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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159254
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】肉食系ハチ駆除剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/02 20060101AFI20231024BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20231024BHJP
   A01N 35/06 20060101ALI20231024BHJP
   A01N 37/10 20060101ALI20231024BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20231024BHJP
   A01N 27/00 20060101ALI20231024BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20231024BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20231024BHJP
   A01N 53/06 20060101ALI20231024BHJP
   A01N 53/04 20060101ALI20231024BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A01N37/02
A01P7/04
A01N35/06
A01N37/10
A01N31/04
A01N27/00
A01N35/02
A01N43/16 A
A01N53/06 150
A01N53/04 510
A01N25/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132402
(22)【出願日】2023-08-16
(62)【分割の表示】P 2021501850の分割
【原出願日】2020-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2019029652
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 練
(72)【発明者】
【氏名】前田 和輝
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スズメバチ科に属するハチなど肉食系ハチに施用することにより、正常な行動を瞬時に停止させ、刺咬による被害を抑止する薬剤を提供する。
【解決手段】(a)環状モノテルペン系化合物、(b)鎖状モノテルペン系アルデヒド化合物、(c)鎖状セスキテルペン化合物、(d)安息香酸アルキルエステル、(e)乳酸アルキルエステル、(f)オクタノール、(g)フェニル酢酸エステルからなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、肉食系ハチ駆除剤(ただし、シトラールおよび/またはテルピネオールを有効成分として含有する陸生無脊椎動物用行動抑制剤組成物を除き、レモングラス油を有効成分として含有する殺虫組成物を除く)を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)環状モノテルペン系化合物、(b)鎖状モノテルペン系アルデヒド化合物、(c)鎖状セスキテルペン化合物、(d)安息香酸アルキルエステル、(e)乳酸アルキルエステル、(f)オクタノール、(g)フェニル酢酸エステルからなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、肉食系ハチ駆除剤。
【請求項2】
さらに、ピレスロイド化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の肉食系ハチ駆除剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の肉食系ハチ駆除剤を含有する噴霧用製剤。
【請求項4】
請求項3に記載の噴霧用製剤を肉食系ハチに噴霧することを特徴とする、肉食系ハチを駆除する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉食系ハチの駆除剤に関する。より詳しくは、本発明は、環状モノテルペン系化合物などを有効成分とする、肉食系ハチ駆除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハチ類による被害が増大し問題となっている。日本において約3000種のハチが知られており、そのうち刺咬性の強い肉食系ハチは約20種といわれている。肉食系ハチの中でも、スズメバチやアシナガバチ等のスズメバチ科に属するハチは攻撃性の強い種であり、刺咬されるとアナフィラキシーショックを引き起こすほか、毒針の構造上複数回の攻撃が可能であるため、駆除要望が非常に高い害虫種の1つであり、その駆除に際し、速効性が求められている。
