IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ガス、テクノロジー、インスティチュートの特許一覧

特開2023-159210メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム
<>
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図1A
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図1B
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図2
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図3
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図4
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図5
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図6
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図7
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図8
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図9
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図10
  • 特開-メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159210
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】メタンおよび軽質炭化水素を液体炭化水素燃料に改質するためのプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   C10G 2/00 20060101AFI20231024BHJP
   C10G 45/58 20060101ALI20231024BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C10G2/00
C10G45/58
C01B3/38
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130289
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2021196644の分割
【原出願日】2017-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】591002016
【氏名又は名称】ジーティーアイ エナジー
【氏名又は名称原語表記】GTI ENERGY
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーカー,テリー エル
(72)【発明者】
【氏名】リンク,マーティン ビー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンゲロー,ジム
(72)【発明者】
【氏名】オルティズ-トラル,ペドロ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メタンおよび/または他の炭化水素を改質してHとCOとを備える合成ガス生成物を生成し、さらに液体炭化水素への下流変換を伴うプロセスを提供する。
【解決手段】C 炭化水素を生成するプロセスであって、(a)改質ステージにおいてメタンと酸化剤を備えるガス状混合物を改質触媒に接触させて合成ガス生成物を生成するステップと、(b)前記合成ガス生成物中のHとCOを、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応機のフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物として与えられる、前記C 炭化水素を含む炭化水素に変換するステップと、(c)前記C 炭化水素を含む前記FT生成物を仕上げ反応機に供給して、ワックス留分のノルマルC20 炭化水素の少なくとも約75%をC-C19炭化水素に変換するステップと、を含む、プロセスを提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を生成するプロセスであって、
(a)改質ステージにおいてメタンと酸化剤を備えるガス状混合物を改質触媒に接触させて合成ガス生成物を生成するステップと、
(b)前記合成ガス生成物中のHとCOを、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応機のフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物として与えられる、前記C 炭化水素を含む炭化水素に変換するステップと、
(c)前記C 炭化水素を含む前記FT生成物を仕上げ反応機に供給して、ワックス留分のノルマルC20 炭化水素の少なくとも約75%をC-C19炭化水素に変換するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記酸化剤が、COまたはHOを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酸化剤が、COおよびHOの混合物を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(b)は、ステップ(a)で生成された前記合成ガス生成物と実質的に同一のH:COモル比を有するFT供給物を用いて実施される、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(b)の前に、ステップ(a)で生成された前記合成ガス生成物から水を凝縮させる、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(c)は、約232℃(450°F)~約399℃(750°F)の温度、および約2.00MPa(290psig)~約3.10MPa(450psig)のゲージ圧力範囲である前記仕上げ反応機の中で実施される、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記C-C19炭化水素を含むC 炭化水素は、前記仕上げ反応機内の水素化異性化/水素化分解生成物として与えられ、前記水素化異性化/水素化分解生成物は室温で固体である炭化水素を約1wt%未満含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記仕上げ反応機は、ノルマルC20 炭化水素に対して水素化異性化および/または水素化分解の活性を持つ脱ろう触媒を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記脱ろう触媒は、固体酸性担持体上に堆積した脱ろう活性金属を備える、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記脱ろう活性金属は、周期表の13族または14族から選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記脱ろう活性金属はガリウムである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
炭化水素を生成するプロセスであって、
(a)改質ステージにおいてメタンと酸化剤を備えるガス状混合物を改質触媒に接触させて合成ガス生成物を生成するステップと、
(b)前記合成ガス生成物中のHとCOを、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応機のフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物として与えられる、前記C 炭化水素を含む炭化水素に変換するステップと、
(c)前記仕上げ反応機において前記FT生成物の全部または一部を含む仕上げ供給物を脱ろう触媒と接触させて水素化異性化反応および/または水素化分解反応により前記FT生成物のワックス留分のノルマルC20 炭化水素をC-C19炭化水素に変換するステップと、
を含み、
前記水素化異性化反応および/または水素化分解反応は、前記FT反応機において変換されず前記仕上げ供給物内に存在する水素を消費する、プロセス。
【請求項13】
前記FT反応機の中で未変換の水素は、前記仕上げ供給物中に少なくとも約20mol%の濃度で存在する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記仕上げ反応機に補足的水素供給源を追加しない、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記仕上げ反応機に補足的水素供給源を追加する、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項16】
炭化水素を生成するプロセスであって、
(a)改質ステージにおいてメタンと酸化剤を備えるガス状混合物を改質触媒に接触させて合成ガス生成物を生成するステップと、
(b)前記合成ガス生成物中のHとCOを、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応機のフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物として与えられる、前記C 炭化水素を含む炭化水素に変換するステップと、
(c)前記仕上げ反応機において前記FT生成物のすべてまたは一部を備える仕上げ供給物を脱ろう触媒と接触させて水素化異性化反応および/または水素化分解反応により前記FT生成物のワックス留分のノルマルC20 炭化水素をC-C19炭化水素に変換するステップと、
を含み、
前記仕上げ供給物は前記FT反応機中で未変換のCOを含む、プロセス。
【請求項17】
ステップ(c)は、前記仕上げ反応器から出る仕上げ生成物を与え、
前記仕上げ生成物を分離して(i)C-C炭化水素および残留H,CO、CO、並びに(ii)前記C-C19炭化水素を含む液体燃料、を与えるステップをさらに含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記液体燃料を、ガソリン沸点範囲炭化水素を備える留分とディーゼル沸点範囲炭化水素を備える留分に分離するステップをさらに含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記FT反応機におけるFT反応条件が、約193℃(380°F)~約260℃(500°F)の温度、および約689kPa(100psig)~約3.44MPa(500psig)のゲージ圧力である、請求項16~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(b)において、前記FT反応機におけるCOの変換が少なくとも約30%である、請求項16~19のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発の記載
本発明は、米国エネルギー省補助金DE-EE-0007009に基く政府援助を得て実施された。政府は、当発明に特定の権利を有する。
【0002】
本発明の態様は、メタンおよび/または他の炭化水素を改質して、HとCOとを備える合成ガス生成物を生成し、さらに液体炭化水素への下流変換を伴う、改質触媒およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
炭化水素燃料の生成のための、原油の代替品を求める調査は、ますます多数の要因によって進められている。これには、石油埋蔵量の減少、エネルギー需要の増加予測、および再生不可能な炭素供給源に由来する温室効果ガス(GHG)排出に対する懸念の高まりが含まれる。天然ガスの埋蔵量ならびに生物供給源から取得されるガス流(バイオガス)の豊富さを考慮して、メタンは、液体炭化水素を提供する多数の可能なルートの焦点になっている。メタンを燃料に変換するための鍵となる商業プロセスには、合成ガス(シンガス(syngas))を生成する第1変換ステップと、それに続く第2の下流フィッシャー・トロプシュ(FT:Fischer-Tropsch)変換ステップが含まれる。この第2ステップにおいて、水素(H)と一酸化炭素(CO)の混合物を含有する合成ガスは、C-O結合の連続的開裂と、水素を取り込むC-C結合の形成と、を経る。このメカニズムは、炭化水素の形成を提供し、とりわけ直鎖アルカンの形成を提供し、FT反応条件と触媒特性を変更することで、ある程度制御され得る分子量の分布を伴う。そのような特性として、孔径および担持体材料のその他の特徴が含まれる。触媒の選択は、他の点に関してFT生成物収率に影響し得る。例えば鉄ベースのFT触媒は、オキシジェネートをより多く生成する傾向がある反面、活性金属としてのルテニウムは、もっぱらパラフィンを生成する傾向がある。
【0004】
第1変換ステップに関して、FTの上流でメタンからシンガスを生成する周知のプロセスには、酸素を用いたメタンの発熱酸化に基づく部分酸化改質および自己熱改質(ATR)が含まれる。一方、スチームメタン改質(SMR)はスチームを酸化剤として使用し、その結果熱力学が有意に相違するが、それはスチーム自体の生成がエネルギー投資を必要とし得るためばかりでなく、メタンと水を伴う反応が吸熱反応であるためである。最近では、メタンの酸化剤として二酸化炭素(CO)の使用も提案されており、その結果所望のシンガスは次式に従って、最酸化型の炭素と最還元型の炭素との反応によって形成される:
【数1】
【0005】
この反応はメタンの「乾式改質」と呼ばれており、高度に吸熱反応であるため、メタンの乾式改質の熱力学はATRに比較して、またはさらにSMRに比較しても好ましくない。しかし、メタン1モル当たりの二酸化炭素1モルの化学量論的消費は、液体燃料生成のカーボンフットプリント全体を減少させる可能性があり、メタンのより環境に優しい消費を提供する。この供給物の1モル当たりCO消費率は、高級炭化水素(例えばC-Cパラフィン)を改質する場合に上昇するが、この改質は例えば、水素生成(例えば精製プロセス用)が目的の場合に望ましい。いずれにしても熱力学的障壁は、それにもかかわらず大きな課題であり、COが完全に酸化されておりかつ非常に安定しておることから、酸化剤として活性化させるには大きなエネルギーが必要になるという事実に関する。これを鑑みると、メタンの乾式改質に対する活性化エネルギー障壁を克服するために多数の触媒系が研究されており、これは、例えば文献[Lavoie(Frontiers in Chemistry(Nov.2014)、Vol.2(81):1-17)のレビュ―]でまとめられており、この反応を実行する触媒アプローチに関して、不均一系触媒系が最も人気があると確認している。
【0006】
他方ニッケルベースの触媒は、前述の乾式改質反応のための活性化エネルギーを減少させることに有効性を示したが、これら触媒の炭素堆積(コーキング(coking))が高率で起こることも、Lavoieの文献で報告されている。メタンから元素状炭素への好ましくない変換は、一般にメタンの乾式改質に必要な反応温度で、メタン分解(CH→C+2H)またはブードワ反応(Boudouard reaction)(2CO→C+CO)を通して進行し得る。そのため、この反応はシンガス生成の有望なルートとして研究されてきたが、この技術の商業化は、ATRおよびSMRなどの他の改質技術と違い、依然として実現されていない。これは、今まで提案されてきた条件下で作動する乾式改質触媒系を使用する場合に見られるように、大部分、高い炭素形成率、およびコーキングを通して付随する触媒の失活のせいである。最後に、従来の他の改質技術は、経済的に実行可能であると実証されたが、このようなプロセス、およびとりわけSMRは、使用される触媒の硫黄および他の毒物を除去するために多大な上流投資(upstream
capital)と操業費用を必要とすることが周知である。そうでなければ、所定の触媒装填からの商業的に許容し得る操業期間が実現され得ない。シンガスおよび/または水素を生成するための従来の炭化水素改質に関するこのような問題および他の問題の満足のゆく解決策は、探し求められてきたが、いまだ実現されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、メタンおよび/または他の炭化水素を、その炭化水素(複数可)の少なくとも一部分をCOと反応させることにより、合成ガス(つまりHとCOとを備えるガス状混合物)に変換する改質触媒およびプロセスの発見に関連する。好ましくは、CO-スチーム改質反応によれば、炭化水素(複数可)の少なくとも第2部分(例えば、第1部分と同じ炭化水素(複数可)を備える)はHO(スチーム)と反応し、それによってHOの存在しない「純粋」乾式改質と比較して、吸熱性(ΔH)および必要なエネルギー投入を減少させるという意味でプロセスの熱力学全体を改善する。代表的改質触媒は高活性を有益に有し、それによって慣習的に乾式改質に使用される温度を下回る温度で、有意レベルの炭化水素(例えばメタン)変換を実現し得る。このような高活性レベルは、任意選択的にHOの使用と併せて少なくとも酸化剤の一部分を提供して、全般的運転環境に貢献し、それによってコークス形成は減少し、有益な改質触媒の寿命が有意に延長され得る。
【0008】
さらに重要な利益として、ここで記載の改質触媒の耐硫黄性があり、それによってメタン含有供給原料(例えば天然ガス)または他の炭化水素含有供給原料の前処理は、好ましい実施形態によればHSおよび他の硫黄含有汚染物質の濃度を低下させるために必要なく、または少なくとも従来の改質技術におけるほど厳密ではない。また、HSを除くメルカプタンなどの硫黄含有汚染物質のすべてまたは少なくともかなりの部分が、ここで記載のように乾式改質反応またはCO-スチーム改質反応においてSOに酸化され得、それによって標準酸性ガス処理(例えばスクラブ(scrub))を下流硫黄除去として好適かつ比較的単純なオプションにすることを考慮すると、FT合成ステップなどの前に、そのような下流硫黄除去が望ましくあり得る場合、これは前処理は大幅に単純化され得る。
【0009】
概して、ここで記載のプロセスおよび改質触媒に関連する改良は、乾式改質プロセス、またはそうでなければCOおよびスチーム改質(つまりCO-スチーム改質)プロセスを、自己熱改質(ATR)およびスチームメタン改質(STR)などの従来の技術に対する経済的に実行可能な選択肢とする意味で商業的に重要である。さらに、このプロセスによる合成ガスは、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応による下流加工にとって好ましいH:COモル比(例えば約2:1)で、または少なくとも、そのような好ましい値を実現するために容易に調整され得るモル比で生成され得る。
【0010】
好ましいH:COモル比を持ち、メタン供給源(例えば天然ガス)および他の軽質炭化水素供給源中にしばしば存在する硫黄含有汚染物質に対する耐性を持つ合成ガス生成物を、安定的に生成する、ここで記載のCO-スチーム改質プロセスの実証された能力は、液体炭化水素、例えばガソリンおよびディーゼルの沸点範囲炭化水素留分用を生成するステップを追加してこのようなプロセスを使用する際に利益となる。このような利益として、液体炭化水素生成プロセス全体がとても単純であることが含まれ、このプロセスは例えば、従来のプロセスと比較して追加、分離、および/またはリサイクルのステップを少ししか必要としない。この結果、費用節約になるばかりでなく、そのようなプロセス全体を簡単に輸送可能な(例えばスキッドマウント型)構成で提供し得、そのプロセスは、天然ガス供給源に、またはここで記載のようにガス状混合物の他の成分供給源に運ばれ得、その供給源からそのような成分を従来の在来の(brick and mortar)生産設備に輸送することが、その他の点で問題をはらみ得るであろう。またこの利益には、バイオマス変換プロセスと、発酵プロセスと、CO含有廃ガスを生成する産業プロセスと、を含む、COおよび/または軽質炭化水素を含有するガス流を生成する多様なプロセスと統合する機会に関して、柔軟性が向上することが含まれる。
【0011】
本発明に関するこのようなおよび他の実施形態、態様、および利益は、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の模範的実施形態のより完全な理解およびその利益は、添付の図を考慮し、以下の説明を参照することで取得され得るが、その図において同じ参照番号が同一または類似の特性を同定するように使用されている。
図1A】ここで記載のように代表的な乾式改質、およびCO-スチーム改質プロセスを図示するフロースキームを示す。
図1B】ここで記載のように代表的な乾式改質、およびCO-スチーム改質プロセスを図示するフロースキームを示す。
図2】他の運転条件が一定の場合にフィッシャー・トロプシュ(FT)反応機中の圧力と、取得されたCO変換レベルとの間の関係を図示する。
図3図1Aまたは図1Bで示されたような乾式改質プロセスCO-スチーム改質プロセスが液体炭化水素を生成するための下流加工ステップと統合されているフロースキームを示す。
図4図1Aまたは図1Bで示されたような乾式改質またはCO-スチーム改質プロセスが、バイオマスの水素化熱分解から再生可能な炭化水素燃料を生成するプロセスと共に使用されているフロースキームを示す。
図5】乾式改質またはCO-スチーム改質が図3で示されたような液体炭化水素生成プロセス全体に統合されているフロースキームを示し、この生成プロセスは、バイオマスの水素化熱分解から再生可能な炭化水素燃料を生成するプロセスと共に使用される。
図6図4に示すように乾式改質もしくはCO-スチーム改質プロセスが共に使用され得るプロセス、または図5で示すように液体炭化水素生成プロセス全体が統合され得るプロセスなど、バイオマスの水素化熱分解から再生可能な炭化水素燃料を生成するプロセスのフロースキームを示す。
