されるように、屈曲部S1dにおける折り畳み方向FDと直交する方向に位置する両端S1d
1に、屈曲部であることを示す目印A1を油性ペンなどで付けておくとよい。また、折り畳み試験後に全く折り癖等が観察されないサンプルの場合は、サンプルを観察位置が不明になるのを防ぐため、折り畳み試験後に耐久試験機から取り外した状態で、屈曲部S1dの上記両端S1d
1の目印A1同士を結ぶ線A2(
図5における点線)を油性ペンなどで引いておいてもよい。そして、折り癖の観察においては、屈曲部S1dの両端S1d
1の目印A1とこの目印A1同士を結ぶ線A2とで形成される領域である屈曲部S1d全体を目視観察する。またマイクロクラックの観察においては、マイクロスコープ視野範囲(
図5における二点鎖線で囲まれる範囲)の中心が屈曲部S1dの中央となるようにマイクロスコープの位置を合わせる。なお、油性ペンなどによる目印は、実測に必要なサンプル領域には記載しないよう注意する。
【0050】
また、導電性フィルムに対し上記折り畳み試験を行うと、光透過性基材と光透過性機能層の間の密着性が低下するおそれがある。このため、上記折り畳み試験後の導電性フィルムの屈曲部において、光透過性基材11と光透過性機能層13の間の界面付近を、デジタルマイクロスコープで観察したとき、光透過性基材11と光透過性機能層13の界面付近で剥がれ等が観察されないことが好ましい。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス株式会社製のVHX-5000が挙げられる。
【0051】
導電性フィルム10に対し導電性フィルム10の対向する辺部の間隔φが3mmとなるように180°折り畳む試験(折り畳み試験)を10万回繰り返し行った場合において、導電性フィルムにおける上記折り畳み試験前後の拡散光反射率の差(折り畳み試験後の拡散光反射率-折り畳み試験前の拡散光反射率)は、0.25%以下であることが好ましい。上記折り畳み試験によって拡散光反射率が上昇してしまい、ミルキネスが目立つおそれがあるが、上記折り畳み試験前後の拡散光反射率の差が0.25%以下であれば、局所的にミルキネスが目立つことを抑制できる。なお、例えば、導電性フィルムの表面全体において拡散光反射率が変化する場合と、導電性フィルムの表面の局所的な部分における拡散光反射率が変化する場合とでは、全く見え方が異なる。すなわち、繰り返し折り畳みが行われた部分(屈曲部)という局所的な部分のみ拡散光反射率が変化する方が、屈曲部以外の部分における拡散光反射率の変化が少ないために相対比較によってミルキネスが目立つ傾向がある。このため、上記折り畳み試験前後の拡散光反射率の差が0.25%以下という数字的には小さい差ではなるが、この差で得られる効果は極めて大きい。
【0052】
上記折り畳み試験の折り畳み回数が20万回、30万回、50万回または100万回であっても、導電性フィルムにおける上記折り畳み試験前後の拡散光反射率の差が0.25%以下であることがより好ましい。なお、上記折り畳み回数が多いほど、折り畳み試験前後の拡散光反射率の差を0.25%以下にすることは難しくなるので、上記折り畳み回数が20万回、30万回、50万回または100万回の折り畳み試験において折り畳み試験前後の拡散光反射率の差が0.25%以下であることと、上記折り畳み回数が10万回の折り畳み試験において折り畳み試験前後の拡散光反射率の差が0.25%以下であることとは、技術的に顕著な差がある。
【0053】
上記折り畳み試験の折り畳み回数が10万回、20万回、30万回、50万回および100万回のいずれの場合であっても、折り畳み試験前後の導電性フィルム10における拡散光反射率の差は、それぞれ0.25%以下、0.20%以下、0.15%以下または0.10%以下であることがより好ましい。
【0054】
導電性フィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが設けられている場合には、粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離してから、拡散光反射率、ヘイズ値、全光線透過率を測定し、また折り畳み試験を行うものとする。他のフィルムの剥離は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、導電性フィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積層体をドライヤーで加熱し、導電性フィルムと他のフィルムの界面と思われる部位にカッターの刃先を入れて、ゆっくりと剥離していく。このような加熱と剥離を繰り返すことで、粘着層や接着層および他のフィルムを剥離することができる。なお、このような剥離工程があったとしても、拡散光反射率等の測定や折り畳み試験には大きな影響はない。
【0055】
また、上記したように、導電性フィルム10の拡散光反射率、ヘイズ値、全光線透過率を測定する際、または導電性フィルム10に対し折り畳み試験を行う際には、導電性フィルム10を上記各大きさに切り出す必要があるが、導電性フィルム10の大きさが大きい場合(例えば、ロール状のような長尺の場合)には、任意の位置からA4サイズ(210mm×297mm)やA5サイズ(148mm×210mm)に切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。また、導電性フィルム10がロール状になっている場合においては、導電性フィルム10のロールから所定の長さを繰り出すとともに、ロールの長手方向に沿って延びる両端部を含む非有効領域ではなく、品質が安定している中心部付近の有効領域から切り出すものとする。また、導電性フィルム10の拡散光反射率、ヘイズ値、全光線透過率を測定する際または導電性フィルム10に対し折り畳み試験を行う際には、上記装置を用いて測定するが、上記装置でなくとも、後継機種などの同程度の装置によって測定してもよい。
【0056】
導電性フィルム10の厚みは、特に限定されないが、500μm以下とすることが可能である。導電性フィルム10の厚みの下限はハンドリング性等の観点か、5μm以上、10μm以上、または20μm以上であることがより好ましい。導電性フィルム10の厚みの上限は薄型化の観点から250μm以下、100μm以下、更に、フレキシブル性を重要視する場合には、78μm以下、特に45μm以下であることがより好ましい。したがって、フレキシブル性を重要視する場合には、導電性フィルム10の厚みは、5μm以上78μm以下、更には28μm以下、20μm以下が好適である。導電性フィルムの厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された導電性フィルムの断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚み中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの平均値する。導電性フィルムは、一般的に厚みムラが存在する。本発明においては、導電性フィルムは光学用途であるため、厚みムラは厚み平均値±2μm以下、更には±1μm以下が好ましい。
【0057】
透過型電子顕微鏡(TEM)や走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて導電性フィルムの厚みを測定する場合、導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定できる。ただし、導電性フィルムの断面写真を撮影する際の倍率は、100~2万倍とする。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて導電性フィルムの厚みを測定する場合、導電性フィルムの断面は、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)などを用いて得るとよい。なお、TEMやSTEMで測定する際の測定サンプルは、上記ウルトラミクロトームを用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、測定サンプルとする。ウルトラミクロトーム切削時には、測定サンプルを樹脂包埋するなど切削しやすいような下処理をしてもよい。
【0058】
導電性フィルム10の用途は、特に限定されず、例えば、透明導電膜が用いられる様々な用途(例えば、センサ用途)で用いてもよい。また、本発明の導電性フィルムは、画像表示装置(スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、デジタルサイネージ、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)、車載ディスプレイ等を含む)用途や車載(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)用途に適している。導電性フィルムを車載用途のセンサーとして用いる場合、例えば、ハンドルやシートなど人が触れる部分に配置されるセンサーが挙げられる。また、導電性フィルムは、フォルダブル、ローラブルといったフレキシブル性を必要とする用途にも好ましい。さらに住宅や車(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)で用いられる電化製品や窓に用いてもよい。特に、本発明の導電性フィルムは、透明性を重視される部分に好適に用いることができる。また、本発明の導電性フィルムは、透明性等の技術的観点のみならず、意匠性やデザイン性が求められる電化製品にも好適に用いることができる。画像表示装置の以外の導電性フィルムの具体的な用途としては、例えば、デフロスター、アンテナ、太陽電池、オーディオシステム、スピーカー、扇風機、電子黒板や半導体用のキャリアフィルム等が挙げられる。導電性フィルムの使用時の形状は、用途に応じて適宜設計されるので、特に限定されないが、例えば、曲面状になっていてもよい。
【0059】
導電性フィルム10は、所望の大きさにカットされていてもよいが、ロール状であってもよい。導電性フィルムがロール状となっている場合には、この段階で所望の大きさにカットしてもよく、また例えばエッチング等の処理を行った後に所望の大きさにカットしてもよい。導電性フィルム10が所望の大きさにカットされている場合、導電性フィルムの大きさは、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的には、導電性フィルムの大きさは、例えば、5インチ以上500インチ以下となっていてもよい。本明細書における「インチ」とは、導電性フィルムが四角形状である場合には対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕円形状である場合には、短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、導電性フィルムが四角形状である場合、上記インチを求める際の導電性フィルムの縦横比は、画像表示装置の表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。ただし、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。また、導電性フィルム10の大きさが大きい場合には、任意の位置からA4サイズ(210mm×297mm)やA5サイズ(148mm×210mm)など適宜扱いやすい大きさに切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。なお、例えば、導電性フィルム10がロール状になっている場合においては、導電性フィルム10のロールから所定の長さを繰り出すとともに、ロールの長手方向に沿って延びる両端部を含む非有効領域ではなく、品質が安定している中心部付近の有効領域から所望の大きさに切り出すものとする。
【0060】
<<光透過性基材>>
光透過性基材11としては、光透過性を有すれば特に限定されない。例えば、光透過性基材11の構成材料としては、光透過性を有する樹脂を含む基材が挙げられる。このような樹脂としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはポリアミドイミド系樹脂、またはこれらの樹脂を2種以上混合した混合物等が挙げられる。光透過性基材は、光透過性機能層等をコーティングする際にコーティング装置に触れるので、傷が付きやすいが、ポリエステル系樹脂からなる光透過性基材は、コーティング装置に触れても傷が付きにくいため、ヘイズ値の上昇を抑制できる点、および耐熱性、バリア性、耐水性についてもポリエステル系樹脂以外の光透過性樹脂からなる光透過性基材よりも優れている点からは、これらの中でも、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0061】
導電性フィルムとして、折り畳み可能な導電性フィルムを得る場合には、光透過性基材を構成する樹脂としては、フレキシブル性が良好であることから、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはこれらの混合物を用いることが好ましい。また、これらの中でも、優れたフレキシブル性を有するだけでなく、優れた硬度および透明性をも有し、また、耐熱性にも優れ、焼成することにより、更に優れた硬度および透明性を付与することもできる観点からは、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物が好ましい。
【0062】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー系樹脂等の少なくとも1種を構成成分とする樹脂が挙げられる。シクロオレフィンポリマー系樹脂としては、例えばノルボルネン骨格を有するものが挙げられる。
【0063】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0064】
ポリアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル基材、ポリ(メタ)アクリル酸エチル基材、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
【0065】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)の少なくとも1種を構成成分とする樹脂が挙げられる。これらの中でも、以下の観点から、PETが好ましい。
【0066】
PETは、ポリエステル系樹脂の中でも、樹脂分子構造上、フレキシブル性を有しつつ、機械強度も良好なフィルム固体構造にできると考えられる。これは、PETのベンゼン環にエチレン鎖という分子構造が、硬さがありつつもしなやかさも出せる構造で、延伸の仕方や熱の加え方などによって固体構造が変わり、フィルムになった時の光学特性や機械特性を多様に変化させることができるからである。これに対し、PET以外のポリエステル系樹脂の一つであるPENは、PETが有するベンゼン環よりもPEN分子内のナフタレン環が大きな面を占め、固体化したフィルムはその環構造が積み重なるような状態になりやすい。そのため、PETよりも硬さは優れるが、しなやかさに劣り、フィルム内部で積み重なった結晶同士が剥離しやすく脆い。また、ポリエステル系樹脂の一つであるPBTは、PETと同様に分子内にベンゼン環を1つ持つ樹脂で、ブチレンはエチレンよりも炭素鎖部が長い。このため、PETよりも柔軟性に富むことが考えられる。しかしながら、PBTにおいては、PBTの性質である速い結晶化速度の影響により安定した二軸延伸が困難な場合がある。
【0067】
通常、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率は、大きく相違しているが、光透過性基材11がポリエステル系樹脂を含む場合、光透過性基材11における任意の第1方向(例えば、縦方向)の延伸倍率と第1方向と直交する第2方向(例えば、横方向)の延伸倍率は可能な限り同倍率であることが好ましい。光透過性基材11の第1方向の延伸倍率が第2方向の延伸倍率と同倍率であれば、第1方向および第2方向のいずれかの方向の固体構造の性質が支配的になることはなく、第1方向および第2方向とも、ほぼ同じ固体構造になると推測されるので、バランスが良く、折り畳み試験の耐久性が増す。
【0068】
ところで、延伸倍率が大きくなるほど、その方向に分子配向し結晶化が進み、樹脂材料が固体化したときの構造中に非晶性部分が少なくなっていくことが考えられる。本発明においては、非晶性部分が固体中に適度に存在することも、しなやかさ、柔軟性を得るために重要であると考えている。もし、第1方向または第2方向の片方の延伸倍率が大きい場合は、延伸倍率の大きい方向の有する固体構造の性質が支配的になり、その結果、フィルム面内、膜内固体構造のバランスが崩れ、折り畳み試験時にマイクロクラックが生じやすくなり、ミルキネスへも影響してくる。また、延伸倍率が小さすぎず、大き過ぎないことも重要である。適切な延伸倍率であれば、好ましい固体構造、結晶状態や結晶の大きさ、非晶部の分量なども最適化されると推測され、その結果、フレキシブル性が良好で、かつ、機械強度も良好にできると考えられる。
【0069】
具体的には、光透過性基材11がポリエステル系樹脂を含む場合、光透過性基材11の第1方向の延伸倍率および第2方向の延伸倍率は1.5倍~3.9倍が好ましく、更には2.0倍~3.5倍がより好ましい。また、光透過性基材11における第2方向の延伸倍率に対する第1方向の延伸倍率の比(第1方向の延伸倍率/第2方向の延伸倍率)は、0.8以上1.2以下が好ましい。この比は、1に近いほど好ましい。したがって、この比の下限は、0.85以上、0.90以上または0.95以上がより好ましく、上限は、1.15以下、1.10以下または1.07以下がより好ましい。また、光透過性基材11は、延伸速度を6.5m/min~8.5m/minにして第1方向および第2方向に延伸したものであってもよい。第1方向の延伸倍率および第2方向の延伸倍率が上記の倍率であれば良いため、延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよい。
【0070】
ほぼ同倍率の二軸延伸PETで、かつ、延伸基材で知られているボーイング現象影響が強い両端部分ではなく、その影響が弱い中央部が本発明で最も好ましいPETの構造を有していると考えられる。すなわち、丁寧に二軸延伸された部分であるため、第1方向および第2方向の結晶性および非晶性状態や分子配向状態が最も良いバランスになり、そのためにフレキシブル性と機械強度が最も良好にできる。
【0071】
また、光透過性基材11は、第1方向および第2方向に延伸するに先立ち、一定温度に予熱してもよい。この時、予熱温度はガラス転移温度(Tg)+5℃~Tg+50℃の範囲が好ましく、Tgが低いほど延伸性が良くなるが破断が発生することができる。したがって、約78℃に予熱してから延伸することが好ましい。光透過性基材11は完全に延伸されてから熱処理されて固定されたものであってもよい。この時、熱処理温度は160℃~230℃であってもよい。
【0072】
フレキシブル性について、更に好ましいPETの構造とは、固体構造中に適度に非晶性部分があり、第1方向および第2方向の平均的な構造を持っていることが推測される。このため、本発明者らは、このような固体構造、分子結晶性をデータ化できると思われる以下の方法によって求められる結晶化度で表すことを考えたが、鋭意研究したところ、結晶化度がその測定原理よりフィルム内全部の結晶状態を平均化したものであるためか、PET樹脂系フィルムである限り、光学特性などが明らかにことなっていても、ほぼ同様な34~54%範囲になってしまい判断できないことが見出された。例えば、同じ30μmの厚みで、波長589nmにおける面内位相差値Reが50nmのPETと、5000nmのPETの結晶化度を比較しても同じ44%程度であった。すなわち、光学特性、機械強度と結晶化度との関係性を捉えることは困難と考えられる。そこで、本発明者らは、フィルムの固体構造(結晶性、非結晶性)などが影響する、フィルムの光学特性(Re、Nz係数、△n)で評価を試みたところ、フレキシブル性について好ましい範囲を捉えることができた。
【0073】
上記結晶化度は、以下のようにして求めることができる。まず、PETフィルムの密度はPETフィルムを構成する各成分の質量の総和を各成分の体積の総和で除した値となる、との仮定に基づき、PETフィルムの密度を求める。PETフィルムの密度は、JIS K7112:1980準拠の方法(密度勾配管法)に従って求めるものとする。また、PETフィルムの樹脂成分は結晶部分と非結晶部分の混合物であり、PETの結晶部分の密度を1.46(g/cm3)とし、非結晶部分の密度を1.34(g/cm3)とする。そして、結晶化度をXc(%)とし、結晶部分の密度(g/cm3)をdcとし、非結晶部分の密度(g/cm3)をdaとし、測定地点の密度(g/cm3)をdとしたとき、下記数式(1)に基づいて結晶化度を求める。結晶化度は、PETフィルムの密度を3点測定し、その算術平均値とする。
Xc={dc(d-da)/d(dc-da)}×100 …(1)
【0074】
従来の二軸延伸のポリエチレンテレフタレート基材においては、ポリエチレンテレフタレート基材の厚みが45μm以上125μm以下である場合には、面内位相差Reは1400nm以上5000nm程度であるが、本発明者らは、鋭意研究したところ、光透過性基材がポリエステル系樹脂を含む場合には、導電性フィルムのフレキシブル性は、光透過性基材の面内位相差Reが低い方が、良好になることを見出した。ただし、光透過性基材の面内位相差Reが低すぎる、すなわちポリエチレンテレフタレートが無延伸である場合は、機械的強度が低下してしまうので、980nm以下の面内位相差を有することが好ましい。具体的には、光透過性基材11がポリエステル系樹脂を含む場合であって、光透過性基材の厚みが45μm以上125μm以下である場合には、折り畳み試験時における白濁やマイクロクラックを抑制するため、光透過性基材11の波長589nmにおける面内位相差Reは、110nm以上980nm以下であることが好ましい。この場合の光透過性基材11の面内位相差Reの下限は、130nm以上または200nm以上であることがより好ましく、上限は、680nm以下または480nm以下であることがより好ましい。好ましいReは、光透過性基材の厚みによって異なるので、更に別の厚み範囲の場合を以下に説明する。
【0075】
