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特開2023-159468SARS-CoV-2予防抗原ペプチドおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159468
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2予防抗原ペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20231025BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231025BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 15/50 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C12Q1/02
A61P31/14
G01N33/53 P
A61K39/215
C12N15/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137364
(22)【出願日】2020-08-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日:令和2年(2020年)7月30日、掲載アドレス:https://pdf.irpocket.com/C4594/bnNt/EDZk/YVHs.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】304058240
【氏名又は名称】ブライトパス・バイオ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100110456
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 務
(74)【代理人】
【識別番号】100117813
【弁理士】
【氏名又は名称】深澤 憲広
(72)【発明者】
【氏名】平糠 和志
(72)【発明者】
【氏名】中面 哲也
(72)【発明者】
【氏名】アーノ クズィネ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利宙
【テーマコード(参考)】
4B063
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QS33
4C085AA03
4C085BA71
4C085BB11
4C085CC08
4C085CC21
4C085CC32
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】T細胞(CD8陽性T細胞:キラーT細胞)によってウイルス感染細胞を殺傷することを目的とした、ウイルス特異的T細胞免疫を誘導できるペプチドの提供。
【解決手段】SARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質に由来するアミノ酸配列を有するペプチドを含む、SARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫を誘導することを特徴とするペプチド又はその修飾物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質に由来するアミノ酸配列を有するペプチドを含む、SARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫を誘導する機能を有することを特徴とするペプチドまたはその修飾物。
【請求項2】
ペプチドの修飾物が、N末端またはC末端、あるいはその両端にアミノ酸が付加されたペプチドの修飾物、ジフテリア毒素の膜領域のペプチドを付加されたペプチドの修飾物、HLA結合部位のアミノ酸をさらに結合しやすいように置換したペプチドの修飾物、タンパク質キャリアを付加されたペプチドの修飾物のいずれかまたは組み合わせである、請求項1に記載のペプチドまたはその修飾物。
【請求項3】
SARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質が、エンベロープタンパク質、メンブレンタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、スパイクタンパク質からなる群から選択される、請求項1または2に記載のペプチドまたはその修飾物。
【請求項4】
ペプチドのアミノ酸配列が、SEQ ID NO: 1~55からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列である、請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドまたはその修飾物。
【請求項5】
SARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫が、ペプチドまたはその修飾物がMHCクラスI分子に対して結合することを介して生じる、請求項1~4のいずれか1項に記載のペプチドまたはその修飾物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のペプチドまたはその修飾物を含む、生体内におけるSARS-CoV-2ウイルスを除去し、またはCOVID-19の発症を予防または治療するための医薬組成物。
