(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159113
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1368 20060101AFI20231024BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231024BHJP
G09F 9/35 20060101ALI20231024BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G02F1/1368
G09F9/30 348A
G09F9/35
H01L29/78 612D
H01L29/78 619A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124026
(22)【出願日】2023-07-31
(62)【分割の表示】P 2022093586の分割
【原出願日】2013-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2012161726
(32)【優先日】2012-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】横山 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】小森 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 学
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(57)【要約】
【課題】有機絶縁膜からの放出ガスによって、トランジスタの特性が変動することを抑制
し、表示装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】トランジスタと、該トランジスタ起因の凹凸を低減するために、トランジス
タ上に設けられる有機絶縁膜と、有機絶縁膜上の容量素子と、を有する。容量素子の構成
要素(透明導電層及び無機絶縁膜)によって、有機絶縁膜全面が覆われることがなく、有
機絶縁膜からの放出ガスが露出した有機絶縁膜の上面の一部から外部へと抜けることが可
能である構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、
前記トランジスタを覆う第1の無機絶縁膜と、
前記第1の無機絶縁膜上の有機絶縁膜と、
前記有機絶縁膜上の第1の透明導電層と、
前記第1の透明導電層上の第2の無機絶縁膜と、
前記第2の無機絶縁膜を介して少なくとも前記第1の透明導電層上に設けられ、前記有機絶縁膜及び前記第1の無機絶縁膜に形成された開口において、前記トランジスタのソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接続する第2の透明導電層と、
前記第2の透明導電層上の、液晶層と、を含む画素部を有し、
前記画素部において、前記第2の無機絶縁膜は、前記有機絶縁膜と重畳する領域に端部を有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、表示装置及び表示装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や、エレクトロルミネセンス(Electro Luminessence
:ELともいう)を利用した発光表示装置に代表されるフラットパネルディスプレイ等の
表示装置の多くに用いられているトランジスタは、ガラス基板上に形成された非晶質シリ
コン、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンなどの半導体を含んで構成されている。
【0003】
上記シリコン半導体に代わって、半導体特性を示す酸化物(以下酸化物半導体と呼ぶこと
にする)をトランジスタに用いる技術が注目されている。
【0004】
例えば、酸化物半導体として、In-Ga-Zn酸化物を用いてトランジスタを作製し、
該トランジスタを表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が開示されている
(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、酸化物半導体に水
素、水分等の不純物が入ることによってキャリアが生成され、トランジスタの電気特性が
変動する。
【0007】
そのため、表示装置内のトランジスタは、トランジスタ上に形成された有機絶縁膜から、
トランジスタの半導体層に水素、水分等の意図しない不純物が入り込んだ場合、半導体層
内のキャリア密度が増加することによってトランジスタの特性が変動する。
【0008】
また、トランジスタの特性が変動することによって、表示装置の表示品位が低下し、信頼
性が低下するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、表示装置に用いられるトランジスタの電気特性の変動を抑制
し、信頼性を向上させることを課題の一とする。また、トランジスタが用いられる表示装
置の表示品位の低下を抑制し、信頼性を向上させることを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
トランジスタと、該トランジスタ起因の凹凸を低減するために、トランジスタ上に設けら
れる有機絶縁膜と、有機絶縁膜上の容量素子と、を有する。容量素子の構成要素(透明導
電層及び無機絶縁膜)によって、有機絶縁膜全面が覆われない構成とすることで、有機絶
縁膜から放出されるガス(放出ガスともいう)が上方から該有機絶縁膜の外部へと抜ける
ことが可能である構成とする。
【0011】
したがって、本発明の一態様の表示装置は、トランジスタと、トランジスタを覆う第1の
無機絶縁膜と、第1の無機絶縁膜上の有機絶縁膜と、有機絶縁膜上の第1の透明導電層と
、第1の透明導電層上の第2の無機絶縁膜と、第2の無機絶縁膜を介して少なくとも第1
の透明導電層上に設けられ、有機絶縁膜及び第1の無機絶縁膜に形成された開口において
、トランジスタのソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接続する第2の透明導電
層と、第2の透明導電層上の、液晶層とを含む画素部を有し、画素部において第2の無機
絶縁膜は、有機絶縁膜と重畳する領域に端部を有する表示装置である。
【0012】
第2の無機絶縁膜の端部が有機絶縁膜と重畳する領域にあることによって、有機絶縁膜は
、第2の無機絶縁膜と重畳していない領域を有する。そのため、第2の無機絶縁膜と有機
絶縁膜が重畳せず、有機絶縁膜が露出した領域から有機絶縁膜の放出ガスが上方へ抜ける
構成とすることができる。
【0013】
また、上記構成において、有機絶縁膜と第2の無機絶縁膜とが重畳しない領域はトランジ
スタと重畳して設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様の表示装置は、トランジスタと、トランジスタを覆う第1の無機絶
縁膜と、第1の無機絶縁膜上の有機絶縁膜と、有機絶縁膜上の第1の透明導電層と、第1
の透明導電層上の第2の無機絶縁膜と、第2の無機絶縁膜を介して少なくとも第1の透明
導電層上に設けられ、有機絶縁膜及び第1の無機絶縁膜に形成された開口において、トラ
ンジスタのソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接続する第2の透明導電層と、
第2の透明導電層上の、液晶層と有し、液晶層と有機絶縁膜は少なくとも一部が接する表
示装置である。
【0015】
また、上記構成において、液晶層と有機絶縁膜はトランジスタと重畳する領域において接
していてもよい。
【0016】
また、トランジスタは酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタとしてもよい
。
【0017】
また、第1の無機絶縁膜及び第2の無機絶縁膜は窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン
膜であるとよい。
【0018】
また、有機絶縁膜はアクリルを含む膜であるとよい。アクリル等の有機樹脂を用いること
によって、容易に平坦な面を得ることができる。
【0019】
第2の無機絶縁膜と、第1の透明導電層または第2の透明導電層との屈折率の差は、第1
の透明導電層または第2の透明導電層の屈折率の10%以下、好ましくは5%以下である
とよい。また、有機絶縁膜と第1の透明導電層との間に、透明導電層の屈折率と有機絶縁
膜の屈折率の間の屈折率を有する膜を形成するとよい。
【0020】
また、液晶層は、第1の透明導電層及び第2の透明導電層間の電界に応じて配向が制御さ
れる表示装置である。
【0021】
また、第1の無機絶縁膜と第2の無機絶縁膜は少なくとも一部が接するとよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によって、表示装置に用いられるトランジスタの電気特性の変動を抑制し
、信頼性を向上させることができる。また、トランジスタが用いられる表示装置の表示品
位の低下を抑制し、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一態様の表示装置の上面図及び断面図。
【
図3】各質量電荷比における放出ガスのイオン強度を示す図。
【
図4】基板表面温度に対する各質量電荷比のイオン強度を示す図。
【
図5】本発明の一態様の表示装置の上面図及び断面図。
【
図6】本発明の一態様に係るイメージセンサの一例を示す回路図および断面図。
【
図7】本発明の一態様に係るタブレット型端末の一例を示す図。
【
図8】本発明の一態様に係る電子機器の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更しうることは、当業者であれば
容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈され
るものではない。
【0025】
以下に説明する実施の形態において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用い
る場合がある。なお、図面において示す構成要素、すなわち層や領域等の厚さ、幅、相対
的な位置関係等は、実施の形態において説明する上で明確性のため、誇張して示される場
合がある。
【0026】
なお、本明細書等において「上」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」であるこ
とを限定するものではない。例えば、「絶縁膜上のゲート電極層」の表現であれば、絶縁
膜とゲート電極層との間に他の構成要素を含むものを除外しない。「下」についても同様
である。
【0027】
また、本明細書等において「電極層」や「配線層」という用語は、これらの構成要素を機
能的に限定するものではない。例えば、「電極層」は「配線層」の一部として用いられる
ことがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極層」や「配線層」という用語は、
複数の「電極層」や「配線層」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0028】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や
、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため
、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いること
ができるものとする。
【0029】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの
」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの
」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0030】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線などが含まれる。
【0031】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について図面を用いて説明する。
図2に本
実施の形態の表示装置の上面図を示す。
【0032】
図2(A)は本発明の一態様の表示装置の上面図である。
図2(A)において、第1の基
板101上に設けられた画素部1000を囲むようにして、シール材1001が設けられ
、第2の基板102によって封止されている。
図2(A)においては、第1の基板101
上のシール材1001によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板
上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路1004、信号線駆
動回路1003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路1003と、走査
線駆動回路1004または画素部1000に与えられる各種信号及び電位は、FPC(F
lexible printed circuit)1018a、1018bから供給さ
れている。
