(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159399
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】コバルト供給源から誘導される硫酸第一コバルト/ジチオン酸第一コバルト液の処理
(51)【国際特許分類】
C22B 23/00 20060101AFI20231024BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20231024BHJP
C22B 3/08 20060101ALI20231024BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20231024BHJP
C22B 26/10 20060101ALI20231024BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20231024BHJP
C22B 21/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C22B23/00 102
C22B7/00 C
C22B3/08
C22B3/44 101Z
C22B26/10 101
C22B47/00
C22B21/00
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023137949
(22)【出願日】2023-08-28
(62)【分割の表示】P 2021555449の分割
【原出願日】2020-03-10
(31)【優先権主張番号】16/353,140
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519166707
【氏名又は名称】ロチャー・マンガニーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】チャウ,ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジョーイ・チャン-イェン
(72)【発明者】
【氏名】ナク,アンカ-ミハエラ
(72)【発明者】
【氏名】ワーケンティン,ダグラス・デール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コバルト供給源から誘導される硫酸第一コバルト/ジチオン酸第一コバルト液の処理方法を提供する。
【解決手段】リチウムイオン電池の成分から誘導されるコバルト供給源の処理から誘導される硫酸ナトリウムおよび/またはジチオン酸ナトリウム含有液の水の除去および/または再循環方法であって、コバルト供給源から硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を誘導する段階;コバルトを炭酸第一コバルトまたは水酸化第一コバルトとして沈殿させた後、これを液から除去する段階;硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを結晶化して、得られた結晶を除去した後、結晶を加熱して、無水硫酸ナトリウム、二酸化硫黄および水にする段階;ならびに、続いて無水硫酸ナトリウムを分離する段階;を含む、前記方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト供給源の処理から誘導される硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム含有液からの水の除去および/または再循環方法であって、
a.リチウムイオン電池の成分に由来する材料を処理してコバルト供給源を誘導する段階;
b.二酸化硫黄および硫酸をコバルト供給源と混合して、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を誘導する段階;
c.コバルトを全体的または部分的に炭酸第一コバルトまたは水酸化第一コバルトとして沈殿させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去する段階;
d.硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを結晶化して、液から硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの大部分を分離する段階;
e.硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を加熱して、無水硫酸ナトリウム、二酸化硫黄および水を形成する段階;ならびに、
f.二酸化硫黄および水から無水硫酸ナトリウムを分離する段階;
を含む、前記方法。
【請求項2】
リチウムイオン電池の成分に由来する材料が、金属アルミニウム箔に結合しているコバルト含有化合物を含むカソード材料であり、コバルト供給源が、
a.カソード材料を硫酸溶液に浸漬して、コバルト含有化合物から金属アルミニウム箔を引き離す段階;
b.断片として存在する金属アルミニウム箔を篩い分けして、硫酸溶液中に混合された粒子として存在するコバルト供給源から分離する段階;
によって誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リチウムイオン電池の成分に由来する材料が、カソード材料に由来するコバルト化合物、ならびにアノード材料および/または熱処理プラスチックに由来する炭素およびまたは黒鉛材料からなり、コバルト供給源が、
a.材料を泡沫浮選で処理して、コバルト供給源から炭素および/または黒鉛の大部分を分離する段階;
によって誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リチウムイオン電池の成分に由来する材料が、カソード材料に由来するコバルト化合物と電解液に由来するフッ素化化合物からなり、コバルト供給源が、
a.水中での浸漬によって材料からフッ素化化合物の大部分を抽出する段階;
b.抽出されたフッ素化化合物を含有する水から濾過によりコバルト供給源を分離する段階;
c.抽出されたフッ素化化合物を含有する水を石灰で処理して、フッ素化化合物をフッ化カルシウムとして沈殿させる段階;
d.処理した水から濾過によりフッ化カルシウムを分離する段階;
によって誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液に炭酸ナトリウムを加えることにより炭酸第一コバルトを沈殿させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液に水酸化ナトリウムを加えることにより水酸化第一コバルトを沈殿させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
硫酸塩およびジチオン酸塩が、硫酸の有無にかかわらず二酸化硫黄、亜硫酸、メタ亜硫酸塩、重硫酸塩から誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
液のナノ濾過によりジチオン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムから水が分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ジチオン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムの再循環段階を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
硫酸マンガン、ジチオン酸マンガン、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を共誘導するためにコバルト供給源中にマンガンの存在を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
マンガンが、炭酸第一コバルトと組み合わせて炭酸マンガンとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
マンガンが、炭酸第一コバルトおよび炭酸リチウムと組み合わせて炭酸マンガンとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
マンガンが、水酸化第一コバルトと組み合わせて水酸化マンガンとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
硫酸ニッケル、ジチオン酸ニッケル、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を共誘導するためにコバルト供給源中にニッケルの存在を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ニッケルが、炭酸第一コバルトと組み合わせて炭酸ニッケルとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ニッケルが、炭酸第一コバルトおよび炭酸リチウムと組み合わせて炭酸ニッケルとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ニッケルが、水酸化第一コバルトと組み合わせて水酸化ニッケルとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を共誘導するためにコバルト供給源中にリチウムの存在を包含する、請求項1に記載の方法であって、コバルトが水酸化コバルトとして沈殿し、リチウムが、段階cでは依然として液中にあり、続いて炭酸ナトリウムの添加によって炭酸リチウムとして液から沈殿する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同時係属出願第15/806183号の一部継続出願であり、2016年11月11日提出の仮出願番号62/421139号の優先権を主張するものである。
[0001]本発明は、リチウムイオン電池からのカソード材料のようなコバルト含有供給源材料の湿式冶金処理から誘導されるもののような、硫酸塩およびジチオン酸塩含有液からの水および硫酸塩の回収に関する。リチウムイオン電池からのカソード材料は、全体的もしくは部分的に金属アルミニウムに結合していてもよく、ならびに/またはアノードとの共処理(co-processing)から誘導される炭素および/もしくは黒鉛と混合されていてもよ
く、ならびに/またはリチウムイオン電池電解液との共処理から誘導されるフッ素化化合物と混合されていてもよい。
【背景技術】
【0002】
[0002]コバルトを、より高い原子価のコバルトを含有する供給源材料、例えば酸化コバルト(III)から、二酸化硫黄などの還元剤を硫酸と組み合わせて用いて浸出させると、硫酸第一コバルトおよびジチオン酸第一コバルトをもたらすことができることが、一般に知られている。これは、以下の反応で説明される:
Co2O3+SO2+H2SO4=2CoSO4+H2O
[0003]Co2O3+2SO2+H2SO4=2CoS2O6+H2O
[0004]再充電可能なリチウムイオン電池のカソード材料中に存在するコバルトは三価状態にあり、二酸化硫黄および硫酸で浸出されると予想される。LiCoO2のようなリチウムコバルト酸化物は、典型的には個人用電子デバイスに用いられる高エネルギーリチウムイオン電池用の一般的なカソード材料であり、以下の反応に従って浸出すると予想される:
[0005]2LiCoO2+SO2+2H2SO4=Li2SO4+2CoSO4+2H2O
[0006]2LiCoO2+3SO2+2H2SO4=Li2SO4+2CoS2O6+2H2O
[0007]2LiCoO2+4SO2+2H2SO4=Li2S2O6+2CoS2O6+2H2O
[0008]二酸化硫黄および硫酸でのリチウムコバルト酸化物の浸出について実施された実験研究では、最大100%のリチウムおよびコバルトの抽出が達成され、実施したすべての浸出試験でジチオン酸塩が検出されたことが確認された。
【0003】
[0009]LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2のようなリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物は、電気自動車での使用に適した高エネルギーおよび高出力の両方を有する新たなカソード材料であり、以下の反応に従って浸出すると予想される:
[00010]2LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2+SO2+2H2SO4=
Li2SO4+2(Ni,Co,Mn)SO4+2H2O
[00011]2LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2+3SO2+2H2SO4
=Li2SO4+ 2(Ni,Co,Mn)CoS2O6+2H2O
[00012]2LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2+4SO2+2H2SO4
=Li2S2O6+2(Ni,Co,Mn)S2O6+2H2O
[00013](Ni,Co,Mn)SO4および(Ni,Co,Mn)S2O6は、それぞ
れ混合金属硫酸塩および混合金属ジチオン酸塩を表す。
【0004】
[00014]二酸化硫黄および硫酸でのリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の浸出に
ついて実施された実験研究では、最大100%のリチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトの抽出が達成され、実施したすべての浸出試験でジチオン酸塩が検出されたことが確認された。
【0005】
[00015]LiNi0.8Co0.15Al0.05O2のようなリチウムニッケルコバ
ルトアルミニウム酸化物は、電気自動車での使用に適した高エネルギーおよび高出力の両方を有する他の新たなカソード材料であり、以下の反応に従って浸出すると予想される:
[00016]2LiNi0.8Co0.15Al0.05O2+SO2+2H2SO4=L
i2SO4+2(Ni,Co,Al)SO4+2H2O
[00017]2LiNi0.8Co0.15Al0.05O2+3SO2+2H2SO4=
Li2SO4+2(Ni,Co,Al)CoS2O6+2H2O
[00018]2LiNi0.8Co0.15Al0.05O2+4SO2+2H2SO4=
Li2S2O6+2(Ni,Co,Al)S2O6+2H2O
[00019](Ni,Co,Al)SO4および(Ni,Co,Al)S2O6は、それぞ
れ混合金属硫酸塩および混合金属ジチオン酸塩を表す。
【0006】
[00020]二酸化硫黄および硫酸でのリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の浸出に
