(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159268
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】糖尿病及び関連障害の治療及び予防のためのペプチド
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20231024BHJP
A61K 38/03 20060101ALI20231024BHJP
A61K 38/04 20060101ALI20231024BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20231024BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231024BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231024BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
A61K38/12
A61K38/03
A61K38/04
A61K38/16
A61P3/10
A61P3/04
C07K7/08 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023133077
(22)【出願日】2023-08-17
(62)【分割の表示】P 2021535845の分割
【原出願日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】18306794.1
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509228260
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・マリオン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】糖尿病及び関連障害の治療のための医薬組成物を提供する。
【解決手段】ペプチドを含む、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、高血糖、肥満、高インスリン血症及びバルデ・ビードル症候群からなる群から選択される糖尿病及び関連障害の治療のための医薬組成物であって、前記ペプチドは、脂肪組織におけるFATP2の発現を低下させることができ、1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含んでおらず、ヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用しており、5~60アミノ酸の長さを有し、特定の配列を含む、医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドを含む、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、高血糖、肥満、高インスリン血症及びバルデ・ビードル症候群からなる群から選択される糖尿病及び関連障害の治療のための医薬組成物であって、
- ペプチドは、脂肪組織におけるFATP2の発現を低下させることができ、
- ペプチドは、1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含んでおらず、
- ペプチドは、ヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用しており、
- ペプチドは、5~60アミノ酸の長さを有し、
- ペプチド配列は、以下の配列:VECTMVEKRVLA (配列番号3); VECTXVEKRVLA (配列番号9); VECTMVEKXVLA (配列番号10); VECTXVEKXVLA (配列番号11)の一つを含み、前記配列は、任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1~3個の修飾を含み、XはM、P及びRを除く任意のアミノ酸である、医薬組成物。
【請求項2】
前記ペプチドは化学的架橋により修飾されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ペプチドは、少なくとも5アミノ酸で40アミノ酸未満の長さを有し、好ましくは少なくとも5アミノ酸で30アミノ酸未満の長さを有し、より好ましくは少なくとも5アミノ酸で25アミノ酸未満の長さを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ペプチド配列は以下の配列:VECTMVEKRVLA(配列番号3);VECTXVEKRVLA(配列番号9);VECTMVEKXVLA(配列番号10);VECTXVEKXVLA(配列番号11)のうちの1つを含み、式中、XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ペプチド配列は以下の配列:
a)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1~3個の修飾を含む、VECTXVEKXVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号20)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である);
b)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1~3個の修飾を含む、VECTMVEKRVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号21)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である);
c)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1~3個の修飾を含む、VECTXVEKRVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号22)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である);
d)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1~3個の修飾を含む、VECTMVEKXVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号23)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である);並びに
e)a)~d)のいずれかの配列のうち、少なくとも5~25個の連続した残基のいずれかのセグメントの配列を含むペプチド
の少なくとも1つを含む、又はそれのみで構成される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ペプチド配列は以下の配列:
a) VECTXVEKXVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号20)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である);
b) VECTMVEKRVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号21)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である);
c) VECTXVEKRVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号22)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である);
d) VECTMVEKXVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号23)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である);並びに
e)a)~d)のいずれかの配列のうち、少なくとも5~25個の連続した残基のいずれかのセグメントの配列を含むペプチド
の少なくとも1つを含む、又はそれのみで構成される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ペプチド配列は以下の配列:
【化1】
の1つを含み、又はそれのみで構成され、
式中、太字と下線を引いた
【化2】
の残基はステープルを有し、ステープル化に適した任意のアミノ酸誘導体であり、
XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸であり、
置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1~3個の修飾を任意に有する配列を持つ、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ペプチド配列は以下の配列:
【化3】
の1つを含み、又はそれのみで構成され、
式中、太字と下線を引いた
【化4】
の残基はステープルを有し、ステープル化に適した任意のアミノ酸誘導体であり、
XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
Xはαヘリックス二次構造に有利なアミノ酸、又はA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸、又はA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
第1の太字及び下線を引いたXはRであり、第2の太字及び下線を引いたXはSであり、前記
【化5】
はステープルを有する、請求項7及び8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ペプチド配列は、
【化6】
を含み、
式中、
【化7】
はステープルを有し、
前記ペプチドは置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1~5個又は1~3個の修飾を任意選択で更に含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ペプチドは、2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンを含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ペプチドは、好ましくは抗糖尿病薬、脂質低下剤、抗肥満剤、降圧剤、抗脂肪変性薬、抗炎症剤、及びペルオキシソーム増殖因子-活性化因子受容体のアゴニストからなる群から選択される1つ又は複数の追加の作用薬と組み合わせて使用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記関連障害は、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、肥満、高インスリン血症及びバルデ・ビードル症候群からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学の分野に関する。より詳細には、糖尿病及び関連障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病又は糖尿病は、膵臓から十分なインスリンが分泌されないか、又は分泌されたインスリンに細胞が反応しないために、患者が高血糖になる代謝性疾患の一種である。
【0003】
糖尿病には大きく分けて3つのタイプがある。
- 1型は、体内でインスリンが分泌されないことに起因し、現在、患者にインスリンを注射する、又はインスリンポンプを装着する必要がある。
- 2型は、細胞がインスリンを適切に使用できない状態であるインスリン抵抗性に起因する。
- 3つ目は妊娠糖尿病と呼ばれるもので、妊娠中の女性に発症する。
【0004】
2型糖尿病の罹患率は、1960年以降、肥満と並行して顕著に増加している。2型糖尿病の患者数は、1985年には約3,000万人だったのと比べて、2010年現在、約2億8,500万人に達している。高血糖による長期的な合併症としては、心臓病、脳卒中、糖尿病性網膜症、透析を必要とする慢性腎不全、切断をもたらす手足の血行不良等がある。非ケトン性高浸透圧性昏睡を発症する場合もある。
【0005】
真性糖尿病の発症及び進行性の機能障害には、高血糖が関与していること、すなわちグルコース毒性説が報告されている。すなわち、慢性的な高血糖がインスリン分泌を低下させ、更にインスリン感受性を低下させ、その結果、血液グルコース濃度が上昇して真性糖尿病が自己増悪するというものである。したがって、高血糖を治療することで、前述の自己増悪サイクルを断ち切り、真性糖尿病の予防又は治療を可能にする。
【0006】
残念ながら、β細胞の機能は時間とともに低下するため、既存の治療法では長期的に正常な血糖値を回復することはできない。更に、現在のところ、この疾患のすべての側面を回復させることができる単一の薬剤はない。
【0007】
2型糖尿病は進行性の性質であるため、多くの患者は最終的に経口血糖降下剤と、場合によってはインスリン及び/又はエキセナチドの注射とともに併用する必要がある。2型糖尿病に関与する主なメカニズムであるインスリン抵抗性(ビグアナイド系、チアゾリジンジオン系)とインスリン分泌(スルホニル尿素系、グリニド系、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬)に対抗するために、抗糖尿病薬が開発されてきており、グルコースの消化管での吸収を遅らせる薬剤、体重減少を促進する薬剤や、腎グルコース排泄を促進する新しい薬剤も開発されている。しかし、これらの薬剤の多くは、体重増加、末梢浮腫、鬱血性心不全等の有害な副作用が認められており、また、長期使用により効果が減少するという大きな問題がある。したがって、血糖値をコントロールするための治療法の選択肢が増えているにもかかわらず、糖尿病とその関連疾患の治療には、代替となる改良された薬剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO10033617
【特許文献2】WO10011313
【特許文献3】WO2005/117830
【特許文献4】WO2006/075124
【特許文献5】WO2015/114062
【特許文献6】WO2004/103995
【特許文献7】WO03/043985
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Frishman D.、Argos P.、Proteins、23巻、4号、1995、566~579頁
【非特許文献2】Richards F. M.、Kundrot C. E.、Proteins、3巻、2号、1988、71~84頁
【非特許文献3】Touwら、Nucleic Acids Research 2015、43:D364~D368
【非特許文献4】Kabsch及びSander.、Biopolymers.、1983、22、2577~2637
【非特許文献5】Verdine及びHilinski (2012、Methods Enzymol、503、3~33)