図7】乾式改質またはCO-スチーム改質が図3で示されたような液体炭化水素生成プロセス全体中に統合されているフロースキームを示し、この生成プロセスは水素生成プロセスで使用される。
図8】ここで記載のように改質触媒について、メタン変換に関する高活性を図示する。
図9】代表的なCO-スチーム改質プロセス場合における異なる反応温度で、CO-スチーム改質反応機(組み合わせた供給物として)中の合成ガス生成物のH:COモル比と、ガス状混合物のHO/COモル比との間の関係を図示する。
図10】長期運転期間にわたるCO-スチーム改質プロセスにおいて、ここで記載のような改質触媒の長期的運転安定性を図示する。
図11】長期運転期間にわたるCO-スチーム改質プロセスにおいて、ここで記載のような改質触媒の長期的運転安定性を図示する。
【0013】
図面は、プロセス、および関連する特定の結果、ならびにパラメータ、および/または関連する原理の例示を提示していると理解すべきである。図1A図1B図3図7図10、および図11は、説明および理解をスムーズにするため、単純化された概要を提供し、このような図面および要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないと理解される。バルブ、器具、および本発明の様々な態様の理解に必須ではないその他の機器およびシステムは表示されていない。本開示の知識を有する当業者には容易に明らかなように、乾式改質あるいはCO-スチーム改質によるメタンなどの炭化水素の変換プロセスは、その特定用途によって部分的に決定される構成および要素を備える。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「wt%」および「mol%」という表現は、ここではそれぞれ重量パーセントとモルパーセントを指すために使用される。「wt-ppm」および「mol-ppm」という表現は、それぞれ重量百万分率およびモル百万分率を指す。理想的なガスについて、「mol%」および「mol-ppm」は、それぞれ体積パーセントおよび体積百万分率に等しい。
【0015】
本開示で使用する「C 炭化水素」、「C20 炭化水素」、「C-C19炭化水素」などの用語は、それぞれ炭素原子が4より大きい炭化水素、炭素原子が20より大きい炭化水素、炭素原子が4~19の炭化水素などを指す。別途記載がない限り、このような用語は、指定された範囲により、すべての炭素数を有する炭化水素が必ず存在しなければならないことを意味しない。別途記載がない限り、例えば、「ノルマルC20 炭化水素」という名称において、その用語の中にすべてのタイプ(例えばノルマル、分岐、芳香族、ナフテン系、オレフィン系など)の炭化水素が含まれる。
【0016】
用語「ガス状混合物」は、ここで記載のように改質触媒との接触によって乾式改質またはCO-スチーム改質(ガス状混合物中に水も存在する場合)を経る、少なくともメタンなどの炭化水素を備え、酸化剤としてCOも備える混合物を指す。用語「ガス状混合物」は概して、ここで記載のそのような反応に好適な温度および圧力を含む、乾式改質またはCO-スチーム改質に使用される条件(「改質条件」)下で、完全にまたは少なくとも大部分気相にあるこのような混合物を指す。用語「ガス状混合物」は、周囲温度および圧力の条件下で液体である、この混合物中の化合物(例えば、水)の存在を排除しない。そのような化合物は、ナフサおよびジェット燃料を含む液体燃料で見つかるような炭化水素、例えばC-C16炭化水素を含み得る。
【0017】
用語「ナフサ沸点範囲炭化水素」および「ガソリン沸点範囲炭化水素」は、C炭化水素の特徴である35℃(95°F)の初期(「前端(front-end)」)蒸留温度~204℃(399°F)の終点蒸留温度の沸点を持つ炭化水素を備える炭化水素留分を指す。用語「ジェット燃料沸点範囲炭化水素」は、204℃(399°F)の前端蒸留温度~271℃(520°F)の終点蒸留温度の沸点を持つ炭化水素を備える炭化水素留分を指す。用語「ディーゼル沸点範囲炭化水素」は、204℃(399°F)の前端蒸留温度~344℃(651°F)の終点蒸留温度の沸点を持つ炭化水素を備える炭化水素留分を指す。したがって、「ディーゼル沸点範囲炭化水素」は、「ジェット燃料沸点範囲炭化水素」のみならず、271℃(520°F)の前端蒸留温度~344℃(651°F)の終点蒸留温度の沸点を持つ「重質ディーゼル沸点範囲炭化水素」を包含する。用語「VGO沸点範囲炭化水素」は、344℃(651°F)の前端蒸留温度~538℃(1000°F)の終点蒸留温度の沸点を持つ炭化水素を備える炭化水素留分を指す。ナフサ沸点範囲炭化水素、ガソリン沸点範囲炭化水素、ジェット燃料沸点範囲炭化水素、およびディーゼル沸点範囲炭化水素などの炭化水素留分の、このような前端および終点の蒸留温度(これらは、石油由来のナフサ、ガソリン、ジェット燃料、およびディーゼルの沸点範囲留分それぞれの特徴でもある)は、終点の回収値が95%の場合のASTM D86に従って決定される。
【0018】
所定のパラメータに関連して、句「実質的に同じ(substantially same)」または「実質的に同じ(substantially the same)」で使用される用語「実質的に」は、絶対という用語(例えば絶対温度または絶対圧力)において測定された場合に、そのパラメータに関して5%未満の逸脱する値を包含することを意味する。用語「実質的にすべて(substantially all)」または「の実質的にすべて(substantially all of)」は、「の少なくとも95%」を意味する。用語「実質的に完全」は、「少なくとも95%完全(substantially complete)」を意味する。
【0019】
該発明の実施形態は、合成ガス生成物(シンガス)を生成するプロセスに関し、該プロセスは、(i)メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)(例えばCH、C、C、C、C、C10、C、C12、C10、高分子量の炭化水素のうち任意のもの、およびその混合物)、および(ii)CO、を備えるガス状混合物を、酸化セリウムを備える固体担持体上で少なくとも1つ(例えば2つまたは2つを上回る)の貴金属を備える改質触媒に接触させるステップを備える。CO単独は、そのような炭化水素の乾式改質によってCOおよびHへのメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)に対する酸化剤としての役割を果し得ることが可能であり、これは、例えばアルカンの場合に次のように一般化され得る:
【数2】
【0020】
好ましい実施形態、すなわちガス状混合物がHOをさらに備える実施形態では、COとHOの組み合わせは酸化剤の役割を果し得る。この場合の反応は「CO-スチーム改質」反応であり、これはメタンおよび/または他の炭化水素からシンガスを生成するルートとしてスチーム改質も含み、これは、例えばアルカンの場合に次のように一般化され得る:
【数3】
メタンの乾式改質から形成される合成ガス生成物の理論上のH:COモル比は1である反面、メタンのCO-スチーム改質におけるスチーム改質の追加は、このモル比を下流フィッシャー・トロプシュ合成のためのより好ましい値に上昇させる可能性を有益に提供して、次の反応に従って液体炭化水素を生成する:
【数4】
【0021】
ここから、燃料または燃料の成分として望ましいC-C12炭化水素などのC 炭化水素は、2に近いH:COモル比で理想的に形成されることが観察され得る。重要なことに、COと組み合わせて酸化剤としてスチーム(HO)を使用することは、広範なCO-スチーム改質条件に合成ガス生成物のH:COモル比を調整するために、有益な「要領(handle)」または制御パラメータを提供する。実際、CO-スチーム改質反応とスチーム改質反応を組み合わせて実施される任意の所定のそのような条件セット(例えば、温度、圧力、単位時間当たりの重量空間速度、および改質触媒配合のように、CO-スチーム改質反応機内の条件)について、ガス状混合物(例えば組み合わせたCO-スチーム改質反応機供給物)のHO:COモル比と、合成ガス生成物(例えばCO-スチーム改質反応機の流出物)のH:COモル比と、の間で関係が確立され得る。メタンを除く炭化水素の乾式改質およびスチーム改質はHとCOを他のモル比で生成する反面、CO-スチーム改質を経るガス状混合物中の酸化剤HOとCOの量を相対的に変更することで、生成物収率において指向的に同一のシフトまたは調整が達成され得る。したがって、本発明の実施形態は、CO-スチーム改質プロセスに関し、該プロセスは、合成ガス生成物のH:COモル比を決定するステップと、H:COモル比に基づいてガス状混合物のHO:COモル比を目標の合成ガス生成物のH:COモル比の方向に、例えば2:1という目標のH:COモル比の方向に、またはそうでなければ概して約1.5:1~約2.5:1の範囲、一般に約1.5:1~約2.3:1の範囲、およびしばしば約1.8:1~約2.2:1の範囲の目標のH:COモル比の方向に、調整するステップと、を備える。
【0022】
より具体的には、ガス状混合物のHO:COモル比は、目標のH:COモル比の方向に向かって、目標を下回る合成ガス生成物の観察されたH:COモル比を上昇させるように上昇し得る。逆に、ガス状混合物のHO:COモル比は、目標のH:COモル比の方向に向かって、目標を上回る合成ガス生成物の観察されたH:COモル比を下降させるように下降し得る。ガス状混合物のHO:COモル比への任意のそのような調整は、例えば、ガス状混合物(例えば組み合わせた供給物)の1つ以上の成分、例えばメタン含有供給原料(または概して炭化水素含有供給原料)、CO含有酸化剤、およびHO含有酸化剤の1つ以上の流量(複数可)を、そのような成分の1つ以上のその他の流量(複数可)に対して調整することで実施され得る。特定の実施例によれば、CO-スチーム改質反応機への組み合わせた供給物のHO:COモル比は、(HO含有酸化剤としての)スチームの流量をそれぞれ上昇または下降させることで上昇または下降し得、それによってガス状混合物のHO:COモル比は結果としてそれぞれ上昇または下降し得る。
【0023】
合成ガス生成物のH:COモル比を好ましい範囲内の値に制御する能力を提供するだけでなく、COと組み合わせた酸化剤としてのスチーム(HO)を使用すれば、純粋乾式改質に比較して炭素(コークス)形成率をさらに驚くほど減少させ、それによってここで記載のように、触媒の寿命を延長させる。したがって、本発明のさらなる実施形態は、CO-スチーム改質プロセスに関し、炭素形成率(例えば、ここで記載のように改質触媒と組み合わせて、COとHO酸化剤の好適な比率または濃度/分圧を使用)は、ベースラインプロセス(つまりベースライン乾式改質プロセス)の炭素形成率未満であり、すべてのパラメータは同一に維持されるが、ガス状混合物(例えば組み合わせたCO-スチーム改質反応機供給物)中のHOを等モル量のCOの酸素と置換(つまり、HOの1モルを1/2モルのCOと置換)することは除く。ベースラインプロセスに対して比較的低いこの炭素形成と相まって、合成ガス生成物はここで記載のようなH/COモル比(例えば約1.5:1~約2.3:1)を有し得る。
【0024】
ここで記載のようにCO-スチーム改質は、約1.5:1~約2.5:1の範囲、約1.5:1~約2.3:1の範囲、および約1.8:1~約2.2:1の範囲など、前述の好ましいH:COモル比を持つ合成ガス生成物を生成するように実施され得る。2:1を包含するそのような範囲は、ここで記載のように液体炭化水素を生成するFT合成ステージにおいて合成ガス生成物の下流加工の場合に、特に有益である。特に、合成ガス生成物中のHとCOを、FT生成物として与えられるC 炭化水素(周囲温度と圧力で液体である炭化水素を含む)を含む炭化水素に変換するステップは、上流CO-スチーム改質によって生成される、合成ガス生成物と実質的に同じH:COモル比を持つFT供給物を用いて実施され得る。すなわちFT供給物は、Hおよび/またはCOを追加または除去することで、またはそうでなければこのような成分を変換または生成することなどで、合成ガス生成物のH:COモル比を調整することなしに(例えば、モル比を上昇させるHを追加することなしに、かつ/または別個の水性ガスシフト反応または逆の水性ガスシフト反応を使用することなしに)好ましく取得され得る。いくつかの実施形態によると、FT供給物は、FT合成ステージにおいてHとCOを炭化水素に変換するのに先立って、この生成物からの水を凝縮させることで、合成ガス生成物と実質的に同じH:COモル比で取得され得る。いくつかの実施形態によると、FT供給物は、合成ガス生成物の組成をなんら変更することなく取得され得る。例えば、合成ガス生成物の一部または全部は、(例えば、その組成を変更するであろう成分の追加、除去、または変換によって)その組成に影響するであろう任意の介在操作なく、FT合成ステージで直接使用され得る。
【0025】
2:1を包含する合成ガス生成物のH:COモル比の前述の範囲は、次の反応に従ってメタノールを生成するメタノール生成ステージにおける合成ガス生成物の下流加工の場合にも同様に有益である:2H+CO→CHOH。特に、合成ガス生成物中のHとCOを、メタノール生成物として与えられるメタノールに変換するステップは、上流CO-スチーム改質によって生成される、合成ガス生成物と実質的に同じH:COモル比を持つメタノール合成供給物を用いて実施され得る。すなわちメタノール合成供給物は、Hおよび/またはCOを追加または除去することで、またはそうでなければこのような成分を変換または生成することなどで、合成ガス生成物のH:COモル比を調整することなしに(例えば、モル比を上昇させるHを追加することなしに、かつ/または別個の水性ガスシフト反応または逆の水性ガスシフト反応を使用することなしに)好ましく取得され得る。いくつかの実施形態によると、メタノール合成供給物は、この生成物からの水を凝縮させることで、合成ガス生成物と実質的に同じH:COモル比で取得され得る。いくつかの実施形態によると、メタノール合成供給物は、合成ガス生成物の組成をなんら変更することなく取得され得る。例えば、合成ガス生成物の一部または全部は、(例えば、その組成を変更するであろう成分の追加、除去、または変換によって)その組成に影響するであろう任意の介在操作なく、メタノール生成ステージで直接使用され得る。合成ガス生成物からのメタノール生成は、約204℃(400°F)~約316℃(600°F)の温度、および約4.5MPa(650psig)~約11.7MPa(1700psig)の圧力で実施され得る。メタノール合成触媒は一般に、アルミナ(Al)などの金属酸化物に担持されるCuおよびZnOを備える。
【0026】
合成ガス生成物からメタノールを生成する場合、このメタノールは脱水ステージでさらに反応を行って、次の反応に従ってジメチルエーテル(DME)を生成し得る:2CHOH→CHOCH+HO。この反応ステージを行う触媒および条件は、例えば米国特許5,037,511;米国特許2004/0034255;および米国特許8,451,630で記載されている。代替的にDMEは、介在メタノール生成ステージなしで、直接DME生成ステージにおいて合成ガス生成物から直接生成され得る。この点ではここで記載のように乾式改質は、例えば文献[Takeishi et al.(Recent Advances in Energy & Environment)]に記載のように、次の反応を実行するのに好適な1:1を包含する範囲で好ましいH:COモル比を有する合成ガス生成物を生成するように実施され得る:3H+3CO→CHOCH+CO。好適なH:COモル比は、約0.5:1~約1.5:1、約0.5:1~約1.3:1、または約0.8:1~約1.2:1である。特に、合成ガス生成物中のHとCOを、DME生成物として与えられるDMEに変換するステップは、上流乾式改質によって生成される、合成ガス生成物と実質的に同じH:COモル比を持つDME合成供給物を用いて実施され得る。すなわちDME合成供給物は、Hおよび/またはCOを追加または除去することで、またはそうでなければこのような成分を変換または生成することなどで、合成ガス生成物のH:COモル比を調整することなしに(例えば、モル比を上昇させるHを追加することなしに、かつ/または別個の水性ガスシフト反応または逆の水性ガスシフト反応を使用することなしに)好ましく取得され得る。いくつかの実施形態によると、DME合成供給物は、この生成物からの水を凝縮させることで、合成ガス生成物と実質的に同じH:COモル比で取得され得る。いくつかの実施形態によると、DME合成供給物は、合成ガス生成物の組成をなんら変更することなく取得され得る。例えば、合成ガス生成物の一部または全部は、(例えば、その組成を変更するであろう成分の追加、除去、または変換によって)その組成に影響するであろう任意の介在操作なく、直接DME生成ステージで直接使用され得る。
【0027】
前述のように特別な下流反応ステップに調整され得る望ましいH:COモル比を持つ合成ガス生成物を生成することに加えて、ここで記載のように改質触媒はさらに驚くほどの耐硫黄性を示し、それは例えば、その供給源によっては有意な濃度(例えば、体積で数重量パーセント以上)のHSを含有し得る天然ガスを備えるか、またはその天然ガスに由来するメタン含有供給原料の場合に、特に有益である。この点では、従来のスチームメタン改質(SMR)プロセスは、改質触媒を硫黄被毒から保護するために、一般に全供給物硫黄含有量を1mol-ppm未満に減少させる前処理を必要とする。一方、本発明の代表的実施形態によれば、ガス状混合物またはその成分のうち任意のものは、特に炭化水素含有供給原料は、硫黄除去前処理ステップを減らないか、またはそうでなければ硫黄除去前処理ステップを受けたことがない。そのような実施形態は、好ましい改質触媒寿命を実現する必要に応じて、厳しい脱硫化要件および関連する費用の付いた周知のプロセスに対して実質的な経済的利益を提供する。そのような周知のプロセスとは対照的に、ここで記載のように乾式改質またはCO-スチーム改質プロセス中のガス状混合物は概して、硫黄除去の前処理を受けていないばかりでなく、低濃度の硫黄を有するガス状混合物の他の成分(例えばCO)と組み合わせられた場合に硫黄の希釈の原因となる天然ガスなどの炭化水素供給原料の供給源の代表的な任意の濃度で硫黄を備え得る。例えばガス状混合物は、概して少なくとも約1モル-ppm(例えば約1mol-ppm~約10mol%)の全硫黄(例えばHSおよび/または他の硫黄含有汚染物質として)を備え得る。ガス状混合物は、一般に少なくとも約10mol-ppm(例えば約10mol-ppm~約1mol%)およびしばしば少なくとも約100mol-ppm(例えば約100mol-ppm~約1000mol-ppm)の全硫黄を備え得る。例えば、約500mol-ppm~約1000mol-ppmの全硫黄は、特定の実施形態によれば、ここで記載のように改質触媒の安定性に対して、概して副作用を引き起こさないか、または少なくとも無視できる副作用のみ引き起こす。
【0028】
ここで記載の改質触媒の耐硫黄性について、本発明のさらなる態様は、ガス状混合物中の高レベル(濃度)の硫黄が反応温度、つまり改質反応機(乾式改質反応機またはCO-スチーム改質のいずれかであり得、後者はCOおよびHOの両方を備える反応機内でガス状混合物に適用可能である)中に収容される、ここで記載の改質触媒床の温度を上昇させることで補償され得るという発見に関連する。すなわち、硫黄濃度の上昇は、他のすべての運転パラメータに変化がない場合に、ガス状混合物中のメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の変換減少によって測定したとき、改質触媒の活性に影響することが判明した。ただし、所望の変換レベルは、反応温度を上昇させることで回復され得る。例えば一部の運転条件下で、28℃(50°F)の上昇は、ガス状混合物中に硫黄の全くない改質触媒の活性と比較して、ガス状混合物中に濃度800mol-ppmのHSを伴う改質触媒の活性の損失を回復するのに十分であり得る。したがって、本発明の実施形態は、ここで記載のように乾式改質プロセスまたはCO-スチーム改質プロセスに関し、該プロセスは、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の変換(例えば、組み合わせたC-C炭化水素または組み合わせたC-C炭化水素の変換)を決定すること、あるいはそうでなければガス状混合物または合成ガス生成物において、硫黄レベル(例えば、HSレベル)を決定すること、ならびに変換または硫黄レベルに基づいて、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の変換目標、例えば少なくとも約75%の変換目標(例えば約75%~約100%範囲の任意の特定の変換値)、例えば少なくとも約85%の変換目標(例えば約85%~約99%範囲の任意の特定の変換値)に向かって反応温度を調整することを備える。
【0029】
しかし重要なことは、ガス状混合物における硫黄濃度の上昇を伴う、ここで記載の改質触媒の活性のそのような低下は、改質触媒の安定性における任意のかなりの損失はさらに伴わない。すなわち、ここで記載のように、高硫黄レベルを相殺する補償改質反応機温度の上昇は、長期間にわたって乾式改質またはCO-スチーム改質に対して安定した運転性能を達成する改質触媒の能力に有意には影響しない。この発見は、従来の改質技術に基づく予想とは反対であり、その予想では、供給物中の小量(例えばmol-ppmレベル)の硫黄の存在でさえ、触媒の失活および高価な早期交換を防止するために回避しなければならない。ここで記載のように改質触媒の独特の耐硫黄性、または硫黄含有汚染物質の存在下での活性安定性は、標準試験に従って決定され得、その試験では5~100グラムの小さな触媒サンプルは固定床式改質反応機にロードされ、800mol-ppmHSの添加された、30mol%メタン、30mol%CO、および30mol%HOの供給物ブレンドと接触される。本標準試験では、0.7hr-1WHSVの流動条件、788℃(1450°F)の触媒床温度、および138kPa(20psig)のCO-スチーム改質反応機圧力により、少なくとも85%および好ましくは95%のメタンの変換が、少なくとも50時間の運転の間、およびより一般には100時間の運転の間、またはさらに少なくとも400時間の運転の間、一定の触媒床温度で維持される。
