IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョイント イノベーション テクノロジー,エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図1
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図1A
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図1B
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図2
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図3
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図4
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図5
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図6
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図7
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図8
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図9
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図10
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図11
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図12
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図13
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図14
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図15
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図16
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図17
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図18
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図19
  • 特開-植込み型上腕骨構成要素 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159428
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】植込み型上腕骨構成要素
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20231024BHJP
   A61F 2/40 20060101ALN20231024BHJP
   A61B 17/56 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/40
A61B17/56
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140460
(22)【出願日】2023-08-30
(62)【分割の表示】P 2020546120の分割
【原出願日】2019-03-01
(31)【優先権主張番号】15/911,128
(32)【優先日】2018-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518344634
【氏名又は名称】ジョイント イノベーション テクノロジー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ターマニーニ、ゼーファー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】骨の加工のためにさらには小さい切開部を通しての構成要素の挿入のために、関節鏡視下による視覚化を利用して、上腕骨(HC)および関節窩(GC)の全肩インプラントを挿入するための新規の器具を提供する。
【解決手段】小型の器具およびカニューレを挿入されたガイド、ならびにリーマーが、直接的な関節鏡視下による視覚化によりこの手技を実施するのに使用される。挿入を容易にするために、構成要素が別個に挿入されてin-situで組み立てられる。構成要素の中心ペグ(2a)を動かなくするような両皮質ねじを用いて上腕骨構成要素を定位置で固定することが達成される。さらに、構成要素、その部品、およびこれらの共に使用される器具が開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦面(5a)および中心凹部(6)を有する関節面(5)を有するベース部品(B)に固定されたヘッド部品(A)を含む移植可能な植込み型上腕骨構成要素(HC)であって、
固定ポーション(2)の挿入ポーション(2b)をその中に受け入れて保持するように構成され、固定ポーション(2)は、中心凹部(6)内に受け入れられるように構成された挿入ポーション(2b)と、中心ペグ(2a)とを有し、上腕骨(H)内に受容されるように構成された中心ペグ(2a)は、ベース(2c)と、ベース(2c)から内向きに延びる凹部(11)と、ベース(2c)から内向きに延びる位置合わせ用凹部(AR)とを有し、ベース(2c)と、固定ネジ(75)を受けるための中心ペグ(2a)内の少なくとも1つの孔(10)と、を含む植込み型上腕骨構成要素。
【請求項2】
前記ベース部品(B)が、前記ベース部品(B)から半径方向外側に延在し、前記挿入ポーション(2b)と前記中心ペグ(2a)の間に位置する円形ディスク(9)を含む、請求項1に記載の植込み型上腕骨構成要素。
【請求項3】
前記ヘッド部品(A)が、凸状のほぼ半球状の関節面(5)を含む、請求項1又は2に記載の植込み型上腕骨構成要素。
【請求項4】
前記ヘッド部品(A)が、空洞または吸盤上の部分(14a)を有する凹状の半球形のヘッド(14)を含む、請求項1又は2に記載の植込み型上腕骨構成要素。
【請求項5】
前記ベース部品(B)を前記ヘッド部品(A)に係合させるロック要素(8)を含む、請求項1又は2に記載の植込み型上腕骨構成要素。
【請求項6】
前記中心ペグ(2a)内に少なくとも2つの横孔(10a、10b)を有する、請求項1又は2に記載の植込み型上腕骨構成要素。
【請求項7】
前記位置合わせ用凹部(AR)が、前記ベース(2c)内に凹んだ横方向のスロット(12)である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の植込み型上腕骨構成要素。
【請求項8】
