(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015940
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】身体洗浄具用布帛、身体洗浄具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04B 21/02 20060101AFI20230125BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230125BHJP
D03D 27/00 20060101ALI20230125BHJP
D06B 3/28 20060101ALI20230125BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20230125BHJP
A47K 10/02 20060101ALI20230125BHJP
A47K 7/02 20060101ALI20230125BHJP
D03D 15/292 20210101ALI20230125BHJP
【FI】
D04B21/02
D03D1/00 Z
D03D27/00 Z
D06B3/28
D01F8/14 B
A47K10/02 C
A47K7/02 C
D03D15/292
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120033
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】305037123
【氏名又は名称】KBセーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮原 和久
(72)【発明者】
【氏名】田邊 和之
(72)【発明者】
【氏名】清水 亜朱木
【テーマコード(参考)】
2D134
3B154
4L002
4L041
4L048
【Fターム(参考)】
2D134CC00
2D134CC02
3B154AA07
3B154AB19
3B154AB29
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3B154DA13
4L002AA07
4L002AB05
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4L002AC07
4L002CB01
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4L048AA20
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4L048BA23
4L048CA15
4L048DA14
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】 肌に優しく、洗い心地のある身体洗浄具用布帛及びそれを用いた身体洗浄具を提供する。また、そのような身体洗浄具用布帛を製造するための方法を提供する。
【解決手段】KES測定における圧縮かたさ(LC)が0.82以下、回復性(RC)が40%以上であることを特徴とする身体洗浄具用布帛。それを用いた身体洗浄具。さらに、2枚の地組織が、連結糸で連結された二重経編地を熱セットした後、連結糸を切断してパイル編物とし、当該パイル編物を融点もしくは軟化点を超えない温度で液流染色する身体洗浄具用布帛の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
KES測定における圧縮かたさ(LC)が0.82以下、回復性(RC)が40%以上であることを特徴とする身体洗浄具用布帛。
【請求項2】
カットパイルと地組織部とで構成されるパイル布帛であることを特徴とする請求項1記載の身体洗浄具用布帛。
【請求項3】
パイル編物であることを特徴とする請求項1又は2記載の身体洗浄具用布帛。
【請求項4】
ウェル密度が18~26本/2.54cm、コース密度が22~30本/2.54cmのパイル編物であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の身体洗浄具用布帛。
【請求項5】
平方インチ当たりのカットパイルの総本数が6000~13000本であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の身体洗浄具用布帛。
【請求項6】
単糸繊度10~20dtexのカットパイルを有することを特徴とする請求項1~5いずれか1項に記載の身体洗浄具用布帛。
【請求項7】
