(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159188
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】フランジ補強具の装着方法
(51)【国際特許分類】
F16L 23/036 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
F16L23/036
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128572
(22)【出願日】2023-08-07
(62)【分割の表示】P 2019192123の分割
【原出願日】2019-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】東海林 卓也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】管路構成部材の両フランジを上下方向に十分に狭持することができるフランジ補強具の装着方法の提供。
【解決手段】上下両端にフランジを有する接続部材4に接合される管路構成部材3,5の両フランジを、環状を成す上下一対の狭持部材11,14で狭持し、一対の狭持部材11,14を連結ボルト17aで連結して補強するフランジ補強具の装着方法であって、上方の狭持部材11には連結ボルト17aの軸部を挿通可能な挿通部が形成されており、下方の狭持部材14は、挿通部と上下方向に対応する位置に連結ボルト17aの軸部を挿通可能に形成されており、連結ボルト17aの軸部を上方の狭持部材11の挿通部及び下方の挟持部材14に挿通させた状態で連結ボルト17aを操作することにより、下方の狭持部材14を上方の狭持部材11に近づくように移動させ、上下一対の狭持部材11,14により管路構成部材3,5の両フランジを上下方向に狭持する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下両端にフランジを有する接続部材の両フランジにそれぞれ接合される管路構成部材の両フランジを、環状を成す上下一対の狭持部材で狭持し、該一対の狭持部材を連結ボルトで上下方向に連結してフランジ接合を補強するフランジ補強具の装着方法であって、
上方の狭持部材には前記連結ボルトの軸部を挿通可能な挿通部が形成されており、下方の狭持部材は、前記挿通部と上下方向に対応する位置に前記連結ボルトの軸部を挿通可能に形成されており、前記連結ボルトの軸部を前記上方の狭持部材の前記挿通部及び前記下方の挟持部材に挿通させた状態で前記連結ボルトを操作することにより、前記下方の狭持部材を前記上方の狭持部材に近づくように移動させ、前記上下一対の狭持部材により前記管路構成部材の両フランジを上下方向に狭持することを特徴とするフランジ補強具の装着方法。
【請求項2】
前記上方の狭持部材の前記挿通部の周縁に、前記連結ボルトの頭部が係止可能に形成されており、前記下方の挟持部材には、前記連結ボルトが螺合可能な雌ネジ部が前記挿通部と上下方向に対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフランジ補強具の装着方法。
【請求項3】
前記下方の狭持部材に取付けられたナットに前記雌ネジ部が形成されており、前記連結ボルトの軸部を前記ナットに形成された前記雌ネジ部に螺合させることを特徴とする請求項2に記載のフランジ補強具の装着方法。
【請求項4】
前記狭持部材は、周方向に分割された複数の分割体と、前記複数の分割体を結合する上下方向に延びる複数の結合ボルトと、を有し、前記分割体は、周方向両端に設けられる接合部を備え、前記分割体の前記接合部は、隣接する前記分割体の前記接合部と上下方向に重畳し、上側の前記接合部には前記結合ボルトを遊挿可能な挿通孔が設けられ、下側の前記接合部には前記結合ボルトの軸部が螺合可能な螺合部が設けられ、上方から前記結合ボルトの軸部を前記挿通孔に挿通させ、前記螺合部に螺合させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフランジ補強具の装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続部材と該接続部材の両側に接合される管路構成部材とのフランジ接合を補強するフランジ補強具に関する。
【背景技術】
【0002】
流体管路を構成する管路構成部材の各所には、例えば、補修弁や仕切弁等の接続部材が設けられており、接続部材により流体管路の制御を行えるようにしたものがある。このような接続部材及び管路構成部材は、接続部材の両端に設けられたフランジと、接続部材の両側に配置される管路構成部材のフランジと、が接合され、ボルトナットなどの締結具により密封状に接続されている。
【0003】
このようにフランジ同士を接合する場合、経年による腐食や不等沈下、或いは地震等の外力などにより接合部分から流体管路内の流体が外側に漏れてしまう虞があった。そこで、特許文献1に示されるように、接続部材の両フランジにそれぞれ接合される管路構成部材のフランジにおいて、接続部材のフランジに接続される接続面とは反対側のフランジ面に当接するように一対の狭持部材を配置し、一対の狭持部材をボルトナットなどから構成される連結部材で管路軸方向に連結することで、接続部材と管路構成部材とのフランジ接合を補強するフランジ補強具が開発されている。このフランジ補強具は、下方の狭持部材側に頭部が配置されるように一対の狭持部材に渡って下方からボルトを挿通した後、ボルトの軸部に対して上方からナットを螺合させることにより、一対の狭持部材が近接して管路構成部材の両フランジが上下方向に狭持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-148337号公報(第7頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のフランジ補強具にあっては、例えば、フランジ補強具が上部に開口部を有する狭隘な弁筐内に配置されている場合等であっても、開口部から近い位置でナットにアクセスでき、該ナットを螺合操作して一対の狭持部材を連結する作業を簡便に行えるようになっている。