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特開2023-159190光学フィルム、偏光板、および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159190
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】光学フィルム、偏光板、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20231024BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20231024BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20231024BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231024BHJP
【FI】
G02B5/22
H10K50/86
H10K59/38
H10K59/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128940
(22)【出願日】2023-08-08
(62)【分割の表示】P 2022113711の分割
【原出願日】2018-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2017015454
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 崇尚
(72)【発明者】
【氏名】濱田 孝則
(72)【発明者】
【氏名】中島 正隆
(72)【発明者】
【氏名】秦 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 啓志
(72)【発明者】
【氏名】中川 博喜
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ブルーライトを遮蔽でき、黄色味を抑制でき、かつ薄型化を図ることができる光学フィルム、このような光学フィルムを備える偏光板および画像表示装置を提供する。
【解決手段】光透過性基材11と、光透過性基材11の一方の面側に設けられた光透過性機能層12とを備える光学フィルム10であって、波長380nmにおける分光透過率が1%未満であり、波長410nmにおける分光透過率が10%以上60%未満であり、かつ波長440nmにおける分光透過率が70%以上であり、光透過性機能層12の膜厚が、9μm以下である、光学フィルム10が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材と、前記光透過性基材の一方の面側に設けられた光透過性機能層とを備える光学フィルムであって、
波長380nmにおける分光透過率が1%未満であり、
波長410nmにおける分光透過率が10%以上60%未満であり、かつ
波長440nmにおける分光透過率が70%以上であり、
前記光透過性機能層の膜厚が、9μm以下である、光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願は、先行する日本国出願である特願2017-15454(出願日:2017年1
月31日)の優先権の利益を享受するものであり、その開示内容全体は引用することによ
り本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、光学フィルム、偏光板、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、パーソナルコンピュータやタブレット等の画像表示装置のバックライト光源とし
てLED(Light Emitting Diode)が積極的に採用されているが、
このLEDは、ブルーライトと呼ばれる光を強く発している。
【0004】
ブルーライトは、波長380~495nmの光で紫外線に近い性質を持っており、強い
エネルギーを有しているため、角膜や水晶体で吸収されずに網膜に到達することで、網膜
の損傷、眼精疲労、睡眠への悪影響等の原因になると言われている。このため、画像表示
装置において、ブルーライトを遮蔽することが望まれている。
【0005】
このようなブルーライトの問題を解決する方法として、例えば、画像表示装置等に用い
られる光学フィルムを構成する光透過性基材や光透過性機能層に、色素および紫外線吸収
剤を含有させる方法が考えられる(例えば、特開2014-10947号公報参照)。
【0006】
なお、外部で発生する紫外光および一部の可視光を遮断して表示パネルの劣化を抑制す
るために、光学フィルムを構成する粘着層に色素および/または紫外線吸収剤を含有させ
る方法も考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の光学フィルムを構成する光透過性基材等に添加される色素および
/または紫外線吸収剤は、吸収波長領域が300~360nm付近を中心とした比較的短
い波長領域であったため、ブルーライト遮蔽性能は充分とは言えないものであった。
【0008】
一方で、ブルーライトのうち、比較的長い波長領域は、透過光の色味に影響を与えるた
め、比較的長い波長領域の光を吸収しすぎると、光学フィルムが黄色味を帯びてしまうこ
とがある。
【0009】
さらに、粘着層に色素および/または紫外線吸収剤を含有させた場合には、粘着力が低
下してしまうので、環境試験時に被着体からの剥離や浮きが生じてしまうおそれがある。
このため、粘着層の膜厚を10μm以上にする必要があるので、光学フィルムの薄型化を
図ることができないおそれがある。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑みて、ブルーライトを遮蔽でき、黄色味を抑制でき、かつ薄型
化を図ることができる光学フィルム、このような光学フィルムを備える偏光板および画像
表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を重ねたところ、ブルーライトの波長のうち
、波長380nm以下の波長領域の光を充分に吸収させる一方で、波長410nm付近の
波長領域の光を適度に透過させ、かつ波長440nm以上の光を充分に透過させるように
することで、ブルーライトを遮蔽でき、かつ光学フィルムの黄色味を抑制でき、また分光
透過率調整剤を粘着層ではなく、膜厚が薄い光透過性機能層に含有させることで、薄型化
を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の一の態様によれば、光透過性基材と、前記光透過性基材の一方の面側に設けら
れた光透過性機能層とを備える光学フィルムであって、波長380nmにおける分光透過
率が1%未満であり、波長410nmにおける分光透過率が10%以上60%未満であり
、かつ波長440nmにおける分光透過率が70%以上であり、前記光透過性機能層の膜
厚が、9μm以下である、光学フィルムが提供される。
【0013】
上記光学フィルムにおいて、前記光学フィルムのイエローインデックスが、1以上12
以下であってもよい。
【0014】
上記光学フィルムにおいて、前記光学フィルムのブルーライトの遮蔽率が、30%以上
であってもよい。
【0015】
上記光学フィルムにおいて、最小二乗法を用いて得られた波長410nm~420nm
の範囲の透過スペクトルの傾きが、2以上であってもよい。
【0016】
上記光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの表面の算術平均さ(Ra)が、10n
m未満であってもよい。
【0017】
上記光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの表面が、凹凸面となっていてもよい。
【0018】
上記光学フィルムにおいて、前記光透過性機能層が、樹脂および分光透過率調整剤を含
む分光透過率調整層を備えていてもよい。
【0019】
上記光学フィルムにおいて、前記光透過性機能層が、分光透過率調整層と、前記分光透
過率調整層における前記光透過性基材側とは反対側に設けられたオーバーコート層とを備
えていてもよい。
【0020】
上記光学フィルムにおいて、前記光透過性機能層が、分光透過率調整層と、前記分光透
過率調整層における前記光透過性基材側とは反対側に設けられた積層構造の複数の蒸着層
とを備えていてもよい。
【0021】
上記光学フィルムにおいて、前記光透過性機能層が、分光透過率調整層と、前記分光透
過率調整層における前記光透過性基材側の面とは反対側の面に設けられ、かつ互いに屈折
率が異なる積層構造の複数の不可視化層とを備えていてもよい。
【0022】
上記光学フィルムにおいて、前記光透過性機能層が、分光透過率調整層と、前記分光透
過率調整層における前記光透過性基材側とは反対側に設けられ、かつ屈折率が前記分光透
過率調整層の屈折率よりも低い低屈折率層とを備えていてもよい。
【0023】
本発明の他の態様によれば、上記光学フィルムと、前記光学フィルムの一方の面側に設
けられた偏光子と、を備える、偏光板が提供される。
【0024】
本発明の他の態様によれば、表示素子と、前記表示素子よりも観察者側に配置された上
記光学フィルムまたは上記偏光板とを備える、画像表示装置が提供される。
【0025】
上記画像表示装置において、前記表示素子が、有機発光ダイオード表示素子であっても
よい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一の態様によれば、ブルーライトを遮蔽でき、黄色味を抑制でき、かつ薄型化
を図ることができる光学フィルムを提供することができる。また、本発明の他の態様によ
れば、このような光学フィルムを備える偏光板および画像表示装置を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態に係る光学フィルムの概略構成図である。
図2図2は、実施形態に係る光学フィルムの分光透過率の例を示すグラフである。
図3図3は、実施形態に係る他の光学フィルムの概略構成図である。
図4図4は、θaの測定方法の説明図である。
図5図5は、実施形態に係る他の光学フィルムの概略構成図である。
図6図6は、実施形態に係る他の光学フィルムの概略構成図である。
図7図7は、実施形態に係る他の光学フィルムの概略構成図である。
図8図8は、実施形態に係る偏光板の概略構成図である。
図9図9は、実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
図10図10は、実施例および比較例に係る光学フィルムの分光透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る光学フィルムおよび画像表示装置について、図面を参照
しながら説明する。本明細書において、「フィルム」、「シート」等の用語は、呼称の違
いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「フィルム
」はシートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。図1は本実施形態に係る光
学フィルムの概略構成図であり、図2は本実施形態に係る光学フィルムの分光透過率の例
を示すグラフである。図3図5図7は本実施形態に係る他の光学フィルムの概略構成
図であり、図4はθaの測定方法の説明図である。
【0029】
<<<<光学フィルム>>>>
図1に示される光学フィルム10は、波長380nmにおける分光透過率が1%未満と
なっており、波長410nmにおける分光透過率が10%以上60%未満となっており、
かつ波長440nmにおける分光透過率が70%以上となっている。光学フィルムにおけ
る波長380nmにおける分光透過率が1%以上であると、ブルーライトの遮蔽率が低下
するので、ブルーライトの問題を解決できないおそれがある。また、光学フィルムにおけ
る波長410nmにおける分光透過率が10%未満であると、光学フィルムの黄色味が抑
制できないおそれがあり、また波長410nmにおける分光透過率が60%以上であると
、ブルーライトの問題が解決できず、透過光が悪影響を与えるおそれがある。光学フィル
ムにおける波長440nmにおける分光透過率が70%未満であると、イエローインデッ
クスが高く光学フィルム自体の色味が黄色くなり、また可視光領域の透過率が低下するた
め、光学フィルムの特性として適さないおそれがある。
【0030】
分光透過率は、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを、透過率を0
.5%刻みにて測定可能な分光光度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所
製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に光学フィルムの光透過性基材側
が光源側となるように配置した状態で、以下の測定条件で、波長380nm、410nm
、および440nmにおいてそれぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定
し、その平均値を算出することによって求めるものとする。なお、波長380nm、41
0nm、および440nmにおける分光透過率は、それぞれ3回測定して得られた値の算
術平均値とする。また、分光透過率のスペクトルにうねりが出るようであれば、デルタ5
.0nmでスムージング処理を行ってもよい。
(測定条件)
・波長域:300nm~780nm
・スキャン速度:高速
・スリット幅:2.0
・サンプリング間隔:オート(0.5nm間隔)
・照明:C
・光源:D2およびWI
・視野:2°
・光源切替波長:360nm
・S/R切替:標準
・検出器:PM
・オートゼロ:ベースラインのスキャン後550nmにて実施
【0031】
光学フィルム10の光の透過率は、波長380nmまでは殆ど0%であるが、波長41
0nmから徐々に光の透過が大きくなり、波長440nm付近で急激に光の透過が大きく
なっていることを表している。具体的には、例えば、図2に示すように、光学フィルム1
0では、波長380nmから440nmの間で分光透過率がシグモイド型の曲線を描くよ
うに変化している。
【0032】
光学フィルム10においては、ブルーライトをより遮蔽する観点から、波長380nm
における分光透過率は0.5%未満であることが好ましく、0.2%未満であることがよ
り好ましい。光学フィルム10においては、黄色味をより抑制する観点から、波長410
nmにおける分光透過率の下限は10%を超えることが好ましく、13%以上であること
がより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。光学フィルム10においては
、ブルーライト遮蔽性能の発揮の観点から、波長410nmにおける分光透過率の上限は
58%未満であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。光学フィルム
10においては、波長440nmにおける分光透過率は、着色による視認性低下の抑制お
よび透明性の確保の観点から、75%以上であることが好ましく、80%以上であること
がより好ましい。
【0033】
光学フィルム10は、波長420nmにおける分光透過率が45%以上70%以下であ
