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特開2023-159387炎症メディエーターのレベルを低減するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159387
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】炎症メディエーターのレベルを低減するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20231024BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 36/63 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 36/324 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K36/63
A61K36/324
A61K31/56
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137408
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2022082301の分割
【原出願日】2017-04-21
(31)【優先権主張番号】62/403,807
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500379107
【氏名又は名称】ニュートラマックス ラボラトリーズ,インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】946 Quality Drive, Lancaster, South Carolina 29720 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,トッド
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン,デイヴィッド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炎症メディエーターを原因とする結合組織の損傷を予防するために構成された組成物を提供する。
【解決手段】ヒドロキシチロソールおよび3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を併用した相乗作用組成物とする。ヒドロキシチロソール源はオリーブ抽出物であればよく、また3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸源はBoswellia serrata抽出物であればよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種かそれ以上の炎症メディエーターを原因とする結合組織の損傷を予防するために構成された組成物であって、これを必要とする対象動物の結合組織における炎症反応を防止又は低減する量でヒドロキシチロソールおよび3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸が相乗的に作用する組み合わせであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシチロソール源がオリーブ抽出物、オリーブの木から得られる生成物、又はオリーブの木から得られる副生物のうちの少なくとも一つであり、
前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸源がBoswellia serrata抽出物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
哺乳類又は鳥類を対象として経口投与用に配合した請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記哺乳類をヒト、犬、猫、馬、駱駝または牛からなる群から選択する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒトを対象として経口投与用に配合した前記組成物が、体重1kg当たり約0.67mg~約2.70mgの量で3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を有し、前記犬を対象として経口投与用に配合した前記組成物が、体重1kg当たり約1.24mg~約4.98mgの量で3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を有する請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒトを対象として経口投与用に配合した前記組成物が、体重1kg当たり約0.15mg~約2.50mgの量でヒドロキシチロソールを有し、前記犬を対象として経口投与用に配合した前記組成物が、体重1kg当たり約0.28mg~約4.60mgの量でヒドロキシチロソールを有する請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒドロキシチロソールおよび前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸が単独の組成物として共に前記対象動物に対し投与されるものである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ヒドロキシチロソールおよび前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸が前記対象動物に対し個別に1時間以内に投与される請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ヒドロキシチロソールおよび前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸が前記対象動物に対し個別に30分以内に投与される請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヒドロキシチロソールおよび前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸が前記対象動物に対し個別に5分以内に投与される請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
一種かそれ以上の炎症メディエーターを原因とする結合組織の損傷を予防、治療、修復または緩和する方法であって、これを必要とするヒト以外の対象動物の結合組織における一種かそれ以上の炎症メディエーターのレベルを低減する量でヒドロキシチロソールおよび3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸が相乗的に作用する組み合わせで前記ヒト以外の対象動物に投与することを特徴とする方法。
【請求項12】
前記ヒドロキシチロソール源がオリーブ抽出物、オリーブの木から得られる生成物、又はオリーブの木から得られる副生物のうちの少なくとも一つであり、
前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸源がBoswellia serrata抽出物である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ヒト以外の哺乳類又は鳥類を対象として経口投与用に配合した組成物を投与する請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒト以外の哺乳類を犬、猫、馬、駱駝または牛からなる群から選択する請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ヒドロキシチロソールおよび前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を単独の組成物として共に投与する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒドロキシチロソールおよび前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を個別に1時間以内に投与する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒドロキシチロソールおよび前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を個別に30分以内に投与する請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドロキシチロソールおよび前記3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を個別に5分以内に投与する請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2016年10月4日を出願日とする米国仮特許出願第62/403,807号の優先権を主張する出願で、この米国仮特許出願の開示全体を援用する出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、(i)3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)および(ii)ヒドロキシチロソールを哺乳類や鳥類に投与する方法を提供するものである。また、本発明はAKBAおよびヒドロキシチロソールを有する経口投与可能な組成物を提供するものでもある。
【背景技術】
【0003】
結合組織は関節における軟骨、骨、滑膜、靭帯、半月板および腱の構造的骨格である。結合組織の成分は常在細胞が生成してから、分泌し、組織の細胞外マトリックス(ECM)の特性を発揮する。構造的骨格として作用することに加えて、ECMは細胞の情報伝達や機能において臨界的な働きをする。関節軟骨において、タイプIIコラーゲンECM構造内で軟骨細胞は明瞭なパターンで配列している。骨形成骨芽細胞および骨細胞ならびに骨吸収破骨細胞は、石灰化タイプIコラーゲンECMにおいて組織化されている。滑膜内のいくつかの線維芽細胞様細胞およびマクロファージ様細胞もECMによって所定位置に保持されている。同様に、腱細胞および靭帯細胞もECM内に配列されている。結合組織ECMの合成および分解は、内在組織細胞が生成する調節分子のネットワークによって制御される。このネットワークは成長因子、および炎症誘発メディエーターとして知られている数多くの分子を有する。
