(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159374
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】生体医療用超分子ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 18/32 20060101AFI20231024BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20231024BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20231024BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20231024BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C08G18/32 093
A61L27/18
A61L27/26
A61L27/56
A61L27/58
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023137119
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2020527015の分割
【原出願日】2018-11-21
(31)【優先権主張番号】2019957
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(71)【出願人】
【識別番号】507158640
【氏名又は名称】スプラポリックス ビー.ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】メス, トリスタン
(72)【発明者】
【氏名】ボスマン, アントン, ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ピータース, ジョリス, ヴィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン, ヘンリクス, マリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い強度、弾性、耐久性、及び緩徐な生分解を必要とする生体医療用多孔質インプラントの製造に特に好適な、生体医療用超分子ポリマーの製造方法、及び前記方法を介して得られる超分子ポリマーを提供する。
【解決手段】試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPaの極限引張強度を有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法であって、式(1):
による化合物F’を、ジイソシアネート化合物C’、官能化ポリマーA’、及び化合物B’と反応させることを含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPaの極限引張強度を有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法であって、式(1):
【化1】
による化合物F’を、
式O=C=N-R
3-N=C=Oによるジイソシアネート化合物C’、
式P-(FG1)
wによる官能化ポリマーA’、及び
式FG2-R
4-FG3による化合物B’
と反応させることを含み、
式中、
Xが、O又はSであり、
kが、1~20の整数であり、
nが、0~8の整数であり、
R
1が、C
1~C
13アルキレン基であり、
R
2が、OH、SH及びNH
2から選択される官能基であり、
FG1、FG2及びFG3が、OH及びNH
2から独立に選択される官能基であり、
wが、約1.8~約2の範囲内にあり、
官能化ポリマーA’が、そのヒドロキシル価から決定して、約1000~約2000Daの数平均分子量M
nを有し、
Pが、ポリマーであり、但し、それが、ポリ(エチレングリコール)でもポリカプロラクトンでもなく、
R
3が、直鎖状C
4~C
20アルキレン基であり、
R
4が、直鎖状C
2~C
20アルキレン基であり、且つ
A’:B’:C’:F’で表される、化合物A’、B’、C’及びF’のモル比が1:1.5:3.5:1から1:2:4:1の間である、
方法。
【請求項2】
官能化ポリマーA’と化合物B’とジイソシアネート化合物C’と式(1)による化合物F’との、1ステップにおける反応を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が、メチルであり、
a)kが2であり、nが0であり、R2がOHである、
b)kが2であり、nが1であり、R2がOHであり、XがOである、
c)kが4~11であり、nが0であり、R2がOHである、又は
d)kが4~11であり、nが0であり、R2がNH2である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
官能化ポリマーA’が、FG1で官能化されているポリカーボネート、ポリ(テトラメチレングリコール)、及びFG1で官能化水素化されているポリブタジエンから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
化合物B’が、1,4-ブタンジオール、1,12-ドデシルジオール及び1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択され、化合物B’が、好ましくは1,6-ヘキサンジオールである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ジイソシアネート化合物C’が、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)及び1,12-ジイソシアナトドデカンからなる群から選択され、ジイソシアネート化合物C’が、好ましくは1,6-ジイソシアナトヘキサンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能である、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPaの極限引張強度を有する生体医療用超分子ポリマー。
【請求項8】
PEO/PEG標準を用いて50℃で10mM LiBrを含むDMF中のサイズ排除クロマトグラフィーで決定して、約3000~約150000Daの数平均分子量Mnを有する、請求項7に記載の生体医療用超分子ポリマー。
【請求項9】
以下の性質:
i)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、40MPaから160MPaの間のヤング率、
ii)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも7MPaの、100%伸びでの弾性率、
iii)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも40Mpaの極限引張強度、
iv)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも350%の破断点伸び、
v)応力応答が第1のサイクルでの応力応答の10%未満であるサイクルで疲労破壊を定義して、0.2mmから1mmの間の厚さの5×25mmのポリマー片において10Hzのサンプルレートで10%伸びを伴う単軸引張試験機を用いて決定して、疲労前に少なくとも300万サイクルの耐疲労性、並びに
vi)示差走査熱測定で20℃/分の加熱速度で決定して、50℃から125℃の間の温度でのガラス転移及び融点、及び0℃から45℃の間での熱転移なしから選択される少なくとも2種の熱転移
のうちの少なくとも1つを有する、請求項7又は8に記載の生体医療用超分子ポリマー。
【請求項10】
前記性質(i)~(vi)の全てを有する、請求項9に記載の生体医療用超分子ポリマー。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の生体医療用超分子ポリマーを含む、生体医療用多孔質インプラント。
【請求項12】
請求項7~10のいずれか一項に記載の生体医療用超分子ポリマーを溶液からエレクトロスピニングすることによって得られる不織メッシュ構造体を有する、請求項11に記載の生体医療用多孔質インプラント。
【請求項13】
請求項7~10のいずれか一項に記載の生体医療用超分子ポリマーを備える不織メッシュ構造体を有する生体医療用多孔質インプラントの製造の方法であって、
a)請求項7~10のいずれか一項に記載の生体医療用超分子ポリマーを用意するステップと、
b)(a)による生体医療用超分子ポリマーを、エレクトロスピニングに好適な溶媒混合物に溶解させるステップと、
c)(b)によるポリマー溶液を標的上でエレクトロスピニングするステップと、
d)生体医療用多孔質インプラントを、標的から、シート、シリンダー又は複雑な3D構造体として単離するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
1~3つの小葉構造体を備える、請求項11又は12に記載の、若しくは請求項13に記載の方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラント。
【請求項15】
埋込み部位において構造体に取り付けるための0~6つのアーム又はエクステンションを備えるシートの形態にある、請求項11又は12に記載の、若しくは請求項13に記載の方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラント。
【請求項16】
心臓血管疾患の治療における使用のための、請求項11、12若しくは14に記載の、又は請求項13に記載の方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、哺乳動物対象における、動脈若しくは静脈の部分、又は静脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁若しくは大動脈弁の部分若しくは全てを前記生体医療用多孔質インプラントで置き換えることを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラント。
【請求項17】
心臓血管疾患の治療における使用のための、請求項11、12若しくは14に記載の、又は請求項13に記載の方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、前記生体医療用多孔質インプラントを、哺乳動物対象における心臓内又は血管内部位に配置することを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラント。
【請求項18】
再建手術、支持又は増強を必要とする病状、好ましくは脱出症、骨盤臓器脱出症、コンパートメント症候群、収縮性心膜炎、血気胸、血胸、硬膜損傷、及びヘルニア、例えば腹部、横隔膜、裂孔、骨盤、肛門、頭蓋内、スピゲリウスの各ヘルニア、及び椎間板の髄核のヘルニア、並びに腹圧性尿失禁の治療における使用のための、請求項11、12若しくは15に記載の、又は請求項13に記載の方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、再建手術、支持又は増強を必要とする哺乳動物対象の部位での、生体医療用多孔質インプラントの外科的埋込みを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラント。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、超分子ポリマーの製造の方法、及び前記方法を介して得られる超分子ポリマーに関する。本発明は、前記超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラント、それらの製造、並びに医学的な治療の方法における、例えば哺乳動物での心臓血管疾患の治療における、及び哺乳動物組織の再建手術、支持又は増強を必要とする病状の治療における、それらの使用に更に関する。
【0002】
[発明の背景]
ポリカプロラクトン及びそれらのコポリマーなどの脂肪族ポリエステルにほとんどが基づく多種多様な生分解性(生体吸収性又は生体医療用と指定されることも多い)材料が公知である(Uhrichら、Chem.Rev.99、3181~3198頁、1999)。本発明の文脈では、用語「生体医療用」、「生体吸収性」及び「生分解性」は、同じ意味を有し、交換可能と考えられている。現在の生分解性材料の機械的性質は、一般に、それらの、100kDaを超える高い分子量、化学的架橋の存在、及びそれらのポリマー中の結晶「硬質」ドメインの存在に強く関連している。結晶ドメインが、材料の初期の高い強度にとって有益であるものの、それらは材料の生分解プロセスに強い影響を有し、その理由は、結晶ドメインの生分解性が一般にきわめてゆっくりであるためであり、その上、その理由は、それらの結晶ドメインが免疫応答を引き起こしうるためである。加えて、結晶ドメインは、疲労特性を誘起するそれらの傾向に起因して、材料の長期の弾性挙動に負の影響を有することがある。
【0003】
材料の所望の性質を得るために、高分子量ポリマーへの必要性は、高い温度では熱分解プロセスがより起こりやすいがゆえに望まれない高い処理温度が求められることを通常示唆している。
【0004】
その上、ポリカプロラクトンなどのポリエステルを含む生分解性材料中のエステル結合の存在が、それらを(酵素的)加水分解しやすくし、したがって、これらのポリマーを含む、生体医療用インプラント、即ちヒト又は動物の体の内部で使用するための生分解性インプラントを早期破壊しやすくする。換言すると、ポリエステルを含む生分解性材料は、それらが生体医療用インプラント中での使用に好適でないような速い生分解度を有することがある。
【0005】
生体医療用インプラントに必要である機械的性能は、体内の企図された埋込み部位に依存する。埋込み部位が、例えば腹壁、心臓血管の部位、器官又は皮膚であるときに、可撓性インプラントが必要とされる。ヒトの腹壁中で起きる典型的な伸びは、女性の場合、平均32%であり、極度には69%に至る。5~10MPaの範囲内のヤング率が、動物の腹壁中で典型的に見出される(Deekenら、J.Mech.Behav.Biomed.Mat.74、411、2017、参照により本明細書に組み込まれる)。ヒト心臓弁の小葉中に見出される弾性率は、10~14MPaまでの値(30%までの最大歪みで)、及び2~4MPaの極限引張強度を有する(Stradinsら、Eur.J.Cardio-Thorac.Surg.26、634、2004、及びHasanら、J Biomech 47、1949、2014、参照により本明細書に組み込まれる)。ヒトの皮膚の機械的挙動は、83MPaの平均弾性率、170%までの伸びでのおよそ22MPaの極限引張強度によって特徴づけられる(Annaishら、J.Mech.Behav.Biomed.Mat.5、139、2012、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0006】
生体医療用インプラントの耐久性もまたその性能にとって重要であり、その理由は、生体医療用インプラントが、その寿命の間に何百万もの動きに耐えることができる必要があって、その耐疲労性が高くなければならないためである。例えば心臓弁は、1年におよそ3千万回の、高い機械的要求を伴う複雑な循環負荷を受け、それによって弁を通して1分当たり3~5Lの血液をポンピングする(Hasanら、J Biomech 47、1949、2014を参照されたい)。
【0007】