【0033】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Ch
ip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape A
utomated Bonding)方法などを用いることができる。
図2(A)は、C
OG方法により信号線駆動回路1003、走査線駆動回路1004を実装する例である。
【0034】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラ
を含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0035】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光
源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTCPが取り付け
られたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素
子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含
むものとする。
【0036】
なお、本実施の形態に示す表示装置の構成は上記に限らず、
図2(B)に示すように、第
1の基板101上に設けられた画素部1000と、走査線駆動回路1004とを囲むよう
にして、シール材1001が設けられていてもよい。また画素部1000と、走査線駆動
回路1004の上に第2の基板102が設けられていてもよい。よって画素部1000と
、走査線駆動回路1004とは、第1の基板101とシール材1001と第2の基板10
2とによって、表示素子と共に封止されている。
【0037】
シール材1001としては、代表的には可視光硬化性、紫外線硬化性又は熱硬化性の樹脂
を用いるのが好ましい。代表的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アミン樹脂などを用
いることができる。また、光(代表的には紫外線)重合開始剤、熱硬化剤、フィラー、カ
ップリング剤を含んでもよい。
【0038】
図2(B)及び(C)においては、第1の基板101上のシール材1001によって囲ま
れている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導
体膜で形成された信号線駆動回路1003が実装されている。また、別途形成された信号
線駆動回路1003と、走査線駆動回路1004または画素部1000に与えられる各種
信号及び電位は、FPC1018から供給されている。
【0039】
また
図2(B)においては、信号線駆動回路1003を別途形成し、第1の基板101に
実装している例を示しており、
図2(C)においては、信号線駆動回路1003は、FP
C1018上に実装されている例を示している。ただし、本実施の形態の一態様の表示装
置はこの構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線
駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0040】
図1に本発明の一態様の表示装置の画素部1000が有する一画素について示す。
図1(
A)は、画素部1000が有する画素の一部の上面図を示し、
図1(B)は
図1(A)に
示す一点鎖線A-Bにおける断面図を示す。
【0041】
本発明の一態様の表示装置が有する画素部は、第1の基板101上に設けられたトランジ
スタ150とトランジスタ150上の第1の無機絶縁膜114(無機絶縁膜113及び無
機絶縁膜115の積層)と、第1の無機絶縁膜114上の有機絶縁膜117と、有機絶縁
膜117上の容量素子170と、有機絶縁膜117及び容量素子170上の液晶層125
と、液晶層125上の第2の基板102と、第2の基板102に設けられた透明導電層1
27と、を有する。容量素子170は、透明導電層121と、透明導電層123と、これ
らに挟持された第2の無機絶縁膜119を有する。
【0042】
なお、
図1(B)から分かるように、第2の無機絶縁膜119は、有機絶縁膜117と重
畳する領域に端部を有する。そのため、第2の無機絶縁膜119と有機絶縁膜117が重
畳しない領域を有し、有機絶縁膜117が露出している領域から、有機絶縁膜117の放
出ガスが上方へ抜けることができる。また、特に、第2の無機絶縁膜119はトランジス
タ150と重畳する領域において設けられておらず、有機絶縁膜117と第2の無機絶縁
膜119が重畳せず、有機絶縁膜117が露出している領域がトランジスタ150と重畳
している。また、有機絶縁膜117は第2の無機絶縁膜119、透明導電層121及び透
明導電層123と重畳せずに、露出している領域を有する。
【0043】
本発明の一態様に示す表示装置は、有機絶縁膜117上に、第2の無機絶縁膜119が設
けられておらず、有機絶縁膜117の上面の一部が露出され、有機絶縁膜117の放出ガ
スが当該上面の一部から外部へと放出されるような領域を有している。そのため、放出ガ
スがトランジスタ側へ入り込むことが防止され、トランジスタ150の特性が変動しにく
く、表示品位の低下が抑制された、信頼性の高い表示装置とすることができる。
【0044】
トランジスタ150は、第1の基板101上のゲート電極層105と、ゲート電極層10
5を覆うゲート絶縁層107と、ゲート絶縁層107上の半導体層109と、半導体層1
09と接するソース電極層111a及びドレイン電極層111bと、を有する。
【0045】
トランジスタ150の半導体層には、シリコン系半導体(アモルファスシリコン、多結晶
シリコン等)、酸化物半導体(酸化亜鉛、酸化インジウム等)等を用いることができる。
本実施の形態では、半導体層109に用いる好適な半導体として酸化物半導体を用いた場
合を説明する。
【0046】
トランジスタ150上には第1の無機絶縁膜114として無機絶縁膜113及び無機絶縁
膜115が形成されている。なお、第1の無機絶縁膜114の構成はこれに限らず、必要
とされる機能に応じて適宜絶縁膜を単層で、又は積層して設ければよい。
【0047】
トランジスタ150上に設けられた無機絶縁膜113には、酸化シリコン、酸化ガリウム
、酸化アルミニウム、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ハフニウム、または酸
化タンタルなどの酸化物絶縁層を用いることができる。また、これらの化合物を単層構造
または2層以上の積層構造で形成して用いることができる。
【0048】
なお、ここで酸化窒化シリコンとは、その組成において窒素よりも酸素の含有量が多いも
のを示し、例として、少なくとも酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原
子%以上15原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下の範囲で含まれるも
のをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford
Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(H
FS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場
合のものである。また、構成元素の含有比率は、その合計が100原子%を超えない値を
とる。
【0049】
無機絶縁膜113上に形成される無機絶縁膜115は、半導体層109へ水素等の不純物
が入ることを防止する機能(以下、水素ブロッキング性ともいう)及び酸化物半導体層中
の酸素等が脱離することを防止する機能を有する層である。酸素、水素、水等のブロッキ
ング効果を有する無機絶縁膜115を設けることで、半導体層109からの酸素の外部へ
の拡散と、有機絶縁膜117及び外部から半導体層109への水素等の不純物の入り込み
を防ぐことができる。
【0050】
酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化
窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イッ
トリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
【0051】
無機絶縁膜115上には、トランジスタ150起因の凹凸を低減するための平坦化絶縁層
として機能する有機絶縁膜117が設けられている。平坦化絶縁層は、平坦化絶縁層上に
設けられる液晶層の配向不良等を防止し、表示品位を向上させるために設けられる。平坦
化絶縁層として、有機絶縁膜を用いることによって、容易に平坦な面を得ることができる
。
【0052】
有機絶縁膜117としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系
樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。
なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで形成してもよい。
【0053】
有機絶縁膜117上には、容量素子170が形成されている。容量素子170は、有機絶
縁膜117上の透明導電層121と、透明導電層121上の第2の無機絶縁膜119と、
第2の無機絶縁膜119上の透明導電層123と、を有する。容量素子170の透明導電
層123は、第1の無機絶縁膜114及び有機絶縁膜117に設けられた開口において、
トランジスタ150のドレイン電極層111bと接する。
【0054】
有機絶縁膜117上の容量素子170は、透明導電層121、第2の無機絶縁膜119及
び透明導電層123によって形成される。つまり、透明導電層121は容量素子170の
一方の電極として機能し、透明導電層123は容量素子170の他方の電極として機能し
、第2の無機絶縁膜119は容量素子170の誘電体として機能する。
【0055】
容量素子170の保持容量の大きさは、トランジスタ150のリーク電流等を考慮して、
所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタ
のオフ電流等を考慮して設定すればよい。酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いる
ことにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量
の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0056】
酸化物半導体層を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低く
制御することができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ
、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を
少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。また、酸化物半導体層
を用いたトランジスタは、電界効果移動度を高く制御することができるため、高速駆動が
可能である。
【0057】
透明導電層121及び透明導電層123としては可視光に対する透光性を有する材料を用
いる。透光性を有する材料としては、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、インジウ
ム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、グラフェンなどを用いることが
できる。なお、ここで透明とは可視光に対する透光性を有することを指し、可視光が透過
すれば透明と呼ぶことにする。また、光が散乱しても、一部の光が透過するようであれば
透明と呼ぶ。また、少なくとも可視光の一部の波長域を透過させればよく、可視光域にお
いて一部の波長域が反射するようであっても透明導電層と呼ぶことにする。容量素子17
0を透明材料で形成することによって、開口率を上げることができる。
【0058】
ここで、有機絶縁膜117に用いる有機樹脂として代表的なアクリル樹脂の放出ガスにつ
いて調査した結果を示す。
【0059】
試料は、ガラス基板上にアクリル樹脂を塗布し、窒素ガス雰囲気下、250℃にて1時間
の加熱処理を行った。なお、アクリル樹脂は加熱処理後に厚さが1.5μmとなるように
形成した。
【0060】
作製した試料に対し、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorpti
on Spectroscopy)分析による放出ガスの測定を行った。
【0061】
図3に、基板表面温度250℃のときの、各質量電荷比(M/zともいう。)における放
出ガスのイオン強度を示す。
図3より、試料からは、水起因と見られる質量電荷比が18
(H
2O)のガスと、炭化水素起因と見られる質量電荷比が28(C
2H
4)、44(C
3H
8)および56(C
4H
8)のガスが検出された。なお、各質量電荷比の近傍には、
それぞれのフラグメントイオンが検出された。
【0062】
図4に、基板表面温度に対する各質量電荷比(18、28、44および56)のイオン強
度を示す。基板表面温度を55℃から270℃の範囲とした場合、水起因と見られる質量
