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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159229
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】セラミック選択性膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20231024BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20231024BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20231024BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20231024BHJP
   H01M 8/1023 20160101ALI20231024BHJP
   H01M 8/1051 20160101ALI20231024BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20231024BHJP
   H01M 8/106 20160101ALI20231024BHJP
   H01M 8/1069 20160101ALI20231024BHJP
【FI】
B01D71/02
B01D69/00
B01D69/10
B01D69/12
H01M8/1023
H01M8/1051
H01M8/10 101
H01M8/106
H01M8/1069
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023131210
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2021114904の分割
【原出願日】2017-02-02
(31)【優先権主張番号】62/290,053
(32)【優先日】2016-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リロ・ディー・ポッツォ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ウィリアム・モレッティ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・エム・ニューブルーム
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ウェスト
(72)【発明者】
【氏名】エデン・リヴァース
(57)【要約】
【課題】頑強で安価なプロトン伝導性材料の開発。
【解決手段】本明細書に開示されているのは、セラミック選択性膜、及び多孔質膜基材上に選択性シリカセラミックを形成することによってセラミック選択性膜を形成する方法である。代表的なセラミック選択性膜としては、イオン伝導性の膜(例えば、プロトン伝導性膜)及びガス選択性膜が挙げられる。該膜の代表的な使用としては、イオン伝導性膜としての燃料電池及びレドックスフロー電池(RFB)への組込みが挙げられる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック前駆体ゾルを多孔質膜基材に適用する工程;及び
ゾルゲル法を使用してセラミック前駆体ゾルをゲル化することで、セラミック前駆体ゾルから選択性シリカセラミックを形成し、それによって、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを含むセラミック選択性膜をもたらす工程
を含む、セラミック選択性膜を形成する方法。
【請求項2】
前記セラミック前駆体ゾルがケイ酸アルカリ溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケイ酸アルカリ溶液が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム及びケイ酸カリウムからなる群から選択されるケイ酸塩から形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ケイ酸アルカリ溶液が、5wt%から50wt%の範囲の濃度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質膜基材が、直径10nm以上の複数の細孔を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質膜基材が、前記セラミック前駆体ゾルと化学的に類似である化学的表面官能性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多孔質膜基材が、シリカ濾紙、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記セラミック前駆体ゾルを前記多孔質膜基材に適用する工程の前に、多孔質膜基材のエッジ部分に圧縮性ポリマーを含浸させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記多孔質膜基材のエッジ部分に圧縮性ポリマーを含浸させる工程が、多孔質膜基材を縁取るガスケットを形成するのに十分なように、多孔質膜基材の全てのエッジに圧縮性ポリマーを含浸させる工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エッジ部分が幅1mm以上である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮性ポリマーが熱可塑性弾性ポリマーを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記多孔質膜基材のエッジ部分に圧縮性ポリマーを含浸させる工程が、溶融、溶液堆積及びその場反応からなる群から選択される方法を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記セラミック前駆体ゾルをゲル化する工程が化学的ゲル化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
化学的ゲル化が、セラミック前駆体ゾルを酸溶液に曝露する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記セラミック前駆体ゾルをゲル化する工程が、20℃から100℃の範囲の温度に曝露する工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記セラミック前駆体ゾルをゲル化する工程が、20℃から100℃の範囲の温度に曝露する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記セラミック選択性膜が、直径0.1nmから10nmのサイズ範囲の細孔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記セラミック選択性膜が、0.1mmから1mmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記セラミック前駆体ゾルを、前記多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックに適用すること;及び
セラミック前駆体ゾルをゲル化することで、多孔質膜基材によって支持された二重コーティング選択性シリカセラミックをもたらすこと
によって、セラミックの少なくとも1つの追加層を堆積する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