ることが好ましい。波長420nmにおける分光透過率をこの範囲内にすることによって
、ブルーライト遮蔽性能の発揮、着色による視認性低下の抑制および透明性の確保を図る
ことができる。光学フィルム10における波長420nmにおける分光透過率も、波長3
80nm等における分光透過率と同様に測定するものとする。
【0034】
光学フィルム10においては、波長480nm~780nmにおける分光透過率が、波
長400~450nmにおける分光透過率の最大値に対して10%以上低下しないことが
好ましい。後述するイエローインデックスを低下させるために、分光透過率調整層に波長
480~780nmの光を吸収する吸収波長域の異なる色素を添加することも可能である
が、吸収波長域の異なる色素を添加すると、480nm~780nmの波長域の分光透過
率が低下し、光透過性が悪化してしまう。これに対し、光学フィルム10においては、後
述する分光透過率調整層13に吸収波長域の異なる色素を添加せずに、低いイエローイン
デックスを実現することができる。分光透過率は、50mm×50mmの大きさに切り出
した光学フィルムを、透過率を0.5%刻みにて測定可能な分光光度計(製品名「UV-
2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)を
内に光学フィルムの光透過性基材側が光源側となるように配置した状態で、300~48
0nmに関しては各波長において前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を、480
nm~780nmの波長域に関してはフィルムの干渉による透過率のノイズを補正するた
め各波長においてそれぞれ前後20nmの間で検出した全てのポイントの透過率を測定し
、その平均値を算出することによって求めるものとする。なお、分光透過率の測定条件は
、上記波長380nm、410nm、および440nmにおける分光透過率の測定条件と
同様である。
【0035】
光学フィルムに粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられている場合
には、粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離してから、波長380nm、410n
m、420nm、440nmにおける分光透過率を測定するものとする。他のフィルムの
剥離は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、光学フィルムに粘着層や接
着層を介して他のフィルムが付いた積層体をドライヤーで加熱し、光学フィルムと他のフ
ィルムの界面と思われる部位にカッターの刃先を入れて、ゆっくりと剥離していく。この
ような加熱と剥離を繰り返すことで、粘着層や接着層および他のフィルムを剥離すること
ができる。なお、このような剥離工程があったとしても、分光透過率の測定には大きな影
響はない。
【0036】
光学フィルム10は、イエローインデックス(YI)が1以上12以下であることが好
ましい。光学フィルムのYIが1未満であると、ブルーライトの遮蔽率が低下してしまう
おそれがあり、また光学フィルムのYIが12を超えると、光学フィルムの黄色味が目立
ち、透明性が求められる用途に適用できないおそれがある。イエローインデックス(YI
)は、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを、分光光度計(製品名「
UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ラン
プ)内に光学フィルムの光透過性基材側が光源側となるように配置した状態で測定した光
学フィルムの波長300nm~780nmの透過率から、JIS Z8722:2009
に記載された演算式に従って色度三刺激値X、Y、Zを計算し、三刺激値X、Y、Zから
ASTM D1925:1962に記載された演算式に従って算出される値である。イエ
ローインデックス(YI)は、光学フィルム1枚に対して波長300nm~780nmの
透過率を3回測定することによって3回算出し、3回算出して得られた値の算術平均値と
する。なお、UV-2450においては、イエローインデックスは、UV-2450に接
続されたモニター上で、上記透過率の測定データを読み込み、計算項目にて「YI」の項
目にチェックを入れることによって算出される。波長300nm~780nmの透過率の
測定条件は、上記波長380nm、410nm、および440nmにおける分光透過率の
測定条件と同様である。YIの下限は、本来は高透明性の確保という観点から低い方が好
ましいが、ブルーライトカット性能も付与することを考えると、2以上、3以上であるこ
とがより好ましい(数値が大きい方が好ましい)。ただし、YIが大きすぎると今度は黄
色味が強くなってしまう場合がある。このため、YIの上限は、10以下、7以下、6以
下であることがより好ましい(数値が小さい方が好ましい)。
【0037】
また、光学フィルムに粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられてい
る場合には、上記と同様の方法によって粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離して
から、イエローインデックス(YI)を測定するものとする。なお、このような剥離工程
があったとしても、イエローインデックス(YI)の測定には大きな影響はない。
【0038】
光学フィルム10は、ブルーライトの遮蔽率が30%以上であることが好ましい。ブル
ーライトの遮蔽率が30%未満であると、上述したブルーライトに起因した問題が充分に
解消できないことがある。このようなブルーライト遮蔽率は、例えば、分光透過率調整層
13に後述するセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体を含むことで、達成することが
できる。上記ブルーライトの遮蔽率は、JIS T7333:2005により算出される
値であり、以下のように求めるものとする。まず、50mm×50mmの大きさに切り出
した光学フィルムを、分透過率を0.5%刻みにて測定可能の分光光度計(製品名「UV
-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)
内に光学フィルムの基材側が光源側となるように配置した状態で、波長380nm~49
5nmにおいてそれぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定し、その平均
値を算出することによって波長380nm~495nmの分光透過率をそれぞれ求める。
そして、ブルーライトカット率(%)をAとし、380nm~495nmの透過率の平均
値(%)をBとして、ブルーカット率を下記式によって求める。なお、ブルーライトの遮
蔽率は、3回測定して得られた値の算術平均値とする。また、分光透過率の測定条件は、
上記波長380nm、410nm、および440nmにおける分光透過率の測定条件と同
様である。
A=100-B
【0039】
また、光学フィルムに粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられてい
る場合には、上記と同様の方法によって粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離して
から、ブルーライトの遮蔽率を測定するものとする。なお、このような剥離工程があった
としても、ブルーライトの遮蔽率の測定には大きな影響はない。
【0040】
光学フィルム10は、最小二乗法を用いて得られた波長410nm~420nmの範囲
の透過スペクトルの傾きが、2以上であることが好ましい。上記傾きが2以上であれば、
ブルーライトの光波長領域、例えば、波長380nm~495nmの波長領域において充
分に光をカットできる。また、ブルーライトの光波長領域(波長380nm~495nm
)をカットしすぎている場合、画像表示装置のバックライトや発光波長領域(例えば、O
LEDの波長430nmからの発光)に干渉してしまい、YIを初めとする色味が悪くな
るといった不具合が発生する可能性が大きくなることがあるが、上記傾きが2以上であれ
ば、このような不具合の発生も抑制できる。上記傾きは、選択的に対象の波長の光をカッ
トする観点から大きい方が好ましいので、上記傾きの上限は特には限定されないが、上記
傾きの上限は、例えば、20以下、10以下とすることができる。
【0041】
上記傾きは、以下のようにして求めるものとする。まず、50mm×50mmの大きさ
に切り出した光学フィルムを、例えば、透過率を0.5%刻みにて測定可能な分光光度計
(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製)内に光学フィルムの基材側が光源
側となるように配置した状態で、波長410nm~420nmにおいてそれぞれ前後1n
mの間で最低5ポイント分の透過率を測定し、その平均値を算出することによって波長4
10nm~420nmの分光透過率をそれぞれ求める。次いで、得られた分光透過率を用
いて、最小二乗法によって波長410nm~420nmの分光透過率の傾きを求める。な
お、上記傾きは、3回測定して得られた値の算術平均値とする。また、分光透過率の測定
条件は、上記波長380nm、410nm、および440nmにおける分光透過率の測定
条件と同様である。
【0042】
光学フィルム10は、帯電防止性能を有することが好ましい。光学フィルム10が帯電
防止性能を有することで、光学フィルム10をIPS方式の液晶表示装置に特に好適に用
いることができる。なお、液晶表示装置がIPS方式の液晶表示装置である場合、光学フ
ィルム10の表面抵抗値は、1010Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以
下であることが好ましい。特に、液晶表示装置がインセルタッチパネル付きIPS方式の
液晶表示装置である場合には、光学フィルム10の表面抵抗値は10Ω/□以上10
Ω/□以下であることが好ましい。液晶表示装置がインセルタッチパネル付きIPS方
式の液晶表示装置である場合には、光学フィルム10の表面抵抗値の下限は10Ω/□
以上であることがより好ましく、上限は10Ω/□以下であることがより好ましい。
【0043】
表面抵抗値は、抵抗率計(製品名「ハイレスターUP MCP-HT450」、株式会
社三菱ケミカルアナリテック製、プローブ:URSプローブ(MCP-HTP14))を
用いて、温度25±4℃、湿度50±10%の環境下で、500Vの印加電圧にて測定す
るものとする。
【0044】
上記帯電防止性能は、光学フィルム10を構成する光透過性機能層12に帯電防止剤を
含有させることで得ることができる。上記帯電防止剤としては特に限定されず、従来公知
のものを用いることができ、例えば、第4級アンモニウム塩等のカチオン性帯電防止剤や
、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等の粒子
や導電性ポリマー等を用いることができる。上記帯電防止剤を用いる場合、その含有量は
、全固形分の合計質量に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0045】
光学フィルム10は、折り曲げ可能となっていることが好ましい。具体的には、JIS
K5600-5-1:1999に記載されているマンドレル試験に準じ、光透過性機能
層12を外側または内側となるように光学フィルム10を直径2mmのステンレス棒に巻
き付けたときに、光学フィルム10にクラック(ひび)が発生しないこと好ましい。マン
ドレル試験は、100mm×25mmの大きさに切り出した光学フィルムを直径2mmの
ステンレス棒に光学フィルムの長辺方向の両端部が対向するように巻き付け、5秒間保持
した後、光学フィルムを開放することによって行われ、ステンレス棒に接していた光学フ
ィルムの短辺方向にクラックが発生しているかを確認する。
【0046】
光学フィルム10の一方の面側に粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設
けられている場合には、上記と同様の方法によって粘着層や接着層とともに他のフィルム
を剥離してから、マンドレル試験を行うものとする。なお、このような剥離工程があった
としても、マンドレル試験の結果には大きな影響はない。
【0047】
光学フィルム10は、光透過性基材11と、光透過性基材11の一方の面側に設けられ
た光透過性機能層12とから構成されている。本明細書における「光透過性機能層」とは
、光透過性を有し、かつ光学フィルムにおいて、何らかの機能を発揮することを意図され
た層である。具体的には、光透過性機能層は、例えば、分光透過率調整層、オーバーコー
ト層、防眩層、不可視化層、屈折率調整層、防汚層またはこれらの組み合わせ等が挙げら
れる。光透過性機能層は、単層構造となっていてもよいが、光透過性機能層が2層以上積
層された多層構造となっていてもよい。
【0048】
光学フィルム10の表面10Aは、光透過性機能層12の表面12Aとなっている。「
光透過性機能層の表面」とは、光透過性機能層における光透過性基材側の面とは反対側の
面を意味するものとする。
【0049】
光学フィルム10の表面10A(光透過性機能層12の表面12A)の算術平均粗さR
aは、10nm未満であることが好ましい。上記Raを満たす場合、光学フィルム10は
クリアフィルムであり、極めて優れた透明性を有するものとなる。上記Raは、50mm
×50mmの大きさに切り出した光学フィルムの表面において、表面粗さ測定器(製品名
「SE-3400」、株式会社小坂研究所製)を用いて、下記の測定条件でJIS B0
601:1994に準拠する方法で測定することによって求めることができる。
(1)表面粗さ検出部の触針(小坂研究所製の製品名「SE2555N」(2μm標準)

・先端曲率半径2μm、頂角90度、材質ダイヤモンド
(2)表面粗さ測定器の測定条件
・基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):0.8mm
・評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):4.0mm
・触針の送り速さ:0.5mm/s
・予備長さ:(カットオフ値λc)×2
・縦倍率:20000倍
・横倍率:10倍
【0050】
なお、上記Raは、光学フィルム10の表面10Aにおいて、少なくとも目視で異常の
ない箇所(大きい異物や擦りキズ等がない箇所)をランダムに3箇所選択し、それらの箇
所において測定された値の算術平均値とする。上記Raの上限は8nm以下であることよ
り好ましい。
【0051】
また、上記Raは、原子間力顕微鏡(製品名「WET-9100」、島津製作所製)を
用いても測定が可能である。具体的には、まず、50mm×50mmの大きさに切り出し
た光学フィルムの表面において、光学フィルムにおいて、少なくとも目視で異常のない箇
所(大きい異物や擦りキズ等がない箇所)をランダムに3箇所選び出し、5mm角にカッ
トして、3つのサンプルを得る。一方で、直径15mmおよび厚み1mmの平坦な円形の
金属板を複数用意し、それぞれの金属板に、日新EM株式会社製のカーボン両面テープを
貼り付ける。そのテープ上に1つのサンプルを、サンプルの表面(光学フィルムの表面)