電荷比が18のイオン強度は、55℃以上100℃以下および150℃以上270℃以下
の範囲にそれぞれピークを有することがわかった。一方、炭化水素起因と見られる質量電
荷比が28、44および56のイオン強度は、150℃以上270℃以下にピークを有す
ることがわかった。
【0063】
以上に示したように、有機樹脂から水、炭化水素などの酸化物半導体にとっての不純物が
放出されることがわかった。特に、水は55℃以上100℃以下の比較的低温でも放出さ
れることがわかった。即ち、比較的低温でも有機樹脂に起因する不純物が酸化物半導体膜
に到達し、トランジスタの電気特性を劣化させることが示唆された。
【0064】
また、有機樹脂を水、炭化水素などの放出ガスを透過しない膜(窒化シリコン膜、窒化酸
化シリコン膜、酸化アルミニウム膜など)で覆った場合、有機樹脂からガスが放出される
ことで水、炭化水素などの放出ガスを透過しない膜への圧力が高まり、最終的に水、炭化
水素などの放出ガスを透過しない膜が破壊され、トランジスタの形状不良となる場合があ
ることが示唆された。
【0065】
透明導電層121及び透明導電層123に挟まれる第2の無機絶縁膜119は、第1の無
機絶縁膜114と同様の材料を用いて形成することができる。第2の無機絶縁膜119は
容量素子170の誘電体として機能するため、容量素子170として必要とされる誘電率
を有する材料を用いればよい。例えば、酸化シリコン膜等と比較して比誘電率の高い窒化
シリコン膜を用いることによって、電極面積当たりの静電容量を大きくすることができる
。
【0066】
また、透明導電層121または透明導電層123の屈折率と第2の無機絶縁膜119の屈
折率との差が、透明導電層121及び透明導電層123の屈折率の10%以下、より好ま
しくは5%以下である絶縁層を用いるとよい。第2の無機絶縁膜119と透明導電層12
1または透明導電層123との屈折率の差が小さいと、第2の無機絶縁膜と透明導電層1
21の界面及び第2の無機絶縁膜119と透明導電層123との界面において光の全反射
が抑制され、光の損失を低減することができる。
【0067】
また、同様にして、有機絶縁膜117と透明導電層121との界面での全反射を防止する
ために、有機絶縁膜117と透明導電層121の間に、屈折率が有機絶縁膜117と透明
導電層121の間の値となる絶縁膜を形成してもよい。また、該絶縁膜を複数形成するこ
とで、有機絶縁膜117から透明導電層121に向かって段階的に屈折率が変化する構成
としてもよい。
【0068】
例えば、有機絶縁膜として一般的に用いられるアクリル樹脂の屈折率は約1.49であり
、透明導電層121として一般的に用いられるインジウムスズ酸化物の屈折率は2.0で
ある。したがって、有機絶縁膜117と透明導電層121の間に設ける絶縁膜としては、
屈折率が1.5以上1.9以下、好ましくは1.6以上1.7以下である絶縁膜を用いる
とよい。またはこれらの積層構造としてもよい。
【0069】
透明導電層121及び透明導電層123として用いられるインジウム亜鉛酸化物の屈折率
は2.0である。インジウム亜鉛酸化物と同程度の屈折率を有する材料として、屈折率が
約2.03である窒化シリコン膜を第2の無機絶縁膜119に好適に用いることができる
。
【0070】
なお、第2の無機絶縁膜119は透明導電層121及び透明導電層123によって容量が
形成され、容量素子170の誘電体として機能するように設けられていればよく、その形
状は限定されない。第2の無機絶縁膜119として、有機絶縁膜117からの放出ガスを
透過しない膜(例えば、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等)を用いる場合、第2の
無機絶縁膜119が有機絶縁膜117の全面を覆うように形成すると、有機絶縁膜117
から放出されるガスが、トランジスタ150側へ拡散して、トランジスタ150の特性を
変動させる場合がある。
【0071】
または、有機絶縁膜117から放出ガスが抜けず、有機絶縁膜117から第1の無機絶縁
膜114及び第2の無機絶縁膜119の圧力が高まり、第2の無機絶縁膜119が破壊さ
れて、形状不良となる場合がある。形状不良が起こることによって、第2の無機絶縁膜1
19に、膜密度が低い領域や、膜そのものが消失してしまう領域等が形成される場合があ
る。このような領域が形成されることによって、半導体層109へ水素等の不純物が入り
込みやすくなり、トランジスタ150の特性の変動を引き起こす場合がある。
【0072】
したがって、第2の無機絶縁膜119は有機絶縁膜117から放出されるガスが上方(ト
ランジスタ150と反対側)へ抜けるような構造とすることがよい。具体的には、第2の
無機絶縁膜119の端部が有機絶縁膜117と重畳する領域にあるとよい。第2の無機絶
縁膜119の端部が有機絶縁膜117と重畳する領域にあることによって、有機絶縁膜1
17は、無機絶縁膜113及び第2の無機絶縁膜119によって全面が覆われている構成
ではなく、有機絶縁膜117の放出ガスが抜けるための露出部を有する。
【0073】
ここで、有機絶縁膜117の露出部とは、有機絶縁膜117のうち、少なくとも第2の無
機絶縁膜119と重畳していない領域のことを指す。有機絶縁膜117が露出部を有する
ことによって、有機絶縁膜117からの放出ガスを上方へと放出することができ、トラン
ジスタ150へ不純物が入り込むことを抑制することができる。
【0074】
なお、有機絶縁膜117が露出される領域は画素部1000内のどこに設けてもよいが、
有機絶縁膜117から放出されるガスには水素等の不純物が含まれているため、なるべく
有機絶縁膜117から放出されるガスがトランジスタ150側へ入り込まないように設け
ることが好ましい。
【0075】
例えば、有機絶縁膜117のトランジスタ150と重畳する領域において、少なくとも一
部に露出した領域を有していればよい。例えば、有機絶縁膜117がトランジスタ150
のソース電極層111aまたはドレイン電極層111bの一部と重畳する領域において露
出されていればよい。または、有機絶縁膜117と半導体層109が重畳する領域におい
て、有機絶縁膜117の少なくとも一部が露出される構成とすればよい。
【0076】
また、有機絶縁膜117の放出ガスが、有機絶縁膜117のトランジスタ150が有する
半導体層109と対向する表面とは反対の面から放出されるように、有機絶縁膜117の
半導体層109と対向しない表面に、有機絶縁膜117が露出された領域を形成してもよ
い。また、有機絶縁膜117の半導体層109と対向している表面よりも、対向していな
い表面(例えば、
図1(B)において、液晶層125と接する領域)において露出してい
る領域が多い方がよい。
【0077】
また、有機絶縁膜117とシール材1001(図示しない)とが接しない構成とし、有機
絶縁膜117の側面(シール材1001と対向する表面)から放出ガスが放出されるよう
、有機絶縁膜117の側面に、絶縁層、透明導電層等が形成されずに、有機絶縁膜117
が露出している領域を有していてもよい。なお、有機絶縁膜117の端部が第2の無機絶
縁膜119によって覆われている構成としてもよい。
【0078】
本実施の形態に示す表示装置は、トランジスタ上に設けられた有機絶縁膜から放出される
ガスがトランジスタ側へ入り込まないように、トランジスタ上に有機絶縁膜の露出部を設
ける。露出部は、該有機絶縁膜上に形成される無機絶縁膜と重畳しない領域によって形成
する。露出部には、無機絶縁膜が接して形成されていないため、有機絶縁膜から放出され
るガスが、露出部から抜けることができる。そのため、有機絶縁膜から放出される、水素
等の不純物を含むガスが、酸化物半導体層へ入り込んで、トランジスタの特性が変動する
ことを防止することができ、表示品位が高く、信頼性の高い表示装置とすることができる
。
【0079】
トランジスタ150は、第1の基板101上にゲート電極層105を有する。
【0080】
第1の基板101は、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していること
が必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガ
ラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの基板を用いることができる
。
【0081】
なお、第1の基板101は予め第1の基板101の歪み点より低い温度で加熱処理を行い
、第1の基板101をシュリンク(熱収縮とも言われる。)させておくことが望ましい。
これにより、表示装置の作製工程において行われる加熱処理により、第1の基板101に
生じるシュリンクの量を抑えることができる。そのため、例えば、露光工程などでのパタ
ーンずれ等を抑制することができる。また、当該加熱処理により、第1の基板101表面
に付着した水分や有機物などを取り除くことができる。
【0082】
また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲ
ルマニウムなどの化合物半導体基板上に絶縁層を形成したものを適用することも可能であ
る。
【0083】
ゲート電極層105は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タ
ングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述し
た金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジル
コニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート
電極層105は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを
含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化
チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する
二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層
構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜
を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン
、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み
合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0084】
特に、ゲート電極層105の抵抗を下げ、かつ耐熱性を確保するためには、例えば、アル
ミニウム、銅などの抵抗率の低い金属膜の下側および上側の一方又は両方にチタン、モリ
ブデン、タングステンなどの高融点金属膜又はそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒
化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成とすればよい。
【0085】
また、ゲート電極層105は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム
酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸
化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添
加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また
、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0086】
また、ゲート電極層105とゲート絶縁層107との間に、In-Ga-Zn系酸窒化物
半導体膜、In-Sn系酸窒化物半導体膜、In-Ga系酸窒化物半導体膜、In-Zn
系酸窒化物半導体膜、Sn系酸窒化物半導体膜、In系酸窒化物半導体膜、金属窒化膜(
InN、ZnN等)等を設けてもよい。これらの膜は5eV以上、好ましくは5.5eV
以上の仕事関数を有し、酸化物半導体の電子親和力よりも大きい値であるため、酸化物半
導体を用いたトランジスタのしきい値電圧をプラスにシフトすることができ、所謂ノーマ
リーオフ特性のスイッチング素子を実現できる。例えば、In-Ga-Zn系酸窒化物半
導体膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜より高い窒素濃度、具体的には7原子%
以上のIn-Ga-Zn系酸窒化物半導体膜を用いる。
【0087】
ゲート絶縁層107は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒
化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金属
酸化物などを用いればよく、積層または単層で設ける。
【0088】
また、ゲート絶縁層107は酸化物半導体と接するため、水素濃度が低減されており、酸
化物半導体に水素が入り込むことを抑制する他に、酸化物半導体の酸素欠損に酸素を供給
することができる膜とすることが好ましい。例えば、酸素を供給する膜としては、膜中(
バルク中)に少なくとも化学量論比における含有量を超える量の酸素が存在することが好
