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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159288
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】超音波撮像装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023133798
(22)【出願日】2023-08-21
(62)【分割の表示】P 2020560549の分割
【原出願日】2019-01-09
(31)【優先権主張番号】18152998.3
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オドゥンガーツ ゾディイル アヌモド
(72)【発明者】
【氏名】シェティガル スリカンス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大きい臓器や動きのある臓器の撮像において、アーチファクトを分離する一方で画質を向上させるシステムを提供する。
【解決手段】被験者内の関心領域を撮像する超音波撮像装置は、それぞれが超音波を送受信する少なくとも1つのトランスデューサ72と、通信ユニットとを有する複数の別個の超音波プローブ2a~2cを含む。制御ユニット1が、プローブを制御してこれらの動作を順番に調整し、プローブから超音波画像を取得して、これらの画像をリアルタイムで同時に表示する。制御ユニットは、制御信号を少なくとも1つのプローブに送信し、各プローブは、制御ユニット及び/又は隣接する1つのプローブから制御信号を受信する。制御信号は、通常繰り返される所定のプローブシーケンスでプローブにスキャンを順次実行させ、制御ユニットは、プローブからの画像データを組み合わせることにより表示を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者内の関心領域を撮像する超音波撮像装置であって、
制御ユニットと、
前記制御ユニットに結合される複数の個別の超音波プローブと、
を含み、
各超音波プローブは、
超音波を送信及び受信する少なくとも1つのトランスデューサ、
前記各超音波プローブによる超音波スキャンをトリガリングするためのプローブスキャン信号を受け取る受信器、及び、
超音波画像を提供する出力部を、含み、
前記制御ユニットは、
前記複数の超音波プローブのうちの少なくとも1つの超音波プローブにプローブスキャン信号を提供することによって、前記複数の超音波プローブの動作を所定のプローブシーケンスで調整するように前記複数の超音波プローブを制御し、
前記複数の超音波プローブからの前記超音波画像の組み合わされた表示の生成のために、前記複数の超音波プローブの前記出力部から前記超音波画像を受け取り、
前記装置は、
各超音波プローブが前記各超音波プローブ自身のスキャンが完了したことを示すスキャン状態信号を、前記プローブスキャン信号として前記所定のプローブシーケンスにおける次の超音波プローブが受け取るか、若しくは、前記所定のプローブシーケンスにおける前記次の超音波プローブにプローブスキャン信号を送るために前記制御ユニットが受け取るために、送信することによって、又は、
各超音波プローブが、前記複数の超音波プローブに共通のグローバルクロックに同期されるローカルクロックを記憶し、前記制御ユニットからの前記プローブスキャン信号に応答して、前記各超音波プローブの前記ローカルクロックに基づくスキャンタイミングで前記各超音波プローブ自身のスキャンを実行することによって、
前記所定のプローブシーケンスでの前記複数の超音波プローブの前記動作を調整する、装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、グローバルクロックを含み、各超音波プローブは、ローカルクロック、及び、前記各超音波プローブの前記ローカルクロックによって決定されるローカル時間に従う前記超音波の送信及び受信のためのビーム形成パラメータの所定のセットを記憶するメモリを含み、
前記制御ユニットは、前記制御ユニットの通信ユニットから各超音波プローブの通信ユニットにクロック信号を送信することによって、前記ローカルクロックを定期的に設定又は再設定し、
前記ビーム形成パラメータは、前記複数の超音波プローブの超音波間の相互干渉を回避するために前記複数の超音波プローブの順次動作を確実とするために、各超音波プローブが送信及び受信を開始及び終了すべき前記ローカル時間を含む順序付け情報を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各超音波プローブは、前記各超音波プローブ自身のスキャンの進行段階を表す前記各超音波プローブ自身のスキャン状態を記憶するメモリを含み、前記装置は、前記制御ユニットと前記複数の超音波プローブとの間で制御信号を送信して、前記複数の超音波プローブがスキャン状態を順次切り替えるように前記複数の超音波プローブを制御し、これにより、前記所定のプローブシーケンスにおける前記次の超音波プローブである前記複数の超音波プローブのうちの1つの超音波プローブだけが、前記1つの超音波プローブが受け取った前記制御信号に含まれる、前記所定のプローブシーケンスにおける現在の超音波プローブである別の超音波プローブの前記スキャン状態が前記別の超音波プローブのスキャンの完了を表すとの情報に応答して、スキャンを開始する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記制御ユニットのメモリは、各超音波プローブの前記スキャンの前記進行段階を表す前記スキャン状態を記憶し、前記制御ユニットは、各超音波プローブに前記制御信号を送信し、また、各超音波プローブから前記制御信号を受け取り、前記所定のプローブシーケンスにおける1番目の超音波プローブにスキャンを開始するように指示し、次に、前記所定のプローブシーケンスにおける次の超音波プローブのそれぞれに、前記所定のプローブシーケンスにおける前の超音波プローブから前記前の超音波プローブがスキャンを完了したという情報を受け取った場合にのみ、スキャンを開始するように指示する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニットのメモリは、前記所定のプローブシーケンスを記憶し、前記所定のプローブシーケンスにおける1番目の超音波プローブに制御信号を送信してスキャンを開始するように指示し、
各超音波プローブは、スキャンが完了すると、前記所定のプローブシーケンスにおける前記次の超音波プローブである前記複数の超音波プローブのうちの別の超音波プローブに制御信号を送信して、前記別の超音波プローブにスキャンを開始するように指示する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記制御ユニットのメモリは、各超音波プローブの位置を表すプローブ位置データを記憶し、プロセッサは、前記複数の超音波プローブの相対位置に基づいて画像データを組み合わせる、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
各超音波プローブは、前記各超音波プローブ自身の位置を追跡し、対応する位置データを前記各超音波プローブのメモリに記憶する手段を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
各超音波プローブは、内部電源を含み、前記各超音波プローブの通信ユニットは、前記制御ユニット及び/又は他の超音波プローブとのワイヤレス通信用に構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、瞳間距離だけ離される前記複数の超音波プローブのうちの2つの超音波プローブからの順次リアルタイム画像を組み合わせて、左目投影及び右目投影用の立体表示としての表示を生成する、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