が上側となるように貼り付ける。そして、テープとサンプルの接着を確実なものとするた
めに、サンプル付き金属板をデシケーターの中で一晩放置する。一晩放置後、サンプル付
き金属板を原子間力顕微鏡(製品名「WET-9400」、島津製作所製)の測定台の上
に磁石で固定し、タッピングモードにて、測定エリア5μm角で、原子間力顕微鏡により
表面形状を観察する。そして、観察したデータから原子間力顕微鏡に内蔵されている面解
析ソフトを用いて、Raを算出する。なお、面解析時における縦のスケールは20nmと
する。観察は室温で行い、カンチレバーとしてはNanoWorld社製のNCHR-2
0を使用する。また、観察に際しては、1つのサンプルに対して、ランダムに5箇所を選
び、3サンプル×5箇所(計15点)について、それぞれ表面形状を観察する。そして、
得られた15点のデータ全てにおいて、原子間力顕微鏡に内蔵の面解析ソフトを用いてR
aを算出し、15点の算術平均値をサンプルのRaとする。
【0052】
光学フィルム10の用途は、特に限定されないが、光学フィルム10の用途としては、
例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(PC)、ウェアラ
ブル端末、デジタルサイネージ、テレビジョン、カーナビゲーション等の画像表示装置が
挙げられる。また、光学フィルム10は、車載用途にも適している。上記各画像表示装置
の形態としては、フォールダブル、ローラブルといったフレキシブル性を必要とする用途
にも好ましい。
【0053】
光学フィルム10は、所望の大きさにカットされていてもよいが、ロール状であっても
よい。光学フィルム10が所望の大きさにカットされている場合、光学フィルムの大きさ
は、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的に
は、光学フィルム10の大きさは、例えば、2.8インチ以上500インチ以下となって
いてもよい。本明細書における「インチ」とは、光学フィルムが四角形状である場合には
対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕円形状である場合には、
短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、光学フィルムが四角形状である
場合、上記インチを求める際の光学フィルムの縦横比は、画像表示装置の表示画面として
問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16
:9、2:1等が挙げられる。ただし、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイ
ネージにおいては、このような縦横比に限定されない。また、光学フィルム10の大きさ
が大きい場合には、任意の位置からA5サイズ(148mm×210mm)に切り出した
後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。
【0054】
<<<光透過性基材>>>
光透過性基材11としては、光透過性を有する基材である。光透過性基材を構成材料と
しては、特に限定されず、例えば、例えば、ポリエステル系樹脂、アセチルセルロース系
樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネー
ト系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリオレフ
ィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹
脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフ
ェニレンサルファイド系樹脂等の光透過性樹脂やこれらの混合物が挙げられる。これらの
中でも、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、ポリイミド系樹
脂、ポリアミド系樹脂が好ましく、さらに、これらの中でも高透明性等の点からアセチル
セルロース系樹脂、特にトリアセチルセルロース系樹脂が好ましく、またフレキシブル性
の点からポリイミド系樹脂やポリアミド系樹脂がより好ましい。光透過性基材は必要に応
じて、可塑剤、紫外線吸收剤、易滑剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0055】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ
プロピレンテレフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフ
タレートの少なくとも1種を構成成分とする樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂を
用いた場合、紫外光が照射されると励起されて蛍光を発する性質を有することが知られて
いる。このような蛍光は、表示面の色味に影響を及ぼすことがあったが、光学フィルム1
0では、上述のように波長380nm以下の光はほぼ遮蔽するものであるため、光透過性
基材11にポリエステル系樹脂を用いたとしても、蛍光が生じることを好適に防止するこ
とができる。
【0056】
アセチルセルロース系樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース系樹脂、ジアセ
チルセルロース系樹脂が挙げられる。トリアセチルセルロース系樹脂は、可視光域380
~780nmにおいて、平均光透過率を50%以上とすることが可能な樹脂である。トリ
アセチルセルロース系樹脂の平均光透過率は70%以上、更に85%以上であることが好
ましい。
【0057】
なお、トリアセチルセルロース系樹脂としては、純粋なトリアセチルセルロース以外に
、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの如くセルロ
ースとエステルを形成する脂肪酸として酢酸以外の成分も併用した物であってもよい。ま
た、これらトリアセチルセルロースには、必要に応じて、ジアセチルセルロース等の他の
セルロース低級脂肪酸エステルが添加されていてもよい。
【0058】
シクロオレフィンポリマー系樹脂としては、例えばノルボルネン系モノマーおよび単環
シクロオレフィンモノマー等の重合体が挙げられる。シクロオレフィンポリマー系基材の
市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネ
ン系樹脂)、住友ベークライト株式会社製のスミライトFS-1700、JSR株式会社
製のアートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学株式会社製のアペル(環状オレフィ
ン共重合体)、Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体)、日立化成株
式会社製のオプトレッツOZ-1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる
【0059】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)
をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート
等の脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。
【0060】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メ
タ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体
等が挙げられる。
【0061】
ポリイミド系樹脂としては、例えば、下記式で表される構造を有する化合物が挙げられ
る。下記式中、nは、繰り返し単位であり、2以上の整数を表す。
【0062】
【化1】
【0063】
【化2】
【0064】
【化3】
【0065】
【化4】
【0066】
【化5】
【0067】
【化6】
【0068】
【化7】
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】
【化10】
【0072】
【化11】
【0073】
【化12】
【0074】
【化13】
【0075】
【化14】
【0076】
【化15】
【0077】
【化16】
【0078】
【化17】
【0079】
ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドのみならず、芳香族ポリアミド(アラミド)を
含む概念である。ポリアミド系樹脂としては、一般的に、下記式(18)および(19)
で表される骨格を有するものであり、上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、下記式(
20)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式中、nは、繰り返し単位であり、2
以上の整数を表す。
【0080】
【化18】
【0081】
【化19】
【0082】
【化20】
【0083】
上記式(1)~(17)および(20)で表されるポリイミド系樹脂またはポリアミド
系樹脂からなる基材は、市販のものを用いても良い。上記ポリイミド系樹脂からなる基材
の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製のネオプリム等が挙げられ、上記ポリアミ
ド系樹脂からなる基材の市販品としては、例えば、東レ社製のミクトロン等が挙げられる
【0084】
光透過性基材11の厚みは、特に限定されないが、250μm以下であることが好まし
い。光透過性基材11の厚みが250μm以下であれば、光学フィルムの可撓性が確保で
きるとともに薄型化を図ることができる。光透過性基材11の厚みの下限は、光学フィル
ム10の機械的強度向上の観点から10μm以上が好ましい。光透過性基材11の厚みの
上限は、125μm以下であることがより好ましく、115μm以下であることがさらに
好ましく、100μm以下であることが最も好ましい。光透過性基材の厚みは、走査型電
子顕微鏡(SEM)を用いて、光透過性基材の断面を撮影し、その断面の画像において光
透過性基材の厚みを20箇所測定し、その20箇所の厚みの算術平均値を求めることによ
って求めることができる。なお、走査型電子顕微鏡による撮影は、光透過性基材の厚みに
適した倍率にて、光透過性基材と光透過性機能層との界面ラインを明確にした上で行うも
のとする。具体的には、例えば、光透過性基材の厚みが50μmの場合には1000倍、
また100μmの場合には500倍のように光透過性基材の厚みによって倍率を適宜調整
する。
【0085】
光透過性基材11は、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、紫外線照射、電子線照
射、化成、酸化等のエッチング処理や下塗り処理が施されていてもよい。これらの処理が
予め施されていることで、上記光透過性基材上に形成される光透過性機能層等との密着性
を向上させることができる。また、光透過性機能層等を形成する前に、必要に応じて溶剤
洗浄や超音波洗浄等により、光透過性基材の表面は、除塵、清浄化されていてもよい。
【0086】
<<<光透過性機能層>>>
光透過性機能層12は、分光透過率調整層13と、分光透過率調整層における光透過性
基材11側とは反対側に設けられたオーバーコート層14とを備えている。なお、図1
おいては、光透過性機能層12は、分光透過率調整層13とオーバーコート層14から構
成されているが、分光透過率調整層13のみから構成されていてもよい。
【0087】
光透過性機能層12の膜厚は、9μm以下となっている。光透過性機能層の膜厚が9μ
mを超えると、光透過性機能層がひずみ応力によって割れるおそれがある。「光透過性機
能層の膜厚」とは、顕微鏡画像のコントラスト差により光透過性基材と光透過性機能層と
の界面ラインを目視観察できるので、この界面ラインから光透過性機能層の表面までの距
離を意味する。光透過性機能層が単層構造の場合には、顕微鏡画像のコントラスト差によ
り光透過性基材と光透過性機能層との界面ラインを目視観察できるので、膜厚も明確に測
定できる。一方で、光透過性機能層が多層構造の場合には、光透過性機能層間の界面ライ
ンが明確に確認できない場合がある。ここで、光透過性機能層が、多層構造の場合には、
「光透過性機能層の膜厚」とは、各光透過性機能層の膜厚の合計とする。これにより、光
透過性機能層が多層構造であって、光透過性機能層間の界面ラインが明確に確認できない
場合であっても、光透過性機能層の膜厚を測定することができる。光透過性機能層12の
膜厚の下限は、光透過性機能層の膜厚の均一性をより保つ観点から、0.5μm以上、1
μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、3μm以上であることが好ま
しく、光透過性機能層12の膜厚の上限は、8μm以下、7μm以下、6μm以下である
ことがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。光透過性機能層の膜厚は、走査型電
子顕微鏡(SEM)を用いて、光透過性機能層の断面を撮影し、その断面の画像において
光透過性機能層の膜厚を20箇所測定し、その20箇所の膜厚の算術平均値を求めること
によって求めることができる。
【0088】
具体的な断面写真の撮影方法は以下の通りとする。まず、1mm×10mmに切り出し
た光学フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的
な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ70nm~300nm程度の切片を切り
出す。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシス
テムズ株式会社)等を用いる。そして、この穴等がない均一な切片が切り出された残りの
ブロックを測定サンプルとする。その後、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4
800」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、測定サンプルの断面写真を撮
影する。上記S-4800を用いて断面写真を撮影する際には、検出器を「SE」、加速
電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA」にして断面観察を行った。倍率につ
いては、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しな
がら100~10万倍、好ましくは光透過性機能層の膜厚に応じて1000倍~1万倍で
適宜調節する。なお、膜厚の測定ぶれを低減するために、光透過性機能層の膜厚を極力低
倍率で測定することが推奨される。例えば、光透過性機能層の膜厚が9μm程度の場合に
は倍率2000倍、5μm程度の場合には倍率2000~5000倍が好ましい。さらに
、アパーチャーを「ビームモニタ絞り1」にし、対物レンズ絞りを「2」にし、またW.