ついて実施された実験研究では、最大100%のリチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムの抽出が達成され、実施したすべての浸出試験でジチオン酸塩が検出されたことが確認された。
【0007】
[00021]ジチオン酸塩に対応し、エネルギー効率の良い方法で水を回収しつつ、二酸化
硫黄での還元浸出を用いる、コバルトを含有する使用済みリチウムイオン電池カソード材料から有益な金属を回収する公知の従来法はない。米国特許公報第8460631号には、硫酸マンガンおよびジチオン酸マンガンを含有し、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムも含有する液の処理について記載されているが、該発明では、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムの存在下または非存在下で硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを硫酸第一コバルトおよびジチオン酸第一コバルトと一緒に処理する方法は、明らかでない。さらに、ジチオン酸塩に対応し、水を回収し、ロックサイクル(locked cycle)方式で処理溶液を浸出液に再循環させて戻すプロセスは、存在する場合はリチウムの回収率を著しく向上させることが発見された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
[00022]したがって、本発明は、コバルト供給源の処理から誘導される硫酸ナトリウム
およびジチオン酸ナトリウム含有液からの水の除去および/または再循環方法であって、リチウムイオン電池の成分に由来する材料を処理してコバルト供給源を誘導する段階;二酸化硫黄および硫酸をコバルト供給源と混合して、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を誘導する段階;コバルトを全体的または部分的に炭酸第一コバルトまたは水酸化第一コバルトとして沈殿させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去する段階;硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを結晶化して、液から硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの大部分を分離する段階;硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を加熱して、無水硫酸ナトリウム、二酸化硫黄および水を形成する段階;ならびに、二酸化硫黄および水から無水硫酸ナトリウムを分離する段階;を含む、前記方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[00023]
図1~3は、本発明の第1の態様に関するプロセスフローシートを例示し、“
S”は固相を示し、“L”は液相を示す。
【
図1】[00024]
図1は、使用済みリチウムコバルト酸化物を処理するための第1の態様に関するプロセスフローシートを例示する。
【
図2】[00025]
図2は、使用済みリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を処理するための第1の態様に関するプロセスフローシートを例示する。
【
図3】[00026]
図3は、使用済みリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物を処理するための第1の態様に関するプロセスフローシートを例示する。
【
図4】[00027]
図4は、使用済みリチウムコバルト酸化物を処理するための第2の態様に関するプロセスフローシートを例示する。
【
図5】[00028]
図5は、使用済みリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を処理するための第2の態様に関するプロセスフローシートを例示する。
【
図6】[00029]
図6は、使用済みリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物を処理するための第2の態様に関するプロセスフローシートを例示する。
【
図7】[00030]
図7は、使用済みリチウムコバルト酸化物を処理するための第3の態様に関するプロセスフローシートを例示する。
【
図8】[00031]
図8は、使用済みリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を処理するための第3の態様に関するプロセスフローシートを例示する。
【
図9】[00032]
図9は、使用済みリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物を処理するための第3の態様に関するプロセスフローシートを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[00033]本発明に従って、リチウムイオン電池のカソード材料から回収されるもののよ
うな酸化コバルト(III)含有供給源材料の亜硫酸および硫酸浸出から誘導される硫酸第一コバルトおよびジチオン酸第一コバルト含有液の湿式冶金処理プロセスを提供する。
【0012】
[00034]態様1について、
図1~3を参照する。
[00035]硫酸第一コバルトおよびジチオン酸第一コバルト含有液を炭酸ナトリウムで処
理して、炭酸第一コバルト固体と、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム含有液とを形成する。
【0013】
[00036]硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムは、存在する場合、炭酸第一コバルト
固体と一緒に、炭酸リチウム固体として部分的に沈殿する。
[00037]炭酸第一コバルト含有固体および存在する場合は炭酸リチウム固体を、濾過ま
たは遠心分離によって炭酸塩処理液から除去する。
【0014】
[00038]炭酸第一コバルト含有固体および存在する場合は炭酸リチウム固体を洗浄して
、可溶性不純物を除去し、リチウムイオン電池用カソード材料などに再利用するための清浄な材料を生産する。
【0015】
[00039]硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを、存在する場合は残存する硫酸
リチウムおよびジチオン酸リチウムと一緒に含有する濾液または遠心分離物を、晶析装置で処理して、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶の大部分を結晶化させる。
【0016】
[00040]結晶化は、硫酸ナトリウム十水和物およびジチオン酸ナトリウム二水和物を沈
殿(結晶化)させるための冷却か、または無水硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを沈殿(結晶化)させるための多重効用結晶化(multi-effect crystallization)によって実施することができる。
【0017】
[00041]硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、ジチオン酸ナトリウム結
晶を硫酸ナトリウムおよび再循環可能な二酸化硫黄およびコバルト供給源材料浸出用の水に転化させるのに十分な温度に加熱する。ジチオン酸ナトリウムを硫酸ナトリウムおよび二酸化硫黄に転化させる温度は、Chow et al,(“New Developments in the Recovery of Manganese from Lower-grade Resources”, Minerals & Metallurgical Processing, Vol.29,No.1,2012年2月,70~71頁)に記載されている。
【0018】
[00042]硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの大部分が除去されていて、リチ
ウムが供給源材料中に存在していた場合は硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する晶析装置の液を、これまでに回収されていないリチウムおよびコバルトをさらに回収し、エネルギー効率の良い方法で水を再利用するために、浸出回路に再循環させる。
【0019】
[00043]あるいは、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの大部分が除去されて
いて、リチウムが供給源材料中に存在していた場合は硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する晶析装置の液の一部をナノ濾過膜に通して、水に富み硫酸塩およびジチオン酸塩を含まない再循環用の液生成物(liquor output)と、硫酸ナトリウムおよびジチオ
ン酸ナトリウム晶析装置に再循環させるための硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム濃縮物ならびに硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを、作り出すことができる。
【0020】
[00044]沈殿したコバルトおよびリチウム含有化合物は、リチウムイオン電池用カソー
ド材料の製造に用いることができる。これは一般に、望ましい比率のコバルトおよびリチウム含有化合物を組み合わせ、混合物に熱処理手順を実施することにより行われる。Jones et al(“LixCoO2(0<x≦1): A New Cathode
Material for Batteries of High Energy Density”, Solid State Ionics, 3/4, 1981, 171~174頁)は、リチウムおよびコバルト化合物を処理することによるリチウムコバルト酸化物カソード材料の製造方法について記載している。Lu et al(“米国特許公報第8685565号”、2014年4月)は、リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルト化合物を処理することによるリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の製造方法について記載している。Kim et al(“Synthesis of High-Density Nickel Cobalt Aluminum Hydroxide by Continuous Coprecipitation Method”, ACS Applied Materials & Interfaces, 4, 2012, 586~589頁)は、リチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウム化合物を処理することによるリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物の製造方法について記載している。商業的電池製造業者は、典型的には独自の独占所有権のある処理方法を開発し、使用して、リチウムイオン電池用カソード材料を生産している。
【0021】
[00045]硫酸第一コバルトおよびジチオン酸第一コバルトから硫酸ナトリウムおよびジ
チオン酸ナトリウムへの転化は、ジチオン酸塩を処理し、リチウムの回収率を向上させ、エネルギー効率の良い方法で水を再循環させる、新規方法を提供する。
【0022】
[00046]態様2について、
図4~6を参照する。
[00047]硫酸第一コバルトおよびジチオン酸第一コバルト含有液を水酸化ナトリウムで
処理して、水酸化第一コバルト固体と、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム含有液とを形成する;
[00048]水酸化第一コバルト含有固体を、濾過または遠心分離によって水酸化物処理液
から除去する;
[00049]水酸化第一コバルト含有固体を洗浄して、可溶性不純物を除去し、リチウムイ
オン電池用カソード材料などに再利用するための清浄な材料を生産する;
[00050]炭酸ナトリウムを残存溶液に加えると、存在する場合はリチウムの一部が炭酸
リチウムとして沈殿する;
[00051]炭酸リチウム固体を、濾過または遠心分離によって炭酸塩処理液から除去する
;
[00052]炭酸リチウム固体を洗浄して、可溶性不純物を除去し、リチウムイオン電池用
カソード材料などに再利用するための清浄な材料を生産する;
[00053]硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを、存在する場合は残存する硫酸
リチウムおよびジチオン酸リチウムと一緒に含有する濾液または遠心分離物を、晶析装置で処理して、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶の大部分を結晶化させる;
[00054]結晶化は、硫酸ナトリウム十水和物およびジチオン酸ナトリウム二水和物を沈
殿(結晶化)させるための冷却か、または無水硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを沈殿(結晶化)させるための多重効用結晶化によって実施することができる;
[00055]硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、ジチオン酸ナトリウム結
晶を硫酸ナトリウムおよび再循環可能な二酸化硫黄およびコバルト供給源材料浸出用の水に転化するのに十分な温度に加熱する;
[00056]硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの大部分が除去されていて、リチ
ウムが供給源材料中に存在していた場合は硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する晶析装置の液を、これまでに回収されていないリチウムおよびコバルトをさらに回収し、エネルギー効率の良い方法で水を再利用するために、浸出回路に再循環させる。
【0023】
[00057]あるいは、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの大部分が除去されて
いて、リチウムが供給源材料中に存在していた場合は硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する晶析装置の液の一部を、ナノ濾過膜に通して、水に富み硫酸塩およびジチオン酸塩を含まない再循環用の液生成物と、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム晶析装置に再循環させるための硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム濃縮物ならびに供給源材料中にリチウムが存在していた場合は硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを、作り出すことができる。