生体医療用インプラントの性能についての別の重要なパラメータは、その変形挙動であり、これは、応力又は伸びに向いた生体医療用インプラントの機械的応答である。これは、非線状であることが多い可撓性軟組織中であり、且つ低い伸びでの低い初期応力と組み合わされた高い極限引張強度により特徴づけられる(Mazzaら、J.Mech Behav.Biomed.Mat.48、100、2015、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0008】
生体医療用インプラントが多孔質インプラントである場合、この生体医療用インプラントを構成するポリマーは、多孔性に起因する生体医療用インプラントの機械的性能の低下を補うために、更により高い弾性率及び引張強度を提示する必要がある。
【0009】
本発明は、少なくとも4つのH架橋を一列に形成することができる部分を、好ましくは少なくとも4つのH架橋を一列に形成することができる別の部分と共に含んで、異なるポリマー鎖間の物理的相互作用へと至らせる、生体医療用超分子ポリマー関する。物理的相互作用は、少なくとも4つのH架橋を一列に形成することができる個々の部分間の、又は少なくとも4つのH架橋を一列に形成することができる部分と、水素結合を形成することができる別の部分との間の複数の水素結合相互作用(超分子相互作用とも呼ばれる)を起源とし、それによって、好ましくは少なくとも4つの水素結合を一列に含む自己補完型単位を形成する。少なくとも4つの水素結合を一列に形成することができる単位、即ち4つの水素結合単位は、本明細書で使用される場合、「4H単位」と略記される。Sijbesmaら(米国特許第6320018B1号、Science 278、1601~1604頁、1997、両方とも参照により本明細書に組み込まれる)は、2-ウレイド-4-ピリミドン(UPYの)に基づく4H単位を開示している。これらの2-ウレイド-4-ピリミドンは、イソシトシンから誘導される。
【0010】
6-メチルイソシトシンに基づく4H単位で末端キャップされたテレケリックポリカプロラクトン(PCL)に基づく低分子量の超分子ポリマーは、Dankersら(Nature Materials 4、5688頁、2005、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。この超分子材料のDSCサーモグラムは、PCL主鎖の高結晶性を明らかにし、これは弾性に悪影響を有し、材料の耐久性を強く限定する。Dankersらは、主鎖に沿ういくつかの4H単位を有するPCLを含む超分子材料の機械的挙動を更に特徴づけた(参照により本明細書に組み込まれるBiomaterials 27、5490、2006を参照されたい)。この研究が明らかにしたのは、4H単位を有する高結晶テレケリックPCLが約130MPaのヤング率を有していたが約14%伸びの後に既に破壊しており、一方で、4H単位を有するはるかに少ない結晶鎖延長PCL誘導体が、わずか約3MPaの低いヤング率、及び576%の破断点伸びを有していたことである(cf.5495頁の表1)。両方のDankersの材料が、アニール処理されていない無垢の材料の場合、約40℃超の1つのみの融点を有する。4H単位を有する類似の鎖延長脂肪族ポリエステル誘導体が国際公開第2005/042641A1号に開示されており、ここでも低いヤング率が得られていた(cf.39頁の表)。
【0011】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/00130172号は、生体医療用途のために4H単位を含む生物活性分子と混合された4H単位を含むいくつかの超分子生分解性材料、例えば薬物の制御放出を伴うコーティングを開示している。開示されている材料の中に、Dankersら(Nature Materials 4、5688頁、2005、及びBiomaterials 27、5490頁、2006)により公開されているPCL系材料、並びに4H単位を含む他の生分解性ポリエステル誘導体、例えば実施例8、12、13及び15の、イソホロンジイソシアネート(IPDI)官能性4H単位で延長されたポリアジペート系ポリマー鎖がある。しかしながら、これらの全てのポリエステル系超分子生分解性材料が、不良な機械的挙動によって特徴づけられ、それらは、強度が十分ではない(ヤング率が10MPa未満)か、又は弾性が十分ではない(破断点伸びが50%未満)かのいずれかである。
【0012】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0087755A1号は、6-メチルイソシトシン、アルキルジオール鎖延長剤及び4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)に基づく4H単位で末端キャップされたポリウレタンポリマーを開示しており、これは、ホットメルト接着剤又はTPU発泡体として使用されうる。これらの材料は、約2~約8MPaの範囲の限定された引張強度を有し(表2)、又は約2から約3.2MPaの間の100%伸びでの応力を有する(表6)。最も重要なことは、MDIは毒性の高いアニリン及びその誘導体を含むおそれのある分解生成物をもたらすことが知られているため、これらのポリウレタン材料中の芳香族MDIは、生体医療用生分解性材料としてのそれらの可能性のある使用を妨げることである。
【0013】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/116014A1号は、1~50の4H単位を含む超分子ポリマーの調製の方法であって、式4H-(L-Fi)r(式中、4Hは4H単位を表し、Lは二価、三価、四価又は五価の結合基を表し、Fiは反応性基を表し、rは1~4である)による4H構成ブロックを、Fiに補完的である反応性基を含むプレポリマーと反応させ、前記4H構成ブロックと前記プレポリマーとを含む反応混合物が、反応混合物の総重量に基づいて10重量%未満の非反応性有機溶媒を含む、方法を開示している。最も好ましくは、rは2であり、Lは二価のC1~C20アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン又はアルキルアリーレンの各基である。4H構成ブロックは、イソシトシンの前駆体又はメラミン誘導体及びジイソシアネートから好ましくは調製され、ここで、ジイソシアネートは、最も好ましくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はメチレンジシクロヘキサン4,4-ジイソシアネート(HMDI)である。米国特許出願公開第2012/116014A1号による超分子ポリマーは、コーティング及び接着剤組成物中で好ましくは使用される。米国特許出願公開第2012/116014A1号に開示されている好ましい方法に従って得られた超分子ポリマーは、きわめて堅く(高いヤング率)、且つ低い弾性を有しているため、それらは、それらの低い耐疲労性のために、生体医療用インプラントにおける使用に、実際、適していない。
【0014】
国際公開第2014/185779A1は、生分解性インプラントのために使用されうる、4H単位、低分子量ジオール、ジイソシアネート及び生分解性ポリマージオール、特にヒドロキシル末端化ポリカプロラクトン及びポリ(エチレングリコール)を含む生分解性超分子ポリマーを開示している。しかしながら、ポリカプロラクトンの存在は、これらの超分子ポリマーを、これらのポリカプロラクトンを構成するエステル結合の(酵素的)加水分解を高度に受けやすくする。したがって、これらのポリカプロラクトン系超分子ポリマーに基づくインプラントは、一定の生体医療用途にとっては、インビボで、速すぎる分解をする。これらの材料に基づくインプラントが心臓血管インプラントとして使用されるとき、速すぎる分解は、埋込み後に動脈瘤へと至らせることがあり、又はそれらが脱出症を治療するのに使用されるとき、速すぎる分解は、ヘルニアへと至らせることがある。その上、開示したポリカプロラクトン系超分子ポリマーの機械的性能は、一定の生体医療用途にとって不十分である。ヤング率は30~80MPaの範囲であり、一方で、極限引張強度は全て21MPaに等しい又はそれよりも低い。他方、超分子ポリマー中のポリ(エチレングリコール)ブロックの存在は、15MPa未満の低い引張強度、及び高い吸水率を有する堅すぎるポリマーをもたらし、これもまた加速した分解へと至らせる。
【0015】
それゆえ、本発明の目的は、生体医療用途のための、特に生体医療用インプラントにおける使用のための、耐久性及び制御された緩徐な生体吸収と組み合わされた高い機械的強度及び/又は高い弾性を有する超分子生分解性材料への必要性が存在する。したがって、本発明の目的は、これらの要件を満たす超分子生分解性材料、及びこれらの材料の調製の方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、先行技術の熱機械的性質の(熱)機械的性質よりも良好な(熱)機械的性質を有する、強力な、可撓性及び耐久性のある超分子生分解性ポリマー、並びにそのようなポリマーを調製する方法を提供することである。
【0017】
本発明のなおも別の目的は、構造的支持を要する病状、例えば外科的介入を必要とする組織損傷における埋込みに好適であるよう十分に強力である生体医療用インプラント及び組織工学用足場において使用されうる、耐久性のある生体医療用超分子ポリマーを提供することである。
【0018】
その上、本発明の目的は、超分子生分解性材料から、生体医療用インプラント及び組織工学用足場などの多孔質構造体を調製する方法を提供することである。
【0019】
本発明のなおも別の目的は、再生医療のための埋込み可能な足場として前記多孔質構造体を使用できるように、生体医療的に許容される方法で、超分子生分解性材料から多孔質構造体を調製する方法であって、インプラントが患者自身の機能性組織により徐々に置き換えられる、方法を提供することである。
【0020】
[発明の概要]
本発明の発明者らは、それ自体が生体吸収性ではないポリマー主鎖と特定の4H単位が組み合わされた超分子生分解性材料の製造の方法が、優れた機械的特性、例えば強度、弾性及び耐久性を有すると同時に、驚くべきことに、4H単位を含むそれらの独特な化学構造に起因して制御された方法において生分解性である、生体医療用超分子生ポリマーをもたらすことを見出した。
【0021】
したがって、本発明は、第1の態様では、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPaの極限引張強度を有する、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法に関し、第2の態様では、前記方法によって得ることが可能である、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPaの極限引張強度を有する生体医療用超分子ポリマーに関し、前記方法は、式(1):
【化1】
による化合物F’を、
式O=C=N=R
3-N=C=Oによるジイソシアネート化合物C’、
式P-(FG1)
wによる官能化ポリマーA’、及び
式FG2-R
4-FG2による化合物B’
と反応させるステップを含み、
式中、
Xは、O又はSであり、
kは、1~20の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
R
1は、C
1~C
13アルキレン基であり、
R
2は、OH、SH及びNH
2から選択される官能基であり、
FG1、FG2及びFG3は、OH及びNH
2から独立に選択される官能基であり、
wは、約1.8~約2の範囲内にあり、
官能化ポリマーA’は、そのヒドロキシル価から決定して、約250~約10000Daの数平均分子量M
nを有し、
Pは、ポリマーであり、但し、それは、ポリ(エチレングリコール)でもポリカプロラクトンでもなく、
R
3は、環状又は直鎖状C
4~C
20アルキレン基又はエステルを含むC
4~C
20アルキレン基であり、
R
4は、C
2~C
44アルキレン、C
6~C
44アリーレン、C
7~C
44アルカリーレン及びC
7~C
44アリールアルキレンからなる群から選択され、ここで、アルキレン基、アリーレン基、アルカリーレン基及びアリールアルキレン基は、O、N及びSからなる群から選択される1~5個のヘテロ原子によって任意選択でおり、且つ
ここで、A’:B’:C’:F’で表される、化合物A’、B’、C’及びF’のモル比は1:1.5:3.5:1から1:2:4:1の間である。
【0022】
第3の態様では、本発明は、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントに関する。
【0023】
第4の態様では、本発明は、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーを含む不織メッシュ構造体を有する生体医療用多孔質インプラントの製造の方法に関し、生体医療用多孔質インプラントの製造の前記方法は、
a)本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーを用意するステップと、
b)(a)による生体医療用超分子ポリマーを、エレクトロスピニングに好適な溶媒混合物に溶解させるステップと、
c)(b)によるポリマー溶液を、標的上でエレクトロスピニングするステップと、
d)生体医療用多孔質インプラントを、標的から、シート、シリンダー又は複雑な3D構造体として単離するステップと
を含む。
【0024】
第5の態様では、本発明は、心臓血管疾患の治療における使用のための、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、哺乳動物対象における、動脈若しくは静脈の部分、又は静脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁若しくは大動脈弁の部分若しくは全てを前記生体医療用多孔質インプラントで置き換えることを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラントに関する。
【0025】
第6の態様では、本発明は、心臓血管疾患の治療における使用のための、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、前記インプラントを、哺乳動物対象における心臓内又は血管内部位に配置することを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラントに関する。
【0026】
第7の態様では、本発明は、再建手術、支持又は増強を必要とする病状、好ましくは脱出症、骨盤臓器脱出症、コンパートメント症候群、収縮性心膜炎、血気胸、血胸、硬膜損傷、及びヘルニア、例えば腹部、横隔膜、裂孔、骨盤、肛門、頭蓋内、スピゲリウスの各ヘルニア、及び椎間板の髄核のヘルニア、並びに腹圧性尿失禁の治療における使用のための、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、再建手術、支持又は増強を必要とする哺乳動物対象の部位での、生体医療用多孔質インプラントの外科的埋込みを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラントに関する。
【0027】
一般的な定義
「ヒドロキシル価」は、遊離ヒドロキシル基を含有する化学物質1gのアセチル化に取られる酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラムの数であると定義される。ヒドロキシル価は、化学物質中の遊離ヒドロキシル基の含有量の測定値であり、化学物質1gのヒドロキシル含有量と等価である、水酸化カリウム(KOH)の質量の、ミリグラムにおける単位で通常表される。P-(FG1)wの分子量は、本発明で用いられるとき、(2×56.1×1000)/(ヒドロキシル価)に等しい。
【0028】
用語「足場」は、本明細書で使用される場合、典型的には外科的介入と併せて使用される、欠損又は損傷の組織部位での新しい機能性組織を形成するプロセスにおいて、細胞の組織化、成長及び差異化をガイドするために使用される、生体医療用超分子ポリマーを含む多孔質構造体を指す。
【0029】