ましく、例えば、ゲート絶縁層107として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO
2+α(ただし、α>0)とする。
【0089】
化学量論的比における含有量を超える量の酸素を含む絶縁膜は、加熱により酸素の一部が
脱離する。このため、加熱により酸素の一部が脱離する絶縁膜をゲート絶縁層107とし
て設けることで、酸化物半導体に酸素を入れ、酸化物半導体に含まれる酸素欠損を補填す
ることが可能である。
【0090】
ゲート絶縁層107に加熱により酸素が脱離する膜を用いることで、酸化物半導体膜及び
ゲート絶縁層107の界面における界面準位の密度を低減することが可能であり、電気特
性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。また、ゲート絶縁層107に、酸素
、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜を設けることで、酸化物半導体膜からの
酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜への水素、水等の入り込みを防ぐことが
できる。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウ
ム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化
窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等があげられる。
【0091】
また、ゲート絶縁層107として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加
されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアル
ミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-
k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0092】
ゲート絶縁層107の厚さは、5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上
300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下とするとよい。
【0093】
ゲート絶縁層107を積層構造とし、ゲート電極層側からそれぞれ、PECVD装置を用
い、ゲート電極層105に含まれる金属成分の拡散防止効果のある第1のゲート絶縁層と
して50nmの窒化シリコン層と、絶縁破壊耐性に優れた第2のゲート絶縁層として30
0nmの窒化シリコン層と、水素ブロッキング性の高い第3のゲート絶縁層として50n
mの窒化シリコン層と、界面準位の密度を低減する効果のある第4のゲート絶縁層として
50nmの酸化窒化シリコン層とを積層する構造とする。
【0094】
また、半導体層109に酸化物半導体を用いた場合、ゲート絶縁層107と同様に、無機
絶縁膜113に加熱により酸素が脱離する酸化絶縁物を用いてもよい。また、酸化物半導
体上に無機絶縁膜113を形成した後、加熱処理することより、酸素を酸化物半導体層に
入れて、酸化物半導体層に含まれる酸素欠損を補填することが可能である。この結果、酸
化物半導体層に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0095】
半導体層109に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)若しくは
亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。または、InとZnの双方を含むことが好ましい。
また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それら
と共に、スタビライザーを有すると好ましい。
【0096】
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アル
ミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)等がある。また、他のスタビライザーと
しては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(P
r)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(
Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウ
ム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等がある
。上記のスタビライザーの一または複数を有するとよい。
【0097】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In-Zn酸化物
、Sn-Zn酸化物、Al-Zn酸化物、Zn-Mg酸化物、Sn-Mg酸化物、In-
Mg酸化物、In-Ga酸化物、In-Ga-Zn酸化物、In-Al-Zn酸化物、I
n-Sn-Zn酸化物、Sn-Ga-Zn酸化物、Al-Ga-Zn酸化物、Sn-Al
-Zn酸化物、In-Hf-Zn酸化物、In-La-Zn酸化物、In-Ce-Zn酸
化物、In-Pr-Zn酸化物、In-Nd-Zn酸化物、In-Sm-Zn酸化物、I
n-Eu-Zn酸化物、In-Gd-Zn酸化物、In-Tb-Zn酸化物、In-Dy
-Zn酸化物、In-Ho-Zn酸化物、In-Er-Zn酸化物、In-Tm-Zn酸
化物、In-Yb-Zn酸化物、In-Lu-Zn酸化物、In-Sn-Ga-Zn酸化
物、In-Hf-Ga-Zn酸化物、In-Al-Ga-Zn酸化物、In-Sn-Al
-Zn酸化物、In-Sn-Hf-Zn酸化物、In-Hf-Al-Zn酸化物を用いる
ことができる。
【0098】
なお、ここで、例えば、In-Ga-Zn酸化物とは、InとGaとZnを主成分として
有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGa
とZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0099】
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)
で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた
一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO5
(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0100】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=2:2:1、あるいはIn
:Ga:Zn=3:1:2の原子数比のIn-Ga-Zn酸化物やその組成の近傍の酸化
物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1、In:Sn:Zn
=2:1:3あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5の原子数比のIn-Sn-Zn酸化
物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0101】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、しき
い値電圧、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半
導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数
比、原子間距離(結合距離)、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0102】
例えば、In-Sn-Zn酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら
、In-Ga-Zn酸化物でも、バルク内欠陥密度を低くすることにより移動度を上げる
ことができる。
【0103】
また、半導体層109に用いる酸化物半導体膜としては、エネルギーギャップが2eV以
上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である酸化物半導体を用いる
。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタの
オフ電流を低減することができる。
【0104】
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
【0105】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置さ
れている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」と
は、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、
85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0106】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す
。
【0107】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非
単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC-OS(C Axis Aligned Crys
talline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体膜
、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
【0108】
また、半導体層109には、結晶部分を有するCAAC-OS膜を好適に用いることがで
きる。
【0109】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの結
晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-O
S膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内
に収まる大きさの場合も含まれる。
【0110】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elect
ron Microscope)によって観察すると、明確な結晶部同士の境界、即ち結
晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CA
AC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0111】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察
)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子
の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸
を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0112】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TE
M観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列しているこ
とを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られな
い。
【0113】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有して
いることがわかる。
【0114】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概
略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0115】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-pl
ane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは
、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化
物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)と
して試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に
帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを5
6°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0116】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不