被験者内の同じ関心領域を観察するために前記被験者の異なる位置に配置される複数の別個の超音波プローブを使用して、前記関心領域を超音波撮像する方法であって、前記複数の別個の超音波プローブは制御ユニットに結合され、各超音波プローブは、前記各超音波プローブによる超音波スキャンをトリガリングするためのプローブスキャン信号を受け取る受信器を含み、前記制御ユニットは、前記複数の超音波プローブのうちの少なくとも1つの超音波プローブにプローブスキャン信号を提供することによって、前記複数の超音波プローブの動作を所定のプローブシーケンスで調整するように前記複数の超音波プローブを制御し、前記方法は、前記複数の超音波プローブにそれぞれのスキャンを実行させるステップと、前記複数の超音波プローブからの画像データを対応する画像の同時表示のために組み合わせるステップと、を含み、各スキャンは、前記関心領域に超音波ビームを送信すること、及び、反射を受け取ることを含み、前記複数の超音波プローブは、所定のプローブシーケンスで前記複数の超音波プローブのスキャンを順次実行し、
前記所定のプローブシーケンスにおける前記複数の超音波プローブの動作は、
各超音波プローブが前記各超音波プローブ自身のスキャンが完了したことを示すスキャン状態信号を、前記プローブスキャン信号として次の超音波プローブが受け取るか、若しくは、前記次の超音波プローブにプローブスキャン信号を送るために前記制御ユニットが受け取るために、送信することによって調整されるか、又は、
各超音波プローブが、前記複数の超音波プローブに共通のグローバルクロックに同期されるローカルクロックを記憶し、前記制御ユニットからの前記プローブスキャン信号に応答して、前記各超音波プローブの前記ローカルクロックに基づくスキャンタイミングで前記各超音波プローブ自身のスキャンを実行することによって、調整される、
方法。
【請求項11】
各超音波プローブは、ローカルクロック、及び、前記各超音波プローブの前記ローカルクロックによって決定されるローカル時間に従う超音波の送信及び受信のためのビーム形成パラメータの所定のセットを記憶するメモリを含み、
前記方法は、グローバルクロックから前記ローカルクロックを定期的に設定又は再設定するステップを含み、前記ビーム形成パラメータは、前記複数の超音波プローブの超音波間の相互干渉を回避するために前記複数の超音波プローブによる前記スキャンの順次実行を確実とするために、各超音波プローブが送信及び受信を開始及び終了すべき前記ローカル時間を含む順序付け情報を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各超音波プローブは、前記各超音波プローブ自身のスキャンの進行段階を表す前記各超音波プローブ自身のスキャン状態を記憶し、各超音波プローブは、スキャン状態を切り替えることによってそれぞれのスキャンを実行し、これにより、前記所定のプローブシーケンスにおける前記次の超音波プローブである前記複数の超音波プローブにおける1つの超音波プローブだけが、前記1つの超音波プローブが受け取る前記所定のプローブシーケンスにおける現在の超音波プローブがスキャンを完了したとの情報に応答して、スキャンを開始する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
各超音波プローブのスキャンの前記進行段階を表す前記スキャン状態を中央で記憶し、記憶された情報を使用して、前記所定のプローブシーケンスにおける1番目の超音波プローブにスキャンを開始するように指示し、次に、前記所定のプローブシーケンスにおける次の超音波プローブのそれぞれに、前記所定のプローブシーケンスにおける前の超音波プローブがスキャンを完了した場合にのみ、スキャンを開始するように指示するステップか、又は、
前記所定のプローブシーケンスにおける前記1番目の超音波プローブにそのスキャンを開始するように指示し、次に、各超音波プローブは、スキャンを完了すると前記所定のプローブシーケンスにおける次の超音波プローブに、スキャンを開始するように指示するステップ、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各超音波プローブは、前記各超音波プローブ自身の位置を追跡し、前記画像データは、前記複数の超音波プローブの相対位置に基づいて組み合わされる、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
超音波撮像システムのコンピュータ上で実行されると、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法を実施するコンピュータプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波撮像に関し、特に人体の医用撮像に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ほとんどの医用超音波マシンは、患者診断のためにプローブとも呼ばれる単一のトランスデューサを使用する。トランスデューサは、超音波を送信し、通常は圧電素子のアレイを使用して反射エコーを捕捉する。続いてエコーは、最終レンダリング用の画像に変換されて表示データが生成される。反射エコーの強度は、関心領域内のスキャンされた組織、臓器又は任意の構造のエコー輝度に依存する。構造は、エコー輝度に応じて、高輝度エコー(表示画面で白)、低輝度エコー(画面で灰色)又は無エコー(画面で黒)になる。単一の超音波トランスデューサを使用すると、ほとんどの場合、骨といった無エコー構造の下にある組織や臓器を確認することが困難になるため、多くの臨床的に重要な情報が隠れたままである。これは、音響陰影アーチファクトとして知られている。また、様々な臓器、組織及び外部構造のエコー輝度により、様々な他のタイプの撮像アーチファクトが生じる可能性がある。これらの撮像アーチファクトは、侵襲的手術が撮像されているときに、他の組織や針構造のように関心領域への真のマッピングを持たない画像の一部であるエコーである。ユーザーは、超音波画像を確認する際に、これらのアーチファクトが発生している可能性があることを認識している必要があり、誤診を回避するためには、様々な種類のアーチファクトの知識が必要である。
【0003】
これらのアーチファクトに加え、超音波ビームがプローブに到達する前に平行反射体間で反響することによっていわゆる反響アーチファクトが引き起こされる可能性がある。これらの反響の後に戻ってくる超音波信号は、プローブに戻るまでに長い時間がかかったことから、深い構造から戻ってきたものと誤って見なされる。このアーチファクトは、強力な平行反射体間で反響が生じないようにプローブの配置角度を注意深く変更することで軽減することができる。
【0004】
単一のプローブを使用して患者をスキャンする場合、エコー画像を見る際に、正常な組織とアーチファクトとを区別することは簡単ではない。プローブの角度を移動又は変更した後に同じ領域の画像を再捕捉して確認する必要がある。
【0005】
単一のプローブを使用した診断中に見られる別の問題は、肺、胎盤及び腎臓といった大きい臓器や、心臓や胎児といった動きのある臓器のスキャンにある。単一のプローブの視野(FoV)は限られているため、超音波検査技師は、臓器の更なる理解を得るためにプローブを動かさなければならない。このような診断では、FoVが大きい方がよい。
【0006】
画像障害物及び画質の問題は、特に大面積経胸腔心エコー法(large area transthoracic echocardiography、LATTE)で使用するために開発中のマルチプローブアレイについて説明している国際特許公開WO2016/198413において認識されていた。プローブは、互いに固定の関係で配置され、それらが受け取る画像は、組み合わされて概観画像を形成するか又は別々に表示されて、同じ臓器の異なる部分を異なる観察方向から示す。国際特許公開WO2016/198413に開示される超音波撮像装置は、撮像された構造の向きから生じる異なる画質でこれらの画像を表示することの欠点を克服し、撮像の面倒な手動最適化の必要性を回避することを目的とした。装置は、プローブのアレイと、アレイによって撮像される解剖学的物体との各プローブの空間的関係を物体の表面形状のコンピュータ化されたセグメンテーションによって決定し、空間的関係の影響を受けた画質に基づいてプローブからの画像のうちの1つ以上の画像を選択するプロセッサとを有した。血流のドップラー撮像では、観察されている表面の法線にその軸が最も近いプローブを、画像を提供するように自動的に選択することができる。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0030003A号は、患者の様々な部分に配置されて、様々な身体部分のリアルタイム「同期」スキャンを提供するプローブの使用とこれらをすべて同時に表示することについて開示している。これは、プリセットされたシーケンスに従ってプローブを制御して、例えば異なるプローブのスキャンラインを時間的にインターリーブして、それぞれの画像フレームを並列に収集するか又は異なるプローブから画像フレーム全体を順次取得することによって達成される。