しかしながら、特許文献1のようなフランジ補強具にあっては、ボルトの軸部に対して上方からナットを螺合させると、ボルトが上方に移動するため、ナットよりもボルトの軸部が上方に突出して上方の管路構成部材に干渉してしまい、管路構成部材の両フランジを上下方向に十分に狭持できない虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、管路構成部材の両フランジを上下方向に十分に狭持することができるフランジ補強具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のフランジ補強具は、
上下両端にフランジを有する接続部材の両フランジにそれぞれ接合される管路構成部材の両フランジを、環状を成す上下一対の狭持部材で狭持し、該一対の狭持部材を連結ボルトで上下方向に連結してフランジ接合を補強するフランジ補強具であって、
上方の狭持部材には前記連結ボルトの軸部を挿通可能であり、且つ該連結ボルトの頭部が周縁に係止可能な挿通部が形成されており、下方の狭持部材には前記連結ボルトが螺合可能な雌ネジ部が前記挿通部と上下方向に対応する位置に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、連結ボルトの軸部を上方の狭持部材の挿通部に挿通させた状態で連結ボルトの頭部を上方から操作して連結ボルトの軸部を下方の狭持部材の雌ネジ部に螺合させることにより、下方の狭持部材が上方の狭持部材に近づくように移動され、上下一対の狭持部材により管路構成部材の両フランジが上下方向に狭持されるようになっており、連結ボルトの軸部が上方の狭持部材よりも上方に大きく突出しないので、連結ボルトの軸部が上方の管路構成部材に干渉することが回避され、管路構成部材の両フランジを上下方向に十分に狭持することができる。
【0008】
前記下方の狭持部材に取付けられたナットに前記雌ネジ部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、下方の狭持部材に対して雌ネジ部を簡便に形成することができる。
【0009】
前記ナットは、回動規制手段と落下防止手段とにより前記下方の狭持部材に対して位置決めされていることを特徴としている。
この特徴によれば、ナットが回動規制手段と落下防止手段とにより下方の狭持部材に対して位置決めされているので、上方から連結ボルトをナットの雌ネジ部に螺合させる操作のみで一対の狭持部材を簡便に連結することができる。
【0010】
前記下方の狭持部材は、前記ナットを遊嵌状態で収容する収容部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、ナットと収容部との隙間を利用して上下一対の狭持部材のずれを吸収することができる。
【0011】
前記回動規制手段は、前記収容部の内壁であることを特徴としている。
この特徴によれば、収容部の内壁を利用してナットを回動規制することができるので構造を簡素にすることができる。
【0012】
前記狭持部材は、周方向に分割された複数の分割体と、前記複数の分割体を結合する上下方向に延びる複数の結合ボルトと、を有し、前記分割体は、周方向両端に設けられる接合部を備え、前記分割体の前記接合部は、隣接する前記分割体の前記接合部と上下方向に重畳し、上側の前記接合部には前記結合ボルトを遊挿可能な挿通孔が設けられ、下側の前記接合部には前記結合ボルトの軸部が螺合可能な螺合部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、上方から結合ボルトの軸部を挿通孔に挿通させ、螺合部に螺合させることで簡便に狭持部材を構成できる。
【0013】
前記上方の狭持部材の結合ボルトと、前記下方の狭持部材の結合ボルトとは、上下方向に重畳する位置に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、上下に対応する結合ボルトが1箇所外された上下の狭持部材と、連結ボルトとを仮組みした状態とすることで、上下の分割体が上下に対応する結合ボルトを中心として一体的に回動できるので、管路構成部材のフランジに簡便に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は実施例におけるフランジ補強具を取付けた状態を示す側面図、(b)はフランジ補強具の取付け対象となる補修弁と接続管及び分岐首部とを示す側面図である。
【
図2】(a)はフランジ補強具を上方から見た斜視図、(b)はフランジ補強具を下方から見た斜視図である。
【
図3】(a)は第1狭持部材の分割体を示す上面図、(b)は(a)の紙面下側から見た側面図、(c)は第1狭持部材の分割体を示す下面図、(d)は(a)の紙面右側から見た側面図、(e)は(c)の紙面下側から見た側面図である。
【
図4】(a)は第2狭持部材の分割体を示す上面図、(b)は(a)の紙面下側から見た側面図、(c)は第2狭持部材の分割体を示す下面図、(d)は(c)の紙面右側から見た側面図、(e)は(c)の紙面下側から見た側面図である。
【
図5】仮組みしたフランジ補強具を上方から接続管及び分岐首部の位置まで移動させた状態を示す説明図である。
【
図6】(a)は係合部材を示す上面図、(b)は(a)の紙面下側から見た側面図、(c)は(b)の紙面左側から見た側面図、(d)は係合部材を示す下面図、(e)は(b)の紙面右側から見た側面図である。
【
図7】吊支装置をフランジ補強具に取付ける様子を下方側から見た説明図である。
【
図8】(a)はフランジ補強具を接続管及び分岐首部に設置する様子を上面側から見た説明図、(b)は同じく下面側から見た説明図である。