長さ2.5~5.0mmのカットパイルを有することを特徴とする請求項1~6いずれか1項に記載の身体洗浄具用布帛。
【請求項8】
芯部樹脂が高融点ポリエステル、鞘部樹脂が低融点ポリエステルである芯鞘構造繊維をカットパイルとして含むパイル布帛である請求項1~7いずれか1項に記載の身体洗浄具用布帛。
【請求項9】
芯部樹脂が高融点ポリエステル、鞘部樹脂が低融点ポリエステル、芯部樹脂と鞘部樹脂との融点もしくは軟化点との差が30℃以上である芯鞘構造繊維をカットパイルとして含むパイル布帛である請求項1~8いずれか1項に記載の身体洗浄具用布帛。
【請求項10】
芯部樹脂がホモポリエチレンテレフタレート、鞘部樹脂がイソフタル酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートである芯鞘構造繊維をカットパイルに用いるパイル布帛である身体洗浄具用布帛。
【請求項11】
請求項1~10いずれか1項に記載の身体洗浄具用布帛を用いた身体洗浄具。
【請求項12】
手にはめて使用できる手袋形状の身体洗浄具用布帛を用いた請求項11記載の身体洗浄具。
【請求項13】
2枚の地組織が、連結糸で連結された二重経編地を熱セットした後、連結糸を切断してパイル編物とし、当該パイル編物を融点もしくは軟化点を超えない温度で液流染色する請求項1~10いずれか1項に記載の身体洗浄具用布帛の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体洗浄具用布帛、身体洗浄具及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、肌を傷つけることなく洗浄することができる肌に優しい身体洗浄具が求められており、使用している繊維の細さや素材を変更するなど様々な身体洗浄具が提案されてきた。
【0003】
例えば、1.0デシテックス未満の極細繊維と1.0デシテックス以上10デシテックス以下の太い繊維の多層構造を有するボディータオルが提案されている(特許文献1)。このボディータオルは、多層構造の表裏に極細繊維を配していることで、極めて微細でクリーミーな泡が発生して肌に優しい。多層構造の中間層に太い繊維を配していることで、洗浄具全体として柔らかくなりすぎることを防いでいる。
【0004】
肌に優しい素材を使用した身体洗浄具として、天然繊維の外側筒状編地部と化学繊維の内側筒状編地部が積層されたボディタオルが提案されている(特許文献2)。このボディタオルは、天然繊維が肌に接するため肌に優しく、内側の化学繊維が泡立ちを良くしている。編地が積層されているため、ボリューム感が良好である。
【0005】
また、カットパイル糸として、繊維繊度が0.1~10デシテックスの合成繊維フィラメント糸で構成されたパイル織物で構成される洗浄タオル地が提案されている(特許文献3)。この洗浄タオル地は、ソフトな生地であり肌に優しく、カットパイル糸のブラシ効果により細かい汚れも落とすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-245739号公報
【特許文献2】特開2013-230179号公報
【特許文献3】特開2020-171719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のボディータオルは、洗浄具全体として柔らかくなりすぎることを防ぐために多層構造の中間層に太い繊維を配しているが、洗い心地は不十分であった。
【0008】
特許文献2のボディタオルは、積層していることでボリューム感があり、洗い心地が良いと記載されているが、洗い心地はいまだ不十分である。また、天然繊維を使用しているため、コストが高い。
【0009】
特許文献3の洗浄タオル地はソフトなカットパイル糸が細かい汚れも落とすことができると記載されているが、洗い心地は不十分であった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、身体を洗浄する際、肌に優しく、洗い心地にも優れる、身体洗浄具用布帛、身体洗浄具及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、生地のかたさと回復性が特定の範囲であれば
肌を優しく洗浄することができ、洗い心地にも優れることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記目的を達成するため、本発明は、以下の構成を採用する。
【0012】
(1)KES測定における圧縮かたさ(LC)が0.82以下、回復性(RC)が40%以上であることを特徴とする身体洗浄具用布帛。
【0013】