【請求項7】
SARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫を誘導することによる、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
複数のペプチドまたはその修飾物を含む、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(a)被検体から採取した血液から取り出された白血球細胞を、請求項1~5のいずれか1項に記載するペプチドまたはその修飾物とともに培養する工程;
(b)当該ペプチドまたはその修飾物により、白血球細胞からのインターフェロンγ(IFN-γ)産生が誘導されているかどうかを検出する工程;
を含む、被検体生体内においてSARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫の記憶が成立しているかどうかを確認する方法。
【請求項10】
白血球細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
IFN-γ産生が誘導されているかどうかの検出を、ELISPOTアッセイを用いて行う、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV-2感染予防もしくはCOVID-19発症予防に使用できる抗原ペプチドおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生体内でウイルスに感作されたB細胞は、ウイルスを捕捉する中和抗体を産生することが知られている。2020年初めに新型コロナウイルス、SARS-CoV-2が確認されてからこれまで、SARS-CoV-2ウイルスに対して開発が検討されているワクチンも、この機序を利用して、中和抗体を誘導することを意図したものがほとんどであり、SARS-CoV-2ウイルスが細胞に侵入するときに使用されるSARS-CoV-2ウイルス表面上のスパイクタンパク質を免疫原として使用してかかる中和抗体を誘導できれば、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質が細胞のACE2受容体と結合するのをブロックして、SARS-CoV-2ウイルスの細胞への侵入を妨げることができると考えられている。
【0003】
COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスは、スパイクタンパク質が細胞のACE2受容体に結合して細胞に感染し、細胞外から消えるため、このスパイクタンパク質のACE2結合部位を認識する抗体は、中和能を発揮できる場合が多いと考えられている。また、SARS-CoV-2ウイルス感染からの回復者の血液中に存在するSARS-CoV-2ウイルスに対する抗体を測定した結果、多くの回復者において、回復後数か月以内に血液中からIgG抗体が消失しているという報告もある(非特許文献1:Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections, Quan-Xin Long, et al., Nature Medicine, Letter, Published: 18 June 2020)。
【0004】
また、ワクチンの接種などにより起こりうる「抗体依存性感染増強(ADE)」と呼ばれる現象により、ウイルスに感染した場合に症状が重症化するリスクが指摘されている。
【0005】
これに対して、フランスの7家族を調べた試験の結果、SARS-CoV-2感染者と密に接したその家族8人のうち6人からは、抗体は見つからなかったにも拘わらず、T細胞が検出されたことが報告されている(非特許文献2:Intrafamilial Exposure to SARS-CoV-2 Induces Cellular Immune Response without Seroconversion. medRxiv. Posted June 22, 2020)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections, Quan-Xin Long, et al., Nature Medicine, Letter, Published: 18 June 2020
【非特許文献2】Intrafamilial Exposure to SARS-CoV-2 Induces Cellular Immune Response without Seroconversion. medRxiv. Posted June 22, 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる状況のもと、ウイルス感染が進行してしまった細胞は細胞内でウイルスを増殖させるため、T細胞(CD8陽性T細胞:キラーT細胞)によって感染細胞を殺傷することが必要になる。そのため、本発明は、ウイルス防御のため、このようなウイルス特異的T細胞による細胞性免疫を誘導できるワクチンを開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、SARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質に由来するアミノ酸配列を有するペプチドを含む、SARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫を誘導することを特徴とするペプチドまたはその修飾物を選択することにより上記課題を解決することができることを明らかにした。