規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行
な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配
列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0117】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行
った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面また
は上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の形
状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成面
または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0118】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS膜
の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面
近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAA
C-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分
的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0119】
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向性
を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍に
ピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0120】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、
シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコ
ンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化
物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる
要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径
(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の
原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純
物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0121】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物
半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによって
キャリア発生源となることがある。
【0122】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または
実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜
は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当該
酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノー
マリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真
性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜
を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。
なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時
間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く
、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる
場合がある。
【0123】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性
の変動が小さい。
【0124】
次に、半導体層109に適用できる微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0125】
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することができ
ない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下
、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm
以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocryst
al)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline Ox
ide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、TE
Mによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0126】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上
3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異なる
結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。従
って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場
合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装
置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を示
すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径(
例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を
行うと、ハローパターンのような回折像が観測される。一方、nc-OS膜に対し、結晶
部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電
子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、スポットが観測
される。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くように(リ
ング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc-OS膜に対しナノビー
ム電子線回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
【0127】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。その
ため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、
nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-O
S膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0128】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CA
AC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0129】
また、CAAC-OS膜のように結晶部を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を
低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移
動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体
を形成することが好ましい。
【0130】
ただし、本実施の形態で説明するトランジスタ150は、ボトムゲート型であるため、酸
化物半導体膜の下方には基板101、ゲート電極層105とゲート絶縁層107が存在し
ている。従って、上記平坦な表面を得るためにゲート電極層105とゲート絶縁層107
を形成した後、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical
Polishing)処理などの平坦化処理を行ってもよい。
【0131】
また、酸化物半導体膜は、複数の酸化物半導体膜が積層された構造でもよい。例えば、酸
化物半導体膜を、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の積層として、第1の酸
化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、異なる組成の金属酸化物を用いてもよい。例え
ば、第1の酸化物半導体膜に金属酸化物の一を用い、第2の酸化物半導体膜に第1の酸化
物半導体膜と異なる金属酸化物を用いてもよい。
【0132】
また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の構成元素を同一とし、両者の組成
を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1
:1:1とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2として
もよい。また、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2とし、
第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=2:1:3としてもよい。
【0133】
この時、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜のうち、ゲート電極層105に近
い側(チャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの含有率をIn>Gaとするとよい。
またゲート電極層105から遠い側(バックチャネル側)の酸化物半導体膜のInとGa
の含有率をIn≦Gaとするとよい。
【0134】
また、酸化物半導体膜を3層構造とし、第1の酸化物半導体膜~第3の酸化物半導体膜の
構成元素を同一とし、且つそれぞれの組成を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物半
導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2とし、第2の酸化物半導体膜の原子数
比をIn:Ga:Zn=3:1:2とし、第3の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga
:Zn=1:1:1としてもよい。
【0135】
Ga及びZnよりInの原子数比が小さい酸化物半導体膜、代表的には原子数比がIn:
Ga:Zn=1:3:2である第1の酸化物半導体膜は、Ga及びZnよりInの原子数
比が大きい酸化物半導体膜、代表的には第2の酸化物半導体膜、並びにGa、Zn、及び
Inの原子数比が同じ酸化物半導体膜、代表的には第3の酸化物半導体膜と比較して、絶
縁性が高い。
【0136】
また、第1の酸化物半導体膜~第3の酸化物半導体膜の構成元素は同一であるため、第1
の酸化物半導体膜は、第2の酸化物半導体膜との界面におけるトラップ準位が少ない。こ
のため、酸化物半導体膜を上記構造とすることで、トランジスタの経時変化やストレス試
験によるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0137】
酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、Inの含有率
を多くすることにより、より多くのs軌道が重なるため、In>Gaの組成となる酸化物
はIn≦Gaの組成となる酸化物と比較して高い移動度を備える。また、GaはInと比
較して酸素欠損の形成エネルギーが大きく酸素欠損が生じにくいため、In≦Gaの組成
となる酸化物はIn>Gaの組成となる酸化物と比較して安定した特性を備える。
【0138】
チャネル側にIn>Gaの組成となる酸化物半導体を適用し、バックチャネル側にIn≦