「耐久性のある生体医療用超分子ポリマー」又は「耐久性のある生体医療用超分子材料」又は「耐久性のある生体医療用インプラント」の文脈における用語「耐久性のある」は、本明細書で使用される場合、その用途のために十分高い耐疲労性を有する材料を指す。
【0030】
用語「によって得ることが可能である」は、「によって得られる」の同義語であると考えられる。
【0031】
用語「1ステップ反応」は、本明細書で使用される場合、「ワンポット反応」を指し、ここで、全ての反応物は同時に存在し、実質的に同時に添加され、これは、先の反応ステップの(少なくとも部分的な)完了後に、おそらくは異なる反応容器中で続けての反応物が添加される、「逐次反応ステップ」を含む反応とは逆である。
【0032】
尿素部分は、本文献中で示される場合、式:
-NR-C(=X)-NR-
(式中、Xは、O又はS、好ましくはOであり、且つ式中、両方の部分Rは、互いに独立に、水素原子又は直鎖状アルキル基から、好ましくは水素原子から選ばれる)
による部分であると理解されるべきである。
【0033】
アミド部分は、本文献中で示される場合、式:
-NR-C(=X)-
(式中、X及びRは、上に説明した通りである)
による部分であると理解されるべきである。
【0034】
ウレタン部分は、本文献中で示される場合、式:
-NR-C(=X)-X-
(式中、Rは、上に説明した通りであり、式中、両方の原子Xは、互いに独立に、O又はSから選ばれ、式中、Xは、好ましくはOである)
による部分であると理解されるべきである。
【0035】
エステル部分は、本文献中で示される場合、式:
-C(=X)-X-
(式中、両方の原子Xは、互いに独立に、O又はSから選ばれ、式中、Xは好ましくはOである)
による部分であると理解されるべきである。
【0036】
カルボネート部分は、本文献中で示される場合、式:
-X-C(=X)-X-
(式中、全ての3個の原子Xは、互いに独立に、O又はSから選ばれ、式中、Xは好ましくはOである)
による部分であると理解されるべきである。
【0037】
アミン部分は、本文献中で示される場合、式:
-NR2-
(式中、Rは、上に説明した通りである)
による部分であると理解されるべきである。
【0038】
エーテル部分は、本文献中で示される場合、式:
-X-
(式中、Xは、上に説明した通りである)
による部分であると理解されるべきである。
【0039】
イソシアネート基は、-N=C=X基(式中、Xは、上に説明した通りである)であると理解されるべきである。
【0040】
少なくとも4つの水素結合を形成することができる(自己)完結型単位は、原則として、互いに非共役部分を形成する。(自己)完結型単位が4つの水素結合を一列に形成することができるとき、それらは、それらの略記形態「4H単位」において用いられる。しかしながら、(自己)完結型単位(4H単位を含む)が、4つ未満の水素結合を形成できる他の材料と、非共役部分を形成できることが、本発明の範囲内である。少なくとも4つの水素結合を形成できる単位は、非自己完結型又は自己完結型結合基を形成することができる。「非自己完結型」は、例えば、4H単位(I)が結合部分(I)-(II)を単位(II)と共に形成し、ここで(II)が異なる4H単位であることを意味する。「自己完結型」は、2つの4H単位(I)が結合部分(I)-(I)を形成することを意味する。4H単位が自己完結型であることが好ましい。式(I)の化合物F’による単位は、本発明による生体医療用超分子ポリマー中に組み込まれるとき、(自己)完結型単位を形成する。
【0041】
用語「生体吸収性」、「生分解性」及び「生分解」は、本文献で使用される場合、細胞媒介分解、酵素分解、及び生体医療用超分子ポリマーの加水分解の酸化的分解、及び/又は生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントに関連する。用語「生分解性」はまた、生体医療用超分子ポリマー、及び/又は生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントの、生体組織からの除去にも関連しうる。
【0042】
用語「組織」は、本文献で使用される場合、ヒトなどの生体哺乳動物個体の部分である固体生体組織を指す。組織は、硬組織であっても軟組織であってもよく、例えば靭帯、腱、繊維状組織、筋膜、脂肪、筋肉、神経及び心臓血管の各組織でありうる。
【0043】
用語「室温」は、本文献で使用される場合、その通常の意味を有し、即ちそれは約20℃~約25℃の範囲内の温度を示す。
【0044】
Mnなどの分子量は、ダルトン(Da)で表される。
【0045】
[発明を実施するための形態]
生体医療用超分子ポリマーを調製する方法
第1の態様では、本発明は、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPaの極限引張強度を有する、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法であって、式(1):
【化2】
による化合物F’を、
式O=C=N-R
3-N=C=Oによるジイソシアネート化合物C’、
式P-(FG1)
wによる官能化ポリマーA’、及び
式FG2-R
4-FG3による化合物B’
と反応させるステップを含み、
式中、
Xは、O又はSであり、
kは、1~20の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
R
1は、C
1~C
13アルキレン基であり、
R
2は、OH、SH及びNH
2から選択される官能基であり
FG1、FG2及びFG3は、OH及びNH
2から独立に選択される官能基であり、
wは、約1.8~約2の範囲内にあり、
官能化ポリマーA’は、そのヒドロキシル価から決定して、約250~約10000Daの数平均分子量M
nを有し、
Pは、ポリマーであり、但し、それは、ポリ(エチレングリコール)でもポリカプロラクトンでもなく、
R
3は、環状又は直鎖状C
4~C
20アルキレン基、又はエステルを含むC
4~C
20アルキレン基であり、
R
4は、C
2~C
44アルキレン、C
6~C
44アリーレン、C
7~C
44アルカリーレン及びC
7~C
44アリールアルキレンからなる群から選択され、ここで、アルキレン基、アリーレン基、アルカリーレン基及びアリールアルキレン基は、O、N及びSからなる群から選択される1~5個のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、且つ
ここで、A’:B’:C’:F’で表される、化合物A’、B’、C’及びF’のモル比が1:1.5:3.5:1から1:2:4:1の間である、方法に関する。
【0046】
方法は、生体医療用途にとってきわめて好適な、高い(極限)引張強度、高い弾性、高い耐久性を有する生体医療用超分子ポリマーをもたらす。
【0047】
生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、好ましくは、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、好ましくは0.25%伸びから2.50%伸びの間で測定して、少なくとも40MPa、より好ましくは少なくとも50MPa、更により好ましくは少なくとも90MPaのヤング率(Emod)を有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。好ましくは、ヤング率(Emod)は、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、好ましくは0.25%伸びから2.50%伸びの間で測定して、180MPa未満、より好ましくは160MPa未満、最も好ましくは140MPa未満である。きわめて好ましい実施形態では、ヤング率(Emod)は、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、好ましくは0.25%伸びから2.50%伸びの間で測定して、40MPaから160MPaの間である。
【0048】
生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、好ましくは、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも7MPa、より好ましくは少なくとも12MPa、最も好ましくは少なくとも15MPaの、100%伸びでの弾性率を有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0049】
生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、好ましくは、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも40MPa、より好ましくは少なくとも45MPaの極限引張強度を有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0050】
生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、好ましくは、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも350%、より好ましくは少なくとも400%、最も好ましくは少なくとも500%の破断点伸びを有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0051】
生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、好ましくは、応力応答が第1のサイクルでの応力応答の10%未満であるサイクルで疲労破壊を定義して、0.2mmから1mmの間の厚さの5×25mmのポリマー片において2Hz又は10Hz、好ましくは10Hzのサンプルレートで10%伸びを伴う単軸引張試験機を用いて決定して、破壊前に少なくとも300万サイクル、好ましくは少なくとも600万サイクル、最も好ましくは少なくとも1200万サイクルの耐疲労性を有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0052】
生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、好ましくは、示差走査熱量測定(DSC)で20℃/分の加熱速度で決定して、約50℃から約125℃の間の温度でのガラス転移及び融点、並びに0℃から45℃の間での熱転移なし、好ましくは0℃から40℃の間での熱転移なし、並びに好ましくは120℃超での熱転移なしから選択される少なくとも2種の熱転移を有する、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。きわめて好ましい実施形態では、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、示差走査熱量測定(DSC)で20℃/分の加熱速度で決定して、約50℃から約125℃の間の温度でのガラス転移及び融点、並びに0℃から45℃の間での熱転移なしから選択される少なくとも2種の熱転移を有する、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0053】
生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、好ましくは、極限引張強度及び100%伸びでの弾性率が、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で、少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは少なくとも3.5の、100%伸びでの弾性率で割った極限引張強度によって定義される変形指数を有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0054】
生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、好ましくは、本明細書で前に説明した、極限引張強度、ヤング率、100%伸びでの弾性率、破断点伸び、熱転移、変形指数及び耐疲労性からなる群から選ばれる好ましい(熱)機械的性質のうちの少なくとも1つを有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0055】
きわめて好ましい実施形態では、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPa、より好ましくは少なくとも40MPa、最も好ましくは少なくとも45MPaの極限引張強度を有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法であり、且つ応力応答が第1のサイクルでの応力応答の10%未満であるサイクルで疲労破壊を定義して、0.2mmから1mmの間の厚さの5×25mmのポリマー片において2Hz又は10Hz、好ましくは10Hzのサンプルレートで10%の伸びを伴う単軸引張試験機を用いて決定して、疲労前に少なくとも300万サイクル、好ましくは少なくとも600万サイクル、最も好ましくは少なくとも1200万サイクルの耐疲労性を有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0056】
きわめて好ましい実施形態では、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、本明細書で前に説明した、極限引張強度、ヤング率、100%伸びでの弾性率、破断点伸び、熱転移、変形指数及び耐疲労性からなる群から選ばれる好ましい(熱)機械的性質の全てを有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0057】
きわめて好ましい実施形態では、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、以下の性質(i)~(vi):
i)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、40MPaから160MPaの間のヤング率、
ii)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも7MPaの、100%伸びでの弾性率、
iii)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも40Mpaの極限引張強度、
iv)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも350%の破断点伸び、
v)応力応答が第1のサイクルでの応力応答の10%未満であるサイクルで疲労破壊を定義して、0.2mmから1mmの間の厚さの5×25mmのポリマー片において10Hzのサンプルレートで10%伸びを伴う単軸引張試験機を用いて決定して、疲労前に少なくとも300万サイクルの耐疲労性、並びに
vi)示差走査熱量測定で20℃/分の加熱速度で決定して、50℃から125℃の間の温度でのガラス転移及び融点、及び0℃から45℃の間での熱転移なしから選択される少なくとも2種の熱転移
のうちの少なくとも1つを有する、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0058】
最も好ましい実施形態では、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、性質(i)~(vi)の全てを有する生体医療用超分子ポリマーの製造の方法である。
【0059】
好ましくは、本方法では、官能化ポリマーA’、化合物B’、ジイソシアネート化合物C’及び式(1)による化合物F’は、1ステップ反応において反応させる。これは、A’、B’、C’及びF’を多少なりとも同時に反応容器へ添加することを要する。
【0060】