前記位置合わせ凹部(AR)は、前記ベース(2c)から延びる凹部である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の植込み型上腕骨構成要素。
【請求項9】
前記位置合わせ用凹部(AR)は、孔(10)の位置を参照するのに使用される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の植込み型上腕骨構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植込み型上腕骨構成要素に関し、詳細には、肩プロテーゼ・インプラント(shoulder prosthesis implant)を形成する構成要素を関節鏡視下で挿入するのを可能にするための器具およびガイドの使用に関する。本発明はまた、肩プロテーゼと、その構成要素、この肩プロテーゼを用いるのに有用である、ツール、ならびにデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
肩関節置換は数十年にわたって実施されている。肩関節の関節面が、外傷または変性疾患によって損傷する可能性のある丸い部分および凹み部分を有する。痛みや運動制限により、半球形の上腕骨構成要素および浅い関節窩構成要素を使用する関節面の置換が必要になる。
【0003】
回旋腱板および支持構造の損傷により逆肩インプラント(reverse shoulder implant)を使用することが必要となり、ここでは、構成要素の幾何形状が逆にされ、上腕骨構成要素が吸盤状の部分(cupule)として設計され、対して半球形の丸い部分が関節窩プレート(glenoid plate)に取り付けられる。しかし、プロテーゼ構成要素の挿入のための外科手技は、周囲の筋肉および隣接する腱などの局部的な解剖学的構造に過度の損傷を与えることになるような相当な外科的露出を必要とする。上記損傷は長い治癒期間を強いることになり、また、術後の多大な理学療法を必要とする。
【0004】
しかし、両方の解剖学的な肩インプラントさらにはより最近の逆インプラント(reverse implant)は、従来の広範囲に及ぶ可能性のある(extensile)外科的アプローチを介して従来通りに挿入される。従来通りに、上腕骨近位がリーマーにより穴を開けられ、それにより上腕骨構成要素のステムを挿入することが可能となる。しかし、以前の外傷が存在する場合、および上腕骨近位が変形している場合、上腕骨ステムを用いたインプラントの使用が排除されることになる。より最近では、ステム・フリーのまたはステムレスの上腕骨構成要素が設計されて使用されているが、これは依然として嵩張るものであり、従来の広範囲に及ぶ(extensive)外科的アプローチを介した挿入を必要とする。肩関節は、解剖学的には、体重の負荷を受けて圧縮しやすい関節(weight bearing and compression joint)であるような、股関節、肘関節、および足関節とは異なる引っ張られることが多い関節(distraction joint)である。肩関節では、圧縮力は、腕が水平位置にある場合の重い物体を持ち上げるときのみに限定される。従来使用されるポリエチレンの関節窩構成要素は動いて緩んでしまって骨溶解を引き起こすことが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一態様では、本発明は、本発明の全肩プロテーゼの構成要素を関節鏡視下で挿入するための改善された植込み型上腕骨構成要素の提供を対象とし、それにより、周囲の筋肉ならびに支持している靭帯および組織の損傷を最小にする。別の態様では、本発明は、移植可能な肩プロテーゼ、その構成要素、およびその部品を対象とする。別の態様では、本発明は、関節鏡視下で移植可能な肩プロテーゼを用いるのに有用である器具およびデバイスを対象とする。本発明の別の態様が本特許明細書および図面から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、刺創を利用して外科的切開部を最小にする関節鏡視下的テクニックを使用して本発明の全肩プロテーゼの上腕骨構成要素の部品および関節窩構成要素の部品の移植のための外科的方法を提供することである。最小にされる切開部は本発明の方法の初期ステップを実施するのに使用される。上腕骨構成要素の部品さらには関節窩構成要素の部品が患者の身体内の肩関節の作業スペース内で生体内で組み立てられ、それにより、1つまたは複数の刺創および最小の外科的切開部を通して各部品を挿入した後で本発明の全肩プロテーゼの組み立てられた上腕骨構成要素および関節窩構成要素が形成される。
【0007】
本発明によると、上腕骨近位の前面および上腕骨頭を可視化するための通常の従来のテクニックを介して関節鏡が上方・側方から導入される。最初に、上腕骨頭が横に切開され、それにより関節の大きさが低減されることなり、肩関節の中にアクセス可能な作業スペースが提供されることになる。アームおよびアームに対して約30°~70°の間の傾斜でまた好適には約50°の傾斜で角度をつけられる切断スロットを有する外部の骨切り(切断)ガイド(器具)デバイスが、好適には上腕骨の外科頸の下方で経皮的に挿入されるピンを使用して、上腕骨に固定される。
【0008】
骨切りガイド・デバイスが腕の前面に沿って位置合わせされる。次いで、好適には有利にはプレート・ブレード・ガイド部品を有する小さく往復動するソー・ブレード(mini-reciprocating saw blade)である、ソー・ブレードが、小さい前方皮膚切開部を通して前方から挿入され、骨切りガイドの切断スロットを通過させられ、上腕骨頭の骨切り術が実行される。外科頸の下方で上腕骨の内側面に付いている肩甲下筋の腱に損傷を与えるのを回避するように注意が払われる。上腕骨頭を引き抜くのを容易にするために、上腕骨頭がアクセス可能な作業スペース内で分断され得、断片としてそこから取り外され得る。直接的な関節鏡視下での可視化により、往復動するソー・ブレードおよび/または高速回転する小型フライスがこの分断のために使用され得る。これらのツールは好適には骨切りガイドの切断スロット部品を介して使用されるように構成される。
【0009】
次のステップは、移植可能な上腕骨構成要素を受けるように上腕骨頭を加工することである。機械的なセンター・ロケータが、関節鏡を介した執刀医の直接的な視覚的監督下で上腕骨の切断面の中心を位置決めするのを可能にする第1の小さい前方皮膚切開部を通して挿入される。上腕骨ガイド・デバイスが、アウトリガの一方の端部に取り外し可能に取り付けられる機械的なセンター・ロケータを備え、したがって、必要時にアウトリガを機械的なセンター・ロケータ部品に添着したりそこから分離したりするのを可能にする。アウトリガの一部分が、好適には上腕骨の切断面の中心のところでまたはその近くで、上腕骨の外側皮質を貫通して上腕骨頭の切断面を通してガイド・ワイヤを外に出すのを可能にすることを目的として、肩の外側面の刺創を通したガイド・ピンの挿入のためのガイドとして構成される。次いで、カニューレを挿入されたシャフトがガイド・ワイヤの上で(同軸に)挿入される。小型の円形穿孔リーマーがガイドワイヤ上で導入され、それにより小型の円形穿孔リーマーが円筒形の中央凹部を上腕骨切断面に作るのを可能にし、それにより上腕骨構成要素の中心ペグ部品を受け入れることになる。中心ペグが、ドリルを誘導するのに使用されるおよび上腕骨インプラントの一部分の固定のための固定ねじを使用するために上腕骨近位の前方面を通るように孔を開けるのに使用されるロケータ器具と共に使用される、適切なねじ切りされた中央孔および位置合わせ用凹部を有する。