D.を「8mm」にする。
【0089】
<<分光透過率調整層>>
分光透過率調整層13は、樹脂および分光透過率調整剤を含む層である。なお、分光透
過率調整層13は、樹脂および分光透過率調整剤の他に、無機粒子、レベリング剤および
ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤等の重合開始剤やその残渣を含んでいてもよい
【0090】
分光透過率調整層13の膜厚は、9μm以下であることが好ましい。分光透過率調整層
の膜厚が9μmを超えると、分光透過率調整層がひずみ応力によって割れるおそれがある
。分光透過率調整層13の膜厚は、光透過性機能層12の膜厚と同様の方法によって求め
ることができる。分光透過率調整層13の膜厚の下限は、0.5μm以上、1μm以上、
1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、3μmであることがより好ましく、分光
透過率調整層13の膜厚の上限は、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下で
あることがより好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
【0091】
分光透過率調整層13のナノインデンテーション法による硬度(インデンテーション硬
さは、120MPa以上となっていることが好ましい。分光透過率調整層13のインデン
テーション硬さが120MPa以上であれば、面内の厚みバラつきを抑制できるほか、光
学フィルムの取り扱い時の擦れにより傷が生じることを抑制できる。本明細書において、
「インデンテーション硬さ」とは、ナノインデンテーション法による硬度測定により、圧
子を最大押し込み荷重300μNで押込んだときの硬度である。分光透過率調整層13の
インデンテーション硬さの下限は、200MPa以上となっていることが好ましい。分光
透過率調整層13のインデンテーション硬さの上限は、可撓性の観点から、400MPa
以下、300MPa以下となっていることが好ましい(数値が小さいほど好ましい)。な
お、層が柔らか過ぎると、インデンテーション硬さは測定できないので、粘着層はインデ
ンテーション硬さを測定できないことがある。
【0092】
インデンテーション硬さの測定は、HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI9
50 TriboIndenter」を用いて行うものとする。具体的には、まず、1m
m×10mmに切り出した光学フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、
ナノインデンテーション法での硬度測定に適した測定用サンプルを作製する。測定用サン
プルの作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ
株式会社)等を用いることができる。次いで、図1のように光透過性機能層が多層構造で
ある場合には、例えば、このような測定サンプルの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で
観察して、分光透過率調整層とオーバーコート層との界面ラインが明確に観察されるか否
か確認する。なお、光透過性機能層が単層構造である場合には、このようなSEMによる
観察は省略できる。次いで、測定サンプルの圧子を押し込む面がステージの載置面と平行
となるように測定サンプルをHYSITRON(ハイジトロン)社製のTI950 Tr
iboIndenterのステージに固定する。そして、SEMによる観察で、分光透過
率調整層とオーバーコート層との界面ラインが明確に観察される場合には、分光透過率調
整層の中央の平坦な部分に、また分光透過率調整層とオーバーコート層との界面ラインが
明確に観察されない場合には、光透過性機能層の中央の平坦な部分に、荷重制御方式で、
最大押し込み荷重が300μNとなるように、バーコビッチ型圧子を10nm/sの速度
で測定位置に押し込み、その後、最大荷重で5秒間保持した後に同速度で除荷をする。そ
して、このときの押し込み荷重F(μN)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に
測定し、荷重-変位曲線を作成し、作成された荷重-変位曲線から、最大押し込み荷重F
max(N)を、圧子と分光透過率調整層が接している投影面積A(mm)で除した
値により求めることができる。上記Aは装置標準の方法で圧子先端曲率を補正した接触
投影面積とする。なお、インデンテーション硬さは、10箇所測定して得られた値の算術
平均値とする。
【0093】
<樹脂>
分光透過率調整層13に含まれる樹脂としては、電離放射線重合性化合物の重合物を含
むものである。樹脂は、電離放射線重合性化合物の重合物の他、溶剤乾燥型樹脂や熱硬化
性化合物を含んでいてもよい。
【0094】
(電離放射線重合性化合物)
電離放射線重合性化合物は、電離放射線重合性官能基を少なくとも1つ有するものであ
る。本明細書における、「電離放射線重合性官能基」とは、電離放射線照射により重合反
応し得る官能基である。電離放射線重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイ
ル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、本明細書におけ
る「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の
両方を含む意味である。また、電離放射線重合性化合物を重合する際に照射される電離放
射線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる
【0095】
エチレン性不飽和基を1つ有する電離放射線重合性化合物としては、例えば、エチル(
メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン
、N-ビニルピロリドン等を挙げることができる。エチレン性不飽和基を2以上有する電
離放射線重合性化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ
(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレ
ート等の多官能化合物、又は、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等の反応生成物
(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等を挙げることができる
【0096】
上記化合物のほかに、エチレン性不飽和基を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂
、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ス
ピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射
線重合性化合物として使用することができる。
【0097】
電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマー、電離放射線重合性オリ
ゴマー、および/または電離放射線重合性プレポリマーを適宜調製して用いることができ
る。電離放射線重合性化合物としては、光学フィルムにおいて優れた折り畳み性を得る観
点から、少なくとも電離放射線重合性プレポリマーを用いることが好ましい。電離放射線
重合性プレポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0098】
(溶剤乾燥型樹脂)
溶剤乾燥型樹脂は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を
乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂である。溶剤乾燥型樹脂を併用することによっ
て、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。上記電離放射線重合性化合物と併
用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性
樹脂を使用することができる。
【0099】
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリ
ル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフ
ィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロ
ース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等が挙げられる。
【0100】
上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや重合性化合物
を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性の
観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエ
ステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0101】
(熱硬化性化合物)
熱硬化性化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジア
リルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウ
レタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素
樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0102】
<分光透過率調整剤>
分光透過率調整剤は、光学フィルム10の分光透過率を調整するものである。分光透過
率調整層13に、例えば、下記一般式(21)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾー
ル系単量体、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル
]-2H-ベンゾトリアゾール(製品名「Tinuvin234」、BASF社製)、2
-(5-クロロ-2-ベンゾトリアゾリル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール(
製品名「Tinuvin326」、BASF社製)等の紫外線吸収剤、あるいは染料や顔
料等の色素材料を含ませた場合には、上述した分光透過率を好適に満たすことができる。
これらの中でも、分光スペクトルの上記傾きが大きく、より選択的にブルーライトを遮蔽
できることで、ブルーライトの遮蔽およびYI値の上昇の抑制の両立を図ることができる
点から、下記一般式(21)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体が好ま
しい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール型以外にもベンゾフェノン型やトリア
ジン型などの紫外線吸収剤も使用できる。色素材料としては、例えば、オリヱント化学工
業株式会社製のBONASORB UA-3911、UA-3912等のインドール系材料やオリヱント化学工業
株式会社製のBONASORB UA-3701等のアゾメチン系材料、BASF社製のLumogen
F Violet570、Tinuvin Carboprotect等も使用すること
ができる。
【化21】
式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状
のアルキレン基又は炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状のオキシアルキレン基を表す。
【0103】
上記セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体としては特に制限されないが、具体的な
物質名としては、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル
)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒ
ドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-
イル]エチルアクリレート、3-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール
-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]プロピルメタクリレート、3-[
2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリア
ゾール-5-イル]プロピルアクリレート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3
]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルメタクリレ
ート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-
ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルアクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベン
ゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]
エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5
-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[3
-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾト
リアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2-[3-{2-(
6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール
-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、4-[3-{2-(6-ヒドロキ
シベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}
プロパノイルオキシ]ブチルメタクリレート、4-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ
[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノ
イルオキシ]ブチルアクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]
ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ
]エチルメタクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソ
ール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチル
アクリレート、2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,
3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5カルボキシレート、2-
(アクリロイルオキシ)エチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5
-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(メタクリロイルオ
キシ)ブチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-
ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(アクリロイルオキシ)ブチル2-(
6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール
-5-カルボキシレート等を挙げることができる。また、これらセサモール型ベンゾトリ
アゾール系単量体は1種類で用いることもできるし、2種類以上を用いることもできる。
【0104】
光透過性機能層に分光透過率調整剤が存在するか否かは、例えば、赤外分光法やラマン
分光法、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法、液体クロマトグラフィー質量分析法
、X線光電子分光法、TOF-SIMSなどの分析法によって確認することができる。
【0105】
上記分光透過率調整剤は、上述した分光透過率の要件を満たす態様であれば、分光透過
率調整層13中でどのような状態で含まれていてもよい。具体的には、例えば、1つの光
透過性機能層に上記分光透過率調整剤を含ませて、上述した分光透過率の要件を満たして
もよく、また上記分光透過率の要件を満たす機能を複数の層に分担させてもよい。
【0106】
上記分光透過率の要件を満たす機能を複数の層に分担させた構成としては、例えば、分
光透過率調整層が第1の分光透過率調整層と第2の分光透過率調整層との2層からなる場
合には、第1の分光透過率調整層に波長380nmにおける分光透過率のみを達成できる
ように上記分光透過率調整剤を含有するとともに、第2の分光透過率調整層に波長410