A’:B’:C’:F’で表される、化合物A’、B’、C’及びF’のモル量の比が、1:1.5:3.5:1から1:2:3.97:1の間であることが好ましい。別の好ましい実施形態では、C’のモル量は、官能化ポリマーA’プラス化合物B’プラス式(1)による化合物F’の総モル量の約0.8~約1.2倍に等しい。
【0061】
別の実施形態では、方法は、官能化ポリマーA’、化合物B’、ジイソシアネート化合物C’及び式(1)による化合物F’を、別個の反応ステップにおいて反応させることを含む。
【0062】
したがって、一実施形態は、生体医療用超分子ポリマーを調製するための逐次反応方法であって、
a)第1のステップにおいて、式(1)による化合物F’を式O=C=N-R3-N=C=Oによるジイソシアネート化合物C’、及び式P-(FG1)Wによる官能化ポリマーA’と反応させて、式(1)による化合物F’を含むプレポリマーP1を形成し、
b)第2のステップにおいて、ステップ(a)からの式(1)による化合物F’を含むプレポリマーP1を、式FG2-R4-FG3による化合物B’、及び任意選択でジイソシアネート化合物C’と反応させて、生体医療用超分子ポリマーを形成する、
方法に関する。
【0063】
この逐次反応において、官能化ポリマーA’、式(1)による化合物F’とジイソシアネート化合物C’とは、好ましくは、ステップ(a)において、A’:F’:C’で表されるモル比が1:1:1から1:1:4の間で、より好ましくはモル比が1:1:3.5から1:1:4の間で、最も好ましくは1:1:4で反応させ、且つステップ(b)において、P1:B’で表されるモル比が1:1.5から1:2の間で反応させ、それと共に任意選択で、ステップ(b)において更なるジイソシアネート化合物C’を添加して、ジイソシアネート化合物C’のモル量を、官能化ポリマーA’プラス化合物B’プラス式(1)による化合物F’のモル量と等しくさせる。
【0064】
別の実施形態では、生体医療用超分子ポリマーを調製する逐次反応方法であって、
a)第1のステップにおいて、第1の反応容器中、官能化ポリマーA’とジイソシアネート化合物C’とを反応させてプレポリマーP1を形成し、第2の反応容器中、式(1)による化合物F’とジイソシアネート化合物C’とを反応させて官能化化合物F’を形成し、
b)第2のステップにおいて、プレポリマーP1と官能化化合物F’とを、1.5~2モル当量の化合物B’、及び追加の0~1モル当量のジイソシアネート化合物C’、好ましくは追加の0モル当量のジイソシアネート化合物C’と合わせて反応させる、
方法が提供される。
【0065】
この逐次反応方法において、官能化ポリマーA’とジイソシアネート化合物C’とを一方で、且つ式(1)による化合物F’とジイソシアネート化合物C’とを他方で、好ましくは、ステップ(a)において、官能化ポリマーA’、それぞれ式(1)による化合物F’と、ジイソシアネート化合物C’とのモル比1:2で反応させた。プレポリマーP1と、式(1)による官能化化合物F’とを、好ましくは、ステップ(b)において、1.5~2モル当量の化合物B’、及び0~4モル当量のジイソシアネート化合物C’と反応させた。
【0066】
別法では、生体医療用超分子ポリマーは、官能化ポリマーA’、化合物B’、ジイソシアネート化合物C’及び式(1)による化合物F’を、1つ又は複数のステップで任意の順序で添加することによって得ることができる。
【0067】
理論に束縛されることを望むものではないが、反応の主要なコースが、スキーム1:
【化3】
(式中、zは、生体医療用超分子ポリマーの数平均分子量M
nが、PEO/PEG標準を用いて50℃で10mM LiBrを含むDMF中サイズ排除クロマトグラフィーで決定して、約3000~約150000Daであるようなものである。zが6~20、より好ましくは10~18の範囲内にあることが好ましい)
において概略的に示されていると考えられ、ここで、FG1、FG2、FG3及びR
2は、OHを表し、w=2である。
【0068】
式(1)による化合物F’
式(1)による化合物F’中のR1基は、C1~C13アルキレン基である。C1~C13アルキレン基は、環状、分枝状又は直鎖状とすることができる。より好ましくは、R1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、3-エチルペンチル及びトレデシルからなる群から選択される。最も好ましくは、R1はメチルである。
【0069】
式(1)による化合物F’では、kは、1~20の整数、好ましくは2、4又は11、最も好ましくは2であり、nは、0~8の整数、好ましくは0又は1、最も好ましくは0である。Xは、酸素(O)又は硫黄(S)とすることができ、好ましくは酸素である。
【0070】
式(1)による化合物F’中にR2として存在する官能基は、アミノ(NH2)、チオール(SH)又はヒドロキシル基(OH)、好ましくは第一級アミノ基又はヒドロキシル基、最も好ましくはヒドロキシル基である。
【0071】
きわめて好ましい実施形態では、式(1)による化合物F’中、R1はメチルであり、且つ
a)kは2であり、nは0であり、R2はOHである、
b)kは2であり、nは1であり、R2はOHであり、XはOである、
c)kは4~11であり、nは0であり、R2はOHである、又は
d)kは4~11であり、nは0であり、R2はNH2である。
【0072】
ジイソシアネート化合物C’
ジイソシアネート化合物C’は、式O=C=N-R3-N=C=O(式中、R3は、環状又は直鎖状C4~C20アルキレン基、又はエステルを含むC4~C20アルキレン基である)。より好ましくは、R3は、直鎖状C4~C20アルキレン基である。更により好ましくは、ジイソシアネート化合物C’は、1,4-ジイソシアナトブタン(BDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)及び1,12-ジイソシアナトドデカンからなる群から選択される。最も好ましくは、ジイソシアネート化合物C’は、1,6-ジイソシアナトヘキサンである。
【0073】
本発明の別の実施形態では、ジイソシアネート化合物C’は、リジンアルキルエステルジイソシアネート、より好ましくはL-リジンエチルエステルジイソシアネートである。
【0074】
官能化ポリマーA’
官能化ポリマーA’は、式P-(FG1)w(式中、wは、約1.8~約2の範囲内にある)を有する。FG1は、OH及びNH2から選択される官能基である官能化ポリマーA’は、OHで又はNH2で、のいずれかで官能化されている。
【0075】
好ましい一実施形態では、wは、約1.9~約2の範囲内にあり、より好ましくは約1.95~約2の範囲内にある。官能化ポリマーA’が正確に二官能性である事例では、即ちW=2である場合、官能化ポリマーA’は、FG1-P-FG1で表される。
【0076】
きわめて好ましい実施形態では、式P-(FG1)wを有する官能化ポリマーA’中のポリマーPは、FG1で官能化されている末端基である。
【0077】
官能化ポリマーA’は、そのヒドロキシル価から決定して、約250~約10000Da、より好ましくは約500~約4000Da、更により好ましくは約900~約2100Da、例えば約1000~約2000Da、なおもより好ましくは約950~約1500Da、最も好ましくは約900~約1200Da、例えば約1000~約1200Daの、数平均分子量Mnを有する。
【0078】
官能化ポリマーA’中のポリマーPは、全ての種類のポリマー主鎖から選択され得、但し、それは、ポリカプロラクトンもポリ(エチレングリコール)も含まない。最も好ましくは、ポリマーA’は、ヒドロキシル末端基で官能化されている直鎖状ポリマーPであり、これは、FG1がOHを表すことを示唆している。
【0079】
好ましくは、官能化ポリマーA’は、FG1で官能化されているポリカプロラクトンでもポリ(エチレングリコール)でもない疎水性ポリマーである。水性環境中で、例えば生体組織を構成する水性環境中、生体医療用超分子ポリマーの生分解が速すぎることを阻止するために、疎水性の官能化ポリマーA’が好ましい。本発明によれば、疎水性ポリマーは、10g/L未満、より好ましくは1g/L未満、最も好ましくは0.1g/L未満の、25℃での水中可溶度を有する。別法では、疎水性ポリマーは、静的液滴法を用いて25℃で測定して、70°超、より好ましくは75°超、最も好ましくは80°超の水接触角を有し、この方法において、接触角を決定するのに接触角ゴニオメーターが用いられ、ここで、接触角は、固体ポリマーの表面と、液滴の端部での水液滴の卵形のタンジェントとの間の角度であると定義される。
【0080】
官能化ポリマーA’は、好ましくは、FG1で官能化されているポリマーP-(FG1)w(式中、Pは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリペプチド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリブタジエン、水素化ポリブタジエン、及びこのようなポリマーのコポリマーからなる群から選択される)である。より好ましくは、官能化ポリマーA’は、FG1で官能化されているポリマーP-(FG1)w(式中、Pは、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブタジエン、水素化ポリブタジエン、ポリペプチド、及びこのようなポリマーのコポリマーからなる群から選択される)である。更により好ましくは、官能化ポリマーA’は、FG1で官能化されているポリマーP-(FG1)w(式中、Pは、ポリカーボネート、ポリブタジエン、水素化ポリブタジエン、及びこのようなポリマーのコポリマーからなる群から選択される)である。
【0081】
本発明の特定の一実施形態では、官能化ポリマーA’は、FG1で官能化されているポリマーP-(FG1)w(式中、Pは、ポリカーボネート、ポリエーテル、及びこのようなポリマーのコポリマーからなる群から選択される)である。最も好ましくは、官能化ポリマーA’は、FG1で官能化されているポリカーボネートである。
【0082】
FG1で官能化されているポリカーボネートは、好ましくは、アルキルジオールポリカーボネートに基づくヒドロキシ末端化ポリカーボネート及びヒドロキシ末端化コポリカーボネート、並びにトリメチレンカーボネート、1,3-ジオキセパン-2-オン、1,3-ジオキサノン-2-オン及び1,3,8,10-テトラオキサシクロテトラデカン-2,9-ジオンの開環重合によって作製されるヒドロキシ末端化ポリカーボネート及びヒドロキシ末端化コポリカーボネートから選択される。より好ましくは、FG1で官能化されているポリカーボネートは、ヒドロキシ末端化アルキルジオールポリカーボネートから選択され、最も好ましくはヒドロキシ末端化ポリ(1,6-ヘキサンジオール)カーボネートから選択される。
【0083】
本発明の別の特定の実施形態では、官能化ポリマーA’は、ポリエーテルからなる群から選択され、但し、それは、FG1で官能化されているポリ(エチレングリコール)ではない。
【0084】
FG1で官能化されているポリエーテルは、好ましくは、末端基がFG1で官能化されているポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)グリコール(ランダム又はブロック)、ポリ(エチレン-ブロック-プロピレン-ブロック-エチレン)グリコール(Pluronics(登録商標)としても知られる)、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(即ちポリ-テトラヒドロフラン)及びポリ(エチレン-コ-テトラメチレンエーテル)グリコール、並びにそれらのコポリマーから選択される。より好ましくは、FG1で官能化されているポリエーテルは、末端基がFG1で官能化されているポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールである。
【0085】
FG1で官能化(水素化)されているポリブタジエンは、好ましくは末端基が官能化されており、且つFG1で官能化されている低cis、高cis、及び高ビニルポリブタジエンから選択される。好ましくは、それらは、1,2位にビニル構造を多く含んだFG1で官能化されているポリブタジエン、FG1で官能化水素化されているポリブタジエン又はFG1で官能化水素化されている1,2-ポリブタジエンからなる群から選択される。
【0086】
驚くべきことに見出されたのは、FG1で官能化されているポリカプロラクトン又はポリ(エチレングリコール)、例えばFG1で官能化されているポリカーボネート、FG1で官能化されているポリブタジエン、FG1で官能化水素化されているポリブタジエン及びFG1で官能化されているポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールとは異なる官能化ポリマーA’を使用するとき、生体医療用多孔質インプラント中でのそれらの使用と関連して、生体医療用超分子ポリマーにとって有益な材料性能が得られたことである。より詳細には、それらの弾性挙動と関連して、耐久性及び抵抗性はγ及び電子ビーム滅菌に向かう。加えて、これらの官能化ポリマーA’の比較的非分解性の性質にもかかわらず、それらのポリマー主鎖中にエステル結合を欠くことによる加水分解に対するそれらの抵抗性に起因して、インビトロで埋込み後に、官能化ポリマーA’主鎖を含む対応する生体医療用超分子ポリマーが実際に分解することが見出された。理論に束縛されることを望むものではないが、このインビトロの分解は、生体医療用超分子ポリマー中に含まれている式(1)による化合物F’の生分解に起源があると考えられる。
【0087】
化合物B’
化合物B’は、式FG2-R4-FG3(式中、R4は、C2~C44アルキレン、C6~C44アリーレン、C7~C44アルカリーレン及びC7~C44アリールアルキレンからなる群から選択され、ここで、アルキレン基、アリーレン基、アルカリーレン基及びアリールアルキレン基は、O、N及びSからなる群から選択される1~5個のヘテロ原子によって任意選択で中断されている)を有する。FG2及びFG3は、OH及びNH2から独立に選択される官能基である。
【0088】
好ましくは、R4は、C2~C20アルキレン基であり、これは1個又は複数の、好ましくは1~5個の酸素原子又は窒素原子で任意選択で中断されている。アルキレン基は、直鎖状であっても環状であってもよい。
【0089】
より好ましくは、R4は、直鎖状C2~C20アルキレン基であり、更により好ましくは、R4は、ブチレン、ヘキシレン、オクチレン、デシレン及びドデシレンからなる群から選択される。最も好ましくは、R4はヘキシレンである。
【0090】
好ましくは、FG2とFG3とは同一であり、より好ましくはFG2とFG3とは両方がOHである。
【0091】
化合物B’は、好ましくは、約130~約400Daの分子量、より好ましくは約130~約190Daの分子量を有する。
【0092】
好ましくは、化合物B’は、直鎖状C2~C12アルキルα,ω-ジオールであり、ここで、アルキレン基は、1個又は複数の、好ましくは1~5個の酸素原子で任意選択で中断されている。更により好ましくは、化合物B’は、1,4-ブタンジオール、1,12-ドデシルジオール及び1,6-ヘキサンジオールから選択される。最も好ましくは、化合物B’は、1,6-ヘキサンジオールである。
【0093】
本発明の別の実施形態では、FG2はOHであり、FG3はNH2であり、R4は直鎖状C2~C20アルキレン基であり、更により好ましくは、R4は、ブチレン、ヘキシレン、オクチレン、デシレン及びドデシレンからなる群から選択され、最も好ましくはヘキシレンである。
【0094】
方法
本発明による生体医療用超分子ポリマーの調製の方法は、当技術分野で公知の任意の方法で、例えば溶液中又はバルク中で反応押出を用いて実施されうる。方法は、それが1ステッププロセスで実施されるか2つ以上の反応ステップを含む逐次プロセスで実施されるかに関係なく、約10℃から約140℃の間、より好ましくは約20℃から約120℃の間、最も好ましくは約40℃から約90℃の間の温度で好ましくは実施される。
【0095】
