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特開2023-159337多層光学フィルム及び薄い接着剤層を含む光学体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159337
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】多層光学フィルム及び薄い接着剤層を含む光学体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231024BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20231024BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023135945
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2019566767の分割
【原出願日】2018-06-05
(31)【優先権主張番号】62/515,407
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】エッカート,カリッサ エル.
(72)【発明者】
【氏名】トイ,ミッシェル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,アダム ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マシュー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】エバーアーツ,アルバート アイ.
(72)【発明者】
【氏名】サンフォード,クイン ディー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】「オレンジピール」として知られる不均一性欠陥の発生及び重篤度の低減を示す光学体。
【解決手段】複屈折多層光学フィルム110と、前記複屈折多層光学フィルムの第1主表面上に配置されている連続接着剤層120と、前記連続接着剤層を介して前記多層光学フィルムに取り付けられているガラス又はプラスチック基材層130と、を含む、光学体100であって、前記連続接着剤層が、20マイクロメートル未満の厚さを有し、前記ガラス又はプラスチック基材層を通して干渉計で測定された前記光学体が、40nm未満のRa表面粗さを有する、光学体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折多層光学フィルムと、
前記複屈折多層光学フィルムの第1主表面上に配置されている連続接着剤層と、
前記連続接着剤層上に配置されているポリマーライナーと、
を含む、光学体であって、
前記連続接着剤層が、20マイクロメートル未満の厚さを有し、10~50,000cpsの粘度を有する溶液から由来する接着剤を含む、光学体。
【請求項2】
前記複屈折多層光学フィルム上の前記第1主表面の反対側の第2主表面上に、ハードコート層を更に含む、請求項1に記載の光学体。
【請求項3】
前記複屈折多層光学フィルムが、35マイクロメートルより厚い、請求項1に記載の光学体。
【請求項4】
前記複屈折多層光学フィルムが、少なくとも2つの光学パケットを含み、前記少なくとも2つの光学パケットが、少なくとも80%重なり合う厚さ(複数)を有する、請求項1に記載の光学体。
【請求項5】
前記連続接着剤層の前記接着剤が、アクリレート接着剤を含む、請求項1に記載の光学体。
【請求項6】
複屈折多層光学フィルムと、
前記複屈折多層光学フィルムの第1主表面上に配置されている連続接着剤層と、
前記連続接着剤層を介して前記多層光学フィルムに取り付けられているガラス又はプラスチック基材層と、
を含む、光学体であって、
前記連続接着剤層が、20マイクロメートル未満の厚さを有し、
前記ガラス又はプラスチック基材層を通して干渉計で測定された前記光学体が、40nm未満のRa表面粗さを有する、光学体。
【請求項7】
前記複屈折多層光学フィルム上の前記第1主表面の反対側の第2主表面上に、ハードコート層を更に含む、請求項6に記載の光学体。
【請求項8】
光投影経路を有する投影エンジンと、
請求項6に記載の光学体と、
を含む、投影システムであって、
前記光投影経路が、前記光学体の通過又は前記光学体でのはね返りを含む、投影システム。
【請求項9】
光学的に滑らかな積層光学体を提供する方法であって、
20マイクロメートル未満の厚さを有する連続接着剤層でコーティングされており、前記連続接着剤層上に配置されているポリマーライナーを有する、複屈折多層光学フィルムを準備することと、
前記ポリマーライナーを除去することと、
前記複屈折多層光学フィルム及び前記連続接着剤層をガラス又はプラスチック基材層に取り付けて、光学的に滑らかな積層光学体を形成することと、
を含み、
前記ガラス又はプラスチック基材層を通して干渉計で測定された前記光学的に滑らかな積層光学体が、40nm未満のRa表面粗さを有する、方法。
【請求項10】
前記連続接着剤層を硬化する工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光学体は、少なくとも1つの光学フィルム又は他の光学構成要素を含む。多層光学フィルムは、反射体又は反射型偏光子のいずれかとして有用であり、複屈折ポリマーを含む共延伸した層を交互に含むことが多い。接着剤により、フィルム、光学構成要素、及び基材を含む他の構成要素への特定の構成要素の接着が可能になる。
【発明の概要】
【0002】
一態様では、本明細書は光学体に関する。特に、本明細書は、複屈折多層光学フィルムと、複屈折多層光学フィルムの第1主表面上に配置されている連続接着剤層と、連続接着剤層上に配置されているポリマーライナーと、を含む、光学体に関する。連続接着剤層は、20マイクロメートル未満の厚さを有し、10~50,000cpsの粘度を有する溶液から由来する接着剤を含む。
【0003】
別の態様では、本明細書は光学体に関する。特に、本明細書は、複屈折多層光学フィルムと、複屈折多層光学フィルムの第1主表面上に配置されている連続接着剤層と、連続接着剤層を介して多層光学フィルムに取り付けられているガラス又はプラスチック基材層と、を含む、光学体に関する。ガラス又はプラスチック基材層を通して干渉計で測定された光学体は、40nm未満のRa表面粗さを有する。
