(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015930
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230125BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230125BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H01L29/78 652L
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652S
H01L29/78 653C
H01L29/78 652K
H01L29/78 657G
H01L29/78 655E
H01L29/44 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120017
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】大谷 欣也
(72)【発明者】
【氏名】本田 真彬
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104BB14
4M104FF02
4M104FF04
4M104FF10
4M104GG02
4M104GG09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】逆回復時間を短くすることができ、かつ、不具合が起こり難い半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、第1導電型半導体層112と第2導電型半導体領域113とでボディダイオードを構成する半導体基体110と、第1電極130と、第2電極140と、キャリア誘引トレンチ161と、第1絶縁領域162と、キャリア誘引トレンチ161内に第1絶縁領域162を介して第1導電型半導体層112と対向する位置に配置された第1トレンチ内電極163と、少なくともボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作における第2電極140の電位の極性とは逆の極性の電位となる電圧を第1トレンチ内電極163に印加する電圧印加手段としての第2トレンチ内電極164と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の表面に設けられた第2導電型半導体領域とを有し、前記第1導電型半導体層と前記第2導電型半導体領域とでボディダイオードを構成する半導体基体と、
前記半導体基体の一方の表面上に配置され、前記第2導電型半導体領域と電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基体の前記一方の表面とは反対側の他方の表面上に配置され、前記第1導電型半導体層と電気的に接続された第2電極と、
前記半導体基体の前記一方の表面に形成され、前記第1導電型半導体層に隣接した底、及び、前記第2導電型半導体領域及び前記第1導電型半導体層に隣接した側壁を有するトレンチと、
前記トレンチの表面に配置された第1絶縁領域と、
前記トレンチ内に前記第1絶縁領域を介して前記第1導電型半導体層と対向する位置に配置された第1トレンチ内電極と、
前記ボディダイオードの逆回復動作において、前記ボディダイオードの逆回復動作における前記第2電極の電位の極性とは逆の極性の電位となる電圧を前記第1トレンチ内電極に印加する電圧印加手段とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記電圧印加手段は、前記ボディダイオードの逆回復動作以外のときは、前記半導体装置内の空乏層を延伸する電位となる電圧を前記第1トレンチ内電極に印加することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電圧印加手段は、前記ボディダイオードの逆回復動作以外のときは、前記第1電極の電位と同じ電位となる電圧を前記第1トレンチ内電極に印加することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トレンチ内に前記第1トレンチ内電極と離隔した状態で配置されたゲート電極と、
前記第1トレンチ内電極と前記ゲート電極との間に配置され、前記ゲート電極を前記第1トレンチ内電極から離隔してなる第2絶縁領域と、
前記トレンチの前記側壁の表面に配置され、前記ゲート電極を前記トレンチの前記側壁から離隔してなるゲート絶縁膜と、をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電圧印加手段は、前記トレンチ内に前記第1トレンチ内電極と離隔した状態で配置された第2トレンチ内電極であり、
前記半導体装置は、前記第1トレンチ内電極と前記第2トレンチ内電極との間に配置され、前記第2トレンチ内電極を前記第1トレンチ内電極から離隔してなる第2絶縁領域と、
前記トレンチの前記側壁の表面に配置され、前記第2トレンチ内電極を前記トレンチの前記側壁から離隔してなる第3絶縁領域と、をさらに備え、
前記第1トレンチ内電極は、電位がフローティングの状態であり、
前記第2トレンチ内電極は、前記第2電極と接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1絶縁領域の厚さをD1とし、前記第2絶縁領域の厚さをD2とし、前記第3絶縁領域の厚さをD3としたときに、D1<D3、かつ、D2<D3を満たすことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体装置は、
前記トレンチ内において、前記第2トレンチ内電極と離隔し、かつ、前記トレンチの側壁に形成されたゲート絶縁膜を介して前記第2導電型半導体領域と対向する位置に配置されたゲート電極と、
前記第2トレンチ内電極と前記ゲート電極との間に形成された第4絶縁領域とをさらに備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基体は、前記第2導電型半導体領域の表面の少なくとも一部に、第1導電型半導体領域をさらに有し、
前記半導体基体の一方の表面に形成され、前記第1導電型半導体層に隣接した底と、少なくとも前記第2導電型半導体領域に隣接した側壁を有する複数のゲートトレンチと、
前記複数のゲートトレンチのそれぞれの内側に、前記ゲートトレンチの側壁に形成されたゲート絶縁膜を介して前記第2導電型半導体領域と対向した状態となるように配置された複数のゲート電極とをさらに備え、
前記トレンチは、前記複数のゲートトレンチの所定本数おきに配置されていることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2絶縁領域の厚さをD2とし、前記ゲート絶縁膜の厚さをD4としたときに、D2≦D4を満たすことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記トレンチとして、複数のトレンチを有し、
隣接する前記トレンチ同士の間隔は、前記第2導電型半導体領域から注入されるキャリアの拡散長よりも狭いことを特徴とする請求項5~9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記トレンチとして、所定の間隔で配置された複数のトレンチを有することを特徴とする請求項4又は7に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基体は、前記第2導電型半導体領域の表面の少なくとも一部に、前記トレンチの側壁と隣接した位置に形成された第1導電型半導体領域をさらに有し、
前記トレンチの側壁にはゲート絶縁膜が形成されており、
前記第1トレンチ内電極は、前記ゲート絶縁膜を介して前記第2導電型半導体領域と対向する位置に配置されたゲート電極であり、
前記電圧印加手段は、前記第1トレンチ内電極、前記ゲート電極及び前記第2電極とそれぞれ接続され、前記ボディダイオードに順方向電流が流れている期間における前記ボディダイオードの逆回復動作に移行する前の所定の期間、前記第2電極と前記ゲート電極とを接続し、前記ボディダイオードの逆回復動作においては、前記第2電極と前記ゲート電極との間の接続を切断するフィードバック回路であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記半導体基体は、前記第2導電型半導体領域の表面の少なくとも一部に、第1導電型半導体領域をさらに有し、