【0030】
ここで記載の改質触媒の耐性つまり「堅牢性」は、コーキングを通して改質触媒の非活性化を引き起しやすいと通常見なされる反応性芳香族炭化水素および/またはオレフィン系炭化水素などの高分子量の炭化水素を含む、ガス状混合物中の他の化合物の存在下での失活に対する高安定性においてさらに明らかにされる。例えば、ガス状混合物は、概して少なくとも約1モル%(例えば約1mol%~約25mol%)、例えば少なくとも約3mol%(例えば約3mol%~約20mol%)、またはより具体的には少なくとも約5mol%(例えば約5mol%~約15mol%)の合計量において、芳香族炭化水素およびオレフィン系炭化水素を備え得る。そのようなレベルの芳香族炭化水素および/またはオレフィン系炭化水素において、改質触媒の安定性は、供給物ブレンドが、HSとは異なってその濃度の芳香族炭化水素および/またはオレフィン系炭化水素を含有することを除いて、耐硫黄性に関して上記に規定の同一活性安定性試験に従って示され得る。ここで記載のように硫黄および反応性炭化水素の両方に関する改質触媒のこの耐性は、以下で詳細に説明されるように原油精製から取得される様々な留分(例えばナフサおよびジェット燃料)を含む広範な炭化水素含有供給原料の改質を可能にする。
【0031】
より一般的には、ガス状混合物、および特にこの炭化水素含有供給原料成分は、メタンに加えて、天然ガスおよび/または他のメタン供給源中に存在し得るC、C、および/またはC炭化水素(例えばエタン、プロパン、プロピレン、ブタン、および/またはブテン)などの他の炭化水素を備え得る。代替的に、ここで記載のように改質触媒は、大部分またはただ単に、C炭化水素、C炭化水素、C炭化水素、C炭化水素、C炭化水素、C炭化水素、C10炭化水素、C11炭化水素、C12炭化水素、C13炭化水素、C14炭化水素、C15炭化水素、C16炭化水素、C17炭化水素、C18炭化水素、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択された任意の1つ以上の化合物を備えるか、または任意選択的にそれからなる、ガス状混合物中の炭化水素の場合のような高分子量の炭化水素の乾式改質またはCO-スチーム改質に使用され得る。例えば、ガス状混合物中の炭化水素は、ナフサ沸点範囲炭化水素の乾式改質またはCO-スチーム改質(ナフサ改質)の場合に、C-C炭化水素またはC-C炭化水素を備え得るか、またはそれらからなり得る。別の例として、ガス状混合物中の炭化水素は、ジェット燃料沸点範囲炭化水素の乾式改質またはCO-スチーム改質(ジェット燃料改質)の場合に、C-C18炭化水素またはC-C14炭化水素を備え得るか、またはそれらからなり得る。そのようなナフサ沸点範囲炭化水素およびジェット燃料沸点範囲留分は、通常原油精製からの生成物として取得され、このような状況から、ガス状混合物中の硫黄含有汚染物質の供給源であり得る。代表的実施形態では、ガス状混合物は、概して約5mol%~約85mol%、一般に約10mol%~約65mol%、およびしばしば約20mol%~約45mol%の合計量において、メタンおよび/またはここで記載の炭化水素うち任意のものを備え得る。ガス状混合物は、概して約8mol%~約90mol%、一般に約15mol%~約75mol%、およびしばしば約20mol%~約50mol%の量のCOをさらに備え得る。CO-スチーム改質の場合、ガス状混合物は、概して約15mol%~約70mol%、一般に約20mol%~約60mol%、およびしばしば約25mol%~約55mol%の量のHOを備え得る。ガス状混合物の残部は、HSおよび/または前述のように他の硫黄含有汚染物質などの汚染物質を含み得る。
【0032】
メタンおよび/または軽質炭化水素(例えばC-CまたはC-C炭化水素)を備えるガス状混合物の場合、乾式改質またはCO-スチーム改質の合成ガス生成物は、前述のようにフィッシャー・トロプシュ合成を通して液体炭化水素燃料の下流生成において好ましいH:COモル比で有益に使用され得る。合成ガスは、従来のスチームメタン改質(SMR)に関連する他の下流適用に代替的に使用され得る。例えば文献[Tarun(International Journal of Greenhouse Gas Control I(2007):55-61)]は、SMRを伴う従来の水素生成プロセスについて説明している。ここで記載のように、水素生成において本発明の実施形態に従って乾式改質あるいはCO-スチーム改質が適用される場合、代表的プロセスは、(i)合成ガス生成物を1つ以上の水性ガスシフト(WGS)反応ステージにかけて水素含有量を増加させるステップ、および/または(ii)場合によっては、(例えば圧力スイング吸着(PSA)または膜分離により)WGSステージ(複数可)の流出物を分離して、またはそうでなければWGSステージ(複数可)を介在させることなく合成ガス生成物を分離して、水素濃縮生成物流および水素枯渇PSA排ガス流(または簡単に「PSA排ガス」)を提供するステップ、をさらに備え得る。次いで水素濃縮生成物流は、水素化処理プロセス(例えば、水素化脱硫、水素化分解、水素化異性化など)などの従来の精製プロセスにおいて使用され得る。次いで水素枯渇PSA排ガス流は、分離されて、水素を回収し得、かつ/または燃焼燃料として使用されて乾式改質またはCO-スチーム改質の加熱要件の少なくとも一部を満たし得る。なおさらなる実施形態では、COおよびH含有PSA排ガスは、アルコール(例えばエタノール)などの発酵生成物を生成するために生物学的発酵ステージに渡され得る。次に発酵ステージからのガス状流出物は、前述のように分離されて水素を回収し得、かつ/または燃焼燃料として使用され得る。従来の水素生成に関して、生物学的発酵ステージのさらなる統合は、例えば米国特許9,605,286;米国特許9,145,300;米国特許2013/0210096;および米国特許2014/0028598に記載されている。水素生成プロセスにおける統合に代わるものとして、ここで記載のように乾式改質またはCO-スチーム改質は、合成ガス生成物を提供するように使用され得、この生成物は、好適なカルボキシ栄養細菌(carboxydotrophic bacteria)(例えば、Clostridium autoethanogenumまたはClostridium ljungdahlii種)を使用した発酵生成物の下流生成において直接使用される。いずれの場合も、つまりそのような統合のある場合もない場合も、発酵に使用される微生物は耐硫黄性であり得るか、またはさらに細胞培養培地中に硫黄を必要とし得、その結果ここで記載のように改質触媒の耐硫黄性は、従来の改質触媒に対して、上流での硫黄除去中止に関するか、または少なくとも硫黄除去要件の緩和に関する両立性および費用節約の点から特に有益であり得る。
【0033】
このため本発明の態様は、合成ガス生成物(例えばHとCOの両方、ならびに任意選択的に未変換のCO、HO、および/または炭化水素などの他のガスを備える)を生成するための乾式改質プロセスおよびCO-スチーム改質プロセスに関する。代表的実施形態において、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)を備えるガス状混合物は、乾式改質プロセス(つまりCOをさらに備えるが水を備えない供給物またはガス状混合物の場合、乾式改質反応機)またはCO-スチーム改質プロセス(つまりCOおよび水の両方をさらに含む供給物またはガス状混合物の場合、CO-スチーム改質反応機)の反応機にバッチ式に提供され得、ただし好ましくは連続流れとして提供され得るが、一般用語「改質反応機」はいずれかのケースを包含する。次いで合成ガス生成物は、事情次第で乾式改質反応機またはCO-スチーム改質反応機から、バッチ式に取り出され得るが(ガス状混合物がバッチ式に提供される場合)、好ましくは、連続流れとして取り出され得る(ガス状混合物が連続流れとして提供される場合)。
【0034】
とCO、および任意選択的に他のガスに加えて、水(HO)も合成ガス生成物中に存在し得るが、蒸気形態で存在する水の少なくとも一部分は、例えば合成ガス生成物を液体炭化水素に変換するために使用されるフィッシャー・トロプシュ合成反応機(FT反応機)の上流で冷却/凝縮によって容易に分離され得る。合成ガス生成物中の水とCOのどちらも、H:COモル比に影響を与えず、前述のようにこの比は、FT反応機への直接供給流として合成ガス生成物の適性を決定する際に重要なパラメータである。
【0035】
代表的プロセスにおいては、メタンおよび/または他の軽質炭化水素(複数可)(例えばエタン、エチレン、プロパン、および/またはプロピレン)およびCOのみならず任意選択的にHOを備えるガス状混合物は、その炭化水素(複数可)の改質を実行するための活性を有する改質触媒と接触する。特に、そのような炭化水素(複数可)、例えばそのような炭化水素の大部分は、(i)乾式改質プロセスに従って一部または全部のCOのみと酸化を通して改質され得るか、または(ii)CO-スチーム改質プロセスに従ってCOの一部または全部ならびにHO(存在する場合)の一部または全部の両方と酸化を通して改質され得る。
【0036】
前述のように本発明の態様は、従来の改質触媒と比較して特に耐硫黄性および/または炭素形成(コーキング)率の低下に関して重要な利益を示す、そのような乾式改質およびCO-スチーム改質プロセスのための改質触媒の発見に関連する。次いでこのような特徴は、化学的および/または物理的に活性触媒部位をブロックする被毒メカニズムおよび/またはコーキングメカニズムを通して、触媒の失活率を低下させる。改質触媒の安定性におけるさらなる改良は、前述のようにメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の酸化剤としてのCOの使用に関連する実質的な活性化エネルギー障壁を必要に応じて低下させる場合、少なくとも部分的にはここで記載の改質触媒の高活性から生じる。この高活性は、運転(乾式改質反応機、CO-スチーム改質反応機、乾式改質触媒床、またはCO-スチーム改質触媒床)温度が低い場合に現れ、これは、改質触媒面上の炭素堆積(コークス形成)率と、長期安定運転と、にさらに貢献する。特定の実施形態によれば、ここで記載の改質触媒を利用するプロセスは、例えば、少なくとも約100時間、少なくとも約300時間、またはさらに少なくとも約500時間の連続運転または場合によれば非連続運転の間、炭化水素変換(例えばメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の少なくとも約85%の変換)および/または合成ガス生成物のH/COモル比(例えば約1.5:1~約2.3:1)に関して、ここで記載のように安定した運転パラメータを維持し得る。これは、(i)例えば改質反応機内で触媒を固定床として利用する改質プロセスに従って、改質触媒が再生を経験しなく、かつ/または(ii)改質反応機、またはそれぞれの乾式改質触媒床、またはCO-スチーム改質触媒床の温度が、開始時期と終了時期のしきい値温度差を超えて上昇しない運転期間であり得、このしきい値温度差は、例えば100℃(180°F)、50℃(90°F)、25℃(45°F)、10℃(18°F)、またはさらに5℃(9°F)である。
【0037】
メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)とCOとの反応および任意選択的にHOとの反応を触媒するのに好適な代表的改質触媒は、固体担持体上で1つの貴金属を備え、場合によれば2つ以上の貴金属を備え得る。固体担持体は、好ましくは、特に興味深いことに酸化セリウムを含む金属酸化物を備える。酸化セリウムは、固体担持体の重量に基づいて(例えば固体担持体中の金属酸化物(複数可)の総重量(複数可)に対して)、少なくとも約80wt%、および好ましくは少なくとも約90wt%の量で存在し得る。固体担持体は、酸化セリウムのみ、または実質的に酸化セリウムのみ(例えば約95wt%より多い)備え得る。酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウムなどのその他の金属酸化物も、固体担持体中に存在し得、その合計量は、固体担持体の約50wt%未満、約30wt%未満、または約10wt%未満などの小量に相当する。他の実施形態では固体担持体は、そのような他の金属酸化物を単独で、または小量(例えば約50wt%未満または約wt30%未満)の酸化セリウムと組み合わせて備え得る。
【0038】
貴金属とは、酸化耐性のある金属元素のクラスを指すと理解される。代表的実施形態では、改質触媒の貴金属、例えば少なくとも2つの貴金属は、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、および金(Au)からなるグループから選択され得、用語「からなる」はただ単に、特定の実施形態に従ってグループメンバーを表わすために使用され、そこから貴金属(複数可)が選択されるが、概して他の貴金属および/または他金属の追加を排除するために使用されていない。したがって、貴金属を備える改質触媒は、少なくとも2つの貴金属を備える触媒だけでなく少なくとも3つの貴金属を備える触媒を包含し、同様に2つの貴金属と、促進剤金属(例えば遷移金属)などの第3の非貴金属を備える触媒と、を包含する。好ましい実施形態によれば、貴金属は、触媒の重量に基づいて約0.05wt%~約5wt%、約0.3wt%~約3wt%、または約0.5wt%~約2wt%の量で存在するか、または代替的に少なくとも2つの貴金属はそれぞれ無関係にその量で存在する。例えば代表的改質触媒は、2つの貴金属PtとRhを備え得、PtとRhは、このような範囲(例えば約0.05wt%~約5wt%)のうち任意の量で、互いに無関係に存在し得る。すなわち、Ptがその量で存在し得るか、またはRhがその量で存在し得るか、またはPtとRhの両方がその量で存在し得る。
【0039】
代表的実施形態では少なくとも2つの貴金属(例えばPtとRh)は、例えば他の任意の貴金属(複数可)が改質触媒の重量に基づいて約0.1wt%未満または約0.05wt%未満の量または合計量で存在するように、改質触媒中に存在する実質的に唯一の貴金属であり得る。さらなる代表的実施形態では、少なくとも2つの貴金属(例えばPtとRh)は、固体担持体中に存在する金属(例えば、固体担持体中に酸化セリウムとして存在するセリウムなど)を除いては、改質触媒中に存在する実質的に唯一の金属である。例えば、少なくとも2つの貴金属および固体担持体の金属以外の他の任意の金属(複数可)は、改質触媒の重量に基づいて約0.1wt%未満または約0.05wt%未満の量または合計量で存在し得る。貴金属(複数可)を含む、触媒中に存在する任意の金属は、概して約0.3ナノメートル(nm)~約20nmの範囲、一般に約0.5nm~約10nmの範囲、およびしばしば約1nm~約5nmの範囲の金属粒径を有し得る。
【0040】
貴金属(複数可)は、昇華、含浸、または乾式混合を含む触媒調製の周知の技法に従って、固体担持体中に組み込まれ得る。好ましい技法である含浸の場合、極性(水性)溶剤または非極性(例えば、有機)溶剤中の貴金属のうち1つ以上の可溶性化合物の含浸溶液は、好ましくは不活性雰囲気下で固体担持体と接触し得る。例えばこの接触は、窒素、アルゴン、および/またはヘリウムの周辺雰囲気中において、またはそうでなければ空気など非不活性雰囲気中において、好ましくは撹拌を用いて実施され得る。溶剤は次いで、例えば加熱、流動ガス、および/または真空の条件を使用して、固体担持体から気化され得、乾燥した貴金属含浸担持体を形成する。貴金属(複数可)は固体担持体中に含浸され得、例えば2つの貴金属が同時に含浸される場合、両方は同じ含浸溶液に溶解されるか、またはそうでなければ異なる含浸溶液および接触ステップを使用して別々に含浸される。いずれにしても貴金属含浸担持体は、余分の貴金属(複数可)および不純物の除去のための溶剤を用いる洗浄、さらなる乾燥、焼成などのさらなる調製ステップを経て、改質触媒を提供し得る。
【0041】
固体担持体自体は、押出して円筒状粒子(押出成形物)を形成する方法、オイル滴下方法、または噴霧乾燥して球状粒子を形成する方法などの周知の方法に従って調製され得る。固体担持体および出来た触媒粒子の特定の形状とは無関係に、前述のように改質触媒中に存在する貴金属(複数可)の量とは、(例えば、円筒状または球状などの任意の形状の)所定の触媒粒子中において、粒子内の貴金属の特定の分布とは無関係に、そのような貴金属(複数可)の重量の平均値を指す。この点では、調製方法が異なると、主として固体担持体の表面上またはその近くに貴金属(複数可)が堆積するか、または固体担持体の全体に貴金属(複数可)が一様に分布するなど、異なる分布を提供し得ることが理解され得る。概して、ここで記載の重量パーセントとは、固体担持体の重量に基づくか、またはそうでなければ改質触媒の重量に基づき、単一の触媒粒子における重量パーセントを指し得るが、一般にはここで記載のプロセスにおいて使用される触媒床を形成する改質反応機中の個数などの、多数の触媒粒子の重量パーセントの平均値を指し得る。
【0042】
乾式改質プロセスおよび任意選択的にCO-スチーム改質プロセス10の単純化した例示は図1A図1Bに示される。このようないずれかの実施形態において、1つ以上の炭化水素(例えばメタン)とCOを備えるガス状混合物4は、槽の形態で改質反応機5内に存在し得、この槽は、ガス状混合物4と改質触媒6が接触する改質条件下で、前述のように改質触媒6の床を収容するために使用される。図1Aで図示される実施形態によれば、ガス状混合物4は、炭化水素含有供給原料1のみから改質反応機5内に提供され得る。例えば、代表的な炭化水素含有供給原料はメタン含有供給原料であり、この供給原料は、水素添加ガス化または水素化熱分解を含むバイオマスのガス化または熱分解から取得され、COとHOをさらに備え得る。それによって、そのような炭化水素含有供給原料はそれ自体で、CO-スチーム改質プロセスのために自らガス状混合物4を提供し、このプロセス中ではCOおよびHOの両方がメタンの酸化剤として反応する。他の実施形態ではガス状混合物4は、液体炭化水素がナフサ沸点範囲炭化水素および/またはジェット燃料沸点範囲炭化水素を含む場合、またはそうでなければあるタイプの天然ガスの場合などのように、炭化水素含有供給原料1がCOをほとんど含有しない場合、炭化水素含有供給原料1を任意選択的なCO含有酸化剤2と組み合わせることから取得され得る。
【0043】
別のオプションとして、HO含有酸化剤3(例えばスチームとして)はまた、CO-スチーム改質プロセス用のCO酸化剤およびHO酸化剤の両方と、メタンと、を備えるガス状混合物4を形成するために組み合わせられ得る。しかし、やはりHOはまた、炭化水素含有供給原料1および/またはCO含有酸化剤2中に十分な量で存在し得、その結果HO含有酸化剤3は別に必要ではあり得ない。炭化水素含有供給原料1、CO含有酸化剤2、およびHO含有酸化剤3の間の両矢印付き破線で示されているように、これらのうち任意のものは改質反応機5に先立って(例えば上流で)組み合わせられ得ることは明らかである。特定の実施形態によれば、図1Bは、任意選択的なCO含有酸化剤2および任意選択的なHO含有酸化剤3と混合されて、改質反応機5に先立って(例えば上流で)、ならびにこの反応機内部に、ガス状混合物4を提供する炭化水素含有供給原料1を図示する。
【0044】
前述のように、ガス状混合物4がメタンおよびCOなどの1つ以上の炭化水素を備えるがHOは含まない実施形態において、該プロセスは「乾式改質」プロセスと見なし得る反面、ガス状混合物4が炭化水素(複数可)とCOを備え、COとの組み合わせにおいて、炭化水素(複数可)の酸化剤としての活性HOをさらに備える(その結果、例えばCOとHOの少なくともそれぞれの酸化剤部分は、炭化水素(複数可)の各反応物部分を酸化する)実施形態において、該プロセスは「CO-スチーム改質」プロセスと見なし得る。ここで記載のように改質触媒は、乾式改質およびCO-スチーム改質の両方において、前述のように活性と安定性の両方に関して有益な結果を提供する。改質反応機5中に提供された改質条件下で、ガス状混合物4は合成ガス生成物7に変換され、この生成物はガス状混合物4と比較して水素およびCOが濃縮され得(つまりその濃度が高まり得)、かつ/または当初ガス状混合物4中に存在していたCO、HO、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)が枯渇され得る(つまりその濃度が低下し得る)。
【0045】
重要なメタン含有供給原料は天然ガス、特にストランデッド(stranded)天然ガスであり、この天然ガスは周知のプロセスを使用しては経済的な方法で容易に合成ガス生成物に変換されない。従来のスチーム改質と対照的に、ここで記載のプロセスがCOの除去(例えばアミン溶液を用いてスクラブする)を必要とせず、実際反応物としてCOを利用することから、例えば少なくとも約10mol%、またはさらに少なくとも約25mol%の比較的高濃度のCOを備える天然ガスは、魅力的なメタン含有供給原料を象徴する。他のメタン含有供給原料は、石炭またはバイオマス(例えばリグノセルロースまたは炭化物)ガス化から取得されたか、またはバイオマス蒸解がまから取得されたか、または再生可能炭化水素燃料(バイオ燃料)生成プロセス(例えば、水素化熱分解プロセスまたは脂肪酸/トリグリセリド水素化変換プロセスなどの熱分解プロセス)からの流出物として取得された、メタンを備え得る。さらなるメタン含有供給原料は、ウェルヘッド(well head)から取得されたメタン、または石油精製プロセスの(製油所オフガスとしての)流出物、電力生産プロセスの流出物、鉄鋼製造プロセスの流出物、もしくは非鉄製造プロセスの流出物、化学物質(例えばメタノール)生成プロセスの流出物、もしくはコークス製造プロセスの流出物を含む産業プロセスの流出物を備え得る。概して、炭化水素(例えばC-C炭化水素)およびCOを含有することが知られている任意のプロセスガスは、ここで記載のようにガス状混合物のすべてもしくは一部、またはこの混合物の成分としてのメタン含有供給原料の少なくともすべてもしくは一部を提供し得る。メタン含有供給原料が、再生可能資源(例えばバイオマス)から取得されたメタンを備える場合、例えばGas Technology Instituteに譲渡されている米国特許第8,915,981号で記載のように、水素化熱分解によって取得されたプロセス流からのメタンを含む場合、ここで記載のプロセスは、再生可能合成ガス生成物(つまり再生可能COを備える)を生成するために使用され得、この生成物は次いで再生可能炭化水素含有燃料、燃料ブレンド成分、および/または化学物質を提供するためにさらに加工され得る。それゆえ、メタン含有供給原料は、再生不可能供給源(例えば天然ガス)に由来するメタンおよび/または再生可能供給源(例えばバイオマス)に由来するメタンを備え得、後者の供給源は合成ガス生成物および下流生成物に関連するカーボンフットプリントを全体として減少させる。ここで記載のように、天然ガスおよび/または他のメタン含有供給原料は、乾式改質またはCO-スチーム改質に先立ってHSおよび他の硫黄含有汚染物質を除去するよう前処理され得るが、必ずしも前処理する必要があるわけではない。