【0008】
米国特許出願公開第2014/343429A1号は、超音波信号のビーム形成を行うビームフォーマを含む超音波撮像システムを開示している。ビームフォーマは、少なくとも超音波信号を受信する入出力部と、第1及び第2の超音波プローブコネクタと、第1及び第2の超音波プローブコネクタを介して同時に受信された超音波信号を同時にビームフォーマにルーティングするスイッチとを含み、ビームフォーマは超音波信号を処理する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
大きい臓器や動きのある臓器を異なる角度から同時に大きい視野にわたって撮像して同じ臓器を様々な視点から見ることができるようにし、これによりアーチファクトを分離する一方で画質を向上させるシステムが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
【0011】
本発明の一態様によれば、被験者内の関心領域を撮像する超音波撮像装置が提供される。装置は、
制御ユニットと、
制御ユニットに結合される複数の個別の超音波プローブとを含み、
各プローブは、
超音波を送受信する少なくとも1つのトランスデューサ、
プローブによる超音波スキャンをトリガリングするためのプローブスキャン信号を受け取る受信器、及び、
超音波画像を提供する出力部を含み、
制御ユニットは、
プローブのうちの少なくとも1つにプローブスキャン信号を提供することによって、プローブの動作を所定のプローブシーケンスで調整するようにプローブを制御し、
プローブからの画像の組み合わされた表示の生成のために、プローブの出力部から超音波画像を受け取り、
装置は、
各プローブがそれ自身のスキャンが完了したことを示すスキャン状態信号を、プローブスキャン信号として次の超音波プローブが受け取るために、若しくは、次の超音波プローブにプローブスキャン信号を送るために制御ユニットが受け取るために、送信することによって所定のプローブシーケンスでのプローブの動作を調整するか、又は、
各プローブが、プローブに共通のグローバルクロックに同期されるローカルクロックを記憶し、制御ユニットからのプローブスキャン信号に応答して、そのローカルクロックに基づくスキャンタイミングでそれ自身のスキャンを実行することによって、所定のプローブシーケンスでのプローブの動作を調整する。
【0012】
好適には、スキャンシーケンスは繰り返される。これにより、画像フレームを連続するラインスキャンから蓄積することができ、また、診断や手術のために、かなりの時間の間、関心領域を見ることができるようになる。
【0013】
画像データのスキャン及び収集は、好適には、リアルタイムで、即ち、そのレンダリング又は表示の前にデータをオフラインで記憶することによる遅延なしに行われる。プローブからの画像データは、制御ユニットによって収集され、同じユニット又は外部装置によって組み合わせてレンダリングすることができる。レンダリングされた画像は、同じユニット又は外部ディスプレイによって表示することができる。
【0014】
本発明の重要な特徴は、プローブ自体が、相互衝突を回避するために、その順序付けに貢献することであることを理解されたい。これは、プローブが、共通のグローバルクロックによって設定されるローカルクロックを有することによって、又は、プローブが、プローブ自身のスキャン状態を記録して送信することによって行われる。
【0015】
この装置は、大きい臓器又は動きのある臓器を、異なる角度から同時に大きい視野にわたって撮像して同じ臓器を様々な視点から見ることができるため、アーチファクトを分離する一方で画質を向上させる及び/又は視野を拡大することができる。プローブの順序付けにより、異なるプローブの波間の干渉が回避される。
【0016】
非同期プロトコルを使用する実施形態では、制御ユニットが、グローバルクロックを含み、各プローブが、ローカルクロック、及び、そのローカルクロックによって決定されるローカル時間に従う超音波の送信及び受信のためのビーム形成パラメータの所定のセットを記憶するメモリを含む。制御ユニットは、その通信ユニットから各プローブの通信ユニットにクロック信号を送信することによって、ローカルクロックを定期的に設定又は再設定する。ビーム形成パラメータは、プローブの超音波間の相互干渉を回避するためにプローブの順次動作を確実とするために、各プローブが送信及び受信を開始及び終了すべきローカル時間を含む順序付け情報を含む。
【0017】
同期プロトコルを使用する実施形態では、各プローブが、それ自身のスキャンの進行段階を表すそれ自身のスキャン状態を記憶するメモリを含む。装置は、制御ユニットとプローブとの間で制御信号を送信して、プローブがスキャン状態を順次切り替えるようにプローブを制御し、これにより、所定のプローブシーケンスにおける次のプローブであるプローブのうちの1つのプローブだけが、当該1つのプローブが受け取った制御信号に含まれる、シーケンスにおける現在の超音波プローブである別の超音波プローブのスキャン状態はそのスキャンの完了を表すとの情報に応答してスキャンを開始する。
【0018】
これらの同期実施形態では、制御ユニットが、プローブの順序付けを直接制御することができる。この場合、制御ユニットのメモリは、各プローブのスキャンの進行段階を表すスキャン状態を記憶し、制御ユニットは、各プローブに制御信号を送信し、また各プローブから制御信号を受け取り、所定のプローブシーケンスにおける1番目のプローブにそのスキャンを開始するように指示し、次に、プローブシーケンスにおける次のプローブのそれぞれに、シーケンスにおける前の超音波プローブからそれがそのスキャンを完了したという情報を受け取った場合にのみ、そのスキャンを開始するように指示する。
【0019】
或いは、制御ユニットのメモリは、所定のプローブシーケンスを記憶し、シーケンスの1番目のプローブに制御信号を送信して、そのスキャンを開始するように指示する。各プローブは、そのスキャンが完了すると、所定のプローブシーケンスの次のプローブであるプローブのうちの別のプローブに制御信号を送信して、その別のプローブにそのスキャンを開始するように指示する。このようにして、プローブ間通信によってプローブの順序付けが制御される。
【0020】
これらの実施形態のいずれにおいても、制御ユニットのメモリは、各プローブの位置を表すプローブ位置データを記憶することができ、プロセッサは、プローブの相対位置に基づいて画像データを組み合わせることができる。各プローブは、それ自身の位置を追跡し、対応する位置データをそのメモリに記憶するための手段を含んでよい。
【0021】
好都合には、各プローブは、内部電源を含み、その通信ユニットは、制御ユニット及び/又は他のプローブとのワイヤレス通信用に構成される。
【0022】
プロセッサは、瞳間距離だけ離されたプローブのうちの2つのプローブからの順次リアルタイム画像を組み合わせて、左目投影及び右目投影用の立体表示としての表示を生成することができる。
【0023】
別の態様から、本発明は、被験者内の同じ関心領域を観察するために被験者の異なる位置に配置される複数の別個の超音波プローブを使用して、関心領域を超音波撮像する方法を提供する。複数の別個の超音波プローブは制御ユニットに結合され、各プローブは、プローブによる超音波スキャンをトリガリングするためのプローブスキャン信号を受け取る受信器を含み、制御ユニットは、プローブのうちの少なくとも1つにプローブスキャン信号を提供することによって、プローブの動作を所定のプローブシーケンスで調整するようにプローブを制御する。方法は、プローブにそれぞれのスキャンを実行させるステップと、プローブからの画像データを対応する画像の好適には同時又は実質的に同時の表示のために組み合わせるステップと、を含み、各スキャンは、関心領域に超音波ビームを送信すること、及び、反射を受け取ることを含み、プローブは、好適には繰り返される所定のプローブシーケンスでそれらのスキャンを順次実行する。所定のプローブシーケンスにおけるプローブの動作は、