【0024】
[00058]態様3について、
図7~9を参照する。
[00059]硫酸第一コバルトおよびジチオン酸第一コバルト含有液を水酸化リチウムで処
理して、水酸化第一コバルト固体と、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウム含有液とを形成する;
[00060]水酸化リチウムは、フローシートの前の操作によって回収される炭酸リチウム
を処理することにより生産することができる。Wietelmann et al (“Lithium and Lithium Compounds”, Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co, 2013, 24頁)は、炭酸リチウムを水酸化カルシウムと反応させることによる水酸化リチウムの生産方法について記載している;
[00061]水酸化第一コバルト含有固体を、濾過または遠心分離によって水酸化物処理液
から除去する;
[00062]水酸化第一コバルト含有固体を洗浄して、可溶性不純物を除去し、リチウムイ
オン電池用カソード材料などに再利用するための清浄な材料を生産する;
[00063]炭酸ナトリウムを残存溶液に加えると、存在する場合はリチウムの一部が炭酸
リチウムとして沈殿する;
[00064]炭酸リチウム固体を、濾過または遠心分離によって炭酸塩処理液から除去する
;
[00065]炭酸リチウム固体を洗浄して、可溶性不純物を除去し、リチウムイオン電池用
カソード材料などに再利用するための清浄な材料を生産する;
[00066]硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを、存在する場合は残存する硫酸
リチウムおよびジチオン酸リチウムと一緒に含有する濾液または遠心分離物を、晶析装置で処理して、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶の大部分を結晶化させる;
[00067]結晶化は、硫酸ナトリウム十水和物およびジチオン酸ナトリウム二水和物を沈
殿(結晶化)させるための冷却か、または無水硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを沈殿(結晶化)させるための多重効用結晶化によって実施することができる;
[00068]硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、ジチオン酸ナトリウム結
晶を硫酸ナトリウムおよび再循環可能な二酸化硫黄およびコバルト供給源材料浸出用の水に転化するのに十分な温度に加熱する;
[00069]硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの大部分が除去されていて、リチ
ウムが供給源材料中に存在していた場合は硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する晶析装置の液を、これまでに回収されていないリチウムおよびコバルトをさらに回収し、エネルギー効率の良い方法で水を再利用するために、浸出回路に再循環させる。
【0025】
[00070]あるいは、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの大部分が除去されて
いて、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する晶析装置の液の一部を、ナノ濾過膜に通して、水に富み硫酸塩およびジチオン酸塩を含まない再循環用の液生成物と、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム晶析装置に再循環させるための硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム濃縮物ならびに硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを、作り出すことができる。
【0026】
[00071]沈殿したコバルトおよびリチウム含有化合物は、リチウムイオン電池用カソー
ド材料の製造に用いることができる。
[00072]
図1に示すリチウムコバルト酸化物の処理についての態様1に関し、フローシ
ートを以下のように記載する:
[00073]浸出反応器(12)において、化学式LiCoO
2を有する使用済みリチウム
イオン電池カソード材料を、SO
2およびH
2SO
4試薬、ならびに、水と場合によってはフローシートの最終工程から先立って回収されていないリチウムおよび/またはコバルトとを含有する溶液と組み合わせて、混合する。リチウムおよびコバルトは溶液に溶解して、硫酸コバルト、ジチオン酸コバルト、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する浸出溶液を生じる。
【0027】
[00074]浸出溶液を沈殿反応器(20)に移動させ、ここで炭酸ナトリウム溶液を加え
て混合して、コバルトおよび一部の溶解リチウムを炭酸コバルトおよび炭酸リチウム固体として沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0028】
[00075]沈殿反応は以下のように生じる:
[00076]CoSO4+Na2CO3=CoCO3+Na2SO4 ほぼ完全に転化
[00077]CoS2O6+Na2CO3=CoCO3+Na2S2O6 ほぼ完全に転
化
[00078]Li2SO4+Na2CO3=Li2CO3+Na2SO4 部分的に転化
[00079]Li2S2O6+Na2CO3=Li2CO3+Na2S2O6 部分的に
転化
[00080]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(14)して炭酸リチウム
および炭酸コバルトを分離し、これをすすいで収集生成物(16)を生じさせる。
【0029】
[00081]濾液を晶析装置(18)に移動させ、ここで硫酸ナトリウムおよびジチオン酸
ナトリウムの一部を、多重効用結晶化または冷却結晶化により固体結晶として結晶化させる。固体硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、遠心機またはフィルター(
22)を用いて溶液から収集する。硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を約120℃に加熱(24)して、ジチオン酸ナトリウムを硫酸ナトリウム副生成物およびSO2に分解し、SO2を浸出に再循環させることができる。母溶液は残存する硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび水を含有し、浸出に再循環させて戻して(26)、水の消費を最小限に抑え、フローシート全体のリチウム回収率を最大化する。あるいは、母溶液の一部をナノ濾過(28)により処理して、生成物をすすぐための清浄な水(30)を生じさせ、使用済みのすすぎ水(32)を浸出に戻して再利用することができる。ナノ濾過からの濃縮物(34)を晶析装置に再循環させて戻して、硫酸ナトリウムの回収率を最大化する。炭酸リチウムおよび炭酸コバルトの混合収集生成物(16)を熱処理(36)して、リチウムイオン電池に用いるための新たなカソード化合物を製造する。必要な場合、追加的な炭酸リチウムおよびまたは炭酸コバルトを収集生成物に加えて、熱処理に先立ちリチウムとコバルトの望ましい比率を達成してもよい。
【0030】
[00082]
図2に示すリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の処理についての態様1
に関し、フローシートを以下のように記載する:
[00083]浸出反応器(40)において、例えば化学式LiNi-
0.33Mn
0.33Co
0.33O
2を有する使用済みリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物カソード材料を、SO
2およびH
2SO
4試薬、ならびに、水と場合によってはフローシートの最終工程から先立って回収されていないリチウムおよび/またはニッケルおよび/またはマンガンおよび/またはコバルトとを含有する溶液と組み合わせて、混合する。リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトは溶液に溶解して、ニッケルマンガンコバルト硫酸塩、ニッケルマンガンコバルトジチオン酸塩、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する浸出溶液を生じる。
【0031】
[00084]浸出溶液を沈殿反応器(48)に移動させ、ここで炭酸ナトリウムを加えて混
合して、ニッケル、マンガンおよびコバルトおよび一部の溶解リチウムをニッケル、マンガン、コバルトおよびリチウムの炭酸塩固体として沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0032】
[00085]沈殿反応は以下のように生じる:
[00086]( Ni,Mn,Co)SO4+Na2CO3=(Ni,Mn,Co)CO3+Na2SO4 ほぼ完全に転化
[00087](Ni,Mn,Co)S2O6+Na2CO3=(Ni,Mn,Co)CO3
+Na2S2O6 ほぼ完全に転化
[00088]Li2SO4+Na2CO3=Li2CO3+Na2SO4 部分的に転化
[00089]Li2S2O6+Na2CO3=Li2CO3+Na2S2O6 部分的に
転化
[00090]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(42)して炭酸リチウム
およびニッケルマンガンコバルト炭酸塩を分離し、これをすすいで収集生成物(44)を生じさせる。
【0033】
[00091]濾液を晶析装置(46)に移動させ、ここで硫酸ナトリウムおよびジチオン酸
ナトリウムの一部を、多重効用結晶化または冷却結晶化により固体結晶として結晶化させる。固体硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、遠心機またはフィルター(50)を用いて溶液から収集する。硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を約120℃に加熱(52)して、ジチオン酸ナトリウムを硫酸ナトリウム副生成物およびSO2に分解し、SO2を浸出に再循環させることができる。母溶液は残存する硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび水を含有し、浸出に再循環させて戻して(54)、水の消費を最小限に抑え、フローシート全体のリチウム回収率を最大化する。あるいは、母溶液の一部をナノ濾過(56)により処理して、生成物をすすぐための清浄な水(58)を生じさせ、使用済みのすすぎ水(60)を浸出に戻して再利用することができる。ナノ濾過からの濃縮物(62)を晶析装置に再循環させて戻して、硫酸ナトリウムの回収率を最大化する。炭酸リチウムおよびニッケルマンガンコバルト炭酸塩の混合収集生成物(44)を熱処理(64)して、リチウムイオン電池に用いるための新たなカソード化合物を製造する。必要な場合、追加的なリチウム、ニッケル、マンガンおよびまたはコバルト化合物を収集生成物に加えて、熱処理に先立ちリチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトの望ましい比率を達成してもよい。
【0034】
[00092]
図3に示すリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物の処理についての態
様1に関し、フローシートを以下のように記載する:
[00093]浸出反応器(70)において、例えば化学式LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2を有する使用済みリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物カソード材料を、SO
2およびH
2SO
4試薬、ならびに、水と場合によってはフローシートの最終工程から先立って回収されていないリチウムおよび/またはニッケルおよび/またはコバルトおよび/またはアルミニウムとを含有する溶液と組み合わせて、混合する。リチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムは溶液に溶解して、ニッケルコバルトアルミニウム硫酸塩、ニッケルコバルトアルミニウムジチオン酸塩、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する浸出溶液を生じる。
【0035】
[00094]浸出溶液を沈殿反応器(78)に移動させ、ここで炭酸ナトリウムを加えて混
合して、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムおよび一部の溶解リチウムをニッケル、コバルト、アルミニウムおよびリチウム炭酸塩固体として沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0036】
[00095]沈殿反応は以下のように生じる:
[00096](Ni,Co,Al)SO4+Na2CO3=(Ni,Co,Al)CO3+
Na2SO4 ほぼ完全に転化
[00097](Ni,Co,Al)S2O6+Na2CO3=(Ni,Co,Al)CO3
+Na2S2O6 ほぼ完全に転化
[00098]Li2SO4+Na2CO3=Li2CO3+Na2SO4 部分的に転化
[00099]Li2S2O6+Na2CO3=Li2CO3+Na2S2O6 部分的に
転化
[000100]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(72)して炭酸リチウムおよびニッケルコバルトアルミニウム炭酸塩を分離し、これをすすいで収集生成物(74)を生じさせる。
【0037】