【0009】
より具体的には、本件出願は、前述した課題を解決するため、以下の態様を提供する:
[1]: SARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質に由来するアミノ酸配列を有するペプチドを含む、SARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫を誘導する機能を有することを特徴とするペプチドまたはその修飾物;
[2]: ペプチドの修飾物が、N末端またはC末端、あるいはその両端にアミノ酸が付加されたペプチドの修飾物、ジフテリア毒素の膜領域のペプチドを付加されたペプチドの修飾物、HLA結合部位のアミノ酸をさらに結合しやすいように置換したペプチドの修飾物、タンパク質キャリアを付加されたペプチドの修飾物のいずれかまたは組み合わせである、[1]に記載のペプチドまたはその修飾物;
[3]: SARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質が、エンベロープタンパク質、メンブレンタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、スパイクタンパク質からなる群から選択される、[1]または[2]に記載のペプチドまたはその修飾物;
[4]: ペプチドのアミノ酸配列が、SEQ ID NO: 1~55からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列である、[1]~[3]のいずれかに記載のペプチドまたはその修飾物;
[5]: SARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫が、ペプチドまたはその修飾物がMHCクラスI分子に対して結合することを介して生じる、[1]~[4]のいずれかに記載のペプチドまたはその修飾物;
[6]: [1]~[5]のいずれかに記載のペプチドまたはその修飾物を含む、生体内におけるSARS-CoV-2ウイルスを除去し、またはCOVID-19の発症を予防または治療するための医薬組成物;
[7]: SARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫を誘導することによる、[6]に記載の医薬組成物;
[8]: 複数のペプチドまたはその修飾物を含む、[6]または[7]に記載の医薬組成物;
[9]: (a)被検体から採取した血液から取り出された白血球細胞を、[1]~[5]のいずれか1項に記載するペプチドまたはその修飾物とともに培養する工程;
(b)当該ペプチドまたはその修飾物により、白血球細胞からのインターフェロンγ(IFN-γ)産生が誘導されているかどうかを検出する工程;
を含む、被検体生体内においてSARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫の記憶が成立しているかどうかを確認する方法;
[10]: 白血球細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)である、[9]に記載の方法;
[11]: IFN-γ産生が誘導されているかどうかの検出を、ELISPOTアッセイを用いて行う、[9]または[10]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のペプチドまたはその修飾物は、生体に投与することにより、その生体がSARS-CoV-2ウイルスに感染した場合にその生体内でウイルス感染細胞に対する細胞傷害を生じさせるCD8陽性T細胞(キラーT細胞)を活性化することができ、また、そのCD8陽性T細胞(キラーT細胞)の免疫記憶を作ることができる。このことから本発明のペプチドまたはその修飾物は、生体がSARS-CoV-2ウイルスに感染した場合に、SARS-CoV-2ウイルスの生体内での増殖を抑制し、SARS-CoV-2ウイルス感染症(COVID-19)の発症を予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、SARS-CoV-2ウイルスに感染した生体内で生じる免疫の全体像を示す図である。
図2図2は、SARS-CoV-2ウイルスに感染した生体内で生じる免疫記憶の全体像を示す図である。
図3図3は、ペプチドの免疫プロトコルを示す図である。
図4図4は、HLA-A*02:01トランスジェニックマウスに対して複数のペプチドの混合物を投与した場合の、ELISPOTアッセイの結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において使用する用語を以下の通り定義する:
(a)「SARS-CoV-2ウイルス」は、新型コロナウイルスとも呼ばれる、コロナウイルスの一つ。国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses:ICTV)が2020年2月に、SARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こすウイルス(SARS-CoV)の姉妹種であるとして命名されたもの;
(b)「COVID-19」は、SARS-CoV-2ウイルスの感染により発症する新型コロナウイルス感染症の正式名称;
(c)「HLA」(Human Leukocyte Antigen;ヒト白血球型抗原)は、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のことであり、大きくクラスI抗原(MHCクラスI抗原)とクラスII抗原(MHCクラスII抗原)とに分類される。クラスI抗原は、クラスIa抗原(HLA-A、B、C)、クラスIb抗原(HLA-E、F、G)に分類され、ほとんどの有核細胞や血小板、血漿中に存在する。クラスII抗原には、HLA-DR抗原、HLA-DQ抗原、HLA-DP抗原が含まれマクロファージや単球等の抗原提示細胞やBリンパ球、活性化Tリンパ球などに分布している;
(d)「ELISPOTアッセイ」(Enzyme-Linked ImmunoSpot Assay)は、酵素結合免疫スポットアッセイとも呼ばれるアッセイで、抗体を使用してタンパク質分析物(生物学的物質または化学的物質)を検出する、免疫染色の一種の手法。ELISAをベースに特定の抗体分泌細胞の分析のために開発されたもので、刺激に反応して可溶性メディエーターを分泌する個々の免疫細胞を検出するための精度が高いin vitro 細胞アッセイとして使用できるアッセイ。
【0013】
<本発明のペプチドまたはその修飾物>
一般的に、ウイルスへの感染を防止するために開発され、使用されているワクチンは、ウイルス粒子の外側に露出したタンパク質またはその部分ペプチドを免疫原として生体に投与して、生体内においてそのウイルスに対する中和抗体を産生させることを目的とするものである。このようなワクチンにより生体内で産生された中和抗体は、血液中などに存在するウイルスを捕捉し、排除することができる。しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスの感染から回復したヒト体内からは回復後数か月以内に血液中からIgG抗体が消失しているという報告(非特許文献1)や、SARS-CoV-2ウイルス感染者との濃厚接触者においてT細胞が検出されたにも関わらず抗体は検出されなかったとの報告(非特許文献2)などから、SARS-CoV-2ウイルスの感染に対しては、中和抗体の産生のみでは生体防御として十分ではないと考えられた。
【0014】
そのため、本発明者らは、SARS-CoV-2ウイルスの感染に対して細胞性免疫を誘導することができるペプチドを探索することとして検討を行うこととした。すなわち、SARS-CoV-2ウイルスに対する免疫の概要を図1に示すが、本発明者らは、樹状細胞を介したCD8陽性T細胞(キラーT細胞)を活性化させる機能、ひいては実際のSARS-CoV-2ウイルスの感染時においてCD8陽性T細胞(キラーT細胞)による感染細胞の細胞傷害を引き起こす細胞性免疫の免疫記憶を生じさせる機能を発揮することができるペプチドまたはその修飾物を探索することとして、検討を行うこととした。
【0015】
その結果、SARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質のアミノ酸配列の部分配列であるペプチドのうち、クラスI型のHLAタンパク質と結合して、SARS-CoV-2ウイルスに感染した生体内で細胞性免疫を生じさせるCD8陽性T細胞を活性化することができるペプチドとして、SEQ ID NO: 1~55の55種類のペプチドを取得することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、第一の態様として、SARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質に由来するアミノ酸配列を有するペプチドを含む、SARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫を誘導する機能を有することを特徴とするペプチドまたはその修飾物を提供することができる。
【0017】
生体内においてウイルスに感染された細胞の細胞表面には、MHCクラスI分子と結合したウイルス由来ペプチドが提示されるが、CD8陽性T細胞(キラーT細胞)は、このMHCクラスI分子とともに細胞表面に提示されたペプチドを認識し、活性化され、感染細胞を細胞傷害することにより、ウイルス増殖を阻止する、細胞性免疫の機能を発揮すると考えられている(図1)。
【0018】
本発明のペプチドまたはその修飾物は、SARS-CoV-2ウイルスに感染された細胞の細胞表面に提示されるSARS-CoV-2ウイルス由来のペプチドを模倣し、細胞表面にMHCクラスI分子であるHLAタンパク質と結合してHLAとともに提示されるものであり、結果的に当該ペプチドまたはその修飾物を細胞表面に提示する細胞を認識して細胞傷害するCD8陽性T細胞(キラーT細胞)を活性化することができる。このCD8陽性T細胞(キラーT細胞)は、生体にSARS-CoV-2ウイルスが感染した場合に細胞性免疫を担う細胞であり、SARS-CoV-2ウイルスに由来するペプチドを提示する感染細胞を破壊して、SARS-CoV-2ウイルスの増殖を阻止する、細胞性免疫の機能を発揮することができる。