【
図9】結合ボルトにより分割体を結合する様子を示す説明図である。
【
図10】結合ボルトにより分割体を結合する手順を示す説明図である。
【
図11】連結ボルトを上方から緊締する様子を示す説明図である。
【
図12】吊支装置をフランジ補強具から取外す様子を上方から見た説明図である。
【
図13】フランジ補強具の変形例1を示す説明図である。
【
図14】(a)、(b)はフランジ補強具の変形例2を示す説明図である。
【
図15】(a)、(b)はフランジ補強具の変形例3を示す説明図である。
【
図16】(a)、(b)はフランジ補強具の変形例4を示す説明図である。
【
図17】(a)、(b)はフランジ補強具の変形例5を示す説明図である。
【
図18】(a)、(b)はフランジ補強具の変形例6を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るフランジ補強具を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例に係るフランジ補強具につき、
図1から
図12を参照して説明する。
図1(b)に示されるように、下方の管路構成部材としての流体管3の分岐首部3bに設けられた分岐部フランジ3cには、接続部材としての補修弁4のフランジ4cが接続され、補修弁4のフランジ4dには上方の管路構成部材としての接続管5のフランジ5aが接続され、上下方向に延設されている。この実施例で、
図1(b)に示されるように、補修弁4は、上下に分割され、ボルトなどで連結されているタイプとなるが、補修弁のタイプはこれに限られない。
図1(a)に示されるように、本発明に係るフランジ補強具10は、流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとにかけて結合され、補強するものであるから、上記の補修弁4の分割部も補強できるものであることは言うまでもない。また、接続管5の上方のフランジ5bには消火栓2のフランジ2dが接続される。
【0017】
ここで、流体管3は、既設流体管あるいは新設流体管であってもよく、地中に埋設されるダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0018】
図1(a)及び
図2に示されるように、フランジ補強具10は、接続管5のフランジ5aの上面に係止される上側の第1狭持部材11と、流体管3の分岐部フランジ3cの下面に係止される下側の第2狭持部材14と、第1狭持部材11と第2狭持部材14を連結する連結ボルト17a及び雌ネジ部17cを備えたナット17bと、後述する分割体12,12’を一体に結合して環状の第1狭持部材11を構成し、及び分割体15,15’を一体に結合して環状の第2狭持部材14を構成する結合部材18と、から主に構成される。
【0019】
次いで、
図2及び
図3に基づいて第1狭持部材11について説明する。
図2に示されるように、第1狭持部材11は、周方向に分割された分割体12,12’からなり、該分割体12,12’は結合部材18により結合されることで、環状一体に構成される。この結合部材18は、ボルト18a(結合ボルト)及び、雌ネジからなる螺合部18cを備えたナット18bから構成されている。尚、本実施例においては、第1狭持部材11を2分割した実施例を示したが、これに限らず3分割以上に分割してもよい。また、分割体12,12’は、同一構成となっているため、分割体12についてのみ以下に説明する。
【0020】
図3に示されるように、分割体12は、径方向内側を向くように周方向の2箇所に形成される狭持部12a,12a’と、該狭持部12a,12a’に対応する周方向位置で径方向外側を向くように周方向の2箇所に形成される狭持鍔部12c,12c’と、一方の狭持部12aの基部と他方の狭持部12a’の基部とを連結する連結アーム部12bと、一方の狭持部12aの基部から他方の狭持部12a’とは反対方向に延びるアーム部12dと、を備えている。尚、分割体12には、狭持部12a及び狭持鍔部12cが1つまたは3つ以上の複数ずつ設けられていてもよい。
【0021】
狭持部12a,12a’は、それぞれ、該狭持部12a,12a’の基部の上端縁から径方向内側に突出する2つの突状部12e,12eから構成されている。また、狭持鍔部12c,12c’は、狭持部12a,12a’の基部から外径側に突出しており、上下方向に貫通する貫通孔部12fがそれぞれ形成されている。この貫通孔部12fは、連結ボルト17aの頭部が周縁に係止され、且つ該連結ボルト17aの軸部が挿通可能な挿通部として機能している。また、一方の狭持部12aの基部における外径側下端には、外径側及び下方に開口する切欠き部12jが形成されており、切欠き部12jは貫通孔部12fに連通している。ここで連結ボルト17aの軸部とは、ねじ形成されている部分とねじ形成されていない部分とを含む。
【0022】
また、連結アーム部12bは、一方の狭持部12aの基部の下端部と、他方の狭持部12a’の基部の下端部とを連結するように略円弧状に形成されている。また、アーム部12dは、一方の狭持部12aの基部の上端部から略水平方向に、連結アーム部12bと同心だが異径の略円弧状に形成されており、かつ、外径側の面が直線状になるように形成されている。なお、アーム部12dは、同心且つ同径の略円弧状に形成されていてもよい。また、アーム部12dの端部には、アーム部12dの下端部から周方向に突出する結合部12g(下方の接合部)が形成されており、結合部12gには、上下方向に貫通する貫通孔12hが形成されている。尚、アーム部12d、結合部12g及び後述する結合部12pの外径側は、前述したように接続管5のフランジ5aに取付けられたときに、補修弁4のハンドル等、接続部材の一部に接触しないように、該補修弁4のハンドルの操作方向に沿って切り欠かれている(
図8(a)参照)。
【0023】