光透過性基材11がポリエステル系樹脂を含む場合であって、光透過性基材11の厚みが、29μm以上45μm未満の場合には、折り畳み試験時におけるマイクロクラックを抑制するため、面内位相差Reは、40nm以上680nm以下であることが好ましい。この場合の光透過性基材11の面内位相差Reの下限は、60nm以上、または110nm以上であることがより好ましく、上限は、480nm以下、または350nm以下であることがより好ましい。
【0076】
光透過性基材11がポリエステル系樹脂を含む場合であって、光透過性基材11の厚みが、5μm以上29μm未満の場合には、折り畳み試験時におけるマイクロクラックを抑制するため、波長589nmにおける面内位相差Reは、10nm以上450nm以下であることが好ましい。この場合の光透過性基材11の面内位相差Reの下限は、30nm以上、55nm以上または90nm以上であることがより好ましく、上限は、400nm以下または270nm以下であることがより好ましい。
【0077】
光透過性基材11がポリエステル系樹脂を含む場合、この光透過性基材11のNz係数は、2.0を超えることが好ましい(Nz>2.0)。光透過性基材11のNz係数が2.0を超えれば、例えば、光透過性基材11の厚みが29μm以下となった場合であっても、保護フィルムで補強することなくロールtoロールでコーティングその他製造が可能となる。Rthがある程度大きいことによって、光透過性基材11の機械強度が良好になるため、Nz係数は4.5以上であることがより好ましく、8.0以上であることがさらに好ましい。
【0078】
上記Nz係数は、光透過性基材の面内において屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率をnx、面内において遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率をny、光透過性基材の厚み方向の屈折率をnzとすると、下記数式(2)で表される。
Nz係数=(nx-nz)/(nx-ny) …(2)
【0079】
フレキシブル性を向上させるためには、第1方向および第2方向において、ほぼ同じ固体構造になることが好ましい、つまり光透過性基材の遅相軸方向と進相軸方向の屈折率差が小さい方が、固体内の結晶性、非結晶性、分子配向が第1方向および第2方向での差が小さくなる。このため、上記Δnは、0.0009以上0.02以下であることが好ましい。Δnの下限は、0.0010以上であることがより好ましく、上限は、0.0099以下以下であることがより好ましい。Δnは、下記数式(3)で表される。
Δn=nx-ny …(3)
【0080】
上記Re、Rth、上記nx、上記ny、上記nz、上記Δn、上記Nz係数は、位相差フィルム・光学材料検査装置(例えば、製品名「RETS-100」、大塚電子株式会社製)を用いて測定するものとする。上記Reは、「E. P. Raynes、“The Optical Properties of Supertwisted Liquid Crystal Layers”、Molecular Crystals and Liquid Crystals Letters vol. 4, Issue 3-4, pp 69-75(1987)」等に基づくものである。上記Rthは、以下の数式(4)によって表される。
Rth={(nx+ny)/2-nz}×d …(4)
数式(4)中、nx、ny、nzは、上記数式(2)と同様であり、dは、光透過性基材の厚み(μm)である。
【0081】
RETS-100を用いて上記Re等を測定する場合には、以下の手順に従って測定することができる。まず、RETS-100の光源を安定させるため、光源をつけてから60分以上放置する。その後、回転検光子法を選択するとともに、θモード(角度方向位相差測定およびRth算出のモード)選択する。このθモードを選択することにより、ステージは傾斜回転ステージとなる。
【0082】
次いで、RETS-100に以下の測定条件を入力する。
(測定条件)
・リタデーション測定範囲:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲:-40°~40°
・測定波長範囲:400nm~800nm
・ポリエステル系樹脂の平均屈折率(例えば、PETの場合には、N=1.617とする)
・厚み:SEMや光学顕微鏡で別途測定した厚み
【0083】
次いで、この装置にサンプルを設置せずに、バックグラウンドデータを得る。装置は閉鎖系とし、光源を点灯させる毎にこれを実施する。
【0084】
その後、この装置内のステージ上にサンプルを設置する。サンプルの形状は、どのような形状であってもよく、例えば、長方形状であってもよい。サンプルの大きさは、50mm×50mmであってもよい。サンプルが複数存在する場合には、全て同じ向きで設置する必要がある。例えば、サンプルを全て同じ向きで設置するために予め印を全サンプルに付けておくことが好ましい。また、光透過性基材が導電性フィルム中に存在する場合には、導電性フィルムにおける導電部側の面を空気界面側とし、かつ光透過性基材側の面をステージ側とする。なお、導電性フィルムの両面に導電部が存在する場合には、両面5点ずつ測定し、10点の測定値中、最大値と最小値を除いた8点の算術平均値を求めてもよい。
【0085】
サンプルを設置した後、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、XY平面上でステージを360°回転させて、進相軸および遅相軸を測定する。測定終了後、遅相軸を選択する。その後、遅相軸を中心にステージが設定した角度範囲に傾きながら測定が行われ、10°刻みで、設定傾斜角度範囲および設定波長範囲のデータ(Re、Rth、遅相軸角度、nx、ny、nz、Δn、Nz)が得られる。面内位相差Reは、入射角0°および波長589nmの光で測定したときの値とする。面内位相差値Reは、位置が異なる5点で測定する。具体的には、まず、
図6に示されるようにサンプルS2の中心B1を通る2本の直交する仮想線IL1、IL2を引く。この仮想線IL1、IL2を引くと、サンプルが4つの区画に分かれる。そして、各区画において中心B1から等距離にある1点、合計4点B2~B4を設定し、中心B1および点B2~B4の合計5点で測定する。そして、5点の測定値中、最大値と最小値を除いた3点の算術平均値を面内位相差値Reとする。なお、光透過性基材11上に導電部12や光透過性機能層13等のコーティング層が形成されている場合においても、導電部は導電性繊維がランダムに配置されており、コーティング層はおおよそ光学等方性であるので、導電性フィルムの面内位相差値は、光透過性基材11の面内位相差値Reとみなすことができる。
【0086】
光透過性基材11がポリエステル系樹脂を含む場合、この光透過性基材11の延伸による配向角(本発明においては、面内で最も屈折率の高い方向、すなわち遅相軸方向を配向角とする)は、絶対値で、71°以上90°以下または0°以上19°以下であることが好ましい。この範囲内であれば、延伸時のボーイング現象の影響が少ない部分あるため、フレキシブル性向上には最適である。光透過性基材11は、延伸フィルムであるためにボーイング現象を生じやすく全面均一ではないので多少のずれがあるため、上記範囲は平均値であって、±5°は許容範囲内である。なお、光透過性基材11の配向角を上記したRETS-100を用いて測定する場合、セットしたサンプルの状態(0°)から面内(xy平面)において右回転、左回転で+と-に分けた測定がされるので、配向角は絶対値とした。また、上記角度範囲が2種類存在するのは、光透過性基材11は例えば幅1000~3000mm×長さ1000~5000mという長尺ロール状で製造され、いずれかの工程で裁断される。その裁断方向や裁断形状は多様である。よって、光透過性基材11から切り出したサンプルを測定すると測定装置へのサンプル設置方向によって、遅相軸向きが90°ずれる場合があるからである。
【0087】
芳香族ポリエーテルケトン系樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0088】
ポリイミド系樹脂は、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドのみならず、芳香族ポリアミド(アラミド)を含む概念である。具体的には、ポリイミド系樹脂としては、例えば、下記化学式(1)および(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。下記化学式中、nは、繰り返し単位であり、2以上の整数を表す。なお、下記化学式(1)および(2)で表される化合物の中でも、化学式(1)で表される化合物は、低位相差および高透明であるので、好ましい。
【化1】
【化2】
【0089】
光透過性基材11の厚みは、特に限定されないが、500μm以下とすることが可能であり、光透過性基材11の厚みの下限はハンドリング性等の観点から3μm以上、5μm以上、10μm以上、または20μm以上であることがより好ましい。光透過性基材11の厚みの上限は薄膜化の観点から250μm以下、100μm以下、80μm以下、50μm以下、更に、フレキシブル性を重要視する場合には、35μm以下、特に18μm以下であることがより好ましい。光透過性基材の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された光透過性基材の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚み中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの平均値する。光透過性基材は、一般的に厚みムラが存在する。本発明においては、光透過性基材は光学用途であるため、厚みムラは厚み平均値±2μm以下、更には±1μm以下が好ましい。
【0090】
透過型電子顕微鏡(TEM)や走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定できる。ただし、光透過性基材の断面写真を撮影する際の倍率は、100~2万倍とする。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、光透過性基材の断面は、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)などを用いて得るとよい。なお、TEMやSTEM用測定サンプルは、上記ウルトラミクロトームを用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、TEMやSTEM用測定サンプルとする。ウルトラミクロトーム切削時には、サンプルを樹脂包埋するなど切削しやすいような下処理をしてもよい。
【0091】
銀ナノワイヤ等の導電性繊維自体は、例えば、フレキシブル性に適しているが、導電性繊維を含む導電部を積層するための光透過性基材や機能層(導電部を除く)の厚みが厚いと、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材や機能層に割れが生じ、その割れが原因で、導電性繊維が断線してしまうおそれがあり、また屈曲部における光透過性基材や機能層に折り癖やマイクロクラックが生じてしまうことがある。上記した断線により目的とする抵抗値が得られないことに加え、外観不良、具体的には、白濁現象やクラック起因の密着不良などが生じてしまうおそれがある。このため、導電性フィルムをフレキシブル用途に用いる場合には、光透過性基材や機能層の厚み制御や各層間の密着性(材料が影響する化学的結合による密着や、クラックが生じないという物理的な密着)が重要になる。特に、光透過性基材11が、ポリエステル系樹脂を含む場合や、ポリイミド系樹脂を含む場合も、厚みによって割れにくさが変わるので、光透過性基材の厚み制御が重要となる。
【0092】
光透過性基材11が、例えば、ポリエステル系樹脂を含む場合には、光透過性基材11の厚みは、45μm以下が好ましい。この光透過性基材11の厚みが45μm以下であれば、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材11の割れを抑制でき、また屈曲部における白濁現象を抑制できる。この場合の光透過性基材11の厚みの上限は、35μm以下、29μm以下、特に18μm以下であることが好ましい。また、この場合の光透過性基材11の厚みの下限は、ハンドリング性等の観点から、5μm以上であることが好ましい。
【0093】
光透過性基材11が、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、またはこれらの混合物を含む場合には、折り畳み時の光透過性基材11の割れの抑制、光学特性や機械特性の観点から光透過性基材11の厚みは、薄い方がよく、具体的には、75μm以下が好ましい。この場合の光透過性基材11の厚みの上限は、70μm以下、50μm以下、35μm以下、29μm以下、そして特に20μm以下、18μm以下であることが好ましい。また、この場合の光透過性基材11の厚みの下限は、ハンドリング性等の観点から、5μm以上であることが好ましい。
【0094】
上記した各光透過性基材の厚みが35μm以下の場合、特に5μm以上20μm以下または18μm以下の場合には、製造時に保護フィルムを貼ると加工適性が向上するので、好ましい。
【0095】
光透過性基材11は、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理が表面に施されたものであってもよい。また、光透過性基材11は、少なくとも一方の面側に、他の層との接着性を向上させるため、巻き取り時の貼り付きを防止するため、および/または他の層を形成する塗布液のはじきを抑制するための下地層を有するものであってもよい。ただし、導電性繊維および分散媒を含む導電性繊維含有組成物を用いて、下地層の表面に導電部を形成すると、分散系の種類によって程度は異なるが、分散媒が下地層に浸透することによって導電性繊維も下地層中に入り込んでしまい、電気抵抗値が上昇してしまうおそれがあるので、光透過性基材における導電部側には下地層を備えず、導電部は光透過性基材に直接設けられていることが好ましい。本明細書においては、光透過性基材の少なくとも一方の面側に存在し、かつ光透過性基材に接する下地層は、光透過性基材の一部をなすものとし、光透過性機能層には含まれないものとする。
【0096】
下地層は、他の層との密着性を向上させる機能、巻き取り時の貼り付きを防止する機能、および/または他の層を形成する塗布液のはじきを抑制する機能を有する層である。光透過性基材が下地層を有しているか否かは、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、1000~50万倍(好ましくは2.5万倍~5万倍)にて光透過性基材と導電部の界面周辺および光透過性基材と光透過性機能層の界面周辺の断面を観察することにより確認することができる。なお、下地層には、巻き取り時の貼り付き防止のために易滑剤等の粒子を含むことがあるので、光透過性基材と光透過性機能層の間に粒子が存在することでも、この層が下地層であると判断できる。
【0097】
下地層の膜厚は、10nm以上1μm以下であることが好ましい。下地層の膜厚が10nm以上であれば、下地層としての機能が充分に発揮され、また下地層の膜厚が1μm以下であれば、光学的に影響を及ぼすおそれもない。下地層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて1000~50万倍(好ましくは2.5万倍~5万倍)にて撮影された下地層の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とする。下地層の膜厚の下限は、30nm以上であることがより好ましく、上限は150nm以下であることがより好ましい。下地層の膜厚は、導電部12の膜厚と同様の方法によっても測定することができる。なお、SEM、TEM、またはSTEMで断面写真を撮影する際には、上述したようにウルトラミクロトームを用いて測定サンプルを作成することが好ましい。
【0098】
下地層は、例えば、アンカー剤やプライマー剤を含んでいる。アンカー剤やプライマー剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸などとの共重合体、エチレンとスチレンおよび/またはブタジエンなどとの共重合体、オレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはその変性樹脂、電離放射線重合性化合物の重合体、および熱重合性化合物の重合体等の少なくともいずれかを用いることが可能である。
【0099】
下地層は、上記したように巻き取り時の貼り付き防止のために、易滑剤等の粒子を含んでいてもよい。粒子としては、シリカ粒子等が挙げられる。
【0100】
<<光透過性機能層>>
光透過性機能層13は、光透過性基材11の第2の面11B側に設けられている。本明細書における「光透過性機能層」とは、光透過性を有し、かつ導電性フィルムにおいて、何らかの機能を発揮することを意図された層である。具体的には、光透過性機能層としては、例えば、ハードコート機能、屈折率調整機能、および/または色味調整機能を発揮するための層が挙げられる。光透過性機能層は、単層のみならず、2層以上積層されたものであってもよい。光透過性機能層が2層以上積層されたものである場合、それぞれの層が有する機能は同じであってもよいが、異なっていてもよい。本実施形態においては、光透過性機能層13が、ハードコート機能を発揮する層、すなわちハードコート層である場合について説明する。フレキシブル性を得る場合には、光透過性機能層がハードコート層以外の層であってもよい。その場合は、光透過性機能層は以下に示す鉛筆硬度や断面硬度未満であってもよい。このような場合であっても、光透過性基材単体の状態よりも機械強度が高くなるので、ハードコート層として機能する。
【0101】
光透過性機能層13は、JIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で「H」以上の硬度を有する層となっている。鉛筆硬度を「H」以上とすることにより、導電性フィルム10が硬くなり、耐久性を向上させることができる。なお、光透過性機能層の靱性およびカールの防止の観点から、導電性フィルム10の表面10Aの鉛筆硬度の上限は2H~4H程度程とすることが好ましい。
【0102】
光透過性機能層13のインデンテーション硬さ(HIT)は、100MPa以上であることが好ましい。フレキシブル性が最も重要な場合には、20~100MPa未満であることが好ましい。光透過性機能層13のインデンテーション硬さの下限は、200MPa以上または300MPa以上であってもよく、また上限は、マイクロクラックを防止し、光透過性機能層、光透過性基材、導電部の各層界面における密着性を維持する観点から、800MPa以下であってもよい。このような下限および上限にすることによって、導電性繊維などによる導電部自身のフレキブル性を維持することができる。また、導電部を有する構造において、実用化のためには折り畳み試験後も抵抗値、物理特性、光学特性が試験前とほぼ同じであることが必要とされる。また、光透過性機能層は、加工時の傷付き防止する役割の層として有効である。このようなことから、銀ナノワイヤ等の導電性繊維が持つフレキシブル性を生かしながら、かつ上述したような実用のための物性を得るためには、上記した数値範囲内にあることが好ましい。なお、用途によるが、光透過性基材の一方の面側のみに光透過性機能層が設けられる場合よりも、光透過性基材の両面側に光透過性機能層が設けられる構成が好ましい。
【0103】
本明細書における「インデンテーション硬さ」とは、圧子の負荷から除荷までの荷重-変位曲線から求められる値である。上記インデンテーション硬さ(HIT)の測定は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、測定サンプルについてHYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて行うものとする。測定サンプルは、上記したSEMによる断面写真の撮影の際に作製されたサンプルと同じ方法で作製してもよい。光透過性機能層13の膜厚が薄い場合には、表面・界面切削試験装置(Surface And Interfacial Cutting Analysis System:SAICAS)などの斜め切削装置によって測定面積を充分に大きくすることが好ましい。通常、断面分析は表面に対して垂直に試料を切断した面(垂直断面)を分析するが、多層構造の試料で各層の層厚が薄い場合、広い分析領域を必要とする場合、特定の層を選択的に分析することは困難である。しかし、斜め切削により断面を作製した場合、垂直断面に比べて試料面を広く露出することができる。例えば、水平面に対して10°の斜面を作製すると、垂直断面に比べて試料面は6倍弱広くなる。このため、SAICASで斜め切削による断面を作製することで、垂直断面では分析困難な試料についても分析することが可能となる。次いで、得られた測定サンプルの断面において、平坦な箇所を探し、この平坦な箇所において、変位基準の測定で、最大押し込み変位が100nmとなるように、速度10nm/秒でバーコビッチ(Berkovich)圧子(三角錐、BRUKER社製のTI-0039)を、10秒で変位0nmから変位100nmまで負荷を加えながら光透過性機能層13に垂直に押し込む。ここで、バーコビッチ圧子は、光透過性基材の影響を避けるためおよび光透過性機能層の側縁の影響を避けるために、光透過性基材と光透過性機能層の界面から光透過性機能層の中央側に500nm離れ、光透過性機能層の両側端からそれぞれ光透過性機能層の中央側に500nm以上離れた光透過性機能層の部分内に押し込むものとする。その後変位100nmで5秒間保持した後、10秒で変位100nmから変位0nmまで除荷する。そして、このときの押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成する。作成された荷重-変位曲線からインデンテーション硬さを、下記数式(5)のように最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と光透過性機能層13が接している接触投影面積Ap(mm2)で除した値により求める。インデンテーション硬度は、10箇所測定して得られた値のうち、最大値と最小値を差し引いた8箇所分の測定値の算術平均値とする。Apは標準試料の溶融石英を用いて、Oliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積である。
HIT=Fmax/Ap …(5)