【0046】
メタン含有供給原料(または概して炭化水素含有供給原料)と同様、かつここで記載のように特に改質触媒の耐硫黄性を考慮すると、CO含有酸化剤および/またはHO含有酸化剤を含むガス状混合物の他の成分は、多様な供給源から取得され得る。有益なことにそのような供給源は廃ガスを含み、このガスは経済的価値をほとんどまたは全く持たないと見なされ、さらに大気のCOレベルに貢献し得る。例えばCO含有酸化剤は、鉄鋼製造プロセスまたは非鉄製品製造プロセスから取得される産業プロセス廃ガスを備え得る。CO含有酸化剤のすべてまたは一部が取得され得る他のプロセスとして、石油精製プロセス、再生可能炭化水素燃料(バイオ燃料)生成プロセス(例えば、水素化熱分解プロセスなどの熱分解プロセス、または脂肪酸/トリグリセリド水素化変換プロセス)、石炭およびバイオマスガス化プロセス、電力生産プロセス、カーボンブラック生成プロセス、アンモニア生成プロセス、メタノール生成プロセス、およびコークス製造プロセスが含まれる。
【0047】
前述のようにメタン含有供給原料(または概して炭化水素含有供給原料)はそれ自体で、乾式改質プロセスまたはCO-スチーム改質プロセス用のガス状混合物を提供し得、すなわち、十分なCOおよび/またはHOがすでにこの混合物中に存在する場合、別個のCO含有酸化剤および/または別個のHO含有酸化剤を追加する必要はない。代替的に、メタン含有供給原料(または概して炭化水素含有供給原料)は、CO含有酸化剤またはHO含有酸化剤の1つのみと組み合わせられて好適なガス状混合物を提供し得る。例えばスチーム(HO含有酸化剤として)は、COをさらに備えるメタン含有供給原料と組み合わせられてCO-スチーム改質プロセスに好適なガス状混合物を提供し得る。
【0048】
ここで記載のCO-スチーム改質プロセス用のガス状混合物を提供するため、特に好適な量のCOをさらに備える代表的なメタン含有供給原料は、水素化熱分解ガス状混合物であり、これはバイオマス水素化熱分解から取得され、(i)概して約3mol%~約45mol%(例えば約5mol%~約25mol%、または約7mol%~約15mol%)のメタン濃度、(ii)概してそれぞれ約1mol%~約35mol%(例えば、それぞれ約2mol%~約25mol%、またはそれぞれ約3mol%~約15mol%)のエタンおよびプロパンの濃度、および(iii)概して約10mol%~約75mol%(例えば約12mol%~約55mol%、または約15mol%~約35mol%)のCO濃度を有する。水素化熱分解ガス状混合物の実質的な残部は、水蒸気であり得る。しかし、水蒸気の実際の量によっては、HO含有酸化剤は任意選択的に、水素化熱分解ガス状混合物と組み合わせられて、CO-スチーム改質反応機に所望のHO:COモル比でガス状混合物を提供し得る。この場合HO含有酸化剤は、凝縮水相として容易に使用可能であり得、この水相は、バイオマスの水素化熱分解から生成された実質的に完全な脱酸素化炭化水素液体(例えば、約2重量%未満または約1重量%未満の全酸素含有量を有する炭化水素含有液体)から分離される。
【0049】
ここで記載のCO-スチーム改質プロセス用のガス状混合物を提供するため、特に好適な量のCOをさらに備える代表的メタン含有供給原料の別の例は、概して約3mol%~約35mol%(例えば約5mol%~約30mol%、または約10mol%~約25mol%)の濃度のCOと、概して約65mol%~約98mol%(例えば約70mol%~約95mol%、または約75mol%~約90mol%)の濃度のメタンと、を備える天然ガスである。他の炭化水素(例えばエタンおよびプロパン)ならびに窒素は、小量存在し得る。HO含有酸化剤は任意選択的に、このメタン含有供給原料と組み合わせられて、CO-スチーム改質反応機に所望のHO:COモル比でガス状混合物を提供し得る。
【0050】
ここで記載のCO-スチーム改質プロセス用のガス状混合物を提供するため、特に好適な量のCOをさらに備える代表的なメタン含有供給原料の別の例は、嫌気性消化プロセスなどの有機廃棄物の細菌消化と、埋立地とから取得されたバイオガスである。バイオガスは、概して約35mol%~約90mol%(例えば約40mol%~約80mol%、または約50mol%~約75mol%)の濃度のメタンと、概して約10mol%~約60mol%(例えば約15mol%~約55mol%、または約25mol%~約50mol%)の濃度のCOと、を含有する。ガスN、H、HS、およびOは、小量(例えば20mol%未満または10mol%未満の合計量)存在し得る。HO含有酸化剤は任意選択的に、このメタン含有供給原料と組み合わせられて、CO-スチーム改質反応機に所望のHO:COモル比でガス状混合物を提供し得る。
【0051】
ここで記載のCO-スチーム改質プロセス用のガス状混合物を提供するため、特に好適な量のCOをさらに備える代表的なメタン含有供給原料の別の例は、前述のように例えばSMRを伴う水素生成プロセスから取得された水素枯渇PSA排ガスである。この流は、(i)概して約5mol%~約45mol%(例えば約10mol%~約35mol%、または約15mol%~約25mol%)メタン濃度、(ii)概して約20mol%~約75mol%(例えば約25mol%~約70mol%、または約35mol%~約60mol%)CO濃度、および(iii)概して約10mol%~約45mol%(例えば約15mol%~約40mol%、または約20mol%~約35mol%)H濃度を有し得る。この流の残部は、大部分水蒸気および/またはCOを備え得る。HO含有酸化剤は任意選択的に、このメタン含有供給原料と組み合わせられて、CO-スチーム改質反応機に所望のHO:COモル比でガス状混合物を提供し得る。
【0052】
ここで記載のCO-スチーム改質プロセス用のガス状混合物を提供するため、特に好適な量のCOをさらに備える代表的なメタン含有供給原料の別の例は、前述のように水素生成プロセスと統合された細菌発酵に由来するガス状流出物である。この流は、(i)概して約5mol%~約55mol%(例えば約5mol%~約45mol%、または約10mol%~約40mol%)メタン濃度、(ii)概して約5mol%~約75mol%(例えば約5mol%~約60mol%、または約10mol%~約50mol%)CO濃度、および(iii)概して約5mol%~約40mol%(例えば約5mol%~約30mol%、または約10mol%~約25mol%)H濃度を有し得る。この流の残部は、大部分水蒸気および/またはCOを備え得る。HO含有酸化剤は任意選択的に、このメタン含有供給原料と組み合わせられて、CO-スチーム改質反応機に所望のHO:COモル比でガス状混合物を提供し得る。
【0053】
図1Aおよび図1Bによる代表的実施形態において、炭化水素とCOとを備えるガス状混合物4は、改質触媒6とバッチ式または非連続運転において接触され得るが、好ましくは、乾式改質またはCO-スチーム改質プロセスはガス状混合物4またはそれの成分(例えばここで記載のように、炭化水素含有供給原料1、CO含有酸化剤2、および/またはHO含有酸化剤3)の流動流を用いて連続的に実施されて、プロセス効率を改善する。例えば接触は、改質反応機5を通してガス状混合物4(例えば、このような成分のうち任意のものが組み合わせられた、組み合わせ改質反応機供給流として)と、好適な流量を含む改質条件(例えば、改質反応機槽内の条件、および槽の中に収容される改質触媒床内の条件)下で改質触媒6と、を連続的に流動させることで実施され得る。特定の実施形態では、改質条件は、概して約0.05hr-1~約10hr-1、一般に約0.1hr-1~約4.0hr-1、およびしばしば約0.3hr-1~約2.5hr-1の単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)を含み得る。当業で理解されているように、WHSVは、反応機に入る全供給物(例えばガス状混合物)を反応機内の触媒の重量で除算した重量流量であり、毎時加工される供給流の等価触媒床の重量に相当する。WHSVは、反応機滞留時間の逆数に関する。改質触媒6は、固定床の形態で改質反応機5内に収容され得るが、連続的触媒再生を利用するプロセスに有益であり得る可動床および流動床システムなどの他の触媒系も可能である。
【0054】
乾式改質またはCO-スチーム改質に便利な他の改質条件には、概して約649℃(1200°F)~約816℃(1500°F)の温度が含まれる。ここで記載のプロセスは、酸化剤としてのCOの使用に必要な活性化エネルギー障壁の削減に関する改質触媒の高活性により、乾式改質またはスチーム改質に使用される従来の代表的な温度950℃(1742°F)に比較して有意に低い温度で、メタンおよび/または他の炭化水素を効果的に酸化させ得る。例えば代表的実施形態では改質条件は、約677℃(1250°F)~約788℃(1450°F)の範囲、または約704℃(1300°F)~約760℃(1400°F)の範囲の温度を含み得る。前述のようにHSおよび/または他の硫黄含有汚染物質の有意な量(例えば100~1000mol-ppm)の存在は、所望の変換レベル(例えば約85%超)を維持するために、例えば約732℃(1350°F)~約843℃(1550°F)の範囲、または約760℃(1400°F)~約816℃(1500°F)の温度上昇を保証し得る。なお他の改質条件は、周囲圧力を超える圧力、つまり絶対圧力101kPa(14.7psig)に対応する、0kPa(0psig)のゲージ圧力を上回る圧力を含み得る。改質反応は、反応物のモルに対して生成物のモル数を多くするため、相対的に低圧力での平衡状態が選好される。それゆえ改質条件は、概して約0kPa(0psig)~約517kPa(75psig)、一般に約0kPa(0psig)~約345kPa(50psig)、およびしばしば約103kPa(15psig)~約207kPa(30psig)のゲージ圧力を含み得る。
【0055】
有益なことに、改質触媒の高活性は、前述の任意の温度範囲内で、例えば当業者が本開示から得た知識を用いて認識するように、特定の改質反応機温度または改質触媒床温度、および/または他の改質条件(例えばWHSYおよび/または圧力)を調整することで、少なくとも約80%(例えば約80%~約99%)、少なくとも約85%(例えば約85%~約97%)、または少なくとも約90%(例えば約90%~約99%)のメタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の変換(例えば、メタンの変換、組み合わせたC-C炭化水素の変換、組み合わせたC-C炭化水素の変換、ナフサ沸点範囲炭化水素の変換、ジェット燃料沸点範囲炭化水素の変換など)を実現し得る。有益なことに、ここで記載のように改質触媒は、最大約732℃(1350°F)、またはさらに最大約704℃(1300°F)の温度で安定的に、少なくとも約85%など有意な炭化水素(例えばメタン)変換を達成する活性が十分ある。酸化反応物について、COの代表的な変換は少なくとも約50%(例えば約50%~約75%)であり、HOの代表的な変換は、少なくとも約70%(例えば約70%~約90%)であり、変換レベルは炭化水素(複数可)についてここで記載されている。当業で理解されているように、任意の特定の化合物(例えばメタン)または組み合わせた化合物(例えばC-C炭化水素またはC-C炭化水素)の変換は、次の式に基づいて計算され得る:
【数5】
ここでX供給物は、反応機に提供されるガス状混合物(例えば組み合わせた反応機供給物)中の化合物(複数可)Xの総量(例えば総重量または総モル)であり、X生成物は反応機から除去される合成ガス生成物中の化合物(複数可)Xの総量である。連続プロセスの場合、この総量は、より好都合なことに流量または単位時間当たりの総量(例えば総重量/時間(hr)または総モル/時間(hr))で表現され得る。ここで記載のような改質触媒および改質条件を使用して実現され得る他の性能基準には、高い水素収率、または反応機に提供されガス状混合物中のメタン中および/または他の水素含有化合物中の水素全体(例えばC-C炭化水素またはC-C炭化水素などの炭化水素中の水素全体)の分率が含まれ、これは反応機から除去される合成ガス生成物中でHに変換される。代表的実施形態では、水素収率は少なくとも約70%(例えば約70%~約85%)である。変換について前述のように、反応機に提供される量、および反応機から除去される量は、流量で表現され得る。
【0056】
前述のように、改質プロセスおよび特にCO-スチーム改質プロセスに関連するさらなる利益は、ここで記載のように、合成ガス生成物中のH/COの好ましいモル比、ならびにこの比率を調節する能力が含まれる。これは、液体炭化水素の生成のためのフィッシャー・トロプシュによる下流加工にとって特に重要な含意がある。合成ガス生成物の正確な組成は、供給物(例えば組み合わせた改質反応機供給物)またはガス状混合物の組成、改質触媒、および改質条件によって左右される。
【0057】
代表的実施形態では合成ガス生成物は、特にCO-スチーム改質プロセスの場合に、有益なことに2:1に近いH:COモル比、例えば概して約1.5:1~約2.3:1の範囲、および一般に約1.8:1~約2.2:1の範囲のH:COモル比を有する。本生成物におけるHとCOの合計濃度は、概して少なくとも約35mol%(またはvol%)(例えば約35mol%~約85mol%)、一般に少なくとも約50mol%(約50mol%~約80mol%)、およびしばしば少なくとも約60mol%(約60mol%~約75mol%)である。前述のように、合成ガス生成物の残部は、そのようなプロセスの条件(例えば、温度、圧力、単位時間当たりの重量空間速度、および改質触媒配合などの改質反応機内の条件)と、反応が行われた供給物またはガス状混合物と、を含む特定の乾式改質またはCO-スチーム改質プロセスによって、実質的にまたはすべてがCOと水であり得る。代表的実施形態において、COは、概して約45mol%未満(例えば約5mol%~約45mol%)、および一般に約35mol%未満(例えば約10mol%~約35mol%)の濃度で合成ガス生成物中に存在する。水は、概して約20mol%未満(例えば約1mol%~約25mol%)、および一般に約15mol%未満(例えば約5mol%~約15mol%)の濃度で存在する。小量の未変換炭化水素はまた、合成ガス生成物中にも存在し得る。例えば、場合によればC-C炭化水素のみ含み得るC-C炭化水素の合計量(例えばメタン、エタン、プロパン、およびブタンの合計量)は、約5mol%未満の濃度、および一般に約2mol%未満の濃度で存在し得る。
【0058】
液体炭化水素を生成するための変換ステップを含む統合プロセス
さらなる代表的プロセスには、ここで記載のように乾式改質またはCO-スチーム改質を使用され、ガソリン、ジェット燃料、および/またはディーゼル燃料などの液体燃料中に存在するものとして代表的なC 炭化水素を含む、炭化水素を備えるフィッシャー・トロプシュ生成物(例えば前述のようにFT反応機からの流出物)を提供するため、FT合成ステージで合成ガス生成物中のHとCOを変換するなどのプロセスステップが追加される。例えばC 炭化水素を生成する特定の統合プロセスは、改質ステージの改質反応機の中で、前述のように任意のメタン含有供給原料またはそのようなガス状混合物の他の成分を備えるガス状混合物を含む、ここで記載のガス状混合物のうち任意のもののようなガス状混合物中のメタンとCOを変換して、前述のように合成ガス生成物を生成するステップを備え得る。この変換ステップは、より具体的には、改質ステージの改質反応機の中でここで記載の改質触媒のうち任意のものなどの改質触媒にガス状混合物を接触させて、合成ガス生成物を生成することを備え得る。統合プロセスは、改質ステージの下流のFT合成ステージのFT反応機の中で、合成ガス生成物中のHとCOを、FT生成物として与えられるC 炭化水素(つまり、4以上の炭素原子を持つ少なくともいくらかの炭化水素)を含む炭化水素に変換するステップをさらに備え得る。任意選択的なステップとして、特にノルマルC20 炭化水素(つまり、20以上の炭素原子を持ち、したがって室温で固体である少なくともいくらかのノルマルまたは直鎖炭化水素)を備えるワックス留分を含むFT生成物中のC 炭化水素の場合、統合プロセスは、FT合成ステージの下流の仕上げステージの仕上げ反応機の中で、ノルマルC20 炭化水素の少なくとも一部分を、ノルマルまたは分岐C-C19炭化水素(つまり少なくともそのいくつかが4~19の炭素原子を持つノルマルまたは分岐炭化水素)に変換するステップをさらに備え得、この炭化水素は水素化異性化/水素化分解生成物として与えられる。
【0059】
「改質ステージ」、「FT合成ステージ」、「仕上げステージ」、で使用される用語「ステージ」は、ここで記載のようにそのステージに関連する反応を実施するために使用される反応機(複数可)のみならず、反応機(複数可)に関連する触媒(複数可)、および従来の補助機器(例えばセンサー、バルブ、ゲージ、制御システムなど)を指す。いくつかの実施形態では、そして好ましくは所定のステージについて単一の反応機のみ、つまり単一の改質反応機、単一のFT反応機、および/または単一の仕上げ反応機のみ必要である。しかし、所定のステージに関連する反応はまた、2つ以上の反応機で、例えば平行してまたは順番に作動する2つの反応機で実施し得る。
【0060】
代表的統合プロセスにおいて、改質ステージ、FT合成ステージ、および任意選択的な仕上げステージの追加の詳細および利益が以下に提供され、本開示よる統合プロセスは、その追加の詳細および/または利益のうちいずれか、またはそうでなければそのような詳細および/または利益の任意の組み合わせを有するものを含むと理解される。
【0061】
改質ステージ
改質ステージは、前述のような改質反応機を少なくとも1つ、および一般に1つのみ含み、この反応機は、乾式改質反応機またはCO-スチーム改質反応機であり得、後者の用語はガス状混合物中のスチームの存在を示している。このステージで変換されるガス状混合物、ならびに代表的改質触媒とその特性(例えば活性、安定性、硫黄に対する耐性、および高分子量炭化水素など)、少なくとも1つの改質反応機での使用に好適な改質条件、および性能基準(変換レベルおよび生成物収率)は、前述のとおりである。
【0062】
前述のように、ガス状混合物は改質反応機(複数可)の上流で前処理されて、例えばガス状混合物またはその任意の成分(例えば炭化水素含有供給原料)を吸着剤または洗浄液の好適な床と接触させることで、HSおよび/または他の硫黄含有汚染物質の濃度を減少させ得る。代替的に、合成ガス生成物または場合によればFT供給物の後処理(改質ステージの下流)(例えば、FT供給物を提供するために冷却された合成ガス生成物から水を凝縮させた後)は、例えばこのような方式で実施されて、HSおよび/または他の硫黄含有汚染物質の濃度を減少させ得る。改質反応機(複数可)の上流または下流のいずれかで硫黄含有汚染物質を除去するステップを実施するオプションは、前述のように改質触媒の耐硫黄性から発生し、その結果、FT触媒の保護は必要であり得るが、改質触媒を硫黄被毒から保護することは必要でなくなり得る。有益なことに、HSおよび/または他の硫黄含有汚染物質の濃度が改質反応機(複数可)の上流で減少した場合(例えばHS除去前処理がガス状混合物で実施される場合)、COも正常に除去される従来の酸性ガス除去(例えばアミンスクラビングを利用する)と比較して、そのような前処理はあまり厳密でなく、かつ/またはより少ないガス除去を伴い得る。COに耐性があり、かつ実際に反応物としてこのガスを利用する、ここで記載の改質触媒の耐性の能力は、それゆえ、従来の前処理ステップを減少またはさらに除去をも可能にし得る。例えば、天然ガスを備え、かつ高濃度のCO(例えば25mol%超または30mol%超)を有するガス状混合物は、天然ガスの特定の供給源に起因するものであり得、そのガス状混合物は、任意の前処理なしに、または場合によればろ過などの粉塵粒子除去の前処理のみで、改質反応機(複数可)に提供され得る。
【0063】
前述のように、改質ステージは、乾式改質またはCO-スチーム改質によって炭化水素の反応することで、HとCOを備える合成ガス生成物を生成する。さらに前述のように、取得され得る合成ガス生成物のH:COモル比の好ましい範囲(例えばCO-スチーム改質の場合の2:1を含む)を考慮すると、合成ガス生成物の一部または全部は、(例えば、この比を変更するであろう成分の追加、除去、または変換によって、例えば、別個の水性ガスシフト反応または逆の水性ガスシフト反応の使用によって)H:COモル比に影響するであろう任意の介在操作なしで、有益なことにFT合成ステージで直接使用され得る。合成ガス生成物の組成に関連するさらなる利益は、ここに呈示される実施形態に従って、かつ本生成物の下流加工に関して記載される。
【0064】
FT合成ステージ