(2)カットパイルと地組織部とで構成されるパイル布帛であることを特徴とする(1)記載の身体洗浄具用布帛。
【0014】
(3)パイル編物であることを特徴とする(1)又は(2)記載の身体洗浄具用布帛。
【0015】
(4)ウェル密度が18~26本/2.54cm、コース密度が22~30本/2.54cmのパイル編物であることを特徴とする(1)~(3)いずれかに記載の身体洗浄具用布帛。
【0016】
(5)平方インチ当たりのカットパイルの総本数が6000~13000本であることを特徴とする(1)~(4)いずれかに記載の身体洗浄具用布帛。
【0017】
(6)単糸繊度10~20dtexのカットパイルを有することを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の身体洗浄具用布帛。
【0018】
(7)長さ2.5~5.0mmのカットパイルを有することを特徴とする(1)~(6)いずれかに記載の身体洗浄具用布帛。
【0019】
(8)芯部樹脂が高融点ポリエステル、鞘部樹脂が低融点ポリエステルである芯鞘構造繊維をカットパイルとして含むパイル布帛である(1)~(7)いずれかに記載の身体洗浄具用布帛。
【0020】
(9)芯部樹脂が高融点ポリエステル、鞘部樹脂が低融点ポリエステル、芯部樹脂と鞘部樹脂との融点もしくは軟化点との差が30℃以上である芯鞘構造繊維をカットパイルとして含むパイル布帛である請求項(1)~(8)いずれかに記載の身体洗浄具用布帛。
【0021】
(10)芯部樹脂がホモポリエチレンテレフタレート、鞘部樹脂がイソフタル酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートである芯鞘構造繊維をカットパイルに用いるパイル布帛である身体洗浄具用布帛。
【0022】
(11)(1)~(10)いずれかに記載の身体洗浄具用布帛を用いた身体洗浄具。
【0023】
(12)手にはめて使用できる手袋形状の身体洗浄具用布帛を用いた(11)記載の身体洗浄具。
【0024】
(13)2枚の地組織が、連結糸で連結された二重経編地を熱セットした後、連結糸を切断してパイル編物とし、当該パイル編物を融点もしくは軟化点を超えない温度で液流染色する(1)~(10)いずれかに記載の身体洗浄具用布帛の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、肌に優しく、洗い心地にも優れる身体洗浄具用布帛を提供することができる。また化学繊維を使用することができるため、この場合は天然繊維と比べてコストを削減できる。
また、本発明の身体洗浄具用布帛の製造方法によれば、肌に優しく、洗い心地にも優れる身体洗浄具用布帛を好適に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の身体洗浄具用布帛は、KES測定における圧縮かたさ(LC)が0.82以下、回復性(RC)が40%以上であることが好ましい。圧縮かたさ(LC)が0.65以下であることがより好ましく、回復性(RC)が60%以上であることがより好ましい。これらは、圧縮試験機(カトーテック社製、KES-G5)を用いて測定することにより得られる。圧縮かたさ(LC)が0.82以下であれば、身体を洗浄する際、肌を傷つけにくい。また、回復性が40%以上であれば、洗い心地が優れる。
【0027】
本発明の身体洗浄具用布帛は、ポリエステル、ポリアミド等の化学繊維からなる布帛であることが好ましい。化学繊維が使用されていれば、天然繊維が使用されている場合と比べて、泡立ちが良い。また、天然繊維と比べてコストを低減できる。
【0028】
本発明の身体洗浄具用布帛は、カットパイルと地組織とで構成されるパイル布帛であることが好ましい。パイル布帛であれば、カットパイルが細かい隙間にも入り込み、細かい汚れも落とすことができる。
【0029】
本発明におけるパイル布帛としては、パイル織物又はパイル編物等が挙げられるが、パイル編物であることが好ましい。パイル編物であれば、パイル織物と比べて伸縮性を有するため、身体洗浄具として使用した際、身体に沿って密着しやすく、洗浄しやすい。
【0030】
本発明におけるパイル編物は、ウェル密度が18~26本/2.54cm、コース密度が22~30本/2.54cmであることが好ましい。ウェル密度が18本/2.54cm以上かつ、コース密度が22本/2.54cm以上であれば、洗い心地に優れる。ウェル密度が26本/2.54cm以下かつ、コース密度が30本/2.54cm以下であれば、生地全体の柔軟さが損なわれることがないため身体を洗浄しやすい。また、生地が密になりすぎず、水切り性がよく衛生的である。
【0031】
