(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159184
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】繊毛病に関連する疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20231024BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231024BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231024BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231024BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231024BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20231024BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20231024BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231024BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P13/12
A61P3/04
A61P25/00
A61P27/02
A61P15/08
A61K31/19
A61P43/00 111
A61K31/4439
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023128038
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2020520788の分割
【原出願日】2018-10-12
(31)【優先権主張番号】62/572,051
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518095987
【氏名又は名称】アンスティチュート ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ レシェルシュ メディカル (アンセルム)
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソーニエ、ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ブリセーニョ - ロア、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】サン - モノ、ソラヤ
(72)【発明者】
【氏名】アンロー、ジャン - フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルース、マリオン
(72)【発明者】
【氏名】グラシア、ヒューゴ
(72)【発明者】
【氏名】デル エンジェル、ギジェルモ
(72)【発明者】
【氏名】ルジャンドル、フローラ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】繊毛病関連の疾患の治療方法を提供する。
【解決手段】繊毛病関連の疾患の治療方法は、それを必要とする対象に対して、少なくとも1つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)を標的とする化合物の有効量を投与することを含む。繊毛病を有する疾患の治療のための治療薬の特定方法を提供し、該方法は、推定治療薬を調べるために繊毛病の動物モデル系を提供すること、該動物に破壊剤を投与すること、該投与された動物を該推定治療薬で処理すること、該処理動物の測定可能な表現型を処理されていない動物のものと比較すること、及び該処理動物の測定可能な表現型が、該処理されていない動物のものと比較して低下した場合に該治療標的を繊毛病の治療として特定することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における少なくとも1つの繊毛病関連の疾患の治療方法であって、前記対象に対して、少なくとも1つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)を標的とする、治療有効量の少なくとも1つの薬剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記繊毛病関連の疾患が、NPHP1遺伝子座のホモ接合型欠失に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊毛病関連の疾患が、NPHP1遺伝子座のヘテロ接合型欠失及び第二の遺伝子座でのヘテロ接合型またはホモ接合型機能欠損に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記繊毛病関連の疾患が、NPHP1の1つの対立遺伝子におけるヘテロ接合型欠失及びもう1つの対立遺伝子における機能欠損変異に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記繊毛病関連の疾患が、NPHP1の1つの対立遺伝子における機能欠損変異及びもう1つの対立遺伝子における異なる機能欠損変異に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの薬剤が、前記少なくとも1つのGPCRのアゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの薬剤が、プロスタグランジンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの薬剤が、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE2(PGE2)、16,16-ジメチル-PGE2(dmPGE2)、L902,688、CP-544326、AGN-21 0669、18a、AGN-21 0961、ED-1 17、CP-533536、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのGPCRが、EP1、EP2、EP3及びEP4からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの疾患が、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1機能欠損が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290対立遺伝子及び他の病原性または機能欠損バリアントに関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの薬剤が、CP-544326であり、前記少なくとも1つのGPCRが、EP2である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記有効量が、100pM~5μMである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの疾患がネフロン癆である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの繊毛病関連の疾患を治療するための治療薬を特定する方法であって、
(a)前記繊毛病関連の疾患の動物または細胞モデルに対して、試験薬を投与することであって、前記動物または細胞モデルは、前記繊毛病関連の疾患の測定可能な表現型を示す、前記投与することと、
(b)前記処理された動物または細胞モデルの前記測定可能な表現型と、未処理の動物または細胞モデルの前記測定可能な表現型を比較することと、
(c)前記処理された動物または細胞モデルの前記測定可能な表現型が、前記未処理の動物または細胞モデルのものと比較して改善された場合、前記試験薬を繊毛病関連の疾患の治療用の治療薬であると特定することとを含む、前記方法。
【請求項15】
前記動物モデルが、Danio rerio(ゼブラフィッシュ)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記動物モデルが、1つ以上の破壊剤を投与することによって作製される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の破壊剤が、モルホリノを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記モルホリノが、少なくとも1つのネフロシスチン(NPHP)の発現を阻害する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのNPHPが、NPHP4である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記測定可能な表現型が、体表面彎曲、前腎嚢胞、側性心臓欠陥及び排せつ腔拡張からなる群から選択される、請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記測定可能な表現型が、前腎嚢胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの繊毛病関連の疾患が、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1の機能欠損が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される、請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの疾患がネフロン癆である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの繊毛病関連の疾患の治療に使用するためのGPCRアゴニスト。
【請求項25】
前記GPCRアゴニストが、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE2(PGE2)、16,16-ジメチル-PGE2(dmPGE2)、CP-544326、L902,688、AGN-21 0669、18a、AGN-21 0961、ED-1 17、CP-533536、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記GPCRが、EP1、EP2、EP3及びEP4からなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
前記少なくとも1つの繊毛病関連の疾患が、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1の機能欠損が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される、請求項24~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記動物モデルが、nphp1-/-マウスである、請求項14に記載の方法。