2回目の、セラミックの少なくとも1つの追加層を堆積する工程を反復することで、多孔質膜基材によって支持された三重コーティング選択性シリカセラミックをもたらす工程を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミック上に仕上げ層を堆積することで、多孔質膜基材によって支持された仕上げコーティング済み選択性シリカセラミックをもたらす工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
仕上げ層を堆積する前記工程が、加水分解性基を有するシリカベースの化合物で多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを処理する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
加水分解性基を有するシリカベースの化合物を適用することによって、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを処理する前記工程が、加水分解性基を有するシリカベースの化合物を多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックに適用した後、加水分解性基を有するシリカベースの化合物を水に曝露する工程を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記セラミック前駆体ゾルが、セラミック選択性膜のイオン輸送特性を増加させるように構成された選択性添加剤、セラミック選択性膜の耐久性を改善するように構成された耐久性添加剤、及びセラミック選択性膜に触媒特性を加えるように構成された触媒添加剤からなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記添加剤が、イオン伝導性ポリマー及びガス伝導性ポリマーからなる群から選択される選択性添加剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記添加剤が、セラミック選択性膜に可撓性の増加をもたらすように構成された低ヤング率ポリマー及びセラミック選択性膜に耐久性の増加をもたらすように構成された高ヤング率ポリマーからなる群から選択される耐久性添加剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記添加剤が、セラミック前駆体ゾルに添加された触媒粒子及びセラミック前駆体ゾルで形成された触媒粒子からなる群から選択される触媒添加剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
イオン伝導性増強剤、分子選択性増強剤、触媒、及び耐久性増強剤からなる群から選択される薬剤でセラミック選択性膜を処理する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記セラミック前駆体ゾルをゲル化した後、より低い表面張力の液体にセラミック選択性膜を曝露する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記セラミック前駆体ゾルを多孔質膜基材に適用する工程の前に、多孔質膜基材に前処理を適用する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記前処理が、酸及びポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から31のいずれか一項に記載の方法によって形成された、セラミック選択性膜。
【請求項33】
請求項32に記載のセラミック選択性膜を含む選択性膜。
【請求項34】
電池膜、燃料電池膜、食品加工用膜、逆浸透膜、ガス分離膜及びバイオ分離膜からなる群から選択される種類の選択性膜である、請求項33に記載の選択性膜。
【請求項35】
フロー電池用のイオン伝導性膜である、請求項33に記載の選択性膜。
【請求項36】
燃料電池用のイオン伝導性膜である、請求項33に記載の選択性膜。
【請求項37】
多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを含む、セラミック選択性膜。
【請求項38】
前記多孔質膜基材が、シリカ濾紙、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項39】
前記多孔質膜基材が、直径10nm以上の複数の細孔を有する、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項40】
前記多孔質膜のエッジの少なくとも一部に沿った圧縮性ポリマーエッジングを更に含む、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項41】
ガスケットを画定している、セラミック選択性膜の全てのエッジに沿った圧縮性ポリマーエッジングを更に含む、請求項40に記載のセラミック選択性膜。
【請求項42】
前記エッジ部分が幅1mm以上である、請求項40に記載のセラミック選択性膜。
【請求項43】
前記圧縮性ポリマーが熱可塑性弾性ポリマーを含む、請求項40に記載のセラミック選択性膜。
【請求項44】
前記選択性シリカセラミックが、選択性シリカセラミック材料の複数の層を含む、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項45】
前記選択性シリカセラミックをコーティングしている仕上げ層を更に含む、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項46】
前記仕上げ層がアルキル含有化合物を含む、請求項45に記載のセラミック選択性膜。
【請求項47】
前記選択性シリカセラミックが、セラミック選択性膜のイオン輸送特性を増加させるように構成された選択性添加剤、セラミック選択性膜の耐久性を改善するように構成された耐久性添加剤、及びセラミック選択性膜に触媒特性を加えるように構成された触媒添加剤からなる群から選択される添加剤を含む、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項48】
前記選択性シリカセラミックが、イオン伝導性ポリマー及びガス伝導性ポリマーからなる群から選択される選択性添加剤を含む、請求項47に記載のセラミック選択性膜。
【請求項49】
前記添加剤が、セラミック選択性膜に可撓性の増加をもたらすように構成された低ヤング率ポリマー及びセラミック選択性膜に耐久性の増加をもたらすように構成された高ヤング率ポリマーからなる群から選択される耐久性添加剤である、請求項47に記載のセラミック選択性膜。
【請求項50】
前記添加剤が、選択性シリカセラミックに組み込まれた触媒粒子及び触媒化合物からなる群から選択される触媒添加剤である、請求項47に記載のセラミック選択性膜。
【請求項51】
イオン伝導性増強剤、分子選択性増強剤、触媒、及び耐久性増強剤からなる群から選択される薬剤を含む、選択性シリカセラミック上の表面処理層を更に含む、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項52】
多分散フラクタルモデルを小角X線散乱プロファイルにフィッティングすることによって決定される場合、0.5nmから2nmの範囲の平均孔径を有する、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項53】
直径0.1nmから10nmのサイズ範囲の細孔を含む、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項54】
0.1mmから1mmの範囲の厚さを有する、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項55】