本発明の身体洗浄用布帛の平方インチ当たりのカットパイルの総本数が6000~13000本であることが好ましい。6000~13000本であれば、泡立ちが良く、洗浄効果が得られやすい。特に8000~11000本であることが好ましい。
【0032】
本発明におけるカットパイルは、芯部が高融点ポリエステル成分で、鞘部が低融点ポリエステル成分である芯鞘構造繊維であることが好ましい、高融点ポリエステル成分が芯部にあることで、カットパイルにコシがあり毛倒れしにくく、鞘部が低融点成分であることで肌を傷つけにくい。
【0033】
本発明における芯鞘構造繊維は、芯部樹脂融点と鞘部樹脂融点との差が30℃以上ある芯鞘構造繊維であることが好適である。ここで、芯部又は鞘部に非晶性樹脂を使用する場合は、融点ではなく軟化点を採用する。
尚、融点とは結晶性を有する熱可塑性樹脂のDSC測定における結晶融解温度を意味し、軟化点とは繊維を構成する樹脂が軟化し始める温度を意味する。
本発明において、融点は、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定するものである。一方、軟化点は、JIS K7196法の「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に従って測定するものである。
【0034】
本発明における芯鞘構造繊維は、例えば、芯部樹脂が260℃以上の融点を有する樹脂、例えば、ホモポリエチレンテレフタレート、鞘部樹脂が230℃以下の融点を有する樹脂、例えば、低融点ポリエステルからなるものが好適である。
鞘部樹脂の低融点ポリエステルとしては、例えば、イソフタル酸などを共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを好適に使用できる。ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を15~40モル%共重合した共重合ポリエステルは非晶性となり、そのため軟化点は130~230℃となるが、このような低融点ポリエステルは鞘部樹脂として特に好適に使用できる。
なお、芯部樹脂はホモポリエチレンテレフタレートであることが特に好ましいが、10モル%以下のイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いてもよい。
【0035】
上記芯鞘構造繊維の芯鞘部樹脂の複合比(容積比)は、8:2~2:8であることが好ましく、特に7:3~5:5であることが好ましい。鞘部樹脂が20%以上であれば、肌を痛めにくい。また、鞘部樹脂が80%以下であれば、カットパイルが毛倒れしにくい。
【0036】
本発明における芯鞘構造繊維は、通常の紡糸装置で製造すればよい。
また、本発明で使用する芯鞘構造繊維は、偏心していないことが好ましく、また、芯部が2つ以上あってもよいし、本発明の目的を阻害しない範囲で芯部の一部が繊維表面に露出していてもよい。
【0037】
上記のような芯鞘構造繊維を身体洗浄用布帛のカットパイルに用いると、特に本発明の効果に優れたものとなる。
【0038】
本発明におけるカットパイルは、単糸繊度が10~20dtexであることが好ましい。また、12~18dtexであることがより好ましい。単糸繊度が10dtex以上であれば、生地の回復性(RC)が適度にあり、洗い心地が良好である。また、単糸繊度が20dtex以下であれば、生地がかたくなりにくく、肌を優しく洗浄することができ、細かい汚れも落としやすい。
【0039】
カットパイルの長さは、2.5~5.0mmであることが好ましい。2.5~5.0mmであれば、身体洗浄時に毛倒れしにくく、洗い心地に優れる。
【0040】
本発明におけるカットパイルは、地組織を構成する糸に係止され、立毛している。
本発明において、パイル布帛として、2枚の地組織が連結糸で連結された二重編地の連結糸の中央部などを、ナイフ等にて切り開いて得られるものが特に好適に使用される。
中でも、ダブルラッシェル編などの二重経編地をセンターカットしたものであることが、カットパイルの立毛性や、カットパイルの先端の断面形状の点で好ましい。
【0041】
連結糸としては、マルチフィラメントを用いることが好適である。洗浄・清掃面、つまりカットパイル先端部において、見かけの断面積が広がることにより、効率よく洗浄することができる。また、パイル編物自体の劣化も低減できる。
【0042】
地組織の素材は、連結糸に使用するものと同種類の樹脂からなる糸を使用することが好適である。すなわち、連結糸がポリエステル系であれば、ポリエステル系の糸を使用することが好ましい。
