IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特開2023-159194ポリエステルフィルム、および該ポリエステルフィルムを含む偏光板
<>
  • 特開-ポリエステルフィルム、および該ポリエステルフィルムを含む偏光板 図1
  • 特開-ポリエステルフィルム、および該ポリエステルフィルムを含む偏光板 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159194
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム、および該ポリエステルフィルムを含む偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231024BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20231024BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G02B5/30
B29C55/12
C08J5/18 CFD
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129044
(22)【出願日】2023-08-08
(62)【分割の表示】P 2020569393の分割
【原出願日】2019-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2019016236
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】東 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 享
(72)【発明者】
【氏名】吉川 貴博
(72)【発明者】
【氏名】北岸 一志
(72)【発明者】
【氏名】池田 哲朗
(57)【要約】      (修正有)
【課題】画像表示装置に適用した際の虹ムラの発生が少なく、かつ、偏光板の耐久性向上に寄与し得るポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムは、第1の方向における線膨張係数が、3.5×10-5/℃以下であり、該第1の方向に直交する第2の方向における線膨張係数が、3.5×10-5/℃以下であり、該第1の方向に対して、-5°~5°の方向に遅相軸を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向における線膨張係数が、3.5×10-5/℃以下であり、
該第1の方向に直交する第2の方向における線膨張係数が、3.5×10-5/℃以下であり、
該第1の方向に対して、-5°~5°の方向に遅相軸を有する、
ポリエステルフィルム。
【請求項2】
DSC測定による結晶化度が、30%以上である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
偏光子と、偏光子の一方の側に配置された請求項1または2に記載のポリエステルフィルムとを備える、偏光板。
【請求項4】
前記偏光子の厚みが、20μm以下である、請求項3に記載の偏光板。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムの前記偏光子側に配置された易接着層をさらに含む、請求項3または4のいずれかに記載の偏光板。
【請求項6】
前記易接着層が、微粒子を含む、請求項5に記載の偏光板。
【請求項7】
前記易接着層の厚みが、0.35μm以下である、請求項5または6に記載の偏光板。
【請求項8】
前記易接着層の屈折率が、1.55以下である、請求項5から7のいずれかに記載の偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルム、および該ポリエステルフィルムを含む偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置(例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置)には、その画像形成方式に起因して、多くの場合、表示セルの少なくとも一方の側に偏光板が配置されている。近年、画像表示装置は、機能、用途がさらに多様化する傾向にあり、より過酷な環境での使用に耐え得ることが求められている。偏光板は一般に偏光子を2枚の保護フィルムで挟持する構成を有しており、保護フィルムとしてはトリアセチルセルロース、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が広く用いられている。一方、上記のような耐久性の観点から、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)のように機械特性や耐薬品性、水分遮断性に優れたポリエステルフィルムを偏光子保護フィルムとして用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、ポリエステルフィルムは、機械的特性に優れる反面、複屈折を有していることから、虹ムラ発生などの視認性悪化の原因となることがある。特に、近年の画像表示装置の高輝度化および高色純度化に伴い、このような虹ムラの問題は顕著となる。
【0003】
一方、従来より多用されているトリアセチルセルロース、アクリル系樹脂またはシクロオレフィン系樹脂から形成される保護フィルムを用いて構成された偏光板は、温度変化に起因して、偏光子にクラックが生じることがある。近年、画像表示装置の薄型化に伴い偏光子の薄膜化が求められる一方で、高温下での使用が想定される画像表示装置が増加するなか、偏光子にクラックが生じず耐久性に優れる偏光板が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-271733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、画像表示装置に適用した際の虹ムラの発生が少なく、かつ、偏光板の耐久性向上に寄与し得るポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリエステルフィルムは、第1の方向における線膨張係数が、3.5×10-5/℃以下であり、該第1の方向に直交する第2の方向における線膨張係数が、3.5×10-5/℃以下であり、該第1の方向に対して、-5°~5°の方向に遅相軸を有する。