【請求項29】
前記測定可能な表現型が、網膜層の厚さを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの繊毛病関連の疾患が、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1の機能欠損が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される、請求項28または29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本明細書は、特許協力条約に基づく国際出願であり、2017年10月13日に出願された米国仮出願第62/572,051号の利益を主張する。前述の出願の内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
繊毛は、基底小体、すなわち、膜に結合した中心小体から生じる微小管に基づく細胞表面の突起である。一次繊毛は、ほとんどの増殖停止または分化した哺乳類細胞の表面に、単一のコピーで存在する非運動性感覚オルガネラである。繊毛は、流れの変化を感知し、発達と組織の恒常性の過程で不可欠なシグナル伝達経路、例えば、ヘッジホッグ、Wnt/PCP及びcAMP/PKAシグナル伝達を媒介する。繊毛内輸送(IFT)は、繊毛の基部で積み荷を選択し、繊毛の構築に必要な軸糸成分、及び繊毛のシグナル伝達に関与するタンパク質を輸送する。繊毛が形成されると、繊毛膜組成の制御は、トランジション・ゾーンと呼ばれる繊毛の基部の特殊な領域での繊毛に進入する膜タンパク質に対するバリア、及びBBSome(バルデ・ビードル症候群(BBS)タンパク質、及び基底小体の構成要素であり、一次繊毛への積み荷の輸送に関与する他のタンパク質の複合体)と呼ばれるGタンパク質共役型受容体(GPCR)の繊毛への局在を制御する輸送アダプターを含めた、個別の分子機械に依存する。繊毛形成には多くのプロセスの協調が必要である。繊毛を生成するためには、細胞周期調節、小胞輸送、及び繊毛伸長の複雑な調和が正確なタイミングで生じなければならない。胚発生中及び成人の生理機能において適切に分化した繊毛を産生すること及び維持することの重要性は、繊毛病に関連する多くのヒト疾患によって最もよく強調されている。
【0003】
繊毛病は、繊毛の形成または機能の欠陥によって直接引き起こされる一群のヒトの障害である。一次繊毛不全は、一次繊毛の広範な組織分布及びそれらの広範にわたる機能と一致して、多機能及び非常に多様性のある異常を引き起こす。一次繊毛病の患者は腎臓と網膜の異常、精神遅滞につながり得る中枢神経系の欠陥、肝臓の欠陥(嚢胞を含む)、肥満、ならびに四肢長の異常、指の数の異常(多指症)、左/右軸組織化の異常(内臓逆位)及び頭蓋顔面のパターニングの異常を含めた様々な骨格の欠陥の組み合わせを呈する。光受容体を接続する繊毛に特異的な異常は、網膜変性及び失明にもつながり得る。一次繊毛病の例としては、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)及びジューヌ症候群(JATD)が含まれる。
【0004】
ネフロン癆(NPHP)は、塊状間質性線維症、尿細管基底膜肥厚及び嚢胞形成を特徴とする常染色体劣勢腎症であり、小児期に末期腎疾患(ESRD)を引き起こす。NPHPは、単独の場合もあれば、以後、ネフロン癆関連繊毛病(NPHP-RC)と呼ぶ症候群型にて、異なる腎外症状(例えば、網膜ジストロフィー、肝線維症、骨格異形成等)と関連する場合もある。
【0005】
NPHPは、これまでのところ、該症例の60%の主要因であることが知られている21個のNPHP遺伝子によって引き起こされる。NPHPの高い遺伝的異質性と多数の機構経路が議論されたことを考えると、NPHPにつながる単一の病態は存在しないことは明らかである。NPHPの腎組織学は、尿細管障害と線維症の共通のエンドポイントを指摘し、これは複数の誘因を有する可能性がある。各々の新たな遺伝子発見の論文では、分子診断に対してはより明確であるように思われるが、疾患の根本的なシグナル伝達経路に関してはより混乱しているように思われる。
【0006】
ほとんど解明されていないNPHPを含めた繊毛病を有する疾患の分子基盤の特性化、ならびにそれら疾患の診断及び治療の改善に対する要求は依然として大きい。
【発明の概要】
【0007】
1つの実施形態では、本開示は、対象における少なくとも1つの繊毛病関連の疾患の治療方法に関し、該方法は、該対象に対して、少なくとも1つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)を標的とする、治療有効量の少なくとも1つの薬剤を投与することを含む。実施形態では、該繊毛病関連の疾患は、NPHP1遺伝子座のホモ接合型欠失に起因する。実施形態では、該繊毛病関連の疾患は、NPHP1遺伝子座のヘテロ接合型欠失及び第二の遺伝子座でのヘテロ接合型またはホモ接合型機能欠損(LOF)に起因する。実施形態では、該繊毛病関連の疾患は、NPHP1の1つの対立遺伝子におけるヘテロ接合型欠失及びもう1つの対立遺伝子におけるLOF変異に起因する。実施形態では、該繊毛病関連の疾患は、NPHP1の1つの対立遺伝子における機能欠損変異及びもう1つの対立遺伝子における異なる機能欠損変異に起因する。
【0008】
特定の実施形態では、該少なくとも1つの薬剤は、該少なくとも1つのGPCRのアゴニストである。特定の実施形態では、該少なくとも1つの薬剤は、プロスタグランジンである。特定の実施形態では、該少なくとも1つの薬剤は、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE2(PGE2)、16,16-ジメチル-PGE2(dmPGE2)、L902,688、CP-544326、AGN-21 0669、18a、AGN-21 0961、ED-1 17、CP-533536、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、該少なくとも1つのGPCRは、EP1、EP2、EP3及びEP4からなる群から選択される。特定の実施形態では、該少なくとも1つの疾患は、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)であって、さらなる特徴を有するJBTSのバリアント形態のすべて、例えば、多指症、眼欠損症、網膜ジストロフィー、腎嚢胞、口腔小帯、及び肝線維症が含まれ得るもの、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1大(large)ホモ接合型欠失が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病、ならびにNPHP遺伝子が引き起こす任意の繊毛病からなる群から選択される。特定の実施形態では、該少なくとも1つの薬剤は、CP-544326であり、該少なくとも1つのGPCRは、EP2である。特定の実施形態では、該有効量は、100pM~5μMである。特定の実施形態では、該少なくとも1つの疾患はネフロン癆である。
【0009】
1つの実施形態では、本開示は、少なくとも1つの繊毛病関連の疾患を治療するための治療薬を特定する方法に関し、該方法は、(a)該繊毛病関連の疾患の動物または細胞モデルに対して、試験薬を投与すること、ただし、該動物または細胞モデルは、該繊毛病関連の疾患の測定可能な表現型を示すものであること、(b)処理された動物または細胞モデルの該測定可能な表現型と、未処理の動物または細胞モデルの該測定可能な表現型を比較すること、及び(c)該処理された動物または細胞モデルの該測定可能な表現型が、該未処理の動物または細胞モデルのものと比較して改善された場合、該試験薬を繊毛病関連の疾患の治療用の治療薬であると特定することを含む。特定の実施形態では、該動物モデルは、Danio rerio(ゼブラフィッシュ)またはnphplノックアウト(KO)マウスモデル(nphpl-/-)であり得る。特定の実施形態では、該動物モデルは、1つ以上の破壊剤を投与することによって作製される。特定の実施形態では、該1つ以上の破壊剤はモルホリノを含む。特定の実施形態では、該モルホリノは、少なくとも1つのネフロシスチン(NPHP)、例えば、NPHP4の発現を阻害する。特定の実施形態では、該測定可能な表現型は、体表面彎曲、前腎嚢胞、側性心臓欠陥及び排せつ腔拡張からなる群から選択される。特定の実施形態では、該少なくとも1つの疾患は、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1大(large)ホモ接合型欠失が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される。
【0010】
1つの実施形態では、本開示は、少なくとも1つの繊毛病関連の疾患の治療に使用するためのGPCRアゴニストに関する。特定の実施形態では、該GPCRアゴニストは、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE2(PGE2)、16,16-ジメチル-PGE2(dmPGE2)、CP-544326、L902,688、AGN-21 0669、18a、AGN-21 0961、ED-1 17、CP-533536、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、該GPCRは、EP1、EP2、EP3及びEP4からなる群から選択される。特定の実施形態では、該少なくとも1つの疾患は、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1大(large)ホモ接合型欠失が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される。
【0011】
特定の実施形態では、該動物モデルは、1つ以上の破壊剤を投与することによって作製される。特定の実施形態では、該1つ以上の破壊剤は、sgRNAが指示する遺伝子欠失を媒介するCRISPR/Cas9システムを含む。特定の実施形態では、該CRISPR/Cas9システムは、少なくとも1つのネフロシスチン(NPHP)、例えば、NPHP1の発現を阻害する。特定の実施形態では、該測定可能な表現型は、網膜光受容体層の厚さ、網膜電図及び該光受容体細胞体におけるロドプシンの蓄積からなる群から選択される。特定の実施形態では、該少なくとも1つの疾患は、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1大(large)ホモ接合型欠失が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される。
【0012】
本開示の本質、目的、及び利点のさらなる理解のため、以下の図面と併せて読まれる以下の詳細な説明を参照されたい。以下の図面において、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A~1Dは、尿由来の腎上皮細胞を示す。1A:正常対照、1B:NPHP1の欠失があるNPHP患者(Pt1)、1C:RT-PCRの比較、1D:免疫ブロットの比較。
【