【非特許文献6】Matsushita及びMatsui、(2005)、J Mol Med 83、324~328
【非特許文献7】Vivesら、Biochimic et Biophysica Acta、2008、1786、126~138
【非特許文献8】Expert Opin Investig Drugs 2003、12(4):623~633
【非特許文献9】Lippincott Williams & Wilkins、2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、J. Swarbrick及びJ. C. Boylan編、1988~1999、Marcel Dekker、New York
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
驚くべきことに、本発明者らは、食事誘発性肥満マウスのグルコース耐性を特異的に改善するPKCαのキナーゼドメインに由来するペプチド及びその誘導体を提供している。このペプチドは、一般に脂肪組織におけるFATP2(脂肪酸輸送タンパク質2(Fatty acid transport protein 2))として知られる溶質キャリアファミリー27メンバー2(Solute Carrier Family 27 Member 2、SLC27A2)の発現を低下させることができる。ペプチドは、動物モデルの血漿中の糖化アルブミンを減少させることができ、糖化アルブミンは、よく知られた糖尿病のバイオマーカーである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、糖尿病及び関連障害の治療に使用するためのペプチドであって、
- ペプチドは、脂肪組織、特に哺乳動物、特にヒトの脂肪組織におけるFATP2の発現を特異的に減少させることができ、
- ペプチドは、1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含んでおらず、
- ペプチドは、ヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用しており、
- ペプチドは、PKC(プロテインキナーゼC)のキナーゼドメインの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、若しくは25個の連続した残基のセグメント、又はPKC(プロテインキナーゼC)のキナーゼドメインの5~40個の連続した残基のセグメント由来の配列を含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成され、
- ペプチドは、5~80アミノ酸又は5~60アミノ酸又は5~40アミノ酸の長さを有し、
- ペプチド配列は、PKCのキナーゼドメインのセグメントの前記配列内に、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を含んでいてもよい、ペプチドに関する。
【0012】
好ましくは、ペプチドはステープルのような化学的架橋工程によって修飾される。
【0013】
好ましくは、ペプチドは、少なくとも5アミノ酸で40アミノ酸未満の長さを有し、好ましくは少なくとも5アミノ酸で30アミノ酸未満の長さを有し、より好ましくは少なくとも5アミノ酸で25アミノ酸未満の長さを有する。
【0014】
好ましくは、ペプチドは、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少又は防止することができる。
【0015】
任意選択で、ペプチド配列は以下の配列:任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKRVLA(配列番号3);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKRVLA(配列番号9);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKXVLA(配列番号10);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKXVLA(配列番号11);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、LMYHIQQV(配列番号4);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、LXYHIQQV(配列番号12);LDN;任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1~5個の修飾を含む、SVXWWAYGLLYEMLA(配列番号52);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、EDEDELFQSIME(配列番号7);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、EDEDELFQSIXE(配列番号14);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVRE(配列番号8);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVRE(配列番号15);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVXE(配列番号16);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVXE(配列番号17);LDN;AFF;PDY;XDY;PEII(配列番号5);XEII(配列番号18);PAK;XAKの少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成され、式中、XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である。
【0016】
任意選択で、ペプチド配列は以下の配列:任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKRVLA(配列番号3);
任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKRVLA(配列番号9);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKXVLA(配列番号10);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKXVLA(配列番号11);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、LMYHIQQV(配列番号4);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、LXYHIQQV(配列番号12);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、EDEDELFQSIME(配列番号7);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、EDEDELFQSIXE(配列番号14);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVRE(配列番号8);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVRE(配列番号15);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVXE(配列番号16);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVXE(配列番号17)の少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成され、式中、XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である。
【0017】
任意選択で、ペプチド配列は以下の配列:
a)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKXVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号20)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくは、αヘリックス二次構造に有利なアミノ酸、より好ましくは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、更により好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸である);
b)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKRVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号21)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくは、αヘリックス二次構造に有利なアミノ酸、より好ましくは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、更により好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸である);
c)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKRVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号22)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくは、αヘリックス二次構造に有利なアミノ酸、より好ましくは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、更により好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸である);
d)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKXVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号23)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくは、αヘリックス二次構造に有利なアミノ酸、より好ましくは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、更により好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸である);
並びにa)~d)のいずれかの配列のうち、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、若しくは25個の連続した残基のいずれかのセグメントの配列
の少なくとも1つを含む、それで本質的に構成される、又はそれで構成される。
【0018】
任意選択で、ペプチド配列は以下の配列:
【0019】
【0020】
の少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成され、
式中、太字及び下線を引いた
【0021】
【0022】
の残基はステープルを有し、ステープル化に適した任意のアミノ酸誘導体であり、
XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸であり、
置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を任意に有する配列を持つ。
【0023】
好ましくは、前記PKCは、アルファPKC(αPKC)、βI及びβIIPKCを含むベータPKC(βPKC)、デルタPKC、シータPKC、エタPKC及びイプシロンPKCからなる群から選択される。より好ましくは、前記PKCは、配列番号1のαPKCである。
【0024】
特定の実施形態では、ペプチド配列は、
【0025】
【0026】
を含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成され、
式中、
【0027】
【0028】
はステープルを有し、それぞれ、2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンであることが好ましく、
置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を任意に有する配列を持つ。
【0029】
本発明はまた、糖尿病及び関連障害の治療に使用するための、本開示によるペプチドを含む医薬組成物に関する。更に、糖尿病及び関連障害の治療用薬剤の製造のための、本開示によるペプチドの使用に関する。
【0030】
任意選択で、糖尿病及び関連障害は、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、高血糖、肥満、高インスリン血症及びバルデ・ビードル症候群からなる群から選択される。任意選択で、ペプチドは、好ましくは抗糖尿病薬、脂質低下剤、抗肥満剤、降圧剤、抗脂肪変性薬、抗炎症剤、及びペルオキシソーム増殖因子-活性化因子受容体のアゴニストからなる群から選択される1つ又は複数の追加の作用薬と組み合わせて使用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】アルファPKC由来のペプチドで誘導されるヒト脂肪細胞のPKCキナーゼ活性の図である。ヒト初代脂肪細胞をインスリンなしで一晩培養し、翌日、異なる条件を各ペプチドに用いて、25μgのペプチドECTMVEKKVLALL、又は25μgのペプチドSVEWWAYGLLYEMLAを各ウェルに添加し、30分間インキュベートした後、PKC活性を測定した。生理食塩水であるビヒクルをネガティブコントロールとし、10mMのインスリンをポジティブコントロールとした。
【
図2】ヒトアルファPKC由来のペプチドで処理したヒト脂肪細胞のFATPアイソフォーム発現レベルの図である。アルファPKC由来の異なるペプチド(すなわちECTMVEKKVLALL及びSVEWWAYGLLYEMLA)との48時間のインキュベーション後、FATPの6個のアイソフォームの発現レベルをリアルタイムPCRによって測定した。ヒト脂肪細胞におけるFATPの6個のアイソフォーム(Fatp1~6)について正規化された発現レベル。参照遺伝子にはGAPDHを用いた。
【
図3】ヒト脂肪細胞におけるPKC活性を誘発するPATASのin vitro用量反応の図である。培養液にPATASを添加し、ヒト初代脂肪細胞を30分インキュベートした後の、ヒト脂肪細胞のPKC活性を誘発するPATASのin vitro用量反応。n=5/グループであり、PATASの量はウェルあたりのμgで表している。
【
図4】ヒト初代成熟脂肪細胞におけるグルコースの取り込みの図である。N=8/グループである。ADPIFペプチドはインスリンと同等の効果で、ヒト初代成熟脂肪細胞におけるグルコース吸収を誘発する。
【