1つの実施形態においては、上記ポリエステルフィルムは、DSC測定による結晶化度が、30%以上である。
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。この偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の側に配置された上記ポリエステルフィルムとを備える。
1つの実施形態においては、上記偏光子の厚みが、20μm以下である。
1つの実施形態においては、上記偏光板は、上記ポリエステルフィルムの上記偏光子側に配置された易接着層をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記易接着層が、微粒子を含む。
1つの実施形態においては、上記易接着層の厚みが、0.35μm以下である。
1つの実施形態においては、上記易接着層の屈折率が、1.55以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所定方向の線膨張係数を選択的に小さくすることにより、偏光子と組み合わせた際の虹ムラの発生が少なく、かつ、偏光板の耐久性向上に寄与し得るポリエステルフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態による偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
A.ポリエステルフィルム
本発明のポリエステルフィルムは、第1の方向における線膨張係数が、3.5×10-5/℃以下であり、該第1の方向に直交する第2の方向における線膨張係数が、3.5×10-5/℃以下である。このような線膨張係数を備えるポリエステルフィルムを用いれば、偏光子に積層して当該偏光子を有効に保護しつつ、当該偏光子のクラック発生を防止することができる。より詳細には、本発明のポリエステルフィルムを偏光子保護フィルムとして偏光子に積層して偏光板を構成すれば、偏光子の寸法変化(例えば、熱による寸法変化)を上記ポリエステルフィルムにより抑制することができる。その結果、本発明のポリエステルフィルムを用いれば、高温、温度変化の大きい等の過酷な環境下においても、偏光子のクラック発生を防止して、耐久性に優れる偏光板を得ることができる。1つの実施形態においては、上記第1の方向は、ポリエステルフィルムを製造する際の搬送方向(MD)に相当する。また、上記第2の方向はMDに直交するTDに相当し得る。線膨張係数は、JIS K 7197に準じたTMA測定により決定され得る。なお、「略平行」という表現は、2つの方向のなす角度が0°±10°である場合を包含し、好ましくは0°±7°であり、さらに好ましくは0°±5°である。
【0011】
本発明のポリエステルフィルムは、上記第1の方向に対して、-5°~5°方向に遅相軸を有する。このような範囲であれば、偏光子と組み合わせた際の虹ムラの発生が少ないポリエステルフィルムとすることができる。より詳細には、上記のように、偏光子の吸収軸と第1の方向とを略平行となるように偏光子とポリエステルフィルムとを積層して偏光板を構成した場合に、虹ムラを有効に防止することができる。
【0012】
上記第1の方向と、遅相軸とのなす角度は、好ましくは-3°~3°であり、より好ましくは-1°~1°であり、特に好ましくは-0.5°~0.5°であり、最も好ましくは0°である。このような範囲であれば、上記効果はより顕著となる。
【0013】
上記ポリエステルフィルムの第1の方向における線膨張係数は、好ましくは3.0×10-5/℃以下であり、より好ましくは2.5×10-5/℃以下であり、さらに好ましくは1.5×10-5/℃以下であり、特に好ましくは1.3×10-5/℃以下である。このような範囲であれば、上記効果はより顕著となる。上記ポリエステルフィルムの第1の方向における線膨張係数は、小さいほど好ましいが、その下限は例えば、0.3×10-5/℃(好ましくは0.1×10-5/℃、より好ましくは0×10-5/℃)である。
【0014】
上記ポリエステルフィルムの第2の方向における線膨張係数は、好ましくは3.4×10-5/℃以下であり、より好ましくは2.3×10-5/℃以下である。このような範囲であれば、上記効果はより顕著となる。上記ポリエステルフィルムの第1の方向における線膨張係数は、小さいほど好ましいが、その下限は例えば、1×10-5/℃(好ましくは0.5×10-5/℃、より好ましくは0.3×10-5/℃)である。
【0015】
代表的には、上記ポリエステルフィルムは、延伸工程を経て得られた延伸フィルムであり得る。当該延伸工程における製造条件を適切に調整することにより、および第1の方向および第2の方向における線膨張係数(ならびに、後述の面内位相差Re(590))を良好に制御することができ、その結果、上記のとおり虹ムラおよび耐久性の観点から偏光子保護フィルムとして優れた特性を有するポリエステルフィルムを得ることができる。上記製造条件としては、延伸条件(延伸温度、延伸倍率、延伸速度、MD/TD延伸順序)、延伸前の予熱温度、延伸後の熱処理温度、延伸後の熱処理時間、延伸後のMD/TD方向の緩和率等が挙げられる。延伸温度、延伸倍率および延伸速度は、MD/TDごとに適切に調整され得る。
【0016】
ポリエステルフィルムの面内位相差Re(590)は、例えば、0nmより大きく10000nm以下である。なお、面内位相差Re(λ)は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。したがって、Re(590)は、波長590nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。ここで、nxは面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは面内で遅相軸と直交する方向の屈折率である。
【0017】