また、結合部12gには、下方に開口する収容部としての凹部12kが形成されており、凹部12kの略中心に貫通孔12hが形成されており、該凹部12k内には略六角形状のナット18bが配置されている。この凹部12kは、下面視略六角形状、すなわち、ナット18bの外形と略同一形状の内形を成している。また、ナット18bは、凹部12kの内壁に図示しない接着剤などで固定され、凹部12kから落下しないようになっている。すなわち、凹部12kの内壁は、ナット18bの回動規制手段として機能し、また前記接着剤は、ナット18bの落下防止手段として機能している。尚、ナット18b及び凹部12kは、下面視略六角形状を成す形態を例示したが、下面視略楕円形、六角形以外の多角形等自由に変更してもよく、このような非円形に形成することで、凹部12kの内壁が回動規制手段として機能する。
【0024】
また、他方の狭持部12a’の基部の端部には、他方の狭持部12a’の基部の上端部から周方向に突出する結合部12p(上方の接合部)が形成されており、結合部12pには、上下方向に貫通する挿通孔としての貫通孔12qが形成されている。すなわち、結合部12pは、狭持鍔部12c’の近傍に設けられている。
【0025】
特に
図2に示されるように、これら分割体12,12’を結合する際には、分割体12の結合部12gと分割体12’の結合部12pとを上下に重ねた状態で、貫通孔12h,12qの上方からボルト18aを挿入し凹部12k内のナット18bの内周面に形成された雌ネジからなる螺合部18cに緊締する。他方も同様に、分割体12の結合部12pと分割体12’の結合部12gとを上下に重ねた状態で、貫通孔12h,12qの上方からボルト18aを挿入し上方から凹部12k内のナット18bの螺合部18cに緊締する。このとき、分割体12の結合部12pは分割体12’の結合部12gよりも上方に位置しており、分割体12’の結合部12pは分割体12の結合部12gよりも上方に位置している。
【0026】
これら分割体12,12’が結合されることにより、上方から見て環状を成す第1狭持部材11が構成される。尚、分割体12,12’の各狭持部12a,12a’の基部、各連結アーム部12b及び各アーム部12dは、第1狭持部材11を環状に構成する本体部であり、分割体12,12’の各結合部12g,12pは、周方向に延びる前記本体部の延長線上に設けられている。
【0027】
次いで、
図2及び
図4に基づいて第2狭持部材14について説明する。
図2に示されるように、第2狭持部材14は、周方向に分割された分割体15,15’からなり、該分割体15,15’は結合部材18(
図2参照)により結合されることで、環状一体に構成される。尚、本実施例においては、第2狭持部材14を2分割した実施例を示したが、これに限らず3分割以上に分割してもよい。
【0028】
図4に示されるように、分割体15は、径方向内側を向くように周方向の2箇所に形成される狭持部15a,15a’と、該狭持部15a,15a’に対応する周方向位置で径方向外側を向くように周方向の2箇所に形成される狭持鍔部15c,15c’と、一方の狭持部15aの基部と他方の狭持部15a’の基部とを連結する連結アーム部15bと、一方の狭持部15aの基部から他方の狭持部15a’とは反対方向に延びるアーム部15dと、を備えている。尚、分割体15には、狭持部15a及び狭持鍔部15cが1つまたは3つ以上の複数ずつ設けられていてもよい。
【0029】
狭持部15a,15a’は、該狭持部15a,15a’の基部の下端縁から径方向内側に突出する2つの突状部15e,15eから構成されている。また、狭持鍔部15c,15c’は、狭持部15a,15a’の基部から外径側に突出しており、上下方向に貫通する貫通孔部15fがそれぞれ形成されている。この貫通孔部15fは、連結ボルト17aの軸部が挿通可能となっている。また、狭持鍔部15c,15c’には、下方に開口する収容部としての凹部15jがそれぞれ形成されており、各凹部15jの略中心に貫通孔15fが形成されており、該各凹部15j内にはナット17bが配置されている。この凹部15jは、下面視略六角形状、すなわち、ナット17bの外形と略同一形状の内形を成している。また、ナット17bは、凹部15jの内壁に図示しない接着剤などで固定され、凹部15jから落下しないようになっている。すなわち、凹部15jの内壁は、ナット17bの回動規制手段として機能し、また前記接着剤は、ナット17bの落下防止手段として機能している。尚、ナット17b及び凹部15jは、下面視略六角形状を成す形態を例示したが、下面視略楕円形、六角形以外の多角形等自由に変更してもよく、このような非円形に形成することで、凹部15jの内壁が回動規制手段として機能する。
【0030】
また、連結アーム部15bは、一方の狭持部15aの基部の上端部と、他方の狭持部15a’の基部の上端部と、を連結するように略円弧状に形成されている。また、アーム部15dは、一方の狭持部15aの基部の下端部から略水平方向に、連結アーム部15bと同心だが異径の略円弧状に形成されており、かつ、外径側の面が直線状になるように形成されている。なお、アーム部15dは、同心且つ同径の略円弧状に形成されていてもよい。また、アーム部15dの端部には、アーム部15dの上端部から周方向に突出する結合部15g(上方の接合部)が形成されており、結合部15gには、上下方向に貫通する貫通孔15hが形成されている。尚、アーム部15dの外径側は、アーム部12dの外径側とは異なり、前述したように流体管3の分岐部フランジ3cに取付けられたときに、補修弁4のハンドル等、接続部材の一部に接触しないように、該補修弁4のハンドルの操作方向に沿ったように形成されている(
図8(b)参照)。
【0031】