【0010】
関節窩が関節窩構成要素を提供するように加工され得る。本発明の好適な実施形態では、関節窩構成要素が金属または金属材料で形成されるが、他の材料で形成されてもよい。関節窩構成要素が、加工された関節窩面に取り付けられるように構成されるベース・プレート部品を有する。関節窩構成要素が、好適には1つまたは複数のロッキング・タブを介して、取り付けられた関節窩ベース・プレートの凹部の中に差し込まれて固定されるように適合される関節窩部品(articular glenoid part)をさらに有する。有利には、関節窩部品が好適には磨き上げられた金属の関節面である凸形面を有することができるか、または関節窩構成要素が逆関節窩構成要素である場合には、関節窩部品が好適にはやはり磨き上げられた金属の関節面である凹形面を有することができる。
【0011】
直接の視下で、中心ガイド・ワイヤが関節の窩(glenoid fossa)の中心に挿入され、円形リーマーが中心ガイド・ワイヤ上で挿入され、リーマーが、関節窩構成要素のベース・プレート部品を受けることを目的として関節窩の関節面を削るのに使用される。好適であるが任意選択で、海綿骨螺子および中心ペグを受けるための適切に配置される孔を穿孔するのをおよびその後でそれらを取り外すのを容易にする3つの孔を有するテンプレートがガイドワイヤ上で導入される。このテンプレートが、任意の中心ポストの配置に対応しさらにはベース・プレート部品を移植するのに使用される任意の海綿骨螺子の位置決めに対応する孔を有する。次いで、関節窩構成要素のベース・プレート部品が、適切な長さを有する海綿骨螺子を用いて、関節窩のところの定位置まで導入されて固定される。次いで、関節窩部品が、複数のロッキング・タブを介して、取り付けられた関節窩ベース・プレートの凹部の中に差し込まれて固定される。別の実施形態では、関節窩部品がポリウレタンといったような合成ポリマーなどの非金属材料から作られ得るかまたはセラミックであってよい。骨との接触面にセメントが塗布され得る。
【0012】
次いで、金属の上腕骨構成部品が前方切開部を通して導入され、押し込みロッドの先端部の上で動かされる。中心ペグの端部のところにある位置合わせ用溝が、固定ねじ挿入するために摺動スリーブおよびアウトリガを適切に位置合わせするのを保証することになる。上記固定ねじが、有利には、前方皮質および後方皮質を通って貫通し、それにより、脆弱な骨海綿質の中に適用されるねじまたは他の機械的な固定手段よりも良好な固定を実現する。
【0013】
次いで、上腕骨構成要素のポリウレタンの半球形のヘッド部品が前方皮膚切開部の中を通るように押し込まれ、移植された金属の上腕骨構成部品の上に差し込まれる。次いで、固定ねじを挿入するための孔が穿孔され、測定され、雌ねじ立てを施される。次いで、固定ねじが前方の切開部を通してこの位置に挿入される。
【0014】
本発明の図面および詳細な説明は、本発明を、開示される特定の形態のみに限定することを意図されず、本発明は、本発明の精神および範囲内にあるすべての修正形態、均等物、および代替形態を包含するものである。
【0015】
一般的な本発明の概念、移植方法、器具、および本発明の非限定の実施形態を限定しない、図面の以下の詳細な説明を読むことにより、および添付図面を考察することにより、本発明がより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】上腕骨構成要素を示す斜視図である。
図1A】異なる構成の上腕骨構成要素を示す斜視図である。
図1B】異なる構成の上腕骨構成要素を示す斜視図である。
図2】(外部の)骨切りガイドを示す斜視図である。
図3】関節鏡視下での誘導によりピンを用いて上腕骨に添着される図2の骨切りガイドの一部分を示す斜視図である。
図4】上腕骨近位、入口用の刺創、および上腕骨頭の分断による切除を示す斜視図である。
図5】上腕骨頭の切除および取り外しの後で関節の窩の取り外しに使用される動力付きの円形リーマーの位置を示す図である。
図6図2の骨切りガイドのアームの遠位端のところにあるセンタリング・デバイスを示す図である。
図7】その部品を含めた、移植可能な上腕骨構成要素を示す断面図である。
図8】その部品を含めた、移植可能な逆上腕骨構成要素を示す別の実施形態および断面図である。
図9】プレート・ブレード・ガイドを有する小さく往復動するソー・ブレードを示す上面図である。
図10】その部品を含めた、移植可能な関節窩構成要素を示す断面図である。
図11】移植可能な逆関節窩構成要素およびその部品を示す断面図である。
図12】上腕骨ガイド・デバイスの機械的なセンター・ロケータ部品を示す上面断面図である。
図13図12の機械的なセンター・ロケータ部品を示す側面図である。
図14】脱着可能なアウトリガに取り付けられた上腕骨センター・ロケータ・ガイド・デバイスを示す斜視図である。
図15】小型の円形の関節窩リーマーを示す斜視図である。
図16】上腕骨インプラントと共に使用される穿孔リーマーを示す斜視図である。
図17】押し込み器具を示す断面図である。
図18】ロケータ器具を示す斜視図である。
図19】移植された上腕骨構成要素および上腕骨近位に部分的に挿入された固定ねじを示す斜視図である。
図20】本発明の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は多様な変更および修正を受け入れることができるが、図面では本発明の特定の実施形態が例として示されており、本発明のこれらの特定の実施形態を本明細書で詳細に説明する。図面では、種々の図において同様の参照数字および/または参照記号が同様の要素を示す。
【0018】
ここで図1および図7を参照すると、ベース部品Bに添着可能であるかまたは添着されているヘッド部品Aを備える関節鏡視下で移植可能である上腕骨構成要素HCの実施形態が描かれている。描かれる実施形態では、ヘッド部品Aが凸形の概略半球形の関節面5を有し、ベース部品Bが望ましくは金属である固定ポーション2を有する。上記固定ポーション2が概略円筒形であり、上腕骨の一部分の中に挿入されるように構成される中心ペグ2aを一方の端部のところに備え、ヘッド部品Aの平坦面5aから内側に延在する凹部6の中に摺動可能に挿入されるように構成される、概略平坦な端面1のところで終端する挿入ポーション2bをもう一方の端部のところに備え、挿入ポーション2bが本実施形態では有利にはポリエチレンで形成されるが、他の任意適切な材料で形成されてもよく、したがって金属合金またはセラミックであってもよい。ベース部品Bがその内部にねじ部3を有する軸方向のねじ切りされた凹部11を有し、さらに、概略平坦なベース2cの中へ窪んでいる横方向のスロット12を位置合わせ用凹部ARとして有し、スロット12がねじ切りされた凹部11の開端部11aのところまで広がっている。固定ポーション2の中心軸に対して横方向である円筒形孔10をさらに見ることができ、円筒形孔10が中心ペグ2aの一部分の中まで通っているかまたは好適には示されるように中心ペグ2aの一部分を通過しており、円筒形孔10が、上腕骨構成要素HCを挿入して固定ポーション2を上腕骨近位の定位置に押し込んだ後で、固定ねじを受けるようにサイズ決定されている。