上記ポリエステルフィルムは、示差走査熱量測定(DSC)で測定される結晶化度が好ましくは30%以上であり、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。結晶化度の上限は、例えば70%である。このような範囲であれば、耐熱性および機械的特性に優れ、偏光子保護フィルムとして好適なポリエステルフィルムを得ることができる。
【0018】
上記ポリエステルフィルムの厚みは、代表的には10μm~100μmであり、好ましくは20μm~80μmであり、さらに好ましくは20μm~50μmである。
【0019】
上記ポリエステルフィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上である。上記ポリエステルフィルムのヘイズは、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.7%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.3%以下である。
【0020】
ポリエステルフィルムの透湿度は、好ましくは100g/m・24hr以下であり、より好ましくは50g/m・24hr以下であり、さらに好ましくは15g/m・24hr以下である。このような範囲であれば、耐久性および耐湿性に優れた偏光板が得られ得る。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル系樹脂から形成される。ポリエステル系樹脂は、カルボン酸成分とポリオール成分との縮合重合により得ることができる。
【0022】
カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、1,4-ナフタール酸、ジフェニン酸、4,4′-オキシ安息香酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタール酸、アゼライン酸、ゼバシン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸が挙げられる。カルボン酸成分は、エステル、塩化物、酸無水物のような誘導体であってもよく、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチルおよびテレフタル酸ジフェニルを含む。カルボン酸成分は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0023】
ポリオール成分としては、代表的には二価アルコールが挙げられる。二価アルコールとしては、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールが挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、4,4′-チオジフェノール、4,4′-メチレンジフェノール、4,4′-(2-ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4′-ジヒドロキシビフェノール、o-,m-およびp-ジヒドロキシベンゼン、4,4′-イソプロピリデンフェノール、4,4′-イソプロピリデンビス(2,6-シクロロフェノール)2,5-ナフタレンジオールおよびp-キシレンジオールが挙げられる。ポリオール成分は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記ポリエステル系樹脂としては、好ましくはポリエチレンテレフタレートおよび/または変性ポリエチレンテレフタレートが用いられ、より好ましくはポリエチレンテレフタレートが用いられる。これらの樹脂を用いれば、機械的特性に優れ、虹ムラの発生が少ない、ポリエステルフィルムを得ることができる。ポリエチレンテレフタレートと変性ポリエチレンテレフタレートとはブレンドして用いてもよい。
【0025】
変性ポリエチレンテレフタレートとしては、例えば、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオールまたはイソフタル酸由来の構成単位を含む変性ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリオール成分におけるジエチレングリコールの割合は、好ましくは0モル%を超えて10モル%以下であり、より好ましくは0モル%を超えて3モル%以下である。ポリオール成分における1,4-ブタンジオールの割合は、好ましくは0モル%を超えて10モル%以下であり、より好ましくは0モル%を超えて3モル%以下である。ポリオール成分における1,3-プロパンジオールの割合は、好ましくは0モル%を超えて10モル%以下であり、より好ましくは0モル%を超えて3モル%以下である。カルボン酸成分におけるイソフタル酸の割合は、好ましくは0モル%を超えて10モル%以下であり、より好ましくは0モル%を超えて8モル%以下である。このような範囲であれば、良好な結晶性を有するポリエステルフィルムを得ることができる。なお、上記に記載のモル%は、ポリマー全繰り返し単位の合計に対するモル%である。
【0026】
ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10000~100000であり、より好ましくは20000~75000である。このような重量平均分子量であれば、成形時の取り扱いが容易であり、かつ、優れた機械的強度を有するフィルムが得られ得る。重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)により測定され得る。
【0027】
1つの実施形態においては、易接着層付ポリエステルフィルムが提供される。易接着層は、例えば、水系ポリウレタンとオキサゾリン系架橋剤とを含む。易接着層の詳細は、例えば特開2010-55062号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0028】
1つの実施形態においては、上記易接着層は、任意の適切な微粒子を含む。微粒子を含む易接着層を形成することにより、巻き取り時に生じるブロッキングを効果的に抑制することができる。上記微粒子は、無機系微粒子であってもよく、有機系微粒子であってもよい。無機系微粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。有機系微粒子としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、シリカである。