また、他方の狭持部15a’の基部の端部には、他方の狭持部15a’の基部の下端部から周方向に突出する結合部15p(下方の接合部)が形成されており、結合部15pには、上下方向に貫通する貫通孔15qが形成されている。すなわち、結合部15pは、狭持鍔部15c’の近傍に設けられている。また、結合部15pには、下方に開口する収容部としての凹部15kが形成されており、凹部15kの略中心に貫通孔15qが形成されており、該凹部15k内にはナット18bが配置されている。この凹部15kは、下面視略六角形状、すなわち、ナット18bの外形と略同一形状の内形を成している。また、ナット18bは、凹部15kの内壁に図示しない接着剤などで固定され、凹部15kから落下しないようになっている。すなわち、凹部15kの内壁は、ナット18bの回動規制手段として機能し、また前記接着剤は、ナット18bの落下防止手段として機能している。
【0032】
図2に戻って、これら分割体15,15’を結合する際には、分割体15の結合部15gと分割体15’の結合部15pとを上下に重ねた状態で、貫通孔15h,15qの上方からボルト18aを挿入し凹部15k内のナット18bの内周面に形成された螺合部18cに緊締する。他方も同様に、分割体15の結合部15pと分割体15’の結合部15gとを上下に重ねた状態で、貫通孔15h,15qの上方からボルト18aを挿入し上方から凹部15k内のナット18bの螺合部18cに緊締する。このとき、分割体15の結合部15pは分割体15’の結合部15gよりも下方に位置しており、分割体15’の結合部15pは分割体15の結合部15gよりも下方に位置している。
【0033】
これら分割体15,15’が結合されることにより、上方から見て環状を成す第2狭持部材14が構成される。尚、分割体15,15’の各狭持部15a,15a’の基部、各連結アーム部15b及び各アーム部15dは、第2狭持部材14を環状に構成する本体部であり、分割体15,15’の各結合部15g,15pは、周方向に延びる前記本体部の延長線上に設けられている。これら第1狭持部材11及び第2狭持部材14は、組立状態の上面視で、補修弁4のハンドルの操作方向に沿って切り欠かれているか、ハンドルの操作方向に沿ったように形成されているか等で、互いに異なる形状をしているが、これに限らず同形状としてもよい。
【0034】
次に、フランジ補強具10を使用してフランジ接合を補強する手順について説明する。尚、本実施例では、流体管3の分岐首部3b、補修弁4、接続管5、消火栓2を囲繞する平面視略円形状の比較的狭隘な弁筐20内でフランジ補強具10を取付ける形態を例示する。なお、弁筐の形状は必ずしも平面視略円形状に限られず、例えば平面視略長方形、楕円形、小判形等であっても構わない。
【0035】
先ず、
図5に示されるように、弁筐20の上方を被覆するように載置された図示しない蓋体を取外し、開放された弁筐20の上端の開口からフランジ補強具10を挿入して流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとに取付ける。具体的には、弁筐20の外方において、第1狭持部材11及び第2狭持部材14を分岐部フランジ3c及びフランジ5aの間隔よりも大きな間隔で対向させ、連結ボルト17a及びナット17bによって仮組みする。このとき、第1狭持部材11及び第2狭持部材14は、各結合部材18の位置が上下方向に重畳するように配置されており、一方のボルト18aは緩めた状態でナット18bに螺合され、他方のボルト18aはナット18bから取外されている。これにより、第1狭持部材11の分割体12,12’及び第2狭持部材14の分割体15,15’が上下に対応する結合部材18,18を支点として一体的に回動するようになるため、分割体12,12’及び分割体15,15’を開いた状態で流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとの外径側に配置することができる(
図5、
図7、
図8参照)。
【0036】
このように仮組みされたフランジ補強具10は、上下方向に長尺に構成された吊支装置19,19により流体管3の分岐部フランジ3c及び接続管5のフランジ5aの位置まで吊り下げられた状態で移動する。吊支装置19は、長尺ボルト19aと、長尺ボルト19aの下端に取付けられる係合部材19bと、から主に構成されている。係合部材19bは、長尺ボルト19aに螺合される2つナット19c,19cにより上下に狭持されることで長尺ボルト19aに取付けられている。尚、係合部材19bは、長尺ボルト19aに溶接などで一体的に固定されていてもよい。また、吊支装置19は、金属やプラスチックなどで一体的に形成されてもよい。更に、長尺ボルト19aは、ボルトに限らず軸状の長尺杆であってもよい。
【0037】
図6に示されるように、係合部材19bは、合成樹脂により構成されており、一方側に上面視略C字状に開口した係合部19gを有する基部19fと、基部19fの上下方向略中央部から係合部19gとは反対側に突出するリング部19hと、を主に備えている。係合部19gは、基部19fから一方側に延びる円弧状のアーム部19d,19dにより上面視略C字状に構成されており、アーム部19d,19d及び基部19fの下端部に亘って略水平に外径方向に延びる爪部19e,19eが形成されている。
【0038】
図5及び
図7に示されるように、吊支装置19は、第1狭持部材11の分割体12,12’における切欠き部12jに対して係合部19gを外径側から圧入することにより第1狭持部材11に対して取り外し可能に固定される。係合部19gを切欠き部12jに圧入すると、アーム部19d,19dが弾性変形し、連結ボルト17aの軸部の外周面に係合部19gが外嵌され、アーム部19d,19dは連結ボルト17aの軸部と切欠き部12jの内壁との間で狭持される。また、吊支装置19が第1狭持部材11に取り外し可能に固定された状態にあっては、第1狭持部材11が爪部19e,19eの上面に載置される。このように、吊支装置19,19、第1狭持部材11、連結ボルト17a,17aが一体的に固定されるため、フランジ補強具10を流体管3の分岐部フランジ3c及び接続管5のフランジ5aに取付ける作業を行いやすい。
【0039】