ここでは、孔10がテーパ状の中心ペグ2aを必ずしも完全に横断している必要はなく、図7に描かれるように必ずしも完全に通過せずに中心ペグ2aの内部で終端していてもよい、ことに留意されたい。また、他の実施形態で、2つ以上の孔10がベース部品B内に存在してよい、ことにも留意されたい。特に重要なこととして、ここでは横方向の位置合わせ用スロット12である位置合わせ用凹部ARを基準とした任意のこのような孔10の配置が観察されることになる。その理由は、位置合わせ用凹部ARの向きと孔10との間の特定のラジアル・オフセットの大きさが、位置合わせ用凹部ARを基準とした孔10の相対位置を決定するのに使用され得、これが、位置合わせ用凹部上の基準点(つまり、角部または他の部分)と、孔10のベース2cからの距離と、位置合わせ用凹部AR上の点からのラジアル・オフセットと、から測定を行うことによって単純な形で行われ得る、からである。このことを図1Aおよび図1Bを参照してより詳細に考察する。この相対的なオフセットは、ベース部品Bを上腕骨の中に押し込むことにより挿入した後で穿孔されて雌ねじ立てを施されることになる上腕骨の部分のロケーションを決定するのに後で使用される。この相対的なオフセットは後の図面に関連させてより完全に説明される。図1および図7の非限定の実施例として、孔10の位置と位置合わせ用スロット12の位置との間のラジアル・オフセットの円弧が0°である。その理由は、孔10の中心軸および位置合わせ用スロット12の横方向の中心軸が同じ平面内にあるからである。ラジアル・オフセットの円弧が0°以外の任意の値であってもよいこと、および複数の孔10が設けられる場合には複数のラジアル・オフセットが存在し得ること、を理解されたい。上腕骨の中にベース部品Bを移植する前に位置合わせ用凹部AR(または、その一部分)に対しての少なくとも1つのラジアル・オフセットまたは他の相対位置が決定されて既知となっていることのみが必要である。
【0019】
代替的実施形態では、図1および図7に示されるような位置合わせ用スロット12の代わりに、他の器具の部品に係合される他の構成の位置合わせ用凹部が使用されてもよい。この代替の位置合わせ用凹部は、概略平坦なベース2cから延在する他の形態または幾何形状の凹部であってよい。これは、例えば、実質的に任意である構成のうちのいずれかの構成であってよく、限定しないが:楕円、三角形、正方形、五角形、六角形、などの、規則的な幾何形状を有することができるか、またはベース2cを通って延在するがねじ切りされた凹部11の開端部11aから離間される、ピンを挿入可能である1つまたは複数の孔などの、1つまたは複数の孔を単純に設けることであってもよい。このような他の形態または幾何形状の凹部は、本発明の方法で使用される別の器具に係合可能であること、および位置合わせ用凹部ARを基準とした少なくとも1つの孔10の位置を参照するのに有用であること、のみを必要とする。上腕骨構成要素HCのこのような代替的実施形態の非限定の実施例が図1Aに示されている。図1Aで見られるように、図1Aおよび図1の実施形態は位置合わせ用凹部ARの構成が異なっており、位置合わせ用凹部ARの構成が、ねじ切りされた凹部11の中心に概して一致する中心を有する、平坦なベース12cのところで終点する比較的浅い深さを有する概略正方形形状の位置合わせ用凹部12aである。図1Aの実施形態はまた、ここでは放射状の形で互いから90°の円弧で分離されている、2つのオフセットされる孔10aおよび10bを有する中心ペグ2aを示しており、各々の孔10aおよび10bが側壁2kを通って中心ペグ2aの内部に入っている。図1Aの考察から理解され得るように、2つのオフセットされる孔10aおよび10bの各々がベース2cから異なる距離で離間される。図1からやはり理解され得るように、2つのオフセットされる孔10aおよび10bの各々が正方形形状の位置合わせ用凹部12aの異なる角部に一致し、つまり、孔10aが(破線の)ラインL1に沿う形で一致しており、孔10bが(破線の)ラインL2に沿う形で一致している。これらの角部の一方または両方が位置合わせ用凹部ARの基準点として使用され得る。このようにして、位置合わせ用凹部ARを基準とした孔10aおよび10bの相対位置が確立され得る。この空間関係は、ある意味では、位置合わせ用凹部ARの幾何形状に対して相補的である幾何形状を有する係合先端部ETを有する別の器具(または、その一部分)を使用することによって入れ換えられ得る。したがって、係合先端部ETが位置合わせ用凹部ARの中に適切に挿入される場合には、器具I上の対応するマークL2Mが位置合わせ用凹部12の特定の部分(この事例では、ラインL2一致するように配置されていることが分かっている孔10bの近傍にある角部)に一致しており、また、両方の位置合わせ用凹部ARを基準とした孔10bの位置が既知でありさらに孔10bとベース2cとの間の長さが既知でることを理由として位置合わせ用凹部ARに適切に係合される適切な構成の別の器具(ツール)を利用することにより移植されたベース部品の孔の位置すなわち孔10bの位置が確立され得る。図1Aの実施形態では、孔10a、10bがベース2cを横方向に通過する。
【0020】
図1Bが、図1に示される実施形態に大部分が類似する上腕骨構成要素HCの代替的実施形態の別の非限定の実施例を示す。図1Bで見られるように、図1Bおよび図1の実施形態は位置合わせ用凹部ARの構成が異なっており、位置合わせ用凹部ARの構成が、ねじ切りされた凹部11の中心に概しして一致する中心を有する、概略円形12aであり、中空ロケーティング・スリーブ90の係合先端部ETの一部分を形成するスプライン90cを受け入れるように寸法決定される内部側壁凹部12dをさらに有する。位置合わせ用凹部ARが、ロケーティング・スリーブ90に接触する平坦なベース12cのところで終端する比較的浅い深さを有する。したがって、突出するスプライン90Cを有する係合先端部ETが位置合わせ用凹部ARの中で一方向のみ(一方の向きのみ)で挿入され得る。その理由は、スプライン90cが、位置合わせ用凹部の中に完全に着座して平坦なベース12cに接触することになる係合先端部ETの端部の方でのみ内部側壁凹部12dの中に挿入され得る、からである。このようにして、位置合わせ用凹部ARおよび係合先端部ETが完全に係合される。したがって、この一方向の向きは、適切な構成の位置合わせ用凹部ARに係合される「キーを有する」係合先端部ETの実施形態である。その理由は、係合先端部ETが一方向においてのみ位置合わせ用凹部ARの中にのみ挿入され得るからである。ベース部品Bのすべての物理的寸法が既知であり、その移植前に測定され得るものであることから、平坦なベース2cからの任意の孔10の距離および内部側壁凹部12dの位置からのそのラジアル・オフセットが、挿入される係合先端部ETに関連付けられて、既知となる。図1Bでは、この関係が、孔10の中心がベース2cの内部側壁凹部12の中点に一致することを示しているラインL1によって示されている。したがって、これに対応して、係合先端部ETの一部分を形成するスプライン90cを基準とする形でロケーティング・スリーブ90上の任意のポイントが確立され得、これが、位置合わせ用凹部ARおよび係合先端部ETを互いに完全に係合させるときにロケーティング・スリーブ90上の上記ポイントを基準として孔10のロケーションを確立するのに利用され得る。