前記トレンチの側壁にはゲート絶縁膜が形成されており、
前記第1トレンチ内電極は、前記ゲート絶縁膜を介して前記第2導電型半導体領域と対向する位置に配置されたゲート電極であり、
前記電圧印加手段は、少なくとも前記ボディダイオードの逆回復動作において、前記ボディダイオードの逆回復動作における前記第2電極の電位の極性とは逆の極性の電位となる電圧を前記第1トレンチ内電極に印加する電源であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体基体は、前記第2導電型半導体領域の表面の少なくとも一部に、第1導電型半導体領域をさらに有し、
前記半導体基体の一方の表面に形成され、前記第1導電型半導体層に隣接した底と、前記第2導電型半導体領域に隣接した側壁を有する複数のゲートトレンチと、
前記複数のゲートトレンチのそれぞれの側壁に形成されたゲート絶縁膜を介して前記トレンチ内にそれぞれ配置され、側面が前記ゲート絶縁膜を介して前記第2導電型半導体領域と対向する複数のゲート電極とをさらに備え、
前記トレンチは、前記複数のゲートトレンチの所定本数おきに配置されており、
前記電圧印加手段は、前記第1トレンチ内電極及び前記第2電極と接続され、前記ボディダイオードに順方向電流が流れている期間における前記ボディダイオードの逆回復動作に移行する前の所定の期間、前記第2電極と前記第1トレンチ内電極とを接続し、前記ボディダイオードの逆回復動作には、前記第2電極と前記第1トレンチ内電極との間の接続を切断するフィードバック回路であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボディダイオードを有する半導体装置においては、ボディダイオードが逆バイアスとなったときにドリフト層にキャリア(例えば、NchMOSの場合、ホール)が存在することに起因してドリフト層からベース領域に向かって逆回復電流が流れる逆回復動作を行う。この逆回復電流は意図しない電流であり、スイッチング損失やリカバリ損失が大きくなったり、キャリアの偏在によって電界が集中して素子破壊が起こったりするおそれがある等の不具合があるため、逆回復動作の期間(逆回復時間)を短くすることが望まれている。
【0003】
図15は、特許文献1に記載された半導体装置900を説明するために示す図である。
例えば、特許文献1に記載された半導体装置900においては、半導体基体910に電子線を照射して結晶欠陥を形成してホールトラップ準位を形成している。これにより、ボディダイオードの逆回復動作において、当該結晶欠陥にキャリアをトラップして逆回復時間を短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された半導体装置900の場合のように、半導体基体に電子線を照射して結晶欠陥を形成する場合には、ドレイン・ソース間のリーク電流が大きくなったり、閾値電圧にバラツキが生じたりする等の不具合が生じるおそれがある、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、逆回復時間を短くすることができ、かつ、ドレイン・ソース間のリーク電流が大きくなったり、閾値電圧にバラツキが生じたりする等の不具合が起こり難い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置は、第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層の表面に設けられた第2導電型半導体領域とを有し、前記第1導電型半導体層と前記第2導電型半導体領域とでボディダイオードを構成する半導体基体と、前記半導体基体の一方の表面上に配置され、前記第2導電型半導体領域と電気的に接続された第1電極と、前記半導体基体の前記一方の表面とは反対側の他方の表面上に配置され、前記第1導電型半導体層と電気的に接続された第2電極と、前記半導体基体の前記一方の表面に形成され、前記第1導電型半導体層に隣接した底、及び、前記第2導電型半導体領域及び前記第1導電型半導体層に隣接した側壁を有するトレンチと、前記トレンチの表面に配置された第1絶縁領域と、前記トレンチ内に前記第1絶縁領域を介して前記第1導電型半導体層と対向する位置に配置された第1トレンチ内電極と、前記ボディダイオードの逆回復動作において、前記ボディダイオードの逆回復動作における前記第2電極の電位の極性とは逆の極性の電位となる電圧を前記第1トレンチ内電極に印加する電圧印加手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体装置によれば、少なくともボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作における第2電極の電位の極性とは逆の極性の電位となる電圧を第1トレンチ内電極に印加する電圧印加手段を備えるため、逆回復動作においてキャリアが第1トレンチ内電極に引き寄せられてベース領域に到達しなり、引き寄せられたキャリアが逆回復電流に寄与しなくなる。その結果、逆回復時間を短くすることができる。
【0009】
また、本発明の半導体装置によれば、少なくともボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作における第2電極の電位の極性とは逆の極性の電位となる電圧を第1トレンチ内電極に印加する電圧印加手段を備えるため、逆回復時間を短くするために結晶欠陥を形成しなくてもよく、ドレイン・ソース間のリーク電流が大きくなったり、閾値電圧にバラツキが生じたりする等の不具合が生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る半導体装置100を示す図である。
図1(a)は半導体装置100の平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図である。なお、
図1(a)の白丸はゲートフィンガーGFとゲート引き出し配線GLとのコンタクト又はドレインフィンガーDFと第2トレンチ内電極引き出し配線DLとのコンタクトを示す。
【
図2】実施形態1に係る半導体装置100を示す断面図である。
図2(a)は
図1(a)のB-B断面図であり、
図2(b)は
図1(b)のC-C断面図である。
【
図3】実施形態1に係る半導体装置100要部拡大断面図である。
図3左図はキャリア誘引トレンチ構造160の要部拡大断面図であり、
図3右図はゲートトレンチ構造150の要部拡大断面図である。
【
図4】実施形態1に係る半導体装置100を説明するために示す図である。
図4(a)は半導体装置100の寄生静電容量を示す図であり、
図4(b)は半導体装置100と静電容量の関係を示す図であり、
図4(c)は半導体装置及びスナバ回路の等価回路を示す図である。
【
図5】実施形態1に係る半導体装置100におけるキャリアの様子を示す図である。
図5(a)はボディダイオードに順方向電流が流れているときのキャリアの様子を示す図であり、
図5(b)は逆回復動作におけるキャリアの様子を示す図であり、
図5(c)は逆回復動作後のキャリアの様子を示す図である。
【
図6】実施形態2に係る半導体装置102,102aを示す断面図である。
図6(a)は半導体装置102の断面図を示し、
図6(b)は半導体装置102aの断面図を示す。
【
図7】実施形態3に係る半導体装置200を示す図である。
図7(a)は半導体装置200の平面図であり、
図7(b)は
図7(a)のD-D断面図であり、
図7(c)は半導体装置200の等価回路を示す図である。
【
図8】実施形態3に係る半導体装置200におけるドレイン電圧V
DS、ボディダイオード電流i
F及びゲート電圧V
GSを示すグラフである。
【
図9】実施形態3に係る半導体装置200におけるキャリアの様子を示す図である。
図9(a)はボディダイオードに順方向電流が流れているときのキャリアの様子を示す図であり、
図9(b)は逆回復動作直前におけるキャリアの様子を示す図であり、
図9(c)は逆回復動作におけるキャリアの様子を示す図である。
【
図10】変形例1に係る半導体装置300を示す模式的な回路図である。
【
図11】実施形態4に係る半導体装置202を示す模式的な図である。
【
図12】変形例2に係る半導体装置204を示す模式的な図である。
【
