(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159168
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】重質APIグループII基油の改良された製造
(51)【国際特許分類】
C10G 67/04 20060101AFI20231024BHJP
C10G 21/00 20060101ALI20231024BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20231024BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20231024BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20231024BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
C10G67/04
C10G21/00
C10G45/02
C10M101/02
C10N20:02
C10N30:02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023127497
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2021126576の分割
【原出願日】2016-08-04
(31)【優先権主張番号】14/848,917
(32)【優先日】2015-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイ、グアン - ダオ
(72)【発明者】
【氏名】バーッタチャルヤ、スバーシス
(72)【発明者】
【氏名】ブレイト、アクセル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】芳香族抽出物を含むフィード(供給物)からAPIグループII基油を製造するための改良されたプロセス及び精製プロセスユニットを提供する。
【解決手段】重質APIグループII基油の改良された製造方法であって、a.第1の炭化水素フィードの芳香族抽出を実施して、芳香族抽出物及びさらなる溶媒脱ろうのためのワックス状ラフィネートを製造するステップ;b.芳香族抽出物を第2の炭化水素フィードと混合して2000重量ppmを超えるイオウを有する混合フィードを製造するステップ;c.混合フィードを、70℃で22.6~100mm
2/sの動粘度を有する重質APIグループII基油を製造するように構成された水素処理ユニットに供給するステップ:を含む方法とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重質基油の製造方法であって、
a.芳香族抽出物を製造するために第1の炭化水素フィード、及びさらなる溶媒脱ろうのためのワックス状ラフィネートの芳香族抽出を実施するステップ;
b.芳香族抽出物を第2の炭化水素フィードと混合して2000重量ppmを超えるイオウを有する混合フィードを製造するステップ;
c.混合フィードを、70℃で22.6~100mm2/sの動粘度を有する重質APIグループII基油を製造するように構成された水素処理ユニットに供給する:
ことを含む、上記方法。
【請求項2】
前記芳香族抽出物が30~80体積%の芳香族化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素処理ユニットが、水素化処理、接触脱ろう及び水素化仕上げを行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ワックス状ラフィネートが溶媒脱ろう及び水素化仕上げされて重質APIグループI基油を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合フィードが340℃未満の初期沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記混合フィードが5~20重量%の芳香族抽出物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
重質APIグループII基油が100~120のVIを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
重質APIグループII基油が1.5重量ppm未満の窒素及び260°F(126.7℃)未満のアニリン点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
重質APIグループII基油を蒸留してブライトストックを製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ブライトストックが、ISO-VG320又はISO-VG460のISO-VGを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水素処理ユニット内の動作温度が750°F(399℃)未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ワックス状ラフィネートが溶媒脱ろうされ、水素化仕上げされて重質APIグループI基油を製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
水素処理ユニット内に配置された水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せの流出物からストリッパーボトムを分離することをさらに含み、該水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが水素処理条件の下で、かつ一つ以上の水素化分解触媒を用いて操作され、1~15lv%の芳香族炭化水素、70~90lv%のナフテン系炭素、及び1~25lv%のパラフィン系炭化水素を含み、70℃で22.6mm2/sを超える動粘度を有するストリッパーボトムを製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項4に記載の方法に従って、重質APIグループII基油及び重質APIグループI基油を製造するために使用される場合の一体型精製プロセスユニット。
【請求項15】
重質基油を製造するための一体型精製プロセスユニットであって、
a.
i.重質APIグループI基油を製造するように構成された溶媒脱ろうユニットと、
ii.70℃で22.6~100mm2/sの動粘度を有する重質APIグループII基油を製造するように構成された水素処理ユニット
に流動的に接続された芳香族抽出ユニット;
b.芳香族抽出物を芳香族抽出ユニットから、第2のライン又は容器中の第2の炭化水素フィードに供給して、2000重量ppmを超えるイオウを有する混合フィードを製造する芳香族抽出ユニットからの第1のライン;及び
c.第2のライン又は容器から、混合フィードを水素処理ユニットに供給する水素処理ユニットへの接続部:
を含む、上記ユニット。
【請求項16】
前記水素処理ユニットは、水素化処理ユニット、接触脱ろうユニット、及び水素化仕上げユニットを含む、請求項15に記載の一体型精製プロセスユニット。
【請求項17】
水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが、水素処理ユニット内に配置され、該水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが水素処理条件下で動作するように構成され、水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが70℃での22.6~100mm2/sの動粘度を有するストリッパーボトムを生成するように1種以上の水素分解触媒を含有する、請求項15に記載の一体型精製プロセスユニット。
【請求項18】
前記水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが、1~15lv%の芳香族炭化水素、70~90lv%のナフテン系炭素、及び1~25lv%のパラフィン系炭化水素を含むストリッパーボトムを製造するように構成される、請求項17に記載の一体型精製プロセスユニット。
【請求項19】
前記水素処理ユニットに接続された、ブライトストックを製造するように構成された蒸留ユニットをさらに含む、請求項15に記載の一体型精製プロセスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、重質APIグループII基油の製造方法、及び重質APIグループI基油及び重質APIグループII基油を製造する一体型精製プロセスユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族抽出物を含むフィード(供給物)からAPIグループII基油を製造するための改良されたプロセス及び精製プロセスユニットが必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
この出願は、
a.第1の炭化水素フィードの芳香族抽出を実施して、芳香族抽出物及びさらなる溶媒脱ろうのためのワックス状ラフィネートを製造すること;
b.芳香族抽出物を第2の炭化水素フィードと混合して2000重量ppmを超えるイオウを有する混合フィードを製造すること;
c.混合フィードを、70℃で22.6~100mm2/sの動粘度を有する重質APIグループII基油を製造するように構成された水素処理ユニットに供給すること
を含む、重質基油製造の方法を提供する。
【0004】
この出願はまた、
a.