生体医療用超分子ポリマーの調製の方法は、触媒の存在下で実施されてもよい。イソシアネートとヒドロキシル基との間の反応を促進する好適な触媒の例は、当技術分野で公知である。好ましい触媒としては、第三級アミン、及び金属を含む触媒が挙げられる。好ましい第三級アミンは、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)である。好ましい、金属を含む触媒は、スズ(IV)化合物及びジルコニウム(IV)化合物であり、好ましくは、オクタン酸スズ(II)、ラウリン酸ジブチルスズ(IV)、及びアセト酢酸ジルコニウム(IV)からなる群から選択される。最も好ましくは、触媒は、オクタン酸スズ(II)又はアセト酢酸ジルコニウム(IV)である。触媒の量は、反応物A’、B’、C’及びF’の総量に基づいて、一般に、約1重量%未満、好ましくは約0.2重量%未満、最も好ましくは約0.05重量%から0.15重量%の間である。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、方法は、非反応性極性有機溶媒の存在下で実施され、ここで、非反応性極性有機溶媒の量が、1ステッププロセス、又は2つ以上の反応ステップを含む逐次プロセスのいずれかで形成される反応混合物A’、B’、C’及びF’の総重量に基づいて、少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約40重量%、更により好ましくは少なくとも約50重量%、最も好ましくは少なくとも約70重量%であることが好ましい。反応混合物が水などの無機溶媒を一切含まないこともまた好ましい。非反応性溶媒は、好ましくは、非プロトン性極性有機溶媒、好ましくはテトラヒドロフラン、ジオキサン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及び2-メトキシ-エチル-アセテートから選択される。最も好ましくは、非反応性極性有機溶媒は、ジメチルスルホキシド又はプロピレンカーボネートである。
【0097】
生体医療用超分子ポリマーは、それ自体、即ち溶媒中のポリマーとして、単離され得、又は非溶媒中の沈殿の後に粉末として単離され得、ペレットへと刻まれ、繊維へとスピニングされ、フィルムへと押出され、選んだ媒質中に直接溶解され、又は所望されるいかなる形態へも変形され又は配合されうる。
【0098】
きわめて好ましい実施形態では、生体医療用超分子ポリマーの製造の方法は、式(1):
【化4】
による化合物F’を、
式O=C=N-R
3-N=C=Oによるジイソシアネート化合物C’、
式P-(FG1)
wによる官能化ポリマーA’、及び
式FG2-R
4-FG3による化合物B’
と反応させるステップを含み、
式中、
Xは、O又はSであり、
kは、1~20の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
R
1は、C
1~C
13アルキレン基であり、
R
2は、OH、SH及びNH
2から選択される官能基であり、
FG1、FG2及びFG3は、OH及びNH
2から独立に選択される官能基であり、
wは、約1.8~約2の範囲内にあり、
官能化ポリマーA’は、そのヒドロキシル価から決定して、約1000~約2000Daの数平均分子量M
nを有し、
Pは、ポリマーであり、但し、それは、ポリ(エチレングリコール)でもポリカプロラクトンでもなく、
R
3は、直鎖状C
4~C
20アルキレン基であり、
R
4は、直鎖状C
2~C
20アルキレン基であり、且つ
ここで、A’:B’:C’:F’で表される、化合物A’、B’、C’及びF’のモル比は1:1.5:3.5:1から1:2:4:1の間である。
【0099】
生体医療用超分子ポリマー
第2の態様では、本発明は、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPaの極限引張強度を有する生体医療用超分子ポリマーに関する。この第2の態様はまた、本明細書で前に規定した方法によって得た、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPaの極限引張強度を有する、生体医療用超分子ポリマーとも言い表されうる。
【0100】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、好ましくは、PEO/PEG標準を用いて50℃で10mM LiBrを含むDMF中サイズ排除クロマトグラフィーで決定して、約3000~約150000Da、より好ましくは約4000~約60000Da、更により好ましくは約8000~約40000Da、なおも更により好ましくは約10000~約30000Da、最も好ましくは約10000~約20000Daの数平均分子量Mnを有する。当業者に公知である通り、生体医療用超分子ポリマーの数平均分子量Mnは、更なる反応物のモル量に対するジイソシアネート化合物C’のモル量を変更することによって調整されうる。
【0101】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、そこで、反応物A’、B’、C’及びF’から得られた構造単位が、ランダム配列において生じるランダムポリマーであってもよい。生体医療用超分子ポリマーはまた、そこで、反応物A’、B’、C’及びF’から得られた構造単位の規則的配列が見出されうるセグメント化ポリマーであってもよい。
【0102】
本発明の好ましい一実施形態では、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、0.1~0.4mm厚さのフィルム層が、過剰の脱塩水中へ37℃で24時間浸漬されるときに、生体医療用超分子ポリマーの総重量に基づいて、約2重量%未満の水を吸収する。このようなフィルム層は、生体医療用超分子ポリマーを揮発性溶媒に溶解すること、該溶液の層を表面にキャスティングすること、及び揮発性溶媒を蒸発させることによって創製されうる。
【0103】
補綴メッシュ及び心臓弁などの、生体医療用インプラントにおける用途の場合、生体医療用超分子ポリマーの(熱)機械的性質がきわめて重要である。
【0104】
理論に束縛されることを望むものではないが、生体医療用超分子ポリマーについてinfraで定義した、より低いレベルのヤング率及び100%での弾性率は、その生体医療用途のために生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用インプラントにおける十分な強度及び弾性を保証するために必要であり、一方で、前記生体医療用インプラントが剛性すぎる又は更には脆弱であることを阻止するためにヤング率の上限が必要であり、剛性すぎる又は更には脆弱であると、低い耐久性、又は生体医療用多孔質インプラントの、組織への締着位置での破裂、例えばスティッチング後の破裂を招くと仮定される。それ以上に、極限引張強度及び破断点伸び、並びに延長された疲労挙動の最小値が、体内に埋め込まれている間の分解前の、生体医療用インプラントの良好な耐久性及びその望ましい永続的性能のために必要とされる。加えて、生体医療用多孔質インプラントの変形挙動は、埋込み部位において、組織に準拠する弾性挙動を反映する。本発明では、この性質は、100%での弾性率で割った極限引張強度から得られた値に反映される。
【0105】
生体医療用超分子ポリマーは、確実に、室温又は体温辺りの熱転移を提示すべきでなく、その理由は、これが、取り扱い中又は体内に埋め込まれている間にインプラントの機械的性質を変更しうるためであり、一方で、より高い温度における熱転移の存在は、ポリマーの機械的強度に寄与するポリマー中の秩序化されたドメインの存在を反映する。
【0106】
本発明による生体医療用超分子ポリマーの機械的性質の限定値は、心臓血管組織及び腹部組織などの未処理の組織から得られた値に基づいており、この値はまた、本発明の背景技術においても付与されており、且つ固体材料から、生体医療用超分子ポリマーを含む好ましい生体医療用多孔質インプラントの不織メッシュ構造体などの多孔質構造体へ行くときの強度の低下においても付与されている。未処理の組織の値は、生体医療用超分子ポリマーの限界値を得るために、約10~20の関数で乗算される。この乗算は、生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントの不織メッシュ構造体の多孔度の、機械的性質に対する効果を平衡させるために、且つ医学的治療の失敗を防ぐ安全マージンを構築するために、実施される。
【0107】
理論に束縛されることを望むものではないが、生体医療用多孔質インプラントの強度の低下は、生体医療用超分子ポリマーの強度の低下と比べて、多孔度の量、及び多孔質構造の特定のトポロジーに依存しており、これは、生体医療用超分子ポリマーの元の強度の低下の0.07~0.10倍に等しい、不織メッシュ構造体の強度の低下とも言える。
【0108】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、高い(極)引張強度、高い弾性、高い耐久性を有し、生体医療用途にとってきわめて好適である。
【0109】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、好ましくは、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、好ましくは0.25%伸びから2.50%伸びの間で測定して、少なくとも40MPa、より好ましくは少なくとも50MPa、更により好ましくは少なくとも90MPaのヤング率(Emod)を有する。好ましくは、ヤング率(Emod)は、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、好ましくは0.25%伸びから2.50%伸びの間で測定して、180MPa未満、より好ましくは160MPa未満、最も好ましくは140MPa未満である。きわめて好ましい実施形態では、ヤング率(Emod)は、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、好ましくは0.25%伸びから2.50%伸びの間で測定して、40MPaから160MPaの間である。
【0110】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、好ましくは少なくとも7MPa、より好ましくは少なくとも12MPa、最も好ましくは少なくとも15MPaの100%伸びでの弾性率を有する。
【0111】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、好ましくは少なくとも40MPa、より好ましくは少なくとも45MPaの極限引張強度を有する。
【0112】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、好ましくは少なくとも350%、より好ましくは少なくとも400%、最も好ましくは少なくとも500%の破断点伸びを有する。
【0113】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、応力応答が第1のサイクルでの応力応答の10%未満であるサイクルで疲労破壊を定義して、0.2mmから1mmの間の厚さの5×25mmのポリマー片において2Hz又は10Hz、好ましくは10Hzのサンプルレートで10%伸びを伴う単軸引張試験機を用いて決定して、疲労前に少なくとも300万サイクル、好ましくは少なくとも600万サイクル、最も好ましくは少なくとも1200万サイクルの耐疲労性を有する。
【0114】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、示差走査熱量測定(DSC)で20℃/分の加熱速度で決定して、約50℃から約125℃の間の温度でのガラス転移及び融点、並びに0℃から45℃の間での熱転移なし、好ましくは0℃から40℃の間での熱転移なし、及び好ましくは125℃超での熱転移なしから選択される少なくとも2種の熱転移を有する。きわめて好ましい実施形態では、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、示差走査熱量測定(DSC)で20℃/分の加熱速度で決定して、約50℃から約125℃の間の温度でのガラス転移及び融点、並びに0℃から45℃の間での熱転移なしから選択される少なくとも2種の熱転移を有する。
【0115】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、極限引張強度及び100%伸びでの弾性率が、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で、好ましくは少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは3.5の、100%伸びでの弾性率で割った極限引張強度によって定義される変形指数を有する。
【0116】
好ましい一実施形態では、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、本明細書で前に説明した、極限引張強度、ヤング率、100%伸びでの弾性率、破断点伸び、熱転移、変形指数及び耐疲労性からなる群から選ばれる好ましい(熱)機械的性質のうちの少なくとも1つを有する。
【0117】
きわめて好ましい一実施形態では、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPa、より好ましくは少なくとも40MPa、最も好ましくは少なくとも45MPaの極限引張強度を有し、且つ応力応答が第1のサイクルでの応力応答の10%未満であるサイクルで疲労破壊を定義して、0.2mmから1mmの間の厚さの5×25mmのポリマー片において2Hz又は10Hz、好ましくは10Hzのサンプルレートで10%伸びを伴う単軸引張試験機を用いて決定して、疲労前に少なくとも300万サイクル、好ましくは少なくとも600万サイクル、最も好ましくは少なくとも1200万サイクルの耐疲労性を有する。
【0118】
きわめて好ましい一実施形態では、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、本明細書で前に説明した、極限引張強度、ヤング率、100%伸びでの弾性率、破断点伸び、熱転移、変形指数及び耐疲労性からなる群から選ばれる好ましい(熱)機械的性質の全てを有する。
【0119】
きわめて好ましい実施形態では、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、以下の性質(i)~(vi):
i)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、40MPaから160MPaの間のヤング率、
ii)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも7MPaの、100%伸びでの弾性率、
iii)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも40MPaの極限引張強度、
iv)試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも350%の破断点伸び、
v)応力応答が第1のサイクルでの応力応答の10%未満であるサイクルで疲労破壊を定義して、0.2mmから1mmの間の厚さの5×25mmのポリマー片において10Hzのサンプルレートで10%伸びを伴う単軸引張試験機を用いて決定して、疲労前に少なくとも300万サイクルの耐疲労性、並びに
vi)示差走査熱量測定で20℃/分の加熱速度で決定して、50℃から125℃の間の温度でのガラス転移及び融点、及び0℃から45℃の間での熱転移なしから選択される少なくとも2種の熱転移
のうちの少なくとも1つを有する。
【0120】
最も好ましい実施形態では、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、性質(i)~(vi)の全てを有する。
【0121】
生体医療用多孔質インプラント