肉食系ハチは、民家の軒下や天井裏に営巣することもあり、都市部では、人の居住区域と肉食系ハチの活動範囲が重複しているため、刺咬による被害が多発する傾向にある。肉食系ハチは、好戦的であるため、人が知らずに巣に接近したために攻撃され、被害に合う場合もある。例えば、肉食系ハチに刺咬されたことが原因で死亡する人の数は、毎年10~20人程度報告されている。
ハチ類の防除方法としては、殺虫活性成分を含有する液剤またはエアゾール剤を、ハチ類に直接噴霧して駆除するタイプのものが一般的であり、速効性を有するピレスロイド殺虫剤などを有効成分として含有するエアゾール剤が多く提案されている(例えば、特許文献1~3等)。しかしながら、これらのエアゾール剤を使用しても、各個体に十分量を噴霧することができない場合や、殺虫効果が発現するまでの時間に、興奮状態となったハチが警戒フェロモンを発散し、より多くの興奮したハチを呼び寄せてしまい、これらのハチに攻撃されることもあった。
このような状況から、肉食系ハチの正常な行動を瞬時に停止させ被害を抑止する、ピレスロイド殺虫剤に比べてさらに速効性の高い薬剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-178793号公報
【特許文献2】特開2015-093846号公報
【特許文献3】特開2011-144151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、肉食系ハチに施用することにより、正常な行動を瞬時に停止させ、刺咬による被害を抑止する、速効性の高い薬剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、環状モノテルペン系化合物などを有効成分とする薬剤を、スズメバチ科に属するハチなどの肉食系ハチに施用することにより、瞬時に正常な行動を停止させて駆除できることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.(a)環状モノテルペン系化合物、(b)鎖状モノテルペン系アルデヒド化合物、(c)鎖状セスキテルペン系化合物、(d)安息香酸アルキルエステル、(e)乳酸アルキルエステル、(f)オクタノール、(g)フェニル酢酸エステルからなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、肉食系ハチ駆除剤。
2.さらに、ピレスロイド化合物を含有することを特徴とする、1.に記載の肉食系ハチ駆除剤。
3.1.または2.に記載の肉食系ハチ駆除剤を含有する噴霧用製剤。
4.3.に記載の噴霧用製剤を肉食系ハチに噴霧することを特徴とする、肉食系ハチを駆除する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の肉食系ハチ駆除剤は、(a)環状モノテルペン系化合物、(b)鎖状モノテルペン系アルデヒド化合物、(c)鎖状セスキテルペン系化合物、(d)安息香酸アルキルエステル、(e)乳酸アルキルエステル、(f)オクタノール、(g)フェニル酢酸エステルからなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分として含有する薬剤を、スズメバチ科に属するハチなどの肉食系ハチに対し噴霧など施用すると、肉食系ハチは異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動を瞬時に停止して活動できなくなるため、速効的な駆除効果を発揮するものである。
本発明の肉食系ハチ駆除剤を使用することにより、知らずに巣に接近したためスズメバチ科に属するハチなどの肉食系ハチに攻撃された際に、当該肉食系ハチを速効的に駆除できるので、人は速やかにハチの活動範囲から退避し、被害を回避することができる。また、スズメバチ科に属するハチなどの肉食系ハチの巣を除去する際に、巣の周囲にいる肉食系ハチを速効的に駆除してから巣を除去することができるので、安全に巣の除去作業を行うことが可能となる。
また、本発明の肉食系ハチ駆除剤は、ピレスロイド化合物を併用することにより、(a)~(g)からなる群より選択される1種以上の化合物が、肉食系ハチの正常な行動を瞬時に停止させ、同時にピレスロイド化合物が、肉食系ハチを致死またはノックダウンさせることができるため、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の肉食系ハチ駆除剤について、以下詳細に説明する。
本発明における「駆除」とは、殺虫剤のノックダウン効果や致死効果とは異なり、異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動を瞬時に停止させ、活動できなくなる事象を意味し、正常な行動を瞬時に停止させるため、飛行して攻撃することが不可能な状態となることを意味する。
【0009】