図2】目的の細胞における繊毛形成を定量化するための自動インビトロアッセイを示す。
【
図3】NPHP患者(PT1)由来の繊毛細胞の割合が、対照細胞(CTRL)のものより有意に低いことを示す。
【
図4】新規な繊毛系アッセイのステップを示す概略図である。
【
図5】(A)フルチカゾン、(B)フェニラミン、(C)ベラパミル、(D)ML-141、(E)ミトキサントロン、(F)トロピセトロン、(G)エトプロパジン、(H)シプロヘプタジン、(I)パクリタキセル及び(J)シンバスタチンが繊毛形成に与える影響をDMSOと比較して示す。
【
図6】アルプロスタジルが繊毛形成に与える影響をDMSOと比較して示す。
【
図7A】アルプロスタジルの繊毛形成に対する用量反応をDMSOと比較して示す。
【
図7B】IC50の特定のための対応する片対数表現を示す。
【
図8A】アルプロスタジル処理での複数の繊毛形成実験で得られた結果のメタ分析を示す。
【
図8B】アルプロスタジル処理での複数の繊毛形成実験で得られた結果のメタ分析を示す。
【
図8C】アルプロスタジル処理での複数の繊毛形成実験で得られた結果のメタ分析を示す。
【
図9】アルプロスタジル処理での複数の繊毛形成実験で得られた結果のメタ分析を、実験ごとのデータを区別して示す(A~D)。
【
図11A】アルプロスタジル(PGE1)、ジノプロストン(PGE2)、及び16,16-ジメチル-PGE2(dmPGE2)が繊毛形成に与える影響を示す。
【
図11B】アルプロスタジル(PGE1)がNPHP1欠失患者由来の細胞株に与える影響を示す。
【
図13】ウェスタンブロットによるヒト腎臓組織における、及び免疫組織化学によるヒト網膜におけるEP1~4の発現プロファイルを示す。
【
図14】
図14Aは、EP2及びEP4のmRNAが、対照及びPt1由来の腎上皮細胞において発現されることを示す。
図14Bは、EP2が、対照及びPt1由来の腎上皮細胞においてタンパク質レベルで発現されることを示す。
図14Cは、複数の対照細胞株及び複数のNPHP患者由来の腎上皮細胞株におけるEP1~4受容体をコードする遺伝子のmRNA発現を示す。
【
図15】繊毛形成への影響を調べたプロスタグランジン(PG)モジュレーター(アゴニスト及びアンタゴニスト)を示す。
【
図16B】CP-544326で処理したNPHP患者由来の細胞を示す。
【
図17A】L-902.688が繊毛形成に与える影響を示す。
【
図17B】CP-544326及びアルプロスタジルが繊毛形成に与える影響を示す。
【
図17C】CP-544326が患者由来の細胞に与える影響を示す。
【
図18】マイクロアレイ分析用にRLTまたはQiazol法で抽出されたRNAを示す。
【
図19】階層的クラスタリングによって分析されたサンプルのマイクロアレイデータを示す。
【
図20】階層的クラスタリングによって分析されたサンプルのマイクロアレイデータを示す。
【
図19】階層的クラスタリングによって分析されたサンプルのマイクロアレイデータを示す。
【
図20】階層的クラスタリングによって分析されたサンプルのマイクロアレイデータを示す。
【
図21】階層的クラスタリングによって分析されたサンプルのマイクロアレイデータを示す。
【
図22】RLT抽出サンプルから得たマイクロアレイデータを要約する。
【
図23】Qiazol抽出サンプルから得たマイクロアレイデータを要約する。
【
図24A】様々な用量から得たマイクロアレイデータ間に有意差がないことを示す。
【
図24B】様々な用量から得たマイクロアレイデータ間に有意差がないことを示す。
【
図25】繊毛形成に対する薬効のマルチオミクス解析のプロセスを示す。
【
図26】アルプロスタジルが繊毛形成に与える影響の表現型分析を示す(A~E)。
【
図27】ドラッグド(drugged)及びドラッガブル(druggable)遺伝子のimRNA差次的発現を示す。
【
図28A】プロスタグランジンE1(アルプロスタジル)の下流相互作用に関するマルチオミクスデータからの経路分析、及び関連する標的機会を示す。
【
図28B】NPHP1の上流相互作用に関するマルチオミクスデータからの経路分析、及び関連する標的機会を示す。
【
図28C】NPHP1~20遺伝子関連の直接相互作用に関するマルチオミクスデータからの経路分析、及び関連する標的機会を示す。
【
図29】ゼブラフィッシュのNPHP4 MOモデルを示す。
【
図30】ゼブラフィッシュのNPHP4 MOモデルの薬物処理のプロトコルを示す。
【
図31】モルホリノ注射がゼブラフィッシュに与える影響を要約する(A~C)。
【
図32】(A)ゼブラフィッシュの代表的な体軸彎曲、及び(B、C)アルプロスタジルがゼブラフィッシュの体軸彎曲に与える影響を示す。
【
図33】(A)ゼブラフィッシュの代表的な前腎嚢胞、及び(B、C)アルプロスタジルがゼブラフィッシュの前腎嚢胞に与える影響を示す。
【
図34】(A、B)ジノプロストンがゼブラフィッシュの体軸彎曲に与える影響、及び(C)ジノプロストンがゼブラフィッシュの前腎嚢胞に与える影響を示す。
【
図35】CP-544326がゼブラフィッシュの前腎嚢胞に与える影響を示す。
【
図38A】wt及びNphp1
-/-マウスにおける網膜の過ヨウ素酸-シッフ染色を示す。
【
図38C】HphpV’マウスの網膜層の厚さの定量をwtマウスと比較して示す。
【
図39A】繊毛マーカーとしてのCep290ならびにそれぞれ、外節(OS)、及び内/外節の光受容体マーカーとしてのロドプシン及びPNA(ピーナッツ凝集素レクチン)のwt及びNphp1
-/-マウス網膜での免疫組織染色を示す。
【
図39B】繊毛マーカーとしてのCep290ならびにそれぞれ、外節(OS)、及び内/外節の光受容体マーカーとしてのロドプシン及びPNA(ピーナッツ凝集素レクチン)のwt及びNphp1
-/-マウス網膜での免疫組織染色を示す。
【
図40】Nphp1
-/-マウスの網膜電図をwtマウスと比較して示す。
【
図41】wt及びNphp1
-/-マウスにおけるEP2受容体の発現を示す。
【
図42】本開示の1つの実施形態による試験デザインを示す。
【
図43】Nphp1
-/-マウスにおいてCP-544326がONL/OPLの網膜層の厚さの比に与える影響を示す。
【
図44】NphpV’マウスにおいてCP-544326がONLの緑色標識ロドプシンの誤局在化に与える影響を示す。
【
図45】CP-544326がNphp1
-/-マウスの網膜電図に与える影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、以下に記載する特定の実施形態に限定されず、該特定の実施形態の変形がなされ得るとともに、添付の特許請求の範囲に含まれ得ることを理解されたい。また、使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものであり、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに他を指示しない限り、複数の参照を含む。特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する当技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。
【0016】
NPHP患者
ネフロン癆(NPHP)は、腎臓の進行性破壊を特徴とする劣勢尿細管間質性繊毛病であり、末期腎疾患(ESRD)を引き起こす。NPHPが引き起こすESRDの発症は、生後数か月(小児NPHP)から>60歳まで(成人NPHP)に及び、>17%は20歳以後にESRDを有する。疾患を引き起こす突然変異は、20を超えるNPHP関連遺伝子(例えば、NPHP1~20、IFT140、TRAF3IP1/IFT54)で特定されており、NPHPを呈する全症例の約60%を占める。NPHP1の全遺伝子座欠失(NPHP1(del))は、NPHPの症例の20%超を占める。従来、希少疾患ポータルOrphanetは、世界的な頻度約100,000分の1(カナダ1/50,000、米国1/900,000、フィンランド1/100,000、フランス1/50,000)を報告している。現在、NPHPの治療法は存在しない。
【0017】
繊毛病は、多くの場合、トランジション・ゾーン(TZ)タンパク質をコードする遺伝子または繊毛内輸送(IFT)成分の突然変異によって引き起こされる(Reiter,J.&Leroux M.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.,18:533-47, 2017、Hildebrandt,F.et al.,N.Engl.J.Med.,364:1533-43, 2011、Czarnecki,P.&Shah,J.,Trends Cell Biol.,22:201-10, 2012)。機能的には、TZは、軸糸の近位端の一次繊毛の基部にある区画を表し、繊毛タンパク質の出入りを制御する(Betleja,E.&Cole,D.,Curr.Biol.,20:R928-31, 2010、Craige,B.et al.,J.Cell Biol.,190:927-40, 2010、Omran,H.,J.Cell Biol.,190:715-7, 2010、Benzing,T.&Schermer,B.,Nat.Genet.,43:723-4, 2011)。分子的には、TZは、異なる多タンパク質複合体、NPHP1-4-8モジュール、NPHP5-6(Cep290)モジュール、MKS/B9モジュール及びInversin(INVS、NPHP2)区画からなる(Sang,L.et al.,Cell,145:513-28, 2011)。該NPHP1-4-8モジュール、NPHP5-Cep290モジュール及びInversin区画は、まとめてNPHPモジュールと呼ばれることがある。
【0018】
NPHPモジュールタンパク質をコードする遺伝子の1つ以上の突然変異及び/または不活性化は、繊毛形成及び/または上皮形成に悪影響を及ぼす場合があり、NPHP患者において線維症及び嚢胞の発生をもたらす。IFT装置は、繊毛の基部で積み荷を選択し、繊毛の構築に必要な軸糸成分、及び繊毛のシグナル伝達に関与するタンパク質を輸送する。16の異なるタンパク質からなるIFT-B複合体は、キネシンIIと結合することによって順行輸送を媒介する。逆行輸送は、ダイニン2とIFT-A複合体の6つのサブユニットによって媒介される。IFT-Aサブユニットをコードする6つの遺伝子における突然変異がNPHP関連の繊毛病で特定されており、3つのIFT-Bサブユニットのみがネフロン癆と関連している(IFT172、IFT54)(Halbritter,J.et al.,Am.J.Hum.Genet.,93:915-25, 2013、Bizet,A.et al.,Nat.Commun.,6:8666, 2015)。IFT及びTZに加えて、付属タンパク質、及びGPCRもまた繊毛の機能及び維持のために必須の要因である。
【0019】