【0021】
ベース部品Bが、ベース部品Bをヘッド部品Aに係合させるのに使用されるロッキング要素を備える。図7では、ロッキング要素が、挿入部品2bの側壁2fから外側へ延在し、ヘッド部品Aの内部側壁6b内の窪んでいる円形溝7(または、1つまたは複数の他の適切な凹部であってもよい)の中でインターロックされるように構成される、(少なくとも)2つ以上の変形可能なまたは湾曲可能なロッキング・タブ8として示されており、その結果、ベース部品Bをヘッド部品Aに固定的に取り付ける「スナップ・フィット」を実現し、それにより完全な移植可能な上腕骨構成要素HCを形成する。他のロッキング要素が上腕骨構成要素HCのために使用されてもよい。中心ペグ2aが、上腕骨内でより良好に保持されるように、好適ではあるが任意選択で、わずかに内側に向かって(つまり、その中心軸に向かって)テーパ状になっており、好適には約0.5°から10°の、さらに好適には2°から5°の円弧のテーパ角で内側に向かってテーパ状になっている。図7で最も良好に見ることができるように、円形ディスク9(あるいは、フランジ9とも称される)がベース部品Bから径方向外側に延在し、挿入部品2と中心ペグ2aとの間に位置する。この円形ディスク9は荷重下でポリエチレンが動くのを低減するために、および固定ポーション2の部品がヘッド部品Aの中へと、また特にはそのポリエチレンの中へと、さらに貫通するのを防止するために、設けられるものである。
【0022】
図1および図7に示される実施形態とは異なるが、つまり図8の、別の実施形態が、そのヘッド部品Aが図1、7に示されるヘッド部品Aとは逆の幾何形状であるような、「逆上腕骨構成要素」と任意選択で称されるものである。ここでは、ヘッド部品Aが凹形の概略半球形のヘッド14を有し、つまり、ヘッド部品Aが、凹形のポリエチレンの関節面5を有する空洞または吸盤状の部分14aを有し、凹形のポリウレタンの関節面5が、図11で見ることができるように凸形の半球形の関節窩関節面と界面接触するように構成される。図11は、図8の空洞または吸盤状の部分14aの凹形の半球形のポリエチレンの関節面5に対しての相補的な界面接触面を提供することを理由として「逆関節窩構成要素」と任意選択で称される対応する関節窩構成要素GCを描いている。
【0023】
上で言及したように、本発明の目的は、小さい刺創のみを必要としてしたがって皮膚切開部を有意に低減しさらには肩甲下筋などの筋腱構造に対しての外科的損傷を低減する関節鏡視下的テクニックを使用して全肩プロテーゼの上腕骨構成要素および関節窩構成要素を挿入および移植するための方法を提供することである。
【0024】
次に、図2から6、および9を参照すると、この目的を達成するために、本方法に従って、最初に、腕の前面の上で取り外し可能に固定される骨切りガイド27を使用して、関節窩面37に接触する上腕骨頭36が取り外される。骨切りガイドOG(または、骨切りガイド27)が、ピン3を使用して、上腕骨頭36の近位側の上腕骨Hの領域内で上腕骨Hに固定される。ピン3は腕AMの皮膚内の小さい刺創を通して挿入されるものであり、ピン3の位置は、刺創70を通して前方・上方から導入される関節鏡43に取り付けられた関節鏡カメラ41を使用して執刀医によって視覚的に制御される。アーム27bの遠位端のところにあるセンタリング・デバイス28が、内側の上顆の骨隆起部29および外側の上顆の骨隆起部31を含めた肘の骨ランドマークの上でアーム27bをセンタリングするのを保証することになる。骨切りガイド27の遠位端27aが腕の前面の上で位置合わせされ、ここでは、センタリング・デバイス28の内側伸長ブラケット29および外側伸長ブラケット31が、上腕骨Hを基準として骨切りガイド27を中心に配置するのを保証することになる。図6で最も良好に見ることができるように、センタリング・デバイス28の外側伸長ブラケット29および外側伸長ブラケット31の各々の一部分が、それぞれ、ギア・ラック29aおよび31aを有し、ギア・ラック29aおよび31aがセンター・ギア30に係合され、それにより、外側伸長ブラケット29および外側伸長ブラケット31のいずれか一方の動きが、センター・ギア30を介して、外側伸長ブラケット29および外側伸長ブラケット31のもう一方の同様の動きへと移される。ギア・ラック29aおよび31aの遠位側では、外側伸長ブラケット29および外側伸長ブラケット31の各々がそれぞれ角度のついた端部分29bおよび31bを有し、角度のついた端部分29bおよび31bがそれらの間で腕AMの一部分を取り囲むように構成される。任意選択であるが、有利には、アーム27bが、アーム27bの全長を変化させるのを可能にする2つの摺動部品またはテレスコピック部品27bで形成される。2つの摺動部品またはテレスコピック部品27bがアーム27bを備えるような場合、2つの摺動部品またはテレスコピック部品27bを互いに対して一時的に固定するのを可能にするために、ロッキングねじ35(または、他のデバイスまたは部品)などのロッキング手段が存在していてもよい。図2でやはり見ることができるように、アーム27bの近位端がブラケット部品34を有し、アーム27bの中心線を基準として約30°~70°の間の傾斜また好適には約50°の傾斜で角度をつけられる側面スロット32を有する切断ガイド33がブラケット部品34に添着される。図2でさらに見ることができるように、アーム27bの遠位端のところにまたはその近くに、センタリング・デバイス28が位置する。好適な実施形態では、センタリング・デバイス28がアーム27b上で再配置され得、特に好適には、アーム27bを中心として回転させられ得、その結果、センタリング・デバイス28が対側に配置され得、それにより骨切りガイド27を「逆にする」かまたは「ひっくり返す」のを可能にし、その結果、骨切りガイド27が患者の反対側の肩関節で使用され得るようになる。本方法に戻ると、第1の小さい切開部39が前方に作られ、図9に示されるような小さく往復動するソー・ブレードが切断ガイドのスロット32を通して関節の中へ導入される。上記ソー・ブレード24が、1つの側方鋸歯24bと、ガイド・プレート25まで延在するブレード・シャンク24cと、を有するソー・ポーション24を有し、アタッチメント26のところで終端する取り付けシャンク24dがガイド・プレート25の反対側の端部まで延在し、アタッチメント26が従来の往復動するパワー・ドライバに取り付けられるように適合されている。ガイド・プレート25およびソー・ポーション24がスロット32の中に挿入可能であり、ガイド・プレート25が安定し、それにより、スロット32によって画定されて切断面内でスロット32に平行にソー・ブレード24を常に維持することが保証される。執刀医が変形またはサイズを理由として上腕骨頭を取り外するときに困難に直面する可能性がある。次いで、ガイド27が取り外され、第1の切開部39を通して導入される往復動するソーを使用して上腕骨頭を切断して複数の断片またはセグメントにすることにより、分断による引き抜き(segmental extraction)が達成され得る。より小さく切除されたフラグメント69が第1の切開部39を通して引っ張り出され得る。
【0025】