好ましくは、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーは、溶融され且つ溶融スピニングされ、溶融堆積モデル化を用いて押出され、レーザシンタリングなどの3Dプリンティング技術で加工されて、又は生体医療用多孔質インプラント又は組織工学用足場を得るために揮発性有機溶媒に溶解され且つエレクトロスピニングされる。生体医療用インプラント又は組織工学用足場は、溶媒キャスティング、塩浸出及び熱誘起型相分離によっても得ることができる。
【0122】
それゆえ、第3の態様では、本発明は、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントに関する。好ましい実施形態では、生体医療用インプラントは、本明細書で前に規定した方法によって溶液から得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーをエレクトロスピニングすることによって得られる不織メッシュ構造体を有する。
【0123】
それゆえ、第4の態様では、本発明は、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーを含む不織メッシュ構造体を有する生体医療用多孔質インプラントの製造の方法であって、
a)本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーを用意するステップと、
b)(a)による生体医療用超分子ポリマーを、エレクトロスピニングに好適な溶媒混合物に溶解するステップと、
c)(b)によるポリマー溶液を標的上でエレクトロスピニングするステップと、
d)生体医療用多孔質インプラントを、標的から、シート、シリンダー又は複雑な3D構造体として単離するステップと
を含む、方法に関する。
【0124】
エレクトロスピニングの方法は、生体医療用超分子ポリマーを、好適な溶媒へと溶解するステップと、前記生体医療用超分子ポリマー溶液を針等の小さいオリフィスを通してポンピングするステップと、その後、ポリマー溶液を電磁場の手段によって標的上に堆積させるステップとを含む。標的は、集電スクリーン、回転マンドレル又はより複雑な3D形状とすることができる。堆積ステップの間にポリマー溶液を乾燥させると、ポリマー繊維の形成がもたらされ、これは、その蓄積によって不織メッシュ構造体を付与する。
【0125】
エレクトロスピニングのために使用される生体医療用超分子ポリマーの溶液は、好ましくは5~25重量%のこの生体医療用超分子ポリマー、より好ましくは10~20重量%のこの生体医療用超分子ポリマー、最も好ましくは12~18重量%のこの生体医療用超分子ポリマーを含有する。生体医療用超分子ポリマーを溶解するために使用される溶媒は、好ましくは少なくとも2種の異なる溶媒、最も好ましくは少なくとも3種の異なる溶媒を含む。溶媒の組成、及び生体医療用超分子ポリマーの濃度は、生体医療用超分子ポリマーが、使用される濃度で完全に溶解されるように、且つその粘度が、エレクトロスピニング用に正しい範囲にあるように選ばれ、これは、それが、エレクトロスピニングのプロセス中に、小さいオリフィスを通してポンピングされるのに十分流動性であること、且つ繊維を形成する生体医療用超分子ポリマー溶液ジェットをもたらすのに十分粘性であることを意味する。
【0126】
一実施形態では、第1の溶媒は、有機揮発性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、メチル-テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、ブタノン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルアセテート、プロピルアセテート及びブチルアセテートから選ばれ、第2の溶媒は、極性プロトン性溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸及びヘキサフルオロ-2-プロパノールから選ばれる。任意選択の第3の及び更なる溶媒は、任意の有機溶媒とすることができるが水とすることもできる。好ましくは、エレクトロスピニング溶液は、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセタミドを含まない。溶媒混合物は、第1の溶媒対第2の溶媒の任意の比を含むことができる。
【0127】
好ましくは、溶液は、
a)エレクトロスピニング溶液を含む溶媒の総重量に対して、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%の第1の溶媒と、
b)エレクトロスピニング溶液を含む溶媒の総重量に対して、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも7重量%、更により好ましくは少なくとも18重量%、最も好ましくは少なくとも22重量%の第2の溶媒と、
c)エレクトロスピニング溶液を含む溶媒の総重量に対して、第3の溶媒なし、より好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、更により好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%の第3の溶媒と
を含む。
【0128】
最も好ましくは、第3の溶媒は、存在する場合、第2の溶媒ではない極性プロトン性溶媒である。
【0129】
好ましくは、エレクトロスピニング後の繊維の直径は、少なくとも2マイクロメートル、より好ましくは少なくとも3マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも4マイクロメートルであり、一方で、繊維の直径は、10マイクロメートル未満、より好ましくは7マイクロメートル未満である。繊維の直径は、不織メッシュ構造体の強度を決定し、埋込み後の不織メッシュ構造体の内部の細胞増殖を媒介する。
【0130】
生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントの生分解性は、当技術分野で公知のインビトロ試験、例えばISO 10993-13を用いて評価されうる。詳細には、酵素的及び酸化的分解は、ポリマーの質量若しくは分子量の減少率を測定することによって、又はインプラントの引張挙動若しくは目視の外観の変化を測定することによってインタイムで追究されうる。促進する酵素的分解は、リパーゼ又はエステラーゼ(10~100U/mL)を含む水中37℃で研究され得、酸化的分解は、20%過酸化水素及び0.1M 塩化コバルト(II)を含む水中37℃で研究されうる。
【0131】
生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントは、in situで、外科的適用の場所で、約2か月の期間後まで、好ましくは約3か月の期間後まで、より好ましくは約6か月の期間後まで、最も好ましくは約9か月の期間後まで、部分的のみで且つ少なくとも完全にではなく生分解され、ここで、分解レベルは、(埋込み前の生体医療用多孔質インプラントの質量-一定の期間後の生体医療用多孔質インプラントの質量)/埋込み前の生体医療用多孔質インプラントの質量×100%によって決定される一定の期間後の分率である。
【0132】
好ましくは、前記生体医療用多孔質インプラントは、約2か月の期間内、好ましくは約3か月の期間内、より好ましくは約6か月の期間内、最も好ましくは約9か月の期間内で、多くとも約50%、より好ましくは多くとも約25%、最も好ましくは多くとも約1%のレベルまで生分解される。
【0133】
本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントは、生体医療用多孔質分子で置き換えられることが企図されている組織の形状に似た、任意の形状、例えば平面状薄シート、チューブ、環、ディスク、シリンダー、弁又はより複雑な3D形状を有することができる。別法では、生体医療用多孔質インプラントは、治療される領域へ直接取り付けられうる薄い可撓性繊維である。全ての形状の場合、不織物体のフィルム厚さ又は壁厚さは、好ましくは100マイクロメートルから1000マイクロメートルの間、より好ましくは200マイクロメートルから800マイクロメートルの間、最も好ましくは250マイクロメートルから600マイクロメートルの間である。
【0134】
別の好ましい実施形態では、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である生体医療用多孔質インプラントは、1~3つの小葉構造体を備える。
【0135】
なおも別の好ましい実施形態では、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である生体医療用多孔質インプラントは、埋込み部位において構造体に取り付けるための0~6つのアーム又はエクステンションを備えるシートの形態を有する。
【0136】
一実施形態では、生体医療用多孔質インプラントは、支持構造体、例えば金属、又はステンレス鋼若しくはニチノールなどの金属合金で好ましくは作製された環又はステントを更に含む。
【0137】
1種又は複数の治療薬が、生体医療用超分子ポリマーに添加されうる。これは、処理の間に単純に混合することによって、又はディップコーティングなどの任意の後処理手順によって、行われうる。治療薬は、細胞接着、組織増殖又は抗炎症活性などの生物的活性に正の影響を及ぼす任意の生物的材料又は化学組成物若しくは医薬組成物とすることができる。生体医療用超分子ポリマーに添加されうる治療薬の非限定的な例は、薬物、ホルモン、オリゴペプチド、グリコサミノグリカン(GAG)、RNA系材料、siRNA、miRNA、DNA系材料、cDNA、プラスミド、又は幹細胞、前駆体細胞、又は当技術分野で公知の任意の有用な細胞株である。治療薬はまた、当技術分野で公知の造影剤であってもよく、MRI、CTスキャン及びX線蛍光などの臨床画像技術において使用されうる造影剤であってもよい。治療薬は、生体医療用超分子ポリマー中で使用されるものに相補的である1つ又は複数の4H単位で修飾されうる。
【0138】
本発明の特定の一実施形態では、生体医療用多孔質インプラントは、治療薬、ペプチド、フィブリン、幹細胞又は造影剤を一切含まない。好ましくは、生体医療用多孔質インプラントは、動物系材料及び/又はヒトのドナーからの材料を一切含まない。
【0139】
好ましくは、生体医療用多孔質インプラントは、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーのうちの1タイプのみを含んで他の生体医療用超分子ポリマーを全く含まず、好ましくは本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーのうちの1タイプのみを含んで他の合成ポリマーを全く含まず、最も好ましくは本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーのうちの1タイプのみを含んで他の合成ポリマー、バイオポリマー又はペプチドを一切含まない。
【0140】
生体医療用多孔質インプラントは、一定の多孔度を有するインプラントを意味し、ここで、材料の多孔度は、空隙、ギャップ、穴、開口部などの孔から構成される材料の体積分率を指し、材料の体積の残部は、本明細書で前に定義した生体医療用超分子ポリマーである。高い多孔度は、それにより新しい組織を形成する、生体医療用多孔質インプラント内部で培養されることになる細胞による浸潤、及び該細胞の吸着を好む。生体医療用多孔質インプラントの多孔度は、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%であり、ここで、多孔度は重量測定で測定され、そこで、多孔度は、以下の式:多孔度=(ポリマーの密度-インプラントの密度)/ポリマーの密度×100%を用いて算出され、ここで、ポリマーの密度は、使用される生体医療用超分子ポリマーの密度であり、生体医療用多孔質インプラントの密度は、生体医療用多孔質インプラントの重量を生体医療用多孔質インプラントの体積で割ったものである。
【0141】
本明細書で前に定義した生体医療用超分子ポリマーの好ましい機械的性質、例えば弾性率及び引張強度は、置き換えられることになる例に必要な軟組織に対応する値よりも意図的に高いように選ばれる。しかしながら、例えばエレクトロスピニングによって得られる不織メッシュ構造体などの、生体医療用超分子ポリマーから製造された生体医療用多孔質インプラントに対応するこれらの機械的性質の値は、一般に、元の生体医療用超分子ポリマーの機械的性質の値よりも低く、例えば、それらは、依然として軟組織の値に近い。
【0142】
好ましい一実施形態では、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントはまた、応力応答が第1のサイクルでの応力応答の10%未満であるサイクルで疲労破壊を定義して、0.2mmから1mmの間の厚さの5×25mmの前記インプラント片において2Hz又は10Hz、好ましくは10Hzのサンプルレート、及び23±2℃又は37±2℃、好ましくは37±2℃の温度で10%の伸びを伴う単軸引張試験機を用いて決定して、好ましくは、疲労前に少なくとも300万サイクル、好ましくは少なくとも600万サイクル、最も好ましくは少なくとも1200万サイクルの耐疲労性も有する。
【0143】
医療用途
本発明による生体医療用超分子ポリマーの機械的性能、より詳細にはそれらの極限引張強度、耐疲労性及び熱的性質は、生体医療用多孔質物品、特に筋肉、上皮及び心臓血管組織の各用途などの軟組織用途において適用されうる医療用多孔質インプラントを製造するのに好適である。生体医療用超分子ポリマーは、フィルムとして、特定の形状にある物体として、バルク材料として又は多孔質構造体の形態において適用されうる。更に、本明細書で前に規定した方法によって得ることが可能である生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントは、哺乳動物対象内の生体組織の支持、増強及び再生の方法において使用されうる。
【0144】
本発明の一実施形態では、生体医療用超分子ポリマーは、エレクトロスピニングを用いて医療用多孔質インプラント中へ処理され、この医療用多孔質インプラントは、続けて、in situの組織工学用足場として用いられ、それは、個々の生体の哺乳動物、例えばヒト、イヌ、ネコ又はウマの体内にそれが埋め込まれた後で、哺乳動物組織が前記多孔質構造体中で増殖し、それによって埋込み前に哺乳動物の体の外部で組織を増殖させる必要性を排除することを意味する。好ましくは、生体医療用超分子ポリマーは、生分解性であり、体内にそれが埋め込まれた後でインプラントの分解がもたらされる。結果として、インプラントは、経時的に組織に置き換えられて、後の段階で医療用多孔質インプラントの外科的除去は必要なく、そのため患者の臨床的コスト及び苦痛を減少させる。
【0145】
第5の態様では、本発明は、心臓血管疾患の治療における使用のための、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、哺乳動物対象における、動脈若しくは静脈の部分、又は静脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁若しくは大動脈弁の部分若しくは全てを、前記生体医療用多孔質インプラントで置き換えることを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラントに関する。
【0146】
この第5の態様はまた、心臓血管疾患の治療の方法であって、前記治療が、哺乳動物対象における、動脈若しくは静脈の部分、又は静脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁若しくは大動脈弁の部分若しくは全てを、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である生体医療用多孔質インプラントで置き換えることを含み、前記生体医療用多孔質インプランが、新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、方法としても言い表されうる。