図5A】マウスのグルコース不耐性の改善において、ADPIFペプチドはPATADペプチドよりも活性が高い図である。グルコース耐性:マウスには、0日目にビヒクル(生理食塩水)、又はビヒクル+PATAD417、又はビヒクル+ADPIF(CPCペプチドA-MRO)のいずれかを注射した。6日後(D6)、マウスを4時間絶食させ、0分後にグルコースを皮下注射してipGTTを行った。30分ごとに尾部の血液からグルコース濃度を測定した。対照のマウスは固形飼料食餌(CTL Chow diet)で飼育した他に、他のすべてのマウスは高脂肪/高グルコースの食餌で飼育した。
【
図5B】マウスのグルコース不耐性の改善において、ADPIFペプチドはPATADペプチドよりも活性が高い図である。(A)に示したグルコース耐性試験の対応する曲線下面積(AUC)は、PATAD(PATAD417)及びADPIF(PATAD417-MRP)の注射に応じてAUCが低下しており、ADPIFがPATADよりもAUCを低下させる効果が高いことを示している。このことは、ADPIFがPATADよりもグルコース不耐性を改善する効果が高いことを示している。
【
図6A】PATASは、脂肪組織におけるFATP2の発現レベルの低下に伴い、確立された疾患マウスモデル(db/db;Jax lab由来BKS)における抗糖尿病を持つ図である。固形飼料食餌の6週齢db/db雄マウスの絶食8時間後において、PATAS皮下注射(2mg/kg BW PATAS投与)後4日目のipGTTにおける血中グルコース可動域曲線。T=0分に皮下投与したグルコース急速静注(2g/kg体重)及び関連するAUCヒストグラム(n=10マウス/グループ、有意性は*p値≦0.05、**p値≦0.01に設定した)。
【
図6B】PATASは、脂肪組織におけるFATP2の発現レベルの低下に伴い、確立された疾患マウスモデル(db/db;Jax lab由来BKS)における抗糖尿病を持つ図である。4週間のPATAS注射の後、更に4週間の無処理後、db/dbマウスsWAT。皮下の白色脂肪組織(sWAT)における6個のFATPアイソフォーム(FATP1~6)の正規化された発現レベルを決定した。GAPDHを参照遺伝子とし、n=6/グループ。
【
図7A】PATASは、肥満と2型糖尿病に伴う希少疾患であるバルデ・ビードル症候群(BBS)の遺伝的マウスモデルにおいて、グルコース不耐性の改善に効果的である図である。BBSマウスは、固形飼料食餌を自由摂食させた。n=4マウスを用い、交差実験のセットアップで、注射前と注射後3日目にipGTTを行った。BBS10遺伝子のノックアウトモデルマウス(Bbs10
-/-)を生成し、文献に記載されたように自然に肥満になった。4ヶ月齢に、Bbs10
-/-にPATASを投与する前に腹腔内グルコース耐性試験(ipGTT)を行ったところ、Bbs10
-/-マウスはグルコース不耐性であった(
図7A)。同一のマウスにPATASを2mg/kg体重分を皮下脂肪組織に投与し、その3日後にipGTTを行ったところ、Bbs10
-/-マウスはグルコース耐性が改善されたことを示す(
図7A)。
【
図7B】
図7Aに対応する曲線下面積(AUC)は~30000mg/dL分であった(
図7B)。対応するAUCが~16000mg/dL分に低下したことがわかった(
図7B)。
【
図8】STAMマウスモデルにおける血漿中の糖化アルブミンに対するADPIFの効果の図である。日本のSTAMTモデルの処理したマウスの血漿を用いて、市販のキットを用いて循環糖化アルブミンレベルを測定した。結果は、1グループあたり6匹のマウスの平均値を示し、エラーバーには平均値の標準誤差をこの図に示した。対応するマウスにADPIFを週1回、5週間注射した後、糖化アルブミンレベルがビヒクル(vehicle)注射したマウスグループと比較して有意に低下したことが測定された。
【発明を実施するための形態】
【0032】
驚くべきことに、本発明者らは、脂肪組織におけるFATP2(脂肪酸輸送タンパク質2(Fatty acid transport protein 2))の発現を特異的に減少させるPKCαのキナーゼドメインに由来するペプチド及びその誘導体を提供している。最終的に、このペプチドは、糖尿病のバイオマーカーである血漿中の糖化アルブミンを減少させることができる。
【0033】
したがって、本明細書に記載のペプチドは、糖尿病及び関連障害の治療に有用である。
【0034】
真性糖尿病は、高血糖を特徴とする。より詳細には、2型糖尿病は、高血糖とインスリン抵抗性を特徴とする。遺伝的に2型糖尿病になりやすい人において、肥満は2型糖尿病の主な原因であると考えられている。また、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症は、糖尿病とインスリン抵抗性に関連する障害としてよく知られている。次いで、グルコースの取り込みを増やして血糖を下げることで、これらの疾患の治療や進行又は発症を遅らせることができる。
【0035】
したがって、本発明は、
- 糖尿病及び関連障害の治療に使用するための本明細書に定義されたペプチド;
- 糖尿病及び関連障害の治療に使用するための本明細書に定義されたペプチドを含む医薬組成物;
- 糖尿病及び関連障害の治療薬の製造のための本明細書に定義されたペプチド又は医薬組成物の使用;
- 対象の糖尿病及び関連障害を治療する方法であって、本明細書に定義された治療有効量のペプチドを投与することを含む方法
に関する。
【0036】
定義
ALMS1(アルシュトレーム症候群タンパク質1)は、ALMS1遺伝子によってコードされるタンパク質である。ALMS1遺伝子の突然変異は、アルシュトレーム症候群の原因となることがわかっている。これについては、すなわち、UniProt ID番号Q8TCU4、Gene ID番号7840、HGNG ID番号428等、いくつかのデータベースに記載されている。参照配列は、GenbankにmRNAではNM_015120.4、タンパク質ではNP_055935.4で開示されている。
【0037】
「プロテインキナーゼC」及び「PKC」(EC 2.7.11.13)という用語は同等であり、プロテインキナーゼ酵素のファミリーを表し、他のタンパク質上のセリン及びスレオニンアミノ酸残基の水酸基をリン酸化することで、それらのタンパク質の機能を制御することに関与する。PKCは、ジアシルグリセロール(DAG)又はカルシウムイオン(Ca2+)の濃度が上昇する等のシグナルによって一般的に活性化される。PKCは、いくつかのシグナル伝達カスケードにおいて重要な役割を果たしている。
【0038】
PKCファミリーは、ヒトでは少なくとも15種類のアイソザイムを含み、従来型(又は古典型)PKC、新規型PKC、非定型PKCの3つの主要サブファミリーに分けられている。
【0039】
従来型(c)PKCは、アイソフォームα、βI、βII、及びγを含む。これらのPKCの活性化には、Ca2+、DAG、及びホスファチジルセリン等のリン脂質が必要である。
【0040】
新規型(n)PKCには、δ、ε、η、及びθのアイソフォームが含まれる。これらのPKCはDAGを必要とするが、活性化にCa2+を必要としない。
【0041】
非定型(a)PKCには、ζ、ι、及びλのアイソフォームが含まれる。これらのPKCは、活性化にCa2+もジアシルグリセロールも必要としない。
【0042】
プロテインキナーゼCアルファ型は、αPKC、PKC-A、又はPKC-アルファとも呼ばれ、カルシウムやセカンドメッセンジャーであるジアシルグリセロールによって活性化されるセリン及びスレオニン特異的プロテインキナーゼのファミリーに属する。これについては、すなわち、UniProt ID番号P17252、Gene ID番号9393、HGNG ID番号5578等、いくつかのデータベースに記載されている。参照配列は、GenbankにmRNAではNM_02737.2、タンパク質ではNP_002728.1で開示されている。ヒトαPKCのタンパク質配列は、配列番号1に開示されている。
【0043】
αPKCのキナーゼドメインは、配列番号1に開示されているように339位から595位までであり、配列番号2に示されている。
【0044】
「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、又は「を実質的に含む(substantially comprises)」:1つ又は複数の要素への言及のような用語を用いた本発明の任意の態様又は実施形態の本明細書での記載は、別段の記載がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、その特定の1つ又は複数の要素「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、又は「を実質的に含む(substantially comprises)」は、本発明の類似の態様又は実施形態の裏付けを提供することを意図している。例えば、特定の配列を含むものとして本明細書に記載のペプチド又はタンパク質は、別段の記載がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、その配列からなるペプチド又はタンパク質も記載していると理解すべきである。「から本質的になる(consists essentially of)」とは、ペプチド又はタンパク質がその配列からなることを意図しているが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよく、好ましくは1、2、3、4、又は5個の置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせである。特に、「で本質的に構成される(essentially consist in)」とは、ペプチドがN末端及び/又はC末端に1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の付加的なアミノ酸を含んでいてもよく、好ましくは1、2、3、4、又は5個の付加的なアミノ酸、及び/又は1、2、又は3個の置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよいことを意図する場合がある。好ましくは、置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせの数は、配列の長さに依存する。例えば、置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせの割合は、せいぜい30%、好ましくはせいぜい25%であってもよい。
【0045】
本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、ペプチド配列において単一のアミノ酸を別のアミノ酸と交換することを表す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「欠失」という用語は、ペプチド配列において単一のアミノ酸を除去することを表す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「挿入」又は「付加」という用語は同等であり、ペプチド配列において単一のアミノ酸の付加を表す。
【0048】
「置換、付加、欠失」とは、1個のアミノ酸の置換、付加、欠失を意図する。次いで、「1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせ」、「1、2、3、4、又は5個の置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせ」、又は「1、2、又は3個の置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせ」について言及される場合、それぞれ「置換、付加、欠失、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の修飾」、「置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾」、又は「置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾」を意味する。また、「1、2、3、4、又は5個の置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせ」は、「1~5個の置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせ」を意味する。また、「1、2、又は3個の置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせ」は、「1~3個の置換、付加、欠失、又はそれらの組み合わせ」を意味する。
【0049】
本明細書で開示されるペプチド配列では、アミノ酸は以下の命名法に従ってその1文字コードで表される:A:アラニン、C:システイン、D:アスパラギン酸、E:グルタミン酸、F:フェニルアラニン、G:グリシン、H:ヒスチジン、I:イソロイシン、K:リジン、L:ロイシン、M:メチオニン、N:アスパラギン、P:プロリン、Q:グルタミン、R:アルギニン、S:セリン、T:スレオニン、V:バリン、W:トリプトファン、Y:チロシン。
【0050】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」又は「同一性」という用語は、2つのペプチドのアミノ酸間の正確な対応を表す。同一性の割合は、配列をアラインメントし、アラインメントされた2つの配列間で一致する正確な数を数え、短い方の配列の長さで除し、結果に100を乗じることによって、2つの分子間の配列情報を直接比較して決定することができる。
【0051】
配列同一性は、2つの配列の長さに応じて、グローバルアラインメントアルゴリズム又はローカルアラインメントアルゴリズムを用いて、2つのペプチド配列をアラインメントすることによって決定することができる。類似した長さの配列は、好ましくは、全長にわたって配列を最適に整列させるグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を用いて整列させ、一方、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を用いて整列させる。次いで配列は、(例えばGAP又はBESTFIT等のプログラムでデフォルトのパラメータを用いて最適にアラインメントされた時に)、少なくとも一定の最小割合の配列同一性を共有する場合に、「実質的に同一」又は「本質的に類似」と呼ばれる場合がある。GAPは、Needleman及びWunschグローバルアラインメントアルゴリズムを用いて、2つの配列をその全長(完全長)にわたってアラインメントし、マッチ数を最大化し、ギャップ数を最小化する。グローバルアラインメントは、2つの配列の長さが類似している場合に、配列の同一性を決定するのに用いることに適している。
【0052】
「増加した」、「増加」又は「高める」とは、同じ条件で被検分子がない場合に測定した測定値と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%増加した測定値を表すことを意図している。「減少した」又は「減少」とは、同じ条件で被検分子がない場合に測定した測定値と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%減少した測定値を表すことを意図している。
【0053】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」又は「治療すること」という用語は、疾患の治癒、緩和又は遅延のような、患者の健康状態を改善することを意図したあらゆる行為を表す。また、治療だけでなく、予防的な処置も含まれる。