次のステップは、関節窩関節面を加工することである(図5および図15を参照)。関節窩空洞の視覚化を改善することを目的として、上腕骨Hが下方に(矢印xの方向に)引かれて外側へ回転させられ得、それにより肩関節内の作業スペースJを拡大する。ガイド・ワイヤ44が、直接的な関節鏡41による視覚化により、関節窩面37の中に挿入される。次いで、回転パワー・ユニット42に取り付けられる小型の円形リーマー45が通電され、その結果、リーマー45が回転させられて関節窩面を平らにするのに使用され(図15)、また好適には、移植可能な関節窩構成要素GCを設置(移植)することができるところの概略平坦な面を提供するのに使用され得る。この作業が1回行われ得るかまたは複数回繰り返され得、したがって、ガイド・ワイヤ44が関節窩面37の異なる部分の中に挿入され得、この追加の異なる面部分において、適切な面により関節窩ベース・プレート部品Dを満足いく形で受けることができるようになるまで、上述したように関節窩面が加工される。関節窩面が適切に加工されると、従来のドリル・ガイド(図示せず)が第1の皮膚切開部39を通して挿入され、外部の回転パワー・ツール42に取り付けられる長いドリル・ビットを使用して作られる孔を穿孔する。
【0026】
次に図10、11を参照すると、移植可能な関節窩構成要素GCの2つの実施形態が描かれており、これらの2つの実施形態の各々が、関節窩ベース・プレート部品Dに添着可能であるかまたは添着されている関節窩部品Cを備える。ここで本方法に戻ると、次いで、関節窩ベース・プレート15が切開部39を通して挿入され、穿孔および雌ねじ立ての後で、直接的な関節鏡視下で2つの(あるいは、1つの、または3つ以上の)海綿骨螺子19を使用して、加工された関節窩面に固定される。好適であるが任意選択で、ベース・プレート部品Dが、下側面15aから外側に垂れ下がっている中心ポスト18を有し、ねじの挿入中にベース・プレート15が安定する。ねじが、適切なサイズの適切に配置されているねじ孔15bを通して挿入され、ねじ孔15bが、海綿骨螺子19のヘッド19aを空洞17内の概略平坦なベース面16fに一致させるかまたはその下方に配置するのを保証するために好適には面取りされている。空洞17の寸法は、関節窩部品Cの一部分(ベース16e)を受けてその中で保持するのを可能にするような寸法である。さらに、図10、11のいずれにも示されていないが、ベース・プレート部品15は、中心ポスト18に対して垂直に見ると概略円形であり、中心ポスト18が、存在する場合には、ベース・プレート部品15の中心軸に有利には一致する。
【0027】
次いで、関節窩部品Cが皮膚切開部39を通して挿入されて空洞17の中に固定的に差し込まれ、ベース・プレート部品15のベース側壁16bから外側に延在する1つまたは複数のロッキング・タブ16aによって固定される。対応する関節窩部品20または23のベース16eが受け空洞17の中に着座するとき、ロッキング・タブ16aが、ベース・プレート部品15の内部側壁16cの中で、適切な寸法の1つまたは複数のロッキング凹部16に係合される。図10の実施形態が、関節窩ベース・プレート部品15と、図1に示されるような凸形の概略半球形の関節面5を有するヘッド部品Aを有する上腕骨構成要素HCに界面接触するように適合される凹形(または吸盤形状)の関節面GS(または、吸盤状の部分)を有する関節窩部品20と、を示している、ことを理解されたい。有利には、関節面GSが磨き上げられた金属の関節面であるが、ポリマーの面(つまり、ポリエチレン)、金属合金、またはセラミックの面であってもよい。図11が本発明の別の実施形態を描いており、ここでは、関節窩部品23が「逆の」デザインであり、凸形の半球形の幾何形状と、凸形の関節面GSとを有し、したがって、対応する逆の幾何形状の上腕骨構成要素HC(図8を参照)の半球形のヘッド部品Aと共に使用され、つまり、上腕骨構成要素HCの半球形のヘッド部品Aが凹形の関節面5を有する空洞または吸盤状の部分14aを有する。有利には、関節面GSが磨き上げられた金属の関節面である。それでも、この関節鏡視下での挿入方法は、図10の関節窩インプラント構成要素および図11の逆関節窩インプラント構成要素のいずれでも同じままである。
【0028】
次のステップは、上腕骨構成要素を挿入するために上腕骨切断面を加工することである。図12、13、14、16、17、18を参照すると、ガイド器具(GI:guide instrument)の機械的なセンター・ロケーティング部品54が前方切開部39を通して導入され、上腕骨Hの切断された平坦な面40の上に配置される。デバイスの位置が、刺創70を通して上方から挿入される関節鏡を介して外科医により直接に確認される。外科用クランプ(図示せず)を使用して爪47および50が無理やりに開けられ、ここでは、2つの小さい凹部51および52が押し込まれる。図12から見ることができるように、爪47および50の各々の一部分が、それぞれ、ギア・ラック部分47aおよび50aを有し、これらのギア・ラック部分47aおよび50aがセンター・ギア49に係合され、それにより、爪47または50のいずれか一方の動きが、センター・ギア49を介して、爪47または50のもう一方の同様の動きへと移される。外科用クランプが解放されると、爪47、50をセンター・ギア49の方向に付勢するばね48により爪47および50が閉じられ、それにより、上腕骨Hの切断面40上で機械的なセンター・ロケーティング部品54を固定的に保持する。爪47および50の長さが好適には等しいことを理由として、機械的なセンター・ロケーティング部品54が、上腕骨Hの切断された平坦な面40を基準としたセルフ・センタリング機能を提供する。次いで、アウトリガ61が、上側の切開部70を通して取り付けチャンネル55の中に挿入される形で、その近位端を介して、機械的なセンター・ロケーティング部品54に取り付けられる。見られるように、好適には取り付けチャンネル55の断面は非円形であり、ここでは正方形である。その理由は、非円形の断面が、アウトリガ61を固定的に添着して機械的なセンター・ロケーティング部品54を基準としたアウトリガ61の回転を制限するのを補助するからである。アウトリガ61がアウトリガ61の反対側の遠位端61bのところで有孔ガイド59を介して中心ガイド・ワイヤ58を正確に挿入するのを容易にし、このアウトトリガ61の遠位端61bが、テーパ状の上腕骨ボア・リーマー64を挿入するのにも使用され、また、孔10(図17を参照)に対応するように上腕骨の一部分に凹部を正確に穿孔するのを、および固定ねじ75を挿入するために上腕骨近位Hに栓を付けるのを、容易にする。カニューレを挿入されたシャフト62(または、他の中空シャフト62)がガイド・ワイヤ(図16を参照)の上で挿入され、上腕骨切断面40の中心部分の中へと出される。上記カニューレを挿入されたシャフト62はその近位側先端部のところがねじ切りされており、したがって、中心にねじ切り部分を有する円形穿孔リーマー64が主要切開部39を通して導入され、カニューレを挿入されたシャフト62のねじ切りされた先端部の上にねじ込まれる(図16を参照)。カニューレを挿入されたシャフト62の遠位端が回転パワー・ユニット42に動作可能に取り付けられ、回転パワー・ユニット42が上腕骨リーマー(好適には、内側に向かってテーパ状になっている)を回転させ、ベース部品Bのペグ2aを受けるための適切なサイズの中心凹部BRを上腕骨Hの中に穿孔するまで上腕骨切断面40の中心部分の中への切削が関節鏡視下で観察される。次いで、ベース部品Bが第1の切開部39を通して導入され、ここでは、中心ペグ2aが、穿孔された中心凹部BRの中に挿入される。