[000101]濾液を晶析装置(76)に移動させ、ここで硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの一部を、多重効用結晶化または冷却結晶化により固体結晶として結晶化させる。固体硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、遠心機またはフィルター(80)を用いて溶液から収集する。硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を約120℃に加熱(82)して、ジチオン酸ナトリウムを硫酸ナトリウム副生成物およびSO2に分解し、SO2を浸出に再循環させることができる。母溶液は残存する硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび水を含有し、浸出に再循環させて戻して(84)、水の消費を最小限に抑え、フローシート全体のリチウム回収率を最大化する。あるいは、母溶液の一部をナノ濾過(86)により処理して、生成物をすすぐための清浄な水(88)を生じさせ、使用済みのすすぎ水(90)を浸出に戻して再利用することができる。ナノ濾過からの濃縮物(92)を晶析装置に再循環させて戻して、硫酸ナトリウムの回収率を最大化する。炭酸リチウムおよびニッケルコバルトアルミニウム炭酸塩の混合収集生成物(74)を熱処理(94)して、リチウムイオン電池に用いるための新たなカソード化合物を製造する。必要な場合、追加的なリチウム、ニッケル、コバルトおよびまたはアルミニウム化合物を収集生成物に加えて、熱処理に先立ちリチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムの望ましい比率を達成してもよい。
【0038】
[000102]
図4に示すリチウムコバルト酸化物の処理についての態様2に関し、フローシートを以下のように記載する:
[000103]浸出反応器(100)において、化学式LiCoO
2を有する使用済みリチウムイオン電池カソード材料を、SO
2およびH
2SO
4試薬、ならびに、水と場合によってはフローシートの最終工程から先立って回収されていないリチウムおよび/またはコバルトとを含有する溶液と組み合わせて、混合する。リチウムおよびコバルトは溶液に溶解して、硫酸コバルト、ジチオン酸コバルト、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する浸出溶液を生じる。
【0039】
[000104]浸出溶液を沈殿反応器(108)に移動させ、ここで水酸化ナトリウムを加えて混合して、コバルトを水酸化コバルトとして選択的に沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0040】
[000105]沈殿反応は以下のように生じる:
[000106]CoSO4+2NaOH=Co(OH)2+Na2SO4 ほぼ完全に転化
[000107]CoS2O6+2NaOH=Co(OH)2+Na2S2O6 ほぼ完全に転化
[000108]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(102)して水酸化コバルトを分離し、これをすすいで収集生成物(104)を生じさせる。
【0041】
[000109]濾過溶液を第2の沈殿反応器(106)に移動させ、ここで炭酸ナトリウムを加えて混合して、溶解リチウムの一部を炭酸リチウム固体として沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0042】
[000110]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(118)して炭酸リチウムを分離し、これをすすいで収集生成物(120)を生じさせる。
[000111]濾液を晶析装置(114)に移動させ、ここで硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの一部を、多重効用結晶化または冷却結晶化により固体結晶として結晶化させる。固体硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、遠心機またはフィルター(116)を用いて溶液から収集する。硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を約120℃に加熱(110)して、ジチオン酸ナトリウムを硫酸ナトリウム副生成物およびSO2に分解し、SO2を浸出に再循環させることができる。母溶液は残存する硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび水を含有し、浸出に再循環させて戻して(112)、水の消費を最小限に抑え、フローシート全体のリチウム回収率を最大化する。あるいは、母溶液の一部をナノ濾過(122)により処理して、生成物をすすぐための清浄な水(124)を生じさせ、使用済みのすすぎ水(126、128)を浸出に戻して再利用することができる。ナノ濾過からの濃縮物(130)を晶析装置に再循環させて戻して、硫酸ナトリウムの回収率を最大化する。炭酸リチウム(120)および水酸化コバルト(104)の収集生成物を望ましい比率のリチウムおよびコバルトに混合し、熱処理(132)して、リチウムイオン電池に用いるための新たなカソード化合物を製造する。必要な場合、追加的なリチウムおよびまたはコバルト化合物を収集生成物に加えて、熱処理に先立ちリチウムおよびコバルトの望ましい比率を達成してもよい。
【0043】
[000112]
図5に示すリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の処理についての態様2に関し、フローシートを以下のように記載する:
[000113]浸出反応器(140)において、例えば化学式LiNi-
0.33Mn
0.3
3Co
0.33O
2を有する使用済みリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物カソード材料を、SO
2およびH
2SO
4試薬、ならびに、水と場合によってはフローシートの最終工程から先立って回収されていないリチウムおよび/またはニッケルおよび/またはマンガンおよび/またはコバルトとを含有する溶液と組み合わせて、混合する。リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトは溶液に溶解して、ニッケルマンガンコバルト硫酸塩、ニッケルマンガンコバルトジチオン酸塩、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する浸出溶液を生じる。
【0044】
[000114]浸出溶液を沈殿反応器(148)に移動させ、ここで水酸化ナトリウムを加えて混合して、ニッケル、マンガンおよびコバルトをニッケルマンガンコバルト水酸化物として選択的に沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0045】
[000115]沈殿反応は以下のように生じる:
[000116](Ni,Mn,Co)SO4+2NaOH=(Ni,Mn,Co)(OH)2+Na2SO4 ほぼ完全に転化
[000117](Ni,Mn,Co)S2O6+2NaOH=(Ni,Mn,Co)(OH)2+Na2S2O6 ほぼ完全に転化
[000118]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(142)してニッケルマンガンコバルト水酸化物を分離し、これをすすいで収集生成物(144)を生じさせる。
【0046】
[000119]濾過溶液を第2の沈殿反応器(146)に移動させ、ここで炭酸ナトリウムを加えて混合して、溶解リチウムの一部を炭酸リチウム固体として沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0047】
[000120]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(158)して炭酸リチウムを分離し、これをすすいで収集生成物(160)を生じさせる。
[000121]濾液を晶析装置(154)に移動させ、ここで硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの一部を、多重効用結晶化または冷却結晶化により固体結晶として結晶化させる。固体硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、遠心機またはフィルター(156)を用いて溶液から収集する。硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を約120℃に加熱(150)して、ジチオン酸ナトリウムを硫酸ナトリウム副生成物およびSO2に分解し、SO2を浸出に再循環させることができる。母溶液は残存する硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび水を含有し、浸出に再循環させて戻して(152)、水の消費を最小限に抑え、フローシート全体のリチウム回収率を最大化する。あるいは、母溶液の一部をナノ濾過(162)により処理して、生成物をすすぐための清浄な水(164)を生じさせ、使用済みのすすぎ水(166、168)を浸出に戻して再利用することができる。ナノ濾過からの濃縮物(170)を晶析装置に再循環させて戻して、硫酸ナトリウムの回収率を最大化する。炭酸リチウム(160)およびニッケルマンガンコバルト水酸化物(144)の収集生成物を望ましい比率のリチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトに混合し、熱処理(172)して、リチウムイオン電池に用いるための新たなカソード化合物を製造する。必要な場合、追加的なリチウム、ニッケル、マンガンおよびまたはコバルト化合物を収集生成物に加えて、熱処理に先立ちリチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトの望ましい比率を達成してもよい。
【0048】
[000122]
図6に示すリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物の処理についての態様2に関し、フローシートを以下のように記載する:
[000123]浸出反応器(180)において、例えば化学式LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2を有する使用済みリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物カソード材料を、SO
2およびH
2SO
4試薬、ならびに、水と場合によってはフローシートの最終工程から先立って回収されていないリチウムおよび/またはニッケルおよび/またはコバルトおよび/またはアルミニウムとを含有する溶液と組み合わせて、混合する。リチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムは溶液に溶解して、ニッケルコバルトアルミニウム硫酸塩、ニッケルコバルトアルミニウムジチオン酸塩、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する浸出溶液を生じる。
【0049】
[000124]浸出溶液を沈殿反応器(188)に移動させ、ここで水酸化ナトリウムを加えて混合して、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムをニッケルコバルトアルミニウム水酸化物として選択的に沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0050】
[000125]沈殿反応は以下のように生じる:
[000126](Ni,Co,Al)SO4+2NaOH=(Ni,Co,Al)(OH)2+Na2SO4 ほぼ完全に転化
[000127](Ni,Co,Al)S2O6+2NaOH=(Ni,Co,Al)(OH)2+Na2S2O6 ほぼ完全に転化
[000128]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(182)してニッケルコバルトアルミニウム水酸化物を分離し、これをすすいで収集生成物(184)を生じさせる。
【0051】
[000129]濾過溶液を第2の沈殿反応器(186)に移動させ、ここで炭酸ナトリウムを加えて混合して、溶解リチウムの一部を炭酸リチウム固体として沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0052】
[000130]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(198)して炭酸リチウムを分離し、これをすすいで収集生成物(200)を生じさせる。
[000131]濾液を晶析装置(194)に移動させ、ここで硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの一部を、多重効用結晶化または冷却結晶化により固体結晶として結晶化させる。固体硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、遠心機またはフィルター(196)を用いて溶液から収集する。硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を約120℃に加熱(190)して、ジチオン酸ナトリウムを硫酸ナトリウム副生成物およびSO2に分解し、SO2を浸出に再循環させることができる。母溶液は残存する硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび水を含有し、浸出に再循環させて戻して(192)、水の消費を最小限に抑え、フローシート全体のリチウム回収率を最大化する。あるいは、母溶液の一部をナノ濾過(202)により処理して、生成物をすすぐための清浄な水(204)を生じさせ、使用済みのすすぎ水(206、208)を浸出に戻して再利用することができる。ナノ濾過からの濃縮物(210)を晶析装置に再循環させて戻して、硫酸ナトリウムの回収率を最大化する。炭酸リチウム(200)およびニッケルコバルトアルミニウム水酸化物(184)の収集生成物を望ましい比率のリチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムに混合し、熱処理(212)して、リチウムイオン電池に用いるための新たなカソード化合物を製造する。必要な場合、追加的なリチウム、ニッケル、コバルトおよびまたはアルミニウム化合物を収集生成物に加えて、熱処理に先立ちリチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムの望ま
しい比率を達成してもよい。
【0053】
[000132]
図7に示すリチウムコバルト酸化物の処理についての態様3に関し、フローシートを以下のように記載する:
[000133]浸出反応器(220)において、化学式LiCoO
2を有する使用済みリチウムイオン電池カソード材料を、SO
2およびH
2SO