Gaの組成となる酸化物半導体を適用することで、トランジスタの電界効果移動度及び信
頼性をさらに高めることが可能となる。
【0139】
また、半導体層109を積層構造とする場合、第1の酸化物半導体膜乃至第3の酸化物半
導体膜に、結晶性の異なる酸化物半導体膜を適用してもよい。すなわち、単結晶酸化物半
導体膜、多結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜、またはCAAC-OS膜を適宜
組み合わせた構成としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜乃至第3の酸化物半導体膜
のいずれか一に非晶質酸化物半導体膜を適用すると、酸化物半導体膜の内部応力や外部か
らの応力を緩和し、トランジスタの特性ばらつきが低減され、また、トランジスタの信頼
性をさらに高めることが可能となる。
【0140】
酸化物半導体膜の厚さは、1nm以上100nm以下、更に好ましくは1nm以上50n
m以下、更に好ましくは1nm以上30nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm以
下とすることが好ましい。
【0141】
酸化物半導体膜において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Io
n Mass Spectrometry)により得られるアルカリ金属またはアルカリ
土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは2×101
6atoms/cm3以下であることが望ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は
、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流の
上昇の原因となるためである。
【0142】
酸化物半導体膜において、二次イオン質量分析法により得られる水素濃度を、5×101
8atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ま
しくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms
/cm3以下とすることが好ましい。
【0143】
酸化物半導体膜に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水となると共に、
酸素が脱離した格子(あるいは酸素が脱理した部分)には欠損が形成されてしまう。また
、水素の一部が酸素と結合することで、キャリアである電子が生じてしまう。これらのた
め、酸化物半導体膜の成膜工程において、水素を含む不純物を極めて減らすことにより、
酸化物半導体膜の水素濃度を低減することが可能である。このため、水素をできるだけ除
去し、高純度化させた酸化物半導体膜をチャネル形成領域とすることにより、しきい値電
圧のマイナスシフトを低減することができ、またトランジスタのソース及びドレインにお
けるリーク電流(代表的には、オフ電流等)を数yA/μm~数zA/μmにまで低減す
ることが可能であり、トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0144】
酸化物半導体膜はスパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブレー
ション法等により形成する。
【0145】
スパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源装
置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0146】
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、または希ガス及び酸素の
混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素の
ガス比を高めることが好ましい。
【0147】
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい。
【0148】
なお、CAAC-OS膜を形成する際は、例えば、多結晶である酸化物半導体ターゲット
を用い、スパッタリング法によって成膜する。当該ターゲットにイオンが衝突すると、タ
ーゲットに含まれる結晶領域がa-b面から劈開し、a-b面に平行な面を有する平板状
またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離することがある。この場合、当該平板
状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで、CAAC-
OS膜を成膜することができる。
【0149】
また、CAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0150】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制でき
る。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0151】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグ
レーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましく
は200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平
板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、
スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0152】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージ
を軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体
積%とする。
【0153】
ターゲットの一例として、In-Ga-Zn酸化物ターゲットについて以下に示す。
【0154】
InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末を所定のmol数で混合し、加圧処理後
、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-Ga
-Zn酸化物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで、所
定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末が、2:2
:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお
、粉末の種類、およびその混合するmol数比は、作製するターゲットによって適宜変更
すればよい。
【0155】
また、酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行い、酸化物半導体膜の脱水素化または
脱水化をしてもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好
ましくは250℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
【0156】
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒
素を含む不活性ガス雰囲気で行う。または、不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気
で加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気及び酸素雰囲気に水素、水などが含まれない
ことが好ましい。処理時間は3分~24時間とする。
【0157】
酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜において、水素濃
度を5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3
以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×10
16atoms/cm3以下とすることができる。
【0158】
なお、ゲート絶縁層107として酸化物絶縁層を用いた場合、酸化物絶縁層上に酸化物半
導体膜が設けられた状態で加熱することによって、酸化物半導体膜に酸素を供給すること
ができ、酸化物半導体膜の酸素欠陥を低減し、半導体特性を良好にすることができる。酸
化物半導体膜及び酸化物絶縁層を少なくとも一部が接した状態で加熱工程を行うことによ
って、酸化物半導体膜への酸素の供給を行ってもよい。
【0159】
半導体層109上のソース電極層及びドレイン電極層としては、上述したゲート電極層1
05に用いた材料及び方法と同様の材料、方法を用いて作製することができる。
【0160】
本実施の形態では、ソース電極層111a及びドレイン電極層111bとして、スパッタ
リング装置を用いて50nmのチタン膜、400nmのアルミニウム膜および100nm
のチタン膜を順に積層させた後、フォトリソグラフィ法を用いてチタン膜上にレジストマ
スクを形成し、当該レジストマスクを用いて上述のチタン膜、アルミニウム膜およびチタ
ン膜を備える積層膜の一部を選択的に除去する。
【0161】
容量素子170上の液晶層125に用いる液晶材料としては、サーモトロピック液晶、低
分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いるこ
とができる。これらの液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメ
クチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。また、
図1には
図示していないが、液晶層125にはこれらの材料層を挟持する配向膜として機能する絶
縁膜や、透明導電層123と透明導電層127との間の距離(セルギャップ)を制御する
ためのスペーサー等を設けてもよい。配向膜としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹
脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等の、耐熱性を有す
る有機材料を用いることができる。
【0162】
また、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよい。ブルー相は液晶
相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ
転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶及びカイラル剤を混合させた液晶組
成物を用いて発現させることができる。また、ブルー相が発現する温度範囲を広げるため
に、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー及び重合開始剤などを添加し、高分
子安定化させる処理を行って液晶層を形成することもできる。ブルー相を発現する液晶組
成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性
が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング
処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置
の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが
可能となる。酸化物半導体膜を用いるトランジスタは、静電気の影響によりトランジスタ
の電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化物半導体膜
を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相を発現する液晶組成物を用いるこ
とはより効果的である。
【0163】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011
Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細
書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0164】
液晶層125の駆動方法としては、TN(Twisted Nematic)モード、I
PS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Fringe Fie
ld Switching)モード、ASM(Axially Symmetric a
ligned Micro-cell)モード、OCB(Optical Compen
sated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectri
c Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelect
ric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0165】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した
透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、
例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)
モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード
、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる
。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、
液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は
、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である
。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向
に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれ
る方法を用いることができる。
【0166】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射
防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基
板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用
いてもよい。
【0167】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いる
ことができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは
赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)
、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、
色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明
はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用する
こともできる。
【0168】
図1には、液晶層125の配向が、透明導電層123及び透明導電層127によって制御
される構成を示す。したがって、
図1においては、透明導電層123が画素電極として機
能し、透明導電層127がコモン電極として機能する。
図5には、容量素子180が有す
る透明導電層121及び透明導電層123間の電界に応じて液晶層125の配向を制御す
る構成を示す。よって、
図5においては、透明導電層121がコモン電極として機能し、
透明導電層123が画素電極として機能する。
【0169】
なお、本実施の形態に示す表示装置は
図1の構成に限らず、例えば、
図5に示す構成とし
てもよい。
【0170】
図5には、本発明の別の一態様の表示装置が有する画素の一部について示す。
図5(A)
は本発明の別の一態様の表示装置が有する画素の一部の上面図であり、
図5(B)は
図5
(A)の一点鎖線C-Dにおける断面図を示す。なお、
図5において、
図1と同様の箇所
については、同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0171】
図5に示す構成は、
図2と比較して、一部が容量素子180の誘電体として用いられてい
る第2の無機絶縁膜129がトランジスタ150のドレイン電極層111bと重畳する点
が異なる。このような構成とすることによって、第2の無機絶縁膜129及び無機絶縁膜
115が接し、第2の無機絶縁膜129及び無機絶縁膜115によって、有機絶縁膜11
7を囲むことができ、有機絶縁膜117からの放出ガスのトランジスタ150側への拡散
を抑制することができる。
【0172】
本実施の形態に示す表示装置は、トランジスタ上に設けられた有機絶縁膜から放出される
ガスがトランジスタ側へ入り込まないように、トランジスタと反対側の有機絶縁膜に露出
部を設ける。露出部は、該有機絶縁膜上に形成される無機絶縁膜と重畳しない領域によっ
て形成する。露出部には、無機絶縁膜が接して形成されていないため、有機絶縁膜から放
出されるガスが、露出部から抜けることができる。そのため、有機絶縁膜から放出される
、水素等の不純物を含むガスが、酸化物半導体層へ入り込んで、トランジスタの特性が変
動することを防止することができ、表示品位が高く、信頼性の高い表示装置とすることが
できる。
【0173】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0174】
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した表示装置と組み合わせが可能な、イメージ
センサについて説明する。
【0175】
図6(A)に、イメージセンサ付の表示装置の一例を示す。
図6(A)はイメージセン
サ付の表示装置の一画素を示す等価回路である。
【0176】
フォトダイオード素子4002は、一方の電極がリセット信号線4058に、他方の電
極がトランジスタ4040のゲート電極に電気的に接続されている。トランジスタ404
0は、ソース電極またはドレイン電極の一方が電源電位(VDD)に、ソース電極または
ドレイン電極の他方がトランジスタ4056のソース電極またはドレイン電極の一方に電
気的に接続されている。トランジスタ4056は、ゲート電極がゲート選択線4057に
、ソース電極またはドレイン電極の他方が出力信号線4071に電気的に接続されている
。
【0177】
また、トランジスタ4030は、画素スイッチング用のトランジスタであり、ソース電
極またはドレイン電極の一方が映像信号線4059に、ソース電極またはドレイン電極の
他方が容量素子4032及び液晶素子4034に電気的に接続されている。また、トラン
ジスタ4030のゲート電極は、ゲート線4036に電気的に接続されている。
【0178】
なお、トランジスタ4030、容量素子4032は実施の形態1で示した表示装置と同
様の構造を適用すればよい。
【0179】
図6(B)は、イメージセンサ付表示装置の一画素の一部を示す断面図であり、画素部
においては、基板4001上に、フォトダイオード素子4002およびトランジスタ40
30が設けられている。また、画素部5042上においては、有機絶縁膜4016上に容
量素子4032の誘電体として用いる無機絶縁膜4020が形成されている。無機絶縁膜
4020は、トランジスタ4030と重畳する領域の一部に開口を有しており、有機絶縁
膜4016はその上層に無機絶縁膜が形成されない露出部を有している。
【0180】
このような構成とすることで、有機絶縁膜4016から放出されたガスがトランジスタ4
030側へ入り込むことを抑制し、信頼性の高い表示装置とすることができる。
【0181】
なお、フォトダイオード素子4002、トランジスタ4030上には、有機絶縁膜40
16が設けられている。また、有機絶縁膜4016上に容量素子4032の誘電体として
用いる無機絶縁膜4020が形成されているが、無機絶縁膜4020はトランジスタ40
30と重畳する領域の一部の上には設けられていない構成である。
【0182】
このような構成とすることで、有機絶縁膜からの放出ガスのトランジスタ側への拡散を
抑制し、信頼性の高い表示装置とすることができる。
【0183】
なお、フォトダイオード素子4002は、トランジスタ4030ソース電極及びドレイ
ン電極と同一の工程で形成される下側電極と、液晶素子4034の画素電極と同一工程で
形成される上部電極と、を一対の電極とし、該一対の電極間にダイオードを有する構成で
ある。
【0184】
フォトダイオード素子4002に用いることのできるダイオードとしては、p型半導体
膜、n型半導体膜の積層を含むpn型ダイオード、p型半導体膜、i型半導体膜、n型半
導体膜の積層を含むpin型ダイオード、ショットキー型ダイオードなどを用いればよい
。
【0185】
また、フォトダイオード素子4002上には、第1の配向膜4024、液晶層4096
、第2の配向膜4084、対向電極4088、有機絶縁膜4086、有色膜4085、対
向基板4052等が設けられている。
【0186】
本実施の形態では、実施の形態1とは異なり、液晶層4096を挟む第1の配向膜402
4及び第2の配向膜4084を有する構成である。第1の配向膜4024及び第2の配向
膜4084としては、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミ
ド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。
第1の配向膜4024は、有機絶縁膜4016と接して形成されるため、有機絶縁膜40
16から放出されるガスを通す膜とすることが好ましい。
【0187】
また、本実施の形態では、液晶層4096を、容量素子4032が有する透明導電層及び
対向電極4088に印加する電圧によって、液晶層4096の配向を制御する構成として
いる。
【0188】
なお、pin型ダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方が高い光電変換特性を
示す。これは、正孔移動度は電子移動度に比べて小さいためである。本実施の形態におい
ては、対向基板4052の面から液晶層4096等を介して、フォトダイオード素子40
02に入射する光を電気信号に変換する構成について例示しているが、これに限定されな
い。また、対向基板側に有色膜等を設ける構成としてもよい。
【0189】
本実施の形態で示したフォトダイオード素子4002は、フォトダイオード素子400
2に光が入射することで、一対の電極間に電流が流れることを利用する。フォトダイオー
ド素子4002が光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。
【0190】
本実施の形態で示したイメージセンサ付表示装置は、トランジスタの作製など、表示装
置およびイメージセンサの工程を共通化させることで、生産性を高めることができる。た
だし、先の実施の形態で示した表示装置と、本実施の形態で示したイメージセンサを異な
る基板上に作製しても構わない。具体的には、先の実施の形態で示した表示装置において
、第2の基板上にイメージセンサを作製しても構わない。
【0191】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可
能である。
【0192】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るタブレット型端末の一例を説明する。
【0193】
図7(A)及び
図7(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。
図7(A)は、タ
ブレット型端末を開いた状態である。タブレット型端末は、筐体8630と、筐体863
0に設けられた、表示部8631a、表示部8631b、表示モード切り替えスイッチ8
034、電源スイッチ8035、省電力モード切り替えスイッチ8036、留め具803
3および操作スイッチ8038と、を有する。
【0194】
表示部8631aは、一部または全部をタッチパネルとして機能させることができ、表示
された操作キーに触れることで入力することができる。例えば、表示部8631aの全面
にキーボードボタンを表示し、タッチパネルとして機能させ、表示部8631bを表示画
面として用いても構わない。
【0195】
また、表示部8631aと同様に、表示部8631bの一部または全部をタッチパネルと
して機能させることができる。
【0196】
また、表示部8631aのタッチパネルの領域と表示部8631bのタッチパネルの領域
を同時にタッチ入力することもできる。
【0197】
また、表示モード切り替えスイッチ8034は、縦表示または横表示などの表示の向きの
切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えス
イッチ8036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される外光に応じて
表示の輝度を最適なものとすることができる。なお、タブレット型端末は、光センサだけ
でなく、傾きを検出可能なジャイロ、加速度センサなど、他の検出装置を有してもよい。
【0198】
また、
図7(A)では、表示部8631bと表示部8631aの面積が同じ例を示してい
るが特に限定されない。表示部8631bと表示部8631aの面積が異なっていてもよ
く、表示の品質が異なっていてもよい。例えば、一方が他方よりも高精細な表示を行える
表示パネルとしてもよい。
【0199】
図7(B)は、タブレット型端末を閉じた状態である。タブレット型端末は、筐体863
0と、筐体8630に設けられた、太陽電池8633および充放電制御回路8634と、
を有する。なお、
図7(B)では充放電制御回路8634の一例としてバッテリー863
5、DCDCコンバータ8636を有する構成について示している。