【0029】
上記微粒子の粒子径(数平均一次粒子径)は、好ましくは10nm~200nm、さらに好ましくは20nm~60nmである。
【0030】
上記易接着層の厚みは、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.35μm以下である。このような範囲であれば、画像表示装置に適用した際に他部材の光学特性を阻害し難い易接着層付ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0031】
1つの実施形態においては、上記易接着層の屈折率は、好ましくは1.45~1.60である。このような範囲であれば、画像表示装置に適用した際に他部材の光学特性を阻害し難い易接着層付ポリエステルフィルムを得ることができる。1つの実施形態においては、上記易接着層の屈折率は、1.54以上である。
【0032】
1つの実施形態においては、上記ポリエステルフィルムは、その少なくとも一方の側に、アンチブロック層を備え得る。アンチブロック層の構成は、上記で説明した易接着層の構成が採用され得る。好ましくは、アンチブロック層は、上記微粒子を含む。
【0033】
(ポリエステルフィルムの製造方法)
上記ポリエステルフィルムは、上記ポリエステル系樹脂を含むフィルム形成材料(樹脂組成物)をフィルム状に成形する成形工程、および、該成形されたフィルムを延伸する延伸工程を経て得られ得る。好ましくは、延伸工程は、フィルム延伸の前に行われるフィルムの予熱処理、およびフィルム延伸の後に行われる熱処理を含む。1つの実施形態においては、ポリエステルフィルムは長尺状(または長尺体から切り出した形状)で提供される。
【0034】
フィルム形成材料は、上記ポリエステル系樹脂に加えて、添加剤を含んでいてもよく、溶媒を含んでいてもよい。添加剤としては、目的に応じて任意の適切な添加剤が採用され得る。添加剤の具体例としては、反応性希釈剤、可塑剤、界面活性剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤、導電材、難燃剤が挙げられる。添加剤の数、種類、組み合わせ、添加量等は目的に応じて適切に設定され得る。
【0035】
フィルム形成材料からフィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等が挙げられる。押出成形法またはキャスト塗工法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。
【0036】
フィルムの延伸方法は、一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよい。
【0037】
1つの実施形態においては、上記フィルムの延伸方法として、一軸延伸が採用され、上記フィルムの長さ方向(MD)に延伸される。
【0038】
二軸延伸は、逐次二軸延伸であってもよく、同時二軸延伸であってもよい。逐次二軸延伸または同時二軸延伸は、代表的にはテンター延伸機を用いて行われる。したがって、フィルムの延伸方向は、代表的にはフィルムの長さ方向(MD)および幅方向(TD)である。
【0039】
1つの実施形態においては、上記フィルムの延伸方法として、逐次二軸延伸が採用される。TD延伸の後、MD延伸を行って、上記ポリエステルフィルムを得ることが好ましい。このようにすれば、TD延伸の際に生じるボーイングの影響を緩和して、ポリエステルフィルムにおける第1の方向(MD)と、遅相軸とのなす角度を適切な値とすることが可能となる。
【0040】
延伸温度は、フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、好ましくはTg+5℃~Tg+50℃であり、より好ましくはTg+5℃~Tg+30℃であり、さらに好ましくはTg+6℃~Tg+10℃である。このような温度で延伸することにより、遅相軸の方向および線膨張係数がバランスよく制御されたポリエステルフィルムを得ることができる。また、透明性に優れるポリエステルフィルムを得ることができる。
【0041】
MDにおける延伸倍率は、好ましくは1倍~7倍であり、より好ましくは2.5倍~6.5倍であり、さらに好ましくは3倍~6倍である。このような範囲であれば、線膨張係数を所望の範囲に収めつつ、良好な結晶性を有し耐久性に優れるポリエステルフィルムを得ることができる。
【0042】
TDにおける延伸倍率は、好ましくは1倍~7倍であり、より好ましくは1.2倍~4倍であり、さらに好ましくは1.5倍~3.5倍である。このような範囲であれば、線膨張係数を所望の範囲に収めつつ、良好な結晶性を有し耐久性に優れるポリエステルフィルムを得ることができる。
【0043】
TDにおける延伸倍率とMDにおける延伸倍率との比(MD延伸倍率/TD延伸倍率)は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~2である。このような範囲であれば、虹ムラの発生が特に少ないポリエステルフィルムを得ることができる。また、得られたポリエステルフィルムを用いれば、偏光子のクラック発生を防止して、耐久性に優れる偏光板を得ることができる。
【0044】
MDにおける延伸速度は、好ましくは5%/sec~100%/secであり、より好ましくは8%/sec~80%/secであり、さらに好ましくは8%/sec~60%/secである。このような範囲であれば、光学特性に優れ、かつ、良好な結晶性を有し耐久性に優れるポリエステルフィルムを得ることができる。
【0045】
TDにおける延伸速度は、好ましくは5%/sec~100%/secであり、より好ましくは8%/sec~80%/secであり、さらに好ましくは8%/sec~60%/secである。このような範囲であれば、光学特性に優れ、かつ、良好な結晶性を有し耐久性に優れるポリエステルフィルムを得ることができる。
【0046】
予熱処理の温度は、好ましくは80℃~150℃であり、より好ましくは90℃~130℃である。また、予熱処理の時間は、好ましくは10秒~100秒であり、より好ましくは15秒~80秒である。このような範囲であれば、光学特性に優れ、かつ、良好な結晶性を有し耐久性に優れるポリエステルフィルムを得ることができる。