図8に示されるように、仮組みしたフランジ補強具10の分割体12,12’及び分割体15,15’を開いた状態で流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとの外径側に配置した後、吊支装置19,19を操作して分割体12,12’及び分割体15,15’を閉じ、分割体12,15の結合部12p,15pと分割体12’,15’の結合部12g,15gとを上下に重ねる。
【0040】
次いで、
図9及び
図10に示されるように、上下に重畳した分割体12,15の結合部12p,15pと分割体12’,15’の結合部12g,15gとに、上方からボルト18aを治具31,32により挿入し、ナット18bの螺合部18cに螺合させるとともに、緩めた状態のボルト18aを本締めして、第1狭持部材11及び第2狭持部材14を流体管3の分岐部フランジ3c及び接続管5のフランジ5aに取付ける。このときには、第1狭持部材11の狭持部12a,12a’が接続管5のフランジ5aの上面に載置され、分割体12,12’及び分割体15,15’を接続管5のフランジ5aに預けた状態で、ボルト18a及びナット18bの緊締作業を行うことができる。尚、第1狭持部材11の狭持部12a,12a’が接続管5のフランジ5aの上面に載置された状態にあっては、連結ボルト17aの頭部が第1狭持部材11の貫通孔部12fの上方側周縁に係止されており、連結ボルト17aにより第2狭持部材14が吊支されるようになっている。
【0041】
第1狭持部材11の分割体12,12’を結合する治具31には、その下端にナットグリップソケット31aが固定されており、ボルト18aを保持及び回動操作できるようになっている。また、第2狭持部材14の分割体15,15’を結合する治具32には、その下端にユニバーサルジョイント32bを介してナットグリップソケット32aが固定されており、ボルト18aを保持及び斜め方向から回動操作できるようになっている。
【0042】
具体的には、下方の第2狭持部材14のボルト18aを緊締操作する際には、上方の第1狭持部材11を避けて斜め上方向から治具32を挿入して操作する必要があるため、弁筐20内において治具32を十分に傾けることができる位置まで仮組みされたフランジ補強具10を上面視時計回りに回動させる(特に
図10(a)参照)。次いで、第1狭持部材11及び第2狭持部材14のボルト18aを緊締する。このように、第2狭持部材14のボルト18aを緊締する際には、上方の第1狭持部材11を避けて斜め方向から治具32を挿入操作できるので、ボルト18aの緊締作業を行いやすい。尚、本実施例では、仮組みされたフランジ補強具10を上面視時計回りに回動させる形態を例示したが、上面視反時計回りに回動させてもよい。また、第1狭持部材11及び第2狭持部材14のボルト18aの緊締作業が完了すると、フランジ補強具10を適正な位置に回動させる(特に
図10(b)参照)。
【0043】
次いで、
図11及び
図12に示されるように、吊支装置19,19を第1狭持部材11の外径側に引っ張り、係合部材19bを連結ボルト17aの軸部及び切欠き部12jから取外す。このとき吊支装置19,19にて、フランジ補強具10の回転を止めるようにして、最後に取外してもよい。そして、
図11に示されるように、下端にナットグリップソケット33aが固定された治具33を用いて、連結ボルト17aの頭部を上方から操作して、該連結ボルト17aの軸部を第2狭持部材14のナット17bに緊締する。これにより、連結ボルト17aの上部に向けて螺挿されるナット17bに伴い、第2狭持部材14が上方に近づくように移動し、第1狭持部材11及び第2狭持部材14により、流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとが上下方向に狭持される。
【0044】
以上説明したように、連結ボルト17aの軸部を上方の第1狭持部材11の貫通孔部12fに挿通させた状態で連結ボルト17aの頭部を上方から操作して連結ボルト17aの軸部を下方の第2狭持部材14のナット17bに螺合させることにより、第2狭持部材14が第1狭持部材11に近づくように移動し、第1狭持部材11及び第2狭持部材14により、流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとが上下方向に狭持されるようになっている。すなわち、上方に開口する狭隘な弁筐20内であっても、上方からの操作によりフランジ補強具10の取付作業を簡便に行うことができるとともに、連結ボルト17aの軸部が第1狭持部材11よりも上方に大きく突出しないので、連結ボルト17aの軸部が補修弁4に干渉することが回避され、流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとを上下方向に十分に狭持することができる。また例えば、連結ボルト17aを、該ボルトや第2狭持部材14とは別体のナットに締結する場合、第2狭持部材14にボルト頭部若しくはナット用の回転止めを設けるか、治具により回転防止する必要がある。この際、組立時、第2狭持部材14と連結ボルト17aあるいは別体のナットが、衝撃的に接触することで、表面の防錆剤や塗装がはがれ、錆を発生させる虞があるが、本構造によれば、その虞が無い。特に、弁筐下方では水没し易い環境にあるため、本構造によれば防錆処理を傷付けないという効果が際立つ。
【0045】
また、第2狭持部材14に取付けられたナット17bに連結ボルト17aの軸部が螺合するようになっている。これにより、第2狭持部材14に直接ネジ加工を必要としないため、連結ボルト17aの軸部が螺合する雌ネジ部17cを簡便に形成することができるとともに、第2狭持部材14の腐食を防止できる。
【0046】
また、ナット17bは、回動規制手段と落下防止手段とにより第2狭持部材14に対して位置決めされている。具体的には、ナット17bは、第2狭持部材14の凹部15jの内壁によって回転不能に規制されるとともに、当該内壁に接着剤で固定されており、ナット17bを回転不能または落下不能に押さえる必要がなく、上方から連結ボルト17aの軸部をナット17bの雌ネジ部17cに螺合させる操作のみで第1狭持部材11及び第2狭持部材14を簡便に連結することができる。