【0004】
更に別の態様では、本明細書は、光学的に滑らかな積層光学体を提供する方法に関する。特に、本明細書は、20マイクロメートル未満の厚さを有する連続接着剤層でコーティングされており、連続接着剤層上に配置されているポリマーライナーを有する、複屈折多層光学フィルムを準備することにより、ポリマーライナーを除去することにより、並びに複屈折多層光学フィルム及び連続接着剤層をガラス又はプラスチック基材層に取り付けて、光学的に滑らかな積層光学体を形成することにより、光学的に滑らかな積層光学体を提供することに関する。ガラス又はプラスチック基材層を通して干渉計で測定された光学的に滑らかな積層光学体は、40nm未満のRa表面粗さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】光学体の概略立面図である。
図2】別の光学体の概略立面図である。
図3】特定の光学体の表面粗さの測定を示す概略図である。
図4】実施例1及び比較例3の光学的平滑度を比較するボックスプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
光学体は、多くの用途において有用であり得る。例えば、ガラス又はプラスチックなどの剛性基材層を含む光学体は、投影システム(例えば、偏光ビームスプリッタとして又はヘッドアップディスプレイシステムにおいて)、仮想現実システム、又は基材の剛性若しくは環境安定性が用途に有益であり得る他の用途において使用することができる。
【0007】
残念なことに、「オレンジピール」と記載され得る不均一な欠陥を導入することなく光学体を基材層に積層することは、以前は困難であった。積層光学体を通した反射又は透過のいずれかによって、オレンジピールが観察され得る。感応性光学用途の場合、そのようなオレンジピールの不均一性は、光学体がその一部である光学系において望ましくない光学アーチファクトを生成する場合がある。例えば、光学体のオレンジピールは、そのような光学体で反射された投影像を波状又は不均一に見せることがある。更に、従来のウェブ及びロール取り扱いの最良の手法をこの上なく遵守してさえも、オレンジピールを排除するか、又は更には実質的に低減するのに有効ではない。
【0008】
本明細書に記載の光学体は、基材層に積層された場合に、驚くべきことにオレンジピールを低減する特徴を含む。慎重な取り扱いではなく、これらの特徴は、光学体構造における物理的な違いであり、これにより、完成した積層構造において、より滑らかな積層及び低減されたオレンジピールをもたらす。
【0009】
図1は、光学体の概略立面図である。光学体100は、複屈折多層光学フィルム110、連続接着剤層120、ポリマーライナー130、及びハードコート層140を含む。
【0010】
複屈折多層光学フィルム110は、少なくとも2つの異なる材料のミクロ層を交互に含む。多層光学フィルム、すなわち、少なくとも部分的には、異なる屈折率のミクロ層の配置によって、望ましい透過特性及び/又は反射特性をもたらすフィルムが知られている。真空チャンバの中で、一連の無機質材料を光学的に薄い層(「ミクロ層」)として基材に堆積させることによって、このような多層光学フィルムを作ることが知られている。無機質多層光学フィルムは、例えばH.A Macleodによる、Thin-Film Optical Filters、第2版、Macmillan Publishing Co.(1986)、及び、A.Thelanによる、Design of Optical Interference Filters、McGraw-Hill Inc.(1989)によるテキストに記載されている。
【0011】
多層光学フィルムは、交互ポリマー層を共押し出しすることによっても実証された。例えば、米国特許第3,610,729号(Rogers)、同第4,446,305号(Rogersら)、同第4,540,623号(Imら)、同第5,448,404号(Schrenkら)、及び同第5,882,774号(Jonzaら)を参照のこと。これらのポリマー多層光学フィルムにおいて、個々の層の構成において、ほとんど又は専ら、ポリマー材料が使用される。そのようなフィルムは、大量生産工程と適合し、大きなシート及びロール品で作製することができる。
【0012】
多層光学フィルムは、一部の光が隣接ミクロ層の間の境界面で反射するように、異なる屈折率特性を有する、個別のミクロ層を含む。ミクロ層は、複数の境界面で反射された光が、建設的又は破壊的干渉を受けて多層光学フィルムに所望の反射又は透過特性を提供できるほど薄い。紫外線、可視、又は近赤外線波長の光を反射するように設計された多層光学フィルムでは、各ミクロ層は、一般に約1μm未満の光学的厚さ(物理的厚さに屈折率を乗じたもの)を有する。一般的に、層は、最も薄いものから最も厚いものへと配置され得る。いくつかの実施形態において、交互に配置された光学層は、層数の関数として実質的に直線的に変化し得る。これらの層プロファイルは、直線層プロファイルと呼ばれることがある。多層光学フィルムの外側表面にあるスキン層、又は、多層光学フィルム内に配置され、ミクロ層の可干渉性の群(本明細書においては「パケット」と呼ぶ)を分離する保護境界層(PBL)等の、より厚い層を含めることもできる。いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルム110は、少なくとも2つのパケットを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルムの2つのパケットは、少なくとも80%重なり合う厚さ(複数)を有する。場合によっては、保護境界層は、多層光学フィルムの交互層のうちの少なくとも1つと同じ材料であってもよい。他の場合では、保護境界層は、物理的特性又はレオロジー特性のために選択される、異なる材料であってよい。保護境界層は、光学パケットの片側又は両側にあってもよい。単一パケットの多層光学フィルムの場合、保護境界層は、多層光学フィルムの外側表面の一方又は両方にあってもよい。
【0013】