また、地組織を構成する編糸の総繊度は、30~660dtexであることが好ましい。30dtexより小さいと、カットパイルの根元を強く締め付けることができずにカットパイルが倒れやすくなったり、カットパイルの抜けが生じたりする傾向がある。また、布帛の引き裂き強度が低下する傾向がある。660dtexを超えると、カットパイルを係止する糸が太くなり、カットパイルの根元付近の間隔が広くなり、結果としてパイル布帛全体の密度が低下して、洗浄・清掃性が低下する可能性がある。特に、50~400dtexであることが好ましい。
【0043】
本発明の身体洗浄具用布帛の好適な製造方法の例を以下に挙げる。
地組織に用いる糸と、カットパイルに用いる糸を連結糸として、準備する。
これらの糸を準備して二重組織の編物又は織物を製編織する。
例えば、二重編物を用いる場合、ダブルラッシェル編機を使用し、地組織となる糸をそれぞれの筬に供給し、2枚の地組織が、連結糸で連結された二重編地を編成する。得られた二重編地を、地組織の繊維及び連結糸の融点もしくは軟化点未満の温度かつガラス転移温度以上の温度で熱セットする。
その後、2枚の地組織が連結糸で連結された二重編地の中央部をカッターなどにより、切断することにより、連結糸が切断されカットパイルとなり、カットパイル編物が得られる。
得られたカットパイル編物を、地組織の糸及び連結糸の融点もしくは軟化点未満の温度かつガラス転移温度以上の温度で、液流染色機にて染色することにより、身体洗浄用布帛を得ることができる。
尚、上記の製造方法であれば、編地を編成した後の熱セットにより、形態を安定させた後に連結糸を切断し、連結糸を切断した後に、液流染色機で染色することにより、パイル編物が強い力で揉まれることで、布帛としての締りが若干緩くなり、布帛のかたさが柔らかくなるため、本発明の身体洗浄用布帛を容易に得ることができる。
【0044】
上記製造方法において、液流染色する場合は、温度100~140℃で15~30分程度行うことが好ましい。
【0045】
本発明の身体洗浄具用布帛は、そのまま身体洗浄具として用いてもよいし、身体洗浄具用布帛を用いて身体洗浄具としてもよい。
前者の場合、例えば、長方形の一枚布として、身体洗浄具として使用することができる。また手袋形状に縫製して手にはめて身体洗浄具として使用しても良い。
【0046】
一般的に、手袋形状の身体洗浄具は、長方形の身体洗浄具のように布帛同士を折り重ねて身体を洗浄することができず、洗い心地が不足する傾向にある。また、長方形の身体洗浄具と比べて扱いやすいため、身体を素早く擦ることができる分、肌を傷つけやすい。しかし、本発明のように、手袋形状の身体洗浄具に用いる布帛を、圧縮かたさ(LC)が0.82以下とすれば、肌を傷つけにくく、布帛の回復性(RC)が40%以上とすれば、洗い心地が良好である。
【0047】
本発明の身体洗浄具用布帛を手袋形状に形成して用いる場合は、指部の数は限定するものではなく、5本の指がまとめて1つに入るよう指部の数を1としてもよいし、複数としてもよい。指部が複数に分かれ身体洗浄具とした場合は、指部が分かれていない場合と比べ、身体を洗浄する際、扱いやすく、身体洗浄具が手から外れにくい。中でも、親指部と残り4本の指が入る指部と2つにわかれた指部の数が2のミトン形状のものは特に取扱いやすく好適である。
【0048】
このような手袋形状の身体洗浄具は、例えば、本発明の身体清掃具用布帛2枚を準備し、布帛をそれぞれ手袋形状に裁断し、裁断した布帛をカットパイルが身体洗浄面となるように重ねて縫製して製造することができる。その際、縫い目は内側になるように縫製すると、身体洗浄時肌を痛めにくく好適である。
【0049】
また、手袋形状の身体洗浄具は、長方形の身体洗浄具と異なり、広げて乾かすことができないため、湿度の高い風呂場に長時間置くとカビが生えやすい。このような観点から、パイル編物を用いた場合は、ウェル密度が18~26本/2.54cm、コース密度が22~30本/2.54cmとすると、密になりすぎず、水切り性が良く、衛生的であるため好ましい。
【0050】
手袋形状の身体洗浄具としてパイル布帛を用いる場合、左右どちらの手にはめてもカットパイルの面で身体を洗浄できるように、カットパイルの面が外側(手を収める側と反対側)に出ている手袋形状であることが洗い心地の点で好ましい。
【0051】
一般に、手袋形状の身体洗浄具は、使用している生地の量が少なく、泡立ちが弱くなる傾向にある。しかし、パイル布帛のカットパイルの総本数が、平方インチあたり6000~13000本であれば、手袋形状の身体洗浄具であっても、泡立ちも十分優れる。
【0052】