【0147】
第6の態様では、本発明は、心臓血管疾患の治療における使用のための、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、前記生体医療用多孔質インプラントを、哺乳動物対象における心臓内又は血管内部位に配置することを含み、前記生体医療用多孔質インプラント新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、前記生体医療用多孔質インプラントに関する。
【0148】
この第6の態様はまた、心臓血管疾患の治療の方法であって、前記治療が、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である生体医療用多孔質インプラントを、哺乳動物対象における心臓内又は血管内部位に配置することを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラントとしても言い表されうる。
【0149】
好ましい実施形態では、心臓血管疾患は、慢性静脈不全、大動脈弁狭窄、大動脈不全、肺動脈弁狭窄、肺動脈不全、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0150】
別の好ましい実施形態では、心臓血管疾患の治療における使用のための、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である生体医療用多孔質インプラントは、1~3つの小葉構造体を有する。
【0151】
第7の態様では、再建手術、支持又は増強を必要とする病状、好ましくは脱出症、骨盤臓器脱出症、コンパートメント症候群、収縮性心膜炎、血気胸、血胸、硬膜損傷、及びヘルニア、例えば腹部、横隔膜、裂孔、骨盤、肛門、頭蓋内、スピゲリウスの各ヘルニア、及び椎間板の髄核のヘルニア、並びに腹圧性尿失禁の治療における使用のための、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、再建手術、支持又は増強を必要とする哺乳動物対象の部位での、生体医療用多孔質インプラントの外科的埋込みを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラントに関する。
【0152】
この第7の態様はまた、再建手術、支持又は増強を必要とする病状、好ましくは脱出症、骨盤臓器脱出症、コンパートメント症候群、収縮性心膜炎、血気胸、血胸、硬膜損傷、及びヘルニア、例えば腹部、横隔膜、裂孔、骨盤、肛門、頭蓋内、スピゲリウスの各ヘルニア、及び椎間板の髄核のヘルニア、並びに腹圧性尿失禁の治療の方法であって、前記治療が、再建手術、支持又は増強を必要とする哺乳動物対象の部位での、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である生体医療用多孔質インプラントの外科的埋込みを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい組織の形成用の足場として機能する、方法としても言い表されうる。
【0153】
好ましい一実施形態では、再建手術、支持又は増強を必要とする病状の治療における使用のための、本明細書で前に定義した、又は本明細書で前に規定したエレクトロスピニング方法によって得ることが可能である生体医療用多孔質インプラントは、埋込み部位において構造体に取り付けるための0~6つのアーム又はエクステンションを備えるシートの形態を有する。
【0154】
一実施形態では、生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントは、靭帯再建のために使用される。
【0155】
生体医療用超分子ポリマーを含む生体医療用多孔質インプラントは、内視鏡手術又は腹腔鏡下手術などの最小侵襲性技術、並びに胸郭手術又は心臓切開手術などの侵襲性技術を含む、任意の外科的手順によって患者に送達されうる。
【0156】
そのため、本発明は、上に検討された一定の実施形態を参照して記載されてきた。これらの実施形態が、当業者に周知の多様な修正及び代替的形態を受けうることが認められることになる。
【0157】
更に、本文献及びその特許請求項の範囲を適切に理解するために、動詞「含む」は、本明細書中、並びに特許請求の範囲中及びその共役関係中で使用される場合、その用語の後に続く項目が含まれるが、特に言及されていない項目が排除されないことを意味するという非限定的な意味において使用される。加えて、不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、文脈がその要素のうちの1つ及び1つのみがあることを明らかに必要としていない限り、その要素のうちの1つ超が存在する可能性を排除しない。そのため、不定冠詞「a」又は「an」は、「少なくとも1つ」を通常意味する。
【実施例0158】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を更に例示する。特に言及しないとき、化学物質は、Sigma-Aldrich又はMerckから得ている。官能化ポリマーA’の数平均分子量Mnは、そのヒドロキシル価から決定した。
【0159】
実施例1:5-(2-ヒドロキシエチル)-6-メチル-イソシトシンの調製
2-アセチルブチロラクトン(2.38g、19mmol)及び炭酸グアニジン(3.3g、37mmol)をトリエチルアミン(5.2mL)の存在下、無水エタノール(20mL)中で還流させた。溶液は黄色になり、混濁した。還流で一晩加熱した後、固体をろ過し、エタノールで洗浄し、水に懸濁させた。pHを、HCl溶液で6~7の値へ調整し、混合物をしばらく撹拌した。残渣をろ過し、水及びエタノールで濯ぎ、続いて固体を乾燥させて、純粋な5-(2-ヒドロキシエチル)-6-メチル-イソシトシンを得た。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6): δ11.2 (1H), 6.6 (2H), 4.5 (1H), 3.4(2H), 2.5 (2H), 2.1 (3H). FT-IR (非希釈): ν (cm-1) 3333, 3073, 2871, 1639, 1609, 1541, 1487, 1393,1233, 1051, 915, 853, 789, 716.
【0160】
実施例2:5-(4-ヒドロキシブチル)-6-メチル-イソシトシンの調製
2(i) 2-(4-クロロブトキシ)テトラヒドロ-2H-ピランの調製
4-クロロブタン-1-オール(24g、220mmol)及びジヒドロピラン(22.3g、270mmol)をジクロロメタンに溶解し、ピリジニウムp-トルエンスルホネート(5.2g、18mmol)を添加した。わずかに曇った溶液を室温で一晩撹拌し、褐色がかった溶液を得、これを水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を蒸発させて粗生成物を得、これを真空蒸留(70℃、0.08mbar)で精製して無色の油35.5g(83%)を得た。
【0161】
2(ii) 2-(4-ヨードブトキシ)テトラヒドロ-2H-ピランの調製
2-(4-クロロブトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン(33.5g、170mmol、ステップ2(i)から)、ヨウ化ナトリウム(78g、520mmol)及び炭酸ナトリウム(11g、100mmol)を、アセトン800mL中56時間還流させた。次いで、この混合物を濃縮し、飽和の重炭酸ナトリウム溶液1L中へ注入した。水性溶液をヘキサンで3回抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を蒸発して純粋な生成物44.5g(90%)を得た。
【0162】
2(iii) エチル2-アセチル-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ヘキサノエートの調製
アセト酢酸エチル(24.1g、185mmol)と炭酸カリウム(35.4g、226mmol)とのアセトン(300mL)及びDMF(60mL)中混合物へ、2-(4-ヨードブトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン(40.4g、142mmol、ステップ2(ii)から)のアセトン(300mL)溶液を滴下添加した。この混合物を室温で64時間撹拌し、その後、それを濃縮し、酢酸エチルと飽和アンモニウムクロリド溶液とに分割した。水性相を酢酸エチルで抽出し、合わせた酢酸エチル層をチオ硫酸ナトリウムの10%水性溶液、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を蒸留して粗生成物54gを得、これを、更なる精製なしで使用した。
【0163】
2(iv) 2-アミノ-6-メチル-5-(4-((テトラヒドロ-2H-ピラン2-イル)オキシ)ブチル)ピリミジン-4(1H)-オンの調製
エチル2-アセチル-6-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ヘキサノエート(40.7g、140mmol、ステップ2(iii)から)と炭酸グアニジン(27.5g、143mmol)とのエタノール(800mL)中混合物を80時間還流させた。この混合物をおよそ100mLへ濃縮し、クロロホルム800mLを添加した。軽く混濁した溶液を、重炭酸ナトリウム溶液、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を蒸発させた後、得られた固体をジエチルエーテル中で一晩撹拌した。ろ過し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させて純粋な生成物28g(70%)を白色固体として得た。
【0164】
2(v) 5-(4-ヒドロキシブチル)-6-メチル-イソシトシンの調製
2-アミノ-6-メチル-5-(4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ブチル)ピリミジン-4(1H)-オン(28g、100mmol、ステップ2(iv)から)及びp-トルエンスルホン酸(20.8g、109mmol)をメタノール500mL中60℃で3時間撹拌した。溶媒を蒸発させて、得られた白色固体を、飽和重炭酸ナトリウム溶液120mL中で撹拌して中和した。固体をろ過して除き、水で洗浄し、ジエチルエーテルで2回摩砕した。真空中で上記の五酸化リンを乾燥させて5-(4-ヒドロキシブチル)-6-メチル-イソシトシン18g(92%)を白色固体として得た。
1H NMR(399 MHz, DMSO) δ 10.88 (1H), 6.29 (2H), 4.32 (1H),3.39 (1H), 3.37 (2H), 2.25 (2H), 2.03 (3H), 1.39 (4H). LC-MS: m/z = 198 [M+1].FT-IR (非希釈): ν(cm-1)3273, 3100, 2932, 1688, 1601, 1504, 1375, 1231, 1053, 974, 862, 806, 777
【0165】
実施例3:5-(4-アミノブチル)-6-メチル-イソシトシンの調製
3(i) tert-ブチル(4-ヨードブチル)カルバメートの調製
ヨウ素(80.5g、320mmol)をトリフェニルホスフィン(83.2g、320mmol)及びイミダゾール(21.6g、320mmol)のジクロロメタン(1.5L)溶液へ分割して0℃で添加した。オレンジ色の混合物を室温に加温させ、その後、ジクロロメタン(300mL)中で希釈したtert-ブチル(4-ヒドロキシブチル)カルバメート(50g、260mmol)をゆっくりと添加した。室温で3時間撹拌した後、混合物をセライト上でろ過し、ジクロロメタンで濯いだ。オレンジ色のろ液を5%チオ硫酸ナトリウム溶液で2回洗浄して無色の有機層を得、これを硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を真空中で排出し、得られた固体を、ヘプタンとジエチルエーテル3:1混合物2L中で一晩完全に撹拌した。ろ過して同じ溶媒混合物で洗浄した後、ろ液を濃縮して粗生成物を黄色い油として得た。精製を、酢酸エチル:ヘプタン(1:9)でシリカで溶出するカラムクロマトグラフィーによって実施して、黄色い油56g(71%)を得た。
【0166】
3(ii) エチル2-アセチル-6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキサノエートの調製
エチル3-オキソブタノエート(28g、220mmol、ステップ3(i)から)と炭酸カリウム(36g、260mmol)とのアセトン(250mL)及びDMF(40mL)中混合物へ、tert-ブチル(4-ヨードブチル)カルバメート(50g、170mmol)のアセトン(250mL)溶液を滴下添加した。この混合物を室温で20時間撹拌し、その後、これを濃縮し、酢酸エチルと飽和アンモニウムクロリド溶液とに分割した。酢酸エチル層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を蒸留して黄色い油(54g)を得た。この粗生成物を、更なる精製なしで使用した。
【0167】
3(iii) tert-ブチル(4-(2-アミノ-6-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロピリミジン-5-イル)ブチル)カルバメートの調製
エチル2-アセチル-6-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキサノエート(54g、179mmol、ステップ3(ii)から)と炭酸グアニジン(27.5g、143mmol)とのエタノール(800mL)中混合物を24時間還流させた。透明な溶液を300mLへ濃縮し、水300mLで希釈した。pHを、ヒドロクロリド溶液で5.8の値へ調整した。沈殿物をろ過して除き、水で洗浄した。残渣を、ジエチルエーテルで磨砕し、減圧下40℃で乾燥させて純粋な生成物33.5g(63%)を白色固体として得た。
【0168】
3(iv) 5-(4-アミノブチル)-6-メチル-イソシトシンの調製
tert-ブチル(4-(2-アミノ-6-メチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロピリミジン-5-イル)ブチル)カルバメート(30g、101mmol、ステップ3(iii)から)のジクロロメタン(300mL)中混合物を撹拌し、0℃に冷却した。トリフルオロ酢酸(62mL、810mmol)を滴下添加すると透明な溶液となり、これを室温で4時間撹拌した。溶媒及び過剰のトリフルオロ酢酸を、蒸発させ、メタノールで共蒸発させて除去し、生成物のトリフルオロ酢酸塩を白色固体として得た。この固体をメタノール300mLに溶解し、0℃に冷却し、その後、過剰のN,N-ジ-イソプロピレンエチルアミンを添加した。2~3時間撹拌した後、混合物をろ過し、残渣をメタノールで洗浄した。残渣を、メタノール中、過剰のN,N-ジ-イソプロピルエチルアミンと共に撹拌した。ろ過後、残渣をクロロホルム中で一晩撹拌した。残渣をろ過して乾燥させて5-(4-アミノブチル)-6-メチル-イソシトシン15.4g(77%)を得た。
1H NMR(400 MHz, D2O) δ 2.77 (2H), 2.27 (2H), 2.03(3H), 1.49 (2H), 1.32 (2H). LC-MS: m/z = 197 [M+1]. FT-IR (非希釈): ν(cm-1) 3061, 2963, 2918,2845, 1692, 1628, 1586, 1372, 1233, 1140, 974, 951, 885, 802, 698.