多孔質膜基材の表面上に配置された選択性シリカセラミックが、0.5μmから750μmの厚さを有する、請求項37に記載のセラミック選択性膜。
【請求項56】
請求項37から55のいずれか一項に記載のセラミック選択性膜を含む選択性膜。
【請求項57】
電池膜、燃料電池膜、食品加工用膜、逆浸透膜、ガス分離膜及びバイオ分離膜からなる群から選択される種類の選択性膜である、請求項56に記載の選択性膜。
【請求項58】
フロー電池用のイオン伝導性膜である、請求項56に記載の選択性膜。
【請求項59】
燃料電池用のイオン伝導性膜である、請求項56に記載の選択性膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年2月2日に出願された米国仮出願第62/290,053号の利益を主張し、この開示は、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0002】
政府ライセンス権利の記述
本発明は、陸軍研究事務所を介して国防総省により助成された、契約第W911NF-13-1-0166号に基づく政府支援を受けて行われた。米国政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
燃料電池及びレドックスフロー電池(RFB)は強力なエネルギー貯蔵技術であり、この技術では電流を発生させるために、膜を横切るイオンの選択的な輸送に頼っている。現在、これらの技術において膜に使用される標準的な材料は、NAFIONの名称で市場に出ているもの等の過フッ素化スルホン酸(PFSA)材料である。これらのPFSA材料は、厳しい環境に対する耐性及びイオン伝導特性のため、望ましい。しかしながら、これらの材料は比較的高価であり、動作特性における更なる改善が望ましい。
【0004】
シリケートプロトン伝導性材料は知られているが、商業的に実現可能であるほどには十分に開発されているわけでない。
【0005】
一般的なプロトン輸送機構の1つは、ヒドロニウムイオンが水分子から水分子へ「ホッピングする」Grottussホッピングである。この機構は、ヒドロニウムイオンの溶媒和を促進するために水が十分自由に回転及び拡散することを必要とする。そのため、シリケートのプロトン伝導性材料の設計は、水の分子運動を促進する(即ち、ヒドロニウム溶媒和及びプロトンホッピングを容易にする)ために十分なサイズの細孔を有するべきである。このサイズは、単一水分子(即ち、0.138nmの半径)よりも大きいが他の分子の拡散輸送を容易にするほどには大きくあるべきではない。
【0006】
したがって、頑強で安価なプロトン伝導性材料の開発が所望されるが、著しい組成上及び構造上の制限が、現在、PFSA材料の代替品としてのシリケート材料の使用を妨げている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
この概要は、発明を実施するための形態において下で更に記載されている様々な概念を単純化された形態で導入するために提供される。この概要は、特許請求されている主題の鍵となる特色を同定すると意図されず、特許請求されている主題の範疇を決定する際の補助として使用されるとも意図されない。
【0008】
一態様において、セラミック選択性膜を形成する方法が提供される。一実施形態において、該方法は:
セラミック前駆体ゾルを多孔質膜基材に適用する工程;及び
ゾルゲル法を使用してセラミック前駆体ゾルをゲル化することで、セラミック前駆体ゾルから選択性シリカセラミックを形成し、それによって、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを含むセラミック選択性膜をもたらす工程
を含む。
【0009】
別の態様において、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを含むセラミック選択性膜が提供される。
【0010】
別の態様において、すでに記載されている多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを含むセラミック選択性膜を含む選択性膜が提供される。
【0011】
別の態様において、開示されている方法実施形態のいずれかによる方法によって形成されるセラミック選択性膜が提供される。
【0012】
本発明の前述の態様及び付随する利点の多くは、以下の詳細な記載を参照することによってより良く理解されるのと同様に、添付の図面と併せられた場合により容易に認識されるようになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本明細書に開示されているある特定の実施形態に従ったセラミック選択性膜を生成するため、アルカリシリケートを使用するゾル-ゲル戦略を示す略図である。
図1B】本明細書に開示されているある特定の実施形態に従った圧縮性エッジング(「弾性エッジング」)を有するセラミック選択性膜を生成するための例証的なプロセスを例示する図である。工程1:弾性エッジングを、予めあるサイズに調整した多孔質膜支持体に付ける。ポリ(スチレン-イソブチレン-スチレン)(SIBS)等の溶媒可溶性ポリマーを、支持体のサイズに鋳込み、活性領域も画定する。溶媒を支持体のエッジ上に置き、次いでエッジングによって挟む。溶媒はエッジングを部分的に溶解し、これが支持体との強い接着をもたらす。工程2:支持体をシリカ前駆体溶液に浸漬する。工程3:コーティングされた支持体を酸浴に浸漬する。工程4:膜を低温(例えば、60℃)で乾燥させる。工程2~4のプロセス条件は、特定の性能属性(例えば、プロトン伝導、可撓性、耐久性、孔径等)を有する圧縮性セラミック選択性膜を生成するために変動させることができる。
図2A】本明細書に開示されているある特定の実施形態に従った多孔質膜基材として使用可能な種類のシリカ支持体のSEM顕微鏡写真を示す図である。
図2B】本明細書に開示されているある特定の実施形態に従ったシリカ支持体上に形成されたシリカ選択性膜のSEM顕微鏡写真を示す図である。
図3A】フラクタル凝集モデルでフィッティングした膜の小角X線散乱(SAXS)プロファイルを示すグラフである。
図3B】SAXSモデル化に基づく孔径分布を示すグラフである。フロー電池におけるイオンのイオン半径に基づく理想的な孔径が記されている。理想的な孔径分布は、H3O+とVO2の半径の間で記されている。NAFIONの公知の孔径範囲も記されている。
図4】例証的なセラミック選択性膜の表面及び断面のSEM画像を示す図である。右の膜は、乾燥させる前に、毛細管応力を低減するためにメタノール/水混合物に浸漬した。膜断面の概念図も示されている。
図5】市販の材料NAFION 212と比較した、代表的なセラミック選択性膜(「SS」は、全てのケイ酸ナトリウムから形成された膜であり;「SS中14wt%のPSS」は、ケイ酸ナトリウムゾル中14wt%のPSSで形成された膜であり;「NaS-TEOS」は、凝集複合膜を形成するためにケイ酸ナトリウム及びTEOSの組合せで形成された膜であり;「LiS」は、NaS膜と同様の方式だがケイ酸ナトリウムの代わりにケイ酸リチウムで形成された膜である)についてプロトン伝導性対VO2透過性をグラフとして示す図である。
図6A】例証的なゾル-ゲルSiO2;例証的なゾル-ゲルSiO2+SIBS複合体;及び比較のNAFION 115を使用した、例証的な全バナジウムRFBのサイクリング容量をグラフとして示す図である。
図6B図6Aの膜を含めたRFBについて電圧プロファイルを示すグラフである。
図7A】本明細書に開示されている実施形態に従ったTEOS-ケイ酸ナトリウム膜のSEM画像を示す図である。図7Aは上面図である。
図7B】本明細書に開示されている実施形態に従ったTEOS-ケイ酸ナトリウム膜のSEM画像を示す図である。図7Bは密な断面図である。