スキン層が加えられることがあり、これはフィードブロックの後だが溶融物がフィルムダイを出る前に起こる。この多層溶融物は次に、ポリエステルフィルムに関する従来の様式でフィルムダイを通して冷却ロール上に流延され、急冷される。その後、例えば、米国特許出願公開第2007/047080(A1)号、米国特許出願公開第2011/0102891(A1)号、及び米国特許第7,104,776号(Merrillら)に記載されているように、光学層のうちの少なくとも1つにおいて複屈折性が得られるようにキャストウェブが異なる方法で延伸されて、多くの場合、反射型偏光子又はミラーフィルムのいずれかが生成される。複屈折性を有するフィルムは複屈折多層光学フィルムと呼ばれることもある。
【0014】
複屈折多層光学フィルム110は、任意の好適な反射特性を有し得る。例えば、複屈折多層光学フィルム110は、第2の直交偏光の光を優先的に透過しながら、1つの偏光の光を優先的に反射する反射型偏光子であってもよい。いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルムは、四分の一波長リターダを含むか、又はそれに取り付けられて、円形反射型偏光子を効果的に形成し得る。四分の一波長リターダは、いくつかの実施形態では、550nmの光について137.5nmの50nm以内の光に対する遅延を有し得る。いくつかの実施形態では、四分の一波長リターダは複屈折延伸ポリマーフィルムであってもよく、又は複屈折延伸ポリマーフィルムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、四分の一波長リターダは液晶層であってもよく、又は液晶層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、四分の一波長リターダは、延長波長範囲にわたってアクロマティック(achromatic)であってもよく、すなわち、四分の一波長リターダは、その延長波長範囲にわたっておよそ四分の一波長遅延をもたらし得る。いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルム110は、各直交偏光の光を反射する鏡であってもよい。いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルム110は、垂直入射で無偏光の40%を反射し、垂直入射で無偏光の50%を反射し、垂直入射で無偏光の反射60%を反射し、垂直入射で無偏光の70%を反射し、垂直入射で無偏光の80%を反射し、垂直入射で無偏光の90%を反射し、又は更には垂直入射で無偏光の95%超を反射する。
【0015】
いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルムは厚い。いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルムは、35マイクロメートルよりも厚い。いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルムは、50マイクロメートルよりも厚い。いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルムは、60マイクロメートルよりも厚い。複屈折多層光学フィルムは、用途に応じて、任意の好適な形状又はサイズであり得る。一般に、積層製品中の複屈折多層光学フィルムは、実質的に矩形であり、フィルムのロールから加工される。場合によっては、複屈折多層光学フィルムの厚さは、オレンジピールの外観及び発生を改善し得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルムは、吸収素子を含む。いくつかの実施形態では、これらの吸収素子は、吸収偏光素子である。いくつかの実施形態では、これらの吸収素子は、光の直交偏光の両方を吸収する広帯域吸収体である。いくつかの実施形態では、吸収偏光素子は複屈折多層光学フィルムの高屈折率層内にのみ配置され得る。吸収素子を含む例示的な偏光子は、米国特許出願公開第2016-0306086号(Haag et al.)及び米国特許第6,096,375号(Ouderkirk et al.)に記載されている。
【0017】
連続接着剤層120は、複屈折多層光学フィルム110の第1主表面上に配置される。連続接着剤層は、任意の好適な接着剤又は接着剤の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、連続接着剤層120は、光学的に透明な接着剤を含む。いくつかの実施形態では、連続接着剤層120は、アクリル系又はアクリレート系接着剤を含む。いくつかの実施形態では、連続接着剤層120は、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、又はシリコーン系の光学的に透明な接着剤を含む。いくつかの実施形態では、連続接着剤層120は、コーティング可能な接着剤を含む。コーティング可能な接着剤は、10~50,000cpsのコーティング粘度を有し得る。そのようなコーティング可能な接着剤は、従来使用されているよりもはるかに薄い厚さで接着剤を容易に適用することができるようにし(例えば、完成した接着剤層の光学フィルムへの乾式積層を使用する)、これはオレンジピールの低減に驚くほど強い効果を有する。しかしながら、接着剤は、連続層の適用を可能にするために、そのような厚さでコーティングされるか、又は他に適用されなければならない。いくつかの実施形態では、連続接着剤層は、20マイクロメートル未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、連続接着剤層は、15マイクロメートル未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、連続接着剤層は、10マイクロメートル未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、連続接着剤層は、5マイクロメートル未満の厚さを有する。特定の用途においては、本明細書に記載の光学体は、極端な環境条件にさらされる。例えば、特定の光学体は、構成要素が120℃の損傷温度を伴わずに存在し続けなければならないかもしれない、自動車用途で使用され得る。これらの用途では、高温による滲出、クリープ、又は他のその他の損傷を防止するための架橋接着剤の選択が望ましい場合がある。
【0018】