【0004】
これらメディエーターはサイトカイン、ケモカイン、プロスタグランジンおよび(一)酸化窒素(nitric oxide)を有する。これら分子は多数の生物学的活性を示し、細胞増殖や細胞死を誘導する。また、これら物質はECMを生成する同化経路を誘導でき、またECMを分解できる異化酵素(分解酵素、catabolic enzymes)を誘導できる。生理学的条件下では、細胞生存または細胞死、結合組織ECMの生成または分解は、バランス良く恒常性(ホメオスタシス)を維持するために厳密に制御されている。調節分子の生成および機能は、機械的力を始めとする多数の因子、温度やpHなどの物理的因子、化学物質、微生物やこれらの生成物によって変調を受ける。ある条件下では、これら因子が調節分子の過剰でかつ早すぎる生成を招くため、修復不能な組織の損傷を招き、機能喪失や細胞死が生じる。
【0005】
組織は、炎症反応によって機械的要因、物理的要因、化学的要因や感染に反応する。炎症過程は回復、治療、感染からの防衛、生命の保存に資することが知られている。ヒトや動物における炎症反応は2つの相からなる。第1相はプロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症誘発メディエーター(pro-inflammatory mediator)の局所合成に特徴がある。これらは、シクロオキシゲナーゼやリポキシゲナーゼの作用を通じてアラキドン酸から誘導される。これら炎症誘発メディエーターによって局所的な血液の流れが大きくなり、内皮細胞の浸透性が強くなり、白血球動員や白血球蓄積が生じる。引き続き生成される別の炎症誘発メディエーターには、サイトカイン(インターロイキン-1β(IL-1β)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、ケモカイン(IL-8)、および(一)酸化窒素がある。第2相において、即ち分割相において、第1相中に生成したプロスタグランジンが、アラキドン酸が抗炎症性をもつ化学的メディエーターに転換される酵素経路を活性化する。報告によれば、プロスタグランジンE2(PGE2)が15-リポキシゲナーゼの発現を活性化し、アラキドン酸から抗炎症性リポキシンが生成する。このように、炎症の分割が炎症誘発反応によって促進する。これらの研究によれば、炎症反応の開始、進行および終了が厳密に制御されている。炎症が長引き悪化すると、骨関節炎(OA)、リューマチ性関節炎(RA)、アルツハイマー病や心血管病などの多数の障害が発症する。
【0006】
関節組織では、軟骨細胞、滑膜細胞、骨芽細胞、破骨細胞、靭帯細胞および腱細胞は数多くの炎症誘発メディエーターを生成する。これらの中には、PGE2があり、サイトカイン、(一)酸化窒素や結合組織劣化メタロプロテアーゼ(MMP)酵素を始めとする他のメディエーターの生成を誘導することによって調節役割を果たすことが知られている。PGE2は、メタロプロテアーゼ(MMP)を誘導できるため、軟骨ECMの分解に資する。さらに、PGE2は骨吸収および骨棘形成を促進する。PGE2は末梢神経終末の侵害受容体を敏感にするもので、炎症痛を悪化させる。PGE2レベルはシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)酵素によって局所的に調節できる。骨関節炎などの病理学的状態では、COX-2発現は上方調節(up-regulated)され、これに付随してPGE2生成が強くなる。
【0007】
TNF-αは、炎症の主要なメディエーターであり、炎症時の組織の再生/拡張および分解において重要な役割を果たすもので、通常の状態では、炎症はこれら因子によって良く調節されている。即ち、これら因子を原因として炎症が発症し、これに付随して免疫反応が誘導された後に、これら因子レベルは通常の状態まで低減するが、調節されていないTNF-αが生成すると、炎症が慢性化し、関節炎などの各種の疾病が直接発症する。
【0008】
炎症は組織障害や組織感染を解決するために必要かつ重要な免疫学的過程であるが、IL-1βやTNF-αのような炎症誘発メディエーターが慢性的に放出されると、付加的な炎症メディエーターの生成が続くことになる。レベルが正常状態に戻らない場合には、TNF-αの生成の調節不全が生じ、骨関節炎(OA)などの有害な病態生理学過程につながる潜在的な恐れが生じる。
【0009】
TNF-αは炎症過程の開始において鍵となる役割をもつ。TNF-αは関節に存在する各種の細胞、即ち軟骨細胞、骨芽細胞、滑膜内の細胞、関節に内在する免疫細胞、あるいは炎症反応時に関節に浸み込む細胞を生成する。TNF-αのレベルが高くなると、これは骨関節炎患者の滑液、滑膜、靭帯、および軟骨下骨において検出できる。
【0010】
TNF-αは、IL-1βとともに炎症反応の主要調節因子である核内因子-カッパ B(NF-κB)を誘導できる。TNF-αは、PGE2合成に関与する鍵酵素の生成量を増すことによってPGE2の生成を誘導する。鍵酵素にはCOX-2、ミクロソームPGEシンターゼ(mPGES-1)や可溶性ホスホリパーゼA2(sPLA2)がある。さらに、TNF-αは誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の生成を誘導する結果、酸化窒素(NO)レベルが高くなる。IL-6、IL-17およびIL-18を始めとする他のサイトカインおよびケモカインIL-8の生成もTNF-αによって確実に変調を受ける。これら炎症誘発メディエーター、即ちプロスタグランジン、NO、サイトカインやケモカインが組み合わさって生成すると、最終的に骨関節炎にかかっている軟骨が折れる。