図8】フラクタルモデルを使用した代表的な膜のSAXSフィッティング(図3Aに示されている)から抽出されたフラクタル次元をグラフとして示す図である。選択性(プロトン伝導性/バナジウムイオン透過性)は、フラクタル次元の関数としてプロットされており、より低いフラクタル次元に対して、より高い選択性を示している。NAFIONは参照のためにプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示されているのは、セラミック選択性膜、及び多孔質膜基材上に選択性シリカセラミックを形成することによってセラミック選択性膜を形成する方法である。代表的なセラミック選択性膜としては、イオン伝導性の膜(例えば、プロトン伝導性膜)及びガス選択性膜が挙げられる。該膜についての代表的な使用としては、イオン伝導性膜として燃料電池及びレドックスフロー電池(RFB)への組込みが挙げられる。
【0015】
シリカ膜についての従来の研究は、薄膜、特に全部がシリカから形成された薄膜に注目していた。本明細書に開示されている膜は、商業関連(例えば、RFB及び燃料電池におけるNAFION膜の代替品)を考えて、耐久性及び性能に焦点を合わせている。したがって、開示されている膜は、前駆体ゾルが支持体を充填しているため、相対的により厚い。一般に、シリカ材料は、100nmよりも大きい孔径を有する多孔質支持体構造の上にコーティングされる場合に割れることが知られている。開示されている膜は、組成的に(例えば、セラミックマトリックスに組み込まれるゾル中にポリマー添加剤を使用すること)、並びにセラミックの第2の(又は更なる)層を適用すること及び/又は膜を「仕上げる」ために非セラミックコーティングを適用することによる「修復」又は「後加工」によって、の両方を含めた多くのやり方で、割れることを低減及び排除するよう調整される。
【0016】
方法及び多くの変形形態が、ここで更に詳細に考察される。更に下に、該方法によって形成された組成物(膜)も、より詳細に考察される。
【0017】
セラミック選択性膜を形成する方法
一態様において、セラミック選択性膜を形成する方法が提供される。一実施形態において、該方法は:
セラミック前駆体ゾルを多孔質膜基材に適用する工程;及び
ゾルゲル法を使用してセラミック前駆体ゾルをゲル化することで、セラミック前駆体ゾルから選択性シリカセラミックを形成し、それによって、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを含むセラミック選択性膜をもたらす工程
を含む。
【0018】
本明細書に開示されているある特定の実施形態に従ったセラミック選択性膜を生成するためにアルカリシリケートを使用するゾル-ゲル方法の略図である図1Aを最初に見る。特に、ゾルとしては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム又はケイ酸カリウムがセラミック前駆体ゾルとして挙げられる。ある特定の実施形態において、「任意選択の」添加剤は、セラミック前駆体ゾルに添加される。「マクロ多孔質基材」(本明細書において多孔質膜基材とも称される)は、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックのゾル-ゲル及び最終的には縮合物ゲルの形成のための基材として使用されて、セラミック選択性膜をもたらす。
【0019】
図1Bは、本明細書に開示されているある特定の実施形態に従った圧縮性エッジング(「弾性エッジング」)を有するセラミック選択性膜を生成するための例証的なプロセスを例示している。工程1:弾性エッジングを、予めあるサイズに調整した多孔質膜支持体に付ける。ポリ(スチレン-イソブチレン-スチレン)(SIBS)等の溶媒可溶性ポリマーを、支持体のサイズに鋳込み、活性領域も画定する。溶媒を支持体のエッジ上に置き、次いで、エッジングによって挟む。溶媒はエッジングを部分的に溶解し、これが支持体との強い接着をもたらす。工程2:支持体をシリカ前駆体溶液に浸漬する。工程3:コーティングされた支持体を酸浴に浸漬する。工程4:膜を低温(例えば、60℃)で乾燥させる。工程2~4のプロセス条件は、特定の性能属性(例えば、プロトン伝導、可撓性、耐久性、孔径等)を有する圧縮性セラミック選択性膜を生成するために変動させることができる。
【0020】
前駆体
前駆体は溶液(ゾル)であり、ここからセラミックが形成される。1種又は複数の添加剤が該ゾルに添加されることで、より詳細に下で考察される通り、特別な特性を有する最終セラミック膜を可能にすることができる。
【0021】
一実施形態において、セラミック前駆体ゾルはケイ酸アルカリ溶液を含む。
【0022】
一実施形態において、ケイ酸アルカリ溶液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム及びケイ酸カリウムからなる群から選択されるケイ酸塩から形成される。
【0023】
一実施形態において、ケイ酸アルカリ溶液は、5wt%から50wt%の範囲の濃度を有する。一実施形態において、ケイ酸アルカリ溶液は、12wt%から30wt%の範囲の濃度を有する。
【0024】
多孔質膜基材
多孔質膜基材(本明細書において単純に「基材」と称される場合もある)は、セラミックが形成される構造基礎である。該基材は、機械的強度及び多孔質構造を提供する。セラミックが基材上に形成される場合、基材の相対的に大きい細孔は、ナノメートル又はオングストロームサイズの細孔が最終膜中に残るまでセラミックで閉鎖及び充填される。
【0025】
一実施形態において、多孔質膜基材は、直径10nm以上の複数の細孔を有する。
【0026】
一実施形態において、多孔質膜基材は、セラミック前駆体ゾルと化学的に類似である化学的表面官能性を有する。
【0027】
一実施形態において、多孔質膜基材は、シリカ濾紙、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される。
【0028】
圧縮性エッジング
圧縮性エッジングは、ある特定の実施形態における膜が、膜をシールするガスケットが必要とされる電池、燃料電池、又は他の系に組み込まれるのを可能にする。したがって、圧縮性エッジングは、機械的に圧縮可能である、並びにその上、膜が利用される熱及び/又は厳しい化学的環境に対して耐性である。
【0029】
一実施形態において、該方法は、セラミック前駆体ゾルを多孔質膜基材に適用する工程の前に、多孔質膜基材のエッジ部分に圧縮性ポリマーを含浸させる工程を更に含む。
【0030】
一実施形態において、多孔質膜基材のエッジ部分に圧縮性ポリマーを含浸させる工程は、多孔質膜基材を縁取るガスケットを形成するのに十分なように、多孔質膜基材の全てのエッジに圧縮性ポリマーを含浸させる工程を含む。
【0031】
一実施形態において、圧縮性ポリマーエッジングは、セラミック選択性膜の形成後(即ち、ゾル-ゲルプロセス後)に形成される。更なる実施形態において、圧縮性ポリマーエッジングは、超音波溶接又はホットプレッシングを使用して形成される。
【0032】
一実施形態において、エッジ部分は幅1mm以上である。一実施形態において、エッジ部分は幅5mm以上である。一実施形態において、エッジ部分は幅1cm以上である。
【0033】
一実施形態において、圧縮性ポリマーは熱可塑性弾性ポリマーを含む。一実施形態において、熱可塑性弾性ポリマーは、ポリ(スチレン-イソブチレン-スチレン)(SIBS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる群から選択される。
【0034】
一実施形態において、多孔質膜基材のエッジ部分に圧縮性ポリマーを含浸させる工程は、溶融、溶液堆積及びその場反応からなる群から選択される方法を含む。
【0035】
化学的ゲル化
ゾルが膜上にコーティングされた後、ゾルはゲル化されなければならない。一実施形態において、セラミック前駆体ゾルをゲル化する工程は、化学的ゲル化を含む。
【0036】