接着剤層は、完全に硬化した(すなわち架橋した)接着剤であってもよく、又は基材層に積層する前に部分的に架橋されてもよく、又は更には架橋されなくてもよい。一旦適用されると、接着剤層は、その後、単純な放射線処理(UV、電子ビーム、ガンマ線)、熱曝露(例えば、熱活性化架橋剤を使用する)、水分への曝露(例えば、シラン官能性架橋剤が使用される場合)、及びこれらの組み合わせなどによって架橋され得る。
【0019】
ポリマーライナー130は、任意の好適な厚さ及び組成であってもよい。ポリマーライナー130は、典型的には、貯蔵、輸送、及び加工中に接着剤層を保護するために、複屈折多層光学フィルム110に対向する連続接着剤層120の他方の側に一時的に取り付けられる。いくつかの実施形態では、ポリマーライナー130は、接着剤を有する側を容易に識別するために、濁りを帯びていてもよく、又は更には顔料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーライナーは、貯蔵及び輸送中を含む環境サイクル中の歪み又は弯曲を防止するために、ヒートセット又は予備収縮されていてもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーライナー130は、容易に除去できるように、低表面エネルギーを有してもよく、又は低表面エネルギー処理を含んでもよい。ポリマーライナー130に好適なフィルムとしては、配向ポリエチレンテレフタレートを挙げてもよい。いくつかの実施形態では、光学的に滑らかなポリマーライナーを使用して、加工中の光学的平滑度を維持することができる。
【0020】
ハードコート層140は、連続接着剤層及びポリマーライナーの反対側の複屈折多層光学フィルム上に設けられ、任意の好適な厚さ及び硬度を有する任意の好適なハードコート層であり得る。ハードコート層及びコーティングは、フィルム加工層において周知であり、好適なハードコート材料は、所望の用途、プロセス条件、及び他の特性に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、複屈折多層光学フィルムと組み合わせて測定されたハードコート層140は、2H以上の硬さの鉛筆硬度を有し得る。いくつかの実施形態では、ハードコート層140は、HB以上の硬さの鉛筆硬度を有し得る。いくつかの実施形態では、ハードコート層は、驚くべきことに、最終積層光学体上のオレンジピールの発生及び重篤度を改善する。いくつかの実施形態では、ハードコート層は、1つ以上の紫外線吸収剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の任意選択的な保護フィルム層が、ハードコート層上に配置されてもよい(図示せず)。そのような保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルを含むポリマー層であってもよい。
【0021】
図2は、別の光学体の概略立面図である。光学体200は、複屈折多層光学フィルム210、連続接着剤層220、ハードコート層240、及び基材層250を含む。図2の光学体200は、ポリマーライナーが除去され、光学体100の残りが基材層250に取り付けられているか、又は積層されていることを除いて、図1の光学体100に本質的に対応し得る。
【0022】
基材層250は、任意の好適な基材であってもよい。多くの用途において、基材層250は、プラスチック若しくはガラスであるか、又はそれらを含む。ポリカーボネート若しくはアクリルなどの任意の好適なプラスチック、又はソーダ石灰ガラス若しくはボロシリケートガラスなどの任意の好適なガラスを使用してもよい。いくつかの実施形態では、基材層250は、透明性(例えば、90%超の光透過率、及び5%未満のヘイズ)などの光学特性のために選択される。いくつかの実施形態では、基材層250は、耐歪み性、水分不透過性、剛性、耐破砕性、又は他のものなどの物理的特性のために選択される。基材層250の厚さは、特定の用途に依存するが、特定の場合では数ミリメートル~数センチメートルの厚さの範囲であり得る。
【0023】
図3は、特定の光学体の表面粗さの測定を示す概略図である。光学体300の表面粗さは、干渉計360によって測定される。ZYGO NEWVIEW 8000(Zygo Corporation,Middlefield,Conn.から入手可能)などの干渉計は、オレンジピールの主観的知覚に適度に良好に対応する客観的測定であることが見出された表面粗さを測定することができる。干渉計360及び光学体300は、干渉計360が基材層を通して光学体300の表面粗さを測定するように構成されている。
【0024】
本明細書の説明に従って作製された光学体は、40nm未満、30nm未満、20nm未満、又は更には10nm未満の表面粗さ(Ra)を有し得る。表面粗さの代替的な測定、例えば、ピーク対谷又は2乗平均平方根も使用してよい。許容可能なピーク対谷の表面粗さ値は、250nm未満、200nm未満、100nm未満、又は更には50nm未満であり得る。許容可能な2乗平均平方根表面粗さ値(root-mean-square surface roughness values)は、50nm未満、40nm未満、20nm未満、又は更には10nm未満であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような光学体は、特定の投影システムで有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような光学体は、光学体が発光型ディスプレイパネル又は液晶ディスプレイパネルの前面(観察者に向かって)上に配置されるミラーディスプレイシステムが有用であり得る。
【0026】
図中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。上述の実施形態は、本発明の様々な態様の説明を容易にするために詳細に記載されたものであるため、本発明は、上述の特定の実施例及び実施形態に限定されるものと見なされるべきではない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物によって定義される本発明の範囲内に含まれる様々な変形形態、同等のプロセス、及び代替的デバイスを含めた、本発明の全ての態様を包含するものと理解されるべきである。
【実施例0027】
以下の実施例は、従来的に形成された複屈折反射型偏光子(CE-1)と、鏡面反射型偏光子(実施例1)とを比較する。実施例は、従来の統合型吸収反射型偏光子(CE-2)と、鏡面吸収反射型偏光子とを更に比較する。各実施例についての光学的平滑度、環境安定性、及び光学特性に関する試験結果は以下のとおりである。