4試薬、ならびに、水と場合によってはフローシートの最終工程から先立って回収されていないリチウムおよび/またはコバルトとを含有する溶液と組み合わせて、混合する。リチウムおよびコバルトは溶液に溶解して、硫酸コバルト、ジチオン酸コバルト、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する浸出溶液を生じる。
【0054】
[000134]浸出溶液を沈殿反応器(228)に移動させ、ここで水酸化リチウムを加えて混合して、コバルトを水酸化コバルトとして選択的に沈殿させ、主に硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する溶液を形成する。
【0055】
[000135]沈殿反応は以下のように生じる:
[000136]CoSO4+2LiOH=Co(OH)2+Li2SO4 ほぼ完全に転化
[000137]CoS2O6+2LiOH=Co(OH)2+Li2S2O6 ほぼ完全に転化
[000138]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(222)して水酸化コバルトを分離し、これをすすいで収集生成物(224)を生じさせる。
【0056】
[000139]濾過溶液を第2の沈殿反応器(226)に移動させ、ここで炭酸ナトリウムを加えて混合して、溶解リチウムの一部を炭酸リチウム固体として沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0057】
[000140]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(238)して炭酸リチウムを分離し、これをすすぐ(240)。炭酸リチウムの一部を生成物(242)として収集する。炭酸リチウムの残りの部分をさらに水酸化カルシウムと混合(244)して、溶解水酸化リチウムおよび固体炭酸カルシウムを含有するスラリーを生じさせる。スラリーを濾過(246)して炭酸カルシウム固体と水酸化リチウム溶液を分離し、水酸化リチウム溶液は、コバルト化合物を沈殿させるために再利用する(228)。
【0058】
[000141]第2のフィルター(238)からの濾液を晶析装置(234)に移動させ、ここで硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの一部を、多重効用結晶化または冷却結晶化により固体結晶として結晶化させる。固体硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、遠心機またはフィルター(236)を用いて溶液から収集する。硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を約120℃に加熱(230)して、ジチオン酸ナトリウムを硫酸ナトリウム副生成物およびSO2に分解し、SO2を浸出に再循環させることができる。母溶液は残存する硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび水を含有し、浸出に再循環させて戻して(232)、水の消費を最小限に抑え、フローシート全体のリチウム回収率を最大化する。あるいは、母溶液の一部をナノ濾過(248)により処理して、生成物をすすぐための清浄な水(250)を生じさせ、使用済みのすすぎ水(252、254)を浸出に戻して再利用することができる。ナノ濾過からの濃縮物(256)を晶析装置に再循環させて戻して、硫酸ナトリウムの回収率を最大化する。炭酸リチウム(242)および水酸化コバルト(224)の収集生成物を望ましい比率のリチウムおよびコバルトに混合し、熱処理(258)して、リチウムイオン電池に用いるための新たなカソード化合物を製造する。必要な場合、追加的なリチウムおよびまたはコバルト化合物を収集生成物に加えて、熱処理に先立ちリチウムお
よびコバルトの望ましい比率を達成してもよい。
【0059】
[000142]
図8に示すリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の処理についての態様3に関し、フローシートを以下のように記載する:
[000143]浸出反応器(270)において、例えば化学式LiNi-
0.33Mn
0.3
3Co
0.33O
2を有する使用済みリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物カソード材料を、SO
2およびH
2SO
4試薬、ならびに、水と場合によってはフローシートの最終工程から先立って回収されていないリチウムおよび/またはニッケルおよび/またはマンガンおよび/またはコバルトを含有する溶液と組み合わせて、混合する。リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトは溶液に溶解して、ニッケルマンガンコバルト硫酸塩、ニッケルマンガンコバルトジチオン酸塩、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する浸出溶液を生じる。
【0060】
[000144]浸出溶液を沈殿反応器(278)に移動させ、ここで水酸化リチウムを加えて混合して、ニッケル、マンガンおよびコバルトをニッケルマンガンコバルト水酸化物として選択的に沈殿させ、主に硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する溶液を形成する。
【0061】
[000145]沈殿反応は以下のように生じる:
[000146](Ni,Mn,Co)SO4+2LiOH=(Ni,Mn,Co)(OH)2+Li2SO4 ほぼ完全に転化
[000147](Ni,Mn,Co)S2O6+2LiOH=(Ni,Mn,Co)(OH)2+Li2S2O6 ほぼ完全に転化
[000148]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(272)してニッケルマンガンコバルト水酸化物を分離し、これをすすいで収集生成物(274)を生じさせる。
【0062】
[000149]濾過溶液を第2の沈殿反応器(276)に移動させ、ここで炭酸ナトリウムを加えて混合して、溶解リチウムの一部を炭酸リチウム固体として沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0063】
[000150]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(288)して炭酸リチウムを分離し、これをすすぐ(290)。炭酸リチウムの一部を生成物(292)として収集する。炭酸リチウムの残りの部分をさらに水酸化カルシウムと混合(294)して、溶解水酸化リチウムおよび固体炭酸カルシウムを含有するスラリーを生じさせる。スラリーを濾過(296)して炭酸カルシウム固体と水酸化リチウム溶液を分離し、水酸化リチウム溶液は、コバルト化合物を沈殿させるために再利用する(278)。
【0064】
[000151]第2のフィルター(288)からの濾液を晶析装置(284)に移動させ、ここで硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの一部を、多重効用結晶化または冷却結晶化により固体結晶として結晶化させる。固体硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、遠心機またはフィルター(286)を用いて溶液から収集する。硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を約120℃に加熱(280)して、ジチオン酸ナトリウムを硫酸ナトリウム副生成物およびSO2に分解し、SO2を浸出に再循環させることができる。母溶液は残存する硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび水を含有し、浸出に再循環させて戻して(282)、水の消費を最小限に抑え、フローシート全体のリチウム回収率を最大化する。あるいは、母溶液の一部をナノ濾過(298)により処理して、生成物をすすぐための清浄な水(300)を生じさせ、使用済みのすすぎ水(302、304)を浸出に戻して再利用することができる。ナノ濾過からの濃縮物(306)を晶析装置に再循環させて戻して、硫酸ナトリウム
の回収率を最大化する。炭酸リチウム(292)およびニッケルマンガンコバルト水酸化物(274)の収集生成物を望ましい比率のリチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトに混合し、熱処理(308)して、リチウムイオン電池に用いるための新たなカソード化合物を製造する。必要な場合、追加的なリチウム、ニッケル、マンガンおよびまたはコバルト化合物を収集生成物に加えて、熱処理に先立ちリチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトの望ましい比率を達成してもよい。
【0065】
[000152]
図9に示すリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物の処理についての態様3に関し、フローシートを以下のように記載する:
[000153]浸出反応器(320)において、例えば化学式LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2を有する使用済みリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物カソード材料を、SO
2およびH
2SO
4試薬、ならびに、水と場合によってはフローシートの最終工程から先立って回収されていないリチウムおよび/またはニッケルおよび/またはコバルトおよび/またはアルミニウムとを含有する溶液と組み合わせて、混合する。リチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムは溶液に溶解して、ニッケルコバルトアルミニウム硫酸塩、ニッケルコバルトアルミニウムジチオン酸塩、硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する浸出溶液を生じる。
【0066】
[000154]浸出溶液を沈殿反応器(328)に移動させ、ここで水酸化リチウムを加えて混合して、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムをニッケルコバルトアルミニウム水酸化物として選択的に沈殿させ、主に硫酸リチウムおよびジチオン酸リチウムを含有する溶液を形成する。
【0067】
[000155]沈殿反応は以下のように生じる:
[000156](Ni,Co,Al)SO4+2LiOH=(Ni,Co,Al)(OH)2+Li2SO4 ほぼ完全に転化
[000157](Ni,Co,Al)S2O6+2LiOH=(Ni,Co,Al)(OH)2+Li2S2O6 ほぼ完全に転化
[000158]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(322)してニッケルコバルトアルミニウム水酸化物を分離し、これをすすいで収集生成物(324)を生じさせる。
【0068】
[000159]濾過溶液を第2の沈殿反応器(326)に移動させ、ここで炭酸ナトリウムを加えて混合して、溶解リチウムの一部を炭酸リチウム固体として沈殿させ、主に硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを含有する溶液を形成する。
【0069】
[000160]固体および液体の混合物を含有するスラリーを濾過(338)して炭酸リチウムを分離し、これをすすぐ(340)。炭酸リチウムの一部を生成物(342)として収集する。炭酸リチウムの残りの部分をさらに水酸化カルシウムと混合(344)して、溶解水酸化リチウムおよび固体炭酸カルシウムを含有するスラリーを生じさせる。スラリーを濾過(346)して炭酸カルシウム固体と水酸化リチウム溶液を分離し、水酸化リチウム溶液は、ニッケル、コバルトおよびアルミニウム化合物を沈殿させるために再利用する(328)。
【0070】
[000161]第2のフィルター(338)からの濾液を晶析装置(334)に移動させ、ここで硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの一部を、多重効用結晶化または冷却結晶化により固体結晶として結晶化させる。固体硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を、遠心機またはフィルター(336)を用いて溶液から収集する。硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を約120℃に加熱(330)して、ジチオン酸ナト
リウムを硫酸ナトリウム副生成物およびSO2に分解し、SO2を浸出に再循環させることができる。母溶液は残存する硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび水を含有し、浸出に再循環させて戻して(332)、水の消費を最小限に抑え、フローシート全体のリチウム回収率を最大化する。あるいは、母溶液の一部をナノ濾過(348)により処理して、生成物をすすぐための清浄な水(350)を生じさせ、使用済みのすすぎ水(352、354)を浸出に戻して再利用することができる。ナノ濾過からの濃縮物(356)を晶析装置に再循環させて戻して、硫酸ナトリウムの回収率を最大化する。炭酸リチウム(342)およびニッケルコバルトアルミニウム水酸化物(324)の収集生成物を望ましい比率のリチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムに混合し、熱処理(358)して、リチウムイオン電池に用いるための新たなカソード化合物を製造する。必要な場合、追加的なリチウム、ニッケル、コバルトおよびまたはアルミニウム化合物を収集生成物に加えて、熱処理に先立ちリチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムの望ましい比率を達成してもよい。
【実施例0071】
[000162]本発明を例示する実施例:
1.二酸化硫黄および硫酸で浸出したリチウムコバルト酸化物(試験#LT4)
化学式LiCoO2からなるリチウムコバルト酸化物(Alfa Aesar)を、この試験研究に用いた。25グラムのLiCoO2を250mLの2モルの硫酸と混合することにより、浸出を行った。二酸化硫黄ガスを浸出溶液中に継続的に散布して、酸化還元電位(ORP)≦400mVを維持した。浸出容器は三ツ口丸底フラスコからなり、撹拌は磁気攪拌バーで行った。フラスコの口の1つはORPのモニタリングに使い、別の口には凝縮器を加えて蒸気を凝縮して容器に戻し、残りの口は温度の測定に用いた。実験は温度を制御せずに行った。浸出は、5分間の浸出後に温度が71℃にまで上昇し、さらに120分間の実験後に21℃まで低下したため、発熱性と決定した。溶液の誘導結合プラズマ分光分析法(ICP)分析は、5分間の浸出後にリチウムおよびコバルトの100%が抽出されたことを示した。