図13】変形例3に係る半導体装置104を示す断面図である。なお、符号120aは層間絶縁膜を示し、符号153aはゲート電極を示し、符号152aはゲート絶縁膜を示す。
【
図14】変形例4に係る半導体装置206を示す断面図である。
図14(a)は半導体装置206の断面図を示し、
図14(b)は半導体装置206の等価回路を示す。
【
図15】従来の半導体装置900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の半導体装置について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る半導体装置100の構成
図1は、実施形態1に係る半導体装置100を示す図である。
図2は、実施形態1に係る半導体装置100を示す断面図である。実施形態1に係る半導体装置100は、半導体基体110の一方の表面にストライプ状に複数のゲートトレンチ151(ゲート電極)が形成されているトレンチゲート型の半導体装置(MOSFET)であり、ストライプ状に配置された複数のゲート電極(ゲートトレンチ)の所定本数おきに、逆回復時にホールを誘引するための第1トレンチ内電極163が内側に配置されたキャリア誘引トレンチ161が形成されている構成を有する。実施形態1に係る半導体装置100は、MOS動作とダイオード動作とを繰り返して用いるような場合、例えば、2つの半導体装置が直列に接続されたハーフブリッジ回路の用いる半導体装置などの場合に好適である。
【0013】
実施形態1に係る半導体装置100は、
図1に示すように、2つの長辺X1,X2及び2つの短辺X3,X4で構成される平面視略矩形形状を有する半導体基体110を有し、半導体基体110の一方の表面上にソース電極130と、ゲートフィンガーGFと、ゲートパッドGPと、ドレインフィンガーDFと、ドレインパッドDPとが配置されており、半導体基体110の一方の表面の反対側の表面にドレイン電極140が配置されている。
【0014】
ソース電極130(第1電極)は、半導体基体110の一方の表面上の平面視中央部に層間絶縁膜120を介して配置されている。ソース電極130は、
図1(b)に示すように、層間絶縁膜120に形成されたコンタクトホール内の金属プラグPg1を介して半導体基体110(ベース領域113及びソース領域114)と電気的に接続されている。ソース電極130は、例えばAl膜又はAl合金膜(例えばAlSi膜)からなり、ソース電極130の厚さは1μm~10μm(例えば3μm)である。
【0015】
2つのゲートフィンガーGFは、
図1(a)に示すように、ソース電極130の長辺X1,X2側にそれぞれ配置され、短辺X3側から短辺X4側に向かって伸びている。ゲートパッドGPは、ソース電極130の短辺X3側に配置され、2つのゲートフィンガーGFの短辺X3側の端部と接続されている。2つのゲートフィンガーGF及び1つのゲートパッドGPは、ソース電極130を長辺X1、X2、短辺X3の3方向から囲んだ配置となっている。
【0016】
2つのドレインフィンガーDFは、2つのゲートフィンガーGFのそれぞれの外側(長辺X1,X2側)に配置され、長辺X1又はX2に沿って短辺X4から短辺X3に向かって伸びている。ドレインパッドDPは、ソース電極130の短辺X4側に配置され、2つのドレインフィンガーDFの短辺X4側の端部と接続されている。2つのドレインフィンガーDF及び1つのドレインパッドDPは、ソース電極130、ゲートパッドGP及びゲートフィンガーGFを長辺X1、X2、短辺X4の3方向から囲んだ配置となっている。
【0017】
ドレイン電極140(第2電極)は、半導体基体110の一方の表面とは反対側の他方の表面上(低抵抗半導体層111の表面上)の全体に配置され、半導体基体110の低抵抗半導体層111を介してドリフト層112と電気的に接続されている。ドレイン電極140は、Ti、Ni、Au(又はAg)がこの順序で積層された積層膜からなり、ドレイン電極140の厚さは0.2μm~1.5μm(例えば1μm)である。
【0018】
半導体基体110は、
図1(b)及び
図2に示すように、n
+型の低抵抗半導体層111と、低抵抗半導体層111上に形成され、低抵抗半導体層111よりも不純物濃度が低いn
-型のドリフト層112(第1半導体層)と、ドリフト層112の表面に設けられたp型のベース領域113(第2導電型半導体領域)と、ベース領域113の表面に形成され、ドリフト層112よりも不純物濃度が高いn型のソース領域114(第1導電型半導体領域)とを有し、p型のベース領域113とn型(n
-型)のドリフト層112とでボディダイオードを構成する。
【0019】
低抵抗半導体層111の厚さは50μm~500μm(例えば350μm)であり、低抵抗半導体層111の不純物濃度は1×1018cm-3~1×1021cm-3(例えば1×1019cm-3)である。ゲートトレンチ151及びキャリア誘引トレンチ161が形成されていない領域におけるドリフト層112の厚さは3μm~50μm(例えば15μm)であり、ドリフト層112の不純物濃度は1×1014cm-3~1×1019cm-3(例えば1×1015cm-3)である。ベース領域113の厚さは0.5μm~10μm(例えば5μm)であり、ベース領域113の不純物濃度は1×1016cm-3~1×1019cm-3(例えば1×1017cm-3)である。
【0020】
実施形態1において、半導体基体110の表面には、長辺X1側から長辺X2側に向かってセル領域を横断するようにゲートトレンチ151が複数本平面視ストライプ状に形成されており、ストライプ状に配置された複数のゲートトレンチの所定本数おきに、ゲートトレンチ151と平行に平面視ストライプ状のキャリア誘引トレンチ161が形成されている。
なお、各ゲートトレンチ151内には、ゲート絶縁膜152及びゲート電極153が形成されており、ゲートトレンチ151、ゲート絶縁膜152及びゲート電極153でゲートトレンチ構造150を構成する。
また、キャリア誘引トレンチ161内には、第1トレンチ内電極163、第2トレンチ内電極164,第1絶縁領域162、第2絶縁領域165、第3絶縁領域166が形成されており、キャリア誘引トレンチ161、第1トレンチ内電極163、第2トレンチ内電極164,第1絶縁領域162、第2絶縁領域165及び第3絶縁領域166でキャリア誘引トレンチ構造160を構成する。
【0021】
ゲートトレンチ151は、平面的に見て長辺X1側のゲートフィンガーGFと重なる領域からソース電極130と重なる領域を横断して長辺X2側のゲートフィンガーGFと重なる領域まで延在している。ゲートトレンチ151は、
図1(b)に示すように、半導体基体110の一方の表面に形成され、ドリフト層112に隣接した底、並びに、ドリフト層112、ベース領域113及びソース領域114に隣接した側壁を有する。なお、トレンチ151の底面は平坦になっているが丸くなっていてもよく、その他適宜の形状をしていてもよい。
【0022】
ゲート絶縁膜152は、複数のゲートトレンチ151それぞれの側壁に形成されている。
ゲート電極153は各ゲートトレンチ151内に配置され、側面がゲート絶縁膜152を介してベース領域113と対向している。ゲートトレンチ151の底とゲート電極153との間にも絶縁膜154が形成されている。ゲート電極153の上面は、ソース領域114の最深部よりも浅い深さ位置にあり、ゲート電極153の下面は、ベース領域113とドリフト層112との間のpn接合面の深さ位置と同じ深さ位置又はそれよりも深い深さ位置にある。平面的に見てゲート電極153の長辺X1側の端部及び長辺X2側の端部にはそれぞれゲート引き出し配線GLが形成されており、金属プラグPg2を介してゲートフィンガーGFと接続されている(
図2(a)参照)。
【0023】
キャリア誘引トレンチ161は、
図1(a)に示すように、平面的に見て長辺X1側のドレインフィンガーDFと重なる領域からソース電極130と重なる領域(セル領域)を横断して長辺X2側のドレインフィンガーDFと重なる領域まで伸びている。キャリア誘引トレンチ161は、
図1(b)に示すように、半導体基体110の一方の表面に形成され、ドリフト層112に隣接した底、及び、ドリフト層112、ベース領域113及びソース領域114に隣接した側壁を有する。
【0024】