【0019】
本発明のペプチドまたはその修飾物が結合することができるMHCクラスI分子であるHLAタンパク質としては、HLA-Aに属する抗原であるA02抗原、A24抗原などが含まれる。
【0020】
本発明において、ペプチドの由来となるSARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質は、ウイルス粒子の内部にあるタンパク質であっても、ウイルス粒子の外部に存在するタンパク質であってもよく、具体的には、SARS-CoV-2ウイルスの外部に存在する(すなわち、表面に露出している)タンパク質(例えば、エンベロープタンパク質、スパイクタンパク質)であっても、ウイルス内部に存在する(すなわち、表面に露出していない)タンパク質(例えば、ヌクレオカプシドタンパク質)であってもよい。
【0021】
本発明において使用することができるSARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質は、すでに公的データベースに登録されているSARS-CoV-2ウイルスの完全ゲノム配列に基づいて取得することができる。このような完全ゲノム配列としては、NCBI RefSeqデータベース に登録されているSARS-CoV-2ウイルスの参照ゲノム配列、GISAID EpiCoVTMデータベースに登録されているゲノム配列などを使用することができる。本発明においては、代表性の観点から、NCBI RefSeqデータベースに登録されているSARS-CoV-2ウイルスの参照ゲノム配列NC_045512を使用し、この参照ゲノム配列に基づいて特定されるSARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質を使用することが好ましい。
【0022】
これらのタンパク質の部分配列であるペプチドのうち、実際にMHCクラスI分子であるHLAタンパク質と結合することができ、そしてCD8陽性T細胞(キラーT細胞)を活性化することができるペプチドとして、本発明においては、アミノ酸配列がSEQ ID NO: 1~55のいずれかであるペプチドを例として挙げることができるが、これらには限定されない。これらの特定のアミノ酸配列を有するペプチドまたはその修飾物は、樹状細胞の細胞表面においてMHCクラスI分子とともに提示され、CD8陽性T細胞(キラーT細胞)を活性化する能力を有するものと考えられる。
【0023】
本発明のペプチドは、MHCクラスI分子と結合して、免疫細胞に提示されるものであることから、構造的にアミノ酸数が8から11個のペプチドであることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、上記のペプチドそのものだけでなく、上記のペプチドの修飾物であっても、実際にMHCクラスI分子であるHLAタンパク質と結合することができ、そしてCD8陽性T細胞(キラーT細胞)を活性化することができるものであれば、本発明の構成物として使用することができる。このような本発明のペプチドの修飾物として、例えば、これらのペプチドのN末端またはC末端、あるいはその両端にアミノ酸が付加されたペプチドの修飾物、ジフテリア毒素の膜領域のペプチドを付加されたペプチドの修飾物、HLA結合部位のアミノ酸をさらに結合しやすいように置換したペプチドの修飾物、タンパク質キャリアを付加されたペプチドの修飾物などのペプチドの修飾物などが含まれてもよい。
【0025】
一般的に、ウイルス感染から回復すると、そのウイルスに対する免疫記憶が成立することが知られている。そのような記憶は、当該ウイルスに対するヘルパーT細胞に関する免疫記憶、抗体産生細胞であるB細胞に関する免疫記憶とともに、細胞性免疫を担うCD8陽性細胞(キラーT細胞)についての免疫記憶が存在する。
【0026】
SARS-CoV-2ウイルスに対する免疫記憶の概要を図2に示すが、本発明のペプチドまたはその修飾物はまた、少なくとも当該ペプチドまたはその修飾物をMHCクラスI分子とともに細胞表面に提示する細胞を認識して細胞傷害するCD8陽性T細胞(キラーT細胞)の記憶細胞であるメモリーキラーT細胞を誘導することができる。このような記憶細胞は、生体にSARS-CoV-2ウイルスが感染した場合に、樹状細胞によるSARS-CoV-2ウイルス由来のペプチドの提示に基づいて、メモリーキラーT細胞の迅速な活性化を誘導して、SARS-CoV-2ウイルスへの感染細胞に対する細胞性免疫の作用を迅速に発揮することができる。
【0027】
<本発明のペプチドまたはその修飾物の医薬用途>
本発明の上述したペプチドまたはその修飾物は、MHCクラスI分子であるHLAタンパク質と結合することができ、そしてCD8陽性T細胞(キラーT細胞)を活性化することができ、そして生体内においてSARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫の免疫記憶を生じさせることができるものであることから、結果として、生体内においてSARS-CoV-2ウイルスに感染した細胞を効果的に除去して、結果的に生体内におけるSARS-CoV-2ウイルスを除去することができるものである。このようなSARS-CoV-2ウイルスに感染した細胞の効果的な除去により、結果的にSARS-CoV-2ウイルスを除去し、ひいてはCOVID-19の発症を予防または治療するための医薬組成物として使用することができる。