NPHPモジュールに関しては、Nphp4変異マウスは、網膜変性を発症したが、腎嚢胞も重度の繊毛形成欠陥も発症せず、雄は不妊であり、運動性が低下した精子を示した(Won,J.et al.,Hum.Mol.Genet.,20:482-96, 2011)。同様に、該マウスでのNphplの標的破壊(最後のC末端エクソン20の削除)ではネフロン癆が生じなかったが、P14~P21で始まる急速な網膜変性を示し(Jiang,S.et al.,Hum.Mol.Genet.,17:3368-79, 2008)、雄の不妊を引き起こした(Jiang,S.et al.,Hum.Mol.Genet.,18:1566-77, 2009)。Cep290ノックアウトマウスは、光受容体において結合繊毛を欠いており、運動性上衣繊毛を成熟させることができず、これは、それらの網膜変性及び水頭症の表現型と一致する(Rachel,R.et al.,Hum.Mol.Genet.,24:3775-91, 2015)。
【0020】
NPHP1における突然変異は、最も一般的なNPHPの原因である。成人発症ESRDの患者の大きなコホート(病因については任意抽出)において、NPHP1ホモ接合型全遺伝子欠失(NPHP(del))によるNPHPは、すべての成人発症ESRDで患者200人に1人(0.5%)の有病率である(Snoek,R.et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,29:772-9,2018)。ESRDの発症が18歳から50歳の患者では発生率が明らかに高かった(有病率0.9%)が、NPHPは61歳まで発症する可能性がある。彼らが使用した方法は、原因となる突然変異の総数を低く見積もっているため、NPHPが成人発症ESRDの比較的頻繁な単一遺伝子要因であり、現在の日常診療では過小診断される可能性があると結論付けている。
【0021】
International Genetics and Translational Research in Transplantation Network (iGenTRAiN)協会からの腎移植レシピエント及び(対応するドナー)対照のコホートにおいて、ESRD(18~50歳)の成人の中で、NPHP1欠失に関してホモ接合型の相対度数約0.5%(5606人中26人)の患者が特定された。これらから、13%(26人中3人)のみがNPHPとして正しく診断され、約半数(26人中11人)が原因不明のCKD患者と診断された。これらの結果は、ESRDの成人の200人中1人(0.5%)以下がNPHP1delの遺伝子型であり、この数字は、ESRDの発症が18~50歳の範囲内にある場合、0.9%に増えることを示した(Abstract.ASN2017&Nephr Dial Trans,Vol 32, 2017)。
【0022】
本明細書では、新規な疾患及び患者関連の洞察を特定し、それにより、科学的発見を可能にし、その患者管理への移行を促進することを目的とした、Genomics England’s Research Environment、すなわち、承認された研究者が100,000ゲノムプロジェクトのデータセットで研究を行うための安全なワークスペースを用いて生成された知見を記載する。該100,000ゲノムプロジェクトのデータセットは、希少疾患患者(及びその親族)とがん患者を含む。このデータセット内で、NPHP1(del)に関してホモ接合型の患者は、相対度数が約6,000分の1(61,554人中10人)と特定されたが、このうち以前にNPHPと診断された者はなかった。特定された10人の患者のうち、7人が明白なNPHPの臨床兆候/症状、例えば、腎もしくは繊毛病の兆候/症状を有するか、または、腎・尿路先天異常(CAKUT)の患者として動員された。残りの3人の患者は、おそらくは複数の希少疾患を有するより複雑な臨床像を示す。ホモ接合体に加え、193人のNPHPl(del)ヘテロ接合型患者が全データセットで特定された(このデータセット内では約200分の1の頻度)。これらの患者は、ヘテロ接合型キャリアであり得るが、NPHP1複合ヘテロ接合体(NPHP1(del)とNPHP1機能欠損(LOF)突然変異)及び/またはエピスタシス(NPHP1(del)と別の遺伝子座でのLOF突然変異の組み合わせ)も含み得る。さらに、患者は、スプライスバリアント、フレームシフト及びナンセンス変異のようなさらなるNPHP1-LOFバリアントを有する場合があり、これらもまた、臨床NPHP所見に寄与し得る。
【0023】
本明細書に記載のNPHP(del)の知見は、Genomics Englandのデータベースを用いて行われた研究から得た。本研究は、該データへのアクセス及びGenomics England’s Research Environmentによって生成された知見を介して、ならびに研究目的での自身のデータの使用に同意した患者ならびに本研究の適用を受けているデータ及び結果に貢献したNHSの臨床医及び医療チームによって可能になった。Genomics England’s Research Environmentは、Genomics England Limited(保健省の完全所有会社)によって管理され、National Institute for Health Research and NHS England、The Wellcome Trust、Cancer Research UK及びthe Medical Research Councilが資金提供している。
【0024】
世界中で何百万人もの患者がESRD及び先天性症状で苦しんでいるが、その唯一の治療法は移植である。米国だけでも、600,000件を超える移植が過去50年間で行われ、今日の需要はかつてないほど高い。残念ながら、ドナー臓器の可用性は、移植需要に追いつくことができていない。本開示の実施形態は、NPHPに関してホモ接合型もしくはヘテロ接合型である患者(例えば、NPHPが引き起こすESRD)及び/またはNPHP関連の繊毛病の患者(例えば、NPHP1)を特定すること及び/または治療することを含む。
【0025】
NPHP患者由来の細胞
本明細書では、繊毛病関連の疾患もしくは障害、例えば、NPHP、またはNPHP1(del)関連の疾患もしくは障害の治療に有用な治療薬の特定のための材料及び方法を記載する。かかる方法は、患者由来の細胞株の使用を含む場合がある。開発されたかかる細胞株は、例えば、繊毛病関連の疾患もしくは障害またはNPHP1(del)関連の疾患もしくは障害のための所与の治療法の有効性のモニタリングを含めた他の関連する方法にも使用することができる。
【0026】
繊毛病と関連する疾患、例えば、NPHPを治療するための化合物を特定するため、NPHP患者由来の細胞を入手し、細胞株を確立した。簡潔には、ほとんどがNPHP1欠損患者の尿から回収された近位尿細管細胞(tbc)である剥離腎上皮細胞を、SV40 T抗原のレトロウイルス遺伝子導入によって不死化した。細胞を固定し、免疫蛍光顕微鏡検査法を用いる検出用に、Hoechst(核染色用)、抗y-チューブリン抗体(基底小体染色用)、及び抗ARL13B抗体(繊毛染色用)で蛍光標識した。各細胞で単一の繊毛を有する(
図1A)大部分の正常な尿由来の腎上皮細胞(UREC)と対照的に、ほとんどのNPHP患者由来の細胞は繊毛を有さない(
図1B)。これらのNPHP患者由来の細胞でのNPHP発現の欠如をさらにRT-PCR(
図1C)及び免疫ブロット(
図1D)で確認したが、NPHP患者由来の細胞ではそれぞれ、検出可能なレベルのNPHP RNA及びNPHPタンパク質発現を示していない。
【0027】
図2は、目的の細胞における繊毛形成を定量するために使用され得る自動インビトロアッセイを示す。簡潔には、NPHP患者由来の細胞及び対照細胞を完全培地で39C(SV40発現に対して非許容温度)にて培養し、その後、免疫蛍光顕微鏡検査法を用いた自動繊毛分析で、例えば、%繊毛を単位として繊毛形成を測定した。回転盤プラットフォームを薬物のスクリーニング(
図5、A~J)及びG3マルチオミクスデータセットの繊毛形成分析(
図29、A~E)に使用してもよい。Opera Phenixプラットフォームを他の表現型分析(例えば、アルプロスタジル及びCP-544326の繊毛形成滴定、繊毛形成に基づく他のEPアゴニストのスクリーニング、他のNPHP1患者由来の細胞株を用いた繊毛形成、a-チューブリンアセチル化分析)に使用してもよい。
【0028】
図3は、NPHP患者(PT1)由来の繊毛細胞のパーセンテージが、対照細胞(CTRL)で見られるものより有意に低いことを示す(p=0.0065)。
【0029】
薬物スクリーニング
上記の繊毛系アッセイは、繊毛形成を回復させる化合物を特定するために使用され得る。
図4は、繊毛系アッセイのプロセスを示し、ここでは、例えば、細胞を0日目に細胞培養(例えば、96ウェルプレート)に播種し、3日目に候補薬物とともにインキュベートし、5日目に固定し、Hoechst、抗y-チューブリン抗体、及び抗ARL13B抗体で蛍光標識してもよい。例えば、ウェル当たり35枚の画像の自動ランダム収集が行われ得る。各画像は、<1μmの間隔で撮影した10枚の画像のz-スタックを有し得る。核(Hoechst、461nm)、基底小体(γ-チューブリン、555nm)及び繊毛(ARL13b、647nm)の連続画像を得てもよい。
【0030】
図4に示すプロセスを用いて、NPHP患者由来の細胞をいくつかの候補薬物で処理し、繊毛形成を回復させることができる薬物を特定した。
図5、パネルA~Jは、それぞれ、フルチカゾン、フェニラミン、ベラパミル、ML-141、ミトキサントロン、トロピセトロン、エトプロパジン、シプロヘプタジン、パクリタキセル、及びシンバスタチンが、様々な試験濃度で、DMSOと比較して繊毛形成に有意な影響を与えなかったことを示す。驚くべきことに、
図6は、アルプロスタジルが、DMSOと比較して、NPHP患者由来の細胞において、繊毛形成を有意に回復させたことを繊毛細胞のパーセンテージの増加によって示している。
【0031】
アルプロスタジル、すなわち、プロスタグランジンE1(PGE1)は、化学構造
【化1】
を有し、これは、心臓病及び勃起障害を治療するための血管拡張、血小板凝集の阻害、ならびに腸管及び子宮平滑筋の刺激に対する活性を示す。アルプロスタジルは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)であるE型プロスタグランジン(EP)受容体に結合することによってアゴニストとして作用する可能性があり、IC50値はEP1、EP2、EP3及びEP4に対して、それぞれ、36、10、1.1及び2.1nMである。GPCRは、アデニル酸シクラーゼを刺激し、その後細胞内cAMPを上昇させる。
【0032】
本明細書で使用される、「GPCRアゴニスト」は、この受容体に特異的な内因性シグナル伝達分子の作用を模倣するようにGPCRを活性化する組成物を含む。「GPCRアンタゴニスト」は、GPCR活性を阻害する組成物を含む。GPCR活性は、Gタンパク質等のエフェクターシグナル伝達分子に結合する能力によって測定され得る。「活性化GPCR」は、Gタンパク質と相互作用し、これを活性化することが可能であるものである。阻害された受容体は、細胞外リガンドに結合する能力が低下している可能性、及び/またはGタンパク質と生産的に相互作用し、これを活性化する能力が低下している可能性がある。
【0033】