【0028】
材料/供給元
RF02Nは、SKC Haas(Shenzhen City,China)から入手可能な剥離ライナーである。
【0029】
RF32Nは、SKC Haas(Shenzhen City,China)から入手可能な剥離ライナーである。
【0030】
APF-V4及びAPF-T35は、3M Company,St.Paul,Minnから入手可能な反射型偏光子フィルムである。
【0031】
比較例(CE-1)
従来の表面を有する複屈折反射型偏光子を以下のように調製した。米国特許第6,088,159号の実施例に記載されているように、3つの多層光学フィルムパケットを共押出した。2つのポリマーが光学層に使用された。第1ポリマー(第1光学層)は、摂氏121~123度のTgを有するポリエチレンナフタレート(PEN)ホモポリマー(100mol%のエチレングリコールを伴う100mol%のナフタレンジカルボキシレート)であった。第2ポリマー(第2光学層)は、カルボキシレートとして55mol%のナフタレート及び45mol%のテレフタレート、並びにグリコールとして95.8mol%のエチレングリコール、4mol%のヘキサンジオール、及び0.2mol%のトリメチロールプロパンを有し、摂氏94度のTgを有する第1ポリエチレンナフタレートコポリマー(coPEN)であった。スキン層に使用されるポリマーは、カルボキシレートとして75mol%のナフタレート及び25mol%のテレフタレート、並びにグリコールとして95.8mol%のエチレングリコール、4mol%のヘキサンジオール、及び0.2mol%のトリメチロールプロパンを有し、摂氏101度のTgを有する第2oPENであった。これらのポリエステルは、例えば、米国特許第6,352,761号(Hebrink et al.)に記載されるように形成することができる。
【0032】
PEN及び第1coPENポリマーは、分離押出成形機から多層共押出フィードブロックまでフィードされ、そこでそれらは275の交互光学層のパケット、及び各側にcoPENのより厚い保護境界層を加えて全部で277層へと組み立てられた。フィードブロックから多層溶解物を3倍の層増幅器を通して運び、829層を有する構造がもたらされた。第2coPENのスキン層を、その目的に特化したマニホールドにおいて構造に追加し、831層を有する最終構造を得た。この多層溶融物は次に、ポリエステルフィルムに関する従来の方法で、フィルムダイを通してチルロール上にキャスティングし、急冷した。次に、商業規模のリニアテンター(linear tenter)において、米国特許出願公開第2007-0047080号(Stover et al)の実施例2に記載のものと同様の温度及び延伸プロファイルで、キャスティングされたウェブを延伸した。
【0033】
この多層フィルムの製造後、Ono-Sokki DG-925 Micrometer(Yokohama,Japan)を使用して測定した場合、フィルムは、静電容量計によって測定された結果として得られるおよそ92μmの物理的厚さを有した。
【0034】
延伸後、第1パケットは反射型偏光子機能のみを有した。フィルムを作製するプロセスにおいて、商標名「ULTRAMASK 1035」(Richmond,Va.)でTredegarにより製造された標準的なポリエチレン型プレマスクを使用して、フィルムを保護し、ジャンボロールに巻き付ける目的で反射型偏光子の表面に積層した。
【0035】
実施例1
反射型偏光子ミラーフィルムを以下のように調製した。2つの多層光学パケットを、以下の例外を除き、米国特許出願公開第2011-0102891号(Derks et al.)に記載されているように共押出した。第1及び第2パケットの第1光学層は、摂氏121~123度のTgを有するポリエチレンナフタレート(PEN)ホモポリマー(100mol%のエチレングリコールを伴う100mol%のナフタレンジカルボキシレート)のブレンドから構成された。第1及び第2パケットの第2光学ポリマー層は、屈折率が約1.57であり、一軸方向で実質的に等方性を維持するように、ポリカーボネートとコポリエステル(PC:coPET)とのブレンドであり、PC:coPETのモル比はおよそ42.5mol%のPC及び57.5mol%のcoPETであり、摂氏105度のTgを有する。スキン層に使用されたポリマーは、第2光学層に使用されたものと同じ材料から構成された。
【0036】
材料は、別々の押出成形機から、多層共押出フィードブロックへとフィードされ、そこでそれらは325交互光学層の第1パケット、及び325交互光学層の第2パケットへと組み立てられた。スキン層を、その目的に特化したマニホールドにおいて構造に追加し、656層を有する最終構造を得た。この多層溶融物は次に、ポリエステルフィルムに関する従来の方法で、フィルムダイを通してチルロール上にキャスティングし、急冷した。次に、商業規模のリニアテンターにおいて、米国特許出願公開第2007-0047080号(Stover et al)の実施例2に記載のものと同様の温度及び延伸プロファイルで、キャスティングされたウェブを延伸した。Ono-Sokki DG-925 Micrometerを使用して測定した場合、フィルムの物理的な厚さは、静電容量計によっておよそ63μmであると測定された。
【0037】
反射型偏光子ミラーフィルムを作製するプロセスにおいて、商標名NSA33TでSun A.Kaken(Tokyo,Japan)から入手可能な光学的に滑らかなプレマスクを、図4で測定及び表示されるフィルムを保護し、フィルムの光学的に滑らかな特性を維持する目的で、統合型偏光子の表面に適用した。
【0038】
CE-1又は実施例1のいずれかをロール形態に巻き付けた後、これらを、OCA-2と標識された3M OCAでコーティングされた接着剤で積層した。0.1部のビスアミド/100部の乾燥接着剤の代わりに0.15部のビスアミドを使用したという点を除けば、10部の添加剤Iと90部のPSA1(固体)を使用して、米国特許出願公開第2006-0246296号(Xia et al.)の実施例1に従って、このOCA-2材料を作製した。OCA-2及び剥離ライナー(SKC Haas,Shenzhen,Chinaから入手可能なRF02N)を、清潔な溶媒コーティングラインを介して適用した。これにより、統合型偏光子上に接着剤層を設けて、様々な用途で使用することができる。