【0169】
実施例4:5-(11-ウンデシル)-6-メチル-イソシトシンの調製
4(i) エチル2-アセチル-13-ヒドロキシトリデカノエートの調製
アセトン30mLに溶解したアセト酢酸エチル(16.8g、130mmol)を、炭酸カリウム(27.5g、200mmol)とヨウ化カリウム(1.65g、10mmol)とのアセトン350mL及びDMF50mL中混合物に60℃で添加した。60℃で撹拌した得られた混合物に、1-ブロモ-1-ウンデカンノール(25g、100mmol)のアセトン100mL溶液に滴下添加した。一晩還流させた後、混合物を室温に冷却し、沈殿物をろ過して除いた。ろ液を乾燥するまで蒸発させ、酢酸エチルに溶解し、アンモニウムクロリドの半飽和水性溶液で2回、ブラインで1回洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を蒸発させて粗生成物32.6gを得、これを更なる精製なしで使用した。
【0170】
4(ii) 5-(11-ウンデシル)-6-メチル-イソシトシンの調製
エチル2-アセチル-13-ヒドロキシトリデカノエート(30g、100mmol、ステップ4(i)から)と炭酸グアニジン(14.4g、80mmol)とのエタノール(400mL)中混合物を48時間還流させた。室温に冷却した後、沈殿物をろ過して除き、ろ液を乾燥するまで蒸発させた。得られたスラリーを重炭酸ナトリウムの半飽和水性溶液600mL中で撹拌した。ろ過後、残渣を、それぞれ水及びジエチルエーテルで磨砕した。残渣を、上記の五酸化リンで真空下で乾燥させて、生成物19.8g(67%)を白色固体として得た。これを、それぞれDMSOから水中で沈殿させ、エタノールで磨砕することにより更に精製すると、5-(11-ウンデシル)-6-メチル-イソシトシンとなった。
1H NMR(400 MHz, DMSO) δ 10.80 (1H), 6.28 (2H), 4.31 (1H),3.37 (2H), 2.23 (2H), 2.02 (3H), 1.39 (2H), 1.24 (16H). LC-MS: m/z = 296 [M+1].FT-IR (非希釈): ν(cm-1)3316, 3127, 2916, 2849, 1682, 1602, 1381, 1244, 1142, 1051, 1034, 980, 872,808, 779.
【0171】
実施例5:ポリマー1の調製
1000Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリ(1,6-ヘキサンジオール)カーボネート(20.0g、20.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)、実施例1で得たイソシトシンモノマー(3.38g、20.0mmol、化合物F’)、1,6-ヘキサンジオール(4.72g、40.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)、ヘキサメチレンジイソシアネート(13.31g、79.2mmol、化合物C’)及び2滴の触媒スズジオクトエートを、乾燥DMSO(40mL)に溶解し、80℃で撹拌した。翌日、この反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)中に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=14.6kDa、Mw/Mn=1.9。
【0172】
実施例6:ポリマー2の調製
1000Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリ(1,6-ヘキサンジオール)カーボネート(20.0g、20.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)、実施例1で得たイソシトシンモノマー(3.38g、20.0mmol、化合物F’)、1,6-ヘキサンジオール(3.54g、30.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)、ヘキサメチレンジイソシアネート(11.64g、69.3mmol、化合物C’)及び2滴の触媒スズジオクトエートを乾燥DMSO(30mL)に溶解し、80℃で撹拌した。翌日、この反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=18.6kDa、Mw/Mn=1.9。
【0173】
実施例7:ポリマー3の調製
1000Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリ(1,6-ヘキサンジオール)カーボネート(20.0g、20.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)、5-(11-ウンデシル)-6-メチル-イソシトシン(5.90g、20.0mmol、化合物F’)、1,6-ヘキサンジオール(4.72g、40.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)、ヘキサメチレンジイソシアネート(13.31g、79.2mmol、化合物C’)及び2滴の触媒スズジオクトエートを乾燥DMSO(20mL)に溶解し、80℃で撹拌した。翌日、この反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=14.0kDa、Mw/Mn=2.1。
【0174】
実施例8:ポリマー4の調製
1000Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(40.0g、40.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)、実施例1で得たイソシトシンモノマー(6.76g、40.0mmol、化合物F’)、1,6-ヘキサンジオール(9.44g、80.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)、ヘキサメチレンジイソシアネート(26.61g、158.4mmol、化合物C’)及び3滴の触媒スズジオクトエートを乾燥DMSO(60mL)に溶解し、80℃で撹拌した。翌日、この反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=16.5kDa、Mw/Mn=1.9。
【0175】
実施例9:ポリマー5の調製
1000Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリ(1,6-ヘキサンジオール)カーボネート(20.0g、20.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)、実施例1で得たイソシトシンモノマー(3.38g、20.0mmol、化合物F’)、1,4-ブタンジオール(3.60g、40.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)、ブチレンジイソシアネート(11.09g、79.2mmol、化合物C’)及び2滴の触媒スズジオクトエートを乾燥DMSO(30mL)に溶解し、80℃で撹拌した。翌日、この反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=14.0kDa、Mw/Mn=1.8。
【0176】
比較例1:A’:B’:C’:F’が1:1:3:1であるポリマーC1の調製
1000Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリ(1,6-ヘキサンジオール)カーボネート(20.0g、20.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)、実施例1で得たイソシトシンモノマー(3.38g、20.0mmol、化合物F’)、1,6-ヘキサンジオール(2.36g、20.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)、ヘキサメチレンジイソシアネート(10.69g、59.4mmol、化合物C’)及び2滴の触媒スズジオクトエートを乾燥DMSO(20mL)に溶解し、80℃で撹拌した。翌日、この反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=13.2kDa、Mw/Mn=2.1。
【0177】
比較例2:A’:B’:C’:F’が1:2.5:4.5:1であるポリマーC2の調製
1000Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリ(1,6-ヘキサンジオール)カーボネート(20.0g、20.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)、実施例1で得たイソシトシンモノマー(3.38g、20.0mmol、化合物F’)、1,6-ヘキサンジオール(5.90g、50.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)、ヘキサメチレンジイソシアネート(14.97g、89.1mmol、化合物C’)及び2滴の触媒スズジオクトエートを乾燥DMSO(40mL)に溶解し、80℃で撹拌した。翌日、反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=18.4kDa、Mw/Mn=1.8。
【0178】
比較例3:ポリマーA’がMn=3000を有するポリカーボネートであるポリマーC3の調製
3000Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリ(1,6-ヘキサンジオール)カーボネート(30.0g、10.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)、実施例1で得たイソシトシンモノマー(1.69g、10.0mmol、化合物F’)、1,6-ヘキサンジオール(2.36g、20.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6.65g、39.6mmol、化合物C’)及び2滴の触媒スズジオクトエートを乾燥DMSO(30mL)に溶解し、80℃で撹拌した。翌日、反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=15.1kDa、Mw/Mn=1.8。
【0179】
比較例4:ポリマーA’がMn=500を有するポリカーボネートであるポリマーC4の調製
500Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリ(1,6-ヘキサンジオール)カーボネート(20.0g、40.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)、実施例1で得たイソシトシンモノマー(6.76g、40.0mmol、化合物F’)、1,6-ヘキサンジオール(9.44g、80.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)、ヘキサメチレンジイソシアネート(26.61g、158.4mmol、化合物C’)及び3滴の触媒スズジオクトエートを乾燥DMSO(40mL)に溶解し、80℃で撹拌した。翌日、この反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=16.2kDa、Mw/Mn=2.1。
【0180】
比較例5:ポリマーA’がMn=2000を有するポリカプロラクトンであるポリマーC5の調製
2000Daの分子量を有するテレケリックヒドロキシ末端化ポリカプロラクトン(20.4g、10.0mmol、真空中で乾燥、官能化ポリマーA’)とヘキサメチレンジイソシアネート(6.85g、40mmol、化合物C’)とを一緒に、1滴の触媒スズジオクトエートの存在下80℃で2時間撹拌した。この反応混合物へ、続けて、実施例1で得たイソシトシンモノマー(1.72g、10.0mmol、化合物F’)を添加し、乾燥DMSO(120mL)に溶解し、80℃で一晩撹拌した。翌日、1,6-ヘキサンジオール(2.34g、20.0mmol、真空中で乾燥、化合物B’)を反応混合物に添加し、続いて80℃で更に2時間撹拌した。反応混合物を25℃に冷却し、追加のDMSOを添加してその粘度を下げ、得られた混合物を過剰の水に添加してポリマーを沈殿させた。ポリマーを弾性白色固体として回収し、クロロホルム/メタノール(7/3 v/v)に再溶解し、過剰のメタノールに再沈殿させた。これは、真空中50℃での乾燥後に透明な弾性固体となった。SEC(DMF、10mM LiBr、PEO/PEG標準):Mn=20.3kDa、Mw/Mn=2.1。
【0181】
実施例9:熱的及び機械的性質
以下の表は、最新技術と比べたときの、本発明によるポリマーの優れた熱的及び機械的性質を示す。全ての測定は、溶媒キャスティングから得て且つ水疱などの目視可能な欠点を示さなかったフィルム、又はフィルムの部分において行った。その上、全てのフィルムは、試験前に室温で2週間、エージングした。
【0182】
【0183】
熱データを、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、20℃/分の加熱速度、及び-80℃~160℃の加熱範囲で得た。データは第1の加熱運転に基づく。
【0184】
【0185】
引張試験を、ASTM D1708-96規格に従い、空気中23±2℃の温度で、20mm/分の伸び速度及び0.02Nの前負荷で、溶媒キャスティングフィルムから切断したドッグボーン型において実施した。ヤング率を、0.25%伸びから2.50%伸びの間で測定した。
【0186】
【0187】
疲労試験を、応力応答が第1のサイクルでの応力応答の10%未満であるサイクルで疲労破壊を定義して、10Hzのサンプルレートで10%伸びを伴う単軸引張試験機を用いて空気中23±2℃の温度で、0.2mmから0.5mmの間の厚さの5×25mmの溶媒キャスティングポリマーフィルム片において実施した。
【0188】
実施例10:エレクトロスピニング
実施例8のポリマー3をクロロホルム/ヘキサフルオロプロパノール(80/20)に濃度14重量%で溶解した。得られた溶液は、所望の繊維厚さを有する溶液の、安定なエレクトロスピニングを可能にするのに十分高い粘度を有していた。得られた不織メッシュ構造体は、組織工学用足場材料として更に使用されうる。エレクトロスピニングは、12kV、0.025mL/分、及び15cmのチップ-先端距離で実施した。繊維を、ポリエチレンフィルムで被った、静電気の接地した集電プレート上に堆積させて、エレクトロスピニングした足場を容易に除去できるようにした。続けて、足場を真空中40℃で24時間乾燥させて、任意の残っている溶媒を除去した。
官能化ポリマーA’が、FG1で官能化されているポリカーボネート、ポリ(テトラメチレングリコール)、及びFG1で官能化水素化されているポリブタジエンから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
ジイソシアネート化合物C’が、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)及び1,12-ジイソシアナトドデカンからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能である、試験方法ASTM D 1708-96により20mm/分のクロスヘッド速度で決定して、少なくとも35MPaの極限引張強度を有する生体医療用超分子ポリマー。
埋込み部位において構造体に取り付けるための0~6つのアーム又はエクステンションを備えるシートの形態にある、請求項11又は12に記載の、若しくは請求項13に記載の方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラント。
心臓血管疾患の治療における使用のための、請求項11、12若しくは14に記載の、又は請求項13に記載の方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、哺乳動物対象における、動脈若しくは静脈の部分、又は静脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁若しくは大動脈弁の部分若しくは全てを前記生体医療用多孔質インプラントで置き換えることを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラント。
心臓血管疾患の治療における使用のための、請求項11、12若しくは14に記載の、又は請求項13に記載の方法によって得ることが可能である、生体医療用多孔質インプラントであって、前記治療が、前記生体医療用多孔質インプラントを、哺乳動物対象における心臓内又は血管内部位に配置することを含み、前記生体医療用多孔質インプラントが、新しい心臓血管組織の形成用の足場として機能する、生体医療用多孔質インプラント。