【0011】
TNF-αは、細胞外マトリックスの2つの鍵となる成分:アグリカンおよびタイプIIコラーゲンの生成を抑制できる。さらに、TNF-αはアグリカンを分解する酵素:アグリカナーゼADAMTS4およびADAMTS-5の発現を誘導する。これら2つの作用が結合し、関節における軟骨基質の合成と分解との間の正常な生物化学的バランスを崩し、最終的に軟骨が分解する結果になる。また、TNF-αはミトコンドリア機能障害、少ないATP生成量およびアポトーシスにも関係し、さらに軟骨分解を引き起こす役割も果たす。TNF-αは障害や感染に対する本質的な免疫反応を開始するさいに中心的な役割を果たすが、調節不全時にこれが引き金となる有害な効果が生じるため、TNF-αが炎症管理薬品開発のターゲットになる。
【0012】
炎症過程における他の組織の役割についても既に確立されている。滑膜の炎症については現在骨関節炎、特にこの骨関節炎の初期段階時に軟骨分解における鍵となる症状であることが認識されている。滑膜炎の特徴は、滑膜内の内在マクロファージ様細胞および線維芽細胞様細胞を活性化し、TNF-α、IL-1βやPGE2を始めとする炎症誘発メディエーターが過剰量生成することにある。最近の証拠によると、滑膜マクロファージが骨関節炎の最初期におけるサイトカインの主要源であり、これらマクロファージが骨関節炎の全進行にわたって軟骨損傷に対する重要な寄与体であることが示唆されている。サイトカインもPGE2および活性メタロプロテイナーゼ(MMP)の生成を誘導する。現在、これらメディエーターがECM分解と修復との間のバランスを制御することの認識が広まり、この認識を通してこれら分子が治療的介入の好ましいターゲットになっている。軟骨下骨などの関節内の他の組織も関節の健全性を変調させる炎症誘発メディエーターを生成する。
【0013】
サイトカインやプロスタグランジンなどの炎症誘発メディエーターに加えて、反応性酸素種(ROS)も骨関節炎において見られる関節分解に関与している。酸化窒素や過酸化水素などROSが誘導する酸化的ストレスが、軟骨細胞アポトーシスおよび軟骨ECM分解の原因であることがわかっている。さらに、報告によれば、ROSはサイトカインやプロスタグランジンを始めとする炎症誘発メディエーターの生成量の増加につながる信号導入経路を活性化する。試験管研究によれば、ROSおよび炎症誘発メディエーターの生成に関与する経路間が結合していることが実証されている。これら研究は、酸化的ストレスおよび炎症経路の両者を抑制できる薬剤があれば、炎症の調節に特に有用であるとの考えを支持するものである。
【0014】
骨関節炎の病態生理学におけるCOX-2およびPGE2の中心的な役割は、障害の治療を対象とする選択的COX-2抑制剤および各種の非選択的で非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の広範な使用に反映されている。ところが、これら治療薬を長期にわたって使用すると、胃腸病理や軟骨プロテオグリカン代謝の破壊を始めとする副作用が生じる。ヒトモデルや動物モデルを使用した研究によれば、COX抑制剤を使用すると、損傷を受けた骨が治癒し、かつ修復することが実証されている。このように、NSAIDの使用を中心とせずにPGE2やTNF-αを始めとする他の炎症誘発メディエーターの生成を抑制する炎症管理の別な治療方法が求められている。
【0015】
TNF-αをターゲットとして従来開発されてきた薬剤の中にはInfliximab(ヒトTNFに対するキメラモノクローナル抗体)、Adalimumab(完全ヒトモノクローナル抗体)、Etanercept(ヒトIgGのFc部分に結合した二量体TNFRII(p75)融合蛋白質)、Golimumab、CDP571、およびThalidomideがある。ところが、これら薬剤はTNF-αの肯定的な機能を抑制するだけでなく、リンパ腫の発症や感染を始めとする望ましくない結果を招来することがある。このように、TNF-αの肯定的な生理学的機能を阻害せずに、TNF-αが誘導する過剰な反応性酸素種の発生および細胞死を調節できる治療薬が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO2001/045514 A1
【特許文献2】WO2002/018310 A1
【特許文献3】WO2004/005228 A1
【特許文献4】WO2010/029578 A2
【特許文献5】US2002/0004077 A1
【特許文献6】US2002/0058078 A1
【特許文献7】US2002/0198415 A1
【特許文献8】US2004/0039066 A1
【特許文献9】USP6,361,803
【特許文献10】USP6,416,808
【特許文献11】EP1582512 A1
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Gonzalez-Santiago,et al.、Pharmacological research、61.4(2010):364-370
【非特許文献2】Sengupta,et al.Molecular and cellular biochemistry、354.1-2(2011):189-197