【0072】
2.メタ重亜硫酸塩および硫酸で浸出したリチウムコバルト酸化物(試験#LT6)
12.5グラムのLiCoO2を250mLの2モルの硫酸および0.67モルのメタ重亜硫酸ナトリウムと混合することにより、浸出を行った。浸出容器は三ツ口丸底フラスコからなり、撹拌は磁気攪拌バーで行った。フラスコの口の1つはORPのモニタリングに使い、別の口には凝縮器を加えて蒸気を凝縮して容器に戻し、残りの口は温度の測定に用いた。実験は温度を制御せずに行った。浸出は、5分間の浸出後に温度が60℃にまで上昇し、さらに120分間の実験後に25℃まで低下したため、発熱性と決定した。溶液のICP分析は、5分間の浸出後にリチウムおよびコバルトの100%が抽出されたことを示した。
【0073】
3.炭酸第一コバルトおよび炭酸リチウムとしてのコバルトおよびリチウムの沈殿(試験#PTCL1)
5.59g/Lのリチウムおよび50.01g/Lのコバルトを含有しpHが1.59の溶液200mLを、硫酸と組み合わせた二酸化硫黄でリチウムコバルト酸化物を浸出することにより調製した。沈殿試験は、31.83グラムの無水炭酸ナトリウム(すべてのリチウムおよびコバルトを炭酸塩として沈殿させるのに要する炭酸ナトリウムの化学量論量の1.2倍になるように算出した)を加えることにより実施した。その後、10モルの水酸化ナトリウムを加えてpHを11.14に上昇させた。試験は、オーバーヘッドスターラーを用いて1000mLビーカーで実施した。スラリーを濾過した;35.33グラムの残渣および118mLの濾液を収集した。蒸発が認められた。残渣を飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、コバルトの100%およびリチウムの82.11%がコバルトおよびリチウムの混合炭酸塩として沈殿したことを示した。
【0074】
4.水酸化第一コバルトとしてのコバルトの沈殿(試験#PTC3-2)
5.59g/Lのリチウムおよび50.01g/Lのコバルトを含有しpHが1.59の溶液450mLを、硫酸と組み合わせた二酸化硫黄でリチウムコバルト酸化物を浸出することにより調製した。沈殿試験は、10モルの水酸化ナトリウムを徐々に加えてpHを10.61に上昇させて、コバルトを沈殿させることにより行った。試験は、オーバーヘッドスターラーを用いて1000mLビーカーで実施した。スラリーを濾過した;46.48グラムの残渣および390mLの濾液を収集した。残渣を脱イオン水で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウムおよびコバルトを含有する溶液からコバルトの100%が水酸化コバルトとして選択的に沈殿したことを示した。最終残渣は微量のリチウム(約0.0292%)を含有していた。これは、追加的なすすぎによりさらに精製することができると思われる。
【0075】
5.炭酸リチウムとしてのリチウムの沈殿(試験#PTL3-2)
この試験では、上記試験#PTC3-2後の濾液からの残存溶液385mLを用いた。沈殿試験は、25グラムの炭酸ナトリウム一水和物(すべてのリチウムを炭酸リチウムとして溶液に沈殿させるのに要する化学量論量の1.2倍になるように算出した)を加えることにより実施した。試験は、オーバーヘッドミキサーを用いて1000mLビーカーで実施した。スラリーを濾過した;7.82グラムの残渣および318mLの濾液を収集した。残渣を飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウムの53.9%が炭酸リチウムとして沈殿したことを示す。
【0076】
6.二酸化硫黄および硫酸で浸出した浸出リチウムコバルト酸化物からのジチオン酸塩の生成
化学式LiCoO2からなるリチウムコバルト酸化物(Alfa Aesar)を、この試験研究に用いた。36~50グラムのLiCoO2を250mLの0.8モル~1.5モル濃度の硫酸と混合することにより、いくつかの浸出実験を行った。二酸化硫黄ガスを浸出溶液中に継続的に散布した。試験した最終酸化還元電位(ORP)の範囲は102mV~401mVであった。浸出容器は三ツ口丸底フラスコからなり、撹拌は磁気攪拌バーで行った。フラスコの口の1つはORPのモニタリングに使い、別の口には凝縮器を加えて蒸気を凝縮して容器に戻し、残りの口は温度の測定に用いた。実験は温度を制御せずに行った。120分間の浸出後、イオンクロマトグラフィーによりジチオン酸塩を分析するために試料を取り出した。結果を表1にまとめる。
【0077】
【0078】
7.リチウムコバルト酸化物の処理に関するロックサイクル試験
化学式LiCoO2からなるリチウムコバルト酸化物(Alfa Aesar)を、この試験研究に用いた。態様2で記載したフローシート中の主要な単位操作をシミュレートするために、リチウムコバルト酸化物をロックサイクル方式で処理した。ロックサイクル試験は回路からの硫酸塩およびジチオン酸塩の除去を示し、これにより、前のサイクルからのフローシートの末端における未回収リチウムおよび水を、つぎのサイクルのフローシートの前端に再循環させて回収することが可能になる。
【0079】
浸出条件は、約1.5へのpH制御;浸出ヘッドにおいて1.2M H2SO4;8%パルプ濃度;および350mVの標的ORPでのSO2散布(sparing)からなる。4サイ
クル内の各浸出工程に関し、2時間のSO2還元浸出の後、ヘッドの固体はすべて視覚的に消失した。
【0080】
前の浸出工程からの浸出液を10M NaOHによりpH11に調整して、溶解コバルトをCo(OH)2として沈殿させる。その後、2つのリパルプ洗浄段階および濾過が続いた。湿潤固体を60℃で乾燥した。
【0081】
その後、前の段階からの濾液を、ICPによって測定したリチウム濃度に対し1.2倍の化学量論的Na2CO3と混合した。その後、混合溶液を95℃に30分間加熱した後、Li2CO3沈殿物を濾過により取り出した。沈殿物を95℃の飽和Li2CO3で洗浄した。ロックサイクル#1を除き、すべての飽和Li2CO3洗浄溶液は、前のサイクルから生じたLi2CO3固体により調製した。ロックサイクルにおいて、リチウムは溶液中に蓄積し、Li回収率の増大をもたらすと予想される。ICPからの結果および計算結果は、この結論を裏付けるものであった。フローシートの各サイクルについて算出したリチウム回収率を表2に示す。
【0082】
【0083】
硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび未回収リチウムイオン溶液の混合物を含有する前の段階からの濾液を、オーバーヘッドミキサーで穏やかに混合しつつ5℃に2時間冷却して、硫酸ナトリウム十水和物およびジチオン酸ナトリウム二水和物を結晶化する。結晶を濾過により収集し、60℃で乾燥して、無水結晶を収集した。サイクル1~4の乾燥結晶の重量を表3に示す。
【0084】
【0085】
ナノ濾過段階の例は、実施例20に記載する。
8.二酸化硫黄および硫酸で浸出したリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(試験#NMC3-5)
化学式LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2からなるリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(Sigma Aldrich)を、この試験研究に用いた。30グラムのLiNi0.33Mn0.33Co0.33O2を255mLの1.2モルの硫酸と混合することにより、浸出を行った。二酸化硫黄ガスを浸出溶液中に継続的に散布して、酸化還元電位(ORP)=550mVを維持した。浸出容器は三ツ口丸底フラスコからなり、撹拌は磁気攪拌バーで行った。フラスコの口の1つはORPのモニタリングに使い、別の口には凝縮器を加えて蒸気を凝縮して容器に戻し、残りの口は温度の測定に用いた。実験は温度を制御せずに行った。浸出は、30分間の浸出後に温度が66℃にまで上昇し、さらに120分間の実験後に28℃まで低下したため、発熱性と決定した。溶液の誘導結合プラズマ分光分析法(ICP)分析は、120分間の浸出後にリチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトの100%が抽出されたことを示した。イオンクロマトグラフィー分析は、最終浸出溶液が24.1g/Lのジチオン酸塩を含有することを示した。
【0086】
9.NaOHでのニッケル、マンガンおよびコバルトの(Ni,Mn,Co)(OH)2としての沈殿(試験#NMC-2-PTC11)
7.71g/Lのリチウム、19.83g/Lのニッケル、18.09g/Lのマンガンおよび19.38g/Lのコバルトを含有しpHが0.8の溶液200mLを、硫酸と組み合わせた二酸化硫黄でリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を浸出することにより調製した。沈殿試験は、10モルの水酸化ナトリウムを徐々に加えてpHを10.70に上昇させて、ニッケル、マンガンおよびコバルトを沈殿させることにより行った。試験は、マグネティックスターラーを用いて500mLビーカーで実施した。スラリーを濾過した。18.70グラムの乾燥残渣および140mLの濾液を収集した。残渣を脱イオン水で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトを含有する溶液からニッケルの100%、マンガンの100%およびコバルトの100%が金属水酸化物として沈殿したことを示した。最終残渣は少量のリチウム(約0.155%)を含有していた。これは、追加的なすすぎによりさらに精製することができると思われる。
【0087】
10.NaOHでのニッケル、マンガンおよびコバルトの水酸化物の沈殿に続く、炭酸リチウムとしてのリチウムの沈殿(試験#NMC-2-PTL11)
この試験では、試験#NMC-2-PTC-11後の濾液からの残留物を用いた。沈殿試験は、14.12グラムの炭酸ナトリウム(すべてのリチウムを炭酸リチウムとして溶液に沈殿させるのに要する化学量論量の1.2倍になるように算出した)を加えることにより実施した。試験は、95℃において、マグネティックスターラーを用いて500mLビーカー中で15分間実施した。スラリーを濾過した;2.39グラムの乾燥残渣および130mLの濾液を収集した。残渣を飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウムの34.6%が炭酸リチウムとして沈殿したことを示す。
【0088】
11.LiOHでのニッケル、マンガンおよびコバルトの(Ni,Mn,Co)(OH)2としての沈殿(試験#NMC-2-CT-PTC3)
7.30g/Lのリチウム、18.27g/Lのニッケル、17.05g/Lのマンガンおよび18.24g/Lのコバルトを含有しpHが0.66の溶液200mLを、硫酸と組み合わせた二酸化硫黄でリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を浸出することにより調製した。沈殿試験は、3.34モルの水酸化リチウムを徐々に加えてpHを11.07に上昇させて、ニッケル、マンガンおよびコバルトを沈殿させることにより行った。試験は、マグネティックスターラーを用いて500mLビーカー中で実施した。スラリーを濾過した;18.24グラムの残渣および206mLの濾液を収集した。残渣を脱イオン水で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトを含有する溶液からニッケルの100%、マンガンの100%およびコバルトの100%が金属水酸化物として沈殿したことを示した。最終残渣は少量のリチウム(約0.787%)を含有していた。これは、追加的なすすぎによりさらに精製することができると思われる。
【0089】
12.LiOHでのニッケル、マンガンおよびコバルトの水酸化物の沈殿に続く、炭酸リチウムとしてのリチウムの沈殿(試験#NMC-2-CT-PTL3)
この試験では、試験#NMC-2-CT-PT3後の濾液からの残留物を用いた。沈殿試験は、27.74グラムの炭酸ナトリウム(すべてのリチウムを炭酸塩として溶液に沈殿させるのに要する化学量論量の1.2倍になるように算出した)を加えることにより実施した。試験は、95℃において、マグネティックスターラーを用いて500mLビーカー中で15分間実施した。スラリーを濾過した;12.12グラムの乾燥残渣および184mLの濾液を収集した。残渣を飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウムの49.8%が炭酸リチウムとして沈殿したことを示す。
【0090】
13.リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の処理に関するロックサイクル試験
化学式LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2からなるリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(Sigma Aldrich)を、この試験研究に用いた。態様3で記載したフローシート中の主要な単位操作をシミュレートするために、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物をロックサイクル方式で処理した。ロックサイクル試験は回路からの硫酸塩およびジチオン酸塩の除去を示し、これにより、前のサイクルからのフローシートの末端における未回収リチウムおよび水を、つぎのサイクルのフローシートの前端に再循環させて回収することが可能になる。
【0091】
浸出条件は、pHを約1.5に制御した試料100gの処理;浸出ヘッドにおいて1.5M H2SO4;10%パルプ濃度;および550mVの標的ORPでのSO2散布からなる。4サイクル内の各浸出工程に関し、2時間のSO2還元浸出の後、ヘッドの固体は視覚的に消失した。
【0092】
前の浸出工程からの浸出液を飽和LiOHによりpH11に調整して、溶解ニッケル、マンガンおよびコバルトを(Ni,Mn,Co)(OH)2として沈殿させる。その後、2つのリパルプ洗浄段階および濾過が続いた。湿潤固体を60℃で乾燥した。
【0093】
その後、前の段階からの濾液を、ICPによって測定したリチウム濃度に対し1.0倍の化学量論的Na2CO3と混合した。その後、混合溶液を95℃に30分間加熱した後、Li2CO3沈殿物を濾過により取り出した。沈殿物を95℃の飽和Li2CO3で洗浄した。ロックサイクル#1を除き、すべての飽和Li2CO3洗浄溶液は、前のサイクルから生じたLi2CO3固体により調製した。ロックサイクルにおいて、リチウムは溶液中に蓄積し、Li回収率の増大をもたらすと予想される。ICPからの結果および計算結果は、この結論を裏付けるものであった。フローシートの各サイクルについて算出したリチウム回収率を表4に示す。