【0029】
穿孔された中心凹部BRの中へのベース部品2の押し込みを達成するために、押し込み器具67(CI:compression instrument)が利用される(図17を参照)。押し込み器具CIが、少なくとも部分的に、カニューレを挿入された(または、中空の)スリーブ・ボディ62の中にある、その両側の端部のところにねじ部を有する摺動可能なシャフト68aを有する。スリーブ・ボディ62が、その近位端のところにあるショルダ62aと、その遠位端62bと、を有する。押し込み器具67の近位端が外側の刺創63を通して導入され、上腕骨を通る通路Pに隣接するショルダ62aを補強することを目的として、シャフト68aの近位端のところにある1組のねじ部68bが中心ペグ2aのねじ切りされた凹部11の中にねじ込まれるようになるまでシャフト68aが通路Pを通って延在することになる。ショルダ62aが上腕骨の外側皮質に当接している状態において、ノブ68が回転することでシャフト68aが遠位側に動き(つまり、関節から離れる方に動く)、中心ペグ2aを中の方へ引いて、上腕骨Hの穿孔された凹部BRの中に押し込む。このようにして、ロッド68bを介して実現される押し込みにより、ベース部品Bが、穿孔された凹部BRの中に着座することになる。中心ペグ2aは、円形ディスク9を上腕骨Hの切断された平坦面40に一致させるかまたはその上で静止させるまで、着座する。押し込み器具67が引っ張り出され得る(または、ロッド68aがロケーティング器具(LI:locating instrument)の一部分を形成するのに使用され得るような実施形態では、スリーブ・ボディ62およびノブ68のみが取り外される)。
【0030】
次いでロッキング用の固定ねじ75(図19を参照)を挿入するために、上腕骨近位において正確な穿孔および雌ねじ立てを行うことが必要となり、その結果、ねじ75が移植された中心ペグ2aの孔10に係合されるようになる。この目的を達成するために、ロケーティング器具LIが、その近位端90bのところに係合先端部ETを有する近位部分90aを有する中空のロケーティング・スリーブ90を少なくとも備え、ここでは、この係合先端部ETが、ここでは中心ペグ2a内にある位置合わせ用スロット12であるベース部品Bの位置合わせ用凹部ARの幾何形状に対して相補的である幾何形状を有する一対の位置合わせ用タブ72である。上腕骨Hを通る通路Pの直径は、近位端90bおよび外側に延在する位置合わせ用タブ72をその中に挿入するのを可能にするのに十分な大きさであり、それにより、移植された中心ペグ2aおよびベース部品Bのすべての要素(特には、任意の孔10)に対してロケーティング・スリーブ90が機械的な係合されて位置決めされるようになる。(ここで、係合先端部ETの構成が図18に示される構成とは異なる、図1Aを参照すると、適切な相補的な幾何形状を有する位置合わせ用凹部ARのところにこの係合先端部ETを挿入するのを可能にするのに、およびここで説明した手法と同様の手法で孔10を適切に配置するのを可能にするのに、より小さい直径または寸法を有する通路Pで十分である可能性がある。)中空のロケーティング・スリーブ90が、好適には近位部分90を有することと併せて、その遠位部分90bをさらに備える。近位部分90aが有利には中空円形断面を有するのに対して、遠位部分90bは、有利には、中空非円形断面を有し、つまり、正方形、五角形、または六角形の断面を有する。それでも円形断面が使用されてもよいが、適性度が低い可能性がある。上記の説明および図18の図面から理解され得るように、中空のロケーティング・スリーブ90の2つの部分が、係合先端部ETからの中空のロケーティング・スリーブ90上の任意の場所またはポイントまでで決定され得る長さ寸法を有し、その結果、係合先端部ET(ここでは、位置合わせ用スロット12)が位置合わせ用凹部ARの中に係合されるときに、それに対応して、移植された中心ペグ2aの中に任意のポイントまたは孔10が、中空のロケーティング・スリーブ90上の任意の場所またはポイントからの距離として確立され得る。この空間関係は、ロケーティング器具LIの別の部品(ロケータ・アウトリガ66)を利用して1つまたは複数のこれらの孔10を位置決めするのに使用される。係合先端部ETが位置合わせ用凹部ARの中に着座している場合(これは、軸方向のねじ切りされた凹部11に係合されるねじ切りされた近位端96を有するインデックス付きの設置用ロッド98と、その遠位端のところにあるかまたはその近くにある1つまたは複数のインデックス・マーク84とによって補助され得る)、ロケータ・アウトリガ66が遠位部分90bの一部分に取り外し可能に添着され得る。ロケータ・アウトリガ66が好適には剛体であることを理由として、その近位側アーム端部66a内のロケータ孔99から遠位側クランプ・アーム端部66bまでの距離が一定であり、その結果、ロケーティング・スリーブ90を基準としてロケータ・アウトリガ66を適切に位置決めすることにより、ロケータ孔99の位置が、移植された中心ペグ2a内の孔10の位置に重ね合わされ得るようになる。適切な手段によりロケーティング・スリーブ90上の1つの位置にロケータ・アウトトリガ66を添着することにより、ロケータ・アウトリガ66の位置が確立され得、この位置が変更され得る。図18に示される実施形態は、遠位側のクランプ・アーム端部66bの構成が遠位部分90bの断面の形状に対して相補的である断面を有するような好適な実施形態を描いており、したがって、ロケータ・アウトリガ66および係合されたロケータ・スリーブ90の良好な回転安定性を実現するといったような非円形の断面による利点、つまり、三角形、正方形、五角形、または六角形の断面による利点が得られ、これは好適には、位置合わせ用凹部ARの中で係合先端部ETを着座させるのを保証するためにアウトトリガの端部61をインデックス84に一致させるように、位置決めされる。ここでは、ロケータ・アウトリガ66が1つまたは複数の孔基準位置を基準として設置可能であり(または、1つまたは複数の孔基準位置を基準として一定間隔で動かされ得る)、これが、移植された中心ペグ2aの孔10の上にロケータ孔99を適切に配置することが判明している位置(すなわち、92、92a、92b)のところにおいてロケータ・スリーブ90の遠位部分92bの上に配置されるローレット頭ねじ66cなどを使用することによって達成され、ローレット頭ねじ66cが、位置決め用凹部92(および/または、92a、92b)によって受けられるように方向付けられ得る端部を有する。この位置決め用凹部92は「孔基準位置」の非限定の実施例を表しており、「孔基準位置」の位置は異なる実施形態で異なっていてよく、つまり、これらの2つの部品を位置合わせするのに使用されるロケーティング・スリーブ90の一部分上に存在するラインまたはマークであってよい。この後、従来の外科用ドリルがロケータ孔99を通して挿入され得、上腕骨Hを通る孔を開けるのに使用され得、この孔が孔10に一致することになる。軟組織に対しての損傷を回避するために、ロケータ・アウトリガ66が孔の上の定位置に配置された後で、別の小さい切開部が作られ、中空のガイド・スリーブ(図示せず)がこの別の小さい切開部を通して挿入され、それにより周囲の軟組織を分離し、さらには、ガイド・スリーブをロケータ孔99の中に挿入するかまたはロケータ孔99に当接させるのを可能にする。