FT反応機(複数可)またはFT合成ステージ全体において、合成ガス生成物中のHとCOの少なくとも一部分は、前述のフィッシャー・トロプシュ(FT)合成反応に従って炭化水素に変換される。特に、任意選択的に1つ以上の成分の冷却、加熱、加圧、減圧、分離(例えば凝縮水の除去)、1つ以上の成分の追加(例えば合成ガス生成物のH:COモル比に対してFT供給物のH:COモル比を調整するためHおよび/またはCOを追加)、および/または1つ以上の成分の反応(例えば別個の水性ガスシフト反応または逆の水性ガスシフト反応を使用したHCOの反応)などの1つ以上の介在操作の後に、合成ガス生成物の一部または全部を備えるFT供給物は、FT合成ステージのFT反応機(複数可)に提供される。改質ステージの改質反応機(複数可)の中で使用される温度および圧力に比する、FT合成ステージのFT反応機(複数可)の中で一般に使用される温度および圧力を考慮して、合成ガス生成物は冷却され、凝縮水から分離され、与圧され得る。いくつかの実施形態では、これらは、FT供給物を提供するために合成ガス生成物が経る唯一の介在操作であり得る。他の実施形態では、冷却および加圧は唯一の介在操作であり得る。さらに他の実施形態では、省略され得る介在操作として、合成ガス生成物を乾燥して蒸気相HOを除去すること(それゆえ液体相HOを凝縮させることとは異なり、例えば、5A分子ふるいなどの、水蒸気に選択的に吸着剤を使用することを含み得る)、および/または従来の酸性ガス処理ステップ(例えばアミンスクラビング)によるCO除去が含まれる。しかし、いくつかの実施形態によると、CO除去は、慣習的に実施されていたそのままに改質ステージの上流でこのCO除去を実施する代わりに、FT合成ステージ(例えば介在操作)の上流ではあるが改質ステージの下流で実施され得る。好ましくはFT反応機(複数可)に先立って、改質反応機の中で生成された水が、合成ガス生成物から凝縮し、かつ/または好ましくは合成ガス生成物のH:COモル比も調整されない。改質ステージとFT合成ステージとの間の介在操作の不使用、限定的介在操作、および/または省略もしくは特定の介在操作は、統合プロセスの全般的単純化に関連する利益になる。
【0065】
FT反応機(複数可)中の条件は、HとCOを、液体燃料または液体燃料のブレンド成分として有益なC 炭化水素を含む炭化水素に変換するのに好適である。代表的実施形態において、FT反応条件(少なくとも1つのFT反応機での使用に好適)は、約121℃(250°F)~約288℃(550°F)の範囲、または約193℃(380°F)~約260℃(500°F)の範囲の温度を含み得る。他のFT反応条件は、約689kPa(100psig)~約3.44MPa(500psig)、または約1.38MPa(200psig)~約2.76MPa(400psig)のゲージ圧力を含み得る。前述のようにメタノールおよび/またはDMEの下流生成と比較して、改質ステージ下流のFT合成ステージの使用にかかる1つの利益は、このような下流加工の選択肢と比較して、有意に減少した圧力(例えば概して約3.44MPa(500psig)未満、または一般に約3.10MPa(450psig)未満)である。
【0066】
FT反応機(複数可)において、FT供給物は、FT反応条件下で、好適なFT触媒(例えばFT反応機内に配置されたFT触媒粒子の床)と接触し得、この条件は前述の温度および/または圧力を含み得る。代表的なFT触媒は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、およびニッケル(Ni)から選択された1つ以上の遷移金属を備える。好ましいFT触媒は、固体担持体上の少なくとも約10wt%の遷移金属(複数可)、および一般に少なくとも約15wt%の遷移金属(複数可)を備える。句「固体担持体上」は、活性金属(複数可)が担持体表面の上および/または担持体の多孔質内部構造内にある触媒を包含することを意図する。代表的固体担持体として、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウムなどからなるグループから選択された1つ以上の金属酸化物を備える。固体担持体は、1つ以上のそのような金属酸化物のみ、または実質的に1つ以上のそのような金属酸化物のみ(例えば約95wt%より多い)備え得る。好ましいFT触媒は、酸化アルミニウム(アルミナ)を備える担持体の上に前述の量(例えば少なくとも約10wt%)の遷移金属コバルト(Co)を備える。
【0067】
ここで記載のFT触媒およびFT反応条件は、少なくとも約20%(例えば約20%~約99%または約20%~約75%)、少なくとも約30%(例えば約30%~約95%または約30%~約65%)、または少なくとも約50%(例えば約50%~約90%または約50%~約85%)のHおよび/またはCOの変換(H変換またはCO変換)を達成するのに概して好適である。このようなFT変換レベルは、FT合成反応を考慮して、どの反応物が化学量論的にFT供給物で制限されているかによって、H変換またはCO変換に基づき得、このようなFT変換レベルは前述のように計算され得る。好ましい場合、このようなFT変換レベルはCO変換に基づく。このようなFT変換レベルは、FT合成ステージ(例えばこのステージのFT反応機)を通して単一通過で達成された「通過当たりの」変換に基づき得るか、またはそうでなければ、以下で詳細に説明するように、FT生成物のリサイクル部分をFT合成ステージ(例えばこのステージのFT反応機)に戻すことで達成された変換全体に基づき得る。
【0068】
FT反応機(複数可)中の所望のH変換および/またはCO変換は、前述のFT反応条件(例えばFT反応温度および/または圧力)を調整することで、かつ/または上記に規定のように単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)を調整することで実現され得る。FT反応条件は、概して約0.01hr-1~約10hr-1、一般に約0.05hr-1~約5hr-1、およびしばしば約0.3hr-1~約2.5hr-1の単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)を含み得る。変換レベル(例えばCO変換)は、例えば圧力を上昇させ、かつWHSVを低下させることで上昇し得、この両者は反応物濃度および反応機滞留時間を上昇させる効果がある。ここで記載のようにFT触媒を収容し、他のFT反応条件は一定で、前述の範囲内で作動している間、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応機の中で実現されたCO変換レベルに対する圧力の効果の一例を、図2に示す。FT反応条件は、FT反応機から出るFT生成物のリサイクル部分をFT供給物と組み合わせるためにFT供給物に戻すか、またはそうでなければFT反応機に再び戻すことを任意選択的に含み得る。リサイクル運転は、リサイクルのゆえに高度の変換全体を達成しながら、FT反応機の比較的低い「通過当たりの」変換での運転を可能にする。いくつかの実施形態では、この低い通過当たりの変換は、高分子量炭化水素(例えばノルマルC20 炭化水素)の量を有益に制限し得るが、この炭化水素はFT合成反応から取得される炭化水素生成物分布の一環として生成し得る。
【0069】
ただし好ましくは、FT反応条件はFT生成物のリサイクルをほとんどまたはさらに全く含まない。例えばFT反応条件は、リサイクルされたFT生成物のFT供給物に対する重量比(つまり「リサイクル比」)を含み得、このリサイクルされたFT生成物およびFT供給物は共に、概して約1:1未満、一般に約0.5:1未満、およびしばしば約0.1:1未満で、組み合わせた供給物をFT反応機に提供する。例えばリサイクル比は0であり得、つまりFT生成物リサイクルが使用されず、その結果通過当たりの変換は変換全体に等しい。そのような低リサイクル比により、少なくとも約50%(例えば約50%~約95%)、少なくとも約70%(例えば約70%~約92%)、または少なくとも約80%(例えば約80%~約90%)などの、比較的高い通過当たりの率H変換またはCO変換が、プロセスの効率性および経済を考慮すると望ましい。通過当たりの変換レベルが上昇すると、FT生成物中の炭化水素の分布は、炭素原子数が増加した分布にシフトする。これは、所望のC 液体炭化水素より価値の低い軽質C-C炭化水素の収率が低下することを考慮すると利益である。いくつかの実施形態では、C-C炭化水素収率(「ガス状炭化水素収率」)、または反応機から除去されたFT生成物中でC-C炭化水素に変換される、FT反応機に提供されるFT供給物のCO中の炭素全体の分率は、約30%未満(例えば約1%~約30%)またはさらに約20%未満(例えば約3%~約20%)である。変換について前述のように、反応機に提供される量、および反応機から除去される量は、流量で表現され得る。
【0070】
それゆえ本発明の実施形態は、前述のようにHとCOとを備える合成ガス、例えば合成ガス生成物、またはFT供給物からC 炭化水素を生成するプロセスに関する。合成ガス生成物またはFT供給物は概して、改質(従来の改質、乾式改質、またはCO-スチーム改質)することで生成され得る。該プロセスは、固体担持体上で、例えばアルミナなどの耐火性金属酸化物上で、少なくとも約10wt%のCoおよび/または任意選択的に前述の他の遷移金属(複数可)を備えるFT触媒に、合成ガスを接触させるステップを備える。該プロセスは、合成ガス中のHとCOを、例えばここで記載のようにFT生成物として与えられる、C 炭化水素を含む炭化水素に変換するステップを含む。
【0071】
有益なことにFT生成物リサイクルが存在しない場合、圧縮費用が節約され、統合プロセスの全設計が単純化される。これが、通過当たりの変換の増加と、それに関連してFT生成物中の炭化水素分布が望ましくないC20 炭化水素を含む炭素原子数の増加する分布の方向にシフトすることと、を必要とする場合、本発明の態様は、このようなノルマルC20 炭化水素をノルマルおよび/または分岐C-C19炭化水素に変換するための、重要な、さらなる下流加工戦略の発見に関連することが認識されるべきであり、この戦略は、所望のナフサ沸点範囲炭化水素、ジェット燃料沸点範囲炭化水素および/またはディーゼル沸点範囲炭化水素の収率に貢献する。さらに任意選択的な下流加工ステージ、すなわちこの変換を実行する仕上げステージを以下に示す。
【0072】
仕上げステージ
任意選択的な仕上げステージは、前述のようにFT生成物中のC 炭化水素がノルマルC20 炭化水素を含む実施形態において望ましくあり得る。特にC 炭化水素のワックス留分は、そのような高炭素数の炭化水素を備え得、このワックス留分は、室温で固体であり、液体燃料として大きな実用性を有する炭化水素の収率損失を表し、そればかりでなくプロセス配管内に有害なワックス蓄積を引き起し、さらに輸送およびブレンド実行に関する困難という意味で有意な問題をも引き起こす炭化水素を指す。
【0073】
仕上げステージの仕上げ反応機(複数可)において、反応機(複数可)の中で水素化異性化および水素化分解反応に従って、FT生成物中のノルマルC20 炭化水素の少なくとも一部分はノルマルおよび/または分岐C-C19炭化水素に変換される。特に、仕上げ供給物は任意選択的に、1つ以上の成分の冷却、加熱、加圧、減圧、分離、1つ以上の成分の追加、および/または1つ以上の成分の反応などの1つ以上の介在操作の後にFT生成物の一部または全部を備える。FT合成ステージのFT反応機(複数可)の中で使用される温度および圧力に比する、仕上げステージの仕上げ反応機(複数可)の中で一般に使用される温度および圧力を考慮して、FT生成物は、仕上げステージでのFT生成物中のノルマルC20 炭化水素の変換に先立って、ここで記載のようにこのステージで使用される仕上げ反応機に好適な温度に加熱され得る。いくつかの実施形態では、このような加熱は、仕上げ供給物を提供するためにFT生成物が経る唯一の介在操作であり得る。代替的に、運転上の単純性および運転効率のより大幅な向上のため、下流仕上げステージで使用される温度、例えば仕上げ反応条件に関して以下に示す温度範囲内の温度と同じであるかまたは実質的に同じ温度(例えば約10℃(18°F)差以内)を、FT反応条件が含む可能性を考慮して、この加熱さえ省略され得る。他の実施形態では、仕上げ反応条件が、有益にもFT反応条件に関して前述のものと同じまたは実質的に同じ圧力を含み得ることが発見されていることから、省略され得る介在操作には、加圧および減圧が含まれる。例えば、仕上げ反応機中の圧力は、このような反応機間の配管、および場合によれば他のプロセス機器に関連する公称圧力降下によって減圧されて、上流FT反応機中と同一であり得る。そのため、仕上げ反応機の上流でのFT生成物の加圧(圧縮)または減圧(展開)の費用は有益に回避され得る。改質ステージとFT合成ステージとの間の介在操作と同様、介在操作の不使用、限定的介在操作、および/またはFT合成ステージと仕上げステージとの間の特定の介在操作の省略は、統合プロセス全般的単純化に関連する利益をもたらす。例えば特定の利益は、すべてまたは実質的にすべての合成ガス生成物がFT供給物で使用され、かつ/またはすべてまたは実質的にすべてのFT生成物が仕上げ供給物で使用される場合に生ずる。他の実施形態では、凝縮水含有部分を除くすべてまたは実質的にすべての合成ガス生成物は、FT供給物で使用され、かつ/またはすべてまたは実質的にすべてのFT生成物は仕上げ供給物で使用される。
【0074】
仕上げ反応機(複数可)中の条件は、水素化異性化および/または水素化分解反応を含むかまたは場合によればそれらからなる仕上げ反応に従って、ノルマルC20 炭化水素をC-C19炭化水素に変換するために好適である。仕上げ反応機は、例えば単一槽内でFT触媒床に直連結く仕上げ触媒床を使用することで、またはそうでなければ単一槽内で2つのタイプの触媒を散在させることで、FT反応機に組み込まれ得る。しかし概して、仕上げ反応条件が、前述のようにFT反応条件から独立して維持され得るよう、少なくとも1つの別個の仕上げ反応機の(例えば別個の仕上げ反応機槽での)使用が好ましい。別個の仕上げ反応機は、例えば(i)FT反応機と比較して異なるタイプの反応機中で仕上げ触媒を維持する場合、例えば反応熱を除去する能力に関して、通常、固定床反応機は同じ設計上の制限を被らないから、通常FT反応機と比較してより単純な設計の固定床反応機の中で仕上げ触媒を維持する場合、(ii)FT触媒を除去し、かつ/または交換するときと必ずしも一致しない時間(例えば間隔が異なる)に仕上げ触媒を除去し、かつ/または交換する場合、および/または(iii)FT反応機と比較して異なる温度(例えば、より高温)で仕上げ反応機を運転する場合に、利益であり得る。別個の仕上げ反応機の使用に関して、FT反応機の流出口(流出物)から仕上げ反応機の流入口まで、FT生成物(または仕上げ反応機の中で使用されるこの生成物の少なくとも任意の部分)を高い温度で維持して、任意のノルマルC20 炭化水素、および固体ワックスと同様の高融点温度を持つ他の炭化水素の堆積を防止することが、重要であり得る。そうでなければ、そのような堆積は、仕上げステージ中の変換から生成される所望の生成物の損失だけでなく、プロセス機器の閉塞および/または汚れをもたらし得、作動障害に繋がる。仕上げ反応機の使用はまた、任意のノルマルC20 炭化水素の凝縮が防止される場合、つまりすべてまたは実質的にすべてのFT生成物がFT反応機の流出口から仕上げ反応機の流入口まで蒸気相で維持される場合に単純化され得る。例えば堆積および/または凝縮を防止するため、FT反応機の流出物から仕上げ反応機の流入口まで、ここで記載のようにFT生成物を以下の温度から仕上げ反応機に好適な温度に加熱するなどの場合、FT生成物は少なくとも約66℃(150°F)、少なくとも約121℃(250°F)、少なくとも約216℃(420°F)、またはさらに少なくとも約327℃(620°F)の温度で維持され得る。
【0075】
代表的実施形態において、仕上げ反応条件(少なくとも1つの仕上げ反応機での使用に好適)は、約232℃(450°F)~約399℃(750°F)の範囲、または約304℃(580°F)~約371℃(700°F)の範囲の温度を含み得る。他の仕上げ反応条件は、約621kPa(90psig)~約3.38MPa(490psig)、または約2.00MPa(290psig)~約3.10MPa(450psig)のゲージ圧力を含み得る。
【0076】
仕上げ反応機(複数可)において、仕上げ供給物は、仕上げ反応条件下で、好適な仕上げ触媒(例えば仕上げ反応機内に配置された仕上げ触媒粒子の床)と接触し得、この条件は前述の温度および/または圧力を含み得る。また前述のように仕上げ触媒は好ましくは、FT生成物中に存在するノルマルC20 炭化水素の水素化分解および/または水素化異性化のための活性を有する。このような炭化水素、つまり固体ワックスの特徴は、ここで記載のように液体燃料成分としてより望ましいC-C19炭化水素に関連して、フィッシャー・トロプシュ反応化学によって得られるノルマル炭化水素の炭素数分布に由来する。当業で理解されているように、水素化異性化とは、水素の存在下で分岐炭化水素を生成するノルマル炭化水素の反応を指す。水素化分解とは、炭化水素が水素と反応して低炭素原子数、およびしたがって低分子量を有する炭化水素を生成する反応を指す。水素化異性化は、低炭素原子数を有し、かつ液体燃料の成分として有用な炭化水素(例えばC-C19炭化水素)の特徴を改善するために有益であり、このような炭化水素は仕上げ供給物および/またはFT生成物中に存在し得るか、または仕上げ反応機(複数可)の中で水素化分解することで生成され得る。このような特徴には、仕上げ供給物および/またはFT生成物と比較して、仕上げ生成物中に存在するナフサ沸点範囲炭化水素の高オクタン価(例えばリサーチ法オクタン価および/またはモーター法オクタン価)が含まれる。またこのような特徴には、仕上げ供給物および/またはFT生成物と比較して、仕上げ生成物中に存在するディーゼル沸点範囲炭化水素の流動点低下が含まれる。水素化分解は、仕上げ供給物の炭素数分布に対する全般的影響に有益であり、その影響はFT生成物の影響に対応し得、特に仕上げ供給物および/またはFT生成物中に存在するノルマルC20 炭化水素の重量パーセンテージを減少させ、かつ場合によっては除去させるために有益である。このような室温で固体である炭化水素は、そのような炭化水素を含有する生成物が通常のパイプラインによる輸送能力を妨害する。
【0077】
水素化異性化および水素化分解反応の両方は水素を必要とすることから、好ましい実施形態ではこの水素は、仕上げ反応機に向かう仕上げ供給物および/またはFT生成物中に存在する。例えば、下流FT反応機の中で未変換の合成ガス生成物中の水素は、仕上げ反応機またはFT反応機下流に補足的水素供給源を追加する必要なく、仕上げ反応機の運転を可能にし得る。いくつかの実施形態によると、水素は、最低の約20mol%(例えば約20mol%~約75mol%)、少なくとも約30mol%(例えば約30mol%~約65mol%)、または少なくとも約40mol%(例えば約40mol%~約60mol%)の濃度で、補足的水素供給源を導入せずに、改質ステージで生成された水素および/または合成ガス生成物中に存在する水素を越えて、仕上げ供給物および/またはFT生成物中に存在する。他の実施形態によれば、仕上げステージ(例えばFT合成ステージのFT反応機の下流)の仕上げ反応機または仕上げ反応機の上流に追加される補足的水素供給源は、そのような水素濃度を実現するのに使用され得る。代表的な補足的水素供給源は、精製された(例えばPSAまたは膜分離により)水素、または不純物のある水素(例えばシンガス)である。
【0078】
代表的仕上げ触媒が、前述のようにノルマルC20 炭化水素に対してワックスを変換するための活性、つまり水素化異性化および水素化分解の活性を有する場合、代表的仕上げ触媒は脱ろう触媒とも呼ばれ得る。仕上げ触媒または脱ろう触媒の例は、固体担持体上の少なくとも1つの脱ろう活性(例えば水素化異性化および/または水素化分解の活性)金属を備える。句「固体担持体上」は、活性金属(複数可)が担持体表面の上および/または担持体の多孔質内部構造内にある触媒を包含することを意図する。代表的な脱ろう活性金属は、周期表の13族または14族などの、周期表の12族~14族から選択され得る。特定の脱ろう活性金属はガリウムである。少なくとも1つの脱ろう活性金属は、例えば脱ろう触媒の重量に基づいて、約0.1wt%~約3wt%、または約0.5wt%~約2wt%の量で存在し得る。周期表の12~14族から選択された金属の組み合わせなどの脱ろう活性金属の組み合わせが使用される場合、次いでそのような金属はこのような範囲内の合計量中に存在し得る。概して脱ろう触媒は、前述の脱ろう活性金属(複数可)以外の脱ろう触媒の重量に基づいて、約1wt%超、または約0.5wt%超の量または合計量で、いかなる金属(複数可)も担持体上に備え得ない(例えばこの量またはこの合計量で、周期表の12~14族の金属以外の金属、周期表の13族もしくは14族の金属以外の金属、またはガリウム以外の金属は備えない)。好ましくは、脱ろう触媒は、前述の脱ろう活性金属(複数可)以外の金属を担持体上に備えない(例えば、周期表の12~14族の金属以外の金属、周期表の13族もしくは14族の金属以外の金属、またはガリウム以外の金属は備えない)。
【0079】
水素化分解活性を促進するため、仕上げ触媒または脱ろう触媒の固体担持体は、より具体的には固体酸性担持体であり得る。担持体の酸性度は、例えば、275℃(527°F)~500℃(932°F)の温度にわたる担持体のアンモニア飽和サンプルから、アンモニア量の昇温脱離(TPD)(アンモニアTPD)によって決定され得、この温度は、アンモニアが物理吸着される温度を越える。担持体1グラム当たりの酸性部位のミリモル(mmol/g)という単位の酸性部位の量はそれゆえ、この温度範囲における担持体1グラム当たりの脱離アンモニアのミリモルに対応する。代表的な固体担持体は、ゼオライトまたは非ゼオライトの分子ふるいを備え、アンモニアTPDによって測定される場合、少なくとも約15mmol/g(例えば約15mmol/g~約75mmol/g)の酸性部位、または少なくとも約25mmol/g(例えば約25mmol/g~約65mmol/g)の酸性部位を持つ。ゼオライト分子ふるいの場合、酸性度はシリカ対アルミナ(SiO/Al)モルフレームワーク比(molar framework ratio)の関数であり、固体担持体がゼオライト分子ふるい(ゼオライト)を備える実施形態において、それのシリカ対アルミナモルフレームワーク比は、約60未満(例えば1~60)または約40未満(例えば5~40)であり得る。特定の固体担持体には、FAU、FER、MEL、MTW、MWW、MOR、BEA、LTL、MFI、LTA、EMT、ERI、MAZ、MEI、およびTONからなるグループから選択され、好ましくはFAU、FER、MWW、MOR、BEA、LTL、およびMFIのうち1つ以上から選択された、構造型を持つ1つ以上のゼオライト分子ふるい(ゼオライト)が備えられ得る。文献[Meier,W.M,et al.、Atlas of Zeolite Structure Types、4thEd.、Elsevier:Boston(1996)]では、このようなおよび他の構造型を有するゼオライトの構造が記載され、さらに参照文献が提供されている。具体的事例として、ゼオライトY(FAU構造)、ゼオライトX(FAU構造)、MCM-22(MWW構造)、およびZSM-5(MFI構造)が含まれるが、ZSM-5が模範的である。