【0104】
光透過性機能層を有する導電性フィルムの物理特性を制御するためには、光透過性機能層自身の弾性率等を測定することが考えられるが、三次元架橋構造を有する光透過性機能層は薄膜かつ脆いため単層でフィルム化は困難であり、光透過性機能層を単層として弾性率等を測定することは困難である。このため、上記においては、ナノインデンテーション法による硬さ測定によって評価を行っている。この方法によって、光透過性基材の影響によらず、薄膜高分子材料であっても膜自身の物性測定が可能となり、また弾性/塑性変形物質の、荷重変位曲線から上記したように数式(5)によって硬度の解析ができる。
【0105】
光透過性機能層13の膜厚は0.2μm以上15μm以下であることが好ましい。光透過性機能層13の膜厚が0.2μm以上であれば、所望の硬度を得ることができ、また光透過性機能層13の膜厚が15μm以下であれば、導電性フィルム10の薄型化を図ることができる。光透過性機能層13の膜厚の下限は、ハードコート性の観点から、0.3μm以上、0.5μm以上、または0.7μm以上であることがより好ましい。また、光透過性機能層13の膜厚の上限は、光透過性機能層13の薄膜化を図る観点から、12μm以下、10μm以下、7μm以下、5μm以下、または2μm以下であることがより好ましい。ただし、光透過性基材の両面に光透過性機能層を積層する場合には、上記した光透過性機能層13の膜厚より薄いことが好ましい。この場合、薄膜化を図り、また良好なフレキシブル性を得る場合であれば、各光透過性機能層の膜厚は、3μm以下、1.5μm以下、1μm以下であることが好ましく、特に屈曲部であるφが2mm未満、例えばφが0.1~1mm未満の場合には、各光透過性機能層の膜厚は、0.8μm以下、0.7μm以下、さらには0.5μm以下であることがよい。なお、後述するように導電層12の膜厚は300nm未満であることが好ましいが、光透過性機能層の上に導電層を積層した場合、光透過性機能層中に導電層が混在してしまう場合がある。そのような場合、機能層と導電層の界面は判別できないことがある。この場合には、光透過性機能層の上記好ましい膜厚とは、光透過性機能層と導電層の合計膜厚であってもよい。
【0106】
光透過性機能層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された光透過性機能層の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚み中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの平均値する。光透過性機能層は、一般的に厚みムラが存在する。本発明においては、光透過性機能層は光学用途であるため、厚みムラは厚み平均値±10%以下、更には厚み平均値±5%以下が好ましい。
【0107】
透過型電子顕微鏡(TEM)や走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定できる。ただし、光透過性基材の断面写真を撮影する際の倍率は、100~2万倍とする。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、光透過性基材の断面は、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)などを用いて得るとよい。なお、TEMやSTEM用測定サンプルは、上記ウルトラミクロトームを用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、TEMやSTEM用測定サンプルとする。ウルトラミクロトーム切削時には、測定サンプルを樹脂包埋するなど切削しやすいような下処理をしてもよい。
【0108】
光透過性基材11の厚みが薄い場合、ラインに通しにくくなり、また避けやすくなり、傷付きやすいなど工程上の取り扱いが困難になるので、導電性フィルム10は、少なくとも光透過性基材11の片面に光透過性機能層13を設けることが好ましい。導電性フィルム10がフレキシブル用途で用いられる場合には、光透過性機能層13を光透過性基材11に密着させ、かつ折り畳み時に光透過性基材11に追随させることが重要となる。このような光透過性基材11に密着し、かつ折り畳み時に光透過性基材11に追随可能な光透過性機能層13を形成するためには、光透過性基材11の厚みに対する光透過性機能層13の膜厚のバランスも重要になる。
【0109】
光透過性機能層13は、少なくとも光透過性樹脂から構成することが可能である。なお、光透過性機能層13は、光透過性樹脂の他に、無機粒子、有機粒子およびレベリング剤を含んでいてもよい。
【0110】
<光透過性樹脂>
光透過性機能層13における光透過性樹脂としては、重合性化合物の重合体(硬化物、架橋物)を含むものが挙げられる。光透過性樹脂は、重合性化合物の重合体の他、溶剤乾燥型樹脂を含んでいてもよい。重合性化合物としては、電離放射線重合性化合物および/または熱重合性化合物が挙げられる。これらの中でも、硬化速度が速く、また設計しやすいことから、重合性化合物として電離放射線重合性化合物が好ましい。
【0111】
電離放射線重合性化合物は、1分子中に電離放射線重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における「電離放射線重合性官能基」とは、電離放射線照射により重合反応し得る官能基である。電離放射線重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、電離放射線重合性化合物を重合する際に照射される電離放射線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
【0112】
電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマー、電離放射線重合性オリゴマー、または電離放射線重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマーと、電離放射線重合性オリゴマーまたは電離放射線重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
【0113】
電離放射線重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0114】
電離放射線重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、電離放射線重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0115】
電離放射線重合性プレポリマーは、重量平均分子量が1万を超えるものであり、重量平均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる光透過性樹脂の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0116】
熱重合性化合物は、1分子中に熱重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における「熱重合性官能基」とは、加熱により同じ官能基同士または他の官能基との間で重合反応し得る官能基である。熱重合性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、環状エーテル基、メルカプト基等が挙げられる。
【0117】
熱重合性化合物としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ウレア化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
【0118】
溶剤乾燥型樹脂は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂である。溶剤乾燥型樹脂を添加した場合、光透過性機能層13を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0119】
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。
【0120】
熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0121】
<無機粒子>
無機粒子は、光透過性機能層13の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、無機粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称:ATO)粒子、酸化亜鉛粒子等の無機酸化物粒子が挙げられる。これらの中でも、硬度をより高める観点からシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、球形シリカ粒子や異形シリカ粒子が挙げられるが、これらの中でも、異形シリカ粒子が好ましい。本明細書における「球形粒子」とは、例えば、真球状、楕円球状等の粒子を意味し、「異形粒子」とは、ジャガイモの表面状のランダムな凹凸を表面に有する形状の粒子を意味する。上記異形粒子は、その表面積が球状粒子と比較して大きいため、このような異形粒子を含有することで、上記重合性化合物等との接触面積が大きくなり、光透過性機能層13の鉛筆硬度をより優れたものとすることができる。光透過性機能層13に含まれているシリカ粒子が異形シリカ粒子であるか否かは、光透過性機能層13の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察することによって確認することができる。球形シリカ粒子を用いる場合、球形シリカ粒子の粒子径が小さいほど、光透過性機能層の硬度が高くなる。これに対し、異形シリカ粒子は、市販されている最も小さい粒子径の球形シリカ粒子ほど小さくなくとも、この球形シリカと同等の硬度を達成することができる。
【0122】
異形シリカ粒子の平均粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。異形シリカ粒子の平均粒子径がこの範囲であっても、平均粒子径が1nm以上45nm以下の球形シリカと同等の硬度を達成することができる。異形シリカ粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した光透過性機能層の断面の画像から粒子の外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)とを測定し、粒子径を求め、20個の粒子の粒子径中、最大値と最小値を除き、残りの18個分の粒子径の算術平均値とする。また、球形シリカ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて倍率1万倍~10万倍で撮影した粒子の断面の画像から20個の粒子の粒子径を測定し、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。走査透過型電子顕微鏡(STEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、断面写真の撮影を行う際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にして観察を行う。その他のSTEMによる断面写真の撮影条件は、後述の条件を参照できる。なお、平均粒子径測定には、後述するような画像データを2値化処理して算出することもできる。
【0123】
光透過性機能層13中の無機粒子の含有量は、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。無機粒子の含有量が20質量%未満であれば、十分な硬度を得ることができ、また無機粒子の含有量が70質量%以下であれば、充填率が上がりすぎず、無機粒子と樹脂成分との密着性が良好であるので、光透過性機能層の硬度を低下させることもない。
【0124】
無機粒子としては、表面に光重合性官能基を有する無機粒子(反応性無機粒子)を用いることが好ましい。このような表面に光重合性官能基を有する無機粒子は、シランカップリング剤等によって無機粒子を表面処理することによって作成することができる。無機粒子の表面をシランカップリング剤で処理する方法としては、無機粒子にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、無機粒子を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
【0125】
<有機粒子>
有機粒子も、光透過性機能層13の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、有機粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、具体例としては、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。
【0126】
光透過性機能層13は、重合性化合物等を含む光透過性機能層用組成物を用いることによって形成することが可能である。光透過性機能層用組成物は、上記重合性化合物等を含むが、その他、必要に応じて、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、光透過性機能層用組成物には、樹脂層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、または屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0127】
<溶剤>
溶剤としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘプタノン、ジエチルケトン等)、エーテル類(1,4-ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテルジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0128】
<重合開始剤>
重合開始剤は、光または熱により分解されて、ラジカルやイオン種を発生させて重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。樹脂層用組成物に用いられる重合開始剤は、光重合開始剤(例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤)や熱重合開始剤(例えば、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0129】
上記したように導電性フィルム10がフレキシブル用途で用いられる場合には、光透過性機能層13を光透過性基材11に密着させ、かつ折り畳み時に光透過性基材11に追随させることが重要となる。このような光透過性基材11に密着し、かつ折り畳み時に光透過性基材11に追随可能な光透過性機能層13を形成するためには、重合開始剤としてオキシムエステル系化合物を用いることが好ましい。オキシムエステル系化合物の市販品としては、例えば、IRGACURE(登録商標) OXE01、IRGACURE(登録商標) OXE02、IRGACURE(登録商標) OXE03(いずれもBASFジャパン社製)が挙げられる。
【0130】
光透過性機能層用組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量をこの範囲内にすることにより、ハードコート性能を充分に保つことができ、かつ硬化阻害を抑制できる。
【0131】
<<導電部>>
導電部12は、
図2に示されるように、少なくとも、光透過性樹脂14と、光透過性樹脂14中に配置された複数の導電性繊維15とを含んでいる。また、導電部12は、光透過性樹脂14中に配置され、かつ導電性繊維15とは異なる1本以上の異種繊維をさらに含んでいる。ただし、導電部は、異種繊維を含んでいなくともよい。
図2においては、異種繊維は、表面の少なくとも一部が導電性繊維15よりも暗色を呈する表面暗色系繊維16となっている。導電部12は、光透過性樹脂14中に存在する反応抑制剤をさらに含むことが好ましい。本明細書における「導電部」とは、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、断面を観察したときに、導電性繊維を含む層を意味する。導電部の界面が確認しにくい場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt-PdやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行うとよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した後、染色処理を行ってもよい。また、本明細書における「導電性繊維」とは、導電性を有し、かつ長さが太さ(例えば直径)に比べて十分に長い形状を持つものであり、例えば、概ね長さが太さの5倍以上のものは導電性繊維に含まれるものとする。また、「導電部」とは、光透過性樹脂と、光透過性樹脂中に配置された複数の導電性繊維を含み、かつ表面から導通可能な部分を意味し、層状のものおよび層状以外のものの両方を含む概念である。
【0132】
導電部12は、導電部12の表面12Aから電気的に導通可能となっている。導電部が、導電部の表面から電気的に導通可能であるか否かは、導電部の表面抵抗値を測定することによって判断することが可能である。導電部の表面抵抗値の算術平均値が1×106Ω/□未満であれば、導電部の表面から電気的な導通が得られていると判断できる。導電部の表面抵抗値の測定方法は、後述するので、ここでは説明を省略するものとする。
【0133】
導電部12の表面抵抗値は、200Ω/□以下となっていることが好ましい。導電部12の表面抵抗値が200Ω/□以下であれば、特にタッチパネル用途では、応答速度が遅くなる等の不具合を抑制できる。導電部12の表面抵抗値は、導電部12の表面12Aにおける表面抵抗値である。表面抵抗値は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP-T370型」、三菱化学アナリテック社製、端子形状:ASPプローブ)および非破壊式(渦電流法)の抵抗率計(製品名「EC-80P」、ナプソン社製、<URL:https://www.napson.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/08/Napson_EC80P_リーフレット_160614.pdf>)のいずれを用いて測定できるが、導電部の膜厚に因らずに正確に測定できる点から、非破壊式の抵抗率計を用いて測定することが好ましい。非破壊式の抵抗率計のプローブは、サンプルに簡易接触させるだけで測定できるものであり、サンプルにダメージを与えず、任意の場所の測定が可能である。その意味で、非接触式と呼ぶ場合もある。非破壊式の抵抗率計による導電部の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となるように配置して、プローブを導電部に接触させて行うものとする。EC-80Pを用いて表面抵抗値を測定する場合には、SW2を選択し、モードM-Hのシート抵抗測定Ω/□を選択する。また、測定レンジによってプローブタイプを容易に付け替えることができ、本実施形態においては測定レンジが10~1000Ω/□レンジのプローブ、0.5~10Ω/□レンジのプローブを用いる。なお、EC-80Pの代わりにEC-80P-PN(ナプソン社製)でも同様に測定できるが、この機種の場合には、P/NはPを選択するとよい。また、接触式の抵抗率計による導電部の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となるように配置して、ASPプローブを導電部の中心に配置し、全ての電極ピンを導電部に均一に押し当てることによって行うものとする。接触式の抵抗率計で表面抵抗値を測定する際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択する。その後は、スタートボタンを押し、ホールドすると、測定結果が表示される。表面抵抗値の測定は、抵抗率計の種類に関わらず、23℃および相対湿度55%の環境下で行うものとする。また、表面抵抗値を測定する際には、抵抗率計の種類に関わらず、水平な机の上に導電性フィルムを配置し、均一な平面状態で測定を行うが、導電性フィルムがカールする等平面状態を維持できない場合には、導電性フィルムをテープ等でガラス板に貼り付けた状態で行うものとする。測定箇所は、導電性フィルムの中心部の3箇所とし、表面抵抗値は、3箇所の表面抵抗値の算術平均値とする。ここで、JIS K7194:1994に全て従うと、測定点は1点、5点、または9点であるが、実際に80mm×50mmの大きさに導電性フィルムを切り出し、JIS K7194:1994の
図5の通り測定すると、測定値が不安定になる場合がある。このため、測定点については、JIS K7194:1994とは異なり、導電部の中央部3~5箇所で測定するものとする。例えば、JIS K7194:1994の
図5の1番の位置、1番および7番の間の位置(好ましくは1番に近い位置)、および1番と9番に間の位置(好ましくは1番に近い位置)で測定する。表面抵抗値をサンプルの中心付近で測定することが望ましいことは、井坂 大智、他1名、“四探針法による導電性薄膜の抵抗率測定” 平成20年度電子情報通信学会東京支部学生研究発表会<URL: https://www.ieice.org/tokyo/gakusei/kenkyuu/14/pdf/120.pdf>)でも報告されている。なお、5箇所での測定が好ましく、表面抵抗値は、最大値と最小値を除いた3箇所分の測定値の算術平均値とする。導電性フィルム10の表面抵抗値の下限は、1Ω/□以上、5Ω/□以上、または10Ω/□以上であることがより好ましく、また導電性フィルム10の表面抵抗値の上限は、100Ω/□以下、90Ω/□以下、70Ω/□以下、60Ω/□以下、または50Ω/□以下であることがより好ましい。特に、透明導電性フィルムとしての用途、または10インチ以下の小型センサーなどの用途においては、90Ω/□以下が好ましい。20インチ以上の大型パネル、特にタッチパネルセンサーの場合は40Ω/□以下、1インチ以上20インチ未満の中小型パネル、特にタッチパネルセンサーの場合は、60Ω/□以下がより好ましい。
【0134】