キャリア誘引トレンチ161の深さは、ドリフト層に到達した深さであれば適宜の深さとすることができ、例えば、ゲートトレンチ151の最底部よりも深くなるように形成することができる。逆回復動作においてドリフト層112の深い位置にあるホールはベース領域113に回収されるまでの時間がかかり、逆回復時間が長くなる原因となるため、ドリフト層112の深い位置に第1トレンチ内電極163を配置してホールを第1トレンチ内電極163に誘引して逆回復電流に寄与させないことが好ましい。このことを考慮すると、キャリア誘引トレンチ161の深さは深くすること(例えば、半導体基体の一方の表面から低抵抗半導体層111の上面の深さ位置までの間の深さの半分の深さよりも深い深さ位置)が望ましい。隣接するキャリア誘引トレンチ161同士の間の距離は、順方向電流が流れているときのベース領域113から注入されるキャリア(ホール)の拡散長よりも狭く、例えば、数十μm毎(例えば、60~80μm毎)に形成されている。
【0025】
第1トレンチ内電極163は、キャリア誘引トレンチ161の内表面から離隔した状態で配置されており、第1絶縁領域162を介してドリフト層112と対向している。第1トレンチ内電極163は、電位がフローティングの状態にある。第1トレンチ内電極163は、第2トレンチ内電極164がプラス電位となったときに、第2絶縁領域165を介して第1トレンチ内電極163内の電子が表面に引き寄せられ、第1トレンチ内電極163にマイナス電位が誘起される。第1トレンチ内電極163は、ドリフト層112と対向する部分(側面や底面)にマイナス電位が誘起される程度に比較的薄く形成されている。第1トレンチ内電極163は、所定の濃度で不純物を含有するポリシリコンからなり、不純物濃度を調整することによって第1トレンチ内電極163の抵抗値を調整することができる。
【0026】
第2トレンチ内電極164は、キャリア誘引トレンチ161内において、第1トレンチ内電極163の上方に第2絶縁領域165を介して離隔した状態で配置されている。第2トレンチ内電極164は、キャリア誘引トレンチ161の側壁表面に形成された第3絶縁領域166を介してキャリア誘引トレンチ161と離隔した状態で配置されている。平面的に見て第2トレンチ内電極164の長辺X1側の端部及び長辺X2側の端部には第2トレンチ内電極引き出し配線DLが形成されており、金属プラグPg3を介してドレインフィンガーDFと接続されている(
図2(b)参照)。第2トレンチ内電極164は、後述するように、ボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作におけるドレイン電極の電位の極性(プラス)とは逆の極性の電位(マイナス電位)となる電圧を第1トレンチ内電極163に印加する電圧印加手段である。
【0027】
第1絶縁領域162は、キャリア誘引トレンチ161の側壁の下部及び底の表面に形成されている。
第2絶縁領域165は、第1トレンチ内電極163と第2トレンチ内電極164との間に配置され、第2トレンチ内電極164を第1トレンチ内電極163から離隔させる。
第3絶縁領域166は、第2トレンチ内電極164とキャリア誘引トレンチ161の側壁との間に形成され、第2トレンチ内電極164をキャリア誘引トレンチ161の側壁から離隔させる。なお、第1絶縁領域162、及び、第2絶縁領域165は、熱酸化膜であるが、CVD酸化膜でもよい。また、第3絶縁領域166は、CVD酸化膜であるが、熱酸化膜であってもよい。
【0028】
第1絶縁領域162の厚さD1は、
図3に示すように、第3絶縁領域166の厚さD3よりも薄い。また、第2絶縁領域165の厚さD2は、第1絶縁領域162の厚さD1と程同じ厚さであり、第3絶縁領域166の厚さD3よりも薄く、ゲート絶縁膜152の厚さD4と同じかそれよりも薄い。また、第3絶縁領域166の厚さD3は、ソース・ドレイン間の耐圧を維持できる程度に厚くなっている。
【0029】
次に、実施形態1に係る半導体装置100の寄生容量及び内部抵抗について説明する。
図4は、実施形態1に係る半導体装置100を説明するために示す図である。
上記したように、第2トレンチ内電極164はドレインフィンガーDFを介してドレイン電極140と接続されており、ソース電極130(ソース電極130と接続されている金属プラグPg1)との間には第3絶縁領域166が存在する。このため、
図4(a)に示すように、第2トレンチ内電極164とソース電極130との間に静電容量C
DS2が存在することになる。第2トレンチ内電極164は、
図1(a)に示すように、複数本形成されているため、各キャリア誘引トレンチ161で静電容量C
DS2が存在することとなる。また、ベース領域113とドリフト層112との間にもpn接合の空乏層に起因した静電容量C
DS1が存在する。従って、
図4(b)に示すように、ソース電極130とドレイン電極140との間に静電容量C
DS2(各第2トレンチ内電極164とソース領域114又はベース領域113との間の静電容量C
DS2の合成容量)及び静電容量C
DS1が配置されることと等価となる。これらの静電容量(寄生容量)は、ソース電極130とドレイン電極140との間のコンデンサCを構成する(
図4(c)参照)。
【0030】
また、第2トレンチ内電極164は、所定の濃度で不純物を含有したポリシリコンからなり、かつ、第2トレンチ内電極164は平面的に見てストライプ状に形成されているため、第2トレンチ内電極164には内部抵抗が存在することとなる。各第2トレンチ内電極164の内部抵抗の合成抵抗は、上記したコンデンサCとドレイン電極140との間の抵抗を構成する(
図4(c)参照)。
【0031】
このことから、半導体装置100は、ソース・ドレイン間にコンデンサC及び抵抗Rとが直列に接続された構成を有することとなり、半導体装置100は、RCスナバ回路を内蔵した半導体装置(MOSFET)となる。
【0032】
ここで、ストライプの1本あたりの第2トレンチ内電極164の内部抵抗は、電気抵抗率ρ及び第2トレンチ内電極164の長さlに比例し、第2トレンチ内電極164の断面積S1に反比例する。そして、第3絶縁領域166の膜厚を調整することによって第2トレンチ内電極164の断面積S1を調整することができる。また、帯状の第2トレンチ内電極164の長さlも調整することができる。従って、ストライプ1本あたりの第2トレンチ内電極164の抵抗値を比較的容易に調整することができ、ひいては、スナバ回路の抵抗Rも比較的容易に調整することができる。なお、電気抵抗率ρもポリシリコンに導入する不純物濃度に依存するため、この観点においても第2トレンチ内電極164の抵抗値を調整することができる。
【0033】
また、スナバ回路のコンデンサにおいて、ストライプ1本あたりの静電容量CDS2は、第3絶縁領域166の膜厚dに反比例し、第2トレンチ内電極164とソース領域114とが対向する領域の面積S2に比例する。
ここで、第3絶縁領域166の膜厚は、比較的容易に調整することができる。また、第2トレンチ内電極164とソース領域114とが対向する領域の面積S2は、第2トレンチ内電極164の高さに比例するため、第3絶縁領域166の膜厚を調整することによって、第2トレンチ内電極164とソース領域114とが対向する領域の面積も調整することができる。従って、ストライプ1本あたりの第2トレンチ内電極164とソース領域114との間の静電容量CDS1を容易に調整することができ、ひいては、スナバ回路の静電容量を比較的容易に調整することができる。
【0034】
従って、実施形態1に係る半導体装置100におけるスナバ回路の抵抗値及び静電容量を比較的容易に調整できるため、フレキシビリティが高い半導体装置となる。
【0035】
2.逆回復動作におけるキャリアの様子について
次に、逆回復動作におけるドリフト層112のキャリアについて説明する。
図5は、実施形態1に係る半導体装置100におけるキャリアの様子を示す図である。
【0036】
(1)順バイアス時
ソース電極130がプラス電位となり、ドレイン電極140がマイナス電位となる電圧が印加されるときには、ベース領域113とドリフト層112とで構成されるボディダイオードに順方向電流が流れ、ベース領域113からドリフト層112にキャリア(ホール)が注入される(
図5(a)参照)。このとき、ドレイン電極140がマイナス電位となっているため、ドレイン電極140と電気的に接続されている第2トレンチ内電極164もマイナス電位となっている。
【0037】
(2)逆バイアス時(逆回復動作)