一実施形態において、化学的ゲル化は、セラミック前駆体ゾルを酸溶液に曝露する工程を含む。一実施形態において、酸溶液は0.001Nより大きい。一実施形態において、酸溶液は1Nより大きい。一実施形態において、酸溶液は3Nより大きい。
【0037】
一実施形態において、酸溶液は、硫酸、硝酸、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸及びリン酸からなる群から選択される。
【0038】
一実施形態において、化学的ゲル化の工程は1時間未満で完了される。一実施形態において、化学的ゲル化の工程は24時間未満で完了される。一実施形態において、化学的ゲル化の工程は96時間未満で完了される。
【0039】
一実施形態において、化学的ゲル化の工程は、セラミック前駆体ゾルを酸溶液に曝露した後、20℃から100℃の範囲の温度に曝露する工程を更に含む。最終セラミック選択性膜の耐久性を損なう焼結又は焼成が起こらないように、本実施形態において温度を低く保持することは重要である。
【0040】
加熱ゲル化
一実施形態において、セラミック前駆体ゾルをゲル化する工程は、20℃から100℃の範囲の温度に曝露する工程を含む。最終セラミック選択性膜の耐久性を損なう焼結又は焼成が起こらないように、本実施形態において温度を低く保持することは重要である。更なる実施形態において、ゲル化する工程には、酸への曝露が含まれない。
【0041】
一実施形態において、セラミック選択性膜は、直径0.1nmから10nmのサイズ範囲の細孔を含む。孔径は、セラミックの全ての層及び任意の後加工用層(例えば、「仕上げ用」アルキル層)を含めたセラミック選択性膜の最終孔径である。一実施形態において、セラミック選択性膜は、直径0.1nmから5nmのサイズ範囲の細孔を含む。一実施形態において、セラミック選択性膜は、直径0.1nmから1nmのサイズ範囲の細孔を含む。一実施形態において、セラミック選択性膜は、直径0.5nmから1nmのサイズ範囲の細孔を含む。
【0042】
一実施形態において、セラミック選択性膜は、0.1mmから1mmの範囲の厚さを有する。一実施形態において、セラミック選択性膜は、0.1mmから0.5mmの範囲の厚さを有する。一実施形態において、セラミック選択性膜は、0.2mmから0.4mmの範囲の厚さを有する。
【0043】
ある特定の実施形態において、より厚いセラミック層を支持体上にもたらす及び/又は最終的な膜の耐久性を改善するために、セラミックの複数の層が堆積される。一実施形態において、セラミックの2回のコーティングが行われる。更なる実施形態において、セラミックの3回のコーティングが行われる。複数のコーティングは、より密な及びより欠陥のない膜構造をもたらす。例として、27wt%のケイ酸ナトリウム溶液で、セラミックの単回コーティングが、十分に密な及び欠陥のないコーティングを生成するのに十分であり得る。1回を超えるコーティングは、250μmの基材を使用する場合に15wt%及び5wt%のケイ酸ナトリウム濃度に必要とされる。
【0044】
一実施形態において、該方法は:
セラミック前駆体ゾルを、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックに適用すること;及び
セラミック前駆体ゾルをゲル化することで、多孔質膜基材によって支持された二重コーティング選択性シリカセラミックをもたらすこと
によって、セラミックの少なくとも1つの追加層を堆積する工程を更に含む。
【0045】
更なる実施形態において、セラミックの少なくとも1つの追加層を堆積する工程は、2回目の、セラミックの少なくとも1つの追加層を堆積する工程を反復することで、多孔質膜基材によって支持された三重コーティング選択性シリカセラミックをもたらす工程を含む。
【0046】
添加剤
前で考察された通り、添加剤は、形成された時の膜の特定の望ましい特性を可能にするために、ゾルに添加される。
【0047】
一実施形態において、セラミック前駆体ゾルは、セラミック選択性膜のイオン輸送特性を増加させるように構成された選択性添加剤、セラミック選択性膜の耐久性を改善するように構成された耐久性添加剤、及びセラミック選択性膜に触媒特性を加えるように構成された触媒添加剤からなる群から選択される添加剤を更に含む。
【0048】
一実施形態において、添加剤は、イオン伝導性ポリマー及びガス伝導性ポリマーからなる群から選択される選択性添加剤である。選択性を改善するため、ある特定の実施形態において、ポリマーは、選択的イオン輸送を容易にするために使用される添加剤である。例えば、ポリスチレンスルホネート(PSS)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリDADMAC)、スルホン化ナノ結晶性セルロース、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール(S-PBI)又はペルフルオロスルホン酸(PFSA)等のプロトン伝導性ポリマー。他の実施形態において、添加剤は、他の分子(例えば、ガス又は他のイオン)の選択的輸送を促進するポリマー(即ち、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール及び他)である。任意の添加剤ポリマーは、アルカリ性セラミック溶液中に可溶性又は分散性である。更に、それらは、厳しい環境に対処できなければならないか、又は酸化物による分解から保護されなければならない。
【0049】
一実施形態において、添加剤は、セラミック選択性膜に可撓性の増加をもたらすように構成された低ヤング率ポリマー及びセラミック選択性膜に耐久性の増加をもたらすように構成された高ヤング率ポリマーからなる群から選択される耐久性添加剤である。
【0050】
ある特定の実施形態において、耐久性添加剤はポリマーである。低ヤング率ポリマー添加剤は最終膜の可撓性をもたらし、高ヤング率は最終膜の耐久性の改善をもたらす。これらは、前に定義されている厳しい環境に対処する又は酸化物による分解から保護され得るアルカリ性セラミック溶液中に可溶性又は分散性である。代表的な耐久性ポリマー添加剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリエチレングリコール、並びにその組合せ及びコポリマーが挙げられる。
【0051】
一実施形態において、添加剤は、セラミック前駆体ゾルに添加された触媒粒子及びセラミック前駆体ゾルで形成された触媒粒子からなる群から選択される触媒添加剤である。触媒添加剤は以下のスキームから選択される:(1)該ゾルへの触媒ナノ又はマイクロ粒子の添加;(2)該ゾル内に触媒粒子を形成すること(例えば、ゲル化/自己集合の前);(3)ゾル-ゲル中に触媒粒子を形成すること;及び(4)活性領域の表面が硬化された後、活性領域の表面に触媒粒子を適用/コーティングすること。白金は触媒添加剤の例である。触媒添加剤は、(外部に含有された場合)膜が曝露される厳しい環境に対処できなければならないか、又は(内部に含有された場合)セラミック膜による分解から保護されなければならない。一実施形態において、触媒添加剤は、該膜の10vol%以下である。
【0052】
膜の後処理
該膜の後処理は、特定の特性を膜にもたらすための別の経路である。後処理は、添加剤と一緒に又は添加剤の代わりに使用されて、特定の特性を有する膜を生成することができる。
【0053】
一実施形態において、該方法は、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミック上に仕上げ層を堆積することで、多孔質膜基材によって支持された仕上げコーティング済み選択性シリカセラミックをもたらす工程を更に含む。
【0054】
一実施形態において、仕上げ層を堆積する工程は、加水分解性基を有するシリカベースの化合物(例えば、オルトケイ酸テトラエチル)で多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを処理する工程を含む。