【0054】
治療という用語は、特に、損なわれたグルコースの恒常性の修正、遅延、又は低減を指定する。また、「治療」という用語は、グルコースの取り込み(例えば、脂肪細胞によるグルコースの捕捉)の改善を指定する。本発明の文脈において、「血中グルコースレベルを制御すること」又は「血中グルコースレベルの制御」という用語は、異常なレベル(すなわち、正常なグルコース恒常性を有する対応する哺乳動物対象の既知の基準値、中央値、又は平均値を下回る又は上回るレベル)を有する哺乳動物対象における血中又は血漿グルコースレベルの正常化又は調節を表す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、糖尿病又は関連障害を治療する、又はその進行や発症を遅延させる本開示のペプチド又は本開示の医薬組成物の量を表す。また、糖尿病又は関連障害を治療又は遅延させる本開示のペプチド又は本開示の医薬組成物の量を表すこともできる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「活性成分(active principle)」、「活性成分(active ingredient)」及び「活性医薬品成分」という用語は同等であり、治療効果を有する医薬組成物の成分を表す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「治療効果」という用語は、本開示のペプチド等の活性成分、又は本開示による医薬組成物によって誘発される、糖尿病又は関連障害を治療する、又はその進行や発症を遅延させることができる効果を表す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「賦形剤又は薬学的に許容される担体」という用語は、医薬組成物中に存在する活性成分を除くあらゆる成分を表す。その添加は、最終製品に特定の一貫性やその他の物理的又は味覚的特性を付与することを目的としている場合がある。賦形剤又は薬学的に許容される担体は、活性成分との相互作用、特に化学的作用、がないことが必要である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」、又は「患者」という用語は互換性があり、動物、好ましくは哺乳動物、更に好ましくは成人、子供、新生児、出生前段階のヒトを含むヒトを表す。
【0060】
本明細書では、「約」という用語は、記載された値の±10%の範囲の値を表す。例えば、「約50」とは、50の±10%の値、すなわち45から55の範囲の値を含む。好ましくは、「約」という用語は、記載された値の±5%の範囲の値を表す。
【0061】
ペプチド
本開示によるペプチドは、以下の特徴:
- 1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含んでいないこと;
- 好ましくは、ヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用していること;
- PKC(プロテインキナーゼC)のキナーゼドメインのセグメント、好ましくはPKC(プロテインキナーゼC)のキナーゼドメインの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、若しくは25個の連続した残基のセグメント、又はPKC(プロテインキナーゼC)のキナーゼドメインの5~40個の連続した残基のセグメント由来の配列を含む、それで本質的に構成される、又はそれで構成されること;並びに
- ペプチド配列は、PKCのキナーゼドメインのセグメントの前記配列内に、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択される1、2、3、4、又は5個のアミノ酸修飾を含んでいてもよいこと
を示す。
【0062】
ペプチドは、更に以下の特徴:
- 80アミノ酸未満、より好ましくは60アミノ酸未満、更に好ましくは40アミノ酸未満、更にいっそう好ましくは30アミノ酸未満の長さを有すること;
- 少なくとも5アミノ酸で40アミノ酸未満の長さを有し、好ましくは少なくとも5、6、7、8又は9アミノ酸で30アミノ酸未満の長さを有し、より好ましくは少なくとも5、6、7、8又は9アミノ酸で25アミノ酸未満の長さを有すること;
- 架橋により修飾されていること;
- ALMS1-PKC間の相互作用を阻害することができる、特にALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少又は防止することができる;又は、ALMS1-PKC間の相互作用を阻害することができない、特にALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少又は防止することができないこと;
- 脂肪組織におけるFATPの発現の発現レベルを変化させ、優先的に脂肪組織におけるFATP2の発現を減少させること
の1つ又は複数を示していてもよい。
【0063】
ペプチドは、更に以下の特徴:
- 80アミノ酸未満、より好ましくは60アミノ酸未満、更に好ましくは40アミノ酸未満、更にいっそう好ましくは30アミノ酸未満の長さを有すること;
- 少なくとも5、6、7、8、又は9アミノ酸で40アミノ酸未満の長さを有し、好ましくは少なくとも5、6、7、8又は9アミノ酸で30アミノ酸未満の長さを有し、より好ましくは少なくとも5、6、7、8又は9アミノ酸で25アミノ酸未満の長さを有すること;
- 架橋により修飾されていること;
- ALMS1-PKC間の相互作用を阻害することができない、特にALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少又は防止することができないこと
の1つ又は複数を示していてもよい。
【0064】
一態様では、本開示のペプチドは、PKC(プロテインキナーゼC)のキナーゼドメインのセグメント由来の配列を含む、それで本質的に構成される、又はそれで構成される。PKCは、従来型PKC、新規型PKC、及び非定型PKCから選択することができる。特に、PKCは、従来型PKCから選択することができる。好ましくは、PKCは、α、βI、βII、及びγPKCからなる群から選択することができる。より好ましくは、PKCは、α、βI、及びβIIPKCからなる群から選択することができる。更にいっそう好ましくは、PKCは、αPKC、好ましくは、ヒトαPKC、より好ましくは、配列番号1のヒトαPKCである。ヒトαPKCのキナーゼドメインは、配列番号2に開示されている。
【0065】
PKCのキナーゼドメインのセグメントは、PKCのキナーゼドメインの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は25個の連続した残基を有している。一態様では、PKCのキナーゼドメインのセグメントは、PKCのキナーゼドメインの5~40個の連続した残基(任意選択で、5~30個、又は5~25個、又は7~25個、又は8~25個、又は9~25個、又は10から25個、又は11~25個、又は12~25個)を有している。
【0066】
セグメントが選択されたPKCのキナーゼドメインは、好ましくは配列番号2の配列と少なくとも40%の同一性を有し、より好ましくは配列番号2の配列と少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%の同一性を有する。
【0067】
好ましくは、PKCのキナーゼドメインのセグメントの前記配列は、ペプチドの配列の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%に相当する。特定の実施形態では、本開示によるペプチド配列は、配列番号1のセグメントの配列で構成される。
【0068】
PKCのキナーゼドメインのセグメントが、1つのメチオニン及び/又は1つのプロリン及び/又は1つのアルギニンを含む場合、次いですべてのプロリン残基、及び/又はすべてのメチオニン残基、及び/又はすべてのアルギニン残基を除去するように、配列を修飾することができる(すなわち、置換を導入することによって)。例えば、すべてのプロリン残基を除去するように、配列を修飾することができる(すなわち、置換を導入することによって)。或いは、すべてのメチオニン残基を除去するように、配列を修飾することができる(すなわち、置換を導入することによって)。そうでなければ、すべてのアルギニン残基を除去するように、配列を修飾することができる(すなわち、置換を導入することによって)。一態様では、すべてのプロリン及びメチオニン残基を除去するように、配列を修飾することができる(すなわち、置換を導入することによって)。別の態様では、すべてのプロリン及びアルギニン残基を除去するように、配列を修飾することができる(すなわち、置換を導入することによって)。追加の態様では、すべてのメチオニン及びアルギニン残基を除去するように、配列を修飾することができる(すなわち、置換を導入することによって)。より好ましくは、すべてのプロリン残基、すべてのメチオニン残基、及びすべてのアルギニン残基を除去するように、配列を修飾することができる(すなわち、置換を導入することによって)。
【0069】
好ましくは、ペプチドは、20個以下、好ましくは15個以下、より好ましくは10個以下の、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸修飾を含む。特に好ましい実施形態では、ペプチドは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸修飾を含んでいてもよく、好ましくは1、2、3、4、又は5個であり、より好ましくは1、2、又は3個である。
【0070】
例えば、ペプチドは、キナーゼドメインPKCのセグメントの配列、好ましくは配列番号2の配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%の同一性を有する。一実施形態では、配列番号2に対応するペプチドの配列の一部は、配列番号2のセグメントの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%の同一性を有する。
【0071】
特定の態様では、ペプチドは、キナーゼドメインPKCのセグメントの配列、好ましくは配列番号2の配列と比較して、置換、欠失又は付加された少なくとも1つのアミノ酸を有する。
【0072】
例えば、PKCのキナーゼドメインのセグメントの配列は、配列番号1の339位と432位との間、配列番号1の434位と544位との間、配列番号1の546位と561位との間、配列番号1の563位と565位との間、又は配列番号1の568位と595位との間の配列に属するものであってもよい。
【0073】
一実施形態では、PKCのキナーゼドメインのセグメントの配列は、以下の残基、配列番号1のG433、E545、S562、S566を含まなくてもよい。
【0074】
一態様では、本開示のペプチドは、アルファヘリックス構造を有する。本明細書で使用される場合、「アルファヘリックス」、「αヘリックス」、「古典的なPauling-Corey-Branson αヘリックス」及び「3.613-ヘリックス」という用語は同等であり、互いに言及している。「アルファヘリックス」という用語は、タンパク質の二次構造に共通するモチーフであり、タンパク質の配列の3又は4残基前に位置するアミノ酸骨格のC=O基に、すべての骨格N-H基が水素結合を提供する右巻き又はらせん状の構造(ヘリックス)のことを表す。アルファヘリックスは、らせん1回転あたりの平均残基数が約3.6残基で、水素結合によって形成される環に13原子が関与している。
【0075】
特定の実施形態では、本開示のペプチドは、アルファヘリックス構造を有する、及び/又は、アルファヘリックス構造を予測する配列を有する。ペプチドの構造を決定する方法は、円偏光二色性やNMR等、当業者にはよく知られている。同様に、ペプチドのアルファヘリックス構造を予測する方法は、STRIDE(Frishman D.、Argos P.、Proteins、23巻、4号、1995、566~579頁)、DEFINE(Richards F. M.、Kundrot C. E.、Proteins、3巻、2号、1988、71~84頁)、DSSP(Touwら、Nucleic Acids Research 2015、43:D364~D368; Kabsch及びSander.、Biopolymers.、1983、22、2577~2637)等が当業者にはよく知られている。
【0076】
アルファヘリックスは、キナーゼドメインの以下の位置:配列番号1の372~377、381~392、425~432、437~456、466~468、502~504、507~510、518~533、543~552、563~572、577~579、587~593及び595~597にある。
【0077】
したがって、ペプチドは、以下の配列:
- VECTMVEKRVLA(配列番号3);
- LMYHIQQV(配列番号4);
- LDN;
- PDY;
- PEII(配列番号5);
- SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);
- EDEDELFQSIME(配列番号7);
- PAK;
- GERDVRE(配列番号8);
- AFF
の少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよい。
【0078】
特定の実施形態では、ペプチドは、以下の配列:
- VECTMVEKRVLA(配列番号3)、及び
- GERDVRE(配列番号8)
の少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよい。
【0079】
任意選択で、ペプチドは、以下の配列:VECTMVEKRVLA(配列番号3);VECTXVEKRVLA(配列番号9);VECTMVEKXVLA(配列番号10);VECTXVEKXVLA(配列番号11);LMYHIQQV(配列番号4);LXYHIQQV(配列番号12);LDN;SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);SVXWWAYGLLYEMLA(配列番号52);EDEDELFQSIME(配列番号7);EDEDELFQSIXE(配列番号14);GERDVRE(配列番号8);GEXDVRE(配列番号15);GERDVXE(配列番号16);GEXDVXE(配列番号17);LDN;AFF;PDY;XDY;PEII(配列番号5);XEII(配列番号18);PAK;XAKの少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよく、式中、XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である。好ましくは、Xはアルファヘリックス二次構造に有利なアミノ酸である。例えば、Xは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、より好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されてもよい。
【0080】