【0028】
すなわち、本発明は、別の一態様において、本発明の上述したペプチドまたはその修飾物を含む、生体内におけるSARS-CoV-2ウイルスを除去し、またはCOVID-19の発症を予防または治療するための医薬組成物もまた、提供することができる。
【0029】
本発明において医薬組成物は、医師によって使用され又は医師の処方せん若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医療用医薬品のことを意味し、治療用途のもの(治療薬)だけでなく、予防用途のもの(ワクチン)を含む概念である。
【0030】
本発明において、生体内におけるSARS-CoV-2ウイルスの除去という場合、ウイルスが感染した細胞を、生体の細胞性免疫により細胞傷害して破壊し、細胞外に放出される感染力を有するウイルス粒子の数を減少させることをいう。
【0031】
本発明において、COVID-19の発症の予防または治療という場合、生体内においてSARS-CoV-2ウイルスが感染した細胞を生体の細胞性免疫により細胞傷害して破壊し、細胞外に放出される感染力を有するウイルス粒子の数を減少させることで、SARS-CoV-2ウイルスの感染症状であるCOVID-19の発症を予防し、あるいは仮に発症したとしてもその症状を治療・軽減することができることをいう。
【0032】
本発明の医薬組成物の有効成分であるペプチドまたはその修飾物の特徴は、その構造および作用に関してすでに説明した通りのものである。本発明の医薬組成物においては、本発明のペプチドまたはその修飾物として、単一のペプチドまたはその修飾物を含むものであっても、複数のペプチドまたはその修飾物を含むものであってもよい。
【0033】
医薬組成物中に複数のペプチドまたはその修飾物を含む場合、様々なペプチド配列により活性化される様々なCD8陽性T細胞(キラーT細胞)による細胞性免疫を生じさせることができる。このような多様性があることにより、ウイルスのタンパク質の特定の部位にアミノ酸変異が生じた場合でも、他のペプチド部分に対するCD8陽性T細胞(キラーT細胞)が細胞性免疫を生じさせることができ、より実効性の高い医薬組成物として使用することができる。
【0034】
本発明においては、本発明の医薬組成物を、他の機構により生体内におけるSARS-CoV-2ウイルスを除去しまたはCOVID-19の発症を予防または治療するための他の医薬組成物と組み合わせて投与することもできる。例えば、他の医薬組成物としては、感染した生体におけるSARS-CoV-2ウイルスを減少させることを目的とした薬剤(抗ウイルス薬、抗血清など)などを使用することができる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、剤型、投与経路などに基づいて、必要に応じて、当該技術分野において一般的に使用されている担体、賦形剤、アジュバントなどのその他の添加成分を含んでいてもよい。
【0036】
<本発明のペプチドまたはその修飾物の診断用途>
すでにSARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫の免疫記憶を有している場合、その生体から採取した白血球細胞は、本発明のペプチドまたはその修飾物を添加してin vitroにおいて培養すると、白血球細胞からインターフェロンγ(IFN-γ)が産生される。
【0037】
この機能を利用して、本発明の別の一態様において、
(a)被検体から採取した血液から取り出された白血球細胞を、本発明のペプチドまたはその修飾物とともに培養する工程;
(b)本発明のペプチドまたはその修飾物により、白血球細胞からのインターフェロンγ(IFN-γ)産生が誘導されているかどうかを検出する工程;
を含む、被検体生体内においてSARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫の記憶が成立しているかどうかを確認する方法を提供することができる。
【0038】
この態様で使用する白血球細胞は、被検体血液から採取した全血液をFicoll-Paque PREMIUM(サイティバ(Cytiva)社)で分画した白血球細胞画分を使用することができるが、さらにMACSシステム(ミルテニーバイオテク株式会社)の手順で分画し、末梢血単核細胞(PBMC)などのIFN-γを産生する白血球細胞を使用することもできる。
【0039】
白血球細胞においてIFN-γ産生が誘導されているかどうかの検出は、ELISPOTアッセイを用いて行うことができる。
【0040】
この方法において確認した結果、すでに被検体がSARS-CoV-2ウイルスに対する細胞性免疫の記憶が成立していないことが明らかになった場合、前述した本発明の医薬組成物を投与して、
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示す。下記に示す実施例はいかなる方法によっても本発明を限定するものではない。
【実施例0042】
実施例1:エピトープ解析と実験対象ペプチドの選択
本実施例においては、候補となるエピトープ配列の選択およびそのエピトープの合成を行った。
【0043】