ソース電極130がマイナス電位となり、ドレイン電極140がプラス電位となる電圧が印加されると、ベース領域113からドリフト層112にホールが注入されなくなり、ドリフト層112に注入されたホールが、ベース領域113側に向かって移動するようになる。これにより、逆回復電流が流れる逆回復動作となる。このとき、ドレイン電極140と電気的に接続されている第2トレンチ内電極164はプラス電位となる。そして、プラス電位の第2トレンチ内電極164によって、フローティング電位である第1トレンチ内電極163内の電子を表面に引き寄せ、第1トレンチ内電極163にマイナス電位を誘起する。マイナス電位となった第1トレンチ内電極163が周囲のドリフト層112の電場を変化させて、キャリア(ホール)を誘引し、キャリア誘引トレンチ161の底部近傍にホールだまり(
図5(b)及び
図5(c)の破線で囲まれた領域参照)を形成する。これにより、逆回復動作においてホールがベース領域113に到達することを防ぐことができ、当該ホールが逆回復電流に寄与しなくなるため、逆回復時間が短くなる。
【0038】
3.実施形態1に係る半導体装置100の効果
実施形態1に係る半導体装置100によれば、ベース領域113及びドリフト層112で構成されるボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作におけるドレイン電極140の電位の極性(プラス電位)とは逆の極性の電位(マイナス電位)となる電圧を第1トレンチ内電極163に印加する電圧印加手段としての第2トレンチ内電極164を備えるため、逆回復動作においてホールが第1トレンチ内電極163に引き寄せられてベース領域113に到達しなくなり、引き寄せられたホールが逆回復電流に寄与しなくなる。従って、逆回復時間を短くすることができる。
【0039】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、ベース領域113及びドリフト層112で構成されるボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作におけるドレイン電極140の電位の極性(プラス電位)とは逆の極性の電位(マイナス電位)となる電圧を第1トレンチ内電極163に印加する電圧印加手段としての第2トレンチ内電極164を備えるため、逆回復時間を短くするために結晶欠陥を形成しなくてもよくなる。従って、ドレイン・ソース間のリーク電流が大きくなったり、閾値電圧にバラツキが生じたりする等の不具合が生じ難くなる。
【0040】
また、実施形態1に係る半導体装置100は、キャリア誘引トレンチ161内において、第1トレンチ内電極163と離隔した状態で配置された第2トレンチ内電極164を備え、第2トレンチ内電極164は、ドレイン電極140と接続されており、第1トレンチ内電極163は、電位がフローティングの状態である、という構成を有する。このような構成とすることにより、第2トレンチ内電極164がドレイン電極140と接続されていることから、ボディダイオードの逆回復動作において、ドレイン電極140がプラス電位となったときに第2トレンチ内電極164の電位がプラス電位となる。そして、第1トレンチ内電極163は、電位がフローティングの状態であるため、第2トレンチ内電極164がプラス電位になることによって第1トレンチ内電極163にマイナス電位を誘起することができる。従って、逆回復動作において、複雑な制御を行うことなく第1トレンチ内電極163の電位をマイナス電位とすることができる。
【0041】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、第2トレンチ内電極164は、ドレイン電極140と接続されているため、第2トレンチ内電極164とソース電極130との間の第3絶縁領域166をコンデンサ(の一部)とし、第2トレンチ内電極164自身の内部抵抗を抵抗とするスナバ回路を半導体装置内に形成することができる。従って、スナバ回路を内蔵する半導体装置でありながら小型化された半導体装置となる。
【0042】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、第2トレンチ内電極164とキャリア誘引トレンチ161の側壁との間の第3絶縁領域166の厚さを調整することにより静電容量C
DS1及び内部抵抗R(
図4参照)を調整することができるため、電気機器に応じたスナバ容量及びスナバ抵抗に調整することができ、様々な電気機器によりフレキシブルに適用可能なスナバ回路内蔵の半導体装置となる。
【0043】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、隣接するキャリア誘引トレンチ161同士の間の間隔は、ベース領域113から注入されるキャリアの拡散長よりも狭いため、第1トレンチ内電極163が形成されている深さ領域においてセル領域におけるほぼ全域にホールを誘引する電場を形成することができ、逆回復動作において、ドリフト層112の当該深さ領域に残存するホールの多くを第1トレンチ内電極163に誘引することができる。
【0044】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、第1絶縁領域の厚さD1が第3絶縁領域の厚さD3よりも薄いため、第1トレンチ内電極163の電位によってドリフト層112の電場に影響を与え易くなり、その結果、第1トレンチ内電極163に向かってホールを引き付けやすくなる。また、第2絶縁領域の厚さD2が第3絶縁領域の厚さD3よりも薄いため、第2トレンチ内電極164がプラス電位となったときに、比較的薄い第2絶縁領域の厚さD2を介して第1トレンチ内電極163にマイナス電位を誘起することができる。また、第3絶縁領域の厚さD3が比較的厚い絶縁膜で構成されているため、ソース電極130とドレイン電極140との間の耐圧を確保することができる。
【0045】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、キャリア誘引トレンチ161は、複数のゲートトレンチ151の所定本数おきに配置されているため、逆回復動作においてドリフト層112におけるゲートトレンチ151の下方やゲートトレンチ151同士の間の領域などのホールが残存しやすい領域にホールを誘引する電場を形成することができ、効率的にホールを第1トレンチ内電極163に引き寄せることができる。このため、逆回復時間をより確実に短くすることができる。また、キャリア誘引トレンチ161が複数のゲートトレンチ151の所定本数おきに配置されているため、ゲートとして動作しない領域を減らすことができ、より大電流を流すことが可能な半導体装置となる。
【0046】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、第2絶縁領域の厚さD2は、ゲート絶縁膜の厚さD4と同じか薄いため、逆回復動作において、第2トレンチ内電極164がプラス電位となったときに、第1トレンチ内電極163にマイナス電位を誘起しやすくなる。
【0047】
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係る半導体装置102を示す図である。
実施形態2に係る半導体装置102は、基本的には実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するが、第2トレンチ内電極と離隔した位置にゲート電極が形成されている点で実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係る半導体装置102は、第2トレンチ内電極164の上方に形成された第4絶縁領域167と、キャリア誘引トレンチ161の側壁の表面に配置された第2ゲート絶縁膜168と、キャリア誘引トレンチ161内において、第2トレンチ内電極164とは第4絶縁領域167を介して離隔してなり、かつ、第2ゲート絶縁膜168を介してベース領域113と対向する位置に配置された第2ゲート電極169とを備える。
【0048】
第2ゲート電極169及び第2ゲート絶縁膜168は、ゲートトレンチ構造150におけるゲート電極153及びゲート絶縁膜152と同様の構成を有し、第2ゲート電極169にゲート電圧を印加することによって半導体装置102のオンオフをすることができる。第4絶縁領域167は、ゲート絶縁膜152及び第2ゲート絶縁膜168よりも厚くなるように構成されている。なお、実施形態1においては、キャリア誘引トレンチ161の周辺にはソース領域114が形成されていないが、実施形態2においては、キャリア誘引トレンチ161の周辺にもソース領域が形成されている。
【0049】
なお、
図6(a)のように、複数のゲートトレンチ構造の所定の本数おきにキャリア誘引トレンチ161を形成してもよいし、