【0047】
熱処理の温度は、好ましくは100℃~250℃であり、より好ましくは120℃~200℃であり、さらに好ましくは130℃~180℃である。このような範囲であれば、透明性に優れ、かつ、良好な結晶性を有し耐久性に優れるポリエステルフィルムを得ることができる。熱処理の時間は、好ましくは2秒~50秒であり、より好ましくは5秒~40秒であり、さらに好ましくは8秒~30秒である。このような範囲であれば、透明性に優れ、かつ、良好な結晶性を有し耐久性に優れるポリエステルフィルムを得ることができる。
【0048】
B.偏光板
図1は、本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。偏光板100は、偏光子10と、偏光子10の一方の側に配置されたポリエステルフィルム20とを備える。ポリエステルフィルム20としては、上記A項で説明した本発明のポリエステルフィルムが用いられる。偏光子の他方の側には任意の適切な別の偏光子保護フィルムが配置されてもよく、偏光子保護フィルムは配置されなくてもよい。1つの実施形態においては、偏光子10とポリエステルフィルム20(または別の偏光子保護フィルム)は、接着剤層30を介して積層される。
【0049】
1つの実施形態においては、上記偏光板は、上記ポリエステルフィルムが配置された側が視認側となるように画像表示装置に適用され得る。また、上記偏光板を液晶表示装置に適用する場合、ポリエステルフィルムを備える偏光板は、液晶セルの視認側に配置されてもよく、背面側に配置されてもよい。
【0050】
偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0051】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0052】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0053】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0054】
偏光子の厚みは、例えば1μm~80μmである。1つの実施形態においては、偏光子の厚みは、好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは3μm~15μmである。本発明のポリエステルフィルムを用いれば、偏光子のクラックを効果的に防止することができるため、高温、温度変化の大きい等の過酷な環境下においても、薄い偏光子を用いることが可能となる。
【0055】
偏光子と偏光子保護フィルム(ポリエステルフィルム)は、任意の適切な接着剤層を介して積層され得る。好ましくは、接着剤層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤組成物から形成される。
【0056】
偏光子の吸収軸方向と、ポリエステルフィルムの第1の方向(代表的にはMD)または第2の方向(代表的にはTD)とは略平行であることが好ましく、第1の方向(代表的にはMD)とは略平行であることがより好ましい。このように構成すれば、当該ポリエステルフィルムと偏光子とが同調して好ましく形状変化することができる。その結果、偏光子のクラックが防止される。
【0057】
ポリエステルフィルムの遅相軸角度は、偏光子の吸収軸方向となす角度が一致するほど好ましく、2つの軸のなす角度が好ましくは0°±10°であり、より好ましくは0°±7°であり、さらに好ましくは0°±5°である。このような範囲であれば、画像表示装置に適用した際の虹ムラの発生が少ない、ポリエステルフィルムを得ることができる。なお、遅相軸角度はロール流れ方向を0°としたときの角度である。
【0058】
上記偏光板において、ポリエステルフィルムの第1の方向における線膨張係数と、偏光子の当該第1の方向と平行な方向における線膨張係数との差の絶対値は、好ましくは2.0×10-5/℃以下であり、より好ましくは1.5×10-5/℃以下であり、さらに好ましくは1.0×10-5/℃以下である。このような範囲であれば、高温、温度変化が大きい等の過酷な環境下においても、偏光子のクラックを防止することができる。ポリエステルフィルムの第1の方向における線膨張係数と、偏光子の当該第1の方向と平行な方向における線膨張係数との差の絶対値の下限は、小さいほど好ましいが、例えば0.1×10-5/℃であり得る。
【0059】
上記偏光板において、ポリエステルフィルムの第2の方向(第1の方向に直交する方向)における線膨張係数と、偏光子の当該第2の方向と平行な方向における線膨張係数との差の絶対値は、好ましくは2.0×10-5/℃以下であり、より好ましくは1.5×10-5/℃以下であり、さらに好ましくは1.0×10-5/℃以下である。このような範囲であれば、高温、温度変化が大きい等の過酷な環境下においても、偏光子のクラックを防止することができる。ポリエステルフィルムの第2の方向における線膨張係数と、偏光子の当該第2の方向と平行な方向における線膨張係数との差の絶対値の下限は、小さいほど好ましいが、例えば0.1×10-5/℃であり得る。
【0060】
1つの実施形態においては、ポリエステルフィルムの第1の方向における線膨張係数と、偏光子の当該第1の方向と平行な方向における線膨張係数との差の絶対値、および、ポリエステルフィルムの第2の方向(第1の方向に直交する方向)における線膨張係数と、偏光子の当該第2の方向と平行な方向における線膨張係数との差の絶対値がともに、2.0×10-5/℃以下(好ましくは1.0×10-5/℃以下)である。このような範囲であれば、高温、温度変化の大きい等の過酷な環境下においても、偏光子のクラックを防止することができる。
【0061】
図2は、本発明の別の実施形態による偏光板の概略断面図である。偏光板200は、ポリエステルフィルム20の偏光子10側に配置された易接着層40をさらに備える。1つの実施形態においては、易接着層40が偏光子10の側となるようにして、易接着層付ポリエステルフィルムAが、偏光子10上に配置される。易接着層としては、上記A項に記載の易接着層が採用され得る。
【0062】
C.画像表示装置