i.重質APIグループI基油を製造するように構成された溶媒脱ろうユニット;及び
ii.70℃で22.6~100mm2/sの動粘度を有する重質APIグループII基油を製造するように構成された水素処理ユニット
に流動的に(fluidly)接続された芳香族抽出ユニット;
b.芳香族抽出物を芳香族抽出ユニットから第2のライン又は容器中の第2の炭化水素フィードに供給して、2000重量ppmを超えるイオウを有する混合フィードを製造する、芳香族抽出ユニットからの第1のライン;及び
c.混合フィードを水素処理ユニットに供給する、第2のライン又は容器から水素処理ユニットへの接続部
を含む、重質基油を製造するための一体型精製プロセスユニットを提供する。
【0005】
本発明は、本明細書に記載されているように、特許請求の範囲内の要素を適切に含む、特許請求の範囲内の要素からなる、又は特許請求の範囲内の要素から本質的になることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、APIグループI重質基油を製造するための従来のプロセススキームのプロセスフロー図である。
【0007】
【
図2】
図2は、重質基油を製造するための改善された一体型精製プロセスユニットのプロセスフロー図であり、重質APIグループII基油及び重質APIグループI基油を含む。
【0008】
【
図3】
図3は、本発明の方法によって製造されたストリッパーボトム(STB)生成物の粘度指数のチャートである。
【0009】
【
図4】
図4は、本発明の方法によって製造されたストリッパーボトム生成物の100°F(37.78℃)でのSUS粘度のチャートである。
【0010】
【
図5】
図5は、本発明の方法によって製造されたストリッパーボトム生成物のアニリン点のチャートである。
【0011】
【
図6】
図6は、本発明の方法によって製造されたストリッパーボトム生成物の22×22質量分析による芳香族炭化水素分析のチャートである。
【0012】
【
図7】
図7は、本発明の方法によって製造されたストリッパーボトム生成物の22×22質量分析によるナフテン系炭化水素分析のチャートである。
【0013】
【
図8】
図8は、本発明の方法によって製造されたストリッパーボトム生成物の22×22質量分析によるパラフィン系炭化水素分析のチャートである。
【0014】
【
図9】
図9は、本発明の方法によって製造されたストリッパーボトム生成物の226nmでのUV吸光度のチャートである。
【0015】
【
図10】
図10は、本発明の方法によって製造されたストリッパーボトム生成物の255nmでのUV吸光度のチャートである。
【0016】
【
図11】
図11は、本発明の方法によって製造されたストリッパーボトム生成物の272nmでのUV吸光度のチャートである。
【0017】
【
図12】
図12は、本発明の方法によって製造された950°F(510℃)以上で沸騰するストリッパーボトム生成物の収率のチャートである。
【0018】
【
図13】
図13は、本発明の方法によって製造された700~950°F(371~510℃)の範囲で沸騰するストリッパーボトム生成物の収率のチャートである。
【0019】
【
図14】
図14は、本発明の方法によって製造された550°F(288℃)~700°F(371℃)の範囲で沸騰するストリッパーボトム生成物の収率のチャートである。
【0020】
【
図15】
図15は、本発明の方法によって製造されたC5~550°F(288℃)の範囲で沸騰するストリッパーボトム生成物の収率のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
用語集
「API基油カテゴリー(API Base Oil Categories)は、表1に示す異なる基準を満たす基油の分類である。
【表1】
【0022】
「グループII+」は、110を超える、通常は112~119のVIを有するAPIグループII基油のサブセットである、非公式の業界で確立された「カテゴリー」である。
【0023】
「重質イオウ燃料油」(HSFO)は、1重量%を超えるイオウを有する低値油である。これは伝統的にバンカー燃料として使われてきた。HFSOは、より低いイオウレベルを要求する最近の規制により、海洋燃料として使用するには高価なアップグレードと脱硫を必要としている。
【0024】
「芳香族抽出」は、溶媒中性基油を製造するために使用されるプロセスの一部である。芳香族抽出中に、減圧ガス油、脱アスファルト油、又はそれらの混合物を、溶媒抽出ユニット中の溶媒を用いて抽出する。芳香族抽出は、溶媒の蒸発後に、ワックス状のラフィネート及び芳香族抽出物を生成する。
【0025】
「減圧ガス油」(VGO)は、原油減圧蒸留の副生成物であり、水素処理ユニット又は芳香族抽出に送られて基油にアップグレードされる。VGOは、0.101MPaで343℃(649°F)と538℃(1000°F)の間の沸点範囲分布を有する炭化水素を含む。
【0026】
「脱アスファルト油」(DAO)は、溶媒脱アスファルト化された減圧蒸留ユニットからの残留物を指す。精製装置における溶媒脱アスファルト化は、J.Speight:Synthetic Fuels Handbook(合成燃料ハンドブック)、ISBN007149023X、2008、64頁、85~85頁及び121頁に記載されている。
【0027】
「ラフィネート」は、溶媒によって他の成分が溶解及び除去された後に残る元の液体の部分(例えば、VGO又はDAO)を指す。
【0028】
「芳香族抽出物」は、溶媒を蒸発させた後の、芳香族抽出からの生成物の1つである。過去には、典型的には1重量%を超えるイオウを含有するので、HSFOとして使用されてきた。
【0029】
「溶媒脱ろう」は、低温でのパラフィンの結晶化及び濾過による分離による脱ろうプロセスである。溶剤脱ろうは、脱ろうされた油及び軟ろう(スラックワックス)を生成する。脱ろうされた油をさらに水素化仕上げして基油を製造することができる。
【0030】
「水素処理」(hydroprocessing)とは、望ましくない不純物を除去するため及び/又は原料を所望の生成物に変換する目的で、炭素質供給原料を水素及び触媒と、より高温及び高圧で接触させるプロセスを指す。水素処理プロセスの例には、水素化分解、水素化処理(hydrotreating)、接触脱ろう及び水素化仕上げが含まれる。
【0031】
「水素化分解」は、例えば、重質炭化水素をより軽質の炭化水素に変換する、又は芳香族化合物及び/又はシクロパラフィン(ナフテン)を非環状分枝パラフィンに変換するような、水素化及び脱水素化が炭化水素の分解/断片化に付随するプロセスを指す。
【0032】
「水素化処理」(hydrotreating)は、イオウ及び/又は窒素含有炭化水素フィードを、典型的には水素化分解機能と関連して、イオウ及び/又は窒素含量が低減された炭化水素生成物に変換し、硫化水素及び/又はアンモニアを(それぞれ)副生成物として生成するプロセスを指す。
【0033】
「接触脱ろう」又は水素化異性化は、ノルマルパラフィンを水素の存在下及び触媒上でそれらのより分岐した対応物に異性化するプロセスを指す。
【0034】
「水素仕上げ」とは、痕跡量の芳香族化合物、オレフィン、着色体及び溶媒を除去することによって、水素化仕上げされた生成物の酸化安定性、UV安定性及び外観を改善することを意図したプロセスを指す。本開示において使用される場合、用語「UV安定性」は、UV光及び酸素に暴露されたときに試験される炭化水素の安定性を指す。不安定性は、目に見える析出物が形成されたとき(通常、フロック又は曇りとして見られる)、又は紫外光及び空気に暴露されると暗色になるときに示される。水素化仕上げの一般的な説明は、米国特許第3,852,207号及び第4,673,487号に見出すことができる。
【0035】
「炭化水素」は、水素及び炭素原子を含有するが、酸素、イオウ又は窒素などのヘテロ原子を含むことができる化合物又は物質を意味する。
【0036】
「スラックワックス」は、3~50%の油分含有量を含有する石油ワックスを意味する。
【0037】
「動粘度」とは、ASTM D445-15で測定したのと同じ温度及び圧力での油の密度に対する動粘度の比をいう。
【0038】
「セイボルトユニバーサルセカンド」(Saybolt universal second)(SUS)粘度は、古典力学で使用される動粘度の尺度である。それはセイボルト粘度計を使用して、制御された温度で、60cm3の油が較正されたチューブを通って流れるのに要する時間である。この方法は現在業界では廃止されているが、SUS粘度はASTM D2161-10で求められるように、動粘度から換算できる。
【0039】
油の「アニリン点」は、ASTM D611-12によって測定され、アニリンと油との等量が混和性である、すなわち混合すると単一相を形成する最低温度として定義される。アニリンの混和性は油中に類似の(すなわち芳香族性の)化合物の存在を示唆するので、アニリン点の値は、油中の芳香族化合物の含有量の近似値を与える。アニリン点が低いほど、混和性を確保するために、より低い温度が必要とされるため、油中の芳香族化合物の含有量が多いことになる。
【0040】
「紫外線(UV)吸光度」は、石油製品の特性評価に有用な測定値であり、ASTM D2008-12で決定できる。
【0041】