【0080】
ゼオライトおよび非ゼオライトの分子ふるい以外の固体担持体として、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムなどのうち任意の1つ以上などの金属酸化物が含まれる。代表的実施形態では固体担持体は、(i)単一型のゼオライト分子ふるい、(ii)単一型の非ゼオライト分子ふるい、または(iii)単一型の金属酸化物を備え得、(i)、(ii)、または(iii)は、脱ろう触媒の重量に基づいて、約75wt%より大きい量(例えば約75wt%~約99.9wt%)、または約90wt%より大きい量(例えば約90wt%~約99wt%)で存在する。結合剤および他の添加剤などの担持体の他の成分は、脱ろう触媒の重量に基づいて、約10wt%未満(例えば約1wt%~約10wt%)の量または合計量などの小量で存在し得る。
【0081】
模範的な脱ろう触媒には、前述のような量(例えば脱ろう触媒の重量に基づいて約0.5wt%~約2wt%、例えば約1wt%)でZSM-5を備えるか、または場合によれば実質的にZSM-5から本質的になる担持体上に存在する、脱ろう活性金属としてのガリウムが備えられる。ZSM-5の代表的シリカ対アルミナモルフレームワーク比は、上に記載されている。
【0082】
ここで記載の仕上げ触媒または脱ろう触媒、および仕上げ反応条件は概して、少なくとも約80%(例えば約80%~約100%)、少なくとも約85%(例えば約85%~約98%)、または少なくとも約90%(例えば約90%~約95%)のノルマルC20 炭化水素(例えばノルマルC20-C60炭化水素)の変換を実現するために好適である。そのような高変換レベルは、FT生成物の品質の改善のために、特に固体ワックスの分離または変換を行う必要もなく液体燃料として輸送可能(例えばパイプラインによる)な能力に関して重要である。ノルマルC20 炭化水素の低分子量C-C19炭化水素への変換はまた、FT合成ステージ単独の運転と比較してこのような炭化水素の収率全体を改善する。好ましくは仕上げステージ(例えばこのステージの仕上げ反応機)において、少なくとも約75%(例えば約75%~約100%)、少なくとも約85%(例えば約85%~約98%)、または少なくとも約90%(例えば約90%~約97%)の、FT生成物中のノルマルC20 炭化水素が、C-C19炭化水素に変換される。つまり、仕上げステージにおいてノルマルC20 炭化水素の変換からのC-C19炭化水素の収率は、この範囲内である。好ましくは仕上げ生成物(または仕上げ反応機の水素化異性化/水素化分解生成物)は、約2wt%未満またはさらに約1wt%未満の、室温で固体である炭化水素(例えばノルマルC20 炭化水素)を備える。代表的実施形態において、ノルマルC20 炭化水素は、仕上げステージ(例えばこのステージの少なくとも1つの仕上げ反応機内)において、(i)約25%~約70%、または約40%~約60%のイソパラフィン(分岐)炭化水素、(ii)約10%~約35%、または約15%~約25%の芳香族炭化水素、(iii)約50%~約95%、または約70%~約90%のガソリン沸点範囲炭化水素、(iv)約5%~約45%、または約10%~約30%のディーゼル沸点範囲炭化水素、および/または(v)約1%未満または約0.5%未満のVGO沸点範囲炭化水素の収率で、(例えば完全変換または実質的に完全変換で、および/または前述の変換範囲内で)変換され、このような収率は、仕上げ生成物中のこのような成分に変換される、仕上げ反応機に提供される仕上げ供給物中のノルマルC20 炭化水素中の炭素全体のパーセンテージを示す。有益なことに、イソパラフィン炭化水素は、このような留分の流動点および曇り点の両方を低下させることで、ディーゼル沸点範囲炭化水素の品質を改善する。イソパラフィン炭化水素と芳香族炭化水素の両方は、このような留分のオクタン価(例えばリサーチ法オクタン価および/またはモーター法オクタン価)を増加させることで、ガソリン沸点範囲炭化水素の品質を改善する。代表的実施形態では、仕上げステージにおいてノルマルC20 炭化水素の変換から取得されるガソリン沸点範囲炭化水素は、少なくとも約75(例えば約75~約85)のリサーチ法オクタン価を持つ。
【0083】
前述のように仕上げステージ(例えばこのステージの少なくとも1つの仕上げ反応機内)におけるノルマルC20 炭化水素の変換レベルは100%未満であり得、それゆえ仕上げ供給物中のこのノルマルC20 炭化水素の一部分は未変換のまま残り得る。C-C19炭化水素および/または分岐C20 炭化水素への完全な変換などの、ノルマルC20 炭化水素の完全な変換を実現するため、仕上げ反応条件は、温度を上昇させること、圧力を増加させること、WHSVを減少させることなどによって、より厳格にされ得る。しかし、ノルマルC20 炭化水素の完全な変換は、好ましい実施形態に従って固体相炭化水素がなく、それゆえ液体燃料として簡単に輸送可能な仕上げ生成物を提供するという意味で、FT生成物および/または仕上げ供給物の完全な「脱ろう」を実現するための要件ではないことが理解されるべきである。それにもかかわらずノルマルC20 炭化水素の不完全な変換(前述の特定範囲内の変換レベルの達成など)は、仕上げ生成物を提供し得、ここで、ノルマルC20 炭化水素の変換から得られた十分な生成物、すなわち(i)室温(20℃)を下回る融点を持つ十分な非ノルマルC20 炭化水素(例えば分岐C20 炭化水素)および/または(ii)十分なC-C19炭化水素は、(i)と(ii)とを備える仕上げ生成物中で任意の未変換のノルマルC20 炭化水素が室温で溶解される場合、仕上げ生成物中に存在する。
【0084】
それゆえ本発明の実施形態は、仕上げステージのない場合のFT合成ステージと比較して(つまりベースラインFT合成ステージまたはFT合成反応と比較して)、所望の生成物に対する選択度全体および収率を改善し、かつ/または望ましくない生成物(とりわけワックス)に対する選択度全体および収率を減少させる、FT合成ステージに続く仕上げステージの使用に関する。例えば仕上げステージは、FT合成反応によって生成されたいくらかまたはすべてのワックス(例えば前述のようにノルマルC20 炭化水素の変換レベルで)を有益に変換し得、それによってFT合成ステージと仕上げステージの組み合わせにおけるワックスに対する選択度(および/またはその収率)を、ベースラインFT合成ステージと比較して減少させる。代表的実施形態では、ワックスに対する選択度(および/またはその収率)は、ベースラインFT合成ステージでの約10%~約50%、例えば約20%~約45%の値から、FT合成ステージと仕上げステージの組み合わせでの約0%~約10%、例えば約0.5%~約5%の値に減少する。好ましくは、このワックスに対する選択度(および/またはその収率)は、約0.5%未満に減少する。前述のように、仕上げ生成物中の小量のワックスは、任意の未変換のノルマルC20 炭化水素、および/または概して室温を上回る温度で溶融する任意の炭化水素が、仕上げ生成物中で溶解性を下回る量(つまり、生成物中に完全に溶解され得る量)で存在する場合、許容可能であり得る。他の代表的実施形態では、C-C19液体炭化水素に対する選択度(および/またはその収率)は、ベースラインFT合成ステージでの約15%~約45%、例えば約20%~約35%の値から、FT合成ステージと仕上げステージの組み合わせでの約40%~約75%、例えば約50%~約70%の値に増加する。ベースラインFT合成ステージ、およびFT合成ステージと仕上げステージの組み合わせについて、ワックスまたはC-C19炭化水素に対する選択度は、FTによって変換されるCO中の炭素のパーセンテージに基づき、この炭素は、それぞれワックスまたはC-C19液体炭化水素になる。ベースラインFT合成ステージ、およびFT合成ステージと仕上げステージの組み合わせついて、ワックスまたはC-C19炭化水素の収率は、FT合成ステージに投入されるCO(例えば、変換されたかどうかにかかわらず、FT供給物と投入されたCO)中の炭素のパーセンテージに基づき、この炭素は、それぞれワックスまたはC-C19液体炭化水素になる。仕上げステージ(例えば仕上げ反応機)を組み込んだ結果として、このような(i)ワックスに対する選択度(および/またはその収率)の減少、および/または(ii)C-C19液体炭化水素に対する選択度(および/またはその収率)の増加は、ベースラインFT合成ステージにおいて取得されたCO変換と、FT合成ステージと仕上げステージの組み合わせにおいて取得されたCO変換と、の間に有意な差なしに達成され得る。例えばベースラインFT合成ステージおよびFT合成ステージと仕上げステージの組み合わせの両方で取得されたCO変換値は、FT合成ステージの性能基準に関して前述のような範囲内であり得る。すなわち、仕上げステージは一般に、FT合成ステージ単独で取得されたCO変換に有意には影響しなく、その結果ベースラインFT合成ステージおよびFT合成ステージと仕上げステージの組み合わせの両方で達成されたCO変換は、同一または実質的に同一であり得る。
【0085】
前述のように、仕上げステージでの変換レベルは、仕上げステージ(例えばこのステージの仕上げ反応機)を通して単一通過で達成された「通過当たりの」変換に基づき得るか、またはそうでなければ、FT合成ステージに関して前述のように、仕上げ生成物のリサイクル部分を仕上げステージ(例えばこのステージの仕上げ反応機)に戻すことで達成された変換全体に基づき得る。ノルマルC20 炭化水素の所望の変換は、前述の仕上げ反応条件(例えば仕上げ反応温度および/または圧力)を調整することで、かつ/または上記に規定のように単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)を調整することで実現され得る。仕上げ反応条件は、概して約0.05hr-1~約35hr-1、一般に約0.1hr-1~約20hr-1、およびしばしば約0.5hr-1~約10hr-1の単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)を含み得る。仕上げ反応条件は、仕上げ反応機から出る仕上げ生成物のリサイクル部分を仕上げ供給物と組み合わせるために仕上げ供給物に戻すか、またはそうでなければ仕上げ反応機に再び戻すことを任意選択的に含み得る。リサイクル運転は、リサイクルのゆえに高度の変換全体を達成しながら、仕上げ反応機の比較的低い「通過当たりの」変換での運転を可能にする。ただし好ましくは、仕上げ反応条件は仕上げ生成物のリサイクルをほとんどまたはさらに全く含まない。例えば仕上げ反応条件は、リサイクルされた仕上げ生成物の仕上げ供給物に対する重量比(例えば「リサイクル比」)を含み得、このリサイクルされた仕上げ生成物および仕上げ供給物は共に、FT合成ステージに関して前述のもののうちFT反応機に、組み合わせた供給物を提供する。好ましくはリサイクル比は0であり得、つまり仕上げ生成物リサイクルが使用されず、その結果通過当たりの変換は変換全体に等しい。有益なことに仕上げ生成物リサイクルが存在しない場合、光熱費が節約され、統合プロセスの全設計が簡略化される。
【0086】
本発明の実施形態はそれゆえ、前述のような仕上げ供給物などの、C 炭化水素を備える供給物においてC20 炭化水素(例えばノルマルC20 炭化水素)を変換するプロセスに関し、この供給物は前述のようにFT生成物のすべてまたは一部を備え得る。C 炭化水素を備える供給物は、全炭化水素の重量に基づいて、または供給物の重量に基づいて、少なくとも約5wt%(例えば約5wt%~約30wt%)、または少なくとも約10wt%(例えば約10wt%~約25wt%)の量の、例えばC20 炭化水素を備え得る。供給物は、水素(例えば仕上げ供給物に関して前述の量)、CO、および/またはCOをさらに備え得る。該プロセスは、供給物を、例えばゼオライト分子ふるい担持体(ZSM-5)上に周期表の12族~14族から選択された活性金属(例えばガリウム)を備える前述の仕上げまたは脱ろう触媒に接触させて、ここで記載のような変換レベル、および低炭素数炭化水素と炭化水素留分に対する収率と選択度、ならびに他の性能基準で、C20 炭化水素の変換を実現するステップを備える。
【0087】
全体的な性能基準、利益、および模範的実施形態
前述のように統合プロセス、および特に(i)前述のように乾式改質またはCO-スチーム改質プロセスを組み合わせた利用は、(ii)フィッシャー・トロプシュ合成、および(iii)任意選択的な仕上げ(脱ろう)と組み合わせられて、「統合CSR-FTプロセス」と呼ばれ得、天然ガス中のメタンなどの炭化水素を1つ以上の液体燃料に直接変換するために使用され得る。そのような液体燃料(複数可)は、C-C炭化水素などの低炭素数炭化水素と共に、前述のように仕上げステージ(例えばこのステージの反応機)から出る仕上げ生成物として与えられ得る。このような低炭素数炭化水素は未変換の残留ガス(例えばH、CO、および/またはCO)と共に、気液平衡分離ステージを提供するフラッシュ分離槽を使用して、液体燃料(複数可)(C-C19炭化水素および任意選択的に分岐C20 炭化水素を備える)から分離され得る。代替的に、蒸留を使用した分離の場合のように、複数の気液平衡分離ステージが使用されて、例えば、大部分、実質的にすべて、またはすべてのガソリン沸点範囲炭化水素を備える留分を大部分、実質的にすべて、またはすべてのディーゼル沸点範囲炭化水素を備える留分から分離することで、低炭素数炭化水素を分離し得、かつ液体燃料を分離し得る。さらに他の実施形態では、低炭素数炭化水素および残留ガスを仕上げ生成物から初期分離し、その後、蒸留を使用して仕上げ生成物中の液体燃料を分離するために、フラッシュ分離槽が使用され得る。
【0088】
ここで記載の統合CSR-FTプロセスには多数の利益が発生し、その利益として前述のように、高い通過当たりの変換でのFT合成ステージの運転に関連する利益が含まれる。このような利益には、リサイクルを行わずに、FT生成物中の炭化水素分布を、高炭素原子数を持ち、かつ液体燃料中に存在する炭化水素の方向にシフトさせる、FT合成ステージを運転するオプションが含まれ、それによって望ましくないC-C炭化水素の収率を低下させる。代表的実施形態において、統合CSR-FTプロセスは、前述のように該プロセスに供給されたガス状混合物および/または炭化水素含有供給原料中に存在する炭化水素(例えばメタン)を変換し得、その結果当初該プロセスで変換された炭化水素中に存在していた炭素の少なくとも約70%(例えば約70%~約95%)、または少なくとも約85%(例えば約85%~約95%)が、仕上げ生成物中のC-C19液体炭化水素に存在する。つまり、このような炭化水素(例えば、ナフサ沸点範囲炭化水素およびディーゼル沸点範囲炭化水素)を備える液体燃料(複数可)に対する、統合CSR-FTプロセス全体の選択度は、この範囲内であり得る。また、当初該プロセスで変換された炭化水素中に存在する炭素の最大約25%(約5%~約25%)、または最大約15%(約10%~約15%)が、仕上げ生成物のC-C炭化水素中に存在し得る。すなわち、このような低炭素数炭化水素に対する、統合CSR-FTプロセス全体の選択度は、この範囲内にあり得る。加えて、このような低炭素数炭化水素が仕上げ生成物の蒸気留分として分離され得る場合、この蒸気留分は燃焼発熱量(燃料値)ゆえに、燃焼されて統合CSR-FTプロセス中の他の場所に、とりわけ改質ステージの改質反応機の炉またはホットボックスに熱エネルギーを提供し得る。これは、特に蒸気留分が一般にC-C炭化水素ばかりか、同様に可燃性の残留Hおよび/またはCOを備えるという事実を考慮すると、改質ステージの吸熱乾式改質および/またはCO-スチーム改質反応を持続するために必要な熱の少なくとも一部分、場合によればすべての熱の生成を可能にするであろう。
【0089】
さらに任意選択的な仕上げステージの使用は、すべてまたは実質的にすべてのワックス(例えばノルマルC20 炭化水素を備える)を、低炭素数(例えばC-C19炭化水素の範囲内)を持ちかつ液体燃料として有益な炭化水素に、効果的に変換し得る。また、任意選択的な仕上げステージは、ワックスの一部分を、室温未満の融点を持つイソパラフィンC20 炭化水素に変換し得る。室温超の融点を持つ任意の炭化水素が仕上げ生成物中に存在する場合、そのような炭化水素の量は十分に小さいために、本生成物中に完全に可溶性であり得、それによって有益にも仕上げ生成物の液体留分はパイプラインによる輸送に好適になる。さらに仕上げステージは、FT生成物および/または仕上げ供給物中に存在する他の炭化水素(例えばC-C19炭化水素)を異性化し得、それによってFT生成物および/または仕上げ供給物中のそれぞれの値と比較して、仕上げ生成物中に存在するガソリン沸点範囲炭化水素のオクタン価を上昇させ、および/またはディーゼル沸点範囲炭化水素の流動点および/または曇り点を低下させる。
【0090】
図3は、代表的な統合CSR-FTプロセス100のフロースキームを示し、そのフロースキーム中で、前述されかつ図1Aまたは図1Bで示されるように、乾式改質またはCO-スチーム改質プロセス10は、FT反応機20および仕上げ反応機30を使用して、前述のように液体炭化水素を生成するために下流加工ステップと統合される。統合CSR-FTプロセス100によれば、ガス状混合物4は、前述のように、システム流入部(system input)15からガス状混合物の供給源またはこのガス状混合物の1つ以上の成分の供給源(例えば天然ガスなどの炭化水素含有供給原料)までなどの連結により提供され得る。ガス状混合物4は、システム流入部15から改質反応機5に送られ得、この反応機は、前述のように改質条件下で作動し得、前述のように触媒などの改質触媒6を任意選択的に備え得る。改質反応機5から受け取った合成ガス生成物7は、合成ガス生成物冷却機17に送られ、例えば前述のように代表的な改質条件の温度から、前述のように代表的な下流FT反応条件の温度に冷却され得る。冷却された合成ガス生成物19は、合成ガス生成物冷却機17から受け取り得、凝縮水22を冷却された合成ガス生成物19から除去するため、任意選択的な凝縮機21に送られ得る。この場合、凝縮水22はシステム水(または水性生成物)産出物として提供される。
【0091】
任意選択的な凝縮機21が統合CSR-FTプロセス100に含まれるか、それから除外されているかに拘らず、冷却された合成ガス生成物19は圧縮機23に送られて、前述のように冷却された合成ガス生成物19の圧力を、代表的なFT反応条件の圧力に上昇させ得る。FT供給物27は、圧縮機23から受け取り得、FT反応機20に送られ得、前述のようにこの反応機はFT反応条件下で作動し得、任意選択的に前述のようにFT触媒を備え得る。そのため、合成ガス生成物7のすべてまたは一部はFT反応機20に送られてFT供給物27のすべてまたは一部を形成し得る(例えば、水を凝縮した後に取得された合成ガス生成物7の一部は、FT供給物27のすべてまたは実質的にすべてを形成し得る)。FT生成物29は、FT反応機20から受け取り得、任意選択的なFT生成物加熱機31に送られ得る。任意選択的なFT生成物加熱機31は、前述のようにFT生成物29を代表的な仕上げ反応条件の温度に加熱するために使用され得る。代替として、FT反応機20および下流仕上げ反応機30の両方は、同一または実質的に同一の温度で運転され得、その結果任意選択的なFT生成物加熱機31は統合CSR-FTプロセス100から取り外され得る。FT生成物29のすべてまたは一部は仕上げ反応機30に送られて、仕上げ供給物32のすべてまたは一部を形成し得る(例えばすべてのFT生成物29は仕上げ供給物32のすべてまたは実質的にすべてを形成し得る)。仕上げ反応機30は、前述のように仕上げ反応条件下で作動し得、任意選択的に前述のように仕上げ触媒を備え得る。仕上げ生成物33は、仕上げ反応機30から受け取り得、仕上げ生成物分離機50に送られ得、この分離機は、蒸気留分37および液体留分39などの仕上げ生成物33の分離留分を、それぞれシステム蒸気産出物40およびシステム液体産出物45に提供する。
【0092】
代替実施形態によれば、仕上げ生成物分離機50から受け取った蒸気留分37は、統合CSR-FTプロセス100内で維持され得、前述のように代表的な改質条件の温度で改質触媒6を維持する燃料供給源として、改質反応機5の炉またはホットボックスに送られ得る。そのような実施形態では、煙道ガス流出物(図示せず)は、蒸気留分37の代わりにシステム蒸気産出物として提供され得る。他の代替実施形態によれば、蒸気留分37(前述のように改質反応機5を加熱する燃料供給源として代替的に使用され得る)に加えて、分離機50は、単一ステージ(蒸気/液体)フラッシュ分離機とは異なり、例えば分離機50が蒸留塔として作動してこのような留分を分解する場合に、ガソリン沸点範囲炭化水素含有留分41およびディーゼル沸点範囲炭化水素含有留分43などの、仕上げ生成物のより限定された液体留分をシステム液体産出物として提供し得る。この場合、液体留分39はより具体的には、VGO沸点範囲含有炭化水素留分などの高炭素数炭化水素含有留分であり得る。さらなる実施形態によれば、分離機50は仕上げ生成物33の液体留分39のすべてまたは実質的にすべてを第2分離機55に提供して、分離機50に関して前述のように、より限定された液体留分41、43を提供し得る。この場合図3で示されるように、第2分離機55は統合CSR-FTプロセス100の外部にあり得るか(例えば液体留分を分解するために遠隔の場所で使用され得る)、またはそうでなければこのプロセス内に含まれ得る。
【0093】