上記偏光板は、画像表示装置に適用され得る。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置が挙げられる。画像表示装置は業界で周知の構成が採用されるので、詳細な説明は省略する。
【実施例0063】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0064】
(1)配向角(遅相軸の発現方向)
実施例および比較例で得られたポリエステルフィルムの中央部を、一辺が当該フィルムの幅方向と平行となるようにして幅50mm、長さ50mmの正方形状に切り出して試料を作成した。この試料を、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製 製品名「Axoscan」)を用いて測定し、波長550nm、23℃における配向角θを測定した。なお、配向角θは測定台に試料を平行に置いた状態で測定した。
(2)線膨張係数
ポリエステルフィルムおよび偏光子の線膨張係数を、JIS K 7197 に基づいて、日立ハイテクサイエンス社製の熱機械分析装置「TMA7000」を用い、30℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温して、試験フィルムの各温度における変形量を測定した。そして、30℃~70℃の温度範囲における変形量から、当該フィルムの線膨張係数を求めた。なお、温度上昇に伴ってフィルム寸法が大きくなる(膨張する)場合を正(プラス)とし、温度上昇に伴ってフィルム寸法が小さくなる(収縮する)場合を負(マイナス)とした。
ポリエステルフィルムについてはMD(第1の方向)、TD(第2の方向)の線膨張係数を測定した。偏光子は、偏光板において当該MDに平行な方向および当該TDに平行な方向の線膨張係数を測定した。
(3)結晶化度
示差走査熱量測定(DSC)にて実施例および比較例で用いたポリエステルフィルムの結晶化度を測定した。試料を300℃まで10℃/分で昇温させた昇温中に観測される発熱量および融解熱量を求め、下記式により結晶化度を求めた。なお、発熱量および融解熱量の測定は、TA instruments社製Q-2000を使用して行った。
結晶化度(%)=(測定で得られた融解熱量-測定で得られた発熱量)/結晶化度100%ポリエチレンテレフタレートの融解熱量(119mJ/mg)×100
(4)虹ムラ
LGD社製の液晶TV「45UH7500」から液晶セルを取り出し、バックライト側の偏光板をはがした。当該液晶TVの偏光板をはがした面に、実施例および比較例で得られた偏光板を、粘着剤を介して、偏光子の吸収軸が液晶TVの短辺側になるように貼り合せた。実施例および比較例で得られた偏光板が張り合わされた液晶セルを再度設置し、TVを白表示で点灯させた。
点灯させた液晶TVの、極角60°の角度で、全方位目視確認し、虹ムラの有無を観察した。以下の基準で評価した。
○:虹ムラは認められなかった
△:虹ムラがわずかに認められた
×:虹ムラが顕著に認められた
(5)寸法変化
実施例および比較例で用いたポリエステルフィルムを100mm×100mmに裁断した。その後、100℃の加熱オーブンに24時間入れた後、フィルムを取り出し、再度正確に寸法を測定し、金尺で寸法を確認し、寸法の変化を求めた。また目視でサンプルの状態を確認し、以下の基準で評価した。
○:1mm以上の顕著な収縮がない
×:1mm以上の収縮がある、もしくは変形有り
(6)クラック試験(ヒートショック加速試験)
実施例および比較例で得られた偏光板について、冷熱衝撃試験機(ESPEC製)を用いて、評価を行った。
実施例及び比較例で得られた偏光板を、横50mm×縦150mmに裁断した。その際、偏光子の吸収軸方向が裁断後の偏光板の横方向(短辺)と平行となるサンプルと、偏光子の透過軸方向が裁断後の偏光板の横方向(短辺)と平行となるサンプルとを作製した。偏光板の保護フィルム(ポリエステルフィルム)が積層されていない面と、0.5mm厚の無アルカリガラスとを、アクリル系粘着剤を介して貼り合せ、サンプルを作製した。
得られたサンプルを冷熱衝撃試験機のテストエリアに入れ、室温から30分かけてテストエリア内を-40℃まで降温した。次いで、30分かけてテストエリア内を85℃まで昇温した後、30分かけて-40℃まで再度降温した。この-40℃から85℃に昇温し、再度-40℃まで降温する工程を1サイクルとして、100サイクル、200サイクル繰り返した後、積層体を取り出し、目視にてクラック発生の有無を確認し、以下の基準で評価した。
◎:300サイクル繰り返した後でも、クラックは認められなかった。
○:200サイクル繰り返した後では、クラックは認められなかったが、300サイクル繰り返した後に、クラックが発生していた。
△:100サイクル繰り返した後では、クラックは認められなかったが、200サイクル繰り返した後に、クラックが発生していた。
×:100サイクル繰り返した後に、クラックが発生していた。
【0065】
[製造例1] 偏光子Aの作製
基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.5重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させ(洗浄処理)、剥離可能な基材付き偏光子Aを得た。
【0066】
[製造例2] 偏光子Bの作製
水中延伸における延伸倍率を4.6倍としたこと以外は、製造例1と同様にして、剥離可能な基材付き偏光子Bを得た。
【0067】
[製造例3]ポリエステルフィルムAの製造
ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ベルポリエステルプロダクツ社製、イソフタル酸変性量2.5mol%(ポリマー全繰り返し単位の合計に対するmol数)、ジエチレングリコール変性量:1.0mol%(ポリマー全繰り返し単位の合計に対するmol数)、IV値0.77dl/g(フェノール:1,1,2,2,-テトラクロロエタン=6:4混合溶媒 溶液濃度0.4g/dl)を100℃で10時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東洋精機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:280℃)、Tダイ(幅500mm、設定温度:280℃)、チルロール(設定温度:50℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み200μmの非晶性ポリエステル系樹脂フィルムを作製した。