一態様では、ペプチドは、以下の配列:VECTMVEKRVLA(配列番号3);VECTXVEKRVLA(配列番号9);VECTMVEKXVLA(配列番号10);VECTXVEKXVLA(配列番号11);LMYHIQQV(配列番号4);LXYHIQQV(配列番号12);SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);SVXWWAYGLLYEMLA(配列番号52);EDEDELFQSIME(配列番号7);EDEDELFQSIXE(配列番号14);GERDVRE(配列番号8);GEXDVRE(配列番号15);GERDVXE(配列番号16);GEXDVXE(配列番号17)の少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよく、式中、XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である。特定の態様では、ペプチドは、XがKであるVECTMVEKXVLA(配列番号10)を含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成され得る。特定の態様では、ペプチドは、XがEであるSVXWWAYGLLYEMLA(配列番号52)を含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成され得る。
【0081】
特に、ペプチドは、以下の配列:VECTMVEKRVLA(配列番号3);VECTXVEKRVLA(配列番号9);VECTMVEKXVLA(配列番号10);VECTXVEKXVLA(配列番号11);LXYHIQQV(配列番号12);SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);EDEDELFQSIXE(配列番号14);GERDVRE(配列番号8);GEXDVRE(配列番号15);GERDVXE(配列番号16);GEXDVXE(配列番号17)の少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよく、式中、XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である。例えば、ペプチドは、以下の配列:VECTMVEKRVLA又はVECTTVEKEVLA(配列番号19)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0082】
任意選択で、ペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、1、2、3、4、又は5個の置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせ、より好ましくは、1、2、又は3個の置換を含む。
【0083】
任意選択で、ペプチドは、以下の配列:任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKRVLA(配列番号3);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾から選択されるアミノ酸の修飾を有する、VECTXVEKRVLA(配列番号9);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKXVLA(配列番号10);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKXVLA(配列番号11);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、LMYHIQQV(配列番号4);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、LXYHIQQV(配列番号12);LDN;任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVXWWAYGLLYEMLA(配列番号52);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、EDEDELFQSIME(配列番号7);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、EDEDELFQSIXE(配列番号14);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVRE(配列番号8);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVRE(配列番号15);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVXE(配列番号16);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVXE(配列番号17);LDN;AFF;PDY;XDY;PEII(配列番号5);XEII(配列番号18);PAK;XAKの少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよく、式中、XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である。好ましくは、Xはアルファヘリックス二次構造に有利なアミノ酸である。例えば、Xは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、より好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されてもよい。
【0084】
一態様では、ペプチドは、以下の配列:任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKRVLA(配列番号3);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾から選択されるアミノ酸の修飾を有する、VECTXVEKRVLA(配列番号9);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKXVLA(配列番号10);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKXVLA(配列番号11);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、LMYHIQQV(配列番号4);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、LXYHIQQV(配列番号12);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、SVXWWAYGLLYEMLA(配列番号52);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、EDEDELFQSIME(配列番号7);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、EDEDELFQSIXE(配列番号14);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVRE(配列番号8);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVRE(配列番号15);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVXE(配列番号16);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVXE(配列番号17)の少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよく、式中、XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である。好ましくは、Xはアルファヘリックス二次構造に有利なアミノ酸である。例えば、Xは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、より好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されてもよい。
【0085】
特に、ペプチドは、以下の配列:任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKRVLA(配列番号3);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾から選択されるアミノ酸の修飾を有する、VECTXVEKRVLA(配列番号9);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKXVLA(配列番号10);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKXVLA(配列番号11);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVRE(配列番号8);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVRE(配列番号15);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GERDVXE(配列番号16);任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、GEXDVXE(配列番号17)の少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよく、式中、XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸である。好ましくは、Xはアルファヘリックス二次構造に有利なアミノ酸である。例えば、Xは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、より好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されてもよい。
【0086】
例えば、ペプチドは、以下の配列:VECTMVEKRVLA又はVECTTVEKEVLA(配列番号19)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0087】
一態様では、ペプチドは、以下の配列:
a)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKXVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号20)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくは、αヘリックス二次構造に有利なアミノ酸、より好ましくは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、更により好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸である);
b)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKRVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号21)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくは、αヘリックス二次構造に有利なアミノ酸、より好ましくは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、更により好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸である);
c)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTXVEKRVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号22)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくは、αヘリックス二次構造に有利なアミノ酸、より好ましくは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、更により好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸である);
d)任意選択で、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾を有する、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を有する、VECTMVEKXVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号23)(式中、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくは、αヘリックス二次構造に有利なアミノ酸、より好ましくは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、更により好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸である);
並びにa)~d)のいずれかの配列のうち、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、若しくは25個の連続した残基のいずれかのセグメントの配列
の少なくとも1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよい。
【0088】
別の特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、それをアルファらせん立体配座に維持するために設計又は修飾される。当技術分野で知られているように、これは、生物学的効果に重要ではないアミノ酸の置換を伴うアミノ酸配列の修飾、非天然アミノ酸の使用、ペプチドの環化、及びペプチド骨格の修飾又はペプチド鎖内のアミノ酸間の化学的結合の付加を含む、様々な方法を介して達成することができる。このような修飾は、例えば、ペプチドの熱安定性やプロテアーゼ安定性を高めるために行うことができる。
【0089】
特に、本開示のペプチドは、化学的架橋によって修飾されている。例えば、ペプチドは、ステープル化ペプチドであり得る。一実施形態では、本開示のペプチドは、ステープル化されている。本明細書で使用される場合、「ステープル化ペプチド」又は「ステッチ付きペプチド」という用語は、ペプチドの二次構造が、ペプチドのα-ヘリックスの隣接するターンを接続する1つ又は複数の人工的な分子架橋(ブリッジ)で安定化されている人工的に修飾されたペプチドを表す。ステープル化ペプチドの調製方法は、当技術分野ではよく知られており、例えば、Verdine及びHilinski (2012、Methods Enzymol、503、3~33)、WO10033617及びWO10011313に記載されており、これらの開示内容は参照によって本明細書に組み入れる。
【0090】
一実施形態では、本開示のステープル化ペプチドの架橋は、i+3架橋、及び/又はi+4架橋、及び/又はi+7架橋である。ペプチドにおいて、「i+3架橋」とは、1つのアミノ酸である「i」アミノ酸と、iアミノ酸から3アミノ酸残基の距離に存在する別のアミノ酸との間の架橋である。ペプチドにおいて、「i+4架橋」とは、1つのアミノ酸である「i」アミノ酸と、iアミノ酸から4アミノ酸残基の距離に存在する別のアミノ酸との間の架橋である。ペプチドにおいて、「i+7架橋」とは、1つのアミノ酸である「i」アミノ酸と、iアミノ酸から7アミノ酸残基の距離に存在する別のアミノ酸との間の架橋である。好ましい態様では、ペプチドは、「i+7架橋」を有する。