【0039】
この積層を達成するために、OCA-2をまず、押出コーティング法を用いて、RF02N剥離ライナー上に2μm~30μmの(乾燥)厚さにコーティングした。その後、得られた接着剤コーティングを、溶媒の大部分がコーティングから除去されるまで110℃~160℃の範囲のオーブン温度で乾燥させた。次いで、フィルム(CE-1又は実施例1のいずれか)を、接着剤で剥離ライナー上に積層した。
【0040】
比較例2(CE-2)
従来の手段によって作製された統合型吸収-反射型偏光子を、以下のとおり調製した。単一の多層光学パケットを、以下の例外を除き、米国特許出願公開第2011-0102891号(Derks et al.)に記載されているように共押出した。第1光学層は、米国特許出願公開第2015-0378077号(Haag et al.)に記載のとおり、摂氏121~123度のTgを有するポリエチレンナフタレート(PEN)ホモポリマー(100mol%のエチレングリコールを伴う100mol%ナフタレンジカルボキシレート)、及び4つの異なる二色性の共押出可能な吸収染料(PD-325H、PD-335H、PD-104及びPD-318H、三井化学ファイン株式会社、東京、日本から入手可能)のブレンドから構成された。実施例1で使用された染料の重量パーセントは、以下:PD-325H=1.67wt%、PD-335H=0.21wt%、PD-104=0.67wt%、及びPD-318H=1.25wt%のとおりであった。第2ポリマー(第2光学層)は、屈折率が約1.60であり、一軸方向で実質的に等方性を維持するように、PETとPETGとのブレンドであって、重量比がおよそ45wt%のLmPEN及び55%のPETGであり、摂氏100度のTgを有するブレンドを用いて作製されたブレンドであった。「空気」側のスキン層に使用されたポリマーは、90/10coPEN、90%のポリエチレンナフタレート(PEN)及び10%のポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されるポリマーのブレンドから構成された。「ホイール」側のスキンに使用されたポリマーは、米国特許出願公開第2015-0378077号(Haag et al.)に記載のとおり、摂氏121~123度のTgを有するポリエチレンナフタレート(PEN)ホモポリマー(100mol%のエチレングリコールを伴う100mol%ナフタレンジカルボキシレート)、及び4つの異なる二色性の共押出可能な吸収染料(PD-325H、PD-335H、PD-104及びPD-318H、三井化学ファイン株式会社、東京、日本から入手可能)のブレンドから構成された。実施例1におけるホイール側のスキンに使用された染料の重量パーセントは、以下:PD-325H=0.93wt%、PD-335H=0.35wt%、PD-104=0.56wt%、及びPD-318H=0.41wt%のとおりであった。
【0041】
材料は、別々の押出成形機から、多層共押出フィードブロックへとフィードされ、そこでそれらは305交互光学層のパケットへと組み立てられた。第1光学層材料のスキン層を、その目的に特化したマニホールドにおいて構造に追加し、307層を有する最終構造を得た。この多層溶融物は次に、ポリエステルフィルムに関する従来の方法で、フィルムダイを通してチルロール上にキャスティングし、急冷した。次に、商業規模のリニアテンターにおいて、米国特許出願公開第2007-0047080(A1)号(Stover et al)の実施例2に記載のものと同様の温度及び延伸プロファイルで、キャスティングされたウェブを延伸した。Ono-Sokki DG-925 Micrometerを使用して測定した場合、フィルムの物理的な厚さは、静電容量計によっておよそ65μmであると測定された。
【0042】
実施例2
鏡面仕上げの実施例を有する統合型吸収-反射型偏光子を、以下のとおり調製した。2つの多層光学パケットを、以下の例外を除き、米国特許出願公開第2011-0102891号(Derks et al.)に記載されているように共押出した。第1パケットの第1光学層は、米国特許出願公開第2015-0378077号(Haag et al.)に記載のとおり、摂氏121~123度のTgを有するポリエチレンナフタレート(PEN)ホモポリマー(100mol%のエチレングリコールを伴う100mol%ナフタレンジカルボキシレート)、及び4つの異なる二色性の共押出可能な吸収染料(PD-325H、PD-335H、PD-104及びPD-318H、三井化学ファイン株式会社、東京、日本から入手可能)のブレンドから構成された。実施例1で使用された染料の重量パーセントは、以下:PD-325H=1.67wt%、PD-335H=0.21wt%、PD-104=0.67wt%、及びPD-318H=1.25wt%のとおりであった。第1パケットの第2光学ポリマー層は、屈折率が約1.57であり、一軸方向で実質的に等方性を維持するように、ポリカーボネートとコポリエステル(PC:coPET)とのブレンドであって、PC:coPETのモル比がおよそ42.5mol%のPC及び57.5mol%のcoPETであり、摂氏105℃のTgを有するブレンドを用いて作製されたブレンドであった。「空気」側のスキン層に使用されたポリマーは、90/10coPEN、90%のポリエチレンナフタレート(PEN)及び10%のポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されるポリマーのブレンドから構成された。「ホイール」側(又はフィルムキャスティング側)のスキンに使用されたポリマーは、米国特許出願公開第2015-0378077号(Haag et al.)に記載のとおり、摂氏121~123度のTgを有するポリエチレンナフタレート(PEN)ホモポリマー(100mol%のエチレングリコールを伴う100mol%ナフタレンジカルボキシレート)、及び4つの異なる二色性の共押出可能な吸収染料(PD-325H、PD-335H、PD-104及びPD-318H、三井化学ファイン株式会社、東京、日本から入手可能)のブレンドから構成された。実施例2におけるフィルムキャスティング側のスキンに使用された染料の重量パーセントは、以下:PD-325H=0.93wt%、PD-335H=0.35wt%、PD-104=0.56wt%、及びPD-318H=0.41wt%のとおりであった。
【0043】