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的および作用効果によれば、本発明の第1態様は、ヒドロキシチロソール(hydroxytyrosol)および3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(3-O-acetyl-11-keto-β-boswellic acid)を併用した相乗作用組成物を提供する。実施態様では、ヒドロキシチロソール源がオリーブ抽出物であり、そして3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸源がBoswellia serrata抽出物である。この組成物は、哺乳類を対象として経口投与用に製剤化することができる。哺乳類に関しては、ヒト、犬、猫、馬、駱駝または牛からなる群から選択できる。他の実施態様では、本発明組成物は鳥類を対象として経口投与用に製剤化することができる。
【0019】
実施態様では、ヒトを対象として経口投与用に製剤化した組成物は、体重1kg当たり約0.67mg~約2.70mgの量で3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を有し、かつ体重1kg当たり約0.15mg~約2.50mgの量でヒドロキシチロソールを有していればよい。実施態様では、犬を対象として経口投与用に製剤化した組成物は、体重1kg当たり約1.24mg~約4.98mgの量で3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を有し、かつ体重1kg当たり約0.28mg~約4.60mgの量でヒドロキシチロソールを有していればよい。
【0020】
本発明の別な態様は、一種かそれ以上の炎症メディエーターを原因とする結合組織の損傷を治療、修復または緩和する方法において、これを必要とする哺乳類または鳥類に、上記に記載のヒドロキシチロソールおよび3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を併用した経口投与可能な相乗作用組成物を投与する方法を提供する。
【0021】
本発明のさらに別な態様は、結合組織における一種かそれ以上の炎症メディエーターのレベルを低減させる方法において、これを必要とする哺乳類または鳥類に、上記に記載のヒドロキシチロソールおよび3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸を相乗作用のある形で併用した経口投与可能な組成物を投与する方法を提供する。
【0022】
以下、本発明組成物および本発明方法の実施態様を示す。なお、本発明の組成物および方法は、別な異なる実施態様でも実施可能であり、細部については、特許請求の範囲に記載した要旨から逸脱しなくても各種の自明な態様で変更できることは理解されるべきである。即ち、添付図面および記載は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本開示組成物のいくつかの態様を示すもので、本開示とともに本発明組成物の一定の原理を説明するために役立つ。
【0024】
図1】リポ多糖刺激RAW264.7マウスマクロファージ細胞におけるTNF-α生成に対する一定濃度のヒドロキシチロソールおよびAKBAの効果を示す。
図2】リポ多糖刺激RAW264.7マウスマクロファージ細胞におけるTNF-α生成に対する一定濃度のヒドロキシチロソールおよびAKBAの効果を示す。
図3】リポ多糖刺激RAW264.7マウスマクロファージ細胞におけるTNF-α生成に対する一定濃度のヒドロキシチロソールおよびAKBAの効果を示す。
【0025】
以下、本発明の組成物および対応する方法の実施態様を詳細に説明するが、これら実施態様の実施例を添付図面に示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、(i)3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)および(ii)ヒドロキシチロソールを哺乳動物や鳥類に投与する方法を提供するものである。AKBAおよびヒドロキシチロソールは一つの組成形態で、あるいは一つの投与形態で同時に投与してもよく、あるいは個別に投与してもよい。いくつかの実施態様では、治療特性が重なる期間内に、AKBAおよびヒドロキシチロソールを同時に、あるいは個別に一つの組成物形態で、あるいは一つの投与形態で投与する。実施態様では、組成物を1時間以内に個別に投与する。他の実施態様では、30分以内に個別に組成物を投与する。さらに別な実施態様では、組成物を5分以内に個別に投与する。
【0027】
本明細書で使用する用語“哺乳類”は任意の哺乳動物を指すもので、限定する意図はないが、ヒト、犬、猫、馬、牛および駱駝を含み、また用語“鳥類”は鳥を指す。
【0028】
ヒドロキシチロソールはオリーブの木の各部に見られる一種のフェノール系のファイトケミカル(phytochemical、植物性化学物質)である。ヒドロキシチロソールは、IUPAC名称では4-(2-ヒドロキシエチル)-1,2-ベンゼンジオールであり、以下の構造式で示される化合物である。
【0029】