図6(b)のように、全てのゲートトレンチをキャリア誘引トレンチ161としてもよい。
【0050】
このように、実施形態2に係る半導体装置102は、第2トレンチ内電極と離隔した位置にゲート電極が形成されている点で実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なるが、実施形態1に係る半導体装置100の場合と同様に、ベース領域113及びドリフト層112で構成されるボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作におけるドレイン電極140の電位の極性(プラス電位)とは逆の極性の電位(マイナス電位)となる電圧を第1トレンチ内電極163に印加する電圧印加手段としての第2トレンチ内電極164を備えるため、逆回復動作にホール(キャリア)が第1トレンチ内電極163に引き寄せられた状態となり、引き寄せられたホールが逆回復電流に寄与しなくなる。従って、逆回復時間を短くすることができる。
【0051】
また、実施形態2に係る半導体装置102によれば、キャリア誘引トレンチ161内において、ドレイン電位となる第2トレンチ内電極164とは第4絶縁領域167を介して離隔してなり、かつ、第2ゲート絶縁膜168を介してベース領域と対向する位置に配置された第2ゲート電極169を備えるため、ドレイン電極140と接続された第2トレンチ内電極164と、第2ゲート電極169とでシールドゲート構造のような構成とすることができる。従って、ゲート・ドレイン間容量が低減し、ゲート充電電流及びゲート放電電流が低減することからスイッチング速度を早くすることができる。また、電界集中が起こりやすいトレンチの角部から第2ゲート電極169までの距離を長くすることができ、かつ、絶縁領域で電解を緩和することができるため、耐圧を高くすることができる。
【0052】
また、実施形態2に係る半導体装置102によれば、キャリア誘引トレンチ161内において、ドレイン電位となる第2トレンチ内電極164とは第4絶縁領域167を介して離隔してなり、かつ、第2ゲート絶縁膜168を介してベース領域と対向する位置に配置された第2ゲート電極169を備えるため、キャリア誘引トレンチ161においてもゲートとして動作することができ、より大電流を流すことが可能な半導体装置となる。
【0053】
なお、実施形態2に係る半導体装置102は、第2トレンチ内電極と離隔した位置にゲート電極が形成されている点以外の点においては実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するため、実施形態1に係る半導体装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0054】
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係る半導体装置200を示す図である。実施形態3に係る半導体装置200は、基本的には実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するが、キャリア誘引トレンチ構造が形成されておらず、第1トレンチ内電極としてゲート電極を用いる点で実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係る半導体装置200においては、ゲートトレンチ構造(ゲートトレンチ251、ゲート絶縁膜252及びゲート電極253)が所定の間隔で形成された構成となっており(
図7(a)及び
図7(b)参照)、逆回復動作においては、ゲート電極253がマイナス電位となってキャリアを誘引する構成を有する。なお、実施形態3においては、キャリア誘引トレンチ構造の他に、ドレインフィンガーDF及びドレインパッドDPが形成されていない。
【0055】
ゲート電極253は、ゲートトレンチ251の側壁に形成されたゲート絶縁膜252を介してベース領域213と対向する位置に配置されているとともにゲートトレンチ251の底及び側壁の下部(ドリフト層212と接する部分)に形成された第1絶縁領域としての絶縁膜254を介してドリフト層212と対向する位置に配置されている。このため、逆回復動作において、ゲート電極253がマイナス電位となったときには、トレンチ251の底などにキャリアが誘引され、キャリアだまりが形成される。
【0056】
実施形態3においては、ドレイン電極240とゲート電極253との間に接続された電圧印加手段としてのフィードバック回路270を有する(
図7(c)参照)。フィードバック回路270は、ゲート電極253、ドレイン電極240及び駆動用電源Vccと電気的に接続されており、ボディダイオードに順方向電流が流れている期間においてボディダイオードの逆回復動作に移行する前の所定の期間(
図8における時刻t1~t3)、ドレイン電極240の電位をゲート電極253にフィードバックする。フィードバック回路270は、半導体装置に内蔵してもよいし、外付けしてもよい。
【0057】
次に、逆回復動作におけるフィードバック回路270の動作について具体的に説明する。
図8は、実施形態3に係る半導体装置200におけるドレイン電圧V
DS、ボディダイオード電流i
F及びゲート電圧V
GSを示す模式的なグラフである。
【0058】
図8のドレイン電圧V
DSのグラフで示すように、半導体装置200がダイオード動作をしている場合に、時刻t0~時刻t3においては、ソース電極230の電位がプラス、ドレイン電極240の電位がマイナスの順バイアスとなっている。そして時刻t2からドレイン電位が大きくなりはじめ、時刻t3以降になるとソース電極の電位がマイナス、ドレイン電極の電位がプラスの逆バイアスとなっている。
【0059】
これに伴って、
図8のボディダイオード電流i
Fのグラフで示すように、時刻t0~時刻t2までは、ボディダイオード電流i
Fがプラス、すなわち、ベース領域からドリフト層に向かって一定量流れているが、時刻t2以降に減少をはじめ、時刻t3を超えると、ボディダイオード電流i
Fがマイナス、すなわち、ドリフト層212からベース領域に向かって逆回復電流が流れ始める。逆回復電流が所定の時間まで増加するが、一定時間(時間ta)経過すると、逆回復電流が減少に転ずる。そして、時刻t4を過ぎると逆回復電流がかなり少なくなる。
【0060】
そして、
図8のゲート電圧V
GSのグラフで示すように、半導体装置200がダイオード動作をしている場合にはゲートがオフになっているため、時刻t0~時刻t1までは、ゲート電圧V
GSは0である。そして、逆回復動作が始まる前の所定時間(時刻t1~時刻t2)において、フィードバック回路270によって、ゲート電極253とドレイン電極240とを接続する。時刻t1~時刻t2においては、ドレイン電位はマイナスであるため、ゲート電極253もマイナス電位となり、ゲート電圧V
GSもマイナスとなる。そして、時刻t2~時刻t3の間にフィードバック回路270によって、ゲート電極253とドレイン電極240とを切断する。この時、ゲート電極253はどことも接続されていない状態となっているため、マイナス電位が維持される。ゲート電極253はMOS動作になるまでオンされないため、このままマイナス電位が維持される。
【0061】
次に、実施形態3に係る半導体装置200が、ダイオード動作をしているときの時刻t0~時刻t4におけるキャリアのふるまいについて説明する。
図9は、実施形態3に係る半導体装置200におけるキャリアの様子を示す図である。
(1)時刻t0~t1
時刻t0~時刻t1においては、ドレイン電極240にマイナス電位、ソース電極230にプラス電位となる電圧が印加されており、ベース領域213とドリフト層212とで構成されるボディダイオードは順バイアスとなる。このとき、ベース領域213からドリフト層212に向かって順方向電流が流れることとなる。従って、ベース領域213からドリフト層212に向かってキャリア(ホール)が注入されることになる(
図9(a)参照)。
【0062】
(2)時刻t1~t2
図8に示すように、時刻t3においては、ドレイン電圧V
DSがプラスになり、ボディダイオード電流i
Fがマイナスになり、逆回復動作が始まる。実施形態3に係る半導体装置200においては、逆回復動作に移行する前の所定時間(時刻t1~t3)において、フィードバック回路270は、ゲート電極253とドレイン電極240とを接続して、ゲート電極253にドレイン電極240の電位をフィードバックする。時刻t1~時刻t2においてドレイン電極240はマイナス電位であるため(