本開示の文脈における「重質基油」は、100℃での10mm2/sを超える動粘度を有する基油を指す。
【0042】
「ブライトストック」は40℃で180mm2/sを超える、例えば40℃で250mm2/sを超える、又は40℃で400~1100mm2/sの範囲の動粘度を有する重質基油を指す。
【0043】
「カットポイント」は、所定の程度の分離に達する真の沸点(TBP)曲線上の温度を指す。
【0044】
「TBP」は、ASTM D2887-13によりSimulated Distillation(SimDist)によって決定された、炭化水素質のフィード又は生成物の沸点を指す。
【0045】
「炭化水素質」は、水素及び炭素原子を含有し、酸素、イオウ又は窒素などのヘテロ原子を含むことができる化合物又は物質を意味する。
【0046】
「LHSV」は液体時間空間速度を意味する。
【0047】
「SCF/B」は、炭化水素質フィードのバレル当たりのガス(例えば、窒素、水素、空気など)の標準立方フィートの単位を指す。
【0048】
「ゼオライトベータ」とは、直線状の12員環チャネルを有し、交差した12員環チャネルを有し、約15.3T/1000Å3の骨格密度を有する3次元結晶構造を有するゼオライトを指す。ゼオライトベータは、Ch.Baerlocher及びL.B.McCusker、Database of Zeolite Structure(ゼオライト構造のデータベース):http://www.iza-structure.org/databases/に記載されているBEA骨格を有する。
【0049】
「SiO2/Al2O3モル比(SAR)は、ICP元素分析によって決定される。無限大のSARは、ゼオライト中にアルミニウムが存在しないこと、すなわちシリカ対アルミナのモル比が無限であることを意味する。この場合、ゼオライトは本質的にすべてシリカから構成される。
【0050】
「ゼオライトUSY」は、超安定化Yゼオライトを指す。Yゼオライトは、3以上のSARを有する合成フォージャサイト(FAU)ゼオライトである。Yゼオライトは、水熱安定化、脱アルミニウム化及び同形置換のうちの1種以上によって超安定化され得る。ゼオライトUSYは、出発(合成されたままの)Na-Yゼオライト前駆体よりも高い骨格ケイ素含量を有する任意のFAU型ゼオライトであり得る。
【0051】
「触媒担体」は、触媒が付着している材料、通常は表面積の大きい固体を指す。
【0052】
「周期表」は、2007年6月22日付のIUPAC元素の周期表のバージョンを指し、周期表族の番号付けスキームは、Chemical And Engineering News、63(5)、27(1985)に記載されているとおりである。
【0053】
「OD酸性度」は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって80℃で重水素化ベンゼンと交換された架橋ヒドロキシル基の量を指す。OD酸性度は、触媒中のブレンステッド酸サイト密度の尺度である。ODシグナルの吸光係数は、1Hマジックアングル回転核磁気共鳴(MAS NMR)分光法で較正した標準ゼオライトベータ試料の分析によって決定した。ODとOH吸光係数との間の相関は、以下のように得られた:
【0054】
【0055】
「ドメインサイズ」は、ゼオライトベータ触媒で観測され測定された構造単位の計算された面積(単位:nm2)である。ドメインはPaul A. Wrightら“Direct Observation of Growth Defects in Zeolite Beta”(ゼオライトベータにおける成長欠陥の直接観察)、JACS Communications、2004年12月22日発行により記載されている。ゼオライトベータのドメインサイズを測定するために使用される方法は、本明細書においてさらに記載される。
【0056】
「酸サイト分布指数(ASDI)」は、ゼオライトの過活動部位濃度の指標である。いくつかの実施形態では、ASDIが低いほど、より重質の中間蒸留生成物の生成に対してゼオライトがより大きな選択性を有する可能性が高くなる。
【0057】
「API比重」は、ASTM D4052-11によって決定された、水に対する石油供給原料又は生成物の比重(gravity)を意味する。
【0058】
「ISO-VG」は、ISO3448:1992で定義されているように、工業用途に推奨される粘度分類を指す。
【0059】
「粘度指数」(VI)は、ASTM D2270-10(E2011)によって決定される、潤滑剤の温度依存性を表す。
【0060】
「多環指数」(PCI)は、炭化水素フィード中にある多環式芳香族化合物の量に関する計算値を指す。PCIを決定する試験方法は、ASTM D6379-11である。
【0061】
「容器」は、液体を保持又は輸送する任意の入れ物又はチューブを指す。容器の例は様々であり、ドラム、タンク、パイプ、及びミキサーが含まれる。さらに、容器は、塔、反応器、又は熱交換器などのプロセス圧力容器であってもよい。
【0062】
詳細な説明
芳香族抽出プロセスは、改質油からベンゼン、トルエン及びキシレンを選択的に抽出するために1種以上の溶媒を使用し、芳香族抽出物及びワックス状ラフィネートを生成する。米国では、大部分の市販の芳香族抽出ユニットは、以下のプロセスの1つ以上を使用する:
【0063】
・Dow Chemicalによって開発され、Honeywell UOPによりライセンス供与されたUDEX
・Tetra(テトラエチレングリコールを使用)及びCAROM(Union Carbideによって開発され、Lindeによってライセンス供与されている)、及び
・Royal Dutch Shell社によって開発され、Honeywell UOPによりライセンス供与されたSulfolane(商標)。これらの異なる芳香族抽出プロセスの一般的な説明は、http://www.cieng.com/a-111-319-ISBL-Aromatics-Extraction.aspxに記載されている。一実施形態では、芳香族抽出に使用される溶媒は、フルフラール、N-メチルピロリドン(NMP)、又はそれらの混合物である。
【0064】
一実施形態では、ワックス状ラフィネートを溶媒脱ろう及び水素化仕上げして、重質APIグループI基油を製造する。
【0065】
一実施形態では、芳香族抽出物は、30~80体積%の芳香族化合物、又は40~65体積%の芳香族化合物のような、20体積%を超える芳香族化合物を含む。一実施形態では、芳香族抽出物は、表2に記載の範囲内の1つ以上の特性を有する。
【0066】
【0067】
芳香族抽出物を第2の炭化水素フィードと混合して混合フィードとし、この混合フィードを水素処理ユニットに供給して70℃で22.6~100mm2/sの動粘度を有する重質APIグループII基油を製造する。
【0068】
混合フィードは、2000重量ppmを超えるイオウを有するが、優れた品質の重質APIグループII基油を製造するために十分に構成された水素処理ユニットで水素処理される。一実施形態では、混合フィードは、2000重量ppm超~40,000重量ppmのイオウを有することができる。
【0069】
一実施形態では、第2の炭化水素フィードは、250℃~340℃未満の初期沸点を有することができる。一実施形態では、生成する重質APIグループII基油の収率を最適化するために、第2の炭化水素フィードは300℃~340℃未満の初期沸点を有する。一実施形態では、芳香族抽出物及び第2の炭化水素フィードは、340℃(644°F)未満の初期沸点を有する混合供給材料に混合される。一実施形態では、混合フィードは、300℃(572°F)を超える初期沸点を有する。例えば、一実施形態では、混合フィードは、300℃(572°F)から339℃(642°F)の初期沸点を有することができる。
【0070】
一実施形態では、芳香族抽出物及び第2の炭化水素フィードは、芳香族抽出物の3重量%を超える、例えば芳香族抽出物の5~20重量%を含む混合フィードに混合される。
【0071】
一実施形態では、水素処理ユニットは、水素化処理、接触脱ろう及び水素化仕上げを行う。一実施形態において、水素処理ユニットは、水素化処理、接触脱ろう触媒を用いた接触脱ろう、及び水素化仕上げ触媒を用いた水素化仕上げを行う。
【0072】
一実施形態では、水素処理ユニットの条件は、以下を含む:
【0073】
【0074】
一実施形態では、水素処理ユニット内の動作温度は750°F(399℃)未満、例えば650°F(343°C)から749°F(398°C)である。
【0075】
一実施形態では、水素処理ユニット内の条件は750°F(399℃)未満で15~35重量%の変換を与える。
【0076】
本明細書に記載されたプロセスで使用される精製装置は、典型的には商業的精製操作に用いられる従来のプロセス装置からなることができ、これは生成物と未変換供給原料の回収のための芳香族抽出、溶媒脱ろう、水素化処理、水素化分解、接触脱ろう、及び水素化仕上げ装置を含み、苛性スクラバー、フラッシュドラム、吸引トラップ、酸洗浄液、精留塔、ストリッパー、セパレーター、蒸留塔などを含む。
【0077】
一実施形態では、水素処理(例えば、水素化処理、水素化分解、接触脱ろう又は水素化仕上げ段階)は、それぞれが同じ若しくは異なる水素処理触媒の1つ以上の触媒床を含むことができる単一の反応器内の1つ以上の固定床反応器又は反応ゾーンを用いて達成することができる。他のタイプの水素処理触媒床も使用できるが、一実施形態では、固定床が使用される。本明細書での使用に適した他のタイプの水素処理触媒床としては、流動床、沸騰床、スラリー床及び移動床が挙げられる。