各プローブがそれ自身のスキャンが完了したことを示すスキャン状態信号を、プローブスキャン信号として次のプローブが受け取るために、若しくは、次のプローブにプローブスキャン信号を送るために制御ユニットが受け取るために、送信することによって調整されるか、又は、
各プローブが、プローブに共通のグローバルクロックに同期されたローカルクロックを記憶し、制御ユニットからのプローブスキャン信号に応答して、そのローカルクロックに基づくスキャンタイミングでそれ自身のスキャンを実行することによって調整される。
【0024】
各プローブは、ローカルクロック、及び、そのローカルクロックによって決定されるローカル時間に従う超音波の送信及び受信のためのビーム形成パラメータの所定のセットを記憶するメモリを含む。方法は、グローバルクロックからローカルクロックを定期的に設定又は再設定するステップを含み、ビーム形成パラメータは、プローブの超音波間の相互干渉を回避するためにプローブによるスキャンの順次実行を確実とするために、各プローブが送信及び受信を開始及び終了すべきローカル時間を含む順序付け情報を含む。
【0025】
或いは、プローブをクロックする必要なしに、各プローブは、それ自身のスキャンの進行段階を表すそれ自身のスキャン状態を記憶し、各プローブは、スキャン状態を切り替えることによってそれぞれのスキャンを実行し、これにより、所定のプローブシーケンスにおける次のプローブであるプローブにおける1つだけが、当該1つのプローブが受け取る、シーケンスにおける現在のプローブがそのスキャンを完了したとの情報に応答してスキャンを開始する。
【0026】
方法は、好適には、(a)各プローブのスキャンの進行段階を表すスキャン状態を中央で記憶し、記憶された情報を使用して、所定のプローブシーケンスにおける1番目のプローブにそのスキャンを開始するように指示し、次に、プローブシーケンスにおける次のプローブのそれぞれに、シーケンスにおける前のプローブがそのスキャンを完了した場合にのみそのスキャンを開始するように指示するステップか、又は、(b)所定のプローブシーケンスにおける1番目のプローブにそのスキャンを開始するように指示し、次に、各プローブが、そのスキャンを完了すると、所定のプローブシーケンスにおける次のプローブにそのスキャンを開始するように指示するステップを含む。
【0027】
各プローブは、それ自身の位置を追跡し、画像データは、プローブの相対位置に基づいて組み合わせることができる。これは、例えば隣接する視点からの大きい臓器の領域の画像をステッチしたり、異なる視点及び角度から撮られた同じ領域の画像を融合したりして組み合わされた画像の画質を最適化することによって、超音波検査技師に有用な画像の組み合わせを提供する。
【0028】
本発明の更なる態様は、コンピュータプログラムが超音波撮像システムのコンピュータ上で実行されると、上記方法を実施するコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
次に、本発明の特定の実施形態を、添付図面を参照してほんの一例として詳細に説明する。
【0030】
図1図1は、本発明によるマルチプローブ超音波システムの概念を示す。
図2図2は、本発明を具現化する第1のシステムを示す。
図3図3は、本発明を具現化する第2のシステムを示す。
図4図4は、本発明を具現化する第3のシステムを示す。
図5図5は、図2から図4のシステムで使用するための超音波プローブを示す。
図6図6は、図2から図4のいずれかのシステムを使用した立体超音波画像表示を示す。
図7図7は、アレイトランスデューサプローブを有する超音波診断撮像システムをブロック図形式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を、図を参照して説明する。
【0032】
詳細な説明及び具体例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示のみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面からよりよく理解されるであろう。図は単なる概略図であり、縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。また、図面全体を通して、同じ又は同様の部分を示すために同じ参照符号が使用されていることも理解されたい。
【0033】
好適な実施形態は、患者内の関心領域を撮像する超音波撮像システムであって、好適には自立型で持ち運び可能であり、それら自身の充電式電源を有し、それぞれが超音波を送受信するための少なくとも1つのトランスデューサと、通信ユニットとを有する複数の別個の超音波プローブを含む超音波撮像システムを提供する。各プローブは、好適には、超音波トランスデューサの固定アレイと、例えば送信された超音波及び/又は受信された超音波を集束するためにビーム形成用のコントローラとを有する。システムは、プローブを制御してプローブの動作を順番に調整し、プローブから超音波画像を取得し、好適にはこれらの画像を好適にはリアルタイムで同時に又は実質的に同時に一緒に表示するための画像データをレンダリングするプロセッサ及びメモリと、通信ユニットとを含む全体の制御ユニットを有する。制御ユニットは、その通信ユニットから少なくとも1つのプローブに制御信号を送信し、各プローブは、その通信ユニットにおいて、制御ユニット及び/又はプローブのうちの隣接する1つから制御信号を受信する。このようにして、制御信号は各プローブに、超音波ビームを関心領域に送信させ、その送信ビームの反射を受信させることをそれぞれ含むスキャンを実行させ、受信した反射を表す画像データをリアルタイムで制御ユニットに送信させる。制御信号は、好適には繰り返される所定のプローブシーケンスでプローブにそれらのスキャンを順次実行させ、制御ユニットは、プローブからの画像を一緒に表示するための画像データを収集する。
【0034】
これにより、既存の単一プローブシステムの問題を回避又は軽減することができる。超音波検査技師が1つ以上のプローブから観察に最良の画像を選択することができるように、プローブを患者の異なる位置及び/又は異なる角度に配置することにより、アーチファクトを回避することができる。また、大きい臓器を撮像するために、2つ以上のプローブからの画像を組み合わせることにより、視野を拡大することもできる。また、隣接する2つのプローブを使用して、視野の立体表示を提供し、音波検査技師に深度情報を与えることもできる。画像は、既知のビーム形成及び画像処理手法を使用して、各プローブから2D又は3Dにすることができる。
【0035】
異なる視点を有する異なるプローブからの同じ関心領域の画像の組み合わせは、当技術分野において知られている。各視点において収集された画像データセットから単一の最終画像を取得するために、画像位置合わせプロセスが行われる。位置合わせは、各データセットにおいて収集された画像データを、各データセットにおいて捕捉された共通の視覚的特徴が互いに整列してレンダリングされるように(例えばそれらが互いに重なるように)整列させることにある。その後、2つの画像データを組み合わせたり、融合したりすることができる。
【0036】
2つのリアルタイム3D超音波ボリューム(4Dボリューム又は4D画像データセットとも知られている)の位置合わせ又は融合は、マルチパースペクティブ超音波検査における重要なステップであり、撮像視野を拡張し、1つの捕捉画像データセットにおいて欠落していた情報を、他の捕捉画像データセットにおいて捕捉された情報で補うことを可能にする。更に、融合超音波検査は、画質及び外科装置の視認性を向上させる。
【0037】
4D超音波ボリュームの位置合わせを達成するための既知の方法は、通常、ボリュームの選択された2Dスライスからの強度が正規化された2D画像の総合類似性スコアに基づく最適化プロセスを利用して、4Dボリュームの正確な整列を取得する。この最適化プロセスは更に、意味のあるソリューションに収束する可能性を高めるために、(いわゆる尺度空間で表される)様々な詳細レベルで各4Dボリュームの表現を使用することができる。米国特許出願公開第2006/0002632号は、異なるメッシュ解像度レベルで画像にメッシュノードを生成し、各メッシュノードの動きベクトルを生成し、それを第2の画像とマッチさせることによる画像位置合わせを開示している。局所動きベクトルは、補間によって決定される。