【0055】
一実施形態において、加水分解性基を有するシリカベースの化合物を適用することによって、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを処理する工程は、加水分解性基を有するシリカベースの化合物を多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックに適用した後、加水分解性基を有するシリカベースの化合物を水に曝露する工程を更に含む。
【0056】
一実施形態において、該方法は、イオン伝導性増強剤、分子選択性増強剤、触媒、及び耐久性増強剤からなる群から選択される薬剤でセラミック選択性膜を処理する工程を更に含む。
【0057】
例証的な一実施形態において、スルホン化ポリ(スチレン-イソブチレン-スチレン)(S-SIBS)コーティングは、フロー電池環境において膜の分子選択性を改善することが示されてきた。S-SIBSは、図1B図6A及び図6Bで参照されている。S-SIBSは、任意のコーティング方法(例えば、液滴コーティング)を使用して適用され得る。例証的な方法において、乾燥(完全に形成された)膜の外側は、欠陥を低減するために<100μmのS-SIBSポリマーでコーティングした。
【0058】
標準的なシランカップリング剤を使用して該膜を官能化することも可能である。これには、プロトン伝導性又は分子選択性を改善するためにスルホン酸基を有するシランが含まれる。例証的な化合物としては、3-トリヒドロキシシリル-1-プロパンスルホン酸及びトリエトキシ(ヘキシル)シランが挙げられる。
【0059】
他の実施形態には、耐久性を改善する又は孔径を低減するために長いアルカン基を有するシランが含まれる。アルカン基を有する例証的なシランは、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)及びトリエトキシ(ヘキシル)シランである。
【0060】
例証的な方法において、該ゾルに浸漬された膜の外側は、TEOSでコーティングし、室温で乾燥させておいた。
【0061】
別の例証的な方法において、乾燥膜は、ポリスチレンスルホネート(PSS)溶液でコーティングし、乾燥させておいた。
【0062】
一実施形態において、該方法は、セラミック前駆体ゾルをゲル化した後、より低い表面張力の液体にセラミック選択性膜を曝露する工程を更に含む。この工程は、より低い毛細管応力による最終膜中の表面割れの量を低減するのに役立つ。
【0063】
こうした実施形態において、該ゾルが適用された後に酸に曝露した後にオーブン内に(又は室温で)膜を置く代わりに、膜は、より低い表面張力流体に曝露される。一方法において、水、メタノール又は50/50の水/メタノール混合物中への単回だけの曝露工程がある。該方法に対する別の変形形態において、水、50/50の水/エタノール混合物及び次いでメタノール中への逐次浸漬が使用される。
【0064】
多孔質膜基材の前処理
一実施形態において、該方法は、セラミック前駆体ゾルを多孔質膜基材に適用する工程の前に、多孔質膜基材に前処理を適用する工程を更に含む。
【0065】
一実施形態において、前処理は、酸及びポリマーからなる群から選択される。例証的な実施形態において、該基材は、最初にシリカゾルでコーティングされず、代わりに酸又はポリマー(ポリスチレンスルホン酸)でコーティングされる。一方法において、この予備コーティングは低温(T<100℃)であり、新たにコーティングされた基材は次いで、本明細書に開示されている標準的なゾル/ゾル-ゲルプロセスに用いられる。代替方法において、予備コーティングは乾燥されず、代わりにシリカゾル中に直接的に浸漬される。
【0066】
セラミック選択性膜組成物
セラミック選択性膜を形成する方法に加えて、該膜自体が組成物として、ここで考察される。基本的に、開示方法によって形成される任意の膜は、開示されている態様の実施形態と考えられる。したがって、該膜の組成物及び特色は、該方法の前の考察に由来する。
【0067】
別の態様において、多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを含むセラミック選択性膜が提供される。
【0068】
一実施形態において、多孔質膜基材は、シリカ濾紙、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される。
【0069】
一実施形態において、多孔質膜基材は、直径10nm以上の複数の細孔を有する。
【0070】
一実施形態において、セラミック選択性膜は、多孔質膜のエッジの少なくとも一部に沿った圧縮性ポリマーエッジングを更に含む。
【0071】
一実施形態において、セラミック選択性膜は、ガスケットを画定している、セラミック選択性膜の全てのエッジに沿った圧縮性ポリマーエッジングを更に含む。
【0072】
一実施形態において、エッジ部分は幅1mm以上である。一実施形態において、エッジ部分は幅5mm以上である。一実施形態において、エッジ部分は幅1cm以上である。
【0073】
一実施形態において、圧縮性ポリマーは熱可塑性弾性ポリマーを含む。一実施形態において、熱可塑性弾性ポリマーは、ポリ(スチレン-イソブチレン-スチレン)(SIBS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる群から選択される。
【0074】
一実施形態において、選択性シリカセラミックは、選択性シリカセラミック材料の複数の層を含む。
【0075】
一実施形態において、セラミック選択性膜は、選択性シリカセラミックをコーティングしている仕上げ層を更に含む。
【0076】
一実施形態において、仕上げ層はアルキル含有化合物を含む。
【0077】
一実施形態において、選択性シリカセラミックは、セラミック選択性膜のイオン輸送特性を増加させるように構成された選択性添加剤、セラミック選択性膜の耐久性を改善するように構成された耐久性添加剤、及びセラミック選択性膜に触媒特性を加えるように構成された触媒添加剤からなる群から選択される添加剤を含む。
【0078】
一実施形態において、選択性シリカセラミックは、イオン伝導性ポリマー及びガス伝導性ポリマーからなる群から選択される選択性添加剤を含む。
【0079】
一実施形態において、添加剤は、セラミック選択性膜に可撓性の増加をもたらすように構成された低ヤング率ポリマー及びセラミック選択性膜に耐久性の増加をもたらすように構成された高ヤング率ポリマーからなる群から選択される耐久性添加剤である。
【0080】
一実施形態において、添加剤は、選択性シリカセラミックに組み込まれた触媒粒子及び触媒化合物からなる群から選択される触媒添加剤である。
【0081】
一実施形態において、セラミック選択性膜は、イオン伝導性増強剤、分子選択性増強剤、触媒、及び耐久性増強剤からなる群から選択される薬剤を含む、選択性シリカセラミック上の表面処理層を更に含む。
【0082】
セラミック選択性膜特徴
セラミック選択性膜の特徴は独特であり、電池及び燃料電池等における該膜の使用を可能にする。
【0083】
一実施形態において、セラミック選択性膜は、多分散フラクタルモデルを小角X線散乱プロファイルにフィッティングすることによって決定される場合、0.5nmから2nmの範囲の平均孔径を有する。
【0084】
一実施形態において、細孔構造のフラクタル性は、多分散フラクタルモデルを小角X線散乱プロファイルにフィッティングすることによって決定される場合、約3である(例えば、図8を参照されたい)。一実施形態において、細孔構造のフラクタル性は、約1.4から約3の範囲である。
【0085】
一実施形態において、4MのH2SO4中のhセルにおいて測定される動的電流(galvanodynamic)プロトン伝導性は、0.001S/cmから1S/cmの範囲である。一実施形態において、4MのH2SO4中のhセルにおいて測定される動的電流プロトン伝導性は、0.05S/cmから1S/cmの範囲である。