【0078】
一実施形態では、様々な水素処理反応が一般的に発熱性であり得るため、反応器又は反応ゾーン間、又は同じ反応器又は反応ゾーン内の触媒床間のステージ間冷却又は加熱を水素処理に用いることができる。水素処理中に発生した熱の一部を回収することができる。この熱回収オプションが利用できない場合、従来の冷却は、冷却水又は空気のような冷却ユーティリティを介して、又は水素急冷ストリームの使用を介して行われ得る。このようにして、最適な反応温度をより容易に維持することができる。
【0079】
一実施形態では、水素化処理は、水素処理ユニット内の水素化分解触媒を用いた水素化分解と併せて行われる。
【0080】
一実施形態では、本方法は、水素処理ユニット内に配置された水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せの流出物からストリッパーボトムを分離するステップを含み、水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せを水素処理条件下で、一つ以上の水素化分解触媒を用いて操作し、70℃での動粘度が22.6mm2/sより大きいストリッパーボトムを生成する。一つの下位実施形態では、水素処理ユニット内に配置された水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せの流出物から分離されたストリッパーボトムは、1~15lv%の芳香族炭化水素、70~90lv%のナフテン系炭素、及び1~25lv%のパラフィン系炭化水素を含む。
【0081】
水素化分解触媒
一実施形態では、水素化分解触媒は、少なくとも1種の水素化分解触媒担体、1種以上の金属、任意に1種以上のモレキュラーシーブ、及び場合により1種以上の促進剤を含む。
【0082】
1つの下位実施形態では、水素化分解触媒担体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ベリリウム、アルミナ-シリカ、アルミナ-酸化チタン、アルミナ-酸化マグネシウム、シリカ-酸化マグネシウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-酸化トリウム、シリカ-酸化ベリリウム、シリカ-酸化チタン、酸化チタン-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-酸化トリウム、シリカ-アルミナ-酸化チタン、又はシリカ-アルミナ-酸化マグネシウムからなる群から選ばれる。1つの下位実施形態では、水素化分解触媒担体は、アルミナ、シリカ-アルミナ、及びそれらの組み合わせである。
【0083】
別の下位実施形態では、水素化分解触媒担体は、平均メソ細孔直径が70Å~130Åである非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【0084】
別の下位実施形態では、水素化分解触媒担体は、ICP元素分析によって決定された水素化分解触媒担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量でSiO2を含有する非晶質シリカ-アルミナ材料であり、450~550m2/gのBET表面積及び0.75~1.05mL/gの全細孔容積を有する。
【0085】
別の下位実施形態では、水素化分解触媒担体は、ICP元素分析によって決定された水素化分解触媒担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量でSiO2を含有する非晶質シリカ-アルミナ材料であり、450~550m2/gのBET表面積、0.75~1.05mL/gの全細孔容積、及び70~130Åの平均メソ細孔直径を有する。
【0086】
1つの下位実施形態では、水素化分解触媒中の水素化分解触媒担体の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて5重量%~80重量%である。
【0087】
1つの下位実施形態では、水素化分解触媒は、BEA-、ISV-、BEC-、IWR-、MTW-、*STO-、OFF-、MAZ-、MOR-、MOZ-、AFI-、*NRE、SSY-、FAU-、EMT-、ITQ-21-、ERT-、ITQ-33-、及びITQ-37-型モレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のモレキュラーシーブを任意に含有することができる。
【0088】
1つの下位実施形態において、1種以上のモレキュラーシーブは、FAUフレームワークトポロジーを有するモレキュラーシーブ、BEAフレームワークトポロジーを有するモレキュラーシーブ、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0089】
1つの下位実施形態では、水素化分解触媒中のモレキュラーシーブ材料の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて0重量%~60重量%である。別の下位実施形態では、水素化分解触媒中のモレキュラーシーブ材料の量は、0.5重量%~40重量%である。
【0090】
1つの下位実施形態において、水素化分解触媒は、非ゼオライト性モレキュラーシーブを任意に含有し得る。使用可能な非ゼオライト性モレキュラーシーブの例には、シリコアルミノホスフェート(SAPO)、フェロアルミノホスフェート、チタンアルミノホスフェート、及び米国特許第4,913,799号及びそこに引用されている参考文献に記載されている種々のELAPOモレキュラーシーブが含まれる。種々の非ゼオライトモレキュラーシーブの製造に関する詳細は、米国特許第5,114,563号(SAPO);米国特許第4,913,799号、及び米国特許第4,913,799号に引用されている様々な参考文献に見出すことができる。メソ細孔モレキュラーシーブ、例えばM41S族の材料(J.Am.Chem.Soc.、114:10834 10843(1992))、MCM-41(米国特許第5,246,689号、第5,198,203号、第5,334,368号)、及びMCM-48(Kresgeら、Nature 359:710(1992))もまた使用することができる。
【0091】
1つの下位実施形態では、モレキュラーシーブは、24.15Å~24.45Åの単位格子サイズを有するYゼオライトを含む。別の下位実施形態では、モレキュラーシーブは、24.15Å~24.35Åの単位格子サイズを有するYゼオライトを含む。別の下位実施形態では、モレキュラーシーブは、5未満のアルファ値及び1~40マイクロモル/gのブレンステッド酸度を有する、低酸性度で高度に脱アルミニウムされた超安定Yゼオライトである。1つの下位実施形態において、モレキュラーシーブは、以下の表4に記載の特性を有するYゼオライトである。
【0092】
【0093】
別の下位実施形態では、モレキュラーシーブは、以下の表5に記載の特性を有するYゼオライトを含む。
【0094】
【0095】
別の下位実施形態では、水素化分解触媒は、0.1重量%~40重量%(触媒のバルク乾燥重量に基づく)の、上記表4に記載の特性を有するYゼオライトと、1重量%~60重量%(触媒のバルク乾燥重量に基づく)の、約5未満のアルファ値及び1~40マイクロモル/gのブレンステッド酸性度を有する、低酸性度で高度に脱アルミニウムされた超安定Y型ゼオライトを含有する。
【0096】
別の下位実施形態では、水素化分解触媒は、0.05~0.12のASDIを有するゼオライトUSYを含む。
【0097】
別の下位実施形態では、水素化分解触媒は、OD酸性度20~400μmol/g及び平均ドメインサイズ800~1500nm2を有する0.5~10重量%のゼオライトベータを含む。平均ドメインサイズは透過電子(TEM)とデジタル画像分析との組み合わせによって以下のように決定される。
【0098】
I.ゼオライトベータサンプル調製:
ゼオライトベータサンプルは、少量のゼオライトベータをエポキシ及びマイクロトーミング中に埋め込むことによって調製される。適切な手順の説明は、多くの標準的な顕微鏡検査の教科書で見つけることができる。
【0099】
ステップ1.ゼオライトベータ粉末の小さな代表的な部分をエポキシに包埋する。エポキシを硬化させる。
【0100】
ステップ2.ゼオライトベータ粉末の代表的な部分を含有するエポキシは、80~90nmの厚さにミクロトームされる。ミクロトーム切片を、顕微鏡供給業者から入手可能な400メッシュの3mm銅グリッド上に集める。
【0101】
ステップ3.ゼオライトベータサンプルがTEM中の電子ビームの下で帯電するのを防ぐために、導電性炭素の十分な層をミクロトーム切片上に真空蒸発させる。
【0102】
II.TEMイメージング:
ステップ1.上記のように調製されたゼオライトベータサンプルを低倍率、例えば250,000~1,000,000xで調査して、ゼオライトベータチャネルを見ることができる結晶を選択する。
【0103】
ステップ2.選択したゼオライトベータ結晶をそのゾーン軸上に傾けて、シェーザーデフォーカス近くに集束させ、画像を2,000,000倍以上で記録した。