本発明における肉食系ハチとは、ミツバチなど非肉食系ハチや他の肉食系ハチのほか他の昆虫などを餌とする肉食のハチを意味し、具体的には、スズメバチ亜科(Vespinae)およびアシナガバチ亜科(Polistinae)に属する膜翅目害虫が含まれる。スズメバチ亜科に属するハチとしては、例えば、オオスズメバチ、キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、ヒメスズメバチ、チャイロスズメバチ、クロスズメバチ、シダクロスズメバチ、ヤドリスズメバチなどを挙げることができる。また、アシナガバチ亜科に属するハチとしては、例えば、キアシナガバチ、セグロアシナガバチ、フタモンアシナガバチ、トガリフタモンアシナガバチ、ヤマトアシナガバチ、キボシアシナガバチ、コアシナガバチ、ヤエヤマアシナガバチ、ムモンホソアシナガバチ、ヒメホソアシナガバチなどの土着種を挙げることができる。これら土着種に加えて、対馬や北九州市に侵入したツマアカスズメバチも本発明の肉食系ハチに含まれる。この他、ベッコウバチ、ジガバチ、ドロバチ等の膜翅目害虫に属するものも含まれる。
【0010】
<有効成分について>
本発明の肉食系ハチ駆除剤は、(a)環状モノテルペン系化合物、(b)鎖状モノテルペン系アルデヒド化合物、(c)鎖状セスキテルペン系化合物、(d)安息香酸アルキルエステル、(e)乳酸アルキルエステル、(f)オクタノール、(g)フェニル酢酸エステルからなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするものである。
(a)環状モノテルペン系化合物は、2つのイソプレン単位からなる環構造を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、ピネン、テルピネン、リモネンなどの炭化水素化合物、メントン、イソメントン、プレゴン、ツジョン、カルボン、カンファなどのケトン化合物、メントール、テルピネオールなどのアルコール化合物、ぺリラアルデヒド、ミルテナールなどのアルデヒド化合物が含まれる。中でも、(a)環状モノテルペン系化合物として、前記炭化水素化合物、ケトン化合物およびアルコール化合物が好ましく、特にα-ピネン、シネオール、メントン、プレゴン、ツジョン、α-テルピネン、カルボン、メントールが好ましい。
(b)鎖状モノテルペン系アルデヒド化合物は、2つのイソプレン単位からなる鎖状構造を有するアルデヒド化合物を意味する。具体的には、例えば、シトラール、シトロネラールが含まれ、特にシトラールやシトロネラールが好ましい。
(c)鎖状セスキテルペン系化合物は、3つのイソプレン単位からなる環構造を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、ファルネソールなどのアルコール化合物、イソロンギホラノンなどのケトン化合物が含まれ、中でも、前記アルコール化合物が好ましく、特にファルネソールが好ましい。
【0011】
(d)安息香酸アルキルエステルとしては、炭素数1~8の環状/鎖状アルキルエステルが好ましく、炭素数1~6の鎖状アルキル基がより好ましい。中でも、安息香酸メチルエステル、安息香酸エチルエステル、安息香酸n-プロピルエステル、安息香酸イソプロピルエステルが好ましい。
(e)乳酸アルキルエステルとしては、炭素数1~8の環状/鎖状アルキルエステルが好ましく、炭素数1~6の鎖状アルキル基がより好ましい。中でも、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸イソプロピルエステル、乳酸n-ブチルエステルが好ましい。
(f)オクタノールは炭素数8のアルコールであり、1-オクタノール、イソオクタノール、3-オクタノール、2-エチルヘキサノールなどが含まれる。中でも、3-オクタノールが好ましい。
(g)フェニル酢酸エステルとしては、置換されていても良い炭素数1~3の鎖状アルキルエステルが好ましく、置換基としてはフェニル基が好ましい。中でも、フェニル酢酸メチルエステル、フェニル酢酸エチルエステル、フェニル酢酸ベンジルエステルが好ましい。
本発明の肉食系ハチ駆除剤は、(a)環状モノテルペン系化合物を必須成分として含有することが好ましい。特に、ピネンおよび/またはメントンを必須成分として含有することが好ましい。
【0012】
本発明の肉食系ハチ駆除剤は、有効成分として(a)~(g)からなる群より選択される成分を、駆除剤全体(エアゾール剤の場合、噴射剤を含む)の0.005重量%以上80重量%以下の範囲で含有することが好ましく、中でも、0.05重量%以上40重量%以下の範囲がより好ましく、0.1重量%以上20重量%以下の範囲が特に好ましい。
【0013】
本発明の肉食系ハチ駆除剤は、各種製剤化されて用いることができる。製剤型としては、例えば油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、ゲル剤、液剤、スプレー剤、エアゾール剤等が挙げられる。これらの中でも、スプレー剤やエアゾール剤等の噴霧用製剤、粉剤や粒剤等の散布剤が、本発明における製剤型としては、駆除効果を最大限とできるため好適である。