製品から導電部の表面抵抗値を測定する場合には、導電性能はどの部分でも均一であり、製品の中央部と端部で表面抵抗値は同じであるとみなすことができるので、表面抵抗値の測定箇所は製品の中央部に限らず、端部であってもよい。また、製品から導電部12の表面抵抗値を測定する場合には、適宜以下の前処理を実施してもよい。測定可能な状態になればよいので、以下の方法に限らないが、導電性繊維に影響を与えないことが重要である。すなわち、導電部が既に明確に見えて、粘着層が極めて薄膜と推測できる場合はそのままでも測定可能なので、無理に全てを剥離しない方がよい。ただし、なるべく薄くする前処理をした方が好ましい。例えば、導電性フィルムがタッチパネルのセンサーとして使用されている場合には、導電性フィルム上には、粘着層を介してカバーフィルムやガラスが存在する。このため、まず、端にカッターの刃を入れてカバーフィルムまたはカバーガラスを剥離する。容易に剥離しない場合は、無理に剥離せずに、次工程に移る。次いで、40℃の温水に10秒浸し取り出すことを3回繰り返す。その後にカッターなどで粘着層の剥がれ具合を確認し、場合によっては、40℃の温水に10秒浸し、取り出すことを更に3回繰り返す。その後、粘着層を、ゆっくりと導電部に傷つけないようなツール(薄く平らだが刃のないもの)で粘着層を剥いでいく。なお、全面剥離できなくとも、測定したい部位で剥離できればよい。なお、この前処理は表面抵抗値以外の他の測定の際にも用いることができる。
【0135】
上記表面抵抗値は、後述する線抵抗値から以下の数式(6)によって、換算することもできる。以下の数式(6)中、RSは表面抵抗値(Ω/□)であり、RLは線抵抗値(Ω)であり、WLは線抵抗値を測定する際の線幅であり、LLは線抵抗値を測定する際の長さである。実際に測定して得られた表面抵抗値と、線抵抗値から以下の式によって換算された表面抵抗値は、ほぼ同じ値となる。
RS=RL×WL÷LL …(6)
【0136】
導電部12の線抵抗値は、2000Ω以下となっていることが好ましい。導電部12の線抵抗値が2000Ω以下であれば、特にタッチパネル用途では、応答速度が遅くなる等の不具合を抑制できる。導電部12の線抵抗値は、導電性フィルムから5mm×100mmの長方形形状に切り出したサンプルの長手方向の両端部に、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、テスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)のプローブ端子を接触させることによって測定することができる。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454-11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を導電部の一方の端部に接触させ、かつ黒色プローブ端子を導電部の他方の端部に接触させて導電部の線抵抗値を測定する。導電部12の線抵抗値の下限は、20Ω以上、100Ω以上、または200Ω以上であることがより好ましく、また導電部12の線抵抗値の以下上限は2000Ω以下、1400Ω以下、または1000Ω以下であることが好ましい。
【0137】
導電部12の膜厚は、300nm未満となっていることが好ましい。導電部12の膜厚が300nm未満であれば、その分、光透過性樹脂14の膜厚が薄くなるので、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことを抑制でき、導電部の表面から電気的な導通を確実に得ることができる。導電部の膜厚が大きくなればなるほど、導電性繊維同士が重なる部分が増えるために、1Ω/□以上10Ω/□以下の低表面抵抗値も達成することが可能であるが、導電性繊維が重なり過ぎると低ヘイズ値の維持が困難になる場合もある。このため、膜厚は300nm以下が好ましい。なお、低表面抵抗値が維持できる限り導電部は薄膜である方が光学特性、薄膜化の観点から好ましい。導電部12の膜厚の上限は、薄型化を図る観点および低ヘイズ値等良好な光学特性を得る観点から、200nm以下、145nm、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、または50nm以下であることがより好ましい。また、導電部12の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。導電部の膜厚が10nm未満であると、その分、光透過性樹脂14の膜厚が薄すぎることになるので、導電部からの導電性繊維の脱離、導電部の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがある。また、導電性繊維が切れやすいなど不安定性がないようにするためには、導電性繊維の平均繊維径がある程度大きいことが好ましい。導電性繊維が安定して形態を維持できる平均繊維径としては、7nm以上、10nm以上または15nm以上であると考えられる。一方で、安定な電気的導通を得るためには、導電性繊維が2本以上重なって接触していることが望ましいため、導電部12の膜厚の下限は、20nm以上または30nm以上であることがより好ましい。なお、フレキシブル性を得る場合には、上記間隔φが大きめで折り畳み回数も10万回程度であれば、導電部12の膜厚は300nm未満であれば安定な抵抗値が得られる。また、上記間隔φが小さくなり、折り畳み回数も10万回を超える場合には、導電部12の膜厚は薄い方が好ましく、例えば、200nm以下、145nm以下、更には120nm以下が好ましい。
【0138】
導電部12の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影された導電部の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚み中で、最大値と最小値除く8箇所の厚みの算術平均値とする。具体的な断面写真の撮影方法を以下に記載する。まず、上記と同様の方法にて導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製する。なお、このサンプルにおいて導通が得られないとSTEMによる観察像が見えにくい場合があるため、Pt-Pdを20秒程度スパッタすることが好ましい。スパッタ時間は、適宜調整できるが、10秒では少なく、100秒では多すぎるためスパッタした金属が粒子状の異物像になるため注意する必要がある。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影する。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にしてSTEM観察を行う。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節する。好ましい倍率は、1万倍~10万倍、更に好ましい倍率は1万倍~5万倍であり、最も好ましい倍率2.5万倍~5万倍である。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、ビームモニタ絞りを3、対物レンズ絞りを3にし、またW.D.を8mmにしてもよい。導電部の膜厚を測定する際には、断面観察した折に、導電部と他の層(光透過性基材や包埋樹脂等)との界面コントラストが可能な限り明確に観察できることが重要となる。仮に、コントラスト不足でこの界面が見え難い場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt-Pd、PtやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行ってもよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、染色処理を行ってもよい。また、界面のコントラストは高倍率である方が分かりにくい場合がある。その場合には、低倍率も同時に観察する。例えば、2.5万倍と5万倍や、5万倍と10万倍など、高低の2つの倍率で観察し、両倍率で上記した算術平均値を求め、更にその平均値を導電部の膜厚の値とする。
【0139】
<光透過性樹脂>
光透過性樹脂14は、導電部12からの導電性繊維15の脱離を防ぎ、かつ導電部12の耐久性や耐擦傷性を向上させるために、導電性繊維15を覆うものであるが、導電部12の表面12Aから電気的な導通が得られる程度に導電性繊維15を覆うものである。具体的には、上記したように一部の導電性繊維が、導電部の表面に露出していないと、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、光透過性樹脂14は、一部の導電性繊維15が導電部12の表面12Aから露出するように導電性繊維15を覆っていることが好ましい。一部の導電性繊維15が導電部12の表面12Aに露出するように導電性繊維15を光透過性樹脂14で覆うためには、例えば、光透過性樹脂14の膜厚を調整すればよい。すなわち、光透過性樹脂の厚みが厚すぎると、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が導電部の表面に露出しなくなってしまい、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。また、光透過性樹脂の厚みが薄すぎると、導電部からの導電性繊維の脱離、導電部の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがある。このため、光透過性樹脂の厚みを適度な厚みに調節する必要がある。
【0140】
上記の観点から、光透過性樹脂14の膜厚は、300nm未満となっていることが好ましい。光透過性樹脂14の膜厚は、導電部12の膜厚の測定方法と同様の方法にて測定することができる。光透過性樹脂14の膜厚の上限は、200nm以下、145nm以下、140nm以下、120nmnm、110nm以下、80nm以下、または50nm以下であることがより好ましい。また、光透過性樹脂14の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。
【0141】
光透過性樹脂14は、光透過性を有する樹脂であれば、特に限定されないが、光透過性樹脂としては、重合性化合物の重合体や熱可塑性樹脂等が挙げられる。重合性化合物としては、光透過性機能層13の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0142】
<導電性繊維>
導電性繊維15は導電部12中に複数本存在していることが好ましい。導電部12の表面12Aから電気的に導通可能となっているので、導電部12の厚み方向において導電性繊維15同士が接触している。
【0143】
導電部12においては、導電性繊維15同士が接触することによって導電部12の平面方向(2次元方向)にネットワーク構造(網目構造)を形成していることが好ましい。導電性繊維15がネットワーク構造を形成することによって、導電経路を形成することができる。
【0144】
一部の導電性繊維15は導電部12の表面12Aに露出していることが好ましい。本明細書における「一部の導電性繊維が導電部の表面に露出している」とは、導電性繊維が導電部に固定される程度に導電性繊維の一部が露出していればよく、導電性繊維が導電部の表面から突出している場合も含まれるものとする。一部の導電性繊維が、導電部の表面に露出していないと、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、上記の測定方法によって、導電部12の表面12Aから電気的な導通が得られれば、一部の導電性繊維15が、導電部12の表面12Aに露出していると判断できる。
【0145】
導電性繊維15の平均繊維径は30nm以下であることが好ましい。導電性繊維の平均繊維径が30nm以下であれば、導電性フィルムのヘイズ値の上昇を抑制でき、また光透過性能が充分となる。導電性繊維15の平均繊維径の下限は導電部12の導電性の観点から5nm以上、7nm以上、10nm以上であることがより好ましい。また、導電性繊維15の平均繊維径の上限は、28nm以下、25nm以下、または20nm以下であることがより好ましい。ミルキネスを好ましい範囲に制御するため、導電性繊維15の繊維径のより好ましい範囲は7nm以上25nm以下である。
【0146】
導電性繊維15の平均繊維径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、製品名「H-7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めるものとする。上記H-7650を用いて、繊維径を測定する際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」にする。また、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)によっても導電性繊維の繊維径を測定することが可能である。STEMを用いる場合には、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、STEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として導電性繊維の平均繊維径を求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維径を測定する際には、信号選択を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「0°」にする。
【0147】
導電性繊維15の繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。ここで、TEM測定は高倍率のため、導電性繊維ができる限り重ならないように導電性繊維分散液の濃度をできる限り低下させることが重要である。具体的には、導電性繊維分散液を、分散媒に合わせて水またはアルコールで導電性繊維の濃度を0.05質量%以下に希釈し、または固形分が0.2質量%以下に希釈することが好ましい。さらに、この希釈した導電性繊維分散液をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ上に1滴滴下し、室温で乾燥させて、上記条件で観察し、観察画像データとする。これを元に算術平均値を求める。カーボン支持膜付きグリッドメッシュとしては、Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」が好ましく、また電子線照射量に強く、電子線透過率がプラスチック支持膜より良いため高倍率に適し、有機溶媒に強いものが好ましい。また、滴下の際には、グリッドメッシュだけであると微小すぎ滴下しにくいため、スライドガラス上にグリッドメッシュを載せて滴下するとよい。
【0148】
上記繊維径は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。実測する場合、写真を印刷し適宜拡大してもよい。その際、導電性繊維は他の成分よりも黒さの濃度が濃く写り込む。測定点は、輪郭外側を起点、終点として測定する。導電性繊維の濃度は、導電性繊維分散液の全質量に対する導電性繊維の質量の割合で求めるものとし、また固形分は、導電性繊維分散液の全質量に対する分散媒以外の成分(導電性繊維、樹脂成分、その他の添加剤)の質量の割合によって求めるものとする。導電性繊維含有組成物を用いて求められた繊維径と、写真を元にして実測して求めた繊維径は、ほぼ同じ値となる。
【0149】
導電性繊維15の平均繊維長はミルキネスを良好な範囲にするためには15μm以上20μm以下であることが好ましい。導電性繊維15の平均繊維長が15μm以上であれば、充分な導電性能を有する導電性層を形成でき、また凝集によるミルキネスへの影響、ヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を招くおそれもない。また、導電性繊維15の平均繊維長が20μm以下であれば、フィルターに詰まらずに塗工できる。なお、導電性繊維15の平均繊維長の下限は5μm以上、7μm以上、10μm以上としてもよく、導電性繊維15の平均繊維長の上限は40μm以下、35μm以下、または30μm以下としてもよい。
【0150】
導電性繊維15の平均繊維長は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維長を測定し、その100本中、最大値と最小値を除いた98本の導電性繊維の繊維長の算術平均値として求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維長を測定する際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にする。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は必ず抜いておく。上記S-4800は、STEM機能とSEM機能を選択できるが、上記繊維長の測定する際には、SEM機能を用いるものとする。
【0151】
導電性繊維15の繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。まず、導電性繊維分散液をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に導電性繊維の塗布量が10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製する。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出す。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付ける。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタし、導通を得る。適度なスパッタ膜がないと像が見えにくい場合があるので、その場合は適宜調整する。
【0152】
上記繊維長は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。写真を元に実測する場合、上記と同様の方法によって行うものとする。導電性繊維含有組成物を用いて求められた繊維長と、写真を元にして実測して求めた繊維長は、ほぼ同じ値となる。
【0153】
導電性繊維15としては、導電性炭素繊維、金属ナノワイヤ等の金属繊維、金属被覆有機繊維、金属被覆無機繊維、およびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。
【0154】
上記導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0155】
上記金属繊維としては、例えば、ステンレススチール、Ag、Cu、Au、Al、Rh、Ir、Co、Zn、Ni、In、Fe、Pd、Pt、Sn、Ti、またはこれらの合金から構成された金属ナノワイヤが好ましく、金属ナノワイヤの中でも、低抵抗値を実現でき、酸化しにくく、また湿式塗布に適している観点から、銀ナノワイヤが好ましい。上記金属繊維としては、例えば、上記金属を細く、長く伸ばす伸線法または切削法により作製された繊維が使用できる。このような金属繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0156】
また金属繊維として、銀ナノワイヤを用いる場合、銀ナノワイヤは、ポリオール(例えば、エチレングリコール)およびポリ(ビニルピロリドン)の存在下で、銀塩(例えば、硝酸銀)の液相還元により合成可能である。均一サイズの銀ナノワイヤの大量生産は、例えば、Xia,Y.et al.,Chem.Mater.(2002)、14、4736-4745およびXia,Y.et al.,Nanoletters(2003)3(7)、955-960に記載される方法に準じて得ることが可能である。
【0157】
金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833~837;Chem.Mater.,2002,14,4736~4745等、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006-233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002-266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004-149871号公報等を参考にすることができる。
【0158】
上記金属被覆合成繊維としては、例えば、アクリル繊維に金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等をコーティングした繊維等が挙げられる。このような金属被覆合成繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0159】
<異種繊維>
異種繊維は、導電性繊維15とは異なる種類の繊維である。導電部12に異種繊維が存在するか否かは、走査型電子顕微鏡(SEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、異種繊維を倍率5万倍で観察することによって、繊維状であるかを確認し、かつエネルギー分散型X線分析装置(EDX:上記SEM付属のEDAX社製Genesis2000)によって導電性繊維を構成する元素とは異なる元素が検出されるか否かによって判断することができる。EDXによる測定条件は、加速電圧を「15kV」、エミッション電流を「20μA」、W.D.を「15mm」にする。表面暗色系繊維16は、異種繊維の一種であるので、表面暗色系繊維16の繊維径や繊維長等は、異種繊維にも適用される。
【0160】
(表面暗色系繊維)