【0104】
III.平均ドメインサイズ(nm2)を得るための画像分析:
ステップ1.前述の記録されたTEMデジタル画像を市販の画像分析ソフトウェアパッケージを用いて分析する。
【0105】
ステップ2.個々のドメインを単離し、ドメインサイズをnm2単位で測定する。投影がチャンネルビューの下にはっきりと見えないドメインは測定に含めない。
【0106】
ステップ3.統計的に関連する数のドメインが測定される。生データはコンピュータのスプレッドシートプログラムに保存される。
【0107】
ステップ4.記述統計量および頻度が決定される。算術平均(dav)又は平均ドメインサイズ及び標準偏差(s)は、以下の式を使用して計算される:
【0108】
【0109】
1つの下位実施形態において、ゼオライトベータの平均ドメインサイズは、900~1250nm2、例えば1000~1150nm2である。
【0110】
1つの実施形態では、水素化分解触媒は、1種以上の金属を含む。1つの実施形態では、1つ又はの金属は、周期表の第6族及び第8族~第10族の元素、及びそれらの混合物からなる群から選択される。1つの下位実施形態では、各金属はニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。別の下位実施形態では、水素処理触媒は、少なくとも1種の第6族金属と、周期表の第8~10族から選択される少なくとも1種の金属とを含有する。例示的な金属の組合せとしてはNi/Mo/W、Ni/Mo、Ni/W、Co/Mo、Co/W、Co/W/Mo、Ni/Co/W/Mo、及びPt/Pdを挙げることができる。
【0111】
1つの下位実施形態では、水素化分解触媒中の金属酸化物材料の総量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて0.1重量%~90重量%である。1つの下位実施形態では、水素化分解触媒は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて2重量%~10重量%の酸化ニッケル及び8重量%~40重量%の酸化タングステンを含有する。
【0112】
1つの下位実施形態では、水素化分解触媒の形成に希釈剤を使用することができる。適切な希釈剤としては、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素、酸化チタン、粘土、セリア及びジルコニアなどの無機酸化物、及びそれらの混合物が挙げられる。1つの下位実施形態では、水素化分解触媒中の希釈剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて0重量%~35重量%である。1つの下位実施形態では、水素化分解触媒中の希釈剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて0.1重量%~25重量%である。
【0113】
1つの下位実施形態では、水素化分解触媒は、リン(P)、ホウ素(B)、フッ素(F)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の促進剤を含有することができる。1つの下位実施形態では、水素化分解触媒中の促進剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて0重量%~10重量%である。1つの下位実施形態では、水素化分解触媒中の促進剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に基づいて0.1重量%~5重量%である。
【0114】
一実施形態では、第1又は第2の水素化分解段階のための水素処理条件は以下の通りである:全液体時間空間速度(LHSV)は約0.25~4.0hr-1、例えば約0.40~3.0hr-1;水素分圧は200psigより大きく、例えば500~3000psigであり;水素再循環速度は、500SCF/Bより大きく、例えば1000~7000SCF/Bであり;温度は600°F(316°C)~850°F(454°C)、例えば700°F(371C°)~850°F(454C°)の範囲である。
【0115】
接触脱ろう触媒
一実施形態では、接触脱ろうプロセスを実施するのに使用される触媒は、少なくとも1種の脱ろう触媒担体、1種以上の貴金属、1種以上のモレキュラーシーブ、及び任意に1種以上の促進剤を含む。
【0116】
1つの下位実施態様において、脱ろう触媒担体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ベリリウム、アルミナ-シリカ、アルミナ-酸化チタン、アルミナ-酸化マグネシウム、シリカ-酸化マグネシウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-酸化トリウム、シリカ-酸化ベリリウム、シリカ-酸化チタン、酸化チタン-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-酸化トリウム、シリカ-アルミナ-酸化チタン、又はシリカ-アルミナ-酸化マグネシウム、好ましくはアルミナ、シリカ-アルミナ、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0117】
1つの下位実施形態では、脱ろう触媒担体は、平均メソ細孔直径が70Åと130Åとの間のアモルファスシリカ-アルミナ材料である。
【0118】
別の下位実施形態では、脱ろう触媒担体は、ICP元素分析によって測定される脱ろう触媒担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量でSiO2を含有する、450~550m2/gのBET表面積、及び0.75~1.05mL/gの全細孔容積の非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【0119】
別の下位実施形態では、脱ろう触媒担体は、ICP元素分析によって決定される脱ろう触媒担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量でSiO2を含有し、450~550m2/gのBET表面、0.75~1.05mL/gの全細孔容積、及び70Å~130Åの平均メソ細孔直径を有する非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【0120】
1つの下位実施形態では、接触脱ろうう触媒中の脱ろう触媒担体の量は、接触脱ろう触媒のバルク乾燥重量に基づいて5重量%~80重量%である。
【0121】
一実施形態では、接触脱ろう触媒は、SSZ-32、小結晶SSZ-32(SSZ-32x)、SSZ-91、ZSM-23、ZSM-48、EU-2、MCM-22、ZSM-5、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-35及びMCM-68型モレキュラーシーブ、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のモレキュラーシーブを任意に含有することができる。SSZ-91は、2015年8月27日に出願された米国特許出願第14/837,071号に記載されている。1つの実施形態では、接触脱ろう触媒は、非ゼオライト性モレキュラーシーブを任意に含むことができる。使用することができる非ゼオライト性モレキュラーシーブの例には、シリコアルミノホスフェート(SAPO)、フェロアルミノホスフェート、チタンアルミノホスフェート及び前述の様々なELAPOモレキュラーシーブが含まれる。
【0122】
1つの実施形態では、接触脱ろう触媒中のモレキュラーシーブ材料の量は、接触脱ろう触媒のバルク乾燥重量に基づいて0重量%~80重量%であり得る。1つの下位実施形態において、接触脱ろう触媒中のモレキュラーシーブ材料の量は、0.5重量%~40重量%である。1つの下位実施形態では、接触脱ろう触媒中のモレキュラーシーブ材料の量は、35重量%~75重量%である。1つの下位実施形態では、接触脱ろう触媒中のモレキュラーシーブ材料の量は、45重量%~75重量%である。
【0123】
1つの実施形態では、接触脱ろう触媒は、周期表の第10族からの元素及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の貴金属を含有する。1つの下位実施形態では、各貴金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0124】
水素化仕上げ触媒
一実施形態において、水素化仕上げプロセスを実施する際に使用される水素化仕上げ触媒は、少なくとも1種の水素仕上げ触媒担体、1種以上の金属、及び任意に1種以上の促進剤を含む。
【0125】
1つの下位実施形態では、水素化仕上げ触媒担体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ベリリウム、アルミナ-シリカ、アルミナ-酸化チタン、アルミナ-酸化マグネシウム、シリカ-酸化マグネシウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-酸化トリウム、シリカ-酸化ベリリウム、シリカ-酸化チタン、酸化チタン-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-酸化トリウム、シリカ-アルミナ-酸化チタン、又はシリカ-アルミナ-酸化マグネシウムからなる群から選択することができる。1つの下位実施形態では、水素化仕上げ触媒担体は、アルミナ、シリカ-アルミナ及びその組み合わせである。