【0047】
また、ナット17bは、凹部15jに収容されているので、連結ボルト17aとナット17bとの螺合操作時に第2狭持部材14とナット17bとの接着が外れたとしても、当該ナット17bは連結ボルト17aに螺合しているため落下の虞はなく、更に凹部15jの内壁によりナット17bの回動が規制され、連結ボルト17aとナット17bとを確実に螺合することができる。
【0048】
また、第1狭持部材11を構成する分割体12の結合部12pは、隣接する分割体12’の結合部12gと上下方向に重畳し、上側の結合部12pにはボルト18aを遊挿可能な貫通孔12qが設けられ、下側の結合部12gにはボルト18aの軸部が螺合可能なナット18bが設けられている。これによれば、上方からボルト18aの軸部を貫通孔12qに挿通させ、ナット18bに螺合させることで簡便に第1狭持部材11を構成できる。尚、第2狭持部材14も同様の構成となっているので第2狭持部材14を簡便に構成できる。
【0049】
また、第1狭持部材11のボルト18aと、第2狭持部材14のボルト18aとは、上下方向に重畳する位置に配置されている。これによれば、上下に対応するボルト18a,18aが1箇所外された第1狭持部材11及び第2狭持部材14と連結ボルト17aとを仮組みした状態とすることで、分割体12,12’及び分割体15,15’が上下に対応する結合部材18を中心として一体的に回動できるので、流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとに簡便に設置することができる。
【0050】
また、ナット18bは、凹部12k,15k内に配置されているので、ボルト18aとナット18bとの螺合操作時に凹部12k,15kとナット18bとの接着が外れたとしても、凹部12k,15kの内壁によりナット18bの回動が規制され、ボルト18aとナット18bとを確実に螺合することができる。
【0051】
尚、本実施例では、連結ボルト17aが螺合する雌ネジ部17cがナット17bの内周面に形成されている形態を例示したが、これに限られるものではなく、例えば、第2狭持部材14に雌ネジ部を直接形成してもよい。
【0052】
また、本実施例では、ナット17bが凹部15jに収容されている形態を例示したが、例えば、第2狭持部材14の外径側、上面側、下面側などにナット17bが溶接等で第2狭持部材14に固着されていてもよい。
【0053】
また、本実施例では、弁筐20の外方において、第1狭持部材11及び第2狭持部材14を連結ボルト17a及びナット17bによって仮組みした状態で一体的に流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとに設置する形態を例示したが、第1狭持部材11及び第2狭持部材14を流体管3の分岐部フランジ3cと接続管5のフランジ5aとに取付けた後、連結ボルト17a及びナット17bによって第1狭持部材11及び第2狭持部材14を連結するようになっていてもよい。この場合、第2狭持部材14に補修弁4のフランジ4cに係止可能な係止部を設け、フランジ4cに係止させた状態で第2狭持部材14を構成してもよい。
【0054】
次に、フランジ補強具の変形例1について説明する。
図13に示されるように、第1狭持部材111の分割体121は、貫通孔部121fが外径側に開放するように切り欠かれている。この切欠き部分の開放寸法は、連結ボルト17aの軸部よりも大寸であって、連結ボルト17aの頭部及びナット17bよりも小寸である。このようにすることにより、上方に大きな作業スペースがなくても連結ボルト17aの軸部を外径側から挿入して貫通孔部121f内に配置できるので、作業性が向上する。また、貫通孔121hや貫通孔121qは、ボルト18aの軸部が径方向に離脱不能な寸法であれば一部切り欠かれていてもよい。このようにすることで、結合部121gや挟持鍔部121c’の領域を狭めることができる。なお、
図13では、貫通孔部121f、貫通孔121h及び貫通孔121qがいずれも切り欠かれているが、これに限らず、いずれかの貫通孔部若しくは貫通孔のみが切り欠かれてもよい。
【0055】
次に、フランジ補強具の変形例2について説明する。
図14に示されるように、第2狭持部材141の狭持鍔部151cには、下方に開口する収容部としての凹部151jが形成されており、凹部151jの開口側には、凹部151jの中心側に向かって略水平に延びる小さな突起151r,151rが対向して形成されている。ナット17bは、該ナット17bを突起151r,151rを弾性変形させながら凹部151jに圧入することにより凹部151j内に配置される。凹部151jはナット17bを遊嵌可能な大きさで形成されているとともに、凹部151j内に配置されたナット17bは突起151r,151rにより係止され凹部151jからの抜け出しが規制されている。すなわち、突起151r,151rは、本変形例2における落下防止手段を構成しており、作業者がナット17bを落下不能に押さえていなくても連結ボルト17aとナット17bとの螺合作業を行うことができる。
【0056】
また、ナット17bは凹部151j内に遊嵌状態で収容されているので、第1狭持部材11と第2狭持部材141とにずれが生じていても、ナット17bと凹部151jとの隙間を利用して、第1狭持部材11と第2狭持部材141とのずれを吸収することができ、連結ボルト17aとナット17bとの螺合作業を簡便に行うことができる。
【0057】
また、連結ボルト17aとナット17bとの螺合作業時には、凹部151jの内壁によりナット17bの回動が規制され、連結ボルト17aとナット17bとを確実に螺合することができる。すなわち、凹部151jの内壁は、本変形例2における回動規制手段を構成しており、作業者がナット17bを回動不能に押さえていなくても連結ボルト17aとナット17bとの螺合作業を行うことができる。