表面暗色系繊維16は、表面の少なくとも一部が導電性繊維15よりも暗色を呈する繊維である。暗色系繊維16の表面の少なくとも一部が導電性繊維15よりも暗色を呈するか否かは、例えば、導電部を形成するための表面暗色系繊維を含む分散液の状態でこの分散液の色味と導電性繊維を含む分散液の色味を観察することによって、または表面暗色系繊維を含む分散液から表面暗色系繊維を取り出して、表面暗色系繊維の色味と導電性繊維の色味を比較することによって判断することができる。また、表面暗色系繊維が金属から構成されている場合、以下の方法によって、暗色系繊維16の表面の少なくとも一部が導電性繊維15よりも暗色を呈するか否か判断してもよい。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、暗色系繊維を倍率5万倍で観察することによって、繊維状であるかを確認する。次いで、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)によって導電部から導電性繊維とは異なる金属が検出されるか否か確認する。導電性繊維とは異なる金属が検出された場合には、その金属の繊維状態での色味を既知の情報から得る。そして、既知の情報から得た色味と導電性繊維の色味を比較することによって暗色系繊維が導電性繊維よりも暗色を呈するか否かを判断する。本明細書における「暗色」とは、導電部の拡散光反射率を低下させることが可能な、黒色、灰色、褐色等の低明度の色を意味するものとする。
【0161】
表面暗色系繊維16は、表面全体が暗色を呈することが好ましいが、必ずしも表面全体が暗色を呈する必要はない。すなわち、表面暗色系繊維16は、所々暗色を呈さない部分があってもよい。ただし、上記拡散光反射率(SCE)を0.5%以下にする観点からは、表面暗色系繊維16はある程度以上暗色を呈する部分(以下、この部分を「暗色部」と称する。)が存在することが好ましい。例えば、表面暗色系繊維の暗色部が表面暗色系繊維の他の部分よりも太くなっている場合には、走査型電子顕微鏡(SEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、表面暗色系繊維を倍率5万倍で観察したときに、他の部分よりも太くなっている部分の長さ(暗色部の長さ)が1.5μm以上存在していれば、確実に拡散光反射率を0.5%以下できる。なお、表面暗色系繊維は、上記走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率5万倍で観察したときに、暗色部の長さが1.5μm未満であっても、導電性繊維15と表面暗色系繊維16の配合比率によっては拡散光反射率を0.5%以下にできる場合があるが、暗色部が塗膜から構成されている場合にはコーティング時に繊維から暗色部が脱落することがあり、欠点となりやすい。
【0162】
表面暗色系繊維16の平均繊維径は30nm以下であることが好ましい。表面暗色系繊維16の平均繊維径が30nm以下であれば、導電性フィルム10のヘイズ値の上昇を抑制でき、また光透過性能が充分となる。表面暗色系繊維16の平均繊維径の下限は、静電気対策の観点から5nm以上、7nm以上、または10nm以上であることが好ましい。また、表面暗色系繊維16の平均繊維径の上限は、28nm以下、25nm以下、または20nm以下であることが好ましい。表面暗色系繊維16の平均繊維径は、導電性繊維15の平均繊維径と同様の方法によって測定するものとする。
【0163】
表面暗色系繊維16の平均繊維長は15μm以上20μm以下であることが好ましい。表面暗色系繊維16の平均繊維長が15μm以上であれば、凝集によるヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を招くおそれもない。また、表面暗色系繊維16の平均繊維長が20μm以下であれば、フィルターに詰まらず塗工できる。なお、表面暗色系繊維16の平均繊維長の下限は5μm以上、7μm以上、または10μm以上としてもよく、表面暗色系繊維16の平均繊維長の上限は40μm以下、35μm以下、または30μm以下としてもよい。
【0164】
導電部12における導電性は、導電性繊維15によって得られるので、表面暗色系繊維16自体は必ずしも導電性を有さなくてもよいが、導電部12の導電性の低下を抑制するために、表面暗色系繊維16は導電性繊維であることが好ましい。
【0165】
導電部12中の表面暗色系繊維16の含有量は、上記拡散光反射率(SCE)が0.5%以下となる量であれば、特に限定されないが、導電性繊維15と表面暗色系繊維16の重量比率が97:3~30:70となることが好ましい。上記比率が、この範囲であれば、導電部において導電性を得ることができるとともに、ミルキネスをより抑制することができる。
【0166】
表面暗色系繊維16としては、
図7(A)に示されるように繊維材17Aの表面に黒化処理等の暗色化処理によって形成した暗色系皮膜17Bを有する暗色部形成繊維17が挙げられる。暗色化処理としては、例えば、塗装、めっき、表面処理等が挙げられる。表面処理としては、例えば、化成処理や陽極酸化等が挙げられる。また、表面暗色系繊維16は、
図7(B)に示されるように繊維材自体が暗色を呈する暗色系繊維18であってもよい。
【0167】
めっきで繊維材17Aの表面を暗色化する場合には、電解めっきおよび無電解めっきのいずれで暗色系皮膜17Bを形成してもよい。
【0168】
化成処理は、薬品又はその溶液によって、金属表面の組成を変える処理であり、例えば、酸化処理、リン酸塩化処理、硫化処理などがある。繊維材が金属から構成されている場合、繊維材の材質に応じて金属物が黒色を呈するような化成処理を選択使用する。例えば、繊維材の材質が銅の場合には、亜塩素酸ナトリウムおよび水酸化カリウムを含む水溶液や、多硫化アンチモンを含む水溶液、亜塩素酸ナトリウム及びリン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムを含む水溶液、過硫酸カリウムおよび水酸化ナトリウムを含む水溶液などに繊維材を浸漬するとよい。なお、黒色を呈する暗色部の形成深度は、化成処理の溶液の組成、温度、浸漬時間などの条件を調節することにより、調整することができる。
【0169】
(暗色部形成繊維)
暗色部形成繊維17は、繊維材17Aの表面に黒化処理等の暗色化処理によって形成された暗色系皮膜17Bを有する繊維である。繊維材17Aとしては、上記した理由から、導電性繊維でなくてもよいが、導電性繊維であることが好ましい。繊維材17Aが導電性繊維である場合、繊維材17Aは、導電性繊維15と同様の導電性材料から構成されていなくともよいが、導電性繊維15と同様の材料から構成されていてもよい。
【0170】
暗色系皮膜17Bは、無機皮膜であることが好ましい。暗色系皮膜が無機皮膜である場合、暗色皮膜を構成する無機材料としては、例えば、金属、金属酸化物や金属硫化物の金属化合物等が挙げられる。金属としては、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、スズ、クロム、またはこれらの合金等が挙げられ、これらの中でも、銅、コバルト、ニッケル、またはこれらの合金等が好ましい。また金属化合物としては、これらの金属の化合物や塩化テルル等が挙げられる。コバルト、ニッケル、および塩化テルルは、皮膜で黒色を呈する。
【0171】
暗色系皮膜17Bの膜厚は、1.0nm以上14nm以下であることが好ましい。暗色系皮膜17Bの膜厚が1.0nm以上であれば、確実に繊維を暗色にすることができ、また14nm以下であれば、優れた光学特性も担保できる。暗色系皮膜17Bの膜厚の下限は、2nm以上であることがより好ましく、暗色系皮膜17Bの膜厚の上限は、10nm以下、7nm以下、5nm以下であることがより好ましい。
【0172】
(暗色系繊維)
暗色系繊維18は、繊維材からなるものである。暗色系繊維18は、繊維材自体が暗色を呈していれば、特に限定されず、例えば、導電性繊維が挙げられる。導電性繊維としては、金属繊維、金属酸化物繊維、カーボンナノチューブ繊維等が挙げられる。金属繊維を構成する金属としては、銅、コバルト、ニッケル、またはこれらの合金(例えば、銅ニッケル)等が挙げられる。なお、コバルト自体は銀色であるが、コバルト繊維は黒色を示し、またニッケル繊維は黒色を呈する。カーボンナノチューブ繊維としては、多層、単層、またはヘリンボーン型のカーボンナノチューブが挙げられる。
【0173】
<反応抑制剤>
反応抑制剤は、光透過性樹脂用組成物の塗布後に、導電性繊維15と雰囲気下の物質(例えば、硫黄、酸素、および/またはハロゲン)との反応による導電性低下を抑制するためのものである。反応抑制剤としては、例えば、ベンゾアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、イソシアヌル酸系化合物、アニリン系化合物等の窒素含有化合物等が挙げられる。反応抑制剤として用いられる窒素含有化合物としては、例えば、1-アミノベンゾアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-メチル-1H-テトラゾール-5-アミン、DL-α-トコフェロール、1-オクタデカンチオール、2-メルカプト-5-(トリフルオロメチル)ピリジン、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリルプロピル、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、チオシアヌル酸、3,5-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール、4-(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)アニリン、6-(ジブチルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、4-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)アニリン、2-メチルチオ-ベンゾチアゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、5-メルカプト-1-メチルテトラゾール、5-(メチルチオ)-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール、1-(4-ヒドロキシフェニル)-5-メルカプト-1H-テトラゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールが挙げられる。
【0174】
導電部12中の反応抑制剤の含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。反応抑制剤の含有量が、0.01質量%未満であると、導電性繊維が雰囲気下の物質との反応してしまい、導電性が低下するおそれがある。また反応抑制剤は、導電性繊維の表面と反応することによって導電性繊維の表面を失活させて、導電性繊維が雰囲気下の物質と反応し難い状態を作り出すものであるが、反応抑制剤の含有量が、10質量%を超えると、導電性繊維における反応抑制剤との反応が導電性繊維の表面のみならず内部まで進行してしまい、導電性が低下するおそれがある。
【0175】
<<他の導電性フィルム>>
図1に示される導電性フィルム10は、導電部12中に表面暗色系繊維16が含まれているが、導電部には表面暗色系繊維を含ませずに、導電部よりも導電性フィルムの表面側に表面暗色系繊維を含む層を設けてもよい。具体的には、
図8および
図9に示される導電性フィルム30は、光透過性基材11と、光透過性基材11の第1の面11A側に設けられた導電部31と、導電部31の表面に設けられた表面暗色系繊維含有層32と、光透過性基材11の第2の面11B側に設けられた光透過性機能層13とを備えている。導電性フィルム30の表面30Aは、表面暗色系繊維含有層32の表面32Aとなっており、導電性フィルム30の裏面30Bは、光透過性機能層13の表面13Aとなっている。導電性フィルム30の物性値等は、導電性フィルム10の物性値等と同様になっている。導電部31は、光透過性樹脂14および導電性繊維15を含むが、表面暗色系繊維16を含まない点のみ、導電部12とは異なる。なお、
図8および
図9において、
図1および
図2と同じ符号が付されている部材は、
図1および
図2で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
【0176】
表面暗色系繊維含有層32は、光透過性樹脂33と、光透過性樹脂33中に配置された表面暗色系繊維16とを含んでいる。光透過性樹脂33は、光透過性樹脂14と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0177】
導電部に表面暗色系繊維を含有させると、表面暗色系繊維が導電性繊維同士の接触を妨げてしまい、抵抗値が上昇するおそれがあるが、
図8および
図9に示される導電性フィルム30においては、導電部31は表面暗色系繊維16を含まず、また別途表面暗色系繊維含有層32を設けているので、表面暗色系繊維16による導電性繊維15同士の接触の妨げを抑制でき、これにより、ミルキネスを抑制しながら低抵抗値を実現することができる。
【0178】
図1に示される導電性フィルム10は、光透過性機能層13を備えているが、
図10に示される導電性フィルム40のように、光透過性機能層を備えていなくともよい。光透過性機能層を備えないことにより、フレキシブル性をより向上させることができる。導電性フィルム40の表面40Aは、導電部12の表面12Aとなっており、導電性フィルム40の裏面40Bは、光透過性基材11の第2の面11Bとなっている。導電性フィルム40の物性値等は、下記以外、導電性フィルム10の物性値等と同様になっている。
【0179】
図1に示される導電性フィルム10は、導電部12がパターニングされていない層状のものであるが、用途によっては、導電部は、パターニングされていてもよい。具体的には、導電性フィルムは、
図11に示されるような、複数の導電部52と、導電部52間に位置する非導電部53とから構成された導電層51を備える導電性フィルム50であってもよい。なお、非導電部は、空隙であってもよい。導電性フィルム50の表面50Aは、導電層51の表面51Aとなっており、導電性フィルム50の裏面50Bは、光透過性機能層13の表面13Aとなっている。導電性フィルム50の物性値等は、導電性フィルム10の物性値等と同様になっている。なお、
図11において、
図1と同じ符号が付されている部材は、
図1で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
【0180】
<導電部>
導電部52は、パターニングされている以外、導電部12と同様となっている。導電部42は、例えば、投影型静電容量方式のタッチパネルにおけるX方向の電極として機能するものであり、
図12に示されるようにX方向に延びた複数のセンサー部52Bと、各センサー部52Bに連結した端子部(図示せず)とを備えている。各センサー部52Bは、タッチ位置を検出され得る領域である矩形状のアクティブエリア内に設けられており、端子部は、アクティブエリアに隣接し、アクティブエリアを四方から周状に取り囲む領域である非アクティブエリア内に設けられている。
【0181】
各センサー部52Bは、直線状に延びるライン部52Cと、ライン部52Cから膨出した膨出部52Dとを有している。
図12においては、ライン部52Cは、センサー部52Bの配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部52Dは光透過性機能層13の表面に沿ってライン部52Cから膨らみ出ている部分である。したがって、各センサー部52Bの幅は、膨出部52Dが設けられている部分においては太くなっている。本実施形態においては、膨出部52Dは平面視略正方形状の外輪郭を有している。なお、膨出部52Dは平面視略正方形状に限らず、菱形状、またはストライプ状であってもよい。
【0182】
導電部52の表面抵抗値(Ω/□)は、導電部52の面積が大きい部分(製品のベゼル部等)で測定可能である。導電部52の表面抵抗値を測定する際には、パターニングされた導電部42の形状や大きさにも因るが、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP-T370型」、三菱化学アナリテック社)を用いて測定することが好ましい。ただし、導電部52が、非破壊式(薄電流法)の抵抗率計(製品名「EC-80P」、ナプソン社製)を用いて表面抵抗値を測定できる形状や大きさであれば、非破壊式の抵抗率計を用いて表面抵抗値を測定してもよい。接触式の抵抗率計による導電部52の表面抵抗値の測定方法および非破壊式の抵抗率計による導電部52の表面抵抗値の測定方法は、接触式の抵抗率計による導電部12の表面抵抗値の測定方法および非破壊式の抵抗率計による導電部12の表面抵抗値の測定方法と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。なお、ロレスタAX MCP-T370型の端子形状は、通常、ASPプローブ(ピン4本、ピン間距離5mm、ピン先曲率半径0.37mm)であるが、導電部52から得られるサンプルが小さい場合には、PSPプローブ(ピン4本、ピン間距離1.5mm、ピン先曲率半径0.26mm)、TFPプローブ(ピン4本、ピン間距離1mm、ピン先曲率半径0.04mm)を用いることが好ましい。
【0183】
<非導電部>
非導電部53は、導電部52間に位置し、かつ導電性を示さない部分である。本明細書においては、非導電部の表面における抵抗値(表面抵抗値)が、1500Ω/□以上であれば、非導電部は導電性を示さないと判断する。非導電部53は、実質的に導電性繊維15および表面暗色繊維16を含んでいない。本明細書における「非導電部が、実質的に導電性繊維および表面暗色繊維を含んでいない」とは、導電部からの金属イオンのマイグレーションによって金属イオンが非導電部側に析出した場合であっても、導電部間の電気的な短絡が生じない程度であれば導電性繊維を若干含んでいてもよいことを意味する。非導電部53は、導電性繊維15および表面暗色繊維16を全く含んでいないことが好ましい。なお、後述するようにレーザー光で導電性繊維15および表面暗色繊維16を昇華させることによって、またはフォトリソグラフィ法によるウエットエッチングによって非導電部53から導電性繊維15および表面暗色繊維16を除去する際に、導電性繊維15を構成する材料および表面暗色繊維16を構成する材料が残存するおそれがあるが、これらの材料は繊維状ではないので、導電性繊維や表面暗色繊維とはみなさない。
【0184】
非導電部53の膜厚は、導電部52と一体的に形成されるので、光透過性基材上に下地層や光透過性機能層が設けられている場合であっても、設けられていない場合であっても、300nm未満となっていることが好ましい。本明細書における「非導電部の膜厚」とは、断面観察によって導電性繊維を含む導電部と判断された層が積層された基盤部分(光透過性基材、下地層、光透過性機能層など)に直接積層されている部分を意味する。非導電部43の膜厚の上限は、薄型化を図る観点および低ヘイズ値等良好な光学特性を得る観点から、200nm以下、145nm以下、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、50nm以下、30nm以下、または10nm以下であることがより好ましい。また、非導電部53の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。非導電部53の膜厚は、導電部52の膜厚と同様の方法によって測定するものとする。
【0185】
非導電部53は、光透過性樹脂14から構成されている。なお、非導電部53は、導電性繊維15および表面暗色系繊維16を昇華させることによって形成され、かつ導電性繊維および表面暗色系繊維が存在しない空洞部を有していてもよい。この場合、非導電部53を形成する際には導電性繊維15および表面暗色系繊維16が昇華によって非導電部53とすべき領域を突き破って外に放出されるので、非導電部53の表面は粗面化される。非導電部53の光透過性樹脂14は、導電部12の光透過性樹脂14と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0186】
<<導電性フィルムの製造方法>>
導電性フィルム10は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、
図13(A)に示されるように、光透過性基材11の第2の面11Bに光透過性機能層用組成物を塗布し、乾燥させて、光透過性機能層用組成物の塗膜61を形成する。
【0187】
光透過性機能層用組成物を塗布する方法としては、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0188】
次いで、
図13(B)に示されるように塗膜61に紫外線等の電離放射線を照射し、または加熱して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜61を硬化させて、光透過性機能層13を形成する。
【0189】
光透過性機能層用組成物を硬化させる際の光として、紫外線を用いる場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる紫外線等が利用できる。また、紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0190】
光透過性基材11上に光透過性機能層13を形成した後、光透過性基材11の第1の面11Aに、導電性繊維15、表面暗色系繊維16および分散媒を含む導電性繊維分散液を塗布し、乾燥させて、
図14(A)に示されるように光透過性基材11の第1の面11A上に複数の導電性繊維15および表面暗色系繊維16を配置させる。導電性繊維分散液は、導電性繊維15、表面暗色系繊維および分散媒の他、熱可塑性樹脂や重合性化合物からなる樹脂分を含ませてもよい。本明細書における「樹脂分」とは、樹脂(ただし、導電性繊維を覆う導電性繊維同士の自己溶着や雰囲気中の物質との反応から防ぐための等の、導電性繊維の合成時に導電性繊維周辺に形成された有機保護層を構成する樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン等)は含まない)の他、重合性化合物のように重合して樹脂となり得る成分も含む概念である。また、導電性繊維分散液中の樹脂分は、導電部12を形成した後においては、光透過性樹脂14の一部を構成するものである。
【0191】
分散媒としては、水系分散媒および有機系分散媒のいずれであってもよい。ただし、導電性繊維分散液中の樹脂分の含有量が多すぎると、導電性繊維間に樹脂分が入り込んでしまい、導電部の導通が悪化するおそれがある。特に、導電部の膜厚が薄い場合には、導電部の導通が悪化しやすい。一方で、有機系分散媒を用いた方が、水系分散媒を用いる場合よりも導電性繊維分散液中の樹脂分が少なくなる。このため、膜厚が薄い、例えば、300nmの膜厚を有する導電部12を形成する場合には、有機分散媒を用いることが好ましい。有機系分散媒は、10質量%未満の水を含んでいてもよい。
【0192】