nmおよび波長440nmにおける分光透過率の条件を達成できるように上記分光透過率
調整剤を含有している構成等が挙げられる。更に、上記分光透過率調整層が3層以上から
なり、各分光透過率調整層にて上述した分光透過率の要件を満たすよう上記分光透過率調
整剤を含有していてもよい。
【0107】
上記分光透過率調整剤は、例えば、分光透過率調整層13中に0.05質量%以上50
質量%以下で含有されていてもよい。このような範囲で分光透過率調整剤が含有されてい
ることで、上述した分光透過率を満たすことができる。
【0108】
上記分光透過率調整剤は、分光透過率調整層13において、分光透過率調整層13を構
成する樹脂と反応して一体的に含有されていてもよく、分光透過率調整層13を構成する
樹脂と反応することなく単独で含有されていてもよい。
【0109】
分光透過率調整層13を構成する樹脂と反応して一体的に分光透過率調整剤が含まれた
分光透過率調整層13としては、具体的には、例えば、上記分光透過率調整剤としてのセ
サモール型ベンゾトリアゾール系単量体をAとし、メチルメタクリレート(MMA)をB
、その他紫外線吸収剤等(例えば、大塚化学製「RUVA93」やシプロ化成製「SEE
SORB R18」等)をCとしたとき、これらA、B、Cがアクリル若しくはアクリレ
ートポリマー内に反応結合されており、Aの配合比をX質量部とするときXが10~55
質量部であるポリマー)を90質量部、PETAを10質量部含む光透過性機能層用組成
物を用いて形成されたもの等が挙げられる。このようにして得られた分光透過率調整層1
3を有する光学フィルム10は、上述した分光透過率を満たすことができ、ブルーライト
の遮蔽性能が優れたものとなる。
【0110】
分光透過率調整層13は、例えば、電離放射線重合性化合物および分光透過率調整剤を
含む分光透過率調整層用組成物を光透過性基材11の一方の面11A側に塗布し、乾燥さ
せ、電離放射線を照射することによって硬化させることによって、形成することができる
【0111】
<分光透過率調整層用組成物>
分光透過率調整層用組成物は、電離放射線重合性化合物および分光透過率調整剤の他、
溶剤乾燥型樹脂、熱硬化性化合物、重合開始剤、溶剤等を含んでいてもよい。
【0112】
(重合開始剤)
重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、重合開
始剤としては、具体例には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイル
ベンゾエート、α-アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベ
ンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を
混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、トリ
エチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0113】
重合開始剤としては、上記電離放射線重合性化合物がラジカル重合性官能基を有する場
合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾイ
ンメチルエーテル等のラジカル重合開始剤を単独又は混合して用いることが好ましい。ラ
ジカル重合開始剤の中でも、紫外線吸収性能による硬化阻害を抑制する点から、2,4,
6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(例えば、IGM Resi
ns B.V.社製のOmnirad TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイ
ル)フェニルホスフィンオキサイド(例えば、IGM Resins B.V.社製のOm
nirad819)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、IGM
Resins B.V.社製のOmnirad184)、またはこれらの混合物等がより
好ましい。
【0114】
また、上記電離放射線重合性化合物がカチオン重合性官能基を有する場合は、重合開始
剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メ
タロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等のカチオン重合開始剤を単独又は混合
物として用いることが好ましい。カチオン重合開始剤の中でも、硬化性に優れる点から、
芳香族スルホニウム塩等がより好ましい。
【0115】
分光透過率調整層用組成物にける上記重合開始剤の含有量は、上記電離放射線硬化型樹
脂100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。1質量部
未満であると、分光透過率調整層の硬度が不充分となることがあり、10質量部を超える
と、塗設した膜の深部まで電離放射線が届かなくなり内部硬化が促進されず、目標とする
光学フィルムの表面の硬度(例えば、後述する鉛筆硬度でB以上)が得られないおそれが
ある。
【0116】
上記光重合開始剤の含有量の下限は2質量部以上であることがより好ましく、上限は8
質量部以下であることがより好ましい。上記光重合開始剤の含有量がこの範囲にあること
で、膜厚方向に硬度分布が発生せず、均一な硬度になりやすくなる。
【0117】
(溶剤)
溶剤としては、使用する電離放射線重合性化合物の種類および溶解性に応じて選択して
使用することができ、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブ
チルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等)、エーテル類(ジオキサン、
テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール
モノメチルエーテルアセテート等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素
類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素
類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸
ブチル等)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘ
キサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブ
アセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルム
アミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合溶媒であってもよい。
【0118】
分光透過率調整層用組成物中における原料の含有割合(固形分)として特に限定されな
いが、5質量%以上70質量%以下が好ましく、15質量%以上60質量%以下がより好
ましい。
【0119】
分光透過率調整層用組成物には、硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御す
る、および/または防眩性を付与する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤
、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消
泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表
面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0120】
分光透過率調整層用組成物は、光増感剤を混合して用いてもよく、その具体例としては
、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホソフィン等が挙げ
られる。
【0121】
分光透過率調整層用組成物の調製方法としては各成分を均一に混合できれば特に限定さ
れず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を
使用して行うことができる。
【0122】
分光透過率調整層用組成物を光透過性基材11上に塗布する方法としては特に限定され
ず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、
ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピード
コーター法等の公知の方法が挙げられる。
【0123】
分光透過率調整層用組成物の硬化に用いられる電離放射線源としては、主に190~4
50nmの波長域に発光ピークを有するものが好ましい。電離放射線源としては、例えば
、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、
メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。
【0124】
<<オーバーコート層>>
オーバーコート層14は、光学フィルム10の表面10Aにハードコート性を付与する
機能を有する層である。「ハードコート性」とは、鉛筆硬度試験で「B」以上の硬度を付
与する性質を意味する。鉛筆硬度試験は、50mm×100mmの大きさに切り出された
光学フィルムのオーバーコート層の表面に対し鉛筆硬度試験機(製品名「鉛筆引っかき塗
膜硬さ試験機(電動式)」、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、鉛筆(製品名「ユニ
」、三菱鉛筆株式会社製)に2.94Nの荷重を加えながら鉛筆を1mm/秒の移動速度
で移動させることにより行うものとする。鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において光学フィル
ムのオーバーコート層の表面に傷が付かなかった最も高い硬度とする。なお、鉛筆硬度の
測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬度試
験を行い、5回のうち4回以上オーバーコート層の表面に傷が付かなかった場合には、こ
の硬度の鉛筆においてはオーバーコート層の表面に傷が付かなかったと判断する。上記傷
は、鉛筆硬度試験を行ったオーバーコート層の表面を蛍光灯下で透過観察して視認される
ものを指す。
【0125】
オーバーコート層14の膜厚は、1μm以上9μm未満であることが好ましい。オーバ
ーコート層の膜厚が1μm未満であると、所望の硬度が得られないおそれがあり、またオ
ーバーコート層の膜厚が9μm以上となると、オーバーコート層がひずみ応力によって割
れるおそれがある。オーバーコート層14の膜厚は、分光透過率調整層13と同様の方法
によって求めることができる。
【0126】
オーバーコート層14は、樹脂から構成することが可能である。オーバーコート層14
に含まれる樹脂としては、電離放射線重合性化合物の重合物を含むものである。樹脂は、
電離放射線重合性化合物の重合物の他、溶剤乾燥型樹脂や熱硬化性化合物を含んでいても
よい。
【0127】
オーバーコート層14を構成する電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性
モノマー、電離放射線重合性オリゴマー、または電離放射線重合性プレポリマーが挙げら
れ、これらを適宜調整して、用いることができる。電離放射線重合性化合物としては、電
離放射線重合性モノマーと、電離放射線重合性オリゴマーまたは電離放射線重合性プレポ
リマーとの組み合わせが好ましい。
【0128】
電離放射線重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ
ート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アク
リレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチ
ロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート
、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ
)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリス
リトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)
アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0129】
電離放射線重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、電
離放射線重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能
オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)ア
クリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アク
リレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシア
ヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0130】
電離放射線重合性プレポリマーは、重量平均分子量が1万を超えるものであり、重量平
均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量
平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる
光透過性樹脂の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(
メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン
(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0131】
オーバーコート層14は、例えば、電離放射線重合性化合物を含むオーバーコート層用
組成物を分光透過率調整層上に塗布し、乾燥させ、電離放射線を照射することによって硬
化させることによって、形成することができる。
【0132】
<オーバーコート層用組成物>
オーバーコート層用組成物は、電離放射線重合性化合物の他、溶剤乾燥型樹脂、熱硬化
性化合物、重合開始剤、溶剤等を含んでいてもよい。溶剤乾燥型樹脂、熱硬化性化合物、
重合開始剤、溶剤等は、上記分光透過率調整層用組成物で説明した溶剤乾燥型樹脂、熱硬
化性化合物、重合開始剤、溶剤等と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする
【0133】
図1に示される光透過性機能層12は分光透過率調整層13とオーバーコート層14の
2層構造となっているが、光透過性機能層は、分光透過率調整層と、オーバーコート層と
、オーバーコート層における光透過性基材側の面とは反対側の面に設けられた防汚層等の
その他の光透過性機能層とを備えていてもよい。また、光透過性機能層がオーバーコート
層を備えていない場合、光透過性機能層は、分光透過率調整層と、分光透過率調整層にお
ける光透過性基材側の面とは反対側の面に設けられた防汚層等のその他の光透過性機能層
とを備えていてもよい。これらの場合、分光透過率調整層やオーバーコート層は、分光透
過率調整層13やオーバーコート層14と同様のものである。防汚層は、光学フィルムを
用いた画像表示装置の最表面に汚れ(指紋、水性又は油性のインキ類、鉛筆等)が付着し
にくく、または付着した場合でも容易に拭取ることができるという役割を担う層である。
また、上記防汚層の形成により、光学フィルムに対して防汚性と耐擦傷性の改善を図るこ
とも可能となる。
【0134】
上記防汚層は、例えば、防汚剤および樹脂を含む。上記防汚剤は、光学フィルムの最表
面の汚れ防止を主目的とするものであり、光学フィルムに耐擦傷性を付与することもでき
る。
【0135】
上記防汚剤としては、例えば、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、又は、これらの混合
化合物が挙げられる。より具体的には、2-パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン
等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有
するものが好ましくは使用することができる。上記樹脂としては特に限定されず、上述の
分光透過率調整層13の欄で説明した樹脂が挙げられる。
【0136】
防汚層は、防汚層が最表面になるように形成することが好ましい。上記防汚層は、例え
ば分光透過率調整層自身に防汚性能を付与することにより代替することもできる。
【0137】
<<<他の光学フィルム>>>
光学フィルムは、図3に示されるように、光透過性基材11と、光透過性基材11の一
方の面側に設けられた光透過性機能層21とを備える光学フィルム20であってもよい。
光透過性機能層21の表面21Aが凹凸面となっていることで、例えば、光学フィルム2
0に防眩性及び/又は耐ブロッキング性を付与することができる。光学フィルム20にお
ける光透過性基材11は、光学フィルム10の欄で説明した光透過性基材11と同じもの
であるので、説明を省略するものとする。
【0138】
光学フィルム20の物性は、光学フィルム10と同様である。したがって、光学フィル
ム20においても、波長380nmにおける分光透過率が1%未満となっており、波長4
10nmにおける分光透過率が10%以上60%未満となっており、かつ波長440nm