また統合CSR-FTプロセスに加えて本発明の態様はそれゆえ、図3に示すように統合CSR-FTプロセス100を含む、そのようなプロセスを実施するシステムまたは装置に関する。したがって、本発明の特定の実施形態は、メタンおよび/または他の軽質炭化水素から液体燃料として有益なC 炭化水素を生成するシステムまたは装置に関する。該システムまたは装置は、以下のうち1つ以上を備え得る:(i)システム流入部15を介して、ガス状混合物4の供給源に、例えばメタンとCOを備える天然ガスの供給源に連結されるように構成される改質反応機5。改質反応機5は、前述のように改質触媒4を収容し得、かつ/または例えば前述のように改質条件下でガス状混合物4からHとCOとを備える合成ガス生成物7を生成または提供するようにさらに構成され得る;(ii)改質反応機5から合成ガス生成物7を受け取る(および/または冷却する)ように構成される合成ガス生成物冷却機17。合成ガス生成物冷却機17は、改質反応機5に連結され得るか、そうでなければ、改質反応機5の流出口に連結されるように構成される流入口を持ち得る;(iii)合成ガス生成物冷却機17から冷却された合成ガス生成物19を受け取る(かつ/または圧縮する)ように構成される圧縮機23。圧縮機23は、合成ガス生成物冷却機17に連結され得るか、そうでなければ、そうでなければ合成ガス生成物冷却機17の流出口に連結されるように構成される流入口を持ち得る;(iv)圧縮機23からFT供給物27(例えば圧縮された産出物として)を受け取るように構成されるFT反応機20。FT反応機20は前述のようにFT触媒を収容し得、かつ/または例えば前述のようにFT反応条件下で、合成ガス生成物7中のHとCOを変換することで、FT供給物27からC 炭化水素を含む炭化水素を備えるFT生成物29を生成または提供するようにさらに構成され得る。FT反応機20は、圧縮機23に連結され得るか、またはそうでなければ圧縮機23の流出口に連結されるように構成される流入口を持ち得る;(v)任意選択的なFT生成物加熱機31から加熱された産出物として、またはそうでなければFT生成物29として直接に、仕上げ供給物32を受け取るように構成される仕上げ反応機30。仕上げ反応機30は、前述のように仕上げ触媒を収容し得、かつ/または例えば前述のように仕上げ反応条件下で、FT生成物29中のノルマルC20 炭化水素の変換によってノルマルおよび分岐C-C19炭化水素を備える仕上げ生成物33を生成または提供するようにさらに構成され得る。仕上げ反応機30は、FT反応機20または任意選択的なFT生成物加熱機31に連結され得るか、または仕上げ反応機30は、FT反応機20または任意選択的なFT生成物加熱機31の流出口に連結されるように構成される流入口を持ち得る;および(vi)仕上げ反応機30から仕上げ生成物33を受け取るように構成され、システム蒸気産出物40およびシステム液体産出物45を経て、仕上げ生成物33の蒸気留分37と液体留分39それぞれを提供または分離するようにさらに構成される仕上げ生成物分離機50。仕上げ生成物分離機50は、仕上げ反応機33に連結され得るか、または仕上げ反応機33の流出口に連結されるように構成される流入口を持ち得る。そうでない場合、分離機50は、前述のように仕上げ生成物33のより限定された液体留分41、43をシステム液体産出物として提供するように構成され得る。代替的に分離機50は、前述のように、より限定された規定以上の液体留分41、43を提供するため、第2分離機55に連結され得るか、またはそれに連結されるように構成され得る。
【0094】
統合CSR-FTプロセス100、または関連するシステムもしくは装置は、任意選択的に、冷却された合成ガス生成物19から液体の水を凝縮させるように構成される凝縮機21をさらに備え得る。この場合、圧縮機23は、凝縮機21から冷却された合成ガス生成物19を受け取り、続いて凝縮水22を除去するように構成され、この凝縮水は、システム水(または水性生成物)産出物として提供され得る。圧縮機23は、凝縮機21に連結され得るか、そうでなければ凝縮機21の流出口に連結されるように構成される流入口を持ち得る。
【0095】
前述の説明を考慮すると、統合CSR-FTプロセス、ならびに関連するシステムおよび装置は、メタンなどの炭化水素含有ガスを液体燃料に変換する非常に経済的な方法を提供し得ることが理解され得る。各プロセスステップまたは各システム要素は、次のステップまたは要素とシームレスに統合され得る。そのような統合は、有益なことに、1つ以上の以下のステップの省略などによって、従来の特定のステップおよび関連する要素(機器)および費用(資本費用および運転費用の両方)の必要もなく可能である:(i)CO含有量の多い天然ガス供給源からCOの除去(例えばアミンスクラビングの使用)、(ii)FT反応機の上流で、合成ガス生成物のH:COモル比の調整、(iii)(例えば別個の水素化処理反応機内で固体ワックスの加工のために)仕上げ反応機の上流で、固体ワックスまたは凝縮液体ワックス(例えばノルマルC20 炭化水素を備える)のFT生成物からの分離。実際、CSR-FTプロセス、ならびに関連するシステムおよび装置は、ここで記載のように有益に作動し得、その結果ガス状混合物4の追加および仕上げ生成物33の留分の除去、また場合によると凝縮水22(または水性生成物)の除去を除いて改質、FT合成、および仕上げのステージ途中で、いかなる材料も追加および/または除去されない。このような方式で統合CSR-FTプロセス、および関連するシステムおよび装置は、能率化および単純化され得、液体燃料生成に関連する経済的に好ましい運転と実装を可能にする。
【0096】
さらにこの単純性は、小規模で作動可能であり、かつさらにいくつかの実施形態では例えばトラック、船、列車、または飛行機で輸送可能である、そのような統合CSR-FTプロセス、ならびに関連するシステムおよび装置を可能にする。例えば統合CSR-FTプロセス100、または関連するシステムもしくは装置は前述のように、天然ガスの供給源、他の好適な炭化水素含有供給原料の供給源、および/またはさらにCO含有産業廃ガスの供給源に簡単に輸送できるよう、スキッドに取り付けられ得る(スキッドマウントされ得る)。例えば統合CSR-FTプロセス100は、有益なことに、フレア天然ガスを液体燃料に変換し、坑井現場で温室効果ガス(GHG)排出を減少させるために使用され得る。そのようなプロセスが輸送可能である場合、単一プロセスまたはその関連システムもしくは装置は、このような両方の目的で使用され得、かつ/または、その供給源の位置が異なる場合であっても、前述のように、他の多様な異なるガス状混合物およびそれの混合物の成分(例えば炭化水素含有供給原料)と共に使用され得る。
【0097】
バイオマス水素化熱分解との統合
前述のように、バイオマスの水素化熱分解から再生可能炭化水素燃料を生成するプロセスは、メタンおよび/または他の軽質炭化水素を備えるガス状混合物を、COと組み合わせて提供し得る。そのため、そのようなガス状混合物は、CO-スチーム改質プロセスへの潜在的供給物を表すか、またはそうでなければ前述のように統合CSR-FTプロセスへの潜在的供給物を表し、このガス状混合物は、(i)CO-スチーム改質プロセスの場合に水素含有合成ガスに、(ii)統合CSR-FTプロセスの場合に液体燃料に、変換され得る。実施形態(i)に関して、水素含有合成ガスは、水素化熱分解プロセスを持続するために使用される水素供給源として使用され得、任意選択的にそのH濃縮部分を得るための精製が続く。実施形態(ii)に関して、統合CSR-FTプロセスから生成された液体燃料は、有益にも生物起源(再生可能)液体燃料の収率全体を、バイオマス水素化熱分解からそれとは違った風に取得され得る収率と比較して上昇させ得る。この上昇は、統合CSR-FTプロセスの任意の反応ステージを使用しない場合のベースライン収率に対して相対的であり得、この上昇はまた、合成ガス生成物を生成する改質ステージを使用して取得されるベースライン収率にも対応するが、前述のようにFT合成ステージを使用して合成ガス生成物中のHとCOを炭化水素に変換することは存在しない。いくつかの実施形態によると、生物起源液体燃料の収率の上昇は、少なくとも約25%(例えば約25%~約60%)、または少なくとも約35%(例えば約35%~約50%)であり得る。
【0098】
図4はフロースキームを示し、そのフロースキーム中で水素化熱分解プロセス200は、図1Aまたは図1Bで示されたように、CO-スチーム改質プロセス10への供給物としてメタンとCOを備えるガス状混合物4を生成する。したがって本実施形態によれば、CO-スチーム改質プロセス10は、バイオマスの水素化熱分解から再生可能な炭化水素燃料を生成するプロセスに統合される。ガス状混合物4は、「水素化熱分解ガス状混合物」に関して前述のような濃度で、メタンおよびCOならびに他の種を備え得る。ガス状混合物4に加えて、水素化熱分解プロセス200はまた、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体61(例えば約2wt%未満または約1wt%未満の全酸素含有量を有する)を生成し、これはガソリン沸点範囲炭化水素含有留分41およびディーゼル沸点範囲炭化水素含有留分43に分離され得る炭化水素を備える。水素化熱分解プロセス200は、例えば実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体61からの相分離により取得される水性液体63をさらに生成し得る。見られるように、水性液体63のすべてまたは一部は、任意選択的に、例えばガス状混合物4のCO-スチーム改質プロセス10に対するHO:COモル比を前述のようなモル比に調整するためガス状混合物4と組み合わせられ得る。水素化熱分解プロセス200は、固体炭化物65をさらに生成し得る。ガス状混合物4と、実質的に完全な脱酸素化炭化水素液体61と、水性液体63とを含む、水素化熱分解プロセス200のこのような生成物は、バイオマス含有またはバイオマス由来供給原料67および水素含有供給ガス流69を含む、水素化熱分解プロセス200への供給物から生成される。
【0099】
バイオマス含有またはバイオマス由来供給原料67に関して、用語「バイオマス」は、地球表面上または地球の海洋、河川、および/または湖の中に生きている有機体由来の物質を指す。代表的なバイオマスとして、広葉樹(例えば白木)、針葉樹、広葉樹または針葉樹の樹皮、リグニン、藻類、および/または浮草(lemna)(海藻)などの任意の植物材料、または植物材料の混合物を含み得る。エネルギー作物、またはそれ以外に、農業残渣(例えば、伐採残渣)、もしくは他のタイプの植物廃棄物または植物由来の廃棄物も、植物材料として使用され得る。特定の模範的な植物材料として、トウモロコシ繊維、トウモロコシ茎葉、および砂糖きびバガス繊維、さらにスイッチグラス、ススキ、および藻類などのエネルギー「用途」作物が含まれる。短輪作森林生成物(short rotation forestry product)には、ハンノキ、トリネコ、南ブナ、カバノキ、ユーカリ、ポプラ、ヤナギ、カジノキ、オーストラリアブラックウッド、スズカケノキ、およびウスバギリの変種などのエネルギー作物が含まれる。好適なバイオマスの他の例として、植物オイル、炭水化物(例えば、糖)、有機廃棄物材料、例えば廃紙、建設廃棄物、解体廃棄物、生物汚泥などが含まれる。
【0100】
「バイオマス含有」供給原料は、すべてまたは実質的にすべてのバイオマスを備え得るのみならず、非生物材料(例えばプラスチックなどの石油由来材料、またはガラスを含む、金属および金属酸化物のように地表から抽出された鉱物由来材料)を含有し得る。1つ以上の非生物材料を含み得る「バイオマス含有」供給原料の一例は、都市ゴミ(MSW)である。
【0101】
例えば、句「バイオマス由来供給原料」で使用された場合の「バイオマス由来」は、上記に規定のようにバイオマスの熱的および/または化学的転移から生じたか、もしくはそれから取得された生成物、またはバイオマス含有供給原料(例えば、MSW)を指す。それゆえ、代表的なバイオマス由来供給原料として、熱分解(例えばバイオオイル)、焙焼(例えば、木材を焙焼および任意選択的に緻密化)、水熱炭化(例えば、加圧された熱水中で酸加水分解によりバイオマスを前処理および緻密化)、および重合(例えば、植物モノマー由来の有機ポリマー)、の生成物が含まれるが、それだけに限定されない。(例えば供給原料としての用途の)他のバイオマス由来生成物の特定の具体例として、黒液、純粋リグニン、およびリグニンスルホン酸が含まれる。バイオマス由来供給原料は、所定の変換ステップ(例えば、水素化熱分解)のための供給原料としての使用に先立って、またはその上流で、熱的および/または化学的転移から生じたか、またはそれから取得された、前処理供給原料にも広がる。バイオマス由来生成物を生じる特定のタイプの前処理ステップとして、バイオマス含有供給原料の脱揮および/または少なくともいくらかの水素化熱分解を伴うステップが含まれる。そのため特定の前処理供給原料も「バイオマス由来」供給原料である反面、例えば熱的または化学的転移なしに分類から生じたか、またはそれから取得された他の前処理供給原料は、「バイオマス含有」供給原料ではあるが「バイオマス由来」供給原料ではない。
【0102】
それゆえまた、バイオマス含有供給原料のすべてまたは一部の代わりに、前処理供給原料などのバイオマス由来供給原料を、水素化熱分解プロセス200に供給することが可能であり、この前処理供給原料は、水素化熱分解反応機槽の上流の前処理反応機(予備反応機)中で脱揮および/または部分的に水素化熱分解された後にバイオマス含有供給原料から得られる。そのようなバイオマスの予備反応機中の熱的および/または化学的転移には、例えば腐蝕種の含有量を減少させ、かつ/または水素化熱分解触媒毒物の含有量を減少させ(ナトリウムの減少)、かつ/または水素化変換触媒毒物の含有量を減少させるために、他の補足的転移(supplemental transformation)が付随し得る。予備反応機の中でのバイオマスまたはバイオマス含有供給原料の脱揮および/または部分的水素化熱分解は、好適な固体床材料、例えば前処理触媒、吸着剤、伝熱媒体、およびその混合物の存在下で実施されて、その補足的転移もたらすのに役立ち、それによって前処理供給原料の品質を改善し得る。好適な固体床材料として、二重または多重の機能を持つ材料が含まれる。前処理触媒の場合、以下に示すバイオマス含有供給原料を水素化加工する活性を持つ触媒が代表的である。
【0103】
また、非生物材料含有量(例えば、すべての鉱物形態を含むガラス、金属、および金属酸化物の含有量)の減少、平均粒径の減少、空気動力学的粒径の平均の減少、粒子の平均表面積対質量比の増加、または粒径の均一化などの少なくとも1つの特徴を改善させるように前処理ステップ、例えば物理的分類を経た後に取得された前処理供給原料であるバイオマス含有供給原料を供給することが可能である。
【0104】
図4に示すようにCO-スチーム改質プロセス10は、図1A図1Bに示すように改質触媒6を収容する改質反応機5を含み得、この触媒は前述のような組成物を持つ。改質反応機5は、HとCOを備える合成ガス生成物7を生成するために前述のように改質条件下で作動し得る。例えば圧力スイング吸着(PSA)または膜分離を利用する任意選択的な水素精製モジュール75は、合成ガス生成物7のH濃縮部分71を取得するために使用され得、この生成物と比較して高い水素濃度を有する(例えば、約80mol%~約99mol%のように少なくとも約80mol%、または約85mol%~約98mol%のように少なくとも約85mol%の水素濃度を有する)。図4に示すようにH濃縮部分71は、水素化熱分解プロセス200に戻されて、水素含有供給ガス流69の少なくとも一部分および場合によればそのすべてを提供し得る。合成ガス生成物のH枯渇部分(図示せず)はまた、水素精製モジュール75から取得され得、場合によればCO-スチーム改質プロセス10または水素化熱分解プロセス200に熱エネルギーを提供するために燃焼され得る。水素精製モジュール75は、CO、CO、軽質(C-C)炭化水素、および/またはHSのうち任意のものを、優先的にH枯渇部分に分離するために使用され得る。
【0105】
図5はフロースキームを示し、そのフロースキーム中で水素化熱分解プロセス200は、図4のようにメタンとCOを備えるガス状混合物4を生成する。ただし図5の実施形態によれば、ガス状混合物4は図3に示すように統合CSR-FTプロセス100への供給物である。そのためこの場合、統合CSR-FTプロセス100は、バイオマスの水素化熱分解から再生可能な炭化水素燃料を生成するプロセスとさらに統合される。水素化熱分解プロセス200から生成された生成物は、図4の実施形態に関して前述のように説明される。このような生成物として、(i)ガス状混合物4、(ii)ガソリン沸点範囲炭化水素含有留分41およびディーゼル沸点範囲炭化水素含有留分43に分離され得る炭化水素を備える、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体61、(iii)水性液体63、および(iv)固体炭化物65が含まれる。また図4の実施形態に関して前述のように、水性液体63のすべてまたは一部は、任意選択的に、例えばガス状混合物4のHO:COモル比を調整するためガス状混合物4と組み合わせられ得る。図5の実施形態でガス状混合物が送られる統合CSR-FTプロセス100は、FT合成ステージおよび任意選択的に硫黄被毒を引き起こしやすいFT触媒の使用を含むために、いくつかの実施形態によると、統合CSR-FTプロセス100に先立って(その上流で)、ガス状混合物4を処理してHSおよび/または他の硫黄含有汚染物質を除去することが望しくあり得る。
【0106】
図5の実施形態において、統合CSR-FTプロセス100は、図3に関して前述のように仕上げ生成物33の液体留分39を提供する。液体留分39は、有益なことにガソリン沸点範囲炭化水素含有留分および/またはディーゼル沸点範囲炭化水素含有留分を備え、それらの一方または両方は、例えばここで記載の収率上昇に従って、水素化熱分解プロセス200のみから取得された収率(統合CSR-FTプロセス100がない場合に得られたベースライン収率)と比較して、このような留分41、43の収率を上昇させ得る。また図5の実施形態によれば、メタンおよび/または他の軽質炭化水素(例えばC-C炭化水素)、さらに残留Hおよび/またはCOなどの他の可燃性の種を備える仕上げ生成物33の蒸気留分37(図3)は、任意選択的に燃料供給源として燃焼され得る。図5に示すように、前述のような水素生成プロセス300は、このプロセスに供給された天然ガス77のスチームメタン改質(SMR)によって精製水素生成物79を生成するために使用される。それゆえ蒸気留分37は、図5に示すようにSMR用の熱を生成するために使用され得、水素化熱分解プロセス200からの水性液体63のすべてまたは一部は水素生成プロセス300で使用されるSMR用のスチームを生成するために使用され得る。精製水素生成物79は、水素含有供給ガス流69のすべてまたは一部を水素化熱分解プロセス200に提供するために使用され得る。
【0107】
図6は、例えば図4図5で示されたように水素化熱分解プロセス200の追加の詳細を提供し、このプロセスは、バイオマス含有またはバイオマス由来供給原料67および水素含有供給ガス流69を変換して、(i)メタンとCOを備えるガス状混合物4と、(ii)液体炭化水素含有留分を備える実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体61と、(iii)水性液体63と、(iv)固体炭化物65と、を提供するために使用される。図6に示すように水素化熱分解プロセス200は、第1ステージの水素化熱分解反応機81および第2ステージの水素化変換反応機83で実施される2つの反応ステージを含み得る。水素化熱分解反応機81は、安定化水素の存在下で供給原料67を脱揮するために、触媒式流動床反応機として作動し得、水素化熱分解反応機流出物85を生成する。固体炭化物65を水素化熱分解反応機流出物85から除去し、第1ステージ流出物冷却機84中で冷却した後、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物、軽質炭化水素、H、CO、CO、およびHOを含む水素化熱分解蒸気87は、水素化変換反応機83に送られる。この反応機は、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物のさらなる触媒式水素化脱酸素のために、固定床として作動し得る。水素化変換反応機流出物89は次に、第2ステージ流出物冷却機86に送られ、この冷却機は水素化変換反応機流出物89から、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体61および水性液体63を凝縮させる。分離機82において、水素化熱分解プロセス200のこのような液状生成物61、63は、有機/水相分離により、より密な相、つまり水性液体63と、その上に沈殿するより密でない相、つまり実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体61と、で分離され得る。
【0108】
また分離機82において、軽質炭化水素、H、CO、CO、およびHOを備える生成物蒸気留分88は、蒸気/液体相分離によって分離され得る。生成物蒸気留分88は、例えば圧力スイング吸着(PSA)または膜分離を利用して水素精製モジュール75に送られて、ガス状混合物4から、生成物蒸気留分88と比較して水素濃度の高いリサイクル水素97を分離し得る。それゆえガス状混合物4は、生成物蒸気留分88と比較して水素濃度が低くあり得、前述のように概して代表的ガス状混合物に関して、かつ/または特に「水素化熱分解ガス状混合物」に関して他の組成特徴を有し得る。水素精製モジュール75は、軽質(C-C)炭化水素、CO、CO、HO、および/またはHSの任意のものまたはすべてを、優先的にガス状混合物4に分離するために使用され得る。リサイクル水素97は、例えば、約80mol%~約99mol%のように少なくとも約80mol%、または約85mol%~約98mol%のように少なくとも約85mol%の水素濃度を有し得る。リサイクル水素97は、水素含有供給ガス流69の少なくとも一部分および場合によればすべてを提供するために使用され得る。任意選択的に、外部補充水素または新たな水素64は、水素含有供給ガス流69に提供するためにリサイクル水素97と組み合わせられ得る。
【0109】