次いで、適切なサイズのドリルおよび/またはタップがこのガイド・スリーブを通して挿入され、上腕骨Hにおいて穿孔を行うのにおよび/または栓をするのに使用され、それにより、ドリルおよび/またはタップの切刃を周囲の軟組織から分離する。次いで、穿孔された孔の雌ねじ立ておよび孔10の少なくとも一部分に係合されることになる固定ねじ75の挿入の前にまたはその後で、ロケータ器具LI、またはロケータ・アウトリガ66などのそのパーツが取り外され得る。固定ねじ75が上腕骨Hの皮質の中を通るように挿入されてねじ込まれ、それにより上腕骨Hを基準として中心ペグ2aを動かないようにする。次いで、上腕骨構成要素HCのヘッド部品Aが主切開部39を通して肩関節の中に押し込まれて、好ましくは、金属の構成要素2である上腕骨構成要素のベース部品Bの上に差し込まれてベース部品Bの上で固定される。図19を参照されたい。構成要素の挿入が完了すると、上腕骨の外側面の上に作られる通路Pが骨移植片に接続される。次いで、残っているすべての器具または部品が取り外され得、すべての創傷部が縫合されるか、または、適宜、他の形で閉じられる。
【0031】
上腕骨構成要素の部品および関節窩構成要素の部品の各々が多様なサイズおよび寸法を有することができること、ならびに移植の間において各々の構成要素を複数の異なるサイズで利用可能にして移植手術中に試験的なフィッティングを行うのを可能することが有益である可能性があること、を理解されたい。したがって、上腕骨構成要素または関節窩構成要素を形成するのに使用される2つ以上の部品(これらの部品は多様なサイズまたは寸法を有する)を含むキットが提供され得、やはり本発明の態様として企図される。
【0032】
図20は、本発明の一態様による方法ステップのフローチャートである。
【0033】
本発明の別の態様では、適切な寸法の移植可能な上腕骨構成要素HCを組み立てることができる構成部品のキットが提供され、このキットが、等しい寸法を有するものであってよいが好適には多様な寸法または構成の少なくとも半球形のヘッド部品Aを有する、好適には複数である、少なくとも1つの個別のヘッド構成要素Aと、好適であるが任意選択で、さらに、キットに含まれる半球形のヘッド部品Aのうちの1つまたは複数の半球形のヘッド部品Aに添着されるように適合される少なくとも1つのベース部品Bと、を有する。このキットは、上記の部品を収容する、滅菌処理されているかまたは滅菌処理可能である1つまたは複数のシール、トレイ、または容器の中で供給され得る。
【0034】
本発明の別の態様では、適切な寸法の移植可能な関節窩構成要素GCを組み立てることができる構成部品のキットが提供され、このキットが、等しい寸法を有するものであってよいが好適には多様な寸法または構成の少なくとも関節窩部品Cを有する、好適には複数である、少なくとも1つの個別の関節窩部品Cと、好適であるが任意選択で、さらに、キットに含まれる関節窩部品Cのうちの1つまたは複数の関節窩部品Cに添着されるように適合される少なくとも1つの関節窩ベース・プレート部品Dと、を有する。このキットは、上記の部品を収容する、滅菌処理されているかまたは滅菌処理可能である1つまたは複数のシール、トレイ、または容器の中で供給され得る。
【0035】
本発明の別の態様では、キットが提供され、このキットが:
(a)適切な寸法の移植可能な上腕骨構成要素HCの中に組み付けられ得る構成部品であって、このキットが、等しい寸法を有するものであってよいが好適には多様な寸法または構成の少なくとも半球形のヘッド部品Aを有する、好適には複数である、少なくとも1つの個別のヘッド構成要素Aと、好適ではあるが任意選択で、さらに、キットに含まれる半球形のヘッド部品Aのうちの1つまたは複数の半球形のヘッド部品Aに添着されるように適合される少なくとも1つのベース部品Bと、を備える、構成部品、ならびに、
(b)適切な寸法の移植可能な関節窩構成要素GCの中に組み付けられ得る構成部品であって、キットが、等しい寸法を有するものであってよいが好適には多様な寸法または構成の少なくとも関節窩部品Cを有する、好適には複数である、少なくとも1つの個別の関節窩部品Cと、好適であるが任意選択で、さらに、キットに含まれる関節窩部品Cのうちの1つまたは複数の関節窩部品Cに添着されるように適合される少なくとも1つの関節窩ベース・プレート部品Dと、を備える、構成部品
を備える。キットが、上記の部品を収容する、滅菌処理されているかまたは滅菌処理可能である1つまたは複数のシール、トレイ、または容器の中で供給され得る。
【0036】
別の実施形態では、キットが提供され、このキットが、押し込み器具CI、および/またはガイド器具GIの部品を収容する。キットが、上記の部品を収容する、滅菌処理されているかまたは滅菌処理可能である1つまたは複数のシール、トレイ、または容器の中で供給され得る。
【0037】
別の実施形態では、キットが提供され、このキットが、押し込み器具CI、および/または押し込み器具CIの部品を収容する。キットが、上記の部品を収容する、滅菌処理されているかまたは滅菌処理可能である1つまたは複数のシール、トレイ、または容器の中で供給され得る。
【0038】
別の実施形態では、キットが提供され、このキットが、ロケータ器具LI、および/またはロケータ器具LIの部品を収容する。キットが、上記の部品を収容する、滅菌処理されているかまたは滅菌処理可能である1つまたは複数のシール、トレイ、または容器の中で供給され得る。
【0039】
別の実施形態では、キットが提供され、このキットが、適切な寸法の移植可能な上腕骨構成要素HCを組み立てることができる1つまたは複数の部品、ならびに/あるいは適切な寸法の移植可能な関節窩構成要素GCを組み立てるのに使用され得る1つまたは複数の構成部品を備える。任意選択で、キットに、圧縮器具CI、および/または圧縮器具CIの部品が提供されてもよい。任意選択で、キットに、ロケータ器具LI、および/またはロケータ器具LIの部品が提供されてもよい。キットが、上記の部品を収容する、滅菌処理されているかまたは滅菌処理可能である1つまたは複数のシール、トレイ、または容器の中で供給され得る。
【0040】
本発明の別の実施形態は、(好適には、関節鏡視下で)肩関節の上腕骨頭および関節の窩を切除してそれを全肩プロテーゼに置き換えるためのシステムであり、このシステムが ベース部品Bに添着可能であるかまたはベース部品Bに添着されているヘッド部品Aを備える移植可能な上腕骨構成要素HCと、
関節窩ベース・プレート部品Dに添着可能であるかまたは関節窩ベース・プレート部品Dに添着されている関節窩部品Cを備える移植可能な関節窩構成要素GCと、
好適ではあるが、任意選択で、
骨切りガイドOG、
ガイド器具GI、
押し込み器具CI、
ロケータ器具LI、
1つまたは複数の往復動する小型のソー・ブレード、および
1つまたは複数の穿孔リーマー
のうちの少なくとも1つと、
を備える。
【0041】
好適な実施形態では、上記システムが、骨切りガイドOG、ガイド器具GI、押し込み器具CI、ロケータ器具LI、のうちの少なくとも1つを必ず備え、特定の好適な実施形態では、上記のうちの、少なくとも2つ、より好適には少なくとも3つ、特に好適には4つすべてを備える。
図1
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20