における分光透過率が70%以上となっている。
【0139】
<<光透過性機能層>>
光透過性機能層21は、光学フィルム20の分光透過率を調整する機能を有するととも
に、防眩機能を有する層である。光透過性機能層21における分光透過率調整機能は、上
記分光透過率調整剤を含ませることにより発揮させることができる。また、光透過性機能
層21における防眩機能は、表面21Aを凹凸面にすることによって発揮させることがで
きる。例えば、防眩剤を含有させることで表面21を凹凸面にすることができる。防眩剤
としては特に限定されず、公知の無機系又は有機系の各種粒子を用いることができる。
【0140】
上記粒子としては、球形粒子および異形粒子のいずれであってもよい。本明細書におけ
る「球形粒子」とは、例えば、真球状、楕円球状等の粒子を意味し、「異形粒子」とは、
ジャガイモ状のランダムな凹凸を表面に有する形状の粒子を意味する。上記粒子が球形粒
子の場合、真球状のものが好ましい。
【0141】
上記粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、一般的には、0.01μm以上2
0μm以下とすれば良い。上記粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過
型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した粒子
の断面の画像から20個の粒子の粒子径を測定し、20個の粒子の粒子径の算術平均値と
する。ただし、粒子が異形粒子である場合には、各粒子の粒子径は、断面において最も長
い径と最も短い径との平均値とする。
【0142】
上記粒子は、防眩性を発揮するものであり、好ましくは透明性の粒子である。このよう
な微粒子の具体例としては、無機系であれば、例えば、シリカビーズ、有機系であれば、
例えば、プラスチックビーズが挙げられる。
【0143】
上記プラスチックビーズの具体例としては、例えば、スチレンビーズ(屈折率1.60
)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル
-スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等
が挙げられる。
【0144】
光透過性機能層21においては、表面21Aの凹凸の平均間隔をSmとし、凹凸部の平
均傾斜角をθaとし、凹凸の算術平均粗さをRaとし、凹凸の十点平均粗さをRzとした
場合に、写り込んだ映像のエッジ部分のみを鮮明に見えなくすることで防眩性を担保し、
かつ、大きな拡散をなくして迷光発生を防ぐとともに正透過部分を適度に持たせることで
、輝きを持つ映像でかつ明室及び暗室でのコントラストに優れた光学フィルムを得るとい
う観点により、下記式(A-1)~(A-4)を満たすことが好ましい。Smが下記式(
A-1)の下限未満であると、凝集の制御が困難となるおそれがあり、またSmが下記式
(A-1)の上限を超えると、映像の細やかさが再現できず大味な映像になる等の不具合
を生じるおそれがある。また、θa、Ra、Rzが下記式(A-2)~(A-4)の下限
未満であると、外光の映り込みを抑えることができないことがある。また、θa、Ra、
Rzが下記式(A-2)~(A-4)の上限を超えると、正透過成分の減少により映像の
輝きが減少したり、外光の拡散反射の増加による明室コントラストの低下や、透過映像光
からの迷光が増加することにより暗室コントラストが低下したりするおそれがある。
50μm<Sm<600μm …(A-1)
0.1°<θa<1.5° …(A-2)
0.02μm<Ra<0.30μm …(A-3)
0.30μm<Rz<2.00μm …(A-4)
【0145】
光透過性機能層21の表面21Aは、上記観点から、下記式(B-1)~(B-4)を
満たすことがより好ましい。
100μm<Sm<400μm …(B-1)
0.1°<θa<1.2° …(B-2)
0.02μm<Ra<0.15μm …(B-3)
0.30μm<Rz<1.20μm …(B-4)
【0146】
光透過性機能層21の表面21Aは、下記式(C-1)~(C-4)を満たすことがさ
らに好ましい。
120μm<Sm<300μm …(C-1)
0.1°<θa<0.5° …(C-2)
0.02μm<Ra<0.12μm …(C-3)
0.30μm<Rz<0.80μm …(C-4)
【0147】
本明細書において、上記Sm、RaおよびRzは、JIS B0601:1994に準
拠する方法で得られる値であり、θaは、表面粗さ測定器であるSE-3400(株式会
社小坂研究所製)の取り扱い説明書(1995.07.20改訂)に記載の定義により得
られる値であり、図4に示すように、基準長さLに存在する凸部高さの和(h+h+h
+・・・+h)のアークタンジェントθa=tan-1{(h+h+h+・・・+h
)/L}で求められる。このようなSm、θa、Ra、Rzは、例えば、表面粗さ測定
器(製品名「SE-3400」、株式会社小坂研究所製)を用いて、光透過性機能層21
の表面21Aにおいて、少なくとも目視で異常のない箇所(大きい異物や擦りキズ等がな
い箇所)をランダムに3箇所選択し、それらの箇所において測定された値の算術平均値と
する。この場合の測定条件は、光学フィルム10の表面10AにおけるRaと測定条件と
同様である。また、Raは、光学フィルム10の表面10AにおけるRaと同様に原子間
力顕微鏡(製品名「WET-9100」、島津製作所製)を用いても測定が可能である。
【0148】
光透過性機能層21が、耐ブロッキング性を有する場合、光透過性機能層21は、例え
ば、ブロッキング防止剤を含有することが好ましい。ブロッキング防止剤としては、例え
ば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化
亜鉛等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸
化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等
の硫酸塩、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ
酸等のケイ酸塩、その他、カオリン、タルク、けいそう土等の無機化合物系の1種ないし
2種以上が挙げられる。
【0149】
無機化合物系のブロッキング防止剤の平均粒子径は、0.01μm以上20μm以下で
あることが好ましい。ブロッキング防止剤の平均粒子径が0.01μm未満であると、光
透過性機能層の表面の凹凸形状が小さく、アンチブロッキング効果が得られ難く、また、
平均粒子径が20μmを超えると、光透過性機能層の表面の凹凸が大きくなり過ぎ、光学
フィルム同士が擦れたとき、傷痕等が発生することがある。
【0150】
ブロッキング防止剤としては、例えば、高密度ポリエチレン、分子量300000以上
の超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステ
ル、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル系樹脂、その他等の微粉末等から
なる有機化合物系を原料の1種ないし2種以上とするものであってもよい。
【0151】
ブロッキング防止剤の含有量は、光透過性機能層を構成する樹脂100質量部に対して
、0.01質量部以上6質量部以下であることが好ましく、2質量部以上5質量部以下で
あることがより好ましい。ブロッキング防止剤の含有量が0.01質量部未満であると、
光透過性機能層の表面の凹凸形状の形成が不充分となり、耐ブロッキング性が不充分とな
ることがあり、また6質量部を超えると、光透過性機能層の透明性が低下することがある
【0152】
<<<他の光学フィルム>>>
光学フィルムは、図5に示されるように、光透過性基材11と、光透過性基材11の一
方の面側に設けられた光透過性機能層31とを備える光学フィルム30であってもよい。
光透過性機能層31は、分光透過率調整層32と、分光透過率調整層32における光透過
性基材11側とは反対側に設けられた積層構造の複数の蒸着層33とを備えている。複数
の蒸着層33を備えることで、上述した分光透過率の要件をより好適に満たすことができ
る。
【0153】
光学フィルム30の物性は、光学フィルム10と同様である。したがって、光学フィル
ム30においても、波長380nmにおける分光透過率が1%未満となっており、波長4
10nmにおける分光透過率が10%以上60%未満となっており、かつ波長440nm
における分光透過率が70%以上となっている。
【0154】
<<分光透過率調整層>>
分光透過率調整層32は、分光透過率調整層13と同様であるので、ここでは説明を省
略するものとする。
【0155】
<<蒸着層>>
蒸着層33としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム
(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、
ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y
)、ニオブ(Nb)等の無機物又は無機酸化物の蒸着層であることが好ましい。なかでも
、ケイ素(Si)とニオブ(Nb)とからなる蒸着層であることが好ましい。
【0156】
蒸着層33としては、スパッタリング法によって形成された層であることが好ましい。
上記蒸着層がスパッタリング法によって形成された層であることで、多層薄膜蒸着した際
に、より精密な膜厚制御が可能となる。
【0157】
蒸着層33の膜厚は3nm以上150nm以下で、5層以上20層以下積層されている
ことが好ましい。このような蒸着層33を分光透過率調整層32上に有することで、光学
フィルム30は、蒸着層33に起因した着色を防止し、上述した分光透過率の要件をより
好適に満たすことができる。蒸着層の各膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電
子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、蒸着層の断面を
撮影し、その断面の画像において蒸着層の膜厚を20箇所測定し、その20箇所の膜厚の
算術平均値とする。
【0158】
蒸着層の断面をTEMやSTEMで撮影する場合、具体的な断面写真の撮影方法を以下
に記載する。まず、1mm×10mmの大きさに切り出した光学フィルムを包埋樹脂によ
って包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等が
ない均一な、厚さ70nm以上100nm以下の切片を切り出す。切片の作製には、「ウ
ルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ株式会社)等を用いる
ことができる。そして、この穴等がない均一な切片を測定サンプルとする。その後、走査
透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800」、株式会社日立ハイテクノロジ
ーズ製)を用いて、測定サンプルの断面写真を撮影する。上記S-4800を用いて断面
写真を撮影する際には、検出器を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流
を「10μA」にして断面観察を行う。倍率については、フォーカスを調節しコントラス
トおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節す
る。好ましい倍率は、1万倍~10万倍、更に好ましい倍率は1万倍~5万倍であり、最
も好ましい倍率は2.5万倍~5万倍である。なお、上記S-4800を用いて断面写真
を撮影する際には、さらに、アパーチャーを「ビームモニタ絞り3」にし、対物レンズ絞
りを「3」にし、またW.D.を「8mm」にしてもよい。また、四酸化オスミウム、四
酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、層間の界面ラインが見やす
くなるので、染色処理を行ってもよい。
【0159】
<<<他の光学フィルム>>>
光学フィルムは、図6に示されるように、光透過性基材11と、光透過性基材11の一
方の面側に設けられた光透過性機能層41とを備える光学フィルム40であってもよい。
光透過性機能層41は、分光透過率調整層42と、分光透過率調整層42における光透過
性基材11側とは反対側に設けられた互いに屈折率が異なる複数の不可視化層43を更に
含むことが好ましい。光学フィルム40は、タッチパネルを搭載した画像表示装置に好適
に用いられるが、不可視化層43を有することで、ITO等の無機透明導電材料からなる
センサ電極(透明電極層)が表示面で観察されることを防止できる。
【0160】
光学フィルム40の物性は、光学フィルム10と同様である。したがって、光学フィル
ム40においても、波長380nmにおける分光透過率が1%未満となっており、波長4
10nmにおける分光透過率が10%以上60%未満となっており、かつ波長440nm
における分光透過率が70%以上となっている。
【0161】
<<分光透過率調整層>>
分光透過率調整層42は、分光透過率調整層13と同様であるので、ここでは説明を省
略するものとする。
【0162】
<<不可視化層>>
不可視化層43としては特に限定されず、不可視化層として従来公知のものが挙げられ
るが、例えば、無機透明導電材料よりも高い屈折率を有する高屈折率層43Aと、高屈折
率層43Aよりも屈折率の低い低屈折率層43Bとの積層構造を有することが好ましい。
なお、不可視化層43は、光透過性基材11の両面側に設けられていてもよい。
【0163】
<高屈折率層>
高屈折率層43Aは、屈折率が1.50以上2.00以下であることが好ましい。高屈
折率層43Aの屈折率の下限は1.60以上であることがより好ましく、また上限は1.
75以下であることがより好ましい。高屈折率層43Aの屈折率を測定する方法としては
、高屈折率層43Aをカッターなどで削り取り、粉状態のサンプルを作製し、JIS K
7142:2008のB法(粉体または粒状の透明材料用)に従ったベッケ法(屈折率が
既知のカーギル試薬を用い、前記粉状態のサンプルをスライドガラスなどに置き、そのサ
ンプル上に試薬を滴下し、試薬でサンプルを浸漬する。その様子を顕微鏡観察によって観
察し、サンプルと試薬の屈折率が異なることによってサンプル輪郭に生じる輝線(ベッケ
線)が目視で観察できなくなる試薬の屈折率を、サンプルの屈折率とする方法)を用いて
測定するものとする。
【0164】
高屈折率層43Aの膜厚は10nm以上200nm以下であることが好ましい。高屈折
率層43Aの膜厚の下限は30nm以上であることが好ましく、上限は100nm以下で
あることがより好ましい。高屈折率層43Aの膜厚は、蒸着層33の膜厚と同様の方法に
よって求めるものとする。
【0165】
高屈折率層43Aとしては、上述した無機透明導電材料の屈折率よりも高い屈折率を有
する層であれば特に限定されないが、例えば、高屈折率微粒子と、バインダー樹脂とから
構成されることが好ましい。
【0166】
上記高屈折率微粒子としては、例えば、金属酸化物微粒子が挙げられる。上記金属酸化
物微粒子としては、例えば、酸化チタン(TiO、屈折率:2.3~2.7)、酸化ニ
オブ(Nb、屈折率:2.33)、酸化ジルコニウム(ZrO、屈折率:2.1
0)、酸化アンチモン(Sb、屈折率:2.04)、酸化スズ(SnO、屈折率
:2.00)、スズドープ酸化インジウム(ITO、屈折率:1.95~2.00)、酸
化セリウム(CeO、屈折率:1.95)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO、屈
折率:1.90~2.00)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO、屈折率:1.90~2
.00)、アンチモン酸亜鉛(ZnSb、屈折率:1.90~2.00)、酸化亜
鉛(ZnO、屈折率:1.90)、酸化イットリウム(Y、屈折率:1.87)、
アンチモンドープ酸化スズ(ATO、屈折率:1.75~1.85)、リンドープ酸化ス
ズ(PTO、屈折率:1.75~1.85)等が挙げられる。これらの中でも、屈折率の
観点から、酸化ジルコニウムが好ましい。
【0167】
高屈折率層43Aを構成するバインダー樹脂としては特に限定されず、例えば、表面硬
度を高くする観点から、熱硬化性樹脂または電離放射線重合性化合物等の重合物(架橋物
)であるものが好ましく、これらの中でも電離放射線重合性化合物の重合物であるものが
より好ましい。このようなバインダー樹脂としては、上述した分光透過率調整層13を構
成する樹脂成分と同様のもの挙げられる。
【0168】
高屈折率層43Aは、例えば、分光透過率調整層13と同様の方法で形成することがで
きる。具体的には、例えば、分光透過率調整層42における光透過性基材11側の面とは
反対側の面に形成する場合、分光透過率調整層42の表面に、少なくとも高屈折率微粒子
と、熱硬化性樹脂または電離放射線重合性化合物とを含む高屈折率層用組成物を塗布し形
成した塗膜を乾燥させ、その後、加熱または紫外線等の電離放射線を照射することによっ
て、高屈折率層用組成物を硬化させることで高屈折率層43Aを形成することができる。
【0169】
<低屈折率層>
低屈折率層43Bは、高屈折率層43Aの屈折率よりも低い屈折率を有する層である。
低屈折率層43Bの屈折率は、1.35以上1.55以下であることが好ましい。低屈折
率層43Bの屈折率の下限は1.40以上であることがより好ましく、上限は1.50以
下であることがより好ましい。低屈折率層43Bの屈折率は、高屈折率層43Aの屈折率
と同様の方法によって求めるものとする。
【0170】
低屈折率層43Bの膜厚は、1nm以上200nm以下であることが好ましい。低屈折
率層43Bの膜厚の下限は5nm以上であることがより好ましく、また上限は100nm
以下であることが好ましい。低屈折率層43Bの膜厚は、蒸着層33の膜厚と同様の方法