【0126】
1つの下位実施形態では、水素化仕上げ触媒担体は、平均メソ細孔直径が70Åと130Åの間にある非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【0127】
別の下位実施形態では、水素化仕上げ触媒担体は、ICP元素分析によって決定される水素化仕上げ触媒担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量でSiO2を含み、450~550m2/gのBET表面積及び0.75~1.05mL/gの全細孔容積を有する非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【0128】
別の下位実施形態では、水素化仕上げ触媒担体は、ICP元素分析によって決定される水素化仕上げ触媒担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量でSiO2を含有し、450~550m2/gのBET表面積、0.75~1.05mL/gの全細孔容積、及び70~13Åの平均メソ細孔直径を有する非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【0129】
一実施形態では、水素化仕上げ触媒における水素化仕上げ触媒担体の量は、水素化仕上げ触媒のバルク乾燥重量に基づいて5重量%~80重量%である。
【0130】
一実施形態では、水素化仕上げ触媒は、周期表の第6族及び第8~10族の元素、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の金属を含有してもよい。1つの下位実施形態では、各金属は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。別の下位実施形態では、水素化仕上げ触媒は、少なくとも1種の第6族金属と、周期表の第8~10族から選択される少なくとも1種の金属とを含有する。水素化仕上げ触媒における金属の組合せとして、Ni/Mo/W、Ni/Mo、Ni/W、Co/Mo、Co/W、Co/W/Mo、Ni/Co/W/Mo、及びPt/Pdを例示することができる。
【0131】
1つの下位実施形態では、水素化仕上げ触媒中の金属酸化物材料の総量は、水素化仕上げ触媒のバルク乾燥重量に基づいて0.1重量%~90重量%である。1つの下位実施形態では、水素化仕上げ触媒は、水素化仕上げ触媒のバルク乾燥重量に基づいて2重量%~10重量%の酸化ニッケル及び8重量%~40重量%の酸化タングステンを含有する。
【0132】
一実施形態では、水素化仕上げ触媒の形成に希釈剤を使用することができる。適切な希釈剤としては、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素、酸化チタン、粘土、セリア及びジルコニアなどの無機酸化物、及びそれらの混合物が挙げられる。1つの下位実施形態では、水素化仕上げ触媒中の希釈剤の量は、水素化仕上げ触媒のバルク乾燥重量に基づいて0重量%~35重量%であり得る。1つの下位実施形態では、水素化仕上げ触媒中の希釈剤の量は、水素化仕上げ触媒のバルク乾燥重量に基づいて0.1重量%~25重量%である。
【0133】
1つの下位実施形態では、リン(P)、ホウ素(B)、フッ素(F)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の促進剤を含有することができる。1つの下位実施形態において、水素化仕上げ触媒中の促進剤の量は、水素化仕上げ触媒のバルク乾燥重量に基づいて0重量%~10重量%であり得る。1つの下位実施形態では、水素化仕上げ触媒中の促進剤の量は、水素化仕上げ触媒のバルク乾燥重量に基づいて0.1重量%~5重量%である。
【0134】
1つの下位実施形態では、水素化仕上げ触媒は、水素化仕上げ触媒中の金属の量が水素化仕上げ触媒のバルク乾燥重量に基づいて30重量%以上である、バルク金属又は多金属触媒である。
【0135】
基油製品
重質APIグループII基油は、70℃で22.6~100mm2/sの動粘度を有する。
一実施形態では、重質APIグループII基油は130未満のVIを有する。一実施形態では、重質APIグループII基油は100~120のVIを有する。一つの下位実施形態では、重質APIグループII基油は106~116のVIを有する。
【0136】
一実施形態では、APIグループII基油は、10重量ppm未満の窒素を有する。一実施形態では、重質APIグループII基油は、3重量ppm未満の窒素を有する。例えば、一実施形態では、重質APIグループII基油は、0~3重量ppmの窒素を有することができる。異なる下位実施形態において、重質APIグループII基油は1重量ppm未満の窒素を有し、116未満のVIを有するか、又は重質APIグループII基油は1~2重量ppmの窒素を有し、110未満のVIを有する。
【0137】
一実施形態では、APIグループII基油は、285°F(140.6℃)未満のアニリン点を有する。一実施形態では、重質APIグループII基油は、270°F(132.2°C)未満のアニリン点、例えば250~270°F(121.1~132.2℃)を有する。下位実施形態では、重質APIグループII基油は1.5重量ppm未満の窒素と、260°F(126.7℃)未満のアニリン点を有する。
【0138】
1つの実施形態では、重質APIグループII基油は、工業用油に優れた有用性を有する。工業用油の場合、40℃の基準温度は機械の動作温度を表し、工業用油にはISO-VG分類を割り当てることができる。ISO-VG分類の各後続の粘度勾配(VG)は、約50%高い粘度を有するが、各等級の最小値及び最大値は、中点から±10%の範囲にわたる。例えば、ISO-VG22は、40℃で22mm2/s±10%の粘度等級を指す。異なる温度での粘度は、40℃での粘度及び潤滑剤の温度依存性を表す粘度指数(VI)を用いて計算することができる。表6は、異なるISO-VG分類に対する40℃での動粘度の範囲を示す。
【0139】
【0140】
一実施形態では、基油生成のためのプロセスは、重質APIグループII基油を蒸留してブライトストックを生成することをさらに含む。下位実施形態では、ブライトストックは、ISO-VG320又はISO-VG460のISO-VGを有することができる。
【0141】
一体型精製プロセスユニット
一体型精製プロセスユニットの一実施形態の一例が
図2に示されている。一体型精製プロセスユニットは、重質基油を製造し、重質APIグループIベースを生成する溶媒脱ろうユニットと70℃で22.6~100mm
2/sの動粘度を有する重質APIグループII基油を生成する水素処理ユニットの両方に流動的に結合した芳香族抽出ユニットを含む。この実施形態では、一体型精製プロセスユニットは、芳香族抽出ユニットから芳香族抽出物を供給する芳香族抽出ユニットから第二の炭化水素フィードを供給して混合フィードを作る他のラインへのラインを有する。混合フィードは、水素処理ユニットに供給される。水素処理ユニットに供給される混合フィードは、2,000重量ppmを超えるイオウを有する。
【0142】
一実施形態では、一体型精製プロセスユニット内の水素処理ユニットは、水素化処理ユニット、接触脱ろうユニット、及び水素化仕上げユニットを含む。水素処理条件及びこれらのユニットで使用される触媒は、本開示において先に記載したとおりである。
【0143】
一実施形態では、水素化処理及び水素化分解ユニットの組み合わせが、水素処理ユニット内に配置される。下位実施形態では、水素化処理及び水素化分解ユニットの組み合わせは、水素処理条件下で動作するように構成され、1種以上の水素化分解触媒を含有し、その結果、水素化処理及び水素化分解ユニットの組み合わせにより、70℃で22.6~100mm2/sの動粘度を有するストリッパーボトムを製造する。別の下位実施形態では、水素化処理及び水素化分解ユニットを組み合わせて、1~15lv%の芳香族炭化水素、70~90lv%のナフテン系炭素、及び1~25lv%のパラフィン系炭化水素を含むストリッパーボトムを製造するように構成することができる。
【0144】
溶媒脱ろう
先に記載したように、一実施形態では、ワックス状ラフィネートを溶媒脱ろう及び水素化仕上げして、重質APIグループI基油を製造する。
【0145】
基油を製造するための溶媒脱ろうは、70年以上にわたって使用されており、例えば、Chemical Technology of Petroleum、第3版、William Gruse及びDonald Stevens、McGraw-Hill Book Company、Inc.,ニューヨーク、1960年、566~570頁に記載されている。使用する場合、溶媒脱ろうの基本プロセスは以下を含む:
【0146】
*ワックス状の炭化水素流を溶媒と混合する、
*混合物を冷却してワックス結晶を析出させる、
*典型的には回転ドラムフィルターを用いてろ過によりワックスを分離する、
*ワックス及び脱ろうされた油のろ液から溶媒を回収する。
【0147】