例えば、タプレネパグイソプロピルによるGPCRアゴニスト治療は、例えば、濃度約0.1mg/kg~約20mg/kg、約0.5mg/kg~約20mg/kg、約1mg/kg~約20mg/kg、約2mg/kg~約20mg/kg、約3mg/kg~約20mg/kg、約4mg/kg~約20mg/kg、約5mg/kg~約20mg/kg、約6mg/kg~約20mg/kg、約7mg/kg~約20mg/kg、約8mg/kg~約20mg/kg、約9mg/kg~約20mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、約12mg/kg~約20mg/kg、約14mg/kg~約20mg/kg、約16mg/kg~約20mg/kg、または約18mg/kg~約20mg/kgで、頻度が例えば、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと、10日ごと、週1回、2週間ごと、3週間ごと、または月1回で行われ得る。
【0034】
繊毛形成を回復させるためのアルプロスタジルの有効濃度を特定するため、自動繊毛分析を1nM~2μM(
図7A)及び100pM~2μM(
図7B)のアルプロスタジル滴定で行った。GPCRアゴニスト、例えば、アルプロスタジルの有効濃度は、約1pM~約10μM、約10pM~約5μM、約50pM~約5μM、約100pM~約5μM、約1nM~約5μM、約1nM~約4μM、約1nM~約3μM、約1nM~約2.5μM、約1nM~約2μM、約10nM~約2μM、約100nM~約2μM、約500nM~約2μM、または約1μM~約2μMであり得る。
図7Cは、IC50特定のための対応する片対数表現を示し、アルプロスタジルが、NPHP患者由来の細胞において、用量依存的に繊毛細胞%を有意に増加させることを示している。
【0035】
図8A~8C及び9(パネルA~D)は、アルプロスタジル処理(2μM)が、対照の正常上皮細胞(CTRL)において、対照(DMSO 0.04%)と比較して繊毛形成に有意な影響を及ぼさないことを示すメタ分析を示す(
図8A)。対照的に、アルプロスタジル処理は、NPHP患者由来の細胞(PT1)において、対照(DMSO 0.04%)と比較して繊毛形成を有意に増加させる(
図8B)。
図8Cは、アルプロスタジルがNPHP患者由来の細胞で繊毛形成に与える影響が、アルプロスタジル処理を受けない対照細胞、すなわち、対照(DMSO 0.04%)に対して約2倍増加することを示す。
【0036】
メタ分析はまた、繊毛形成に対するアルプロスタジル用量のほぼ直線的な効果も示す。
図9(パネルA及びB)は、例えば、アルプロスタジルが対照の正常上皮細胞での繊毛形成に与える影響に関してR
2値0.9194を示す。同様に、
図9(パネルC及びD)は、アルプロスタジルがNPHP患者由来の細胞での繊毛形成に与える影響に関してR
2値0.8489を示す。
【0037】
アルプロスタジル(PGE1)の安定性を特定するため、異なる濃度のアルプロスタジルに曝露した尿由来の腎上皮細胞(UREC)から、曝露の24時間及び48時間後に上清を採取した。サンプルを次に抽出し、LC/MS/MS及びPolar LCプラットフォームでの分析用に等量に分けた。
図10は、PGE1が実験条件下で安定なことを示す。
【0038】
PGE1に加えて、他のEPアゴニスト、例えば、化学構造
【化2】
を有するプロスタグランジンE2(PGE2またはジノプロストン)及びその長時間作用型誘導体である、化学構造
【化3】
を有する16,16-ジメチル-PGE2(dmPGE2)もまた、繊毛形成を回復させる能力について調べた。
図11Aは、PGE2及びdmPGE2が、NPHP患者由来の細胞においてアルプロスタジルのものと同様の繊毛形成回復効果を有する一方、対照の正常細胞では有意な効果が認められなかったことを示す。NPHP患者由来の細胞において、繊毛形成の回復にわずかな低下が最も高い濃度(40μMのジノプロストン及び20μMのdmPGE2)で認められたが、これは細胞毒性に起因する可能性がある。
【0039】
アルプロスタジル(PGE1)がNPHP1欠失細胞に与える影響を調べるため、NPHPl(del)患者由来の細胞株、例えば、PT1、1-03-P、1-06-P1、1-06-P2、1-09-P、1-10-P、及び1-12-Pを、アルプロスタジル(2μM)またはDMSOで処理した。
図11Bは、アルプロスタジルがNPHP1欠失細胞で繊毛形成率を有意に増加させる一方、アルプロスタジルは正常対照細胞では繊毛形成率に有意な影響を与えないことを示しており、アルプロスタジルがNPHP1欠失患者において繊毛形成を回復させるのに有効であることを示唆している。
【0040】
図11Cのメタ分析は、以前のデータの線形回帰分析を示しており、勾配は、アルプロスタジルが対照細胞及び複数のNPHP患者由来の細胞株の繊毛形成に与える影響を反映し、各記号は、独立した実験を表し、各色は、患者の細胞株(1-09-P L4、1-06-P1、1-06-P2、PT-1として指定)を表す。対照の正常上皮細胞のデータに関する線形回帰は、0,7665~0,9974の勾配値を示し、アルプロスタジルが繊毛形成に与える影響の欠如を示唆している。対照的に、複数のNPHP患者由来の細胞に関する線形回帰は、統合勾配値1.414または勾配値の範囲1.333~1.506を示し、繊毛形成に対するアルプロスタジルの促進効果を示している。
【0041】
プロスタグランジンは、ほとんどのヒト組織で見出され、必須脂肪酸から合成される。様々なプロスタグランジン間の構造の違いは、生物活性の変化の主要因である。プロスタグランジンを含めたプロスタノイドは、腎臓で豊富に産生される。このプロスタノイドは、ホスホリパーゼA2による膜リン脂質からのアラキドン酸(AA)の放出によって生じる。アラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼ(またはプロスタグランジンG/Hシンターゼ)のビスオキシゲナーゼ及びペルオキシダーゼ活性に供され、プロスタグランジンG2(PGG2)、次いでプロスタグランジンH2(PGH2)を形成する。PGH2は、PGE2シンターゼ、PGD2シンターゼ、プロスタサイクリンシンターゼ、PGF2αシンターゼ(PGF2αはまた、PGE2から直接合成され得る)及びトロンボキサンシンターゼを含めたシンターゼの基質であり、PGE2を含めた個々のクラスのプロスタノイドを合成する。これらのクラスはすべて、EP1~4を含めた異なる受容体サブタイプを有し、そのサブタイプを介してこれらのクラスはその作用を開始する。シクロオキシゲナーゼ1及び2(COX1及びCOX2)は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の第一標的であるが、それらはいずれかのアイソフォームに特異的、すなわち選択的であるか、または非選択的であり得る。COXの阻害を介したPGH2産生の遮断は、すべての下流のプラスタノイドのレベルを低下させ得る。
【0042】
繊毛形成におけるPGE
PGE2は、腎病態生理学において最もよく特徴づけられているプロスタノイドである。PGE2は、COX1及びCOX2によって合成され、Lkt/ABCC4トランスポーターを介して細胞膜に輸送される。放出されたPGE2は、繊毛のEP4受容体に結合し、GPCR(Gs)及びアデニル酸シクラーゼ(AC)を活性化してcAMPを増加させ、それにより、順行性IFTを増加させ、繊毛形成を高める。
【0043】
繊毛の形成及び伸長には、COX-Lkt/ABCC4-EP4シグナル伝達カスケードが必要である(マウス腎臓集合管細胞IMCD3及びゼブラフィッシュモデルにおいて)。cAMP依存性キナーゼシグナル伝達は、繊毛形成の過程で順行性IFTを増加させることが知られている。Lkt/ABCC4が媒介するPGE2シグナル伝達は、cAMPレベルに影響を及ぼし、IFTの順行速度の増加を介して繊毛形成を促進する。PGE2処理は、IMCD3細胞において繊毛形成の過程で細胞内cAMPを増加させるが、Ca2+は増加させない。PGE2は、自己分泌及び/または傍分泌式に作用し、細胞は、それ自体から放出されたPGE2に応答する場合もあれば、それらの近傍から放出されたPGE2に応答する場合もある。ヒトがん細胞では、PGE2とEP4受容体の相互作用がWnt/p-カテニンシグナル伝達を誘導し、COX2発現を引き起こし、それにより、さらなるPGE2合成につながる正のフィードバックループを設定する。
【0044】
図12は、外因性PGE2の添加が繊毛長及び繊毛細胞のパーセンテージの両方を対照細胞では増加させたが、EP4枯渇細胞では増加させなかったことを示し、EP4が繊毛形成の過程でPGE2シグナル伝達の下流で作用することを示している。
【0045】
PGE2は、PGEシンターゼ(PGES)によって産生され、そのGPCR、すなわち、EP1~4に結合することでシグナル伝達する。EP1(Gqと共役)の活性化は、PLCを介して細胞内Ca2+を増加させる。EP3(Giと共役)の活性化は、PLCを介して細胞内Ca2+を増加させ、及び/またはアデニル酸シクラーゼ(AC)を介してcAMP産生を阻害する。EP2またはEP4(両方ともGsと共役)の活性化は、ACを介してcAMP産生を促進する。
【0046】
約800のヒトGPCRが存在し、これらは5つの主要な系統発生ファミリー、すなわち、ロドプシン、セクレチン、Adhesion、グルタミン酸及びFrizzled/Taste2に分けられる。GPCRは、組み換えタンパク質、小分子化合物、アロステリックリガンドまたは抗体にとって魅力的な標的である。46のGPCRが、高血圧、痛み、潰瘍、アレルギー、アルコール依存症、肥満、緑内障、精神病性障害及びHIVの薬物標的としての機能を果たしている。多くの主要な障害の1つは、推定GPCRと正確な生理学的機能または病状との関連に関する全体的な知識不足である。
【0047】
図13は、EP1~4が、腎臓及び網膜で発現されること、両器官がNPHP及びNPHP-RCで影響を受けていることを示す。腎臓では、EP受容体はネフロンに沿って差次的に発現し、腎臓における各EP受容体サブタイプの活性化がもたらす異なる機能的結果を強調している。EP受容体は、輸入細動脈の血管緊張を調節し、ここでは、EP1/EP3が血管を収縮させるものとして作用し、EP2/EP4が血管を拡張するものとして作用する。EP1/EP4は近位尿細管輸送を調節する。EP3及びEP4は、太い上行脚及び遠位尿細管輸送を調節する。EP4は、緻密斑からのレニン放出を促進する。EP2/EP4は、直細血管を拡張する。EP受容体は、EP1がNa
+の再吸収を阻害し、EP3がH2Oの再吸収を阻害し、EP4がH2Oの再吸収を促進することにより、集合管輸送を調節する。
【0048】
URECにおけるEP受容体を含めたPG経路の成分の発現は、qRT-PCRで測定した。
図14Aは、EP2及びEP4がmRNAレベルで発現されること、及びEP2が主にimRNAレベルで発現されることを示す。
図14Bは、URECにおけるEP2タンパク質発現を示す。
【0049】
PGE2モジュレーター(EP2)
EP2受容体の選択的アゴニスト及びアンタゴニストは、例えば、参照することにより組み込まれるMarkovic,T.“Structural features of subtype-selective EP receptor modulators”Drug Discovery Today.2017、22(1):57-71に示されている。第一のクラスのアゴニストは、内因性リガンドPGE2と構造的に似ているが、ω-親油性鎖に効力及び選択性の向上に寄与する主な修飾を組み込むリガンドを含む。第二のクラスのアゴニストは、非プロスタノイド系のピリジルスルホンアミド誘導体であり、その最も強力なものはタプレネパグイソプロピル(PF 04217329、CP544326のプロドラッグ)である。タプレネパグは、非プロスタノイド構造