【0086】
一実施形態において、セラミック選択性膜を横切る硫酸バナジウム(IV)水和物イオンの透過性は、1×10-8cm2/minから8×10-4cm2/minの範囲であると測定される。一実施形態において、セラミック選択性膜を横切る硫酸バナジウム(IV)水和物イオンの透過性は、1×10-6cm2/minから1×10-5cm2/minの範囲であると測定される。
【0087】
一実施形態において、セラミック選択性膜のプロトン/バナジウムイオン選択性は、比:プロトン伝導性/バナジウムイオン透過性によって定義され、3,500S・min/cm3から58,000S・min/cm3であると測定される。一実施形態において、セラミック選択性膜のプロトン/バナジウムイオン選択性は、比:プロトン伝導性/バナジウムイオン透過性によって定義され、15,000S・min/cm3から30,000S・min/cm3であると測定される。
【0088】
一実施形態において、セラミック選択性膜は、直径0.1nmから10nmのサイズ範囲の細孔を含む。孔径は、セラミックの全ての層及び任意の後加工用層(例えば、「仕上げ用」アルキル層)を含めたセラミック選択性膜の最終孔径である。一実施形態において、セラミック選択性膜は、直径0.1nmから5nmのサイズ範囲の細孔を含む。一実施形態において、セラミック選択性膜は、直径0.1nmから1nmのサイズ範囲の細孔を含む。一実施形態において、セラミック選択性膜は、直径0.5nmから1nmのサイズ範囲の細孔を含む。
【0089】
一実施形態において、セラミック選択性膜は、0.1mmから1mmの範囲の厚さを有する。一実施形態において、セラミック選択性膜は、0.1mmから0.5mmの範囲の厚さを有する。一実施形態において、セラミック選択性膜は、0.2mmから0.4mmの範囲の厚さを有する。
【0090】
一実施形態において、多孔質膜基材の表面上に配置された選択性シリカセラミックは、0.5μmから750μmの厚さを有する。
【0091】
セラミック選択性膜を組み込む選択性膜
別の態様において、すでに記載されている多孔質膜基材によって支持された選択性シリカセラミックを含むセラミック選択性膜が含まれる選択性膜が提供される。
【0092】
開示されている膜は、(例えば、孔径、膜を横切る輸送の選択性等に基づいて)膜が構成され得る方式で分離が所望される任意の現存する又は将来開発される系において使用することができる。一実施形態において、選択性膜は、電池膜(例えば、RFB膜)、燃料電池膜、食品加工用膜(例えば、デンプン由来のグルコースを精製する、果汁を澄ますため、タンパク質からゼラチンの分離、並びに凝乳及びホエーの分離)、逆浸透膜、ガス分離膜(例えば、空気から窒素の分離、天然ガスから二酸化炭素の分離、及び軽質石油生成物から水素の分離)、及びバイオ分離膜(例えば、透析膜、ウイルス/細菌の精製、血液から血漿の分離、並びに抗生物質を脱塩及び濃縮するための医薬品の精製)からなる群から選択される種類の選択性膜である。
【0093】
一実施形態において、選択性膜は、フロー電池用のイオン伝導性膜である。
【0094】
一実施形態において、選択性膜は、燃料電池用のイオン伝導性膜である。
【0095】
記載されている方法によって生成される膜
別の態様において、開示方法実施形態のいずれかによる方法によって形成されるセラミック選択性膜が提供される。
【0096】
別の態様において、開示されている実施形態のいずれかによるセラミック選択性膜が含まれる選択性膜が提供される。
【0097】
一実施形態において、選択性膜は、電池膜、燃料電池膜、食品加工用膜、逆浸透膜、ガス分離膜及びバイオ分離膜からなる群から選択される種類の選択性膜である。
【0098】
一実施形態において、選択性膜は、フロー電池用のイオン伝導性膜である。
【0099】
一実施形態において、選択性膜は、燃料電池用のイオン伝導性膜である。
【0100】
以下の例は、記載されている実施形態を限定するのではなく例示する目的で挙げられる。
【実施例0101】
例証的な膜を形成する方法及び膜の特性評価が下記に開示されている。
【0102】
例証的な膜は、図1Aにおけるプロセス概要を使用して生成される。それには、ウィッキングを促進するために、マクロ多孔質支持体(例えば、シリカフィルター基材)を27wt%のケイ酸ナトリウム溶液中に30秒間浸漬する工程が含まれる。その浸された支持体は、次いで、3N硫酸中に8時間浸漬された後に、除去され、オーブン内にて70℃で2時間乾燥される。該プロセスは、次いで少なくとも1回反復されることで、孔径を更に低減するとともに割れを低減しながら、耐久性を改善する。
【0103】
図1Bを参照すると、例証的な膜生成プロセスが4つの工程で示されている。工程1:弾性エッジングを、予めあるサイズに調整したセラミックマクロ多孔質支持体に付ける。ポリ(スチレン-イソブチレン-スチレン)(SIBS)等の溶媒可溶性ポリマーを膜のサイズに鋳込みながら、活性領域も画定する。溶媒を膜のエッジ上に置き、次いでポリマーエッジングによって挟む。溶媒はエッジングを部分的に溶解し、これが支持体との強い接着をもたらす。工程2:膜をシリカ前駆体溶液に浸漬する。工程3:膜を酸浴に浸漬する。工程4:膜を低温(例えば、60℃)で乾燥させる。工程2~4のプロセス条件は、特定の性能属性を有する圧縮性セラミックプロトン伝導性膜を生成するために変動させることができる。
【0104】
図2Aは、本明細書に開示されているある特定の実施形態による多孔質膜基材として使用可能な型の(具体的には、図1Aに関して上記で開示されている型の)シリカ支持体のSEM顕微鏡写真である。図2Bは、本明細書に開示されているある特定の実施形態による(具体的には、図1Aに関して上記で開示されている型の)ガラス繊維支持体上に形成されたシリカ選択性膜のSEM顕微鏡写真である。図2A及び図2Bは、画像化中の充電を低減するために10nm層のAu/Pdでコーティングされた材料の表面SEM画像である。ガラス繊維支持体はPall Corp社によって製造され、バインダーなしのホウケイ酸ガラス繊維支持体(「A/C型」)である。名目上の孔径は1ミクロンであり、厚さは254ミクロンである。
【0105】
図3A:フラクタル凝集モデルでフィッティングした膜の小角X線散乱(SAXS)プロファイル。図3B:SAXSモデル化に基づく孔径分布。フロー電池におけるイオンのイオン半径に基づく理想的な孔径が認められる。理想的な孔径分布は、H3O+とVO2の半径の間に認められる。NAFIONの公知の孔径範囲も認められる。これらの試料は全て、上記で考察されている図1の方法を使用して、加工された。図3AにおけるSAXSプロファイルは、硝酸を使用して形成された膜に関するものである。図3Bにおいて、曲線間の唯一の差異は酸型である。対応する酸について、以下の平均半径(オングストロームで)が見出された:4.5=CH3COOH(酢酸)、5.0=HCl、6.0=CH3SO4(メタンスルホン酸)、7.2=H3PO4、8.1=HNO3。これらの図は、本発明者らが、加工条件に依存して様々な孔径を達成することができることを実証している。図3Bには、参照としてNAFIONが含まれている。これらのデータを考慮すると、セラミック選択性膜の理想的な孔径(半径)は3nm以下である。
【0106】
図4:例証的なセラミック選択性膜の表面及び断面のSEM画像。右の膜は、乾燥させる前に毛細管応力を低減するためにメタノール/水混合物に浸漬させた。膜断面の概念図も示されている。この図は、本発明者らが、膜内に密なシリカ構造を発生させることができることを示している。これらは表面割れを有し得るが、膜性能を害する橋架け割れを有しない。更に、表面割れは、乾燥させる前に水/メタノール浴に膜を浸漬することによって低減することができる。これらの試料は、図1Aに関して前に記載されている標準的プロセスを使用して作製された。両方で使用された酸は3NのH3PO4であり、それらは2回の浸漬サイクル(前にも記載されている)を使用して作製された。後洗浄なしの試料は、70℃で通常通りに乾燥させた。後洗浄のものは、前の1時間50/50v/vの水/メタノール混合物に浸漬し、次いで、70℃で乾燥させた(この浸漬は、最後のサイクルだけに行った)。