【0094】
【0095】
硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび未回収リチウムイオン溶液の混合物を含有する前の段階からの濾液を、オーバーヘッドミキサーを用いて穏やかに混合しつつ5℃に2時間冷却して、硫酸ナトリウム十水和物およびジチオン酸ナトリウム二水和物を結晶化した。結晶を濾過により収集し、60℃で乾燥して、無水結晶を収集した。サイクル1~4の乾燥結晶の重量を表5に示す。
【0096】
【0097】
ナノ濾過段階の例は、実施例20に記載する。
14.二酸化硫黄および硫酸で浸出したリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(試験#NCA-LT8)
化学式LiNi0.08Co0.15Al0.05O2からなるリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(MTI Corp)を、この試験研究に用いた。30グラムのLiNi0.8Co0.15Al0.05O2を245mLの1.2モルの硫酸と混合することにより、浸出を行った。二酸化硫黄ガスを浸出溶液中に継続的に散布して、酸化還元電位(ORP)=550mVを維持した。浸出容器は四ツ口ガラス反応器からなり、撹拌はオーバーヘッドミキサーで行った。フラスコの口の1つはORPのモニタリングに使い、別の口には凝縮器を加えて蒸気を凝縮して容器に戻し、他の口は温度の測定に、最後の口はオーバーヘッドミキサー用に用いた。実験は温度を制御せずに行った。浸出は、30分間の浸出後に温度が88℃にまで上昇し、さらに120分間の実験後に50℃まで低下したため、発熱性と決定した。溶液の誘導結合プラズマ分光分析法(ICP)分析は、120分間の浸出後にリチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムの100%が抽出されたことを示した。イオンクロマトグラフィー分析は、最終浸出溶液が11.3g/Lのジチオン酸塩を含有することを示した。
【0098】
15.NaOHでのニッケル、コバルトおよびアルミニウムの(Ni,Co,Al)(OH)2としての沈殿(試験#NCA-PTC1)
8.63g/Lのリチウム、57.82g/Lのニッケル、10.54g/Lのコバルトおよび1.17g/Lのアルミニウムを含有しpHが1.06の溶液200mLを、硫酸と組み合わせた二酸化硫黄でリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物を浸出することにより調製した。沈殿試験は、10モルの水酸化ナトリウムを徐々に加えてpHを11.09に上昇させて、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを沈殿させることにより行った。試験は、マグネティックスターラーを用いて500mLビーカーで実施した。スラリーを濾過した。27.15グラムの乾燥残渣および135mLの濾液を収集した。残渣を脱イオン水で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトを含有する溶液からニッケルの100%、マンガンの100%およびコバルトの100%が金属水酸化物として沈殿したことを示した。最終残渣は少量のリチウム(約0.078%)を含有していた。これは、追加的なすすぎによりさらに精製することができると思われる。
【0099】
16.NaOHでのニッケル、コバルトおよびアルミニウムの水酸化物の沈殿に続く、リチウムの炭酸リチウムとしての沈殿(試験#NCA-PTL1)
この試験では、試験#NCA-PTL1後の濾液からの残留物を用いた。沈殿試験は、15.82グラムの炭酸ナトリウム(すべてのリチウムを炭酸塩として溶液に沈殿させるのに要する化学量論量の1.2倍になるように算出した)を加えることにより実施した。試験は、95℃において、マグネティックスターラーを用いて500mLビーカー中で15分間実施した。スラリーを濾過した;2.88グラムの乾燥残渣および125mLの濾液を収集した。残渣を飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウムの31.5%が炭酸リチウムとして沈殿したことを示した。
【0100】
17.LiOHでのニッケル、コバルトおよびアルミニウムの(Ni,Co,Al)(OH)2としての沈殿(試験#NCA-CT-PTC2)
6.64g/Lのリチウム、46.84g/Lのニッケル、8.45g/Lのコバルトおよび0.89g/Lのアルミニウムを含有しpHが0.35の溶液200mLを、硫酸と組み合わせた二酸化硫黄でリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物を浸出することにより調製した。沈殿試験は、4.44モルの水酸化リチウムを徐々に加えてpHを11.03に上昇させて、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを沈殿させることにより行った。試験は、マグネティックスターラーを用いて500mLビーカー中で実施した。スラリーを濾過した;18.55グラムの残渣および202mLの濾液を収集した。残渣を脱イオン水で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウム、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含有する溶液からニッケルの100%、コバルトの100%およびアルミニウムの100%が金属水酸化物として沈殿したことを示した。最終残渣は少量のリチウム(約0.648%)を含有していた。これは、追加的なすすぎによりさらに精製することができると思われる。
【0101】
18.LiOHでのニッケル、コバルトおよびアルミニウムの水酸化物の沈殿に続く、リチウムの炭酸リチウムとしての沈殿(試験#NCA-CT-PTL2)
この試験では、試験#NCA-CT-PTC2後の濾液からの残留物を用いた。沈殿試験は、27.31グラムの炭酸ナトリウム(すべてのリチウムを炭酸塩として溶液に沈殿させるのに要する化学量論量の1.0倍になるように算出した)を加えることにより実施した。試験は、95℃において、マグネティックスターラーを用いて500mLビーカー中で15分間実施した。スラリーを濾過した;14.04グラムの乾燥残渣および185mLの濾液を収集した。残渣を飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、リチウムの55.97%が炭酸リチウムとして沈殿したことを示す。
【0102】
19.リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物の処理に関するロックサイクル試験
化学式LiNi0.8Co0.15Al0.05O2からなるリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(MTI Corp)を、この試験研究に用いた。態様3で記載したフローシート中の主要な単位操作をシミュレートするために、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物をロックサイクル方式で処理した。ロックサイクル試験は、回路からの硫酸塩およびジチオン酸塩の除去を示し、これにより、前のサイクルからのフローシートの末端における未回収リチウムおよび水を、つぎのサイクルのフローシートの前端に再循環させて回収することが可能になる。
【0103】
浸出は、pHを約1.5に制御した試料400gの処理;浸出ヘッドにおいて1.2M
H2SO4;10%パルプ濃度;および550mVの標的ORPでのSO2散布からなっていた。7サイクル内の各浸出工程に関し、2時間のSO2還元浸出の後、ヘッドの固体は視覚的に消失した。
【0104】
前の浸出工程からの浸出液を飽和LiOHによりpH10.5に調整して、溶解ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを(Ni,Co,Al)(OH)2として沈殿させた。
その後、2つのリパルプ洗浄段階および濾過が続いた。湿潤固体を60℃で乾燥した。
【0105】
その後、前の段階からの濾液を、ICPによって測定したリチウム濃度に対し1.2倍の化学量論的Na2CO3と混合した。その後、混合溶液を95℃に30分間加熱した後、Li2CO3沈殿物を濾過により取り出した。沈殿物を95℃の飽和Li2CO3で洗浄した。ロックサイクル#1を除き、すべての飽和Li2CO3洗浄溶液は、前のサイクルから生じたLi2CO3固体により調製した。ロックサイクルにおいて、リチウムは溶液中に蓄積し、Li回収率の増大をもたらすと予想された。ICPからの結果および計算結果は、この結論を裏付けるものであった。フローシートの各サイクルについて算出したリチウム回収率を表6に示す。
【0106】
【0107】
硫酸ナトリウム、ジチオン酸ナトリウムおよび未回収リチウムイオン溶液を含有する前の段階からの濾液を、オーバーヘッドミキサーで穏やかに混合しつつ5℃に2時間冷却して、硫酸ナトリウム十水和物およびジチオン酸ナトリウム二水和物を結晶化した。結晶を濾過により収集し、60℃で乾燥して、無水結晶を収集した。サイクル1~4の乾燥結晶の重量を表7に示す。
【0108】
【0109】
ナノ濾過段階の例は、実施例20に記載する。
20.ナノ濾過
ナノ濾過試験は、32.23g/Lの硫酸塩および24.0ジチオ酸塩を含有するフィード溶液を、Dow Filmtec NF270-400ナノ濾過膜に通してポンプ輸送することにより実施した。フィード流量は5.65L/分に設定した。膜の入口の圧力は、29.1Barと測定された。濃縮物出口の圧力は、28.5Barと測定された。膜を通過する浸透流速は0.65L/分と測定された。浸透物の試料を収集し、イオンクロマトグラフィーにより硫酸塩は2.30g/L、ジチオン酸塩は2.84g/Lと測定された。濃縮物の流速は5.0L/分と計算された。濃縮物は、36.13g/Lの硫酸塩および26.80g/Lのジチオン酸塩を含有すると計算された。硫酸塩の排除は92.2%と計算され、ジチオン酸塩の排除は85.5%と計算された。
【0110】
21.リチウムイオン電池カソードスクラップの処理
金属アルミニウム箔上にコーティングされたリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を含有し、85.7g/kgのAl金属、59.3g/kgのLi、237.9g/kgのNi、135.7g/kgのMn、120.2g/kgのCoの含有量を示すコバルト供給源材料からなる100グラムのリチウムイオン電池カソードスクラップを、30℃で0.5MのH2SO4を含有する1900g(1857mL)の溶液中に混合した。
【0111】
穏やかに混合しつつ、40分後に、コバルト供給源材料は金属アルミニウム箔から視覚的に分離され、得られた溶液からは、8.68%のAl、64.97%のLi、40.41%のNi、39.27%のMn、43.99%のCoが抽出された。
【0112】
分離したアルミニウム箔を、13/18番の篩を用いてスラリーから篩い分けした。残留酸性溶液、抽出金属および残存コバルト供給源材料を含有するスラリーにSO2を散布して、94.55%のLi、95.03%のNi、95.22%のMn、94.67%のCoを累積的に抽出した。その後、溶液を濾過して、活性カソード材料に付着した残留セパレーター材料などの不溶性材料を除去した。
【0113】
その後、濾液のpHを50% NaOH水溶液の添加によりpH5に上昇させてAlの
100%を沈殿させ、これをAl(OH)3として抽出した。Al(OH)3を濾過し、濾液溶液中のNi、Mn、Coを、50% NaOH溶液でpHを11に上昇させることによって金属水酸化物として沈殿させた。元のコバルト供給源材料からの卑金属の全体的な回収率は、97.23% Ni、97.61% Mn、97.50% Coであった。次いで、沈殿した卑金属水酸化物をブフナー漏斗で濾過した。固体Na2CO3を摂氏90度で濾液に加えて、LiをLi2CO3として沈殿させた。Liの68%はLi2CO3として沈殿した。Li2CO3の濾過後、可溶性Liを含有する濾過を最初のAl分離段階に再循環させて戻して、Li回収率を最大化することができる。
【0114】
22.フッ素化化合物を含有するコバルト供給源材料の処理。
コバルト供給源材料は欧州の電池リサイクル業者から供給された。該リサイクル業者は、この材料を、電気自動車の電池パックから個々の電池セルを分離し、電池セルを高温で焙焼し、焙焼した電池セルを機械的に粉砕し、粉砕した材料を篩にかけて機械的に処理してコバルト供給源材料濃縮物から銅、アルミニウムおよび鉄の大部分を分離することにより調製した。コバルト供給源材料と共に存在するフッ素化化合物は、電池セルに含有されていた電解液の高温焙焼から誘導される化合物である。
【0115】
40.3g/kgのAl、40.3g/kgのLi、106.1g/kgのNi、114.3g/kgのMn、95.5g/kgのCo、30.5g/kgのCuおよび32.5g/kgのFとして分析されたフッ素化化合物を含有するコバルト供給源材料100gを、60℃の脱イオン水900mLで浸出した。試験は、マグネティックスターラーを用いて2000mLのビーカー中で30分間行った。スラリーを濾過した。残渣を脱イオン水で3回リパルプ洗浄し、再び濾過し、乾燥した。溶液の分析は、リチウム、フッ化物およびアルミニウムのみが抽出されたことを示した。抽出率は、75% Li、16% Alおよび90% Fであった。
【0116】
水浸出後の濾液および洗浄溶液を組み合わせて分析し、134mg/LのLi、7mg/LのAlおよび263mg/LのFを含有していた。0.54グラムの50%水酸化カルシウムスラリー(すべてのフッ化物をフッ化カルシウムとして溶液に沈殿させるのに要する化学量論量の2.0倍になるように算出した)を加えることにより、沈殿試験を行った。試験は、室温において、マグネティックスターラーを用い、500mLビーカー中の250mLの複合溶液を用いて120分間行った。スラリーを濾過した;0.172グラムの乾燥沈殿物および223mLの濾液を収集した。沈殿物を脱イオン水で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。沈殿物の分析は、フッ化物の98.7%がフッ化カルシウムとして沈殿したことを示す。
【0117】
フッ化物の大部分が除去されたコバルト供給源材料からなる水浸出後の残渣を、SO2浸出に使用した。64グラムの残渣を703mLの1.0モルの硫酸と混合し、80℃でpHを約1.0に制御することによって、浸出を行った。40.8gの二酸化硫黄ガスを浸出溶液中に連続的に散布して、安定な酸化還元電位(ORP)を維持した。浸出容器は四ツ口からなり、撹拌はオーバーヘッドミキサーで行った。フラスコの口の1つはORPおよびpHのモニタリングに使い、別の口には凝縮器を加えて蒸気を凝縮して容器に戻し、他の口は温度の測定に用いた。実験は、加熱マントルを用いて温度を制御して行った。溶液の誘導結合プラズマ分光分析法(ICP)分析は、120分間の浸出後にLi、Ni、Mn、Coの100%およびAlの90%が抽出されたことを示した。