によって求めるものとする。
【0171】
低屈折率層43Bとしては、例えば、低屈折率微粒子とバインダー樹脂とから構成され
るもの、また、低屈折率樹脂から構成されるものが挙げられる。
【0172】
上記低屈折率微粒子としては、例えば、シリカ、又は、フッ化マグネシウムからなる中
実若しくは中空粒子等が挙げられる。なかでも、中空シリカ粒子が好ましく、このような
中空シリカ粒子は、例えば、特開2005-099778号公報の実施例に記載の製造方
法にて作製できる。
【0173】
低屈折率層43Bを構成するバインダー樹脂としては、高屈折率層43Aを構成するバ
インダー樹脂と同様のものが挙げられる。ただし、上記バインダー樹脂に、フッ素原子を
導入した樹脂や、オルガノポリシロキサン等の屈折率の低い材料を混合してもよい。上記
低屈折率樹脂としては、例えば、フッ素原子を導入した樹脂や、オルガノポリシロキサン
等の屈折率の低い樹脂等も挙げられる。
【0174】
低屈折率層43Bは、例えば、分光透過率調整層13と同様の方法によって形成するこ
とができる。具体的には、まず、高屈折率層43Aの表面に、少なくとも低屈折率微粒子
と熱硬化性樹脂または電離放射線重合性化合物とを含む低屈折率層用組成物を塗布して塗
膜を形成し、その塗膜を乾燥させ、その後、加熱または紫外線等の電離放射線の照射によ
って低屈折率層用組成物を硬化させることで低屈折率層43Bを形成することができる。
【0175】
高屈折率層43Aと低屈折率層43Bとの間には、高屈折率層43Aの屈折率よりも低
く、かつ、低屈折率層43Bの屈折率よりも高い屈折率を有する中屈折率層が設けられて
いてもよい。
【0176】
<<<他の光学フィルム>>>
光学フィルムは、図7に示されるように、光透過性基材11と、光透過性基材11の一
方の面側に設けられた光透過性機能層51とを備える光学フィルム50であってもよい。
光透過性機能層51は、分光透過率調整層52と、分光透過率調整層52における光透過
性基材11側とは反対側に設けられ、屈折率が分光透過率調整層52の屈折率よりも低い
低屈折率層53を更に含むことが好ましい。光学フィルム50は、低屈折率層53を有す
ることで、外光反射を抑制することができる。また、光学フィルムは、分光透過率調整層
と低屈折率層との間に、屈折率が分光透過率調整層の屈折率よりも高い高屈折率層をさら
に備えていてもよい。
【0177】
光学フィルム50の物性は、光学フィルム10と同様である。したがって、光学フィル
ム40においても、波長380nmにおける分光透過率が1%未満となっており、波長4
10nmにおける分光透過率が10%以上60%未満となっており、かつ波長440nm
における分光透過率が70%以上となっている。
【0178】
<<分光透過率調整層および低屈折率層>>
分光透過率調整層52は分光透過率調整層13と同様であり、低屈折率層53は低屈折
率層43Bと同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0179】
本発明者らは、光学フィルムの黄色味の問題に関して、鋭意研究したところ、波長41
0nm付近の光を吸収しすぎると、光学フィルムを透過する透過光が黄色味を帯びること
を見出した。本実施形態によれば、光学フィルム10、20、30、40の波長380n
mにおける分光透過率が1%未満であり、波長410nmにおける分光透過率が10%以
上60%未満であり、かつ波長440nmにおける分光透過率が70%以上であるので、
波長380nm以下の光を充分に吸収させ、波長410nm付近の光を吸収しすぎず、適
度に透過させ、かつ波長440nm以上の光を充分に透過させることができる。これによ
り、ブルーライトを遮蔽でき、かつ光学フィルムの黄色味を抑制できる。
【0180】
また、部材間を確実に粘着層により固定するためには、上記したように粘着層の厚みは
10μm以上であることが必要となる。これに対し、光透過性機能層12、21、31、
41、51は粘着層を備えていないので、膜厚を9μm以下とすることができ、粘着層に
分光透過率調整剤を含ませた場合よりも、厚みを薄くすることができる。これにより、光
学フィルム10、20、30、40、50の薄型化を図ることができる。また、光学フィ
ルム10、20、30、40、50の薄型化を図ることができるので、画像表示装置の薄
型化および軽量化を図ることができる。
【0181】
粘着層に分光透過率調整剤を含ませると、粘着力の低下の他、熱収縮率が変化すること
により、被着体等の変形が生じまたは所望の寸法が得られないおそれがある。これに対し
、光学フィルム10、20、30、40、50は粘着層を備えていないので、このような
問題もない。また、光学フィルム10、20、30、40、50は粘着層を備えていない
ので、使い勝手がよい。
【0182】
<<<偏光板>>>
光学フィルム10、20、30、40、50は、偏光板に組み込んで使用することが可
能である。図8は、本実施形態に係る偏光板の概略構成図である。図8に示されるように
、偏光板60は、光学フィルム10と、偏光子61と、保護フィルム62とをこの順で備
えている。なお、偏光板60においては、光学フィルム10を用いているが、光学フィル
ム10の代わりに光学フィルム20、30、40、50を用いてもよい。また、偏光板6
0においては、光学フィルム10の光透過性基材11側に偏光子61が設けられているが
、光学フィルムの光透過性機能層側に偏光子が設けられていてもよい。
【0183】
光学フィルム10と偏光子61および偏光子61と保護フィルム62は、例えば、水系
接着剤または紫外線硬化性接着剤によって貼り合わせられている。偏光板60は、円偏光
板であってもよい。偏光板60が円偏光板であることによって、有機発光ダイオードパネ
ル(OLEDパネル)を備える画像表示装置に用いる場合に、外光をカットすることがで
きる。
【0184】
<<偏光子>>
偏光子61は、光透過性基材11における光透過性機能層12側の面とは反対側の面に
設けられている。偏光子61は、ヨウ素または二色性色素により染色し、一軸延伸させた
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが上げられる。ポリビニルアルコール系樹脂として
は、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂
としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重
合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体
としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スル
ホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。ポリビニルアルコ
ール系樹脂は、変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホ
ルマールやポリビニルアセタール等を用いることもできる。
【0185】
<<保護フィルム>>
保護フィルム62としては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィル
ム)や(メタ)アクリル樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(COP)等
が挙げられる。
【0186】
<<<画像表示装置>>>
光学フィルム10、20、30、40、50または偏光板60は、画像表示装置に組み
込んで使用することが可能である。図9は、本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図
である。図9に示されるように、画像表示装置70は、表示パネル80と、表示パネル8
0よりも観察者側に配置されたタッチセンサ90と、タッチセンサ90よりも観察側に配
置され、かつ画像表示装置70の表面70Aを構成するカバー部材100とを備えている
【0187】
表示パネル80は、観察者側に向けて、主に、表示素子81、接着層82、位相差フィ
ルム83、接着層84、λ/4フィルム85、接着層86、および偏光板60をこの順に
備えている。偏光板60は、光学フィルム10が観察者側となるように配置されている。
表示パネル80は、表示素子81が、有機発光ダイオード(OLED)素子となっている
ので、このような構成となっている。なお、画像表示装置70は、光学フィルム10を備
えているが、光学フィルム10の代わりに光学フィルム20、30、40、50を用いて
もよい。
【0188】
上記したように表示素子81は、有機発光ダイオード(OLED)素子となっているが
、表示素子としては、液晶表示素子、無機発光ダイオード素子、または量子ドット発光ダ
イオード(QLED)であってもよい。接着層82、86としては、例えば、感圧接着剤
からなる接着層が挙げられ、接着層84としては、電離放射線重合性化合物を含む液状の
電離放射線硬化性接着剤(例えば、OCR:optically clear resin)の硬化物が挙げら
れる。
【0189】
タッチセンサ90としては、公知のタッチセンサを用いることができる。タッチセンサ
90は、表示パネル80とカバー部材100との間に配置されているが、表示素子81と
位相差フィルム83との間に配置されていてもよい。カバー部材100は、カバーガラス
または光透過性樹脂からなるカバーフィルムであってもよい。
【0190】
表示パネル80とタッチセンサ90およびタッチセンサ90とカバー部材100は、そ
れぞれ、感圧接着剤や電離放射線硬化性接着剤の硬化物からなる接着層111、112に
よって接着されている。ただし、表示パネル80とタッチセンサ90の間およびタッチセ
ンサ90とカバー部材100の間は、空気層(エアギャップ)であってもよい。
【実施例0191】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの
記載に限定されない。なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質
量基準とする。
【0192】
<実施例1>
(セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体の合成)
200mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け
、6-[5-(2-ヒドロキシエチル)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]ベンゾ
[1,3]ジオキソール-5-オール4.0g(0.013モル)、トルエン40mL、
メタクリル酸1.8g(0.021モル)、メタンスルホン酸0.4g(0.004モル
)を入れて、110~115℃で4時間還流脱水した。次いで、水30mL、炭酸ナトリ
ウム0.6g(0.006モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性
炭0.2gを加え、還流撹拌して脱色させた。そして、ろ過した後に、ろ液からトルエン
40mLを減圧で回収し、イソプロピルアルコール100mLを加え、析出した結晶をろ
過し、イソプロピルアルコール40mLで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶
を4.2g得た。この黄色結晶4.2gをイソプロピルアルコールでリパルプ洗浄して、
減圧下40℃で乾燥し、セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体として、3.4gの2
-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾト
リアゾール-5-イル]エチルメタクリレートを得た。
【0193】
(セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体が反応結合されたアクリルポリマーの合成)
四つ口フラスコにジムロート冷却器、水銀温時計、窒素ガス吹き込み管、攪拌装置を取
り付け、合成した2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル
)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルメタクリレートを8質量部、他の単量
体としてのメチルメタクリレート(MMA)を32質量部、溶媒としてのトルエン20質
量部、メチルエチルケトン20質量部、及び、重合開始剤としての1,1’-アゾビス(
シクロヘキサン-1-カルボニトリル)0.6質量部を入れて、攪拌しながら窒素ガス流
量10mL/minで1時間フラスコ内を窒素置換後に、反応液温度90~96℃で10
時間還流状態にて重合反応を行った。
【0194】
重合反応終了後、トルエン10質量部、MEK10質量部を追加し、セサモール型ベン
ゾトリアゾール系単量体がMMAおよび紫外線吸収剤に反応結合されたアクリルポリマー
(1)溶液100.6質量部を得た。
【0195】
(分光透過率調整層用組成物1の調製)
多官能モノマー(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製)お
よび上記アクリルポリマー(1)を固形分質量比80:20で混ぜ合わせ、固形分25%
まで溶剤(メチルエチルケトンおよびトルエン、質量比80:20)にて希釈して樹脂組
成物を調製した。次いで、得られた樹脂組成物160質量部に対し、重合開始剤(IGM
Resins B.V.社製のOmnirad184およびOmnirad819の質量
比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F568」、DIC株式会社製)0
.2質量部とを混ぜ合わせ、よく攪拌することで、分光透過率調整層用組成物1を調製し
た。
【0196】
(オーバーコート層用組成物1の調製)
多官能モノマー(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製)を
、固形分50%まで溶剤(メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン、質量比5
0:50)にて希釈して樹脂組成物を調製した。次いで、得られた樹脂組成物200質量
部に対し、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184)4
質量部と、レベリング剤(製品名「F568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを混
ぜ合わせ、よく攪拌することで、オーバーコート層用組成物を調製した。
【0197】
(光学フィルムの製造)
得られた分光透過率調整層用組成物1を、ミヤバーにて大きさが210mm×297m
m(A4サイズ)および厚みが25μmのトリアセチルセルロース基材の表面に塗布して
、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥
空気を30秒間流通させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が20
0mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚が5μmの分光
透過率調整層を形成した。
【0198】
分光透過率調整層を形成した後、ミヤバーにて分光透過率調整層の表面にオーバーコー
ト層用組成物1を塗布して、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m
/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ
、紫外線を積算光量が200mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることに
より、膜厚が4μmのオーバーコート層を形成した。これにより、トリアセチルセルロー
ス基材上に膜厚5μmの分光透過率調整層(SA層)および膜厚4μmのオーバーコート
層(OC層)からなる膜厚9μmの光透過性機能層を備える光学フィルムを得た。分光透
過率調整層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、分光透過率調整層の断面を
撮影し、その断面の画像において分光透過率調整層の膜厚を20箇所測定し、その20箇
所の膜厚の算術平均値とした。具体的な断面写真の撮影方法は以下の通りとした。まず、
1mm×10mmに切り出した光学フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製
し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ70nm~
300nm程度の切片を切り出した。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM
UC7」(ライカ マイクロシステムズ株式会社)等を用いた。そして、この穴等がない
均一な切片が切り出された残りのブロックを測定サンプルとした。その後、走査型電子顕
微鏡(SEM)(製品名「S-4800」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い
て、測定サンプルの断面写真を撮影した。上記S-4800を用いて断面写真を撮影する
際には、検出器を「SE」、加速電圧を「5kV」、エミッション電流を「10μA」に
して断面観察を行った。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさ
を各層が見分けられるか観察しながら光透過性機能層の膜厚に応じて1000倍~1万倍
の範囲内で適宜調節した。具体的には、膜厚の測定ブレを低減するために光透過性機能層
の9μmの場合は2000倍、5μmの場合は2000~5000倍で調節した。さらに
、アパーチャーを「ビームモニタ絞り1」にし、対物レンズ絞りを「2」にし、またW.