得られた非晶性ポリエステル系樹脂フィルムをブルックナー社製延伸機KAROIVにて、同時二軸延伸を行い、ポリエステルフィルムA(長さ方向に対する遅相軸角度:-0.5°、面内位相Re(590):80nm、厚み:17μm)を得た。延伸倍率は、長さ方向(MD)に4倍、幅方向(TD)に3倍とした。延伸温度は90℃、延伸速度はMD、TDともに30%/secとした。また、延伸処理後、寸法を維持したまま、180℃で10秒間熱処理を行った。
【0068】
[製造例4]ポリエステルフィルムIの製造
ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ベルポリエステルプロダクツ社製、IV値0.75dl/g(フェノール:1,1,2,2,-テトラクロロエタン=6:4混合溶媒 溶液濃度0.4g/dl)を100℃で10時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東洋精機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:280℃)、Tダイ(幅500mm、設定温度:280℃)、チルロール(設定温度:50℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み200μmの非晶性ポリエステル系樹脂フィルムを作製した。
得られた非晶性ポリエステル系樹脂フィルムブルックナー社製延伸機KAROIVにて、同時二軸延伸を行い、ポリエステルフィルムI(長さ方向に対する遅相軸角度:-2.5°、面内位相Re(590):271nm、厚み:22μm)を得た。延伸倍率は、長さ方向(MD)に3倍、幅方向(TD)に3倍とした。延伸温度は90℃、延伸速度はMD、TDともに2%/secとした。また、延伸処理後、寸法を維持したまま、140℃で10秒間熱処理を行った。
【0069】
[製造例5]ポリエステルフィルムIIの製造
延伸倍率を長さ方向(MD)に2倍、幅方向(TD)に2倍としたこと、延伸速度をMD、TDともに2%/secとしたこと、延伸処理後に140℃で10秒間熱処理したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリエステルフィルムII(長さ方向に対する遅相軸角度:-11.9°、面内位相Re(590):54nm、厚み:50μm)を得た。
【0070】
[製造例6]ポリエステルフィルムIIIの製造
延伸倍率を固定端延伸にて長さ方向(MD)に6倍、幅方向(TD)に1倍としたこと、延伸速度をMD、TDともに2%/secとしたこと、延伸処理後140℃で10秒間熱処理したこと以外は、製造例4と同様にして、ポリエステルフィルムIII(長さ方向に対する遅相軸角度:-0.6°、面内位相Re(590):2823nm、厚み:41μm)を得た。
【0071】
[製造例7]ポリエステルフィルムIVの製造
ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ベルポリエステルプロダクツ社製、イソフタル酸変性量2.5mol%(ポリマー全繰り返し単位の合計に対するmol数)、ジエチレングリコール変性量:1.0mol%(ポリマー全繰り返し単位の合計に対するmol数)、IV値0.77dl/g(フェノール:1,1,2,2,-テトラクロロエタン=6:4混合溶媒 溶液濃度0.4g/dl)を100℃で10時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東洋精機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:280℃)、Tダイ(幅500mm、設定温度:280℃)、チルロール(設定温度:50℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み100μmの非晶性ポリエステル系樹脂フィルムを作製した。
得られた非晶性ポリエステル系樹脂フィルムをブルックナー社製延伸機KAROIVにて、同時二軸延伸を行い、ポリエステルフィルムIV(長さ方向に対する遅相軸角度:-0.9°、面内位相Re(590):3191nm、厚み:38μm)を得た。延伸倍率は、固定端延伸にて長さ方向(MD)に7倍、幅方向(TD)に1倍とした。延伸温度は90℃、延伸速度はMD、TDともに10%/secとした。また、延伸処理後、寸法を維持したまま、140℃で10秒間熱処理を行った。
【0072】
[製造例8]ポリエステルフィルムVの製造
製膜厚みを50μmにしたこと、延伸を行わなかったこと以外は、製造例7と同様にして、ポリエステルフィルムV(長さ方向に対する遅相軸角度:3.0°、面内位相Re(590):17nm、厚み:50μm)を得た。
【0073】
[製造例9]ポリエステルフィルムVIの製造
ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ベルポリエステルプロダクツ社製、イソフタル酸変性量2.5mol%(ポリマー全繰り返し単位の合計に対するmol数)、IV値0.77dl/g(フェノール:1,1,2,2,-テトラクロロエタン=6:4混合溶媒 溶液濃度0.4g/dl)を100℃で10時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東洋精機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:280℃)、Tダイ(幅500mm、設定温度:280℃)、チルロール(設定温度:50℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み170μmの非晶性ポリエステル系樹脂フィルムを作製した。
このフィルムを、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した。
次いで、液温30℃の水に120秒間浸漬させた後、液温73℃の水中に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