【化4】
を有する。
【0050】
第三のクラスのアゴニストとしては、非プロスタノイド系のN-フェニル-y-ラクタム誘導体が挙げられ、これには、AGN-21 0669及びAGN-21 0961が含まれる。
【0051】
PF-0441 8948、アゼチジン-3-カルボン酸誘導体は、最初の選択的EP2アンタゴニストであり、これはIC50 16nM(Kb=1.8nM)を有し、他のプロスタノイド受容体に対して、EP2受容体の選択性において>10,000倍の増加を示す。
【0052】
Markovicの
図5(参照することにより組み込まれる)は、EP4受容体の選択的アゴニスト、すなわち、(a)官能化シクロペンタンコアに基づく誘導体、(b)ヒドロキシシクロペンタノンコアのラクタム対応部分を有する誘導体、及び(c)構造的に多様なEP4アゴニストを示す。バイオアベイラビリティの改善を意図して末端カルボン酸官能基の代わりにテトラゾールの特徴をa鎖に導入し、L902,688、すなわち、EP4受容体のサブナノモルアゴニストの発見につながった(EC50=0.2nM)。L902,688は、プロスタノイド構造
【化5】
を有する。
【0053】
低ナノモルEP4アゴニストであるKAG-308の構造
【化6】
は、これが7,7-ジフルオロプロスタサイクリン骨格に基づく唯一のものであることから、EP4アゴニストの分野ではやや独特である。
【0054】
Markovicの
図6(参照することにより組み込まれる)は、EP4受容体の選択的アンタゴニストと、最小限の構造変化の結果としての機能的反応の切り替え、すなわち、(a)EP4受容体の選択的アンタゴニスト、及び(b)EP4受容体におけるアゴニズムとアンタゴニズムの切り替えを示す。PG-1 531、すなわち、三置換フラン誘導体は、ナノモルEP4アンタゴニストであり、優れた選択性プロファイル及び向上した水溶性を有する。該分子に若干の修飾を導入することにより、EP4受容体における後者の固有活性を微調整することが可能である(例を
図17に示す)。例えば、固有活性(アゴニズム対アンタゴニズム)は、
図17(パネルb)の化合物のベンジル基のトリフルオロメチル置換基の置換パターンのみに依存することを示した。劇的な機能の変化は、リガンド構造の最小限の変化により達成され得る。
【0055】
図15は、繊毛形成に対する影響を調べたPGモジュレーター(アゴニスト及びアンタゴニスト)を示す。
【0056】
図16Aは、非プロスタノイドEP2アゴニストであるCP-544326が、アルプロスタジルと同様のレベルまで繊毛形成を回復させることを示す。
図16Bは、CP-544326が、繊毛形成を用量依存的に回復させることをDMSOと比較して示す。
図16Cは、
図16Bの結果の片対数表現であり、CP-544326滴定は、EP2に対してEC50=11nMを示す。非プロスタノイドであるCP-544326に関する繊毛形成の回復は、作用機序におけるその特異性を裏付ける。対照的に、
図17Aは、プロスタノイドEP4アゴニストであるL-902.688が、繊毛形成に有意な影響を及ぼさないことを示す。これらの結果は、EP2が、繊毛形成においてEP4より重要な役割を果たすことを示す。
【0057】
図17Cは、アルプロスタジルと同様、CP-544326処理が、NPHPl(del)患者由来の複数の細胞株、例えば、1-09-P、1-06-P1及び1-06-P2における繊毛形成を増加させることをDMSOで処理されたものと比較して示す。
図17Dのメタ分析は、
図17Dの線形回帰分析を示し、勾配は、CP-544326が対照細胞及び複数のNPHP患者由来の細胞株の繊毛形成に与える影響を反映し、各記号は、独立した実験を表し、各色は、患者の細胞株(1-09-P L4、1-06-P1、1-06-P2、PT-1として指定)を表す。対照の正常上皮細胞のデータに関する線形回帰は、0.6369~1.03の勾配値を示し、CP-544326が繊毛形成に影響を及ぼさないことを示唆している。対照的に、複数のNPHP患者由来の細胞に関する線形回帰は、統合勾配値1.36または勾配値の範囲1.245~1.532を示し、繊毛形成に対するアルプロスタジルの促進効果を示している。
【0058】
差次的発現分析
マイクロアレイ分析を行い、アルプロスタジルが媒介する繊毛形成の回復に関与する発現遺伝子を特定した。URECを96ウェルのプレートで培養し、
図18に要約するように、異なる濃度のアルプロスタジルで処理し、その後RLTまたはQiazol法を用いてRNA抽出を行った。
【0059】
図19は、階層的クラスタリングにより分析したサンプルのマイクロアレイデータを示す。最初にデータを抽出のタイプ(Qiazol対RLT)によりクラスター化した。Qiazolサンプルを次に条件、例えば、対照対アルプロスタジル処理でクラスター化し、RLTサンプルを次に反復によりクラスター化した。
【0060】
図20は、階層的クラスタリングにより分析したサンプルのマイクロアレイデータを示す。Qiazol抽出サンプルから得たデータを、処理内での用量や対照内での培地/DMSOによるのではなく、条件により、次に反復によりクラスター化した。
【0061】
図21は、階層的クラスタリングにより分析したサンプルのマイクロアレイデータを示す。RLT抽出サンプルから得たデータを、処理内での用量や対照内での培地/DMSOによるのではなく、反復により、次に条件(対照対アルプロスタジル処理)によりクラスター化した。
【0062】
RLT抽出サンプルから得たマイクロアレイデータに関しては、DMSOと培地間で有意な差はなく、例えば、調節されたエクソン/パターンのない4つの差次的に発現された遺伝子のみであった。
図22は、しかしながら、対照(DMSO)とアルプロスタジル処理(0.2μM、2μM及び10μM)を比較して、3つのアルプロスタジル濃度の比較にわたって、ほぼ同数の発現遺伝子及び調節遺伝子を示している。上位3つの調節遺伝子もまたほぼ同じであり、同じシグナル伝達経路、例えば、細胞接着及び細胞外マトリクスの下方制御を共有する。
【0063】
Qiazol抽出サンプルから得たマイクロアレイデータに関しては、DMSOと培地間で有意な差はなく、例えば、調節されたエクソン/パターンのない33の差次的に発現された遺伝子であった。しかしながら、
図26に示すように、対照(DMSO)とアルプロスタジル処理(0.2μM、2μM及び10μM)を比較すると、3つのアルプロスタジル濃度の比較にわたって、ほぼ同数の発現遺伝子及び調節遺伝子が存在する。上位3つの調節遺伝子もまたほぼ同じであり、同じシグナル伝達経路、例えば、細胞接着及び細胞外マトリクスの下方制御、ならびにインターフェロンシグナル伝達の上方制御を共有する。
【0064】
さらに、
図24A及び24Bは、合計310遺伝子、すなわち、「クラスター1」=120の下方制御された遺伝子及び「クラスター2」=190の上方制御された遺伝子をまとめ、2つのクラスターが定義されたことを示す。これは、様々な用量から得られたマイクロアレイデータ間で有意差が検出されなかったことを示す。
【0065】
さらに、アルプロスタジル処理の有無にかかわらない患者のマイクロアレイデータと、対照対患者のRNAseqのものを交差させることによる経路分析で、アルプロスタジルが、対照細胞と比較してNPHP患者由来の細胞において認められる遺伝子発現の変化を逆転できることが明らかになった。
【0066】
マルチオミクス解析
図25は、繊毛形成に対する薬効のマルチオミクス解析のプロセスを示す。
図26A~26Eは、例えば、5つの独立した実験において、アルプロスタジルが繊毛形成に与える影響、例えば、繊毛細胞%の表現型分析を示す。これらの結果は、n=1~5において、用量依存的な反応なしに同様の倍率でアルプロスタジルが部分的に繊毛形成を回復させることを示している。
【0067】
図27は、マルチオミクスデータ(DMSO 0.04%中のNPHP患者由来の細胞とアルプロスタジル2μMで処理したNPHP患者由来の細胞)のタンパク質差次的発現分析から特定されたドラッグド(drugged)及びドラッガブル(druggable)遺伝子の要約を示し、そこからドラッグド遺伝子を命名している。
【0068】
図28(A~C)は、(A)プロスタグランジンE1(アルプロスタジル)下流相互作用、(B)NPHP1上流相互作用及び(C)NPHP1~20遺伝子関連直接相互作用に関するマルチオミクスデータからの経路分析(Ingenuity Pathway Analysisを使用)、ならびに関連する標的機会を示す。
【0069】
インビボモデル
図29は、ゼブラフィッシュNPHP4モルホリノ(MO)モデルからの結果を示し、ここでは、単細胞期の野生型のゼブラフィッシュ胚に、NPHP4 mRNAの開始部位をリボソーム結合から遮断するモルホリノ(例えば、NPHP4 ATG MO)を注射した。このモルホリノは、NPHP4 mRNAの翻訳を特異的に阻害する。ゼブラフィッシュNPHP4 MOは、体表面彎曲、前腎嚢胞、側性(心臓ルーピング)欠損、及び排せつ腔拡張(閉塞)を含めた古典的な繊毛病関連の表現型を示す。
【0070】
図30は、ゼブラフィッシュNPHP4 MOモデルの薬物処理のプロトコル(アルプロスタジル:0.5μM及び5μM)を示す概略図である。簡潔には、野生型Tg(wt1b:GFP)トランスジェニックゼブラフィッシュ胚に、モルホリノ(例えば、nphp4 ATG MO)を単細胞期で注射した。受精後時間(hpf)8時間で、注射胚をPTU-卵海水中、薬物または媒体で処理した(12ウェルプレートに1mL)。24hpfで、薬物処理を更新し、プロナーゼを36hpfで加えて絨毛膜を除去した。54hpfで、ゼブラフィッシュ胚の表現型、特に体表面彎曲及び糸球体の前腎嚢胞について、適切な手段、例えば、それぞれ、立体鏡及びPerkinElmer Opera Phenix HCSシステムを用いて調べた(Tg(wt1b:GFP)導入遺伝子で標識)。
【0071】
図31、パネルAは、DMSO(0.04%)が野生型ゼブラフィッシュ胚に致死性、体表面彎曲、前腎嚢胞のいずれも誘導しなかったことを示す。さらに、NPHP4発現に影響を及ぼさない対照モルホリノを注射したゼブラフィッシュもまた、体表面彎曲(
図31、パネルB)や前腎嚢胞(
図31、パネルC)を示さなかった。対照的に、NPHP4 MOを注射したゼブラフィッシュは、例えば、体表面彎曲(
図31、パネルB)及び前腎嚢胞(
図31、パネルC)を含めた古典的な繊毛病関連の表現型を用量依存的に示す。
【0072】
図32、パネルAは、4つのカテゴリー、すなわち、正常、クラスI、クラスII及びクラスIIIのゼブラフィッシュの代表的な体軸彎曲を示す。
図35、パネルBは、アルプロスタジル処理(0.5μM及び5μM)が、ゼブラフィッシュNPHP4 MOの体軸彎曲にDMSO処理のものと比較して有意に影響を及ぼさなかったことを示す(p>0.05、フィッシャーの正確検定)。同様に、自動定量化パラメータとして体表面彎曲を使用して、