【0200】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体8630を閉じた状態に
することができる。従って、表示部8631a、表示部8631bを保護できるため、耐
久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性に優れる。
【0201】
また、この他にも
図7(A)及び
図7(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(
静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時刻などを
表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作または編集するタッチ入
力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、などを有する
ことができる。
【0202】
タブレット型端末は、太陽電池8633によって得られた電力を、タブレット型端末の動
作に用いることができる。または、当該電力をバッテリー8635に蓄積することができ
る。なお、太陽電池8633は、筐体8630の二面に設ける構成とすることもできる。
なおバッテリー8635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れるなど
の利点がある。
【0203】
また、
図7(B)に示す充放電制御回路8634の構成、及び動作について
図7(C)に
ブロック図を示し説明する。
図7(C)には、太陽電池8633と、バッテリー8635
と、DCDCコンバータ8636と、コンバータ8637と、スイッチSW1と、スイッ
チSW2と、スイッチSW3と、表示部8631と、を示している。
図7(C)において
、バッテリー8635、DCDCコンバータ8636、コンバータ8637、スイッチS
W1、スイッチSW2およびスイッチSW3が、
図7(B)に示す充放電制御回路863
4に対応する。
【0204】
太陽電池8633により発電がされる場合、太陽電池で発電した電力は、バッテリー86
35を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ8636で昇圧または降圧され
る。次に、スイッチSW1をオンし、コンバータ8637で表示部8631に最適な電圧
に昇圧または降圧をする。また、表示部8631での表示を行わない際は、スイッチSW
1をオフし、スイッチSW2をオンしてバッテリー8635の充電を行う。
【0205】
なお、発電手段の一例として太陽電池8633について示したが、特に限定されず、圧電
素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段で代替しても
構わない。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュー
ルなど、他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0206】
本実施の形態に示すタブレット端末が有する表示部8631a及び表示部8631bに、
先の実施の形態で示した表示装置を適用することによって、信頼性を高めることができる
。
【0207】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0208】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した表示装置などを搭載した電子機器の例につい
て説明する。
【0209】
図8(A)は携帯型情報端末である。
図8(A)に示す携帯型情報端末は、筐体9300
と、ボタン9301と、マイクロフォン9302と、表示部9303と、スピーカ930
4と、カメラ9305と、を具備し、携帯型電話機としての機能を有する。表示部930
3に先の実施の形態で示した表示装置または/およびイメージセンサを適用することがで
きる。
【0210】
図8(B)は、ディスプレイである。
図8(B)に示すディスプレイは、筐体9310と
、表示部9311と、を具備する。表示部9311に先の実施の形態で示した表示装置ま
たは/およびイメージセンサを適用することができる。
【0211】
図8(C)は、デジタルスチルカメラである。
図8(C)に示すデジタルスチルカメラは
、筐体9320と、ボタン9321と、マイクロフォン9322と、表示部9323と、
を具備する。表示部9323に先の実施の形態で示した表示装置または/およびイメージ
センサを適用することができる。
【0212】
本発明の一態様を用いることで、電子機器の信頼性を高めることができる。
【0213】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【符号の説明】
【0214】
101 基板
102 基板
105 ゲート電極層
107 ゲート絶縁層
109 半導体層
111a ソース電極層
111b ドレイン電極層
114 第1の無機絶縁膜
113 無機絶縁膜
115 無機絶縁膜
117 有機絶縁膜
119 第2の無機絶縁膜
121 透明導電層
123 透明導電層
125 液晶層
127 透明導電層
129 第2の無機絶縁膜
150 トランジスタ
170 容量素子
180 容量素子
1000 画素部
1001 シール材
1003 信号線駆動回路
1004 走査線駆動回路
1018 FPC
4001 基板
4002 フォトダイオード素子
4016 有機絶縁膜
4020 無機絶縁膜
4024 配向膜
4030 トランジスタ
4032 容量素子
4034 液晶素子
4036 ゲート線
4040 トランジスタ
4052 対向基板
4056 トランジスタ
4057 ゲート選択線
4058 リセット信号線
4059 映像信号線
4071 出力信号線
4084 配向膜
4086 有機絶縁膜
4088 対向電極
4096 液晶層
5042 画素部
8033 留め具
8034 スイッチ
8035 電源スイッチ
8036 スイッチ
8038 操作スイッチ
8630 筐体
8631 表示部
8631a 表示部
8631b 表示部
8633 太陽電池
8634 充放電制御回路
8635 バッテリー
8636 DCDCコンバータ
8637 コンバータ
9300 筐体
9301 ボタン
9302 マイクロフォン
9303 表示部
9304 スピーカ
9305 カメラ
9310 筐体
9311 表示部
9320 筐体
9321 ボタン
9322 マイクロフォン
9323 表示部
【手続補正書】
【提出日】2023-08-30
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタのゲート電極層としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層上に配置された領域を有し、かつ、前記トランジスタのチャネル形成領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上に配置された領域を有し、かつ、前記トランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続された第2の導電層と、
前記第2の導電層上に配置された領域を有する第1の無機絶縁膜と、
前記第1の無機絶縁膜上に配置された領域を有する有機絶縁膜と、
前記有機絶縁膜上に配置された領域を有する第1の透明導電層と、
前記第1の透明導電層上に配置された領域を有する第2の無機絶縁膜と、
前記第2の無機絶縁膜上に配置された領域を有する第2の透明導電層と、
前記第2の透明導電層上に配置された領域を有する液晶層と、
を画素に有し、
前記第2の透明導電層は、前記第1の無機絶縁膜の第1の開口部、前記有機絶縁膜の第2の開口部、及び前記第2の無機絶縁膜の第3の開口部を介して、前記第2の導電層と電気的に接続され、
前記第2の開口部において、前記第1の無機絶縁膜と前記第2の無機絶縁膜とは接する領域を有し、
前記第1の無機絶縁膜及び前記第2の無機絶縁膜は、窒化シリコンを有し、
前記第3の開口部において、前記第2の透明導電層は前記第2の導電層と接する領域を有し、
前記第2の導電層の上方において、前記有機絶縁膜は、前記第2の無機絶縁膜に覆われていない領域を有する、
液晶表示装置。
【請求項2】
トランジスタのゲート電極層としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層上に配置された領域を有し、かつ、前記トランジスタのチャネル形成領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上に配置された領域を有し、かつ、前記トランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続された第2の導電層と、
前記第2の導電層上に配置された領域を有する第1の無機絶縁膜と、
前記第1の無機絶縁膜上に配置された領域を有する有機絶縁膜と、
前記有機絶縁膜上に配置された領域を有する第1の透明導電層と、
前記第1の透明導電層上に配置された領域を有する第2の無機絶縁膜と、
前記第2の無機絶縁膜上に配置された領域を有する第2の透明導電層と、
前記第2の透明導電層上に配置された領域を有する液晶層と、
を画素に有し、
前記第2の透明導電層は、前記第1の無機絶縁膜の第1の開口部、前記有機絶縁膜の第2の開口部、及び前記第2の無機絶縁膜の第3の開口部を介して、前記第2の導電層と電気的に接続され、
前記第2の開口部において、前記第1の無機絶縁膜と前記第2の無機絶縁膜とは接する領域を有し、
前記第1の無機絶縁膜及び前記第2の無機絶縁膜は、窒化シリコンを有し、
前記第3の開口部において、前記第2の透明導電層は前記第2の導電層と接する領域を有し、
前記有機絶縁膜上において、前記第1の透明導電層は、前記第2の無機絶縁膜を介して前記第2の透明導電層と重なる領域を有し、
前記第2の導電層の上方において、前記有機絶縁膜は、前記第2の無機絶縁膜に覆われていない領域を有する、
液晶表示装置。
【請求項3】
トランジスタのゲート電極層としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層上に配置された領域を有し、かつ、前記トランジスタのチャネル形成領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上に配置された領域を有し、かつ、前記トランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続された第2の導電層と、
前記第2の導電層上に配置された領域を有する第1の無機絶縁膜と、
前記第1の無機絶縁膜上に配置された領域を有する有機絶縁膜と、
前記有機絶縁膜上に配置された領域を有する第1の透明導電層と、
前記第1の透明導電層上に配置された領域を有する第2の無機絶縁膜と、
前記第2の無機絶縁膜上に配置された領域を有する第2の透明導電層と、
前記第2の透明導電層上に配置された領域を有する液晶層と、
を画素に有し、
前記酸化物半導体膜は、Inと、Gaと、Znと、を有し、
前記第2の透明導電層は、前記第1の無機絶縁膜の第1の開口部、前記有機絶縁膜の第2の開口部、及び前記第2の無機絶縁膜の第3の開口部を介して、前記第2の導電層と電気的に接続され、
前記第2の開口部において、前記第1の無機絶縁膜と前記第2の無機絶縁膜とは接する領域を有し、
前記第1の無機絶縁膜及び前記第2の無機絶縁膜は、窒化シリコンを有し、
前記第3の開口部において、前記第2の透明導電層は前記第2の導電層と接する領域を有し、
前記第2の導電層の上方において、前記有機絶縁膜は、前記第2の無機絶縁膜に覆われていない領域を有する、
液晶表示装置。
【請求項4】
トランジスタのゲート電極層としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層上に配置された領域を有し、かつ、前記トランジスタのチャネル形成領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上に配置された領域を有し、かつ、前記トランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続された第2の導電層と、
前記第2の導電層上に配置された領域を有する第1の無機絶縁膜と、
前記第1の無機絶縁膜上に配置された領域を有する有機絶縁膜と、
前記有機絶縁膜上に配置された領域を有する第1の透明導電層と、
前記第1の透明導電層上に配置された領域を有する第2の無機絶縁膜と、
前記第2の無機絶縁膜上に配置された領域を有する第2の透明導電層と、
前記第2の透明導電層上に配置された領域を有する液晶層と、
を画素に有し、
前記酸化物半導体膜は、Inと、Gaと、Znと、を有し、
前記第2の透明導電層は、前記第1の無機絶縁膜の第1の開口部、前記有機絶縁膜の第2の開口部、及び前記第2の無機絶縁膜の第3の開口部を介して、前記第2の導電層と電気的に接続され、
前記第2の開口部において、前記第1の無機絶縁膜と前記第2の無機絶縁膜とは接する領域を有し、
前記第1の無機絶縁膜及び前記第2の無機絶縁膜は、窒化シリコンを有し、
前記第3の開口部において、前記第2の透明導電層は前記第2の導電層と接する領域を有し、
前記有機絶縁膜上において、前記第1の透明導電層は、前記第2の無機絶縁膜を介して前記第2の透明導電層と重なる領域を有し、
前記第2の導電層の上方において、前記有機絶縁膜は、前記第2の無機絶縁膜に覆われていない領域を有する、
液晶表示装置。