本発明では、ヒドロキシチロソールは合成したものでもよく、あるいはオリーブの木から抽出および/または精製によって誘導した生成物や副生物などの天然源から得られるものでもよい。さらに、ヒドロキシチロソールについては、オリーブの木から誘導される生成物や副生物から得ることができるヒドロキシチロソール含有抽出物の形態で投与することができる。オリーブの木から得られる生成物や副生物には、制限する意図はないが、オリーブ(オリーブの実)、オリーブの葉、オリーブパルプ、オリーブ油、オリーブ由来植物水、およびオリーブ油の澱などがある。抽出方法に基づいて、当業者ならば、ヒドロキシチロソールの量およびそれぞれの比率を容易に調節できるはずである。実施態様では、ヒドロキシチロソールについては、生産者などの従来から商業上利用できる提供元から入手することができるオリーブから誘導する。
【0030】
本発明で用いるヒドロキシチロソールについては、従来公知な多くの方法によって製造できる。オリーブを任意の適当な手段によって処理すると、本発明で使用する組成物を得ることができる。例えば、オリーブおよび/またはオリーブの葉を圧搾すると、オリーブ油、植物水および固形副生物を含む混合物を得ることができる。ヒドロキシチロソールについては、この混合物から直接得てもよく、あるいは混合物を分留および/または精製してヒドロキシチロソールを得てもよい。組成物の分留および/または精製については、当業者には公知な多数の方法によって実施することができる。分留方法の実例には、有機溶剤を使用する分配処理、クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)や超臨界流体の使用がある。
【0031】
オリーブの葉からのヒドロキシチロソールの抽出に関する参考例はWO02/18310 A1、US2002/0198415 A1、WO2004/005228 A1、USP6,416,808およびUS2002/0058078 A1であり、いずれもオレウロペイン(oleuropein)の少なくとも90%が転換されるまで2~12カ月の間オリーブ植物水を酸性加水分解する方法が開示されている。オリーブ、オリーブパルプ、オリーブ油および精油工場からの廃水からのヒドロキシチロソールの抽出方法については、USP6,361,803、WO01/45514 A1およびUS2002/0004077 A1に開示がある。EP1582512 A1には、オリーブの葉からヒドロキシチロソールの抽出に関して開示がある。US2004/0039066 A1の段落[0080]~[0091]には、核を取り除いていないオリーブの植物水からヒドロキシチロソールを得る方法が開示されている。
【0032】
同様に、市販のヒドロキシチロソール含有オリーブ抽出物も本発明に使用するのに好適である。
【0033】
文献には、ヒトに対するヒドロキシチロソールの一回の投与量が2.5mg/kgの時に経口バイオアベイラビリティ(生物学的利用能、bioavailability)が認められたとの報告があり、観測されたピークプラズマ濃度は1.11±0.20μMmol/Lであった。Gonzalez-Santiago,et al.、Pharmacological research、61.4(2010)の第364~370頁には、投与量の計算は当業者が体重、表面積、および種差を評価することによって決定できるとの記載がある。同様に、種間外挿を対象とする投与量についても、当業者ならば通常の投与量変換法を使用することによって計算できる。
【0034】
ヒドロキシチロソールの典型的な投与量は約0.001mg/kg~約2.0mg/kgである。一部の実施態様では、ヒトやヒト以外の動物を対象とする場合、典型的な一日の投与量は少なくとも0.1mg~300mg以下である。ここで一日の投与量とは、24時間に投与した合計投与量を指す。
【0035】
一部の例示的な実施態様では、ヒトを対象とする場合、ヒドロキシチロソールの投与量は体重1kg当たり0.15~2.50mg(即ち、体重60kgのヒトを対象とする場合9~250mg)に設定することができる。
【0036】
一部の例示的な実施態様では、犬を対象とする場合、ヒドロキシチロソールの投与量は体重1kg当たり0.28kg~4.60mg(即ち体重10kgの犬を対象とする場合2.8~46mg)に設定することができる。
【0037】
ヒドロキシチロソールの投与回数は1週間に1回から1日に5回までの回数に設定することができる。実施態様では、ヒドロキシチロソールの投与回数は2日おきに1回から1日に3回までの回数に設定されている。さらに別な実施態様では、ヒドロキシチロソールの投与回数は1日に1回から2回までの回数に設定されている。さらに別な実施態様では、ヒドロキシチロソールの投与回数は1日に1回に設定されている。ヒドロキシチロソールを投与する場合、給餌してもよく、あるいは給餌しなくてもよい。
【0038】
Boswellia serrataから抽出したファイトケミカルについては、数多くの疾病や病弊の治療に活性を示すことが報告されている。Boswellia serrataのゴム樹脂については、医薬品のインドシステムにおいてアーユルヴェーダ(Ayurvedic)の薬を使用する医者によって関節リウマチや痛風の治療に長年にわたり使用されてきた。ゴム樹脂の各種抽出物は、実験動物において潜在的な抗炎症活性および抗動脈硬化活性を示していた。この抽出物の生物学的活性はボスウェル酸画分の成分に関係がある。3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)については、Boswellia serrata抽出物において最も活性の強い化合物として認められている。AKBAを含有するBoswellia serrata抽出物については、WO2010/029578 A2に記載されているように、試験管内で5-リポキシゲナーゼおよびマトリックスメタロプロテアーゼ-3(matrix metalloproteinase-3、MMP-3)を阻害することが報告されている。同様に、WO2010/029578 A2には、生体内で30%までAKBAで選択的に濃縮されたBoswellia serrata抽出物を有する組成物の、血清バイオマーカーTNF-αおよびIL-1βの顕著な減少を始めとする抗炎症効能に関する報告がある。