一実施形態では、溶媒脱ろうに使用される溶媒は、溶媒脱ろうプロセスにリサイクルすることができる。溶媒脱ろうに適した溶媒は、例えばケトン(例えばメチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン)及び芳香族化合物(例えばトルエン)を含むことができる。他のタイプの適切な溶媒は、C3-C6ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びそれらの混合物)、C6-C10芳香族炭化水素(例えばトルエン)、ケトン及び芳香族化合物の混合物(例えばメチルエチルケトン及びトルエン)、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン及びそれらの混合物のような液状の、通常は気体状のC2-C4炭化水素のような自動冷凍(auto-refrigerative)溶媒である。メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンとの混合物も使用することができる。
【0148】
溶媒脱ろうの開始以来、その改良がなされてきた。例えば、ExxonのDILCHILL(登録商標)脱ろうプロセスは、ワックスの沈殿を促進しながら油ストックの少なくとも一部を可溶化する予め冷却された溶媒を用いて、細長い攪拌容器、好ましくは垂直塔内でワックス状の炭化水素油ストックを冷却することを含む。ワックス状油は、その曇点以上の温度で細長い段階的冷却ゾーン又は塔に導入される。冷却脱ろう溶媒は、溶媒とワックス/油混合物が冷却ゾーンを進行する際にそれらを実質的に瞬間的に混合させるために、その中で高度の攪拌を維持しながら、複数の点又は段階に沿って冷却ゾーンに徐々に導入され、これによりオイル中のワックスの少なくとも一部を沈殿させる。DILCHILL(登録商標)脱ろうは、米国特許第4,477,333号、第3,773,650号、及び第3,775,288号に、より詳細に論じられている。テキサコはまたこのプロセスにおける精製を開発している。例えば、米国特許第4,898,674号は、メチルエチルケトン(MEK)とトルエンとの比を制御し、この比を調整できることがいかに重要であるかを開示している。なぜならそれにより様々なベースストックを処理するためには最適の濃度を使用できるからである。一般に、ブライトストックを処理する場合、0.7:1から1:1の比を用いることができ、ライトストックを処理する場合、1.2:1~約2:1の比を用いることができる。
【0149】
一実施形態では、ワックス状ラフィネートを-10℃~-40℃の範囲の温度、又は20℃~-35℃の範囲の温度に冷却して、ワックス結晶を析出させることができる。析出したワックス状結晶はろ過により分離することができる。ろ過は、任意の適切な材料で作ることができる濾布を含むフィルターを使用することができ、織物繊維、例えば綿;多孔質金属布;又は合成材料製の布が挙げられる。
【0150】
一実施形態では、溶媒脱ろう条件としては、ワックス状ラフィネートに添加されるとき、脱ろう温度で約5:1~約20:1の液体/固体重量比、及び1.5:1~5:1の溶媒/ワックス状ラフィネート体積比を提供するのに十分である溶媒の量を含む。
【実施例0151】
実施例1:芳香族抽出物
図1に示すように、グループI重質基油を製造するために使用された精製装置からの芳香族抽出物のサンプルを得て分析した。この芳香族抽出物の特性は以下の通りであった:
【0152】
【0153】
実施例2:脱アスファルト油及び脱アスファルト油と芳香油抽出物とのブレンド
精製装置から90のVIを有する典型的な脱アスファルト油のサンプルを得、実施例1に記載の芳香族抽出物の10体積%とブレンドした。これらの2つのサンプルフィードの特性を以下に記載する。
【0154】
【0155】
実施例3:脱アスファルト油及び脱アスファルト油と芳香族抽出物とのブレンドの水素処理
実施例2に記載された2つのサンプルフィードを二反応器マイクロユニットで水素処理した。第1の水素化処理反応器は、基油製造のための前処理として使用される高活性ISOTREATING(登録商標)触媒を含んでいた。第2の反応器は、上部に同じISOTREATING(登録商標)触媒を含み、底部に高性能ISOCRACKING(登録商標)触媒を含む層状触媒系を含んでいた。ISOTREATING(登録商標)及びISOCRACKING(登録商標)はChevron Intellectual Property LLCが所有する登録商標である。第2の反応器には、バイパス及びチャネリングを防止するために、-100メッシュのアランダム(溶融アルミナからなる硬質材料)を充填した。全ての触媒は、W.R.グレースとシェブロンの合弁会社であるAdvanced Refining Technologiesにより供給された。
【0156】
二反応器マイクロユニットは、予め硫化され、熱処理され、ディーゼルで予備供給することによって脱エッジされた。実施例2に記載された2つのサンプルフィードの水素処理は、以下のプロセス条件を用いて行った:
【0157】
・0.50hr-1 LHSV
・2350 psigの全圧(2260 psiの入口H2分圧)
・5000 SCF/B 貫流H2
・708°F(376°C)~725°F(385°C)の反応器温度
・19.63~32.13重量%の700°F(371℃)未満での変換。
【0158】
二反応器マイクロユニットからの流出物を、約743°F(約395℃)のカットポイントを有するストリッパーに通し、基油製造に適した範囲で沸騰するストリッパーボトム生成物を分離して回収した。水素処理のためのプロセス条件は、0.1~0.4wppmの低窒素レベル又は1.25~2.7wppmの高窒素レベルのいずれかを有するストリッパーボトム生成物を製造するために、各運転中に調整された。
【0159】
これらの水素処理運転から回収されたストリッパーボトム生成物について測定された平均特性のいくつかを表9に示し、
図3~11にチャートで示す。これらの水素処理運転からの流出物中の種々の炭化水素留分の収率を表10に示し、
図12~15にチャートで示す。
【0160】
【0161】
【0162】
脱アスファルト油が単独で水素処理された場合と比較して、脱アスファルト油が芳香族抽出物とともに水素処理された場合に、ストリッパーボトム生成物中に同じ窒素レベルを達成するためには、わずかに(5~7°Fだけ)高い反応器温度が必要であった。ストリッパーボトム生成物はすべて、グループII又はグループII+ブライトストックを含む所望のグループII基油へのさらなる接触脱ろう及び蒸留のための優れたフィードである。脱アスファルト油と芳香族抽出物とのブレンドから製造されたストリッパーボトム生成物の更なる接触脱ろう及び蒸留によって製造されるブライトストックも、40℃で所望の動粘度を有する(例えばISO-VG320又はISO- VG 460)が、これはVIが106から116までの適度な範囲にあるため、現在市場で不足しているのである。APIグループII+又はAPIグループIIIのブライトストックを製造する以前のプロセスではより高いVIの基油を製造してきたが、これらは多くの工業用油用途にとっては低すぎるISO-VG範囲にあったのである。
【0163】
芳香族抽出物の脱アスファルト油への配合は、低価の芳香族抽出物を、高度に所望される重質基油生成物を製造するブレンドされたワックス状フィードにアップグレードすることが示され、この能力を加えた精製装置からの高価値グループII及びグループII+基油生成物の全体収率を大きく上昇させる。
図12及び
図13は、本発明の方法において混合フィードを使用することによって得られた700~950°F及び950°F+の範囲で沸騰する生成物の収率の改善を示す。驚くべきことに、混合フィードを水素処理すると、生成物の窒素が3重量ppm未満であっても、700~950°Fの範囲で沸騰する生成物の収率は36重量%よりも高かった。これは脱アスファルト油のみを水素処理したのでは達成できなかったのである。さらに、芳香族抽出物の脱アスファルト油への配合は、脱アスファルト油を単独で水素処理した場合の運転と比較して、ストリッパーボトムのアニリン点を少なくとも2°F低下させることが示された。低アニリン点は重質グループII基油に配合される添加剤の溶解性を改良して完成した潤滑剤を製造するので、重質基油生成物において望ましい。
【0164】
実施例4:フィード及びストリッパーボトムにおける芳香族含有量の分析
実施例3に記載した運転からのストリッパーボトム生成物のUV吸収を
図9~11に示す。UV吸収は、ストリッパーボトムにおける芳香族含有量の指標である。UV吸収結果は、低窒素レベルを生成するためのプロセス条件下で操作される運転、及び高窒素レベルを生成するためによりマイルドなプロセス条件下で運転される運転について、
図9~11に示されている。注目すべきことに、脱アスファルト油と芳香族抽出物とのブレンドが脱アスファルト油フィード(表8参照)と比較して芳香族含量が有意に高いにもかかわらず、混合フィードの水素処理によって製造されたストリッパーボトム生成物は、脱アスファルト油のみの水素処理によって製造されたストリッパーボトム生成物と比較して、芳香族含量がわずかに高いだけだった。この特徴は、
図6の同じ運転についての芳香族炭化水素分析にも示されている。
【0165】
実施例5:フィード及びストリッパーボトムにおける炭化水素の種類の分析