【0058】
次に、フランジ補強具の変形例3について説明する。
図15に示されるように、第2狭持部材142の狭持鍔部152cには、下方に開口する収容部としての凹部152jが形成されており、凹部152jの開口側には、凹部152jの外径側に向かって切り欠かれた切欠凹部152r,152rが対向して形成されている。この切欠凹部152rは、第2狭持部材142の下方と凹部152j側に向けて開口しており、弾性体152sが圧入されている。凹部152j内に配置されたナット17bは弾性体152s,152sにより係止され凹部152jからの抜け出しが規制されている。すなわち、弾性体152s,152sは、本変形例3における落下防止手段を構成している。これによれば、凹部152j内にナット17bを配置した後、弾性体152s,152sを切欠凹部152r,152rに圧入設置できるので、ナット17bを凹部152jに設置する作業が簡便である。尚、本変形例3における落下防止手段は、弾性体152sに限られず、凹部152jに対して装着可能であれば、充填材や金属製、樹脂製の板材などであってもよい。また、凹部152jの形成箇所や大きさ、個数も上記に限られない。
【0059】
次に、フランジ補強具の変形例4について説明する。
図16に示されるように、第2狭持部材143の狭持鍔部153cには、外径側に開放する切欠溝部153jが略水平方向に延びて形成されている。この切欠溝部153jは、狭持鍔部152cの上面よりも若干下方の位置に形成されており、狭持鍔部153cの貫通孔部15fに連通している。ナット17bは、切欠溝部153jの外径側の開口から挿入されるようになっており、該ナット17bが切欠溝部153jの内径側端部に接触すると、ナット17bの雌ネジ部17cと貫通孔部15fとが上下方向に重畳するようになっている。このように、切欠溝部153jの内径側端部によりナット17bと貫通孔部15fとの位置決めを簡便に行うことができる。尚、切欠溝部153jにナット17bを配置した後、切欠溝部153jからナット17bが抜け出さないように図示しない弾性体や充填材等の落下防止手段を切欠溝部153jの開口側(外径側)に設置すればよい。
【0060】
次に、フランジ補強具の変形例5について説明する。
図17に示されるように、第2狭持部材144の狭持鍔部154cには、下方に開口する凹部154jが形成されており、凹部154jの開口側には、凹部152jを挟んだ対向する位置にネジ孔154r,154rが形成されている。このネジ孔154r,154rには、ネジ154s,154sが螺合しており、凹部152jに向けて進退可能となっている。ネジ154s,154sを凹部152jから退避した状態として凹部152jにナット17bを簡便に配置できるとともに、ネジ154s,154sを凹部152jに進行させることで簡便にナット17bを凹部152jから抜け出し不能とすることができる。すなわち、ネジ154s,154sは、本変形例5における落下防止手段を構成している。
【0061】
次に、フランジ補強具の変形例6について説明する。
図18に示されるように、第2狭持部材145の狭持鍔部155cには、下方に開口する凹部155jが形成されており、凹部155jの内壁には、シート状の弾性体155sが貼着あるいは加硫等で設けられている。ナット17bは、弾性体155sを弾性変形させながら凹部155j内に配置される。これによれば、ナット17bと凹部155jとの間で圧接される弾性体155sの弾性復元力によりナット17bが凹部155jから落下することが防止される。すなわち、弾性体155sは、本変形例6における落下防止手段を構成している。
【0062】
尚、弾性体155sを摩擦係数の高い部材で構成し、ナット17bと弾性体155sとの間で生じる摩擦力によりナット17bが凹部155jから落下し難くなっていることが好ましく、それぞれが接着されていてもよい。さらに尚、本変形例6では、弾性体155sが凹部155jの内壁に形成される形態を例示したが、ナット17bの外周面に形成されていてもよい。また、ナット17bと凹部155jとの間に配置される落下防止手段は弾性体155sに限られず、例えば、ナット17bを凹部155jに配置した後、充填される充填材等であってもよい。このようにすることで、絶縁処理することもでき、防錆効果を上げることもできる。また、凹部155jの内壁とナット17bとの接触による傷発生の虞もなくなる。
【0063】
尚、上記変形例2~6の凹部151j~155jは、前記実施例におけるナット18bを収容する凹部12k,15kにも適用できる。
【0064】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0065】
例えば、前記実施例では、第1狭持部材11及び第2狭持部材14が分割体12,12’及び分割体15,15’の結合により、平面視において円環状を成す形態を例示したが、例えば、平面視において無端状であれば、楕円形や小判形、矩形などの非円形形状であってもよい。また、分割体12,12’を別形状としてもよく、更に分割体15,15’を別形状としてもよい。
【0066】
また、前記実施例では、補修弁4を接続部材とし、流体管3の分岐首部3b及び接続管5を管路構成部材として説明したが、管路構成部材の間に接続部材がフランジ接続されていれば、接続部材及び管路構成部材は自由に変更できる。また、補修弁4は、操作ハンドルを備えるレバー式としたが、キャップ式でもよい。
【0067】
また、前記実施例及び変形例2~6では、ナット17bを収容する収容部の内壁を回動規制手段として説明したが、ナット17bの回動を規制できるものであればよく、例えば、狭持部材から突出し、ナット17bの外周面に接触する複数の突出片、ねじ、別部品等であってもよい。
【0068】
また、前記変形例1の切欠きは、外径側に開放するように切り欠かれているが、切欠きが形成されていれば、これに限らず、例えば周方向に開放するように切り欠かれてもよい。