【0039】
また文献には、ラット血清中で30%AKBAまで標準化したBoswellia serrata抽出物の単独投与量100mg/kgの生物学的利用能に関する報告がある。その中で、2.0μg/mLのピーク血清濃度が観察されたことが報告されている。Sengupta,et al.Molecular and cellular biochemistry、354.1-2(2011):189-197。投与量の計算については、体重、表面積、および種差を評価することによって当業者が決定できる。同様に、種間外挿を対象とする投与量についても、当業者ならば通常の投与量変換法を使用することによって計算できる。
【0040】
AKBAの典型的な投与量は約0.01mg/kg~約10.0mg/kgである。一部の実施態様では、ヒトやヒト以外の動物を対象とする場合、典型的な一日の投与量は少なくとも1mg~約1g以下である。ここで一日の投与量とは、24時間に投与した合計投与量を指す。
【0041】
一部の例示的な実施態様では、ヒトを対象とする場合、AKBAの投与量は体重1kg当たり0.67~2.70mg(即ち、体重60kgのヒトを対象とする場合40~162mg)に設定することができる。
【0042】
一部の例示的な実施態様では、犬を対象とする場合、AKBAの投与量は体重1kg当たり1.24~4.98mg(即ち体重10kgの犬を対象とする場合12.4~49.8mg)に設定することができる。
【0043】
AKBAの投与回数は1週間に1回から1日に5回までの回数に設定することができる。一部の実施態様では、AKBAの投与回数は2日おきに1回から1日に3回までの回数に設定することができる。さらに別な実施態様では、AKBAの投与回数は1日に1回から2回までの回数に設定することができる。さらに別な実施態様では、AKBAの投与回数は1日に1回に設定することができる。AKBAの投与する場合、給餌してもよく、あるいは給餌しなくてもよい。
【0044】
一部の実施態様は、(i)ヒドロキシチロソールおよび(ii)AKBAを併用すると、相乗作用が表れることを実証するものである。ここで相乗作用とは、2つかそれ以上の成分を併用すると、単独使用の場合よりも個々の成分が発揮する効果の合計よりも大きい結果が得られる効果を指す。一部の実施態様では、結果は統計的に有意味であり、相加効果(additive effect)より大きい。一部の実施態様では、ヒドロキシチロソールおよびAKBAを併用すると、統計的に有意味で、各成分を単独で使用する場合よりも大きな効果を得ることができる。一部の実施態様では、ヒドロキシチロソールおよびAKBAを併用すると、以下の相乗作用の一つ以上を実現することができる。即ち、結合組織への損傷の予防、治療、修復あるいは緩和;鳥類や哺乳類における結合組織の損傷に関連する症状の緩和;および結合組織における一種かそれ以上の炎症メディエーターのレベルの低下のうちの一つ以上である。
【0045】
本発明は、損傷を予防し、治療し、修復し、緩和する方法、あるいは結合組織の炎症の抑制方法、軟骨の保護方法、または鳥類や哺乳類における結合組織の損傷に関連する症状を緩和する方法であって、対象動物に(i)ヒドロキシチロソールおよび(ii)AKBAを投与する方法を提供するものである。ここで用語“結合組織”には、限定するわけではないが、軟骨、骨、滑膜、靭帯、半月板、および腱が含まれる。一部の実施態様では、(i)ヒドロキシチロソールおよび(ii)AKBAの投与によって、結合組織の損傷を予防、治療、修復または緩和することができる。結合組織の損傷は物理的な負傷の結果として生じることがあり、あるいは連続使用、体重および年齢を原因として生じる“摩耗および消耗”として現れることもある。例えば、骨関節炎を挙げることができる。結合組織の損傷は関節リウマチ、滑膜障害、リューマチ性疾患に関連する感染や炎症性結合組織障害などの疾病の原因になることもある。一部の実施態様では、(i)ヒドロキシチロソールおよび(ii)AKBAの投与によって鳥類や哺乳類における結合組織の損傷に関連する症状を緩和することができる。結合組織の損傷に関連する症状には、限定する意図はないが、痛み、不快感、圧迫感、炎症、張りおよび/または膨張感がある。
【0046】
また、本発明は結合組織内の一つかそれ以上の炎症メディエーターのレベルを低下させる方法であって、鳥類または哺乳類に(i)ヒドロキシチロソールおよび(ii)AKBAを投与する方法を提供するものである。炎症メディエーターには、限定を意図するわけではないが、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、プロスタグランジンE2(PGE2)などのプロスタグランジン、インターロイキン-1β(IL-1β)などのサイトカイン、ケモカイン、ロイコトリエン、(一)酸化窒素、および活性酸素がある。