中でも、本発明の肉食系ハチ駆除剤をエアゾール剤とすることが好ましい。エアゾール剤は、原液と原液を噴射させる噴射剤とで構成させるが、有効成分として(a)~(g)からなる群より選択される成分を、原液中に0.01重量%以上100重量%以下の範囲で含有することが好ましく、0.1重量%以上50重量%以下の範囲がより好ましく、0.5重量%以上30重量%以下の範囲が特に好ましい。
製剤化する際に使用できる液体担体としては、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ヘテロ環系溶剤(スルホラン、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、酸アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、および水が挙げられる。水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、ろ過処理した水、滅菌処理した水、地下水等が用いられる。
【0014】
本発明において、エアゾール剤に製剤化するために使用する液体担体としては、飽和炭化水素が好ましい。飽和炭化水素としては、パラフィン系炭化水素やナフテン系炭化水素が挙げられるが、中でも、ノルマルパラフィンとイソパラフィンからなるパラフィン系炭化水素が好ましい。ノルマルパラフィンとしては、炭素数が12~14主体のものが代表的で、例えば、三光化学工業株式会社製のネオチオゾール、JXTGエネルギー株式会社製のノルマルパラフィンN-12、ノルマルパラフィンN-13、ノルマルパラフィンN-14、ノルマルパラフィンMA等が、イソパラフィンとしては、例えば、出光興産株式会社製のIPクリーンLX、IPソルベント等が挙げられる。さらに、液体担体として、脂肪酸エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ヘテロ環系溶剤、エステル系溶剤およびアルコール系溶剤から選ばれる1種または2種以上を併用して配合するのが好ましい。
エアゾール剤に使用される噴射剤としては、公知のものを広く使用することができ、例えば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、(HFO、HFC等の)代替フロン、炭酸ガス、窒素ガス等を挙げることができる。これらの中でもLPG、ジメチルエーテルを用いるのが好ましい。このエアゾール剤とする場合においては、噴射剤量が全体の30~95容量%、特に50~95容量%とし、原液(上記(a)~(g)からなる群より選択される有効成分以外に、界面活性剤、液体担体等の総量)が全体の70~5容量%、特に50~5容量%とすることができる。
【0015】
製剤化する際に使用できる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤を用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンモノオレエート、ソルビタンラウレート等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸アルキル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)フェニルエーテル硫酸またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー硫酸のナトリウム、カルシウムまたはアンモニウムの各塩;スルホン酸アルキル、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム等)、モノ-またはジ-アルキルナフタレン酸スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸またはポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホサクシネートのナトリウム、カルシウム、アンモニウムまたはアルカノールアミン塩の各塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン、モノ-またはジ-アルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)化フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェートのナトリウムまたはカルシウム塩等の各塩が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、例えば第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルオキサイド等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン、アミンオキシド等が挙げられる。
【0016】