図32、パネルCは、アルプロスタジル処理(0.5μM及び5μM)が、ゼブラフィッシュNPHP4 MOの背部彎曲にDMSO処理のものと比較して有意に影響を及ぼさなかったことを示す。
【0073】
図33、パネルAは、ゼブラフィッシュの代表的な前腎嚢胞、すなわち、正常、軽度及び重度を示す。
図33、パネルBは、アルプロスタジル処理(0.5μM)がnphp4 MO注射胚の重度の前腎嚢胞のパーセンテージをDMSO処理のものと比較して有意に低下させたことを示す(p<0.05、フィッシャーの正確検定)。同様に、
図33、パネルCは、アルプロスタジル処理(5μM)がnphp4 MO注射胚の重度の前腎嚢胞のパーセンテージをDMSO処理のものと比較して有意に低下させたことを示す。
【0074】
ジノプロストン(PGE2)が繊毛病に与える影響を調べるため、ゼブラフィッシュNPHP4 MOをジノプロストン(50μM)またはDMSOで処理した。
図34、パネルAは、ジノプロストン処理がゼブラフィッシュNPHP4 MOの正常体軸彎曲%をDMSO処理のものと比較して有意に増加させることを示す(p=0.0066、フィッシャーの正確検定)。
図34、パネルBは、しかしながら、ジノプロストン処理がゼブラフィッシュNPHP4 MOの背部彎曲にDMSO処理のものと比較して有意に影響を及ぼさなかったことを示す(p=0.0577、t検定)。
図34、パネルCは、ジノプロストン処理がDMSO処理のものと比較して、ゼブラフィッシュNPHP4 MOの重度及び軽度の前腎嚢胞%を有意に低下させ、正常前腎嚢胞%を有意に増加させたことを示す(p<0.008、フィッシャーの正確検定)。
【0075】
選択的EP2アゴニストであるCP-544326の影響を調べるため、ゼブラフィッシュNPHP4 MOをCP-544326(100nM)またはDMSOで処理した。
図35は、CP-544326処理が、DMSO処理のものと比較して、ゼブラフィッシュNPHP4 MOの重度の前腎嚢胞%を有意に低下させ、軽度及び正常前腎嚢胞%を増加させることを示す(p<0.01、フィッシャーの正確検定)。
【0076】
タプレネパグイソプロピル(PF 04217329、CP-544326のプロドラッグ)及びタプレネパグ(CP-544326)のインビボでの安定性を調べるため、薬物動態学的(PK)試験を野生型C57BL/6Jマウスで行った。
図36は、このPK試験デザインを示す。タプレネパグイソプロピル(1mg/kgもしくは8mg/kg)またはタプレネパグ(8mg/kg)の腹腔内注射後、これら化合物の様々な器官での濃度を異なる時点で測定した。それらの結果は、一般的に、血漿(
図37A)、腎臓(
図37B)、精巣(
図37C)、網膜(
図37D)、及び硝子体液(
図37E)では、タプレネパグがタプレネパグイソプロピルよりも安定であることを示す。
【0077】
NPHP1のホモ接合型欠失は、若年性ネフロン癆1の最も一般的な原因である。NPHP1のホモ接合型または複合ヘテロ接合型変異はまた、例えば、ジュベール症候群4(脳異常)及びSenior-Loken症候群1(網膜症)とも関連している。NPHP1 KO動物を作製し、タプレネパグがこれらの疾患の治療に使用できるかどうかを調べた。CRISPR/Cas9で操作されたNphpl-/-マウスモデルを確立するため、シングルガイドRNAをC57BL/6J胚に注射し、Nphplのエクソン1のATGを含む76bpの欠失を作製した。Nphpl-/-マウスモデルの自然な生長を特徴づけるため、Nphp1+/+及びNphpl-/-マウスの腎臓及び網膜切片の組織化学染色を行った。Nphpl-/-マウスモデルは腎表現型を示さない。対照的に、P14齢Nphpl-/-マウスは、P28でサクリファイスされるまで、光受容体層の厚さの減少を示し始め(例えば、内節(IS)、外節(OS)及び外核層(ONL))、繊毛病関連の兆候に対応するこのモデルでの急速な網膜変性を示す。
【0078】
網膜変性を評価するため、半自動ツールを開発し、網膜切片に手動でマークした5つの離れた平面での各網膜層の検出及び定量的厚さ測定を行った(
図38B)。半自動定量分析は、光受容体層ONL、IS及びOSの厚さの明らかな減少を裏付ける(
図38C)。
【0079】
Nphpl欠失がこのモデルの光受容体の構造機構に与える影響を調べるため、免疫組織化学(IH)分析をNphp1
+/+及びNphpl
-/-マウスの網膜切片で行った(
図39A及びB)。組織を固定し、DAPI(核染色用)、抗ロドプシン抗体(OS染色用)、ならびに抗Cep290抗体(結合繊毛染色用)またはPNA(OS及びIS染色用)で蛍光標識し、免疫蛍光顕微鏡検査法を用いて検出した。
図39Aは、Nphp1
-/-マウスモデルが、OSに沿ってロドプシンが局在化し、結合繊毛においてCep290の点状の分布により囲まれたよく組織化された光受容体構造を示すことを示す。これは、結合繊毛が、ISから感光性OSへロドプシンを輸送するのに機能的であることを示す。対照的に、Nphpl
-/-マウスは、結合繊毛を形成することができず、IS及びOSでの明らかなロドプシンの誤局在化を示し、ロドプシンの輸送が結合繊毛の正確な形成/維持を必要とすることを示唆する。一致して、
図39Bは、Nphp1
+/+マウスとは対照的に、Nphpl
-/-マウスが、IS/OS、及びONLでも同様に明らかなロドプシンの誤局在化を示すことを示す。
【0080】
Nphpl欠失が光受容体の機能に与える影響を評価するため、異なる強度の光刺激下、網膜電図(ERG)をNphp1
+/+及びNphp1
-/-マウスで行った(
図40A~C)。
図40A及びBは、所与の光強度に関して、P21で同じ動物から記録されたERGのa波及びb波を示す。Nphp1
+/+マウスとは対照的に、Nphp1
-/-マウスは、所与の光刺激強度で劇的に低いERGの振幅を示す。
図40Cは、異なる強度の光刺激下のERGのa波の拡大図であり、a波は光受容体機能を反映している。
【0081】
CP-544326が繊毛病関連の表現型に与える影響を調べる前に、潜在的な標的であるEP2の発現を免疫組織化学により調べた。蛍光顕微鏡検査法により、EP2が、P21齢のNphp7+/+及びNphpl-/-マウスの光受容体層IS及びONLにおいてタンパク質レベルでよく発現されることが明らかであるが、OS/IS/ONLの境界は、Nphpl-/-マウスでは区別するのが困難であった。
【0082】
図42は、CP-544326がNphp7
-/-マウスモデルで生じる網膜変性に与える影響を評価するための実験デザインを示す。簡潔には、動物に、媒体またはCP-544326の媒体溶液(18mg/kg)のいずれかを3日ごとまたは4日ごとに、P6~P21まで注射した(i.p.)。表現型の計測値は、Nphpl
-/-マウスモデルの特性評価用に前述した構造的及び機能的パラメータを含む。
【0083】
図43は、IHC切片の網膜層の半自動定量から計算したONL/OPL比で表される、CP-544326が光受容体層ONLの厚さに与える影響を示す。CP-544326処理(18mg/kg)は、Nphp7
-/-マウスにおけるONL/OPL比の低下を、媒体処理のものと比較して有意に抑える(p<0.05、マン・ホイットニー検定)。同様に、CP-544326処理(18mg/kg)は、蛍光顕微鏡検査法により、IHC切片で、半自動的に定量化されるパラメータ「ONLにおける平均緑色強度」として表される、Nphpl
-/-マウスにおけるロドプシンの誤局在化を有意に抑えた(p<0.05、独立t検定)(
図44)。
【0084】
CP-544326が光受容体の反応性に与える影響を評価するため、異なる強度の光刺激下、網膜電図(ERG)をCP-544326(18mg/kg)または媒体で処理したNphp1
+/+及びNphp1
-/-マウスで行った。ERGのa波の拡大図(
図45)は、CP-544326(18mg/kg)が、媒体処理Nphpl^マウスのものと比較して、光受容体反応の振幅にわずかな改善をもたらすことを示す。
【0085】
本明細書で引用されたすべての参考文献は、各参考文献が参照することにより組み込まれることが具体的かつ個別に示されたものとして、参照することにより本明細書に組み込まれる。上記の要素の各々、または2つ以上を合わせたものは、上記のタイプとは異なる他のタイプの方法においても有用な用途を見出し得ることが理解されよう。さらなる分析をすることなく、上記は本開示の主旨を十分に明らかにするため、他の者は、現在の知識を適用することによって、先行技術の観点から、一般的なまたは、添付の特許請求の範囲に示される本開示の特定の態様の本質的な特徴を適正に構成する特徴を省略することなく、様々な用途にこれを容易に適合させる。前述の実施形態は、例としてのみ提示されており、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の方法、GPCRアゴニスト、および使用:
[1]
対象における少なくとも1つの繊毛病関連の疾患の治療方法であって、前記対象に対して、少なくとも1つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)を標的とする、治療有効量の少なくとも1つの薬剤を投与することを含む、前記方法。
[2]
前記繊毛病関連の疾患が、NPHP1遺伝子座のホモ接合型欠失に起因する、[1]に記載の方法。
[3]
前記繊毛病関連の疾患が、NPHP1遺伝子座のヘテロ接合型欠失及び第二の遺伝子座でのヘテロ接合型またはホモ接合型機能欠損に起因する、[1]に記載の方法。
[4]
前記繊毛病関連の疾患が、NPHP1の1つの対立遺伝子におけるヘテロ接合型欠失及びもう1つの対立遺伝子における機能欠損変異に起因する、[1]に記載の方法。
[5]
前記繊毛病関連の疾患が、NPHP1の1つの対立遺伝子における機能欠損変異及びもう1つの対立遺伝子における異なる機能欠損変異に起因する、[1]に記載の方法。
[6]
前記少なくとも1つの薬剤が、前記少なくとも1つのGPCRのアゴニストである、[1]に記載の方法。
[7]
前記少なくとも1つの薬剤が、プロスタグランジンである、請求項6に記載の方法。
[8]
前記少なくとも1つの薬剤が、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE2(PGE2)、16,16-ジメチル-PGE2(dmPGE2)、L902,688、CP-544326、AGN-21 0669、18a、AGN-21 0961、ED-1 17、CP-533536、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[6]に記載の方法。
[9]
前記少なくとも1つのGPCRが、EP1、EP2、EP3及びEP4からなる群から選択される、[6]に記載の方法。
[10]
前記少なくとも1つの疾患が、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1機能欠損が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290対立遺伝子及び他の病原性または機能欠損バリアントに関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される、[6]に記載の方法。
[11]