有機系分散媒としては、特に限定されないが、親水性の有機系分散媒であることが好ましい。有機系分散媒としては、例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、導電性繊維分散液の安定性の観点から、アルコール類が好ましい。
【0193】
導電性繊維分散液に含まれていてもよい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリアセテート系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂;合成ゴム;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0194】
導電性繊維分散液に含まれていてもよい重合性化合物としては、光透過性機能層13の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0195】
光透過性基材11の第1の面11A上に複数の導電性繊維15および表面暗色系繊維16を配置させた後、重合性化合物および溶媒を含む光透過性樹脂用組成物を塗布し、乾燥させて、
図14(B)に示されるように光透過性樹脂用組成物の塗膜62を形成する。光透過性樹脂用組成物は、重合性化合物および溶剤を含むが、その他、必要に応じて、重合開始剤や上記反応抑制剤を添加してもよい。ここで、反応抑制剤を、導電性繊維含有組成物に添加することも可能であるが、導電性繊維分散液に反応抑制剤を添加すると、導電性繊維がネットワーク構造を形成する前に導電性繊維の表面が反応抑制剤によって被覆されてしまい、導電性が悪化するおそれがあるので反応性抑制剤を光透過性樹脂用組成物に添加することが好ましい。
【0196】
次いで、
図15(A)に示されるように、塗膜62に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜62を硬化させて、光透過性樹脂14を形成する。
【0197】
図1に示される導電性フィルム10は、導電部12が層状となっているので、上記の工程で、導電性フィルム10が得られる。
図11に示される導電性フィルム50は、パターニングされているので、以下、パターニング工程について述べる。
【0198】
光透過性樹脂14を形成した後、
図15(B)に示されるように、非導電部53とすべき領域にレーザー光(例えば、赤外線レーザー)を照射して、ドライエッチングにより導電部52のパターニングを行う。非導電部53とすべき領域にレーザー光を照射すると、レーザー光の熱によってこの領域に含まれる導電性繊維15および表面暗色系繊維16が昇華する。昇華した導電性繊維15および表面暗色系繊維16は、光透過性樹脂14を突き破って光透過性樹脂14外に放出される。これにより、
図11に示される導電部52および非導電部53を備えた導電性フィルム50を得ることができる。上記においては、ドライエッチングにより導電部52のパターニングを行っているが、フォトリソグラフィ法によっても、非導電部53とすべき領域から導電性繊維15および表面暗色系繊維16を除去することができるので、フォトリソグラフィ法によって、導電層51のパターニングを行ってもよい。
【0199】
<<転写による導電性フィルムの製造方法>>
導電性フィルムは、転写法によって製造されてもよい。転写による製造方法は、従来から知られた方法の一つであるが、一般に離型フィルムを廃棄することになるので、多少コスト上昇となる場合がある。一方、フレキシブル性を向上させるためには、厚みが75μm以下の薄い光透過性基材を用いることが好ましいが、例えば、厚みが35μm以下、特に5μm以上18μm以下のような極めて薄い光透過性基材に直接コーティングする場合よりも、転写法を用いた方が安定生産できる場合もあり、転写法はフレキシブル性を重要視する製品においては、有効な製法の一つである。
【0200】
転写法によって導電性フィルムを製造する際には、まず、
図16(A)に示されるように離型フィルム63の未処理面に導電部用組成物を塗布して、塗膜64を形成する。なお、離型フィルム63は、最終的には導電性フィルムから剥離されるものであるので、導電性フィルムの一部を構成するものではない。
【0201】
<離型フィルム>
離型フィルム63は、導電部12から剥離することによって、導電部12を他の部材に転写するためのものである。離型フィルム63は、光透過性であってもよいが、他の部材に導電部12を転写した後に、離型フィルム63は剥離されるので、光透過性でなくともよい。
【0202】
離型フィルム63の厚みは、特に限定されないが、25μm以上100μm以下とすることが好ましい。離型フィルム63の厚みが25μm以上であれば、電離放射線によって導電部を硬化した際に導電部12の硬化収縮の影響を抑制でき、離型フィルム63に強い皺が発生するのを抑制できる。また、離型フィルム63の厚みが100μm以下であれば、製造コストを低減することができる。
【0203】
離型フィルム63としては、特に限定されないが、例えば、少なくとも片面が未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられる。この場合、ポリエチレンテレフタレートフィルムの未処理側の面が剥離面として用いられる。少なくとも片面が未処理のポリエチレンテレフタレートフィルムは、導電部との離型性に優れる他、安価であるため本実施形態の積層体の製造コストを低く抑えることが可能となる。例えば、上記離型フィルムとして、ケイ素原子を含有するSi系の離型剤等が塗布されている離型フィルムを使用すると、該離型フィルムの剥離性は良好である一方で、導電部の転写時に離型剤の成分が導電部側に転写されてしまい、導電部の表面の凹凸が大きくなるとともに、導電部の表面における水に対する接触角が上昇してしまうことがある。これに対し、離型フィルムとして、少なくとも片面が未処理のポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すると、導電部の転写時に導電部に転写される成分がないため、導電部の表面の凹凸が小さく、また転写後の導電部の表面において水の接触角の変化が生じにくい。本明細書において、「少なくとも片面が未処理のポリエチレンテレフタレートフィルム」とは、表面処理がされていない面を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを意味する。したがって、少なくとも片面が未処理のポリエチレンテレフタレートフィルムの未処理側の面には、剥離性を高めるための離型剤は存在していない。
【0204】
<導電部用組成物>
導電部用組成物は、導電性繊維15、異種繊維16および重合性化合物を含んでいる。ただし、導電部用組成物は、異種繊維16を含んでいなくともよい。重合性化合物としては、光透過性機能層13の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。導電部用組成物は、その他、溶剤や重合開始剤を含んでいてもよい。
【0205】
導電部用組成物の塗膜64を形成した後、
図16(B)に示されるように塗膜64に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜64を硬化させて、導電部12を形成する。これにより、離型フィルム61上に導電部12を有する転写フィルムを得る。
【0206】
一方で、光透過性基材11の第2の面11Bに光透過性機能層用組成物を塗布し、乾燥させて、光透過性機能層用組成物の塗膜61を形成する。
【0207】
次いで、塗膜61に紫外線等の電離放射線を照射し、または加熱して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜61を硬化させて、光透過性機能層13を形成する。これにより、光透過性基材11上に光透過性機能層13を有する被転写フィルムを得る。
【0208】
得られた転写フィルム65における導電部12の表面12Aと、被転写フィルム66における光透過性機能層13の表面13Aとが合わさるように転写フィルム65と被転写フィルム66を積層した状態(
図17(A)参照)で、転写フィルム65側から紫外線等の電離放射線を照射して(
図17(B)参照)、導電部12と光透過性機能層13とを接合する。なお、電離放射線の照射は、被転写フィルム66側から行ってもよい。その後、転写フィルム65の離型フィルム63を剥離して(
図17(C)参照)、被転写フィルム66に導電部12が転写された導電性フィルムを得る。
【0209】
本発明者らは、ミルキネスの問題に関して、鋭意研究を重ねたところ、導電部の拡散光反射率を0.5%まで低下させれば、ミルキネスが抑制できることを見出した。本実施形態によれば、導電性フィルム10の導電部12が存在する領域における拡散光反射率(SCE)が、0.5%以下となっているので、ミルキネスを抑制することができる。なお、導電性フィルム30、40、50も、導電性フィルム30、40、50の導電部12、32、52が存在する領域における拡散光反射率(SCE)が、0.5%以下となっているので、ミルキネスを抑制することができる。
【0210】
導電性繊維はLEDからの光で特に反射しやすいので、光源としてLED素子を用いたLED画像表示装置に導電性繊維を含む導電性フィルムを用いると、ミルキネスが生じやすいが、導電性フィルム10、30、40、50おいては、ミルキネスを抑制することができるので、導電性フィルム10は、LED画像表示装置に好適に用いることができる。
【0211】
本実施形態によれば、導電性繊維15を用いているので、ITOとは異なり、屈曲させたとしても割れ難い導電性フィルム10を提供することができる。ただし、単純に導電性繊維15を用いれば、全て良好とはいえない場合があった。上述したように、光透過性基材に用いる樹脂系、厚みや固体状態のときの内部構造(結晶性、非結晶性、分子配向など)や導電性フィルムの厚みといった様々な要件のバランスを制御することが、例えば、10万回以上の折り畳み試験後も、電気抵抗比、ミルキネス、皺、フレキシブル性を良好に出来ることができる。さらに、屈曲性を付与させるには従来最適とされているポリイミド系樹脂、アミド系樹脂の透明性基材であっても、上述した要件の制御をすることで、フレキシブル性を向上させた導電性フィルム10を提供できる。このため、導電性フィルム10を折り畳み可能(フォルダブル)な画像表示装置にも組み込んで使用することも可能である。
【0212】
本実施形態に係る導電性フィルムの用途は特に限定されないが、タッチパネルを備える画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。
図18は本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図であり、
図19は本実施形態に係るタッチパネルの模式的な平面図である。
【0213】
<<<画像表示装置>>>
図18に示されるように、画像表示装置70は、主に、画像を表示するための表示パネル80と、表示パネル80の背面側に配置されたバックライト装置90と、表示パネル80よりも観察者側に配置されたタッチパネル100と、表示パネル80とタッチパネル100との間に介在した光透過性接着層120とを備えている。本実施形態においては、表示パネル80が液晶表示パネルであるので、画像表示装置70がバックライト装置90を備えているが、表示パネル(表示素子)の種類によってはバックライト装置90を備えていなくともよい。また、画像表示装置は、例えば、偏光サングラスによる視認性の低下を抑制するためフィルムをさらに備えていてもよい。
【0214】
<<表示パネル>>
表示パネル80は、
図18に示されるように、バックライト装置90側から観察者側に向けて、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)やシクロオレフィンポリマーフィルム等の保護フィルム81、偏光子82、保護フィルム83、光透過性粘着層84、表示素子85、光透過性粘着層86、保護フィルム87、偏光子88、保護フィルム89の順に積層された構造を有している。表示パネル80は、表示素子85を備えていればよく、保護フィルム81等は備えていなくともよい。
【0215】
表示素子85は液晶表示素子である。ただし、表示素子85は液晶表示素子に限られず、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、無機発光ダイオード、および/または量子ドット発光ダイオード(QLED)を用いた表示素子であってもよい。液晶表示素子は、2枚のガラス基材間に、液晶層、配向膜、電極層、カラーフィルタ等を配置したものである。
【0216】
<<バックライト装置>>
バックライト装置90は、表示パネル80の背面側から表示パネル80を照明するものである。バックライト装置90としては、公知のバックライト装置を用いることができ、またバックライト装置90はエッジライト型や直下型のバックライト装置のいずれであってもよい。
【0217】
<<タッチパネル>>
タッチパネル100は、導電性フィルム110と、導電性フィルム110より観察者側に配置された導電性フィルム50と、導電性フィルム50より観察者側に配置されたカバーガラス等の光透過性カバー部材101と、導電性フィルム10と導電性フィルム50との間に介在した光透過性粘着層102と、導電性フィルム50と光透過性カバー部材101との間に介在した光透過性粘着層103とを備えている。
【0218】
<導電性フィルム>
導電性フィルム110は、導電性フィルム50とほぼ同様の構造となっている。すなわち、導電性フィルム110は、
図18に示されるように、光透過性基材111と、光透過性基材111の第1の面側に設けられた導電層112と、光透過性基材の第2の面側に設けられた光透過性機能層113とを備えている。導電層112は、複数の導電部114と、導電部114間に位置する非導電部115とから構成されている。光透過性基材111は光透過性基材11と同様のものであり、また光透過性機能層113は光透過性機能層13と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0219】
(導電部および非導電部)
導電部114は導電部52と同様の構造になっており、非導電部115は非導電部532と同様の構造となっている。導電部114は、投影型静電容量方式のタッチパネルにおけるY方向の電極として機能するものであり、
図19に示されるように、複数のセンサー部114Bと、各センサー部114Bに連結した端子部(図示せず)とを備えている。センサー部114Bは、センサー部52Bと同様の構造になっているので、直線状に延びるライン部114Cと、ライン部114Cから膨出した膨出部114Dとを有している。センサー114Bは、Y方向に延びている。なお、導電部114は、導電部52と同様の構造になっているが、導電部114は必ずしも、導電部52と同様の構造になっていなくともよい。
【実施例0220】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
【0221】
<ハードコート層用組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物1を得た。
(ハードコート層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(商品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):30質量部
・重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):1.5質量部
・メチルエチルケトン(MEK):50質量部
・シクロヘキサノン:18.5質量部
【0222】
<銀ナノワイヤ分散液の調製>
(銀ナノワイヤ分散液1)
アルコール溶媒としてエチレングリコール、銀化合物として硝酸銀、塩化物として塩化ナトリウム、臭化物として臭化ナトリウム、アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウム、アルミニウム塩として硝酸アルミニウム九水和物、有機保護剤としてビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマー(ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%でコポリマー作成、重量平均分子量130,000)を用意した。
【0223】
室温にて、エチレングリコール540g中に、塩化ナトリウム0.041g、臭化ナトリウム0.0072g、水酸化ナトリウム0.0506g、硝酸アルミニウム九水和物0.0416g、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイトのコポリマー5.24gを添加して溶解させ、溶液Aをとした。これとは別の容器中で、エチレングリコール20g中に硝酸銀4.25gを添加して溶解させ、溶液Bとした。この例では、Al/OHモル比は0.0876、OH/Agモル比は0.0506であった。
【0224】
溶液Aの全量を常温から115℃まで撹拌しながら昇温したのち、溶液A中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、さらに撹拌状態を維持して115℃で24時間保持した。その後、反応液を室温まで冷却した。冷却後に、反応液にアセトンを反応液の10倍量添加し、10分撹拌後に24時間静置を行った。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を、ピペットにて丁寧に除去し、濃縮物を得た。
【0225】
得られた濃縮物に500gの純水を添加し、10分撹拌を行い、濃縮物を分散させた後、さらにアセトンを10倍量添加し、さらに撹拌後に24時間静置を行った。静置後、新たに濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を、ピペットにて丁寧に除去を行った。過剰な有機保護剤は良好な導電性を得るためには不要なものであるため、この洗浄操作を必要に応じて1~20回程度行い、固形分を十分に洗浄した。
【0226】
洗浄後の固形分に純水を加えてこの固形分の分散液を得た。この分散液を分取し、溶媒の純水を観察台上で揮発させたのち高分解能FE-SEM(高分解能電界放出形走査電子顕微鏡)により観察した結果、固形分は銀ナノワイヤであることが確認された。
【0227】
上記洗浄後の銀ナノワイヤに、イソプロピルアルコールを添加して銀ナノワイヤ分散液1を得た。銀ナノワイヤ分散液1中における銀ナノワイヤの平均繊維径および平均繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの平均繊維径は45nmであり、平均繊維長は15μmであった。また、銀ナノワイヤ分散液1中の銀ナノワイヤの濃度は、1.5mg/mlであった。
【0228】
銀ナノワイヤの平均繊維径は、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H-7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めた。上記繊維径の測定の際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」とした。また、銀ナノワイヤの平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、500~2000万倍にて100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の中で、最大値と最小値を除いた98本の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA」、SE検出器を「混合」とした。銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の中で、最大値と最小値を除いた98本の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にした。なお、TE検出器は予め抜いておいた。銀ナノワイヤの繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ分散液1を、分散媒に合わせてエタノールで銀ナノワイヤの濃度を0.05質量%以下に希釈した。さらに、この希釈した銀ナノワイヤ分散液1をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ(Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」)上に1滴滴下し、室温で乾燥させ、上記条件で観察し、観察画像データとした。これを元に算術平均値を求めた。銀ナノワイヤの繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ分散液1をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に銀ナノワイヤの塗布量が10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製した。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出した。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付けた。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタして、導通を得た。なお、以下の銀ナノワイヤの繊維径および繊維長も同様にして求めた。
【0229】
(銀ナノワイヤ分散液2)
合成条件や添加剤を調整して、平均繊維径35nmおよび平均繊維長15μmの銀ナノワイヤを得たこと以外は、銀ナノワイヤ分散液1と同様にして、銀ナノワイヤ分散液2を得た。
【0230】
(銀ナノワイヤ分散液3)
合成条件や添加剤を調整して、平均繊維径30nmおよび平均繊維長15μmの銀ナノワイヤを得たこと以外は、銀ナノワイヤ分散液1と同様にして、銀ナノワイヤ分散液3を得た。
【0231】
(銀ナノワイヤ分散液4)
合成条件や添加剤を調整して、平均繊維径28nmおよび平均繊維長15μmの銀ナノワイヤを得たこと以外は、銀ナノワイヤ分散液1と同様にして、銀ナノワイヤ分散液4を得た。
【0232】
(銀ナノワイヤ分散液5)
合成条件や添加剤を調整して、平均繊維径25nmおよび平均繊維長15μmの銀ナノワイヤを得たこと以外は、銀ナノワイヤ分散液1と同様にして、銀ナノワイヤ分散液5を得た。