製剤化する際に使用できる固体担体としては、例えば、粘土類(カオリン、珪藻土、ベントナイト、クレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、多孔質体等が挙げられる。固体担体の粒子径としては、0.01μm~15mmの範囲のものが好ましく、中でも0.1μm~10mmの範囲のものがより好ましい。
【0017】
本発明において、製剤化する場合は必要に応じて凍結防止剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤および増粘剤等を添加することができる。
凍結防止剤としては、例えば、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルカルビトール、3-メチル-メトキシブタノール等が挙げられる。
消泡剤としては、例えばアンチフォームE-20(シリコーンエマルジョン、花王株式会社、商品名)、アンチフォームC(東レ・ダウコーニング株式会社、商品名)、アンチフォームCエマルション(東レ・ダウコーニング株式会社、商品名)、ロードシル454(ソルベイ社、商品名)、ロードシルアンチフォーム432(ソルベイ社、商品名)、TSA730(株式会社タナック、商品名)、TSA731(株式会社タナック、商品名)、TSA732(株式会社タナック、商品名)、YMA6509(株式会社タナック、商品名)等のシリコーン系消泡剤、フルオウェットPL80(クラリアント社、商品名)等のフッ素系消泡剤が挙げられる。
防腐剤としては、例えばバイオホープおよびバイオホープL(化学名:有機窒素硫黄系複合物、有機臭素系化合物)、ベストサイド-750(化学名:イソチアゾリン系化合物、2.5~6.0%)、プリベントールD2(化学名:ベンジルアルコールモノ(ポリ)ヘミホルマル)、PROXEL GXL(S)(化学名:1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、20%)、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
酸化防止剤としては、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(トミノックスTT、株式会社エーピーアイコーポレーション、商品名/IRGANOX1010またはIRGANOX1010EDS、チバ・ジャパン社、商品名)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシ・アニソール(BHA)、没食子酸プロピル、およびビタミンE、混合トコフェロール、α-トコフェロール、エトキシキンおよびアスコルビン酸等が挙げられる。
【0018】
本発明の肉食系ハチ駆除剤は、肉食系ハチに対して有効な殺虫剤成分を配合することにより、異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとらせ、正常な行動を瞬時に停止させつつ、さらに致死またはノックダウンさせることができるものとなる。配合できる殺虫剤成分としては、具体的に、例えば、アレスリン、レスメトリン、フラメトリン、プラレトリン、テラレスリン、フタルスリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、サイパーメスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、イミプロトリン、エンペントリン、モンフルオロトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、ビフェントリン等のピレスロイド化合物;プロポクスル、カルバリル等のカーバメイト化合物;フェニトロチオン、DDVP等の有機リン化合物;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール化合物;フィプロニル等のフェニルピラゾール化合物;アミドフルメト等のニトログアニジン化合物;イミダクロプリド、ジノテフラン等のネオニコチノイド化合物;メトプレン、ハイドロプレン等の昆虫幼若ホルモン様化合物;プレコセン等の抗幼若ホルモン様化合物等が挙げられ、サイネピリン、ピペロニルブトキサイド等の共力剤等を併用してもよい。これらの殺虫剤成分は、目的に応じて1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、本発明の肉食系ハチ駆除剤は、有効成分として(a)~(g)からなる群より選択される成分と、ピレスロイド化合物を併用して配合することにより、肉食系ハチが異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動を瞬時に停止して、その間に致死またはノックダウンし得ることができるため、非常に有用である。ピレスロイド化合物の中でも、フタルスリン、イミプロトリン、モンフルオロトリン、プラレトリン、ピレトリンが、好適である。
【0019】