図8参照)、ゲート電極253の電位はマイナス電位となる(
図9(b)参照)。従って、ゲート電極253の電位がマイナス電位となることによってドリフト層112に電場が形成され、ゲート電極253にホールが引き寄せられることとなる。なお、この間においても順バイアスとなっているのでベース領域213からドリフト層212へのホールの注入は続いている。
【0063】
(3)時刻t2~時刻t3
時刻t2になると、ドレイン電極240にプラス電位が印加され、ボディダイオードに逆バイアスとなる電圧が印加され始める。逆回復動作が始まる時刻t3になるとドレイン電極240にプラス電位になってしまうため、フィードバック回路270は、時刻t3の前(時刻t2よりも前又は時刻t2~t3の間)にゲート電極253とドレイン電極240との接続を切断し、ゲート電極253の電位をマイナス電位のまま保った状態とする(
図8及び
図9(c)参照)。これにより、ゲート電極253にホールを引き寄せた状態を維持することができる。
【0064】
(4)時刻t3~t4
時刻t3になると、順方向電流が消失し、逆回復動作となる(
図8参照)。ゲート電極253の電位はマイナス電位のままなのでゲート電極253に引き寄せられたホールはゲート電極253に引き寄せられたままであり、逆回復電流に寄与しない。このため、ドリフト層212のホールがベース領域213に到達しなくなるため、逆回復時間を短くすることができる。また、ドレイン電圧V
DSがプラスに転じているが、ドレイン電極240とゲート電極253との接続を切断しているため、ゲート電極253の電位をマイナス電位のまま保った状態となっている。
【0065】
このように、実施形態3に係る半導体装置200は、キャリア誘引トレンチ構造が形成されておらず、第1トレンチ内電極としてゲート電極を用いる点で実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なるが、実施形態1に係る半導体装置100の場合と同様に、ベース領域213及びドリフト層212で構成されるボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作におけるドレイン電極240の電位の極性(プラス電位)とは逆の極性の電位(マイナス電位)となる電圧をゲート電極253に印加する電圧印加手段としてのフィードバック回路270を備えるため、逆回復動作にホール(キャリア)がゲート電極253に引き寄せられてベース領域213に到達しなくなり、引き寄せられたホールが逆回復電流に寄与しなくなる。従って、逆回復時間を短くすることができる。
【0066】
また、実施形態3に係る半導体装置200によれば、電圧印加手段は、ゲート電極253及びドレイン電極240とそれぞれ接続され、ボディダイオードに順方向電流が流れている期間におけるボディダイオードの逆回復動作に移行する前の所定の期間(
図9における時刻t1~時刻t2)、ドレイン電極240とゲート電極253とを接続し、ボディダイオードの逆回復動作においては、ドレイン電極240とゲート電極253との間の接続を切断するフィードバック回路であるため、半導体基体内の構成を変更することなく、フィードバック回路270の構成を付加するだけで容易に逆回復時間を短くすることができる。
【0067】
また、実施形態3に係る半導体装置200によれば、ドレインパッドDP及びドレインフィンガーDFを形成する必要がないため、小型化された半導体装置となる。また、半導体装置内にゲート動作を行わないホール誘引トレンチ構造を形成する必要がないため、有効領域を広くすることができる。
【0068】
なお、実施形態3に係る半導体装置200は、キャリア誘引トレンチ構造が形成されておらず、第1トレンチ内電極としてゲート電極を用いる点以外の点においては実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するため、実施形態1に係る半導体装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0069】
[変形例1]
変形例1に係る半導体装置300は、基本的には実施形態3に係る半導体装置200と同様の構成を有するが、フィードバック回路270の代わりに外部電源370を用いる点で実施形態3に係る半導体装置200の場合とは異なる(
図10参照)。外部電源370は、ゲート電極Gと電気的に接続されており、ボディダイオードに順方向電流が流れている期間においてボディダイオードの逆回復動作に移行する前の所定の期間、ゲート電極Gにマイナス電位となる電圧を印加する。逆回復動作においては、実施形態3と同様にゲート電極をフローティングの状態としてもよいし、マイナス電位となる電圧を印加し続けてもよい。
【0070】
このように、変形例1に係る半導体装置300は、フィードバック回路270の代わりに外部電源370を用いる点で実施形態3に係る半導体装置200の場合とは異なるが、実施形態3に係る半導体装置200の場合と同様に、ベース領域及びドリフト層で構成されるボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作におけるドレイン電極の電位の極性(プラス電位)とは逆の極性の電位(マイナス電位)となる電圧をゲート電極に印加する電圧印加手段としての外部電源370を備えるため、逆回復動作にホール(キャリア)がゲート電極に引き寄せられてベース領域に到達しなくなり、引き寄せられたホールが逆回復電流に寄与しなくなる。従って、逆回復時間を短くすることができる。
【0071】
[実施形態4]
図11は、実施形態4に係る半導体装置202を示す図である。実施形態4に係る半導体装置202は、基本的には実施形態3に係る半導体装置200と同様の構成を有するが、ゲート構造としてシールドゲート構造を用い、第1トレンチ内電極としてシールド電極を用いる点で実施形態3に係る半導体装置200の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係る半導体装置200においては、シールドゲート構造(トレンチ261、第1絶縁領域262、第1トレンチ内電極としてのシールド電極263、ゲート電極264、第2絶縁領域265、ゲート絶縁膜266)が所定の間隔で形成された構成となっており、逆回復動作においては、シールド電極263がマイナス電位となってキャリアを誘引する構成を有する(
図11参照)。
【0072】
第1絶縁領域262は、トレンチ261の底及び下側の側壁の表面に形成されている。
第1トレンチ内電極としてのシールド電極263は、トレンチ261内に第1絶縁領域262を介してドリフト層212と対向する位置に配置されている。
ゲート電極264は、トレンチ261内にシールド電極263と離隔した状態でシールド電極263の上方に第2絶縁領域265を介して配置されている。
第2絶縁領域265は、シールド電極263とゲート電極264との間に配置され、ゲート電極264をシールド電極263から離隔してなる。
ゲート絶縁膜266は、トレンチ261の側壁の表面に配置され、ゲート電極264をトレンチ261の側壁から離隔してなる。
【0073】
実施形態4において、電圧印加手段272は、電源Vcc、ソース電極230及びシールド電極263と接続されており、MOS動作、及び、ダイオード動作時における順方向に電流が流れる期間においては、シールド電極263とソース電極230とを接続することで、シールド電極263の電位をソース電位(例えば0V)とする。一方、ダイオード動作時における逆回復動作においては、シールド電極263と電源Vccとを接続し、シールド電極263にマイナス電位となる電圧を印加する。電圧印加手段272は、例えば、電源Vccを含む切り替え回路である。
【0074】
従って、実施形態4に係る半導体装置202は、MOS動作をしている際には、シールド電極263はソース電極230と接続され、シールド電極として作用する。一方、ダイオード動作をしている場合において、逆回復動作においては、電圧印加手段からマイナス電位となる電圧を印加される。そして、電圧印加手段は、ボディダイオードの逆回復動作以外の場合においては、半導体装置内の空乏層を延伸する電位(ソース電極と同じ電位)となる電圧をシールド電極263に印加する。なお、「ソース電極と同じ電位」とは、ソース電極と全く同じ電位のみならず、多少の幅をもったソース電位とほぼ同じ電位を含むものとする。
【0075】