実施例3に記載の運転からのフィード及びそれらのストリッパーボトム生成物の炭化水素の種類の分析を
図6~8に示す。炭化水素の種類の分析は、Gallegos,E.J.;
Green,J.W.;Lindeman,L.P.;LeTourneau,R.L.;Teeter,R.Petroleum Group-Type Analysis by High Resolution Mass Spectrometry(高分解能質量分析法による石油グループ-タイプ分析)、Anal.Chem.1967年、39巻、1833~1838頁に記載の方法に従って、22×22質量分析によって行った。驚くべきことに、混合フィードを使用した運転からのストリッパーボトム生成物中の炭化水素の種類は、脱アスファルト油のみを使用した運転からのストリッパーボトム生成物中の炭化水素の種類に非常に類似していた。運転の全てにおいて、ストリッパーボトム生成物は、芳香族炭化水素の量が2.9~13.8液体体積パーセント(lv%)、ナフテン系炭化水素の量が73~86.7lv%、パラフィン系炭化水素の量が2.3~24.1lv%であった。さらに、全てのストリッパーボトム生成物中のイオウ含有量は0lv%であった。混合フィードを使用した運転では、ストリッパーボトム生成物は6.1~8.7lv%の量のパラフィン系炭化水素を有していた。
【0166】
「含む」(「包含する」)(including)、「含有する」又は「によって特徴づけられる」と同義語である移行用語「含む」(comprising)は、包括的又は制限なしであり、記載されていない追加の要素又は方法ステップを排除するものではない。「からなる」という移行句は、請求項に特定されていない要素、ステップ、又は成分を除外する。「~から本質的になる」という移行句は、特定の材料又はステップ、及び特許請求される発明の「基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えないもの」に特許請求の範囲を限定する。
【0167】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的において、他に示さない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される量、百分率又は比率、及び他の数値を表す全ての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、端点を含み、独立して組み合わせ可能である。下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつも、範囲内の任意の数値も具体的に開示される。特に明記しない限り、百分率はすべて重量パーセントである。
【0168】
定義されていない任意の用語、省略語又は省略形は、出願がなされた時点で当業者によって使用される通常の意味を有すると理解される。単数形「a」、「an」及び「the」は、明示的及び明白に1つの例に限定されない限り、複数の参照を包含する。
【0169】
本出願に引用された刊行物、特許及び特許出願の全ては、各個々の刊行物、特許出願又は特許の開示が具体的かつ個別に、参照することにより全体として挿入されているように示されるのと同程度に、参照することにより全体として本明細書に挿入されている。
【0170】
この記述された説明は、最良の形態を含む本発明を開示するために、また当業者が本発明を作成し使用することを可能にするように、実施例を使用している。上述した本発明の例示的な実施形態の多くの変更が、当業者には容易に思い浮かぶであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての構造及び方法を含むと解釈されるべきである。別段の指定がない限り、個々の成分又は成分の混合物を選択することができる一群の元素、材料又は他の成分の列挙は、列挙された成分及びそれらの混合物の全ての可能なサブジェネリックな組み合わせを含むものとする。
【0171】
本明細書に例示的に開示された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素が存在しない場合に、適切に実施することができる。
本発明は、本明細書に記載されているように、特許請求の範囲内の要素を適切に含む、特許請求の範囲内の要素からなる、又は特許請求の範囲内の要素から本質的になることができる。
なお、下記[1]から[19]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
重質基油の製造方法であって、
a.芳香族抽出物を製造するために第1の炭化水素フィード、及びさらなる溶媒脱ろうのためのワックス状ラフィネートの芳香族抽出を実施するステップ;
b.芳香族抽出物を第2の炭化水素フィードと混合して2000重量ppmを超えるイオウを有する混合フィードを製造するステップ;
c.混合フィードを、70℃で22.6~100mm
2
/sの動粘度を有する重質APIグループII基油を製造するように構成された水素処理ユニットに供給する:
ことを含む、上記方法。
[2]
前記芳香族抽出物が30~80体積%の芳香族化合物を含む、[1]に記載の方法。
[3]
前記水素処理ユニットが、水素化処理、接触脱ろう及び水素化仕上げを行う、[1]に記載の方法。
[4]
前記ワックス状ラフィネートが溶媒脱ろう及び水素化仕上げされて重質APIグループI基油を生成する、[1]に記載の方法。
[5]
前記混合フィードが340℃未満の初期沸点を有する、[1]に記載の方法。
[6]
前記混合フィードが5~20重量%の芳香族抽出物を含む、[1]に記載の方法。
[7]
重質APIグループII基油が100~120のVIを有する、[1]に記載の方法。
[8]
重質APIグループII基油が1.5重量ppm未満の窒素及び260°F(126.7℃)未満のアニリン点を有する、[1]に記載の方法。
[9]
重質APIグループII基油を蒸留してブライトストックを製造することをさらに含む、[1]に記載の方法。
[10]
前記ブライトストックが、ISO-VG320又はISO-VG460のISO-VGを有する、[9]に記載の方法。
[11]
前記水素処理ユニット内の動作温度が750°F(399℃)未満である、[1]に記載の方法。
[12]
前記ワックス状ラフィネートが溶媒脱ろうされ、水素化仕上げされて重質APIグループI基油を製造する、[1]に記載の方法。
[13]
水素処理ユニット内に配置された水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せの流出物からストリッパーボトムを分離することをさらに含み、該水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが水素処理条件の下で、かつ一つ以上の水素化分解触媒を用いて操作され、1~15lv%の芳香族炭化水素、70~90lv%のナフテン系炭素、及び1~25lv%のパラフィン系炭化水素を含み、70℃で22.6mm
2
/sを超える動粘度を有するストリッパーボトムを製造する、[1]に記載の方法。
[14]
[4]に記載の方法に従って、重質APIグループII基油及び重質APIグループI基油を製造するために使用される場合の一体型精製プロセスユニット。
[15]
重質基油を製造するための一体型精製プロセスユニットであって、
a.
i.重質APIグループI基油を製造するように構成された溶媒脱ろうユニットと、
ii.70℃で22.6~100mm
2
/sの動粘度を有する重質APIグループII基油を製造するように構成された水素処理ユニット
に流動的に接続された芳香族抽出ユニット;
b.芳香族抽出物を芳香族抽出ユニットから、第2のライン又は容器中の第2の炭化水素フィードに供給して、2000重量ppmを超えるイオウを有する混合フィードを製造する芳香族抽出ユニットからの第1のライン;及び
c.第2のライン又は容器から、混合フィードを水素処理ユニットに供給する水素処理ユニットへの接続部:
を含む、上記ユニット。
[16]
前記水素処理ユニットは、水素化処理ユニット、接触脱ろうユニット、及び水素化仕上げユニットを含む、[15]に記載の一体型精製プロセスユニット。
[17]
水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが、水素処理ユニット内に配置され、該水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが水素処理条件下で動作するように構成され、水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが70℃での22.6~100mm
2
/sの動粘度を有するストリッパーボトムを生成するように1種以上の水素分解触媒を含有する、[15]に記載の一体型精製プロセスユニット。
[18]
前記水素化処理及び水素化分解ユニットの組合せが、1~15lv%の芳香族炭化水素、70~90lv%のナフテン系炭素、及び1~25lv%のパラフィン系炭化水素を含むストリッパーボトムを製造するように構成される、[17]に記載の一体型精製プロセスユニット。
[19]
前記水素処理ユニットに接続された、ブライトストックを製造するように構成された蒸留ユニットをさらに含む、[15]に記載の一体型精製プロセスユニット。