また、一般的に手袋形状の身体洗浄具は、使用している生地の面積が小さく、ほとんど同じ箇所で肌を擦るため、布帛にかかる負荷が大きく、カットパイルが毛倒れしやすい傾向にある。しかし、カットパイルの単糸繊度が10dtex以上であれば、手袋形状の身体洗浄具であっても、毛倒れしにくく、洗い心地に優れ、20dtex以下であれば、肌を傷つけにくい傾向があるため、この範囲の単糸繊度であることが好適である。
【0053】
また本発明における手袋形状の身体洗浄具は、カットパイルの長さが2.5~5.0mmであれば、毛倒れしにくく、洗い心地が良好である。
【0054】
本発明における手袋形状の身体洗浄具は、効果を損なわない範囲で本発明の身体洗浄具用布帛以外の素材を備えていても良く、例えば、身体洗浄部の手首部分に伸縮性の高い素材を付けて手首部分をすぼませて、身体洗浄時に手から外れにくくしても良い。また、未使用時に乾燥させるためにフックにひっかけるタグなどを付けることができる。
【実施例0055】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
なお、評価は、下記のようにして行った。
【0056】
<繊維の破断強度、破断伸度>
JIS L1013(2010)の標準時試験に準じ、島津製作所製AGS-1kNGオートグラフ引張試験機を用い、試料糸長20cm、定速引張速度20cm/minの条件で測定した。荷重-伸び曲線での荷重の最高値を繊度で除した値を破断強度(cN/dtex)とし、そのときの伸び率を破断伸度(%)とし、5回測定の平均値を求めた。
【0057】
<KES圧縮試験>
圧縮試験機(カトーテック株式会社、KES-G5)を用いて以下の条件として圧縮かたさ(LC)及び回復性(RC)を測定した。
変位速度:0.001mm/sec
加圧面積:2cm2
上限荷重:50gf/cm2
【0058】
<モニターテスト>
モニター7名の人に実際に使用してもらい、洗い心地と肌への感触、泡立ちについて、◎…非常に良好、○…良好、△…普通、×不良、の4段階で評価してもらい、最も多い評価をその評価とした。
【0059】
(実施例1)
ダブルラッシェル機RD6DPLM-77E-14G(マイヤー社製)を使用して、筬L1、L2は表面の地組織(167dtex/48f、ポリエステルマルチフィラメント)を、筬L5、L6は裏面の地組織(167dtex/48f、ポリエステルマルチフィラメント)を編成し、筬L3、L4は表裏地組織を連結して、二重経編地を編成した。連結糸として、筬L3及び4に、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸比率20モル%)(軟化点185℃)を鞘部に、ホモポリエチレンテレフタレート(融点260℃)を芯部に用いた芯鞘の複合比が3:2である熱融着マルチフィラメント(280dtex/16f、単糸繊度17.5dtex、強度4.3cN/dtex、伸度38%)を使用した。
連結糸は2針間にアンダーラップして編成した。
編成後、170℃、12m/分で熱セットを行い、得られた二重経編地の連結糸の中央部をナイフで2枚に切り開き、2枚のパイル編物を得た。得られたパイル編物を130℃で20分間液流染色機にて染色した。
得られたパイル編物の編密度は、コース密度が26本/2.54cm、ウェル密度が22本/2.54cmであり、パイル編物の平方インチ当たりのカットパイルの総本数は、9152本であり、カットパイルの長さは3.8mmあった。
得られたパイル編物のKES測定での圧縮かたさ(LC)は0.57、回復性(RC)は74.4%であった。
得られたパイル編物を20cm×70cmの長方形にカットし、モニターテストを行った。
【0060】
(実施例2)
実施例1で得られたパイル編物を、指部が、親指、人差し指と中指、薬指と小指に分かれている手袋形状に縫製し、カットパイルが外側にでている手袋形状の身体洗浄具とし、モニターテストを行った。
【0061】
(比較例1)
ポリアミドのフェルト生地(KES測定での圧縮かたさ(LC)は0.55、回復性(RC)は34.2%)を20cm×70cmの長方形にカットし、モニターテストを行った。
【0062】
(比較例2)
イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸比率20モル%)(軟化点185℃)を鞘部に、ホモポリエチレンテレフタレート(融点260℃)を芯部に用いた芯鞘の複合比が2.5:1である芯鞘型複合繊維(84dtex/24f)をフロント糸として使用し、ポリエステルマルチフィラメント(44dtex/18f)をバック糸として使用し、ハーフトリコット編で編成した経編地を、190℃で熱セットした。得られた経編地(KES測定での圧縮かたさ(LC)は0.83、回復性(RC)は48%)を20cm×70cmの長方形にカットし、モニターテストを行った。
評価結果を、表1に併せて示す。
【0063】