第2パケットの第1光学層は、摂氏121~123度のTgを有するポリエチレンナフタレート(PEN)ホモポリマー(100mol%のエチレングリコールを伴う100mol%のナフタレンジカルボキシレート)のブレンドから構成された。第2パケットの第2光学ポリマー層は、屈折率が約1.57であり、一軸方向で実質的に等方性を維持するように、ポリカーボネートとコポリエステル(PC:coPET)とのブレンドであって、PC:coPETのモル比がおよそ42.5mol%のPC及び57.5mol%のcoPETであり、摂氏105℃のTgを有するブレンドを用いて作製されたブレンドであった。「空気」側のスキン層に使用されたポリマーは、90/10coPEN、90%のポリエチレンナフタレート(PEN)及び10%のポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されるポリマーのブレンドから構成された。空気側のスキンに使用されたポリマーは、摂氏121~123度のTgを有するポリエチレンナフタレート(PEN)ホモポリマー(100mol%のエチレングリコールを伴う100mol%のナフタレンジカルボキシレート)のブレンドから構成された。
【0044】
材料は、別々の押出成形機から、多層共押出フィードブロックへとフィードされ、そこでそれらは305交互光学層の第1パケット、また305交互光学層の第2パケットへと組み立てられた。第1光学層材料のスキン層を、その目的に特化したマニホールドにおいて構造に追加し、307層を有する最終構造を得た。この多層溶融物は次に、ポリエステルフィルムに関する従来の方法で、フィルムダイを通してチルロール上にキャスティングし、急冷した。次に、商業規模のリニアテンターにおいて、米国特許出願公開第2007-0047080(A1)号(Stover et al)の実施例2に記載のものと同様の温度及び延伸プロファイルで、キャスティングされたウェブを延伸した。フィルムの物理的な厚さは、静電容量計によっておよそ65μmであると測定された。延伸後、第2光学パケットは反射型偏光子機能を有する一方で、第1パケットは吸収型偏光子機能を有した。統合型偏光子を作製するプロセスにおいて、商標名NSA33TでSun A.Kaken(Tokyo,Japan)から入手可能な光学的に滑らかなプレマスクを、図4で測定及び表示されるフィルムを保護し、フィルムの光学的に滑らかな特性を維持する目的で、統合型偏光子の表面に適用した。
【0045】
比較例3(CE-3)
偏光子は、製品とともに提供される接着剤を使用するSanitz 5618 H-型偏光子(Tokyo,Japan)として購入した。この材料は、表1及び表2において提供される結果データのある実施例に対する、環境性能の比較例としての役割を果たした。
【0046】
試験結果
光学的平滑度試験
本明細書に記載される構造の利点は、オレンジピールと呼ばれる細かい欠陥がない視覚的に鏡面状の表面を提供することである。この知覚される視覚的欠陥は、専門家の観察者によって主観的にランク付けされ得るが、表面特性粗さの測定可能なパラメータとよく相関する傾向がある。Zygo干渉計モデルNV5000-5032(Zygo Corporation,Middlefield,Conn.から入手可能)を使用して、光学表面特性を測定した。
【0047】
これらの測定を行うために、実施例のフィルムをまずはガラスプレートに積層した。Zygo干渉計で報告されたピーク対谷(PV)、RMS及びRa[マイクロメートル]の値を、CE-1及び実施例1について記録し、結果を図4に比較した。実施例1は、可視スペクトルの光の波長の1/10未満である35nmのピーク対谷粗さを示したが、比較例(CE-1)は260~320nmが測定された。
【0048】
有効透過率試験
調製した光学アセンブリの各々について有効透過率を測定した。厚さ約0.6cm及び一辺約11cmの壁を有するポリテトラフルオロエチレンキューブが提供された。キューブは、高強度光ファイバーライトパイプを介してその内部から照射された。キューブの高拡散半透明壁は、高度に均一なランバート(Lambertian)の輝度の基準面を提供した。外部キューブ面に対して中心に置かれ、キューブ面に対して垂直に配置された輝度計は、輝度計とキューブ面との間に設けられるサンプルの各々の有無にかかわらず、キューブ面上の輝度を記録した。サンプルを含む輝度のサンプルを含まない輝度に対する比は、有効透過率である。次いで、有効透過率「ゲイン」は、サンプル測定値のベースライン測定値に対する比として計算される。環境曝露の間隔後にゲイン測定を再度行い、有効透過率ゲインへの変化を追跡し、ゲイン比のこの変化を「Δゲイン」[Δゲイン=(曝露後のゲイン)/(初期ゲイン)]として、表にした。
【0049】
色変化試験(ΔE)
色変化の測定は、Minolta CM3500dカメラ(Minolta Co,Ltd.)を使用して、多層光学フィルムサンプルを用いた及び用いない透過光の色(L、a、b)を測定する。測定のための光源は、色測定の工業規格D65/10源であり、色変化(ΔE)は、K7103及びK7105に詳細に記載されている日本工業規格に基づいて計算される。ΔEについての結果を表1~3に列挙する。
【0050】
環境曝露試験
これらの光学的に滑らかな反射型及び統合型偏光子物品は、従来利用可能な製品に対して偏光及び使用温度が維持される必要がある産業市場において適用可能である。その目的のために、環境曝露試験は以下のとおりである。
【0051】
表1は、高温及び高湿度劣化(aging:エージング)(85℃/85%相対湿度で250時間)について、実施例1と比較例3とを比較するデータを示す。表2は、非常に高い温度(120℃で250時間)について、実施例1及び比較例3を比較するデータを示す。両方の比較において、実施例1の構造は、環境曝露に対する優れた光学特性保持を有する。これらの結果において、実施例1は、様々な光学的に透明な接着剤及びガラスに積層されたその後の構造体を劣化環境にさらされた。使用した接着剤は、3M Company(St.Paul,Minn)から入手可能な市販の光学的に透明な接着剤(OCA)である3M 8146を含んだ。OCA-2と標識された第2のOCA接着剤を、実施例1で前述したように作製した。複製は、同じサンプル構造の複数のコピーを示す。そのため、例えば、8146/Aで積層された実施例1は、8146/Bで積層された実施例1で複製される。得られたサンプルは、ガラス、光学的に透明な接着剤、及び多層光学フィルムから連続的に構成された。したがって、各サンプルは、以下の表に示されるように、「ガラス側」及び「フィルム側」を有した。