本発明の肉食系ハチ駆除剤は、肉食系ハチに対して施用することにより、異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとらせ正常な行動を瞬時に停止させる駆除効果を発揮することが出来るほか、肉食系ハチの巣に適用し、巣の内部にいる肉食系ハチの異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとらせ、正常な行動を瞬時に停止させることにより、肉食系ハチの巣を除去する際に、極めて良好な駆除効果を得ることができる。
【実施例0020】
以下、処方例および試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
本発明の肉食系ハチ駆除剤の試験検体例を示す。
【0021】
<駆除試験1>
(1)試験検体の調製(エアゾール剤)
実施例1
原液として本発明の有効成分である乳酸エチル10gをエアゾール缶に入れ、缶にバルブ部を取り付け、該バルブ部を通じて噴射剤であるジメチルエーテルを、原液と噴射剤との重量比が1:2となるように充填し、噴射ボタンを取り付け、実施例1のエアゾール剤試験検体30gを得た。
実施例2~28および比較例1~6は、下記表1に示した原液を使用して、実施例1と同様にしてそれぞれの試験検体30gを得た。
【0022】
(2)試験方法と評価方法
金属メッシュゲージ(25cm×25cm×25cm、20メッシュ)に表1に記載の供試虫1匹をいれ、この供試虫に対して約30cmの距離からエアゾール剤試験検体を2g(1秒間)噴霧し、供試虫の行動を最大180秒まで観察した。噴霧から供試虫が異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動が停止し、金属ゲージの底面に落ちるまでの時間を駆除時間(秒)として測定した。結果を表1にまとめ示した。表1中の「IPA」はイソプロパノールを、「%」は重量%を意味する。
なお、実施例2、3のテレピン油は、本発明の有効成分であるα-ピネンを85重量%以上含有する植物精油であり、比較例5は、溶解助剤として1重量%のミリスチン酸イソプロピルを含有する。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示すように、本発明の(a)~(g)からなる群より選択される成分は、スズメバチ科に属する肉食系ハチに対して噴霧すると、肉食系ハチは瞬時に異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動を瞬時に停止して駆除できることが明らかとなった。
【0025】
<駆除試験2(屋外)>
(1)試験検体の調製(エアゾール剤)
エアゾール剤A
n-パラフィン溶液80gに溶解させたテレピン油20gを原液としてエアゾール缶に入れ、缶にバルブ部を取り付け、該バルブ部を通じて噴射剤であるジメチルエーテルを、原液と噴射剤との重量比が1:2となるように充填し、噴射ボタンを取り付け、エアゾール剤Aの試験検体300gを得た。
エアゾール剤B
フタルスリン1.3重量%、ビフェントリン0.05重量%、メントン1重量%およびイソプロパノール(IPA)適量により、100mLとしたものを原液としてエアゾール缶に入れ、缶にバルブ部を取り付け、該バルブ部を通じて噴射剤であるジメチルエーテルを、原液と噴射剤との容量比が1:1となるように充填し、噴射ボタンを取り付け、エアゾール剤Bの試験検体200mLを得た。
エアゾール剤C
フタルスリン1.3重量%、ビフェントリン0.05重量%、メントン50重量%およびイソプロパノール(IPA)適量により、100mLとしたものを原液としてエアゾール缶に入れ、缶にバルブ部を取り付け、該バルブ部を通じて噴射剤であるジメチルエーテルを、原液と噴射剤との容量比が1:1となるように充填し、噴射ボタンを取り付け、エアゾール剤Cの試験検体200mLを得た。
【0026】
(2)試験方法と評価方法
上記エアゾール剤A~Cの試験検体を使用して、屋外(兵庫県赤穂市内)にあるセグロアシナガバチの巣に対して、表2に記載した距離から、試験検体を100g(10秒間)噴霧し、セグロアシナガバチの行動を観察した。
試験結果として、巣から一斉に飛び出したセグロアシナガバチが、1秒未満で異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動が停止した場合には、駆除評価を「〇」とした。試験結果を表2にまとめ示した。
【0027】
【表2】
【0028】
試験結果を詳しく説明する。ピレスロイド化合物を含有しない本発明の肉食系ハチ駆除剤(実施例29)は、噴射直後に肉食系ハチは異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動を瞬時に停止して地面に落下した。本発明における駆除効果は得られたものの、しばらくすると肉食系ハチは正常に羽ばたきを開始して飛行した。一方、ピレスロイド化合物を含有する本発明の肉食系ハチ駆除剤(実施例30、31)は、噴射直後に肉食系ハチは異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動を瞬時に停止し地面に落下した後も、活動を再開することは無かった。特に、メントンの含有量が1重量%と極めて少ない実施例30においては、極めて好戦的なセグロアシナガバチという肉食系ハチの20cmの大きな巣に対して施用した場合においても、全ての肉食系ハチの正常な行動を瞬時に停止させ、致死させ得ることが確認できた。