NCBI RefSeqデータベースに登録されているSARS-CoV-2の参照ゲノム配列(NC_045512)から翻訳されるタンパク質配列の情報に基づいて、8から11アミノ酸残基長のペプチド配列の総パターンを切り出し、それぞれについてHLA型(HLA-A*02:01、HLA-A*24:02など)ごとに拘束性のエピトープとしての可能性をスコア付けし、エピトープとなる可能性の高いペプチド配列を選抜した。
【0044】
本実施例においては、エピトープが由来するタンパク質配列として、構造タンパク質であるEnvelope(E)、Membrane(M)、Nucleocapsid(N)、Spike(S、データ上ではsurfaceと表記)に由来する、9アミノ酸残基及び10アミノ酸残基長のエピトープ配列を選択した。その結果、170個の候補エピトープが選抜された。
【0045】
次にSARS-CoV-2ウイルスに選択的なエピトープ配列に限定するため、一般的なヒト感染コロナウイルスであるHCoV株4種(HCoV_229E、HCoV_HKU1、HCoV__NL63、HCoV_OC43)と中東呼吸症候群(MERS)株1種(MERS_EMC)の参照タンパク質配列と比較し、各エピトープ配列と共通する5残基長以上の長さのアミノ酸セグメントがそれらの5種の参照タンパク質配列内に見つかる場合に、SARS-CoV-2ウイルス選択的なエピトープではないとして、除外した。
【0046】
次にSARS-CoV-2ウイルスで変異が生じている箇所を含むエピトープを除外するため、参照ゲノム配列(NC_045512)以外の解読ゲノム(2020年4月27日時点でNCBI Virusデータベースに登録されていた約900種)から翻訳されるタンパク質配列と比較し、該当エピトープ配列のアミノ酸レベルでの一致率を計算し、一致率が低いエピトープを除外した。
【0047】
最終的にHLA-A*02:01またはHLA-A*24:02に拘束性と予想される、126種の候補エピトープ配列のペプチドを化学合成した。
【0048】
実施例2:トランスジェニックマウスを用いた免疫誘導実験
本実施例においては、実施例1で選択し、化学合成した候補エピトープペプチドを用いて、HLA-A*02:01またはHLA-A*24:02トランスジェニックマウスを免疫した。
【0049】
実施例1において化学合成した候補エピトープペプチドを、4~6種ごとのペプチドのグループに分け(表1)、それぞれの4~6種のペプチドを溶解したペプチド混合液50μgを作製し、16μgのpolyI:CLCと混合後、図3に示す免疫プロトコルにて、HLA-A*02:01トランスジェニックマウスまたはHLA-A*24:02トランスジェニックマウスに1週間おきに3回、尾根部皮下に投与した(各ペプチド混合液グループにつきマウスは2匹使用)。
【0050】
なお、GROUP A02-3およびGROUP A02-4のペプチド、GROUP A02-5およびGROUP A02-6のペプチド、GROUP A02-7およびGROUP A02-8のペプチド、GROUP A02-9およびGROUP A02-10のペプチド、GROUP A02-11およびGROUP A02-12のペプチド、そしてGROUP A02-13およびGROUP A02-14のペプチドについては、2グループを同時投与する方法で免疫を行い、上記のプロトコルとは別に、それぞれのペプチド混合液50μgとpolyI:CLC 16μgを1匹のトランスジェニックマウスの左右の尾根部皮下2か所へ投与する実験を行った(表1中GROUP A02-3+4、GROUP A02-5+6、GROUP A02-7+8、GROUP A02-9+10、GROUP A02-11+12、そしてGROUP A02-13+14と表記)。
【0051】
なお、ネガティブコントロールとして、マウス1匹に対してPolyI:CLC(16μg)のみを投与し、ポジティブコントロールとして、マウス1匹に対して、既に免疫原性があることが確認されている胎児性抗原であるglypican-3(GPC3)由来のA02 Shortペプチド(FVGEFFTDV)50μgもしくはサイトメガロウイルス(CMV)由来のA24 Shortペプチド(QYDPVAALF)50μgとPolyI:CLC 16μgとの混合物を投与した。
【0052】
【表1】
【0053】
ペプチドの最終投与から1週間後に脾臓を回収し、脾細胞を調製し、それぞれ個体由来の細胞について、ELISPOTセット(BDTM ELISPOT マウスIFN-γELISPOT Set、BD Bioscience社)のウェルマルチウェルプレートにウェル当たりの細胞数を2×106個に調整して細胞を播種し、ペプチド混合液に含まれるいずれか一つのペプチドを各ウェルに混合した。具体的には、例として、GROUP A02-1のペプチドを投与したHLA-A*02:01トランスジェニックマウスの場合には、このマウスから脾細胞を調製して播種し、6つのウェルのそれぞれにCovA02_01、CovA02_02、CovA02_03、CovA02_04、CovA02_05、CovA02_06のいずれかの候補ペプチドを混合した。細胞を、培養液(RPMI1640培地に10% FCS、200μM L-glutamine, 100μM 2-ME, 100μMピルビン酸、MEM Non Essential Amino Acid, 10mM HEPESならびに抗生剤として100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを添加)の培養液を使用して20時間培養した後、インターフェロンγ(IFN-γ)を検出できるELISPOTアッセイに供して、IFN-γ放出細胞数を測定した。それぞれのペプチドごとに3つのウェルを割り当て、トリプレットで評価した。