【表1】
【表2】
【0052】
比較例2と比較した実施例1及び実施例2の更なる劣化は、より長い期間にわたって実施され、結果を表3に列挙する。結果は、改善された光学反射型偏光子について光学的に滑らかな表面とともに改善された熱強靭性を示す。
【表3】
【0053】
光学特性試験
最後に、表4に示すように、425nm~750nmの波長範囲を有するPerkinElmer LAMBDA 1050(PerkinElmer,Waltham,Mass.から入手可能)を使用して、様々な光学特性について、実施例1を、市販の反射型偏光子フィルム(APF-V4及びAPF-T35)と比較する。見られるように、実施例1は、偏光及び透過光の両方において優れた反射率、並びに偏光効率を有する。
【表4】
【0054】
以下は本開示による例示的な実施形態である。
【0055】
項目1.複屈折多層光学フィルムと、
複屈折多層光学フィルムの第1主表面上に配置されている連続接着剤層と、
連続接着剤層上に配置されているポリマーライナーと、
を含む、光学体であって、
連続接着剤層が、20マイクロメートル未満の厚さを有し、10~50,000cpsの粘度を有する溶液から由来する接着剤を含む、光学体。
【0056】
項目2.複屈折多層光学フィルム上の第1主表面の反対側の第2主表面上に、ハードコート層を更に含む、項目1に記載の光学体。
【0057】
項目3.複屈折多層光学フィルムが、35マイクロメートルより厚い、項目1に記載の光学体。
【0058】
項目4.複屈折多層光学フィルムが、50マイクロメートルより厚い、項目1に記載の光学体。
【0059】
項目5.複屈折多層光学フィルムが、60マイクロメートルより厚い、項目1に記載の光学体。
【0060】
項目6.複屈折多層光学フィルムが、少なくとも2つの光学パケットを含み、少なくとも2つの光学パケットが、少なくとも80%重なり合う厚さ(複数)を有する、項目1に記載の光学体。
【0061】
項目7.連続接着剤層の接着剤が、アクリレート接着剤を含む、項目1に記載の光学体。
【0062】
項目8.複屈折多層光学フィルムと、
複屈折多層光学フィルムの第1主表面上に配置されている連続接着剤層と、
連続接着剤層を介して多層光学フィルムに取り付けられているガラス又はプラスチック基材層と、
を含む、光学体であって、
連続接着剤層が、20マイクロメートル未満の厚さを有し、
ガラス又はプラスチック基材層を通して干渉計で測定された光学体が、40nm未満のRa表面粗さを有する、光学体。
【0063】
項目9.複屈折多層光学フィルム上の第1主表面の反対側の第2主表面上に、ハードコート層を更に含む、項目8に記載の光学体。
【0064】
項目10.光学体が、20nm未満のRa表面粗さを有する、項目8に記載の光学体。
【0065】
項目11.光学体が、10nm未満のRa表面粗さを有する、項目8に記載の光学体。
【0066】
項目12.項目8に記載の光学体を含む、偏光ビームスプリッタ。
【0067】
項目13.光投影経路(light projection path)を有する投影エンジンと、
請求項8に記載の光学体と、
を含む、投影システムであって、
光投影経路が、光学体の通過又は光学体でのはね返りを含む、投影システム。
【0068】
項目14.光学的に滑らかな積層光学体を提供する方法であって、
20マイクロメートル未満の厚さを有する連続接着剤層でコーティングされており、連続接着剤層上に配置されているポリマーライナーを有する、複屈折多層光学フィルムを準備することと、
ポリマーライナーを除去することと、
複屈折多層光学フィルム及び連続接着剤層をガラス又はプラスチック基材層に取り付けて、光学的に滑らかな積層光学体を形成することと、
を含み、
ガラス又はプラスチック基材層を通して干渉計で測定された光学的に滑らかな積層光学体が、40nm未満のRa表面粗さを有する、方法。
【0069】
項目15.連続接着剤層を硬化する工程を更に含む、項目14に記載の方法。
【0070】
項目16.光学的に滑らかな積層光学体が、10nm未満のRa表面粗さを有する、項目14に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折多層光学フィルムと、
前記複屈折多層光学フィルムの第1主表面上に配置されている連続接着剤層と、
前記連続接着剤層を介して前記多層光学フィルムに取り付けられているガラス又はプラ
スチック基材層と、
を含む、光学体であって、
前記連続接着剤層が、20マイクロメートル未満の厚さを有し、
前記ガラス又はプラスチック基材層を通して干渉計で測定された前記光学体が、40n
m未満のRa表面粗さを有する、光学体。
【請求項2】
前記複屈折多層光学フィルム上の前記第1主表面の反対側の第2主表面上に、ハードコ
ート層を更に含む、請求項1に記載の光学体。
【請求項3】
光投影経路を有する投影エンジンと、
請求項1に記載の光学体と、
を含む、投影システムであって、
前記光投影経路が、前記光学体の通過又は前記光学体でのはね返りを含む、投影システ
ム。
【請求項4】
光学的に滑らかな積層光学体を提供する方法であって、
20マイクロメートル未満の厚さを有する連続接着剤層でコーティングされており、前
記連続接着剤層上に配置されているポリマーライナーを有する、複屈折多層光学フィルム
を準備することと、
前記ポリマーライナーを除去することと、
前記複屈折多層光学フィルム及び前記連続接着剤層をガラス又はプラスチック基材層に
取り付けて、光学的に滑らかな積層光学体を形成することと、
を含み、
前記ガラス又はプラスチック基材層を通して干渉計で測定された前記光学的に滑らかな
積層光学体が、40nm未満のRa表面粗さを有する、方法。
【請求項5】
前記連続接着剤層を硬化する工程を更に含む、請求項4に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
図1】光学体の概略立面図である。
図2】別の光学体の概略立面図である。
図3】特定の光学体の表面粗さの測定を示す概略図である。
図4】実施例1及び比較例の光学的平滑度を比較するボックスプロットである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【外国語明細書】