【0038】
異なる視点からの画像を融合する代わりに、ほぼ同じ瞬間に得られた2D画像を横方向に「ステッチ」して、例えば大きい臓器のより大きい2D画像を提供することができる。これにより、プローブを移動する必要がなくなる。画像のステッチングも当技術分野において知られている。ステッチングは、画像の隣接するエッジに沿ったピクセルのパターンを比較して、エッジを2D空間において整列させる自動マッチング又は相関プロセスを含んでよい。更に2つの画像のキーポイント又は特徴が横方向の(重複する)エッジから検出され、特徴検出アルゴリズムを使用して、ハリスコーナー、ブロブ等の特徴が検出される。整列は、既知の画像処理手法を使用する拡大、ワーピング及び/又は回転を含んでよい。最後に、ステッチされた画像では、特に重複するエッジにおけるグレーレベル強度差が平均化又は調整されて、ステッチの継ぎ目が除去される。
【0039】
上記ステップの幾つかは、米国特許出願公開第2010/0014780号において言及されている。
【0040】
図1は、超音波システムでのマルチプローブの使用法を示す。制御ユニット1が、線5aから5cでそれぞれ示されているように、各プローブ2a、2b及び2cに有線又は無線で接続されている。プローブは、患者4の関心領域ROI3を撮像するように超音波検査技師によって配置される自立型の持ち運び可能な超音波プローブである。プローブは、関心領域3に送信される超音波ビーム6a、6b、6cを形成し、関心領域3はこれらをエコー6d、6e、6fとして部分的に反射して関心領域3を含む視野からの画像情報を提供する。これは通常Bモードの超音波撮像であるが、他のタイプの撮像も可能である。例えばドップラー撮像をBモード撮像と交互に行い、例えば動脈内の血液の動きを示すことができる。当技術分野において知られているように、様々なタイプの画像を一緒に表示することができる。
【0041】
超音波システム制御ユニット1は、スレーブとしてのプローブ2a、2b及び2cを制御するマスタとして機能する。システムは、制御ユニット1と同様の超音波システム制御ユニットを複数含み、そのすべてがプローブのすべて又はサブセットと通信することができる。制御ユニット1は、超音波パルスを発射するためにトリガリングシーケンスとタイミング情報とをプローブに送る。発射の順序付けによって、プローブ間の干渉を最小限に抑えることができる。
【0042】
マスタは、アプリケーションロジックの必要に応じて、スレーブのトリガリングシーケンスをプログラムすることができる。トリガリングシーケンスが決定されると、プローブは、ペアリングされたマスタによって、又は、シーケンス内の前のプローブによって超音波パルスを発射するためにトリガリングされる。
【0043】
或いは、トリガリングは、グローバルクロック同期メカニズムを使用して時間に基づいていてもよい。この方法では、システムにグローバルクロックがあり、このグローバルクロックにすべてのスレーブが同期される。プローブの初期化中に、スレーブはローカルクロックをグローバルクロックに同期させる。更に、シーケンスにおけるプローブのサンプリング周波数に応じて、マスタは絶対時間を割り当てて、シーケンス内でプローブが繰り返し発射するようにトリガリングすることができる。
【0044】
次に、複数のプローブを使用する画像収集について、更に詳しく説明する。単一のプローブの場合、送受信された超音波信号の調整はプローブ内で行われる。本発明のマルチプローブ(又はデュアルプローブ)シナリオでは、信号調整はプローブ間レベルで行われる必要がある。プローブ間レベルでは、超音波はプローブ間の信号の重複なしに送受信される必要がある。プローブ調整がない場合、異なるプローブからの捕捉画像はエコー干渉を含む可能性がある。これは、プローブ2aによってエコー信号7bとして受信されるプローブ2bからの信号7aや、プローブ2bによってエコー信号7dとして受信されるプローブ2cからの信号7cによって図1に示すように、他のプローブからの信号の重複によって引き起こされる。
【0045】
プローブ間の超音波信号調整は、非同期プロトコル若しくはステートレスプロトコルか又は同期プロトコルによって達成される。
【0046】
制御ユニットによってプローブから収集された画像データは、制御ユニット自体か又は外部装置(図示せず)において処理することができる。画像データは、表示のためにレンダリングされ、したがって、画像は組み合わされて一緒に見ることができ、画像は同時又は実質的に同時に表示されるため、視聴者は、これらをすべて一緒に見ることができる。
【0047】
図2を参照して説明する第1の実施形態では、マスタ制御ユニット10は、線l4a、l4b、l4c及びl4dによって表される経路を介してスレーブプローブl2a、l2b、l2c及びl2dと、任意選択的に追加の同様のプローブ(図示せず)と通信する。制御ユニット10内のグローバルクロック16が提供され、これは、外部グローバルクロック(図示せず)によって、例えばインターネット上のサーバー又は別の制御ユニットからのリレーメッセージによって設定することができる。それぞれの接続されたプローブ内の内部ローカルクロック18a、18b、18c及び18dが、同じ通信経路14a~l4dを介してグローバルクロックから同期される。
【0048】
制御ユニットは、マスタ及びスレーブのシステム全体を制御し、通信ユニット22を介して、プローブや、他の制御ユニット、病院システム及びインターネットといった外部ネットワークと通信するアプリケーションを実行するデータプロセッサ20を含む。制御ユニット10は、ビーム形成制御コマンドをプローブに送信する。制御ユニット10はまた、各プローブに、プローブスキャンの開始時間とスキャンの継続時間とを伝える。これらは、個々のプローブのパラメータと、スキャンシーケンスにおけるプローブの所定の順番に基づいて具体的に計算される。プローブパラメータは、好適には、要求に応じて、データプロセッサ20内のアプリケーションによって実行される初期化プロセス中に制御ユニット10に送信される。これらのパラメータは、好適にはプローブのIPアドレスといったアドレスを含み、データプロセッサ20によって記憶される。
【0049】
プローブ固有のタイミング情報は、各プローブが、他のプローブ信号と重複することなく、送信及びエコー受信のビーム形成シーケンスをいつ開始及び停止するかを知るのに役立つ。
【0050】
この非同期のステートレスプローブ調整法の利点は、最初にトリガリングされると、画像用のエコーデータを制御ユニット10に送信することを除き、マスタ又はビーム形成シーケンスに関与する他のプローブに依存又は更に通信することなく、個々のプローブが動作することを可能にする点である。このようにして、通信は最小限に抑えられる。また、プローブがグローバル時間に従って正確に動作している限り、マスタ制御ユニット10で実行されているアプリケーションの制御下で、各プローブの発射シーケンスを繰り返すことができる。ローカルクロックの定期的な同期が実行される。これの頻度は、制御ユニットに知られるパラメータの1つであるローカルクロックの精度に依存してよい。
【0051】
次に、図3を参照して第2の実施形態を説明する。図3は、プローブ間の調整は関係するプローブの状態を追跡することによって行われる同期ステートフルシステムを示す。この実施形態では、プローブ状態の通信は、プローブ32a、32b、32c及び32d(及び任意選択的に図示しない追加のプローブ)に対するマスタとして機能する制御ユニット30によって達成される。第1の実施形態と同様に、各プローブは、線34a、34b、34c及び34dによって表されるように制御ユニット30と通信する。
【0052】
制御ユニット30のデータプロセッサ内のアプリケーションが、すべてのスレーブプローブの状態のレジスタ32を記憶し、それらの一意のアイデンティティが、図の左側の列に示すようにレジスタの一部36を形成する。レジスタは、特定された各プローブのスキャン状態を記憶し、これは、図の列38として表される。スキャン状態は「未開始」、「進行中」又は「完了」であってよいが、プローブの故障を示す状態といった他の状態を使用することもできる。各プローブはまた、そのスキャン状態のレジスタ40a、40b、40c、40dを備えたメモリを有する。プローブは、それらのスキャン状態を示す信号を制御ユニット30に送る。制御ユニット内のアプリケーションは、プローブの更新されたスキャン状態に基づいてレジスタ32を継続的に更新する。制御ユニットは、レジスタ32に記憶される所定のプローブシーケンスで各プローブにコマンド信号を送り、他のプローブからの信号による干渉なしに、当該プローブに送信及び受信シーケンスであるスキャンシーケンスを開始させる。このプローブシーケンスは、必要なだけ繰り返すことができる。