図7は、例えば図5に示すように水素生成プロセス300の追加の詳細を示す。前述のように水素生成プロセスは、スチームメタン改質(SMR)92、水性ガスシフト(WGS)反応94、および圧力スイング吸着(PSA)96のステージを使用して天然ガス77を精製水素生成物79に変換し得る。この場合、SMRは、SMR合成ガス98を生成するのに使用され得、水素含有量はWGS反応94によって増加して、WGS生成物99を提供し得る。次いでPSA96は精製水素生成物79を回収するように使用され、水素枯渇PSA排ガス91中の非水素不純物(例えば実質的にすべての非水素不純物)を撥ね出す。水素枯渇PSA排ガス91は概して、(i)未変換メタン(SMR92からのメタン「破過」に起因する)と、(ii)精製水素生成物79中でPSA96を使用して回収されない水素と、(iii)CO、ならびに一般にCOおよびHOと、を備える。水素枯渇PSA排ガス91は、前述のように概してガス状混合物に関して、および/または「水素枯渇PSA排ガス」に関して、他の組成特徴を有し得る。
【0110】
通常、副生成物として水素生成プロセスから取得される水素枯渇PSA排ガス91は、その燃料値を回収するために燃焼される。この燃焼エネルギーは、水素生成プロセス300のこのステップが吸熱的に、そして高温(例えば950℃(1742°F)以上)で作動するため、SMR92の炉またはホットボックスの重要な熱供給源として役立ち得る。ただし図7で示されるプロセスによれば、水素枯渇PSA排ガス91は、例えば図3および前述のように、最初に統合CSR-FTプロセス100に送られる。水素枯渇PSA排ガス91の組成によっては、補足的炭化水素供給源95(例えば天然ガス)および/または補足的スチーム供給源93は、水素枯渇PSA排ガス91と任意選択的に組み合わせられて、前述のように好適な組成を有するガス状混合物4を提供し得る。このような方式で、水素枯渇PSA排ガス91からのメタンおよびCOは、統合CSR-FTプロセス100において変換されて、燃料として有益な液体炭化水素を備える、仕上げ生成物33の液体留分39を生成し得る(図3)。それによってメタンの消費は水素枯渇PSA排ガス91の燃焼発熱量を減少させるが、生成された液体留分39の値は、燃焼発熱量のこの損失を上回り、この発熱量は例えば、低費用の天然ガスを使用することで置き換えられ得る。例えばこの天然ガスは、SMR92の炉またはホットボックスの補足的燃料ガス(図示せず)として、蒸気留分37そのものがSMR92の維持に必要な熱の一部を提供し得るため、仕上げ生成物33(図3)の蒸気留分37と組み合わせられ得る。
【0111】
以下の実施例は、本発明の代表として提示される。このような実施例は、本発明の適用範囲を制限すると解釈されるべきではなく、他の同等の実施形態は、本開示および特許請求を考慮すると明確であろう。
【実施例0112】
CO-スチーム改質の研究
パイロットプラント規模の実験を実施し、その中でガス状混合物を、酸化セリウム担持体上で1wt%のPtおよび1wt%のRhという組成物を持つ触媒粒子を収容するCO-スチーム改質反応機に連続的に供給した。システムのCO-スチーム改質性能を、0.7hr-1WHSV、760℃(1400°F)という条件、および124kPa(18psig)~172kPa(25psig)のゲージ圧力範囲で試験した。試験された2種類のガス状混合物は、(1)メタン、エタン、プロパン、およびCO、さらにHOを含有し、かつバイオマスの水素化熱分解と水素化変換の組み合わせから取得されるものをシミュレーションする組成物(「再生可能タイプ」)、ならびに(2)高レベルのCOを有する一般的な天然ガス組成物(「天然ガスタイプ」)であった。再生可能タイプの組成物は、前述のように「水素化熱分解ガス状混合物」でもあるメタン含有供給原料の一例を提供した。天然ガスタイプの組成物は、前述のようにHO含有酸化剤としてのスチームが追加された、「COを備える天然ガス」でもあるメタン含有供給原料の一例を提供した。このようなガス状混合物(組み合わせた供給物)と、このような供給物から取得された合成ガス生成物と、が次の表1にまとめられている。
【表1】
【0113】
これらの結果から、ほぼ2:1のH:COモル比を有し、それゆえフィッシャー・トロプシュ反応により、または少なくともこの比率を事前に(上流で)調整しないでも、後続の直接加工に好適な合成ガス生成物を、CO-スチーム改質触媒およびプロセスが提供し得ることが分かり得る。このような好ましい結果は760℃(1400°F)の反応温度でのみ取得されたのではあるが、触媒の高活性を考慮すると704℃(1300°F)などの低い温度も可能である。低い作動温度は、コークスを形成する副反応の速度を低下させる傾向があり、これは触媒を失活させる。図8は、実施例1で試験された種類の供給物および改質触媒について温度とメタン変換との間の関係を図示し、特にこの図は、704℃(1300°F)で85%より大きいメタン変換と、760℃(1400°F)で95%より大きいメタン変換と、を達成する能力を図示する。図9は、実施例1で試験された種類の供給物および改質触媒についてガス状混合物のHO:COモル比が、704℃(1300°F)および760℃(1400°F)の両方の温度で、合成ガス生成物のH:COモル比にどのように影響を与えるかを図示する。所定の供給物、改質触媒、および運転条件セットについてこのようなパラメータ間の関係を確立する可能性を考慮すると、ガス状混合物組成は、目的の合成ガス生成物組成を達成するための便利な対照として役立ち得る。
【実施例0114】
CO-スチーム改質触媒の耐硫黄性
実施例1に記載された一般的天然ガス組成物を、この実施例にも記載されているCO-スチーム改質にかける追加の実験を実施した。ただしこの場合は、ガス状混合物または組み合わせた供給物には800mol-ppmの濃度のHSを添加した。高レベルの硫黄汚染にもかかわらず、メタン変換のオフセットは、改質触媒床温度を760℃(1400°F)から約788℃(1450°F)に上昇させることで、容易に回復されたことが判明した。さらに改質触媒は意外にも、実施例1に関して前述のようにこの温度ならびにWHSVおよび圧力で、400運転時間(オン・ストリーム時間(hr))にわたって長期間の安定性を示した。相当な硫黄濃度にもかかわらず達成されたこの安定性は、スチームメタン改質に使用される従来の触媒の硫黄感度を考慮すると意外であった。
【実施例0115】
長期間のCO-スチーム改質試験
実施例1に「再生可能タイプ」として記載され、かつ表1で与えられた組成を有するガス状混合物を、長期運転期間にわたってCO-スチーム改質についてのシステム性能を評価するため、実施例1に記載の触媒および条件を使用して試験した。「再生可能タイプ」の供給物またはガス状混合物はまた、前述のように代表的な「水素化熱分解ガス状混合物」の一例を提供する。長期間の安定性試験では、取得された合成ガス生成物の組成が、このような一定条件下で500時間にわたる運転でも安定していたことが明らかになり、長期運転期間にわたって、基本的に改質触媒の失活がないことを実証した。図10は、この運転期間にわたって取得された、高レベルにメタンを変換する安定した合成ガス生成物組成を図示する。図11は、取得された合成ガス生成物の安定したH/COモル比を図示し、このモル比はほぼ比2であり、このため、液体炭化水素を生成するための下流FT合成反応の用途に最適であった。
【実施例0116】
FT合成から生成されたワックスの水素化異性化および水素化分解の評価
FT合成反応は、一般に広分子量(および炭素数)を有する炭化水素を生成するが、室温で固体であり、概して望ましくないワックス生成物と見なされるノルマルC20 炭化水素を含む。このワックスを除去するため、FT生成物からワックスを分離し、ワックスを低炭素数炭化水素に変換することによる水素化分解の使用は、一般にFT合成錯体に資本費用の1/3、ならびに有意量の複雑さが加重される。固体であるため、ワックスはパイプラインを通して移送することが容易でなく、原油とブレンドすることもできない。FT合成反応で生成されたワックスが、(i)液体燃料としての値を持つ低炭素数炭化水素、および/または(ii)室温未満の融点を持つイソパラフィン炭化水素、に変換され得、それによってその収率に追加され得る、単純な統合ガス液化(GTL)プロセスを開発する目標を設定し、この目的のため単純な水素化異性化/水素化分解反応の組み合わせが研究された。水素化異性化の使用は、この反応が小量の水素しか必要としないため、潜在的に魅力的な選択肢と見なされた。それゆえ、FT合成ステージの直後に水素化異性化を伴うステップを、FT生成物のすべてまたは実質的にすべてを備えるステップに組み込むことは(例えばワックス分離なし)、このステージのワックス生産の問題に対する低費用の解決策として提案された。ノルマルC20 炭化水素の水素化異性化および水素化分解の両方を伴うこのステップは、少なくとも1つの「仕上げ反応機」を利用する「仕上げステージ」と呼ばれた。
【0117】
ワックスの水素化異性化/水素化分解で使用するために可能な触媒を調査するため、C23-C60直鎖パラフィンをFTワックスの商業サプライヤー(サゾール(Sasol))から取得した。200グラムのワックスを撹拌Parrボム反応機(stirred
Parr bomb reactor)に追加して、バッチ実験を実施した。このワックスの追加後、反応機の温度を、流動水素下または流動合成ガス(水素とCOの混合物)下で上昇させた。反応機(25グラムの仕上げ触媒(または水素化異性化/水素化分解触媒)がロードされた)絶対圧力を、2.76MPa(400psia)で維持した。ZSM-5ゼオライト担持体上の1wt%のガリウムの触媒配合物(G-ZSM-5触媒)は、水素化分解と組み合わせた水素化異性化を通してワックスを変換するために効率的であることが判明した。このような組み合わせた反応は、それぞれ分岐炭化水素および低分子量炭化水素の形成をもたらし、それによって、流動点および曇り点の低下という点からディーゼル沸点範囲炭化水素の品質を改善し、オクタン価の上昇という点からガソリン沸点範囲炭化水素の品質を改善した。この触媒を使用して実施されたバッチ試験の結果は、次の表2にまとめられており、この表にはワックスの変換に続いて回収された生成物の組成が含まれる。
【表2】
【0118】
このような試験は、Ga-ZSM-5触媒がワックスの有意な水素化異性化および水素化分解をもたらし得、その結果FT合成反応後に行ったこの仕上げステップに続いて生成物が原油とブレンドされ、輸送され得ることを明確に実証した。ワックスを変換するための別個の仕上げ反応機の使用は、FT反応機内でワックス変換触媒を使用することを含む、これまで提案された他のオプションより優れている。
【実施例0119】
仕上げステージによるFT生成物品質の改善
物質収支のとれた「ベースラインFT」プロセスを、同じプロセスに対して評価したが、前述の実施例4から取得された情報に従ってFT中で生成されたワックスを水素化異性化および水素化分解するための仕上げステップを追加した。ベースラインFTプロセスはアルミナ担持体上に20wt%のコバルトを含有する触媒を利用し、このプロセスは特にワックス形成率に関して運転平衡状態を確立するため十分に長期間の間、実施された。実施例4に記載のようにGa-ZSM-5仕上げ触媒を収容する仕上げ反応機を、ベースラインFTプロセスの下流に追加して、ベースラインFTプロセスで生成されたFTワックスを変換し、かつそれによって全般的な生成物品質を改善するその能力を、ベースラインFTプロセスのみの使用と比較して評価した。この改善は以下の表3で例示される。
【表3】
【0120】
このような結果を考慮すると、FT合成ステージと仕上げステージの組み合わせがワックス、つまり室温を上回る融点を持つ炭化水素を生成しないことが分かる。また、Ga-ZSM-5触媒を用いる仕上げステージを追加することで、液体燃料に有益な炭化水素(C-C19液体炭化水素など)に対する選択度、すなわちこのような炭化水素をもたらしたFT合成によって変換されたCO中の炭素のパーセンテージは、上昇した。また、C-Cガス状炭化水素への選択度も、このような生成物を生成した分解反応の結果としてわずかに上昇した。このような試験はC-Cガス状炭化水素の収率を最小限に抑え、かつ液体炭化水素燃料の収率を最大にすることに最適化されていないが、それにもかかわらずこのような試験は、仕上げ(水素化異性化および水素化分解)反応の使用が本質的にすべてのワックスを、ガス状炭化水素を過度に生成することなく、燃料として有益な凝縮液体炭化水素に変換し得ることを実証した。仕上げ反応後に取得される仕上げ生成物のガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により、ワックスの完全な変換を確認した。
【実施例0121】
生物起源液体燃料の収率を向上させるバイオマス水素化熱分解との統合
バイオマス含有供給原料(木材)から得られる生物起源液体燃料の収率を上昇させるため、図6で示される水素化熱分解プロセスと、図5に示すような統合CSR-FTプロセスが追加されているプロセスと、について、費用および性能の間で比較を行った。各ケースの評価は、計算の都合上、液体燃料の500トン/日(t/d)の生産率に基づいた。この比較は以下の表4で与えられる。
【表4】
【0122】
この比較から、図5に示すように水素化熱分解ガス状混合物4から追加炭化水素を生成するための統合CSR-FTプロセスの追加は、このような炭化水素の収率の実質的な改善を提供する(バイオマスに基づいて38wt%対約26wt%)ことが分かる。このような追加炭化水素における炭素は、バイオマスに由来し、その結果前述の各ケースから取得される全液体燃料は生物起源である。CSR-FTプロセスの追加は、ガソリンおよびディーゼル沸点範囲炭化水素の生産率を木材バイオマス1トン当たり86ガロンから120ガロンに上昇させ得ると推定される。
【0123】
全体として本発明の態様は、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)の高変換を達成するための、そしてここで記載のようにH:COモル比を含む所望の特徴を持つ合成ガス生成物を生成するための、乾式改質またはCO-スチーム改質の使用に関する。さらなる態様は、硫黄含有汚染物質、ならびに/または芳香族炭化水素および/もしくはオレフィン系炭化水素などの反応性化合物、を備える供給物の場合であっても、COまたはCOとHOの両方の存在下で、少ししかないコークス堆積および高い触媒安定性によって、メタンおよび/または他の炭化水素(複数可)を変換する能力を持つ活性改質触媒を使用するそのような改質プロセスに関し、そのような汚染物質および化合物は従来の触媒系中では急速な失活に関連する。なおさらなる態様は、液体(C )炭化水素および/またはアルコールの生成のためのフィッシャー・トロプシュ合成、発酵によるアルコールの合成、または水素生成などの、さらなる加工ステージで直接使用するための直接的アプローチをも提供するような改質プロセスに関する。有益なことに該プロセスは、再生可能および再生不可能メタンの両方の供給源に存在する従来のCOを、好ましくはこのCOを除去することなく利用し得、かつ/または従来のメタンのスチーム改質と比較して水を利用するレベルを低くし得る。加えて、改質触媒の耐硫黄性は、必要に応じて単一の酸性ガス除去ステップを使用して、硫黄含有汚染物質を、容易に下流で管理されるSOおよびHSに変換する活性によってさらに証明される。なおさらなる態様は、前述のようにCO-スチーム改質とフィッシャー・トロプシュ合成の統合に関し、任意選択的に仕上げステージとの統合に関する。本開示から得た知見を持つ当業者であれば、これらのおよび他の利益を実現する上で、本開示の適用範囲から逸脱することなくこのようなプロセスに様々な変更を加え得ることを認めるであろう。このような状況から、該開示の特徴は本開示の範囲から逸脱することなく変形および/または代替を受け取る余地があることを理解すべきである。本開示に図示および記載された特定の実施形態は、もっぱら説明する目的でのみ記述されており、添付の特許請求の範囲に提示された本発明を制限するためではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を生成するプロセスであって、
(a)改質ステージにおいてメタンと酸化剤を備えるガス状混合物を、プラチナ(Pt)を備える改質触媒に接触させて合成ガス生成物を生成するステップと、
(b)前記合成ガス生成物中のHとCOを、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応機のフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物として与えられる、前記C 炭化水素を含む炭化水素に変換するステップと、
(c)前記C 炭化水素を含む前記FT生成物を仕上げ反応機に供給して、ワックス留分のノルマルC20 炭化水素の少なくとも約75%をC-C19炭化水素に変換するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記酸化剤が、COまたはHOを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酸化剤が、COおよびHOの混合物を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(b)は、ステップ(a)で生成された前記合成ガス生成物と実質的に同一のH:COモル比を有するFT供給物を用いて実施される、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(b)の前に、ステップ(a)で生成された前記合成ガス生成物から水を凝縮させる、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(c)は、約232℃(450°F)~約399℃(750°F)の温度、および約2.00MPa(290psig)~約3.10MPa(450psig)のゲージ圧力範囲である前記仕上げ反応機の中で実施される、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記C-C19炭化水素を含むC 炭化水素は、前記仕上げ反応機内の水素化異性化/水素化分解生成物として与えられ、前記水素化異性化/水素化分解生成物は室温で固体である炭化水素を約1wt%未満含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記仕上げ反応機は、ノルマルC20 炭化水素に対して水素化異性化および/または水素化分解の活性を持つ脱ろう触媒を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記脱ろう触媒は、固体酸性担持体上に堆積した脱ろう活性金属を備える、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記脱ろう活性金属は、周期表の13族または14族から選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記脱ろう活性金属はガリウムである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
炭化水素を生成するプロセスであって、
(a)改質ステージにおいてメタンと酸化剤を備えるガス状混合物を改質触媒に接触させて合成ガス生成物を生成するステップと、
(b)前記合成ガス生成物中のHとCOを、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応機のフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物として与えられる、前記C 炭化水素を含む炭化水素に変換するステップと、
(c)前記仕上げ反応機において前記FT生成物の全部または一部を含む仕上げ供給物を脱ろう触媒と接触させて水素化異性化反応および/または水素化分解反応により前記FT生成物のワックス留分のノルマルC20 炭化水素をC-C19炭化水素に変換するステップと、
を含み、
前記水素化異性化反応および/または水素化分解反応は、前記FT反応機において変換されず前記仕上げ供給物内に存在する水素を消費する、プロセス。
【請求項13】
前記FT反応機の中で未変換の水素は、前記仕上げ供給物中に少なくとも約20mol%の濃度で存在する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記仕上げ反応機に補足的水素供給源を追加しない、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記仕上げ反応機に補足的水素供給源を追加する、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項16】
炭化水素を生成するプロセスであって、
(a)改質ステージにおいてメタンと酸化剤を備えるガス状混合物を改質触媒に接触させて合成ガス生成物を生成するステップと、
(b)前記合成ガス生成物中のHとCOを、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応機のフィッシャー・トロプシュ(FT)生成物として与えられる、前記C 炭化水素を含む炭化水素に変換するステップと、
(c)前記仕上げ反応機において前記FT生成物のすべてまたは一部を備える仕上げ供給物を脱ろう触媒と接触させて水素化異性化反応および/または水素化分解反応により前記FT生成物のワックス留分のノルマルC20 炭化水素をC-C19炭化水素に変換するステップと、
を含み、
前記仕上げ供給物は前記FT反応機中で未変換のCOを含む、プロセス。
【請求項17】
ステップ(c)は、前記仕上げ反応器から出る仕上げ生成物を与え、
前記仕上げ生成物を分離して(i)C-C炭化水素および残留H,CO、CO、並びに(ii)前記C-C19炭化水素を含む液体燃料、を与えるステップをさらに含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記液体燃料を、ガソリン沸点範囲炭化水素を備える留分とディーゼル沸点範囲炭化水素を備える留分に分離するステップをさらに含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記FT反応機におけるFT反応条件が、約193℃(380°F)~約260℃(500°F)の温度、および約689kPa(100psig)~約3.44MPa(500psig)のゲージ圧力である、請求項16~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(b)において、前記FT反応機におけるCOの変換が少なくとも約30%である、請求項16~19のいずれか1項に記載のプロセス。