【0091】
最も短い配列、特に3~4個の残基を含む配列では、架橋はi+3及びi+4であり、この配列の外側にある残基の間に導入される。配列が十分に長い場合は、i+7の架橋が好ましい。
【0092】
この態様を1つの特定のペプチドで説明すると、ペプチドは以下の配列:
【0093】
【0094】
の1つを含み、それで本質的に構成され、又はそれで構成されてもよく、
式中、太字及び下線を引いた
【0095】
【0096】
の残基はステープルを有し、ステープル化に適した任意のアミノ酸誘導体であり、
XはM、P、及びRを除く任意のアミノ酸であり、好ましくは、αヘリックス二次構造に有利なアミノ酸であり、より好ましくは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、更により好ましくは、A、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択され、
置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を任意に有する配列を持つ。
【0097】
例えば、i+7のステープルの場合、最初の
【0098】
【0099】
は、2-(7-オクテニル)アミノ酸(例えば、2-(7-オクテニル)アラニン又は2-(7-オクテニル)アルギニン)であり、第2の
【0100】
【0101】
は、2-(4-ペンテニル)アミノ酸(例えば、2-(4-ペンテニル)アラニン又は2-(4-ペンテニル)セリン)である。特定の組合せとしては、2-(7-オクテニル)アラニン及び2-(4-ペンテニル)アラニン;2-(7-オクテニル)アラニン及び2-(4-ペンテニル)セリン;2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)アラニン;又は2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンを挙げることができる。
【0102】
特定の実施形態では、ペプチドは、
【0103】
【0104】
であり得、式中、
【0105】
【0106】
はステープルを有し、それぞれ、2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンであることが好ましく、
置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、3、4、又は5個の修飾、より好ましくは、置換、欠失、付加、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸の1、2、又は3個の修飾を任意に有する配列を持つ。
【0107】
特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、環状ペプチドである。本明細書で使用される場合、「環状ペプチド(cyclic peptide)」又は「環状ペプチド(circular peptide)」という用語は同等であり、N末端及びC末端、又はN末端及び別のアミノ酸の側鎖、好ましくはC末端のアミノ酸、又はC末端及び別のアミノ酸の側鎖、好ましくはN末端のアミノ酸、又はアミノ酸の側鎖及び別のアミノ酸の側鎖、好ましくはN末端のアミノ酸及びC末端のアミノ酸が、環構造を生成する共有結合で連結されているペプチドを表す。本明細書で使用される場合、「N末端(N-terminus)」、「アミノ末端(amino-terminus)」、「NH2末端(NH2-terminus)」、「N末端(N-terminal end)」及び「アミン末端(amine-terminus)」という用語は同等であり、ペプチドの最初のアミノ酸上に存在する遊離のアミン基(-NH2)を表す。本明細書で使用される場合、「C末端(C-terminus)」、「カルボキシル末端(carboxyl-terminus)」、「カルボキシ末端(carboxy-terminus)」、「C末端(C-terminal end)」、及び「COOH末端(COOH-terminus)」という用語は同等であり、ペプチドの最後のアミノ酸上に存在する遊離のカルボキシル基(-COOH)を表す。
【0108】
一実施形態では、本開示によるペプチドは、80アミノ酸未満、より好ましくは60アミノ酸未満、更に好ましくは40アミノ酸未満、更にいっそう好ましくは30アミノ酸未満の長さを有する。特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、25アミノ酸未満の長さを有する。別の特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、20アミノ酸未満の長さ、好ましくは15アミノ酸未満の長さを有する。好ましくは、ペプチドは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20アミノ酸よりも長い最小の長さを有する。好ましくは、ペプチドは、少なくとも4アミノ酸で40アミノ酸未満の長さを有し、好ましくは少なくとも4アミノ酸で30アミノ酸未満の長さを有し、より好ましくは少なくとも6アミノ酸で25アミノ酸未満の長さを有する。
【0109】
一実施形態では、本開示によるペプチドは、ALMS1-PKC間の相互作用を阻害することができ、特に、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少又は防止することができる。つまり、本開示によるペプチドは、ALMS1とαPKCとの間の相互作用をブロックすることができる。或いは、本開示によるペプチドは、ALMS1-PKC間の相互作用を阻害することができず、特に、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少又は防止することができない。つまり、本開示によるペプチドは、ALMS1とαPKCとの間の相互作用をブロックすることができない。
【0110】
ALMS1へのαPKCの結合に対するペプチドの効果を決定するためには、当業者に知られている任意の技術、特にタンパク質の相互作用を決定するのに適した任意の方法を実行することができる。例えば、組換え又は精製したネイティブなALMS1又はαPKCを表面プラズモン共鳴チップに結合させ、もう一方の分子をチップ上に流して結合親和性を評価することができ、例えばBiacore(General Electric社、米国)の機械で行うことができる。
【0111】
ALMS1へのαPKCの結合に対するペプチドの効果は、試験したペプチドの非存在下及び存在下におけるALMS1へのαPKCの結合を測定し、ALMS1へのαPKCの結合を比較することによって決定する。
【0112】
特に、ALMS1をベイトとして用いる免疫沈降アッセイを実行することができる。アッセイは、インスリンの非存在下及び/又は存在下、好ましくはインスリンの非存在下で培養した細胞、特に脂肪細胞を用いて実行することができる。試験されるペプチドは、培養液中に添加される。次いで、αPKCを免疫検出する。
【0113】
「減少した」、「減少」、又は「防止」とは、同じ条件で被検分子がない場合に測定した結合と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%減少した結合を表すことを意図している。
【0114】
一実施形態では、本開示によるペプチドは、脂肪組織におけるFATP2の発現を減少させることができる。
【0115】
FATP2は、溶質キャリアファミリー27メンバー2(Solute Carrier Family 27 Member 2)(SLC27A2)とも呼ばれている。このタンパク質は、データベースUniProtKBにO14975で開示されている。この遺伝子は、UniGeneデータベースのHs.11729に記載されている。参照の配列は、アイソフォーム1についてはNP_003636.2及びNM_003645.3、アイソフォーム2についてはNP_001153101.1及びNM_001159629.1としてNCBIに掲載されている。
【0116】
「減少した」又は「減少」とは、同じ条件でペプチドがない場合に測定した発現と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%減少した発現を表すことを意図している。発現は、タンパク質レベル(例えば、抗体を用いて)又はmRNAレベルで測定することができる。
【0117】
発現は、免疫組織化学、半定量的ウェスタンブロット、タンパク質又は抗体アレイのような任意の利用可能な方法によってタンパク質レベルで測定することができる。FATP2に対する抗体は、例えば、Origene社(TA350424又はTA333990)、Santa Cruz Biotechnology社(sc-393906)等から市販されている。
【0118】
また、発現は任意の利用可能な方法によってmRNAレベルで測定することができる。好ましくは、FATP2の発現レベルは、定量的RT-PCR、リアルタイム定量的RT-PCR、Nanostring technology社PCRによって、又はRNA-Seq等のハイスループットシークエンシング技術やマイクロ流体システムを用いたシークエンシング技術によって、mRNA転写産物の量を測定することにより決定される。より具体的には、実施例の項で規定した方法によって発現を測定する。
【0119】
特定の実施形態では、脂肪組織においてペプチドによって引き起こされるFATP2の発現に対する効果は、好ましくはFATP2に特異的である。本実施形態では、ペプチドは、特に哺乳動物の脂肪組織において、他のFATP、すなわちFATP1、FATP3、FATP4、FATP5及びFATP6の発現に影響を及ぼすことができないか、又はほとんどできないかである。
【0120】
特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、以下の特徴
- 1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含んでいないこと;
- ヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用していること;及び
- PKC(プロテインキナーゼC)のキナーゼドメインのセグメント由来の配列を含む、それで本質的に構成される、又はそれで構成されること
を示し、
更に、以下の特徴:
- 脂肪組織におけるFATPの発現レベルを変化させ、優先的に脂肪組織におけるFATP2の発現を減少させること;
- 少なくとも4アミノ酸で40アミノ酸未満の長さを有し、好ましくは少なくとも4アミノ酸で30アミノ酸未満の長さを有し、より好ましくは少なくとも4アミノ酸で25アミノ酸未満の長さを有すること;
- ヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用していること;
- 架橋により修飾されていること
の1つ、2つ、3つ、4つ、又はすべてを示す。
【0121】
より特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、以下の特徴:
- 1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含んでいないこと;
- 少なくとも4アミノ酸で40アミノ酸未満の長さを有し、好ましくは少なくとも4アミノ酸で30アミノ酸未満の長さを有し、より好ましくは少なくとも4アミノ酸で25アミノ酸未満の長さを有すること;
- ヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用していること
を示す。
【0122】
別のより特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、以下の特徴:
- 脂肪組織におけるFATP2の発現を低下させること;
- 1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含んでいないこと;
- 少なくとも4アミノ酸で40アミノ酸未満の長さを有し、好ましくは少なくとも4アミノ酸で30アミノ酸未満の長さを有し、より好ましくは少なくとも4アミノ酸で25アミノ酸未満の長さを有すること;
- ヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用していること
を示す。
【0123】
本開示によるペプチドは、その細胞内への取り込み又は侵入を容易にする部分、特にPTD(タンパク質形質導入ドメイン(protein transduction domain))を更に含んでいてもよい。PTDは、一般に、10~20個のアミノ酸の特定のアミノ酸配列を含む(Matsushita及びMatsui、(2005)、J Mol Med 83、324~328;Vivesら、Biochimic et Biophysica Acta、2008、1786、126~138)。PTDは、アルギニン又はリジンのような塩基性アミノ酸から主に構成され、PTDの代表的な例としては、ポリR8(RRRRRRRR(配列番号33))又は(RRPRRPRRPRRPRRP(配列番号34))のようなアルギニンリッチペプチド、(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号35))又はHIV-Tat(YGRKKRRQRRR (配列番号36))のようなアンテナペディア又はペネトラチンペプチド、を含む。
【0124】
本開示によるペプチドは、天然アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸から構成され得る。「非天然アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸(すなわち、アラニン、バリン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、プロリン、スレオニン、システイン、メチオニン)のアナログ又は誘導体として定義される。これらは、側鎖が短くなったり、長くなったり、異なる官能基を持つ等、修飾されている。特に、異性体Dはプロテアーゼに反応しないので、異性体DとLが企図される。更に、タンパク質分解抵抗性を高めるために、一部又はすべてのペプチド結合部に、特に(-CO-NH-)、(-CH2-NH-)、(-NH-CO-)、(-CH2-O-)、(-CH2-S-)、(-CH2-CH2-)、(-CO-CH2-)、(-CHOH-CH2-)、(-N=N-)、及び/又は(-CH=CH-)による修飾も企図される。ペプチドは、カルボキシルC末端(-COO-)及びアミド基(-CONH2)を示すことができる。ペプチドはまた、本明細書で開示されたようなペプチドのD-レトロ-インバーソ配列であり得る。N末端は、特にアセチル基で修飾することができる。
【0125】