【0053】
次に、図4を参照して第3の実施形態を説明する。このシステムは、プローブの順序付けにプローブ間通信が使用される点を除き、図3のシステムと似ている。マスタ制御ユニット50内のレジスタ52が、接続されたプローブ32a~32dのトリガリングシーケンスを記憶する。各プローブは、それ自身のスキャン状態と、発射シーケンスにおける次のプローブのアイデンティティとをまた記憶する。したがって、各プローブは、少なくとも1つの他のプローブ、また、大抵の場合、2つの他のプローブと通信することができ、それらの通信経路は、図では54、56、58、60、62と示されている。他の実施形態と同様に、任意の数のプローブをシーケンスに使用することができる。ビーム形成は、マスタとしての制御ユニット50によって設定されたプローブシーケンスの1番目のプローブから開始する。制御ユニット50は、スキャンを開始するように1番目のプローブ32aにコマンドを送り、また、シーケンス内の次のプローブ、即ち、プローブ32bを示す信号も送る。信号は、プローブのアイデンティティの代わりに、IPアドレス又はプローブ32aが経路54でのその送信にラベル付け又はアドレス指定を行い、これにより、当該送信が次のプローブ、即ち、プローブ32bによってのみ受信されてそれに基づいて動作するようにする他の手段を含んでよい。1番目のプローブ32aは、自身のスキャンシーケンスが完了すると、その状態を次のプローブ32bに伝え、これは、当該次のプローブが自身のスキャンを開始するための命令として取られる。次の3番目のプローブ32cは、2番目のプローブ32bによってそのスキャンが完了したことが伝えられると、そのスキャンを実行する。最後に、4番目のプローブ32dがそのスキャンを実行した後、そのスキャン状態は、制御ユニット50か又は経路62を介して1番目のプローブ32aに送信されて、プローブシーケンスが繰り返される。
【0054】
プローブからプローブに送られる信号は、スキャンの繰り返される連続パターンでまだ実行されていないプローブシーケンスの数を示すカウンタを含む。この場合、最後のプローブ32dは、ロジックを実行して、シーケンス全体が繰り返されるべきかどうかに応じて、そのスキャン状態を制御ユニット50に送るか又は1番目のプローブ32aに送るかを選択することができる。
【0055】
複数のプローブのうちの1つのプローブが他のプローブよりも良いROIの図を捕捉するシナリオがある。これは、プローブがROIを撮像している位置又は角度が理由である。すべての上記例において、制御ユニット1、10、30、50内のアプリケーションは、各プローブによって捕捉されたROIの品質を表すフィードバックデータに応答して、プローブの優先順位を付けることができる。例えばアプリケーションは、計算された優先順位に従って、プローブのトリガリングの順番を動的に変更することができる。また、1つ以上のプローブを一時的にシーケンスから除外してもよい。
【0056】
複数のラインを含むROIの画像フレームの形成は、各スキャンラインを順次選択するためのプローブにおけるビーム形成及びタイミングによって得ることができる。例えばプローブによって実行されるスキャン毎に、プローブは1つの画像ラインを収集し、それを画像データとして制御ユニットに送信して、そのプローブと関連付けて一時的に記憶することができる。次のサイクルにおいて、つまり、プローブシーケンスが繰り返されると、プローブは、次の画像ラインを収集し、それを制御ユニットに送信する。これは、Bモード画像のフレーム全体が収集されて、各プローブについて制御ユニットに記憶されるまで繰り返される。次に、制御ユニットは、画像フレームが生成されるとすぐにその画像フレームを表示することができる。或いは、各プローブは、連続する各ラインを自身のメモリに記憶し、完全な画像フレームを制御ユニットに送信することもできる。
【0057】
したがって、スキャンシーケンスは、インターリーブシーケンスで1ラインずつ画像を構築するか、又は、シーケンスが次のプローブに移る前に、1つのプローブで完全な画像を取得することができる。
【0058】
図5に、図1から図4のシステムのいずれかと共に使用するための超音波プローブ70を示す。固定の素子アレイを有する圧電トランスデューサ72が音音-画像変換器74と通信する。音-画像変換器74はROIの画像を生成するために画像信号を画像処理ユニット76に送る。前述のように、画像信号は、所定の深さにおいてスキャンすることによって得られるスキャンラインであってよく、連続するラインを画像処理ユニット76において処理することができる。画像処理ユニット76は、制御ユニットへの送信のために画像データを送信ユニット78に直ちに送るか、又は、複数のスキャンラインを蓄積し、これらをフレームとして一緒に送信させることができる。送信ユニット78はまた、制御信号及び他のデータ信号を他のプローブ又は制御ユニットに送ることもできる。
【0059】
受信器80は、制御ユニット又は他のプローブから信号を受信し、当該信号を、プローブを調整する多重化コントローラ82に送る。多重化コントローラ82は、プローブ調整コマンドを受信して実行し、受信したトリガリングコマンドに基づいて圧電センサアレイ72を作動させる及び動作停止にし、プローブのスキャン状態をマスタ制御ユニット又は別のプローブに伝え(図3又は図4の同期プロトコルの場合)、及び/又は、そのローカルクロックを受信してグローバルクロックと同期させる(図2の同期ステートレスプロトコルの場合)。
【0060】
システムは診断に複数のプローブを使用することを含むため、好適なデータ通信法は、Wi-Fi(登録商標)であってよいLANといったワイヤレス通信チャネルや、Bluetooth(登録商標)といった短距離RFであるがこれらに限定されない。データは、適切な通信プロトコルを使用して転送することができる。プローブは、捕捉画像を暗号化チャネルを通じて(SSL、TLS等を介して)リアルタイムで制御ユニットにワイヤレス通信することができる。次に、受信システムはデータを復号化し、それをユーザーへの表示としてレンダリングすることができる。
【0061】
各ワイヤレスプローブが動作するには、各ワイヤレスプローブに継続的に給電する必要がある。プローブは、好適には、例えば非接触(ワイヤレス)充電によって再充電可能である内部電池を有する。プローブ70はまた、ジャイロセンサ、加速度計等といった位置センサ86を有する。これを使用して、各プローブの位置を個別に特定し、電力ビームを各アクティブプローブに個別にステアリングすることができ、アクティブプローブは、当該ビームから電力を獲得することができる。欧州特許第3181053A号は、ワイヤレス超音波プローブと、ワイヤレス超音波プローブの位置に向けて指向的に送信されたワイヤレス電力を受信し、受信したワイヤレス電力を集束させることによってワイヤレス超音波プローブに含まれる電池を充電する方法を開示している。
【0062】
各プローブに関する位置特定情報はまた、各アクティブプローブについて送信及び/又は受信ビームを個別に集束させるためにも使用することができる。制御ユニットは、各プローブの位置及び方向を決定することができ、そこからそれらの相対位置及び/又はROIに対するそれらの位置を決定することができ、これらを使用して、表示に最適であるように画像を処理することができる。
【0063】
好適には、再充電のためにプローブドッキングステーションが提供され、これにより、電力が遮断されていてもプローブを使用することができる。ドッキングステーションは、好適にはワイヤレス充電機能を備えている。
【0064】
複数のプローブを使用すると、ユーザーがROIを様々な視点から見ることができるため、患者の診断のためにより良い洞察を提供することができる。同じROIの2つ以上の視点を2つ以上のプローブによって生成することができる。当該2つ以上の視点を画像のステッチ又はブレンド、つまり、融合に使用して、単一の大きい視野又はより優れた品質の最終画像を生成することができる。