【0054】
実施例3:陽性ペプチドの判定
本実施例においては、実施例2で行ったELISPOTアッセイの結果に基づく、細胞性免疫活性化陽性ペプチドの選択を行った。
【0055】
ELISPOTアッセイは、脾細胞を培養液(RPMI1640培地に10% FCS、200μM L-glutamine, 100μM 2-ME, 100μMピルビン酸、MEM Non Essential Amino Acid, 10mM HEPESならびに抗生剤として100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを添加)を使用してELISPOTセット(BDTM ELISPOT マウスIFN-γELISPOT Set、BD Bioscience社)のウェルマルチウェルプレート上で培養した後、プレートを洗浄することで細胞を除去し、ビオチン標識した抗IFN-γモノクローナル抗体(BDTM ELISPOT マウスIFN-γELISPOT Set、BD Bioscience社)と共に室温で2時間インキュベートすることにより行った。検出は、ビオチン標識した抗IFN-γモノクローナル抗体と共にインキュベーションしたプレートを洗浄した後、1:100に希釈したHRP標識-アビジン(BDTM ELISPOT マウスIFN-γELISPOT Set、BD Bioscience社)と共に室温で1時間処理した後、ACE Substrate溶液(BD Bioscience社)を加え発色させ、発色させたプレートを自動スポットカウント装置(エリフォトカウント、ミネルヴァテック株式会社)を使用して計測することにより行った。PMAとイオノマイシン(Ionomycin)(シグマ(Sigma)社)で処理した細胞を、全ての実験のポジティブコントロールとして用いた。実験は、各ペプチド混合液グループにつき免疫された2匹のマウスそれぞれについて採取された脾細胞について、トリプレットでスポット数を確認した。
【0056】
例として、HLA-A*02:01トランスジェニックマウスにGROUP A02-1のペプチドを投与した場合の、ELISPOTアッセイの結果を図4に示す。上から順に、
・PolyI:CLC(16μg)のみを投与したネガティブコントロール免疫されたマウス由来の脾細胞(「Negative control (Poly I:CLC only)」と表記)、
・GPC3-A02Shortペプチド(50μg)とPolyI:CLC(16μg)との混合物を投与したポジティブコントロール免疫されたマウス由来の脾細胞(「Positive control (GPC3 + Poly I:CLC)」と表記)、
・GROUP A02-1のペプチド(50μg)とPolyI:CLC(16μg)との混合物を投与した実験群免疫されたマウス由来の脾細胞(「Group A02-1 peputides + Poly I:CLC」と表記)、
についての結果を示し、それぞれのウェルは、トリプレットのウェル写真の上に表記されているペプチド(例えば、CovA01-01、CovA01-02など)とともに培養したことを示している。各ウェルの右下の数字は、各ウェルでのIFN-γ陽性スポット数を示し、IFN-γ産生が検出上限を超えてサチュレーションしたウェルについては、PMA/Ionoのウェルのスポット数を1600としてそれぞれのウェルの算出したスポット数を示す。このような検討を、すべてのグループのすべてのペプチドについて行った(他のグループについての写真は省略)。
【0057】
ELISPOTアッセイにより計測された各ペプチド6ウェルのインターフェロンγ放出細胞スポット数の最大スポット数の計測値に応じて、候補ペプチドの免疫原性の反応強度を4段階(0: 無、1:弱、2:中、3:強)で分類した。具体的には、ウェルあたりの最大スポット数が、0~100の場合は反応強度0、101~600の場合は反応強度1、601~1200の場合は反応強度2、1201上の場合は反応強度3とした。
【0058】
すべてのグループについてELISPOTアッセイを行い、インターフェロンγ放出細胞スポット数が反応強度1以上と判定された候補ペプチドを、陽性ペプチドとした。陽性ペプチド55個についての情報を、表2(HLA-A02:01に結合するペプチド)および表3(HLA-A24:02に結合するペプチド)にまとめた。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のペプチドまたはその修飾物は、生体に投与することにより、その生体がSARS-CoV-2ウイルスに感染した場合にその生体内でウイルス感染細胞に対する細胞傷害を生じさせるCD8陽性T細胞(キラーT細胞)を活性化することができる。このことから本発明のペプチドまたはその修飾物は、SARS-CoV-2ウイルスの生体内での増殖を抑制し、SARS-CoV-2ウイルス感染症(COVID-19)の発症を予防または治療することができる。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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