前記少なくとも1つの薬剤が、CP-544326であり、前記少なくとも1つのGPCRが、EP2である、[1]~[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12]
前記有効量が、100pM~5μMである、[1]~[10]のいずれか1項に記載の方法。
[13]
前記少なくとも1つの疾患がネフロン癆である、[1]~[10]のいずれか1項に記載の方法。
[14]
少なくとも1つの繊毛病関連の疾患を治療するための治療薬を特定する方法であって、
(a)前記繊毛病関連の疾患の動物または細胞モデルに対して、試験薬を投与することであって、前記動物または細胞モデルは、前記繊毛病関連の疾患の測定可能な表現型を示す、前記投与することと、
(b)前記処理された動物または細胞モデルの前記測定可能な表現型と、未処理の動物または細胞モデルの前記測定可能な表現型を比較することと、
(c)前記処理された動物または細胞モデルの前記測定可能な表現型が、前記未処理の動物または細胞モデルのものと比較して改善された場合、前記試験薬を繊毛病関連の疾患の治療用の治療薬であると特定することとを含む、前記方法。
[15]
前記動物モデルが、Danio rerio(ゼブラフィッシュ)である、[14]に記載の方法。
[16]
前記動物モデルが、1つ以上の破壊剤を投与することによって作製される、[15]に記載の方法。
[17]
前記1つ以上の破壊剤が、モルホリノを含む、[16]に記載の方法。
[18]
前記モルホリノが、少なくとも1つのネフロシスチン(NPHP)の発現を阻害する、[17]に記載の方法。
[19]
前記少なくとも1つのNPHPが、NPHP4である、[18]に記載の方法。
[20]
前記測定可能な表現型が、体表面彎曲、前腎嚢胞、側性心臓欠陥及び排せつ腔拡張からなる群から選択される、[14]~[19]のいずれか1項に記載の方法。
[21]
前記測定可能な表現型が、前腎嚢胞である、[20]に記載の方法。
[22]
前記少なくとも1つの繊毛病関連の疾患が、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1の機能欠損が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される、[14]~[19]のいずれか1項に記載の方法。
[23]
前記少なくとも1つの疾患がネフロン癆である、[22]に記載の方法。
[24]
少なくとも1つの繊毛病関連の疾患の治療に使用するためのGPCRアゴニスト。
[25]
前記GPCRアゴニストが、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE2(PGE2)、16,16-ジメチル-PGE2(dmPGE2)、CP-544326、L902,688、AGN-21 0669、18a、AGN-21 0961、ED-1 17、CP-533536、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[24]に記載の使用。
[26]
前記GPCRが、EP1、EP2、EP3及びEP4からなる群から選択される、[24]に記載の使用。
[27]
前記少なくとも1つの繊毛病関連の疾患が、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1の機能欠損が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される、[24]~[26]のいずれか1項に記載の使用。
[28]
前記動物モデルが、nphp1-/-マウスである、[14]に記載の方法。
[29]
前記測定可能な表現型が、網膜層の厚さを含む、[28]に記載の方法。
[30]
前記少なくとも1つの繊毛病関連の疾患が、ネフロン癆(NPHP)、Senior-Loken症候群(SLS)、ジュベール症候群(JBTS)及び関連する障害疾患(JSRD)、バルデ・ビードル症候群(BBS)、メッケル・グルーバー症候群(MKS)、口顔指症候群(OFD)、NPHP1の機能欠損が引き起こす末期腎疾患、ならびにNPHP1、NPHP4、NPHP6/CEP290変異に関連する腎臓及び網膜繊毛病からなる群から選択される、[28]または[29]に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
【
図1】
図1A~1Dは、尿由来の腎上皮細胞を示す。1A:正常対照、1B:NPHP1の欠失があるNPHP患者(Pt1)、1C:RT-PCRの比較、1D:免疫ブロットの比較。
【
図2】目的の細胞における繊毛形成を定量化するための自動インビトロアッセイを示す。
【
図3】NPHP患者(PT1)由来の繊毛細胞の割合が、対照細胞(CTRL)のものより有意に低いことを示す。
【
図4】新規な繊毛系アッセイのステップを示す概略図である。
【
図5】(A)フルチカゾン、(B)フェニラミン、(C)ベラパミル、(D)ML-141、(E)ミトキサントロン、(F)トロピセトロン、(G)エトプロパジン、(H)シプロヘプタジン、(I)パクリタキセル及び(J)シンバスタチンが繊毛形成に与える影響をDMSOと比較して示す。
【
図6】アルプロスタジルが繊毛形成に与える影響をDMSOと比較して示す。
【
図7A】アルプロスタジルの繊毛形成に対する用量反応をDMSOと比較して示す。
【
図7B】IC50の特定のための対応する片対数表現を示す。
【
図8A】アルプロスタジル処理での複数の繊毛形成実験で得られた結果のメタ分析を示す。
【
図8B】アルプロスタジル処理での複数の繊毛形成実験で得られた結果のメタ分析を示す。
【
図8C】アルプロスタジル処理での複数の繊毛形成実験で得られた結果のメタ分析を示す。
【
図9】アルプロスタジル処理での複数の繊毛形成実験で得られた結果のメタ分析を、実験ごとのデータを区別して示す(A~D)。
【
図11A】アルプロスタジル(PGE1)、ジノプロストン(PGE2)、及び16,16-ジメチル-PGE2(dmPGE2)が繊毛形成に与える影響を示す。
【
図11B】アルプロスタジル(PGE1)がNPHP1欠失患者由来の細胞株に与える影響を示す。
【
図13】ウェスタンブロットによるヒト腎臓組織における、及び免疫組織化学によるヒト網膜におけるEP1~4の発現プロファイルを示す。
【
図14】
図14Aは、EP2及びEP4のmRNAが、対照及びPt1由来の腎上皮細胞において発現されることを示す。
図14Bは、EP2が、対照及びPt1由来の腎上皮細胞においてタンパク質レベルで発現されることを示す。
図14Cは、複数の対照細胞株及び複数のNPHP患者由来の腎上皮細胞株におけるEP1~4受容体をコードする遺伝子のmRNA発現を示す。
【
図15】繊毛形成への影響を調べたプロスタグランジン(PG)モジュレーター(アゴニスト及びアンタゴニスト)を示す。
【
図16B】CP-544326で処理したNPHP患者由来の細胞を示す。
【
図17A】L-902.688が繊毛形成に与える影響を示す。
【
図17B】CP-544326及びアルプロスタジルが繊毛形成に与える影響を示す。
【
図17C】CP-544326が患者由来の細胞に与える影響を示す。
【
図18】マイクロアレイ分析用にRLTまたはQiazol法で抽出されたRNAを示す。
【
図19】階層的クラスタリングによって分析されたサンプルのマイクロアレイデータを示す。
【
図20】階層的クラスタリングによって分析されたサンプルのマイクロアレイデータを示す。
【
図21】階層的クラスタリングによって分析されたサンプルのマイクロアレイデータを示す。
【
図22】RLT抽出サンプルから得たマイクロアレイデータを要約する。
【
図23】Qiazol抽出サンプルから得たマイクロアレイデータを要約する。
【
図24A】様々な用量から得たマイクロアレイデータ間に有意差がないことを示す。
【
図24B】様々な用量から得たマイクロアレイデータ間に有意差がないことを示す。
【
図25】繊毛形成に対する薬効のマルチオミクス解析のプロセスを示す。
【
図26】アルプロスタジルが繊毛形成に与える影響の表現型分析を示す(A~E)。
【
図27】ドラッグド(drugged)及びドラッガブル(druggable)遺伝子のimRNA差次的発現を示す。
【
図28A】プロスタグランジンE1(アルプロスタジル)の下流相互作用に関するマルチオミクスデータからの経路分析、及び関連する標的機会を示す。
【
図28B】NPHP1の上流相互作用に関するマルチオミクスデータからの経路分析、及び関連する標的機会を示す。
【
図28C】NPHP1~20遺伝子関連の直接相互作用に関するマルチオミクスデータからの経路分析、及び関連する標的機会を示す。
【
図29】ゼブラフィッシュのNPHP4 MOモデルを示す。
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図30】ゼブラフィッシュのNPHP4 MOモデルの薬物処理のプロトコルを示す。
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図31】モルホリノ注射がゼブラフィッシュに与える影響を要約する(A~C)。
【
図32】(A)ゼブラフィッシュの代表的な体軸彎曲、及び(B、C)アルプロスタジルがゼブラフィッシュの体軸彎曲に与える影響を示す。
【
図33】(A)ゼブラフィッシュの代表的な前腎嚢胞、及び(B、C)アルプロスタジルがゼブラフィッシュの前腎嚢胞に与える影響を示す。
【
図34】(A、B)ジノプロストンがゼブラフィッシュの体軸彎曲に与える影響、及び(C)ジノプロストンがゼブラフィッシュの前腎嚢胞に与える影響を示す。
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図35】CP-544326がゼブラフィッシュの前腎嚢胞に与える影響を示す。
【
図38A】wt及びNphp1
-/-マウスにおける網膜の過ヨウ素酸-シッフ染色を示す。
【
図38C】HphpV’マウスの網膜層の厚さの定量をwtマウスと比較して示す。
【
図39A】繊毛マーカーとしてのCep290ならびにそれぞれ、外節(OS)、及び内/外節の光受容体マーカーとしてのロドプシン及びPNA(ピーナッツ凝集素レクチン)のwt及びNphp1
-/-マウス網膜での免疫組織染色を示す。
【
図39B】繊毛マーカーとしてのCep290ならびにそれぞれ、外節(OS)、及び内/外節の光受容体マーカーとしてのロドプシン及びPNA(ピーナッツ凝集素レクチン)のwt及びNphp1
-/-マウス網膜での免疫組織染色を示す。
【
図40】Nphp1
-/-マウスの網膜電図をwtマウスと比較して示す。
【
図41】wt及びNphp1
-/-マウスにおけるEP2受容体の発現を示す。
【
図42】本開示の1つの実施形態による試験デザインを示す。
【
図43】Nphp1
-/-マウスにおいてCP-544326がONL/OPLの網膜層の厚さの比に与える影響を示す。
【
図44】NphpV’マウスにおいてCP-544326がONLの緑色標識ロドプシンの誤局在化に与える影響を示す。
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図45】CP-544326がNphp1
-/-マウスの網膜電図に与える影響を示す。
【外国語明細書】