【0233】
(銀ナノワイヤ分散液6)
合成条件や添加剤を調整して、平均繊維径23nmおよび平均繊維長15μmの銀ナノワイヤを得たこと以外は、銀ナノワイヤ分散液1と同様にして、銀ナノワイヤ分散液6を得た。
【0234】
(銀ナノワイヤ分散液7)
合成条件や添加剤を調整して、平均繊維径19nmおよび平均繊維長15μmの銀ナノワイヤを得たこと以外は、銀ナノワイヤ分散液1と同様にして、銀ナノワイヤ分散液7を得た。
【0235】
(銀ナノワイヤ分散液8)
銀ナノワイヤの濃度を1.125mg/mlとしたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液5と同様にして、銀ナノワイヤ分散液8を得た。
【0236】
(銀ナノワイヤ分散液9)
銀ナノワイヤの濃度を0.75mg/mlとしたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液5と同様にして、銀ナノワイヤ分散液9を得た。
【0237】
(銀ナノワイヤ分散液10)
銀ナノワイヤの濃度を0.3mg/mlとしたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液5と同様にして、銀ナノワイヤ分散液10を得た。
【0238】
(銀ナノワイヤ分散液11)
まず、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム二水和物(ロンガリット)122gと、数平均分子量が40000のポリビニルピロリジノン12.5gとを少量の純水に溶解し、この水溶液にさらに純水を加え、全容量を500mLとした。次いで、この水溶液に2-ジエチルアミノエタノール72gを添加し、水溶液Aを調整した。一方、塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)95gを少量の純水に溶解し、この水溶液にさらに純水を加えて全容量を500mLとし、水溶液Bを調整した。
【0239】
次いで、水溶液Aを攪拌しながら60℃に加熱し、この60℃の水溶液Aに水溶液Bをゆっくり添加し、さらに60℃にて2時間、攪拌しながら保持し、黒色のコロイド分散液を得た。このコロイド分散液を、限外ろ過膜にてろ液の電気伝導度が133μS/cmになるまで洗浄し、固形分の分散液を得た。
【0240】
得られた固形分の結晶構造をX線回折(XRD)により測定したところ、固形分は面心立方(face-centered cubic structure)の結晶構造を有するニッケルナノワイヤであることが確認された。
【0241】
得られたニッケルナノワイヤ分散液中における銀ナノワイヤの平均繊維径および平均繊維長を測定したところ、ニッケルナノワイヤの平均繊維径は80nmであり、平均繊維長は2.4μmであった。また、ニッケルナノワイヤ分散液は黒色を呈し、またニッケルナノワイヤ分散液からニッケルナノワイヤを取り出して観察したところニッケルナノワイヤは黒色を呈していた。
【0242】
そして、得られたニッケルナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤとニッケルナノワイヤの重量比が90:10となるように銀ナノワイヤ分散液5に加えて、銀ナノワイヤとニッケルナノワイヤが分散した銀ナノワイヤ分散液11を得た。
【0243】
(銀ナノワイヤ分散液12)
ニッケルナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤとニッケルナノワイヤの重量比が80:20となるように銀ナノワイヤ分散液5に加えたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液11と同様にして、銀ナノワイヤ分散液12を得た。
【0244】
(銀ナノワイヤ分散液13)
ニッケルナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤとニッケルナノワイヤの重量比が60:40となるように銀ナノワイヤ分散液5に加えたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液11と同様にして、銀ナノワイヤ分散液13を得た。
【0245】
(銀ナノワイヤ分散液14)
ニッケルナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤとニッケルナノワイヤの重量比が90:10となるように銀ナノワイヤ分散液7に加えたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液11と同様にして、銀ナノワイヤ分散液14を得た。
【0246】
(銀ナノワイヤ分散液15)
ニッケルナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤとニッケルナノワイヤの重量比が80:20となるように銀ナノワイヤ分散液7に加えたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液11と同様にして、銀ナノワイヤ分散液15を得た。
【0247】
(銀ナノワイヤ分散液16)
ニッケルナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤとニッケルナノワイヤの重量比が60:40となるように銀ナノワイヤ分散液7に加えたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液11と同様にして、銀ナノワイヤ分散液16を得た。
【0248】
(銀ナノワイヤ分散液17)
まず、銀ナノワイヤ分散液5を得るとともに、別途銀ナノワイヤ分散液5の製造過程で形成される濃縮物を得た。そして、この濃縮物を、金属黒化処理液として、二酸化テルル0.25重量%(テルル濃度として0.2重量%)、塩酸0.45重量%、硫酸20重量%の水溶液に、処理温度25℃条件下、30秒間浸漬し、濃縮物の表面に塩化テルル(TeCl2)を含む皮膜を形成した。
【0249】
得られた皮膜を有する濃縮物を取り出した後、500gの純水を添加し、10分撹拌を行い、この濃縮物を分散させた後、さらにアセトンを10倍量添加し、さらに撹拌後に24時間静置を行った。静置後、新たに濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を、ピペットにて丁寧に除去を行った。過剰な有機保護剤は良好な導電性を得るためには不要なものであるため、この洗浄操作を必要に応じて1~20回程度行い、固形分である皮膜を有する銀ナノワイヤを十分に洗浄した。
【0250】
上記洗浄後の皮膜を有する銀ナノワイヤに、イソプロピルアルコールを添加して皮膜形成銀ナノワイヤ分散液を得た。皮膜形成銀ナノワイヤ分散液中における皮膜形成銀ナノワイヤの平均繊維径および平均繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの平均繊維径は25nmであり、平均繊維長は15μmであった。また、皮膜形成銀ナノワイヤ分散液は黒色を呈し、また皮膜形成銀ナノワイヤ分散液から皮膜形成銀ナノワイヤを取り出して観察したところ、皮膜形成銀ナノワイヤの表面は黒色を呈していた。
【0251】
皮膜形成銀ナノワイヤ分散液を得た後、皮膜形成銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤと皮膜形成銀ナノワイヤの重量比が90:10となるように銀ナノワイヤ分散液5に加えて、銀ナノワイヤ分散液17を得た。
【0252】
(銀ナノワイヤ分散液18)
皮膜形成銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤと皮膜形成銀ナノワイヤの重量比が80:20となるように銀ナノワイヤ分散液5に加えたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液17と同様にして、銀ナノワイヤ分散液18を得た。
【0253】
(銀ナノワイヤ分散液19)
皮膜形成銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤと皮膜形成銀ナノワイヤの重量比が60:40となるように銀ナノワイヤ分散液5に加えたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液17と同様にして、銀ナノワイヤ分散液19を得た。
【0254】
(銀ナノワイヤ分散液20)
カーボンナノチューブ分散液(商品名「REC-SM-29」、レジノカラー工業社製、固形分6.0質量%、カーボンナノチューブ濃度2.0質量%)を、銀ナノワイヤとカーボンナノチューブの重量比が99:1となるように銀ナノワイヤ分散液5に加えて、銀ナノワイヤ分散液20を得た。
【0255】
(銀ナノワイヤ分散液21)
カーボンナノチューブ分散液を、銀ナノワイヤとカーボンナノチューブの重量比が96:4となるように銀ナノワイヤ分散液5に加えたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液21と同様にして、銀ナノワイヤ分散液21を得た。
【0256】
(銀ナノワイヤ分散液22)
カーボンナノチューブ分散液を、銀ナノワイヤとカーボンナノチューブの重量比が90:10となるように銀ナノワイヤ分散液5に加えたこと以外は、銀ナノワイヤ分散液21と同様にして、銀ナノワイヤ分散液22を得た。
【0257】
(銀ナノワイヤ分散液23)
還元剤としてエチレングリコール(EG)を、形態制御剤兼保護コロイド剤としてポリビニルピロリドン(PVP:PVP:平均分子量130万、アルドリッチ社製)を使用し、下記に示した核形成工程と粒子成長工程とを分離して粒子形成を行い、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
【0258】
(核形成工程)
反応容器内で160℃に保持したEG液100mLを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0モル/L)2.0mLを、一定の流量で1分間かけて添加した。
その後、160℃で10分間保持しながら銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことを確認した。続いて、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)10.0mLを一定の流量で10分間かけて添加した。
【0259】
(粒子成長工程)
上記核形成工程を終了した後の核粒子を含む反応液を、攪拌しながら160℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10-1モル/L)100mLと、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)100mLを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で120分間かけて添加した。本粒子成長工程において、30分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤ状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。最終的に得られた銀ナノワイヤについて、電子顕微鏡写真を撮影し、300個の銀ナノワイヤ粒子像の長軸方向及び短軸方向の粒径を測定して算術平均を求めた。短軸方向の平均粒径は19nm、長軸方向の平均長さは15μmであった。
【0260】
(脱塩水洗工程)
粒子形成工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施すとともに、溶媒をエタノールに置換した。最後に液量を100mLまで濃縮して銀ナノワイヤ分散液を調製した。
【0261】
得られた銀ナノワイヤ分散液に、KAYARAD PET-30(日本化薬株式会社製)と、重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製)と希釈溶剤とを加え、銀ナノワイヤ濃度が0.1質量%となり、PET-30が0.1質量%となり、イルガキュア184がPET-30の5%となるように配合し、導電部用組成物として用いることができる銀ナノワイヤ分散液23を調製した。なお、希釈溶剤の30質量%はシクロヘキサノンとした。
【0262】
<光透過性樹脂用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光透過性樹脂用組成物1を得た。
(光透過性樹脂用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(商品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬社製):5質量部
・重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):0.25質量部
・メチルエチルケトン(MEK):70質量部
・シクロヘキサノン:24.75質量部
【0263】
<例1>
まず、光透過性基材としての片面に下地層を有する厚さ48μmおよび面内位相差2000nmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)を準備し、このポリエチレンテレフタレートフィルムの下地層側に、ハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、光透過性機能層としての膜厚2μmのハードコート層を形成した。
【0264】
ハードコート層を形成した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおけるハードコート層が形成された面と反対側の未処理面上に、銀ナノワイヤ分散液1を20mg/m2になるように塗布して、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で40℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに15m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、塗膜を硬化させることにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、銀ナノワイヤを配置させた。
【0265】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの導電部を備える導電性フィルムを得た。なお、例1に係る導電部は、パターニングされていない層状のものであった。
【0266】
例1に係る導電部の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影された導電部の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの算術平均値とした。具体的な断面写真の撮影は、以下の方法によって行われた。まず、導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製した。詳細には、2mm×5mmに切り出した導電性フィルムをシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させた。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製した。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、STEM用サンプルとした。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影した。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を30kV、エミッションを「10μA」にした。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節した。好ましい倍率は、1万倍~5万倍、更に好ましくは2.5万倍~4万倍である。倍率を上げすぎると層界面の画素が粗くなりわかりにくくなるため、膜厚測定においては倍率を上げすぎない方がよい。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、ビームモニタ絞りを3にし、対物レンズ絞りを3にし、またW.D.を8mmにした。例1のみならず、以降の例も全て、導電部の膜厚はこの方法によって測定された。
【0267】
例1で用いられたポリエチレンテレフタレート系基材の面内位相差は、位相差フィルム・光学材料検査装置(製品名「RETS-100」、大塚電子株式会社製)を用いて測定した。具体的には、まず、50mm×50mmの大きさに切り出したポリエチレンテレフタレート系基材を上記装置に設置した。そして、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、入射角0°の波長589nmの位相差値を測定し、これを面内位相差Reとした。なお、面内位相差値Reは、測定位置を少しずつずらし、合計5点測定し、最大値と最小値を除いた3点の位相差値の算術平均値とした。
【0268】
<例2~例7>
例2~例7においては、銀ナノワイヤ分散液1の代わりに表1に示される銀ナノワイヤ分散液を用いたこと以外は、例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
<例8>
例8においては、銀ナノワイヤの塗布量が15mg/m2となるように銀ナノワイヤ分散液8を塗布したこと以外は、例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0269】
<例9>
例9においては、銀ナノワイヤの塗布量が10mg/m2となるように銀ナノワイヤ分散液9を塗布したこと以外は、例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0270】
<例10>
例10においては、銀ナノワイヤの塗布量が4mg/m2となるように銀ナノワイヤ分散液10を塗布したこと以外は、例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0271】
<例11~例22>
例11~例22においては、銀ナノワイヤ分散液1の代わりに表1に示される銀ナノワイヤ分散液を用いたこと以外は、例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0272】
<例23>
例23においては、厚さ48μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)の代わりに、厚さ38μmおよび面内位相差1510nmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)を用いたこと以外は、例7と同様に導電性フィルムを得た。
【0273】
<例24>
例24においては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)の代わりに、以下の方法によって製造された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は、例7と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0274】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を押出機によって約280℃で押し出し、表面温度30℃のキャスティングロールに接触させて、冷却固化して、未延伸シートを形成した。その後、未延伸シートを115℃で長手方向に延伸倍率が2.9倍となり、幅方向に延伸倍率が3.1倍となるように延伸させた。延伸されたシートを200℃で30秒間熱固定してポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0275】
<例25>
例25においては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)の代わりに、以下の方法によって製造された厚さ15μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は、例7と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0276】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を押出機によって約280℃で押し出し、表面温度30℃のキャスティングロールに接触させて、冷却固化して、未延伸シートを形成した。その後、未延伸シートを115℃で長手方向に延伸倍率が3.0倍となり、幅方向に延伸倍率が3.2倍となるように延伸させた。延伸されたシートを200℃で30秒間熱固定してポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0277】
<例26>
例26においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ60μmのポリイミドフィルム(商品名「ネオプリム(登録商標)」、三菱ガス化学株式会社製)を用いたこと以外は、例7と同様にして、導電性フィルムを得た。なお、上記ネオプリム(登録商標)は、ポリイミドフィルムとして市販されているものであった。
【0278】
<例27>
例27においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ20μmのポリイミドフィルム(商品名「ネオプリム(登録商標)」、三菱ガス化学株式会社製)を用いたこと以外は、例7と同様にして、導電性フィルムを得た。なお、上記ネオプリム(登録商標)は、ポリイミドフィルムとして市販されているものであった。
【0279】
<例28>
(転写フィルムの作製)
離型フィルムとして、厚さ48μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)を用い、このポリエステルフィルムの未処理面に、銀ナノワイヤ分散液23を20mg/m2となるよう塗布して塗膜を形成し、70℃で1分乾燥後、積算光量が50mJ/cm2で紫外線照射を行い、導電性層を形成し、転写フィルムを作製した。
【0280】