【0029】
<駆除試験3(屋外)>
(1)試験検体の調製(エアゾール剤)
エアゾール剤D
フタルスリン1.3重量%、ビフェントリン0.05重量%、メントン1重量%およびイソパラフィン適量により、100mLとしたものを原液としてエアゾール缶に入れ、缶にバルブ部を取り付け、該バルブ部を通じて噴射剤であるジメチルエーテルを、原液と噴射剤との容量比が1:1となるように充填し、噴射ボタンを取り付け、エアゾール剤Dの試験検体200mLを得た。
【0030】
(2)試験方法と評価方法
上記「駆除試験2(屋外)」のエアゾール剤Bと上記エアゾールDの試験検体を使用して、屋外(兵庫県赤穂市内)にある肉食系ハチの巣に対して、表3に記載した距離から、試験検体を100g(10秒間)噴霧し、肉食系ハチの行動を観察した。
試験結果として、巣から一斉に飛び出した肉食系ハチが、1秒未満で異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動が停止した場合には、駆除評価を「〇」とした。試験結果を表3にまとめ示した。
【0031】
【表3】
【0032】
試験結果を詳しく説明する。本発明の肉食系ハチ駆除剤(実施例32~35)は、肉食系ハチの種類に関わらず、噴射直後に異常なグルーミング、興奮行動(羽ばたき)をとり、正常な行動を瞬時に停止し地面に落下した後も、活動を再開することは無かった。また、溶剤がイソプロパノール(IPA)であるエアゾールBを使用した実施例32~34と、溶剤がイソパラフィンであるエアゾールDを使用した実施例35には、本発明の駆除効果に差異は認められなかった。また、実施例35は、メントン及び溶剤由来の臭気も殆ど気にならないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の肉食系ハチ駆除剤を使用することにより、当該肉食系ハチを速効的に駆除できるので、人は速やかにハチの活動範囲から退避し、被害を回避することができる。また、スズメバチ科に属するハチなどの肉食系ハチの巣を除去する際に、巣の周囲にいる肉食系ハチを速効的に駆除してから巣を除去することができるので、安全に巣の除去作業を行うことが可能となる。
また、本発明の肉食系ハチ駆除剤は、ピレスロイド化合物を併用することにより、(a)~(g)からなる群より選択される1種以上の化合物が、肉食系ハチの正常な行動を瞬時に停止させ、その間にピレスロイド化合物が、肉食系ハチを致死またはノックダウンさせることができるため、非常に有用である。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)環状モノテルペン系化合物、(b)鎖状モノテルペン系アルデヒド化合物、(c)鎖状セスキテルペン化合物、(d)安息香酸アルキルエステル、(e)乳酸アルキルエステル、(f)オクタノール、(g)フェニル酢酸エステルからなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、肉食系ハチ駆除剤(ただし、シトラールおよび/またはテルピネオールを有効成分として含有する陸生無脊椎動物用行動抑制剤組成物を除き、レモングラス油を有効成分として含有する殺虫組成物を除く)
【請求項2】
さらに、ピレスロイド化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の肉食系ハチ駆除剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の肉食系ハチ駆除剤を含有する噴霧用製剤。
【請求項4】
請求項3に記載の噴霧用製剤を肉食系ハチに噴霧することを特徴とする、肉食系ハチを駆除する方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)環状モノテルペン系化合物、(b)鎖状モノテルペン系アルデヒド化合物、(c)鎖状セスキテルペン化合物、(d)安息香酸アルキルエステル、(e)乳酸アルキルエステル、(f)オクタノール、(g)フェニル酢酸エステルからなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とする、肉食系ハチ駆除剤(ただし、シトラールおよび/またはテルピネオールを有効成分として含有する陸生無脊椎動物用行動抑制剤組成物を除き、レモングラス油を有効成分として含有する殺虫組成物を除き、ペパーミント油、エチルプロピオン酸フェニル及びウインターグリーン油を含有する殺虫組成物を除く)。
【請求項2】
さらに、ピレスロイド化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の肉食系ハチ駆除剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の肉食系ハチ駆除剤を含有する噴霧用製剤。
【請求項4】
請求項3に記載の噴霧用製剤を肉食系ハチに噴霧することを特徴とする、肉食系ハチを駆除する方法。