任意選択で、安定性を高めるために、ペプチドをPEG化することができる。更に任意選択で、ペプチドをプロピレングリコール及びポリエチレングリコールのような非水性のプロトン性溶媒溶液で製剤化することができる。また、ペプチドをポリ乳酸コ-グリコール酸微小球デポ製剤にパッケージしてもよい。多くの徐放送達システムが存在し、これらの多くは本開示での使用に適している。例えば、PLGA、ポリラクテート又はポリグリコレートのような分解性ポリマーに基づくポリマーベースの徐放性組成物が適しており、脂質ベースのデポ組成物も適しており、それらはWO2005/117830及び/又はWO2006/075124に記載され、それらの開示の全体は参照により組み込むものとする。生分解性ポリマーデポ製剤への活性剤の製剤化は、当技術分野で確立され、よく知られており、本開示のペプチドは、したがって、既知の方法を用いてこれらと一緒に製剤化され得る。好ましくは、本開示の組成物は、少なくとも1ヶ月間、機能的な濃度でペプチドを放出することができる。
【0126】
「ペプチド」とは、上記に開示されているようなペプチド、又は上記に開示されているような異なるペプチドの組合せを表すことが意図されている。例えば、2、3、4、5又は6種類の異なるペプチドを使用することができ、好ましくは2又は3種類、より好ましくは2種類である。
【0127】
組合せ
本開示によるペプチドは、例えば、抗糖尿病薬、脂質低下剤、抗肥満剤、降圧剤、抗脂肪変性薬、抗炎症剤、及びペルオキシソーム増殖因子-活性化因子受容体のアゴニスト等、1つ又は複数の追加の作用薬と組み合わせて使用することができる。
【0128】
したがって、本発明は、
- 糖尿病及び関連障害の治療に、特に本明細書で開示された1つ又は複数の追加の作用薬と組み合わせて使用するための本明細書で開示されたペプチドを含む、ペプチド又は医薬組成物;
- 糖尿病及び関連障害の治療に使用するための本明細書で開示されたペプチド及び1つ又は複数の追加の作用薬を含む医薬組成物;
- 糖尿病及び関連障害の治療に同時、別個又は順次使用するための、本開示によるペプチドと、特に本明細書で開示された1つ又は複数の追加の作用薬とを含む、製品、複合製剤又はキット;
- 1つ又は複数の追加の作用薬と組み合わせて糖尿病及び関連障害の治療薬を製造するためのペプチドの使用;
- 糖尿病及び関連障害の治療薬を製造するための、本明細書で開示されたペプチドと、特に本明細書で開示された1つ又は複数の追加の作用薬の使用;
- 対象の糖尿病及び関連障害を治療する方法であって、治療有効量の本明細書で開示されたペプチドと、治療有効量の1つ又は複数の追加の作用薬を投与することを含む方法;
- 対象の糖尿病及び関連障害を治療する方法であって、本明細書で開示されたペプチドと、特に本明細書で開示された1つ又は複数の追加の作用薬とを含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法
に関する。
【0129】
特に、1つ又は複数の追加の作用薬の治療有効量又は治療有効量以下を使用することができる。「治療以下」とは、例えば、従来の治療用量の90、80、70、60、50、40、30、20、又は10%(特に、同じ適応症及び/又は同じ投与経路及び/又は投与頻度の場合)となる量を表すことを意図している。
【0130】
抗糖尿病薬としては、例えば、インスリン、インスリン誘導体及び模倣物、スルホニルウレア系薬剤(例えば、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、トルブタミド、グリブリド、グリメピリド、グリピジド);エンパグリフロジン及びダパグリフロジン等のグリフロジン系薬剤;グリブリド及びアマリール;リラグルチド(NN2211);メグリチニド等のインスリン分泌性スルホニルウレア受容体リガンド、例えばナテグリニド及びレパグリニド;チアゾリジンジオン系薬剤(例えば、ロシグリタゾン(AVANDIA)、トログリタゾン(REZULIN)、ピオグリタゾン(ACTOS)、バラグリタゾン、リボグリタゾン、ネトグリタゾン、トログリタゾン、エングリタゾン、シグリタゾン、アダグリタゾン、ダルグリタゾン等、インスリン作用を増強し(例えば、インスリン感作により)、したがって末梢組織でのグルコース利用を促進する);PTP-112等のプロテインチロシンホスファターゼ-IB(PTP-1B)阻害剤;トルセトラピブ等のコレステリルエステル転移タンパク質(CETP)阻害剤、SB-517955、SB-4195052、SB-216763、NN-57-05441及びNN-57-05445等のGSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3)阻害剤;GW-0791及びAGN-194204等のRXRリガンド;T-1095及びカナグリフロジン等のナトリウム依存性グルコースコトランスポーター阻害剤;BAY R3401等のグリコーゲンホスホリラーゼA阻害剤;メトホルミン等のビグアナイド系薬剤及びグルコースの利用を促進し、肝臓でのグルコース産生を抑制し、腸でのグルコース排出を減少させる作用を有するその他の薬剤;アカルボース、ミギイトイ等のアルファグルコシダーゼ阻害剤、及び炭水化物の消化とその結果としての腸からの吸収を遅らせ、食後の高血糖を抑えるその他の薬剤;GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)、エクセンディン-4等のGLP-1アナログ、GLP-1模倣物;並びにビルダグリプチン等のDPPIV(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害剤等が挙げられる。また、Expert Opin Investig Drugs 2003、12(4):623~633、
図1~
図7に記載されている抗糖尿病薬である可能性がある。抗糖尿病薬には、WO2015/114062に開示されているような、αPKCとALMS1の結合を防ぐ分子も含まれることがあり、その開示内容は参照によって本明細書に組み入れる。
【0131】
脂質低下剤としては、例えば、3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)レダクターゼ阻害剤、例えばロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、ダルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、及びリバスタチン;スクアレンシンターゼ阻害剤;オベチコール酸等FXR(ファルネソイドX受容体)及びLXR(肝X受容体)リガンド;コレスチラミン及びコレセベラム等胆汁酸捕捉剤;フィブラート;ニコチン酸及びアスピリン;膜貫通型Gタンパク質共役型受容体(TGR)5アゴニストであるアラムコール等が挙げられる。
【0132】
抗肥満剤としては、例えば、オルリスタット、リモナバント、フェンテルミン、トピラマート、キネクサ、及びロカセリン等が挙げられる。
【0133】
降圧剤としては、例えば、エタクリニック酸、フロセミド、及びトルセミド等のループ利尿剤;ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリノドプリル、キナプリル、ラミプリル、及びトランドラプリル等のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;ジゴキシン等のNa-K-ATPase膜ポンプ阻害剤;サクビトリル等の中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤;オマパトリラト、サムパトリラト、及びファシドトリル等のACE/NEP阻害剤;カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、及びバルサルタン、特にバルサルタン等のアンジオテンシンIIアンタゴニスト、サクビトリル及びバルサルタン等のNEP阻害剤及びアンジオテンシンIIアンタゴニストの組合せ(すなわち、Entresto);ジテケレン、ザンキレン、テルラキレン、アリスキレン、RO-66-1132及びRO-66-1168等のレニン阻害剤;アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、及びチモロール等のβ-アドレナリン受容体ブロッカー;ジゴキシン、ドブタミン、及びミルリノン等の強心薬、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、及びベラパミル等のカルシウムチャネルブロッカー;アルドステロン受容体アンタゴニスト、並びにアルドステロンシンターゼ阻害剤、等が挙げられる。
【0134】
ペルオキシソーム増殖因子アクチベーター受容体のアゴニストとしては、例えばフェノフィブラート、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、テサグリタザール、BMS-298585、L-796449、特許出願WO2004/103995に具体的に記載されている化合物、すなわち、実施例1~35の化合物又は請求項21に具体的に記載されている化合物、又は特許出願WO03/043985に具体的に記載されている化合物、すなわち実施例1~7の化合物又は請求項19に具体的に記載されている化合物、特に(R)-l-{4-[5-メチル-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-オキサゾール-4-イルメトキシ]-ベンゼンスルホニル}-2,3-ジヒドロ-lH-インドール-2-カルボキシル又はその塩、等が挙げられる。
【0135】
目的のその他の薬剤としては、例えばセニクリビロク、シムツズマブ、セロンセルチブ、エムリカサン等が挙げられる。
【0136】
特定の実施形態では、ペプチドと組み合わせて使用される1つ又は複数の追加の作用薬は、リラグルチド等のGLP-1アナログ、オベチコール酸、グリフロジン、シムツズマブ(GS6624)、セニクリビロク、アラムコール、GR-MD-02等のガレクチン3阻害剤、INT-777又はINT-767等のTGR5アゴニスト及び二重FXR/TGR5アゴニスト、及びエムリカサンの中から選択することができる。
【0137】
抗炎症剤は、サリチル酸、様々な形態のイブプロフェン、様々な形態のナプロキセン等の非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、コルチコステロイド等のステロイド系抗炎症剤、抗炎症性の抗TNFアルファ抗体、及びそれらの組合せ等、当業者に知られている任意の薬剤であり得る。
【0138】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量、レジメンは、当然、治療される状態、病気の重症度、患者の年齢、体重、及び性別等に依存する。
【0139】
本開示の医薬組成物又は治療組成物は、局所的、経口的、非経口的、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下又は眼内投与等のために製剤化することができる。
【0140】
本開示の医薬組成物に使用されるペプチドは、治療有効量で存在する。
【0141】
ペプチドを含む医薬組成物は、当業者に知られている標準的な薬務(Lippincott Williams & Wilkins、2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、J. Swarbrick及びJ. C. Boylan編、1988~1999、Marcel Dekker、New York)に従って製剤化される。
【0142】
一態様では、本発明は、ペプチド又はその塩を含む本開示による医薬組成物の非経口注射用安定製剤であって、ペプチドが乾燥され、次いで使用前に溶媒中で再構成されている製剤を提供する。ペプチド(又は、製剤が2つ又はそれ以上のペプチドを含む実施形態では、ペプチドの各々)は、不揮発性の緩衝液と混合され、乾燥したペプチド粉末に乾燥される。適切な緩衝液には、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、緩衝液はグリシン緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は、クエン酸緩衝液とリン酸緩衝液との混合物である。一部の実施形態では、製剤が2つ又はそれ以上のペプチドを含む場合、第1及び第2の緩衝液は同じである。一部の実施形態では、製剤が2つ又はそれ以上のペプチドを含む場合、第1及び第2の緩衝液は異なる。或いは、本開示による医薬組成物は、水性の状態で保存されてもよい。溶液は、必要に応じて、更なる添加物又は賦形剤を含んでいてもよく、これらは、活性成分と適合していなければならず、凍結乾燥段階で除去されない場合は、投与経路とも適合していなければならない。非経口的に投与する場合、組成物は皮内、皮下、筋肉内、又は静脈内に注射されてもよい。好ましくは、組成物又はペプチドは、皮下、特に脂肪組織内に注射されるか、又は注射されるべきである。
【0143】
好ましくは、体内に移植されたミニ浸透圧ポンプ又は他の制御された送達装置で設置されてもよい。好ましくは、他の化合物と混合してデポ型徐放性製剤を作ってもよい。好ましい投与経路は皮下注射であり、例えば、インスリンペンと同様の使い捨ての又は複数ユニットの分注装置を使用することである。ペプチドは、針を使わずに皮下投与できる装置、非侵襲性システム、で投与することもできる。
【0144】
更に、ペプチドは、利用可能な任意の薬物送達システムを使用して投与することができる。特に、組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素であるrHuPH20を用いて、適切な共投与療法のための皮下薬物送達を可能にし、最適化することが企図されている。
【0145】
この技術により、静脈内に投与される生物製剤や化合物の一部が、皮下又は皮膚の下に投与される場合があり、これにより、患者はより良い体験をすることができ、投与時間や注射時の痛み、注入部位の反応を減らすことで、医療システムの効率を高めることができる可能性がある。
【0146】
一実施形態では、本開示のペプチドを他の化合物と混合して、デポ型徐放性製剤を作ってもよい。次いで、これを皮下に注射して、徐放性デポを形成してもよい。
【0147】
経口投与のために、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、及びシロップ剤、エリキシル剤、濃縮ドロップのような液体製剤等、従来の経口投与に適した剤形に製剤化することができる。非毒性の固体担体や希釈剤を使用することができ、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、マグネシウム、炭酸塩等を含む。また、圧縮された錠剤には、粉末材料に粘着性を付与する薬剤である結合剤が必要である。例えば、デンプン、ゼラチン、ラクトース又はデキストロース等の糖類、及び天然又は合成ガム等を結合剤として使用することができる。また、錠剤の崩壊を促進するために、錠剤には崩壊剤が必要である。崩壊剤は、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガム、架橋ポリマーを含む。更に、製造工程での錠剤材料の表面への付着を防ぎ、製造時の粉末材料の流動特性を改善するために、潤滑剤や滑剤も錠剤に含まれる。滑剤としてはコロイド状二酸化ケイ素が最もよく使われ、潤滑剤としてはタルクやステアリン酸等の化合物が最もよく使われる。
【0148】
経皮的に投与する場合は、組成物を軟膏、クリーム、又はゲル等の形態に製剤化し、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミド等の浸透を促進するための適切な浸透剤又は界面活性剤を使用することができる。
【0149】