(被転写フィルムの作製)
まず、光透過性基材として、厚さ15μmおよび面内位相差630nmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、以下の方法によって製造された。まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂を押出機によって約280℃で押し出し、表面温度30℃のキャスティングロールに接触させて、冷却固化して、未延伸シートを形成した。その後、未延伸シートを125℃で長手方向に延伸倍率が3.5倍となり、幅方向に延伸倍率が4.0倍となるように延伸させた。延伸されたシートを200℃で30秒間熱固定してポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0281】
このポリエチレンテレフタレートフィルムの下地層に、ハードコート層用組成物1を乾燥後の厚みが0.7μmとなるように塗布して塗膜を形成し、該塗膜を70℃で1分乾燥させ、基材フィルム上にハードコート層が形成された被転写フィルムを作製した。
【0282】
得られた転写フィルムにおける導電部の表面と、被転写フィルムにおけるハードコート層の表面とが合わさるように積層した状態で、転写フィルム側から積算光量が600mJ/cm2となるように紫外線を照射した。その後、転写フィルムの離型フィルムを剥離して、被転写フィルムに導電部が転写された導電性フィルムを得た。
【0283】
<参考例1>
参考例1として、導電部をITO膜から形成した導電性フィルムを得た。参考例1においては、導電部をITO膜から形成したこと以外は、例1と同様にして、導電性フィルムを得た。ITO膜の膜厚は25nmであった。ITO層は、ターゲットを用いたスパッタ法によって形成された。
【0284】
<参考例2>
参考例2として、導電部をITO膜から形成した導電性フィルムを得た。参考例2においては、参考例1とは異なるターゲットを用いたこと以外、参考例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0285】
<拡散光反射率(SCE)測定>
例1~例28および参考例1、2に係る導電性フィルムにおいて、導電部が存在する領域における拡散光反射率を測定した。具体的には、まず、例1~例28および参考例1、2に係る導電性フィルムを100mm×100mmの大きさに切り出すとともに、大きさ100mm×100mmの粘着フィルム(商品名「パナクリーン」、パナック株式会社製、屈折率1.49)および大きさ100mm×100mmの黒色アクリル板(商品名「コモグラス」、株式会社クラレ、DFA2CG 502K(黒)系、厚み2mm、全光線透過率0%、屈折率1.49)を用意した。そして、黒色アクリル板、粘着フィルム、および上記大きさに切り出した導電性フィルムをこの順に積層した積層体を得た。なお、導電性フィルムは黒色アクリル板よりも上側となり、また導電部がポリエチレンテレフタレートフィルムよりも上側となるように配置された。そして、導電性フィルムの導電部側から分光測色計(製品名「CM-600d」、コニカミノルタ株式会社、測定口φ11mm)を用いて、以下の測定条件で拡散光反射率を測定した。拡散光反射率は、積層体1枚に対し3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とした。拡散光反射率の測定の際には、導電性フィルムの中央部にCM-600dを載せた状態で測定ボタンを押して測定した。なお、例7、23~27に係る導電性フィルムにおいては、後述する折り畳み試験(φ3mm、10万回)後の導電性フィルムにおいても、拡散光反射率を測定し、折り畳み試験前後の拡散光反射率の差(折り畳み試験後の拡散光反射率-折り畳み試験前の拡散光反射率)を求めた。
(測定条件)
・主光源:D65
・光源2:無し
・視野:2度
・表色系:Yxy
・色差式:ΔE*ab
・温度:23℃
・相対湿度:50%
【0286】
<表面抵抗値測定>
例1~例28および参考例1、2に係る導電性フィルムにおいて、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP-T370型」、株式会社三菱化学アナリテック製、端子形状:ASPプローブ)を用いて、導電部の表面抵抗値を測定した。接触式の抵抗率計による表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となり、かつ導電性フィルムが均一な平面状態となるように配置して、ASPプローブを導電部の中心に配置し、全ての電極ピンを導電部に均一に押し当てることによって行った。接触式の抵抗率計による測定の際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択した。その後は、スタートボタンを押し、ホールドして、測定結果を得た。表面抵抗値の測定箇所は、導電性フィルムの中心部の5箇所とし、表面抵抗値は5箇所中、最大値と最小値を除いた3箇所の表面抵抗値の算術平均値とした。表面抵抗値の測定は、23℃および相対湿度55%の環境下で行った。
【0287】
<ヘイズ値測定>
例1~例28および参考例1、2に係る導電性フィルムにおいて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、JIS K7136:2000に従って導電性フィルムのヘイズ値(全ヘイズ値)を測定した。ヘイズ値は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で、例1~例28および参考例1、2に係る導電性フィルムにおいては導電部側が非光源側となるように設置して測定された。ヘイズ値は、導電性フィルム1枚に対して5回測定し、最大値と最小値を除いた3回測定して得られた値の算術平均値とした。
【0288】
<目標表面抵抗値評価>
例1~例28および参考例1、2に係る導電性フィルムにおいて、目標とする表面抵抗値が得られているか評価した。評価基準は、以下の通りとした。
◎:表面抵抗値が60Ω/□以下であった。
○:表面抵抗値が60Ω/□を超え80Ω/□以下であった。
△:表面抵抗値が80Ω/□を超え150Ω/□以下であった。
×:表面抵抗値が150Ω/□を越えていた。
【0289】
<ミルキネス評価>
例1~例28および参考例1、2に係る導電性フィルムにおいて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、外観を観察して、導電部の表面にミルキネスが生じているか否かを確認した。具体的には、導電性フィルムを100mm×100mmの大きさに切り出すとともに、大きさ100mm×100mmの粘着フィルム(商品名「パナクリーン」、パナック株式会社製、屈折率1.49)および大きさ100mm×100mmの黒色アクリル板(商品名「コモグラス」、株式会社クラレ、DFA2CG 502K(黒)系、厚み2mm、全光線透過率0%、屈折率1.49)を用意した。そして、黒色アクリル板、粘着フィルム、および上記大きさに切り出した導電性フィルムをこの順に積層した積層体を得た。なお、導電性フィルムは黒色アクリル板よりも上側となり、また導電部がポリエチレンテレフタレートフィルムよりも上側となるように配置された。そして、導電性フィルムの導電部側から白色ランプ(2000~3000ルクス)を用いて反射光にて導電部の表面を満遍なく観察し、導電部の表面にミルキネスが生じているか否かを確認した。なお、例7、23~27に係る導電性フィルムにおいては、後述する折り畳み試験(φ3mm、10万回)後の導電性フィルムにおいても、導電部の表面にミルキネスが生じているか否かを確認した。評価基準は、以下の通りとした。
◎:ミルキネスが確認されなかった。
○:ミルキネスが若干確認されたが、実使用上問題のないレベルであった。
△:ミルキネスがある程度確認された。
×:ミルキネスが明確に確認された。
【0290】
<フレキシブル性評価>
(1)折り畳み試験(FD試験)前後の抵抗値評価
例7、23~27に係る導電性フィルムにおいて、折り畳み試験を行い、フレキシブル性を評価した。具体的には、まず、縦125mm×横50mmの長方形状のサンプルを導電性フィルムから1枚切り出した。導電性フィルムからサンプルを切り出した後、それぞれのサンプルの長手方向の表面の両端部の縦10mm×横50mmの部分に銀ペースト(商品名「DW-520H-14」、東洋紡社製)を塗布し、130℃で30分加熱して、両端部に硬化した銀ペーストが設けられたサンプルを得た。なお、両端部に硬化した銀ペーストが設けられたサンプルにおける電気抵抗値の測定距離は105mmとし、測定幅は50mmとした。そして、両端部に硬化した銀ペーストが設けられたサンプルの電気抵抗値をテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)を用いて、測定した。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454-11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を一方の端部に設けられた硬化した銀ペーストに接触させ、かつ黒色プローブ端子を他方の端部に設けられた硬化した銀ペーストに接触させて電気抵抗値を測定した。
【0291】
その後、折り畳み耐久試験機として、U字伸縮試験機(製品名「DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器株式会社製)に、この選択されたサンプルの短辺(50mm)側を固定部でそれぞれ固定し、
図4(C)に示したように対向する2つの辺部の最小の間隔が3mm(屈曲部の外径3.0mm)となるようにして取り付け、以下の条件で、このサンプルの導電部側の面を180°折り畳む試験(導電部が内側となり、基材が外側となるように折り畳む試験)を10万回行った。
(折り畳み条件)
・往復速度:80rpm(回毎分)
・試験ストローク:60mm
・屈曲角度:180°
【0292】
折り畳み試験を行った後、折り畳み試験後のサンプルにおいて、折り畳み試験前のサンプルと同様にして、導電部の表面の電気抵抗値を測定した。そして、選択された折り畳み試験前のサンプルの電気抵抗値に対する折り畳み試験後のサンプルの電気抵抗値の比である電気抵抗値比(選択された折り畳み試験後のサンプルの電気抵抗値/折り畳み試験前のサンプルの電気抵抗値)を求めた。また、実施例及び比較例に係る導電性フィルムから上記同様にして切り取られ、同様に電気抵抗値を測定することによって選択された新しいサンプルを、上記の耐久試験機に、上記と同様に取り付け、サンプルの基材側の面を180°折り畳む試験(導電部が外側となり、基材が内側となるように折り畳む試験)を10万回行い、同様にして、折り畳み試験後のサンプルの導電部の表面の電気抵抗値を測定して、電気抵抗値比を求めた。そして、折り畳み試験の結果を、以下の基準で評価した。なお、電気抵抗値比は、5回測定し、5回中、最大値と最小値を除いた3回の測定で得られた値の算術平均値とした。
◎:いずれの折り畳み試験においても、電気抵抗値比が1.5以下であった。
○:いずれの折り畳み試験においても、電気抵抗値比が1.5を超え、3以下であった。
×:いずれかの折り畳み試験において、電気抵抗値比が3を超えていた。
【0293】
また、同様に、例7、23~27に係る導電性フィルムから上記と同様のサンプルを作製し、サンプルの短辺側を固定部でそれぞれ固定し、対向する2つの辺部の最小の間隔φが3mm(屈曲部の外径3mm)となるようにして取り付け、導電部側が内側となるようにサンプルを20万回繰り返し180°折り畳む折り畳み試験を行い、同様にして、折り畳み試験後のサンプルの導電部の表面の電気抵抗値を測定して、電気抵抗値比を求めた。さらに、例24、25、27に係る導電性フィルムから上記と同様のサンプルを作製し、サンプルの短辺側を固定部でそれぞれ固定し、対向する2つの辺部の最小の間隔φが2mm(屈曲部の外径2mm)となるようにして取り付け、導電部側が内側となるようにサンプルを30万回繰り返し180°折り畳む折り畳み試験を行い、同様にして、折り畳み試験後のサンプルの導電部の表面の電気抵抗値を測定して、電気抵抗値比を求めた。さらに、参考のために、例7、23~27に係る導電性フィルムから上記と同様のサンプルを作製し、サンプルの短辺側を固定部でそれぞれ固定し、対向する2つの辺部の最小の間隔φが3mm(屈曲部の外径3mm)となるようにして取り付け、導電部側が内側となるようにサンプルを5万回繰り返し180°折り畳む折り畳み試験を行い、同様にして、折り畳み試験後のサンプルの導電部の表面の電気抵抗値を測定して、電気抵抗値比を求めた。そして、折り畳み試験の結果を、以下の基準で評価した。なお、電気抵抗値比は、5回測定し、5回中、最大値と最小値を除いた3回の測定で得られた値の算術平均値とした。
◎:電気抵抗値比が1.5以下であった。
○:電気抵抗値比が1.5を超え、3以下であった。
×:電気抵抗値比が3を超えていた。
【0294】
(2)折り畳み試験後の折り癖評価
例7、23~27に係る導電性フィルムにおいて、折り畳み試験後の外観を観察して、導電性フィルムの屈曲部に折り癖が生じているか評価した。折り畳み試験は、折り畳み試験前後の表面抵抗値評価の欄に記載されている方法によって行われた。折り癖の観察は、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、目視で行った。折り癖の観察の際には、白色照明の明室(800ルクス~2000ルクス)で、屈曲部を透過光および反射光によって満遍なく観察するともに、折り畳んだときに屈曲部における内側であった部分および外側であった部分を両方観察した。折り癖の観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、折り畳み試験前のサンプルを耐久試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、
図5に示したように、屈曲部における折り畳み方向に直交する方向に位置する両端に、屈曲部であることを示す目印を油性ペンで付けておいた。また、折り畳み試験後に、折り畳み試験後に耐久試験機から取り外した状態で、屈曲部の上記両端の目印同士を結んだ線を油性ペンで引いておいた。そして、折り癖の観察においては、屈曲部の上記両端の目印とこの目印同士を結ぶ線とで形成される領域である屈曲部全体を目視観察した。なお、折り畳み試験前における各導電性フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、折り癖は観察されなかった。評価基準は、以下の通りであった。
○:折り畳み試験後においても、導電性フィルムに折り癖が観察されなかった。
△:折り畳み試験後において、導電性フィルムに折り癖が若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
×:折り畳み試験後において、導電性フィルムに折り癖が明確に観察された。
【0295】
(3)折り畳み試験後のマイクロクラック評価
例7、23~27に係る導電性フィルムにおいて、折り畳み試験後の外観を観察して、導電性フィルムの屈曲部にマイクロクラックが生じているか評価した。折り畳み試験は、折り畳み試験前後の表面抵抗値評価の欄に記載されている方法によって行われた。マイクロクラックの観察は、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、デジタルマイクロスコープ(製品名「VHX-5000」、キーエンス株式会社製)を用いて行った。具体的には、まず、折り畳み試験後のサンプルをゆっくり広げ、マイクロスコープのステージにテープでサンプルを固定した。このとき、折り癖が強い場合には、観察部分がなるべく平らになるようにする。ただし、サンプルの中央付近の観察予定部(屈曲部)は手で触れず、力が加わらない程度する。次いで、折り畳んだときの内側となる部分および外側となる部分を両方観察した。マイクロクラックの観察は、デジタルマイクロスコープの照明としてリング照明を選択し、倍率200倍で、暗視野および反射光で行った。マイクロクラックの観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、折り畳み試験前のサンプルを耐久試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、
図5に示したように、屈曲部における折り畳み方向と直交する方向に位置する両端に、屈曲部であることを示す目印を油性ペンで付けておいた。また、折り畳み試験後に、折り畳み試験後に耐久試験機から取り外した状態で、屈曲部の上記両端の目印同士を結んだ線を油性ペンで引いておいた。そして、マイクロクラックの観察においては、マイクロスコープ視野範囲の中心が屈曲部の中央となるようにマイクロスコープの位置を合わせた。なお、折り畳み試験前における各導電性フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、マイクロクラックは観察されなかった。評価基準は、以下の通りであった。
(マイクロクラック)
○:折り畳み試験後においても、導電性フィルムにマイクロクラックが観察されなかった。
△:折り畳み試験後において、導電性フィルムにマイクロクラックが若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
×:折り畳み試験後において、導電性フィルムにマイクロクラックが明確に観察された。
【0296】
<面内位相差Re、Nz係数、Δnの測定>
例7、23~25に係る折り畳み試験前の導電性フィルムの面内位相差Re、Δn、Nz係数を位相差フィルム・光学材料検査装置(製品名「RETS-100」、大塚電子株式会社製)を用いて測定した。具体的には、以下の手順に従って測定した。
【0297】
まず、RETS-100の光源を安定させるため、光源をつけてから60分以上放置した。その後、回転検光子法を選択するとともに、θモード(角度方向位相差測定およびRth算出のモード)選択した。このθモードを選択することにより、ステージは傾斜回転ステージとなった。
【0298】
次いで、RETS-100に以下の測定条件を入力した。
(測定条件)
・リタデーション測定範囲:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲:-40°~40°
・測定波長範囲:400nm~800nm
・平均屈折率(PETの平均屈折率Nを1.617とした)
・厚み:SEMで別途測定した厚み
【0299】
次いで、この装置にサンプルを設置せずに、バックグラウンドデータを得た。装置は閉鎖系とし、光源を点灯させる毎にこれを実施した。
【0300】
その後、この装置内のステージ上にサンプルを設置した。サンプルは、導電性フィルムから50mm×50mmの長方形状に切り出したものを使用した。導電性フィルムは、導電性フィルムにおける導電部側の面が空気界面側とし、かつ光透過性基材側の面がステージ側となるように設置した。
【0301】
サンプルを設置した後、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、XY平面上でステージを360°回転させて、進相軸および遅相軸を測定した。測定終了後、遅相軸を選択し、その後、遅相軸を中心にステージが設定した角度範囲に傾きながら測定が行われ、10°刻みで、設定傾斜角度範囲および設定波長範囲のデータ(Re、Nz、Δn)が得られた。面内位相差Reは、入射角0°および波長589nmの光で測定したときの値とする。面内位相差値Reは、位置が異なる5点で測定した。具体的には、まず、
図6に示されるようにサンプルの中心を通る2本の直交する仮想線を引く。これらの仮想線を引くと、サンプルが4つの区画に分かれる。そして、各区画において中心から等距離にある1点ずつ合計4点を設定し、中心およびこれらの点の合計5点で測定した。そして、5点中、最大値と最小値を除いた3点分の算術平均値を面内位相差Reとした。
以下、結果を表1に示す。
【表1】
【0302】
【0303】
【0304】
表1に示されるように、拡散光反射率とミルキネスとは相関関係があり、具体的には拡散光反射率が0.5%以下であれば、ミルキネスが抑制されることが確認された。
【0305】
上記例においては、ポリエチレンテレフタレート系基材やポリイミド系フィルムの片面に導電部を形成していたが、ポリエチレンテレフタレート系基材やポリイミド系フィルムの両面に導電部を形成した場合も、上記例と同様の結果が得られた。
【0306】
上記折り畳み試験の折り畳み回数は、5万回では、フレキシブル性の差が分からない。このため、フレキシブル性を評価するためには、折り畳み試験の折り畳み回数は、少なくとも10万回は必要とされる。
【0307】
例28に係る導電性フィルムについても、フレキシブル性評価したところ、面内位相差も程良く低く、また導電性フィルム全体の厚みも薄いため、ほぼ例24に近い良好な結果が得られた。
【0308】
また、例7、例23~例25に係る導電性フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の結晶化度を測定したところ、例7で用いられたPETフィルムの結晶化度は51%であり、例23で用いられたPETフィルムの結晶化度は43%であり、例24で用いられたPETフィルムの結晶化度は45%であり、例25で用いられたPETフィルムの結晶化度は52%であった。なお、結晶化度は、光透過性基材の欄で説明した結晶化度の測定方法に基づいて求められた。
【0309】
なお、上記例1~例28の銀ナノワイヤの繊維径について、各導電性フィルムを以下のように走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、上記した組成物から求めた結果と比較し、1~2nm程度のズレはあったが、ほぼ同じであった。
【0310】
走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、1万倍~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を測定し、その100本中、最大値と最小値を除いた98本の導電性繊維の繊維径の算術平均値として求めた。繊維径を測定する際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にした。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は必ず抜いておく。上記S-4800は、STEM機能とSEM機能を選択できるが、上記繊維径の測定する際には、SEM機能を用いるものとした。