このように、実施形態4に係る半導体装置202は、ゲート構造としてシールドゲート構造を用い、第1トレンチ内電極としてシールド電極を用いる点で実施形態3に係る半導体装置200の場合とは異なるが、実施形態3に係る半導体装置200の場合と同様に、ベース領域213及びドリフト層212で構成されるボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作におけるドレイン電極240の電位の極性(プラス電位)とは逆の極性の電位(マイナス電位)となる電圧をゲート電極に印加する電圧印加手段272を備えるため、逆回復動作にホール(キャリア)がゲート電極に引き寄せられてベース領域213に到達しなくなり、引き寄せられたホールが逆回復電流に寄与しなくなる。従って、逆回復時間を短くすることができる。
【0076】
また、実施形態4に係る半導体装置202によれば、電圧印加手段は、ボディダイオードの逆回復動作以外の場合においては、半導体装置内の空乏層を延伸する電位(ソース電極と同じ電位)となる電圧をシールド電極263に印加するため、MOS動作においては、シールド電極として作用し、ゲート電極264とトレンチ261の角部との間に距離が長くなり、絶縁領域の厚みも厚くなるため、耐圧を高くすることができる。
【0077】
また、実施形態4に係る半導体装置202によれば、トレンチ261内にシールド電極263と離隔した状態で配置されたゲート電極264と、シールド電極263とゲート電極264との間に配置され、ゲート電極264をシールド電極263から離隔してなる第2絶縁領域265と、トレンチ261の側壁の表面に配置され、ゲート電極264をトレンチ261の側壁から離隔してなるゲート絶縁膜266と備えるため、MOS動作をするときにはシールドゲート構造を有する半導体装置とすることができる。
【0078】
なお、実施形態4に係る半導体装置202は、ゲート構造としてシールドゲート構造を用い、第1トレンチ内電極としてシールド電極を用いる点以外の点においては実施形態3に係る半導体装置200と同様の構成を有するため、実施形態3に係る半導体装置200が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0079】
[変形例2]
変形例2に係る半導体装置204は、基本的には実施形態4に係る半導体装置202と同様の構成を有するが、シールドゲート構造の構成が実施形態4に係る半導体装置202の場合とは異なる(
図12参照)。すなわち、変形例2に係る半導体装置204におけるシールドゲート構造は、トレンチ261の上部の側壁にゲート絶縁膜266を介して形成されたゲート電極264と、トレンチ261の中央部にゲート電極264と離間した状態で形成されたシールド電極263と、トレンチ261内において、ゲート電極264とシールド電極263との間に拡がりゲート電極264からシールド電極263を離間させるとともに、トレンチ261の側壁及び底に沿って拡がりトレンチ261の側壁及び底からシールド電極173を離隔させる絶縁領域262とを有する。
【0080】
このように、変形例2に係る半導体装置204は、シールドゲート構造の構成が実施形態4に係る半導体装置202の場合とは異なるが、実施形態3に係る半導体装置200の場合と同様に、ベース領域213及びドリフト層212で構成されるボディダイオードの逆回復動作において、ボディダイオードの逆回復動作におけるドレイン電極240の電位の極性(プラス電位)とは逆の極性の電位(マイナス電位)となる電圧をゲート電極264に印加する電圧印加手段を備えるため、逆回復動作にホール(キャリア)がゲート電極264に引き寄せられてベース領域213に到達しなくなり、引き寄せられたホールが逆回復電流に寄与しなくなる。従って、逆回復時間を短くすることができる。
【0081】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。また、実施形態、変形例に記載された特徴を組み合わせることも可能である。
【0082】
(1)上記各実施形態(各変形例も含む。以下同じ。)において記載した形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。また、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0083】
(2)上記各実施形態においては、トレンチゲート型の半導体装置に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではない。プレーナーゲート型の半導体装置に本発明を適用してもよい(変形例3に係る半導体装置104、
図13参照)。
【0084】
(3)上記実施形態3においては、複数のゲート電極のすべてを、ボディダイオードに順方向電流が流れている期間におけるボディダイオードの逆回復動作に移行する前の所定の期間(
図8における時刻t1~時刻t2)、マイナス電位としたが、本発明はこれに限定されるものではない。複数のゲート電極のうちの一部のゲート電極(
図14の第1トレンチ内電極としてのゲート電極283)のみをフィードバック回路270と接続するようにしてもよい(変形例4に係る半導体装置206、
図14参照)。フィードバック回路270と接続した電極は、ゲートとしての動作を行うこととしてもよいし、ゲートとしての動作を行わないものであってもよい。
【0085】
(4)上記実施形態1及び2においては、周辺領域において、第2トレンチ内電極をドレインフィンガーDFと接続したが、本発明はこれに限定されるものではない。第2トレンチ内電極を、半導体基体の側面部分やチャネルストッパ電極を介してドレイン電極140と接続してもよい(図示せず)。
【0086】
(5)上記実施形態1及び2においては、第2トレンチ内電極をドレイン電位とするためにドレインパッド及びドレインフィンガーを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2トレンチ内電極をドレイン電位とする構成であれば適宜のもの(例えば、外部の配線を介してドレイン電極と第2トレンチ内電極とを接続する、ドレイン電極となる半導体基体の側面や底面と接続する等)を用いることができ、ドレインパッド及びドレインフィンガーを用いなくてもよい。
【0087】
(6)上記実施形態1においては、第1トレンチ内電極を第2トレンチ内電極の下部に配置したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、トレンチ中央に配置した第2トレンチ内電極の下側の側部に第2絶縁領域を介して第1トレンチ内電極を配置してもよい。
【0088】
(7)上記実施形態2においては、上から、ゲート電極、第2トレンチ内電極及び第1トレンチ内電極の順に配置したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2トレンチ内電極の上側側部に第4絶縁領域を介してゲート電極を配置してもよいし、トレンチ中央に配置した第2トレンチ内電極の下側の側部に第2絶縁領域を介して第1トレンチ内電極を配置してもよい。
【0089】
(8)上記実施形態1及び3においては、通常のゲートトレンチ構造を用いる代わりにシールドゲート構造を用いてもよい。
【0090】
(9)上記各実施形においては、半導体装置としてMOSFETを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。半導体装置として、IGBT、サイリスタ、トライアック、ダイオード等適宜の半導体装置に用いてもよい。
【符号の説明】
【0091】
100,102,104,106,108,200,202,300,900…半導体装置、110,910…半導体基体、111,211…低抵抗半導体層、112,212…ドリフト層、113,213…ベース領域、114,214…ソース領域、120,220…層間絶縁膜、130,230…ソース電極、140,240…ドレイン電極、150,250…ゲートトレンチ構造、151,251…ゲートトレンチ、152,252…ゲート絶縁膜、153,253…ゲート電極、160…キャリア誘引トレンチ構造、161,261…キャリア誘引トレンチ、162,262…第1絶縁領域、163,263…第1トレンチ内電極、164…第2トレンチ内電極、165…第2絶縁領域、166…第3絶縁領域、167…第4絶縁領域、168…第2ゲート絶縁膜、169…第2ゲート電極、254…絶縁膜、270…フィードバック回路、370…外部電源、272…電圧印加手段