【0118】
5.30g/LのLi、9.1g/LのNi、10.4g/LのMn、8.4g/LのCoおよび0.13g/LのAlを含有しpHが0.56の溶液800mLを、沈殿試験に使用した。沈殿試験は、4.18モルのNaOHを徐々に加えてpHを5.2に上昇させて、Alを沈殿させることにより行った。試験は、オーバーヘッドミキサーを用いて1
000mLビーカーで実施した。スラリーを濾過した;7.05グラムの残渣および850mLの濾液を収集した。残渣を脱イオン水で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、Alの99%がAl(OH)3として沈殿したことを示した。
【0119】
この試験では、Al沈殿後の濾液の一部を使用した。沈殿試験は、4.18モルのNaOHを徐々に加えてpHを11.02に上昇させて、Ni、MnおよびCoを沈殿させることにより行った。試験は、オーバーヘッドミキサーを用いて1000mLビーカーで実施した。スラリーを濾過した;40.91グラムの沈殿物および764mLの濾液を収集した。沈殿物を脱イオン水で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。沈殿物の分析は、Ni、MnおよびCoの100%が溶液から卑金属水酸化物として沈殿したことを示した。
【0120】
この試験では、卑金属水酸化物沈殿後の濾液の一部を使用した。沈殿試験は、68.31グラムのNa2CO3(すべてのLiを炭酸塩として溶液に沈殿させるのに要する化学量論量の1.2倍になるように算出した)を加えることにより実施した。試験は、95℃において、マグネティックスターラーを用いて1000mLビーカー中で15分間実施した。スラリーを濾過した;29.9グラムの乾燥沈殿物および605mLの濾液を収集した。沈殿物を飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、再び濾過し、乾燥した。残渣の分析は、Liの63.86%がLi2CO3として沈殿したことを示す。
【0121】
23.使用済みリチウムイオン電池の処理により誘導された炭素を含有するコバルト供給源材料の処理。
コバルト供給源材料は欧州の電池リサイクル業者から供給された。該リサイクル業者は
、この材料を、電気自動車の電池パックから個々の電池セルを分離し、電池セルを高温で焙焼し、焙焼した電池セルを機械的に粉砕し、粉砕した材料を篩にかけて機械的に処理してコバルト供給源材料から銅、アルミニウムおよび鉄の大部分を分離することにより調製した。カソードから誘導されたコバルト供給源材料は、黒鉛でコーティングされたアノードから誘導された炭素と、使用済みリチウムイオン電池からの焙焼プラスチック材料との混合物を含有していた。
【0122】
浮選段階を用いて、混合された微細残渣中のコバルト供給源材料から炭素および黒鉛を分離した。残留材料は、すべての微細成分、例えば、活性リチウムイオン-金属酸化物カソード材料などのコバルト供給源材料、微細金属銅およびアルミニウム、黒鉛アノード材料、ならびに有機バインダーおよび有機膜の熱分解から誘導される炭素および塩を含有する。
【0123】
挙げた実施例では、約40重量%の全炭素を含有するこのタイプの材料の試料を得た。炭素に加えて、試料は、ニッケルおよびマンガンをそれぞれ13%、コバルトを11%、アルミニウムおよびリチウムをそれぞれ約4%、および銅を2%含有していた。試料はまた、より少ないが有意な量の鉄、リンおよびフッ化物を含有していた。
【0124】
分離を行うために、本実施例では乾燥試料を浮選セル(Denver sub-A)内で水と混合するが、他のタイプのものも適している。初期固体濃度は10%であるが、任意の同様の濃度(例えば、5~30%)であってもよい。スラリーを最初に1250rpmで5分間撹拌した後、懸濁したスラリーを篩にかけ、比重選鉱装置に通して、より粗い金属銅およびアルミニウムを除去することができる。残存するパルプを浮選セルに戻し、2000g/tの灯油をパルプに添加し、1250rpmでさらに5分間かけてコンディショニングする。灯油の代わりに任意の燃料油(例えばディーゼル燃料)を加えてもよい。
【0125】
コンディショニング後、パルプに起泡剤を加えて安定な気泡を作り出す。この試験では
市販の起泡剤F131を使用したが、MIBCまたはグリコールベースの起泡剤など他の起泡剤を代用してもよい。最初の起泡剤添加は100グラム/トンの範囲である。その後、空気を施用すると、炭素を保有し、その他の材料をスラリー中に残す気泡の泡沫がもたらされる。より荒い泡沫濃縮物を収集し、洗浄のために別の浮選工程に送る。残留浮選パルプ中に残存する尾部スラリー(tails slurry)は卑金属に富んでおり、さらに処理してコバルト供給源材料を回収することができる。濃縮物を、追加の起泡剤を有する小型浮選セル中で希釈することによって清浄化する。この実施例では合計3つの清浄工程を行い、いずれの場合にも、前の工程からの濃縮物を、必要に応じて追加的な補給水および起泡剤を一緒に加えて(各工程で50~80g/t)、フィード物として使用した。最終工程では、炭素回収率を維持するために、追加的な400g/tの灯油を初期コンディショニング工程で添加した。より荒い粗い浮選および最初の2つのクリーナー工程では10分間の浮選時間を用い、最終清浄化工程では、4分間のコンディショニング工程後に5分間の浮選を用いた。
【0126】
この実施例において、記載した手順の結果、フィード材料中の炭素の93.2%が最終濃縮物に報告される。尾鉱は、炭素の大部分が除去されたコバルト供給源材料からなる。このコバルト供給源材料は、硫酸第一コバルト/ジチオン酸第一コバルト液の処理のための先の実施例のように処理することができる。
【0127】
[000163]本発明の好ましい態様について例示を目的として開示してきたが、以下の請求項によって定義される本発明の精神から逸脱することなく、態様にさまざまな変更、修正および置き換えを組み込むことができることを理解すべきである。
リチウムイオン電池の成分に由来する材料が、カソード材料に由来するコバルト化合物、ならびにアノード材料および/または熱処理プラスチックに由来する炭素およびまたは黒鉛材料からなり、コバルト供給源が、
a.材料を泡沫浮選で処理して、コバルト供給源から炭素および/または黒鉛の大部分を分離する段階;
によって誘導される、請求項1に記載の方法。
硫酸マンガン、ジチオン酸マンガン、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を共誘導するためにコバルト供給源中にマンガンの存在を包含する、請求項1に記載の方法。
マンガンが、炭酸第一コバルトおよび炭酸リチウムと組み合わせて炭酸マンガンとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項9に記載の方法。
マンガンが、水酸化第一コバルトと組み合わせて水酸化マンガンとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項9に記載の方法。
硫酸ニッケル、ジチオン酸ニッケル、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を共誘導するためにコバルト供給源中にニッケルの存在を包含する、請求項1に記載の方法。
ニッケルが、炭酸第一コバルトおよび炭酸リチウムと組み合わせて炭酸ニッケルとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項13に記載の方法。
ニッケルが、水酸化第一コバルトと組み合わせて水酸化ニッケルとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、請求項13に記載の方法。
硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を共誘導するためにコバルト供給源中にリチウムの存在を包含する、請求項1に記載の方法であって、コバルトが水酸化コバルトとして沈殿し、リチウムが、段階cでは依然として液中にあり、続いて炭酸ナトリウムの添加によって炭酸リチウムとして液から沈殿する、方法。
[000163]本発明の好ましい態様について例示を目的として開示してきたが、以下の請求項によって定義される本発明の精神から逸脱することなく、態様にさまざまな変更、修正および置き換えを組み込むことができることを理解すべきである。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
コバルト供給源の処理から誘導される硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム含有液からの水の除去および/または再循環方法であって、
a.リチウムイオン電池の成分に由来する材料を処理してコバルト供給源を誘導する段階;
b.二酸化硫黄および硫酸をコバルト供給源と混合して、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を誘導する段階;
c.コバルトを全体的または部分的に炭酸第一コバルトまたは水酸化第一コバルトとして沈殿させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去する段階;
d.硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムを結晶化して、液から硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウムの大部分を分離する段階;
e.硫酸ナトリウムおよびジチオン酸ナトリウム結晶を加熱して、無水硫酸ナトリウム、二酸化硫黄および水を形成する段階;ならびに、
f.二酸化硫黄および水から無水硫酸ナトリウムを分離する段階;
を含む、前記方法。
[2]
リチウムイオン電池の成分に由来する材料が、金属アルミニウム箔に結合しているコバルト含有化合物を含むカソード材料であり、コバルト供給源が、
a.カソード材料を硫酸溶液に浸漬して、コバルト含有化合物から金属アルミニウム箔を引き離す段階;
b.断片として存在する金属アルミニウム箔を篩い分けして、硫酸溶液中に混合された粒子として存在するコバルト供給源から分離する段階;
によって誘導される、[1]に記載の方法。
[3]
リチウムイオン電池の成分に由来する材料が、カソード材料に由来するコバルト化合物、ならびにアノード材料および/または熱処理プラスチックに由来する炭素およびまたは黒鉛材料からなり、コバルト供給源が、
a.材料を泡沫浮選で処理して、コバルト供給源から炭素および/または黒鉛の大部分を分離する段階;
によって誘導される、[1]に記載の方法。
[4]
リチウムイオン電池の成分に由来する材料が、カソード材料に由来するコバルト化合物と電解液に由来するフッ素化化合物からなり、コバルト供給源が、
a.水中での浸漬によって材料からフッ素化化合物の大部分を抽出する段階;
b.抽出されたフッ素化化合物を含有する水から濾過によりコバルト供給源を分離する段階;
c.抽出されたフッ素化化合物を含有する水を石灰で処理して、フッ素化化合物をフッ化カルシウムとして沈殿させる段階;
d.処理した水から濾過によりフッ化カルシウムを分離する段階;
によって誘導される、[1]に記載の方法。
[5]
硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液に炭酸ナトリウムを加えることにより炭酸第一コバルトを沈殿させる、[1]に記載の方法。
[6]
硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液に水酸化ナトリウムを加えることにより水酸化第一コバルトを沈殿させる、[1]に記載の方法。
[7]
硫酸塩およびジチオン酸塩が、硫酸の有無にかかわらず二酸化硫黄、亜硫酸、メタ亜硫酸塩、重硫酸塩から誘導される、[1]に記載の方法。
[8]
液のナノ濾過によりジチオン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムから水が分離される、[1]に記載の方法。
[9]
ジチオン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムの再循環段階を包含する、[1]に記載の方法。
[10]
硫酸マンガン、ジチオン酸マンガン、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を共誘導するためにコバルト供給源中にマンガンの存在を包含する、[1]に記載の方法。
[11]
マンガンが、炭酸第一コバルトと組み合わせて炭酸マンガンとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、[10]に記載の方法。
[12]
マンガンが、炭酸第一コバルトおよび炭酸リチウムと組み合わせて炭酸マンガンとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、[10]に記載の方法。
[13]
マンガンが、水酸化第一コバルトと組み合わせて水酸化マンガンとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、[10]に記載の方法。
[14]
硫酸ニッケル、ジチオン酸ニッケル、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を共誘導するためにコバルト供給源中にニッケルの存在を包含する、[1]に記載の方法。
[15]
ニッケルが、炭酸第一コバルトと組み合わせて炭酸ニッケルとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、[14]に記載の方法。
[16]
ニッケルが、炭酸第一コバルトおよび炭酸リチウムと組み合わせて炭酸ニッケルとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、[14]に記載の方法。
[17]
ニッケルが、水酸化第一コバルトと組み合わせて水酸化ニッケルとして共沈させた後、これを濾過により全体的または部分的に液から除去することにより回収される、[14]に記載の方法。
[18]
硫酸リチウム、ジチオン酸リチウム、硫酸コバルトおよびジチオン酸コバルトを含有する溶液を共誘導するためにコバルト供給源中にリチウムの存在を包含する、[1]に記載の方法であって、コバルトが水酸化コバルトとして沈殿し、リチウムが、段階cでは依然として液中にあり、続いて炭酸ナトリウムの添加によって炭酸リチウムとして液から沈殿する、方法。