D.を「8mm」にした。また、オーバーコート層の膜厚も、分光透過率調整層の膜厚と
同様の方法によって測定した。なお、実施例2~5および比較例1~3においても、実施
例1と同様の手法によって分光透過率調整層やオーバーコート層の膜厚を測定した。
【0199】
<実施例2>
実施例2においては、上記多官能モノマーおよび上記アクリルポリマー(1)の固形分
質量比を67:33にしたこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0200】
<実施例3>
実施例3においては、上記多官能モノマーおよび上記アクリルポリマー(1)の固形分
質量比を50:50にしたこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0201】
<実施例4>
実施例4においては、分光透過率調整層の膜厚を2μmにしたこと以外は、実施例1と
同様にして光学フィルムを得た。
【0202】
<実施例5>
(分光透過率調整層用組成物2の調製)
ポリエステル樹脂(製品名「バイロン24SS」、東洋紡株式会社製)を固形分25%
までメチルエチルケトンにて希釈して樹脂組成物を調製した。次いで、得られた樹脂組成
物120質量部に対し、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnira
d184およびOmnirad819の質量比50:50)4質量部と、インドール化合
物(製品名「BONASORB UA-3912」、オリヱント化学工業株式会社製)を
3質量部、およびベンゾトリアゾール化合物(製品名「JF-79」、城北化学株式会社
製)5質量部、レベリング剤(製品名「F568」、DIC株式会社製)0.2質量部と
を混ぜ合わせ、よく攪拌することで、分光透過率調整層用組成物2を調製した。
【0203】
(光学フィルムの製造)
得られた分光透過率調整層用組成物2を、ミヤバーにて大きさが210mm×297m
m(A4サイズ)および厚みが25μmのトリアセチルセルロース基材の表面に塗布して
、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥
空気を30秒間流通させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が50
mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚が5μmの分光透
過率調整層を形成した。これにより、トリアセチルセルロース基材上に膜厚5μmの分光
透過率調整層(SA層)のみからなる光透過性機能層を備える光学フィルムを得た。
【0204】
<比較例1>
比較例1においては、上記多官能モノマーおよび上記アクリルポリマー(1)の固形分
質量比を90:10にしたこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0205】
<比較例2>
(分光透過率調整層用組成物3の調製)
多官能モノマー(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製)を
固形分25%まで溶剤メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン、質量比50:
50にて希釈して樹脂組成物を調製した。次いで、得られた樹脂組成物400質量部に対
し、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびOm
nirad819の質量比50:50)4質量部と、インドール化合物(オリヱント化学
工業株式会社製 製品名「BONASORB UA-3912」)を3質量部、レベリン
グ剤(製品名「F568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを混ぜ合わせ、よく攪拌
することで、分光透過率調整層用組成物3を調製した。
【0206】
(光学フィルムの製造)
得られた分光透過率調整層用組成物3を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、ト
リアセチルセルロース基材上に膜厚5μmの分光透過率調整層(SA層)のみからなる光
透過性機能層を備える光学フィルムを得た。
【0207】
<比較例3>
(分光透過率調整層用組成物4の調製)
多官能モノマー(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製)を
固形分25%まで溶剤メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン、質量比50:
50にて希釈して樹脂組成物を調製した。次いで、得られた樹脂組成物400質量部に対
し、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびOm
nirad819の質量比50:50)4質量部と、ベンゾトリアゾール化合物(製品名
「JF-79」、城北化学株式会社製)7質量部、レベリング剤(製品名「F568」
、DIC株式会社製)0.2質量部とを混ぜ合わせ、よく攪拌することで、分光透過率調
整層用組成物4を調製した。
【0208】
(光学フィルムの製造)
得られた分光透過率調整層用組成物4を、ミヤバーにて大きさが210mm×297m
m(A4サイズ)および厚みが25μmのトリアセチルセルロース基材の表面に塗布して
、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥
空気を30秒間流通させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が20
0mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚が8μmの分光
透過率調整層を形成した。これにより、トリアセチルセルロース基材上に膜厚8μmの分
光透過率調整層(SA層)のみからなる光透過性機能層を備える光学フィルムを得た。
【0209】
<分光透過率>
実施例および比較例に係る光学フィルムにおいて、波長380nm、410nm、42
0nmおよび440nmにおける分光透過率を測定した。具体的には、50mm×50m
mの大きさに切り出した光学フィルムを、透過率を0.5%刻みにて測定可能の分光光度
計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよ
び重水素ランプ)内に光学フィルムの基材側が光源側となるように配置した。上記光学フ
ィルムは、欠点(異物の混入)がなく、クラックがなく、皺がなく、汚れがないものであ
り、また、カールのない平坦な状態で分光光度計に保持された。この状態で、以下の測定
条件で、波長380nm、410nm、420nmおよび440nmにおいてそれぞれ前
後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定し、その平均値を算出することによって
波長380nm、410nm、420nmおよび440nmにおける分光透過率を求めた
。波長380nm、410nm、420nmおよび440nmにおける分光透過率は、3
回測定して得られた値の算術平均値とした。なお、図10に、実施例1~5および比較例
1~3に係る分光透過率のグラフを示した。
(測定条件)
・波長域:300nm~780nm
・スキャン速度:高速
・スリット幅:2.0
・サンプリング間隔:オート(0.5nm間隔)
・照明:C
・光源:D2およびWI
・視野:2°
・光源切替波長:360nmm
・S/R切替:標準
・検出器:PM
・オートゼロ:ベースラインのスキャン後550nmにて実施
【0210】
<ブルーライトカット(遮蔽)率>
実施例および比較例に係る光学フィルムのブルーライトカット率(BLカット率)を測
定した。具体的には、まず、JIS T7333:2005に準拠して、50mm×50
mmの大きさに切り出した光学フィルムを、透過率を0.5%刻みにて測定可能の分光光
度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプお
よび重水素ランプ)内に光学フィルムの基材側が光源側となるように配置した。光学フィ
ルムは、欠点(異物の混入)がなく、クラックがなく、皺がなく、汚れがないものであり
、また、カールのない平坦な状態で分光光度計に保持された。この状態で、波長380n
m~495nmにおいてそれぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定し、
その平均値を算出することによって波長380nm~495nmの分光透過率を求めた。
そして、ブルーライトカット率(%)をAとし、380nm~495nmの透過率の平均
値(%)をBとして、ブルーカット率を下記式によって求めた。なお、ブルーライトカッ
ト率は、3回測定して得られた値の算術平均値とした。また、分光透過率の測定条件は、
上記波長380nm、410nm、および440nmにおける分光透過率の測定条件と同
様とした。
A=100-B
【0211】
<イエローインデックス(YI)、色座標aおよび色座標b
実施例および比較例に係る光学フィルムのイエローインデックス、色座標aおよび色
座標bを測定した。具体的には、まず、50mm×50mmの大きさに切り出した光学
フィルムを、分光光度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タ
ングステンランプおよび重水素ランプ)内に光学フィルムの基材側が光源側となるように
配置した。光学フィルムは、欠点(異物の混入)がなく、クラックがなく、皺がなく、汚
れがないものであり、また、カールのない平坦な状態で分光光度計に保持された。この状
態で、波長300nm~780nmの透過率を測定した。そして、UV-2450に接続
されたモニター上で、上記透過率の測定データを読み込み、計算項目にて「YI」、「a
」および「b」にチェックを入れることによってYI、aおよびbを得た。波長
300nm~780nmの透過率の測定条件は、上記波長380nm、410nm、およ
び440nmにおける分光透過率の測定条件と同様とした。
【0212】
<波長410nm~420nmにおける分光透過率の傾き>
実施例および比較例に係る光学フィルムにおいて、波長410nm~420nmにおけ
る分光透過率の傾きを求めた。具体的には、50mm×50mmの大きさに切り出した光
学フィルムを、透過率を0.5%刻みにて測定可能の分光光度計(製品名「UV-245
0」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に光学
フィルムの基材側が光源側となるように配置した。光学フィルムは、欠点(異物の混入)
がなく、クラックがなく、皺がなく、汚れがないものであり、また、カールのない平坦な
状態で分光光度計に保持された。この状態で、波長410nm~420nmにおいてそれ
ぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定し、その平均値を算出することに
よって波長410nm~420nmの分光透過率をそれぞれ求めた。次いで、得られた分
光透過率を用いて、最小二乗法によって波長410nm~420nmの分光透過率の傾き
を求めた。この傾きは、3回測定して得られた値の算術平均値とした。また、分光透過率
の測定条件は、上記波長380nm、410nm、および440nmにおける分光透過率
の測定条件と同様とした。
【0213】
<インデンテーション硬さ>
実施例および比較例に係る光学フィルムにおける分光透過率調整層のインデンテーショ
ン硬さをそれぞれ測定した。インデンテーション硬さは、HYSITRON(ハイジトロ
ン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて、測定した。具体的に
は、まず、1mm×10mmに切り出した光学フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロ
ックを作製し、ナノインデンテーション法での硬度測定に適した測定用サンプルを作製し
た。測定用サンプルの作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイ
クロシステムズ株式会社)を用いた。次いで、このような測定サンプルの断面を走査型電
子顕微鏡(SEM)で観察して、分光透過率調整層とオーバーコート層との界面ラインが
明確に観察されるか否か確認した。その後、測定サンプルの圧子を押し込む面がステージ
の載置面と平行となるように測定サンプルをHYSITRON(ハイジトロン)社製のT
I950 TriboIndenterのステージに固定した。そして、SEMによる観
察で、分光透過率調整層とオーバーコート層との界面ラインが明確に観察された場合には
、分光透過率調整層の中央の平坦な部分に、また分光透過率調整層とオーバーコート層と
の界面ラインが明確に観察されなかった場合には、光透過性機能層の中央の平坦な部分に
、荷重制御方式で、最大押し込み荷重が300μNとなるように、バーコビッチ型圧子を
10nm/sの速度で測定位置に押し込み、その後、最大荷重で5秒間保持した後に同速
度で除荷をした。そして、このときの押し込み荷重F(μN)に対応する押し込み深さh
(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成し、作成された荷重-変位曲線から、
最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と分光透過率調整層が接している投影面積A
(mm)で除した値により求めた。上記Aは装置標準の方法で圧子先端曲率を補正し
た接触投影面積とした。なお、インデンテーション硬さは、10箇所測定して得られた値
の算術平均値とした。
【0214】
<屈曲性>
実施例および比較例において、JIS K5600-5-1:1999に準拠して、マ
ンドレル試験を行い、屈曲性を評価した。具体的には、100mm×25mmの大きさに
切り出した光学フィルムを直径2mmのステンレス棒に光透過性機能層が外側となり、か
つ光学フィルムの長辺方向の両端部が対向するように巻き付けた。この状態で、5秒間保
持した後、光学フィルムを開放し、ステンレス棒に接していた光学フィルムの短辺方向に
クラック(ひび)が発生しているかを確認した。また、光透過性機能層が内側となるよう
に上記同様の条件でマンドレル試験を行い、ステンレス棒に接していた光学フィルムの短
辺方向にクラックが発生しているかを確認した。評価結果は、以下の通りとした。
○:いずれのマンドレル試験においても、光学フィルムにクラックが確認されなかった

×:いずれかのマンドレル試験において、光学フィルムにクラックが確認された。
【0215】
<表示パネル劣化評価>
実施例および比較例に係る光学フィルムを有機発光ダイオードパネル(OLEDパネル
)上に配置したサンプルにおいて耐光性試験を行い、OLEDパネルが劣化するか否かを
評価した。具体的には、サンプルは、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィ
ルムと、スマートフォン(製品名「Galaxy S7」、Samsung Elect
ronics Co., Ltd.製)が下側となるようにOLEDパネル上に配置するこ
とによって作製された。そして、このサンプルのOLEDパネルを発光させて、光学フィ
ルムから出射する光の輝度を、光学フィルムの厚み方向から、分光放射輝度計(製品名「
CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。その
後、このサンプルを耐光性試験機(製品名「紫外線フェードメータU48AU」、スガ試
験機株式会社製)内に配置して、42℃、相対湿度50%の環境下でカーボンアークラン
プからの光を光学フィルムの表面側から50時間照射する耐光性試験を行った。そして、
耐光性試験機からサンプルを取り出し、耐光性試験後のサンプルのOLEDパネルを発光
させて、光学フィルムから出射する光の輝度を、光学フィルムの厚み方向から、分光放射
輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で
、測定した。測定したこれらの輝度から、耐熱性試験前の輝度に対する耐熱性試験後の輝
度の維持率を求めた。輝度維持率は、輝度維持率をAとし、耐熱性試験前のサンプルから
出射する光の輝度をBとし、耐熱性試験後のサンプルから出射する光の輝度をCとし、下
記式によって求めた。
A=C/B×100
そして、得られた輝度維持率から耐光性試験によってOLEDパネルが劣化したか否か
を確認した。具体的には、輝度維持率が80%未満である場合には、OLEDパネルが劣
化した評価し、輝度維持率が80%以上である場合には、OLEDパネルが劣化していな
いと評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:OLEDパネルの劣化が確認されなかった。
×:OLEDパネルの劣化が確認された。
【0216】
以下、結果を表1および表2に示す。
【表1】
【0217】
【表2】
【0218】
表1に示されたように、比較例1~3に係る光学フィルムにおいては、波長380nm
における分光透過率が1%未満であり、波長410nmにおける分光透過率が10%以上
60%未満であり、かつ波長440nmにおける分光透過率が70%以上であるという要
件を満たしていなかったので、薄型であったとしても、ブルーライトカット(遮蔽)率に
劣り、および/または光学フィルムの黄色味が抑制されていなかった。なお、YIはカッ
トする波長の範囲によって影響を受けるため、添加する分光透過率調整剤の種類や比率を
変えることである程度の調整が可能である。このため、比較例1、3に係る光学フィルム
においては、YIは低かったが、410nmの分光透過率が高く、ブルーライトカット率
に劣っていた。また、YIの低減のためには、可視光域にて分光曲線がシャープな立ち上
がり(波長410nm~420の分光透過率の傾きが高い値)となることが好ましいが、
比較例2に係る光学フィルムにおいては、波長410nm~420nmにおける分光透過
率の傾きが小さいため、YIが高かったものと考えられる。
【0219】
これに対し、実施例1~5に係る光学フィルムにおいては、波長380nmにおける分
光透過率が1%未満であり、波長410nmにおける分光透過率が10%以上60%未満
であり、かつ波長440nmにおける分光透過率が70%以上であるという要件を満たし
ていたので、薄型でありながら、ブルーライトカット(遮蔽)率に優れ、かつ光学フィル
ムの黄色味が抑制されていた。
【符号の説明】
【0220】
10、20、30、40、50…光学フィルム
11…光透過性基材
12、21、31、41、51…光透過性機能層
13、32、42、52…分光透過率調整層
14…オーバーコート層
33…蒸着層
43…不可視化層
43A…高屈折率層
43B…低屈折率層
50…偏光板
51…偏光子
60…画像表示装置
70…表示パネル
71…表示素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10