【0107】
図5は、市販の材料NAFION 212と比較して、代表的なセラミック選択性膜(「NaS」は、全てのケイ酸ナトリウムから形成された膜であり;「NaS中14wt%のPSS」は、ケイ酸ナトリウムゾル中14wt%のPSSで形成された膜であり;「NaS-TEOS」は、凝集複合膜を形成するためにケイ酸ナトリウム及びTEOSの組合せで形成された膜であり;「LiS」は、NaS膜と同様の方式だがケイ酸ナトリウムの代わりにケイ酸リチウムで形成された膜である)についてプロトン伝導性対VO2透過性をグラフとして示している。
【0108】
図5は、すでに考察されている配合物について、フロー電池のための多数の鍵となる性能属性を例示している。
【0109】
プロトン伝導性は、4MのH2SO4溶液中にて0mAから200mAの動的電流掃引で試験される。測定は、ルギン毛細管、白金リード及びAg/AgCl参照電極を用いてhセルにおいて行われる。
【0110】
バナジウム透過性も、一方の側で1.5MのVOSO4及び2MのH2SO4並びに他方の側で1.5MのMgSO4及び2MのH2SO4を用いてhセルにおいて行われる。液体のアリコートは、膜を横切るバナジウム拡散を追跡する時間の関数として取られる。バナジウムは青色であり、濃度はUV-visを使用して決定することができる。
【0111】
理想的なのは低い透過性及び高い伝導性であるが、高い伝導性及び控えめな透過性も、電池がより速く充電するのを可能にするために貴重である。NaS膜は、NAFIONと同様であるが、生成するのに劇的により安価であるため、良い候補である。
【0112】
NAFION 212は、2mil厚のNAFION(テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクテンスルホン酸コポリマー)と定義されている。純粋なNaSは、図1Aに関して前に記載されているのと同じやり方で(即ち、2回のコート及び70℃の乾燥工程で)加工されたケイ酸ナトリウム試料である。
【0113】
NaS中14wt%のPSSは、ポリスチレンスルホネート及びケイ酸ナトリウムである。この場合において、PSSは、基材へのウィッキングの前にケイ酸ナトリウムと混合される。PSSは酸として作用するので、酸浸漬工程は、この方法では使用されない。PSS及びNaSを混合した約1分後、基材は浸漬され、複合溶液はマクロ多孔質基材にウィッキングする。膜は次いで除去され、室温で1週間ゲル化/乾燥させる。
【0114】
ケイ酸リチウム(LiS)試料は、図1Aにおけるケイ酸ナトリウムと同じやり方で加工される。それはLithisil(商標)25(23%のケイ酸リチウム及び77%の水)である。使用された酸は、24時間3NのH3PO4であった。それは乾燥されなかったが、代わりに直ちに除去及び試験された。
【0115】
NaS-TEOSは、異なるやり方で加工される。この場合において、マクロ多孔質基材は、ケイ酸ナトリウム(これは、わずかに塩基性である)に30秒間(ウィッキングのため)浸漬され、次いでシート上に置かれる。TEOSは次いで最上層として添加され、それは水と反応(加水分解)し、塩基は触媒として作用する。TEOS及びケイ酸ナトリウムが凝集することで、支持体内に密な構造を形成する。TEOSの一部は、ゲル化/乾燥中に蒸発する。ゲル化/乾燥プロセスは、1週間室温で放置される。
【0116】
図5において試験されたこれらの試料の全ては、約1cm2の活性領域及び5cm2のエッジングを含めた合計領域を有する。
【0117】
図6Aは、例証的なゾル-ゲルSiO2;例証的なゾル-ゲルSiO2+SIBS複合体;及び比較のNAFION 115を使用する例証的な全バナジウムRFBのサイクリング容量をグラフとして示している。図6Bは、図6Aの膜を含めて、RFBについての電圧プロファイルを例示している。
【0118】
図7A及び図7Bは、本明細書に開示されている実施形態によるTEOS-ケイ酸ナトリウム膜のSEM画像である。図7Aは上面図であり、図7Bは密な断面図である。
【0119】
図8は、フラクタルモデル(図3Aに示されている)を使用する代表的な膜のSAXSフィッティングから抽出されたフラクタル次元をグラフとして示している。選択性(プロトン伝導性/バナジウムイオン透過性)は、より低いフラクタル次元に対して、より高い選択性を示すフラクタル次元の関数としてプロットされている。NAFIONは参照のためにプロットされている。ここで使用された方法は、図3Aに記載されているものと同じであり、フラクタル次元は以下の酸に対応する:2.97=CH3SO4、1.6=H3PO4、2.88=CH3COOH、2.49=H2SO4、2.67=HNO3、2.4=HCl。
【0120】
「約」、「およそ」及び「実質的に」等、任意の近似用語は、対象がプラス又はマイナス5%によって修飾することができるとともに記載されている実施形態内に入ることを示す。
【0121】
例示的な実施形態が例示及び記載されてきたが、様々な変化が、本発明の趣旨及び範疇から逸脱することなく、その中で行うことができることが認識されよう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム及びケイ酸カリウムからなる群から選択されるケイ酸塩から形成されるケイ酸アルカリ溶液を含むセラミック前駆体ゾルに、多孔質膜基材を浸漬する工程であって、前記多孔質膜基材がシリカフィルター基材である、工程;及び
ゾルゲル法を使用してセラミック前駆体ゾルをゲル化することで、セラミック前駆体ゾルからシリカセラミックを形成し、それによって、多孔質膜基材によって支持されたシリカセラミックを含むセラミック選択性膜をもたらす工程
を含み、
前記多孔質膜基材が、直径10nm以上の複数の細孔を有し、
前記セラミック前駆体ゾルをゲル化する工程が化学的ゲル化を含み、化学的ゲル化が、セラミック前駆体ゾルを酸溶液に曝露する工程を含み、
前記セラミック前駆体ゾルをゲル化する工程が、20℃から100℃の範囲の温度に曝露する工程を含み、
前記セラミック前駆体ゾルが、ポリスチレンスルホネート(PSS)及びオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)からなる群から選択される添加剤を更に含む、セラミック選択性膜を形成する方法。
【請求項2】
前記ケイ酸アルカリ溶液が、5wt%から50wt%の範囲の濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セラミック前駆体ゾルに、前記多孔質膜基材によって支持されたシリカセラミックを浸漬すること;及び
セラミック前駆体ゾルをゲル化することで、多孔質膜基材によって支持された二重コーティングシリカセラミックをもたらすこと
によって、セラミックの少なくとも1つの追加層を堆積する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2回目の、セラミックの少なくとも1つの追加層を堆積する工程を反復することで、多孔質膜基材によって支持された三重コーティングシリカセラミックをもたらす工程を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記セラミック前駆体ゾルをゲル化した後、水、メタノール又は50/50の水/メタノール混合物にセラミック選択性膜を曝露する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【外国語明細書】