【0047】
ヒドロキシチロソールおよびAKBAの投与は、損傷を治療し、予防しかつ緩和するためにも、また心臓血管系、神経系、筋骨格系および胃腸系に悪影響を与える状態に関連する症状を緩和するためにも有用である。一つの態様では、本発明は投与対象体における炎症反応および/または炎症を予防および/または緩和する組成物および方法を提供するものである。一つの態様では、本発明は炎症障害を管理する組成物および方法、あるいはヒトやヒト以外の動物における炎症による負担を全体的に抑制する組成物および方法を提供するものである。従って、一つの実施態様では、本発明は一種かそれ以上の組織における炎症反応および/または炎症を予防および/または緩和する方法であって、この一つかそれ以上の組織に本発明の組成物を送達する方法を提供するものである。
【0048】
また、本発明は(i)ヒドロキシチロソールおよび(ii)AKBAを有する経口投与可能な組成物を提供するものでもある。経口投与可能な組成物は、限定を意図するものではないが、例示するとカプセル、錠剤、飲料に分散できる粉末剤、ペレット化形態のペースト剤、溶液、懸濁液や乳液などの液体、軟らかなゲル/チューイングカプセル、チューイング可能なバーや従来公知なカプセル封入経口液剤などの他の便利な服用形態を有する任意の経口投与可能な服用形態を取る。
【0049】
経口投与可能な組成物には、一種かそれ以上の非活性の製薬成分(一般に“賦形剤”としても知られている)を配合することができる。非活性成分(Non-active ingredients)は、例えば、活性成分(active ingredients、有効成分)を可溶化し、懸濁させ、濃厚化し、希釈し、乳化し、安定化し、保存し、保護し、着色し、香料処理し、そして最後に安全かつ便利で、その他の点でも使用するのを許容できる服用可能かつ効能がある製剤に製剤化する。賦形剤については製薬上許容できる賦形剤であればよい。製薬上許容できる賦形剤の種類の実例には潤滑剤、緩衝剤、安定化剤、発泡剤、顔料、着色剤、風味剤、充填剤、増量剤、香料、離型改質剤、補助薬、可塑剤、流れ促進剤、離型剤、ポリオール、造粒剤、希釈剤、結合剤、緩衝液、吸収剤、滑剤、接着剤、抗付着剤、酸味料、軟化剤、樹脂、鎮痛剤、溶剤、表面活性剤、乳化剤、エラストマー、およびこれらの混合物がある。
【0050】
経口投与可能な組成物は、さらに一種かそれ以上の活性成分を有することができる。例えば、組成物はさらに一種かそれ以上の薬剤や栄養サプリメントを有していてもよい。一部の実施態様では、組成物はさらに結合組織に有益な化合物を有していてもよい。限定を意図するものではないが、例示するとコンドロイチンなどのグリコサミノグリカン、グルコサミンなどのアミノ糖、メチルスルフォニルメタン(MSM)、(コラーゲンタイプIIを含む)コラーゲン、緑茶抽出物、タツナミソウ属の(scutellaria)抽出物、アカシア抽出物、ターメリック抽出物、クルクミン、セチルミリストレイン錯体(CMO)、および卵殻膜がある。
【0051】
本明細書に引用した文献はすべて、それらの全体を援用するものとする。
【実施例0052】
実施例1:リポ多糖(LPS)刺激RAW264.7マウスマクロファージ細胞におけるTNF-α生成に対するヒドロキシチロソールおよびAKBAの効果
【0053】
60nM、160nMまたは1μMのヒドロキシチロソール(HT)(純度98%、ミズーリ州、セントルイスのSigma-Aldrich社製)を単独使用し、0.28μg/mL、0.56μg/mLまたは1.124μg/mLのAKBA(30%AKBAに標準化した5-LOXIN(商標登録)として投与、PLT Health Solutions社製)を単独使用し、あるいは3種類の濃度のHTそれぞれを3種類の濃度のAKBAそれぞれと併用して、RAW264.7マウスマクロファージ細胞を24時間予備処理した。次に、1μg/mLのリポ多糖(LPS)を用いてさらに24時間細胞に刺激を与えた。LPSは細菌細胞壁に存在するエンドトキシンであり、TNF-αを増大生成する炎症反応を誘導できる。TNF-α生成について細胞上澄み液を分析した。一元配置分散分析(ANOVA)を使用して統計学的に比較を行い、Tukey事後分析を行い、P<0.05を有意差とした。データについては、平均値+/-1SDとした。
【0054】
3種類の濃度のHTそれぞれをAKBAと併用した場合に、単独使用の場合よりもTNF-αのレベルに統計学的に有意な大きな減少が認められた。60nMのHTを0.28μg/mL、0.56μg/mLまたは1.124μg/mLのいずれかのAKBAと併用した場合、HT(P<0.001)やAKBA(P<0.001)単独使用よりもTNF-α生成が大幅に減少した(図1)。160nMのHTを0.56μg/mLのAKBAと併用して処理した細胞中のTNF-αの減少は、HT(P<0.001)の単独使用やAKBA(P=0.001)の単独使用の場合よりも統計学的に有意であった(図2)。1μMのHTを0.28μg/mL、0.56μg/mLか1.124μg/mLのAKBAと併用して処理した細胞の場合、HT(それぞれP<0.001、P=0.002およびP<0.001)の単独使用よりも、またAKBA(それぞれP<0.001、P=0.002およびP=0.004)の単独使用よりも統計学的に有意なTNF-αの減少が認められた(図3)。
図1
図2
図3