【0065】
更に、プローブからの複数の画像を使用して、関心臓器のボリュームを表す3D又はそれ以上の次元の画像データセットを生成することができる。
【0066】
画像収集法に応じて、異なる既知のレンダリング方法を使用することができる。2つ以上のプローブから捕捉された画像は、一緒に又は互いに隣接して表示することができる。
【0067】
或いは、図6に示すように、ヘッドマウントディスプレイを使用した立体視を提供することができる。患者4内の関心領域3が、ヘッドセット96を装着しているユーザーの瞳間距離94によって分離された1対の隣接プローブ90、92を使用して撮像される。立体撮像は、プローブから2つの画像を、ヘッドセット96内で左目画像98L及び右目画像98Rとして同時に又は高速連続で投影することによって得られる。この立体視は、奥行き感を与える。
【0068】
前述のように、実施形態は制御ユニットを使用する。制御ユニットは、ソフトウェア及び/又はハードウェアを使用して様々なやり方で実装されて、様々な必要な機能を行うことができる。プロセッサは、必要な機能を行うようにソフトウェア(例えばマイクロコード)を使用してプログラムすることができる1つ以上のマイクロプロセッサを使用するコントローラの一例である。しかし、コントローラは、プロセッサを使用して又は使用することなく実装することができ、また、一部の機能を行う専用ハードウェアと、他の機能を行うプロセッサ(例えば1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連回路)との組み合わせとしても実装することができる。
【0069】
説明される実施形態では、制御ユニットはプローブとは別個のものであるが、その機能は代わりに1つ以上のプローブに統合されてもよい。
【0070】
プローブと制御ユニットとの間の通信は、実施形態ではワイヤレスとして説明されているが、プローブ間、プローブと制御ユニットとの間又はその両方にケーブルを有することによって有線であってもよい。この場合、プローブは、制御ユニットといった外部電源から給電することができ、内部電源を有する必要はない。しかし、有線接続は、プローブの使用がより困難で手間がかかるものになる可能性がある。
【0071】
本開示の様々な実施形態において使用することができるコントローラコンポーネントの例には、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
様々な実施態様では、プロセッサ又はコントローラは、RAM、PROM、EPROM及びEEPROMといった揮発性及び不揮発性コンピュータメモリといった1つ以上の記憶媒体に関連付けられてよい。記憶媒体は、1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要な機能を行う1つ以上のプログラムでエンコードすることができる。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されていても、又は、記憶媒体に格納された1つ以上のプログラムをプロセッサ又はコントローラにロードできるように可搬であってもよい。
【0073】
超音波撮像システムの動作は完全に従来型であるため、超音波プローブについては上で詳細に説明していない。
【0074】
完全を期すために、図7は、アレイトランスデューサプローブ104を有する超音波診断撮像システム102をブロック図形式で示す。
【0075】
アレイトランスデューサプローブ104は、トランスデューサセルを含む。従来、超音波トランスデューサには圧電材料が使用されてきている。例としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)材料及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)材料があり、PZTは特に最適な材料として人気がある。単結晶圧電材料を使用して、高性能トランスデューサの高い圧電定数及び電気機械結合定数が達成される。
【0076】
最近の開発により、医用超音波トランスデューサを半導体プロセスでバッチ製造できる可能性が出てきている。望ましくは、これらのプロセスは、特に3D超音波用のCMOSプロセスといった超音波プローブに必要な特定用途向け集積回路(ASIC)を製造するために使用されるプロセスと同じであるべきである。これらの開発により、マイクロ機械加工超音波トランスデューサ、即ち、MUTが製造され、好適な形態は容量性MUT(CMUT)である。CMUTトランスデューサは、受信した超音波信号の音振動を変調されたキャパシタンスに変換する電極を有する小さいダイヤフラム状デバイスである。
【0077】
特にCMUTトランスデューサは、広い帯域幅で機能することができ、高解像度及び高感度撮像を可能にし、また、大きい圧力出力を生成することによって超音波周波数で大きい被写界深度の音響信号を受信することができる。図7は、超音波を送信し、エコー情報を受信する前述したようなCMUTセル108のトランスデューサアレイ106を示す。システム102のトランスデューサアレイ106は、一般に、2D平面で又は3D撮像のための3次元でスキャンすることができるトランスデューサ素子の1次元又は2次元アレイである。
【0078】
トランスデューサアレイ106は、CMUTアレイセルによる信号の送受信を制御するマイクロビームフォーマ112に結合される。マイクロビームフォーマは、例えば米国特許第5,997,479号(Savord他)、米国特許第6,013,032号(Savord)及び米国特許第6,623,432号(Powers他)に説明されるように、トランスデューサ素子のグループ、即ち、「パッチ」によって受信される信号の少なくとも部分的なビーム形成を行うことができる。
【0079】
マイクロビームフォーマ112は、プローブケーブル、例えば同軸ワイヤによって、送受信(T/R)スイッチ116に結合される。T/Rスイッチ116は、送信モードと受信モードとを切り替え、マイクロビームフォーマが存在しないか使用されずにトランスデューサアレイ106がメインシステムビームフォーマ120によって直接動作させられる場合に、メインビームフォーマ120を高エネルギー送信信号から保護する。マイクロビームフォーマ112の制御下にあるトランスデューサアレイ106からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ116によってマイクロビームフォーマに結合されるトランスデューサコントローラ118と、メインシステムビームフォーマ120とによって指示される。マインシステムビームフォーマ120は、ユーザーインターフェース又は制御パネル138のユーザー操作による入力を受け取る。トランスデューサコントローラ118によって制御される機能の1つは、ビームがステアリング及び集束される方向である。ビームは、トランスデューサアレイ106からまっすぐに(トランスデューサアレイに直交して)又はより広い視野のために異なる角度でステアリングされる。
【0080】
トランスデューサコントローラ118は、トランスデューサアレイ用の電圧源145を制御するように結合される。例えば電圧源145は、例えば送信モードにおいて超音波RFパルスを生成するようにCMUTアレイ106のCMUTセルに印加されるDC及びACバイアス電圧を設定する。
【0081】
マイクロビームフォーマ112によって生成された部分的にビーム形成された信号は、メインビームフォーマ120に転送され、そこでトランスデューサ素子の個々のパッチからの部分的にビーム形成された信号は、完全にビーム形成された信号に組み合わされる。例えばメインビームフォーマ120は、128個のチャネルを有してよく、その各々は、数十又は数百のCMUTトランスデューサセル108からなるパッチから部分的にビーム形成された信号を受け取る。このようにして、トランスデューサアレイ106の何千ものトランスデューサ素子によって受け取られた信号は、単一のビーム形成信号に効率的に貢献することができる。
【0082】
ビーム形成された信号は、信号プロセッサ122に結合される。信号プロセッサ122は、バンドパスフィルタリング、デシメーション、I成分及びQ成分分離、及び、線形信号と非線形信号とを分離して組織及びマイクロバブルから戻る非線形(基本周波数のより高い調波)エコー信号の特定を可能にする高調波信号分離といった様々なやり方で、受信したエコー信号を処理することができる。