得られた延伸フィルムをブルックナー社製延伸機KAROIVにて、90℃で10秒間熱処理を行い、ポリエステルフィルムVI(長さ方向に対する遅相軸角度:-0.2°、面内位相Re(590):3243nm、厚み:35μm)を得た。
【0074】
[製造例10]ポリエステルフィルムVIIの製造
製造例9と同様にして延伸フィルムを得た。
得られた延伸フィルムをブルックナー社製延伸機KAROIVにて、90℃で10秒間、さらに140℃で10秒間熱処理を行い、ポリエステルフィルムVII(長さ方向に対する遅相軸角度:-0.4°、面内位相Re(590):4052nm、厚み:35μm)を得た。
【0075】
[実施例1]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAにコロナ処理を行い、第一工業製薬社製の商品名「スーパーフレックス210R」15.2wt%と、日本触媒社製の商品名「WS-700」2.7wt%を溶解させた水溶液を乾燥後膜厚が300μmになるように塗工し、80℃で1分間乾燥させた易接着層付ポリエステルフィルムAを得た。
製造例1で得た基材付き偏光子の偏光子表面に、PVA系樹脂水溶液(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z-200」、樹脂濃度:3重量%)を塗布して、上記易接着層付ポリエステルフィルムを貼り合わせた。得られた積層体を60℃に維持したオーブンで5分間加熱した。その後、基材をPVA系樹脂層から剥離し、偏光板(偏光子(透過率42.3%、厚み5μm)/保護フィルム(ポリエステルフィルム))を得た。なお、ポリエステルフィルムAと偏光子とは、ポリエステルフィルムAのMD方向と偏光子の吸収軸方向とが略平行となるようにして積層した。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例2]
製造例1で得た基材付き偏光子に代えて、製造例2で得た偏光子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例1]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAに代えて、製造例4で製造したポリエステルフィルムIを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例2]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAに代えて、製造例5で製造したポリエステルフィルムIIを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0079】
[比較例3]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAに代えて、製造例6で製造したポリエステルフィルムIIIを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例4]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAに代えて、製造例7で製造したポリエステルフィルムIVを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0081】
[比較例5]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAに代えて、ポリエステルフィルムa(東洋紡社製、商品名「コスモシャインA4100」、長さ方向に対する遅相軸角度:90°、面内位相Re(590):7800nm、厚み:75μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0082】
[比較例6]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAに代えて、ポリエステルフィルムb(三菱ケミカル社製、商品名「T100-J25」、長さ方向に対する遅相軸角度:27°、面内位相Re(590):525nm、厚み:25μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0083】
[比較例7]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAに代えて、製造例8で製造したポリエステルフィルムVを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0084】
[比較例8]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAに代えて、製造例9で製造したポリエステルフィルムVIを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0085】
[比較例9]
製造例3で製造したポリエステルフィルムAに代えて、製造例10で製造したポリエステルフィルムVIIを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。
得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0086】
[比較例10]
製造例1で得た基材付き偏光子に代えて、製造例2で得た偏光子を用いたこと以外は、比較例1と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0087】
[比較例11]
製造例1で得た基材付き偏光子に代えて、製造例2で得た偏光子を用いたこと以外は、比較例3と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例12]
製造例1で得た基材付き偏光子に代えて、製造例2で得た偏光子を用いたこと以外は、比較例8と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板を上記評価(1)~(6)に供した。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【符号の説明】
【0090】
10 偏光子
20 ポリエステルフィルム
30 接着剤層
40 易接着層
100、200 偏光板
図1
図2