経粘膜投与には、鼻腔内スプレー、肺内吸入、直腸又は膣内座薬を用いることができる。一実施形態では、本発明は、当技術分野で知られている方法に従って、肺内薬物送達装置を用いて投与される乾燥粉末又は液体製剤のいずれかを用いて、肺内経路で投与してもよい。活性化合物は、当技術分野で知られている方法で、既知の座薬用基剤のいずれかに組み込むことができる。このような基剤の例としては、ココアバター、ポリエチレングリコール(カーボワックス)、ポリエチレンソルビタンモノステアレート、及び融点や溶解速度を変更するための、これらと他の適合する材料との混合物を含む。
【0150】
本開示による医薬組成物は、投与時に実質的に直ちに、又は投与後の任意の所定の時間又は期間に活性薬剤を放出するように製剤化されてもよい。
【0151】
本開示による医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と関連した1つ又は複数の本開示のペプチドを含むことができる。これらの賦形剤及び/又は担体は、上述したように、投与の形態に応じて選択される。
【0152】
特定の実施形態では、本開示による医薬組成物は、0.01ng~10gの間の本開示のペプチドを含む。一実施形態では、本開示による医薬組成物は、0.1ng~1gの間の本開示のペプチドを含む。
【0153】
科学論文及び要約、公開された特許出願、付与された特許、又はその他の文献を含む、本出願で引用されたすべての文献は、参照によって本明細書に組み入れられ、これらの文献のすべての結果、表、図、及びテキストが含まれる。
【0154】
「含む(comprising)」、「有する(having)」、「構成される(consisting in)」、「含有する(containing)」という用語は、異なる意味を持っているが、本願明細書全体において、他の用語と置き換えることができる。
【0155】
本開示の更なる態様及び利点は、以下の実施例で説明される例示的なものであって限定的なものではないとみなされるべきである。
【実施例0156】
(実施例1)
ADPIF/PATASペプチドがヒト初代成熟脂肪細胞のグルコース吸収に及ぼす影響
ヒト初代前脂肪細胞を96ウェルプレートで培養し、ヒト成熟脂肪細胞に分化させた。脂質生成後の培養の3週間後、脂肪細胞をインスリンなしの培養液で2時間インキュベートした。この2時間のインスリン絶食に続いて、培地をインスリンなしの培地(-INS)、インスリン入りの培地(+INS)、又はADPIF入りの培地(PATAS)のいずれかに戻し、Abcam社のキットでグルコースの取り込みを測定するために使用されるグルコースアナログである2-DGとともに30分間培養した。次いで、製造業者のプロトコルに従い、条件ごとに8つのウェルでグルコースの取り込みを測定し、平均値を算出してヒストグラムにプロットし、平均値の標準誤差のエラーバーとともに
図1に示した。
【0157】
(実施例2)
ADPIF/PATASペプチドは、PATADペプチドよりも高血糖防止効果が高い。
マウスには、スクランブルペプチド又はPATAD又はADPIF/PATASのいずれかを単回投与(マウスあたり25マイクログラム)で注射した。DIOのグルコース不耐性雄マウスにおける一連のグルコース耐性試験(ipGTT)から得られた結果である(
図5A及び
図5B)。
【0158】
(実施例3)
ADPIF/PATASペプチドは、ヒト脂肪細胞のPKCキナーゼ活性を用量反応効果とともに増加させる
図3に示すように、ADPIF/PATAS量の増加に伴い、PKC活性が増加し、1ウェルあたり25μgのPATASでインスリンと同レベルのPKC活性に達することが観察できる。
【0159】
また、PKCアルファ由来の他の2つのペプチド、すなわちECTMVEKKVLALLとSVEWWAYGLLYEMLAについても、PKCキナーゼ活性に対する効果を試験した。
図1に示すように、どちらのペプチドもヒト脂肪細胞のPKCキナーゼ活性を増加させることができる。
【0160】
更に、FATP1~6の発現に対する2つのペプチドを決定したところ、どちらのペプチドも脂肪細胞のFATP2の発現を低下させた(
図2)。
【0161】
(実施例4)
確立された糖尿病モデルマウス(db/db;BKS雄マウス)におけるADPIF/PATASペプチドの効果
図6Aに示すように、ADPIF/PATASペプチドは高血糖を予防することができる。
【0162】
更に、このモデルでは、脂肪細胞におけるFATP1~6の発現に対するADPIF/PATASペプチドの効果を決定した。ADPIF/PATASペプチドは、FATP2の発現を減少させることができる(
図6B)。
【0163】
PATAS/ADPIFの活性を、BKS遺伝的背景を持つ糖尿病マウスモデルdb/dbで試験した。固形飼料を与えた6週齢のマウスに、生理食塩水のビヒクルを皮下注射するか、PATASを2mg/kg体重で注射し、4日後にipGTTを行ったところ、PATAS/ADPIF投与に応じてグルコース不耐性の有意な改善が認められた(
図6A)。このマウスには、週1回のPATAS/ADPIF又はビヒクルの注射を更に3週間行い、その後更に4週間、常にモニターしながら無治療とした。次いで、db/dbマウスを安楽死させ、脂肪組織中の脂肪酸輸送タンパク質アイソフォーム(Fatps)の発現レベルを測定したところ、PATAS投与マウスでは対照のマウスと比較してFatp2の発現レベルが特異的かつ有意に低下した(
図6B)。
【0164】
(実施例5)
バルデ・ビードル症候群(BBS)モデルにおけるADPIF/PATASペプチドの効果
BBS10遺伝子のノックアウトモデルマウス(Bbs10
-/-)を生成し、文献に記載されたように自然に肥満になった。4ヶ月齢に、Bbs10
-/-にPATAS/ADPIFを投与する前に腹腔内グルコース耐性試験(ipGTT)を行ったところ、Bbs10
-/-マウスはグルコース不耐性であり(
図7)、対応する曲線下面積(AUC)は~30000mg/dL分であった。同一のマウスにPATASを2mg/kg体重分皮下脂肪組織に投与し、その3日後にipGTTを行ったところ、Bbs10
-/-マウスはグルコース耐性が改善され(
図7)、対応するAUCが~16000mg/dL分に低下したことがわかった。
【0165】
(実施例6)
ADPIF/PATASは、STAMtマウスモデルにおいて、マウス1匹あたり25μgのADPIF/PATASを毎週注射して5週間後に糖化アルブミンを減少させる効果がある
糖化アルブミンは、in vivoでの高血糖症状の発現を判定するための頑強なパラメータとしてよく知られている。したがって、生理食塩水を注射した対照群に対し、ADPIF/PATASを25μgずつ週1回注射して5週間飼育したSTAMTマウスの血漿を用いた。ADPIF/PATASを投与したマウスでは、糖化アルブミンが有意に減少したことから、ADPIF/PATASが高血糖を改善できることが示された(
図8)。
【0166】
材料及び方法
ペプチドの配列、合成、溶液の調製
PATADステープル化ペプチド配列:VE CTM-[2-(4-ペンテニル)アラニン]-EK RVL A-[2-(4-ペンテニル)アラニン]-L DKP PFL TQL HS(配列番号49)
ADPIF/PATASステープル留めペプチド配列:
【0167】
【0168】
式中、
【0169】
【0170】
はステープルを有し、それぞれ、2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンであることが好ましい。
【0171】
ステープルを有する
【0172】
【0173】
を有する
【0174】
【0175】
ステープルを有する
【0176】
【0177】
を有する
【0178】
【0179】
ステープル化ペプチドは95%の純度で使用した。
【0180】
すべてのペプチドを溶解し、滅菌した生理食塩水で希釈した。
【0181】
ヒト成熟脂肪細胞におけるグルコース取り込みアッセイ
ヒト白色内臓前脂肪細胞(カタログ番号:C-12732;PromoCell社)を購入した。前脂肪細胞を製造業者のプロトコルに従って播種し、前脂肪細胞成長培地(カタログ番号:C-27410;PromoCell社)でコンフルエンスになるまで培養した。培地をPreadipocyte Differentiation Medium(前脂肪細胞分化培地)(カタログ番号:C-27436;PromoCell社)に変えて2日間培養し、脂肪生成分化を誘導した。分化期終了後、最終的にAdipocyte Nutrition medium(脂肪細胞栄養培地)(カタログ番号:C-27438;PromoCell社)に培地を変更した。インスリンを含まない培養では、インスリンを含まないAdipocyte Basal Medium(脂肪細胞基本培地)(カタログ番号:C-2431;PromoCell社)に5g/L デオキシグルコース、8μg/mL d-ビオチン、400ng/mL デキサメタゾンを加えて補った。脂肪生成分化の3週間後、培養した成熟脂肪細胞をインスリンなしで2時間培養した。この2時間後に、グルコースアナログ(2-DG)を含み、インスリンなし(-INS)、又はインスリンあり(+INS)、又はインスリンなし+10μg/L濃度の被験ペプチド2.5μLを含む、最終容量200μLの新鮮な培養培地に交換した。30分インキュベーションした後、Abcam社のグルコース取り込みアッセイの市販キット、Glucose Uptake Assay Kit(比色分析)(カタログ番号:ab136955)の標準プロトコルに従って細胞を処理した。
【0182】
PKCキナーゼ活性試験には、Zenbio社から購入した大網脂肪組織由来の即時使用可能な成熟したヒト初代脂肪細胞を、96ウェル又は6ウェルプレートフォーマットで使用した(カタログ番号:OA-1096-3又はOA-1006-3)。PKCキナーゼ活性アッセイキット(カタログ番号:139437)及び手順は、製造業者のプロトコルに従って使用した。
【0183】
in vivoマウス試験
2型糖尿病を発症した肥満マウスモデルについて、BKS (D)-Leprdb/J、ストック番号010803は、Jax Labs社から購入した。Bbs10ノックアウトマウスは、ストラスブールのInstitute Mouse Clinic (ICS)で生成され、文献にも記載されている。すべてのマウスは、C57/BL6の遺伝的背景を有していた。すべての動物は、温度と湿度が管理された施設で、12時間明期/12時間暗期のサイクルで飼育した。BKS (D)-Leprdb/Jマウスは、固形飼料食餌(LM-485;Harlan Teklad Premier Laboratory Diets)を与え、Bbsノックアウトマウスには、高脂肪/グルコース食と水道水を自由摂取させた。ipGTT及びipITTについて、実験開始の6時間前から絶食させた。インスリン0.75U/kgを尾静脈から静脈内注射した。尾部から血中グルコースとサンプルを採取した。マウスは頚椎脱臼により屠殺した。
【0184】
非肥満STAMマウスモデル試験のために、C57BL/6マウス(14日目の妊娠雌)をJapan SLC, Inc.社(日本)から入手した。本試験で使用したすべての動物は,日本薬理学会の動物使用ガイドラインに準拠して飼育及び管理した。動物は、温度(23±2℃)、湿度(45±10%)、照明(12時間の人工明暗サイクル、明期は8:00~20:00)、空気交換の制御された条件で、SPF施設内で飼育した。動物はTPXケージ(CLEA Japan社)に1ケージあたり最大3匹のマウスを飼育した。寝床には滅菌済みPaper-Clean(Japan SLC社)を使用し、週1回交換した。ケージの上部に金属製の蓋をして、滅菌した60%高脂肪食を自由摂取で与えた。純水は、ゴム栓とストロー管を備えた水筒から自由に与えた。水筒は1週間に1回交換し、洗浄した後、オートクレーブで滅菌して再利用した。
【0185】
マウスの識別は耳パンチで行った。各ケージには特定の識別コードをつけた。生後2日目に200μgのストレプトゾトシン(STZ、Sigma-Aldrich社、USA)溶液を単回皮下注射し、4週齢以降に高脂肪食(HFD、57kcal%脂肪、カタログ番号HFD32、CLEA Japan, Inc.社、Japan)を与えて、12匹の雄マウスにNASHを誘導した。
【0186】
BKS (D)-Leprdb/J、ストック番号010803及びBbs10ノックアウトマウスに対するペプチドの投薬計画
0日目:すべてのマウスを午前中に4時間絶食させた。午後1時に、対照マウスに(体重グラム)×10ミリリットルの22%グルコース溶液を1回注射した(後腹膜脂肪/皮下注射)。投与マウスには、(体重グラム)×10ミリリットルの22%グルコース溶液に溶解した被験ペプチド25μg(母液2.5μL)のいずれかを注射した。30分ごとに尾静脈血中の血中グルコースを測定し、プロットして曲線下面積に対する各処理の影響を決定した。
【0187】
STAMマウスモデルでのペプチドの投薬計画。
被験ペプチドは、上述のようにADPIF/PATASペプチドであった。
【0188】
薬物投与経路
ペプチドは、マウス1匹あたり100mLの容量で脂肪組織内に皮下投与した。
【0189】
実験設計及び処理
試験グループ
グループ1:ADPIF/PATASペプチド
NASHマウス6匹に、ADPIF/PATASペプチドを1匹あたり25μgの用量で添加したビヒクルを、4週齢から9週齢まで週1回、脂肪組織に皮下投与した。
【0190】
グループ2:ビヒクル
NASHマウス6匹に、1匹あたり100mLの容量のビヒクル(生理食塩水にDMSOを溶解したもの)を、4週齢から9週齢まで週1回、脂肪組織に皮下投与した。
【0191】
以下の表は、処理スケジュールを要約している。
【0192】
【0193】
FATP発現レベル
RiboPure(商標)キット(カタログ番号:AM1924;Ambion社)を用いて、異なる組織や細胞から全RNAを調製し、続いてTURBO DNA-free(商標)(カタログ番号:AM1907;Ambion社)を用いてDNAse処理を行った。RNAの完全性はゲル電気泳動で、RNA濃度はEppendorf Biophotometer PlusとHellma(登録商標) Tray Cell (カタログ番号:105.810-uvs;Hellma社)で評価した。BioRadiScript(商標)cDNA合成キット(カタログ番号:170-8891;BioRad社)を用いて、1μgの全RNAからcDNAへの逆転写を行った。リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応の増幅は、BioRad CFX96 TM Real-Time Systemにおいて、iQ(商標) SYBR(登録商標) Green Supermix(カタログ番号:170-8886;BioRAd社)と、リアルタイムPCRのために、SYBR GreenベースのリアルタイムPCR用に検定した標的に最適化したプライマーセットを用いて行った。ヒト用プライマーについては、使用したすべてのqPCRプライマーは、Biorad社が検証したMIQEプライマーセットから購入した。
【0194】
【0195】
血漿生化学の測定
サンプル採取
血漿サンプルを採取し、分析のために-80℃で保存した。次いで、これらのマウスの血漿を用いて、LS Bio社から市販されているキット、Mouse Glycated Albumin ELISA Kit(サンドイッチELISA)-LS-F28697、ストラスブール、を用いて糖化アルブミンレベルを測定した。
【0196】
統計的検定
統計解析は、GraphPad Prism 6(GraphPad Software Inc.社、USA)でStudent's t-testを用いて行った。P値<0.05を統計的に有意とした。また、片側t検定でP値<0.1となった場合は、傾向があると判断した。結果は平均値±SDで表した。