【0083】
信号プロセッサ122は、スペックル低減、信号合成及びノイズ除去といった追加の信号強調を任意選択的に行うことができる。信号プロセッサ122のバンドパスフィルタは追跡フィルタであってよく、その通過帯域は、エコー信号が受信される深度が増加するにつれて高周波数帯域から低周波数帯域にスライドし、これにより、解剖学的情報のないより深い深度からのより高い周波数のノイズを除去する。
【0084】
処理された信号は、Bモードプロセッサ126と、任意選択的にドップラープロセッサ128とに結合される。Bモードプロセッサ126は、体内の臓器及び血管の組織といった体内の構造の撮像のために、受信した超音波信号の振幅検出を使用する。身体の構造のBモード画像は、例えば米国特許第6,283,919号(Roundhill他)及び米国特許第6,458,083号(Jago他)に説明されているように、高調波画像モード又は基本画像モードのいずれか又は両方の組み合わせで形成することができる。
【0085】
ドップラープロセッサ128は、ある場合、画像フィールド内の血球の流れといった物質の動きを検出するために、組織の動き及び血流からの時間的に特徴のある信号を処理する。ドップラープロセッサは、通常、身体内の選択されたタイプの材料から戻るエコーを通過及び/又は拒否するように設定することができるパラメータを有するウォールフィルタを含む。例えばウォールフィルタは、より高速の材料からの比較的低い振幅の信号を通過させ、より低速又はゼロ速度の材料からの比較的強い信号を拒否する通過帯域特性を有するように設定することができる。
【0086】
この通過帯域特性は、流れる血液からの信号を通過させる一方で、心臓壁といった近くの静止した又は低速に動く物体からの信号を拒否する。組織ドップラー撮像と呼ばれるものでは、逆の特性が、動く心臓組織からの信号は通過させる一方で、血流信号を拒否して、組織の動きを検出及び記述する。ドップラープロセッサは、画像フィールド内の様々な点からの時間的に離散的なエコー信号のシーケンスを受け取り処理する。特定の点からのエコーのシーケンスはアンサンブルと呼ばれる。比較的短い間隔にわたって高速連続で受信されたエコーのアンサンブルを使用して、ドップラー周波数と血流速度を示す速度とを対応させて、流れる血液のドップラーシフト周波数を推定することができる。長時間にわたって受信されたエコーのアンサンブルは、より低速に流れる血液又は低速に動く組織の速度を推定するために使用される。
【0087】
Bモード(及びドップラー)プロセッサによって生成される構造信号及び動き信号は、スキャンコンバータ132及び多平面リフォーマッタ144に結合される。スキャンコンバータ132は、エコー信号を、所望の画像フォーマットでそれらが受信された空間的関係で配置する。例えばスキャンコンバータは、エコー信号を、2次元(2D)扇形フォーマット又はピラミッド型の3次元(3D)画像に配置することができる。
【0088】
スキャンコンバータは、Bモード構造画像に、ドップラー推定速度を有する画像フィールド内の点における動きに対応する色をオーバーレイし、画像フィールド内の組織の動き及び血流を示すカラードップラー画像を生成することができる。多平面リフォーマッタ144は、例えば米国特許第6,443,896号(Detmer)に説明されているように、身体のボリュメトリック領域内の共通平面における点から受信されるエコーを当該平面の超音波画像に変換する。米国特許第6,530,885号(Entrekin他)に説明されているように、ボリュームレンダラ142が3Dデータセットのエコー信号を、所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。
【0089】
2D画像又は3D画像は、スキャンコンバータ132、多平面リフォーマッタ144及びボリュームレンダラ142から画像プロセッサ130に、画像ディスプレイ140での表示のための更なる強調、バッファリング及び一時的記憶のために結合される。ドップラープロセッサ128によって生成される血流値及びBモードプロセッサ126によって生成される組織構造情報は、撮像に使用されることに加えて、定量化プロセッサ134に結合される。定量化プロセッサは、血流のボリュームレートといった様々なフロー条件の尺度だけでなく、臓器のサイズや妊娠期間といった構造測定値を生成する。定量化プロセッサは、測定すべき画像の解剖学的構造内の点といった入力をユーザー制御パネル38から受け取ることができる。
【0090】
定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ140上の画像と共に測定グラフィックス及び値を再現するためにグラフィックプロセッサ136に結合される。グラフィックプロセッサ136はまた、超音波画像と共に表示するためのグラフィックオーバーレイを生成することもできる。これらのグラフィックオーバーレイに含まれるものとしては、患者名、画像の日時、撮像パラメータ等といった標準的な識別情報がある。このために、グラフィックプロセッサは、患者名といった入力をユーザーインターフェース138から受け取る。
【0091】
ユーザーインターフェースはまた、送信コントローラ118に結合されて、トランスデューサアレイ106からの超音波信号の生成、したがって、トランスデューサアレイ及び超音波システムによって生成される画像を制御する。ユーザーインターフェースはまた、多平面リフォーマットされた(MPR)画像の画像フィールドにおいて定量化された測定を行うために使用することができる複数のMPR画像の平面の選択及び制御のために多平面リフォーマッタ144に結合される。
【0092】
当業者によって理解されるように、超音波診断撮像システムの上記実施形態は、このような超音波診断撮像システムの非限定的な例を与えることを意図している。当業者は、本発明の教示から逸脱することなく、超音波診断撮像システムのアーキテクチャにおける幾つかの変形が可能であることをすぐに認識するであろう。例えば上記実施形態でも示したように、マイクロビームフォーマ112及び/又はドップラープロセッサ128は省略されてもよく、超音波プローブ104は3D撮像機能を有していなくてもよい。
【0093】
開示した実施形態に対する他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解及び達成することができる。請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形は複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているというだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項中の任意の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者内の関心領域を撮像する超音波撮像装置であって、
制御ユニットと、
前記制御ユニットに結合される複数の個別の超音波プローブと、
を含み、
各超音波プローブは、
超音波を送信及び受信する少なくとも1つのトランスデューサ、
前記各超音波プローブによる超音波スキャンをトリガリングするためのプローブスキャン信号を受け取る受信器、及び、
超音波画像を提供する出力部を、含み、
前記制御ユニットは、
前記複数の超音波プローブのうちの少なくとも1つの超音波プローブにプローブスキャン信号を提供することによって、前記複数の超音波プローブの動作を所定のプローブシーケンスで調整するように前記複数の超音波プローブを制御し、
前記複数の超音波プローブからの前記超音波画像の組み合わされた表示の生成のために、前記複数の超音波プローブの前記出力部から前記超音波画像を受け取り、
前記装置は、
各超音波プローブが前記各超音波プローブ自身のスキャンが完了したことを示すスキャン状態信号を、前記プローブスキャン信号として前記所定のプローブシーケンスにおける次の超音波プローブが受け取るか、は、前記所定のプローブシーケンスにおける前記次の超音波プローブにプローブスキャン信号を送るために前記制御ユニットが受け取るために、送信することによって
記所定のプローブシーケンスでの前記複数の超音波プローブの前記動作を調整する、装置。
【外国語明細書】